説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】搬送される印刷対象物の印刷領域の高さ位置が変化した場合にも、その印刷領域に対して鉛直方向及び搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から効率良く適正に印刷を施すことができる印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】ペットボトルPBを鉛直方向と交差する搬送方向へ搬送するコンベア1と、搬送されるペットボトルに対して鉛直方向及び前記搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷を施す印刷ヘッド4Hと、印刷ヘッド4Hに対するペットボトルにおける印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報を搬送途中に計測する変位センサ3と、ペットボトルが印刷ヘッドにより印刷を施されるときには、印刷領域と印刷ヘッドとが印刷実行方向において対向した位置状態となるように、印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を計測された相対的な位置情報に基づき調整するヘッド調整装置4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される印刷対象物に対して鉛直方向での相対的な位置関係を調整しつつ印刷を施す印刷装置、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、水平方向に搬送される複数の印刷対象物である包装容器に対して、鉛直方向及び搬送方向の何れの方向とも直交する方向を印刷実行方向に設定した上で、当該印刷実行方向から印刷を施す印刷装置が知られている。特許文献1に記載の印刷装置では、インクを噴射するノズルが形成されたノズル形成面を鉛直方向と平行となるようにした印刷ヘッドが移動台に搭載されている。また、この移動台には、該移動台を鉛直方向に移動させる直動機構が連結され、この直動機構が駆動されることにより、包装容器に設定された印刷領域と印刷ヘッドのノズル形成面とが水平方向において対向するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−264317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、包装容器の軽量化を図るために、包装容器の薄肉化が進められ、これに伴い、包装容器の強度が従来よりも大幅に低下している。そのため、こうした薄肉化された包装容器に内容物が充填されると、包装容器の外形が変化してしまうことがある。すなわち、充填された内容物の重量によって、包装容器の胴体部が外側方向に広がるとともに、この広がりに合わせて、包装容器の高さまでもが変わってしまう。通常、こうした場合には、包装容器の高さが低くなる。そして、包装容器の高さが変化することによって当該包装容器の側面に設定された印刷領域の高さ位置も変わってしまう結果、こうした印刷領域に対する印刷ヘッドによる実印刷位置が鉛直方向において位置ずれしてしまう虞があった。
【0005】
また、例えば、包装容器に対して充填物がホットパック(熱間充填)により充填される場合などには、上記の場合と逆に、包装容器の高さが上昇するようなこともあり、同様に印刷領域に対する印刷ヘッドによる実印刷位置が鉛直方向において位置ずれしてしまう虞があった。それゆえに、こうした事態に対処するためには、包装容器に定められた印刷領域が印刷ヘッドと印刷時には印刷実行方向において対向するように、包装容器ごとに印刷領域と印刷ヘッドとの鉛直方向での相対的な位置関係を調整することが必要となる。なお、ホットパック(熱間充填)とは、飲料などを90度以上に加熱して包装容器に充填し、その後に冷却するもので、包装容器内に加熱した食品、飲料を入れる事で容器内殺菌をできるメリットがあり、包装容器としては缶詰、PETボトル、ガラス瓶などが使われる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷装置に設けられた直動機構は、手動ハンドルの回転操作に連動して回転する雄ねじ棒と、該雄ねじ棒と螺合する雌ねじ孔を有して印刷ヘッドに連結された移動台とから構成されている。このような構成では、作業者ごとによる手動ハンドルの操作のばらつきに応じて印刷領域と印刷ヘッドとの相対的な位置関係にもばらつきが生じてしまう。また、複数の包装容器を連続的に搬送しながら各包装容器に対して印刷を施す場合には、包装容器が短い間隔をおいて搬送される毎に手動ハンドルを操作しての調整作業を短時間で行なわなければならず、その調整作業が困難であった。その
一方、包装容器の搬送速度を遅くしたり、搬送を一時的に中断させたりして、時間を費やした調整作業を行なうのでは作業効率が低下するという問題もあった。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、搬送される印刷対象物の印刷領域の高さ位置が変化した場合にも、その印刷領域に対して鉛直方向及び搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から効率良く適正に印刷を施すことができる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、本発明に係る印刷装置は、印刷対象物を鉛直方向と交差する搬送方向へ搬送する搬送手段と、当該搬送手段により搬送される前記印刷対象物に対して前記鉛直方向及び前記搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷を施す印刷ヘッドと、当該印刷ヘッドに対する前記印刷対象物における予め設定された印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報を前記印刷対象物の搬送途中に計測する位置計測部と、当該位置計測部により前記位置情報を計測された前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときには、当該印刷ヘッドによる前記印刷対象物に対する実印刷位置が当該印刷対象物における前記印刷領域内となるように、当該印刷領域に対する前記印刷ヘッドの実印刷位置を前記位置情報に基づき調整する位置調整部とを備えることを要旨とする。
【0009】
