説明

印刷装置

【課題】プリント対象物の上方で前後及び左右に移動させる移動機構を、パレットの搬送経路に干渉することなく配設した印刷装置の提供。
【解決手段】印刷装置1は、プリンターヘッドを移動させながら、インクジェットノズルからインクを噴射することによって印刷を行うように構成され、前後移動機構220,230が、上部搬送機構11の左右両側に前後に離れて回転自在に設けられ、駆動スプロケット221,231の回転駆動により歯付ベルト223,233を介して係止部材240,245を同期して前後移動させ、ガイドバー部材211とともにプリンターヘッドを前後移動させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tシャツ等のプリント対象物に複数の処理作業を順に行って所望の文字、図柄等を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Tシャツ等のプリント対象物に対して文字、図柄等を印刷する装置及び方法として、印刷色に対応した複数のスクリーン版を製作し、印刷色毎に対応するスクリーン版を用いてプリント対象物の表面に重ね刷りを行うスクリーン印刷が知られている。このスクリーン印刷は、デザインや色彩に対応した複数枚の専用版が必要であり、その製作に期間及び費用を要するため、多種少量型の印刷には適していないという問題がある。そこで最近では、インクジェットプリンターを用いてTシャツ等のプリント対象物に対して直接にインク噴射して印刷する方法も実施されている。このようなインクジェットプリンターによる印刷装置及び方法を開示する公知文献として特許文献1及び特許文献2に記載のものがある。
【0003】
例えば、Tシャツ等の布製品から成るプリント対象物に対してインクジェットプリンターにより文字、図柄等を印刷する為には、インクの滲み防止等を目的とする前処理や、プリント対象物の表面に印刷された図柄の保護等を目的とする後処理などの多くの処理工程が必要である。特に産業用印刷装置では、ベルトコンベア等の搬送手段でプリント対象物を搬送する方式の場合において、その搬送ベルト等の搬送部材上にパレットを載せ、このパレット上の所定の位置にプリント対象物を載置保持し、この状態でパレットと共にプリント対象物を搬送し、各種作業装置を配置した作業位置毎にパレット上のプリント対象物に対して上記前処理などの処理工程を行うものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2002‐154247号公報
【特許文献2】特開2007‐31888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベルトコンベア等の搬送手段でパレットと共にプリント対象物を搬送し、この搬送中にパレット上のプリント対象物に対して所定に印刷処理を施す場合、搬送時に速度が変動したり、振動等が生じるため、プリント対象物に対し精度の低い比較的ラフな印刷は可能であるが、精度の高い精密な印刷を行うことは困難である。そこで、パレットを搬送ベルト等の搬送部材上の所定の作業位置で固定し、プリント対象物に所定の印刷処理を施すことが考えられる。しかしながら、このようにした場合、複数のインク噴射孔を有してなるプリンターヘッド等の作業装置を、固定したプリント対象物の上方で前後及び左右に移動させる移動機構が必要になるといった問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、作業装置をプリント対象物の上方で前後及び左右に移動させる移動機構を、パレットの搬送経路に干渉することなく配設した印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る印刷装置(例えば、実施形態における印刷装置1)は、プリント対象物(例えば、実施形態における印刷対象物5)が載置されるパレット(例えば、実施形態におけるパレット6)と、前記パレットを搬送する上部搬送路(例えば、実施形態における上部搬送機構11)及び下部搬送路(例えば、実施形態における下部搬送機構12)を上下二段に有してなる搬送機構(例えば、実施形態における搬送ユニット10)と、前記上部搬送路の左右両側に前後に延びて配設された左右一対の前後移動機構(例えば、実施形態における前後移動機構220,230)と、前記左右一対の前後移動機構にそれぞれ取り付けられて前記前後移動機構により互いに同期して前後移動される左右一対の係止部材(例えば、実施形態における係止部材240,245)と、前記上部搬送路の上方に左右に延びて前記左右一対の係止部材に取り付けられたガイドバー部材(例えば、実施形態におけるガイドバー部材211)と、前記ガイドバー部材に左右に移動可能に取り付けられ、前記プリント対象物に対してインクを噴射する複数のインク噴射孔(例えば、実施形態におけるインクジェットノズル)を有してなるヘッド装置(例えば、実施形態におけるプリンターヘッド212)とを有し、前記ヘッド装置を移動させながら前記搬送機構により搬送され前記上部搬送路上に固定された前記パレット上の前記プリント対象物に前記インク噴射孔からインクを噴射することによって印刷を行うように構成された印刷装置において、前記前後移動機構が、前記上部搬送路の左右両側に前後に離れて回転自在に設けられた左右一対の第1従動スプロケット(例えば、実施形態における第1従動スプロケット222,232)及び第2従動スプロケット(例えば、実施形態における第2従動スプロケット224,234)と、前記第2従動スプロケットの下方に回転自在に設けられた左右一対の駆動スプロケット(例えば、実施形態における駆動スプロケット221,231)と、前記下部搬送路の下方に左右に延びて前記左右一対の駆動スプロケットと連結される駆動シャフト(例えば、実施形態における駆動シャフト229)と、前記下部搬送路の下方に設けられ、前記駆動シャフトを回転駆動させる駆動装置(例えば、実施形態における駆動ギヤ226、駆動ギヤ列228a,228b、駆動モータ227)と、前記係止部材を介して連結されてリング状に形成され、前記第1従動スプロケットと前記第2従動スプロケットと前記駆動スプロケットとに掛け回される左右一対の無端移動部材(例えば、実施形態における歯付ベルト223,233)とを有し、前記無端移動部材が、前記第1従動スプロケットから前記第2従動スプロケットへ前記上部搬送路に沿って前後方向に延び、さらに前記第2従動スプロケットから前記駆動スプロケットへ下方に延びて設けられ、前記駆動スプロケットの回転駆動により前記無端移動部材を介して前記係止部材を同期して前後移動させ、前記ガイドバー部材とともに前記ヘッド装置を前後移動させるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る印刷装置では、前後移動機構が、上部搬送路の左右両側に前後に離れて回転自在に設けられた左右一対の第1従動スプロケット及び第2従動スプロケットと、第2従動スプロケットの下方に回転自在に設けられた左右一対の駆動スプロケットと、下部搬送路の下方に左右に延びて左右一対の駆動スプロケットと連結される駆動シャフトと、下部搬送路の下方に設けられ、駆動シャフトを回転駆動させる駆動装置と、係止部材を介して連結されてリング状に形成され、第1従動スプロケットと第2従動スプロケットと駆動スプロケットとに掛け回される左右一対の無端移動部材とを有して構成される。この構成により、搬送機構の両側にL字状に設けられた無端移動部材を介して左右一対の係止部材を同期して移動させ、ガイドバー部材とともにヘッド装置を前後移動させることができる。また、前後移動機構を構成する駆動装置及び駆動シャフトが下部搬送路の下方に設けられるため、前後移動機構をパレットの搬送経路に干渉することなく配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の概略構成を示している。
