説明

印刷装置及び接着面形成方法

【課題】 インクジェットプリンターで、UV硬化型接着剤を用いて、インク吸収性の高
い媒体でも確実に接着面を形成する。
【解決手段】 インクを噴出することで印刷を行うヘッド部を備える印刷装置であって、
前記ヘッド部から、媒体へのインク浸透を抑制するアンダーコート剤を噴出して、媒体上
の所定の範囲に、アンダーコート層を形成し、前記ヘッド部から、光が照射されると硬化
する液体を前記アンダーコート層上に噴出して、光硬化層を形成し、前記光硬化層に光を
照射することで、接着面を形成すること、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び接着面形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を噴出させ、印刷を行うインクジェットプリンターが広く普及している
。インクジェットプリンターは、媒体上の任意の位置に、任意の形状の印刷面を形成する
ことができるため、インクの代わりにノズルから接着剤を噴出することで接着面を形成し
、展開封筒や定型封筒の封緘作業を効率的に行う方法が考えられる。そこで、接着剤噴出
ヘッドを設けたインクジェットプリンターからUV硬化型の接着剤を噴出し、媒体上に該
UV接着剤を塗布した後にUVを照射して硬化させることで、紙や封筒等の被記録媒体を
接合する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−187269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着剤は、一般的に粘性が高いため、通常のインクジェットプリンターのヘッドから接
着剤を噴出させようとすると、ノズルの目詰まりやノズル内での固化などの問題が生じ、
接着面を形成することができない。一方、特許文献1の方法によれば、粘度の低いUV硬
化型接着剤をヘッドから噴出し、噴出後にUVを照射して媒体上で硬化させることにより
、前述のノズル目詰まり等の問題を解消することが可能となる。
しかし、UV硬化型接着剤は紙に吸収されやすく、普通紙等インク吸収性の高い媒体を
使用する場合、UV照射前に接着剤が媒体内部に染みこんでしまい、媒体内部で未反応の
UV硬化型接着剤が独特の異臭を放ち続けるという問題が生じる。また、UV硬化型接着
剤が媒体内部に染みこんでしまうため、媒体表面に十分な接着面を形成できなくなる。
【0005】
本発明では、インクジェットプリンターで、UV硬化型接着剤を用いて、インク吸収性
の高い媒体でも確実に接着面を形成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
インクを噴出することで印刷を行うヘッド部を備える印刷装置であって、前記ヘッド部
から、媒体へのインク浸透を抑制するアンダーコート剤を噴出して、媒体上の所定の範囲
に、アンダーコート層を形成し、前記ヘッド部から、光が照射されると硬化する液体を前
記アンダーコート層上に噴出して、光硬化層を形成し、前記光硬化層に光を照射すること
で、接着面を形成すること、を特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは紙媒体上に形成される球状ドットを示した図である。図1Bは図1Aの状態から所定の時間が経過した後のドットの状態を説明する図である。図1Cは図1Bの状態から所定の時間が経過した後のドットの状態を説明する図である。
【図2】図2Aは本実施形態において、アンダーコート層上に形成される球状ドットを示した図である。図2Bは図2Aの状態から所定の時間が経過した後のドットの状態を説明する図である。図2Cは図2Bの状態から所定の時間が経過した後のドットの状態を説明する図である。
【図3】印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】図4Aはプリンターのローラー式搬送ユニットを説明する図である。図4Bはベルト式搬送ユニットを説明する図である。
【図5】図5Aは、本実施形態のプリンターの構成を説明する図である。図5Bは、本実施形態のプリンターの構成を説明する側面図である。
【図6】ヘッドの構造を説明するための断面図である。
【図7】展開封筒に接着面を形成する場合の説明図である。
【図8】展開封筒を封緘した時の接着面の断面図である。
【図9】展開封筒で、片側のみにアンダーコート層を形成する場合の説明図である。
【図10】片側のみにアンダーコート層を形成した場合における、展開封筒を封緘した時の接着面の断面図である。
【図11】定型封筒に接着面を形成する場合の説明図である。
【図12】インターフェース画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
インクを噴出することで印刷を行うヘッド部を備える印刷装置であって、前記ヘッド部
から、媒体へのインク浸透を抑制するアンダーコート剤を噴出して、媒体上の所定の範囲
に、アンダーコート層を形成し、前記ヘッド部から、光が照射されると硬化する液体を前
記アンダーコート層上に噴出して、光硬化層を形成し、前記光硬化層に光を照射すること
で、接着面を形成すること、を特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、インクジェットプリンターで、UV硬化型接着剤を用い
てインク吸収性の高い媒体でも確実に接着面を形成することができる。
【0011】
かかる液体噴出装置であって、前記光硬化層の領域が、前記アンダーコート層の領域に
包含されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、アンダーコート層の方が光硬化層よりも大きく形成され
るため、光硬化層から漏れたUV硬化型接着剤が、直接媒体に浸透するのを確実に抑制す
ることができる。
【0012】
かかる液体噴出装置であって、前記媒体を接着する場合に前記接着面と対向する被接着
面にも、前記アンダーコート層が形成されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、媒体とUV接着剤とが接触するのを防止することで、被
接着面へのUV接着剤の浸透を抑制することができる。
【0013】
かかる液体噴出装置であって、前記アンダーコート層が形成された後に、前記媒体の搬
送方向を切り替えて、前記光硬化層を形成することが望ましい。
このような印刷装置によれば、途中で媒体を排出したり再給紙したりすることなく、1
回の印刷(搬送)動作で、2層構造の印刷を行うことができる。
【0014】
かかる液体噴出装置であって、前記アンダーコート層、及び、前記光硬化層を形成する
領域を前記媒体上に設定する印刷装置制御部を備えることが望ましい。
このような印刷装置によれば、ユーザーが媒体上の任意の領域に、自由に接着面を形成
することができる。
【0015】
かかる液体噴出装置であって、前記制御部は、元となる画像データから作成される印刷
