説明

印刷装置用部品、印刷装置およびラベル

【課題】ユーザーによって印刷装置に装着される部品が、印刷装置にとって望ましい状態の部品でない場合に、その旨をユーザーに報知する。
【解決手段】印刷装置に装着される印刷装置用部品は、感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、識別情報記録部がさらに熱を受け、模様の態様が不可逆的に変化することによって、識別情報記録部に記録された識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置用部品に表示を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置は、複数の部品により構成される。かかる部品は、ユーザーによって取り替えが行われることがある。例えば、印刷に使用するインクを収容するインクカートリッジを着脱可能な印刷装置においては、インクカートジッジに収容されたインクが使い切られると、ユーザーは、インクカートリッジを新たなものに交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−34946号公報
【特許文献2】特開2010−31106号公報
【特許文献3】特開平6−255120号公報
【特許文献4】特開2000−218816号公報
【特許文献5】特開2003−11469号公報
【特許文献6】特開2010−18024号公報
【特許文献7】特開2011−56739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる印刷装置用の部品は、当該部品の交換時に適正な部品を使用することが望ましい。例えば、印刷装置の仕様に適合しない状態の部品を使用すれば、印刷装置に不具合が生じる可能性がある。かかる問題は、インクカートリッジに限らず、印刷装置の種々の部品(例えば、印刷ヘッド)に共通するものである。また、かかる問題は、部品がその寿命を迎えた場合に限らず、種々の状況で生じ得る。例えば、ユーザーが複数の印刷装置を所有し、1つの印刷装置の部品を他の印刷装置に流用する場合にも生じ得る。これらのことから、ユーザーによって印刷装置に装着される部品が、印刷装置にとって望ましい状態の部品でない場合に、その旨をユーザーに報知することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]印刷装置に装着される印刷装置用部品であって、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、
前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部と
を備えた印刷装置用部品。
【0007】
例えば、適用例1の印刷装置用部品は、印刷装置に装着された印刷装置用部品の状態が望ましいものではない場合に、印刷装置用部品の識別情報記録部に記録された識別情報を無効化する印刷装置と組み合わせて使用することができる。印刷装置用部品の状態の判断は、例えば、識別情報記録部に記録された識別情報に基づいて行われてもよいし、印刷装置用部品の使用の程度に基づいて行われてもよい。適用例1の印刷装置用部品によれば、ユーザーによって印刷装置に装着される印刷装置用部品が、印刷装置にとって望ましい状態の印刷装置用部品でない場合に、その旨をユーザーに報知することができる。その結果、ユーザーが望ましい状態の印刷装置用部品を印刷装置に装着すれば、印刷品質の低下や印刷装置の不具合の発生を抑制することができる。
【0008】
[適用例2]前記識別情報記録部は、前記識別情報が記録された記録層と、該記録層よりも外方側に配置され、前記記録層に記録された前記識別情報を視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に隠蔽するための隠蔽層とを備える適用例1記載の印刷装置用部品。
【0009】
識別情報を表す模様は、印刷装置に読み取らせるための情報であって、ユーザーにとっては、必要不可欠な情報ではない。かかる構成の印刷装置用部品によれば、ユーザーは、識別情報記録部に記録された識別情報を視認できないので、ユーザーが、余計な情報に基づいて混乱することを抑制できる。
【0010】
[適用例3]前記隠蔽層は、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収し、近赤外光線が透過する性質を有する適用例2記載の印刷装置用部品。
【0011】
かかる構成の印刷装置用部品によれば、記録層に記録された識別情報を、簡単な構成で視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に隠蔽できる。
【0012】
[適用例4]前記印刷装置として、前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取り可能な読取部であって、前記印刷装置用部品を前記印刷装置に装着した状態において、前記読取部と前記印刷装置用部品とが一定の方向に相対移動することにより、前記表示部および前記識別情報記録部を順次、読み取る読取部を備えた印刷装置に装着可能な、適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の印刷装置用部品であって、前記識別情報記録部および前記表示部は、前記相対移動が開始される前の前記読取部と前記印刷装置用部品との相対位置から、前記印刷装置用部品が前記読取部に対して相対移動する方向に向かって、前記印刷装置用部品上に前記識別情報記録部、前記表示部の順に配置された印刷装置用部品。
【0013】
かかる構成の印刷装置用部品によれば、印刷装置用部品が読取部に対して相対移動する方向に向かって、読み取る順番に、識別情報記録部と表示部とが配置されているので、読取部と印刷装置用部品とは、一定の方向における識別情報記録部および表示部の幅分だけ相対移動すればよい。つまり、相対移動により表示部を読み取った後、逆の方向に相対移動して、識別情報記録部を読み取る必要がない。その結果、無駄な相対移動を行う必要がなく、読み取りを効率的に行える。
【0014】
[適用例5]印刷装置に装着される印刷装置用部品であって、感熱材料を含み、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、感熱材料を含み、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部とを備えた印刷装置用部品。
【0015】
例えば、適用例5の印刷装置用部品は、印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達した場合に、第2の表示部を加熱する印刷装置と組み合わせて使用することができる。あるいは、適用例5の印刷装置用部品は、印刷装置用部品の使用の程度に応じて、第1の表示部を複数の段階で段階的に加熱し、第1の表示部を最終段階まで加熱した場合に、第2の表示部を加熱する印刷装置と組み合わせて使用することができる。かかる構成の印刷装置用部品によれば、第1の表示部の表示によって、印刷装置用部品の使用の程度をユーザーに好適に報知することができる。しかも、ユーザーは、第2の表示部の表示によって、印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを確実に認識することができる。適用例5の印刷装置用部品に、適用例1〜4の印刷装置用部品の構成を組み合わせてもよい。
【0016】
[適用例6]印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部とを備えた印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であって、前記識別情報記録部に表された前記模様を読み取り可能な読取部と、前記読取部によって読み取られた前記模様が、予め定められた条件を満たさない第1の場合、および、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達した第2の場合のうちの少なくとも一方の場合に、前記識別情報記録部を加熱して、前記模様の態様の変化を生じさせることで、前記無効化を行う無効化部と、前記無効化が行われた場合に、前記表示部に対して、前記文字情報の表示および前記色変化のうちの少なくとも一方を生じさせる処理を行う表示処理部とを備えた印刷装置。
【0017】
かかる構成の印刷装置によれば、第1の場合および第2の場合のうちの少なくとも一方の場合が生じて、識別情報記録部が無効化されたことを、印刷装置用部品の表示部によって、ユーザーに報知することができる。第1の場合および第2の場合は、ユーザーによって印刷装置に装着される部品が、印刷装置にとって望ましい状態の部品でないことを意味する。したがって、報知に基づいて、ユーザーが望ましい状態の部品を印刷装置に装着すれば、印刷品質の低下や印刷装置の不具合の発生を抑制することができる。なお、適用例6の印刷装置に、適用例2〜5の印刷装置用部品を装着してもよい。
【0018】
[適用例7]印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部とを備えた印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であって、前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取り可能な読取部と、前記読取部によって読み取られた前記模様が、予め定められた条件を満たさない第1の場合、および、前記読取部によって読み取られた前記表示部の表示が、前記無効化されたことに関連する特定の情報である第2の場合に、ユーザーに報知するための情報を出力する出力部とを備え、前記読取部は、前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取る際に、前記表示部を、前記識別情報記録部よりも先に読み取る印刷装置。
【0019】
かかる構成の印刷装置によれば、第1の場合および第2の場合に、ユーザーに報知することができる。第1の場合および第2の場合は、ユーザーによって印刷装置に装着される部品が、印刷装置にとって望ましい状態の部品でないことを意味する。したがって、報知に基づいて、ユーザーが望ましい状態の部品を印刷装置に装着すれば、印刷品質の低下や印刷装置の不具合の発生を抑制することができる。しかも、印刷装置は、表示部を識別情報記録部よりも先に読み取るので、表示部を読み取った結果、第2の場合に該当する場合には、識別情報記録部の読み取りを省略することもできる。こうすれば、第1の場合の判断を行う必要がないので、処理を効率化できる。かかる効果は、識別情報が複数の情報を含む場合や、第1の場合の判断が第2の場合の判断よりも複雑である場合に、いっそう顕著となる。なお、適用例7の印刷装置に装着する印刷装置用部品は、適用例2〜5の印刷装置用部品の構成を備えていてもよい。また、適用例7の構成と適用例6の構成とを組み合わせてもよい。
【0020】
