印刷装置及び印刷システム
【課題】インク付着量に応じた印刷方式で両面印刷を行う。
【解決手段】印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【解決手段】印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置によって両面印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置における両面印刷の方式として、シートの一方の面に印刷した後、そのシートを反転させて他方の面に印刷する動作をシートごとに繰り返すものがよく知られている。この方式では、2ページ目を印刷した後に1ページ目の印刷を行う(以下、21方式という)。
【0003】
また、別の方式として、例えば、1枚目のシートに2ページ目を印刷した後、2枚目に4ページ目、1枚目に1ページ目、2枚目に3ページ目を順に印刷する動作を繰り返す方式(以下、2413方式という)などが知られている。
【0004】
従来、例えば2413方式を実行可能な印刷装置では、21方式よりも2413方式の方が処理速度が早いことから印刷内容に関係なく常に2413方式による両面印刷を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−284818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2413方式などで両面印刷を行う際に、特にインクの付着量が多いページは、シートが排出されるまでにインクが十分に乾燥せず、そのため、対面するシートにインクが付着するおそれがあった。これを回避するために、例えば、シートの搬送速度を遅らせることなどにより、インクの乾燥時間を確保する方法が考えられるものの、印刷処理に要する時間が増加するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ページ毎のインク付着量に応じた印刷方式で両面印刷を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される印刷装置は、複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを受け付ける受付部と、シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、を備える印刷装置。
【0009】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記複数ページに含まれる連続するページについて、前記複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する構成としても良い。
【0010】
また、上記印刷装置は、印刷後に排出される前記シートを積載する積載部と、前記積載部に前記シートが排出されたときに対面する一対のページの前記インク付着量に基づいて、当該対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間 を決定する時間決定部と、前記対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔を前記確保時間以上になるように調整する調整部と、を備え、前記手順決定部は、前記調整部により調整される時間間隔に基づき前記処理時間を求める構成としてもよい。
【0011】
また、上記印刷装置は、前記取得部が、前記対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのうち最大の前記インク付着量を求め、前記時間決定部は、前記最大のインク付着量が大きい程、前記確保時間を大きくする構成としてもよい。
【0012】
また、上記印刷装置は、前記複数ページに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、前記複数の印刷手順のうち前記処理時間が最小になる印刷手順に従って、前記解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、前記解析範囲を後のページに変更してから前記解析処理を繰り返して実行する構成としてもよい。
【0013】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記複数ページに含まれる連続するページを全て解析範囲とし、前記解析範囲のページ複数ページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順で前記印刷ジョブを実行した場合の処理時間を求める、前記処理時間が最小になる印刷手順を前記複数ページの印刷手順として決定する構成としてもよい。
【0014】
また、上記印刷装置は、前記印刷部が、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、複数枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記複数ページの印刷手順を決定する構成としてもよい。
【0015】
また、上記印刷装置は、前記印刷部が、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、2枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記印刷手順を決定し、前記所定数が8以上の4の倍数である構成としてもよい。
【0016】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記解析処理において、前記解析範囲のページに対し前記第2方式を繰り返し実行する第1手順と、先に前記第1方式を実行し、続けて前記第2方式を1回以上実行し、最後に前記第1方式を実行する第2手順とのそれぞれの処理時間を求め、前記第1手順及び前記第2手順のうち前記第1手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の4ページの印刷方式として前記第2方式を選択し、前記第2手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の2ページの印刷方式として前記第1方式を選択する構成としてもよい。
【0017】
なお、この発明は、印刷装置、印刷システム、印刷装置の制御方法、これらの装置、システムの機能または方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1におけるプリンタ及び端末装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】21方式を実行するときのプリンタの内部構造を示す概略図
【図3】2413方式を実行するときのプリンタの内部構造を示す概略図
【図4】印刷手順決定処理のフローチャート
【図5】残ページ手順決定処理のフローチャート
【図6】排出されたシートのページの並び順を示す説明図
【図7】1ページの画像をn個の領域に区分した状態を示す説明図
【図8】解析範囲を第1パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表
【図9】4種類の基本間隔を示す説明図
【図10】図8の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図11】解析範囲を第2パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表
【図12】図11の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図13】印刷ジョブを2413方式を先頭から連続して実行したと仮定した場合の解析結果の例を示す表
【図14】図13の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図15】印刷手順決定処理によって解析した結果の例を示す表
【図16】図14の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図16を参照して説明する。
【0021】
(プリンタ及び端末装置の構成)
図1は、プリンタ10及び端末装置50の電気的構成を概略的に示すブロック図である。本プリンタ10は、インクを用いてシート40の両面に印刷する機能を有する、例えばインクジェット方式の印刷装置である。プリンタ10は、特定用途向け集積回路(ASIC)などにより構成される制御部11を備えており、制御部11は、CPU12、ROM13、RAM14、NVRAM(不揮発性メモリ)15などを有している。
【0022】
ROM13は、後述する印刷手順決定処理など、プリンタ10の各種動作を実行するための制御プログラムを記憶しており、CPU12(手順決定部、取得部、実行部、時間決定部、調整部の一例)は、ROM13から読み出したプログラムに従って、各部の制御を行う。RAM14は、CPU12の作業領域として用いられる揮発性のメモリであり、NVRAM15は、各種設定値等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0023】
プリンタ10は、さらに、ネットワークインターフェース17、印刷部18、搬送部19、操作部20、及び表示部21を備えている。ネットワークインターフェース17(受付部の一例)は、例えばLANなどの通信回線30に接続され、その通信回線30上に接続された端末装置50等との間で通信を行う。
【0024】
印刷部18は、端末装置50等から受信した印刷ジョブに基づいて、複数色のインクを用いて用紙などのシート40上に画像を印刷する。搬送部19は、後述するように、シート40を印刷部18等に搬送する。操作部20は、複数のボタンを備え、ユーザによる各種の指示の入力を受け付ける。表示部21は、ディスプレイやランプ等を備え、各種のメッセージや設定画面等を表示する。
【0025】
端末装置50は、CPU51、ROM52、RAM53、HDD(ハードディスクドライブ)54、ネットワークインターフェース56、操作部57、表示部58を備えている。
【0026】
ROM52には、BIOS等のプログラムが記憶されている。HDD54には、OSや、プリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されている。CPU51は、ROM52及びHDD54から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM53やHDD54に記憶させながら、端末装置50の動作を制御する。
【0027】
ネットワークインターフェース56は、既述の通信回線30に接続されている。操作部57は、キーボードやポインティングデバイスを備えており、ユーザが操作部57を用いてCPU51に対する各種の指示を入力することができる。表示部58は、ディスプレイを備え、CPU51の制御により様々な映像を表示する。
【0028】
ユーザが操作部57から画像データの印刷指示を入力すると、CPU51は、プリンタドライバを呼び出して印刷ジョブを生成し、ネットワークインターフェース56を介してプリンタ10に送信する。
【0029】
(プリンタの内部構造)
図2は、プリンタ10の内部構造を示す概略図である。同図に示すように、プリンタ10は、印刷前の複数のシート40を積載する供給トレイ24、印刷済みのシート40を積載する排出トレイ25(積載部の一例)、既述の印刷部18、及び搬送部19を備えている。搬送部19は、ピックアップローラ26、複数の搬送ローラ27、排出ローラ28、フラッパ29等を有している。また、プリンタ10内には、供給トレイ24から印刷部18を経由して排出ローラ28に至る第1搬送路P1と、排出ローラ28から第1搬送路P1とは別の経路で印刷部18の上流側に至る第2搬送路P2とが設けられている。
【0030】
