説明

印刷装置

【課題】インクの加熱に要する時間を短縮できる印刷装置を提供する。
【解決手段】両面印刷装置1は、インク90を吐出するインクジェットヘッド17と、インクジェットヘッド17に供給されるインク90が流れる流路が形成された供給管22と、供給管22の外側に設けられ、渦電流によって発熱する熱発生部材31と、熱発生部材31に渦電流を流すための磁力線を生じさせるコイル35と、コイル35の外側を囲む電磁波遮蔽部材33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを加熱する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像を印刷する印字ヘッドと、インクが溜められたインクタンクと、インクタンクと印字ヘッドとの間でインクを循環させるチューブ及びポンプと、インクタンクに設けられたヒータとを備えるインクジェットプリンタが開示されている。
【0003】
特許文献1のインクジェットプリンタでは、インクに適度の粘度を持たせるために、インクタンク内のインクがヒータによって加熱される。そして、この加熱されたインクが、ポンプ及びチューブを介して印字ヘッドに供給される。この状態で、印字ヘッドは、供給されたインクの液滴を印刷媒体へと吐出する。これによって、画像が印刷媒体に印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−175307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、インクの加熱に時間が掛かるといった課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、インクの加熱に要する時間を短縮できる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが流れる流路が形成された供給管と、前記インクの流路の途中部に設けられ、渦電流によって発熱する熱発生部材と、前記熱発生部材に渦電流を流すための磁力線を生じさせるコイルと、金属を含み前記コイルの外側を囲む電磁波遮蔽部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記コイルは、前記熱発生部材を挟み前記インクの流路と反対側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記熱発生部材よりも熱伝導性が高く、前記熱発生部材と前記インクの流路との間に設けられた熱伝導部材を更に備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記熱発生部材または前記電磁波遮蔽部材は、以下の式(1)で示すδ以上の厚みを有することを特徴とする。
【数1】

【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、コイルから生じる磁力線によって熱発生部材に渦電流が生じる。これにより、熱発生部材が誘導加熱により発熱して、供給管を流れるインクが加熱される。このように誘導加熱を利用することによって、請求項1の発明は、インクの加熱に要する時間を短縮できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、コイルとインクの流路との間に熱発生部材を配置することによって、コイルから延びる電磁波が熱発生部材によって遮蔽される。これにより、請求項2の発明は、インクが電磁波によって劣化することを抑制できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、熱発生部材とインクの流路との間に熱伝導部材を設けることによって、熱発生部材により発生した熱を熱伝導部材によって効率よくインクへ伝導させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、熱発生部材を式(1)で示すδ以上の厚みに構成することにより、熱発生部材がコイルにより生じる電磁波の多くを表皮効果によって吸収することができる。この結果、インクが電磁波によって劣化することをより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態による両面印刷装置の全体構成図である。
【図2】ヒータ近傍の正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った横断面図である。
【図4】第2実施形態によるヒータの横断面図である。
【図5】第3実施形態によるヒータの全体斜視図である。
【図6】第4実施形態によるヒータの全体斜視図である。
