印刷装置及び印刷方法
【課題】被印刷体がフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置10Aは、ブランケット12aが表面に設けられた円柱状のブランケット胴12と、所定パターンの凸部14aが表面に設けられた円柱状の版胴14と、被印刷体Pをブランケット12aに圧接する圧胴16と、インキを塗布するコーティングダイ18と、ブランケット12aの表面を清掃する清掃ユニット22と、版胴14の表面を洗浄する洗浄ユニット24とを備える。ブランケット胴12の周囲には、ブランケット胴12の回転方向の順に、コーティングダイ18、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22が配置され、版胴14の周囲には、版胴14の回転方向の順に、ブランケット胴12及び洗浄ユニット24が配置されている。
【解決手段】印刷装置10Aは、ブランケット12aが表面に設けられた円柱状のブランケット胴12と、所定パターンの凸部14aが表面に設けられた円柱状の版胴14と、被印刷体Pをブランケット12aに圧接する圧胴16と、インキを塗布するコーティングダイ18と、ブランケット12aの表面を清掃する清掃ユニット22と、版胴14の表面を洗浄する洗浄ユニット24とを備える。ブランケット胴12の周囲には、ブランケット胴12の回転方向の順に、コーティングダイ18、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22が配置され、版胴14の周囲には、版胴14の回転方向の順に、ブランケット胴12及び洗浄ユニット24が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フレキシブルディスプレイ(例えば、有機ELや電子ペーパー)などの平面ディスプレイにおいては、ガラスや樹脂などの透明基板上に、数十μm〜数百μm幅の透明着色樹脂層のパターンを規則的に配置したカラーフィルタが用いられる。このようなカラーフィルタにおける透明着色樹脂層の形成方法としては、例えば、フォトレジスト等の感光性樹脂及びフォトマスクを用いるフォトリソグラフィーや、版上等に透明樹脂層形成用インキのパターンを形成しこのパターンを基板に転写し乾燥して透明着色樹脂層とする印刷法等が知られている。
【0003】
フォトリソグラフィーは、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング工程を含むものであり、パターンの精度が高いという特徴を有している。しかしながら、工程数が多く、塗布や現像工程で高価なフォトレジストを大部分廃棄してしまい、さらに、大型高精度の高価な露光装置や高価なフォトマスクを使用する必要があり、コスト高となってしまう。
【0004】
一方、印刷法は、露光・現像設備が不要であるのみならず、高価なフォトマスクやフォトレジストを用いないことから、製造コストを大幅に低下できることが期待できる。したがって、カラーフィルタの製造において、平版オフセット印刷やグラビア印刷法等の印刷法に関して多くの検討が行なわれている。
【0005】
印刷法として代表的なのは、親水性及び親油性の領域に区画された平版上にインキを塗布して親油性領域に対応したインキパターンを形成し、このインキパターンを、ブランケットを介して基板に転写し乾燥させるいわゆるオフセット印刷法である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この方法ではインキのミスチングやパイリングといった印刷欠陥の発生率が高い。また、平版上に形成できるインキ膜の厚みは比較的薄く、また、平版上に形成したインキパターンの流動を抑えるために高粘度のインキを使用するので、基板上に一つの樹脂層を形成するのに、数回の印刷操作を繰り返す必要がある。このため、樹脂層のパターンの精度、さらには樹脂層の厚みの均一性などが不十分となる場合がある。
【0007】
例えば、透明着色樹脂層の厚みが均一でない場合には、カラーフィルタの色濃度均一性が悪化して色むら等が生じる場合がある。また、透明着色樹脂層のパターンの精度が悪くなって、透明着色樹脂層がブラックマトリックスの所定の場所から外れて配置された場合には、液晶パネルの表示に混色や白抜け欠陥が発生する場合がある。また、透明着色樹脂層が重なって突起が生じた場合には、透明着色樹脂層よりも上層に設けられる透明電極が対向基板の画素電極とショートし、液晶が駆動しない場合がある。
【0008】
一方、近年、平版でなくブランケット胴上のブランケット周面にベタのインキ膜を形成したのち、ブランケット上に形成したインキ膜の不要部分を除去してインキパターンを形成し、これを基板に転写し乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、平版を使う方法に比べて厚みの大きなインキ膜を形成でき、基板上に1つの樹脂層を形成するのに1回の印刷操作でよい。
【0009】
しかしながら、上述の方法でも、透明着色樹脂層のパターンの精度と、透明着色樹脂層の厚みの均一性を両立させることが困難であった。具体的には、透明着色樹脂層のパターンの精度を高めるべく高粘度・高降伏値の流動性の低いインキを用いると、透明着色樹脂層の厚みの均一性が十分でない。一方、低粘度・低降伏値である高流動性インキを用いると、インキ膜のパターンが変形してしまい正確な透明着色樹脂層のパターンの転写が困難となる。
【0010】
また、カラーフィルタにおいてはスペーサやブラックマトリクス等の樹脂層のパターンが形成される場合があるが、厳しいパターン精度が要求されるこれらの樹脂層のパターンを上述の印刷法により形成することも同様に困難である。
【0011】
そこで、ダイコータ等によって均一なインキ膜をブランケット周面に形成し、架橋手段によってこのインキ膜に含まれる架橋性樹脂組成物を架橋させることで流動性を消失せしめ、ブランケットを版に接触させることによってブランケット周面上のインキ膜のうち不要部分を転写除去した後、このブランケットを透明基板等の被印刷体と接触せしめることでブランケット周面上のインキ膜のうち必要部分を被印刷体に転写して、所望の印刷パターンを被印刷体上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、あらかじめ流動性の高いインキをブランケットに塗布し、その後インキ膜に含まれる架橋性樹脂組成物を架橋することにより流動性を低下させているので、インキ膜の厚みの均一性を維持することができることとなり、従来のオフセット印刷やグラビア印刷では達成できなかった、平滑かつ高精細のパターンを形成することが可能となる。
【特許文献1】特開平2−297502号公報
【特許文献2】特開平11−198337号公報
【特許文献3】特開2005−212222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3に記載されたような印刷方法は、基本的には、基板を1枚ずつ処理する枚葉加工を前提としたものであり、フィルム等の可撓性を有する被印刷体にパターンを連続的に印刷するのに際し、必ずしも適したものであるとはいえなかった。
【0013】
そこで、本発明は、被印刷体がフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る印刷装置は、ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させる圧接手段と、インキを塗布するインキ塗布手段と、ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、ブランケット胴の周囲には、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴、圧接手段及び清掃手段が配置され、版胴の周囲には、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴及び洗浄手段が配置されており、インキ塗布手段は、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成し、版胴は、インキ膜に凸部を付着させることでブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を除去して、ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成し、圧接手段は、被印刷体をブランケットに加圧しつつ接触させることで、ブランケットの表面上のインキパターンを被印刷体に連続的に転写する。
【0015】
本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴及び版胴が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴の周囲に、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴、圧接手段及び清掃手段を配置しており、版胴の周囲に、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴及び洗浄手段を配置している。そのため、ブランケット胴においては、ブランケットへのインキの塗布、インキ膜の所定部分の除去、インキパターン(インキ膜の残余部分)の被印刷体への転写及び清掃が順次行われ、版胴においては、インキ膜の版胴の凸部への移載及び洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0016】
好ましくは、ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、計測手段によって計測される変位量に基づいて、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離、及び、ブランケットの表面と被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整する調整手段とを更に備える。ところで、ブランケットに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケットに浸透し、ブランケットを膨潤させる。このようにブランケットが膨潤すると、版胴の凸部以外の部分にもブランケットが接触してしまい、本来ブランケットに残さなければならないインキまでもが版胴に移載されてしまうことがある。しかしながら、本発明に係る印刷装置では、上記のように、計測手段によってブランケットの膨潤量を把握し、この変位量に基づいて、調整手段によって、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離、及び、ブランケットの表面と被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整しており、これらの直線距離に関しいわゆるフィードバック制御を行っている。そのため、被印刷体に形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0017】
また、本発明に係る印刷装置は、ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させる圧接手段と、インキを塗布するインキ塗布手段と、ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、ブランケット胴の周囲には、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴及び清掃手段が配置され、版胴の周囲には、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴、圧接手段及び洗浄手段が配置されており、インキ塗布手段は、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成し、版胴は、インキ膜に凸部を付着させることで、ブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を版胴の凸部の表面に移載し、圧接手段は、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させることで、版胴の凸部の表面に移載されたインキ膜を被印刷体に連続的に転写する。
【0018】
本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴及び版胴が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴の周囲に、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴及び清掃手段を配置しており、版胴の周囲に、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴、圧接手段及び洗浄手段を配置している。そのため、ブランケット胴においては、ブランケットへのインキの塗布、インキ膜の所定部分の除去及び清掃が順次行われ、版胴においては、インキ膜の版胴の凸部への移載、凸部表面に移載されたインキ膜の被印刷体への転写及び洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0019】
好ましくは、ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、計測手段によって計測される変位量に基づいて、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離を調整する調整手段とを更に備える。ところで、ブランケットに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケットに浸透し、ブランケットを膨潤させる。このようにブランケットが膨潤すると、版胴の凸部以外の部分にもブランケットが接触してしまい、本来ブランケットに残さなければならないインキまでもが版胴に移載されてしまうことがある。しかしながら、本発明に係る印刷装置では、上記のように、計測手段によってブランケットの膨潤量を把握し、この変位量に基づいて、調整手段によって、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離を調整しており、この直線距離に関しいわゆるフィードバック制御を行っている。そのため、被印刷体に形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0020】
上記各印刷装置において好ましくは、ブランケットの表面に形成されたインキ膜を変性させて、インキ膜の流動性を低下させる変性手段を更に備え、変性手段は、ブランケット胴の周囲において、インキ塗布手段よりもブランケット胴の回転方向の下流側で且つ版胴よりもブランケット胴の回転方向の上流側に配置されている。このようにすると、ブランケットの表面におけるインキ膜の流動性が低下することで、インキ膜の厚みの均一性がより十分に維持されることとなる。そのため、ブランケットの表面に形成されたインキパターンを、その精度を維持したままブランケットの表面に保持することができ、又は、版胴の凸部の表面に移載されたインキ膜の精度を、その精度を維持したまま版胴の凸部の表面に保持することができる。その結果、被印刷体に形成される樹脂層における厚みの均一性及びパターンの精度がより優れたものとなる。なお、ここでいう変性には、インキに架橋性樹脂組成物が含まれている場合に、当該架橋性樹脂組成物を架橋させることによるインキ樹脂組成の変性や、インキに含まれる溶媒の蒸発によるインキ樹脂組成の変性が含まれるものとする。
【0021】
上記の変性手段を更に備える印刷装置において好ましくは、インキ塗布手段によって塗布されるインキには、架橋性樹脂組成物が含まれており、変性手段は、ブランケットの表面に形成されたインキ膜の架橋性樹脂組成物を架橋させる。
【0022】
上記各印刷装置において好ましくは、版胴の周囲に配置されている洗浄手段は、版胴の表面に洗浄液を噴射する液体噴射ノズルと、版胴の表面に気体を噴射して版胴の表面の水分を除去する気体噴射ノズルとを有する。
【0023】
一方、本発明に係る印刷方法は、ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、インキ膜に版胴の凸部を付着させることでブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を除去して、ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成するインキパターン形成工程と、被印刷体をブランケットに加圧しつつ接触させることで、ブランケットの表面上のインキパターンを被印刷体に連続的に転写する転写工程と、ブランケットの表面のうち、転写工程においてブランケット上のインキパターンが被印刷体に転写された後の部分を清掃する清掃工程と、版胴の表面のうち、インキパターン形成工程において版胴の凸部にインキ膜が付着された部分を洗浄する洗浄工程とを行う。
【0024】