両面印刷時には、まずピックアップローラ26により供給トレイ24に積載されるシート40が第1搬送路P1に送り出され、印刷部18によってそのシート40の上面に画像が印刷された後、そのシート40が一旦排出ローラ28まで搬送される。そして、フラッパ29によりシート40の搬送経路が切り替えられた後、排出ローラ28が逆回転し、その片面印刷済みのシート40が後端側から第2搬送路P2に送られる。そしてシート40は、反転された状態で再び印刷部18に送られ、そこでもう一方の面に画像が印刷され、その後、排出ローラ28によって排出トレイ25上に排出される。
【0031】
(印刷手順決定処理)
次に両面印刷時の印刷手順を決定する印刷手順決定処理の動作について説明する。
【0032】
本プリンタ10は、両面印刷を行う際に、印刷順序の異なる複数種類の印刷方式の中から選択した印刷方式を実行する。印刷手順決定処理では、印刷ジョブの各ページについていずれの印刷方式で印刷するかを印刷手順として決定する。この印刷手順は、各ページの印刷順序を定めるものでもある。
【0033】
本プリンタ10は、印刷方式として21方式(第1方式の一例)と2413方式(第2方式の一例)との2種類を実行する。既述の図2は、21方式で印刷する途中のシート40の状態を示している。また、図3は、図2と同じくプリンタ10の内部構造を示す概略図であって、2413方式で印刷する途中のシート40の状態を示している。なお、図2及び図3において、シート40の上下に付した番号は、それぞれシート40の上面、下面に印刷された画像のページ番号を示す。
【0034】
21方式では、1枚目のシート40に2ページ目を印刷した後、そのシート40を反転させて1ページ目を印刷する(図2参照)。また、2413方式では、1枚目のシート40に2ページ目を印刷した後、2枚目に4ページ目、1枚目に1ページ目、2枚目に3ページ目を順に印刷する(図3参照)。2413方式では、1枚目のシート40を反転させる間に2枚目のシート40の印刷を行うため、21方式に比べてシート1枚あたりの処理速度が速い。
【0035】
本プリンタ10は、両面印刷の際に、原則として、21方式については、シート40一枚分を1単位として実行し、2413方式については、シート40二枚分を1単位として実行する。言い換えれば、21方式は1回の実行で連続する2ページ分を印刷し、2413方式は1回の実行で連続する4ページ分を印刷する。
【0036】
印刷手順決定処理では、印刷部18によって印刷ジョブの全ページが印刷されるまで、これら2つの方式のいずれかを順次選択的に実行させるための印刷手順を決定する。印刷手順を決定するために、印刷手順決定処理では、印刷ジョブに含まれる所定数(本例では8)の連続するページを解析範囲とし、その解析範囲のページについて、後述する解析処理を行い、その結果に基づいて解析範囲の少なくとも一部のページの印刷方式を決定する。
【0037】
CPU12は、ネットワークインターフェース17を介して両面印刷の印刷ジョブを受け付けると、印刷手順決定処理によって印刷手順を決定し、決定された印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。
【0038】
図4及び図5は、印刷手順決定処理のフローチャートである。
CPU12は、図4に示す印刷手順決定処理を開始すると、まず解析範囲の最初のページ番号である解析開始ページSを1、即ち印刷ジョブの第1ページに設定する(S101)。そして、解析開始ページSに4を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブにおける解析開始ページS以降のページ数が4より大きいかを判断する(S102)。印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4以下である場合(S102:NO)には、後述する残ページ手順決定処理を行う(S103)。
【0039】
また、CPU12は、解析開始ページSに4を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下である場合(S102:YES)、即ち、解析開始ページS以降のページ数が5以上である場合には、さらに解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8より大きいかを判断する(S104)。
【0040】
そしてCPU12は、解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下である場合(S104:YES)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8より大きい場合には、解析開始ページSに7を加えたページを解析範囲の最後のページ番号である解析最終ページEとする(S105)。これにより、印刷ジョブに含まれるページのうち解析開始ページSから解析最終ページEまでの連続する8ページが解析範囲に設定される。
【0041】
また、CPU12は、解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページLより大きい場合(S104:NO)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8に満たない場合には、印刷ジョブの最終ページLを解析最終ページEとする(S106)。この場合には、解析範囲のページ数が5から7のいずれかになる。
【0042】
ここで、図6は、排出トレイ25に排出されたシート40のページの並び順を示す説明図である。同図において、シート40の上下に付した番号は、それぞれシート40の上面、下面に印刷された画像のページ番号を示す。排出トレイ25上には、ページ番号の小さい方が下になるように複数のシート40が順番に積み重ねられている。
【0043】
複数のシート40が排出されたときに、対面する一対のページのうち一方に付着するインクが十分に乾燥していない場合には、そのインクが対面するページに移る可能性がある。例えば、2枚目のシート40が排出されたときに、1枚目のシート40の第2ページ、または、2枚目のシート40の第3ページのインクが十分に乾燥していない場合には、そのインクが対面するシート40に移る。
【0044】
そこで、本プリンタ10では、以下に示す解析処理(S107〜S114)によって、対面する各ページのインク付着量を求め、求めたインク付着量に応じて乾燥のために確保する時間、即ち、先のシート40のページの印刷完了後、後のシート40が排出トレイ25に排出されるまでに確保する確保時間を決定する。
【0045】
CPU12は、まず印刷ジョブに基づいて解析開始ページSから解析最終ページEまでの各ページのインク付着量を取得する(S107)。ここで、CPU12は、図7に示すように、解析範囲の各ページに印刷される画像をそれぞれn個のエリアAに等分し、各エリアAの印刷ドット数を求める。なお、印刷ドット数とは、例えば、カラーのインクジェットプリンタにおいて、各色のインクジェットヘッドから上記エリアAにインクが吐出されるドット数の合計である。
【0046】
そして、各ページのエリアAのうち最大の印刷ドット数をそのページのインク付着量とする。例えば、各エリアAの印刷ドット数が1番目のエリアAから順に「32,48,120,19,…」であって、そのうち最大の印刷ドット数が「120」であるとすると、その「120」をインク付着量とする。
【0047】
なお、インク付着量を取得する際には、1ページの画像全体の印刷ドット数をインク付着量としてもよい。しかしながら、上述のように、エリアA毎の印刷ドット数をインク付着量とすることで、それぞれのページの乾燥に必要な時間をより精度良く求めることができる。
【0048】
続いてCPU12は、インク付着量に基づいて解析範囲の各ページの乾燥のために必要な乾燥時間を求め、対面するページの乾燥時間から両ページ間の確保時間を決定する(S108)。詳細には、S107で取得される印刷ドット数に相当する量のインクが上記エリアAに使用されたときに、そのインクが十分に乾燥するまでの時間を求めるためのデータがROM13等に記憶されており、CPU12は、上記データに基づいて各ページの乾燥時間を求める。
【0049】
図8の表には、印刷ジョブの第1ページ〜第8ページを解析範囲として、各ページのインク付着量に基づいて求めた乾燥時間の例が示されている。乾燥時間は、インク付着量が大きいほど大きくなる。なお、周囲の温度や湿度を検知し、検知した値に応じて乾燥時間を変更してもよい。
【0050】
そして、CPU12は、解析範囲の対面する一対のページの乾燥時間のうち長い方を両ページ間の確保時間として決定する。例えば、図8に示すように、第2ページの乾燥時間が1sec、第3ページの乾燥時間が8secである場合には、8secを両ページ間の確保時間とする。なお、印刷ジョブの第1ページについては、対面するページが存在しないため、確保時間を求めない。また、解析範囲の最後のページについては、対面するページが解析範囲にないため、現時点では確保時間を求めない。
【0051】
次にCPU12は、解析範囲のページをできるだけ2413方式で印刷する第1パターン(第1手順の一例)と、最初の2ページを21方式で印刷する第2パターン(第2手順の一例)とのそれぞれの印刷手順で印刷ジョブを実行した場合の処理時間を算出する(S109)。
【0052】
解析範囲のページ数が7または8である場合には、第1パターンは、2413方式を2回連続して実行し、第2パターンは、最初の2ページを21方式、次の4ページを2413方式、最後の2ページを21方式で印刷する。解析範囲が第1ページ〜第8ページであるとすると、第1パターンは「2,4,1,3,6,8,5,7」の印刷順序になり、第2パターンは「2,1,4,6,3,5,8,7」の印刷順序になる。なお、解析範囲のページ数が5または6の場合には、第1パターンは、先に2413方式1回、次に21方式1回の実行になり、第2パターンは、先に21方式1回、次に2413方式1回の実行になる。
【0053】
上記2つのパターンをそれぞれ最高速度で(確保時間を設けずに)実行した場合に、対面する一対のページのうち先のページが印刷されてから後のページが排出されるまでの時間間隔は、それらのページがどの印刷方式で印刷されるか、言い換えれば、どのような印刷順序で印刷されるかによって定まる。上記時間間隔をここでは基本間隔という。
【0054】
図9は、4種類の基本間隔を示す説明図であり、右側の数字がページの印刷される順序を示している。また、丸で囲まれた数字はシート40が対面するページの印刷順序を示している。同図に示すように、基本間隔は、以下のタイプ(A)〜(D)のいずれかになる。
タイプ(A):2413方式を行う場合に2ページ目を印刷完了してから3ページ目を排出するまでの時間
タイプ(B):2413方式を2回続けて行う場合に、1回目の4ページ目を印刷してから2回目の1ページ目を排出するまでの時間
タイプ(C):21方式を行った後、2413方式を行う場合に、21方式の2ページ目の印刷完了後、2413方式の1ページ目を排出するまでの時間
タイプ(D):2413方式を行った後に21方式を行う場合に、2413方式の4ページ目の印刷完了後、21方式の1ページ目を排出するまでの時間
【0055】
基本間隔は、タイプ(A)では、対面するページ間に別の2ページ分を印刷するのに対し、タイプ(C),(D)では、対面するページ間に別の3ページ分を印刷し、タイプ(B)では、対面するページ間に別の4ページ分の印刷を行うことになるため、通常は、後者のタイプほど時間が長くなる。本実施形態では、タイプ(A)を4sec、タイプ(B)を6sec、タイプ(C)とタイプ(D)を5secとする。ROM13等には、これらの基本間隔を予め計測したデータが記憶されており、CPU12は、そのデータを読み出して基本間隔を求める。
【0056】
既述の図8は、解析範囲を第1パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表である。同図に示すように、第1〜第8ページを第1パターンで印刷する場合に、2413方式で印刷される第2ページと第3ページとの基本間隔は、タイプ(A)であるから4secである。これに対し、先に求めた第2ページと第3ページの確保時間は8secである。即ち、両ページ間を基本間隔のままで印刷した場合には、乾燥時間が十分に確保されない。
