説明

印刷装置

【課題】高速で印刷を行う場合においても、印刷品質を大きく低下させることがない印刷装置を提供する。
【解決手段】設定された印刷密度が180dpiであって、サーマルヘッド41の温度がt5以下である場合には、1ライン分のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2印刷ライン分搬送することにより、360dpiの2本の印刷ラインに跨って熱転写されたドット92を表層テープ31上に形成する低密度伸張印刷を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを用いてインクリボンのインク層のインクを印刷媒体へと転写させることにより印刷を行う熱転写方式の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に印刷を行う印刷装置としては、インクジェットプリンタやレーザプリンタとともに、サーマルヘッドを印刷手段として用いた印刷装置が知られている。ここで、サーマルヘッドを印刷手段として用いた印刷装置は、上記のインクジェットプリンタやレーザプリンタに比べて、小型化並びに低価格化が容易であり、例えば、内蔵されたテープカセットから搬出されるテープに対して文字や図形の印刷を行うテープ印字装置等に用いられる。
【0003】
また、サーマルヘッドを印刷手段として用いる印刷装置としては、感熱紙に対して印刷を行う感熱方式を採用した印刷装置と、インクリボンのインク層を印刷媒体へと転写する熱転写方式を採用した印刷装置がある。ここで、特に熱転写方式は、感熱方式と比べて印刷面が長時間経過しても劣化し難く、印刷媒体の変色についても防止できる点において優れた印刷方式である。
【0004】
また、従来より上記印刷装置では、印刷時間を短くする為に、より高速で印刷を行うことが望まれていた、しかし、熱転写方式の印刷装置において、高速で印刷を行う場合には以下の問題が発生していた。
【0005】
ここで、図11は熱転写方式の印刷装置において行われるサーマルヘッドの発熱素子への通電波形及び発熱態様の一例である。熱転写方式の印刷装置では、印刷手段として用いられるサーマルヘッドは、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に、複数(例えば、128個や256個)の発熱素子を1列に列設することで構成される。そして、印刷処理が開始されると、サーマルヘッドは1ライン分の印刷データ(ライン印刷データ)が制御部から転送された後に、転送された印刷データに基づいて対応する発熱素子に図11に示す通電波形で通電される。ここで、通電波形は、印刷開始時のサーマルヘッドの熱容量不足を補うための“予備加熱1”と、対応する発熱素子の温度を熱転写が可能となる(即ち、インクリボンのインク層を溶融させることが可能な)所定温度(以下、インク溶融必要温度という)へと上昇させるための“予備加熱2”と、対応する発熱素子の温度をインク溶融必要温度で一定に保つための“本加熱”と、から構成される。そして、1ライン分のライン印刷データに基づく熱転写は、一の印刷周期で行われる。
【0006】
図11に示す通電波形により発熱素子が通電されることにより、発熱素子をインク溶融必要温度以上に発熱させ、発熱させた発熱素子毎にインク層のインクを印刷媒体へドット形状に転写する。そして、上記1ライン分の熱転写を印刷媒体を搬送しつつ繰り返し実行することによって、印刷媒体に所望の文字や図形を印刷する。ここで、印刷速度を向上させる為には、1ライン分の印刷を行う印刷周期、即ち、発熱素子への通電時間を短くする必要がある。
【0007】
しかしながら、通電時間を短くすると、短い時間で同じ熱量を発熱素子へと付加しなければならず、高電力が必要となり、また、CPUの負担も増加していた。ここで、サーマルヘッドを用いた印刷装置では、上述したように小型及び簡易構造の装置に採用されることが多く、高電力を出力することや高性能のCPUを搭載することは難しかった。
そこで、例えば特開昭60−82359号公報には、熱転写方式の印刷装置においてドット数を間引いて印刷することにより、高速に印刷を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−82359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術ではドット数を間引く、即ち、印刷を行うライン数を減らすことにより印刷速度の高速化を実現しているので、図12に示すように印刷されたドット151の間に隙間が生じる。その結果、印刷された文字や図形の縁部において凹凸が大きくなり、印刷品質が低下していた。
【0010】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、複数ラインに跨って熱転写されたドットによって文字や図形が形成されるので、熱転写方式の印刷装置において高速で印刷を行う場合においても、高電力を出力や高性能のCPUの搭載が必要なく、且つ印刷品質についても大きく低下させることのない印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る印刷装置は、インク層が形成されたインクリボンと、印刷媒体を前記インクリボンとともに所定速度で搬送する搬送手段と、前記インクリボンと接触する複数の発熱素子をライン上に列設して構成され、当該発熱素子への通電に基づいて前記発熱素子を発熱させ、発熱された発熱素子に対応する位置の前記インクリボンのインク層を前記印刷媒体へと転写させるサーマルヘッドと、を有する印刷装置において、印刷データを生成する印刷データ生成手段と、前記印刷データ生成手段によって生成された印刷データを前記複数の発熱素子毎に発熱の有無を特定する複数ライン分のライン印刷データへと分割する印刷データ分割手段と、1ライン分の前記ライン印刷データを前記サーマルヘッドに転送する転送手段と、前記転送手段により転送されたライン印刷データに基づいて対応する前記発熱素子が発熱された状態で、前記搬送手段により前記印刷媒体及び前記インクリボンを複数ライン分搬送するライン印刷制御手段と、を有し、前記印刷データ分割手段により分割された全てのライン印刷データについて、前記転送手段及び前記ライン印刷手段による処理を順次繰り返し実行することにより前記印刷データに基づく印刷を前記印刷媒体に行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出手段を有し、前記ライン印刷制御手段は、前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度が所定温度以上である場合に、前記転送手段により転送されたライン印刷データに基づいて対応する前記発熱素子が発熱された状態で前記搬送手段により前記印刷媒体及び前記インクリボンを1ライン分搬送する動作を、同一のライン印刷データに基づいて前記複数ライン分繰り返し実行することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る印刷装置は、請求項2に記載の印刷装置であって、前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度に基づいて前記搬送手段による前記印刷媒体及び前記インクリボンの搬送速度を変更する搬送速度制御手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