【0010】
印刷装置1は、8基の作業ステーションユニット(載置ステーションユニット2a、前処理ステーションユニット2b、第1乾燥ステーションユニット2c、下塗ステーションユニット2d、印刷ステーションユニット2e、後処理ステーションユニット2f、第2乾燥ステーションユニット2g、回収ステーションユニット2h)を連設して構成される。各ステーションユニット2b〜2gは、Tシャツ等の印刷対象物5に対して行う処理作業に応じて設けられているもので、それぞれの処理作業を行う作業ユニット(前処理ユニット3b、乾燥ユニット3c,3g、下塗ユニット3d、印刷ユニット3e、後処理ユニット3f)を備えている。
【0011】
また、各ステーションユニット2b〜2gは、印刷対象物5を載置保持するパレット6を搬送する搬送ユニット10をそれぞれ備えている。この搬送ユニット10は、各作業ユニット(前処理ユニット3b、乾燥ユニット3c,3g、下塗ユニット3d、印刷ユニット3e、後処理ユニット3f)の後述する作業位置に印刷対象物5を載置保持したパレット6を搬送するための上部搬送機構11と、空のパレット6(印刷対象物5を載置していないパレット6)を搬送するための下部搬送機構12とから構成される。上部搬送機構11及び下部搬送機構12は、各ステーションユニット2b〜2gにおいて一律に設置されており、各ステーションユニットにおける上部搬送機構11及び下部搬送機構12のパレット受入部、パレット送出部となる端部が必ず連結し、各ステーションユニット間でパレット6の受け渡しが可能に構成されている。
【0012】
載置ステーションユニット2a及び回収ステーションユニット2hは、上部搬送機構11と下部搬送機構12間でパレット6を移送する昇降ユニット13,13を備えている。昇降ユニット13,13は、上部搬送機構11及び下部搬送機構12のパレット受入部、パレット送出部となる端部と連接するように昇降移動し、上部搬送機構11と下部搬送機構12間でパレット6の受け渡しが可能に構成されている。パレット6は、昇降ユニット13,13及び各上下搬送機構11,12(各搬送ユニット10)によって、各ステーションユニット2a〜2hを循環搬送される。
【0013】
各ステーションユニット2a〜2hにおいて、昇降ユニット13,13、もしくは各作業ユニット(前処理ユニット3b、乾燥ユニット3c,3g、下塗ユニット3d、印刷ユニット3e、後処理ユニット3f)及び各搬送ユニット10は、ステーションユニット毎にフレーム体(図2における搬送フレーム130、昇降フレーム152)に設置されており、それぞれのフレーム体ごと一体に差し替えもしくは組み替えることが可能になっている。各フレーム体底部にはロック機構を有する車輪14(図2における車輪131a、車輪151)が設けられており、各ステーションユニット2a〜2hの個々の移動が容易に可能である。
【0014】
印刷装置1では、先ず載置ステーションユニット2aにおいて、印刷対象物5が作業者等によりパレット6上に載置される。印刷対象物5を載置保持したパレット6は、昇降ユニット13によって前処理ステーションユニット2bの上部搬送機構11へ移送され、次の前処理ステーションユニット2bへ搬送される。
【0015】
前処理ステーションユニット2bは、印刷対象物5の表面(所望の文字、図柄等を印刷する範囲)に下地コーティング材(透明インク)を塗布して該表面を予めコーティングする前処理を行う前処理プリンター等を有した前処理ユニット3bを備えている。この前処理は、下塗ステーションユニット2d及び印刷ステーションユニット2eにおいて塗布される噴射インクが印刷対象物5の内部に浸透する事やインクの滲みの防止等を目的に行われる。載置ステーションユニット2aから前処理ステーションユニット2bに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により後述する待機位置を経て前処理ユニット3bの後述する作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記前処理が施されて次の第1乾燥ステーションユニット2cへ搬送される。
【0016】
第1乾燥ステーションユニット2cは、前処理ステーションユニット2b(前処理ユニット3b)で印刷対象物5の表面をコーティングした下地コーティング材(透明インク)の乾燥処理を行うヒーター等を有した乾燥ユニット3cを備えている。この乾燥処理は、下塗ステーションユニット2d及び印刷ステーションユニット2eにおいて塗布される噴射インクの乗りが悪くなりプリント品質が落ちることの防止等を目的に行われる。前処理ステーションユニット2bから第1乾燥ステーションユニット2cに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により待機位置を経
て乾燥ユニット3cの作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記乾燥処理が施されて次の下塗ステーションユニット2dへ搬送される。
【0017】
下塗ステーションユニット2dは、前処理ステーションユニット2b(前処理ユニット3b)で印刷対象物5の前処理された表面(下地コーティング材の表面)に下塗材(白色インク)を塗布して下塗処理を行う下塗プリンター等を有した下塗ユニット3dを備えている。この下塗処理によって、印刷ステーションユニット2eにおいて塗布される噴射インクの色が印刷対象物5自体の色に影響されずに所望の色彩の文字、図柄等を印刷すること(発色性の向上)が可能となる。第1乾燥ステーションユニット2cから下塗ステーションユニット2dに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により待機位置を経て下塗ユニット3dの作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記下塗処理が施されて次の印刷ステーションユニット2eへ搬送される。
【0018】
印刷ステーションユニット2eは、下塗ステーションユニット2d(下塗ユニット3d)で印刷対象物5の下塗された表面にインクジェットノズルからの噴射インクにより所望の文字、図柄等の印刷処理を行うインクジェットプリンター等を有した印刷ユニット3eを備えている。下塗ステーションユニット2dから印刷ステーションユニット2eに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により待機位置を経て印刷ユニット3eの作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記印刷処理が施されて次の後処理ステーションユニット2fへ搬送される。
【0019】
後処理ステーションユニット2fは、印刷ステーションユニット2e(印刷ユニット3e)で印刷対象物5に印刷された所望の文字、図柄等の表面に保護コーティング材(透明インク)を塗布して該表面を保護コーティングする後処理を行う後処理プリンター等を有した後処理ユニット3fを備えている。この後処理は、印刷ステーションユニット2e(印刷ユニット3e)で所望の文字、図柄等に印刷された噴射インクが印刷対象物5の表面から剥がれ落ちる事の防止等を目的に行われる。印刷ステーションユニット2eから後処理ステーションユニット2fに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により待機位置を経て後処理ユニット3fの作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記後処理が施されて次の第2乾燥ステーションユニット2gへ搬送される。
【0020】