【0057】
そこで、そのような場合にCPU12は、対面するページの時間間隔が確保時間以上になるように、前のページが印刷されてから後のページが排出されるまでの時間を遅延させる遅延時間を設定する。印刷ジョブの実行時には、遅延時間が設定された箇所で、例えば、搬送部19によって後のシート40の搬送速度を通常よりも遅くしたり、あるいは、後のシート40を搬送路P1,P2上で待機させたりすることで、後のシート40の排出を遅延時間分だけ遅らせる。図8の例では、第2ページ及び第3ページの確保時間と基本間隔との差が4secであるため、遅延時間を4secとしている。
【0058】
図10は、図8の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。同図では、1回目の2413方式において、第1ページが印刷されてから第3ページが排出されるまでに4secの遅延時間を設けられ、それにより第2ページと第3ページとの時間間隔が8secになることが示されている。
【0059】
また、図8及び図10において、第4ページと第5ページとの間、即ち1回目の2413方式の4ページ目と2回目の2413方式の1ページ目との間は、確保時間が4secであるのに対し、基本間隔はタイプ(B)であるから6secになる。第4ページ及び第5ページの時間間隔は、基本間隔6secに第2、第3ページ間の遅延時間4secを加えて少なくとも10secとなる。従って、この場合には遅延時間を加えなくても確保時間以上になるため、両ページ間の遅延時間を0secとする。
【0060】
同様に、第6ページと第7ページとの間は、確保時間が7secで基本間隔がタイプ(A)の4secであるから、差し引き3secの遅延時間を設ける。このように、図8及び図10の例では、遅延時間の合計が4+3で7secになる。即ち、印刷ジョブの第1〜第8ページを2413方式2回で確保時間を設けて印刷する場合には、確保時間を設けずに印刷する場合に比べて7sec分処理時間が増えることになる。
【0061】
図11は、解析範囲を第2パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表であり、図12は、図11の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。
【0062】
なお、この解析処理では、解析範囲のページの印刷を2413方式の連続で行った場合の処理時間を基準として処理時間を比較する。21方式は、2413方式に比べてシート1枚当たりの処理速度が遅いことから、21方式の2ページ目を印刷してから1ページ目が排出されるまでの間に最小で1secの遅延時間を設けるものとして解析を行う。
【0063】
図11及び図12において、第2ページと第3ページとの間、即ち21方式の2ページ目と2413方式の1ページ目との間は、確保時間が8secであるのに対し、基本間隔はタイプ(C)の5secになる。そこで、確保時間と基本間隔との差3secから、21方式による遅延時間1secを差し引いて、2secを遅延時間とする。
【0064】
同様に、第4ページと第5ページとの時間間隔は、確保時間が4secであるのに対し、基本間隔はタイプ(A)の4secであり、それに第2、第3ページ間の遅延時間2secを加えて少なくとも6secとなるため、遅延時間を0secとする。
また、第7ページと第8ページとの時間間隔は、確保時間が7secであるのに対し、基本間隔はタイプ(D)の5secであり、それに第2、第3ページ間の遅延時間2secと21方式による遅延時間1secとを加えて8secとなるため、遅延時間は21方式による1secとなる。
【0065】
以上から図11,図12の例では、遅延時間の合計が4secになる。即ち、印刷ジョブの第1〜第8ページを第2パターンで印刷するときの処理時間は、2413方式2回で確保時間を設けずに印刷する場合に比べて4sec分増えることになる。
【0066】
次にCPU12は、上述のようにして求めた第1パターンの処理時間と第2パターンの処理時間とのうち、第1パターンの処理時間の方が短いかを判断する(S110)。第1パターンの処理時間の方が短い場合(S110:YES)には、解析範囲の最初の4ページ分(Sページ目〜S+3ページ目)の印刷方式を2413方式に決定する(S111)。そして、解析開始ページSに4を加えることによって、解析範囲を4ページ分後のページに移す(S112)。
【0067】
即ち、この場合、解析範囲の最初の2ページを21方式で印刷するよりも最初の4ページを2413方式で印刷する方が処理時間が短くなる、若しくは短くなる可能性が高いと判断している。解析範囲の残りのページについては、後続のページのインク付着量によって、処理時間の短い印刷方式が変わる可能性があることから、印刷方式の決定を次回の解析処理(S107〜S114)まで保留する。
【0068】
また、CPU12は、第1パターンの処理時間と第2パターンの処理時間とが同じか、または第2パターンの処理時間の方が短いと判断した場合(S110:NO)には、解析範囲の最初の2ページS,S+1の印刷方式を21方式、次の4ページS+2〜S+5の印刷方式を2413方式に決定する(S113)。そして、解析開始ページSに6を加えることによって、解析範囲を6ページ分後のページに移す(S114)。
【0069】
即ち、この場合、解析範囲の最初の4ページを2413方式で印刷するよりも最初の2ページを21方式で印刷する方が処理時間が短くなる、若しくは短くなる可能性が高いと判断している。なお、本実施形態において、21方式を2回連続して実行した場合には、2413方式を1回行う場合より処理時間が短くなることはないため、21方式を行った後は常に次の印刷方式を2413方式としている。また、解析範囲の残りのページについては、既述の理由で印刷方式の決定を次回の解析処理まで保留する。
【0070】
続いてCPU12は、解析開始ページSが印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷方式が未決定のページが存在するかを判断する(S115)。SがLより大きい場合、即ち印刷方式が未決定のページが存在しない場合(S115:NO)には、この印刷手順決定処理を終了する。また、SがL以下である場合(S115:YES)には、S102に戻る。
【0071】
CPU12は、S102において、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4より大きい場合(S102:YES)には、既述のように、解析最終ページEを定め(S105またはS106)、その後、解析処理(S107〜S114)を繰り返す。
【0072】
例えば、1回目の解析処理によって印刷ジョブの第1〜第6ページの印刷手順が21方式1回と2413方式1回に決定した場合には、続く第7ページから第14ページまでを解析範囲として2回目の解析処理を行う。なお、2回目以降の解析処理では、先にインク付着量を取得し、確保時間を決定したページについては、先に取得した値を用いることで重複する処理を省略することができる。
【0073】
その後、CPU12は、既述の要領で、第7〜第14ページを2413方式を先に行う第1パターンで印刷する場合の処理時間と、21方式を先に実行する第2パターンで印刷する場合の処理時間とを求め、その結果に基づいて解析範囲の一部のページの印刷方式を決定する。
【0074】
また、CPU12は、S102において、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4以下である場合(S102:NO)には、図5の残ページ手順決定処理を行う(S103)。
【0075】
CPU12は、残ページ手順決定処理において、まず解析開始ページSに2を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が2より大きいかを判断する(S201)。そして、S+2がL以下でない場合(S201:NO)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が1または2の場合には、それらのページの印刷方式を21方式に決定する(S202)。なお、この場合、各ページのインク付着量及び確保時間については、先に求めた値を用いる。
【0076】
また、CPU12は、S+2がL以下の場合(S201:YES)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が3または4の場合には、解析開始ページSから最終ページLまでのインク付着量を取得し(S203)、求めたインク付着量に基づいて対面するページ間の確保時間を決定する(S204)。なお、この場合も、先に求めたインク付着量及び確保時間については、その値を用いることができる。そして、各ページS〜Lの印刷方式を2413方式に決定する(S206)。こうして、CPU12は、残ページ手順決定処理を抜け、印刷手順決定処理を終了する。
【0077】
CPU12は、印刷手順決定処理を終了した後、決定された印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。なお、印刷手順決定処理によって印刷ジョブの一部のページについて印刷手順が決定された時点で印刷動作を開始し、その後、印刷手順決定処理に並行して印刷動作を行うようにしてもよい。
【0078】
図13は、ページ数18の印刷ジョブを2413方式を先頭から連続して実行したと仮定した場合の解析結果の例を示す表であり、図14は、図13の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。この例では、先頭から2413方式が複数回繰り返され、最後の2ページのみ21方式で印刷している。両図に示すように、17secの遅延時間が生じている。
【0079】
また、図15は、図13,14と同じ印刷ジョブを、上記印刷手順決定処理によって解析した結果の例を示す表であり、図16は、図14の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。この例では、最初に21方式を1回実行し、その後は2413方式が複数回繰り返し実行されている。図15,16の例では、遅延時間は11secであり、図13,14の例と比較すると、各ページの印刷方式または印刷順序を変えることにより、処理時間が短縮されていることが分かる。
【0080】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【0081】
また、印刷ジョブに含まれる連続する複数のページについて、複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する。これにより、インクの付着量に加えて処理時間の速い印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【0082】
また、シートが排出されたときに対面する一対のページのインク付着量に基づいて、先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間を決定し、印刷ジョブの実行時に対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔が上記確保時間以上になるように調整する。そして、印刷手順を決定する際には、調整される時間間隔に基づいて処理時間を求める。
【0083】
これにより、インク付着量に応じて対面するページの時間間隔が確保されるため、インクの乾燥時間を確保することができ、なおかつ、処理時間の速い印刷手順で印刷することができる。
【0084】
