説明

印刷装置

【課題】記憶されているデータの改ざんを防止できるとともに設置姿勢の自由度の高い印刷装置を提供する。
【解決手段】少なくとも、用紙に会計情報を含む情報を印刷する印刷部70を収容する第1筐体200を有する印刷装置本体部180と、少なくとも、前記情報の少なくとも一部を不揮発的に記憶するメモリー回路80および前記印刷装置本体部180を制御する制御回路78を収容する第2筐体31を有するコントロール部300とを備え、前記印刷装置本体部180と前記コントロール部300とは、着脱可能に接続され、前記コントロール部300は、設置面M,Nに固定される固定部45を有していることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会計処理に伴うデータを記憶するデータ記憶部を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
販売、物流、商流の業界においては、会計情報を処理する各種システム(POSシステム等)が用いられている。このようなシステムにおいて、会計情報を記録して発行するために印刷装置としてのプリンターが用いられる。この種のプリンターとして、フィスカルプリンターと呼ばれるものがある。フィスカルプリンターは、会計情報を記録して発行するプリンター本体部と記録した会計情報を記憶するデータ記憶部とを備えている。
【0003】
このデータ記憶部に記憶されるデータは、例えば、徴税を確実なものとするために用いられる。そのため、データ記憶部は、会計情報に基づくデータが改ざんできないような構造であることが望まれる。データの改ざんを目的とした外部からの機械的アクセスを防止するために、データを記憶するメモリー(ROM)等の電子部品を実装した基板を、接続端子部分のみを露出させ、その他の部分を密閉状態で筐体に収納している。
【0004】
近年、法律(フィスカル法:例えば、ブラジルのConventions法)より、データ記憶部とプリンターの駆動回路や制御回路とを1つの筐体に収容することが求められている。このデータ記憶部とプリンターの駆動回路等とから構成されるコントロール部は、プリンター本体部に1つの接続端子により接続されている(例えば、特許文献1参照)。また、POSシステムに用いられるプリンターとして、設置場所や使用状況に応じて設置する態様を横置き(横配置)または縦置き(縦配置)に選択可能なものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2007/102121A2号パンフレット
【特許文献2】特開2001−171866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のデータ記憶部を内包しているコントロール部は、会計情報等のデータの改ざんを防止するため、構造や取り扱いが厳しく規制されている。しかし、許可されずにコントロール部を印刷装置本体部から取り外し、異なる場所に移動させデータの改ざんを行うことが想定される。また、クリーニング等のメンテナンス、ヘッド交換等の部品交換や寿命による印刷装置本体部の交換等を装い、異なる場所に移動させる場合も想定される。
【0007】
また、上述の印刷装置を縦配置、例えば壁掛け状態で使用する場合は、別途壁掛け用の部品が必要となり、コストアップの要因ともなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)少なくとも、用紙に会計情報を含む情報を印刷する印刷部を収容する第1筐体を有する印刷装置本体部と、少なくとも、前記情報の少なくとも一部を不揮発的に記憶するメモリー回路および前記印刷装置本体部を制御する制御回路を収容する第2筐体を有するコントロール部と、を備え、前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、着脱可能に接続され、前記コントロール部は、設置面に固定される固定部を有していることを特徴とする印刷装置。
【0010】
この構成によれば、印刷装置は、コントロール部が設置面に固定され、固定されたコントロール部に対して、印刷装置本体部が着脱可能に接続される。そのため、クリーニング等のメンテナンスや故障による部品もしくは印刷装置本体部の交換に際して、コントロール部を移動させず印刷装置本体部のみを取り外して必要な作業を行うことができる。また、壁掛け状態で使用したい場合は、コントロール部を壁面に固定し、印刷装置本体部を壁面に固定されたコントロール部に接続する。その結果、専用部品を使用しなくても印刷装置の設置姿勢の自由度を増すことができる。
【0011】
(適用例2)前記コントロール部は、前記固定部を介して第1固着部品により前記設置面に固定されることを特徴とする上記の印刷装置。
【0012】
この構成によれば、コントロール部を設置面に確実に固定することができる。なお、第1固着部品としては、締結部品であるネジやロック機構等の容易に外れないものを意図している。
【0013】
