説明

印刷装置

【課題】インクの脱気を効率よく行なうとともに、インク貯留時間を短縮でき、またインクを収容する容器周辺の構成を複雑にすることのない構成を備えた印刷装置を提供する。
【解決手段】インクを貯留したインクタンクに生じた余剰空間の空気を減圧し、減圧された空間内に曝露されたインク導入路を備えるように構成しているので、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録媒体にインクジェット方式で印刷を行なう印刷装置に関し、特に印刷品質を向上させるためにインクの脱気を行なうインクタンクを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に印刷を行なう印刷装置として、インクジェットプリンタが周知である。インクジェットプリンタは、記録ヘッドが記録媒体である紙葉上を相対的に移動する際にインクを吐出することにより印刷を実行する。
このようなインクジェットプリンタでは、液体インクを使用することが多いので、印刷品質を左右する重要な要因の一つがインクの脱気である。
【0003】
すなわち、微小気泡としてインクに空気が溶存していると、インクジェットプリンタの配管の流路抵抗となり、インクを吐出するインクジェットヘッドに対するインクの供給不足の原因となる。
また、溶存する微小気泡がインクジェットヘッドの圧力室付近に存在する場合、微小気泡が圧力緩衝材となることでインクの吐出不良を引き起こす原因となる。
加えて、微小気泡の空気成分がインクと反応してインクの固化を生じることによる吐出不良の原因となることもある。
微小気泡は、インク内部のみならず、インクとインクタンクの空間との間に生じることもあり、このような微小気泡はインクの粘度や表面張力に影響を受けるため、除去しにくい。
【0004】
従って、インクにおける微小気泡の除去を行なうための一手法であるインクの脱気については、物理的脱気方法や化学的脱気方法各々において様々な手法が提案されているが、インクジェットプリンタにおいてはインクの変質を生じないという点で物理的脱気方法を採用することが多い。
【0005】
物理的脱気方法における従来の手法は、気体透過膜をチューブ状に形成し、減圧環境下に置いた該チューブ内にインクを流し込むことで、インクに溶存する気体を気体透過膜を介して連続的に脱気するという技術が周知である。
また、インクタンクを密閉し、該密閉したインクタンクの気体を排気することで減圧環境を構成することで、インキに含まれる溶存気体を脱気するという技術も存在する。
【0006】
しかし、前者は効率のよい脱気を行うことが可能であっても高価な気体透過膜を使用する必要があり、またインクの種類によっては気体透過膜を使用できないこともある。後者の場合、インクの種類に関わらず脱気を行なうことが可能だが、減圧環境に面するインクの表面積を確保しなければならないため、小型化が困難であり、インクタンクの形状も制限されるという問題がある。
【0007】
上記のように、インクに溶存している空気を脱気させるには、減圧された雰囲気内にインクを曝露して溶存空気の溶解性を下げればよく、効率の良い脱気は、インク表面と空気の界面を多くする(表面積を大きくする)ことで実現できることから、下記のような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−8087
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明は、減圧されているサブタンク内にインクをシャワー状に噴出し、実体的なインク表面積を大きくして効率のよい脱気を実施することを特徴としている。
しかし、特許文献1に記載の発明では、減圧されたサブタンクにインクを貯留するに際して、微細なインク滴に変化させて噴出させる必要があることから、インクが貯留するまでに時間がかかるため、インクジェットプリンタによる印刷の即応性が阻害されるという問題があった。
また、インクを微細化して噴出するインク微細化機構のための加圧ポンプを必要とするため、インクタンク周辺の構成が複雑化するという問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、インクの脱気を効率よく行なうとともに、インク貯留時間を短縮でき、またインクを収容する容器周辺の構成を複雑にすることのない構成を備えた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決する為に、請求項1に係る発明は、インクを吐出することで記録を行なうインクジェットヘッドを備えた印刷装置であって、インク充填源からインクを導入するためのインク導入路と、前記インクを貯留することで生じる第1の空間と、前記インクジェットヘッドにインクを供給するためのインク排出路と、を有するインクタンクと、前記第1の空間を減圧する減圧手段と、を有し、前記インク導入路が前記第1の空間に曝露されていること、を特徴としている。
【0012】