また、対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアAに分割し、それらのエリアAのうち最大のインク付着量を求め、求めた最大のインク付着量が大きい程、確保時間を大きくする。これにより、それぞれのページの乾燥に必要な時間をより精度良く求めることができ、対面するページのうち先のページが印刷されてから後のページが排出されるまでに、より適度な時間を確保することができる。
【0085】
また、印刷ジョブに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順(第1パターンと第2パターン)について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、複数の印刷手順のうち処理時間が最小になる印刷手順に従って、解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、解析範囲を後のページに変更してから解析処理を繰り返して実行する。これにより、処理時間を抑制することができる。また、全てのページを一度に解析しなくても印刷手順を決定することができる。
【0086】
また、印刷部が、1枚のシート40に対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う21方式と、複数枚のシート40に対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う2413方式とを実行可能であって、21方式及び2413方式から印刷方式を選択して複数ページの印刷手順を決定する。
【0087】
また、解析範囲を8以上の4の倍数とすると、解析範囲のページ数が第1方式と第2方式との公倍数となるため、解析が容易である。
【0088】
また、解析処理において、解析範囲のページに対し2413方式を繰り返し実行する第1パターンと、先に21方式を実行し、続けて2413方式を1回以上実行し、最後に21方式を実行する第2パターンとのそれぞれの処理時間を求め、両パターンのうち第1パターンの処理時間の方が小さい場合には、解析範囲の最初の4ページの印刷方式として2413方式を選択し、第2パターンの処理時間の方が小さい場合には、解析範囲の最初の2ページの印刷方式として21方式を選択する。これにより、処理時間の短い印刷方式を効率良く求めることができる。
【0089】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
(1)上記実施形態では、本発明をプリンタ10単体で実行するものを示したが、本発明は、例えば、以下のように、図1のプリンタ10と端末装置50とを備えた印刷システムにも適用することができる。
【0091】
ユーザによって端末装置50の操作部57から印刷指示が入力されたときに、CPU51(生成部、取得部、手順決定部の一例)がプリンタドライバによって印刷ジョブを生成するとともに、プリンタドライバまたはその他のプログラムによって既述の印刷手順決定処理に相当する処理を実行する。そして、CPU51は、生成された印刷ジョブと、印刷手順決定処理によって決定された印刷手順や遅延時間等の設定とをネットワークインターフェース56(送信部の一例)を介してプリンタ10に送信する。プリンタ10のCPU12(実行部の一例)は、ネットワークインターフェース17(受信部の一例)を介して受信した印刷手順等の設定に従って印刷ジョブを実行する。
【0092】
(2)上記実施形態では、本発明を端末装置50からプリンタ10に印刷ジョブを送信する場合に適用した例を示したが、本発明は、例えば、原稿読取装置によって原稿を読み取ったデータをコピーする印刷ジョブや、FAX通信部によって受信したファクシミリデータを印刷する印刷ジョブ、あるいは、USB等により接続された記憶媒体もしくは内蔵の記憶媒体に記憶されたデータを印刷する印刷ジョブなどを実行する印刷装置にも適用することができる。
【0093】
(3)上記実施形態では、印刷方式を21方式と2413方式との2種類から選択するものを示したが、本発明は、これらに限らず他の印刷方式を選択し実行する印刷装置にも適用することができる。例えば、1枚のシート40の表裏に印刷する間に他のシート40へ最大2ページ分の印刷を行うことで「2,4,6,1,3,5」のページ順で印刷する246135方式などがある。
【0094】
上記実施形態では、1回の解析処理で2種類の印刷手順の処理時間を比較するものを示したが、3種類以上の印刷手順を比較してもよい。例えば、解析範囲を12ページとする場合に、21方式、2413方式、246135方式を1回ずつ実行する場合の処理時間、246135方式を2回繰り返す場合の処理時間、21方式、2413方式、21方式、2413方式を順に1回ずつ実行する場合の処理時間など多種類の印刷手順の処理時間を求め、それらから処理時間が短い印刷手順を選択するようにしてもよい。
【0095】
また、解析処理では、全ての印刷手順の可能性を調べてもよく、一部の印刷手順の可能性のみを調べてもよい。また、処理時間が最小になるものを選択することが望ましいが、必ずしも最小でなくとも処理時間が比較的短くなるものを選択すればよい。
【0096】
(4)上記実施形態では、解析範囲のページ数を8とした例を示したが、解析範囲のページ数は、例えば、9ページ、10ページなど適宜変更することができる。また、印刷ジョブの全てのページを解析範囲として解析処理を行ってもよい。
【0097】
(5)上記実施形態では、印刷ジョブ毎に印刷手順を決定するものを示したが、本発明によれば、連続して実行される複数の両面印刷の印刷ジョブを1つの印刷ジョブとみなして上記実施形態と同様に印刷手順を決定しても良い。この場合、例えば、2413方式を1回実行したときに、先の印刷ジョブの最終ページと後の印刷ジョブの先頭ページを印刷する場合があってもよい。
【0098】
(6)上記実施形態では、手順決定部、取得部、実行部、時間決定部、調整部、または、
生成部、取得部、手順決定部を同じCPU(12または51)によって実現する例を示したが、本発明によれば、これらの機能は、互いに別のCPUや別の回路によって構成することができる。
【符号の説明】
【0099】
10…プリンタ、12…CPU、17…ネットワークインターフェース、18…印刷部、25…排出トレイ、40…シート、50…端末装置、51…CPU、56…ネットワークインターフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置によって両面印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置における両面印刷の方式として、シートの一方の面に印刷した後、そのシートを反転させて他方の面に印刷する動作をシートごとに繰り返すものがよく知られている。この方式では、2ページ目を印刷した後に1ページ目の印刷を行う(以下、21方式という)。
【0003】
また、別の方式として、例えば、1枚目のシートに2ページ目を印刷した後、2枚目に4ページ目、1枚目に1ページ目、2枚目に3ページ目を順に印刷する動作を繰り返す方式(以下、2413方式という)などが知られている。
【0004】
従来、例えば2413方式を実行可能な印刷装置では、21方式よりも2413方式の方が処理速度が早いことから印刷内容に関係なく常に2413方式による両面印刷を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−284818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2413方式などで両面印刷を行う際に、特にインクの付着量が多いページは、シートが排出されるまでにインクが十分に乾燥せず、そのため、対面するシートにインクが付着するおそれがあった。これを回避するために、例えば、シートの搬送速度を遅らせることなどにより、インクの乾燥時間を確保する方法が考えられるものの、印刷処理に要する時間が増加するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ページ毎のインク付着量に応じた印刷方式で両面印刷を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される印刷装置は、複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを受け付ける受付部と、シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、を備える印刷装置。
【0009】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記複数ページに含まれる連続するページについて、前記複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する構成としても良い。
【0010】
また、上記印刷装置は、印刷後に排出される前記シートを積載する積載部と、前記積載部に前記シートが排出されたときに対面する一対のページの前記インク付着量に基づいて、当該対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間 を決定する時間決定部と、前記対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔を前記確保時間以上になるように調整する調整部と、を備え、前記手順決定部は、前記調整部により調整される時間間隔に基づき前記処理時間を求める構成としてもよい。
【0011】
また、上記印刷装置は、前記取得部が、前記対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのうち最大の前記インク付着量を求め、前記時間決定部は、前記最大のインク付着量が大きい程、前記確保時間を大きくする構成としてもよい。
【0012】
また、上記印刷装置は、前記複数ページに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、前記複数の印刷手順のうち前記処理時間が最小になる印刷手順に従って、前記解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、前記解析範囲を後のページに変更してから前記解析処理を繰り返して実行する構成としてもよい。
【0013】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記複数ページに含まれる連続するページを全て解析範囲とし、前記解析範囲のページ複数ページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順で前記印刷ジョブを実行した場合の処理時間を求める、前記処理時間が最小になる印刷手順を前記複数ページの印刷手順として決定する構成としてもよい。
【0014】
また、上記印刷装置は、前記印刷部が、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、複数枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記複数ページの印刷手順を決定する構成としてもよい。
【0015】
また、上記印刷装置は、前記印刷部が、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、2枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記印刷手順を決定し、前記所定数が8以上の4の倍数である構成としてもよい。
【0016】
また、上記印刷装置は、前記手順決定部が、前記解析処理において、前記解析範囲のページに対し前記第2方式を繰り返し実行する第1手順と、先に前記第1方式を実行し、続けて前記第2方式を1回以上実行し、最後に前記第1方式を実行する第2手順とのそれぞれの処理時間を求め、前記第1手順及び前記第2手順のうち前記第1手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の4ページの印刷方式として前記第2方式を選択し、前記第2手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の2ページの印刷方式として前記第1方式を選択する構成としてもよい。
