説明

印刷装置および印刷装置の着脱部材

【課題】その新規着脱部材を装着するだけで、当該新規着脱部材に関する情報を印刷装置本体側に移植することができる印刷装置および当該着脱部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る印刷装置10は、着脱部材17、22、M等を装着する装着部、および各部の動作を制御する制御部43を有する印刷装置において、新規の前記着脱部材である新規着脱部材17、22、M等の情報を記憶する本体側記憶部44を有し、前記新規着脱部材17、22、M等には、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部17m、22m、Mm等が設けられており、前記制御部43は、前記新規着脱部材17、22、M等の前記装着部への装着に伴って、該新規着脱部材17、22、M等の情報を前記部材側記憶部17m、22m、Mmから読み込んで前記本体側記憶部44へ記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷装置の着脱部材に関し、さらに詳細には、記録ヘッドの吐出ノズルからインクを吐出して印刷を施す印刷装置および当該印刷装置に着脱される着脱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
上記印刷装置の例としてインクジェットプリンタが挙げられ、従来より種々の構成のものが知られている。例えば、被印刷対象物であるシート状の記録メディアを支持するためのプラテン、およびこのプラテンの上側にプラテンに対向させた記録ヘッドを設けた構成が知られている。記録ヘッドは、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)の色毎に設けられており、プラテンに対向した面には多数の吐出ノズルが形成されている。当該吐出ノズルから吐出されるインクは、インクカートリッジから記録ヘッドに供給される。この構成の印刷装置においては、記録ヘッドを左右に往復移動させる動作と、これに対して直交する前後方向に記録メディアを相対移動させる動作とを組み合わせて行いながら、プラテンに支持された記録メディアに向けて吐出ノズルからインク(インク滴)を吐出させる制御を行い、記録メディアの表面に所望の印刷を施すようになっている。
【0003】
上記構成に例示される印刷装置において、例えば、記録ヘッド、インクカートリッジ等は交換可能な着脱部材として設けられる構成が知られている。また、種々の材質のものが用いられる記録メディアも着脱部材として構成されている。
【0004】
ここで、着脱部材の交換時に、装着された着脱部材が備えている印刷環境に関する情報を印刷装置に読み込ませてから印刷を行う従来技術が知られている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2594912号公報
【特許文献2】特開平6−320732号公報
【特許文献3】特開2003−001876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2に開示される印刷装置では、印刷装置を市場に投入後に、新しい種類の構成部品(インクカートリッジ、記録ヘッド等)、あるいは新しい種類の被印刷対象物(記録メディア等)が供給されることが多々ある。しかしながら、これらを既存の印刷装置で使用可能とするためには、印刷装置本体のプログラムが書き込まれたメモリを交換する作業が必要となる。当該作業はユーザーが行うことが困難であり、サービスマンが出向いて行わねばならないために、多大な費用がかかるという課題があった。
一方、特許文献3に開示される印刷装置では、新しい種類の記録メディアの全ての印刷環境テーブルを印刷装置に読み込ませるので、印刷装置のプログラムが書き込まれたメモリを交換する必要は無い。しかし、電源オン、印刷開始、記録メディアの交換等の度に多量のデータを印刷装置側に読み込ませねばならず、動作全般に時間がかかる。さらに、容量の大きなメモリを記録メディアの1本毎に装着するので、記録メディアの単価も高くなるという課題があった。なお、当該特許文献3に開示される印刷装置では、新規に市場投入された記録メディアがあった場合、その記録メディアが何であるかを操作者に知らせる手段については開示されていない。
【0007】
このように、上記従来技術は、印刷装置に既に登録されている着脱部材(以下、「既存着脱部材」という場合がある)における印刷環境に関する情報(インク残量、履歴、印刷環境テーブル等)を記憶する技術であって、印刷装置に未登録である着脱部材(以下、「新規着脱部材」という場合がある)の情報を記憶する技術ではない。
そのため、未登録の新規着脱部材を装着しようとする場合にサービスマン等の人手によるメモリ交換作業を不要とし、この新規着脱部材を印刷装置の装着部に装着するだけで、新規着脱部材の情報を取り込むことができる印刷装置が要望されていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷装置の販売当時に未登録であった新規着脱部材が製品化されて市場に供給された場合であっても、その新規着脱部材を装着するだけで、換言すれば、ユーザーの手を煩わせることなく、新規着脱部材に関する情報を印刷装置本体側に移植することができる印刷装置および当該着脱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