第2乾燥ステーションユニット2gは、後処理ステーションユニット2f(後処理ユニット3f)で印刷対象物5に印刷された所望の文字、図柄等の表面を保護コーティングした保護コーティング材(透明インク)の乾燥処理を行うヒーター等を有した乾燥ユニット3gを備えている。この乾燥処理によって印刷対象物5に対して行う作業処理の全工程が終了し、所望の文字、図柄等が印刷された印刷対象物5の完成となる。後処理ステーションユニット2fから第2乾燥ステーションユニット2gに搬送されたパレット6は、上部搬送機構11により待機位置を経て乾燥ユニット3gの作業位置に移送され、この作業位置で固定保持された状態で上記乾燥処理が施されて次の回収ステーションユニット2hへ搬送される。
【0021】
回収ステーションユニット2hにおいて、第2乾燥ステーションユニット2gから搬送されたパレット6上の各作業処理が成されて完成した印刷対象物5が作業者等により回収される。印刷対象物5が回収された空のパレット6は、昇降ユニット13によって第2乾燥ステーションユニット2gの下部搬送機構12へ移送され、後処理ステーションユニット2f、印刷ステーションユニット2e、下塗ステーションユニット2d、第1乾燥ステーションユニット2c、前処理ステーションユニット2bの順にそれぞれの下部搬送機構12によって載置ステーションユニット2aに向けて搬送される。そして、載置ステーションユニット2aにおいて、この空のパレット6上に新たな印刷対象物5を載置して上述の工程が行われる。
【0022】
次に、各ステーションユニット2b〜2gに備えられた搬送ユニット10(上部搬送機構11及び下部搬送機構12)、及び載置ステーションユニット2aと回収ステーションユニット2hとに備えられた昇降ユニット13の詳細な構造について図2〜図7を参照して説明する。図2には、載置ステーションユニット2aと、印刷ステーションユニット2eと、回収ステーションユニット2hとを連設して構成した印刷装置1´を示している。なお、説明の便宜上、図2〜6において、上、前および左と書いた矢印の方向を以下の説明においては、上方、前方、左方とする。
【0023】
印刷ステーションユニット2eは、印刷対象物5を載置保持するパレット6を搬送する上部搬送機構11及び下部搬送機構12からなる搬送ユニット10と、後述するプリンターユニット20(印刷ユニット3e)とから構成される。パレット6は、図3に示すように、矩形平板状に形成されており、その上面には長尺状に形成された前後一対のテーブル支持部材7,7が左右に延びて固設されている。このテーブル支持部材7,7上には、印刷対象物5をそれぞれ載置保持する方形平板状の載置台8aの下面から下方に延びる4本の脚部材8bが形成された載置テーブル8が左右に複数(本実施形態では4つ)並んで設けられている。また、パレット6の前方および後方の側面には後述する第1センサー141の位置決めピン141a及び第2センサー146の位置決めピン146aと当接する切欠部6aがそれぞれ2箇所形成されている。
【0024】
搬送ユニット10は、図4に示すように、ロック機構を有する複数の車輪131a,…を有して床面から所定高さ位置に設けられる矩形枠状の本体フレーム131と、本体フレーム131の四隅の左右側面に立設した4本の支柱フレーム132,…と、この支柱フレーム132,…の上部間及び下部間に架設された左右一対の上部フレーム133,133及び下部フレーム134,134とからなる搬送フレーム130を有し、上部フレーム133,133に沿って上部搬送機構11が支持されるとともに、下部フレーム134,134に沿って下部搬送機構12が支持されてなる上下二段に構成される。なお、上部フレーム133,133及び下部フレーム134,134の外側面には、この外側面に沿って上方に延びるガイド壁133a,134aがそれぞれ形成されており、この各ガイド壁133a,134aにより上部搬送機構11及び下部搬送機構12上に載置したパレット6が左右へ逸脱する事を防止する。
【0025】
上部搬送機構11は、左右一対の上部ベルトコンベア110a,110bが複数の長尺状の支持フレーム135,…を用いて互いに所定の距離を置いて平行、且つ水平に上部フレーム133,133の間に支持されて構成される。上部ベルトコンベア110a,110bは、図5に示すように、長尺状の本体部材111a,111bの前後端に取付部材112,…を介して回転自在にそれぞれ取り付けられた駆動プーリー113a,113bと従動プーリー114a,114bとに無端状の搬送ベルト115a,115bを掛け回して構成される。左右の駆動プーリー113a,113bは駆動シャフト116を介して連結されている。駆動シャフト116には第1スプロケット117cが取り付けられており、この第1スプロケット117cと第2スプロケット117dとに駆動チェーン118が掛け回して設けられている。第2スプロケット117dは支持フレーム135の下面に取り付けられた駆動モータ119により回転駆動されるもので、これにより駆動チェーン118を介して第1スプロケット117cが回転駆動され、駆動シャフト116を介して左右の駆動プーリー113a,113bが同期して回転駆動される。すなわち、駆動モータ119により左右の搬送ベルト115a,115bを同期して回転移動させ、搬送ベルト115a,115b上に載置したパレット6を後方に移動させる。
【0026】
上部搬送機構11の搬送方向(前後方向)の所定位置には、図6に示すように、上部搬送機構11上を搬送されるパレット6を位置決め及び固定保持する第1保持機構140、第2保持機構145がそれぞれ設置されている。第1保持機構140は、パレット6が予め設定された第1保持位置(後述するプリンターユニット20が印刷対象物5に印刷操作を行う作業位置)に位置したときに信号を送る第1センサー141,141と、パレット6が第1保持位置に位置したときに上部搬送機構11(搬送ベルト115a,115b)から離れるように上方に持ち上げる第1エアシリンダ142,…と、第1センサー141からパレット6が第1保持位置に位置したことを示す信号等を受けて第1エアシリンダ142に制御信号を送信する第1制御装置143とから構成される。
【0027】
第1センサー141は、上下方向に伸縮動する位置決めピン141aを有して構成され、上部ベルトコンベア110a,110bの内側面にそれぞれ1個(本実施形態では合計2個)設置される。この位置決めピン141aは、伸長した状態で上部ベルトコンベア110a,110b上を搬送されてくるパレット6が第1保持位置に位置したときにパレット6の後方側に形成された切欠部6a(図2もしくは図3を参照)と当接するようになっている。なお、第1センサー141の位置決めピン141は、縮んだ状態ではパレット6(切欠部6a)に当接しない。第1センサー141は、パレット6の切欠部6aが位置決めピン141aに当接したときに生じる押圧力を検知し、パレット6が第1保持位置に位置したことを示す信号を第1制御装置143に送信する。
【0028】
第1制御装置143は、第1センサー141及び第1エアシリンダ142と図示しないケーブルで繋がれており、このケーブルを介して第1センサー141からパレット6が第1保持位置に位置したことを示す信号等を受けて第1エアシリンダ142に制御信号を送信する。なお、第1制御装置143は、上部ベルトコンベア110a,110bの間に設けられた支持フレーム135に取り付けられている。
【0029】
第1エアシリンダ142は、上下方向に伸縮動する保持ピン142aを有して構成され、第1保持位置にあるパレット6の位置に対応して上部ベルトコンベア110a,110bにそれぞれ2個(本実施形態では合計4個)設置される。この保持ピン142aは、第1制御装置143の制御信号により伸縮動し、伸長するとパレット6の下面に当接してパレット6を上方に持ち上げ、その結果パレット6を上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持する。なお、第1エアシリンダ142の保持ピン141は、パレット6を搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持した状態から第1制御装置143の制御信号により縮小すると、パレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。