[適用例8]印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、感熱材料を含み、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、感熱材料を含み、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部とを備えた印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であって、加熱を行う加熱部を備え、前記加熱部は、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、前記第1の表示部を複数の段階で段階的に加熱し、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達した場合、または、前記第1の表示部を前記複数の段階のうちの最終段階まで加熱した場合に、前記第2の表示部を加熱する印刷装置。
【0021】
かかる構成の印刷装置によれば、第1の表示部の表示によって、印刷装置用部品の使用の程度をユーザーに好適に報知することができる。しかも、ユーザーは、第2の表示部の表示によって、印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを確実に認識することができる。なお、適用例8の印刷装置に装着する印刷装置用部品は、適用例1〜4の印刷装置用部品の構成を備えていてもよい。また、適用例8の構成と、適用例6および適用例7の少なくとも一方の構成とを組み合わせてもよい。
【0022】
[適用例9]印刷装置用部品に接着されるラベルであって、感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報を記録するための識別情報記録部と、前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部とを備えたラベル。
【0023】
かかるラベルは、印刷装置用部品に接着すれば、適用例1の印刷装置用部品と同様の効果を奏する。なお、適用例9のラベルは、適用例2〜5の構成を備えていてもよい。
【0024】
[適用例10]印刷装置用部品に接着されるラベルであって、感熱材料を含み、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、感熱材料を含み、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部とを備えたラベル。
【0025】
かかるラベルは、印刷装置用部品に接着すれば、適用例5の印刷装置用部品と同様の効果を奏する。なお、適用例10のラベルは、適用例1〜4の構成を備えていてもよい。
【0026】
また、本発明は、上述した形態のほかに、印刷装置用部品における表示方法、印刷装置のプログラム、当該プログラムをコンピューターが読み取り可能に記録された記憶媒体等の形態でも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】印刷装置20の概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ヘッドユニット60にインクカートリッジ70aを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】インクカートリッジ70aに貼り付けられたラベルLAを示す説明図である。
【図4】初期使用時における識別情報記録部110の断面構成を示す説明図である。
【図5】無効化された識別情報記録部110の断面構成を示す説明図である。
【図6】インクカートリッジ70aに貼り付けられたラベルの表示態様の変化を示す説明図である。
【図7】識別情報記録部110に記録された情報の読み取り、および、無効化の方法を示す説明図である。
【図8】第1の表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2の表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】認証処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
A.実施例:
図1は、本発明の印刷装置の実施例としてのプリンター20の概略構成を示す。プリンター20は、制御ユニット30と、印刷ヘッドユニット搬送機構40と、紙搬送機構50と、印刷ヘッドユニット60と、読取ユニット80と、書込ユニット90と、操作パネル98と、メモリーカードスロット99とを備えている。
【0029】
制御ユニット30は、CPU31、RAM37、EEPROM38を備える。制御ユニット30は、プリンター20の動作全般を制御する。CPU31は、EEPROM38に記憶されたプログラムをRAM37に展開し、実行することにより、出力部32、検出部33としても機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0030】
印刷ヘッドユニット搬送機構40は、モーター41、駆動ベルト42、プーリー43およびシャフト44を備える。シャフト44は、後述するプラテン52の軸と平行に設けられる。このシャフト44は、印刷ヘッドユニット60を摺動可能に保持する。印刷ヘッドユニット搬送機構40は、モーター41を駆動させることにより、印刷ヘッドユニット60をシャフト44に沿って、つまり、プラテン52の軸方向に往復動させる。この印刷ヘッドユニット60の往復道の方向を主走査方向ともいう。
【0031】
紙搬送機構50は、モーター51とプラテン52とを備えている。紙搬送機構50は、モーター51を駆動させることにより、印刷媒体Pを搬送する。印刷媒体Pは、主走査方向と直交する方向に搬送される。プラテン52上の印刷ヘッド61と対向する位置において、印刷媒体Pが搬送される方向を副走査方向ともいう。
【0032】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド61とフォルダー62とを備えている。フォルダー62には、印刷材としてのインクを収容する印刷材収容体としてのインクカートリッジが装着される。フォルダー62は、インクカートリッジを着脱可能に構成される。本実施例では、インクカートリッジは、重力方向の上方からフォルダー62に装着される。また、本実施例では、6つのインクカートリッジ70a〜70fがフォルダー62に装着される。インクカートリッジ70a〜70fには、相互に性状が異なるインクが収容される。本実施例では、インクカートリッジ70a〜70fは、シアンインク、マゼンタインク、イエロインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクをそれぞれ収容する。フォルダー62に装着可能なインクカートリッジの数は、1つ以上であればよい。また、同一の性状のインクが収容される複数のインクカートリッジがフォルダー62に装着されてもよい。以下の説明において、インクカートリッジ70a〜70fを総称して、インクカートリッジ70ともいう。また、インクカートリッジ70a〜70fの構成要素を総称する場合には、「a」〜「f」の文字を除いた符号を用いて呼ぶこととする。
【0033】
印刷ヘッド61の下部(プラテン52側)には、上述の各色のインクに対応するノズル列が形成されている。フォルダー62にインクカートリッジ70a〜70fを装着すると、インクカートリッジ70a〜70fから印刷ヘッド61へのインクの供給が可能となる。印刷ヘッド61は、インクカートリッジ70a〜70fからインクの供給を受けて、インクを印刷媒体Pに吐出する。
【0034】
読取ユニット80は、インクカートリッジ70a〜70fに記録された情報を読み取る。書込ユニット90は、インクカートリッジ70a〜70fに情報を書き込む。本実施例では、読取ユニット80および書込ユニット90は、重力方向において、印刷ヘッドユニット60の上方に設置されている。また、読取ユニット80および書込ユニット90は、所定の位置に固定的に設置されている。読取ユニット80および書込ユニット90の詳細については後述する。
【0035】
操作パネル98は、ユーザーが入力するプリンター20の動作の指示を受け付けるUI(User Interface)である。本実施例では、操作パネル98は、ディスプレイである。操作パネル98は、ディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)によって、動作の指示を受け付ける。メモリーカードスロット99は、記憶媒体としてのメモリーカードを接続可能なインターフェースである。メモリーカードスロット99は、メモリーカードから印刷対象のデータの入力を受け付ける。なお、プリンター20は、印刷対象のデータを、プリンター20の外部から受け取ってもよい。例えば、プリンター20は、プリンター20に接続されるパーソナルコンピューターから、印刷データを受け取ってもよい。
【0036】
かかるプリンター20において、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40によって印刷ヘッドユニット60を主走査方向に往復動させ、その動きに合わせて、紙搬送機構50によって印刷媒体Pを副走査方向に搬送する。また、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40および紙搬送機構50の動きに合わせて、所要のタイミングで印刷ヘッド61を駆動し、印刷媒体P上に、入力された印刷データに基づいた色のインクドットを形成し、印刷を実行する。
【0037】
かかるプリンター20において、印刷処理が実行されていない状態、すなわち、印刷ヘッドユニット搬送機構40が停止された状態では、印刷ヘッドユニット60は、予め定められた位置に停止する。かかる位置をホームポジションHPともいう。本実施例では、ホームポジションHPは、主走査方向において、印刷媒体Pが設置される位置から退避した位置に定められている。図1では、印刷ヘッドユニット60がホームポジションHPに停止した状態を示している。また、読取ユニット80および書込ユニット90は、主走査方向において、印刷媒体P、印刷ヘッドユニット60のホームポジションHP、読取ユニット80および書込ユニット90の順に並ぶように配置されている。つまり、読取ユニット80および書込ユニット90は、ホームポジションHPから見て、印刷媒体Pと反対側に配置されている。
【0038】
ただし、ホームポジションHPは、上述の例に限らず、主走査方向の任意の位置に設定可能である。同様に、読取ユニット80および書込ユニット90の位置は、主走査方向の任意の位置に配置可能である。これらの位置は、インクカートリッジ70a〜70fを着脱する際の印刷ヘッドユニット60の位置が、読取ユニット80および書込ユニット90の位置と主走査方向に重複しないようにプリンター20が構成されていればよい。
【0039】
本願では、副走査方向と反対の方向を、XYZ直交座標系のX方向ともいう。主走査方向において、印刷媒体Pの設置位置からホームポジションHPに向かう方向をY方向ともいう。重力方向において、下方から上方に向かう方向をZ方向ともいう。