(適用例3)前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、前記第1筐体と前記第2筐体との一部が積層状態で配置され、前記コントロール部は、前記印刷装置本体部を制御する信号および前記情報を伝達する接続端子が前記印刷装置本体部側の前記第2筐体の面に設けられ、前記印刷装置本体部は、前記接続端子と接続される受け端子が前記コントロール部側の前記第1筐体の面に設けられていることを特徴とする上記の印刷装置。
【0014】
この構成によれば、横配置、縦配置の場合を問わず、印刷装置本体部とコントロール部とを容易に接続することができる。
【0015】
(適用例4)前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、前記接続端子および前記受け端子以外に第2固着部品により固定されることを特徴とする上記の印刷装置。
【0016】
この構成によれば、印刷装置本体部とコントロール部とは、確実に接続される。
【0017】
(適用例5)前記印刷装置本体部と前記コントロール部とが、前記第2固着部品により固定されると、少なくとも前記固定部の一部は、前記印刷装置本体部により覆われることを特徴とする上記の印刷装置。
【0018】
この構成によれば、固定部が印刷装置本体部により覆われて隠れるので、外部からアクセスすることができない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図。
【図2】カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図3】カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図4】サーマルプリンターの概略側断面図。
【図5】サーマルヘッドの外観斜視図。
【図6】サーマルプリンターの構成を示すブロック図。
【図7】コントロール部の外観を示す図。
【図8】第2実施例のサーマルプリンターの形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0021】
(印刷装置の全体構成について)
本実施形態の印刷装置として、横配置状態のサーマルプリンターを例にとり図1〜4を参照して説明する。図1は、サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図である。図2および図3は、プリンター機構部の外観を示す斜視図であり、詳しくは、図2は、カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図であり、図3は、カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図である。図4は、サーマルプリンターの側断面図である。
【0022】
このサーマルプリンターは、フィスカルプリンターとして用いられ、レシート等に会計情報を印刷して発行することや、この会計情報をデータとして記憶することに適用される。サーマルプリンターは、記録用紙としてロール状の感熱紙を使用して、この感熱紙に会計情報を印刷して発行する。また、会計情報の中の、例えば税金に関する情報をフィスカルデータとしてフィスカルメモリーに記憶する。なお、このサーマルプリンターは、図1に示す横配置を基本姿勢とし、設置状況や使用目的に応じて縦配置に選択可能なものである。例えば、スペース効率向上その他を目的に、縦置き、壁掛け等の縦配置で使用することも可能である。なお、図1〜図4に示すX方向は、横配置における印刷される感熱紙の幅方向を示し、Z方向は、印刷ヘッドとしてのサーマルヘッド部での感熱紙の紙送り方向を示し、Y方向は、X方向およびZ方向と直交する方向を示す。
【0023】
図4に示すように、サーマルプリンター100は、印刷装置本体部としてのプリンター本体部180とコントロール部300とから構成される。プリンター本体部180は、プリンター機構部150と、第1筐体としての外装ケース200とから構成される。後述するコントロール部300は、プリンター本体部180に装着可能に接続される。
【0024】
図2〜4に示すプリンター機構部150は、図1に示す外装ケース200に収容される。詳しくは、プリンター機構部150は、樹脂等からなる下ケース205の上部に固定され、側面部および後方部は、上ケース210に覆われており、そのY方向の前方部分は、パネル215により覆われている。プリンター機構部150の上面は上部カバー220に覆われている。後述するコントロール部300は、外装ケース200のZ方向下部に配置される。詳しくは下ケース205にネジ47によって固定されてもよい。なお、この固定方法については後述する。
【0025】