更に、請求項4に係る印刷装置は、請求項3に記載の印刷装置であって、前記搬送速度制御手段は、前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度が高くなるほど、前記搬送手段による前記印刷媒体及び前記インクリボンの搬送速度を低速にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
前記構成を有する請求項1に係る印刷装置では、1ライン分のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子が発熱された状態で、印刷媒体及びインクリボンを複数ライン分搬送することにより、複数ラインに跨って熱転写されたドットによって文字や図形が形成される。従って、熱転写方式の印刷装置において印刷周期を短くすることなく高速で印刷を行うことができるので、高電力を出力や高性能のCPUの搭載が必要ない。また、従来技術のようなドット数の間引きを行う場合と比較して、ドット間の隙間ができないので、印刷品質が大きく低下することがない。
【0016】
また、請求項2に係る印刷装置では、サーマルヘッドの温度が所定温度以上となった場合には、印刷方式を切り替え、複数ラインを同一のライン印刷データに基づいて印刷するので、ライン毎に直列に並んで熱転写された複数のドットによって文字や図形が形成される。従って、サーマルヘッドの温度変化によってドット形状が大きく変化することなく、安定した印刷品質を提供することが可能となる。
【0017】
また、請求項3に係る印刷装置では、サーマルヘッドの温度に基づいて最適な印刷速度と選択し、印刷を行うことが可能となる。従って、連続して印刷を行った場合や、通電される発熱素子数の多い印刷を行った後であっても、安定した印刷品質を提供することが可能となる。
【0018】
更に、請求項4に係る印刷装置では、サーマルヘッドによるインクリボンの加熱後に印刷媒体からインクリボンを離間させる際に、インクリボンの温度が十分に下がった状態でインクリボンを離間させることが可能となる。従って、インク層のインクを印刷媒体に対して確実に転写させることが可能となり、印刷品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るテープ印刷装置のカセット収納部周辺を示した上面図である。
【図3】本実施形態に係るテープ印刷装置のサーマルヘッドを拡大して示した図である。
【図4】本実施形態に係るテープ印刷装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係るテープ印刷装置の熱転写の構成を説明した説明図である。
【図6】本実施形態に係る印刷処理プログラムのフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る印刷処理プログラムのフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る高密度通常印刷による印刷処理を説明した図である。
【図9】本実施形態に係る低密度伸張印刷による印刷処理を説明した図である。
【図10】本実施形態に係る低密度直列印刷による印刷処理を説明した図である。
【図11】熱転写方式の印刷装置において行われるサーマルヘッドの発熱素子への通電波形及び発熱態様の一例を示した図である。
【図12】従来の印刷装置における高速印刷の印刷例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る印刷装置についてテープカセットから排出されるテープに対して印刷を行うテープ印刷装置1に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
先ず、本実施形態に係るテープ印刷装置1の概略構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るテープ印刷装置1の外観斜視図である。図2は、本実施形態に係るテープ印刷装置1のカセット収納部周辺を示した上面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るテープ印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット5(図2参照)から排出されるテープに対して印刷を行う印刷装置であり、筐体上面にキーボード3と液晶ディスプレイ4を有している。また、同じく筐体上面には平面視矩形状のテープカセット5を収納するカセット収納部8が収納カバー9で覆われて配設されている。また、このキーボード3の下側には、制御回路部が構成される制御基板(図示せず)が配設されている。また、カセット収納部8の左側面部には、印字されたテープが排出されるテープ排出口10が形成されている。また、テープ印刷装置1の右側面部には、接続インターフェイス(図示せず)が配設されている。この接続インターフェースは、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と有線または無線接続をする際に用いられる。従って、テープ印刷装置1は、外部機器から送信された印刷データを印刷することも可能である。
【0023】
ここで、キーボード3は、文字入力キー3A、印刷キー3B、カーソルキー3C、電源キー3D、設定キー3E、リターンキー3R等の複数種類の入力キーを備えている。文字入力キー3Aは、文書データからなるテキストを作成する際の文字入力に用いられる。印刷キー3Bは、作成されたテキスト等からなる印刷データの印刷実行を指令する際に用いられる。そして、カーソルキー3Cは、液晶ディスプレイ4上に表示されるカーソルを、上下左右に移動する際に用いられる。また、電源キー3Dは装置本体の電源をON又はOFFする際に用いられる。また、設定キー3Eはテープ印刷装置1の各種設定(印刷密度の設定など)を行う際に用いられる。また、リターンキー3Rは、改行指令や各種処理の実行、選択決定を指令する際に用いられる。
【0024】
一方、液晶ディスプレイ4は、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する表示装置であり、キーボード3によって作成される印刷データ等を表示しうる。