また、本発明に係る印刷方法は、印刷対象物を鉛直方向と交差する搬送方向へ搬送するとともに、搬送される前記印刷対象物に対して前記鉛直方向及び前記搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷ヘッドにより印刷を施す印刷方法であって、前記印刷ヘッドに対する前記印刷対象物における予め設定された印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報を前記印刷対象物の搬送途中に計測する工程と、前記位置情報を計測された前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときには、当該印刷ヘッドによる前記印刷対象物に対する実印刷位置が当該印刷対象物における前記印刷領域内となるように、当該印刷領域に対する前記印刷ヘッドの実印刷位置を前記位置情報に基づき調整する工程とを備えることを要旨とする。
【0010】
これらの発明によれば、印刷ヘッドが印刷対象物に対して印刷を施す前に、当該印刷ヘッドに対する当該印刷対象物における印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報が計測される。そして、そのように計測された位置情報に基づき、印刷領域に対する印刷ヘッドによる実印刷位置が調整され、その後、印刷領域に対して印刷ヘッドにより印刷が施される。それゆえに、搬送される印刷対象物の印刷領域の高さ位置が変化した場合にも、その印刷領域に対して鉛直方向及び搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から効率良く適正に印刷を施すことができる。
【0011】
また、本発明に係る印刷装置において、前記位置調整部は、前記印刷ヘッドによる前記印刷領域に対する前記実印刷位置を調整する際、前記印刷対象物における前記印刷領域と前記印刷ヘッドとが前記印刷実行方向において対向した位置状態となるように、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記位置情報に基づき調整することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、印刷ヘッドによる印刷領域に対する実印刷位置を調整する際には、印刷領域に対する印刷ヘッドの相対的な位置関係が調整され、その後、印刷領域に対して印刷ヘッドにより印刷が施される。すなわち、印刷時には印刷対象物の印刷領域と印刷ヘッドとが印刷実行方向において対向するように、印刷ヘッドの高さ位置が調整される。したがって、印刷ヘッドの高さ位置を調整するという簡単な調整作業により、適正な印刷を行なうことができる。
【0013】
また、本発明に係る印刷装置において、前記位置調整部は、前記印刷ヘッドと前記印刷対象物における前記印刷領域とが鉛直方向において予め設定された許容範囲を超えて位置ずれしていることを条件として、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記位置情報に基づき調整することが望ましい。
【0014】
この発明によれば、印刷領域と印刷ヘッドとの鉛直方向での位置ずれ量が僅かであって、印刷領域内から印刷内容がはみ出ることがないような場合には、印刷ヘッドの位置調整工程を格別に実施する必要がないので、搬送される印刷対象物の印刷領域に対して効率良く印刷を施すことができる。
【0015】
また、本発明に係る印刷装置では、前記印刷ヘッドによる前記印刷対象物における前記印刷領域に対する実印刷位置と当該印刷対象物における前記印刷領域との鉛直方向における実ずれ量を計測する実ずれ量計測部をさらに備え、前記位置調整部は、前記実ずれ量計測部により計測された前記実ずれ量が予め設定された閾値ずれ量を超えている場合には、前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときに、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記実ずれ量が解消するように調整することが望ましい。
【0016】
印刷対象物の中には、変形の程度や変形し易い部位が各々異なる様々な形状のものがあり、また、変形度合が異なる複数の部品によって構成されるものもある。このような印刷対象物においては、印刷対象物の全高の変位量を計測しただけでは、その印刷対象物の特定部位に設けられた印刷領域の鉛直方向での変位量を正確に把握できない虞がある。すなわち、上述する印刷対象物の全高の変位とは、そもそも当該印刷対象物の一部(又は特定の構成部品)が変形することにより生じるものだからである。また、印刷装置側においても印刷ヘッドの組み付け誤差などを起因とする実印刷位置の位置ずれはあり得る。
【0017】
この点、この発明によれば、印刷ヘッドによる印刷対象物における印刷領域に対する実印刷位置とその印刷対象物における印刷領域との鉛直方向における実ずれ量が印刷結果として計測される。そして、その計測された実ずれ量が予め設定された閾値ずれ量を超えている場合には、その計測された実ずれ量が解消するように印刷ヘッドの鉛直方向の高さ位置が調整された後、以降の印刷対象物に対する印刷が行なわれる。それゆえに、印刷対象物の印刷領域に対する印刷ヘッドの鉛直方向での相対的な位置関係の調整を、印刷ヘッドによる実際の印刷結果を反映させた状態で行うことができるので、そうした調整後には印刷対象物の印刷領域に対して適正に印刷を施すことができる。
【0018】
また、本発明に係る印刷装置において、前記位置調整部は、前記印刷ヘッドが印刷動作中でないことを条件として前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を調整することが望ましい。この発明によれば、印刷領域に対して印刷を施すとき、印刷ヘッドは固定した状態にできるため、印刷内容が乱れる虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における印刷装置の概略構成を模式的に示す斜視図。
【図2】ペットボトルの天面の変位量が計測される過程を模式的に示す側面図。
【図3】印刷領域と印刷ヘッドとの鉛直方向での相対的な位置関係を示す側面図。
【図4】(a)は、印刷領域内に印刷が施された状態を模式的に示す側面図。(b)は、印刷領域から鉛直方向上側にはみ出すように印刷が施された状態を模式的に示す側面図。
【図5】印刷装置の電気的構成を示すブロック回路図。
【図6】印刷装置を用いた印刷処理の流れを示すフローチャート。
【図7】印刷装置を用いた印刷処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
図1に示されるように、印刷装置のコンベア1は、飲料が内部に充填されると共に開口部がキャップにより密閉された状態のペットボトルを鉛直方向と交差する一つの方向である搬送方向に搬送する。図1では、ペットボトルPBの搬送方向が水平方向の矢印によって示されている。印刷装置におけるコンベア1の一側方には、印刷処理に必要とされる各種の動作を制御する制御装置2が配設されている。また、同じくコンベア1の一側方には、ペットボトルPBの天面の鉛直方向における変位量を計測する変位センサ3、印刷ヘッド4Hの鉛直方向での位置を調整するヘッド調整装置4、及びペットボトルPBに印刷された文字列の位置を計測する印刷検査装置5が配置されている。