【0017】
なお、この発明は、印刷装置、印刷システム、印刷装置の制御方法、これらの装置、システムの機能または方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1におけるプリンタ及び端末装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】21方式を実行するときのプリンタの内部構造を示す概略図
【図3】2413方式を実行するときのプリンタの内部構造を示す概略図
【図4】印刷手順決定処理のフローチャート
【図5】残ページ手順決定処理のフローチャート
【図6】排出されたシートのページの並び順を示す説明図
【図7】1ページの画像をn個の領域に区分した状態を示す説明図
【図8】解析範囲を第1パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表
【図9】4種類の基本間隔を示す説明図
【図10】図8の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図11】解析範囲を第2パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表
【図12】図11の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図13】印刷ジョブを2413方式を先頭から連続して実行したと仮定した場合の解析結果の例を示す表
【図14】図13の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【図15】印刷手順決定処理によって解析した結果の例を示す表
【図16】図14の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図16を参照して説明する。
【0021】
(プリンタ及び端末装置の構成)
図1は、プリンタ10及び端末装置50の電気的構成を概略的に示すブロック図である。本プリンタ10は、インクを用いてシート40の両面に印刷する機能を有する、例えばインクジェット方式の印刷装置である。プリンタ10は、特定用途向け集積回路(ASIC)などにより構成される制御部11を備えており、制御部11は、CPU12、ROM13、RAM14、NVRAM(不揮発性メモリ)15などを有している。
【0022】
ROM13は、後述する印刷手順決定処理など、プリンタ10の各種動作を実行するための制御プログラムを記憶しており、CPU12(手順決定部、取得部、実行部、時間決定部、調整部の一例)は、ROM13から読み出したプログラムに従って、各部の制御を行う。RAM14は、CPU12の作業領域として用いられる揮発性のメモリであり、NVRAM15は、各種設定値等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0023】
プリンタ10は、さらに、ネットワークインターフェース17、印刷部18、搬送部19、操作部20、及び表示部21を備えている。ネットワークインターフェース17(受付部の一例)は、例えばLANなどの通信回線30に接続され、その通信回線30上に接続された端末装置50等との間で通信を行う。
【0024】
印刷部18は、端末装置50等から受信した印刷ジョブに基づいて、複数色のインクを用いて用紙などのシート40上に画像を印刷する。搬送部19は、後述するように、シート40を印刷部18等に搬送する。操作部20は、複数のボタンを備え、ユーザによる各種の指示の入力を受け付ける。表示部21は、ディスプレイやランプ等を備え、各種のメッセージや設定画面等を表示する。
【0025】
端末装置50は、CPU51、ROM52、RAM53、HDD(ハードディスクドライブ)54、ネットワークインターフェース56、操作部57、表示部58を備えている。
【0026】
ROM52には、BIOS等のプログラムが記憶されている。HDD54には、OSや、プリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されている。CPU51は、ROM52及びHDD54から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM53やHDD54に記憶させながら、端末装置50の動作を制御する。
【0027】
ネットワークインターフェース56は、既述の通信回線30に接続されている。操作部57は、キーボードやポインティングデバイスを備えており、ユーザが操作部57を用いてCPU51に対する各種の指示を入力することができる。表示部58は、ディスプレイを備え、CPU51の制御により様々な映像を表示する。
【0028】
ユーザが操作部57から画像データの印刷指示を入力すると、CPU51は、プリンタドライバを呼び出して印刷ジョブを生成し、ネットワークインターフェース56を介してプリンタ10に送信する。
【0029】
(プリンタの内部構造)
図2は、プリンタ10の内部構造を示す概略図である。同図に示すように、プリンタ10は、印刷前の複数のシート40を積載する供給トレイ24、印刷済みのシート40を積載する排出トレイ25(積載部の一例)、既述の印刷部18、及び搬送部19を備えている。搬送部19は、ピックアップローラ26、複数の搬送ローラ27、排出ローラ28、フラッパ29等を有している。また、プリンタ10内には、供給トレイ24から印刷部18を経由して排出ローラ28に至る第1搬送路P1と、排出ローラ28から第1搬送路P1とは別の経路で印刷部18の上流側に至る第2搬送路P2とが設けられている。
【0030】
両面印刷時には、まずピックアップローラ26により供給トレイ24に積載されるシート40が第1搬送路P1に送り出され、印刷部18によってそのシート40の上面に画像が印刷された後、そのシート40が一旦排出ローラ28まで搬送される。そして、フラッパ29によりシート40の搬送経路が切り替えられた後、排出ローラ28が逆回転し、その片面印刷済みのシート40が後端側から第2搬送路P2に送られる。そしてシート40は、反転された状態で再び印刷部18に送られ、そこでもう一方の面に画像が印刷され、その後、排出ローラ28によって排出トレイ25上に排出される。
【0031】
(印刷手順決定処理)
次に両面印刷時の印刷手順を決定する印刷手順決定処理の動作について説明する。
【0032】
本プリンタ10は、両面印刷を行う際に、印刷順序の異なる複数種類の印刷方式の中から選択した印刷方式を実行する。印刷手順決定処理では、印刷ジョブの各ページについていずれの印刷方式で印刷するかを印刷手順として決定する。この印刷手順は、各ページの印刷順序を定めるものでもある。
【0033】
本プリンタ10は、印刷方式として21方式(第1方式の一例)と2413方式(第2方式の一例)との2種類を実行する。既述の図2は、21方式で印刷する途中のシート40の状態を示している。また、図3は、図2と同じくプリンタ10の内部構造を示す概略図であって、2413方式で印刷する途中のシート40の状態を示している。なお、図2及び図3において、シート40の上下に付した番号は、それぞれシート40の上面、下面に印刷された画像のページ番号を示す。
【0034】
21方式では、1枚目のシート40に2ページ目を印刷した後、そのシート40を反転させて1ページ目を印刷する(図2参照)。また、2413方式では、1枚目のシート40に2ページ目を印刷した後、2枚目に4ページ目、1枚目に1ページ目、2枚目に3ページ目を順に印刷する(図3参照)。2413方式では、1枚目のシート40を反転させる間に2枚目のシート40の印刷を行うため、21方式に比べてシート1枚あたりの処理速度が速い。
【0035】
本プリンタ10は、両面印刷の際に、原則として、21方式については、シート40一枚分を1単位として実行し、2413方式については、シート40二枚分を1単位として実行する。言い換えれば、21方式は1回の実行で連続する2ページ分を印刷し、2413方式は1回の実行で連続する4ページ分を印刷する。
【0036】
印刷手順決定処理では、印刷部18によって印刷ジョブの全ページが印刷されるまで、これら2つの方式のいずれかを順次選択的に実行させるための印刷手順を決定する。印刷手順を決定するために、印刷手順決定処理では、印刷ジョブに含まれる所定数(本例では8)の連続するページを解析範囲とし、その解析範囲のページについて、後述する解析処理を行い、その結果に基づいて解析範囲の少なくとも一部のページの印刷方式を決定する。
【0037】
CPU12は、ネットワークインターフェース17を介して両面印刷の印刷ジョブを受け付けると、印刷手順決定処理によって印刷手順を決定し、決定された印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。
【0038】
図4及び図5は、印刷手順決定処理のフローチャートである。
CPU12は、図4に示す印刷手順決定処理を開始すると、まず解析範囲の最初のページ番号である解析開始ページSを1、即ち印刷ジョブの第1ページに設定する(S101)。そして、解析開始ページSに4を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブにおける解析開始ページS以降のページ数が4より大きいかを判断する(S102)。印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4以下である場合(S102:NO)には、後述する残ページ手順決定処理を行う(S103)。
【0039】
また、CPU12は、解析開始ページSに4を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下である場合(S102:YES)、即ち、解析開始ページS以降のページ数が5以上である場合には、さらに解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8より大きいかを判断する(S104)。
【0040】
そしてCPU12は、解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下である場合(S104:YES)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8より大きい場合には、解析開始ページSに7を加えたページを解析範囲の最後のページ番号である解析最終ページEとする(S105)。これにより、印刷ジョブに含まれるページのうち解析開始ページSから解析最終ページEまでの連続する8ページが解析範囲に設定される。
【0041】
また、CPU12は、解析開始ページSに8を加えた数が印刷ジョブの最終ページLより大きい場合(S104:NO)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が8に満たない場合には、印刷ジョブの最終ページLを解析最終ページEとする(S106)。この場合には、解析範囲のページ数が5から7のいずれかになる。
【0042】
ここで、図6は、排出トレイ25に排出されたシート40のページの並び順を示す説明図である。同図において、シート40の上下に付した番号は、それぞれシート40の上面、下面に印刷された画像のページ番号を示す。排出トレイ25上には、ページ番号の小さい方が下になるように複数のシート40が順番に積み重ねられている。
【0043】
複数のシート40が排出されたときに、対面する一対のページのうち一方に付着するインクが十分に乾燥していない場合には、そのインクが対面するページに移る可能性がある。例えば、2枚目のシート40が排出されたときに、1枚目のシート40の第2ページ、または、2枚目のシート40の第3ページのインクが十分に乾燥していない場合には、そのインクが対面するシート40に移る。
【0044】