【0025】
そして、図2に示すように、テープ印刷装置1は、内部のカセット収納部8に対してテープカセット5を装着可能に構成されている。更に、テープ印刷装置1の内部には、テープ駆動印刷機構16及びカッター17を含むテープ切断機構が配設されている。テープ印刷装置1は、テープ駆動印刷機構16により、テープカセット5から引き出されたテープに対して、所望の印刷データに基づく印刷を施すことができる。そして、テープ印刷装置1は、テープ切断機構のカッター17により、印刷されたテープを切断することができる。切断されたテープは、テープ印刷装置1の左側側面に形成されたテープ排出口10から排出される。
【0026】
そして、テープ印刷装置1の内部には、カセット収納部フレーム18が配設されている。図2に示すように、このカセット収納部フレーム18には、テープカセット5が着脱自在に装着される。
テープカセット5は、その内部に、テープスプール32、リボン供給スプール34、巻取スプール35、基材供給スプール37、接合ローラ39を備えており、夫々回転自在に軸支されている。テープスプール32には、表層テープ31が巻回されている。表層テープ31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明なテープである。そして、リボン供給スプール34には、インクリボン33が巻回されている。このインクリボン33には、インク加熱により溶融或いは昇華するインクが塗布され、インク層を形成している。巻取スプール35は、印刷に使用されたインクリボン33を巻き取る。そして、基材供給スプール37には、二重テープ36が巻回されている。この二重テープ36は、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に対して、剥離テープを貼り合わせて構成されている。又、当該二重テープ36は、剥離テープが外側に位置するように、基材供給スプール37に巻回されている。そして、接合ローラ39は、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させる際に用いられる。
【0027】
図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、アーム20が、軸20aを中心として揺動可能に配設されている。アーム20の先端には、プラテンローラ21、搬送ローラ22が回動可能に軸支されている。プラテンローラ21、搬送ローラ22は、何れもゴム等の可撓性部材を表面に有している。
アーム20が最も時計回りに揺動すると、プラテンローラ21は、表層テープ31及びインクリボン33を、後述するサーマルヘッド41に対して圧接する。又、この時、搬送ローラ22は、表層テープ31及び二重テープ36を、接合ローラ39に対して圧接する。
【0028】
また、カセット収納部フレーム18には、プレート42が立設されている。このプレート42のプラテンローラ21側側面には、サーマルヘッド41が配設されている。サーマルヘッド41は、図3に示すように表層テープ31及び二重テープ36の幅方向と同方向に、複数(例えば、128個や256個)の発熱素子41aを1列に列設することで構成される。
テープカセット5が所定位置に装着されると、プレート42は、テープカセット5の凹部43に嵌め込まれる。
【0029】
また、図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、リボン巻取ローラ46、接合駆動用ローラ47が立設されている。テープカセット5が所定位置に装着されると、リボン巻取ローラ46は、テープカセット5の巻取スプール35内に挿入される。同様に、接合駆動用ローラ47は、テープカセット5の接合ローラ39内に挿入される。
【0030】
また、カセット収納部フレーム18には、図示しないテープ搬送モータが配設されている。テープ搬送モータによる駆動力は、カセット収納部フレーム18に沿って配設されたギア列を介して、プラテンローラ21、搬送ローラ22、リボン巻取ローラ46及び接合駆動用ローラ47等に夫々伝達される。
従って、テープ搬送モータに対する電力供給により、テープ搬送モータの出力軸の回転が開始されると、巻取スプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21、搬送ローラ22も連動して回転を開始する。これにより、テープカセット5内の表層テープ31、インクリボン33、二重テープ36は、テープスプール32、リボン供給スプール34、基材供給スプール37からそれぞれ巻き解かれ、下流方向(テープ排出口10、巻取スプール35方向)へと搬送される。
【0031】
その後、表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド41との間を通過する。従って、当該テープ印刷装置1において、表層テープ31、インクリボン33は、プラテンローラ21とサーマルヘッド41とによって挟まれた状態で搬送される。この時、サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子41aは、制御部60(図4参照)によって、印刷データ及び後述する印刷制御プログラムに基づいて選択的かつ間欠的に通電される。
【0032】
ここで、各発熱素子41aは、通電により発熱し、インクリボン33に塗布されているインクを溶融或いは昇華させるので、インクリボン33に形成されたインク層のインクは、表層テープ31にドット単位で転写される。この結果、表層テープ31には、印刷データに基づくユーザ所望のドット画像が鏡像で形成される。
【0033】
その後、インクリボン33は、サーマルヘッド41を通過すると、リボン巻取ローラ15によって巻き取られる。一方、表層テープ31は、二重テープ36と重ねられ、搬送ローラ22と接合ローラ39との間を通過する。この時、表層テープ31と二重テープ36は、搬送ローラ22、接合ローラ39により圧接され、積層テープ38となる。ここで、当該積層テープ38は、ドット印刷済みの表層テープ31の印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされる。従って、ユーザは、表層テープ31の印刷面の裏面側(即ち、積層テープ38の表面側)から印刷画像の正像を視認可能である。
【0034】
その後、積層テープ38は、搬送ローラ22の更に下流に搬送され、カッター17を含むテープ切断機構に到達する。テープ切断機構は、カッター17と、切断用モータ72(図4参照)により構成されている。そして、カッター17は、固定刃17aと、回動刃17bに備えており、固定刃17aに対して回動刃17bを回動させることで切断対象物を剪断する鋏形式のカッターである。そして、回動刃17bは、切断用モータ72によって支点を中心に往復揺動可能に配設されている。従って、切断用モータ72の駆動により、積層テープ38は、固定刃17a、回動刃17bに剪断される。