データの印刷領域が、設定された前記アンダーコート層、または、前記光硬化層と重複す
る場合に、前記画像データを調整して、重複しないようにすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、アンダーコート層または光硬化層(接着面)と画像印刷
面とが重複することを防止できるため、印刷画像が劣化したり見えなくなったりすること
や、また、接着面の粘着力が不十分になることを防止することができる。
【0016】
かかる液体噴出装置であって、前記制御部は、設定した前記光硬化層の大きさが所定の
大きさよりも小さい場合には、警告を発することが望ましい。
このような印刷装置によれば、光硬化層(接着面)が、最低限の接着強度を得られる程
度の大きさを確保できるよう、プリンタードライバー側で制限をかけて、不適切な大きさ
の接着面が形成されることを防止することができる。
【0017】
また、インクを噴出することで印刷を行う印刷装置のヘッド部から、媒体へのインク浸
透を抑制するアンダーコート剤を噴出して、媒体上の所定の範囲に、アンダーコート層を
形成することと、前記ヘッド部から、光が照射されると硬化する液体を前記アンダーコー
ト層上に噴出して光硬化層を形成することと、前記光硬化層に光を照射することと、を有
する接着面形成方法が明らかとなる。
【0018】
===接着面の形成について===
<紫外線硬化型接着剤を用いた接着方法>
本実施形態における印刷装置では、紫外線(以下、UVとも呼ぶ)を照射することによ
り硬化する紫外線硬化型の接着剤(以下、UV接着剤とも呼ぶ)を用いて接着面を形成す
る。UV接着剤は、紫外線硬化樹脂を含有する液体であり、UVの照射を受けると紫外線
硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。本実施形態では、媒体上の接
着面を形成したい箇所に、印刷装置のヘッド部からUV接着剤を噴出し、その後、UVを
照射してUV接着剤を硬化させることで粘着性を持たせ、接着面を形成する。
【0019】
接着を行う前に、媒体に噴出されたUV接着剤を完全硬化させてしまうと、もはや媒体
を接着することができなくなるため、UV照射量を調節して、UV接着剤が半硬化の状態
の接着面を形成する。そして、該接着面と被接着面とを密着させた状態で、半硬化状態の
接着面を完全に硬化させることで、接着が完了する。UV接着剤は、一度重合反応が開始
された後はUV照射を終了した後でもわずかに反応が進行する。そのため、UV接着剤が
半硬化の状態で接着面と被接着面とを密着させておけば、時間の経過により完全硬化して
、媒体を固着することができる。
【0020】
なお、より短時間でUV接着剤を完全硬化させるためには、前述の半硬化した接着面を
、被接着媒体と密着させた状態で、媒体ごと高出力のUVにさらす。こうすることで、接
着面を即時に完全硬化させることができる。ただし、この場合、UVが媒体を透過して接
着面まで到達する必要があるため、UVを透過させにくい厚い媒体等には適用しにくい。
【0021】
<UV接着剤を使用した接着方法の問題点>
前述の方法を用いて封筒など紙製の媒体の接着を行う場合について、比較例1として説
明する。図1A〜Cに、紙媒体にUV接着剤を噴出することで媒体上に形成された液滴(
ドット)の時間経過の様子を示す。
【0022】
ヘッドから噴出され、媒体上に着弾したUV接着剤は、最初は図1Aのように媒体上で
球状のドットを形成する。着弾したドットは時間経過とともにその形状が潰れていき、図
1Bに示されるようなドーム状に変形していく。ここで、媒体がプラスチック樹脂のよう
に、液体を吸収しない性質のもの(非吸収性)であれば、UV接着剤ドットは、表面張力
により、そのまま図1Bのようなドーム形状を保つことができる。しかし、紙のように、
媒体の吸収性が高い場合には、図1Cに示されるように、UV接着剤は次第に媒体に浸透
していく。
【0023】
この図1Cの状態でUVを照射すると、媒体上に残ったUV接着剤(斜線部)は硬化を
開始するが、媒体中に浸透したUV接着剤は硬化することなく、未反応のまま媒体中に残
留することになる。このような状態になると、媒体中に浸透した未反応のUV接着剤は、
継続的に異臭を放ち続ける。また、接着時の強度の観点から、媒体上に残ったUV接着剤
だけでは、接着面を形成するのに不十分となるおそれがある。
【0024】
<本実施形態における接着方法>
次に、本実施形態において、比較例1と同様に、封筒などの紙媒体の接着を行う場合に
ついて説明する。図2A〜Cに本実施形態におけるUV接着剤ドットの形成及び、その時
間経過の様子を示す。
【0025】
本実施形態では、媒体にUV接着剤を噴出する前に、まず、媒体上に、図2Aに示すよ
うなアンダーコート層を形成しておく。アンダーコート層は、媒体に浸透しない液体であ
るアンダーコート剤によって形成される。アンダーコート層は、印刷開始前にあらかじめ
媒体にアンダーコート剤を塗布しておくことで形成することもできるし、印刷装置のヘッ
ド部からアンダーコート剤を噴出することによって形成することもできる。アンダーコー
ト層が形成された領域では、他の液体が、媒体に染み込みにくくなる。
【0026】
その後、アンダーコート層が形成された領域にUV接着剤を噴出することで、アンダー
コート層上に、図2Bに示されるようなUV接着剤ドットが形成される。アンダーコート
層上に形成されたUV接着剤ドットは、比較例1の場合と同様に、時間の経過とともに図
2Cに示されるようなドーム形状となる。一方で、UV接着剤ドットは、アンダーコート
層により媒体への浸透を抑制されるため、比較例1の場合と異なり、時間が経過しても媒
体に染みこむことなく、ドーム形状を保ち続ける。このUV接着剤ドットが集合すること
により、アンダーコート層上に、UV接着剤からなる光硬化層を形成する。そして、UV
が照射されることにより、光硬化層を形成するUV接着剤はアンダーコート層上で全て反
応して硬化(半硬化)されるため、未反応のUV接着剤による臭気の問題や、接着面の強
度不足などの問題を生じることなく、封筒のような紙媒体の接着が可能となる。
【0027】
===印刷装置の基本的構成===
発明を実施するための印刷装置の形態として、インクジェットプリンター(プリンター
1)を例に挙げて説明する。
【0028】
<プリンター1の構成>
図3は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体に文字や画像を記録(印刷)する液体噴出
装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0029】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタ
ードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケ
ーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラ
ムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなど
の記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリ
ンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードするこ
とも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成
されている。
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じ
た印刷データをプリンター1に出力する。
【0030】
プリンター1は、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット3
0と、照射ユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、を有する。コント
ローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づい
て各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50に
よって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コン
トローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する

【0031】
<搬送ユニット10>
搬送ユニット10は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)
に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方
向である。
【0032】
一般的なインクジェットプリンターでは、図4Aに示されるように、媒体の印刷範囲外
の余白部分を、搬送ローラー13や排紙ローラー15等の上下のローラーで挟み込み、該
ローラーを回転させることで媒体の搬送を行う所謂ローラー搬送タイプの搬送ユニットを
採用しているものが多い。しかし、本実施形態においては、図4Aのようなローラー搬送
タイプの搬送ユニットを使用することは難しい。本実施形態では、媒体の余白部分(通常
ローラーに挟まれる部分)に接着剤が噴出される場合があるため、噴出された該接着剤が
搬送ローラー13や排紙ローラー15の媒体上面側に付着すると、それ以降のスムーズな
媒体の搬送を妨げるおそれが生じるからである。
【0033】
このようなことから、本実施形態においては、搬送ユニット10をベルトを用いた搬送
機構としている。図4Bは、本実施形態のプリンター1の搬送機構の概略を表した図であ
る。図4Bに示すように、ベルト搬送機構は、上流側搬送ローラー16A及び下流側搬送
ローラー16Bと、ベルト17とを有する。不図示の搬送モーターが回転すると、上流側
搬送ローラー16A及び下流側搬送ローラー16Bが回転し、ベルト27が回転する。搬
送中の媒体はベルト17に静電吸着又はバキューム吸着されている。給紙ローラー(不図
示)によって給紙された媒体は、ベルト17によって印刷可能な領域(ヘッドと対向する
領域)まで搬送される。印刷可能な領域を通過した紙Sはベルト17によって外部へ排紙
される。搬送過程を通して、媒体表面(被印刷面)と搬送機構とは機械的に非接触の状態
に保たれるため、媒体上に接着面が形成された後でも、粘着物質が搬送機構に付着すると
いうような問題は生じにくくなる。
【0034】
<キャリッジユニット20>
図5A及び図5Bに、本実施形態のプリンター1の概略図を示す。
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30が取り付けられたキャリッジ21を所
定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのもので
ある。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22(CRモ
ーターとも言う)とを有する(図5A及び図5B)。
キャリッジ21は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター22によって
駆動される。キャリッジモーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により
制御される。また、キャリッジ21は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能
に保持している。
【0035】
<ヘッドユニット30>
ヘッドユニット30は、紙Sにインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット3
0は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設
けられ、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そ
して、ヘッド31が移動方向に移動中にインクを断続的に噴出することによって、移動方
向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0036】
図6は、ヘッド31の構造を示した断面図である。ヘッド31は、ケース311と、流
路ユニット312と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース311はピエゾ素子群PZ
Tを収納し、ケース311の下面に流路ユニット312が接合されている。流路ユニット
312は、流路形成板312aと、弾性板312bと、ノズルプレート412cとを有す
る。流路形成板312aには、圧力室312dとなる溝部、ノズル連通口312eとなる貫
通口、共通インク室312fとなる貫通口、インク供給路312gとなる溝部が形成され
ている。弾性板312bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部312hを
有する。そして、アイランド部312hの周囲には弾性膜312iによる弾性領域が形成
されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室312fを介して
、各ノズルNzに対応した圧力室312dに供給される。ノズルプレート312cはノズ
ルNzが形成されたプレートである。画像を印刷するためのカラーインク用ノズル面では
、イエローインクを噴出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを噴出するマゼンタ
ノズル列Mと、シアンインクを噴出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを噴出する