開示の印刷装置は、着脱部材を装着する装着部、および各部の動作を制御する制御部を有する印刷装置において、新規の前記着脱部材である新規着脱部材の情報を記憶する本体側記憶部を有し、前記新規着脱部材には、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられており、前記制御部は、前記新規着脱部材の前記装着部への装着に伴って、該新規着脱部材の情報を前記部材側記憶部から読み込んで前記本体側記憶部へ記憶させることを特徴とする。これによれば、サービスマン等の人手によるメモリ交換作業を行わずとも、新規着脱部材を装着するだけで当該新規着脱部材に関する情報を印刷装置本体側に移植することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記本体側記憶部は、前記新規着脱部材の情報を、既存の前記着脱部材である既存着脱部材の情報と並列に記憶する記憶領域を有することが好ましい。これによれば、新規着脱部材の情報を、既存着脱部材の情報に上書きすることなく、本体側記憶部に記憶させることが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記制御部は、前記装着部に装着された着脱部材が前記新規着脱部材もしくは前記既存着脱部材のいずれであるかを識別し、前記新規着脱部材である場合には、該新規着脱部材の部材側記憶部に記憶されている情報を読み込んで、前記既存着脱部材の情報と並列に、前記本体側記憶部へ記憶させることが好ましい。これによれば、着脱部材が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別することができ、新規着脱部材である場合にその情報を新たに記憶させることが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記制御部は、前記装着部に装着された着脱部材が前記新規着脱部材もしくは前記既存着脱部材のいずれであるかを識別し、前記既存着脱部材である場合には、該既存着脱部材の部材側記憶部に記憶されている情報を読み込んで、前記本体側記憶部に記憶されている既存着脱部材の情報に追加もしくはその一部に上書きさせることが好ましい。これによれば、着脱部材が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別することができ、既存着脱部材である場合にその情報を更新させることが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記情報は、前記着脱部材の固有の特性値である固定情報と、該着脱部材の使用により更新される更新情報と、からなることが好ましい。これによれば、着脱部材の固有の特性値および使用により更新される情報のいずれも本体側記憶部に記憶させることが可能となる。
【0015】
開示の記録メディアは、前記の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としての記録メディアにおいて、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていることを特徴とする。これによれば、前記の印刷装置において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能な記録メディアが実現される。
【0016】
開示のインクカートリッジは、前記の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としてのインクカートリッジにおいて、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていることを特徴とする。これによれば、前記の印刷装置において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能なインクカートリッジが実現される。
【0017】
開示の記録ヘッドは、前記の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としての記録ヘッドにおいて、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていることを特徴とする。前記の印刷装置において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能な記録ヘッドが実現される。
【発明の効果】
【0018】
開示の印刷装置によれば、新規着脱部材を装着するだけで、当該新規着脱部材に関する情報を印刷装置本体側に移植することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の例を示す概略図である。
【図2】図1の印刷装置の制御系統図である。
【図3】図1の印刷装置の本体側記憶部におけるインクカートリッジ用のメモリ配分の設定例を示す説明図である。
【図4】図1の印刷装置の本体側記憶部における記録ヘッド用のメモリ配分の設定例を示す説明図である。
【図5】図1の印刷装置の本体側記憶部における記録メディア用のメモリ配分の設定例を示す説明図である。
【図6】図1の印刷装置の着脱部材(インクカートリッジ)に設けられる部材側記憶部に記憶された情報の例を示す説明図である。
【図7】図1の印刷装置の着脱部材(記録ヘッド)に設けられる部材側記憶部に記憶された情報の例を示す説明図である。
【図8】図1の印刷装置の着脱部材(記録メディア)に設けられる部材側記憶部に記憶された情報の例を示す説明図である。
【図9】図1の印刷装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。ここでは、本実施形態に係る印刷装置として、インクジェットプリンタの場合を例に挙げて説明を行う。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