本発明に係る印刷方法では、円柱状のブランケット胴の回転中に、インキ塗布工程、インキパターン形成工程、転写工程、清掃工程がこの順に行われる。また、本発明に係る印刷方法では、円柱状の版胴の回転中に、インキパターン形成工程及び洗浄工程がこの順に、つまり、インキパターン形成工程において版胴の凸部の表面にインキ膜が付着された後に洗浄工程が行われる。そのため、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る印刷方法は、ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、インキ膜に版胴の凸部を付着させることで、ブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を版胴の凸部の表面に移載する移載工程と、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させることで、版胴の表面に移載されたインキ膜を被印刷体に連続的に転写する転写工程と、ブランケットの表面のうち、移載工程においてブランケット上のインキ膜が版胴の凸部に移載された後の部分を清掃する清掃工程と、版胴の表面のうち、転写工程において版胴の凸部からインキ膜が被印刷体に転写された後の部分を洗浄する洗浄工程とを行う。
【0026】
本発明に係る印刷方法では、円柱状のブランケット胴の回転中に、インキ塗布工程、移載工程及び清掃工程がこの順に行われる。また、本発明に係る印刷方法では、円柱状の版胴の回転中に、移載工程、転写工程及び洗浄工程がこの順に、つまり、移載工程において版胴の凸部の表面に付着されたインキ膜を被印刷体に転写した後に洗浄工程が行われる。そのため、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0027】
好ましくは、ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持する。ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が25℃未満であると、インキの乾燥が遅くなるので、生産性が低下する傾向にあり、場合によっては版胴の表面に結露が生じ、転写不良が発生することもある。ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が80℃を超えると、インキの乾燥が速くなりすぎてしまい、転写性のコントロールが難しくなる傾向にあると共に、インキパターン形成工程又は移載工程において版胴の温度変化に伴う熱膨張の制御も難しくなり、被印刷体にインキパターンを転写するときの位置精度が低下してしまう傾向にある。また、温度調節手段により、ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が、予め設定された設定温度に対して±2℃以内の変動幅を超えると、版の変形や寸法変化が大きくなるので、転写精度が低下する傾向にある。
【0028】
好ましくは、被印刷体はフィルム状である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被印刷体がフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0031】
[第1実施形態]
(1)印刷装置の構成
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る印刷装置10Aの構成について説明する。印刷装置10Aは、基板やフィルム状の被印刷体Pに透明着色樹脂層、ブラックマトリクス、スペーサ等を形成するための装置である。印刷装置10Aは、表面にブランケット12aが設けられたブランケット胴12と、表面に所定パターンの凸部14aが設けられた版胴14と、圧胴(圧接手段)16と、コーティングダイ(インキ塗布手段)18と、ビーム源(変性手段)20と、清掃ユニット(清掃手段)22と、洗浄ユニット(洗浄手段)24とを備える。
【0032】
ブランケット胴12(ブランケット12a)の周囲には、ブランケット胴12の回転方向(図1の矢印A方向)の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22が配置されている。版胴14の周囲には、版胴14の回転方向(図1の矢印B方向)の順に、ブランケット胴12(ブランケット12a)及び洗浄ユニット24が配置されている。
【0033】
(1.1)ブランケット胴及びブランケット
ブランケット胴12は円柱形状を呈している。ブランケット胴12は、中心軸12bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸12b回りに回転可能となっている。
【0034】
ブランケット12aは、円筒状を呈し、所定の弾性を有しており、ブランケット胴12の周面上に形成されている。ブランケット12aの材料としては、特に制限されないが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂など耐溶媒性及びインキ膜の離形性に優れた材料を用いることが好ましく、さらに、これらの樹脂の表面を撥水処理等したものを用いることが好ましい。
【0035】
(1.2)コーティングダイ
コーティングダイ18は、毛管通路を有する、いわゆるキャピラリコータである。コーティングダイ18は、図示しないインキ槽からラインを介して供給されるインキを、毛管通路の一端であるインキ入口を介して受け入れ、毛管通路の他端である細長矩形形状のスリットからこのインキを横方向又は下方に向けて排出(装置の構成上の制約による)して、ブランケット12aの表面にインキ膜F(図2等参照)を形成する。
【0036】
コーティングダイ18は、スリットの長さ方向がブランケット胴12の中心軸12bの方向と平行となるように配置されている。スリットの幅は、特に限定されないが、0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。なお、比較的均一な厚みのインキ膜Fをブランケット12aの表面に塗布できるコーターであれば、例えば、ワイヤバーコータ、スリットコータ、ダイコータ等の種々のインキ塗布手段を用いることが可能である。とりわけインキ膜Fの均一性の点から、ダイコータやキャピラリコータが好ましい。
【0037】
コーティングダイ18は、図示しないコーティングダイ移動部によって移動可能とされている。具体的には、図1に示されるように、コーティングダイ18がブランケット胴12の側方に配置されている場合、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって左右方向に移動される。また、コーティングダイ18がブランケット胴12の上方に配置されている場合、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって上下方向に昇降される。また、コーティングダイ18がブランケット胴12の下方に配置されている場合も、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって上下方向に昇降される。
【0038】
インキ槽は、インキを貯留するタンクである。このインキ槽は、図示しないインキ槽昇降部によって昇降可能とされている。
【0039】
ここで、インキ槽とコーティングダイ18との上下方向の相対位置を調節することにより、スリットから排出されるインキの排出速度を調節できる。また、スリットからのインキの排出速度と、ブランケット胴12の回転速度とを調節することにより、ブランケット12a上に塗工されるインキ膜Fの厚みを制御できる。インキ膜Fの厚みは、例えば、1μm〜2μm程度とすることができる。
【0040】
(1.3)インキ
本発明において用いられるインキは、架橋可能な架橋性樹脂組成物を含むものであり、架橋することにより透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサを形成できる。ブラックマトリクスやスペーサは、遮光性樹脂層であることが好ましい。
【0041】
架橋性樹脂組成物としては、紫外線、可視光線等の光が照射されると架橋する光架橋性樹脂組成物や、加熱されると架橋する熱架橋性樹脂組成物、X線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋する電離放射線架橋性樹脂組成物が挙げられる。ただし、紫外線、可視光線等の光照射による架橋は、インク塗布後にインク膜Fの流動性を制御する手段としては必ずしも必須ではなく、形成されたインキパターン(詳しくは後述する)を固定するために樹脂を架橋するようにしてもよい。
【0042】
このような架橋性樹脂組成物は、バインダーポリマー、架橋材、及び、架橋開始剤を含むことができる。架橋開始剤としては、光架橋開始剤、熱架橋開始剤、電離放射線架橋開始剤等が挙げられる。熱架橋開始剤は、基材の仕様温度以下の熱で使用可能であることが好ましい。
【0043】
また、所望の着色や遮光性を得るために、インキは、着色剤を含むことができる。
【0044】
さらに、必要に応じて、インキは、粘度を調整するための溶媒、着色剤の安定性を改善するための分散剤や界面活性剤を含むことができる。以下各成分について詳述する。
【0045】
(1.3.1)着色剤
着色剤としては染料や顔料を用いることができるが、特に、耐環境性、耐熱性に優れる顔料を用いることが好適である。顔料としては有機および無機顔料を用いることができ、具体的には、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)でピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー214などの黄色顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ42、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73などのオレンジ色顔料、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメンレッド264、C.I.ピグメントレッド265などの赤色顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60などの青色顔料、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38などの紫色顔料、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37などの緑色顔料、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25などの茶色顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などの黒色顔料などが挙げられる。好ましい顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン36が挙げられる。これらの有機顔料および無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機顔料および無機顔料のうち、有機顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性基または塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、あるいは不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理が施されていてもよい。
【0046】
着色剤の含有量は、インキの全固形分に対して質量分率で通常1質量%以上60質量%以下、好ましくは3質量%以上50質量%以下の範囲で用いられる。
【0047】
(1.3.2)架橋性樹脂組成物
架橋性樹脂組成物は、光、電離放射線の照射や加熱により架橋してネットワーク構造(三次元網目構造)を形成し得る透明な樹脂である。
【0048】
架橋性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)架橋剤、及び(C)架橋開始剤を含むことができる。
【0049】
(A)バインダーポリマー
バインダーポリマーは、着色剤を分散することができ、かつ、架橋剤と重合してネットワーク構造を形成させることができる透明樹脂であれば特に限定されない。
【0050】
バインダーポリマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンのような不飽和カルボン酸オキセタンエステル化合物等を単量体とするポリマーが挙げられる。
【0051】
また、バインダーポリマーとしては、メラミンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂を挙げることもできる。
【0052】
バインダーポリマーとしては、上述の単量体をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせた共重合体を使用することもできる。共重合体としては、例えばベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体などが挙げられる。特に、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体が好ましい。共重合体におけるカルボキシル基を有する単量体単位の含有量は質量分率で5〜50%、好ましくは10〜40%である。
【0053】
バインダーポリマーは、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる重量平均分子量が5,000〜400,000の範囲(さらには10,000〜300,000の範囲にあるのが好ましい。バインダーポリマーは、インキの全固形分に対して質量分率で通常5〜90%の範囲、好ましくは20〜70%の範囲で用いられる。
【0054】
(B)架橋剤
架橋剤は、光や電離放射線の照射、あるいは、加熱により架橋開始剤から発生した活性ラジカル、酸などによって重合開始し得る化合物であり、バインダーポリマーと重合反応を生じてネットワーク構造を形成させる重合性化合物である。架橋剤としては、例えば重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋剤は、単官能の重合性化合物であってもよいし、2官能または3官能以上の多官能の重合性化合物であってもよい。単官能重合性化合物としては、例えばノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。2官能重合性化合物としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3官能以上の重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましい架橋剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0055】
このような架橋剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。1種類の架橋剤を単独で用いる場合には2官能以上の重合性化合物が好ましく用いられ、2種以上の架橋剤を用いる場合には少なくとも1種は2官能以上の重合性化合物を用いることが好ましい。架橋剤の使用量は、バインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部あたり通常は0.1質量部以上70質量部以下、好ましくは1質量部以上60質量部以下である。
【0056】
加熱による活性ラジカル、酸発生剤としては、被印刷物の物性を考慮して加熱による収縮等が生じない範囲で使用することが可能な開始剤を選定することが好ましい。また、光、電離放射線の照射による活性ラジカル、酸発生剤を併用することもできる。
【0057】
(C)架橋開始剤
架橋開始剤は、光や電離放射線の照射、あるいは、加熱によりラジカル等の活性種を生じ、バインダーポリマーと架橋剤との架橋反応を開始させる化合物である。
【0058】
光架橋開始剤としては、光を照射されることによって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤が挙げられ、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、メタロセン化合物などが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン メソクロライドなどが挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。光架橋発生剤としては、活性ラジカル発生剤を使用することができ、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などを用いることもできる。このような光架橋開始剤として、市販のものを用いることもできる。市販の光架橋開始剤としては、例えば、商品名「Irgacure-907」(アセトフェノン系光重合開始剤、CibaSpecialtyChemicals社製)などが挙げられる。メタロセン化合物としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0059】
これらの光架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。光架橋開始剤の使用量は、バインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部に対して通常1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下である。
【0060】
また、熱架橋開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ターシャリーブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等の公知の開始剤を任意好適に用いることができる。これらの熱架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、電離放射線架橋開始剤としても、公知の開始剤を任意好適に用いることができる。これらの電離放射線架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