ブラックノズル列Kと、が形成されている。各ノズル列では、ノズルNzが搬送方向に所
定間隔Dにて並ぶことによって構成されている。なお、YMCKのカラーインクとしては
、通常の溶媒系のインクの他に、UV硬化型のインクを使用することもできる。本実施形
態のプリンターでは、UV接着剤を硬化させるためのUV照射ユニット40を備えている
ため、画像や文字を印刷するカラーインクとして、UV硬化型のインクを使用することが
可能である。
【0037】
本実施形態では、該カラーインク用ノズル列に加えて、アンダーコート層形成用のアン
ダーコート剤噴出ノズル列UC、及び、光硬化層形成用のUV接着剤噴出ノズル列UVが
備えられている。なお、アンダーコート剤、及び、UV接着剤噴出用のヘッドは、目詰ま
り防止のために、噴出する液体の性質(濃度、粘度等)に対応して、流路312やノズル
径を、カラーインク用ヘッドよりも大き目にしておくことが望ましい。
【0038】
ピエゾ素子群PZTは、櫛歯状の複数のピエゾ素子(駆動素子)を有し、ノズルNzに
対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(不図示
)によって、ピエゾ素子に駆動信号COMが印加され、駆動信号COMの電位に応じてピ
エゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部312h
は圧力室312d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部
312h周辺の弾性膜312iが変形し、圧力室312d内の圧力が上昇・下降すること
により、ノズルからインク滴が噴出される。
【0039】
<照射ユニット40>
照射ユニット40は、媒体に着弾したUV接着剤に向けてUVを照射するものである。
媒体上に形成されたUV接着剤のドットからなる光硬化層は、照射ユニット40からのU
V照射を受けることにより、半硬化状態となり、接着面を形成する。
【0040】
本実施形態のプリンター1では、照射ユニット40として、UV接着剤を半硬化させる
UV照射行なう半硬化用照射部43を備えている。なお、本実施形態において、半硬化と
は、媒体に着弾したUV接着剤からなる光硬化層を半硬化状態まで硬化させ、粘着性を有
する接着面を形成することを言う。図5Bに示されるように、半硬化用照射部43は、ヘ
ッド31よりも搬送方向下流側に設けられており、移動方向の長さが印刷対象となる媒体
の幅よりも長くなっている。そして、半硬化用照射部43は、移動することなく媒体に向
けてUVを照射する。この構成により、UV接着剤ドットによって光硬化層が形成された
媒体が、搬送ユニット10によって半硬化用照射部43の下まで搬送されると、半硬化用
照射部43によるUVの照射を受けるようになっている。
【0041】
なお、本実施形態では、半硬化用照射部43の光源として発光ダイオード(LED:Li
ght Emitting Diode)、または、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を用
いることができる。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギー
を容易に変更することが可能である。一方、ランプはLEDよりも大きなエネルギーでU
V照射を行うことができるため、光硬化層の硬化を迅速に進めたい場合等に有効である。
【0042】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には
、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学
センサ54等が含まれる(図5A及び図5B)。
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー
式エンコーダ52は、搬送ローラー16Aまたは16Bの回転量を検出する。紙検出セン
サ53は、給紙中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ21に
取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、
移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学セン
サ54は、状況に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・
後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0043】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である
。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユ
ニット制御回路64とを有する。
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との
間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算
処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を
確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そ
して、CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回
路64を介して搬送ユニット10等の各ユニットを制御する。
【0044】
<プリンタードライバーによる印刷処理について>
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プ
リンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する
。アプリケーションプログラムから画像データを印刷データに変換する際に、プリンター
ドライバーは、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理、コ
マンド付加処理などを行う。また、プリンタードライバーは、接着面形成のためのアンダ
ーコート層や光硬化層の設定に関する処理も行う。
以下に、画像データから文字等を印字するためにプリンタードライバーが行う各種の処
理について説明する。接着面形成のための処理については後で別途説明する。
【0045】
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキスト
データ、イメージデータなど)を、媒体に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する
処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリ
ケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpi
の解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。
なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される
各階調(例えば256階調)のRGBデータである。ここで、画素とは、画像を構成する
単位要素であり,この画素が2次元的に並ぶことによって画像が形成される。画素データ
とは、画像を構成する単位要素の印刷データであり、例えば、紙S上に形成されるドット
の階調値などを意味する。
【0046】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間のデータに変換する処理である。CMY
K色空間の画像データは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。この
色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル
(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて行われる。
なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調の8ビ
ットCMYKデータである。本実施形態では該データを利用して画像処理を行い、印刷さ
れる2つの画像の境界部分におけるインクのにじみを防止している。画像処理の詳細につ
いては後述する。
【0047】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに
変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2
階調を示す1ビットデータや、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン
処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン処理されたデ
ータは、印刷解像度(例えば720×720dpi)と同等の解像度である。ハーフトー
ン処理後の画像データでは、画素ごと1ビット又は2ビットの画素データが対応しており
、この画素データは各画素でのドット形成状況(ドットの有無、ドットの大きさ)を示す
データになる。
【0048】
ラスタライズ処理は、マトリクス状に並ぶ画素データを、プリンター1に転送すべきデ
ータ順に、画素データごとに並び替える。例えば、各ノズル列のノズルの並び順に応じて
、画素データを並び替える。
コマンド付加処理は、ラスタライズ処理されたデータに、印刷方法に応じたコマンドデ
ータを付加する処理である。コマンドデータとしては、例えば媒体の搬送速度を示す搬送
データなどがある。
【0049】
これらの処理を経て生成された印刷データは、プリンタードライバーによりプリンター
1に送信される。
【0050】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピュー
ター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御す
ることにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0051】
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言
う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、不図示の給紙ローラーを回
転させ、印刷すべき紙を搬送ベルト27まで送る。続いて、上下流の搬送ローラー26A
及び26Bによりベルト27を回転させ、給紙ローラー11から送られてきた紙を印刷開
始位置に位置決めする。
【0052】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクや接着剤
を断続的に噴出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャ
リッジ21を移動方向に移動させ、キャリッジ21が移動している間に、印刷データに基
づいてヘッド31からインク等を噴出させる。噴出されたインク滴が紙上に着弾すると、
紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットライン
が形成される。
【0053】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コ
ントローラー60は、上下流の搬送ローラー26A及び26Bを回転させて紙を搬送方向
に搬送する。この搬送処理により、ヘッド31は、先ほどのドット形成処理によって形成
されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
【0054】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理
とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして
、印刷すべきデータがなくなると、ベルト搬送によりその紙を排紙する。なお、排紙を行
うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
【0055】
なお、本実施形態においては、接着面を形成するために、印刷途中で媒体の搬送方向を
逆にする処理が必要となる。詳細は後で説明する。
【0056】
===形成される接着面の例===
本実施形態の印刷装置を用いて実際に印刷を行う際に、媒体上にどのように接着面が形
成されるのかについて説明する。
【0057】
図7に、見開き型の封筒(以下、展開封筒とも呼ぶ)を印刷する場合の例を示す。展開
封筒は、平面状の媒体を折り曲げて、折り曲げ線以外の外縁となる部分を接着することに
より封緘される封筒である。
図7に示されるように、媒体101は長方形の紙で、媒体中央部の斜線部で表される領
域102は文字や図形が印刷される印刷領域である。本実施形態では、媒体が搬送される
間に、印刷領域102にカラーインクを噴出することで、印刷面を形成し、印刷領域10
2の周囲の余白部分にはアンダーコート剤を噴出することで、アンダーコート層103を
形成する。
【0058】
アンダーコート層103が形成されると、一旦、媒体101の搬送を止めて、搬送モー
ター22を逆回転させ、媒体の搬送方向を逆(下流側から上流側)にする。媒体101が
再び印刷可能な領域まで搬送されると、形成されたアンダーコート層103の上にUV接
着剤を噴出し、光硬化層104a〜cを形成する。このように、印刷の途中で媒体の搬送
方向を切り替えることで、途中でプリンターから媒体を排出することなく、1回の印刷動
作でアンダーコート層103の上層に光硬化層104を形成することが可能となる。媒体