図1に、印刷装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10の構成を示す。なお、説明の便宜上、図1において矢印方向で印刷装置10の左右、および上下方向を示す。また、図1における紙面の前後方向を印刷装置10の前後方向とする。以下、これらの方向を用いて説明を行う。
【0022】
印刷装置10は、図1に示すように、左右の支持脚11a、11bを有した支持脚11と、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部13と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部14と、左右ボディ部13、14を繋ぐとともに中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部15とを備えて構成される。この印刷装置10は、右ボディ部13の内部に設けられたコントロールユニット40により、各部の動作制御が行われるようになっている(詳細については後述)。
【0023】
上ボディ部15の内部には、左右に延びたガイドレール15aが設けられており、このガイドレール15aに対してヘッドユニット20が取り付けられている。ヘッドユニット20は、ガイドレール15aに取り付けられて左右に移動自在となったキャリッジ21、およびキャリッジ21に搭載された記録ヘッド(ここでは、インクジェットヘッド)22から構成される。記録ヘッド22は、一例として、ブラックインクを吐出するブラックヘッド22K、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド22M、イエローインクを吐出するイエローヘッド22Y、シアンインクを吐出するシアンヘッド22C、およびホワイトインクを吐出するホワイトヘッド22Wから構成されており、図示しない装着部(記録ヘッド装着部)を介してキャリッジ21に装着される。記録ヘッド22の下面には、インクを記録メディアMに向けて下方へ吐出する複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されている。例えば、180個の吐出ノズルを前後方向に直線状に整列させて形成されたノズル列が、左右方向に8列並べられて形成される。各吐出ノズルにおけるインクの吐出制御は、コントロールユニット40から各記録ヘッド22に出力される駆動制御信号により行われる。なお、記録ヘッド22の「装着」には、当該記録ヘッド22と印刷装置10(装着部)との電気的接続(一例として、図示しない配線コネクタ同士の接続)も含まれる。
【0024】
中央ボディ部12の上面には、左右に延びた平板状のプラテン12aが露出して設けられ、このプラテン12aの後側に左右に延びた送りローラ(図示せず)が露出して設けられている。この送りローラは、中央ボディ部12の内部に設けられた前後駆動モータ19により回転駆動される。そのため、被印刷対象であるシート状の記録メディアMを、図示しない装着部(記録メディア装着部)によって上ボディ部15に設けられたピンチローラ(図示せず)と送りローラとの間に挟持した状態で、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って前後駆動モータ19を駆動させることにより、記録メディアMを駆動制御量に応じた送り量で前後に送ることができるようになっている。なお、記録メディアMの「装着」には、当該記録メディアMと印刷装置10(装着部)との電気的接続(一例として、図示しない配線コネクタ同士の接続)も含まれる。
【0025】
左ボディ部14の上部には、装着部(カートリッジ装着部16)が設けられており、このカートリッジ装着部16に対して複数のインクカートリッジ17が前後に挿入されている。このカートリッジ装着部16は、供給チューブ(図示せず)を介して記録ヘッド22と接続されている。そして、記録ヘッド22におけるインクの消費量に応じて、インクカートリッジ17のインクが供給チューブを介して記録ヘッド22へ供給されるようになっている。また、左ボディ部14の内部には、ガイドレール15aに沿ってヘッドユニット20を左右に移動させるための左右駆動モータ29が設けられている。この左右駆動モータ29を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた送り量で左右に移動させることができるようになっている。なお、インクカートリッジ17の「装着」には、当該記録インクカートリッジ17と印刷装置10(装着部)との電気的接続(一例として、図示しない配線コネクタ同士の接続)も含まれる。
【0026】
右ボディ部13の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等から構成された操作表示部13aが設けられている。また、右ボディ部13の内部には、メンテナンスユニット30およびコントロールユニット40が設けられている。メンテナンスユニット30は、記録ヘッド22の下面形状に応じて形成されるとともに上方に向けて開口したキャップ部材(図示せず)、吸引ポンプ(図示せず)およびキャップ駆動モータ39を備えて構成される。このキャップ駆動モータ39を、コントロールユニット40からの駆動制御信号に従って駆動させることにより、駆動制御量に応じた移動量で上下に移動させることができるようになっている。また、吸引ポンプを駆動させることにより、キャップ部材の内部に負圧を作用させることができるようになっている。
【0027】