また、請求項2に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記第1の空間内において、前記インク導入路が螺旋状に形成されていること、を特徴としている。
【0013】
さらに、請求項3に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記第1の空間内において、前記インク導入路がジグザグ状に形成されていること、を特徴としている。
【0014】
加えて、請求項4に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記インク導入路が、凹状の流路で構成されていること、を特徴としている。
【0015】
また、請求項5に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記インク導入路が、多孔管で構成されていること、を特徴としている。
【0016】
さらに、請求項6に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記インク導入路が、前記第1の空間内に終端を持つこと、を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の印刷装置は、インクを貯留したインクタンクに生じた余剰空間の空気を減圧し、減圧された空間内に曝露されたインク導入路を備えるように構成しているので、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため、インクの粘度や表面張力の影響を低下させることにより、脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
【0018】
請求項2に記載の印刷装置は、減圧空間内に曝露されたインク導入路が螺旋状に形成されているので、インク導入路の長さを必要十分に取ることができるため脱気を促進することができる。
【0019】
請求項3に記載の印刷装置は、減圧空間内に曝露されたインク導入路がジグザグ状に形成されているので、インク導入路の長さを必要十分に取ることができるため脱気を促進することができる。
【0020】
請求項4に記載の印刷装置は、インク導入路を凹状の流路で構成することにより、インク導入路を減圧空間内で曝露することができる。また、インクを大量に導入路に流した場合、インクが流路から溢れるので、その際に生じた飛沫に対しても脱気が行なわれ、効率のよい脱気を行なうことができる。加えて、流路から溢れたインクが貯留されたインクに落下すると貯留されたインクが攪拌されることにより実質的な表面積が増大するので、さらに効率のよい脱気を実現することができる。
【0021】
請求項5に記載の印刷装置は、インク導入路を多孔管で構成することにより、インク導入路を減圧空間内で曝露することができる。また、インクを大量に導入路に流した場合、インクが流路から溢れるので、その際に生じた飛沫に対しても脱気が行なわれ、効率のよい脱気を行なうことができる。加えて、流路から溢れたインクが貯留されたインクに落下すると貯留されたインクが攪拌されることにより実質的な表面積が増大するので、さらに効率のよい脱気を実現することができる。
【0022】
請求項6に記載の印刷装置は、減圧空間内でインク導入路が終了しているので、インクが貯留されたインクにインク導入路からのインクが落下することにより、インクの攪拌が行なわれて実質的な表面積が増大するため、効率のよい脱気を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】印刷装置100の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を実施したインクメインタンク10の構造を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を実施したインクメインタンク10aの構造を説明するための図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を実施したインクメインタンク10bの構造を説明するための図である。
【図5】本発明の第4の実施形態を実施したインクメインタンク10cの構造を説明するための図である。
【図6】本発明の変形例を実施したインクメインタンク10dの構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施形態について、説明を行なう。
【0025】
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明に係わる印刷装置100の構成を説明するための図である。
印刷装置100は、インクジェットヘッド30にインクを供給するための配管IP2がインクサブタンク20に接続されており、インクサブタンク20へインクを供給するための配管IP1がインクメインタンク10に接続されている。
【0026】
