説明

印刷装置

【課題】ロータリーカッタを用いて搬送を停止せず被印刷物の切断を行うとともに、搬送速度が変更された場合であっても被印刷物に対し搬送経路に直交する方向への直線的な切断を確実に行う。
【解決手段】ラベル作成装置1は、ラベル用テープ3Aを所定の搬送経路に沿って搬送するプラテンローラ26と、搬送されるラベル用テープ3Aに対し、所望の印字を行うサーマルヘッド31と、ロータリーカッタ装置610と、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対してなす角度が変化するようにロータリーカッタ装置610を変位可能な変位駆動モータ638とを有し、可変に制御される搬送速度に応じて変位駆動モータ638の駆動を制御し、ロータリーカッタ装置610の搬送経路に対してなす角度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物に対し所望の印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷物に対し所望の印刷を行う印刷装置において、搬送速度を可変とした技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術においては、被印刷物としてのラベル用テープ(印字用テープ)が搬送手段(プラテンローラ)によって搬送され、その搬送される被印刷物に対し印字手段(サーマルヘッド)によって所望の印字が行われる。印字された被印刷物はさらに切断手段(テープ切断機構)に搬送された後、搬送が停止された状態において所望の長さに切断される。その際、操作者が2つのモードを選択可能となっており、低速モードが設定されたときには被印刷物が所定の低速で搬送されながら印字が行われ、低速モードが設定されないときには被印刷物が所定の高速で搬送されながら印字が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−84994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、切断手段として、被印刷物の搬送が停止した状態で切断を行う通常のカッタが用いられている。一方、切断対象が搬送されている状態のままで切断を行える、ロータリーカッタが既に知られている。一般に、ロータリーカッタは、回転刃の回転軸の軸心方向が、上記切断対象の搬送方向に対して直交するのではなく斜めになるように配置される。そして、切断対象の移動と回転刃の回転とが同期して切断が実行されることにより、搬送経路に沿って前進する切断対象に対して、搬送経路に直交する方向への直線的な切断が行われる。このため、通常、切断対象の移動速度(すなわち搬送手段による搬送速度)と、回転刃の回転速度と、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度とは、搬送経路に直交する方向への直線的な切断を行うために、予め互いに関連付けられて設定されている。
【0005】
このようなロータリーカッタを、上記従来技術のような、搬送速度が可変に制御される印刷装置に適用することが考えられる。しかしながらこの場合、ロータリーカッタは、上記のような切断態様であることから、切断対象となる被印刷物の搬送速度が変わるとき、搬送経路に直交する方向への直線的な切断を引き続き行うためには、回転刃の回転速度か、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度を、変えなければならない。上記従来技術においては、そのような点については特に配慮されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、ロータリーカッタを用いて搬送を停止せず被印刷物の切断を行うとともに、搬送速度が変更された場合であっても被印刷物に対し搬送経路に直交する方向への直線的な切断を確実に行える、印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印刷物を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段の搬送速度を可変に制御する搬送制御手段と、前記搬送手段により搬送される前記被印刷物に対し、所望の印字を行う印字手段と、前記搬送経路に対してなす角度が可変となるように当該搬送経路に設けられ、回転可能な回転刃と固定刃とを有し、前記印字手段により前記印字が形成された後に前記搬送経路を搬送されている状態の前記被印刷物に対し、回転する前記回転刃と前記固定刃との協働によって直線的な切断を行う、ロータリーカッタと、前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度が変化するように前記ロータリーカッタを変位可能な変位駆動手段と、前記搬送制御手段により可変に制御される前記搬送速度に応じて前記変位駆動手段の駆動を制御し、前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度を制御する、角度制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願発明においては、被印刷物が搬送手段によって搬送され、その搬送される被印刷物に対し印字手段によって所望の印字が行われる。そして、搬送経路に設けられたロータリーカッタによって、上記印字が形成された後の被印刷物に対し、当該被印刷物が搬送されている状態のままで切断が行われる。ロータリーカッタは、回転可能な回転刃と固定刃とを備えており、それらの協働によって、搬送により移動している状態の被印刷物の一方側から切り込みを開始した後、上記回転刃の回転によって上記被印刷物の移動と同期しつつ他方側へと切り進むことにより、被印刷物に対して直線的な切断を行う。