【0021】
具体的には、ペットボトルPBの搬送方向に沿って、その上流側から下流側へ、変位センサ3、ヘッド調整装置4、及び印刷検査装置5の順に配置されている。そして、制御装置2は、変位センサ3の計測結果と印刷検査装置5の計測結果とに基づいて、ヘッド調整装置4の駆動の態様を制御する。なお、本実施形態では、コンベア1が搬送手段を構成すると共に、変位センサ3が位置計測部を構成し、また、ヘッド調整装置4が位置調整部を構成すると共に、印刷検査装置5が実ずれ量計測部を構成する。そして、ペットボトルPBが印刷対象物を構成する。
【0022】
変位センサ3は、反射式のレーザー変位計であって、コンベア1の水平な搬送面に対して鉛直上方に位置するように、より具体的には、変位センサ3の照射受光面が搬送面と向かい合うように設置されている。変位センサ3は、配線Laによって制御装置2に接続され、制御装置2は、この変位センサ3から入力される制御信号に基づいて、印刷ヘッド4Hの位置調整のための各種の処理を実行する。そして、コンベア1による多数のペットボトルPBが一定間隔をおいて連続的に搬送される搬送動作が開始されると、各ペットボトルPBが変位センサ3の側方位置を通過するごとに、変位センサ3は、該ペットボトルPBについて、キャップCPの天面Tの鉛直方向における位置を計測し、その計測結果を制御装置2に送信する。
【0023】
ヘッド調整装置4では、サーボモーター4Mが、その駆動軸(図示略)を鉛直下方に向けるように、該ヘッド調整装置4の縦長直方体状をなす本体における上端に固定されている。そして、このサーボモーター4Mの駆動軸の先端(図1の場合は下端)には、鉛直下方に延びる雄ねじ棒4bが同軸状に連結されている。また、ヘッド調整装置4における本体のコンベア1側の側面には、鉛直方向に延びる案内溝4gが雄ねじ棒4bと並列配置となるように凹設されている。そして、その案内溝4gに対して、雄ねじ棒4bと螺合する雌ねじ孔4cを貫通形成した可動板4Pの一部が鉛直方向への摺動可能に挿入されている。なお、サーボモーター4Mは、配線Lbによって制御装置2に接続されるとともに、制御装置2から入力される制御信号に基づいて雄ねじ棒4bを正転方向及び逆転方向に回転させるように駆動される。
【0024】
可動板4Pの上面には、雌ねじ孔4cが貫通形成された直方体状のブロック部の他に、アクチュエーター4Aが搭載されている。アクチュエーター4Aには、シリンダー4dが鉛直方向及びコンベア1によるペットボトルPBの搬送方向の何れの方向とも直交(交差)する一方向において進退移動するように配置されている。シリンダー4dにおける先端となるコンベア1側の端には、印刷ヘッド4Hが固定されている。すなわち、印刷ヘッド4Hは、印刷のためのインク(印刷材料)を噴射するノズルが形成された平面状のノズル形成面を有するとともに、そのノズル形成面が鉛直方向に沿う状態でコンベア1側に向くように配置されている。アクチュエーター4Aは、配線Lcによって制御装置2に接続されるとともに、制御装置2から入力される制御信号に基づいて駆動される。また、印刷ヘッド4Hは、配線Ldによって制御装置2に接続されるとともに、制御装置2から入力さ
れる制御信号に基づいて印刷処理を実行する。なお、可動板4Pの下面には、印刷対象物であるペットボトルPBが印刷ヘッド4Hからのインクの噴射を受けて印刷を施される被印刷位置に位置したことを検出するための検出センサ4Sが取り付けられている。
【0025】
上述した構成によれば、サーボモーター4Mが正転又は逆転すると、雄ねじ棒4bが同様に正転又は逆転し、これに伴って、可動板4Pが鉛直方向に上動又は下動することになる。この際、雄ねじ棒4bが正転方向又は逆転方向に1回転すると、雌ねじ孔4cが形成された可動板4Pはねじ1ピッチ分上動又は下動するのみである。そのため、可動板4Pの鉛直方向における位置をサーボモーター4Mの回転によって微調整することが可能である。また、上述したように、可動板4Pの一部は、案内溝4gと鉛直方向への摺動自在に係合している。それゆえに、可動板4Pは、案内溝4gに沿って、すなわち鉛直方向に沿って円滑に上下移動する。また、アクチュエーター4Aが駆動されると、印刷ヘッド4Hのノズル形成面が、アクチュエーター4Aの駆動量に応じてシリンダー4dの進退移動方向である一水平方向に変位する。そして、コンベア1によるペットボトルPBの搬送が開始されると、該ペットボトルPBが印刷ヘッド4Hからのインクの噴射により印刷を施されることになる被印刷位置へ移動するまでに、ヘッド調整装置4は、サーボモーター4Mを駆動させる。そして、変位センサ3により計測された該ペットボトルPBの全高に合わせて、印刷ヘッド4Hの鉛直方向での位置をコンベア1上で調整する。
【0026】
印刷検査装置5は、CCDカメラの撮像したデータを処理する画像処理装置である。この印刷検査装置5におけるCCDカメラの撮像レンズは、印刷結果を撮像することができるように、コンベア1上に向けて設置されている。印刷検査装置5は、配線Leによって制御装置2に接続されている。そして、印刷ヘッド4Hにより被印刷位置で印刷を施されたペットボトルPBが被印刷位置よりも搬送方向の下流側へコンベア1により搬送され、そのペットボトルPBが撮像レンズと対応した被検査位置まで搬送されると、印刷検査装置5は、印刷ヘッド4HによってペットボトルPBに印刷された文字列をCCDカメラで撮像する。そして、その後に、印刷検査装置5は、該撮像された文字列を示す撮像データを制御装置2に送信する。
【0027】
次に、印刷ヘッド4Hの位置の調整について以下説明する。なお、本実施形態における位置調整では、上述した変位センサ3の計測結果に基づく第1の位置調整と、上述した印刷検査装置5の検査結果に基づく第2の位置調整とが実行される。まず、第1の位置調整に用いられる変位センサ3の詳細な構成と変位量の計測方式とについて説明する。
【0028】
図2に示されるように、変位センサ3の照射受光面3Fは、キャップCPの天面Tと鉛直方向において向かい合うように予めコンベア1上に配置されている。変位センサ3は、照射受光面3Fから照射された光がキャップCPの天面Tに反射されて該照射受光面3Fに受光されるまでの時間である受光時間に基づいて、照射受光面3Fと天面Tとの鉛直方向における距離を計測する。そして、変位センサ3は、照射受光面3Fと天面Tとの鉛直方向における距離に関する情報を制御装置2に送信する。なお、図2には、飲料が充填されたことにより変形して全高が低くなる方向へ変化した計測対象となるペットボトルPBの天面Tの鉛直方向での位置である計測位置Pmsが実線により示されている。一方、飲料が充填される前の空のペットボトルPBにおける天面Tの鉛直方向での位置である基準位置Prfが二点鎖線により示されている。