インクジェットヘッド30は、記録媒体Pに対してインクを吐出することにより、印刷を行なう。記録媒体Pは所定の方向に搬送されるのに対して、インクジェットヘッド30は記録媒体Pに直交し、記録媒体Pの搬送幅よりも長いインク吐出部を備えることで、一度の吐出により記録媒体Pへの印刷を実行することができる。
インクジェットヘッド30によるインクの吐出手法としては、ピエゾ式やサーマル式など、所望の手法を採用することができる。また、インクを常時吐出するコンティニュアス式インクジェットヘッド、必要時にインクを吐出するオンデマンド式インクジェットヘッド、いずれの方式を採用してもよい。
加えて、インクジェットヘッド30からインクが図示しない配管を経てインクサブタンク20、あるいはインクメインタンク10へ戻される還流式インクジェットヘッドであってもよい。
【0027】
インクサブタンク20は、インクメインタンク10からインクの供給を受けて一時的にインクを貯留し、インクジェットヘッド30へインクを供給する。インクサブタンク20は、インクジェットヘッド30によるインク吐出を安定的に行なうための構成である、すなわち、インクジェットヘッド30とインクメインタンク10とを直接的に配管で接続すると、インクメインタンク10にインクを補給した場合や沈殿防止のためインクを攪拌した場合など、インクメインタンク10におけるインクの揺動がインクジェットヘッド30に影響を与えることがある。インクサブタンク20が一時的にインクを貯留してからインクジェットヘッド30にインクを供給することで、前述のような問題を回避することができる。
【0028】
インクメインタンク10は、印刷装置100におけるインクの主供給源である。印刷装置100で印刷を行なうに際して、最初にインクを注入されるのがインクメインタンク100である。インクメインタンク100に注入されたインクは、配管IP1を介してインクサブタンク20へ供給され、さらに配管IP2を介してインクジェットヘッド30へ供給される。
このようなインクメインタンク10を供給源とするインクの供給については、印刷装置100の図示しない制御部が制御している。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施形態を実施したインクメインタンク10の構造を説明するための図である。インクメインタンク10は、インクを注入するための構成、インクサブタンク20へインクを供給する構成、およびインクの脱気を行なうための構成を備えており、具体的には、減圧タンク11、減圧ポンプ12、インク注入孔13、インク導入路14、インク排出孔15を備えている。
【0030】
減圧タンク11はインクメインタンク10における中心的な構成であり、インク注入孔13から注入されたインクIKを貯留し、必要に応じてインク排出孔15から配管IP1を介して、インクサブタンク20へインクIKを供給する。減圧タンク11は、インクを貯留するに際して、タンク容量一杯にまでインクを貯留せず、一定の空間を保持するようにしており、この一定の空間が減圧環境空間GKとなる。
【0031】
減圧ポンプ12は、減圧環境空間GKを生成するため、減圧タンク11にエアラインALを介して接続されている。減圧ポンプ12は、減圧タンク11の減圧環境空間GKに残留する空気を吸い上げることで、減圧環境空間GKを外気圧に対して例えば−95kPa程度の減圧環境とする。エアラインALは減圧ポンプ12と減圧タンク11とを空気が流通可能に接続するためのもので、減圧ポンプ12からの空気の逆流を防ぐため、図示しない電磁弁を備えており、減圧環境空間GKの減圧環境を維持する。
【0032】
インク注入孔13は、減圧タンク11にインクを注入する際に使用される。インク注入孔13は図示しない電磁弁によりインク注入時以外は密閉されるようになっており、減圧タンク11における減圧環境空間GKが維持される。
【0033】
インク導入路14は、減圧環境空間GKの内部に設備されており、凹状の流路が螺旋状に形成されることで、減圧環境に曝露するような構成となっている。インク注入孔13から注入されたインクを減圧タンク11に貯留するに際して、該インク導入路14が形成する流路を流れることにより、減圧環境空間GKにインクが曝露することで、インクの脱気が行なわれる。この時、インク導入路14が螺旋状に形成されているので、インク注入孔13から注入されたインクが落下するよりも、長時間減圧空間にインクが曝露されることにより、インクの脱気を促進することができる。
【0034】
インク導入路14の長さは、減圧タンク11のサイズに合わせて、インクの脱気に必要十分な長さであることが望ましい。例えば、減圧タンク11に直接インクを注入した場合のインクの落下時間tの約10倍の時間をかけてインクを減圧環境空間GKに曝露する場合であれば、インク注入孔13と減圧タンク11内のインク貯留液面との距離をhとして、インク導入路14の長さが10h以上となる螺旋状の流路を形成することになる。
【0035】
