説明

印刷装置及びその制御方法

【課題】 外部装置にデバイスドライバソフトウェアをインストールすることなしに外部装置からの印刷が可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】 外部装置に接続された際に記憶装置として振る舞うことが可能な印刷装置において、外部装置から参照可能な記憶領域に、印刷指示に対応したフォルダを設けておく。そして、外部装置のファイル操作により、このフォルダにファイルが書き込まれると、そのファイルに対して印刷処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置及びその制御方法に関し、特に、接続された外部装置から参照可能な領域を有する記憶装置を備え、外部装置に対して記憶装置として振る舞うことが可能な印刷装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタを代表とする印刷装置は、印刷するデータをコンピュータなどの外部装置から受け取るための通信インタフェースを備えている。印刷装置が備える通信インタフェースの例としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、IEEE802.11xなどがある。
【0003】
しかしながら、外部装置から印刷装置を用いて印刷を行うためには、印刷装置固有の命令などを与えるためのデバイスドライバソフトウェア(以下、単にドライバという)を外部装置にインストールする必要がある。
【0004】
ドライバは通常印刷装置とともにCD-ROMなどの形態で提供されたり、印刷装置のメーカから例えばインターネットを通じて提供されたりしている。しかし、印刷装置に接続可能な外部装置が全てインターネットに接続可能なわけではなく、また、インターネットに接続する機能は備えていても、インターネットに接続できる環境にあるとは限らない。また、CD-ROMが印刷装置と別の場所に保管されていたり、紛失されている場合もある。このように、必要な際にドライバが手に入らない状況が起こりうる。
【0005】
そのため、特許文献1には、ドライバファイルを内部の記憶領域に保存し、記憶領域をプリンタとは別の装置として外部装置に認識させることが可能なプリンタが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003-150530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載のプリンタによれば、PCと接続された際に、まず記憶領域をPCに認識させるようにすることで、PCがプリンタを認識する前にドライバをPCにインストールすることができる。これにより、印刷装置さえあれば外部装置にドライバをインストールすることが可能となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法を実現するには、個々の印刷装置にドライバ記憶用のメモリを設ける必要があり、コストが掛かる。また、ドライバは機種固有のソフトウェアであるため、印刷装置のメーカにとってもドライバの開発は負担が大きい。さらに、開発後も例えばOSの更新にドライバを対応させるための保守などの作業も必要であり、このような保守作業は既に製造中止した印刷装置を含めた多種多様な機種が対象となるため、やはり大きな労力を必要とする。このような観点から、ドライバをインストールすることなく利用可能な印刷装置の実現が望まれている。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、外部装置にデバイスドライバソフトウェアをインストールすることなしに外部装置からの印刷が可能な印刷装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、外部装置と接続するための接続手段と、接続手段を介して接続された外部装置が参照可能な領域を有する記憶手段と、印刷設定に従って印刷対象のファイルを印刷する印刷手段とを有する印刷装置であって、接続された外部装置から、領域へのファイルの書き込みがあった場合、書き込みされたファイルを、印刷対象のファイルとして印刷手段に印刷させる制御手段とを有することを特徴とする印刷装置によって達成される。
【0011】
また、上述の目的は、外部装置と接続するための接続手段と、接続手段を介して接続された外部装置が参照可能な領域を有する記憶手段と、印刷設定に従って印刷対象のファイルを印刷する印刷手段とを有する印刷装置の制御方法であって、接続された外部装置から、領域へのファイルの書き込みがあった場合、書き込みされたファイルを、印刷対象のファイルとして印刷手段に印刷させる制御工程とを有することを特徴とする印刷装置の制御方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0012】