図1に示すように、上ケース210の上面のX方向の一方の側には、オープンボタン230が設けられている。オープンボタン230は、図1中矢印B方向に押し下げられることによって、図3に示すプリンター機構部150に設けられたカバーオープンレバー235を、支点240を中心に回転させることができる。カバーオープンレバー235は、図2に示すカバーフレーム12のロック機構と係合しており、時計方向に回転されることにより、ロック機構が解除される。さらに、カバーフレーム12は、上部カバー220と結合されている。そのため、上部カバー220が矢印C方向に開き、ロール紙ホルダー16が露出する。すなわち、この状態が、図2に示すプリンター機構部150のカバーフレーム12が開いた状態である。このようにすることにより、ロール状の感熱紙Sのセットもしくは取り出しができる。
【0026】
なお、本実施形態で使用する感熱紙Sは、発色剤がバインダー等により保持されている発色層からなる印刷面を有し、この印刷面を外面に順次積層され構成されているロール状の感熱紙Sである。以降、このロール状の感熱紙をロール紙Rと呼ぶ。
【0027】
(プリンター機構部の全体構成について)
ここで、プリンター機構部の詳細を図2〜5を参照して説明する。図5はサーマルヘッドの外観斜視図である。なお、図5に示すX方向およびZ方向は、図1〜4に示すX方向およびZ方向と同一方向である。図2〜4に示すように、プリンター機構部150は、本体フレーム60と、カバーフレーム12と、ロール紙ホルダー16と、カッター部20と、印刷部70と、を備えている。
【0028】
図2に示すように、本体フレーム60は、板金等からなり、Z方向上方およびY方向前方に開口を有する略箱型に形成されている。カバーフレーム12は、本体フレーム60の上部後方に設けられている。カバーフレーム12は、本体フレーム60の後部両側の上端部に設けられた支軸68を中心として開閉自在に取り付けられている。カバーフレーム12には、カバーフレーム12を閉じた際にロール紙Rとの接触を避けるための円弧状の覆い15が設けられている。また、サーマルプリンター100の設置角度を変える場合、すなわち、例えば縦置きにする場合、この覆い15は、ロール紙Rを受ける保持部材としても機能する。
【0029】
図2に示すように、ロール紙ホルダー16は、本体フレーム60の箱状に形成された内部の後方に、上記カバーフレーム12に覆われて設けられている。ロール紙ホルダー16は、樹脂等により形成され、中央部にロール紙Rの最大径に相当する略円弧状のくぼみを有し、本体フレーム60の底部に、円弧状のくぼみの側面開口が本体フレーム60の両側面側に向くように取り付けられている。本体フレーム60の内側の両側面部分は、ロール紙Rの側面ガイド部として機能する。そのため、ロール紙Rは、側面を本体フレーム60の内側の両側面部分に幅方向の動きを規制され、ロール紙ホルダー16の略円弧状のくぼみに回転自在に保持される。また、ロール紙ホルダー16には、ロール紙Rの残量を検出する図示しないロール紙ニアエンドセンサーが設けられている。
【0030】
(カッター部について)
図4に示すように、カッター部20は、本体フレーム60の前方すなわちカバーフレーム12の支軸68とは相対する位置であって紙出口Gの近傍に設けられている。カッター部20は、可動刃21とその駆動手段22と固定刃27とを備えている。可動刃21とその駆動手段22とは、第1カッターカバー24内に収容され本体フレーム60側に配置されている。可動刃21は、駆動手段22により図中矢印E方向に往復移動する。固定刃27は、第2カッターカバー29内に収容されカバーフレーム12側、すなわち、感熱紙Sが通過する搬送経路を挟んで対向する側に配置されている。そのため、カバーフレーム12を閉じた状態では、駆動手段22により往復移動される可動刃21の刃部と固定刃27の刃部とが当接状態で摺動する。このことによって、感熱紙Sは紙出口G近傍で切断される。
【0031】
(印刷部について)
図4に示すように、印刷部70は、ロール紙ホルダー16を始点として、カッター部20の紙出口Gを終点とする感熱紙Sの搬送経路D上の出口近傍に設けられている。印刷部70は、サーマルヘッド10とヘッド保持機構77とプラテン71とを有している。なお、サーマルヘッド10とヘッド保持機構77とは本体フレーム60側に、プラテン71はカバーフレーム12側に分離可能な状態で配設されている。
【0032】
図5に示すように、サーマルヘッド10は、放熱板106とヘッド支持軸102と基板としてのヘッド基板110とドライバーIC120とFPC108とを有している。ヘッド基板110は、長矩形形状を呈しており、複数の発熱素子145からなる発熱素子列145aが長手方向に沿って図中Z方向上方に形成されている。また、発熱素子列145aと平行して、発熱素子145を駆動する複数のドライバーIC120が配設されている。放熱板106は、アルミニウム等の引き抜き材で形成され、ヘッド基板110が放熱板106の係止面106aに両面粘着テープ等で貼り付けられている。
【0033】