【0040】
図2は、インクカートリッジ70aが印刷ヘッドユニット60に装着された状態を示す。本実施例では、インクカートリッジ70aの筐体は、6面体の形状を有する。フォルダー62の−Z方向は、印刷ヘッド61と一体化されている。本実施例では、印刷ヘッドユニット60は、フォルダー62の−X,Y,−Y,Zの4方向からユーザーが印刷ヘッドユニット60を視認できるように、プリンター20に装着されている。フォルダー62のZ方向は、開口している。この開口から−Z方向に向けて、インクカートリッジ70aは、フォルダー62に装着される。つまり、インクカートリッジ70aは、フォルダー62への装着状態において、インクカートリッジ70aの筐体のうちの上面71aがフォルダー62から完全に露出した状態となる。このとき、インクカートリッジ70aの筐体のうちの、X方向の側面72aは、フォルダー62から一部分が露出した状態となる。インクカートリッジ70aの筐体のうちの、−X方向の側面73aは、フォルダー62にほぼ覆われた状態となる。なお、インクカートリッジ70b〜70fは、インクカートリッジ70aと同様にして、Y方向に並んでフォルダー62に装着される。
【0041】
かかるインクカートリッジ70aの上面71aには、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130が形成されている。本実施例においては、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130は、所定の印刷がなされたラベルLAとして構成される。これらのラベルLAは、接着剤によって、上面71aに貼り付けられている。ラベルLAの貼り付けは、インクカートリッジ70aの出荷までの段階で行われる。インクカートリッジ70b〜70fにも、インクカートリッジ70aと同様にして、ラベルLAが貼り付けられている。本実施例では、ラベルLAは、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130が印刷された1つのラベルである。かかる構成により、ラベルLAを上面71aに貼り付ける際に、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の相対位置関係の位置決めが不要となる。ただし、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130は、複数のラベルに分散的に印刷されていてもよい。
【0042】
図3は、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の詳細を示す。識別情報記録部110および表示部120は、Y方向に向かって、識別情報記録部110,表示部120の順に並んで配置されている。Y方向は、本実施例では、インクカートリッジ70が配列される方向である。インク残量表示部130は、識別情報記録部110および表示部120よりも、X方向側に配置されている。
【0043】
図4は、識別情報記録部110の断面構成を示す。識別情報記録部110は、識別情報記録部110を備えるインクカートリッジ70を識別するための識別情報を記録するために設けられる。本実施例では、識別情報記録部110は、記録層111と隠蔽層112とを備えている。つまり、識別情報記録部110は、記録層111と隠蔽層112との2層構造である。記録層111は、インクカートリッジ70側に形成される。隠蔽層112は、インクカートリッジ70(記録層111)の外方側に形成される。なお、識別情報記録部110は、2層構造に限られない。例えば、識別情報記録部110は、隠蔽層112と反対側に、上面71aに接着するための粘着層を備えていてもよい。あるいは、識別情報記録部110は、記録層111のみの単層構造であってもよい。
【0044】
記録層111は、識別情報を記録する層である。識別情報は、インクカートリッジ70の認証に使用される。換言すれば、識別情報は、プリンター20にとって、インクカートリッジ70が望ましい状態であるか否かの判断に使用される。「状態」には、仕様が含まれる。望ましい仕様の類型としては、例えば、インクカートリッジに収容されたインクの性状や、カートリッジの形状を例示することができる。本実施例では、識別情報は、インクの性状に関する情報を含む。この識別情報は、本実施例では、製造ロット番号、インクの種類(ここでは、色の種別およびインクの型番)、インクの使用期限に関する情報、プリンター20に対応する純正品であることを表す情報を含んでいる。インクは、時間経過に伴い劣化するので、製造から所定期間の間に使用することが望ましい。このため、識別情報には、インクの使用期限に関する情報が含まれる。本実施例では、インクの使用期限に関する情報は、インクの製造日である。インクの使用期限に関する情報には、上述の所定期間を表す情報を含んでもよい。なお、識別情報の内容は、上述の例に限るものではなく、適宜設定すればよい。例えば、識別情報は、上述した情報の少なくとも1つを含むものとしてもよい。
【0045】
記録層111において、上述した識別情報は、模様によって記録される。この模様は、予め定められた規則に従って表される模様である。この模様は、当該規則に基づき、機械的に読み取り可能である。かかる模様として、例えば、一次元コードまたは二次元コードを採用してもよい。こうしたコードとしては、周知のバーコード、QRコード(登録商標)を例示できる。記録層111は、電気的な方法を使用する記憶媒体、例えば、半導体メモリーを必要としないので、インクカートリッジ70の構成を簡略化することができる。しかも、金属材料を必要としないので、環境負荷を抑制できる。
【0046】
記録層111は、所定以上の温度の熱を受けることによって、色が変化する性質を有している。換言すれば、記録層111は、熱を受けることによって、光の吸収率が変化する性質を有している。この吸収率の変化は、不可逆的に生じる。吸収率が変化する光には、近赤外線の少なくとも一部の波長領域の光を含む。本実施例では、記録層111は、熱を受けることによって、光の吸収率が不可逆的に高くなる。記録層111において、上述した識別情報を表す模様は、熱を受けることによって不可逆的に形成される。本実施例では、記録層111は、人の目で観察する場合、熱を受ける前は白色を呈し、熱を受けた後は黒色を呈する。図4に示す記録層111は、熱を受けていない第1の領域113と、熱を受けて色が変化した第2の領域114とを備えている。この第2の領域114が、識別情報を表す模様を構成する。記録層111への識別情報の記録は、インクカートリッジ70の出荷までの段階で行われる。なお、第1の領域113が識別情報を表す模様を構成してもよい。
【0047】
こうした性質を有する記録層111は、周知の感熱発色剤を使用して形成することができる。本実施例では、基材(ここではラベルLAの材質)上に感熱発色剤を印刷することによって、記録層111が形成される。印刷の方法は、種々の公知の方法、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法を使用することができる。基材は、特に限定するものではなく、例えば、アートコート紙、上質紙等の用紙、ポリエステル樹脂シート、塩化ビニルシートなどを使用することができる。
【0048】
感熱発色剤としては、公知の種々の感熱発色剤を使用することができる。例えば、感熱発色剤として、特開59−199757号公報、特開昭62−243653号公報、特開平6−24140号公報、特開平7−172050号公報、特開平10−100544号公報に記載された感熱発色剤を使用してもよい。例えば、特開59−199757号公報には、感熱発色性を有するフルオレン化合物が記載されている。特開昭62−243653号公報には、感熱発色性を有するジビエル化合物が記載されている。
【0049】
かかる記録層111に記録された識別情報は、後述する処理によって、所定のタイミングで無効化される。無効化とは、記録層111を加熱することで、記録層111に予め記録された模様の態様の変化を生じさせることをいう。無効化は、予め記録された識別情報を読み取り不可能にすることと捉えてもよい。記録層111は、無効化されると、予め記録された識別情報を機械的に正確に読み取りできなくなる。所定のタイミングについては後述する。
【0050】
図5は、識別情報が無効化された場合の識別情報記録部110の断面構成を示す。本実施例では、記録層111の全面を加熱することによって、無効化が行われる。このため、図5に示すように、無効化後の記録層111は、全面が黒色に変色し、第2の領域114のみで構成されている。なお、無効化は、記録層111の一部分を加熱することによって行われてもよい。
【0051】
隠蔽層112は、記録層111に記録された識別情報を隠蔽するための層である。本実施例では、隠蔽層112は、記録層111に記録された識別情報、つまり、模様を視認不可能にする性質を有している。本願において、視認可能とは、人間の目で直接見えることをいう。直接見えるとは、特別な装置を使用しなくても見えることをいう。視認不可能とは、視認可能ではないことをいう。隠蔽層112は、具体的には、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収し、近赤外光線を透過する性質を有している。可視光線とは、一般的には、380〜780nmの波長域の電磁波として定義できる。近赤外線は、可視光線の赤色より波長が長く、遠赤外線より波長が短い波長域の電磁波である。近赤外線は、一般的には、780nm〜2.5μmの波長域の電磁波として定義できる。かかる隠蔽層112は、記録層111上に、上述した隠蔽層112の性質を有する印刷材を使用して、印刷することにより、形成することができる。印刷の方法は、記録層111の形成と同様に、種々の公知の方法を使用することができる。本実施例では、隠蔽層112は、人間の目には、記録層111に表される模様に関係なく、黒色に視認される。
【0052】
隠蔽層112の性質を有する印刷材としては、公知の種々の印刷材を使用することができる。例えば、印刷材として、特開平8−34946号公報や、特開2010−31106号公報に記載されたインクを使用してもよい。特開平8−34946号公報には、硫化ビスマス微粉末を色材の主成分としたインクが記載されている。より具体的には、プレポリマー・モノマー・光重合開始剤・補助剤などからなる紫外線硬化型インクと、フェノール樹脂、アルキット樹脂、アマニ油、ドライヤー等からなる酸化重合型インクとが記載されている。特開2010−31106号公報には、ペリレン顔料を用いたインクが記載されている。ペリレン顔料は、分子固有の吸収バンドと分子間相互作用に起因する吸収バンドの双方で可視光領域の波長を覆い、可視光のうちの一部の波長の光は透過するが、人間の目には、黒色に視認される。
【0053】