また、インク導入路14は減圧環境空間GKに曝露するような凹状の流路を形成しているので、大量のインクをインク注入孔13から注入すると、流路から溢れ出る。しかし、溢れたインクもまた減圧環境空間GKに曝露されてから減圧タンク11に貯留され、またインク導入路14によって時間をかけて減圧環境空間GKに曝露されたインクも貯留されるため、大量のインクを減圧タンク11に注入することができる。加えて、溢れたインクが落下することにより、減圧タンク11に貯留されたインクを攪拌するので、実質的な表面積が増大することにより、貯留されたインクの脱気も促進される。
【0036】
インク排出孔15は、インクサブタンク20にインクを供給する際に使用される。インクメインタンク10で脱気されたインクは、インク排出孔15に接続された配管IP1を介して、図示しないポンプによって圧力をかけられインクサブタンク20へ供給される。インク排出孔15によるインクサブタンク20へのインクの供給は、常時供給されるのではなく、インクジェットヘッド30による印刷によって消費したインク量に応じて行なわれる。これは、インクメインタンク10において脱気にある程度の時間が必要なためである。
【0037】
図2に示すような構成をインクメインタンク10が備えることにより、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
なお、図2に示したインクメインタンク10のような構成を、インクサブタンク20に適用してもよい。その場合でも、同様にインクの脱気が促進可能であり、インク貯留時間の短縮を実現でき、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
【0038】
〈第2の実施形態〉
図3は、本発明の第2の実施形態を実施したインクメインタンク10aの構造を説明するための図である。インクメインタンク10aは、インクを注入するための構成、インクサブタンク20へインクを供給する構成、およびインクの脱気を行なうための構成を備えており、具体的には、減圧タンク11a、減圧ポンプ12a、インク注入孔13a、インク導入路14a、インク排出孔15aを備えている。
なお、減圧タンク11a、減圧ポンプ12a、インク注入孔13a、インク排出孔15aの構成については、図2の減圧タンク11、減圧ポンプ12、インク注入孔13、インク排出孔15とほぼ同様なので、説明を省略する。
【0039】
インク導入路14aは、減圧環境空間GKの内部に設備されており、多孔管が螺旋状に形成されることで、減圧環境に曝露するような構成となっている。多孔管であるインク導入路14aには、複数の孔hoが備えられていることで減圧環境空間GKにインクが曝露され、インクの脱気が行なわれる。この時、インク導入路14aが螺旋状に形成されているので、インク注入孔13aから注入されたインクが落下するよりも、長時間減圧空間にインクが曝露されることにより、インクの脱気を促進することができる。
多孔管の素材としては、所望の素材が使用可能であり、例えばフッ素樹脂等耐薬性のあるプラスチックに対して加工を行ない多数の孔hoを形成するようにしてもよい。あるいは、管形成時に孔hoが生じるような処理を行なってもよい。また、管に形成される孔hoは等間隔であって不等間隔であってもよい。
インク導入路14aにおいて、孔hoの開く方向については、減圧タンク11aに貯留されたインク液面に平行であってもよく、平行でなくてもよい。インク量が少ない場合は、インク導入路14aの孔hoから漏れたインクはその粘性から滴下せずにインク導入路14aに沿って減圧タンク11aに貯留され、大量のインクを注入した場合は、減圧環境空間GKにて液滴となって滴下するためである。滴下したインクもまた減圧環境空間GKに曝露されてから減圧タンク11aに貯留され、またインク導入路14aによって時間をかけて減圧環境空間GKに曝露されたインクも貯留されるため、大量のインクを減圧タンク11aに注入することができる。加えて、滴下したインクにより、減圧タンク11aに貯留されたインクを攪拌するので、実質的な表面積が増大することにより、貯留されたインクの脱気も促進される。
【0040】
図3に示すような構成をインクメインタンク10aが備えることにより、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
なお、図3に示したインクメインタンク10aのような構成を、インクサブタンク20に適用してもよい。その場合でも、同様にインクの脱気が促進可能であり、インク貯留時間の短縮を実現でき、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
【0041】
〈第3の実施形態〉
図4は、本発明の第3の実施形態を実施したインクメインタンク10bの構造を説明するための図である。インクメインタンク10bは、インクを注入するための構成、インクサブタンク20へインクを供給する構成、およびインクの脱気を行なうための構成を備えており、具体的には、減圧タンク11b、減圧ポンプ12b、インク注入孔13b、インク導入路14b、インク排出孔15bを備えている。
なお、減圧タンク11b、減圧ポンプ12b、インク注入孔13b、インク排出孔15bの構成については、図2の減圧タンク11、減圧ポンプ12、インク注入孔13、インク排出孔15とほぼ同様なので、説明を省略する。