このような構成により、本発明によれば、外部装置にデバイスドライバソフトウェアをインストールすることなしに外部装置からの印刷が可能な印刷装置及びその制御方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適かつ例示的な実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
(プリンタ1の構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の一例としてのプリンタ1の構成例を示すブロック図である。
【0014】
図において、制御部109は例えばCPUであり、プリンタ1の全体動作を制御する。RAM105は、各種データや、制御部109が実行するプログラムを読み込んだり、制御部109のワークエリアとして用いられるメモリである。ROM103は、制御部109が実行するプログラムを格納する不揮発性メモリである。通信I/F104は、後述するPC2のような外部装置と通信するためのインタフェースであり、本実施形態ではUSBインタフェースであるとするが、それに限定されない。具体的には、通信I/F104は、プリンタ1が、接続された外部装置(本実施形態ではPC2)からみて記憶装置として振る舞うことが可能なプロトコルをサポートするインタフェースを1つ以上含めばよい。
【0015】
記憶装置106は半導体メモリやハードディスクドライブであってよい。記憶装置106はその少なくとも一部として、通信I/F104を通じて通信可能に接続された外部装置から読み書き可能な外部参照可能領域4を含む。後述するように、本実施形態のプリンタ1は、外部装置(本実施形態ではPC2)に接続された際、この外部参照可能領域4を有する外部記憶装置として振る舞うことが可能である。記憶装置106は、例えばFAT(File Allocation Table)を用いるファイルシステム107によって管理されている。記憶装置106に記憶されたデータファイルには、ファイルシステム107を通してアクセスする。
【0016】
アクセス監視部110はファイルシステム107を監視し、記憶装置106のフォルダやファイルに対して外部装置からアクセス(読み出し要求、書き込み要求)があった場合、その状況を把握している。
【0017】
印刷部108は、所謂プリントエンジンであり、制御部109の制御と印刷データ徒に基づき、紙などの記録媒体に画像形成を行う。印刷部108が用いる記録方式に制限はなく、電子写真方式、インクジェット記録方式、熱転写方式など任意の方式を採用することができるが、本実施形態においてはインクジェット記録方式であるとする。
【0018】
表示部111は例えばカラーLCDを備え、制御部109の制御に基づき、印刷データ、操作ガイダンスなどのGUI画面などを表示する。
【0019】
操作部112はキーやボタン、表示部111上に設けられたタッチパネルなど、ユーザからプリンタ1に対する各種指示や設定を受け付けるための入力デバイス群からなる。操作部112の操作内容は、制御部109に伝達され、制御部109は操作内容に応じた制御を行う。
【0020】
制御部109は例えばCPUであり、ROM103に記憶されたプログラムを実行してプリンタ1全体の動作を統括する。
バス102は、上述の各部を相互に接続する。
【0021】
(PC2の構成)
図2は本実施形態における外部装置の一例としてのPC(汎用コンピュータ装置)2の構成例を示すブロック図である。
図において、ディスプレイ201は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成され、各種のGUI(Graphical User Interface)やデータなどを表示する。キーボード203及びポインティングデバイス204は、文字などを入力したり、GUIにおけるアイコンやボタンなどを指し示すためなどに用いられる。CPU205はPC2全体の制御を司る。
【0022】
ROM206(Read Only Memory)はCPU205が実行するプログラム(主にブートプログラム)やパラメータ等を記憶している。RAM(Random Access Memory)207は各種プログラムをCPU205が実行する時のワークエリア、エラー処理時の一時退避エリア等として用いられる。
【0023】
ハードディスクドライプ(HDD)208はOSやアプリケーションプログラムなど、CPU205が実行するプログラムを記憶したり、ユーザデータを記憶したりする。また、仮想記憶領域としても用いられる。本実施形態において説明するPC2の各種機能を実現するプログラムは、HDD208に記憶されているものとする。
【0024】