切断された積層テープ38は、テープ排出口10を介して、テープ印刷装置1の外部へ排出される。そして、当該積層テープ38は、二重テープ36の剥離紙を剥がし、接着剤層を露出させれば、任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして使用可能である。尚、サーマルヘッド41による熱転写の構成の詳細については後述する。
【0035】
次に、テープ印刷装置1の制御構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図4は、テープ印刷装置1の制御系を示すブロック図である。
テープ印刷装置1内には、制御基板(図示せず)が配設されており、この制御基板上には、制御部60、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
【0036】
そして、制御部60は、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66により構成されている。又、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、サーミスタ73、キーボード3、接続インターフェース71にも接続されている。
CPU61は、テープ印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、このCPU61は、キーボード3等からの入力信号及び後述する印刷処理プログラムを含む各種制御プログラムに基づいて、液晶ディスプレイ4等の各周辺装置を制御する。
【0037】
CG−ROM62は、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。又、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該テープ印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。
そして、ROM64には、テープ印刷装置1における各種制御プログラムやデータが格納されている。従って、後述する印刷処理プログラムは、このROM64に格納されている。
【0038】
また、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。このRAM66には、キーボード3の入力により生成された印刷データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印刷データも格納される。
そして、タイマ67は、テープ印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。具体的には、タイマ67は、後述する印刷処理プログラムにおいて、サーマルヘッド41の発熱素子41aに対する通電期間等の開始・終了を判断する際に参照される。
また、サーミスタ73はサーマルヘッド41の温度を検出する為のセンサであり、サーマルヘッド41に取り付けられている。
【0039】
ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号に基づいて、後述する印刷処理プログラムに基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を供給し、サーマルヘッド41の駆動態様を制御する回路である。この時、ヘッド駆動回路68は、発熱素子毎に対応付けられたストローブ番号に基づいて、各発熱素子41aの通電の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を供給し、切断用モータ72の駆動制御を行う回路である。又、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を供給し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う制御回路である。
【0040】
次に、本実施形態に係るサーマルヘッド41による熱転写の構成について図5に基づき説明する。図5はサーマルヘッド41による熱転写の構成を説明した説明図である。図5(A)で示すように、インクリボン33はベースフィルム81とインク層82から構成されている。また、印刷媒体である表層テープ31は、PETフィルムから形成される。また、表層テープ31のインクリボン33に対向する側の面は、インクが付着し易いように表面処理が施されている。
【0041】
また、このテープスプール32から引き出された表層テープ31は、前記したように、プラテンローラ21や搬送ローラ22等の回転駆動に伴って、サーマルヘッド41とプラテンローラ21の間にある印刷位置まで送り出される(図5(A))。表層テープ31は、印刷位置にて、インクリボン33と重ね合わされ、表層テープ31の表面処理が施された面とインクリボン33のインク層82とが接触する。
【0042】
そして、表層テープ31とインクリボン33のインク層82とが接触する際、その接触箇所は、サーマルヘッド41とプラテンローラ21とに挟まれる(図5(B))。サーマルヘッド41は、ベースフィルム81の一方の面(インク層82が形成された反対側の面)に接触する。ここで、サーマルヘッド41には、1ライン分の印刷データが転送され、転送された1ライン分の印刷データに基づいて、対応する発熱素子41aに通電される。尚、通電波形は図11に示す波形であり、通電された発熱素子41aはインク層82のインクを溶融させるのに必要なインク溶融必要温度(例えば90°)まで発熱する。その結果、インクリボン33のインク層82の内、サーマルヘッド41と接触する箇所のインクがサーマルヘッド41の加熱により溶融する。そして、溶融されたインク層82のインクが表層テープ31に接着され、その後、インクリボン33を表層テープ31から離間させることにより、接着されたインク83のみが1ライン分のドットとして表層テープ31へと転写される(図5(C))。尚、接着されなかった残りのインク層82を備えたインクリボン33は、消費されたインクリボン33として、巻取スプール35により巻き取られる。
【0043】