【図7】図6におけるVII―VII線に沿ったヒータの横断面図である。
【図8】第5実施形態によるヒータの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による両面印刷装置について説明する。図1は、第1実施形態による両面印刷装置の全体構成図である。図2は、ヒータ近傍の正面図である。図3は、図2のIII−III線に沿った横断面図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表側を前方とする。また、ユーザから視て上下左右を上下左右方向とする。
【0017】
尚、図1の太線で示す経路が、印刷用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち実線で示す経路が通常経路RCである。搬送経路のうち一点鎖線で示す経路が、反転経路RRである。搬送経路のうち二点鎖線で示す経路が、給紙経路RSである。以下の説明において、上流または下流とは、搬送方向における上流または下流とする。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態による両面印刷装置1は、給紙部2と、搬送印刷部3と、搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、各部を収納する筐体7と、制御全般を司る制御部8とを備えている。
【0019】
給紙部2は、印刷用紙PAを給紙する部である。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、給紙台11と、複数対の給紙ローラ12とを備えている。給紙台11は、給紙経路RSの最上流に配置されている。給紙台11には、給紙用の印刷用紙PAが積載されている。給紙ローラ12は、給紙台11と搬送印刷部3との間に配置されている。給紙ローラ12は、給紙台11に積載された印刷用紙PAを搬送印刷部3に給紙する。
【0020】
搬送印刷部3は、印刷用紙PAを搬送しつつ、印刷用紙PAに画像を印刷する部である。搬送印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。搬送印刷部3は、レジストローラ15と、4組のインク供給部16及びインクジェットヘッド17と、ベルト搬送部18とを備えている。
【0021】
レジストローラ15は、給紙部2とベルト搬送部18との間に配置されている。レジストローラ15は、給紙部2によって給紙された印刷用紙PAをベルト搬送部18へと搬送する。
【0022】
図1に示すように、インク供給部16は、インクタンク21と、供給管22と、電磁弁23と、ヒータ24とを備えている。
【0023】
インクタンク21は、供給用のインク90を溜めるものである。インクタンク21は、筐体7の上部に配置されている。4個のインクタンク21には、それぞれ異なる色(例えば、黒、シアン、マゼンダ、イエロー)のインク90が溜められている。
【0024】
供給管22は、インクタンク21に溜められているインク90をインクジェットヘッド17へと供給するものである。供給管22の一端は、インクタンク21に連結されている。供給管22の他端は、インクジェットヘッド17と連結されている。供給管22の内部には、インクジェットヘッド17に供給されるインク90が流れる流路が形成されている。
【0025】
電磁弁23は、インク90の供給状態及び非供給状態を切り替えるものである。電磁弁23は、供給管22の途中部に設けられている。電磁弁23の開閉は、インクジェットヘッド17の内部のインク90の量に基づいて、制御部8によって制御される。
【0026】
ヒータ24は、インク90を適温にするために加熱するものである。尚、インク90の適温とは、インク90が適度の粘度を維持できる温度のことである。ヒータ24は、供給管22に形成されたインク90の流路の途中部に設けられている。ヒータ24は、加熱されたインク90が冷却されないように、インクジェットヘッド17の近傍に配置することが好ましい。図2及び図3に示すように、ヒータ24は、熱発生部材31と、加熱部32と、電磁波遮蔽部材33とを備えている。
【0027】
熱発生部材31は、渦電流によって誘導加熱され、その熱をインク90へと伝達しつつ、電磁波(交流電界)を遮蔽するものである。熱発生部材31は、鉄やニッケル等の強磁性体からなる金属単体または強磁性体を含むニクロムやステンレス等の合金からなる。尚、熱発生部材31は、抵抗が大きく、強磁性体を含む材料によって構成することが好ましい。熱発生部材31は、インク90の流路が形成された供給管22の途中部に設けられている。熱発生部材31の中心には、供給管22が挿通される挿通穴31aが形成されている。挿通穴31aの内径は、供給管22の外径と略等しい。これにより、熱発生部材31は、供給管22の外周に略密着状態で設けられる。
