説明

印刷装置

【課題】印刷のインキ飛散斑(いわゆる髯)の発生を防止する。
【解決手段】グラビア印刷用版胴3に対して上方向から接近する圧胴5が導電性ロールから成り、上記版胴3と圧胴5の間を通過して上流側Uから下流側Dへ送られる被印刷シート体6に対して、上記上流側U、または上記上流側Uおよび下流側Dにおいて、接近状に配設された除電装置11、12が直流にて作動する構成としたことを特徴とする印刷装置。また、除電装置11、12は、防爆型とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷装置には、除電装置が付設されており、版胴と圧胴ロールの間に送り込まれてくる被印刷シート体の静電気を、その直前及び直後にて、除去していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−149892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の前記除電装置にあっては、図5に示すような交流電圧を用いていた。
しかしながら、従来の交流式の除電装置では、除電性能が不十分な場合が時々発生して、図6に例示するような(リンゴの図形等の)印刷部にインキ飛散による斑(いわゆる「髯」)を生ずる。
【0004】
図5は、横軸に時間T、縦軸に電圧Eをとって示したグラフ図であって、交流電圧曲線Exの斜線範囲の山頂部31と谷底部32は、イオン発生領域を示し、その中間域Mでは、イオンが発生せず、被印刷シート体の送り速度が1m/sec を越すような高速下では、上記中間域M下にて十分に除電されずに通過するため、従来の交流式除電装置では、除電性能が不十分となって、前述の斑(いわゆる「髯」)を発生するのではないかと、本発明者は考察した。
そこで、本発明は、従来の印刷時のインキ飛散による部分的な斑(髯)の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置は、版胴に対して上方向から接近する圧胴が導電性ロールから成り、上記版胴と圧胴の間を通過して上流側から下流側へ送られる被印刷シート体に対して上記上流側に於て接近状に配設された除電装置が直流にて作動する構成とした。
また、版胴に対して上方向から接近する圧胴が導電性ロールから成り、上記版胴と圧胴の間を通過して上流側から下流側へ送られる被印刷シート体に対して上記上流側及び下流側に於て接近状に配設された除電装置が共に直流にて作動する構成とした。
そして、上記除電装置は防爆構造から成るので好ましい。また、上記版胴がグラビア印刷用版胴ある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。即ち、導電性ロールから成る圧胴ロールは帯電せず、印刷に悪影響を与えることを防ぎ、しかも、直流式の除電装置により、(高速で送られる)被印刷シートに対して、十分に除電を行うことができ、これに伴って、従来のインキ飛散による斑(髯)の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1は、グラビア印刷装置の印刷部1の要部を示す簡略説明図であって、この印刷部1は、版胴3と、インキ浴部4と、この版胴3に対して上方向から接近する圧胴5と、版胴3と圧胴5の間を通過して上流側Uから下流側Dへ送られる被印刷シート体6に対して上流側U及び下流側Dに於て、(かつ、版胴3に接近して、)配設された除電装置11,12と、を具備する。
そして、圧胴5は、導電性ロールから成る。また、図1中に2点鎖線にて示したような(ゴム製圧胴のための)帯電極33を省略する。
【0008】
ところで、他の実施の形態としては、(図示省略したが)図1の下流側の除電装置12を省略して、上流側の除電装置11のみを配設するも、望ましい。
【0009】
図2は、除電装置11, 12の具体例を示す底面図であり、図3は図2のZ−Z拡大断面図である。この除電装置11,12は、直流式防爆構造であって、プラス(+)の電極針7が長手方向に所定ピッチP7 にて多数本配設され、かつ、マイナス(−)の電極針8が長手方向に所定ピッチP8 にて配設され、フレキシブル保護管9にて(エアパージ型の)コネクタ13に接続され、また、上記両電極針7,8は、そのピッチP7 ,P8 は相等しいが、その長手方向位置を半ピッチずつ位置をずらせて、千鳥状に配設している。さらに、図3の横断面図のように、横断面E字型のFRP製のケーシング14の2本の溝15,15の奥部には、長手方向に連続状の導線16が配設され、その導線16から直交方向(図3の下方向)に、上記電極針7,8が連設され、これ等を絶縁性に優れ、かつ、耐溶剤性に優れたエポキシ樹脂17にて埋設(固定)する。FRPであるため、堅牢である。