【0042】
インク導入路14bは、減圧環境空間GKの内部に設備されており、凹状の流路がジグザグ状に形成されることで、減圧環境に曝露するような構成となっている。インク注入孔13bから注入されたインクを減圧タンク11bに貯留するに際して、該インク導入路14bが形成する流路を流れることにより、減圧環境空間GKにインクが曝露することで、インクの脱気が行なわれる。この時、インク導入路14bがジグザグ状に形成されているので、インク注入孔13bから注入されたインクが落下するよりも、長時間減圧空間にインクが曝露されることにより、インクの脱気を促進することができる。
【0043】
インク導入路14bの長さは、減圧タンク11bのサイズに合わせて、インクの脱気に必要十分な長さであることが望ましい。例えば、減圧タンク11bに直接インクを注入した場合のインクの落下時間tの約10倍の時間をかけてインクを減圧環境空間GKに曝露する場合であれば、インク注入孔13bと減圧タンク11b内のインク貯留液面との距離をhとして、インク導入路14の長さが10h以上となるジグザグ状の流路を形成することになる。
【0044】
また、インク導入路14bは減圧環境空間GKに曝露するような凹状の流路を形成しているので、大量のインクをインク注入孔13bから注入すると、流路から溢れ出る。しかし、溢れたインクもまた減圧環境空間GKに曝露されてから減圧タンク11bに貯留され、またインク導入路14bによって時間をかけて減圧環境空間GKに曝露されたインクも貯留されるため、大量のインクを減圧タンク11bに注入することができる。加えて、溢れたインクが落下することにより、減圧タンク11bに貯留されたインクを攪拌するので、実質的な表面積が増大することにより、貯留されたインクの脱気も促進される。
【0045】
図4に示すような構成をインクメインタンク10bが備えることにより、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
なお、図4に示したインクメインタンク10bのような構成を、インクサブタンク20に適用してもよい。その場合でも、同様にインクの脱気が促進可能であり、インク貯留時間の短縮を実現でき、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
【0046】
〈第5の実施形態〉
図5は、本発明の第4の実施形態を実施したインクメインタンク10cの構造を説明するための図である。インクメインタンク10cは、インクを注入するための構成、インクサブタンク20へインクを供給する構成、およびインクの脱気を行なうための構成を備えており、具体的には、減圧タンク11c、減圧ポンプ12c、インク注入孔13c、インク導入路14c、インク排出孔15cを備えている。
なお、減圧タンク11c、減圧ポンプ12c、インク注入孔13c、インク排出孔15cの構成については、図2の減圧タンク11、減圧ポンプ12、インク注入孔13、インク排出孔15とほぼ同様なので、説明を省略する。
【0047】
インク導入路14cは、減圧環境空間GKの内部に設備されており、複数の孔hoを備えた多孔管がジグザグ状に形成されることで、減圧環境空間GKに曝露するような構成となっている。インク導入路14cに複数の孔hoが形成されているために、減圧環境空間GKにインクが曝露することで、インクの脱気が行なわれる。この時、インク導入路14cがジグザグ状に形成されているので、インク注入孔13cから注入されたインクが落下するよりも、長時間減圧空間にインクが曝露されることにより、インクの脱気を促進することができる。
多孔管の素材としては、所望の素材が使用可能であり、例えば塩化ビニルなどのプラスチックに加工によって多数の孔hoを形成するようにしてもよい。あるいは、管形成時に孔hoが生じるような処理を行なってもよい。また、管に形成される孔hoは等間隔であって不等間隔であってもよい。
インク導入路14cにおいて、孔hoの開く方向については、減圧タンク11cに貯留されたインク液面に平行であってもよく、平行でなくてもよい。インク量が少ない場合は、インク導入路14cの孔hoから漏れたインクはその粘性から滴下せずにインク導入路14cに沿って減圧タンク11cに貯留され、大量のインクを注入した場合は、減圧環境空間GKにて液滴となって滴下するためである。滴下したインクもまた減圧環境空間GKに曝露されてから減圧タンク11cに貯留され、またインク導入路14cによって時間をかけて減圧環境空間GKに曝露されたインクも貯留されるため、大量のインクを減圧タンク11aに注入することができる。加えて、滴下したインクにより、減圧タンク11aに貯留されたインクを攪拌するので、実質的な表面積が増大することにより、貯留されたインクの脱気も促進される。
【0048】
図5に示すような構成をインクメインタンク10cが備えることにより、インクが減圧空間を通過する時間を長くすることができるため脱気を促進することができる。と、ともにインク導入路によってインクをインクタンクに貯留するので、インクの貯留時間を短縮することができ、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