【0030】
第2保持機構145は、上記の第1保持機構140と同様に構成されており、パレット6が予め設定された第2保持位置(搬送方向における第1保持位置よりも手前(前方)の位置、すなわち後述するプリンターユニット20の作業領域に重ならない程度に第1保持位置よりも前方の待機位置)に位置したときに信号を送る第2センサー146,146と、パレット6が第2保持位置に位置したときに上部搬送機構11から離れるように上方に持ち上げる第2エアシリンダ147,…と、第2センサー146からパレット6が第2保持位置に位置したことを示す信号等を受けて第2エアシリンダ147に制御信号を送信する第2制御装置148とから構成される。
【0031】
第2センサー146は、上下方向に伸縮動する位置決めピン146aを有して構成され、上部ベルトコンベア110a,110bの内側面にそれぞれ1個(本実施形態では合計2個)設置される。この位置決めピン146aは、伸長した状態で上部ベルトコンベア110a,110b上を搬送されてくるパレット6が第2保持位置に位置したときにパレット6の後方側に形成された切欠部6a(図2もしくは図3を参照)と当接するようになっている。なお、第2センサー146の位置決めピン146aは、縮んだ状態ではパレット6(切欠部6a)に当接しない。第2センサー146は、パレット6の切欠部6aが位置決めピン146aに当接したときに生じる押圧力を検知し、パレット6が第2保持位置に位置したことを示す信号を第2制御装置148に送信する。
【0032】
第2制御装置148は、第2センサー146及び第2エアシリンダ147と図示しないケーブルで繋がれており、このケーブルを介して第2センサー146からパレット6が第2保持位置に位置したことを示す信号等を受けて第2エアシリンダ147に制御信号を送信する。なお、第2制御装置148は、上部ベルトコンベア110a,110bの間に設けられた支持フレーム135に取り付けられている。
【0033】
第2エアシリンダ147は、上下方向に伸縮動する保持ピン147aを有して構成され、第2保持位置にあるパレット6の位置に対応して上部ベルトコンベア110a,110bにそれぞれ2個(本実施形態では合計4個)設置される。この保持ピン147aは、第2制御装置148の制御信号により伸縮動し、伸長するとパレット6の下面に当接してパレット6を上方に持ち上げ、その結果パレット6を上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持する。なお、第2エアシリンダ147の保持ピン147は、パレット6を搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持した状態から第2制御装置148の制御信号により縮小すると、パレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。
【0034】
下部搬送機構12は、図4に示すように、左右一対の下部ベルトコンベア120a,120bが複数の長尺状の支持フレーム136,…を用いて互いに所定の距離を置いて平行、且つ水平に下部フレーム134,134の間に支持されて構成される。下部ベルトコンベア120a,120bは、上記の上部搬送機構11の上部ベルトコンベア110a,110bと同様に構成されており、図5に示すように、長尺状の本体部材121a,121bの前後端に取付部材122,…を介して回転自在にそれぞれ取り付けられた駆動プーリー123a,123bと従動プーリー124a,124bとに無端状の搬送ベルト125a,125bを掛け回して構成される。左右の駆動プーリー123a,123bは駆動シャフト126を介して連結されている。駆動シャフト126には第1スプロケット127cが取り付けられており、この第1スプロケット127cと第2スプロケット127dとに駆動チェーン128が掛け回して設けられている。第2スプロケット127dは支持フレーム136の下面に取り付けられた駆動モータ129により回転駆動されるもので、これにより駆動チェーン128を介して第1スプロケット127cが回転駆動され、駆動シャフト126を介して左右の駆動プーリー123a,123bが同期して回転駆動される。すなわち、駆動モータ129により左右の搬送ベルト125a,125bを同期して回転移動させ、搬送ベルト125a,125b上に載置したパレット6を前方に移動させる。
【0035】
載置ステーションユニット2a及び回収ステーションユニット2hは、互いに同様の構成を成しており、図7に示すように、ロック機構を有する複数の車輪151,…を有して床面から所定高さ位置に設けられる矩形平板状の支持台152aと、支持台152aの上面における搬送装置100と反対側及び左右の側部(平面視においてコ字状)に立設する枠状の側壁フレーム152bとからなる昇降フレーム152を有し、支持台152a上に昇降ユニット13が設置されて構成される。
【0036】
昇降ユニット13は、昇降シリンダ153と、複数のガイド筒154,…(本実施形態では4個)と、昇降テーブル155と、左右一対の昇降ベルトコンベア160a,160bとから構成される。昇降シリンダ153及びガイド筒154,…は支持台152a上に立設され、昇降シリンダ153の伸縮動自在な出力ロッド153aとガイド筒154,…に摺動自在に嵌合するガイドロッド154a,…との上端部に平板状の昇降テーブル155が取り付けられている。昇降テーブル155は、昇降シリンダ153(出力ロッド153a)の伸縮動により上下方向に昇降移動する。
【0037】
昇降テーブル155の左右側部には、左右一対の昇降ベルトコンベア160a,160bが複数の支持フレーム156,…を用いて互いに平行、且つ水平に取り付けられている。昇降ベルトコンベア160a,160bは、上記の上部搬送機構11の上部ベルトコンベア110a,110bと同様に構成されており、駆動プーリー(図示せず)と従動プーリー(図示せず)とに無端状の搬送ベルト165a,165bを掛け回して構成される。左右の駆動プーリーは駆動シャフト166を介して連結されおり、図示しない駆動モータの回転駆動により駆動チェーン168を介して左右の搬送ベルト165a,165bを同期して回転移動させ、搬送ベルト165a,165b上に載置したパレット6を前方もしくは後方に移動させる。
【0038】
昇降ベルトコンベア160a,160bは、エアシリンダ153(出力ロッド153a)の伸縮動により昇降テーブル155とともに昇降移動し、印刷ステーション2eを構成する上部搬送機構11の上部ベルトコンベア110a,110bもしくは下部搬送機構12の下部ベルトコンベア120a,120bと連接する。その結果、昇降ベルトコンベア160a,160bと上部ベルトコンベア110a,110bもしくは下部ベルトコンベア120a,120bとの間でパレット6の受け渡しが可能に構成されている。また、昇降ベルトコンベア160a,160bの左右側部には、複数の支持フレーム157,…を用いて昇降ベルトコンベア160a,160bに沿って延びる長尺状のガイドフレーム158,158が取り付けられている。ガイドフレーム158,158の外側面には、この外側面に沿って上方に延びるガイド壁158a,158aがそれぞれ形成されており、このガイド壁158a,158aによりベルトコンベア165a,165b上に載置したパレット6が左右方向へ逸脱する事を防止する。
【0039】