ここで、これらの架橋開始剤の量は、ビーム源20によって半架橋状態(詳しくは後述)まで架橋させるのに必要な量よりも過剰に配合し、被印刷体Pに転写した後の最終的な加熱や光の照射等によって透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサ等を完全に硬化させることができるようにすることが好ましい。
【0063】
(1.3.3)架橋開始助剤
インキは、架橋開始助剤を含有していてもよい。架橋開始助剤は、架橋開始剤と組み合わせて配合され、架橋開始剤によって開始した架橋剤による架橋を促進するために用いられる化合物である。光架橋開始剤と共に用いられる光架橋開始助剤としては、例えばアミン系化合物、アルコキシアントラセン系化合物などが挙げられる。アミン系化合物としては、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称ミヒラーズケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。アルコキシアントラセン系化合物としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。光架橋開始助剤として市販のものを用いることもでき、市販の光架橋開始助剤としては、例えば商品名「EAB-F」(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。該光架橋開始助剤を用いる場合、その使用量は、光架橋開始剤1モルあたり通常10モル以下、好ましくは0.01モル以上5モル以下である。光架橋開始剤および光架橋開始助剤を用いる場合の使用量は、その合計量がバインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部に対して通常1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下である。
【0064】
また、熱架橋開始剤や電離放射線架橋開始剤用の架橋開始助剤も、公知のものを任意好適に用いることができる。
【0065】
(1.3.4)溶媒
このインキはさらに溶剤を含んでもよい。溶剤としては、例えば、水や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、アニソール、フェネトール、メチルアニソールなどの芳香族脂肪族エーテル類、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。こうした溶剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができ、インキにおける溶剤の含有量が質量分率で通常20質量%以上90質量%以下、好ましくは50質量%以上85質量%以下となるように使用される。
【0066】
(1.3.5)その他の添加剤
このインキは、さらに、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0068】
密着促進剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0069】
凝集防止剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0070】
また、このインキは、ビーム源20によって架橋される前にブランケット12aの表面で迅速かつ十分にインキ膜Fを平坦化(レベリング)すべく、粘度が1mPa・s〜50mPa・s、降伏値が10mPa以下であることが好ましい。インキ膜Fの平坦化は、主としてインキの表面張力によりブランケット12a上でインキが流動することにより起こる。上述の粘度及び降伏値のインキを用いると、インキ膜Fが迅速かつ十分に平坦化してインキ膜Fの厚みをほぼ均一にできる。ここで、インキの粘度が1mPa・s未満であると、ブランケット12a上に塗布したインキの垂れや、コーティングダイ18のスリットからのインキのボタ落ちが生じる傾向にある。インキの粘度が50mPa・sを超えると、インキ膜の厚みの均一性を十分に確保し難くなり、また、インキ膜Fの平坦化に必要な時間が長くなるため生産性が低下しやすい傾向がある。さらに、一般的に入手可能なインキでは、着色材や樹脂を含有しているため、粘度は通常2mPa・s以上である場合が多い。また、降伏値が10mPaを超えると、ブランケット12a上でインキ膜Fを平坦化(レベリング)することが困難となる傾向があり、塗布むらが顕著になる傾向がある。
【0071】
(1.4)ビーム源
ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されたインキ膜Fを変性させる変性手段である。第1実施形態において、ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されたインキ膜Fに対して、紫外線や赤外線、電離放射線等を照射し、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物を架橋させ、架橋したインキ膜Fを形成する。
【0072】
ビーム源20としては、インキ中の架橋性樹脂組成物を架橋させることができるビームを照射するものであれば特に限定されない。例えば、架橋性樹脂組成物が紫外線や可視光線等の光の照射により架橋する光架橋性樹脂組成物であれば、ビーム源20としてその光架橋性樹脂組成物を架橋可能な紫外線や可視光線等の光を放射する光源を用いることができる。このような光源は比較的低コストである。
【0073】
また、架橋性樹脂組成物が加熱により架橋する熱架橋性樹脂組成物であれば赤外線ランプ等を利用できる。
【0074】
また、架橋性樹脂組成物が電離放射線の照射により架橋する電離放射線架橋性樹脂組成物であれば、公知の、X線源、電子銃、γ線源等を利用できる。
【0075】
特に、インキとして紫外線架橋性樹脂組成物を含むインキを用い、ビーム源20としてこの紫外線架橋性樹脂組成物を硬化可能な紫外線を発生する紫外線ランプを用いると、低コストな設備でありながら架橋に要する時間を短縮でき、さらに、ブランケット胴12があまり加熱されずブランケット胴12等の熱膨張が起きにくいのでインキパターンの位置や形状の精度を極めて高くできて好ましい。
【0076】
紫外線ランプとしては、高圧水銀ランプ、青色LED、紫外LED、ハロゲンランプ等を好適に用いることができる。
【0077】
ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されてから所定の時間経過した、すなわち、コーティングダイ18から排出されてブランケット12aに貼り付けられた場所から、ブランケット胴12の回転により所定の距離を移動した後のインキ膜Fに光を照射するように配置されている。これにより、このビーム源20から光が照射される前に、ブランケット12aに塗布されたインキ膜Fが表面張力等によって十分均一な厚みとなるまで流動、すなわち平坦化することができるようなっている。具体的には、ビーム源20は、例えば、ブランケット12aに塗布されてからブランケット胴12が1/8〜1/4回転程度移動した後のインキ膜Fに光を照射するように配置されている。塗布してから照射するまでの距離(時間)は、インキの性質や塗工速度に応じて適宜好適に設計できる。
【0078】
ここで、ビーム源20からのビームの照射の強さを、インキ膜Fにおける架橋性樹脂組成物の架橋度が完全架橋状態となる程度の強さとしても良いが、インキ膜71の架橋性樹脂組成物が半架橋状態すなわちゲル状となる程度の強さとすることが好ましい。こうすることにより、後工程でのインキ膜Fからのインキパターンの形成や、このインキパターンの被印刷体Pへの転写が好適に行える。
【0079】
ここで、具体的には、半架橋状態とは、インキ膜Fの降伏値が20mPa〜500mPa程度となる状態である。架橋後のインキ膜Fの降伏値が20mPa未満の場合には、インキが流動しやすいために、インキパターンが流動し変形したり、インキパターン内の膜厚分布が変動しやすくなり、厚みの均一性やインキパターンの精度が維持し難い傾向にある。一方、降伏値が500mPaを超える場合には、インキ膜Fが硬くなり、インキパターンの形成やインキパターンの被印刷体Pへの印刷性が悪くなる傾向がある。
【0080】
(1.5)版胴
版胴14は、円柱形状を呈しており、ブランケット12aの表面に形成されたインキ膜Fから、被印刷体Pに転写しない不要部分を除去してインキパターンを形成するためのものである。版胴14は、インキ膜Fの不要部分に対応する部分に凸部14aが所定のパターンで形成されており、インキ膜Fの残すべき部分に対応する部分(印字部分)が凹状とされている。凸部14aの高さは、例えば10μm程度である。版胴14は、例えば、金属や樹脂等によって形成することができる。
【0081】
また、版胴14は、中心軸14bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸14b回りに回転可能となっている。なお、図示はしていないが、版胴14には、版胴14をブランケット胴12に向けて移動させ、版胴14の凸部14aをブランケット12aの表面に対し加圧しつつ接触させる圧接機構が設けられている。
【0082】
(1.6)清掃ユニット
【0083】
清掃ユニット22は、ブランケット12aの表面を清掃するものである。清掃ユニット22は、一対のローラ22aと、一対のローラ22aに掛け渡された粘着ベルト22bを有する。
【0084】
一対のローラ22aは、共に同方向に回転することで、粘着ベルト22bを回転させる。粘着ベルト22bは、ブランケット12aの表面に接触しており、被印刷体Pへのインキ膜Fの転写後(詳しくは後述する)におけるブランケット12aの表面に残存しているインキ膜Fを除去する。粘着ベルト22bは、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの樹脂をベースポリマーとする粘着剤が、ゴムや金属製のベルトに形成されたものを用いることができる。また、清掃ユニット22として、上記のような粘着剤がゴムや金属製のローラの表面に形成されたものを用いることもできる。市販の粘着ローラとして、商品名「クリーンルーム用剥離帯電防止クリーニングローラー」(タニムラ株式会社製)を例示することができる。
【0085】
なお、清掃ユニット22としては、後述する洗浄ユニット24と同様のものを用いてもよいが、ブランケット12aは溶媒を容易に吸収して膨潤するため、インキパターンの転写性能の観点から、上記のような粘着ベルト22bをブランケット12aの表面に直接接触させることでインキ膜Fを除去することがより好ましい。
【0086】
(1.7)洗浄ユニット
洗浄ユニット24は、版胴14の表面を洗浄するものである。洗浄ユニット24は、液体噴射ノズル24aと、気体噴射ノズル24bと、筐体24cとを有する。
【0087】
液体噴射ノズル24aは、ブランケット12aの表面又は版胴14の表面に洗浄液を噴射する。液体噴射ノズル24aから噴射される洗浄液の圧力は、5MPa〜50MPa程度の高圧にすることが好ましい。ここで、洗浄液としては、水や樹脂の溶媒を用いることができる。
【0088】
気体噴射ノズル24bは、いわゆるエアナイフであり、ブランケット12aの表面又は版胴14の表面に気体(空気)を噴射する。筐体24cは、版胴14に向けて開放されている。筐体24c内部は、隔壁によって3つの部屋に区画されており、各部屋は、版胴14の回転方向(図1の矢印B方向)に沿って並んでいる。
【0089】
各部屋のうち版胴14の回転方向の最も上流側に位置する部屋の中には、液体噴射ノズル24aが配置されている。各部屋のうち版胴14の回転方向の最も下流側に位置する部屋の中には、気体噴射ノズル24bが配置されている。各部屋には、版胴14とは離れた側の壁部に、排気及び排液のための管がそれぞれ設けられている。
【0090】
(1.8)圧胴
圧胴16は、円柱形状を呈しており、インキパターンが転写されるべき被印刷体Pを支持する。圧胴16は、中心軸16bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸16b回りに回転可能となっている。
【0091】
なお、図示はしていないが、圧胴16には、圧胴16をブランケット胴12に向けて移動させ、圧胴16をブランケット12aの表面に対し加圧しつつ接触させる圧接機構が設けられている。
【0092】
(2)印刷方法
続いて、図2〜図4を参照して、第1実施形態に係る印刷装置10Aを用いた被印刷体Pへのインキパターンの印刷方法について説明する。
【0093】
まず、図示しないコーティングダイ移動部によってコーティングダイ18を移動させ、コーティングダイ18のスリットとブランケット12aの表面との間隔を約30μm〜300μmとする。次に、インキ槽移動部によってインキ槽に貯留されているインキの水面をコーティングダイ18のスリットよりも上昇させることで、コーティングダイ18のスリットからインキを少し排出させて、ビード(液の盛り上がり)を形成する。
【0094】
続いて、コーティングダイ18をさらにブランケット12aの表面に近づけて、ビードをブランケット12aの表面に接触(接液)させた後、コーティングダイ18とブランケット12aの表面との間隔を50μm〜200μm程度に調整し、コーティングを開始する。このときのコーティングダイ18とブランケット12aの表面と間隔は、インキの種類などに応じて適宜調整される。この状態で、ブランケット胴12を時計回り(図2の矢印A方向)に回転させることで、コーティングダイ18のスリットからインキを引き出して、ブランケット12aの表面にインキ膜Fを形成する。
【0095】
そして、ブランケット胴12は、インキ膜Fがブランケット12aの表面に張り付いてから1/8〜1/4回転程度回転され、この間にインキ膜Fは、その表面張力等により表面が平滑化され膜厚が均一化される。
【0096】
続いて、図2に示されるように、このように厚みが均一となったインキ膜Fに対して、ビーム源20から紫外線等のビームを照射することにより、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物が架橋する。架橋したインキ膜Fは、粘度や降伏値が架橋前のインキ膜Fよりも上昇した状態となり、インキの流動性が低くなっている。従って、ビーム源20のビーム照射により、インキ膜Fの厚みの均一性が極めて高い状態がブランケット12aにおいて維持されることとなる。
【0097】
さらにブランケット胴12が回転すると、図3に示されるように、架橋したインキ膜Fが版胴14の凸部14aに付着する。これにより、インキ膜Fのうち版胴14の凸部14aに対応する部分F1が、ブランケット12aの表面から除去されて版胴14の凸部14aの表面に移載し、ブランケット12aの表面にはインキパターンF2が形成される。つまり、インキパターンF2は、版胴14の凸部14aでない部分(凹部)に対応する形状となっている。なお、このとき版胴14の凸部14aは、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。
【0098】
さらにブランケット胴12が回転すると、図4に示されるように、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンF2がフィルム状の被印刷体Pに連続的に転写される。なお、このとき、圧胴16は、ブランケット胴12とは逆方向(図4の矢印C方向)に回転しており、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。
【0099】
その後、必要に応じてインキパターンF2を加熱したり、インキパターンF2に光を照射したりして、インキパターンF2を完全に硬化する。以上の工程を赤色、緑色、青色の各色のインキについて行うことにより、各色の透明着色樹脂層が被印刷体P上に形成されることとなる。
【0100】
なお、被印刷体Pへのインキパターンの印刷を行う際には、図示しない温度調節手段によって、ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持すると好ましい。ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が25℃未満であると、インキの乾燥が遅くなるので、生産性が低下する傾向にあり、場合によっては版胴14の表面に結露が生じ、転写不良が発生することもある。ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が80℃を超えると、インキの乾燥が速くなりすぎてしまい、転写性のコントロールが難しくなる傾向にあると共に、ブランケット12aの表面にインキパターンF2を形成する際に版胴14の温度変化に伴う熱膨張の制御も難しくなり、被印刷体PにインキパターンF2を転写するときの位置精度が低下してしまう傾向にある。また、図示しない温度調節手段により、ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が、予め設定された設定温度に対して±2℃以内の変動幅を超えると、版の変形や寸法変化が大きくなるので、転写精度が低下する傾向にある。
【0101】
さらに、必要に応じて、これらの透明着色樹脂層上にオーバーコート層や、ITO等から形成され液晶の共通電極として用いられる透明導電膜をそれぞれ公知の方法により形成することによって、液晶用のカラーフィルタが完成する。
【0102】