【0029】
すなわち、飲料が充填される前の空のペットボトルPBのように計測位置Pmsが基準位置Prfと一致する場合、照射受光面3Fから照射された光は、基準位置Prfと照射受光面3Fとの間を基準経路Rrfのように往復して基準位置Prfと照射受光面3Fとの基準距離Lrfの二倍の長さを進む。その結果、受光時間が基準距離Lrfの二倍の長さに相当する時間であることに基づいて、変位センサ3の計測結果は、基準距離Lrfと
なる。
【0030】
一方、ペットボトルPBに飲料が充填されると、ペットボトルPBは、その薄肉化された胴体部が外側方向に膨み、結果としてキャップCPの天面Tを頂部とする全高が低くなる。そして、計測位置Pmsが基準位置Prfよりも第1調整量Raだけ下方であるときには、照射受光面3Fから照射された光が、計測位置Pmsと照射受光面3Fとの間を計測経路Rmsのように往復して計測位置Pmsと照射受光面3Fとの計測距離Lmsの二倍の長さを進む。その結果、受光時間が計測距離Lmsの二倍の長さに相当する時間であることに基づいて、変位センサ3の計測結果は、基準距離Lrfよりも第1調整量Raだけ長い計測距離Lmsとなる。
【0031】
次に、印刷ヘッド4Hの詳細な構成と第1の位置調整とについて説明する。
図3に示されるように、印刷ヘッド4Hは、そのノズル形成面4HFをペットボトルPBにおけるキャップCPの下端よりも下方の頸部に設定された印刷領域PAに対向させた状態でノズルからインクを印刷実行方向となる一水平方向に噴射することにより、印刷領域PAに文字列などの印刷を施す。ちなみに、印刷ヘッド4Hは、印刷することができるデバイスであればよいことは言うまでもないが、本実施形態では、一個のノズル孔4Nを有したインクジェットヘッドに具体化されている。このようなインクジェットヘッドでは、通常、ノズル形成面4HFの中央にノズル孔4Nが穿たれている。なお、印刷実行方向となるインクの吐出方向は、インク滴に対して電界が与えられることによって制御されるとともに、インク滴に加えられる電界は、制御装置2が出力する制御信号に基づいて、図示しない電界発生装置が発生させる。
【0032】
ここで、上述したように、ペットボトルPBに飲料が充填されると、該飲料の重量によってペットボトルPBの胴体部が外側に広がって全高が変わる場合がある。このようなペットボトルPBの肉厚や形状によって生じる全高の変化、すなわち、印刷領域PAの位置の変化は、厳密には、ペットボトルPBごとに互いに異なるものである。そこで、制御装置2では、変位センサ3の計測結果に基づき、印刷ヘッド4Hに対する第1の位置調整が実行される。
【0033】
詳述すると、まず、印刷領域PAの鉛直方向における中心と天面Tとの距離は、予め設計された距離である設計距離Ldzであるとする。そして、上述した基準位置Prfと設計距離Ldzとに基づいて、該基準位置Prfから設計距離Ldzだけ鉛直方向の下方位置に、すなわち、初期位置に、ノズル孔4Nがセットされる。続いて、ペットボトルPBが印刷ヘッド4Hにより印刷が施される位置まで搬送されるごとに、該ペットボトルPBの計測位置Pmsと上述した基準位置Prfとの距離差、すなわち、第1調整量Raに基づいて、印刷ヘッド4Hの位置が鉛直方向の下方に移動するように調整(第1の位置調整)される。
【0034】
これにより、ペットボトルPBが印刷ヘッド4Hによる印刷が施される被印刷位置へ搬送されるごとに、印刷ヘッド4Hの位置が第1調整量Raだけ鉛直方向の下方に移動調整されるとともに、ペットボトルPBごとの印刷領域PAの中心と印刷ヘッド4Hのノズル孔4Nとが印刷実行方向となる一水平方向において対向するようになる。
【0035】
次に、印刷検査装置5の出力と第2の位置調整とについて説明する。
図4に示されるように、本実施形態にて印刷される文字列は、例えば「101128」であって、これは2010年11月28日の日付を示す。これらの数字は、縦5ドット×横3ドットの領域にインク滴が選択的に着弾することによって印刷される。図4(a)には、こうした文字列が、ペットボトルPBにおけるキャップCPの下端よりも下方の頸部に鉛直方向で一定幅を有するように設けられた印刷領域PA内に適正に印刷されている状
態を示す。また、図4(b)には、こうした文字列が、印刷領域PAの外に第2調整量Rbだけずれて、はみだし印刷されている状態を示す。
【0036】
印刷検査装置5は、ペットボトルPBに印刷された文字列を撮像した後に、撮像された文字列の像データと該文字列の位置データとを示す撮像データを制御装置2に送信する。一方、制御装置2は、印刷用に予め設定された文字列の像データと、印刷検査装置5から受信した撮像データ中の文字列の像データとを比較して、これらが互いに一致しているか否かを判断する。さらに、これらが互いに一致している場合には、制御装置2は、撮像データ中の文字列の位置データに基づき文字列が印刷領域PA内に印刷されているか否かを判断する。
【0037】
ここで、上述したように、ペットボトルPBには、薄肉化されたボトル本体や剛性を有するキャップCP等の変形度合が異なる複数の部品が使用される。また、そのペットボトルPBにおいて、飲料が充填されたときに最も変形し易い部位はボトル本体の胴体部であり、印刷領域PAが設けられた頸部は胴体部よりも変形し難い部位である。また、同じ規格のペットボトルPBであっても、その形状や厚みにおける微妙な製造誤差に起因して、全高が同じだけ低くなっていても印刷領域PAは同じだけ低くなっていない場合があり得る。そこで、制御装置2では、印刷領域PAに対する印刷結果に基づき、印刷領域PAに対する印刷ヘッド4Hの第2の位置調整が実行される。
【0038】
詳述すると、図4(a)(b)に示されるように、搬送される途中で印刷ヘッド4Hによる印刷が施されたペットボトルPBごとに、印刷された文字列が印刷領域PA内における鉛直方向の中心位置から鉛直方向においてどの程度位置ずれしているか、その位置ずれ量である第2調整量Rbが算出される。そして、図4(a)に示されるように、文字列がペットボトルPBの印刷領域PA内における鉛直方向の中心位置に印刷されている場合には、印刷領域PAに対する文字列の第2調整量Rbが「0」であると判断される。一方、図4(b)に示されるように、文字列が印刷領域PAの鉛直方向の中心から予め定めた閾値ずれ量よりも大きく位置ずれして印刷領域PA外にはみ出し印刷されている場合には、その文字列の鉛直方向におけるはみ出し量である第2調整量Rbが印刷ヘッド4Hの初期位置に対する調整値として取り扱われる。
【0039】