そして、表層テープ31及びインクリボン33を所定の搬送速度で搬送しつつ、上記熱転写の処理を1ラインずつ繰り返し実行する。その結果、複数のドットにより文字や図形が表層テープ31の面上に形成される。尚、本実施形態のテープ印刷装置1は印刷密度を180dpi又は360dpiのいずれかに設定可能である。そして、後述のように180dpiに印刷密度が設定された場合であって、且つサーマルヘッド41の温度が所定温度以下の場合には、1ライン分のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2印刷ライン分搬送することにより、360dpiの2本の印刷ラインに跨って熱転写されたドットを表層テープ31上に形成する(以下、この印刷方法を低密度伸張印刷と呼ぶ)。一方、サーマルヘッド41の温度が所定温度より高い場合には、同一のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1ライン分搬送する動作を2ライン分繰り返し実行することにより、ライン毎に直列に並んで熱転写された2つのドットを表層テープ31上に形成する(以下、この印刷方法を低密度直列印刷と呼ぶ)。尚、低密度伸張印刷及び低密度直列印刷の処理の詳細については後述する。
【0044】
その後、搬送ローラ22及び接合ローラ39が回転することにより、印刷済みの表層テープ31に二重テープ36が貼り合される。図5(D)に示すように、二重テープ36は、基材84と、基材84の表層テープ31と対向する面に形成された粘着層85と、基材84の表層テープ31と対向する反対面に形成された剥離紙層86とから構成される。そして、印刷済みの表層テープ31と二重テープ36とが、接合ローラ39及び搬送ローラ22の間で圧接されることにより、粘着層85を介して印刷済みの表層テープ31に、二重テープ36が貼り合される(図5(E))。それによって、二重テープ36と表層テープ31とが張り合わされた積層テープ38が形成される。
【0045】
次に、テープ印刷装置1における印刷処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図6及び図7は、テープ印刷装置1に係る印刷処理プログラムのフローチャートである。ここで、図6及び図7に示す印刷処理プログラムは、テープ印刷装置1の電源がON状態であり、且つ文字入力キー3Aの入力操作に基づいて印刷対象となる文字や図形が入力された状態でキーボード3の印刷キー3Bが押された際に実行される。尚、以下の図6及び図7にフローチャートで示されるプログラムは、ROM64等に記憶されており、CPU61により実行される。
【0046】
印刷処理プログラムの実行が開始されると、CPU61は、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、テープ印刷装置1において現在設定されている印刷密度を取得する。尚、本実施形態のテープ印刷装置1では、設定キー3Eを操作することによって印刷密度を360dpi(高密度)と180dpi(低密度)のいずれに設定することが可能である。また、テープ印刷装置1において現在設定されている印刷密度はEEPROM63に記憶される。
【0047】
次に、S2においてCPU61は、印刷ライン毎にサーマルヘッド41の複数の発熱素子41a毎に発熱の有無を特定するライン印刷データを生成する。具体的には、先ず、CPU61は文字入力キー3Aで入力された文字列、前記S10で選択された印刷フォーマット、CG−ROM62に格納されているドットパターンに基づいて印刷対象とする印刷データ(ドット単位のデータで構成されたイメージデータ)を生成する。その後、生成した印刷データを、サーマルヘッド41に列設された発熱素子41aで印刷される1ライン単位に分割したライン印刷データを生成し、RAM66に記憶する。尚、印刷密度が360dpi(高密度)に設定されている場合には1インチ当たり360ラインに分割したライン印刷データを生成し、印刷密度が180dpi(低密度)に設定されている場合には1インチ当たり180ラインに分割したライン印刷データを生成する。
【0048】
続いて、S3においてCPU61は、テープ印刷装置1において設定されている印刷密度が360dpi(高密度)であるか否かを判定する。そして、設定されている印刷密度が360dpi(高密度)であると判定された場合(S3:YES)には、S4へと移行する。それに対して、設定されている印刷密度が180dpi(低密度)であると判定された場合(S3:NO)には、S12へと移行する。
【0049】
S4においてCPU61は、サーミスタ73によってサーマルヘッド41の温度Tを検出する。
【0050】
その後、S5においてCPU61は、前記S4で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt1より高いか否か判定する。尚、t1は例えば42℃とする。
【0051】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt1以下であると判定された場合(S5:NO)には、S6へと移行する。
【0052】
S6においてCPU61は、印刷速度を50mm/secとした印刷密度360dpiによる高密度通常印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を50mm/secで搬送しつつ、以下の(a)〜(c)の処理を繰り返し実行する。
(a)一のライン印刷データを対象ライン印刷データとし、当該対象ライン印刷データをRAM66から読み出す。
(b)読み出した対象ライン印刷データをサーマルヘッド41に転送する。
(c)サーマルヘッド41にある発熱素子41aの内、対応する発熱素子41aに通電する。そして、発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1印刷ライン分搬送する。
尚、発熱素子41aへの印刷周期毎の通電波形は図8に示す波形である。また、印刷周期は360dpiの印刷ライン間(約0.07mm)を50mm/secで通過するのに必要な時間(約1.41ms)となる。その結果、図8に示すように一の印刷周期で360dpiの一の印刷ラインに対して一の印刷ドット91が熱転写される。
【0053】
その後、CPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。尚、印刷済みの表層テープ31に二重テープ36が貼り合されて積層テープ38が形成され、更に、所定距離搬送した後に、切断用モータ72が駆動され、積層テープ38は、固定刃17a、回動刃17bに剪断される。
【0054】
一方、前記S5においてサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt1より高いと判定された場合(S5:YES)には、S7へ移行する。そして、S7においてCPU61は、前記S4で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt2より高いか否か判定する。尚、t2はt1より高い温度であり、例えば45℃とする。
【0055】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt2以下であると判定された場合(S7:NO)、即ち、サーマルヘッド41の温度Tがt1<T≦t2である場合には、S8へと移行する。