リムーバブルメディアドライプ(RMD)209は、着脱可能な記録媒体の読み書き又は読み出しを行う装置である。RMD209の具体例としては、フレキシブルディスクドライブ、光ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ、メモリカードリーダ、着脱式HDDなどがある。
【0025】
USB/IEEE1394インタフェース210は、印刷装置を始めとした各種周辺機器を接続するためのインタフェースの一例である。より具体的には、USB/IEEE1394インタフェース210は、接続された印刷装置がPC2から記憶装置として取り扱い可能なプロトコルをサポートするインタフェースの一例である。従って、同様のプロトコルをサポートする任意の1種類以上のインタフェースであってよい。以下では、説明及び理解を容易にするため、USBインタフェースであるものとして説明する。
【0026】
ネットワークインタフェース(I/F)211はPC2をコンピュータネットワークに接続するためのインタフェースである。バス212はアドレスバス、データバスおよび制御バスからなり、上述した各ユニット間を接続する。
【0027】
(プリンタ1のファイル構成)
図3は、本実施形態のプリンタ1が有する記憶装置106のうち、外部装置から読み書き可能な記憶領域(外部参照可能領域)4に形成されたファイル構成の例を示す図である。このファイル構成は、ファイルシステム107によって形成され、管理されている。
【0028】
図3(a)に示すように、本実施形態では、最上位にプリンタフォルダ301を形成し、その中に印刷開始フォルダ302、印刷待ちフォルダ303、印刷中フォルダ304、印刷済フォルダ305及び印刷中止コマンドファイル306を設けている。また、印刷中フォルダ304には、印刷中止ファイル308、309を設けている。
図3(b)は、図3(a)のファイル構成をPC2で表示した状態の画面の例を示している。図3に示したフォルダの詳細については後述する。
【0029】
(接続時の動作)
図4は、本実施形態に係るプリンタ1とPC2とから構成される印刷システムを用いた印刷処理の概要を模式的に示した図である。
PC2のUSBインタフェース210とプリンタ1の通信I/F104とがUSBケーブル3によって接続されると、PC2がUSBホスト、プリンタ1がUSBデバイスとしてデスクリプタ情報の取得が行われる。
【0030】
プリンタ1からデスクリプタ情報中でUSBマスストレージクラスであることをPC2に通知する。これによりPC2はプリンタ1をUSBマスストレージクラスの装置として認識する。
【0031】
これにより、PC2では、リムーバブルディスクとしてプリンタ1がマウントされ、対応するディスクアイコン6がディスプレイ201に表示される。現在一般的に用いられているOSは、USBやIEEE1394プロトコルのドライバを標準で備えている。従って、このPC2における一連の動作は、OSの機能として通常に提供されるものであり、ドライバのインストールは不要である。
これにより、PC2のユーザは、一般的な記憶装置としてプリンタ1を取り扱うことができる。
【0032】
従って、ポインティングデバイス204によってディスクアイコン6をダブルクリックすると、プリンタフォルダ301が表示される。さらにプリンタフォルダ301をダブルクリックすると、図3(b)の上段に示したような表示がなされる。
【0033】
ユーザが、PC2からアクセス可能なボリューム(HDD208あるいはRMD209など)に存在する、印刷を希望するデータファイル(画像データファイル10とする)のアイコンを、印刷開始フォルダ302にドラッグアンドドロップする。CPU205が実行するOSは、この操作をファイルコピー動作と認識し、画像データファイル10を読み出してリムーバブルディスクとして振る舞うプリンタ1に書き込む。
【0034】
プリンタ1の制御部109は、通信I/F104を通じて画像データファイル10を受信すると、ファイルシステム107を通じて記憶装置106の印刷開始フォルダ302に書き込み、記憶する。
【0035】
アクセス監視部110は、印刷開始指示に対応づけられた印刷開始フォルダ302に画像データファイル10が書き込まれたことを検知する。アクセス監視部110は、書き込まれたファイルを印刷対象のファイルとして、印刷可能かどうかを例えばファイルの拡張子に基づいて判断する。
【0036】
アクセス監視部110により、画像データファイル10が印刷可能と判断されると、制御部109は、印刷開始フォルダ302から画像データファイル10を読み出し、予め用意されている印刷設定情報に基づいて、印刷プレビュー画像を生成する。
【0037】