すなわち、搬送途中において印刷検査装置5の側方でCCDカメラにより印刷領域PAを撮像されたペットボトルPBよりも後続のペットボトルPBが印刷ヘッド4Hによる被印刷位置へ搬送されるまでに、印刷ヘッド4Hに対する第2の位置調整が実行される。具体的には、印刷検査装置5の検査結果である第2調整量Rbに基づいて、印刷ヘッド4Hの初期位置が第2調整量Rbだけ鉛直方向において当該第2調整量Rbがゼロとなる方向に移動調整される。そして、当該ペットボトルPBと製造ロットが等しい後続の他のペットボトルPBに対して、当該第2調整量Rbが印刷ヘッド4Hの位置調整量として繰り返し利用される。
【0040】
次に、印刷装置の電気的構成について図5を参照して説明する。図5に示されるように、制御装置2が有する制御部10は、中央処理装置であるCPU31、ROM32及びRAM33から構成される。CPU31は、ROM32に記憶された印刷プログラムに基づき、RAM33を作業領域として、各種の処理を実行する。
【0041】
制御装置2の制御部10には、第1調整量Raを検出するための変位量検出ドライバ11が、バス20を介して接続されている。変位量検出ドライバ11は、変位センサ3における光照射装置11aと電気的に接続され、また、変位センサ3における受光装置11bと電気的に接続されている。そして、コンベア1によるペットボトルPBの搬送動作が開始されると、変位量検出ドライバ11は、光を照射するための光照射信号LDSを生成し
て光照射装置11aに光を照射させる。また、変位センサ3における受光装置11bがペットボトルPBにおけるキャップCPの天面Tにて反射された光を検出すると、変位量検出ドライバ11は、受光装置11bが出力する反射光検出信号LRSを受けて天面Tの位置を演算するとともに、その演算結果を制御部10に出力する。制御部10は、変位量検出ドライバ11から受信した演算結果を受け、ROM32に記憶された変位量算出プログラムに基づいて、ペットボトルPBごとに、計測位置Pmsを演算するとともに、その計測位置Pmsと記憶している基準位置Prfとに基づき第1調整量Raを算出する。
【0042】
また、制御装置2の制御部10には、アクチュエーター4Aのシリンダー4dを駆動するためのシリンダードライバ12が、バス20を介して接続されている。シリンダードライバ12は、アクチュエーター4Aが備えるシリンダー4dと電気的に接続され、また、シリンダー4dの駆動量を検出するシリンダーエンコーダー12bと電気的に接続されている。そして、印刷ヘッド4Hを水平方向へ移動するための各種信号が制御部10からシリンダードライバ12に入力されると、シリンダードライバ12は、シリンダー4dを駆動するためのシリンダー駆動信号CDSをシリンダー4dに出力してシリンダー4dを進退移動させる。また、シリンダーエンコーダー12bの検出結果であるシリンダー移動量検出信号CMSがシリンダードライバ12に入力されると、シリンダードライバ12は、シリンダー4dの移動量を演算するとともに、その演算結果を制御部10に出力する。制御部10は、シリンダードライバ12から受信した演算結果を受け、印刷実行方向となる一水平方向における印刷ヘッド4Hのノズル形成面4HFと印刷領域PAとの間隔を把握する。
【0043】
また、制御装置2の制御部10には、サーボモーター4Mを駆動するためモータードライバ13が、バス20を介して接続されている。モータードライバ13は、ヘッド調整装置4に設けられたサーボモーター4Mと電気的に接続され、また、サーボモーター4Mの駆動量を検出するモーターエンコーダー13bと電気的に接続されている。そして、印刷ヘッド4Hを鉛直方向へ移動するための各種信号が制御部10からモータードライバ13に入力されると、モータードライバ13は、サーボモーター4Mを駆動するためのモーター駆動信号MDSをサーボモーター4Mに出力してサーボモーター4Mを正転及び逆転する。また、モーターエンコーダー13bの検出結果である回転検出信号MRSがモータードライバ13に入力されると、モータードライバ13は、サーボモーター4Mの駆動量を演算するとともに、その演算結果を制御部10に出力する。
【0044】
制御部10は、モータードライバ13からの演算結果を受け、サーボモーター4Mの駆動量に基づく印刷ヘッド4Hの実位置、すなわち印刷ヘッド4Hにおけるノズル孔4Nの鉛直方向での位置を演算する。そして、制御部10は、印刷処理を開始する前に、印刷ヘッド4Hの実位置と初期位置とを比較して、印刷ヘッド4Hの実位置が初期位置になるまでサーボモーター4Mを駆動する。続いて、制御部10は、印刷処理を開始すると、ペットボトルPBごとの第1調整量Raを用いて、印刷ヘッド4Hの実位置が初期位置から第1調整量Raだけ変位するまで、ペットボトルPBごとにサーボモーター4Mを駆動する。
【0045】
また、制御装置2の制御部10には、印刷ヘッド4Hを駆動するための印刷ドライバ14が、バス20を介して接続されている。印刷ドライバ14は、印刷ヘッド4Hと電気的に接続され、また、ペットボトルPBが被印刷位置に位置していることを検出する検出センサ4Sと電気的に接続されている。そして、所定の文字列を印刷するための各種信号が制御部10から印刷ドライバ14に入力されるとともに、検出センサ4SからペットボトルPBの検出信号が入力されると、印刷ドライバ14は、印刷ヘッド4Hを駆動するためのヘッド駆動信号HDSを印刷ヘッド4Hに出力して印刷ヘッド4Hを駆動する。また、印刷ドライバ14は、印刷ヘッド4Hが印刷を終了したことを示す印刷終了信号をペット
ボトルPBごとに制御部10に出力する。制御部10は、印刷ドライバ14から印刷終了信号が出力されたことを条件として上記サーボモーター4Mを駆動する。
【0046】
また、制御装置2の制御部10には、外部入出力インターフェース15が、バス20を介して接続されている。外部入出力インターフェース15には、印刷検査装置5を構成するCCDカメラ15aと、例えばパーソナルコンピュータ等の周辺装置15bとが接続されている。そして、印刷された文字列を撮像するための各種信号が制御部10から外部入出力インターフェース15を介してCCDカメラ15aに入力されると、CCDカメラ15aは、印刷された文字列を撮像するとともに、その撮像結果を示す撮像情報を制御部10に出力する。また、周辺装置15bには、コンベア1の搬送速度、上記基準位置Prf、印刷領域PAの設計位置、印刷すべき文字列、製造ロットごとのペットボトルPBの本数等、上述した印刷を実行するために必要とされる各種の初期データが入力される。そして、外部入出力インターフェース15は、周辺装置15bに入力された各種の初期データを制御部10に転送する。
【0047】
制御部10は、コンベア1の搬送速度と、搬送方向における変位センサ3とヘッド調整装置4との距離間隔とに基づき、印刷領域PAが印刷ヘッド4Hのノズル形成面4HFと印刷実行方向となる一水平方向において対向するタイミングを把握する。そして、制御部10は、印刷すべき文字列のデータに基づき、印刷領域PAがノズル形成面4HFと対向するタイミング、すなわち検出センサ4Sから検出信号が出力されるタイミングで印刷ヘッド4Hを駆動する。また、制御部10は、CCDカメラ15aからの撮像データを受け、印刷すべき文字列の像データと上記撮像データ中の実際の像データとをテンプレートマッチング等の画像処理によって比較して、これらが一致するか否かを判定する。また、制御部10は、印刷すべき文字列の位置データと上記撮像データ中の実印刷位置を示す位置データとに基づいて第2調整量Rbを算出する。そして、制御部10は、その第2調整量Rbで示される実ずれ量が閾値ずれ量よりも大きい場合には、印刷ヘッド4Hの初期位置を第2調整量Rbだけ鉛直方向に調整する。