このように、識別情報記録部110は、隠蔽層112を備えているために、ユーザーは、識別情報記録部110、より具体的には、記録層111に記録された識別情報を視認することはできない。識別情報を表す模様は、プリンター20が読み取るための情報であって、ユーザーにとって、必要不可欠な情報ではない。このような必要不可欠ではない模様を視認できると、ユーザーは、その模様が何であるのかが気になる場合がある。本実施例の構成によれば、識別情報を表す模様を不可視化することで、ユーザーが、余計な情報に基づいて混乱することを抑制できる。
【0054】
ここで説明を図3に戻す。表示部120は、識別情報記録部110が無効化されたことに関連する情報を文字情報によって視認可能に表示するために設けられる領域である。本実施例では、表示部120は、無効化の原因を文字情報として表示することで、識別情報記録部110が無効化されたことと、無効化の原因とをユーザーに報知する。本実施例では、表示部120は、使用済表示部121と不正表示部122とを備えている。使用済表示部121は、無効化の原因が、インクエンドであることを示す文字情報を表示するために設けられる。本願において、インクエンドとは、インク残量が、予め定められた使用限界値に達した状態をいう。不正表示部122は、無効化の原因が、インクエンド以外の理由によって、インクカートリッジ70がプリンター20にとって望ましくない状態にあることを示す文字情報を表示するために設けられる。「望ましくない状態」とは、インクカートリッジ70がもともと望ましくないことを含む。また、「望ましくない状態」とは、もともとは、インクカートリッジ70が望ましいものであったが、現状は、望ましいものでなくなっていることを含む。例えば、インクの使用期限を超過したインクカートリッジ70や、ユーザーによって、プリンター20に適合しないインクが補充されたインクカートリッジ70は、後者に該当する。
【0055】
表示部120での表示には、本実施例では、感熱発色剤が利用される。具体的には、白色の基材(ここでは、ラベルLAの材質)上に、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、表示すべき文字を印刷したものを、表示部120として使用する。なお、印刷材は、文字を形成するべき領域に代えて、文字を形成するべき領域以外の領域にのみ印刷してもよい。あるいは、印刷材は、全ての領域に全面的に印刷してもよい。基材には、記録層111の基材と同様に、各種印刷媒体を使用することができる。本実施例では、熱を受けた場合の感熱発色剤の色の変化は、不可逆的に生じる。感熱発色剤には、記録層111に使用するものと同種のものを使用してもよい。ただし、色の変化は、不可逆的でなくてもよい。
【0056】
インク残量表示部130は、インクカートリッジ70の使用の程度に応じて、当該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するために設けられる領域である。ここでは、使用の程度とは、インクが使用された程度、すなわち、インクカートリッジ70に収容されたインクの残量である。インクの残量は、後述する方法によって、インクカートリッジ70を装着したプリンター20によって検出される。
【0057】
インク残量表示部130での表示には、本実施例では、感熱発色剤が利用される。具体的には、白色の基材ここでは、ラベルLAの材質)上に、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、全面的に印刷したものを、インク残量表示部130として使用する。基材や感熱発色剤には、表示部120と同一のものを使用してもよい。
【0058】
図6は、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の表示の態様の変化を示す。図6では、ラベルLAの輪郭は、図示を省略している。図6において、識別情報記録部110は、無効化された後の表示態様を示している。上述したように、識別情報記録部110は、表面に隠蔽層112を備えている。このため、記録層111が無効化されても、つまり、記録層111の状態が、図4に示した状態から図5に示した状態に変化しても、図6に示すように、その変化は視認されない。
【0059】
図6において、表示部120は、加熱されて、表示態様が変化した状態を示している。使用済表示部121には、インクエンドに起因して識別情報記録部110が無効化されたことを示す文字情報として、「ink end」が視認可能に表示されている。不正表示部122には、インクエンド以外の理由によって、インクカートリッジ70がプリンター20にとって望ましくない状態にあることに起因して識別情報記録部110が無効化されたことを示す文字情報として、「不正」が視認可能に表示されている。なお、表示する文字の内容は、任意に設定すればよい。また、表示部120に対して、文字を形成するべき領域以外の領域にのみ印刷を予め行った場合には、表示部120には、黒色の背景中に白色の文字が表示されることになる。
【0060】
図6において、インク残量表示部130は、インクの残量がインクエンドに達した場合に表示される表示態様を示している。インク残量表示部130の表示は、インク残量の低下量に応じて、HレベルからLレベルに向かって、段階的に白から黒に変化する。かかる変化は、加熱により実現される。例えば、インク残量が、満杯時の約半分になった際には、HレベルからMレベルまでの領域が黒色で表示される。段階数は任意に設定すればよい。本実施例では、インク残量表示部130の表示は、異なるタイミングで白から黒に変化した複数の黒の領域間には、わずかに白の領域が位置するように表示される。つまり、インク残量が低下し、その低下量に応じた領域が新たに加熱される際、以前に加熱されて黒に変色した領域に対して、所定距離だけ離隔した位置から、新たな加熱が行われる。かかる構成とすれば、ユーザーは、インク消費の履歴を事後的に確認することができ、利便性が向上する。
【0061】
図7は、読取ユニット80および書込ユニット90の概略構成を示す。本実施例では、読取ユニット80は、書込ユニット90よりも印刷ヘッドユニット60のホームポジションHP側に設けられる。読取ユニット80は、識別情報記録部110に記録された模様を読み取る。また、読取ユニット80は、表示部120に表される表示を読み取る。同様に、読取ユニット80は、インク残量表示部130に表示された表示(インク残量の情報)を読み取る。これらの読み取り動作は、光学的手法を用いて行われる。
【0062】
図7に示すように、読取ユニット80は、照射部81と受光部82とを備えている。照射部81および受光部82は、読取ユニット80の−Z方向の端面に設けられている。−Z方向の端面は、インクカートリッジ70が印刷ヘッドユニット搬送機構40によって読取ユニット80の直下(−Z方向)に移動した場合に、インクカートリッジ70と対向する面である。照射部81は、赤外線LEDを内蔵している。照射部81は、インクカートリッジ70の読み取り対象に向けて、近赤外線NIRを照射する。図7では、照射部81が識別情報記録部110に向けて近赤外線NIRを照射している様子を示している。近赤外線NIRは、隠蔽層112を透過し、記録層111の反射率に応じた量の近赤外線NIRが記録層111で反射する。
【0063】
受光部82は、受光素子を備えており、反射した近赤外線NIRを受光する。本実施例では、受光素子として、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いた。なお、受光素子は、受光した近赤外線を電気信号に変換可能なものであればよい。例えば、受光素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラであってもよい。読取ユニット80は、受光部82で受光し、変換された電気信号を、内蔵する回路(図示省略)で符号化し、制御ユニット30に出力する。記録層111を構成する第1の領域113と第2の領域114とでは、反射率が異なるので、符号化結果から、記録層111に記録された識別情報を読み取ることができる。符号化は、制御ユニット30で行ってもよい。照射部81および受光部82の位置関係、および、照射部81の指向性は、照射部81の照射光が記録層111で反射し、受光部82によって適切に受光できるように設定される。表示部120およびインク残量表示部130は、隠蔽層を備えていないが、読取ユニット80は、識別情報記録部110の読み取りと同一の手法で、表示部120およびインク残量表示部130を読み取ることができる。
【0064】
読取ユニット80による、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の読み取り動作は、読取ユニット80とインクカートリッジ70とを相対移動させつつ行われる。本実施例では、読取ユニット80およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動する構成である。具体的には、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40を用いて、インクカートリッジ70が装着された印刷ヘッドユニット60をホームポジションHPから主走査方向(Y方向)に沿って移動させつつ、照射部81および受光部82を使用して、各読み取り位置の情報を読み取る。かかる印刷ヘッドユニット60の移動は、印刷時とは異なる動作モード(以下、読取動作モードともいう)によって実現される。つまり、制御ユニット30は、読取動作モードでは、読み取りに適した走査速度で印刷ヘッドユニット60を移動させる。読取動作モードは、読み取りを行っているときと、読み取りを行っていないとき(読み取り位置までの単なる移動のとき)とで異なる移動速度を設定してもよい。読み取りを行っていないときは、読み取りを行っているときよりも、高速としてもよい。
【0065】
本実施例では、読取ユニット80およびインクカートリッジ70は、1つの方向(主走査方向)に対してのみ相対移動する。このため、読取ユニット80は、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130が配置された範囲(図3の幅W1)を全て読み取り可能に構成されている。つまり、受光部82は、印刷ヘッドユニット60が読取ユニット80に対して相対移動する方向と直交する方向(Xおよび−X方向)において、幅W1以上の幅にわたって設けられている。
【0066】
書込ユニット90は、発熱部91を備えている。発熱部91は、印刷ヘッドユニット60が読取ユニット80に対して相対移動する方向と直交する方向(Xおよび−X方向)に、複数配列されている。発熱部91の配列範囲は、幅W1以上の幅にわたる。発熱部91は、電極と発熱抵抗体とを備え、電極に通電することで発熱抵抗体が発熱する。複数の発熱部91は、発熱部91ごとに個別的に、発熱のON/OFF制御が可能である。発熱部91は、感熱媒体と接触した状態で発熱することで、感熱媒体の接触箇所を変色させる。かかる書込ユニット90として、感熱式プリンターや熱転写式プリンターに使用するサーマルヘッドを利用してもよい。
【0067】