そこで、本プリンタ10では、以下に示す解析処理(S107〜S114)によって、対面する各ページのインク付着量を求め、求めたインク付着量に応じて乾燥のために確保する時間、即ち、先のシート40のページの印刷完了後、後のシート40が排出トレイ25に排出されるまでに確保する確保時間を決定する。
【0045】
CPU12は、まず印刷ジョブに基づいて解析開始ページSから解析最終ページEまでの各ページのインク付着量を取得する(S107)。ここで、CPU12は、図7に示すように、解析範囲の各ページに印刷される画像をそれぞれn個のエリアAに等分し、各エリアAの印刷ドット数を求める。なお、印刷ドット数とは、例えば、カラーのインクジェットプリンタにおいて、各色のインクジェットヘッドから上記エリアAにインクが吐出されるドット数の合計である。
【0046】
そして、各ページのエリアAのうち最大の印刷ドット数をそのページのインク付着量とする。例えば、各エリアAの印刷ドット数が1番目のエリアAから順に「32,48,120,19,…」であって、そのうち最大の印刷ドット数が「120」であるとすると、その「120」をインク付着量とする。
【0047】
なお、インク付着量を取得する際には、1ページの画像全体の印刷ドット数をインク付着量としてもよい。しかしながら、上述のように、エリアA毎の印刷ドット数をインク付着量とすることで、それぞれのページの乾燥に必要な時間をより精度良く求めることができる。
【0048】
続いてCPU12は、インク付着量に基づいて解析範囲の各ページの乾燥のために必要な乾燥時間を求め、対面するページの乾燥時間から両ページ間の確保時間を決定する(S108)。詳細には、S107で取得される印刷ドット数に相当する量のインクが上記エリアAに使用されたときに、そのインクが十分に乾燥するまでの時間を求めるためのデータがROM13等に記憶されており、CPU12は、上記データに基づいて各ページの乾燥時間を求める。
【0049】
図8の表には、印刷ジョブの第1ページ〜第8ページを解析範囲として、各ページのインク付着量に基づいて求めた乾燥時間の例が示されている。乾燥時間は、インク付着量が大きいほど大きくなる。なお、周囲の温度や湿度を検知し、検知した値に応じて乾燥時間を変更してもよい。
【0050】
そして、CPU12は、解析範囲の対面する一対のページの乾燥時間のうち長い方を両ページ間の確保時間として決定する。例えば、図8に示すように、第2ページの乾燥時間が1sec、第3ページの乾燥時間が8secである場合には、8secを両ページ間の確保時間とする。なお、印刷ジョブの第1ページについては、対面するページが存在しないため、確保時間を求めない。また、解析範囲の最後のページについては、対面するページが解析範囲にないため、現時点では確保時間を求めない。
【0051】
次にCPU12は、解析範囲のページをできるだけ2413方式で印刷する第1パターン(第1手順の一例)と、最初の2ページを21方式で印刷する第2パターン(第2手順の一例)とのそれぞれの印刷手順で印刷ジョブを実行した場合の処理時間を算出する(S109)。
【0052】
解析範囲のページ数が7または8である場合には、第1パターンは、2413方式を2回連続して実行し、第2パターンは、最初の2ページを21方式、次の4ページを2413方式、最後の2ページを21方式で印刷する。解析範囲が第1ページ〜第8ページであるとすると、第1パターンは「2,4,1,3,6,8,5,7」の印刷順序になり、第2パターンは「2,1,4,6,3,5,8,7」の印刷順序になる。なお、解析範囲のページ数が5または6の場合には、第1パターンは、先に2413方式1回、次に21方式1回の実行になり、第2パターンは、先に21方式1回、次に2413方式1回の実行になる。
【0053】
上記2つのパターンをそれぞれ最高速度で(確保時間を設けずに)実行した場合に、対面する一対のページのうち先のページが印刷されてから後のページが排出されるまでの時間間隔は、それらのページがどの印刷方式で印刷されるか、言い換えれば、どのような印刷順序で印刷されるかによって定まる。上記時間間隔をここでは基本間隔という。
【0054】
図9は、4種類の基本間隔を示す説明図であり、右側の数字がページの印刷される順序を示している。また、丸で囲まれた数字はシート40が対面するページの印刷順序を示している。同図に示すように、基本間隔は、以下のタイプ(A)〜(D)のいずれかになる。
タイプ(A):2413方式を行う場合に2ページ目を印刷完了してから3ページ目を排出するまでの時間
タイプ(B):2413方式を2回続けて行う場合に、1回目の4ページ目を印刷してから2回目の1ページ目を排出するまでの時間
タイプ(C):21方式を行った後、2413方式を行う場合に、21方式の2ページ目の印刷完了後、2413方式の1ページ目を排出するまでの時間
タイプ(D):2413方式を行った後に21方式を行う場合に、2413方式の4ページ目の印刷完了後、21方式の1ページ目を排出するまでの時間
【0055】
基本間隔は、タイプ(A)では、対面するページ間に別の2ページ分を印刷するのに対し、タイプ(C),(D)では、対面するページ間に別の3ページ分を印刷し、タイプ(B)では、対面するページ間に別の4ページ分の印刷を行うことになるため、通常は、後者のタイプほど時間が長くなる。本実施形態では、タイプ(A)を4sec、タイプ(B)を6sec、タイプ(C)とタイプ(D)を5secとする。ROM13等には、これらの基本間隔を予め計測したデータが記憶されており、CPU12は、そのデータを読み出して基本間隔を求める。
【0056】
既述の図8は、解析範囲を第1パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表である。同図に示すように、第1〜第8ページを第1パターンで印刷する場合に、2413方式で印刷される第2ページと第3ページとの基本間隔は、タイプ(A)であるから4secである。これに対し、先に求めた第2ページと第3ページの確保時間は8secである。即ち、両ページ間を基本間隔のままで印刷した場合には、乾燥時間が十分に確保されない。
【0057】
そこで、そのような場合にCPU12は、対面するページの時間間隔が確保時間以上になるように、前のページが印刷されてから後のページが排出されるまでの時間を遅延させる遅延時間を設定する。印刷ジョブの実行時には、遅延時間が設定された箇所で、例えば、搬送部19によって後のシート40の搬送速度を通常よりも遅くしたり、あるいは、後のシート40を搬送路P1,P2上で待機させたりすることで、後のシート40の排出を遅延時間分だけ遅らせる。図8の例では、第2ページ及び第3ページの確保時間と基本間隔との差が4secであるため、遅延時間を4secとしている。
【0058】
図10は、図8の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。同図では、1回目の2413方式において、第1ページが印刷されてから第3ページが排出されるまでに4secの遅延時間を設けられ、それにより第2ページと第3ページとの時間間隔が8secになることが示されている。
【0059】
また、図8及び図10において、第4ページと第5ページとの間、即ち1回目の2413方式の4ページ目と2回目の2413方式の1ページ目との間は、確保時間が4secであるのに対し、基本間隔はタイプ(B)であるから6secになる。第4ページ及び第5ページの時間間隔は、基本間隔6secに第2、第3ページ間の遅延時間4secを加えて少なくとも10secとなる。従って、この場合には遅延時間を加えなくても確保時間以上になるため、両ページ間の遅延時間を0secとする。
【0060】
同様に、第6ページと第7ページとの間は、確保時間が7secで基本間隔がタイプ(A)の4secであるから、差し引き3secの遅延時間を設ける。このように、図8及び図10の例では、遅延時間の合計が4+3で7secになる。即ち、印刷ジョブの第1〜第8ページを2413方式2回で確保時間を設けて印刷する場合には、確保時間を設けずに印刷する場合に比べて7sec分処理時間が増えることになる。
【0061】
図11は、解析範囲を第2パターンで印刷する場合の解析結果の例を示す表であり、図12は、図11の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。
【0062】
なお、この解析処理では、解析範囲のページの印刷を2413方式の連続で行った場合の処理時間を基準として処理時間を比較する。21方式は、2413方式に比べてシート1枚当たりの処理速度が遅いことから、21方式の2ページ目を印刷してから1ページ目が排出されるまでの間に最小で1secの遅延時間を設けるものとして解析を行う。
【0063】
図11及び図12において、第2ページと第3ページとの間、即ち21方式の2ページ目と2413方式の1ページ目との間は、確保時間が8secであるのに対し、基本間隔はタイプ(C)の5secになる。そこで、確保時間と基本間隔との差3secから、21方式による遅延時間1secを差し引いて、2secを遅延時間とする。
【0064】
同様に、第4ページと第5ページとの時間間隔は、確保時間が4secであるのに対し、基本間隔はタイプ(A)の4secであり、それに第2、第3ページ間の遅延時間2secを加えて少なくとも6secとなるため、遅延時間を0secとする。
また、第7ページと第8ページとの時間間隔は、確保時間が7secであるのに対し、基本間隔はタイプ(D)の5secであり、それに第2、第3ページ間の遅延時間2secと21方式による遅延時間1secとを加えて8secとなるため、遅延時間は21方式による1secとなる。
【0065】
以上から図11,図12の例では、遅延時間の合計が4secになる。即ち、印刷ジョブの第1〜第8ページを第2パターンで印刷するときの処理時間は、2413方式2回で確保時間を設けずに印刷する場合に比べて4sec分増えることになる。
【0066】
次にCPU12は、上述のようにして求めた第1パターンの処理時間と第2パターンの処理時間とのうち、第1パターンの処理時間の方が短いかを判断する(S110)。第1パターンの処理時間の方が短い場合(S110:YES)には、解析範囲の最初の4ページ分(Sページ目〜S+3ページ目)の印刷方式を2413方式に決定する(S111)。そして、解析開始ページSに4を加えることによって、解析範囲を4ページ分後のページに移す(S112)。
【0067】
即ち、この場合、解析範囲の最初の2ページを21方式で印刷するよりも最初の4ページを2413方式で印刷する方が処理時間が短くなる、若しくは短くなる可能性が高いと判断している。解析範囲の残りのページについては、後続のページのインク付着量によって、処理時間の短い印刷方式が変わる可能性があることから、印刷方式の決定を次回の解析処理(S107〜S114)まで保留する。
【0068】
また、CPU12は、第1パターンの処理時間と第2パターンの処理時間とが同じか、または第2パターンの処理時間の方が短いと判断した場合(S110:NO)には、解析範囲の最初の2ページS,S+1の印刷方式を21方式、次の4ページS+2〜S+5の印刷方式を2413方式に決定する(S113)。そして、解析開始ページSに6を加えることによって、解析範囲を6ページ分後のページに移す(S114)。
【0069】
即ち、この場合、解析範囲の最初の4ページを2413方式で印刷するよりも最初の2ページを21方式で印刷する方が処理時間が短くなる、若しくは短くなる可能性が高いと判断している。なお、本実施形態において、21方式を2回連続して実行した場合には、2413方式を1回行う場合より処理時間が短くなることはないため、21方式を行った後は常に次の印刷方式を2413方式としている。また、解析範囲の残りのページについては、既述の理由で印刷方式の決定を次回の解析処理まで保留する。
【0070】