【0048】
次に、上記印刷装置を用いて実行される印刷方法について、印刷の処理手順を示すフローチャートを参照しながら説明する。
図6に示されるように、印刷装置が駆動されると、制御部10は、まず、RAM33に予め記憶させておいた初期データをCPU31に読み出させる(ステップS1)。次いで、制御部10は、ペットボトルPBの設計寸法に応じて、印刷ヘッド4Hのノズル形成面4HFと印刷領域PAとの水平方向での間隔が印刷に最適な間隔となるように、アクチュエーター4Aを駆動して印刷ヘッド4Hをコンベア1上に向けて水平移動させる(ステップS2)。次に、制御部10は、サーボモーター4Mを駆動して、印刷ヘッド4Hを鉛直方向の初期位置に配置する(ステップS3)。続いて、コンベア1が駆動されると、飲料の充填された一群のペットボトルPBが一定間隔をおいて一つずつ変位センサ3の直下に到達する。そして、変位センサ3によって先頭のペットボトルPBの計測位置Pmsが計測されると、制御部10は、その先頭のペットボトルPBについて、基準位置Prfと計測位置Pmsとの差である第1調整量Raを変位センサ3の計測結果に基づいて算出する(ステップS4)。
【0049】
次に、制御部10は、第1調整量Raが予め設定された許容範囲ずれ量KRa以下であるか否かを判断する(ステップS5)。そして、その判定結果が肯定判定(S5=YES)である場合、制御部10は、その処理をステップS8に移行する。これに対して、ステップS5の判定結果が否定判定(S5=NO)、すなわち、第1調整量Raが許容範囲ずれ量KRaを超えている場合、制御部10は、印刷ヘッド4Hが印刷中ではないことを条件として、印刷ヘッド4Hの鉛直方向位置を第1調整量Raに基づいて変更する(ステップS6,S7)。すなわち、飲料の充填に伴いペットボトルPBの高さが低くなって計測
位置Pmsが基準位置Prfよりも低くなっている場合は、印刷ヘッド4Hの鉛直方向位置が第1調整量Raに相当する距離だけ鉛直下方に変更される。その逆に、飲料の充填に伴いペットボトルPBの高さが高くなって計測位置Pmsが基準位置Prfよりも高くなっている場合は、印刷ヘッド4Hの鉛直方向位置が第1調整量Raに相当する距離だけ鉛直上方に変更される。そして次に、制御部10は、先のステップS4で変位センサ3により計測位置Pmsが計測された先頭のペットボトルPBが印刷ヘッド4Hと対応する被印刷位置に位置しているか否か、すなわち、そのことを示す検出信号が検出センサ4Sから出力されたか否かを判断する(ステップS8)。そして、その判定結果が肯定判定(S8=YES)になると、制御部10は、印刷ドライバ14を介して、予め設定された文字列を印刷するための制御信号を印刷ヘッド4Hに出力して印刷処理を実行する(ステップS9)。
【0050】
次いで、先のステップS9で印刷ヘッド4Hにより印刷を施された先頭のペットボトルPBが被印刷位置から印刷検査装置5と対応する被検査位置に至ると、図7に示されるように、制御部10は、印刷検査装置5の撮像した撮像データに基づいて、印刷領域PAの鉛直方向中心位置からの文字列の実ずれ量である第2調整量Rbを算出する(ステップS10)。次いで、制御部10は、第2調整量Rbが予め設定された閾値ずれ量KRb以下であるか否かを判断する(ステップS11)。そして、その判定結果が肯定判定(S11=YES)である場合、制御部10は、その処理をステップS14に移行する。
【0051】
これに対して、ステップS11の判定結果が否定判定(S11=NO)、すなわち、第2調整量Rbが閾値ずれ量KRbを超えている場合、制御部10は、印刷ヘッド4Hが印刷中ではないことを条件として、印刷ヘッド4Hの初期位置を第2調整量Rbだけ鉛直方向に変えることで補正する(ステップS12,S13)。なお、初期位置は、飲料の充填に伴いペットボトルPBの高さが低くなる場合は第2調整量Rbに相当する距離だけ鉛直下方に変更され、その逆に、飲料の充填に伴いペットボトルPBの高さが高くなる場合は第2調整量Rbに相当する距離だけ鉛直上方に変更される。そして、上記のように第2の位置調整が実行されると、制御部10は、一群のペットボトルPBに対する印刷予定が終了したか否かを、外部入出力インターフェース15を介して入力される印刷制御信号などに基づき判断する(ステップS14)。そして、その判定結果が肯定判定(S14=YES)の場合、制御部10は、本制御処理ルーチンを終了する。その一方、ステップS14の判定結果が否定判定(S14=NO)、すなわち一群のペットボトルPBについての印刷予定が終了していないと判断した場合、制御部10は、その処理を先のステップS4に戻し、後続の各ペットボトルPBについて、ステップ4以降の処理を繰り返す。
【0052】
なお、本実施形態の印刷装置において、ペットボトルPBの搬送方向における変位センサ3の配置位置と印刷ヘッド4Hの配置位置との間の距離は、一例として、印刷ヘッド4Hの配置位置と印刷検査装置5の配置位置との間の距離の2倍以上に設定されている。そして、コンベア1により搬送される各ペットボトルPBの搬送方向での配置間隔は次のように設定されている。すなわち、先頭のペットボトルPBが印刷検査装置5と対応する被検査位置に至ったとき、二番目のペットボトルPBは未だ印刷ヘッド4Hと対応する被印刷位置には至っておらず、三番目のペットボトルPBも未だ変位センサ3と対応する被計測位置には至っていないように、各ペットボトルPBの間隔が設定されている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下列記する効果が得られる。
(1)印刷ヘッド4HがペットボトルPBに印刷を施す前に、ペットボトルPBごとに、印刷ヘッド4Hに対するペットボトルPBにおける印刷領域PAの鉛直方向での相対的な位置情報、言い換えれば第1調整量Raが計測される。そして、計測された第1調整量Raに基づいて印刷領域PAに対する印刷ヘッド4Hの相対的な位置関係が調整され、その後、印刷領域PAに対する印刷が印刷ヘッド4Hにより行われる。すなわち、印刷時に
はペットボトルPBにおける印刷領域PAと印刷ヘッド4Hとが印刷実行方向となる一水平方向において対向するように、換言すると、印刷ヘッド4HによるペットボトルPBに対する実印刷位置が印刷領域PA内となるように、予め計測された第1調整量Raに基づいて、実印刷位置を規定することになる印刷ヘッド4Hの高さ位置が調整される。それゆえに、たとえ搬送されるペットボトルPBの印刷領域PAの鉛直方向における高さ位置が、ペットボトルPBに飲料を充填することによって変動しようとも、その印刷領域PAに対して印刷実行方向となる一水平方向から効率良く適正に印刷を施すことができる。