【0056】
S8においてCPU61は、印刷速度を40mm/secとした印刷密度360dpiによる高密度通常印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を40mm/secで搬送しつつ、上述した(a)〜(c)の処理を繰り返し実行する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図8に示す波形である。また、印刷周期は360dpiの印刷ライン間(約0.07mm)を40mm/secで通過するのに必要な時間(約1.76ms)となる。その結果、図8に示すように一の印刷周期で360dpiの一の印刷ラインに対して一の印刷ドット91が熱転写される。
【0057】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。
【0058】
一方、前記S7においてサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt2より高いと判定された場合(S7:YES)には、S9へ移行する。そして、S9においてCPU61は、前記S4で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt3より高いか否か判定する。尚、t3はt2より高い温度であり、例えば50℃とする。
【0059】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt3以下であると判定された場合(S9:NO)、即ち、サーマルヘッド41の温度Tがt2<T≦t3である場合には、S10へと移行する。
【0060】
S10においてCPU61は、印刷速度を30mm/secとした印刷密度360dpiによる高密度通常印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を30mm/secで搬送しつつ、上述した(a)〜(c)の処理を繰り返し実行する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図8に示す波形である。また、印刷周期は360dpiの印刷ライン間(約0.07mm)を30mm/secで通過するのに必要な時間(約2.35ms)となる。その結果、図8に示すように一の印刷周期で360dpiの一の印刷ラインに対して一の印刷ドット91が熱転写される。
【0061】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。
【0062】
一方、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt3より高いと判定された場合(S9:YES)には、S11へと移行する。
【0063】
S11においてCPU61は、印刷速度を20mm/secとした印刷密度360dpiによる高密度通常印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を20mm/secで搬送しつつ、上述した(a)〜(c)の処理を繰り返し実行する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図8に示す波形である。また、印刷周期は360dpiの印刷ライン間(約0.07mm)を20mm/secで通過するのに必要な時間(約3.52ms)となる。その結果、図8に示すように一の印刷周期で360dpiの一の印刷ラインに対して一の印刷ドット91が熱転写される。
【0064】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。
【0065】
また、前記S3においてテープ印刷装置1において設定されている印刷密度が180dpi(低密度)であると判定された場合(S3:NO)に実行されるS12においてCPU61は、サーミスタ73によってサーマルヘッド41の温度Tを検出する。
【0066】
その後、S13においてCPU61は、前記S12で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt4より高いか否か判定する。尚、t4は例えば45℃とする。
【0067】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt4以下であると判定された場合(S13:NO)には、S14へと移行する。
【0068】
S14においてCPU61は、印刷速度を80mm/secとした印刷密度180dpiによる低密度伸張印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を80mm/secで搬送しつつ、以下の(d)〜(f)の処理を繰り返し実行する。
(d)一のライン印刷データを対象ライン印刷データとし、当該対象ライン印刷データをRAM66から読み出す。
(e)読み出した対象ライン印刷データをサーマルヘッド41に転送する。
(f)サーマルヘッド41にある発熱素子41aの内、対応する発熱素子41aに通電する。そして、発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの印刷ラインの2ライン分搬送する。
尚、発熱素子41aへの印刷周期毎の通電波形は図9に示す波形である。また、印刷周期は180dpiの印刷ライン間(約0.14mm)を80mm/secで通過するのに必要な時間(約1.76ms)となる。その結果、図9に示すように一の印刷周期で360dpiの2本の印刷ラインに跨る略楕円形状の一の印刷ドット92が熱転写される。尚、印刷周期は同一速度で前記した高密度通常印刷(S6、S8、S10、S11)を行う場合と比較して2倍の長さとなる。
【0069】
その後、CPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。尚、印刷済みの表層テープ31に二重テープ36が貼り合されて積層テープ38が形成され、更に、所定距離搬送した後に、切断用モータ72が駆動され、積層テープ38は、固定刃17a、回動刃17bに剪断される。
【0070】
一方、前記S13においてサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt4より高いと判定された場合(S13:YES)には、S15へ移行する。そして、S15においてCPU61は、前記S12で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt5より高いか否か判定する。尚、t5はt4より高い温度であり、例えば50℃とする。