続いてCPU12は、解析開始ページSが印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷方式が未決定のページが存在するかを判断する(S115)。SがLより大きい場合、即ち印刷方式が未決定のページが存在しない場合(S115:NO)には、この印刷手順決定処理を終了する。また、SがL以下である場合(S115:YES)には、S102に戻る。
【0071】
CPU12は、S102において、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4より大きい場合(S102:YES)には、既述のように、解析最終ページEを定め(S105またはS106)、その後、解析処理(S107〜S114)を繰り返す。
【0072】
例えば、1回目の解析処理によって印刷ジョブの第1〜第6ページの印刷手順が21方式1回と2413方式1回に決定した場合には、続く第7ページから第14ページまでを解析範囲として2回目の解析処理を行う。なお、2回目以降の解析処理では、先にインク付着量を取得し、確保時間を決定したページについては、先に取得した値を用いることで重複する処理を省略することができる。
【0073】
その後、CPU12は、既述の要領で、第7〜第14ページを2413方式を先に行う第1パターンで印刷する場合の処理時間と、21方式を先に実行する第2パターンで印刷する場合の処理時間とを求め、その結果に基づいて解析範囲の一部のページの印刷方式を決定する。
【0074】
また、CPU12は、S102において、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が4以下である場合(S102:NO)には、図5の残ページ手順決定処理を行う(S103)。
【0075】
CPU12は、残ページ手順決定処理において、まず解析開始ページSに2を加えた数が印刷ジョブの最終ページL以下か、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が2より大きいかを判断する(S201)。そして、S+2がL以下でない場合(S201:NO)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が1または2の場合には、それらのページの印刷方式を21方式に決定する(S202)。なお、この場合、各ページのインク付着量及び確保時間については、先に求めた値を用いる。
【0076】
また、CPU12は、S+2がL以下の場合(S201:YES)、即ち、印刷ジョブの解析開始ページS以降のページ数が3または4の場合には、解析開始ページSから最終ページLまでのインク付着量を取得し(S203)、求めたインク付着量に基づいて対面するページ間の確保時間を決定する(S204)。なお、この場合も、先に求めたインク付着量及び確保時間については、その値を用いることができる。そして、各ページS〜Lの印刷方式を2413方式に決定する(S206)。こうして、CPU12は、残ページ手順決定処理を抜け、印刷手順決定処理を終了する。
【0077】
CPU12は、印刷手順決定処理を終了した後、決定された印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。なお、印刷手順決定処理によって印刷ジョブの一部のページについて印刷手順が決定された時点で印刷動作を開始し、その後、印刷手順決定処理に並行して印刷動作を行うようにしてもよい。
【0078】
図13は、ページ数18の印刷ジョブを2413方式を先頭から連続して実行したと仮定した場合の解析結果の例を示す表であり、図14は、図13の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。この例では、先頭から2413方式が複数回繰り返され、最後の2ページのみ21方式で印刷している。両図に示すように、17secの遅延時間が生じている。
【0079】
また、図15は、図13,14と同じ印刷ジョブを、上記印刷手順決定処理によって解析した結果の例を示す表であり、図16は、図14の解析結果に従って印刷ジョブを実行した場合の各ページの印刷タイミングを説明する図である。この例では、最初に21方式を1回実行し、その後は2413方式が複数回繰り返し実行されている。図15,16の例では、遅延時間は11secであり、図13,14の例と比較すると、各ページの印刷方式または印刷順序を変えることにより、処理時間が短縮されていることが分かる。
【0080】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、印刷ジョブのページ毎のインク付着量を取得し、両面印刷の印刷方式が異なる複数種類の印刷方式の中から、ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することによって印刷手順を決定し、決定した印刷手順に従って印刷ジョブを実行する。これによって、インク付着量に応じた印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【0081】
また、印刷ジョブに含まれる連続する複数のページについて、複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する。これにより、インクの付着量に加えて処理時間の速い印刷方式を用いて両面印刷を行うことができる。
【0082】
また、シートが排出されたときに対面する一対のページのインク付着量に基づいて、先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間を決定し、印刷ジョブの実行時に対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔が上記確保時間以上になるように調整する。そして、印刷手順を決定する際には、調整される時間間隔に基づいて処理時間を求める。
【0083】
これにより、インク付着量に応じて対面するページの時間間隔が確保されるため、インクの乾燥時間を確保することができ、なおかつ、処理時間の速い印刷手順で印刷することができる。
【0084】
また、対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアAに分割し、それらのエリアAのうち最大のインク付着量を求め、求めた最大のインク付着量が大きい程、確保時間を大きくする。これにより、それぞれのページの乾燥に必要な時間をより精度良く求めることができ、対面するページのうち先のページが印刷されてから後のページが排出されるまでに、より適度な時間を確保することができる。
【0085】
また、印刷ジョブに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順(第1パターンと第2パターン)について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、複数の印刷手順のうち処理時間が最小になる印刷手順に従って、解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、解析範囲を後のページに変更してから解析処理を繰り返して実行する。これにより、処理時間を抑制することができる。また、全てのページを一度に解析しなくても印刷手順を決定することができる。
【0086】
また、印刷部が、1枚のシート40に対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う21方式と、複数枚のシート40に対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う2413方式とを実行可能であって、21方式及び2413方式から印刷方式を選択して複数ページの印刷手順を決定する。
【0087】
また、解析範囲を8以上の4の倍数とすると、解析範囲のページ数が第1方式と第2方式との公倍数となるため、解析が容易である。
【0088】
また、解析処理において、解析範囲のページに対し2413方式を繰り返し実行する第1パターンと、先に21方式を実行し、続けて2413方式を1回以上実行し、最後に21方式を実行する第2パターンとのそれぞれの処理時間を求め、両パターンのうち第1パターンの処理時間の方が小さい場合には、解析範囲の最初の4ページの印刷方式として2413方式を選択し、第2パターンの処理時間の方が小さい場合には、解析範囲の最初の2ページの印刷方式として21方式を選択する。これにより、処理時間の短い印刷方式を効率良く求めることができる。
【0089】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
(1)上記実施形態では、本発明をプリンタ10単体で実行するものを示したが、本発明は、例えば、以下のように、図1のプリンタ10と端末装置50とを備えた印刷システムにも適用することができる。
【0091】
ユーザによって端末装置50の操作部57から印刷指示が入力されたときに、CPU51(生成部、取得部、手順決定部の一例)がプリンタドライバによって印刷ジョブを生成するとともに、プリンタドライバまたはその他のプログラムによって既述の印刷手順決定処理に相当する処理を実行する。そして、CPU51は、生成された印刷ジョブと、印刷手順決定処理によって決定された印刷手順や遅延時間等の設定とをネットワークインターフェース56(送信部の一例)を介してプリンタ10に送信する。プリンタ10のCPU12(実行部の一例)は、ネットワークインターフェース17(受信部の一例)を介して受信した印刷手順等の設定に従って印刷ジョブを実行する。
【0092】
(2)上記実施形態では、本発明を端末装置50からプリンタ10に印刷ジョブを送信する場合に適用した例を示したが、本発明は、例えば、原稿読取装置によって原稿を読み取ったデータをコピーする印刷ジョブや、FAX通信部によって受信したファクシミリデータを印刷する印刷ジョブ、あるいは、USB等により接続された記憶媒体もしくは内蔵の記憶媒体に記憶されたデータを印刷する印刷ジョブなどを実行する印刷装置にも適用することができる。
【0093】
(3)上記実施形態では、印刷方式を21方式と2413方式との2種類から選択するものを示したが、本発明は、これらに限らず他の印刷方式を選択し実行する印刷装置にも適用することができる。例えば、1枚のシート40の表裏に印刷する間に他のシート40へ最大2ページ分の印刷を行うことで「2,4,6,1,3,5」のページ順で印刷する246135方式などがある。
【0094】
上記実施形態では、1回の解析処理で2種類の印刷手順の処理時間を比較するものを示したが、3種類以上の印刷手順を比較してもよい。例えば、解析範囲を12ページとする場合に、21方式、2413方式、246135方式を1回ずつ実行する場合の処理時間、246135方式を2回繰り返す場合の処理時間、21方式、2413方式、21方式、2413方式を順に1回ずつ実行する場合の処理時間など多種類の印刷手順の処理時間を求め、それらから処理時間が短い印刷手順を選択するようにしてもよい。
【0095】
また、解析処理では、全ての印刷手順の可能性を調べてもよく、一部の印刷手順の可能性のみを調べてもよい。また、処理時間が最小になるものを選択することが望ましいが、必ずしも最小でなくとも処理時間が比較的短くなるものを選択すればよい。
【0096】
(4)上記実施形態では、解析範囲のページ数を8とした例を示したが、解析範囲のページ数は、例えば、9ページ、10ページなど適宜変更することができる。また、印刷ジョブの全てのページを解析範囲として解析処理を行ってもよい。
【0097】
(5)上記実施形態では、印刷ジョブ毎に印刷手順を決定するものを示したが、本発明によれば、連続して実行される複数の両面印刷の印刷ジョブを1つの印刷ジョブとみなして上記実施形態と同様に印刷手順を決定しても良い。この場合、例えば、2413方式を1回実行したときに、先の印刷ジョブの最終ページと後の印刷ジョブの先頭ページを印刷する場合があってもよい。
【0098】
(6)上記実施形態では、手順決定部、取得部、実行部、時間決定部、調整部、または、