【0028】
加熱部32は、熱発生部材31を誘導加熱(IH:Induction Heating)することによってインク90を加熱するものである。加熱部32は、熱発生部材31を囲むように設けられている。加熱部32は、複数のコイル35と、被覆材36とを備える。
【0029】
コイル35は、金属の巻線からなる。複数のコイル35が、周方向に所定間隔で配置されている。コイル35は、熱発生部材31を挟み供給管22のインク90の流路との反対側に配置されている。コイル35は、交流電流を供給する電力供給部(図示略)と接続されている。コイル35は、交流電流が供給されると、熱発生部材31に渦電流を生じさせるための磁力線を生じさせる。これにより、熱発生部材31が誘導加熱される。
【0030】
被覆材36は、コイル35を絶縁するものである。被覆材36は、絶縁性の樹脂からなる。被覆材36は、コイル35の外周及び熱発生部材31の外周を覆うように形成されている。
【0031】
電磁波遮蔽部材33は、加熱部32から外側へと放射する電磁波を遮断するものである。電磁波遮蔽部材33は、電磁波の遮断性の高い鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体からなる。尚、電磁波遮蔽部材33は、強磁性体以外の金属によって構成してもよい。電磁波遮蔽部材33は、加熱部32の側面及び上下面の外周を覆うように形成されている。
【0032】
ここで、熱発生部材31及び電磁波遮蔽部材33の径方向の厚みは、以下の式で表されるδ以上が好ましい。これにより、ほとんどの電磁波が表皮効果によって熱発生部材31及び電磁波遮蔽部材33に吸収されて、電磁波の遮蔽性が向上するためである。
【数1】

【0033】
インクジェットヘッド17は、下面(吐出面)からインク90の液滴を印刷用紙PAへと吐出するものである。インクジェットヘッド17は、インクに圧力を付与するための圧電部材(図示略)を有する。インクジェットヘッド17は、それぞれ異なる色(例えば、黒、シアン、マゼンダ、イエロー)のインクを吐出する。インクジェットヘッド17は、インク90の温度を測定して、そのインク温度を制御部8へと出力する温度センサ(図示略)を備える。
【0034】
ベルト搬送部18は、印刷用紙PAを吸引しつつ搬送するものである。ベルト搬送部18は、搬送経路の通常経路RCを挟みインクジェットヘッド17と反対側に配置されている。
【0035】
搬送部4は、搬送印刷部3によって印刷された印刷用紙PAを排紙部5または反転部6へと搬送するものである。搬送部4は、搬送印刷部3の下流側に配置されている。搬送部4は、複数対の搬送ローラ41と、切替機構42とを備えている。搬送ローラ41は、通常経路RCに沿って配置されている。切替機構42は、印刷用紙PAの搬送経路を排紙部5と反転部6との間で切り替える。
【0036】
排紙部5は、印刷済みの印刷用紙PAを排紙して積載するものである。排紙部5は、搬送部4の下流側に配置されている。排紙部5は、通常経路RCの最も下流に配置されている。排紙部5は、複数対の排紙ローラ45と、排紙台46とを備えている。排紙ローラ45は、切替機構42と排紙台46との間に配置されている。排紙ローラ45は、搬送部4から搬送された印刷用紙PAを排紙台46へと排紙する。
【0037】
反転部6は、片面印刷済みの印刷用紙PAを反転して搬送印刷部3に再給紙するものである。反転部6は、切替機構42とレジストローラ15との間に配置されている。反転部6は、複数対の反転ローラ51と、スイッチバック部52と、フリッパ53とを備えている。反転ローラ51は、反転経路RR上に配置されている。スイッチバック部52は、排紙台46に形成された空間からなる。フリッパ53は、搬送部4から搬送された印刷用紙PAをスイッチバック部52にガイドする。また、フリッパ53は、スイッチバック部52から搬送される印刷用紙PAを搬送印刷部3へとガイドする。
【0038】
(印刷動作)
次に、上述した第1実施形態による両面印刷装置1の印刷動作について説明する。
【0039】
まず、画像データが両面印刷装置1に入力されると、制御部8が印刷初期処理を実行する。印刷初期処理には、インク温度調節処理が含まれる。インク温度調節処理では、制御部8は、インクジェットヘッド17の温度センサから入力されるインク温度に基づいて、ヒータ24を制御する。具体的には、インク温度がインク90の適温よりも低い場合、制御部8は、加熱部32のコイル35に交流電流を供給する。これにより、コイル35が、向き及び強度の変化する磁力線を生じさせる。この磁力線が熱発生部材31に達すると、渦電流が熱発生部材31の外側の表面に流れる。この渦電流によって、ジュール熱が熱発生部材31に発生して、熱発生部材31が誘導加熱される。この熱が、熱発生部材31を介して、インク90に伝達されて、インク90が適温まで加熱される。