【0071】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt5以下であると判定された場合(S15:NO)、即ち、サーマルヘッド41の温度Tがt4<T≦t5である場合には、S16へと移行する。
【0072】
S16においてCPU61は、印刷速度を60mm/secとした印刷密度180dpiによる高密度通常印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を60mm/secで搬送しつつ、上述した(d)〜(f)の処理を繰り返し実行する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図9に示す波形である。また、印刷周期は180dpiの印刷ライン間(約0.14mm)を60mm/secで通過するのに必要な時間(約2.35ms)となる。その結果、図9に示すように一の印刷周期で360dpiの2本の印刷ラインに跨る略楕円形状の一の印刷ドット92が熱転写される。
【0073】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。
【0074】
一方、前記S15においてサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt5より高いと判定された場合(S15:YES)には、S17へ移行する。そして、S17においてCPU61は、前記S12で検出したサーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt6より高いか否か判定する。尚、t6はt5より高い温度であり、例えば60℃とする。
【0075】
そして、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt6以下であると判定された場合(S17:NO)、即ち、サーマルヘッド41の温度Tがt5<T≦t6である場合には、S18へと移行する。
【0076】
S18においてCPU61は、印刷速度を40mm/secとした印刷密度180dpiによる低密度直列印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を40mm/secで搬送しつつ、以下の(g)〜(l)の処理を繰り返し実行する。
(g)一のライン印刷データを対象ライン印刷データとし、当該対象ライン印刷データをRAM66から読み出す。
(h)読み出した対象ライン印刷データをサーマルヘッド41に転送する。
(i)サーマルヘッド41にある発熱素子41aの内、対応する発熱素子41aに通電する。そして、発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1印刷ライン分搬送する。
(j)続いて、(g)と同一のライン印刷データを対象ライン印刷データとし、当該対象ライン印刷データをRAM66から読み出す。
(k)読み出した対象ライン印刷データをサーマルヘッド41に転送する。
(l)サーマルヘッド41にある発熱素子41aの内、対応する発熱素子41aに通電する。そして、発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を更に360dpiの1印刷ライン分搬送する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図10に示す波形である。また、印刷周期は180dpiの印刷ライン間(約0.14mm)を40mm/secで通過するのに必要な時間(約3.52ms)となる。その結果、図10に示すように一の印刷周期で360dpiの2本の印刷ラインに対してそれぞれ一の印刷ドット93、94が直列に並んで熱転写される。熱転写されたドット93、94を組み合わせた形状は、低密度伸張印刷において熱転写される略楕円形状のドット92(図9)の形状と類似する。
【0077】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。尚、(g)〜(l)の処理の内、(j)、(k)の処理については省略しても良い。
ここで、上記のように、サーマルヘッドの温度がt5より高い場合に低密度直列印刷を行うのは以下の理由による。
即ち、サーマルヘッド41の温度が高温となると、熱転写後の表層テープ31からインクリボン33を離間させるまでにインクリボン33の温度を十分に下降させることができないので、表層テープ31に対して接着されたインク(図5(C)のインク83)の切り離しが適切に行うことができない問題がある。そこで、サーマルヘッド41の温度が高温であればある程、印刷速度(テープの搬送速度)を下げることにより、インクリボン33の温度が十分に下がった状態でインクリボン33を表層テープ31から離間させることが可能となる。但し、印刷速度を下げた状態で上述の低密度伸張印刷を行うと発熱素子41aの温度をインク溶融必要温度(図11)以上に上昇させた状態を長時間保つ必要があるので、同じく印刷品質が悪化する原因となる。そこで、サーマルヘッド41の温度がt5より高い場合には低密度直列印刷を行うことによって、低密度伸張印刷と比べて印刷されるドット形状を大きく変化させずに印刷を行うことが可能となる。
【0078】
一方、サーミスタのサーマルヘッド41の温度Tがt6より高いと判定された場合(S17:YES)には、S19へと移行する。
【0079】
S19においてCPU61は、印刷速度を20mm/secとした印刷密度180dpiによる低密度直列印刷を行う。具体的には、テープ搬送モータ2を駆動して表層テープ31及びインクリボン33を20mm/secで搬送しつつ、上述した(g)〜(l)の処理を繰り返し実行する。
尚、発熱素子41aへの通電波形は図10に示す波形である。また、印刷周期は180dpiの印刷ライン間(約0.14mm)を20mm/secで通過するのに必要な時間(約7.05ms)となる。その結果、図10に示すように一の印刷周期で360dpiの2本の印刷ラインに対してそれぞれ一の印刷ドット93、94が直列に並んで熱転写される。熱転写されたドット93、94を組み合わせた形状は、低密度伸張印刷において熱転写される略楕円形状のドット92(図9)の形状と類似する。
【0080】
その後、同様にCPU61は、印刷データを構成する全てのライン印刷データの印刷を終了した後に、当該印刷処理プログラムを終了する。その結果、印刷データに基づく印刷が、表層テープ31に施される。