コントロールユニット40は、図2に示すように、印刷装置10の各部の動作を制御する制御プログラムが書き込まれたROM(Read−Only Memory)41、記録メディアMに印刷するためのプログラム等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)42、および、RAM42から読み込まれたプログラムや操作表示部13aから入力された操作信号等について演算処理を行い、制御プログラムに従って各部の動作を制御する制御部43から構成される。このコントロールユニット40は、制御部43における演算処理結果に基づいて、前後駆動モータ19、左右駆動モータ29、キャップ駆動モータ39、記録ヘッド22等に駆動制御信号を出力することにより、これらの動作を制御するようになっている。
【0028】
また、本実施形態に特徴的な構成として、コントロールユニット40は、メモリとしての本体側記憶部44を備えている。本体側記憶部44には、各着脱部材に対応する記憶領域としてメモリが配分されている。一例として、インクカートリッジ17用のメモリ配分の設定例を図3に、記録ヘッド22用のメモリ配分の設定例を図4に、記録メディアM用のメモリ配分の設定例を図5にそれぞれ示す。同図3に示すように、本体側記憶部44には、既存着脱部材に関する情報が出荷時に書き込まれた使用済アドレスA1と、新規着脱部材の情報が追加書き込み可能な空きアドレスA2とが並列に設けられている。図4に示す使用済アドレスA3と空きアドレスA4、および図5に示す使用済アドレスA5と空きアドレスA6についても同様である。
【0029】
また、本実施形態に特徴的な構成として、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、記録メディアMに例示される新規着脱部材には、当該新規着脱部材の情報が記憶されたメモリとしての部材側記憶部17m、22m、Mmがそれぞれに対応して設けられている(図2参照)。一例として、インクカートリッジ17に設けられる部材側記憶部17mに記憶された情報の例を図6に、記録ヘッド22に設けられる部材側記憶部22mに記憶された情報の例を図7に、記録メディアMに設けられる部材側記憶部Mmに記憶された情報の例を図8にそれぞれ示す。同図6に示すように、部材側記憶部17m、22m、Mmに記憶される情報は、着脱部材の固有の特性値である固定情報D1と、該着脱部材の使用により更新される更新情報D2とからなる。図7に示す固定情報D3と更新情報D4、および図8に示す固定情報D5と更新情報D6についても同様である。
【0030】
なお、上記固定情報D1、D3、D5、および更新情報D2、D4、D6は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、固定情報D1の他の例として、当該着脱部材の製造日を含めることも考えられる。これによれば、既存色のインクカートリッジであっても製造日の情報を取り込むことで、インクカートリッジのインクライフの管理をすることができる効果が得られる。
【0031】
上記構成を備えて、制御部43は、新規着脱部材(例えば、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM)が当該新規着脱部材に対応する装着部へ装着される(電気的接続も行われる)ことに伴って、当該新規着脱部材の情報(前述)を部材側記憶部(例えば、17m、22m、もしくはMm)から本体側記憶部44へ記憶させる動作を行う(動作フローの詳細については後述する)。
これによって、本体側記憶部44は、着脱部材(例えば、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM)が新規の未登録のもの(新規着脱部材)である場合に、当該新規着脱部材の情報を、対応する使用済アドレス(例えば、A1、A3、もしくはA5)に上書きすることなく、あらかじめ未登録の新規着脱部材向けに用意された対応する空きアドレス(例えば、A2、A4、もしくはA6)に記憶することが可能となる。
【0032】
このとき、未登録の新規着脱部材の固定情報、更新情報についてはあらかじめ記憶する情報を所定情報に限定することとし、且つ、空きアドレスは当該所定情報に対応させて設けておく必要がある。
なお、あらかじめ複数の着脱部材が想定され且つその着脱部材の組合せで制御方法が決まる場合は、それらの組合せ(例えばインクカートリッジと記録メディア)毎に個々のメモリを配分し、空きアドレスに追加することで登録が可能となる。
【0033】
本体側記憶部44、および部材側記憶部17m、22m、Mmには、一例として、書き換え可能なROMであるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)が用いられる。ただし、これに限定されるものではなく、フラッシュメモリ等その他の不揮発性メモリを用いることもできる。
【0034】
以上、印刷装置10の全体構成について説明した。ここで、着脱部材がインクカートリッジ17である場合を例に挙げ、本実施形態に係る印刷装置の装着部に当該着脱部材が装着されてから印刷待機の状態に至るまでの動作フローについて説明する。図9はその動作フローの概略を示すフローチャートである。
【0035】
本実施形態では、印刷装置10本体の装着部に着脱部材が装着された時点をスタートとして本動作フローを実行する。なお、印刷装置10本体の電源がオンとなった時点をスタートとしてもよい。
先ず、制御部43は、カートリッジ装着部16(装着部)に、インクカートリッジ17(着脱部材)が装着されたか否かを判断するステップを実行する(ステップS11)。
【0036】