そして、制御部109は、生成した印刷プレビュー画像7と印刷設定情報8とを含むGUI画面を生成し、表示部111に表示させる。図4の例において、印刷設定情報8は、縁なし/ありの設定と印刷サイズの設定であるが、情報の種類、数のいずれもこの例に限定されない。また、GUI画面には、印刷を実行させるか、中止するかをユーザに選択させるためのボタン113も含まれる。なお、操作部112としてタッチパネルを用いている場合には、ボタン113自体が操作部112として機能する。操作部112にタッチパネルが含まれない場合、ユーザは操作部112に含まれるボタンやキーを操作して、実行(OK)又は中止ボタンを選択して指示することができる。
【0038】
なお、アクセス監視部110によって印刷可能であると判断されたファイルについては、ユーザの確認を受けずに直ちに印刷を開始するようにしてもよい。しかしながら、本実施形態のように、ファイルコピー操作によって印刷指示を行う場合、印刷結果のプレビューが表示される機会がない。従って、印刷開始前にプリンタ1の表示部111に印刷プレビュー画像を表示することにより、誤ったファイルを印刷することを防止できるほか、印刷設定の確認を行うことが可能になるという効果がある。
【0039】
プリンタ1の操作部112を通じたユーザからの印刷実行指示に応答して、制御部109は、印刷対象ファイルである画像データファイル10と、印刷設定情報を印刷部108に転送する。印刷部108は、画像データファイル10と印刷設定情報に基づいて印刷データを生成し、印刷処理を実行する。なお、印刷データの生成まで制御部109が行い、印刷部108は印刷データに基づいた印刷を行うようにしてもよい。
【0040】
(印刷動作)
図5は、図4で説明した印刷処理を実現するプリンタ1の動作を説明するためのフローチャートである。
アクセス監視部110は、記憶装置106の外部参照可能領域4に対するアクセスを監視している(S501)。そして、印刷開始指示に対応づけされたフォルダ(本実施形態では印刷開始フォルダ302)にファイルが書き込まれたことを検知すると(S502,Yes)、アクセス監視部110は、書き込まれたファイルが印刷可能なファイルか否か判別する(S503)。この判別は、例えば、格納されたファイルの拡張子が、予め印刷可能なファイルの拡張子として記憶された拡張子に含まれるか否かを判別することによって行うことができる。
【0041】
なお、図5では印刷開始時の処理について説明するため、S502において印刷開始フォルダ302にファイルが書き込まれたことが検知されなければ処理をS501へ戻している。例えば他の指示に対応づけられたフォルダを設けており、そのフォルダに対するアクセスが検知された場合については、対応づけられた指示に応じて適宜処理を分岐させることができる。
【0042】
S503において、書き込まれたファイルがアクセス監視部110によって印刷可能なファイルであると判別された場合、制御部109は、印刷部108に装着された用紙種類、インクカートリッジ種類、画像処理設定を確認する(S504)。そして、制御部109は、書き込まれたファイルを印刷対象のファイルとして、印刷条件に合わせた印刷プレビューイメージを生成し(S505)、現在の印刷条件設定とともに、表示部111に表示する(S506)。
【0043】
次に、制御部109は、操作部112を通じたユーザーからの指示入力を待つ。印刷条件の設定が変更された場合(S507,Yes)、制御部109は処理をS504に戻し、印刷条件を確認して、印刷プレビューを含めた表示を更新する。
【0044】
印刷処理の中止指示が入力された場合(S508,Yes)、制御部109は、現在の印刷準備処理を終了し、処理をS501に戻して、印刷開始フォルダ302への新たなファイルの格納が検知されるのを待機する。
【0045】
印刷開始指示が入力された場合(S509,Yes)、それに応答して制御部109は、印刷対象のファイルを印刷条件の設定内容とともに、印刷部108に転送する。そして、印刷部108は、ファイルと印刷条件とに応じて印刷データを生成し、インクジェット記録ヘッドや媒体の搬送機構などを制御して印刷を実行する(S510)。なお、上述したように、印刷条件の設定に従った印刷データの生成を制御部109が行い、印刷データを印刷部108に供給するようにしてもよい。
【0046】
印刷部108から印刷処理の正常終了を受信すると、制御部109は処理をS501へ戻す。なお、印刷処理が正常終了したファイルについては、削除するようにしてもよいし、プリンタフォルダ301内に設けた専用のフォルダへ移動しても良い。例えば図3の例であれば、印刷済フォルダ305を印刷処理が終了したファイルの移動先とすることができる。従って、制御部109は、印刷部108から印刷の正常終了通知を受信すると、印刷したファイル(IMG_0025.JPG)を、印刷開始フォルダ302から印刷済フォルダ305へ移動させる。
【0047】
上述の説明においては、説明及び理解を容易にするため、プリンタフォルダ301内のサブフォルダ302〜305のうち、印刷開始フォルダ302と印刷済フォルダ305を使用する場合についてのみ述べた。しかし、印刷処理の状況に対応づけた他のサブフォルダを設けることもできる。