【0009】
そして、ロータリーカッタは、回転刃の回転軸の軸心方向が、上記被印刷物の搬送方向に対して直交するのではなく斜めになるように配置される。これにより、上記一方側から他方側への切り進みの間に搬送経路に沿って前進する被印刷物に対して、搬送経路に直交する方向への直線的な切断が行われる。このように、被印刷物の移動と回転刃の回転とが同期して切断が実行されることから、通常、被印刷物の移動速度(すなわち搬送手段による搬送速度)と、回転刃の回転速度と、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度とは、搬送経路に直交する方向への直線的な切断を行うために、予め互いに関連付けられて設定されている。
【0010】
ところで、印刷装置では、印字内容や印字態様の設定変更により、搬送速度が可変に制御される場合がある。ロータリーカッタは、上記のような切断態様であることから、被印刷物の搬送速度が変わる場合には、搬送経路に直交する方向への直線的な切断を引き続き行うためには、回転刃の回転速度か、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度を、変えなければならない。
【0011】
そこで、本願発明においては、変位駆動手段を設け、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度が変化するようにロータリーカッタを変位させる。そして、搬送制御手段によって可変に制御される搬送速度に対応して、角度制御手段が上記変位駆動手段を制御し、ロータリーカッタが搬送経路に対してなす角度を制御する。これにより、上述のようにして搬送速度が変更された場合であっても、その搬送速度に対応した角度となるようにロータリーカッタの設置向きを変更して、被印刷物に対し搬送経路に直交する方向への直線的な切断を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送速度が変更された場合であっても、ロータリーカッタを用いて被印刷物に対し搬送経路に直交する方向への直線的な切断を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるラベル用テープロール体を備えたラベル作成装置の概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示したラベル作成装置の上カバーを取り外した状態を表す斜視図である。
【図3】図2に示した構造の側面図である。
【図4】図3中X−X′断面による断面図である。
【図5】図1に示したラベル作成装置より上カバー及びラベル用テープロールを取り外した状態を表す斜視図、及び図5(A)中W部の拡大斜視図である。
【図6】図1に示したラベル作成装置の上カバーを取り外した状態を表す後方斜視図である。
【図7】カッタユニットにおける被印刷物の切断態様を表す説明図である。
【図8】ラベル作成装置の制御系を表す概念図である。
【図9】ロータリーカッタ装置を正面側斜め上方から見た斜視図である。
【図10】ロータリーカッタ装置を後ろ側斜め下方から見た斜視図である。
【図11】ロータリーカッタ装置の回転体を示す側面図、及び、下面図である。
【図12】各部の回転軌跡を説明するための説明図である。
【図13】ロータリーカッタ装置の回転位相0°のときの回転体及び保持体を示す図である。
【図14】ロータリーカッタ装置の回転位相90°のときの回転体及び保持体を示す図である。
【図15】回転体及び保持体による被切断物の切断工程を示す説明図である。
【図16】印字ラベルの外観の一例を表す上面図及び下面図である。
【図17】図17中XIX‐XIX′断面による横断面図である。
【図18】制御回路が実行する制御手順を表すフローチャートである。
【図19】図18におけるステップS1の詳細を表すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1において、ラベル作成装置1(印刷装置)は、本体筐体2と、透明樹脂製の上カバー5と、この上カバー5の前側略中央部に対向するように立設される透明樹脂製のトレー6と、このトレー6の前側に配置される電源ボタン7等から構成されている。
【0016】
図2に示すように、テープホルダ収納部4に、テープホルダ3(ロールホルダ)が収納配置されている。このテープホルダ3は、位置決め保持部材12とガイド部材20とを備えており、所定幅のラベル用テープ3A(被印刷物)が回転可能に巻回されてテープロールを構成している。すなわち、ラベル用テープ3Aの軸方向両側にその軸線と略直交するように、一方側側壁部としての上記ガイド部材20と他方側側壁部としての上記位置決め保持部材12とが設けられている。またテープホルダ収納部4の上側を覆うように、前述の上カバー5が後側上端縁部に開閉自在に取り付けられている。
【0017】