前記ステップS11における判断の結果、カートリッジ装着部16にインクカートリッジ17が装着されていない場合には、制御部43は、コントロールユニット40の操作表示部13aに、インクカートリッジの取付要求を表示させるステップを実行する(ステップS12)。
【0037】
一方、カートリッジ装着部16にインクカートリッジ17が装着された場合には、制御部43は、インクカートリッジ17の部材側記憶部17mに記憶された所定情報(例えばインク名称)を取り込んで、RAM42に記憶させるステップを実行する(ステップS13)。
【0038】
ステップS13に次いで、制御部43は、装着されたインクカートリッジ17が未登録の新規着脱部材であるか、もしくは既に登録済の既存着脱部材であるかを識別するステップを実行する(ステップS14)。ここで、当該識別手段は以下の構成および動作フローを備える。すなわち、制御部43において、部材側記憶部17mから取り込まれRAM42に記憶された所定情報(例えばインク名称)と、本体側記憶部44に登録されている既存着脱部材の情報(例えばインク名称)とを比較照合することによって、未登録か登録済であるかの識別が行われる。
【0039】
前記ステップS14における判断の結果、装着されたインクカートリッジ17が未登録の新規着脱部材である場合には、制御部43は、インクカートリッジ17の部材側記憶部17mに記憶された情報(固定情報および更新情報)を取り込んで、RAM42に一時的に記憶させるステップを実行する(ステップS15)。
一方、装着されたインクカートリッジ17が登録済の既存着脱部材である場合には、後述のステップS20へ移行する。
【0040】
ステップS15に次いで、制御部43は、当該未登録の新規着脱部材(インクカートリッジ17)の情報を操作表示部13aに表示させるステップを実行する(ステップS16)。
【0041】
ステップS17に次いで、制御部43は、当該未登録のインクカートリッジ17の情報を本体側記憶部44に登録(記憶)させるか否かの判断を操作者に要求するステップを実行する(ステップS17)。
【0042】
前記ステップS17において、操作者が当該未登録のインクカートリッジ17の情報を本体側記憶部44に登録(記憶)させると判断して、その旨の指示入力を操作表示部13aから行った場合、制御部43は、インクカートリッジ17の部材側記憶部17mに記憶された情報(固定情報および更新情報)を取り込んで、本体側記憶部44の空きアドレスA2に記憶させるステップを実行する(ステップS18)。
【0043】
一方、前記ステップS17において、操作者が当該未登録のインクカートリッジ17の情報を本体側記憶部44に登録(記憶)させないと判断して、その旨の指示入力を操作表示部13aから行った場合には、当該インクカートリッジ17の動作に必要な情報(特に固定情報)が取得できず、動作が不可能となることから、前述のステップS12へ移行して、他のインクカートリッジ17の取付要求を操作表示部13aに表示させる。
【0044】
前記ステップS18が完了することによって、印刷装置10は、印刷を実行することが可能な印刷待機状態(ステップS19)へ移行する。
【0045】
続いて、ステップS14によってステップS20に移行した場合の動作フローについて説明する。
前述のステップS14における判断の結果、装着されたインクカートリッジ17が登録済の既存着脱部材である場合には、ステップS20へ移行する。当該ステップ20として、当該登録済の既存着脱部材(インクカートリッジ17)の交換が必要か否かの判断を操作者に要求するステップを実行する。
なお、当該ステップ20は、印刷装置10における登録済のインクカートリッジ17を用いた印刷の実行中もしくは実行後に、操作者が任意のタイミングで操作表示部13に指示入力をすることによって実行してもよい。
【0046】
前記ステップS20において、操作者が当該登録済のインクカートリッジ17の交換が不要と判断して、その旨の指示入力を操作表示部13aから行った場合、印刷装置10は、印刷を実行することが可能な印刷待機状態(ステップS19)へ移行する。
【0047】
一方、前記ステップS20において、当該登録済のインクカートリッジ17の交換が必要と判断して、その旨の指示入力を操作表示部13aから行った場合には、制御部43は、インクカートリッジ17における更新情報を部材側記憶部17mに記憶させるステップを実行する(ステップS21)。
【0048】
ステップS21に次いで、制御部43は、インクカートリッジ17が交換されたか否かを判断するステップを実行する(ステップS22)。
【0049】
前記ステップS22における判断の結果、インクカートリッジ17が別のインクカートリッジ17に交換された場合には、制御部43は、インクカートリッジ17の部材側記憶部17mに記憶された所定情報(例えばインク名称)を取り込んで、RAM42に記憶させるステップを実行する(ステップS23)。
一方、インクカートリッジ17が別のインクカートリッジ17に交換されていない場合には、前述のステップS20へ移行する。
【0050】
ステップS23に次いで、制御部43は、装着されたインクカートリッジ17が未登録の新規着脱部材であるか、もしくは既に登録済の既存着脱部材であるかを識別するステップを実行する(ステップS24)。ここで、当該識別手段は前述のステップS14の場合と同様であるため説明を省略する。
【0051】
前記ステップS24における判断の結果、装着されたインクカートリッジ17が登録済の既存着脱部材である場合には、制御部43は、インクカートリッジ17の部材側記憶部17mに記憶された情報(固定情報および更新情報)を取り込んで、本体側記憶部44に記憶されている既存着脱部材の情報に追加もしくはその一部に上書きさせるステップを実行する(ステップS25)。
一方、装着されたインクカートリッジ17が未登録の新規着脱部材である場合には、前述のステップS15へ移行する。