【0040】
ここで、交流電流がコイル35に流れると、電磁波がコイル35から内側へと放射される。しかし、ヒータ24は、加熱部32の内側に電磁波遮蔽性を有する熱発生部材31を備えているので、ほんとどの電磁波が熱発生部材31によって遮蔽される。これにより、電磁波がインク90へと達することがほとんどない。また、電磁波はコイル35から外側へと放射される。しかし、ヒータ24は、加熱部32の外側に電磁波遮蔽部材33を備えているので、ほんとどの電磁波が電磁波遮蔽部材33によって遮蔽される。これにより、電磁波が隣接するインク90に達することはほとんどない。
【0041】
次に、インク90が適温になると、制御部8は、画像印刷処理を実行する。以下、画像印刷処理による画像印刷動作について説明する。
【0042】
まず、画像印刷動作では、未印刷の印刷用紙PAが、給紙台11の何れかから給紙ローラ12により給紙経路RSに沿って、搬送印刷部3のレジストローラ15へと搬送される。
【0043】
搬送印刷部3では、印刷用紙PAは、レジストローラ15によってベルト搬送部18へ搬送される。この後、印刷用紙PAは、ベルト搬送部18によって搬送されつつ、インクジェットヘッド17によって吐出されたインク90の液滴によって画像が印刷される。画像が印刷された印刷用紙PAは、ベルト搬送部18によって搬送部4へと搬送される。次に、搬送部4では、印刷用紙PAは、搬送ローラ41によって切替機構42へと搬送される。
【0044】
ここで、片面印刷の場合、印刷用紙PAは、切替機構42によって排紙部5へと搬送される。排紙部5では、印刷用紙PAは、排紙ローラ45によって排紙台46に排紙される。これにより、片面印刷動作が終了する。
【0045】
一方、両面印刷の場合、印刷用紙PAは、切替機構42によって反転部6の反転経路RRへとガイドされる。反転部6では、印刷用紙PAは、フリッパ53にガイドされつつ、反転ローラ51によってスイッチバック部52へと一時的に搬入される。その後、印刷用紙PAは、フリッパ53にガイドされつつ、反転ローラ51によって、搬送印刷部3のレジストローラ15へと再給紙される。
【0046】
搬送印刷部3では、印刷用紙PAは、レジストローラ15及びベルト搬送部18によって搬送される。ここで、印刷用紙PAの未印刷面が、インクジェットヘッド17側に向けられて搬送される。これにより、画像が、インクジェットヘッド17によって、印刷用紙PAの未印刷面に印刷される。この後、両面印刷された印刷用紙PAは、搬送部4によって搬送される。次に、印刷用紙PAは、切替機構42にガイドされて、排紙部5へと搬送された後、排紙台46へと排紙される。これにより、両面に画像が印刷されて両面印刷動作が終了する。
【0047】
(第1実施形態の効果)
次に、上述した第1実施形態による両面印刷装置1の効果について説明する。
【0048】
第1実施形態による両面印刷装置1のヒータ24では、交流電流をコイル35に流すことによって、コイル35から磁力線が生じる。これにより、渦電流が熱発生部材31に流れて、熱発生部材31が誘導加熱される。熱発生部材31にて発生した熱は、熱発生部材31を伝導してインク90を加熱する。このように両面印刷装置1は、誘導加熱によってインク90を加熱しているので、インク90の加熱に要する時間を短縮できる。
【0049】
また、両面印刷装置1のヒータ24では、電磁波遮蔽性を有する熱発生部材31が、コイル35を有する加熱部32と、インク90の流路が形成された供給管22との間に設けられている。これにより、コイル35から内側へ放射される電磁波が、熱発生部材31によって遮蔽される。この結果、ヒータ24は、インク90に達する電磁波を低減できるので、インク90の物性が誘電緩和や色材の電気泳動によって劣化することを抑制できる。
【0050】
また、両面印刷装置1のヒータ24では、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽部材33が、コイル35を有する加熱部32を囲むように設けられている。これにより、コイル35から外側へ放射される電磁波が、電磁波遮蔽部材33によって遮蔽される。ヒータ24は、隣接するインク供給部16のインク90に達する電磁波を低減できるので、インク90の物性が誘電緩和や色材の電気泳動によって劣化することを抑制できる。また、電磁波による制御部8等の機器に対する影響も抑制できる。