放熱板106のヘッド基板110のZ方向上方には、案内斜面部104が放熱板106の長手方向にわたって形成されている。この案内斜面部104は、図4に示すカバーフレーム12を閉じる際に、プラテン71を滑動させて所定の位置まで案内する。この際、案内斜面部104の傾斜は、プラテン71がヘッド基板110と衝突しないような所定の角度を有している。また、案内斜面部104の斜面は、この案内斜面部104に近接して付設されたヘッド基板110と略同じ高さになるように設定されている。ヘッド支持軸102は円柱状の丸ピンであり、放熱板106の左右の側面部に設けられた穴部に圧入されている。
【0034】
FPC108は、一端をヘッド基板110に設けられた図示しない接続端子に接続され、他端は図4に示すコネクター91に接続されている。なお、このコネクター91は、コントロール部300と内部接続端子43を介して接続する機能を有し、プリンター本体部180の配線等が集約されている。
【0035】
図4に示すヘッド保持機構77は、本体フレーム60に形成された溝部としての切り欠き部62とヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられるバネ75とから構成されている。切り欠き部62は、本体フレーム60の上方に開口を有するとともに複数の溝部が形成されている。サーマルヘッド10は、ヘッド支持軸102が本体フレーム60の切り欠き部62の一部に挿入されることによって、本体フレーム60に取り付けられる。ヘッド押圧板72は、上下に曲げ部が形成され、圧縮コイルバネであるバネ75が固定されている。このヘッド押圧板72は、切り欠き部62に挿入され、曲げ部がそれぞれ切り欠き部62の一部に係合することによって本体フレーム60に取り付けられる。
【0036】
このようにすることによって、サーマルヘッド10とヘッド押圧板72とは、切り欠き部62の両側に、互いに略平行状態で支持される。ヘッド押圧板72に固定されるバネ75は、サーマルヘッド10の背面に当接する。このバネ75によりサーマルヘッド10はプラテン71方向に付勢される。このヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72に固定されたバネ75をサーマルヘッド10の背面からずらすことによって、切り欠き部62から取り外すことができる。サーマルヘッド10もバネ75からの付勢力がなくなることによって、切り欠き部62から取り外すことができる。このようにして、サーマルヘッド10は本体フレーム60に対して、着脱可能に支持される。
【0037】
図2および図4に示すように、プラテン71は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラー状に形成され、プラテン軸受73を介してカバーフレーム12に回転可能に支持されている。プラテン71の一方の軸には、プラテン歯車74が圧入されている。本体フレーム60には、溝部64が設けられており、カバーフレーム12を閉じると、プラテン71が、サーマルヘッド10の案内斜面部104(図5参照)に案内された後、プラテン軸受73が溝部64と当接する。さらに、サーマルヘッド10によるプラテン71への加圧力で、カバーフレーム12には下向きの力が作用し、プラテン71の位置が定められる。
【0038】
以上の構成により、図4に示すように、プラテン71は、感熱紙Sの内面S2の側から感熱紙Sをサーマルヘッド10の方向に押圧し、プラテン71と対向するサーマルヘッド10は、感熱紙Sの外面S1の側から感熱紙Sをプラテン71の方向に押圧して、感熱紙Sを挟持する。なお、このとき感熱紙Sの外面S1の表面に、前述の発色層が形成されている。また、図2に示すように、本体フレーム60の側面には、プラテン71を回転駆動させるための紙送りモーター66と紙送り伝達歯車67とが設けられている。上述のように、プラテン71が本体フレーム60の溝部64に位置決めされることによって、プラテン歯車74と紙送り伝達歯車67とが噛み合い、紙送りモーター66からの動力がプラテン71へ伝達される。
【0039】
上述の構成を有するサーマルプリンター100は、上部カバー220と連結するカバーフレーム12を開き感熱紙Sからなるロール紙Rをセットして、感熱紙Sを紙出口Gまで引き出し、上部カバー220と連結するカバーフレーム12を閉じることによって、感熱紙Sはプラテン71とサーマルヘッド10との間、および可動刃21と固定刃27との間にセットされる。そして、紙送りモーター66を起動しプラテン71を回転させて感熱紙Sを送りながら、サーマルヘッド10の直線状に配置された発熱素子145を選択的に通電して発熱させることによって、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。また、カッター部20を駆動して固定刃27に対して可動刃21を往復移動させることにより、情報が印刷された感熱紙Sを所定の長さに切断してレシート等の単票として発行することができる。
【0040】
(コントロール部について)