さらに、液晶表示素子を形成する場合には、例えば、引き続いて、公知の方法により、透明導電膜上に配向膜を形成し、配向膜上にスペーサを挟んでTFT基板を対向配置し、配向膜とTFT基板との間に液晶を封入する。TFT基板は、TFT機能素子の下面に画素電極及び配向膜を有しており、TFT機能素子の上には偏光膜が形成されている。このスペーサを、第1実施形態に係る印刷装置10Aで形成してもよい。
【0103】
以上のような第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ブランケット胴12及び版胴14が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ブランケット胴12の周囲に、ブランケット胴12の回転方向の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22を配置しており、版胴14の周囲に、版胴14の回転方向の順に、ブランケット胴12及び洗浄ユニット24を配置している。そのため、ブランケット胴12においては、ブランケット12aへのインキの塗布、インキ膜Fの所定部分の除去、インキパターンF2の被印刷体Pへの転写及びブランケット12aの表面の清掃が順次行われ、版胴14においては、インキ膜Fの版胴14の凸部14aへの移載及び版胴14の表面の洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体Pが基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となっている。
【0104】
また、第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ビーム源20によってインキ膜F中の架橋性樹脂組成物を架橋させ、架橋したインキ膜Fを形成している。このようにすると、ブランケット12aの表面におけるインキ膜Fの流動性が低下することで、インキ膜Fの厚みの均一性がより十分に維持されることとなる。そのため、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンF2を、その精度を維持したままブランケット12aの表面に保持することができる。その結果、被印刷体Pに形成される樹脂層における厚みの均一性及びパターンの精度がより優れたものとなる。
【0105】
[第2実施形態]
(1)印刷装置の構成
続いて、図5を参照して、第2実施形態に係る印刷装置10Bの構成について、第1実施形態に係る印刷装置10Aとの相違点を中心に説明する。
【0106】
ブランケット胴12(ブランケット12a)の周囲には、ブランケット胴12の回転方向(図5の矢印A方向)の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14及び清掃ユニット22が配置されている。版胴14の周囲には、版胴14の回転方向(図5の矢印B方向)の順に、ブランケット胴12(ブランケット12a)、圧胴16及び洗浄ユニット24が配置されている。
【0107】
(2)印刷方法
続いて、図6〜図8を参照して、第2実施形態に係る印刷装置10Bを用いた被印刷体Pへの印刷方法について、第1実施形態に係る印刷装置10Aを用いた被印刷体Pへの印刷方法との相違点を中心に説明する。
【0108】
図6に示されるように、厚みが均一となったインキ膜Fに対して、ビーム源20から紫外線等のビームを照射することにより、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物が架橋する。
【0109】
さらにブランケット胴12が回転すると、図7に示されるように、架橋したインキ膜Fが版胴14の凸部14aに付着する。これにより、インキ膜Fのうち版胴14の凸部14aに対応する部分F1が、ブランケット12aの表面から除去されて版胴14の凸部14aの表面に移載する。
【0110】
さらにブランケット胴12が回転すると、図8に示されるように、版胴14の凸部14aの表面に移載したインキ膜F1がフィルム状の被印刷体Pに連続的に転写される。つまり、第2実施形態に係る印刷装置10Bでは、版胴14の凸部14aのパターンがそのままインキパターンF2となる。
【0111】
その後、必要に応じてインキパターンF2を加熱したり、インキパターンF2に光を照射したりして、インキパターンF2を完全に硬化する。
【0112】
以上のような第2実施形態に係る印刷装置10Bおいては、第1実施形態に係る印刷装置10Aと同様の作用効果を奏する。
【0113】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態ではフィルム状の被印刷体Pを例に説明したが、図9に示されるように、被印刷体Pとしてガラス基板等の基板を用いた印刷装置10Cにも本発明を適用できる。このとき、基板である被印刷体Pをステージ26に載置した状態で、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンを被印刷体Pに転写する。インキパターンの被印刷体Pへの転写の際には、ステージ26を移動させるようにしてもよく、ステージ26以外を移動させるようにしてもよい。なお、このときステージ26は、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。さらに、図9では、第1実施形態に係る印刷装置10Aと同様、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンを基板である被印刷体Pに転写しているが、第2実施形態に係る印刷装置10Bと同様、版胴14の凸部14aの表面に移載されたインキ膜F1を基板である被印刷体Pに転写するようにしてもよい。
【0114】
また、図10に示されるように、非接触センサ(計測手段)28を用いてブランケット12aの厚み方向における変位量(ブランケット12aの膨潤)を計測するようにしてもよい。そして、この非接触センサ28によって計測された当該変位量に基づいて、第1実施形態に係る印刷装置10Aの場合には、ブランケット12aの表面と版胴14の表面との直線距離、及び、ブランケット12aの表面と被印刷体Pとの直線距離のうち少なくとも一方を、第2実施形態に係る印刷装置10Bの場合には、ブランケット12aの表面と版胴14の表面との直線距離を、調整するようにしてもよい。
【0115】
調整は、図11に示されるような調整機構30Aを用いることができる。調整機構30Aは、台座部30aと、ねじ部30bとを有する。ねじ部30bは、図11のZ軸方向に沿って延びており、その一端が台座部30aと接続され、その他端がブランケット胴12の中心軸12bを支持する軸受32に取り付けられている。軸受32の両側には、ガイドとして機能する一対の軸受ガイド34が配置されている。そのため、このような構成を有する調整機構30Aでは、ねじ部30bを図示しない駆動源によって回転させることで、一対の軸受ガイド34に沿ってブランケット胴12が昇降し、ブランケット胴12の高さが調整されることとなる。
【0116】
また、調整は、図12に示されるような調整機構30Bを用いることもできる。調整機構30Bは、台座部30aと、ねじ部30bと、テーパ部材30cとを有する。ねじ部30bは、図12のY軸方向に沿って延びており、その一端がテーパ部材30cと螺合している。テーパ部材30cは、その下面が台座部30aと当接しており、その上面が下面に対して傾斜した傾斜面となっている。そのため、このような構成を有する調整機構30Bでは、ねじ部30bを図示しない駆動源によって回転させてテーパ部材30cを図12のY軸方向に沿って移動させることで、一対の軸受ガイド34に沿ってブランケット胴12が昇降し、ブランケット胴12の高さが調整されることとなる。
【0117】
ところで、ブランケット12aに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケット12aに浸透し、ブランケット12aを膨潤させる。このようにブランケット12aが膨潤すると、版胴14の凸部14a以外の部分にもブランケット12aが接触してしまい、本来ブランケット12aに残さなければならないインキまでもが版胴14の凸部14aに移載されてしまうことがある。しかしながら、上記のように、計測手段28によってブランケット12aの膨潤量を把握し、この変位量(膨潤量)に基づいて、調整機構30A,30Bによって、上記直線距離に関しフィードバック制御を行うことで、被印刷体Pに形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0118】
また、架橋性樹脂組成物以外にもブランケット12aの表面に形成したインキ樹脂の流動性を制御することは可能である。例えば、ブランケット12aへのインキの塗布時にインキに含まれる溶媒をブランケット12aに吸収させたり、ブランケット12aの表面に形成したインキ膜Fの表面からインキに含まれる溶媒を自然蒸発又は強制的に蒸発させたりすることで、インキ樹脂の流動性を制御することができる。ブランケット12aの表面に形成したインキ膜Fの表面からインキに含まれる溶媒を強制的に蒸発させる場合には、溶媒の蒸発を促進するための加温手段(ヒータ)を用いることができる。
【0119】
また、カラーフィルタの透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサに限らず、他の電子デバイスの形成等に用いる樹脂層、例えば、レジスト層等のパターン形成にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、第1実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る印刷装置を用いた被印刷体への印刷方法を説明するための図である。
【図3】図3は、図2の後続の工程を示す図である。
【図4】図4は、図3の後続の工程を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る印刷装置を用いた被印刷体への印刷方法を説明するための図である。
【図7】図7は、図6の後続の工程を示す図である。
【図8】図8は、図7の後続の工程を示す図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図10】図10は、ブランケット胴と非接触センサとのカンケイを模式的に示す図である。
【図11】図11の(a)は、ブランケット胴の高さを調節する機構を示す要部断面図であり、図11の(b)は、ブランケット胴の高さを調節する機構を示す側面図である。
【図12】図12は、ブランケット胴の高さを調節する他の機構を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0121】
10A〜10C…印刷装置、12…ブランケット胴、12a…ブランケット、14…版胴、14a…凸部、16…圧胴(圧接手段)、18…コーティングダイ(インキ塗布手段)、20…ビーム源(変性手段)、22…清掃ユニット(清掃手段)、24…洗浄ユニット(洗浄手段)、28…非接触センサ(計測手段)、F…インキ膜、F2…インキパターン、P…被印刷体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フレキシブルディスプレイ(例えば、有機ELや電子ペーパー)などの平面ディスプレイにおいては、ガラスや樹脂などの透明基板上に、数十μm〜数百μm幅の透明着色樹脂層のパターンを規則的に配置したカラーフィルタが用いられる。このようなカラーフィルタにおける透明着色樹脂層の形成方法としては、例えば、フォトレジスト等の感光性樹脂及びフォトマスクを用いるフォトリソグラフィーや、版上等に透明樹脂層形成用インキのパターンを形成しこのパターンを基板に転写し乾燥して透明着色樹脂層とする印刷法等が知られている。
【0003】
フォトリソグラフィーは、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング工程を含むものであり、パターンの精度が高いという特徴を有している。しかしながら、工程数が多く、塗布や現像工程で高価なフォトレジストを大部分廃棄してしまい、さらに、大型高精度の高価な露光装置や高価なフォトマスクを使用する必要があり、コスト高となってしまう。
【0004】
一方、印刷法は、露光・現像設備が不要であるのみならず、高価なフォトマスクやフォトレジストを用いないことから、製造コストを大幅に低下できることが期待できる。したがって、カラーフィルタの製造において、平版オフセット印刷やグラビア印刷法等の印刷法に関して多くの検討が行なわれている。
【0005】
印刷法として代表的なのは、親水性及び親油性の領域に区画された平版上にインキを塗布して親油性領域に対応したインキパターンを形成し、このインキパターンを、ブランケットを介して基板に転写し乾燥させるいわゆるオフセット印刷法である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この方法ではインキのミスチングやパイリングといった印刷欠陥の発生率が高い。また、平版上に形成できるインキ膜の厚みは比較的薄く、また、平版上に形成したインキパターンの流動を抑えるために高粘度のインキを使用するので、基板上に一つの樹脂層を形成するのに、数回の印刷操作を繰り返す必要がある。このため、樹脂層のパターンの精度、さらには樹脂層の厚みの均一性などが不十分となる場合がある。
【0007】
例えば、透明着色樹脂層の厚みが均一でない場合には、カラーフィルタの色濃度均一性が悪化して色むら等が生じる場合がある。また、透明着色樹脂層のパターンの精度が悪くなって、透明着色樹脂層がブラックマトリックスの所定の場所から外れて配置された場合には、液晶パネルの表示に混色や白抜け欠陥が発生する場合がある。また、透明着色樹脂層が重なって突起が生じた場合には、透明着色樹脂層よりも上層に設けられる透明電極が対向基板の画素電極とショートし、液晶が駆動しない場合がある。
【0008】
一方、近年、平版でなくブランケット胴上のブランケット周面にベタのインキ膜を形成したのち、ブランケット上に形成したインキ膜の不要部分を除去してインキパターンを形成し、これを基板に転写し乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、平版を使う方法に比べて厚みの大きなインキ膜を形成でき、基板上に1つの樹脂層を形成するのに1回の印刷操作でよい。
【0009】
しかしながら、上述の方法でも、透明着色樹脂層のパターンの精度と、透明着色樹脂層の厚みの均一性を両立させることが困難であった。具体的には、透明着色樹脂層のパターンの精度を高めるべく高粘度・高降伏値の流動性の低いインキを用いると、透明着色樹脂層の厚みの均一性が十分でない。一方、低粘度・低降伏値である高流動性インキを用いると、インキ膜のパターンが変形してしまい正確な透明着色樹脂層のパターンの転写が困難となる。
【0010】
また、カラーフィルタにおいてはスペーサやブラックマトリクス等の樹脂層のパターンが形成される場合があるが、厳しいパターン精度が要求されるこれらの樹脂層のパターンを上述の印刷法により形成することも同様に困難である。
【0011】
そこで、ダイコータ等によって均一なインキ膜をブランケット周面に形成し、架橋手段によってこのインキ膜に含まれる架橋性樹脂組成物を架橋させることで流動性を消失せしめ、ブランケットを版に接触させることによってブランケット周面上のインキ膜のうち不要部分を転写除去した後、このブランケットを透明基板等の被印刷体と接触せしめることでブランケット周面上のインキ膜のうち必要部分を被印刷体に転写して、所望の印刷パターンを被印刷体上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、あらかじめ流動性の高いインキをブランケットに塗布し、その後インキ膜に含まれる架橋性樹脂組成物を架橋することにより流動性を低下させているので、インキ膜の厚みの均一性を維持することができることとなり、従来のオフセット印刷やグラビア印刷では達成できなかった、平滑かつ高精細のパターンを形成することが可能となる。
【特許文献1】特開平2−297502号公報
【特許文献2】特開平11−198337号公報
【特許文献3】特開2005−212222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3に記載されたような印刷方法は、基本的には、基板を1枚ずつ処理する枚葉加工を前提としたものであり、フィルム等の可撓性を有する被印刷体にパターンを連続的に印刷するのに際し、必ずしも適したものであるとはいえなかった。
【0013】
そこで、本発明は、被印刷体がフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る印刷装置は、ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させる圧接手段と、インキを塗布するインキ塗布手段と、ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、ブランケット胴の周囲には、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴、圧接手段及び清掃手段が配置され、版胴の周囲には、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴及び洗浄手段が配置されており、インキ塗布手段は、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成し、版胴は、インキ膜に凸部を付着させることでブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を除去して、ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成し、圧接手段は、被印刷体をブランケットに加圧しつつ接触させることで、ブランケットの表面上のインキパターンを被印刷体に連続的に転写する。