【0048】
例えば、図3に示したように、印刷待ちフォルダ303及び印刷中フォルダ304を設けることができる。この場合、S503で印刷可能なファイルであることが確認された時点で、制御部109は印刷開始フォルダ302からファイルを印刷待ちフォルダ303へ移動させる。そして、制御部109は、印刷待ちフォルダ303に格納されたファイルから1つを印刷中フォルダ304に移動してから印刷処理を実行する。また、制御部109は、印刷処理が正常終了したファイルを、印刷中フォルダ304から印刷済フォルダ305へ移動させる(あるいは削除する)。
【0049】
このように、印刷処理の進行状況に応じたフォルダを設け、ファイルを印刷処理の進行に伴って移動させることで、ユーザはPC2において、プリンタフォルダ301内のファイルの存在場所を確認することで、印刷指示したファイルの状況を確認することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置は、外部装置に接続された際、外部装置からアクセス可能な記憶装置として振る舞うとともに、外部装置から記憶装置へ格納する操作によって転送ファイルを印刷する。そのため、外部装置にドライバソフトウェアがインストールされていなくても、外部装置から印刷を行うことが可能な印刷装置を提供することができる。
【0051】
また、印刷指示を受けたファイルの印刷プレビュー画像を生成して表示することにより、ファイル格納操作によって印刷を行う場合であっても、印刷前に印刷結果の確認を行うことができる。
【0052】
さらに、印刷処理の状況に対応したフォルダを設け、印刷処理の状況に応じたフォルダにファイルを移動させるようにすれば、外部装置から印刷指示したファイルがどのフォルダにあるかを確認することで、印刷処理の状況を把握することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態においては、外部装置から印刷装置にファイルのコピー操作によって転送されたファイルは(印刷可能なファイルであれば)自動的に印刷される。そのため、第1の実施形態においては、誤った印刷が行われることを抑制するために、印刷プレビュー画像を表示し、ユーザの確認を経てから印刷を実行する手順を例示した。
【0054】
しかし、このような確認手順を含まずに印刷を実行する形態であったり、印刷プレビュー画像を確認して印刷の実行を許可した後で、何らかの理由により印刷を中止したくなる場合も考えられる。
【0055】
ドライバソフトウェアが外部装置にインストールされていれば、印刷の中止を指示することができる。しかし、ファイルのコピー操作を印刷指示として解釈する第1の実施形態の方法では、外部装置から印刷装置に中止指示を与えるための仕組みがなかった。
本実施形態は、第1の実施形態に対し、外部装置から印刷の中止を指示するための仕組みを追加するものである。従って、プリンタ1及びPC2の構成は第1の実施形態と共通でよく、構成に関する説明は省略する。
【0056】
(プリンタ1のファイル構成)
図6は、本実施形態のプリンタ1が有する記憶装置106のうち、外部装置から参照可能な領域(外部参照可能領域)4に形成されたファイル構成の例を示す図である。このファイル構成は、ファイルシステム107によって形成され、管理されている。
【0057】
図6(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、図3(a)及び(b)に示したプリンタフォルダ301に、外部装置からの印刷中止を実現するためのファイルが追加されている。具体的には、印刷中フォルダ304に第1及び第2の印刷中止ファイル308及び309が、プリンタフォルダ301の直下に印刷中止コマンドファイル306が追加されている。
【0058】
このうち、第1の印刷中止ファイル308は、現在実行中の印刷処理を即時中止する指示に対応する即時中止指示用のファイルである。
【0059】
第2の印刷中止ファイル309は、現在印刷中のファイルの印刷処理が終了した時点で印刷処理を中止する指示に対応する次印刷中止指示用のファイルである。
【0060】
そして、アクセス監視部110は、第1又は第2の印刷中止ファイル308又は309が削除されたかどうかを監視する。なお、ここで削除とは、ファイルシステム107上で削除ファイルとされた場合だけでなく、PC2で動作するOSが提供するゴミ箱に移動された場合を含む。より簡単に、印刷中フォルダ304に存在しなくなった状態を削除された状態と見なしても良い。
削除が検知されたら、制御部109は削除された印刷中止ファイルに対応する指示が入力されたものとして、印刷中止処理を行う。
【0061】