ここで、コントロール部について、図6および図7を参照して説明する。図6は、サーマルプリンターの構成を示すブロック図である。図7は、コントロール部の外観を示す図であり、詳しくは外部接続端子側から上面を見た斜視図である。なお、図7に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1〜4に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一方向である。
【0041】
本実施形態におけるコントロール部300は、上述のサーマルプリンター100の駆動回路や会計情報をデータとして記憶するフィスカルメモリー等の電子部品が実装された基板を有している。サーマルプリンター100(フィスカルプリンターともいう)は、販売等の商取引に際し顧客に渡すレシートや、業者用にレシートの内訳、売り上げの合計金額および商品品目ごとの合計金額等の会計情報を記録したジャーナルを個別に印刷して発行する。なお、サーマルプリンター100は、駆動回路によって駆動制御される。
【0042】
フィスカルメモリーは、これらの会計情報のうち税金に関する情報(以降、フィスカルデータという)を記憶する。このフィスカルデータは、例えば、徴税を確実なものとするために用いられ、必要に応じ政府の調査官がフィスカルデータを読み出し調査する。フィスカルメモリーに記憶されるフィスカルデータは改ざんできないようにする必要がある。そのため、コントロール部300の仕様や取り扱いに関しては、法律(フィスカル法)で厳しく規制されている。このフィスカル法の内容やフィスカルデータの定義はそれぞれの国によって異なっている。
【0043】
まず、コントロール部300の構成について、コントロール部およびプリンター本体部の構成を示すブロック図である図6を参照して説明する。図6に示すように、コントロール部300は、プリンター制御部78とメモリー回路を含むフィスカルデータ処理部80と外部接続端子42と接続端子としての内部接続端子43とから構成されている。プリンター制御部78とフィスカルデータ処理部80と外部接続端子42と内部接続端子43とはメイン基板32に実装される。プリンター制御部78は、プリンター制御用CPU(Central Processing Unit)79と、図示しない情報処理部と、サーマルヘッドや各種モーターを駆動する図示しないドライバー等を備えている。プリンター制御用CPU79は、図示しない操作系や検出系からの入力信号処理、印刷処理等の各種処理を実行し、プリンター本体部180(サーマルプリンター100)を統括制御する。
【0044】
フィスカルデータ処理部80は、フィスカルメモリー81と、EJ(Electronic Journal)メモリー82と、フィスカル制御部83と、プロテクト回路84と、RTC(Real Time Clock)87と、SRAM(Static Random Access Memory)88と、バッテリー89とを備える。フィスカルメモリー81は、ワンタイムROM(Read Only Memory)と呼ばれる1つのアドレスに1度しか書き込みできないタイプの不揮発性のメモリーを使用し、売り上げの集計値等の税金に関するフィスカルデータを記憶する。EJメモリー82は、電子ジャーナルメモリーであり、NAND型フラッシュメモリー等の不揮発性記憶素子が適用され個々の売り上げデータ等を記憶する。
【0045】
フィスカル制御部83は、フィスカル制御用CPU85とプログラマブルROM86とを備える。フィスカル制御用CPU85は、フィスカルデータ処理部80を統括制御し、会計情報等のデータを処理する。プログラマブルROM86は、プログラム可能な論理回路を書き込んだデバイスであり、フィスカルメモリー81への書き込みや読み出しその他を制御する。プロテクト回路84は、フィスカルメモリー81やEJメモリー82に記憶されるデータへの不正アクセスや改ざんの防止の機能を持っている。
【0046】
RTC87は、リアルタイムクロックであり、年月日時間をカウントするICである。SRAM88は、ワーキングメモリーとして機能してフィスカルデータ等の各種データを一時的に格納したり、フィスカル制御用CPU85によって実行されるデータ処理等のプログラムを一時的に展開したりする。また、SRAM88は、バッテリーバックアップ機能を有しており、バッテリー89を電源としている。また、バッテリー89は、RTC87にも電気を供給し、メイン電源が遮断された状態でも時間をカウントしている。
【0047】
外部接続端子42は、複数のポートを有しており、ホストコンピューター90と、プリンター制御部78およびフィスカルデータ処理部80とを接続し、ホストコンピューター90とコマンドやデータの送受信を行う。また、外部接続端子42は、フィスカルポートを有しており、政府の調査官がフィスカルメモリー81のフィスカルデータを読み出すときのみに使われる。
【0048】
内部接続端子43は、1つのコネクターで構成され、プリンター本体部180に設けられたコネクター91と、プリンター制御部78およびフィスカルデータ処理部80とを接続し、印刷データや各種機構への駆動信号を送信する。なお、内部接続端子43には図示しない電子スイッチが内包されている。電子スイッチは、コントロール部300がプリンター本体部180から取り外されたことを電気的に検知して、信号をRTC87に送る。RTC87は、信号を受信した時間を求め、その結果をフィスカルメモリー81もしくはEJメモリー82のいずれかのメモリーに送り記憶させる。