図2に於て、(+)の高圧電源21と(−)の高圧電源22は、コネクタ13の各端子13a,13bに接続(配設)される。
【0010】
図4に示したように、上述の除電装置11,12は、横軸の時間Tに対して、常に十分な幅N1 ,N2 のイオン発生領域A1 ,A2 (斜線部にて示した)を、備えており、従来の図5に比較すれば明らかなように、イオン非発生の中間域Mが全く無くなって、常時安定した (+)(−) の各々の印加を行い得て、イオンの発生量が増加し、除電性能(除電速度)が著しく向上し、かつ、送られる被印刷シート体6は、 (+)(−) の両極性を経て、シート体6が (+)(−) のいずれに帯電していたとしても、確実に除電作用が行われる。
なお、 (+)(−) の両イオンを常時放出していて、イオンバランスは良好である。
【0011】
本発明は、上述のように、版胴3に対して上方向から接近する圧胴5が導電性ロールから成り、上記版胴3と圧胴5の間を通過して上流側Uから下流側Dへ送られる被印刷シート体6に対して上記上流側Uに於て接近状に配設された除電装置11が直流にて作動する構成としたので、圧胴5に静電気が蓄積されず、かつ、上流側Uにて十分な除電が行われて、図6に例示したインキ飛散斑(髯)50は確実に防止できて、美しい印刷が実現できる。
【0012】
また、版胴3に対して上方向から接近する圧胴5が導電性ロールから成り、上記版胴3と圧胴5の間を通過して上流側Uから下流側Dへ送られる被印刷シート体6に対して上記上流側U及び下流側Dに於て接近状に配設された除電装置11,12が共に直流にて作動する構成としたので、圧胴5に静電気が蓄積されることがなくなり、しかも、上流側U及び下流側Dの両方にて、十分な静電気除去が行われ、図6のようなインキ飛散斑(髯)50の発生を防いで、一層、美しい印刷を可能とできる。
なお、本発明に於て、インキとは、塗布液を含むものと定義し、さらに、版胴3は塗工ロールを含むものと定義する。また、導電性ロールとは、例えば、金属版胴本体の外周面にCrメッキを施して、その後、レーザー加工にて印刷面を形成するのが一般的である。
【0013】
また、上記除電装置11又は11,12は防爆構造から成るので、インキ等からの溶剤ガスが存在する雰囲気下で安全な印刷作業を実現することができる。
そして、上記版胴3がグラビア印刷用版胴であるので、特に美しい印刷を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態を示す要部説明図である。
【図2】除電装置の一例を示す底面説明図である。
【図3】図2のZ−Z拡大断面図である。
【図4】グラフ図である。
【図5】従来例のグラフ図である。
【図6】従来の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
3 版胴
5 圧胴
6 被印刷シート体
11,12 除電装置
U 上流側
D 下流側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴(3)に対して上方向から接近する圧胴(5)が導電性ロールから成り、上記版胴(3)と圧胴(5)の間を通過して上流側(U)から下流側(D)へ送られる被印刷シート体(6)に対して上記上流側(U)に於て接近状に配設された除電装置(11)が直流にて作動する構成としたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
版胴(3)に対して上方向から接近する圧胴(5)が導電性ロールから成り、上記版胴(3)と圧胴(5)の間を通過して上流側(U)から下流側(D)へ送られる被印刷シート体(6)に対して上記上流側(U)及び下流側(D)に於て接近状に配設された除電装置 (11)(12) が共に直流にて作動する構成としたことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
上記除電装置(11)又は (11)(12) は防爆構造から成る請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
上記版胴(3)がグラビア印刷用版胴である請求項1,2又は3記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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