【0015】
本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴及び版胴が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴の周囲に、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴、圧接手段及び清掃手段を配置しており、版胴の周囲に、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴及び洗浄手段を配置している。そのため、ブランケット胴においては、ブランケットへのインキの塗布、インキ膜の所定部分の除去、インキパターン(インキ膜の残余部分)の被印刷体への転写及び清掃が順次行われ、版胴においては、インキ膜の版胴の凸部への移載及び洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0016】
好ましくは、ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、計測手段によって計測される変位量に基づいて、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離、及び、ブランケットの表面と被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整する調整手段とを更に備える。ところで、ブランケットに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケットに浸透し、ブランケットを膨潤させる。このようにブランケットが膨潤すると、版胴の凸部以外の部分にもブランケットが接触してしまい、本来ブランケットに残さなければならないインキまでもが版胴に移載されてしまうことがある。しかしながら、本発明に係る印刷装置では、上記のように、計測手段によってブランケットの膨潤量を把握し、この変位量に基づいて、調整手段によって、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離、及び、ブランケットの表面と被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整しており、これらの直線距離に関しいわゆるフィードバック制御を行っている。そのため、被印刷体に形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0017】
また、本発明に係る印刷装置は、ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させる圧接手段と、インキを塗布するインキ塗布手段と、ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、ブランケット胴の周囲には、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴及び清掃手段が配置され、版胴の周囲には、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴、圧接手段及び洗浄手段が配置されており、インキ塗布手段は、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成し、版胴は、インキ膜に凸部を付着させることで、ブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を版胴の凸部の表面に移載し、圧接手段は、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させることで、版胴の凸部の表面に移載されたインキ膜を被印刷体に連続的に転写する。
【0018】
本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴及び版胴が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、本発明に係る印刷装置では、ブランケット胴の周囲に、ブランケット胴の回転方向の順に、インキ塗布手段、版胴及び清掃手段を配置しており、版胴の周囲に、版胴の回転方向の順に、ブランケット胴、圧接手段及び洗浄手段を配置している。そのため、ブランケット胴においては、ブランケットへのインキの塗布、インキ膜の所定部分の除去及び清掃が順次行われ、版胴においては、インキ膜の版胴の凸部への移載、凸部表面に移載されたインキ膜の被印刷体への転写及び洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0019】
好ましくは、ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、計測手段によって計測される変位量に基づいて、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離を調整する調整手段とを更に備える。ところで、ブランケットに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケットに浸透し、ブランケットを膨潤させる。このようにブランケットが膨潤すると、版胴の凸部以外の部分にもブランケットが接触してしまい、本来ブランケットに残さなければならないインキまでもが版胴に移載されてしまうことがある。しかしながら、本発明に係る印刷装置では、上記のように、計測手段によってブランケットの膨潤量を把握し、この変位量に基づいて、調整手段によって、ブランケットの表面と版胴の表面との直線距離を調整しており、この直線距離に関しいわゆるフィードバック制御を行っている。そのため、被印刷体に形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0020】
上記各印刷装置において好ましくは、ブランケットの表面に形成されたインキ膜を変性させて、インキ膜の流動性を低下させる変性手段を更に備え、変性手段は、ブランケット胴の周囲において、インキ塗布手段よりもブランケット胴の回転方向の下流側で且つ版胴よりもブランケット胴の回転方向の上流側に配置されている。このようにすると、ブランケットの表面におけるインキ膜の流動性が低下することで、インキ膜の厚みの均一性がより十分に維持されることとなる。そのため、ブランケットの表面に形成されたインキパターンを、その精度を維持したままブランケットの表面に保持することができ、又は、版胴の凸部の表面に移載されたインキ膜の精度を、その精度を維持したまま版胴の凸部の表面に保持することができる。その結果、被印刷体に形成される樹脂層における厚みの均一性及びパターンの精度がより優れたものとなる。なお、ここでいう変性には、インキに架橋性樹脂組成物が含まれている場合に、当該架橋性樹脂組成物を架橋させることによるインキ樹脂組成の変性や、インキに含まれる溶媒の蒸発によるインキ樹脂組成の変性が含まれるものとする。
【0021】
上記の変性手段を更に備える印刷装置において好ましくは、インキ塗布手段によって塗布されるインキには、架橋性樹脂組成物が含まれており、変性手段は、ブランケットの表面に形成されたインキ膜の架橋性樹脂組成物を架橋させる。
【0022】
上記各印刷装置において好ましくは、版胴の周囲に配置されている洗浄手段は、版胴の表面に洗浄液を噴射する液体噴射ノズルと、版胴の表面に気体を噴射して版胴の表面の水分を除去する気体噴射ノズルとを有する。
【0023】
一方、本発明に係る印刷方法は、ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、インキ膜に版胴の凸部を付着させることでブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を除去して、ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成するインキパターン形成工程と、被印刷体をブランケットに加圧しつつ接触させることで、ブランケットの表面上のインキパターンを被印刷体に連続的に転写する転写工程と、ブランケットの表面のうち、転写工程においてブランケット上のインキパターンが被印刷体に転写された後の部分を清掃する清掃工程と、版胴の表面のうち、インキパターン形成工程において版胴の凸部にインキ膜が付着された部分を洗浄する洗浄工程とを行う。
【0024】
本発明に係る印刷方法では、円柱状のブランケット胴の回転中に、インキ塗布工程、インキパターン形成工程、転写工程、清掃工程がこの順に行われる。また、本発明に係る印刷方法では、円柱状の版胴の回転中に、インキパターン形成工程及び洗浄工程がこの順に、つまり、インキパターン形成工程において版胴の凸部の表面にインキ膜が付着された後に洗浄工程が行われる。そのため、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る印刷方法は、ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、ブランケットの表面にインキを塗布することで、ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、インキ膜に版胴の凸部を付着させることで、ブランケットの表面からインキ膜のうち所定の部分を版胴の凸部の表面に移載する移載工程と、被印刷体を版胴に加圧しつつ接触させることで、版胴の表面に移載されたインキ膜を被印刷体に連続的に転写する転写工程と、ブランケットの表面のうち、移載工程においてブランケット上のインキ膜が版胴の凸部に移載された後の部分を清掃する清掃工程と、版胴の表面のうち、転写工程において版胴の凸部からインキ膜が被印刷体に転写された後の部分を洗浄する洗浄工程とを行う。
【0026】
本発明に係る印刷方法では、円柱状のブランケット胴の回転中に、インキ塗布工程、移載工程及び清掃工程がこの順に行われる。また、本発明に係る印刷方法では、円柱状の版胴の回転中に、移載工程、転写工程及び洗浄工程がこの順に、つまり、移載工程において版胴の凸部の表面に付着されたインキ膜を被印刷体に転写した後に洗浄工程が行われる。そのため、被印刷体が基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となる。
【0027】
好ましくは、ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持する。ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が25℃未満であると、インキの乾燥が遅くなるので、生産性が低下する傾向にあり、場合によっては版胴の表面に結露が生じ、転写不良が発生することもある。ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が80℃を超えると、インキの乾燥が速くなりすぎてしまい、転写性のコントロールが難しくなる傾向にあると共に、インキパターン形成工程又は移載工程において版胴の温度変化に伴う熱膨張の制御も難しくなり、被印刷体にインキパターンを転写するときの位置精度が低下してしまう傾向にある。また、温度調節手段により、ブランケット胴、版胴及び圧接手段の温度が、予め設定された設定温度に対して±2℃以内の変動幅を超えると、版の変形や寸法変化が大きくなるので、転写精度が低下する傾向にある。
【0028】
好ましくは、被印刷体はフィルム状である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被印刷体がフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0031】
[第1実施形態]
(1)印刷装置の構成
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る印刷装置10Aの構成について説明する。印刷装置10Aは、基板やフィルム状の被印刷体Pに透明着色樹脂層、ブラックマトリクス、スペーサ等を形成するための装置である。印刷装置10Aは、表面にブランケット12aが設けられたブランケット胴12と、表面に所定パターンの凸部14aが設けられた版胴14と、圧胴(圧接手段)16と、コーティングダイ(インキ塗布手段)18と、ビーム源(変性手段)20と、清掃ユニット(清掃手段)22と、洗浄ユニット(洗浄手段)24とを備える。
【0032】
ブランケット胴12(ブランケット12a)の周囲には、ブランケット胴12の回転方向(図1の矢印A方向)の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22が配置されている。版胴14の周囲には、版胴14の回転方向(図1の矢印B方向)の順に、ブランケット胴12(ブランケット12a)及び洗浄ユニット24が配置されている。
【0033】
(1.1)ブランケット胴及びブランケット
ブランケット胴12は円柱形状を呈している。ブランケット胴12は、中心軸12bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸12b回りに回転可能となっている。
【0034】
ブランケット12aは、円筒状を呈し、所定の弾性を有しており、ブランケット胴12の周面上に形成されている。ブランケット12aの材料としては、特に制限されないが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂など耐溶媒性及びインキ膜の離形性に優れた材料を用いることが好ましく、さらに、これらの樹脂の表面を撥水処理等したものを用いることが好ましい。
【0035】
(1.2)コーティングダイ
コーティングダイ18は、毛管通路を有する、いわゆるキャピラリコータである。コーティングダイ18は、図示しないインキ槽からラインを介して供給されるインキを、毛管通路の一端であるインキ入口を介して受け入れ、毛管通路の他端である細長矩形形状のスリットからこのインキを横方向又は下方に向けて排出(装置の構成上の制約による)して、ブランケット12aの表面にインキ膜F(図2等参照)を形成する。
【0036】
コーティングダイ18は、スリットの長さ方向がブランケット胴12の中心軸12bの方向と平行となるように配置されている。スリットの幅は、特に限定されないが、0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。なお、比較的均一な厚みのインキ膜Fをブランケット12aの表面に塗布できるコーターであれば、例えば、ワイヤバーコータ、スリットコータ、ダイコータ等の種々のインキ塗布手段を用いることが可能である。とりわけインキ膜Fの均一性の点から、ダイコータやキャピラリコータが好ましい。
【0037】
コーティングダイ18は、図示しないコーティングダイ移動部によって移動可能とされている。具体的には、図1に示されるように、コーティングダイ18がブランケット胴12の側方に配置されている場合、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって左右方向に移動される。また、コーティングダイ18がブランケット胴12の上方に配置されている場合、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって上下方向に昇降される。また、コーティングダイ18がブランケット胴12の下方に配置されている場合も、コーティングダイ18はコーティングダイ移動部によって上下方向に昇降される。
【0038】
インキ槽は、インキを貯留するタンクである。このインキ槽は、図示しないインキ槽昇降部によって昇降可能とされている。
【0039】
ここで、インキ槽とコーティングダイ18との上下方向の相対位置を調節することにより、スリットから排出されるインキの排出速度を調節できる。また、スリットからのインキの排出速度と、ブランケット胴12の回転速度とを調節することにより、ブランケット12a上に塗工されるインキ膜Fの厚みを制御できる。インキ膜Fの厚みは、例えば、1μm〜2μm程度とすることができる。
【0040】
(1.3)インキ
本発明において用いられるインキは、架橋可能な架橋性樹脂組成物を含むものであり、架橋することにより透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサを形成できる。ブラックマトリクスやスペーサは、遮光性樹脂層であることが好ましい。
【0041】
架橋性樹脂組成物としては、紫外線、可視光線等の光が照射されると架橋する光架橋性樹脂組成物や、加熱されると架橋する熱架橋性樹脂組成物、X線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋する電離放射線架橋性樹脂組成物が挙げられる。ただし、紫外線、可視光線等の光照射による架橋は、インク塗布後にインク膜Fの流動性を制御する手段としては必ずしも必須ではなく、形成されたインキパターン(詳しくは後述する)を固定するために樹脂を架橋するようにしてもよい。
【0042】
このような架橋性樹脂組成物は、バインダーポリマー、架橋材、及び、架橋開始剤を含むことができる。架橋開始剤としては、光架橋開始剤、熱架橋開始剤、電離放射線架橋開始剤等が挙げられる。熱架橋開始剤は、基材の仕様温度以下の熱で使用可能であることが好ましい。
【0043】
また、所望の着色や遮光性を得るために、インキは、着色剤を含むことができる。
【0044】
さらに、必要に応じて、インキは、粘度を調整するための溶媒、着色剤の安定性を改善するための分散剤や界面活性剤を含むことができる。以下各成分について詳述する。
【0045】
(1.3.1)着色剤