【0049】
プリンター本体部180のコネクター91には、カッター部20の駆動源であるモーターの配線、印刷部70のサーマルヘッド10のFPC108や上述の各種センサー等の信号線が集約され接続されている。各種センサーの信号は、コネクター91および内部接続端子43を介して、コントロール部300のプリンター制御用CPU79に送られる。プリンター制御用CPU79では、プリンター本体部180に送られた印刷データが確実に印刷されたか否かを判定して、印刷されていない場合は再印刷の指示をだす。この結果は、フィスカルデータ処理部80に送られ、フィスカルメモリー81もしくはEJメモリー82のいずれかのメモリーに記憶される。
【0050】
図7に示すように、コントロール部300は、略長方形の箱状の第2筐体としての本体ケース31を備え、上述のメイン基板32が本体ケース31にほぼ密閉状態で収容される。そして、本体ケース31の1つの側面31aには、上述の外部接続端子42が設けられている。また、本体ケース31の上面31bには、上述の内部接続端子43が上面31bから突出するように設けられている。
【0051】
また、本体ケース31の上記上面31bと対向する下面31cの4隅には、図中X方向に沿って外側に延びるように四角の板状の固定部45がそれぞれ設けられている。それぞれの固定部45には、板状の面の略中央を貫通するように穴部45aが形成されている。また、固定部45が図中Z方向下部に形成されている2つの側面31dと側面31eには、Z方向の略中央位置にY方向に所定の間隔を隔ててネジ山が形成されたネジ穴46が2つ設けられている。
【0052】
なお、コントロール部300は、本体ケース31が容易に分解できない構造であること、また、許可なく分解したときはその履歴が残ることが、法律(フィスカル法)によって要求されている。本実施形態では特に限定しないが、本体ケース31は、例えば、特殊工具、不可逆構造のフックやシール材や接着材で組み立てることが好ましい。
【0053】
上述の構成を有するサーマルプリンター100は、ホストコンピューター90を介して送られるコマンドと会計情報を含む印刷データを、コントロール部300のプリンター制御部78で処理してプリンター本体部180で感熱紙Sに印刷してレシートとして発行する。また、コントロール部300は、印刷データをフィスカルデータ処理部80で処理して印刷データの中から必要データを抜き出し、EJメモリー82に順次記憶させる。EJメモリー82には、レシートごとにこのようなデータが蓄積される。さらには、印刷データやSRAM88に一時格納されたデータの中から、税金に関係するフィスカルデータを選択してフィスカルメモリー81に記憶させる。このとき必要に応じ、RTC87による時間情報等も付与される。この選択および処理は、主にプログラマブルROM86に格納されるプログラムを用いフィスカル制御用CPU85で制御される。
【0054】
法律(フィスカル法)では、フィスカルメモリー81やEJメモリー82に容易にアクセスできないことと、許可なくアクセスした場合はその履歴が残ることが要求されている。そのため、フィスカルメモリー81およびEJメモリー82の前段にはプロテクト回路84が設けられ、例えば、フィスカル制御用CPU85から発せられる許可信号に基づいてのみアクセスが許可される。フィスカルデータへの不正アクセスや改ざんを目的として、例えば、外部接続端子42から電気的アクセスを試みる場合は、このプロテクト回路84によって阻止される。なお、このプロテクト回路84の仕様については、特に限定しない。マイコンであってもよいし、CPLD(Complex Programmable Logic Device)であってもよい。
【0055】
政府の調査官が、調査のためにフィスカルメモリー81のフィスカルデータを読み出すときは、例えば、秘密のID情報を使用して専用のフィスカルポートを用いる。フィスカル制御用CPU85では、ID情報を認識してプロテクト回路84の読み取り許可信号を発してフィスカルメモリー81へのアクセスを許可する。なお、必要に応じEJメモリー82へのアクセスも許可する。なお、このアクセス履歴は、RTC87による時間情報が付与され、フィスカルメモリー81に記憶される。
【0056】
(第1実施例)
まず、横配置状態のサーマルプリンターについて、図1および図4を参照して説明する。図1および図4に示すように、サーマルプリンター100は、別体であるコントロール部300とプリンター本体部180とがドッキングされ構成される。図4に示すように、コントロール部300は、例えば、略水平な設置面Mに設けられた図示しないネジ穴に対して、固定部45の穴部45aを貫通する第1固着部品としてのネジ48によってネジ止めされ固定される。そして、プリンター本体部180は、コントロール部300の本体ケース31の上面31bに設けられた内部接続端子43に、下ケース205の下面に配置された1つのコネクター91が接続される。そして、プリンター本体部180は、図1に示す下ケース205の面に形成された図示しない穴部を貫通する第2固着部品としてのネジ47によってコントロール部300の側面31d,31eのネジ穴46にネジ止めされ固定される。このようにして、サーマルプリンター100は、設置面Mに固定される。