書込ユニット90は、発熱部91によって、識別情報記録部110を加熱して、識別情報記録部110に記録された記録情報を無効化する。図7では、識別情報記録部110の一部の領域を発熱により無効化している様子を示している。同様に、書込ユニット90は、表示部120を加熱して、表示部120に文字情報を表示させる。また、書込ユニット90は、インク残量表示部130の所定領域を加熱して、インク残量表示部130に、インク残量の情報を表示させる。
【0068】
かかる識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130への書き込み動作は、書込ユニット90とインクカートリッジ70とを相対移動させつつ行われる。本実施例では、書込ユニット90およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動する構成である。具体的には、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40を用いて、インクカートリッジ70が装着された印刷ヘッドユニット60をホームポジションHPから主走査方向(Y方向)に沿って移動させつつ、複数の発熱部91の発熱の有無を個別的に制御して、所要箇所を加熱する。かかる印刷ヘッドユニット60の移動は、印刷時および読取動作モードとは異なる動作モード(以下、書込動作モードともいう)によって実現される。つまり、制御ユニット30は、書込動作モードでは、書き込みに適した走査速度で印刷ヘッドユニット60を移動させる。書込動作モードは、書き込みを行っているときと、書き込みを行っていないとき(書き込み位置までの単なる移動のとき)とで異なる移動速度を設定してもよい。書き込みを行っていないときは、書き込みを行っているときよりも、高速としてもよい。
【0069】
図8は、プリンター20における第1の表示処理の流れを示す。第1の表示処理とは、プリンター20に装着されたインクカートリッジ70のインク残量に基づいて、識別情報記録部110および表示部120への書き込みを行う処理である。第1の表示処理を開始するタイミングは、適宜設定すればよいが、インク残量が変化した可能性があることが推定されるタイミングとすることが望ましい。本実施例では、第1の表示処理を開始するタイミングは、以下の3つのタイミングとしている。
(1)第1のタイミング:プリンター20の電源が投入されたとき
(2)第2のタイミング:インクカートリッジ70a〜70fのいずれかが新たに装着されたとき
(3)第3のタイミング:プリンター20での印刷量が所定数に達したとき
【0070】
第1および第3のタイミングでは、インクカートリッジ70の全てに対して、順次、第1の表示処理が実行される。第2のタイミングでは、新たに装着されたインクカートリッジ70に対してのみ、第1の表示処理が実行される。第2のタイミングは、例えば、インクカートリッジ70がフォルダー62に収容されたことを、物理的または光学的に検知するセンサーを用いて検知することができる。かかるセンサーとしては、例えば、フォトインターラプターを例示できる。なお、本実施例では、インクカートリッジ70と制御ユニット30とは、電気的に接続されていないが、インクカートリッジ70が、制御ユニット30と電気的に接続可能な端子を備え、当該端子を介して制御ユニット30と電気的に接続されている場合には、第2のタイミングは、電気的に検知されてもよい。つまり、制御ユニット30は、当該端子を介して、制御ユニット30とインクカートリッジ70とが電気的に接続されたことを検知してもよい。第3のタイミングは、印刷量と相関関係を有する指標値を用いて、制御ユニット30が決定してもよい。指標値としては、例えば、印刷枚数であってもよいし、インク吐出数と、ドットサイズとから計算されるインク吐出量であってもよい。以下の説明では、インクカートリッジ70aに対して、第1の表示処理が実行されるものとして説明する。
【0071】
第1の表示処理が開始されると、制御ユニット30は、まず、検出部33の処理として、インクカートリッジ70aのインク残量を検出する(ステップS210)。本実施例においては、フォルダー62は、インクカートリッジ70aを挟むように、平行に配置された2つの平板状の電極によって構成されたコンデンサ構造を有している。電極間に挟まれたインクカートリッジ70aに対応するコンデンサの静電容量は、インクの消費に応じて変化する。制御ユニット30は、このコンデンサの静電容量を測定することにより、インク残量を検出する。インク残量は、静電容量の関数や、静電容量とインク残量とを対応付けたマップなどを用いて求めることができる。かかるインク残量検出方式は、例えば、特開2006−327111号公報に記載されている。
【0072】
インク残量の把握方法は、本実施例の方法に限らず、種々の公知の方法を使用することができる。例えば、制御ユニット30は、インク吐出量をカウントすることで、インク残量を推定してもよい。なお、インクカートリッジ70aが、制御ユニット30との間での電気的な接続を行うための端子を備えている場合には、インクカートリッジ70a側でインク残量を検出することも可能である。例えば、インクカートリッジ70aが導電性インクを収容する場合には、インクカートリッジ70aは、インク収容室内に1対の電極を備えていてもよい。この電極間に存在するインクが消費されると、電極間で通電しなくなるので、制御ユニット30は、上述の端子を介して、インクの消費を検出することができる。1対の電極を、インクの液面レベルに対して、多段階に設ければ、インク残量を多段階に検出することができる。
【0073】
インク残量を検出すると、制御ユニット30は、インク残量表示部130の更新が必要であるか否かを判断する(ステップS220)。上述のとおり、インク残量表示部130の表示は、段階的に行われる。制御ユニット30は、インク残量表示部130に表示する各段階に対応するインク残量(または静電容量)を記憶している。また、制御ユニット30は、前回、インク残量表示部130への書き込みを行った際のインク残量を記憶している。ステップS220において、制御ユニット30は、ステップS210で検出したインク残量と、前回、インク残量表示部130への書き込みを行った際のインク残量とを参照し、この2つのインク残量が属する段階が、異なる段階である場合に、インク残量表示部130の更新が必要であると判断する。
【0074】
ステップS220において、インク残量表示部130の更新が必要でなければ(ステップS220:NO)、制御ユニット30は、第1の表示処理を終了する。一方、インク残量表示部130の更新が必要であれば(ステップS220:YES)、制御ユニット30は、書込ユニット90を使用して、ステップS210で検出したインク残量に対応する段階まで変色するように、インク残量表示部130に書き込みを行う(ステップS230)。
【0075】
制御ユニット30は、ステップS220の判断を省略して、常に、ステップS230を実行してもよい。こうすれば、第1の表示処理が実行される前に、インクカートリッジ70aが交換されていたとしても、インク残量表示部130に正確な情報を表示できる。なお、インクカートリッジ70aが交換されておらず、かつ、インク残量表示部130の更新が必要ない場合には、既に加熱されて変色した領域が再度加熱されることとなる。この場合、インク残量表示部130の表示に変化は生じない。
【0076】
インク残量表示部130への書き込みを行うと、制御ユニット30は、インク残量が所定量以下であるか否かを判断する(ステップS240)。この所定量は、インクカートリッジ70aのインクエンドに対応している。インクエンドは、インクカートリッジ70a内のインクが一切なくなった状態に限定されない。インクエンドは、例えば、次回、印刷が実行される場合に、印刷の実行中にインクが一切なくなる可能性があるインク残量として、適宜設定してもよい。本実施例では、インク残量表示部130の表示の複数の段階のうちの最後の段階がインクエンドに相当する。
【0077】
ステップS240において、インク残量が所定値、つまり予め定められた使用限界値よりも多ければ(ステップS240:NO)、制御ユニット30は、第1の表示処理を終了する。一方、インク残量が所定値以下であれば(ステップS240:YES)、制御ユニット30は、書込ユニット90を使用して、識別情報記録部110に対して無効化処理を行う(ステップS250)。これにより、記録層111に記録された識別情報が図5に示したように無効化される。
【0078】
無効化処理を行うと、制御ユニット30は、書込ユニット90を使用して、使用済表示部121に対して、書き込み処理を行う(ステップS260)。これにより、使用済表示部121には、図6に示したように、「ink end」の文字が表示される。本実施例では、使用済表示部121への書き込みは、使用済表示部121の全ての領域を加熱することにより行う。このため、文字を形成するべき領域のみを加熱する制御が不要となり、制御ユニット30の制御負荷が軽減される。ただし、制御ユニット30は、例えば、使用済表示部121の全ての領域が、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、全面的に予め印刷されている場合には、文字を形成するべき領域のみ、または、文字を形成するべき領域以外の領域のみを加熱する制御を行ってもよい。使用済表示部121への書き込みが行われると、制御ユニット30は、第1の表示処理を終了する。
【0079】
図9は、プリンター20における第2の表示処理の流れを示す。第2の表示処理とは、プリンター20に装着されたインクカートリッジ70が、インクエンド以外の理由により、望ましい状態ではない場合に、識別情報記録部110および表示部120への書き込みを行う処理である。第2の表示処理を開始するタイミングは、適宜設定すればよいが、インクカートリッジ70が交換されたこと、または、インクがユーザーによって補充されたことが推定されるタイミングとすることが望ましい。本実施例では、第1の処理の終了に引き続いて、第2の処理を開始することとしている。以下の説明では、インクカートリッジ70aに対して、第2の表示処理が実行されるものとして説明する。
【0080】
第2の処理が開始されると、制御ユニット30は、まず、読取ユニット80を使用して、インクカートリッジ70aの識別情報記録部110に記録された模様を読み取る(ステップS310)。模様を読み取ると、制御ユニット30は、読み取られた模様が表す識別情報に基づいて、認証を行う(ステップS320)。
【0081】
認証処理は、識別情報の具体的な項目の各々が、プリンター20に予め登録された条件を満たすか否かを判断する処理である。予め登録された条件とは、例えば、製造ロット番号が、所定の範囲の値であること、インクの色の種別が、インクカートリッジ70の装着位置に対応する色であること、インクの型番が所定の値であること、製造日から所定の時間が経過していないことなどである。識別情報の具体的な項目の全てについて、登録された条件を満たす場合には、認証は成功である。一方、識別情報の具体的な項目の少なくとも1つが登録された条件を満たさない場合には、認証は失敗である。認証に失敗したことは、フォルダー62に装着されたインクカートリッジ70aが、プリンター20にとって望ましくない状態であることを意味する。