なお、図5に示したインクメインタンク10cのような構成を、インクサブタンク20に適用してもよい。その場合でも、同様にインクの脱気が促進可能であり、インク貯留時間の短縮を実現でき、しかもインクタンク周辺の構成を複雑にすることがない。
【0049】
〈変形例〉
図6は、本発明の変形例を実施したインクメインタンク10dの構造を説明するための図である。インクメインタンク10dは、インクを注入するための構成、インクサブタンク20へインクを供給する構成、およびインクの脱気を行なうための構成を備えており、具体的には、減圧タンク11d、減圧ポンプ12d、インク注入孔13d、インク導入路14d、インク排出孔15dを備えている。
なお、減圧タンク11d、減圧ポンプ12d、インク注入孔13d、インク排出孔15dの構成については、図2の減圧タンク11、減圧ポンプ12、インク注入孔13、インク排出孔15とほぼ同様なので、説明を省略する。
【0050】
インク導入路14dは、減圧環境空間GKの内部に設備されており、凹状の流路が螺旋状に形成され減圧環境に曝露するような構成は図2と同じであるが、図2のインク導入路14とは異なり、インク導入路14dは減圧環境空間GK内に流路終端reが形成されている。インク注入孔13dから注入されたインクを減圧タンク11dに貯留するに際して、該インク導入路14dが形成する流路を流れることにより、減圧環境空間GKにインクが曝露することに加え、流路終端reからインクが減圧タンク11d内に落下することで、貯留されたインクが攪拌されることにより、実質的な表面積が増えることから、インクの脱気が行なわれる。
変形例の構成では、インク導入路14dの長さが図2のインク導入路14よりも短くなるが、インク導入路14dを流れる時間が加わる分、インク注入路13dから直接インクを注入することによる攪拌効果に加えて流動中の曝露によるインク脱気を実現することができる。
無論、インク導入路14dは減圧環境空間GKに曝露するような凹状の流路あるいは多孔管で形成することにより、大量のインクをインク注入孔13から注入したとしても流路から溢れることにより、大量のインクを脱気しながら減圧タンク11に注入することができる。
【0051】
また、インク導入路14dは螺旋状のみならずジグザグ状に形成するようにしてもよい。この場合であっても、図6に示した変形例同様の作用効果を奏することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10、10a、10b、10c、10d インクメインタンク
11、11a、11b、11c、11d 減圧タンク
12、12a、12b、12c、12d 減圧ポンプ
13、13a、13b、13c、13d インク注入孔
14、14a、14b、14c、14d インク導入路
15、15a、15b、15c、15d インク排出孔
20 インクサブタンク
30 インクジェットヘッド
100 印刷装置
GK 減圧環境空間
AL エアライン
IP1、IP2 配管
re 流路終端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出することで記録を行なうインクジェットヘッドを備えた印刷装置であって、
インク充填源からインクを導入するためのインク導入路と、
前記インクを貯留することで生じる第1の空間と、
前記インクジェットヘッドにインクを供給するためのインク排出路と、
を有するインクタンクと、
前記第1の空間を減圧する減圧手段と、
を有し、
前記インク導入路が前記第1の空間に曝露されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1の空間内において、前記インク導入路が螺旋状に形成されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1の空間内において、前記インク導入路がジグザグ状に形成されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記インク導入路が、凹状の流路で構成されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記インク導入路が、多孔管で構成されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記インク導入路が、前記第1の空間内に終端を持つこと、
を特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194844(P2011−194844A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67112(P2010−67112)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】