【0054】
(2)しかも、印刷領域PAと印刷ヘッド4Hとの鉛直方向での位置ずれ量を示す第1調整量Raが僅かであって、印刷領域PA内から印刷内容がはみ出ることがないような場合、すなわち、第1調整量Ra≦許容範囲ずれ量KRaである場合には、印刷ヘッド4Hの位置調整工程を格別に実施する必要がない。そのため、連続的に搬送される一群のペットボトルPBの印刷領域PAに対して効率良く印刷を施すことができる。
【0055】
(3)印刷ヘッド4HによるペットボトルPBにおける印刷領域PAに対する実印刷位置とそのペットボトルPBにおける印刷領域PAとの鉛直方向における実ずれ量が印刷検査装置5により印刷結果として計測される。そして、その計測された実ずれ量である第2調整量Rbが予め設定された閾値ずれ量KRbを超えている場合には、その第2調整量Rbが解消するように印刷ヘッド4Hの鉛直方向の高さ位置が調整された後、以降のペットボトルPBに対する印刷が行なわれる。それゆえに、ペットボトルPBの印刷領域PAに対する印刷ヘッド4Hの鉛直方向での相対的な位置関係の調整を、印刷ヘッド4Hによる実際の印刷結果を反映させた状態で行うことができるので、そうした調整後にはペットボトルPBの印刷領域PAに対して適正に印刷を施すことができる。
【0056】
(4)印刷ヘッド4Hが印刷を行っていないときに、印刷ヘッド4Hの位置を変更するようにした。その結果、印刷中には印刷ヘッド4Hが固定されることになる。それゆえに、文字列が鉛直方向に間延びして印刷されるなどの印刷内容の乱れの発生を低減できる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態において、印刷ヘッド4HによるペットボトルPBに対する実印刷位置を調整する場合には、印刷ヘッド4Hの高さ位置を変更する代わりに、印刷ヘッド4Hのノズルからのインクの噴射方向を変更することにより、印刷ヘッド4HによるペットボトルPBに対する実印刷位置が印刷領域PA内となるように調整してもよい。このようにしても、実施形態における場合と同様に、たとえ搬送されるペットボトルPBの印刷領域PAの鉛直方向における高さ位置が、ペットボトルPBに飲料を充填することによって変動しようとも、その印刷領域PAに対して印刷実行方向となる一水平方向から効率良く適正に印刷を施すことができる。
【0058】
・上記実施形態では、包装容器であるペットボトルPBに内容物である飲料が充填されることで、ペットボトルPBの全高が低くなる場合における印刷ヘッド4Hの高さを調整する技術について具体化したが、例えばホットパック(熱間充填)による充填物の充填に伴い包装容器の全高が逆に高くなる場合における印刷ヘッド4Hの高さを調整する技術に具体化してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、印刷ヘッド4Hが駆動されていないことを条件として、印刷ヘッド4Hの位置が変更される。これを変更して、印刷ヘッド4Hの位置が変更されることに際して、印刷ヘッド4Hが駆動されているか否かの判断が割愛される構成であってもよい。このような構成であれば、上記(1)〜(3)に準じた効果が得られるとともに、印刷ヘッド4Hが駆動されているか否かの判断が割愛される分、短い処理時間によって、印刷ヘッド4Hの位置を変更することが可能である。
【0060】
・ノズル孔4Nのセットされる初期位置とは、基準位置Prfから設計距離Ldzだけ鉛直下方の位置に限られず、基準位置PrfのペットボトルPBに対し、その印刷領域PAに印刷が施される所定の位置であればよい。
【0061】
・第1調整量Raに基づく第1の位置調整は、ペットボトルPBごとに実行される構成であってもよい。例えば、図6におけるステップS5が割愛される構成、又はステップS5では第1調整量Raがゼロであるか否かを判定する構成であってもよい。このような構成によれば、変位センサ3により計測された位置ずれ量である第1調整量Raを利用して印刷領域PAに対する実印刷位置の調整を精密に行なうことができる。
【0062】
・第2調整量Rbに基づく第2の位置調整は、ペットボトルPBごとに実行される構成であってもよい。例えば、図7におけるステップS11が割愛される構成、又はステップS11では第2調整量Rbがゼロであるか否かを判定する構成であってもよい。このような構成によれば、印刷検査装置5により計測された実ずれ量である第2調整量Rbを利用して印刷領域PAに対する実印刷位置の調整を精密に行なうことができる。
【0063】
・第2調整量Rbに基づく第2の位置調整は、一群のペットボトルPBの一つずつに限られず、例えば、所定の処理本数ごと、または製造ロットごとに実行される構成であってもよい。あるいは、第2調整量Rbに基づく第2の位置調整は、それが割愛される構成であってもよい。このような構成によれば、上記(1)に準じた効果が得られるとともに、印刷検査装置5による撮像処理が必要とされない分、短い処理時間によって、印刷処理を実行することが可能である。
【0064】
・ペットボトルPBの基準位置Prfは、ペットボトルPBの設計値に限られず、変位センサ3によって中身が空のペットボトルPBについて計測された実測値であってもよい。このような構成によれば、例えば製造ロットごとに各ペットボトルPBが有する製造誤差に起因する印刷の位置ずれの発生を低減することができる。
【0065】
・印刷ヘッド4Hのノズル形成面4HFとペットボトルPBの印刷領域PAとの水平方向における間隔調整は、印刷ヘッド4Hの位置が鉛直方向にて調整された後に行われてもよく、あるいは印刷ヘッド4Hの位置が鉛直方向にて調整されることと同じタイミングで行われてもよい。
【0066】
・印刷検査装置5は、CCDカメラ15aに限られず、印刷領域に対する印刷結果である印刷位置の実ずれ量を検出可能な撮像機器であればよい。また、印刷されるべき文字列や図柄と撮像データとの比較は、テンプレートマッチングに限られず、これらに相違があるか否かを判断することの可能な方法であればよい。
【0067】
・位置調整部は、上記ヘッド調整装置4のように、印刷ヘッド4Hを鉛直方向と水平方向とに直動する機構に限られず、ペットボトルPBの全高の計測結果に合わせて、印刷ヘッド4Hの位置をコンベア1上で調整することの可能な機構であればよい。
【0068】
・位置計測部は、上記変位センサ3のような反射式のレーザー変位計の他、互いに水平となるように設置された平行なライン光を照射する光照射装置とラインセンサとに具体化することも可能である。
【0069】