【0052】
前記ステップS25が完了することによって、印刷装置10は、印刷を実行することが可能な印刷待機状態(ステップS19)へ移行する。
【0053】
以上の動作フローは、着脱部材がインクカートリッジ17である場合の例であるが、着脱部材が記録ヘッド22である場合、あるいは記録メディアMである場合にも、同様の動作フローとなるため、説明を省略する。ただし、着脱部材に応じて情報(固定情報・更新情報)の内容が異なること、および、当該情報が記憶される本体側記憶部44内のメモリ配分(アドレス)が異なることは前述の通りである。
【0054】
以上説明した通り、開示の印刷装置によれば、未登録の新規着脱部材を装着しようとする場合にサービスマン等の人手による印刷装置本体のメモリ交換作業が不要となり、この新規着脱部材を印刷装置の装着部に装着するだけで、新規着脱部材の情報を取り込むことが可能となる。特に、本実施形態によれば、以下の特徴的な作用効果が奏される。
【0055】
印刷装置10は、着脱部材としてのインクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等を装着する装着部、および各部の動作を制御する制御部43を有する印刷装置において、新規の着脱部材であるインクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の情報を記憶する本体側記憶部44を有し、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等には、当該インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の情報が記憶された部材側記憶部17m、22m、Mmがそれぞれ設けられており、制御部43は、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の装着部への装着に伴って、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の情報を読み込んで、部材側記憶部17m、22m、Mmから本体側記憶部44へ記憶させる。これによれば、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等を印刷装置10(ここでは、対応する装着部)に装着するだけで、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等に関する情報を印刷装置10本体(ここでは、本体側記憶部44)に移植することが可能となる。
【0056】
また、本体側記憶部44は、新規着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)の情報を、既存着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)の情報と並列に記憶する記憶領域を有する。これによれば、新規着脱部材の情報を、既存着脱部材の情報に上書きすることなく、本体側記憶部44に記憶させることが可能となる。
【0057】
また、制御部43は、装着部に装着された着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別し、新規着脱部材である場合には、当該新規着脱部材の部材側記憶部17m、22m、Mm等に記憶されている情報を読み込んで、既存着脱部材の情報と並列に、本体側記憶部44へ記憶させる。これによれば、着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別することができ、新規着脱部材である場合にその情報を装置本体(ここでは本体側記憶部44)に新たに記憶させることが可能となる。
【0058】
また、制御部43は、装着部に装着された着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別し、既存着脱部材である場合には、当該既存着脱部材の部材側記憶部17m、22m、Mm等に記憶されている情報を読み込んで、本体側記憶部44に記憶されている既存着脱部材の情報に追加もしくはその一部に上書きさせる。これによれば、着脱部材(インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等)が新規着脱部材もしくは既存着脱部材のいずれであるかを識別することができ、既存着脱部材である場合にその情報を装置本体(ここでは本体側記憶部44)において更新させることが可能となる。
【0059】
また、前記情報は、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の固有の特性値である固定情報と、当該インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の使用により更新される更新情報と、からなる。これによれば、インクカートリッジ17、記録ヘッド22、もしくは記録メディアM等の固有の特性値および使用により更新される情報のいずれも本体側記憶部44に記憶させることが可能となる。
【0060】
記録メディアMは、印刷装置10の装着部に装着される新規着脱部材としての記録メディアにおいて、当該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部Mmが設けられている。これによれば、印刷装置10において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能な記録メディアが実現される。
【0061】