【0057】
プリンター本体部180がコントロール部300に、ネジ47によってネジ止めされ固定されると、プリンター本体部180の下ケース205の部分が、固定部45の少なくとも一部を覆うように組み込まれる。このため、固定部45でネジ止めされているネジ48に外部からアクセスすることができない。このように、固定部45が設置面Mに固定された状態を保つことができる。また、このような場合、固定部45やネジ48等は、特殊な部品や組み立て方法を採る必要がない。
【0058】
サーマルプリンター100(フィスカルプリンター)は、プリンター本体部180とコントロール部300とが容易に分離できない構造であること、また、許可なく取り外したときはその履歴が残ること等が法律(フィスカル法)で要求されている。そのため、コントロール部300とプリンター本体部180とは容易に分離できないようにロックされることが多い。また、コントロール部300が容易に移動できないことが望まれる。本実施形態では、ロック構造について特に限定しないが、例えば、ネジ47が特殊工具を用いてのみ締め付けおよび取り外しができるものとしてもよいし、ネジ47を締結後に樹脂等で表面を固め刻印してもよい。また、コントロール部300とプリンター本体部180とをワイヤー等で固定し、ワイヤーの接合部にタグを固着してもよい。なお、ネジ48も、特殊工具を用いてのみ締め付けおよび取り外しができるものとしてもよいし、ネジ48を締結後に樹脂等で表面を固め刻印してもよい。
【0059】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)上述のサーマルプリンター100は、コントロール部300を設置面Mに容易に取り外せない状態で固定させることができる。そして、プリンター本体部180を、コントロール部300に対して積層状態、すなわち上下方向に接続させ容易に取り外せない状態で固定することができる。そのため、許可なくまたは痕跡を残さずにプリンター本体部180をコントロール部300から取り外すことができない。また、コントロール部300を許可なくまたは痕跡を残さずに異なる場所に移動させることができない。また、プリンター本体部180のメンテナンス、部品交換や本体そのもの交換等の場合は、プリンター本体部180のみを取り外せばよい。その結果、コントロール部300のフィスカルメモリー81やEJメモリー82に記憶されるフィスカルデータの不正アクセスや改ざんの危険性を低減することができる。
【0060】
(2)上述のサーマルプリンター100は、プリンター本体部180とコントロール部300とを積層状態、すなわち上下方向で接続することができる。そのため、接続位置の視認性を向上させることができる。また、水平方向の接続と比較して、接続までの移動距離を短くすることができる。その結果、プリンター本体部180とコントロール部300との接続性を向上させることができる。
【0061】
(第2実施例)
第2実施例にかかるサーマルプリンター、すなわち縦配置状態のサーマルプリンターを図8を参照して説明する。図8は、第2実施例のサーマルプリンターの形態を示す図である。図8に示すX方向、Y方向、Z方向は、図1〜4に示すX方向、Y方向、Z方向と同一な方向を示す。なお、第1実施例と共通する構造および部品については、番号を共通とし説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、コントロール部300は、例えば、略垂直な壁面Nに設けられた図示しないネジ穴に対して、固定部45の穴部45aを貫通するネジ48によって縦方向にネジ止めされ固定される。そして、プリンター本体部180は、コントロール部300の本体ケース31の上面31bに設けられた内部接続端子43に、下ケース205の下面に配置された図4に示す1つのコネクター91が接続される。そして、プリンター本体部180は、下ケース205の面に形成された穴部49を貫通するネジ47によってコントロール部300の側面31d,31eのネジ穴46にネジ止めされ固定される。このようにして、サーマルプリンター100は、壁面Nに固定される。
【0063】
サーマルプリンター100(フィスカルプリンター)は、プリンター本体部180とコントロール部300とが容易に分離できない構造であること、また、許可なく取り外したときはその履歴が残ること等が法律(フィスカル法)で要求されている。そのため、コントロール部300とプリンター本体部180とは容易に分離できないようにロックされることが多い。また、コントロール部300が容易に移動できないことが望まれる。本実施形態では、ロック構造について特に限定しないが、例えば、ネジ47が特殊工具を用いてのみ締め付けおよび取り外しができるものとしてもよいし、ネジ47を締結後に樹脂等で表面を固め刻印してもよい。また、コントロール部300とプリンター本体部180とをワイヤー等で固定し、ワイヤーの接合部にタグを固着してもよい。