・印刷ヘッドは、賞味期限等の文字列を印刷するヘッドに限られず、図柄を印刷するヘッドであってもよい。また、印刷領域に印刷を施すことができるデバイスであれば、例えば、インクジェット方式であっても、ドットインパクト方式であってもあるいは熱転写方
式であってもよい。さらには、レーザー光などの光を印刷実行方向となる一方向から印刷領域PAに向けて照射することにより、印刷領域PAに印刷を施すようにしてもよい。
【0070】
・搬送手段は、コンベア1に限られず、印刷対象物を水平方向へ搬送することの可能な搬送システムであればよい。また、印刷対象物が搬送される態様は、複数の印刷対象物の各々が互いに離れて搬送される態様の他、複数の印刷対象物の各々が互いに密着して搬送される態様であってもよい。たとえ密着して搬送される場合でも、各図に示すペットボトルPBのように互いに密着し合う胴体部よりも小径の頸部に印刷領域PAが設定されていれば、各ペットボトルPBの頸部同士の間隔分だけ各ペットボトルPBが搬送される間に印刷ヘッド4Hの鉛直方向での位置調整は可能である。
【0071】
・印刷対象物は、ペットボトルに限られず、例えば水平方向など鉛直方向と交差する搬送方向に搬送されて、且つ鉛直方向及び搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷が施される印刷対象物であればよい。すなわち、印刷対象物は、水平方向に搬送されて当該搬送方向と交差する別の一水平方向から印刷が施されるものに限らない。例えばコンベア以外の搬送手段であるリフトにより鉛直方向と交差する斜め方向に搬送される印刷対象物に対して鉛直方向及び搬送方向の何れとも交差する一方向から印刷を施すようにしてもよい。また、例えば、印刷対象物における印刷領域は、牛乳の紙パック等における上端開口を密閉するように重ねて貼り合わされた所謂ゲーブルトップの棟状の部分であってもよく、印刷装置は、こうしたゲーブルトップの棟状の部分の側面に印刷するものであってもよい。
【0072】
・変位センサ3による天面Tの計測タイミングとコンベア1の搬送速度などに基づきペットボトルPBが印刷ヘッド4Hと対応する被印刷位置に至ったか否かを判断するようにすれば、ペットボトルPBの有無を検知する検出センサ4Sが省略された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
PB…ペットボトル(印刷対象物)、PA…印刷領域、Ra…第1調整量(相対的な位置情報)、KRa…許容範囲ずれ量、Rb…第2調整量(実ずれ量)、KRb…閾値ずれ量、1…コンベア(搬送手段)、3…変位センサ(位置計測部)、4…ヘッド調整装置(位置調整部)、4H…印刷ヘッド、5…印刷検査装置(実ずれ量計測部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物を鉛直方向と交差する搬送方向へ搬送する搬送手段と、
当該搬送手段により搬送される前記印刷対象物に対して前記鉛直方向及び前記搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷を施す印刷ヘッドと、
当該印刷ヘッドに対する前記印刷対象物における予め設定された印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報を前記印刷対象物の搬送途中に計測する位置計測部と、
当該位置計測部により前記位置情報を計測された前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときには、当該印刷ヘッドによる前記印刷対象物に対する実印刷位置が当該印刷対象物における前記印刷領域内となるように、当該印刷領域に対する前記印刷ヘッドの実印刷位置を前記位置情報に基づき調整する位置調整部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記位置調整部は、前記印刷ヘッドによる前記印刷領域に対する前記実印刷位置を調整する際、前記印刷対象物における前記印刷領域と前記印刷ヘッドとが前記印刷実行方向において対向した位置状態となるように、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記位置情報に基づき調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記位置調整部は、
前記印刷ヘッドと前記印刷対象物における前記印刷領域とが鉛直方向において予め設定された許容範囲を超えて位置ずれしていることを条件として、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記位置情報に基づき調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ヘッドによる前記印刷対象物における前記印刷領域に対する実印刷位置と当該印刷対象物における前記印刷領域との鉛直方向における実ずれ量を計測する実ずれ量計測部をさらに備え、
前記位置調整部は、
前記実ずれ量計測部により計測された前記実ずれ量が予め設定された閾値ずれ量を超えている場合には、前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときに、前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を前記実ずれ量が解消するように調整する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記位置調整部は、
前記印刷ヘッドが印刷動作中でないことを条件として前記印刷ヘッドの鉛直方向での高さ位置を調整する
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
印刷対象物を鉛直方向と交差する搬送方向へ搬送するとともに、搬送される前記印刷対象物に対して前記鉛直方向及び前記搬送方向の何れの方向とも交差する印刷実行方向から印刷ヘッドにより印刷を施す印刷方法であって、
前記印刷ヘッドに対する前記印刷対象物における予め設定された印刷領域の鉛直方向での相対的な位置情報を前記印刷対象物の搬送途中に計測する工程と、
前記位置情報を計測された前記印刷対象物が前記印刷ヘッドにより前記印刷を施されるときには、当該印刷ヘッドによる前記印刷対象物に対する実印刷位置が当該印刷対象物における前記印刷領域内となるように、当該印刷領域に対する前記印刷ヘッドの実印刷位置を前記位置情報に基づき調整する工程と
を備えることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144264(P2012−144264A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2469(P2011−2469)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】