なお、印刷中止コマンドファイル306は、第1及び第2の印刷中止ファイル308及び309を削除するコマンドバッチファイルである。そのため、印刷中止コマンドファイル306のファイル名には、バッチファイルであることを示す拡張子”.BAT”が含まれている。
【0062】
従って、ユーザは印刷中止コマンドファイル306がバッチファイルであることを把握できる。印刷中止コマンドファイル306をPC2のポインティングデバイス204によりダブルクリックするなどして実行する操作を行うと、印刷中フォルダ304を開くこと無しに第1及び第2の印刷中止ファイル308及び309を削除することができる。第1及び第2の印刷中止ファイル308及び309の両方が削除された場合、制御部109は、より中止のタイミングが早い第1の印刷中止ファイル308に対応する指示を優先し、印刷処理を直ちに中止する。従って、印刷中止コマンドファイル306が削除するのは、第1の印刷中止ファイル308のみであってもよい。
【0063】
印刷中止コマンドファイル306は、第1及び第2の印刷中止ファイル308及び309の削除に必要な手順を簡略化するものであるため、必ずしも設ける必要はないが、設けることによりユーザの使い勝手が良くなる。
【0064】
なお印刷中止ファイル308及び309と、印刷中止コマンドファイル306は、印刷処理が実行されるまでの任意の段階で生成することができるが、例えば、印刷処理の実行直前に生成すればよい。例えば、図5に示した第1の実施形態の手順であれば、S509で印刷開始の指示が入力された後、S510で印刷処理を開始する前に制御部109がファイルシステム107を通じて生成することができる。
【0065】
図7は、本実施形態にに係るプリンタ1の印刷中止処理に関する動作を説明するフローチャートである。
S701で制御部109は、印刷処理中であるか判定する。
【0066】
S701で印刷処理中であれば、制御部109は、アクセス監視部110により、第1の印刷中止ファイル308の削除が検知されたか調べる。あるいは、印刷中フォルダ304に第1の印刷中止ファイル308があるか、ファイルシステム107を通じて制御部109が調べても良い。
【0067】
第1の印刷中止ファイル308の削除が検知されたか、印刷中フォルダ304での不存在が確認された場合、制御部109は即時印刷中止が指示されたものとして、S704で印刷部108に対して印刷中止を指示する。印刷中止処理が完了したら制御部109は処理をS706に進める。
【0068】
S702において、第1の印刷中止ファイル308の削除が検知されていないか、印刷中フォルダ304での存在が確認された場合、制御部109は処理をS703に進める。S703で制御部109は、アクセス監視部110により、第2の印刷中止ファイル309の削除が検知されたか調べる。あるいは、印刷中フォルダ304に第2の印刷中止ファイル309があるか、ファイルシステム107を通じて制御部109が調べても良い。
【0069】
第2の印刷中止ファイル309の削除が検知されたか、印刷中フォルダ304での存在が確認された場合、制御部109は次印刷中止が指示されたものとして、印刷部108からの印刷終了通知を待つ。そして、処理中であった印刷の終了が印刷部108から通知されたら、その時点で印刷待ちのファイルがあっても印刷処理を中止し(S705)、処理をS706に進める。
【0070】
S703において、第2の印刷中止ファイル309の削除が検知されていないか、印刷中フォルダ304での存在が確認された場合、制御部109は処理をS701に戻す。
【0071】
S706において、制御部109は、第1及び第2の印刷中止ファイル308、309及び印刷中止コマンドファイル306を削除し、処理を終了する。また、印刷待ちフォルダ303や印刷中フォルダ304に残っているファイルも削除する。
【0072】
このように、本実施形態によれば、印刷の中止指示に対応するファイルを外部参照可能な領域に用意することで、外部装置におけるファイル操作によって印刷処理の中止を指示することが可能になる。また、印刷中止の形態に応じたファイルを用意することで、即時中止、次印刷中止など、様々な形態の中止をユーザが指示できる。また、印刷中止指示に対応するファイル操作を実行するコマンドファイルを設けることで、ユーザはより簡便に印刷の中止を指示することが可能になる。
【0073】
(他の実施形態)
上述の実施形態においては、外部装置の一例として汎用コンピュータを説明したが、印刷装置が記憶装置として振る舞うことのできるプロトコルをサポートする任意の機器を外部装置として用いることができる。上述のように、このようなプロトコルには例えばUSBプロトコルやIEEE1394プロトコルが含まれるので、これらプロトコルのいずれかをサポートする機器であれば外部装置として利用可能である。具体的には、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどであってよい。