またテープホルダ収納部4の搬送方向に対して略垂直方向の一方の側端縁部にホルダ支持部材15が設けられ、このホルダ支持部材15には、上方に開口する正面視略縦長コの字状の第1位置決め溝部16が形成されている。そして、上記位置決め保持部材12の外側方向に突設され、正面視下方向に幅狭になるように形成された上下方向に縦長の断面略矩形状の取付部材13が、下方向に幅狭な上記第1位置決め溝部16内に密着することで上記ホルダ支持部材15に嵌め込まれる。なおこの取付部材13の突出高さ寸法は、第1位置決め溝部16の幅寸法にほぼ等しくなるように形成されている。また、テープホルダ収納部4の他方の側端縁部の搬送方向前端部には、レバー27が設けられている。
【0018】
図3に示すように、ラベル用テープ3Aはこの例では3層構造となっており(部分拡大図参照)、ロールの外側に巻かれる側(図3中左上側)よりその反対側(図3中右下側)へ向かって、剥離紙3a、粘着層3b、自己発色性を有する長尺状の感熱紙(いわゆる、サーマルペーパー)3cの順序で積層され構成されている。感熱紙3cの裏側(図3中左上側)にはまた、上記粘着層3bによって上記剥離紙3aが感熱紙3cに接着されている。この剥離紙3aは、最終的に完成した印字ラベルTが所定の商品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層3bにより当該商品等に接着できるようにしたものである。なお、本体筐体2の背面部には一方の側端部に電源コード10が接続されている。
【0019】
図4に示すように、上記ラベル用テープ3Aは、所定の外周径を有する巻芯(リール部材)3Bにロール状に巻回されている。すなわちラベル用テープロール体100は、これらラベル用テープ3A及び巻芯3Bと、上記位置決め保持部材12、ガイド部材20等を備えたテープホルダ3とから構成されている。
【0020】
位置決め保持部材12とガイド部材20との間には、上記巻芯3Bの内周側にて軸方向に配置されるように略筒状形状のホルダ軸部材40が設けられており、主としてこれら位置決め保持部材12、ガイド部材20、及びホルダ軸部材40によってテープホルダ3が構成されている。
【0021】
ホルダ支持部材15の内側基端部には係合凹部15Aが形成されており、この係合凹部15Aに対し、位置決め保持部材12の下端部に突設された弾性係止片12Aが係合されている。
【0022】
テープホルダ収納部4の底面部には、ホルダ支持部材15の内側基端部から搬送方向に対して略垂直に、平面視横長四角形の位置決め凹部4Aが所定深さ(例えば約1.5〜3mm)で形成される。またテープホルダ収納部4の下側には、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令により各機構部を駆動制御する制御回路部が形成された制御基板32が設けられている。
【0023】
位置決め凹部4Aの搬送方向幅寸法は、テープホルダ3を構成する位置決め保持部材12及びガイド部材20の各下端縁部の幅寸法にほぼ等しくなるように形成されている。また位置決め凹部4Aのホルダ支持部材15の内側基端部には、位置決め保持部材12の下端縁部から略直角内側方向に延出される後述のテープ判別部60に対向する部分が判別凹部4Bとなっている。
【0024】
この判別凹部4Bは、搬送方向に縦長の平面視長四角形となっており、位置決め凹部4Aよりもさらに所定深さ(例えば約1.5〜3mm)だけ深くなるように形成されている。また判別凹部4Bには、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成され、ラベル用テープ3Aの種別を判別する4個のテープ判別センサS1、S2、S3、S4がこの例では略L字状に設けられている。これらテープ判別センサS1〜S4は、それぞれプランジャーとマイクロスイッチ等から構成される公知の機械式スイッチからなり、該各プランジャーの上端部は、該判別凹部4Bの底面部から位置決め凹部4Aの底面部近傍まで突き出るように設けられている。そして、この各テープ判別センサS1〜S4に対してテープ判別部60の各センサ孔(後述)が有るか否かを検出して、そのオン・オフ信号によりテープホルダ3に装着されたラベル用テープ3Aの種類を検出するようになっている。
【0025】
図5(A)及び図5(B)に示すように、テープホルダ3を構成する上記ガイド部材20の先端部が載置される載置部21が設けられている。この載置部21は、上記ラベル用テープ3Aを挿入する挿入口18の後端縁部からテープホルダ収納部4の前側上端縁部まで略水平に延出されている。なお前述のガイド部材20の先端部は上記挿入口18まで延出されるようになっている。
【0026】
載置部21の搬送方向後側の端縁角部には、ラベル用テープ3Aの複数の幅寸法に対応して断面略L字状の4個の第2位置決め溝部22A〜22Dが形成されている。各第2位置決め溝部22A〜22Dは、テープホルダ3を構成するガイド部材20の載置部21に当接する部分の一部を上方から嵌め込むことができるように形成されている。なお、前述した上記位置決め凹部4Aは、ホルダ支持部材15の内側基端部から上記第2位置決め溝部22Aに対向する位置まで設けられている。
【0027】