【0082】
ステップS320において、認証に成功すると(ステップS320:YES)、制御ユニット30は、インクカートリッジ70aのインク残量を検出する(ステップS330)。この処理は、上記のステップS210と同一の処理である。インク残量を検出すると、制御ユニット30は、読取ユニット80を使用して、インク残量表示部130の表示を読み取る(ステップS340)。
【0083】
インク残量表示部130の表示を読み取ると、制御ユニット30は、ステップS330における検出結果と、ステップS340における読み取り結果との整合性をチェックする(ステップS350)。両者が整合していないこと、つまり矛盾することは、ユーザーが、インクカートリッジ70aにインクを補充したことを意味する。ここで補充されたインクは、プリンター20にとって望ましくない仕様である可能性がある。
【0084】
ステップS350において、両者が整合していれば(ステップS350:YES)、制御ユニット30は、第2の処理を終了する。一方、両者が整合していなければ(ステップS350:NO)、あるいは、ステップS320において認証が失敗であれば(ステップS320:NO)、制御ユニット30は、識別情報記録部110に対して無効化処理を行う(ステップS360)。この処理は、上記のステップS250と同一の処理である。無効化処理を行うと、制御ユニット30は、書込ユニット90を使用して、不正表示部122に対して、書き込み処理を行う(ステップS370)。これにより、不正表示部122には、図6に示したように、「不正」の文字が表示される。こうして、第2の表示処理は終了となる。
【0085】
図10は、プリンター20における認証処理の流れを示す。認証処理とは、プリンター20に装着されたインクカートリッジ70が望ましい状態であるか否かを決定する処理である。認証処理を開始するタイミングは、適宜設定すればよいが、インクカートリッジ70が交換された可能性があること、または、インクが補充されたことが推定されるタイミングとすることが望ましい。本実施例では、以下の3つのタイミングとしている。
(1)第4のタイミング:プリンター20の電源が投入されたとき
(2)第5のタイミング:インクカートリッジ70a〜70fのいずれかが新たに装着されたとき
(3)第6のタイミング:印刷実行時
【0086】
第4および第6のタイミングでは、インクカートリッジ70の全てに対して、順次、認証処理が実行される。第5のタイミングでは、新たに装着されたインクカートリッジ70に対してのみ、認証処理が実行される。以下の説明では、インクカートリッジ70aに対して、認証処理が実行されるものとして説明する。
【0087】
認証処理が開始されると、制御ユニット30は、まず、不正表示部122の表示を読み取る(ステップ410)。つまり、制御ユニット30は、ホームポジションHPから印刷ヘッドユニット60を読取動作モードでY方向に移動させつつ、読取ユニット80によって、不正表示部122に表された表示を読み取る。不正表示部122の表示を読み取ると、制御ユニット30は、望ましくない状態のインクカートリッジであることを示す「不正」の表示が不正表示部122になされているか否かを判断する(ステップS420)。
【0088】
ステップS420において、「不正」の表示がなされていなければ(ステップS420:NO)、制御ユニット30は、使用済表示部121の表示を読み取る(ステップ430)。つまり、制御ユニット30は、不正表示部122の読み取り位置から、さらにY方向に印刷ヘッドユニット60を移動させ、読取ユニット80によって、使用済表示部121に表された表示を読み取る。
【0089】
使用済表示部121の表示を読み取ると、制御ユニット30は、インクエンドを示す「ink end」の表示が使用済表示部121になされているか否かを判断する(ステップS440)。ステップS440において、「ink end」の表示がなされていなければ(ステップS440:NO)、制御ユニット30は、識別情報記録部110に記録された識別情報を読み取る(ステップS450)。つまり、制御ユニット30は、使用済表示部121の読み取り位置から、さらにY方向に印刷ヘッドユニット60を移動させ、読取ユニット80によって、識別情報記録部110に記録された識別情報を読み取る。
【0090】
識別情報を読み取ると、制御ユニット30は、識別情報に基づく認証処理に成功したか否かを判断する(ステップS460)。この処理は、上記のステップS320と同一の処理である。なお、識別情報記録部110が無効化されている場合には、認証は失敗することとなる。ステップS460において、認証に成功すれば(ステップS460:YES)、制御ユニット30は、認証処理を終了する。
【0091】
一方、「不正」の表示がなされている場合(ステップS420:YES)、「ink end」の表示がなされている場合(ステップS440:YES)、および、認証に失敗した場合(ステップS460:NO)には、制御ユニット30は、出力部32の処理として、報知処理を行う(ステップS470)。報知処理は、ユーザーに報知するための情報を出力する処理である。報知の内容としては、ステップS420,S440,S460に対応する内容としてもよい。例えば、報知の内容は、インクカートリッジ70aがインクエンドとなっていることであってもよい。あるいは、報知の内容は、インクカートリッジ70がプリンター20にとって望ましくない状態であることであってもよい。これらの報知の内容は、識別情報記録部110が無効化されていることと捉えてもよいし、無効化されていること、および、無効化の原因と捉えてもよい。
【0092】
出力の態様として、本実施例では、操作パネル98に報知メッセージを表示可能に出力することとした。ただし、出力の態様は、種々の態様とすることができる。例えば、報知メッセージを表す画像をプリンター20で印刷してもよい。あるいは、プリンター20がパーソナルコンピューターに接続されている場合には、パーソナルコンピューターが備えるディスプレイに表示可能に、報知メッセージを出力してもよい。
【0093】
こうして、報知処理を行うと、制御ユニット30は、認証処理を終了する。上述した第1の表示処理、第2の表示処理および認証処理は、上述のタイミングで実行することに限らず、任意のタイミングで実行することができる。また、プリンター20は、これらの3つのプロセスのうちの1つのプロセス、または、2つのプロセスのみを実行するものとしてもよい。これらの3つのプロセスのうちの2以上のプロセスを連続的に実行する場合には、重複する処理、例えば、ステップS210とS330とのうちの一方を省略してもよい。また、3つのプロセスは、一部の処理を省略してもよい。例えば、第2の表示処理(図9参照)において、ステップS330〜S350の処理を省略してもよい。この場合、制御ユニット30は、認証に成功した場合には(ステップS320:YES)、第2の表示処理を終了してもよい。また、2以上のプロセスの一部分を構成する処理を適宜組み合わせてもよい。
【0094】
上述したプリンター20において、識別情報記録部110は、請求項の識別情報記録部に該当する。表示部120(使用済表示部121および不正表示部122)は、請求項の表示部に該当する。インク残量表示部130は、請求項の第1の表示部に該当する。使用済表示部121は、請求項の第2の表示部に該当する。読取ユニット80は、請求項の読取部に該当する。書込ユニット90は、請求項の無効化部、表示処理部および加熱部に該当する。
【0095】
以上説明したプリンター20およびインクカートリッジ70によれば、ユーザーによってプリンター20に装着されるインクカートリッジ70が、プリンター20にとって望ましい状態でない場合に、その旨を表示部120によってユーザーに報知することができる。その結果、ユーザーが望ましい状態のインクカートリッジ70をプリンター20に装着すれば、印刷品質の低下やプリンター20の不具合の発生を抑制することができる。また、プリンター20は、電子的な方法、例えば、ディスプレイを使用する方法を使用せずに、表示部120の表示を行うので、インクカートリッジ70を簡略な構成とすることができる。インク残量表示部130の表示についても同様の効果を奏する。また、表示部120は、識別情報記録部110が無効化される原因に対応した複数の領域、具体的には、使用済表示部121と、不正表示部122とを備えているので、ユーザーは、インクカートリッジ70が望ましい状態ではない理由についても知ることができる。
【0096】
また、インクカートリッジ70において、識別情報記録部110および表示部120は、読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対移動が開始される前の読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対位置から、インクカートリッジ70が読取ユニット80に対して相対移動する方向に向かって、インクカートリッジ70の上面71に、識別情報記録部110、表示部120の順に配置されている。したがって、読取ユニット80が、表示部120、識別情報記録部110の順に読み取る際に、読取ユニット80とインクカートリッジ70とは、主走査方向における識別情報記録部110および表示部120の幅分だけ相対移動すればよい。つまり、読取ユニット80は、常にY方向に移動すればよく、表示部120を読み取った後、識別情報記録部110を読み取るために、−Y方向に逆戻りする必要がない。その結果、読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対移動に無駄がなく、読取ユニット80による読み取りを効率的に行える。なお、識別情報記録部110および表示部120の配置を逆にすれば、上記ステップS250およびS260(図8参照)、上記ステップS360およびS370(図9参照)について、同様の効果を奏する。
【0097】
また、プリンター20およびインクカートリッジ70によれば、インクカートリッジ70に収容されたインク残量を、インク残量表示部130によって、ユーザーに好適に報知することができる。しかも、ユーザーは、使用済表示部121の表示によって、インクエンドに達したことを確実に認識することができる。なお、プリンター20が、使用済表示部121を加熱するタイミングは、インクエンドを検出したときでもよいし、インク残量表示部130を最終段階まで加熱したときでもよい。
【0098】