【0074】
また、上述の実施形態では印刷装置がUSBマスストレージクラスデバイスとして振る舞う例についてのみ説明した。しかし、外部装置がIEEE1394プロトコルをサポートし、印刷装置がAV/Cコマンドにより読み書き可能な記憶装置(カメラストレージサブユニットなど)として振る舞ってもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、ファイルが実際に書き込まれたことをアクセス監視部110で検知する構成について説明した。しかし、通信I/F104において、外部装置から参照可能な領域へのファイルのアクセス(読み出し、書き込み)要求を検知し、書き込み要求があったファイルを印刷対象のファイルとして取り扱ってもよい。ファイルの書き込み要求には、フォルダなどの書き込み先を特定可能な情報も含まれるので、通信I/F104でどのフォルダへファイルの書き込みが要求されているかを検知することができる。従って、アクセス監視部110によるアクセス検知に変えて、通信I/F104でのアクセス要求の検知に基づいて、上述した実施形態と同様の制御を実施することができる。このように、ファイルの書き込み要求を検知する構成の場合、アクセス監視部110を省略することができる。
【0076】
上述の実施形態は、印刷装置が有するコンピュータ(或いはCPU、MPU等)によりソフトウェア的に実現することも可能である。
従って、上述の実施形態をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給されるコンピュータプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、上述の実施形態の機能を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【0077】
なお、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能であれば、どのような形態であってもよい。例えば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等で構成することができるが、これらに限るものではない。
【0078】
上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体又は有線/無線通信によりコンピュータに供給される。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、MO、CD、DVD等の光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリなどがある。
【0079】
有線/無線通信を用いたコンピュータプログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバを利用する方法がある。この場合、本発明を形成するコンピュータプログラムとなりうるデータファイル(プログラムファイル)をサーバに記憶しておく。プログラムファイルとしては、実行形式のものであっても、ソースコードであっても良い。
【0080】
そして、このサーバにアクセスしたクライアントコンピュータに、プログラムファイルをダウンロードすることによって供給する。この場合、プログラムファイルを複数のセグメントファイルに分割し、セグメントファイルを異なるサーバに分散して配置することも可能である。
つまり、上述の実施形態を実現するためのプログラムファイルをクライアントコンピュータに提供するサーバ装置も本発明の一つである。
【0081】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを暗号化して格納した記憶媒体を配布し、所定の条件を満たしたユーザに、暗号化を解く鍵情報を供給し、ユーザの有するコンピュータへのインストールを許可してもよい。鍵情報は、例えばインターネットを介してホームページからダウンロードさせることによって供給することができる。
【0082】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、すでにコンピュータ上で稼働するOSの機能を利用するものであってもよい。
さらに、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、その一部をコンピュータに装着される拡張ボード等のファームウェアで構成してもよいし、拡張ボード等が備えるCPUで実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の一例としてのプリンタ1の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る外部装置の一例としてのPC2の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプリンタ1が有する記憶装置106のうち、外部装置から参照可能な領域に形成されたファイル構成の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るプリンタ1とPC2とから構成される印刷システムを用いた印刷処理の概要を模式的に示した図である。