次に、印刷ステーションユニット2eに備えられたプリンターユニット20の詳細な構造について図2、図8〜11を参照して説明する。プリンターユニット20(印刷ユニット3e)は、図2に示すように、搬送ユニット10の搬送フレーム130の左右に(前述した上部搬送機構11の第1保持機構140(第1保持位置)に対応した位置に)設けられる前後移動機構220,230と、前後移動機構220,230に着脱可能に取り付けられるプリンター機構210とから構成される。
【0040】
前後移動機構220,230は、図8に示すように、駆動スプロケット221,231と第1従動スプロケット222,232とに歯付ベルト223,233を掛け回し、その中間に第2従動スプロケット224,234とガイドローラ225,235とを設けて歯付ベルト223,233が第2従動スプロケット224,234を頂点としたL字状に構成されている。なお、駆動スプロケット221,231と第2従動スプロケット224,234(ガイドローラ225,235)とは搬送フレーム130の左右側部に上下に離れて回転自在に支持され、第1従動スプロケット222,232と第2従動スプロケット224,234(ガイドローラ225,235)とは上部フレーム133,133の左右側部に前後に離れて回転自在に支持されている。歯付ベルト223,233は両端部223a,233aが係止部材240,245を介して連結されてそれぞれリング状に形成されている。なお、係止部材240,245は、第1従動スプロケット222,232と第2従動スプロケット224,234との間に位置して設けられている。
【0041】
左右の駆動スプロケット221,231は、図9に示すように、駆動シャフト229を介して連結されている。駆動シャフト229の中央には駆動ギヤ226が取り付けられており、これに駆動ギヤ列228a,228bが図示のように噛合して設けられている。駆動ギヤ列228a,228bは駆動モータ227により回転駆動されるもので、これにより駆動ギヤ226が回転駆動され、駆動シャフト229を介して左右の駆動スプロケット221,231が同期して回転駆動される。すなわち、駆動モータ227により左右の歯付ベルト223,233を同期して回転移動させ、左右の係止部材240,245を同期して上部フレーム133,133(上部搬送機構11)に沿って前後移動させる。なお、駆動シャフト229、駆動モータ227等は下部フレーム134,134(下部搬送機構12)の下方に配設され、パレット6の搬送経路に干渉することがないようになっている。
【0042】
左側の前後移動機構220において歯付ベルト223を連結させる係止部材240を図10に示しており、この係止部材240は断面コ字状の本体部材241の内側面に上下に所定間隔を有して対になった二組のガイドローラ242a,242bを図8に示すように前後に間隔をおいて取り付けて構成される。一方、搬送ユニット10の左側の上部フレーム133の外側面には前後に水平に延びるガイドレール137が取り付けられており、これら二組のガイドローラ242a,242bはガイドレール137の上下面に形成されたガイド溝137a,137b内に嵌合しており、係止部材240はガイドレール137に案内されて前後移動可能となっている。なお、この係止部材240の本体部材241の上面には上下に貫通する係合孔241aが形成されている。
【0043】
右側の前後駆動機構230において歯付ベルト233を連結させる係止部材245を図11に示しており、この係止部材245は下辺が長い断面コ字状の本体部材246の内側面に上下に所定間隔を有して対になった二組のガイドローラ247a,247bを前後に間隔をおいて取り付けて構成される。なお、これらガイドローラ247a,247bは左側の前後駆動機構220の係止部材240のガイドローラ242a,242bと左右対称に配置されている。一方、搬送ユニット10の右側の上部フレーム133の外側面には前後に水平に延びるガイドレール138が取り付けられており、これら二組のガイドローラ247a,247bはガイドレール138の上下面に形成されたガイド溝138a,138b内に嵌合しており、係止部材245はガイドレール138に案内されて前後移動可能となっている。この係止部材245の本体部材246の上面にも上下に貫通する係合孔246aが形成されている。
【0044】
さらに、本体部材246の下辺は外方に延びてその下面に、左右に所定間隔を有して対になった二組のガイドローラ248a,248bを前後に間隔をおいて取り付けられている。搬送ユニット10の上部フレーム133の右側面には上方に向いて前後に水平に延びるガイド面133bが形成されるとともにこのガイド面133b上に前後に延びてガイドレール139が取り付けられており、これら二組のガイドローラ248a,248bはガイドレール139の左右面に形成されたガイド溝139a,139b内に嵌合しており、係止部材245はガイドレール139に案内されて前後移動可能となっている。すなわち、係止部材245はガイドレール138及びガイドレール139により上下及び左右方向ともにガイドされて前後移動可能となっている。
【0045】
以上の構成説明から分かるように、駆動モータ227を駆動することにより、左右の歯付ベルト223,233を回転移動させ、左右の係止部材240,245を同期して前後移動させることができるが、このとき、左側の係止部材240はガイドレール137により上下方向に正確にガイドされて前後移動し、右側の係止部材245はガイドレール138,139により上下及び左右方向に正確にガイドされて前後移動する。このように同期して前後移動される左右の係止部材240,245の上に、プリンター機構210が着脱可能に取り付けられ、プリンター機構210全体が前後移動されるようになっている。
【0046】
プリンター機構210は、図2に示すように、上部搬送機構11(上部ベルトコンベア110a,110b)の上方を左右に延びて前後移動機構220,230上に取り付けられる長尺状のガイドバー部材211と、ガイドバー部材211に沿って移動可能に取り付けられるプリンターヘッド212と、ガイドバー部材211の左右端部に取り付けられるインク供給装置213及びメンテナンスステーション214とから構成される。
【0047】
ガイドバー部材211の下面には、左右に所定間隔(前後移動機構220,230の左右の係止部材240,245の間隔に対応)をおいて下方に突出する一対の係止突起211a,211b(図10,11を参照)が形成されている。これら係止突起211a,211bを左右の係止部材240,245の上面に形成された上記の係合孔241a,246aに嵌合させてガイドバー部材211が着脱可能に取り付けられ、この結果、左右の係止部材240,245が上記のように同期して前後移動されるとガイドバー部材211が一緒に前後移動される。
【0048】
ガイドバー部材211には左右に延びるガイドレール(図示せず)が設けられており、このガイドレールにガイドされて左右に移動可能となってガイドバー部材211にプリンターヘッド212が取り付けられている。ガイドバー部材211には、さらに駆動ベルト(図示せず)が設けられており、この駆動ベルトの駆動制御によりプリンターヘッド212をガイドバー部材211に沿って左右に移動させる制御が行われる。プリンターヘッド212の下面には多数のインクジェットノズル(図示せず)が下方に開口して設けられており、これらインクジェットノズルからのインク噴射により、その下方に位置する印刷対象物5に所望の文字、図柄等の印刷を行うように構成されている。
【0049】
ガイドバー部材211の右端部にはインク供給装置213が取り付けられ、左端部にはメンテナンスステーション214が取り付けられている。メンテナンスステーション214は、プリンターヘッド212をこの内部に移動させてノズル吸引、クリーニング等を行う装置を有する。なお、ガイドバー部材211の右端部にはインク供給装置213に加えてプリンターヘッド212の移動制御や、プリンターヘッド212の下面に設けられた多数のインクジェットノズルからのインクの噴出制御を行うための制御装置(図示せず)が設けられている。