101の搬送過程を通して、光硬化層104を形成するUV接着剤ドットは、該アンダー
コート層103により媒体中に浸透することを抑制される。
なお、図7では、折り曲げ線105を挟んで、媒体101の左側半分だけに光硬化層1
04a〜cが形成されているが、右側に同様の光硬化層を形成しても良い。また、図7で
は、媒体の封緘時に、展開封筒の外縁となる3辺に沿って、光硬化層104a〜cが形成
されているが、用途に応じて光硬化層104aのみを形成すること等も可能である。
【0059】
光硬化層104が形成された後に、再び、搬送方向を逆向き(上流側から下流側)にし
て、搬送方向の下流側に設置された照射ユニット40からUVを照射する。光硬化層10
4を形成するUV接着剤ドットはUV照射を受けることで、半硬化状態となり、接着面を
形成する。そして、接着面が形成された状態でプリンターから排出された媒体101を、
折り曲げ線105で谷折りにして、104a〜cに形成された接着面と、対向する被接着
面とを密着させ、接着面のUV接着剤を完全硬化させれば、印刷面102を内側にした展
開封筒として封緘をすることができる。
【0060】
ここで、アンダーコート層103は光硬化層104が形成される領域だけでなく、媒体
を折り曲げて接着する際に、接着面(光硬化層104)と対向する被接着面となる領域に
も形成しておく必要があることに留意する。本実施形態においては、図7の折り曲げ線1
05を挟んだ媒体右側の余白部分のように、光硬化層104が形成されない領域にもアン
ダーコート層103が形成される。図8に、実際に封緘が完了した状態の展開封筒の封緘
部の断面図を示す。本実施形態では、媒体101がアンダーコート層103を挟み込み、
さらに、アンダーコート層103が光硬化層(接着面)104を挟み込むようにして接着
される。図8からもわかるように、光硬化層104と媒体101との間には、必ずアンダ
ーコート層103が介在するため、UV接着剤と媒体とが接触することはない。したがっ
て、UV接着剤が媒体101に染みこむことはなく、未反応のUV接着剤による臭気の発
生等の問題は生じない。
これに対して、図9のように、アンダーコート層103が媒体101の左側(光硬化層
104が形成される領域)のみに形成されたものを折り曲げて接着した場合の断面図を図
10に示す。図10では、光硬化層(接着面)104の下側にはアンダーコート層103
が形成されているため、UV接着剤が媒体に浸透することはない。一方、光硬化層104
の上側にはアンダーコート層103は形成されず、光硬化層104は、媒体101と直接
接触している。このような場合、光硬化層104に含まれる完全硬化前のUV接着剤が、
該接触面から媒体101に染みこむことになり、未反応のUV接着剤によって臭気が発生
することになる。 したがって、アンダーコート層103は、封緘時に光硬化層104と
接触する可能性のある全ての領域に形成しておくことが必要となる。
【0061】
また、アンダーコート層103を形成する領域は、光硬化層104を形成する領域を完
全に包含する必要がある。前述と同様の理由により、光硬化層104と媒体101とが直
接接触することを防止する必要があるからである。したがって、図7に示されるように、
アンダーコート層103は、必ず光硬化層104以上の大きさの領域となる。
【0062】
次に、定型封筒(長型、角型等)に印刷をする場合の例を図11に示す。
前述の展開封筒の場合と同様に、定型封筒においても、まず、媒体301(定型封筒)
に、アンダーコート層303を形成し、その上から光硬化層304を形成する。図11に
示される定型封筒では、フラップ部にアンダーコート層303aが形成され、封筒の胴の
部分にアンダーコート層303b、及び、宛名などが印字される印刷面302が形成され
る。アンダーコート層303は、フラップ部のみに形成されるのではなく、折り曲げ線3
05でフラップ部を折り曲げた時に303aと対向する領域303bにも形成する必要が
あることに留意する。フラップ部を折り曲げて封緘する際に、光硬化層304と媒体30
1とが直接接触してUV接着剤が媒体に染みこむのを防止するためである。
【0063】
媒体301は、プリンター内を上流側から下流側へと搬送される過程で、ヘッドから噴
出されたインクにより、領域302に宛名等の印刷面が形成され、同じくヘッドから噴出
されたアンダーコート剤により、アンダーコート層303a、bが形成される。その後、
媒体301が逆搬送(搬送方向の下流側から上流側)され、ヘッドから噴出されたUV接
着剤により、アンダーコート層上に光硬化層304が形成される。なお、光硬化層304
は、図11のアンダーコート層303a上(フラップ側)、または、303b上(胴側)
のどちらに形成されても良い。
【0064】
光硬化層304が形成された後に、再び、搬送方向を逆にして(搬送方向の上流側から
下流側)、搬送方向の下流側に設置された照射ユニット40からUVを照射する。光硬化
層304を形成するUV接着剤ドットはUV照射を受けることで、半硬化状態となり、接
着面を形成する。媒体301がプリンターから排出された後に、折り曲げ線305で谷折
りしてフラップ部を折りたたみ、304に形成された接着面と対向する被接着面とを密着
させた状態で完全硬化させることで、定型封筒を封緘することができる。
【0065】
===印刷データの処理について===
印刷開始にあたり、インクや接着剤等の噴出位置や噴出量を決定するための印刷データ
がプリンタードライバーによって作成される。そして、作成された印刷データに基づいて
、コントローラー60により、ヘッドユニット30から適宜インク、アンダーコート剤、
及び、UV接着剤を噴出し、照射ユニット40からUV照射を行うことで、媒体上に印刷
面及び接着面が形成される。通常の印刷であれば、前述の印刷処理手順に従って画像デー
タから印刷データが作成されるが、本実施形態では、接着面が形成される予定の領域には
印字を行うことができないため、印刷領域の設定などについて特殊な処理が必要となる。
【0066】
<アンダーコート層及び光硬化層の決定>
まず、媒体上でアンダーコート層、及び、光硬化層を特定して、接着面が形成される予
定の領域を確定する。アンダーコート層、及び、光硬化層の特定は、コンピューター11
0を介し、ユーザーインターフェースを利用して行われる。
【0067】
プリンタードライバーにはあらかじめ数種類のアンダーコート層が設定されており、ユ
ーザーはこれらの一つを選択することでアンダーコート層の特定をすることもできる。例
えば、前述の展開封筒の場合であれば、A4用紙や往復はがき等の定型サイズの用紙に対
応する余白部分に、それぞれ図7の103のようなアンダーコート層が最初から設定され
ており、定型封筒の場合も同様に、図11の303a、bのようなアンダーコート層が設
定されている。市販の定型封筒を使用して印刷を行う場合等には、このように、当初から
プリンタードライバーに設定されているデータを利用して、アンダーコート層を特定する
ことが可能である。
【0068】