【図5】図4で説明した印刷処理を実現するプリンタ1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るプリンタ1が有する記憶装置106のうち、外部装置から参照可能な領域に形成されたファイル構成の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るプリンタ1の印刷中止処理に関する動作を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置と接続するための接続手段と、
前記接続手段を介して接続された外部装置が参照可能な領域を有する記憶手段と、
印刷設定に従って印刷対象のファイルを印刷する印刷手段とを有する印刷装置であって、
前記接続された外部装置から、前記領域へのファイルの書き込みがあった場合、前記書き込みされたファイルを、前記印刷対象のファイルとして前記印刷手段に印刷させる制御手段とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記領域にはフォルダが形成され、
前記印刷装置は、前記接続された外部装置からの、前記フォルダへのファイルの書き込みを検知する検知手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記検知手段により、前記フォルダへのファイルの書き込みが検知された場合に、前記書き込みされたファイルを前記印刷対象のファイルとして前記印刷手段により印刷を開始させることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷対象のファイルについて、印刷プレビュー画像を生成する生成手段と、
前記印刷プレビュー画像及び前記印刷プレビュー画像の生成に用いた印刷条件とを表示する表示手段と、
ユーザの指示を受け付ける操作部をさらに有し、
前記制御手段は、前記操作部を通じた前記ユーザからの印刷開始の指示に応答して、前記印刷対象のファイルを前記印刷手段に印刷させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記領域が、印刷処理の状況に対応づけされた少なくとも1つのフォルダを有し、
前記制御手段は、前記印刷対象のファイルを、当該ファイルに対する印刷処理の状況に応じたフォルダに移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記領域が、印刷処理を中止させる指示に対応づけされたファイルを有し、
前記制御手段は、前記検知手段により、前記ファイルの削除が検知された場合、前記印刷対象のファイルの印刷処理を中止させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ファイルが、印刷処理を直ちに中止させる指示に対応づけされたファイルと、次の印刷処理を中止させる指示に対応づけされたファイルとを含み、
前記制御手段は、前記検知手段により削除が検知されたファイルに対応づけされた指示に応じて前記印刷対象のファイルの印刷処理を中止させることを特徴とする請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記領域が、前記ファイルを削除するコマンドファイルをさらに有することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
外部装置と接続するための接続手段と、
前記接続手段を介して接続された外部装置が参照可能な領域を有する記憶手段と、
印刷設定に従って印刷対象のファイルを印刷する印刷手段とを有する印刷装置の制御方法であって、
前記接続された外部装置から、前記領域へのファイルの書き込みがあった場合、前記書き込みされたファイルを、前記印刷対象のファイルとして前記印刷手段に印刷させる制御工程とを有することを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−69681(P2010−69681A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238387(P2008−238387)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】