【0051】
更に、両面印刷装置1のヒータ24では、熱発生部材31及び電磁波遮蔽部材33の厚みが、上述の式(1)で示すδ以上なので、ヒータ24は、熱発生部材31及び電磁波遮蔽部材33の表面効果により電磁波の遮蔽率を向上させることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態のヒータを変更した第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態によるヒータの横断面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、第2実施形態では、ヒータ24Aが、熱伝導部材37Aと、熱発生部材31Aと、加熱部32と、電磁波遮蔽部材33とを備えている。
【0054】
熱伝導部材37Aは、供給管22の外側を覆うように且つ熱発生部材31Aの内側に設けられている。換言すると、熱伝導部材37Aは、供給管22に形成されたインク90の流路と、熱発生部材31Aとの間に設けられている。熱伝導部材37Aは、熱発生部材31Aよりも熱伝導性の高い、アルミニウム(Al)や銅(Cu)によって構成されている。熱伝導部材37Aの中心には、供給管22が挿通される挿通穴37Aaが形成されている。
【0055】
熱発生部材31Aは、熱伝導部材37Aの外側を覆うように設けられている。熱発生部材31Aは、上述した式(1)に示すδ以上の径方向の厚みを有する。熱発生部材31Aは、強磁性体を含む金属単体または合金等からなる。
【0056】
第2実施形態では、コイル35に交流電流が供給されると、コイル35から磁力線が発生する。これにより、熱発生部材31に渦電流が流れて、熱発生部材31Aが誘導加熱される。この熱は、熱伝導性の高い熱伝導部材37Aを伝導してインク90に伝わる。この結果、第2実施形態のヒータ24Aは、インク90を迅速に且つ熱効率よく加熱することができる。
【0057】
また、熱発生部材31Aは、式(1)で示すδ以上の厚みを有する。これにより、電磁波がインク90に伝わらない。この結果、第2実施形態のヒータ24Aは、インク90の劣化を抑制できる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、上述した実施形態のヒータを変更した第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態によるヒータの全体斜視図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、第3実施形態によるヒータ24Bは、熱発生部材31Bと、加熱部32Bとを備える。
【0060】
熱発生部材31Bは、供給管22を囲む囲繞部31Baと、発熱部31Bbとを備える。発熱部31Bbは、囲繞部31Baと一体的に構成されている。発熱部31Bbは、供給管22から離脱する方向に延びる。また、発熱部31Bbは、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽部材としても機能する。
【0061】
加熱部32Bは、発熱部31Bbに埋設されている。加熱部32Bは、コイル35Bと、コイル35Bを被覆する絶縁性の被覆材36Bとを有する。
【0062】
第3実施形態のヒータ24Bでは、交流電流がコイル35Bに供給されると、熱発生部材31Bの発熱部31Bbが誘導加熱によって発熱する。この熱が、発熱部31Bb及び囲繞部31Baを伝達して、インク90が加熱される。ここで、熱発生部材31Bの発熱部31Bbが供給管22から離脱する方向に延びるので、第2実施形態は電磁波を生じさせるコイル35Bと供給管22との距離を大きくすることができる。この結果、電磁波がインク90に達することを抑制できる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態のヒータを変更した第4実施形態について説明する。図6は、第4実施形態によるヒータの全体斜視図である。図7は、図6におけるVII―VII線に沿ったヒータの横断面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0064】
図6及び図7に示すように、第4実施形態によるヒータ24Cは、4色のインク90を加熱可能に構成されている
【0065】
ヒータ24Cは、熱発生部材31Cと、加熱部32Cと、電磁波遮蔽部材33Cとを備える。
【0066】