【0050】
ガイドバー部材211とプリンターヘッド212とを繋いでケーブルガイド215が設けられており、ケーブルガイド215内に、電力及び信号送出用の電線やインク供給用のフレキシブルチューブが配設されている。この構成により、ガイドバー部材211に沿ったプリンターヘッド212の左右移動を許容しつつ、ガイドバー部材211側から(インク供給装置213等から)プリンターヘッド211に電力、制御信号、インク供給がなされる。
【0051】
なお、搬送ユニット10の下側には電源及び制御機器類(図示せず)が配設されており、この電源及び制御機器類から搬送ユニット10の上下各搬送機構11,12(駆動モータ119,129)や第1,2保持機構140,145(第1,第2制御装置143,148)、昇降ユニット13の昇降シリンダ153、及びプリンターユニット20の前後移動機構220,230(駆動モータ227)やプリンター機構210(インク供給装置213、制御装置、メンテナンスステーション214)に駆動制御のための電力及び制御信号を送るためのケーブルが内部に配設されたフレキシブルケーブルガイド(図示せず)が設けられている。
【0052】
次に、前述の構成を備えた印刷装置1´の一連の作動について説明する。先ず、載置ステーションユニット2aにおいて、作業者等により印刷対象物5が、昇降ユニット13の昇降ベルトコンベア160a,160b上に載置した第1のパレット6の各載置テーブル8上に載置保持される。印刷対象物5を載置保持した第1のパレット6は、昇降ベルトコンベア160a,160bと連接した上部搬送機構11の上部ベルトコンベア110a,110b上へ移送され、印刷ステーションユニット2eに搬送される。
【0053】
印刷ステーションユニット2eでは、最初、上部搬送機構11に設置された第1,2保持機構140,145をそれぞれ構成する第1センサー141の位置決めピン141aは伸長した状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは縮んだ状態となっている。印刷ステーションユニット2eに搬送された第1のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第1のパレット6の後方側に形成された切欠部6aが第1センサー141の位置決めピン141aと当接する(第1のパレット6が作業位置に位置する)。第1のパレット6の切欠部6aが位置決めピン141aと当接すると、第1エアシリンダ142の保持ピン142aは、第1制御装置143の制御信号により伸長して第1のパレット6を上方に持ち上げ、第1のパレット6を上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離して固定保持する。なお、第1のパレット6が搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持されると、第1センサー141の位置決めピン141aは縮んだ状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは伸長した状態になる。
【0054】
第1保持機構140により第1のパレット6が第1保持位置(作業位置)で固定保持されると、パレット6に載置保持された印刷対象物5の印刷表面とプリンター機構210のプリンターヘッド212(インクジェットノズル)とが一定の距離(2mm程度の距離)で対向する状態となる。この状態において、プリンター機構210が、第1のパレット6上の各印刷対象物5の上方を前後移動機構220,230により前後移動するとともに、プリンターヘッド212をガイドバー部材211に沿って左右に移動させてインクジェットノズルからのインク噴射により、各印刷対象物5に所望の文字、図柄等の印刷を行う。このように、印刷対象物5に対して上部ベルトコンベア110a,110bによる振動等の影響を受けることなく安定した状態で、プリンター機構210により高い精度で印刷を施すことができる。なお、前後移動機構220,230の駆動制御、プリンターヘッド212の移動制御、及びインクジェットノズルからのインクの噴射制御等により、パレット6上に左右に並んで載置保持された各印刷対象物5にそれぞれ異なる文字、図柄等を印刷することも可能である。
【0055】
一方、第1のパレット6が第1保持位置で固定保持された状態でプリンターユニット20によって印刷処理が成されている際、載置ステーションユニット2aでは、作業者等により新たな印刷対象物5が、昇降ユニット13の昇降ベルトコンベア160a,160b上に載置した第2のパレット6の各載置テーブル8上に載置保持される。印刷対象物5を載置保持した第2のパレット6は、昇降ベルトコンベア160a,160bと連接した上部搬送機構11の上部ベルトコンベア110a,110b上へ移送され、印刷ステーションユニット2eに搬送される。
【0056】
印刷ステーションユニット2eに搬送された第2のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第2のパレット6の後方側に形成された切欠部6aが第2センサー146の位置決めピン146aと当接する(第2のパレット6が待機位置に位置する)。第2のパレット6の切欠部6aが位置決めピン146aと当接すると、第2エアシリンダ147の保持ピン147aは、第2制御装置148の制御信号により伸長して第2のパレット6を上方に持ち上げ、第2のパレット6を上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離して固定保持する。なお、第2のパレット6が搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持されると、第2センサー146の位置決めピン146aは縮んだ状態になる(第1センサー141の位置決めピン141aは縮んだ状態を保っている)。
【0057】
このように第2保持機構145により第2のパレット6が第2保持位置(待機位置)で固定保持された後、第1保持位置で固定保持された第1のパレット6に対するプリンターユニット20による印刷処理が完了すると、第1エアシリンダ142の保持ピン142aは、第1制御装置143の制御信号により縮小して第1のパレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第1のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110bと連通した回収ステーションユニット2hの昇降ベルトコンベア160a,160b上へ移送され、回収ステーション2hに搬送される。なお、第1のパレット6が回収ステーションユニット2hに搬送されると、第1センサー141の位置決めピン141aは伸長した状態になる(第2センサー146の位置決めピン146aは縮んだ状態を保っている)。
【0058】
第1のパレット6が回収ステーションユニット2hに搬送されると、第1のパレット6上の印刷処理を完了した各印刷対象物5が作業者等により回収される。印刷対象物5が回収された第1のパレット6は、昇降ユニット13(昇降シリンダ153)の駆動により昇降ベルトコンベア160a,160bと連接した下部搬送機構12の下部ベルトコンベア120a,120b上へ移送され、再び印刷ステーションユニット2eに搬送される。印刷ステーションユニット2eに再び搬送された第1のパレット6は、下部ベルトコンベア120a,120b上を載置ステーションユニット2eに向けて搬送される。そして、載置ステーションユニット2aにおいて、この第1のパレット6上に新たな印刷対象物5を載置して上述と同様に工程が行われる。