【0064】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)上述のサーマルプリンター100は、コントロール部300を壁面Nに容易に取り外せない状態で固定させ、プリンター本体部180をコントロール部300に対して積層状態、すなわち横方向に接続させ容易に取り外せない状態で固定することができる。そのため、特別な部品を使用することなくサーマルプリンター100を壁掛け状態に設置することができる。そのため、設置場所や使用状況に応じ設置姿勢を自由に選択できるサーマルプリンターを提供することができる。
【0065】
(2)上述のサーマルプリンター100は、プリンター本体部180とコントロール部300とを積層状態、すなわち横方向で接続することができる。そのため、接続位置の視認性を向上させることができるとともに接続までの移動距離を短くすることができる。その結果、プリンター本体部180とコントロール部300との接続性を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0067】
(変形例)上述の実施形態では、コントロール部300を固着部品の例であるネジ48を用いて設置面M,Nに固定する場合について説明したがこれに限定されない。例えば、ロック機構付きのフックを用いてもよいし、鍵を用いて固定してもよい。容易に取り外せない構造であれば足りる。また、プリンター本体部180を固着部品の例であるネジ47を用いてコントロール部300に取り付ける場合について説明したがこれに限定されない。例えば、ロック機構付きのフックを用いてもよい。容易に取り外せず取り外し履歴が残る構造であれば足りる。
【符号の説明】
【0068】
10…サーマルヘッド、20…カッター部、31…第2筐体としての本体ケース、32…メイン基板、42…外部接続端子、43…接続端子としての内部接続端子、45…固定部、47…第2固着部品としてのネジ、48…第1固着部品としてのネジ、60…本体フレーム、78…プリンター制御部、79…プリンター制御用CPU、80…フィスカルデータ処理部、81…フィスカルメモリー、82…EJメモリー、83…フィスカル制御部、84…プロテクト回路、85…フィスカル制御用CPU、90…ホストコンピューター、100…サーマルプリンター、150…プリンター機構部、180…プリンター本体部、200…第1筐体としての外装ケース、300…コントロール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、用紙に会計情報を含む情報を印刷する印刷部を収容する第1筐体を有する印刷装置本体部と、
少なくとも、前記情報の少なくとも一部を不揮発的に記憶するメモリー回路および前記印刷装置本体部を制御する制御回路を収容する第2筐体を有するコントロール部と、を備え、
前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、着脱可能に接続され、前記コントロール部は、設置面に固定される固定部を有していることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記コントロール部は、前記固定部を介して第1固着部品により前記設置面に固定されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、前記第1筐体と前記第2筐体との一部が積層状態で配置され、
前記コントロール部は、前記印刷装置本体部を制御する信号および前記情報を伝達する接続端子が前記印刷装置本体部側の前記第2筐体の面に設けられ、
前記印刷装置本体部は、前記接続端子と接続される受け端子が前記コントロール部側の前記第1筐体の面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷装置本体部と前記コントロール部とは、前記接続端子および前記受け端子以外に第2固着部品により固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷装置本体部と前記コントロール部とが、前記第2固着部品により固定されると、少なくとも前記固定部の一部は、前記印刷装置本体部により覆われることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−156844(P2011−156844A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22838(P2010−22838)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】