熱発生部材31Cは、強磁性体である鉄及びニッケルを含み、インク90との反応性の低いステンレスからなる。熱発生部材31Cは、略直方体形状に構成されている。熱発生部材31Cには、4色のインク90の流路の一部となる4本の流路31Caが形成されている。熱発生部材31Cの上端部及び下端部には、連結部31Cb、31Ccが形成されている。連結部31Cbは、インクタンク21に接続されたインク90の供給管22aの端部と連結される。連結部31Cbは、インクジェットヘッド17に接続されたインク90の供給管22aの端部と連結される。これにより、インク90が、一方の供給管22aから流路31Caを介して他方の供給管22bへと流れる。
【0067】
加熱部32Cは、複数のコイル35Cと、コイル35Cを被覆する絶縁性の被覆材36Cとを備えている。
【0068】
複数のコイル35Cは、流路31Caの配列方向と平行に2列配列されている。一方のコイル35Cの列は、熱発生部材31Cを挟み他方のコイル35Cの列と反対側に配置されている。
【0069】
電磁波遮蔽部材33Cは、熱発生部材31Cと加熱部32Cとを囲むように形成されている。電磁波遮蔽部材33Cは、連結部31Cb、31Ccの先端部が露出するように構成されている。
【0070】
第4実施形態によるヒータ24Cでは、コイル35Cに交流電流が供給されると、熱発生部材31Cの外側の表面に渦電流が流れる。これにより、熱発生部材31Cが誘導過熱されるので、流路31Caを流れるインク90が加熱される。ここで、第4実施形態では、インク90が熱発生部材31Cの流路31Caを流れるので、熱発生部材31Cがインク90を直接加熱することができる。これにより、第4実施形態は、熱効率を向上させることができる。
【0071】
また、熱発生部材31Cは、インク90との反応性の低いステンレスからなるので、流路31Caを流れるインク90が劣化することを抑制できる。
【0072】
(第5実施形態)
次に、上述した第4実施形態のヒータを変更した第5実施形態について説明する。図8は、第5実施形態によるヒータの横断面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0073】
第5実施形態によるヒータ24Dは、熱発生部材31Dと、加熱部32Cと、電磁波遮蔽部材33Cとを備える。
【0074】
熱発生部材31Dには、4個の挿通穴31Daが形成されている。挿通穴31Daには、供給管22が挿通されている。これにより、第5実施形態によるヒータ24は、インク90と熱発生部材31Dとを隔離することができる。このため、インク90が、熱発生部材31Dによって化学反応することを抑制できる。この結果、第5実施形態は、熱発生部材31Dに適用可能な材料の自由度を広げることができる。
【0075】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0076】
上述した各実施形態の構成の形状、配置、数値、材料等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 両面印刷装置
3 搬送印刷部
16 インク供給部
17 インクジェットヘッド
18 ベルト搬送部
21 インクタンク
22、22a、22b 供給管
23 電磁弁
24、24A、24B、24C、24D ヒータ
31、31A、31B、31C、31D 熱発生部材
31Ba 囲繞部
31Bb 発熱部
31Ca 流路
31Cb、31Cc 連結部
31a、31Da 挿通穴
32、32B、32C 加熱部
33、33C 電磁波遮蔽部材
35、35B、35C コイル
36、36B、36C 被覆材
37A 熱伝導部材
90 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに供給されるインクが流れる流路が形成された供給管と、
前記インクの流路の途中部に設けられ、渦電流によって発熱する熱発生部材と、
前記熱発生部材に渦電流を流すための磁力線を生じさせるコイルと、
金属を含み前記コイルの外側を囲む電磁波遮蔽部材とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記コイルは、前記熱発生部材を挟み前記インクの流路と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記熱発生部材よりも熱伝導性が高く、前記熱発生部材と前記インクの流路との間に設けられた熱伝導部材を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記熱発生部材または前記電磁波遮蔽部材は、以下の式(1)で示すδ以上の厚みを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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