【0059】
一方、第1のパレット6が回収ステーションユニット2hに搬送されると、第2エアシリンダ147の保持ピン147aは、第2制御装置148の制御信号により縮小して第2のパレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第2のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第2のパレット6の後方側に形成された切欠部6aが第1センサー141の位置決めピン141aと当接する(第2のパレット6が作業位置に位置する)。第2のパレット6の切欠部6aが位置決めピン141aと当接すると、第1エアシリンダ142の保持ピン142aは、第1制御装置143の制御信号により伸長して第2のパレット6を上方に持ち上げ、第2のパレット6を上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持する。なお、これ以降における第2のパレット6は、上述の第1のパレット6と同様に、プリンターユニット20による印刷処理、回収ステーションユニット2hへの搬送、印刷対象物5の回収、載置ステーションユニット2aへの搬送の順にこれらの工程が施される。このように、複数の作業装置で並行して処理作業を行う場合においても、第2のパレット6を第2保持機構145で待機させることができるため、処理作業が終了するまで次のパレットの搬送を待つ必要がなく、作業装置の稼動効率を低下することを防止することができる。
【0060】
以上のように、搬送ユニット10及び昇降ユニット13の詳細な構造及び動作について、図2に示した載置ステーションユニット2aと印刷ステーションユニット2eと回収ステーションユニット2hとを連設して構成した印刷装置1´を参照して説明したが、本実施形態にかかる印刷装置1では、図1に示すように、上記3基の作業ステーションユニットだけでなく前処理ステーションユニット2b、第1乾燥ステーションユニット2c、…の作業ステーションユニットをさらに連設して構成されている。そこで印刷装置1では、上述した作動以外に、搬送ユニット10から別の作業ステーションユニットの搬送ユニット10へのパレット6の受け渡しの作動が生じる。
【0061】
ここでは、例えば印刷ステーションユニット2eの搬送ユニット10(上部搬送機構11)から後処理ステーションユニット2fの搬送ユニット10(上部搬送機構11)へのパレット6の受け渡しについて説明する。印刷ステーションユニット2eにおいて、上述のように、第1保持位置で固定保持された第1のパレット6に対してプリンターユニット20による印刷処理が完了すると、第1のパレット6は第1保持機構140により再び搬送ベルト115a,115b上に載置される。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第1のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110bと連通した後処理ステーションユニット2fの上部ベルトコンベア110a,110b上へ移送され、後処理ステーションユニット2fに搬送される。なお、第1のパレット6が後処理ステーションユニット2fに搬送されると、印刷ステーションユニット2eの第1センサー141の位置決めピン141aは伸長した状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは縮んだ状態となる。
【0062】
後処理ステーションユニット2fでは、最初、上部搬送機構11に設置された第1,2保持機構140,145をそれぞれ構成する第1センサー141の位置決めピン141aは伸長した状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは縮んだ状態となっている。後処理ステーションユニット2fに搬送された第1のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第1保持機構140により第1保持位置(後処理ユニット3fの作業位置)において搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持される。第1保持機構140により第1のパレット6が第1保持位置で固定保持されると、後処理ユニット3fが、プリンターユニット20によって印刷対象物5に印刷された文字、図柄等の表面に対して保護コーティング材を塗布し、該表面を保護コーティングする後処理を行う。なお、第1のパレット6が搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持されると、後処理ステーションユニット2fの第1センサー141の位置決めピン141aは縮んだ状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは伸長した状態になる。
【0063】
一方、印刷ステーションユニット2eにおいて、第1のパレット6が後処理ステーションユニット2fに搬送されると、第2保持機構145は第2のパレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第2のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第1保持機構140により第1保持位置(プリンターユニット20の作業位置)において搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持される。第1保持機構140により第2のパレット6が第1保持位置で固定保持されると、プリンターユニット20が第2のパレット6に載置保持された各印刷対象物5に所望の文字、図柄等の印刷を行う。なお、第2のパレット6が搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持されると、印刷ステーションユニット2eの第1センサー141の位置決めピン141aは縮んだ状態、且つ第2センサー146の位置決めピン146aは伸長した状態になる。
【0064】
第1保持位置で固定保持された第2のパレット6に対してプリンターユニット20による印刷処理が完了すると、第1保持機構140は第2のパレット6を再び搬送ベルト115a,115b上に載置する。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第2のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110bと連通した後処理ステーションユニット2fの上部ベルトコンベア110a,110b上へ移送され、後処理ステーションユニット2fに搬送される。後処理ステーションユニット2fに搬送された第2のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第2保持機構145により第2保持位置(後処理ステーションユニット2fの待機位置)において上部ベルトコンベア110a,110bの搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持される。なお、第2のパレット6が後処理ステーションユニット2fに搬送される際、後処理を完了した第1のパレット6がすでに次に連設する第2乾燥ステーションユニット2gに搬送されている場合には、第2のパレット6は直接に第1保持機構により第1保持位置(後処理ユニット3fの作業位置)において固定保持される。
【0065】