【0081】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るテープ印刷装置1では、設定された印刷密度が180dpiであって、サーマルヘッド41の温度がt5以下である場合(S13:NO、S15:NO)には、1ライン分のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2印刷ライン分搬送することにより、360dpiの2本の印刷ラインに跨って熱転写されたドット92を表層テープ31上に形成する低密度伸張印刷を行い(S14、S16)、その結果、複数ラインに跨って熱転写されたドットによって文字や図形が形成されるので、熱転写方式の印刷装置において印刷周期を短くすることなく高速で印刷を行うことができる。従って、テープ印刷装置1において高電力を出力や高性能のCPUの搭載が必要ない。また、従来技術のようなドット数の間引きを行う場合と比較して、ドット間の隙間ができないので、印刷品質が大きく低下することがない。
更に、サーマルヘッドの温度がt5より高い場合(S17:YES、S17:NO)には、同一のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1ライン分搬送する動作を2ライン分繰り返し実行することにより、ライン毎に直列に並んで熱転写された2つのドットを表層テープ31上に形成する低密度直列印刷を行い(S18、S19)、その結果、ライン毎に直列に並んで熱転写された複数のドットによって文字や図形が形成されるので、サーマルヘッド41の温度変化によってドット形状が大きく変化することなく、安定した印刷品質を提供することが可能となる。
また、サーマルヘッド41の温度が高くなるほど、表層テープ31及びインクリボン33の搬送速度を低速にするので、サーマルヘッド41によるインクリボン33の加熱後に印刷媒体からインクリボン33を離間させる際に、インクリボン33の温度が十分に下がった状態でインクリボン33を表層テープ31から離間させることが可能となる。従って、連続して印刷を行った場合や、通電される発熱素子数の多い印刷を行った後であっても、インク層82のインクを印刷媒体に対して確実に転写させることが可能となり、印刷品質が向上する。
【0082】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、低密度伸張印刷(S14、S16)において、1ライン分のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2ライン分搬送することにより、360dpiの2本の印刷ラインに跨って熱転写されたドット92を表層テープ31上に形成するが、搬送する量は3ライン以上であっても良い。その場合には、3本以上の印刷ラインに跨って熱転写されたドットが表層テープ31上に形成される。
【0083】
また、本実施形態では、低密度直列印刷(S18、S19)において、同一のライン印刷データに基づいて対応する発熱素子41aが発熱された状態で表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1ライン分搬送する動作を2ライン分繰り返し実行することにより、ライン毎に直列に並んで熱転写された2つのドット93、94を表層テープ31上に形成するが、繰り返し実行するライン数は3ライン以上であっても良い。その場合には、3本以上の印刷ラインに直列に並んで熱転写されたドットが表層テープ31上に形成される。
【0084】
また、本実施形態では、表層テープ31に対して印刷を行っているが、二重テープ36に対して印刷を行い、印刷された二重テープ36の印刷面に対して表層テープ31を張り合わせる構成としても良い。更に、表層テープ31を用いずに、印刷された二重テープ36のみから積層テープ38を構成しても良い。
【0085】
また、本実施形態では、本願発明をテープに印字を行うテープ印刷装置に適用した例を説明したが、本願発明は熱転写方式の印刷装置であれば、他の印刷装置に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 テープ印刷装置
33 インクリボン
41 サーマルヘッド
41a 発熱素子
61 CPU
73 サーミスタ
82 インク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク層が形成されたインクリボンと、
印刷媒体を前記インクリボンとともに所定速度で搬送する搬送手段と、
前記インクリボンと接触する複数の発熱素子をライン上に列設して構成され、当該発熱素子への通電に基づいて前記発熱素子を発熱させ、発熱された発熱素子に対応する位置の前記インクリボンのインク層を前記印刷媒体へと転写させるサーマルヘッドと、を有する印刷装置において、
印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
前記印刷データ生成手段によって生成された印刷データを前記複数の発熱素子毎に発熱の有無を特定する複数ライン分のライン印刷データへと分割する印刷データ分割手段と、
1ライン分の前記ライン印刷データを前記サーマルヘッドに転送する転送手段と、
前記転送手段により転送されたライン印刷データに基づいて対応する前記発熱素子が発熱された状態で、前記搬送手段により前記印刷媒体及び前記インクリボンを複数ライン分搬送するライン印刷制御手段と、を有し、
前記印刷データ分割手段により分割された全てのライン印刷データについて、前記転送手段及び前記ライン印刷手段による処理を順次繰り返し実行することにより前記印刷データに基づく印刷を前記印刷媒体に行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドの温度を検出する温度検出手段を有し、
前記ライン印刷制御手段は、
前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度が所定温度以上である場合に、前記転送手段により転送されたライン印刷データに基づいて対応する前記発熱素子が発熱された状態で前記搬送手段により前記印刷媒体及び前記インクリボンを1ライン分搬送する動作を、同一のライン印刷データに基づいて前記複数ライン分繰り返し実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度に基づいて前記搬送手段による前記印刷媒体及び前記インクリボンの搬送速度を変更する搬送速度制御手段と、を有することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送速度制御手段は、前記温度検出手段によって検出された前記サーマルヘッドの温度が高くなるほど、前記搬送手段による前記印刷媒体及び前記インクリボンの搬送速度を低速にすることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−274517(P2010−274517A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129060(P2009−129060)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】