生成部、取得部、手順決定部を同じCPU(12または51)によって実現する例を示したが、本発明によれば、これらの機能は、互いに別のCPUや別の回路によって構成することができる。
【符号の説明】
【0099】
10…プリンタ、12…CPU、17…ネットワークインターフェース、18…印刷部、25…排出トレイ、40…シート、50…端末装置、51…CPU、56…ネットワークインターフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを受け付ける受付部と、
シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、
前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、
両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、
前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる連続するページについて、前記複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
印刷後に排出される前記シートを積載する積載部と、
前記積載部に前記シートが排出されたときに対面する一対のページの前記インク付着量に基づいて、当該対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間を決定する時間決定部と、
前記対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔を前記確保時間以上になるように調整する調整部と、
を備え、
前記手順決定部は、前記調整部により調整される時間間隔に基づき前記処理時間を求める、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置において、
前記取得部は、前記対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのうち最大の前記インク付着量を求め、
前記時間決定部は、前記最大のインク付着量が大きい程、前記確保時間を大きくする、印刷装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、前記複数の印刷手順のうち前記処理時間が最小になる印刷手順に従って、前記解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、前記解析範囲を後のページに変更してから前記解析処理を繰り返して実行する、印刷装置。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる連続するページを全て解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順で前記印刷ジョブを実行した場合の処理時間を求める、印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記印刷部は、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、複数枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、
前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記複数ページの印刷手順を決定する、印刷装置。
【請求項8】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記印刷部は、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、2枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、
前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記印刷手順を決定し、
前記所定数が8以上の4の倍数である、印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記解析処理において、前記解析範囲のページに対し前記第2方式を繰り返し実行する第1手順と、先に前記第1方式を実行し、続けて前記第2方式を1回以上実行し、最後に前記第1方式を実行する第2手順とのそれぞれの処理時間を求め、前記第1手順及び前記第2手順のうち前記第1手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の4ページの印刷方式として前記第2方式を選択し、前記第2手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の2ページの印刷方式として前記第1方式を選択する、印刷装置。
【請求項10】
端末装置と、前記端末装置に接続される印刷装置とを備える印刷システムであって、
前記端末装置は、
複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを生成する生成部と、
前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、
両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、
前記印刷手順及び前記印刷ジョブを前記印刷装置に送信する送信部と、
前記印刷装置は、
シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、
前記印刷手順及び前記印刷ジョブを受信する受信部と、
前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、
を備える、印刷システム。
【請求項1】
複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを受け付ける受付部と、
シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、
前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、
両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、
前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる連続するページについて、前記複数種類の印刷方式のそれぞれを実行した場合の処理時間を求め、当該処理時間が他の印刷方式よりも小さくなる印刷手順を決定する、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
印刷後に排出される前記シートを積載する積載部と、
前記積載部に前記シートが排出されたときに対面する一対のページの前記インク付着量に基づいて、当該対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでに確保される確保時間を決定する時間決定部と、
前記対面する一対のページのうち先のページの印刷が完了してから後のページが排出されるまでの時間間隔を前記確保時間以上になるように調整する調整部と、
を備え、
前記手順決定部は、前記調整部により調整される時間間隔に基づき前記処理時間を求める、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置において、
前記取得部は、前記対面する一対のページに印刷される画像をそれぞれ複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのうち最大の前記インク付着量を求め、
前記時間決定部は、前記最大のインク付着量が大きい程、前記確保時間を大きくする、印刷装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる所定数の連続するページを解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順を実行した場合の処理時間を求め、前記複数の印刷手順のうち前記処理時間が最小になる印刷手順に従って、前記解析範囲のページのうち少なくとも先に印刷される一部のページに対する印刷方式を選択する解析処理を実行し、前記解析範囲を後のページに変更してから前記解析処理を繰り返して実行する、印刷装置。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記複数ページに含まれる連続するページを全て解析範囲とし、前記解析範囲のページの印刷順序が異なる複数の印刷手順について、それぞれの印刷手順で前記印刷ジョブを実行した場合の処理時間を求める、印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記印刷部は、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、複数枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、
前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記複数ページの印刷手順を決定する、印刷装置。
【請求項8】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記印刷部は、1枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ続けて行う第1方式と、2枚のシートに対する両面への印刷を片面ずつ交互に行う第2方式とを実行可能であって、
前記手順決定部は、前記第1方式及び前記第2方式から印刷方式を選択して前記印刷手順を決定し、
前記所定数が8以上の4の倍数である、印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置において、
前記手順決定部は、前記解析処理において、前記解析範囲のページに対し前記第2方式を繰り返し実行する第1手順と、先に前記第1方式を実行し、続けて前記第2方式を1回以上実行し、最後に前記第1方式を実行する第2手順とのそれぞれの処理時間を求め、前記第1手順及び前記第2手順のうち前記第1手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の4ページの印刷方式として前記第2方式を選択し、前記第2手順の処理時間の方が小さい場合には、前記解析範囲の最初の2ページの印刷方式として前記第1方式を選択する、印刷装置。
【請求項10】
端末装置と、前記端末装置に接続される印刷装置とを備える印刷システムであって、
前記端末装置は、
複数ページを含む両面印刷の印刷ジョブを生成する生成部と、
前記印刷ジョブに基づいて前記ページ毎のインク付着量を取得する取得部と、
両面印刷の印刷順序が異なる複数種類の印刷方式の中から、前記ページ毎のインク付着量に基づいて印刷方式を選択することにより、前記複数ページの印刷手順を決定する手順決定部と、
前記印刷手順及び前記印刷ジョブを前記印刷装置に送信する送信部と、
前記印刷装置は、
シートに対しインクを用いて印刷を行う印刷部と、
前記印刷手順及び前記印刷ジョブを受信する受信部と、
前記印刷手順に従って前記印刷部に前記印刷ジョブを実行させる実行部と、
を備える、印刷システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−250358(P2012−250358A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122238(P2011−122238)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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