着色剤としては染料や顔料を用いることができるが、特に、耐環境性、耐熱性に優れる顔料を用いることが好適である。顔料としては有機および無機顔料を用いることができ、具体的には、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)でピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー214などの黄色顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ42、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73などのオレンジ色顔料、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメンレッド264、C.I.ピグメントレッド265などの赤色顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60などの青色顔料、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38などの紫色顔料、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37などの緑色顔料、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25などの茶色顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などの黒色顔料などが挙げられる。好ましい顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン36が挙げられる。これらの有機顔料および無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機顔料および無機顔料のうち、有機顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性基または塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、あるいは不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理が施されていてもよい。
【0046】
着色剤の含有量は、インキの全固形分に対して質量分率で通常1質量%以上60質量%以下、好ましくは3質量%以上50質量%以下の範囲で用いられる。
【0047】
(1.3.2)架橋性樹脂組成物
架橋性樹脂組成物は、光、電離放射線の照射や加熱により架橋してネットワーク構造(三次元網目構造)を形成し得る透明な樹脂である。
【0048】
架橋性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)架橋剤、及び(C)架橋開始剤を含むことができる。
【0049】
(A)バインダーポリマー
バインダーポリマーは、着色剤を分散することができ、かつ、架橋剤と重合してネットワーク構造を形成させることができる透明樹脂であれば特に限定されない。
【0050】
バインダーポリマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタンのような不飽和カルボン酸オキセタンエステル化合物等を単量体とするポリマーが挙げられる。
【0051】
また、バインダーポリマーとしては、メラミンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂を挙げることもできる。
【0052】
バインダーポリマーとしては、上述の単量体をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせた共重合体を使用することもできる。共重合体としては、例えばベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン/メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体などが挙げられる。特に、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体が好ましい。共重合体におけるカルボキシル基を有する単量体単位の含有量は質量分率で5〜50%、好ましくは10〜40%である。
【0053】
バインダーポリマーは、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる重量平均分子量が5,000〜400,000の範囲(さらには10,000〜300,000の範囲にあるのが好ましい。バインダーポリマーは、インキの全固形分に対して質量分率で通常5〜90%の範囲、好ましくは20〜70%の範囲で用いられる。
【0054】
(B)架橋剤
架橋剤は、光や電離放射線の照射、あるいは、加熱により架橋開始剤から発生した活性ラジカル、酸などによって重合開始し得る化合物であり、バインダーポリマーと重合反応を生じてネットワーク構造を形成させる重合性化合物である。架橋剤としては、例えば重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋剤は、単官能の重合性化合物であってもよいし、2官能または3官能以上の多官能の重合性化合物であってもよい。単官能重合性化合物としては、例えばノニルフェニルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。2官能重合性化合物としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3官能以上の重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましい架橋剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0055】
このような架橋剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。1種類の架橋剤を単独で用いる場合には2官能以上の重合性化合物が好ましく用いられ、2種以上の架橋剤を用いる場合には少なくとも1種は2官能以上の重合性化合物を用いることが好ましい。架橋剤の使用量は、バインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部あたり通常は0.1質量部以上70質量部以下、好ましくは1質量部以上60質量部以下である。
【0056】
加熱による活性ラジカル、酸発生剤としては、被印刷物の物性を考慮して加熱による収縮等が生じない範囲で使用することが可能な開始剤を選定することが好ましい。また、光、電離放射線の照射による活性ラジカル、酸発生剤を併用することもできる。
【0057】
(C)架橋開始剤
架橋開始剤は、光や電離放射線の照射、あるいは、加熱によりラジカル等の活性種を生じ、バインダーポリマーと架橋剤との架橋反応を開始させる化合物である。
【0058】
光架橋開始剤としては、光を照射されることによって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤が挙げられ、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、メタロセン化合物などが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン メソクロライドなどが挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。光架橋発生剤としては、活性ラジカル発生剤を使用することができ、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などを用いることもできる。このような光架橋開始剤として、市販のものを用いることもできる。市販の光架橋開始剤としては、例えば、商品名「Irgacure-907」(アセトフェノン系光重合開始剤、CibaSpecialtyChemicals社製)などが挙げられる。メタロセン化合物としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0059】
これらの光架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。光架橋開始剤の使用量は、バインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部に対して通常1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下である。
【0060】
また、熱架橋開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ターシャリーブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等の公知の開始剤を任意好適に用いることができる。これらの熱架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、電離放射線架橋開始剤としても、公知の開始剤を任意好適に用いることができる。これらの電離放射線架橋開始剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
ここで、これらの架橋開始剤の量は、ビーム源20によって半架橋状態(詳しくは後述)まで架橋させるのに必要な量よりも過剰に配合し、被印刷体Pに転写した後の最終的な加熱や光の照射等によって透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサ等を完全に硬化させることができるようにすることが好ましい。
【0063】
(1.3.3)架橋開始助剤
インキは、架橋開始助剤を含有していてもよい。架橋開始助剤は、架橋開始剤と組み合わせて配合され、架橋開始剤によって開始した架橋剤による架橋を促進するために用いられる化合物である。光架橋開始剤と共に用いられる光架橋開始助剤としては、例えばアミン系化合物、アルコキシアントラセン系化合物などが挙げられる。アミン系化合物としては、例えばトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称ミヒラーズケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。アルコキシアントラセン系化合物としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。光架橋開始助剤として市販のものを用いることもでき、市販の光架橋開始助剤としては、例えば商品名「EAB-F」(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。該光架橋開始助剤を用いる場合、その使用量は、光架橋開始剤1モルあたり通常10モル以下、好ましくは0.01モル以上5モル以下である。光架橋開始剤および光架橋開始助剤を用いる場合の使用量は、その合計量がバインダーポリマーおよび架橋剤の合計量100質量部に対して通常1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下である。
【0064】
また、熱架橋開始剤や電離放射線架橋開始剤用の架橋開始助剤も、公知のものを任意好適に用いることができる。
【0065】
(1.3.4)溶媒
このインキはさらに溶剤を含んでもよい。溶剤としては、例えば、水や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、アニソール、フェネトール、メチルアニソールなどの芳香族脂肪族エーテル類、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。こうした溶剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができ、インキにおける溶剤の含有量が質量分率で通常20質量%以上90質量%以下、好ましくは50質量%以上85質量%以下となるように使用される。
【0066】
(1.3.5)その他の添加剤
このインキは、さらに、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、バインダーポリマー以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、凝集防止剤、有機酸、硬化剤などが挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられる。
【0068】
密着促進剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0069】
凝集防止剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0070】
また、このインキは、ビーム源20によって架橋される前にブランケット12aの表面で迅速かつ十分にインキ膜Fを平坦化(レベリング)すべく、粘度が1mPa・s〜50mPa・s、降伏値が10mPa以下であることが好ましい。インキ膜Fの平坦化は、主としてインキの表面張力によりブランケット12a上でインキが流動することにより起こる。上述の粘度及び降伏値のインキを用いると、インキ膜Fが迅速かつ十分に平坦化してインキ膜Fの厚みをほぼ均一にできる。ここで、インキの粘度が1mPa・s未満であると、ブランケット12a上に塗布したインキの垂れや、コーティングダイ18のスリットからのインキのボタ落ちが生じる傾向にある。インキの粘度が50mPa・sを超えると、インキ膜の厚みの均一性を十分に確保し難くなり、また、インキ膜Fの平坦化に必要な時間が長くなるため生産性が低下しやすい傾向がある。さらに、一般的に入手可能なインキでは、着色材や樹脂を含有しているため、粘度は通常2mPa・s以上である場合が多い。また、降伏値が10mPaを超えると、ブランケット12a上でインキ膜Fを平坦化(レベリング)することが困難となる傾向があり、塗布むらが顕著になる傾向がある。
【0071】
(1.4)ビーム源
ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されたインキ膜Fを変性させる変性手段である。第1実施形態において、ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されたインキ膜Fに対して、紫外線や赤外線、電離放射線等を照射し、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物を架橋させ、架橋したインキ膜Fを形成する。
【0072】
ビーム源20としては、インキ中の架橋性樹脂組成物を架橋させることができるビームを照射するものであれば特に限定されない。例えば、架橋性樹脂組成物が紫外線や可視光線等の光の照射により架橋する光架橋性樹脂組成物であれば、ビーム源20としてその光架橋性樹脂組成物を架橋可能な紫外線や可視光線等の光を放射する光源を用いることができる。このような光源は比較的低コストである。
【0073】
また、架橋性樹脂組成物が加熱により架橋する熱架橋性樹脂組成物であれば赤外線ランプ等を利用できる。
【0074】
また、架橋性樹脂組成物が電離放射線の照射により架橋する電離放射線架橋性樹脂組成物であれば、公知の、X線源、電子銃、γ線源等を利用できる。
【0075】
特に、インキとして紫外線架橋性樹脂組成物を含むインキを用い、ビーム源20としてこの紫外線架橋性樹脂組成物を硬化可能な紫外線を発生する紫外線ランプを用いると、低コストな設備でありながら架橋に要する時間を短縮でき、さらに、ブランケット胴12があまり加熱されずブランケット胴12等の熱膨張が起きにくいのでインキパターンの位置や形状の精度を極めて高くできて好ましい。
【0076】
紫外線ランプとしては、高圧水銀ランプ、青色LED、紫外LED、ハロゲンランプ等を好適に用いることができる。
【0077】
ビーム源20は、ブランケット12aの表面に塗布されてから所定の時間経過した、すなわち、コーティングダイ18から排出されてブランケット12aに貼り付けられた場所から、ブランケット胴12の回転により所定の距離を移動した後のインキ膜Fに光を照射するように配置されている。これにより、このビーム源20から光が照射される前に、ブランケット12aに塗布されたインキ膜Fが表面張力等によって十分均一な厚みとなるまで流動、すなわち平坦化することができるようなっている。具体的には、ビーム源20は、例えば、ブランケット12aに塗布されてからブランケット胴12が1/8〜1/4回転程度移動した後のインキ膜Fに光を照射するように配置されている。塗布してから照射するまでの距離(時間)は、インキの性質や塗工速度に応じて適宜好適に設計できる。
【0078】
ここで、ビーム源20からのビームの照射の強さを、インキ膜Fにおける架橋性樹脂組成物の架橋度が完全架橋状態となる程度の強さとしても良いが、インキ膜71の架橋性樹脂組成物が半架橋状態すなわちゲル状となる程度の強さとすることが好ましい。こうすることにより、後工程でのインキ膜Fからのインキパターンの形成や、このインキパターンの被印刷体Pへの転写が好適に行える。
【0079】
ここで、具体的には、半架橋状態とは、インキ膜Fの降伏値が20mPa〜500mPa程度となる状態である。架橋後のインキ膜Fの降伏値が20mPa未満の場合には、インキが流動しやすいために、インキパターンが流動し変形したり、インキパターン内の膜厚分布が変動しやすくなり、厚みの均一性やインキパターンの精度が維持し難い傾向にある。一方、降伏値が500mPaを超える場合には、インキ膜Fが硬くなり、インキパターンの形成やインキパターンの被印刷体Pへの印刷性が悪くなる傾向がある。