インクカートリッジ17は、印刷装置10の装着部に装着される新規着脱部材としてのインクカートリッジにおいて、当該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶17mが設けられている。これによれば、印刷装置10において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能なインクカートリッジが実現される。
【0062】
記録ヘッド22は、印刷装置10の装着部に装着される新規着脱部材としての記録ヘッドにおいて、当該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部22mが設けられている。これによれば、印刷装置10において、装着するだけで新規着脱部材の情報を印刷装置本体側に移植することが可能な記録ヘッドが実現される。
【0063】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。特に、印刷装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、その他の装置に対しても適用が可能である。同様に、記録ヘッドに関しても、インクジェットヘッドに限定されるものではない。
【0064】
また、着脱部材として、インクカートリッジ、記録ヘッド、記録メディアを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。着脱部材の他の例として、記録メディアを巻き取る巻取り装置、あるいは記録前、中、後において記録メディアを温めてインクを乾燥させるヒーター等が挙げられる。
【符号の説明】
【0065】
10 印刷装置
11 支持脚
12 中央ボディ部
12a プラテン(媒体支持手段)
13 右ボディ部
13a 操作表示部
14 左ボディ部
15 上ボディ部
15a ガイドレール(ガイドレール部材)
16 カートリッジ装着部(装着部)
17 インクカートリッジ
17m インクカートリッジの部材側記憶部
20 ヘッドユニット
21 キャリッジ
22 記録ヘッド
22m 記録ヘッドの部材側記憶部
40 コントロールユニット
41 ROM
42 RAM
43 制御部
44 本体側記憶部
M 記録メディア
Mm 記録メディアの部材側記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱部材を装着する装着部、および各部の動作を制御する制御部を有する印刷装置において、
新規の前記着脱部材である新規着脱部材の情報を記憶する本体側記憶部を有し、
前記新規着脱部材には、該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられており、
前記制御部は、前記新規着脱部材の前記装着部への装着に伴って、該新規着脱部材の情報を前記部材側記憶部から読み込んで前記本体側記憶部へ記憶させること
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記本体側記憶部は、前記新規着脱部材の情報を、既存の前記着脱部材である既存着脱部材の情報と並列に記憶する記憶領域を有すること
を特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記装着部に装着された着脱部材が前記新規着脱部材もしくは前記既存着脱部材のいずれであるかを識別し、前記新規着脱部材である場合には、該新規着脱部材の部材側記憶部に記憶されている情報を読み込んで、前記既存着脱部材の情報と並列に、前記本体側記憶部へ記憶させること
を特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記装着部に装着された着脱部材が前記新規着脱部材もしくは前記既存着脱部材のいずれであるかを識別し、前記既存着脱部材である場合には、該既存着脱部材の部材側記憶部に記憶されている情報を読み込んで、前記本体側記憶部に記憶されている既存着脱部材の情報に追加もしくはその一部に上書きさせること
を特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項5】
前記情報は、前記着脱部材の固有の特性値である固定情報と、該着脱部材の使用により更新される更新情報と、からなること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としての記録メディアにおいて、
該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていること
を特徴とする記録メディア。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としてのインクカートリッジにおいて、
該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていること
を特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷装置の装着部に装着される前記新規着脱部材としての記録ヘッドにおいて、
該新規着脱部材の情報が記憶された部材側記憶部が設けられていること
を特徴とする記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236333(P2012−236333A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106879(P2011−106879)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】