後処理ステーションユニット2fにおいて、第1保持位置で固定保持された第1のパレット6に対する後処理ユニット3fによる後処理が完了すると、第1のパレット6は第1保持機構140により再び搬送ベルト115a,115b上に載置される。搬送ベルト115a,115b上に再び載置された第1のパレット6は、上部ベルトコンベア110a,110bと連通した第2乾燥ステーションユニット2gの上部ベルトコンベア110a,110b上へ移送され、第2乾燥ステーションユニット2gに搬送される。なお、これ以降における第1のパレット6は、乾燥ユニット3gによる乾燥処理を施された後、上記と同様に回収ステーションユニット2hへの搬送、印刷対象物5の回収、載置ステーションユニット2aへの搬送の順にこれらの工程が施される。
【0066】
また、後処理ステーションユニット2fにおいて、第2のパレット6は第2保持機構により再び搬送ベルト115a,115b上に載置され、上部ベルトコンベア110a,110b上を後方へ移動し、第1保持機構140により第1保持位置(後処理ユニット3fの作業位置)において搬送ベルト115a,115bから離れて固定保持され、プリンターユニット20によって印刷対象物5に印刷された文字、図柄等の表面に対して後処理ユニット3fにより保護コーティング材を塗布し、該表面を保護コーティングする後処理が施される。なお、これ以降における第2のパレット6は、上述の第1のパレット6と同様に、乾燥ステーションユニット2gへの搬送、乾燥ユニット3gによる乾燥処理、回収ステーションユニット2hへの搬送、印刷対象物5の回収、載置ステーションユニット2aへの搬送の順にこれらの工程が施される。
【0067】
なお、上記では第1のパレット6、第2のパレット6について説明したが、本実施形態に係る印刷装置1では、第3のパレット6、第4のパレット6、…とより多数のパレット6を各ステーションユニット2a〜2gで循環搬送し、各作業ユニット3b〜3fによる作業処理を順に施すようにすることも可能である。
【0068】
以上のように、この印刷装置1において、前後移動機構220,230は、駆動スプロケット221,231と第1従動スプロケット222,232とに歯付ベルト223,233を掛け回し、その中間に第2従動スプロケット224,234とガイドローラ225,235とを設けて歯付ベルト223,233が第2従動スプロケット224,234を頂点としたL字状に構成されている。歯付ベルト223,233は、両端部223a,233aが係止部材240,245を介して連結されてそれぞれリング状に形成され、係止部材240,245は、第1従動スプロケット222,232と第2従動スプロケット224,234との間に位置して設けられている。左右の駆動スプロケット221,231は、駆動モータ227により駆動シャフト229を介して回転駆動され、左右の歯付ベルト223,233を介して左右の係止部材240,245を同期して上部フレーム133,133(上部搬送機構11)に沿って前後移動させることができる。また、歯付ベルト223,233を下部フレーム134,134(下部搬送機構12)の下方まで延ばして設けることにより、駆動シャフト229及び駆動モータ227等を下部搬送機構12の下方に配設することができ、すなわち前後移動機構220,230をパレット6の搬送経路に干渉することなく配設することができる。
【0069】
以上、本発明をその好適な実施の形態に基づいて説明したが、本発明の印刷装置は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施した印刷装置も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】上記印刷装置の一部を構成する載置ステーションユニット、印刷ステーションユニット、及び回収ステーションユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】上記印刷装置によって印刷される印刷対象物を載置保持するパレットの構成を示す斜視図である。
【図4】上記印刷装置を構成する搬送ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】上記搬送ユニットを構成する上下搬送機構の構成を示す斜視図である。
【図6】上記搬送ユニットの平面図である。
【図7】上記載置ステーションユニット及び回収ステーションユニットの構成を示す(A)平面図、(B)側面図である。
【図8】上記印刷ステーションユニットにおけるプリンターユニットを構成する前後移動機構の構成を示す側面図である。
【図9】上記前後移動機構における駆動スプロケットの駆動系を示す斜視図である。
【図10】左側の前後移動機構における係止部材の周囲構造を示す部分断面図である。
【図11】右側の前後移動機構における係止部材の周囲構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 印刷装置 5 印刷対象物
6 パレット 10 搬送ユニット
11 上部搬送機構 12 下部搬送機構
211 ガイドバー部材 212 プリンターヘッド
220,230 前後移動機構
221,231 駆動スプロケット
222,232 第1従動スプロケット
223,233 歯付ベルト
224,234 第2従動スプロケット
226 駆動ギヤ 227 駆動モータ
228a,228b 駆動ギヤ列 229 駆動シャフト
240,245 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント対象物が載置されるパレットと、
前記パレットを搬送する上部搬送路及び下部搬送路を上下二段に有してなる搬送機構と、
前記上部搬送路の左右両側に前後に延びて配設された左右一対の前後移動機構と、
前記左右一対の前後移動機構にそれぞれ取り付けられて前記前後移動機構により互いに同期して前後移動される左右一対の係止部材と、
前記上部搬送路の上方に左右に延びて前記左右一対の係止部材に取り付けられたガイドバー部材と、
前記ガイドバー部材に左右に移動可能に取り付けられ、前記プリント対象物に対してインクを噴射する複数のインク噴射孔を有してなるヘッド装置とを有し、
前記ヘッド装置を移動させながら前記搬送機構により搬送され前記上部搬送路上に固定された前記パレット上の前記プリント対象物に前記インク噴射孔からインクを噴射することによって印刷を行うように構成された印刷装置において、
前記前後移動機構が、
前記上部搬送路の左右両側に前後に離れて回転自在に設けられた左右一対の第1従動スプロケット及び第2従動スプロケットと、
前記第2従動スプロケットの下方に回転自在に設けられた左右一対の駆動スプロケットと、
前記下部搬送路の下方に左右に延びて前記左右一対の駆動スプロケットと連結される駆動シャフトと、
前記下部搬送路の下方に設けられ、前記駆動シャフトを回転駆動させる駆動装置と、
前記係止部材を介して連結されてリング状に形成され、前記第1従動スプロケットと前記第2従動スプロケットと前記駆動スプロケットとに掛け回される左右一対の無端移動部材とを有し、
前記無端移動部材が、前記第1従動スプロケットから前記第2従動スプロケットへ前記上部搬送路に沿って前後方向に延び、さらに前記第2従動スプロケットから前記駆動スプロケットへ下方に延びて設けられ、前記駆動スプロケットの回転駆動により前記無端移動部材を介して前記係止部材を同期して前後移動させ、前記ガイドバー部材とともに前記ヘッド装置を前後移動させるように構成したことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−56657(P2009−56657A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224791(P2007−224791)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【出願人】(502410037)株式会社ウィズテック (16)
【Fターム(参考)】