これに対して、アンダーコート層を初期設定値から選択することができない場合は、ユ
ーザー自身が領域の設定をする必要がある。例えば、ユーザーインターフェースにおいて
図12に示すような設定画面上でアンダーコート層を設定できるようにしておく。その際
の主な設定項目は、アンダーコート層の「位置」と「大きさ」であり、マウス等の指示装
置を用いて媒体上に所定の領域を指定する。
【0069】
また、アンダーコート層と同様に、光硬化層の設定を行う。光硬化層の場合も、アンダ
ーコート層の設定と同様に、初期設定値から選択する方法と、ユーザー自身が設定する方
法がある。ただし、前述の通り、光硬化層は、アンダーコート層に包含される領域内に形
成される必要があるため、アンダーコート層設定範囲外には光硬化層を設定することがで
きないようにしておく。
【0070】
なお、接着面が形成された時に、十分な強度で接着が行えるよう、プリンタードライバ
ー側で、アンダーコート層、及び、光硬化層を設定できる範囲を制限したり、その大きさ
(面積)に最小値を設けたりしておくこともできる。例えば、ユーザー入力により設定さ
れた光硬化層(接着面)の面積が所定の値よりも小さい場合には、プリンタードライバー
から警告が発せられる。そして、ユーザーに十分な大きさの領域を再設定させるようにす
ることで、不十分な接着面が形成されるのを未然に防止し、確実に接着を行えるようにす
る。
【0071】
<印刷データの作成>
インク噴出のための印刷データは前述のとおり、プリンタードライバーによる印刷処理
において、元となる画像データから作成される。ここで、該元画像データがアンダーコー
ト層と重複する場合、例えば、元画像データが媒体全体に縁なしで印刷を行うようなデー
タであった場合には、重複部分にカラーインクとアンダーコート剤とを共に噴出すること
になる。しかし、当該領域は接着面となり、最終的には見えなくなる領域であり、また、
インクの顔料成分等が付着することにより、形成された接着面が必要な粘着力を得られな
くなるといった問題も生じるおそれがある。
したがって、プリンタードライバーがアプリケーションプログラムから画像データを受
け取った際に、文字等が印字される印刷領域と、接着面が形成される予定のアンダーコー
ト層、または光硬化層とが重複している場合、プリンタードライバーは、該画像データの
印字範囲を縮小または一部を削除することにより、印刷領域とアンダーコート層等とが重
ならないように調整する。これにより、印刷面にアンダーコート剤やUV接着剤が噴出さ
れるのを防止する。
【0072】
また、プリンタードライバーは、設定されたアンダーコート層上にUV接着剤を噴出し
、光硬化層を形成するためのUV接着剤噴出に関するデータを生成する。アンダーコート
層上に噴出されるUV接着剤においては色は考慮されないため、前述の画像処理における
色変換処理を行う必要はない。また、画素ごとに階調値を変える必要もないため、ハーフ
トーン処理も不要である。したがって、アンダーコート層の範囲内であり、かつ、光硬化
層として設定された十分大きな領域を形成する全ての画素に、所定の大きさのUV接着剤
液滴を1ドット分ずつ噴出するような印刷データが生成される。
【0073】
コントローラー60は、作成された該印刷データに基づいて、ヘッドユニット30から
媒体上の印刷領域にインク、及び、アンダーコート剤を噴出させることで、印刷面、及び
、アンダーコート層を形成し、形成されたアンダーコート層にUV接着剤を噴出させるこ
とで、光硬化層を形成する。
【0074】
===まとめ===
本実施形態では、インクジェットプリンターを用いて、封筒などの液体が浸透しやすい
(浸透性)媒体に対する封緘作業を効率的に行うことができる。
【0075】
まず、媒体上に、他の液体が媒体に浸透するのを抑制するアンダーコート剤を噴出し、
アンダーコート層を形成する。そして、該アンダーコート層の上にUV接着剤を噴出して
光硬化層を形成する。その後、光硬化層にUVを照射することで、光硬化層を半硬化状態
として、接着面を形成する。該接着面が半硬化状態の間に媒体を密着させて完全硬化させ
ることで、紙等浸透性媒体の接着を行う。
これにより、通常の印刷に使用されるインクジェットプリンターで、UV硬化型接着剤
を用いて、インク吸収性の高い媒体に対して、未反応のUV接着剤を残すことなく、確実
に接着面を形成することができる。
【0076】
また、アンダーコート層が形成される領域は、光透過層の下側であり、かつ、光硬化層
が形成される領域を完全に包含する。
これにより、光透過層を形成するUV接着剤があふれて、媒体に浸透することを抑制す
ることができる。
【0077】
また、アンダーコート層は、媒体に形成された接着面だけでなく、媒体の接着を行う際
に該接着面に対向することになる被接着面の領域にも形成される。
これにより、UV接着剤が被接着面から媒体に浸透することを抑制する。
【0078】
また、印刷時には、まず、媒体上にアンダーコート層を形成した後に、媒体の搬送方向
を切り替えて逆搬送して、光硬化層を形成する。
これにより、1回の印刷動作で、媒体上にアンダーコート層と光硬化層とを形成するこ
とができ、2度に分けて印刷したり、特殊な構成のプリンターを使用したりすることなく
、接着面を形成することができる。
【0079】
また、接着面を形成するためのアンダーコート層や光硬化層は、プリンタードライバー
上で、ユーザーによって設定される。
これにより、媒体上の任意の領域に接着面を形成することができる。
【0080】
また、アンダーコート層や光硬化層を設定する時に、画像などが印字される印刷領域と
、該アンダーコート層等が媒体上で重複する場合には、プリンタードライバーは、画像デ
ータを縮小したり、一部削除したりする等して、アンダーコート層や光硬化層と印刷領域
とが重複しないように調整する。
これにより、印刷面と接着面が重なって、印字情報が見えなくなったり、また、インク
の影響で接着面の粘着力が弱くなったりするといった問題が生じるのを防止することがで
きる。
【0081】
また、プリンタードライバーは、光硬化層を設定できる大きさに最小値を設け、ユーザ
ーが設定した光硬化層の領域の面積が所定の値より小さい場合には、当該設定を拒絶して
、所定の値以上となるよう再設定させる。
これにより、接面積不足による接着強度の不足等の問題を生じることなく、確実な接着
を行うことができる。
【0082】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容
易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、
その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含ま
れることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれる
ものである。
【0083】
<接着面の形成について>
前述の実施形態では、1回の印刷動作で媒体上に接着面を形成していたが、接着面の形