また、プリンター20は、識別情報記録部110および表示部120のうちの表示部120に対して、先に読み取り動作を行う。表示部120を読み取った結果、表示部120の表示が、無効化に対応するものであれば、プリンター20は、識別情報記録部110の読み取り、および、読み取り結果に基づく認証処理を省略できる。したがって、処理を効率化および高速化することができる。特に、本実施例では、識別情報記録部110には、複数の項目の識別情報が記録されているので、処理の効率化、高速化に関する効果が大きい。かかる効果は、上述した識別情報記録部110および表示部120の配置順序と組み合わせられることによって、さらに高められる。具体的には、読取ユニット80は、インクカートリッジ70a〜70fの識別情報記録部110および表示部120を、インクカートリッジ70aから順次、読み取る場合、インクカートリッジ70fの表示部120の表示が、無効化に対応するものであれば、プリンター20は、インクカートリッジ70fの識別情報記録部110の読み取りと、そのための移動を省略することができる。また、インクカートリッジ70a〜70eの表示部120の表示が、無効化に対応するものであれば、当該インクカートリッジの識別情報記録部110の読み取り、および、認証処理を省略できる。ここで、読み取りを省略する場合の印刷ヘッドユニット60の移動速度は、読み取りを行う場合よりも高速化することができる。
【0099】
B.変形例:
B−1.変形例1:
インク残量表示部130の表示は、文字情報であってもよい。かかる場合、感熱発色剤を使用して、表示させる文字に対応する文字をインク残量表示部130に予め印刷しておいてもよい。また、表示部120の表示は、文字情報による表示に限らない。例えば、識別情報記録部110が無効化された場合に、表示部120に単に色変化を生じさせるだけの構成であってもよい。かかる場合、使用済表示部121および不正表示部122には、熱を受けることによって色変化を生じない態様で、色の変化を生じる領域を説明するための文字情報が付されていてもよい。かかる構成によれば、ユーザーは、色変化が生じた場合に、文字情報に対応する事象が生じたことを認識することができる。以上の説明からも明らかなように、表示部120の表示は、識別情報記録部110が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するものであればよい。識別情報記録部110が無効化されたことに関連する特定の情報は、識別情報記録部110が無効化されたこと、および、当該無効化の原因の少なくとも一方を表す情報としてもよい。表示部120およびインク残量表示部130において、非電子的な方法を用いて表示を行う構成とすれば、インクカートリッジ70の構成を簡略化することができる。非電子的な方法とは、材質の特性の変化に基づく方法、印刷による方法、形状を変化させる方法などとしてもよい。上述した実施例の方法は、材質の特性の変化に基づく方法に含まれる。
【0100】
B−2.変形例2:
識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の少なくとも一部は、インクカートリッジ70の筐体にラベルLAを貼り付けて形成されることに限らない。これらの少なくとも一部は、インクカートリッジ70の筐体に直接的に印刷されていてもよい。かかる場合、これらの少なくとも一部について、基材はなくてもよい。例えば、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、インクカートリッジ70の筐体に直接的に印刷を行ってもよい。
【0101】
B−3.変形例3:
インク残量表示部130に表示する情報は、インク残量に関する情報に限らず、インクカートリッジ70の使用の程度に関するものであればよい。「使用の程度」は、「消耗の程度」と捉えてもよい。インク残量表示部130に表示する情報は、インクカートリッジ70の使用実績に基づいて更新され得る情報と捉えてもよい。例えば、インク残量表示部130に記録する情報は、インクの使用期限に関する情報であってもよい。インクの使用期限は、インクの品質保証の観点から設定される。例えば、インク残量表示部130には、インクの使用期限までの残り時間や、インクの製造日から使用期限に至る経過時間が段階的に記録されてもよい。使用済表示部121には、無効化の原因がインクの使用期限に達したことを表示してもよい。インクの製造日は、識別情報記録部110に記録された情報を利用することができる。
【0102】
B−4.変形例4:
上述の実施例においては、プリンター20として、インクカートリッジ70が印刷ヘッド61とともに主走査方向に走査する、いわゆるオンキャリッジ方式について示した。ただし、プリンター20は、インクカートリッジ70が印刷ヘッド61とともに走査しない、いわゆるオフキャリッジ方式であってもよい。オフキャリッジ方式では、インクカートリッジ70を装着するフォルダー62は、印刷ヘッド61とは別の場所に設けられる。印刷ヘッド61は、フォルダー62に装着されたインクカートリッジ70からチューブなどの配管を介してインクの供給を受ける。
【0103】
B−5.変形例5:
上述の実施例においては、読取ユニット80およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動することにより、読取ユニット80が、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の読み取りを行う構成としたが、インクカートリッジ70に代えて、読取ユニット80が移動する構成としてもよい。あるいは、読取ユニット80およびインクカートリッジ70の両方が移動して行ってもよい。これらの点は、書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動についても同様に適用可能である。また、これらの点は、オンキャリッジ方式、オフキャリッジ方式のいずれにも適用可能である。
【0104】
また、読取ユニット80または書込ユニット90と、インクカートリッジ70との相対移動の方向は、1つの方向(1次元の方向)に限らない。この相対移動の方向は、2次元の方向としてもよい。例えば、相対移動の方向は、第1の方向と、それに直交する第2の方向であってもよい。あるいは、相対移動の方向は、3次元の方向であってもよい。
【0105】
また、読取ユニット80による読み取りは、読取ユニット80とインクカートリッジ70とが相対移動しながら行う構成に限らない。読取ユニット80は、相対移動を伴わずに、各々のインクカートリッジ70の識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130を読み取り可能に構成してもよい。かかる場合、読取ユニット80およびインクカートリッジ70の少なくとも一方を移動させることにより、読取ユニット80およびインクカートリッジ70を予め定められた位置に配置した後、相対移動を伴わずに、読み取りを行ってもよい。予め定められた位置は、主走査方向において、印刷媒体Pが設置される位置から退避した位置としてもよい。あるいは、オフキャリッジ方式を採用する場合には、読取ユニット80とインクカートリッジ70とは、相対移動不可能に固定されていてもよい。これらの点は、書込ユニット90による識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130への書き込みについても同様に適用可能である。
【0106】
B−6.変形例6:
識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の配置は、上述の例に限らず、上面71上の任意の位置に配置してよい。また、複数のインクカートリッジ70をプリンター20に装着する際の、複数のインクカートリッジ70の配置は、任意に設定することができる。例えば、図2では、複数のインクカートリッジ70を、インクカートリッジ70の筐体の短手方向(Y,−Y方向)に配列する構成を示したが、複数のインクカートリッジ70は、インクカートリッジ70の筐体の長手方向(X,−X方向)に配列してもよい。かかる場合、例えば、X方向に向かって、識別情報記録部110、表示部120の順に配置してもよい。かかる場合、X方向を、読み取り動作前の読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対位置から、インクカートリッジ70が読取ユニット80に対して相対移動する方向とすれば、読取ユニット80は、表示部120、識別情報記録部110の順に読み取りを行うことができ、それに伴う上述した効果を奏する。
【0107】
また、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130は、上面71上に配置されることに限らず、プリンター20の機能の支障とならない任意の面に配置してよい。例えば、図2において、側面72aのうちのフォルダー62から露出した領域に識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130を配置してもよい。ただし、表示部120およびインク残量表示部130は、インクカートリッジ70がプリンター20に装着された状態で視認可能な箇所に配置することが望ましい。こうすれば、ユーザーは、インクカートリッジ70をフォルダー62から取り外さなくても、表示部120およびインク残量表示部130の表示を視認できる。例えば、図2において、フォルダー62の−X方向が開放されている場合には、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130を側面73aに配置してもよい。また、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130は、必ずしも、インクカートリッジ70の同一面に配置されている必要はなく、読み取りおよび書き込みが可能に、複数の面に分散配置されてもよい。
【0108】
以上の説明からも明らかなように、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130の配置は、複数のインクカートリッジ70の配列方法、読取ユニット80および書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の有無、相対移動の方向などに応じて、適宜設定することができる。
【0109】
B−7.変形例7:
表示部120およびインク残量表示部130の少なくとも一部について、表示態様の変化は、加熱により生じさせる態様に限らず、種々の公知の方法を使用することができる。例えば、水分を所定量含有することにより、変色する材料を使用してもよい。かかる材料は、例えば、特開平10−2893号公報に記載されている。特開平10−2893号公報には、水をはじきにくい用紙に対して、水溶性染料を含有した水無平版用印刷インクを印刷した水濡れ感知印刷物が記載されている。かかる材料を使用する場合、書込ユニット90は、水を含む液体を噴霧するユニットであってもよい。以上の説明からも明らかなように、識別情報記録部110の無効化手段と、表示部120およびインク残量表示部130への書き込み手段は、異なるものであってもよい。
【0110】
B−8.変形例8:
例えば、プリンター20に適合する補充用インクが販売される場合、ユーザーは、識別情報記録部110が無効化されたインクカートリッジ70に、当該補充用インクを充填することも想定される。あるいは、インクカートリッジ70がリサイクルされることも想定される。例えば、インクカートリッジ70の製造業者が、識別情報記録部110が無効化されたインクカートリッジ70を回収し、インクカートリッジ70に適切なインクを補充し、再販売することも想定される。これらのケースでは、補充用インクの販売時、あるいは、インクカートリッジ70の再販売時に、所定の情報、例えば、認証コードをユーザーに提供してもよい。これらのケースにおいて、制御ユニット30は、所定の情報の入力を受け付けた場合には、報知処理(上記ステップS470)を行わない構成としてもよい。所定の情報は、操作パネル98を介して受け付けてもよいし、プリンター20に接続されるパーソナルコンピューターから受け付けてもよい。かかる構成とすれば、不適切に報知が行われることが抑制され、ユーザーの利便性が向上する。また、インクカートリッジ70を再使用することができるので、省資源化に資する。
【0111】
B−9.変形例9:
印刷装置用部品として、インクカートリッジ70を例示したが、上述した実施例は、印刷動作、または、時間経過により消耗する種々の印刷用部品に適用可能である。例えば、印刷ヘッドに適用してもよい。この場合、インク残量表示部130には、インク残量に代えて、印刷ヘッド61の使用の程度を表示してもよい。使用の程度としては、例えば、印刷ヘッド61のパス(主走査)数、印刷枚数、インク吐出数などとしてもよい。また、使用済表示部121には、印刷ヘッド61が使用限界に達したことに対応する表示を行ってもよい。
【0112】
B−10.変形例10:
プリンター20は、印刷ヘッドユニット60が移動しつつインクを吐出するシリアル式プリンターに限らず、種々のプリンターとすることができる。例えば、固定された印刷ヘッドからインクを吐出するラインプリンターであってもよい。また、プリンター20は、インクジェット式プリンターに限らず、各種流体を使用して印刷を行う種々の印刷装置とすることができる。例えば、プリンター20は、レーザープリンターであってもよい。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上で説明した実施例や構成に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、上述した各適用例の構成要素や、実施形態中の要素は、本願の課題の少なくとも一部を解決可能な態様、または、上述した各効果の少なくとも一部を奏する態様において、適宜、組み合わせ、省略、上位概念化を行うことが可能である。また、本願発明は、様々な変形や均等な構成を含むものである。さらに、開示された発明の様々な要素は、様々な組み合わせおよび構成で開示されたが、それらは例示的な物であり、各要素はより多くてもよく、また少なくてもよく、要素は一つであってもよい。それらの態様は本願発明の範囲に含まれる。
【0114】
例えば、上述したインクカートリッジ70は、識別情報記録部110、表示部120およびインク残量表示部130のうちの、識別情報記録部110のみを備えていてもよい。こうしても、インクカートリッジ70は、電気的な方法を使用する記憶媒体を備え、当該記憶媒体に識別情報を記憶するインクカートリッジと比べて、構成を簡略化することができる。あるいは、プリンター20は、書込ユニット90を備えていいなくてもよい。かかるプリンター20は、他のプリンターによって識別情報記録部110が無効化されるとともに、表示部120の表示が変更されたインクカートリッジが装着された場合に、その旨をユーザーに報知することができる。
【符号の説明】
【0115】
20…プリンター
30…制御ユニット
31…CPU
32…出力部
33…検出部
37…RAM
38…EEPROM
40…印刷ヘッドユニット搬送機構
41…モーター
42…駆動ベルト
43…プーリー
44…シャフト
50…紙搬送機構
51…モーター
52…プラテン
60…印刷ヘッドユニット
61…印刷ヘッド
62…フォルダー
70a〜70f…インクカートリッジ
71a…上面
72a,73a…側面
80…読取ユニット
81…照射部
82…受光部
90…書込ユニット
91…発熱部
98…操作パネル
99…メモリーカードスロット
110…識別情報記録部
111…記録層
112…隠蔽層
113…第1の領域
114…第2の領域
120…表示部
121…使用済表示部
122…不正表示部
130…インク残量表示部
P…印刷媒体
HP…ホームポジション
NIR…近赤外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に装着される印刷装置用部品であって、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、
前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部と
を備えた印刷装置用部品。
【請求項2】
前記識別情報記録部は、前記識別情報が記録された記録層と、該記録層よりも外方側に配置され、前記記録層に記録された前記識別情報を視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に隠蔽するための隠蔽層とを備える請求項1記載の印刷装置用部品。
【請求項3】
前記隠蔽層は、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収し、近赤外光線が透過する性質を有する請求項2記載の印刷装置用部品。
【請求項4】
前記印刷装置として、前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取り可能な読取部であって、前記印刷装置用部品を前記印刷装置に装着した状態において、前記読取部と前記印刷装置用部品とが一定の方向に相対移動することにより、前記表示部および前記識別情報記録部を順次、読み取る読取部を備えた印刷装置に装着可能な、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置用部品であって、
前記識別情報記録部および前記表示部は、前記相対移動が開始される前の前記読取部と前記印刷装置用部品との相対位置から、前記印刷装置用部品が前記読取部に対して相対移動する方向に向かって、前記印刷装置用部品上に前記識別情報記録部、前記表示部の順に配置された
印刷装置用部品。
【請求項5】
印刷装置に装着される印刷装置用部品であって、
感熱材料を含み、
熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、
感熱材料を含み、
前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部と
を備えた印刷装置用部品。
【請求項6】
印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、
前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部と
を備えた印刷装置用部品
を装着可能な印刷装置であって、
前記識別情報記録部に表された前記模様を読み取り可能な読取部と、
前記読取部によって読み取られた前記模様が、予め定められた条件を満たさない第1の場合、および、前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達した第2の場合のうちの少なくとも一方の場合に、前記識別情報記録部を加熱して、前記模様の態様の変化を生じさせることで、前記無効化を行う無効化部と、
前記無効化が行われた場合に、前記表示部に対して、前記文字情報の表示および前記色変化のうちの少なくとも一方を生じさせる処理を行う表示処理部と
を備えた印刷装置。
【請求項7】
印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部と、
前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部と
を備えた印刷装置用部品
を装着可能な印刷装置であって、
前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取り可能な読取部と、
前記読取部によって読み取られた前記模様が、予め定められた条件を満たさない第1の場合、および、前記読取部によって読み取られた前記表示部の表示が、前記無効化されたことに関連する特定の情報である第2の場合に、ユーザーに報知するための情報を出力する出力部と
を備え、
前記読取部は、前記識別情報記録部に表された前記模様および前記表示部に表された表示を読み取る際に、前記表示部を、前記識別情報記録部よりも先に読み取る
印刷装置。
【請求項8】
印刷装置用部品を装着可能な印刷装置であり、
感熱材料を含み、
熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、
感熱材料を含み、
前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部と
を備えた印刷装置用部品
を装着可能な印刷装置であって、
加熱を行う加熱部を備え、
前記加熱部は、
前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、前記第1の表示部を複数の段階で段階的に加熱し、
前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達した場合、または、前記第1の表示部を前記複数の段階のうちの最終段階まで加熱した場合に、前記第2の表示部を加熱する
印刷装置。
【請求項9】
印刷装置用部品に接着されるラベルであって、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて不可逆的に変色し、不可逆的に表された模様によって、前記印刷装置用部品を識別するための識別情報を記録するための識別情報記録部と、
前記識別情報記録部がさらに熱を受け、前記模様の態様が不可逆的に変化することによって、前記識別情報記録部に記録された前記識別情報が無効化されたことに関連する特定の情報を、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方によって、視認可能に表示するための表示部と
を備えたラベル。
【請求項10】
印刷装置用部品に接着されるラベルであって、
感熱材料を含み、
熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、前記印刷装置用部品の使用の程度に応じて、該使用の程度に関する情報を複数の段階で段階的に視認可能に表示するための第1の表示部と、
感熱材料を含み、
前記印刷装置用部品の使用の程度が、予め定められた使用限界に達したことを、熱を受けて、文字情報の表示および色変化のうちの少なくとも一方が生じることによって、特定の態様で表示するための第2の表示部と
を備えたラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94981(P2013−94981A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237040(P2011−237040)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】