【0080】
(1.5)版胴
版胴14は、円柱形状を呈しており、ブランケット12aの表面に形成されたインキ膜Fから、被印刷体Pに転写しない不要部分を除去してインキパターンを形成するためのものである。版胴14は、インキ膜Fの不要部分に対応する部分に凸部14aが所定のパターンで形成されており、インキ膜Fの残すべき部分に対応する部分(印字部分)が凹状とされている。凸部14aの高さは、例えば10μm程度である。版胴14は、例えば、金属や樹脂等によって形成することができる。
【0081】
また、版胴14は、中心軸14bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸14b回りに回転可能となっている。なお、図示はしていないが、版胴14には、版胴14をブランケット胴12に向けて移動させ、版胴14の凸部14aをブランケット12aの表面に対し加圧しつつ接触させる圧接機構が設けられている。
【0082】
(1.6)清掃ユニット
【0083】
清掃ユニット22は、ブランケット12aの表面を清掃するものである。清掃ユニット22は、一対のローラ22aと、一対のローラ22aに掛け渡された粘着ベルト22bを有する。
【0084】
一対のローラ22aは、共に同方向に回転することで、粘着ベルト22bを回転させる。粘着ベルト22bは、ブランケット12aの表面に接触しており、被印刷体Pへのインキ膜Fの転写後(詳しくは後述する)におけるブランケット12aの表面に残存しているインキ膜Fを除去する。粘着ベルト22bは、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの樹脂をベースポリマーとする粘着剤が、ゴムや金属製のベルトに形成されたものを用いることができる。また、清掃ユニット22として、上記のような粘着剤がゴムや金属製のローラの表面に形成されたものを用いることもできる。市販の粘着ローラとして、商品名「クリーンルーム用剥離帯電防止クリーニングローラー」(タニムラ株式会社製)を例示することができる。
【0085】
なお、清掃ユニット22としては、後述する洗浄ユニット24と同様のものを用いてもよいが、ブランケット12aは溶媒を容易に吸収して膨潤するため、インキパターンの転写性能の観点から、上記のような粘着ベルト22bをブランケット12aの表面に直接接触させることでインキ膜Fを除去することがより好ましい。
【0086】
(1.7)洗浄ユニット
洗浄ユニット24は、版胴14の表面を洗浄するものである。洗浄ユニット24は、液体噴射ノズル24aと、気体噴射ノズル24bと、筐体24cとを有する。
【0087】
液体噴射ノズル24aは、ブランケット12aの表面又は版胴14の表面に洗浄液を噴射する。液体噴射ノズル24aから噴射される洗浄液の圧力は、5MPa〜50MPa程度の高圧にすることが好ましい。ここで、洗浄液としては、水や樹脂の溶媒を用いることができる。
【0088】
気体噴射ノズル24bは、いわゆるエアナイフであり、ブランケット12aの表面又は版胴14の表面に気体(空気)を噴射する。筐体24cは、版胴14に向けて開放されている。筐体24c内部は、隔壁によって3つの部屋に区画されており、各部屋は、版胴14の回転方向(図1の矢印B方向)に沿って並んでいる。
【0089】
各部屋のうち版胴14の回転方向の最も上流側に位置する部屋の中には、液体噴射ノズル24aが配置されている。各部屋のうち版胴14の回転方向の最も下流側に位置する部屋の中には、気体噴射ノズル24bが配置されている。各部屋には、版胴14とは離れた側の壁部に、排気及び排液のための管がそれぞれ設けられている。
【0090】
(1.8)圧胴
圧胴16は、円柱形状を呈しており、インキパターンが転写されるべき被印刷体Pを支持する。圧胴16は、中心軸16bが図示しない支持体によって支持されており、それにより中心軸16b回りに回転可能となっている。
【0091】
なお、図示はしていないが、圧胴16には、圧胴16をブランケット胴12に向けて移動させ、圧胴16をブランケット12aの表面に対し加圧しつつ接触させる圧接機構が設けられている。
【0092】
(2)印刷方法
続いて、図2〜図4を参照して、第1実施形態に係る印刷装置10Aを用いた被印刷体Pへのインキパターンの印刷方法について説明する。
【0093】
まず、図示しないコーティングダイ移動部によってコーティングダイ18を移動させ、コーティングダイ18のスリットとブランケット12aの表面との間隔を約30μm〜300μmとする。次に、インキ槽移動部によってインキ槽に貯留されているインキの水面をコーティングダイ18のスリットよりも上昇させることで、コーティングダイ18のスリットからインキを少し排出させて、ビード(液の盛り上がり)を形成する。
【0094】
続いて、コーティングダイ18をさらにブランケット12aの表面に近づけて、ビードをブランケット12aの表面に接触(接液)させた後、コーティングダイ18とブランケット12aの表面との間隔を50μm〜200μm程度に調整し、コーティングを開始する。このときのコーティングダイ18とブランケット12aの表面と間隔は、インキの種類などに応じて適宜調整される。この状態で、ブランケット胴12を時計回り(図2の矢印A方向)に回転させることで、コーティングダイ18のスリットからインキを引き出して、ブランケット12aの表面にインキ膜Fを形成する。
【0095】
そして、ブランケット胴12は、インキ膜Fがブランケット12aの表面に張り付いてから1/8〜1/4回転程度回転され、この間にインキ膜Fは、その表面張力等により表面が平滑化され膜厚が均一化される。
【0096】
続いて、図2に示されるように、このように厚みが均一となったインキ膜Fに対して、ビーム源20から紫外線等のビームを照射することにより、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物が架橋する。架橋したインキ膜Fは、粘度や降伏値が架橋前のインキ膜Fよりも上昇した状態となり、インキの流動性が低くなっている。従って、ビーム源20のビーム照射により、インキ膜Fの厚みの均一性が極めて高い状態がブランケット12aにおいて維持されることとなる。
【0097】
さらにブランケット胴12が回転すると、図3に示されるように、架橋したインキ膜Fが版胴14の凸部14aに付着する。これにより、インキ膜Fのうち版胴14の凸部14aに対応する部分F1が、ブランケット12aの表面から除去されて版胴14の凸部14aの表面に移載し、ブランケット12aの表面にはインキパターンF2が形成される。つまり、インキパターンF2は、版胴14の凸部14aでない部分(凹部)に対応する形状となっている。なお、このとき版胴14の凸部14aは、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。
【0098】
さらにブランケット胴12が回転すると、図4に示されるように、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンF2がフィルム状の被印刷体Pに連続的に転写される。なお、このとき、圧胴16は、ブランケット胴12とは逆方向(図4の矢印C方向)に回転しており、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。
【0099】
その後、必要に応じてインキパターンF2を加熱したり、インキパターンF2に光を照射したりして、インキパターンF2を完全に硬化する。以上の工程を赤色、緑色、青色の各色のインキについて行うことにより、各色の透明着色樹脂層が被印刷体P上に形成されることとなる。
【0100】
なお、被印刷体Pへのインキパターンの印刷を行う際には、図示しない温度調節手段によって、ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持すると好ましい。ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が25℃未満であると、インキの乾燥が遅くなるので、生産性が低下する傾向にあり、場合によっては版胴14の表面に結露が生じ、転写不良が発生することもある。ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が80℃を超えると、インキの乾燥が速くなりすぎてしまい、転写性のコントロールが難しくなる傾向にあると共に、ブランケット12aの表面にインキパターンF2を形成する際に版胴14の温度変化に伴う熱膨張の制御も難しくなり、被印刷体PにインキパターンF2を転写するときの位置精度が低下してしまう傾向にある。また、図示しない温度調節手段により、ブランケット胴12、版胴14及び圧胴16の温度が、予め設定された設定温度に対して±2℃以内の変動幅を超えると、版の変形や寸法変化が大きくなるので、転写精度が低下する傾向にある。
【0101】
さらに、必要に応じて、これらの透明着色樹脂層上にオーバーコート層や、ITO等から形成され液晶の共通電極として用いられる透明導電膜をそれぞれ公知の方法により形成することによって、液晶用のカラーフィルタが完成する。
【0102】
さらに、液晶表示素子を形成する場合には、例えば、引き続いて、公知の方法により、透明導電膜上に配向膜を形成し、配向膜上にスペーサを挟んでTFT基板を対向配置し、配向膜とTFT基板との間に液晶を封入する。TFT基板は、TFT機能素子の下面に画素電極及び配向膜を有しており、TFT機能素子の上には偏光膜が形成されている。このスペーサを、第1実施形態に係る印刷装置10Aで形成してもよい。
【0103】
以上のような第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ブランケット胴12及び版胴14が共に円柱状で且つ回転可能とされている。また、第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ブランケット胴12の周囲に、ブランケット胴12の回転方向の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14、圧胴16及び清掃ユニット22を配置しており、版胴14の周囲に、版胴14の回転方向の順に、ブランケット胴12及び洗浄ユニット24を配置している。そのため、ブランケット胴12においては、ブランケット12aへのインキの塗布、インキ膜Fの所定部分の除去、インキパターンF2の被印刷体Pへの転写及びブランケット12aの表面の清掃が順次行われ、版胴14においては、インキ膜Fの版胴14の凸部14aへの移載及び版胴14の表面の洗浄が順次行われることとなる。その結果、被印刷体Pが基板である場合のみならずフィルム等の可撓性を有するものであっても、厚みの均一性及びパターンの精度に優れた樹脂層を連続的に印刷することが可能となっている。
【0104】
また、第1実施形態に係る印刷装置10Aにおいては、ビーム源20によってインキ膜F中の架橋性樹脂組成物を架橋させ、架橋したインキ膜Fを形成している。このようにすると、ブランケット12aの表面におけるインキ膜Fの流動性が低下することで、インキ膜Fの厚みの均一性がより十分に維持されることとなる。そのため、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンF2を、その精度を維持したままブランケット12aの表面に保持することができる。その結果、被印刷体Pに形成される樹脂層における厚みの均一性及びパターンの精度がより優れたものとなる。
【0105】
[第2実施形態]
(1)印刷装置の構成
続いて、図5を参照して、第2実施形態に係る印刷装置10Bの構成について、第1実施形態に係る印刷装置10Aとの相違点を中心に説明する。
【0106】
ブランケット胴12(ブランケット12a)の周囲には、ブランケット胴12の回転方向(図5の矢印A方向)の順に、コーティングダイ18、ビーム源20、版胴14及び清掃ユニット22が配置されている。版胴14の周囲には、版胴14の回転方向(図5の矢印B方向)の順に、ブランケット胴12(ブランケット12a)、圧胴16及び洗浄ユニット24が配置されている。
【0107】
(2)印刷方法
続いて、図6〜図8を参照して、第2実施形態に係る印刷装置10Bを用いた被印刷体Pへの印刷方法について、第1実施形態に係る印刷装置10Aを用いた被印刷体Pへの印刷方法との相違点を中心に説明する。
【0108】
図6に示されるように、厚みが均一となったインキ膜Fに対して、ビーム源20から紫外線等のビームを照射することにより、インキ膜F中の架橋性樹脂組成物が架橋する。
【0109】
さらにブランケット胴12が回転すると、図7に示されるように、架橋したインキ膜Fが版胴14の凸部14aに付着する。これにより、インキ膜Fのうち版胴14の凸部14aに対応する部分F1が、ブランケット12aの表面から除去されて版胴14の凸部14aの表面に移載する。
【0110】
さらにブランケット胴12が回転すると、図8に示されるように、版胴14の凸部14aの表面に移載したインキ膜F1がフィルム状の被印刷体Pに連続的に転写される。つまり、第2実施形態に係る印刷装置10Bでは、版胴14の凸部14aのパターンがそのままインキパターンF2となる。
【0111】
その後、必要に応じてインキパターンF2を加熱したり、インキパターンF2に光を照射したりして、インキパターンF2を完全に硬化する。
【0112】
以上のような第2実施形態に係る印刷装置10Bおいては、第1実施形態に係る印刷装置10Aと同様の作用効果を奏する。
【0113】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態ではフィルム状の被印刷体Pを例に説明したが、図9に示されるように、被印刷体Pとしてガラス基板等の基板を用いた印刷装置10Cにも本発明を適用できる。このとき、基板である被印刷体Pをステージ26に載置した状態で、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンを被印刷体Pに転写する。インキパターンの被印刷体Pへの転写の際には、ステージ26を移動させるようにしてもよく、ステージ26以外を移動させるようにしてもよい。なお、このときステージ26は、図示しない圧接機構によりブランケット12aの表面に圧接されている。さらに、図9では、第1実施形態に係る印刷装置10Aと同様、ブランケット12aの表面に形成されたインキパターンを基板である被印刷体Pに転写しているが、第2実施形態に係る印刷装置10Bと同様、版胴14の凸部14aの表面に移載されたインキ膜F1を基板である被印刷体Pに転写するようにしてもよい。
【0114】
また、図10に示されるように、非接触センサ(計測手段)28を用いてブランケット12aの厚み方向における変位量(ブランケット12aの膨潤)を計測するようにしてもよい。そして、この非接触センサ28によって計測された当該変位量に基づいて、第1実施形態に係る印刷装置10Aの場合には、ブランケット12aの表面と版胴14の表面との直線距離、及び、ブランケット12aの表面と被印刷体Pとの直線距離のうち少なくとも一方を、第2実施形態に係る印刷装置10Bの場合には、ブランケット12aの表面と版胴14の表面との直線距離を、調整するようにしてもよい。
【0115】
調整は、図11に示されるような調整機構30Aを用いることができる。調整機構30Aは、台座部30aと、ねじ部30bとを有する。ねじ部30bは、図11のZ軸方向に沿って延びており、その一端が台座部30aと接続され、その他端がブランケット胴12の中心軸12bを支持する軸受32に取り付けられている。軸受32の両側には、ガイドとして機能する一対の軸受ガイド34が配置されている。そのため、このような構成を有する調整機構30Aでは、ねじ部30bを図示しない駆動源によって回転させることで、一対の軸受ガイド34に沿ってブランケット胴12が昇降し、ブランケット胴12の高さが調整されることとなる。
【0116】
また、調整は、図12に示されるような調整機構30Bを用いることもできる。調整機構30Bは、台座部30aと、ねじ部30bと、テーパ部材30cとを有する。ねじ部30bは、図12のY軸方向に沿って延びており、その一端がテーパ部材30cと螺合している。テーパ部材30cは、その下面が台座部30aと当接しており、その上面が下面に対して傾斜した傾斜面となっている。そのため、このような構成を有する調整機構30Bでは、ねじ部30bを図示しない駆動源によって回転させてテーパ部材30cを図12のY軸方向に沿って移動させることで、一対の軸受ガイド34に沿ってブランケット胴12が昇降し、ブランケット胴12の高さが調整されることとなる。
【0117】
ところで、ブランケット12aに低粘度のインキを塗布すると、インキに含まれる溶剤がブランケット12aに浸透し、ブランケット12aを膨潤させる。このようにブランケット12aが膨潤すると、版胴14の凸部14a以外の部分にもブランケット12aが接触してしまい、本来ブランケット12aに残さなければならないインキまでもが版胴14の凸部14aに移載されてしまうことがある。しかしながら、上記のように、計測手段28によってブランケット12aの膨潤量を把握し、この変位量(膨潤量)に基づいて、調整機構30A,30Bによって、上記直線距離に関しフィードバック制御を行うことで、被印刷体Pに形成される樹脂層のパターンを高精度に維持することができ、また、調整作業が簡略化されることにより印刷装置の稼働率を従来よりも高めることができる。
【0118】
また、架橋性樹脂組成物以外にもブランケット12aの表面に形成したインキ樹脂の流動性を制御することは可能である。例えば、ブランケット12aへのインキの塗布時にインキに含まれる溶媒をブランケット12aに吸収させたり、ブランケット12aの表面に形成したインキ膜Fの表面からインキに含まれる溶媒を自然蒸発又は強制的に蒸発させたりすることで、インキ樹脂の流動性を制御することができる。ブランケット12aの表面に形成したインキ膜Fの表面からインキに含まれる溶媒を強制的に蒸発させる場合には、溶媒の蒸発を促進するための加温手段(ヒータ)を用いることができる。