成工程を複数回の印刷に分けて実行しても良い。例えば、1回目の印刷時に、媒体上にア
ンダーコート層を形成しておいて、一旦、プリンターから媒体を排出し、2回目の印刷時
に、光硬化層を形成するような印刷を行ってもよい。
【0084】
<使用するカラーインクについて>
前述の実施形態では、CMYKの4色のインクを使用して印刷する例が説明されていた
が、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト、
クリアー等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行ってもよい。
【0085】
<UV接着剤について>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化する接着剤(U
V接着剤)をノズルから噴出していた。しかし、噴射する接着剤は、このような接着剤に
限られるものではなく、UV以外の他の電磁波(例えば赤外線や可視光線など)の照射を
受けることによって硬化するものであってもよい。この場合、照射ユニットから、その液
体を硬化させるための電磁波(赤外線や可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0086】
<アンダーコート剤について>
前述の実施形態では、アンダーコート層が形成される領域と文字等の印刷される印字領
域とを分けていたが、例えば、アンダーコート層をクリアーインクとし、画像等の印刷面
を含む媒体表面を全面コーティングするような実施形態とすることもできる。ただし、こ
の場合には、カラーインクにより画像等が形成する工程の後に、アンダーコート層を形成
する工程を行う必要がある。
【0087】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、液体を噴出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZT
を例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを用
いてもよい。
【0088】
<プリンタードライバーについて>
プリンタードライバーの処理はプリンター側で行ってもよい。その場合、プリンターと
ドライバーをインストールしたPCとで印刷装置が構成される。
【0089】
<他の印刷装置について>
前述の実施形態では、ヘッド31をキャリッジとともに移動させるタイプのプリンター
1を例に挙げて説明したが、プリンターはヘッドが固定された、いわゆるラインプリンタ
ーであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 プリンター
10 搬送ユニット、13 搬送ローラー、15 排紙ローラー、
16A 上流側搬送ローラー、16B 下流側搬送ローラー、17 ベルト
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 キャリッジモーター、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、311 ケース、312 流路ユニット、
312a 流路形成板、312b 弾性板、312c ノズルプレート、
312d 圧力室、312e ノズル連通口、312f 共通インク室、
312g インク供給路、312h アイランド部、312i 弾性膜、
40 照射ユニット、 43 半硬化用照射部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラー、61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリ、
64 ユニット制御回路、
110 コンピューター、
101 媒体(展開封筒)、102 印刷領域、103 アンダーコート層、
104a〜c 光硬化層、105 折り曲げ線、
301 媒体(定型封筒)、302 印刷領域、303a・b アンダーコート層、
304 光硬化層、305 折り曲げ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを噴出することで印刷を行うヘッド部を備える印刷装置であって、
前記ヘッド部から、媒体へのインク浸透を抑制するアンダーコート剤を噴出して、媒体
上の所定の範囲に、アンダーコート層を形成し、
前記ヘッド部から、光が照射されると硬化する液体を前記アンダーコート層上に噴出し
て、光硬化層を形成し、
前記光硬化層に光を照射することで、接着面を形成すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記光硬化層の領域が、前記アンダーコート層の領域に包含されることを特徴とする印
刷装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記媒体を接着する場合に前記接着面と対向する被接着面にも、前記アンダーコート層
が形成されることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記アンダーコート層が形成された後に、前記媒体の搬送方向を切り替えて、前記光硬
化層を形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記アンダーコート層、及び、前記光硬化層を形成する領域を前記媒体上に設定する印
刷装置制御部、を備える印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、元となる画像データから作成される印刷データの印刷領域が、設定され
た前記アンダーコート層、または、前記光硬化層と重複する場合に、
前記画像データを調整して、重複しないようにすることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、設定した前記光硬化層の大きさが所定の大きさよりも小さい場合には、
警告を発することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
インクを噴出することで印刷を行う印刷装置のヘッド部から、媒体へのインク浸透を抑
制するアンダーコート剤を噴出して、媒体上の所定の範囲に、アンダーコート層を形成す
ることと、
前記ヘッド部から、光が照射されると硬化する液体を前記アンダーコート層上に噴出し
て光硬化層を形成することと、
前記光硬化層に光を照射することと、
を有する接着面形成方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−88060(P2011−88060A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243110(P2009−243110)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】