【0119】
また、カラーフィルタの透明着色樹脂層やブラックマトリクスやスペーサに限らず、他の電子デバイスの形成等に用いる樹脂層、例えば、レジスト層等のパターン形成にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、第1実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る印刷装置を用いた被印刷体への印刷方法を説明するための図である。
【図3】図3は、図2の後続の工程を示す図である。
【図4】図4は、図3の後続の工程を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図6】図6は、第2実施形態に係る印刷装置を用いた被印刷体への印刷方法を説明するための図である。
【図7】図7は、図6の後続の工程を示す図である。
【図8】図8は、図7の後続の工程を示す図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係る印刷装置を示す概略図である。
【図10】図10は、ブランケット胴と非接触センサとのカンケイを模式的に示す図である。
【図11】図11の(a)は、ブランケット胴の高さを調節する機構を示す要部断面図であり、図11の(b)は、ブランケット胴の高さを調節する機構を示す側面図である。
【図12】図12は、ブランケット胴の高さを調節する他の機構を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0121】
10A〜10C…印刷装置、12…ブランケット胴、12a…ブランケット、14…版胴、14a…凸部、16…圧胴(圧接手段)、18…コーティングダイ(インキ塗布手段)、20…ビーム源(変性手段)、22…清掃ユニット(清掃手段)、24…洗浄ユニット(洗浄手段)、28…非接触センサ(計測手段)、F…インキ膜、F2…インキパターン、P…被印刷体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、
所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、
被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させる圧接手段と、
インキを塗布するインキ塗布手段と、
前記ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、
前記版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、
前記ブランケット胴の周囲には、前記ブランケット胴の回転方向の順に、前記インキ塗布手段、前記版胴、前記圧接手段及び前記清掃手段が配置され、
前記版胴の周囲には、前記版胴の回転方向の順に、前記ブランケット胴及び前記洗浄手段が配置されており、
前記インキ塗布手段は、前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成し、
前記版胴は、前記インキ膜に前記凸部を付着させることで前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を除去して、前記ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成し、
前記圧接手段は、前記被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させることで、前記ブランケットの表面上の前記インキパターンを前記被印刷体に連続的に転写する印刷装置。
【請求項2】
前記ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測される変位量に基づいて、前記ブランケットの表面と前記版胴の表面との直線距離、及び、前記ブランケットの表面と前記被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整する調整手段とを更に備える請求項1に記載された印刷装置。
【請求項3】
ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、
所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、
被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させる圧接手段と、
インキを塗布するインキ塗布手段と、
前記ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、
前記版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、
前記ブランケット胴の周囲には、前記ブランケット胴の回転方向の順に、前記インキ塗布手段、前記版胴及び前記清掃手段が配置され、
前記版胴の周囲には、前記版胴の回転方向の順に、前記ブランケット胴、前記圧接手段及び前記洗浄手段が配置されており、
前記インキ塗布手段は、前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成し、
前記版胴は、前記インキ膜に前記凸部を付着させることで、前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を前記版胴の前記凸部の表面に移載し、
前記圧接手段は、前記被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させることで、前記版胴の前記凸部の表面に移載された前記インキ膜を前記被印刷体に連続的に転写する印刷装置。
【請求項4】
前記ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測される変位量に基づいて、前記ブランケットの表面と前記版胴の表面との直線距離を調整する調整手段とを更に備える請求項3に記載された印刷装置。
【請求項5】
前記ブランケットの表面に形成された前記インキ膜を変性させて、前記インキ膜の流動性を低下させる変性手段を更に備え、
前記変性手段は、前記ブランケット胴の周囲において、前記インキ塗布手段よりも前記ブランケット胴の回転方向の下流側で且つ前記版胴よりも前記ブランケット胴の回転方向の上流側に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載された印刷装置。
【請求項6】
前記インキ塗布手段によって塗布される前記インキには、架橋性樹脂組成物が含まれており、
前記変性手段は、前記ブランケットの表面に形成された前記インキ膜の前記架橋性樹脂組成物を架橋させる請求項5に記載された印刷装置。
【請求項7】
前記版胴の周囲に配置されている前記洗浄手段は、前記版胴の表面に洗浄液を噴射する液体噴射ノズルと、前記版胴の表面に気体を噴射して前記版胴の表面の水分を除去する気体噴射ノズルとを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載された印刷装置。
【請求項8】
ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、
前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、
前記インキ膜に前記版胴の前記凸部を付着させることで前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を除去して、前記ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成するインキパターン形成工程と、
被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させることで、前記ブランケットの表面上の前記インキパターンを前記被印刷体に連続的に転写する転写工程と、
前記ブランケットの表面のうち、前記転写工程において前記ブランケット上の前記インキパターンが前記被印刷体に転写された後の部分を清掃する清掃工程と、
前記版胴の表面のうち、前記インキパターン形成工程において前記版胴の前記凸部に前記インキ膜が付着された部分を洗浄する洗浄工程とを行う印刷方法。
【請求項9】
ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、
前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、
前記インキ膜に前記版胴の前記凸部を付着させることで、前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を前記版胴の前記凸部の表面に移載する移載工程と、
被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させることで、前記版胴の表面に移載された前記インキ膜を前記被印刷体に連続的に転写する転写工程と、
前記ブランケットの表面のうち、前記移載工程において前記ブランケット上の前記インキ膜が前記版胴の前記凸部に移載された後の部分を清掃する清掃工程と、
前記版胴の表面のうち、前記転写工程において前記版胴の前記凸部から前記インキ膜が前記被印刷体に転写された後の部分を洗浄する洗浄工程とを行う印刷方法。
【請求項10】
前記ブランケット胴、前記版胴及び前記圧接手段の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持する請求項8又は9に記載された印刷方法。
【請求項11】
前記被印刷体はフィルム状である請求項8〜10のいずれか一項に記載された印刷方法。
【請求項1】
ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、
所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、
被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させる圧接手段と、
インキを塗布するインキ塗布手段と、
前記ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、
前記版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、
前記ブランケット胴の周囲には、前記ブランケット胴の回転方向の順に、前記インキ塗布手段、前記版胴、前記圧接手段及び前記清掃手段が配置され、
前記版胴の周囲には、前記版胴の回転方向の順に、前記ブランケット胴及び前記洗浄手段が配置されており、
前記インキ塗布手段は、前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成し、
前記版胴は、前記インキ膜に前記凸部を付着させることで前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を除去して、前記ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成し、
前記圧接手段は、前記被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させることで、前記ブランケットの表面上の前記インキパターンを前記被印刷体に連続的に転写する印刷装置。
【請求項2】
前記ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測される変位量に基づいて、前記ブランケットの表面と前記版胴の表面との直線距離、及び、前記ブランケットの表面と前記被印刷体との直線距離のうち少なくとも一方を調整する調整手段とを更に備える請求項1に記載された印刷装置。
【請求項3】
ブランケットが表面に設けられ、回転可能とされた円柱状のブランケット胴と、
所定パターンの凸部が表面に設けられ、回転可能とされた円柱状の版胴と、
被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させる圧接手段と、
インキを塗布するインキ塗布手段と、
前記ブランケットの表面を清掃する清掃手段と、
前記版胴の表面を洗浄する洗浄手段とを備え、
前記ブランケット胴の周囲には、前記ブランケット胴の回転方向の順に、前記インキ塗布手段、前記版胴及び前記清掃手段が配置され、
前記版胴の周囲には、前記版胴の回転方向の順に、前記ブランケット胴、前記圧接手段及び前記洗浄手段が配置されており、
前記インキ塗布手段は、前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成し、
前記版胴は、前記インキ膜に前記凸部を付着させることで、前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を前記版胴の前記凸部の表面に移載し、
前記圧接手段は、前記被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させることで、前記版胴の前記凸部の表面に移載された前記インキ膜を前記被印刷体に連続的に転写する印刷装置。
【請求項4】
前記ブランケットの厚み方向における変位量を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測される変位量に基づいて、前記ブランケットの表面と前記版胴の表面との直線距離を調整する調整手段とを更に備える請求項3に記載された印刷装置。
【請求項5】
前記ブランケットの表面に形成された前記インキ膜を変性させて、前記インキ膜の流動性を低下させる変性手段を更に備え、
前記変性手段は、前記ブランケット胴の周囲において、前記インキ塗布手段よりも前記ブランケット胴の回転方向の下流側で且つ前記版胴よりも前記ブランケット胴の回転方向の上流側に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載された印刷装置。
【請求項6】
前記インキ塗布手段によって塗布される前記インキには、架橋性樹脂組成物が含まれており、
前記変性手段は、前記ブランケットの表面に形成された前記インキ膜の前記架橋性樹脂組成物を架橋させる請求項5に記載された印刷装置。
【請求項7】
前記版胴の周囲に配置されている前記洗浄手段は、前記版胴の表面に洗浄液を噴射する液体噴射ノズルと、前記版胴の表面に気体を噴射して前記版胴の表面の水分を除去する気体噴射ノズルとを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載された印刷装置。
【請求項8】
ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、
前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、
前記インキ膜に前記版胴の前記凸部を付着させることで前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を除去して、前記ブランケットの表面に所定のインキパターンを形成するインキパターン形成工程と、
被印刷体を前記ブランケットに加圧しつつ接触させることで、前記ブランケットの表面上の前記インキパターンを前記被印刷体に連続的に転写する転写工程と、
前記ブランケットの表面のうち、前記転写工程において前記ブランケット上の前記インキパターンが前記被印刷体に転写された後の部分を清掃する清掃工程と、
前記版胴の表面のうち、前記インキパターン形成工程において前記版胴の前記凸部に前記インキ膜が付着された部分を洗浄する洗浄工程とを行う印刷方法。
【請求項9】
ブランケットが表面に設けられた円柱状のブランケット胴、及び、所定パターンの凸部が表面に設けられた円柱状の版胴の回転中に、
前記ブランケットの表面にインキを塗布することで、前記ブランケットの表面にインキ膜を形成するインキ塗布工程と、
前記インキ膜に前記版胴の前記凸部を付着させることで、前記ブランケットの表面から前記インキ膜のうち所定の部分を前記版胴の前記凸部の表面に移載する移載工程と、
被印刷体を前記版胴に加圧しつつ接触させることで、前記版胴の表面に移載された前記インキ膜を前記被印刷体に連続的に転写する転写工程と、
前記ブランケットの表面のうち、前記移載工程において前記ブランケット上の前記インキ膜が前記版胴の前記凸部に移載された後の部分を清掃する清掃工程と、
前記版胴の表面のうち、前記転写工程において前記版胴の前記凸部から前記インキ膜が前記被印刷体に転写された後の部分を洗浄する洗浄工程とを行う印刷方法。
【請求項10】
前記ブランケット胴、前記版胴及び前記圧接手段の温度を、25℃以上80℃以下で、且つ、予め設定された設定温度に対して±2℃以内となるように維持する請求項8又は9に記載された印刷方法。
【請求項11】
前記被印刷体はフィルム状である請求項8〜10のいずれか一項に記載された印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−172835(P2009−172835A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12984(P2008−12984)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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