巻芯3B、ラベル用テープ3A、及びテープホルダ3からなる本実施形態のラベル用テープロール体100は、位置決め部材12の取付部材13をホルダ支持部材15の第1位置決め溝部16に嵌め込み、該位置決め部材12の下端部に突設される弾性係止片12Aをホルダ支持部材15の内側基端部に形成される係合凹部15Aに係合させると共に、ガイド部材20の先端部下面を各第2位置決め溝部22A〜22Dに嵌め込んで該ガイド部材20の下端部を位置決め凹部4A内に嵌入して当接させることによって、テープホルダ収納部4に着脱自在に取り付けられる。
【0028】
図6に示すように、上記挿入口18のホルダ支持部材15側の側端縁部には、案内リブ部23が立設されている。また、挿入口18のホルダ支持部材15側の側端縁部(図6中、左端縁部)は、該ホルダ支持部材15に嵌め込まれる上記位置決め部材12の内側端面に対向する位置になるように形成されている。
【0029】
なお、本体筐体2の背面部の他方の側端部には、不図示のパーソナルコンピュータ等と接続されるUSB(Universal Serial Bus)等から構成されるコネクタ部11が設けられている。
【0030】
本実施形態においては、後述するロータリーカッタ装置610によって自動切断を行うカッタユニット8が設けられ、このカッタユニット8のテープ3A搬送方向上流側(後述する図8中右側)下部には印字を行うサーマルヘッド31(印字手段)が設けられ、このサーマルヘッド31と対向する位置にはプラテンローラ26(搬送手段)が設けられている(後述する図8参照)。
【0031】
サーマルヘッド31は、その上下動操作用の前述のレバー27を上方に回動させることによりサーマルヘッド31が下方に移動されて上記プラテンローラ26から離間した状態となり、レバー27を下方に回動させることにより上方に移動されてラベル用テープ3Aをプラテンローラ26に押圧付勢して印字可能な状態になる。
【0032】
すなわち、印刷実行時においては、まずレバー27を上方に回動させて、ラベル用テープ3Aの一方の側端縁部をガイド部材20の内側面に当接させつつ、このラベル用テープ3Aの他方の側端縁部を挿入口18の側縁部に立設される上記案内リブ部23に当接させながら挿入口18内に挿入し該レバー27を下方に回動させることにより、印刷可能となる。この状態でレバー27を下方に回動させることにより、挿入口18から挿入されたラベル用テープ3Aは、ライン型のサーマルヘッド31によってプラテンローラ26に向かって押圧されるように付勢される。そして、該プラテンローラ26をパルスモータ(あるいはステッピングモータ等、後述の図8参照)等により回転駆動しつつ、該サーマルヘッド31を駆動制御することによって、ラベル用テープ3Aを搬送しながら印字面に順次所望の印字データや画像データ等(印字情報!)を印字できる。そして、トレー6上に排出された印字済みのラベル用テープ3Aは、上記カッタユニット8のロータリーカッタ装置610により所望の長さに切断され、これによって印字ラベルT(後述の図16参照)が生成される。
【0033】
上記カッタユニット8について、図7を用いて説明する。図7において、上記カッタユニット8は、回転する回転刃と固定刃との協働によって上記ラベル用テープ3Aの直線的な切断を行うロータリーカッタ装置610を備えている。すなわち、ロータリーカッタ装置610は、回転可能な回転刃としての第1平刃621と、固定刃としての第2平刃631(後述の図9等を参照)とを有している。そして、上記サーマルヘッド31により印字形成された後に搬送経路を搬送されている状態のラベル用テープ3Aに対し、上記第1平刃621と、保持体630の第2平刃631との協働によって直線的な切断を行う。その際、本実施形態の特徴として、制御回路210の制御によるモータ708の駆動により支持軸701を回動中心としてロータリーカッタ装置610全体が回動する(図7中の太矢印参照)。ロータリーカッタ装置610の詳細構造や上記回動についての詳細については後述する。
【0034】
上記ラベル作成装置1の制御系を図8により説明する。図8において、巻芯3Bに巻回された上記ラベル用テープ3Aを繰り出し、搬出口Eに至る搬送経路を搬送する上記プラテンローラ26と、ラベル用テープ3Aに備えられた印字領域Sに対して所望の印字を行う上記サーマルヘッド31と、印字後のラベル用テープ3Aを所望の長さに切断して印字ラベルTを生成する、上記ロータリーカッタ装置610を備えたカッタユニット8と、上記搬送経路におけるラベル用テープ3Aの有無を検出するセンサ239と、上記サーマルヘッド31への通電を制御する印刷駆動回路205と、上記プラテンローラ26を駆動するプラテンローラ用モータ208を制御するプラテンローラ駆動回路209と、印刷駆動回路205、プラテンローラ駆動回路209等を介し、ラベル作成装置1全体の動作を制御するための制御回路210と、操作部212と、が設けられている。
【0035】
制御回路210は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、中央演算処理装置であるCPU、ROM、及びRAM等から構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。またこの制御回路210は、電源回路211Aにより給電されるとともに、通信回路211Bを介し例えば通信回線に接続され、この通信回線に接続された図示しないルートサーバ、他の端末、汎用コンピュータ、及び情報サーバ等との間で情報のやりとりが可能となっている。
【0036】
操作部212は、この例では、操作者の用途や好みに応じて、印字ラベルTの作成動作に関し、「高速モード」と「精密印刷モード(低速モード)」とが選択入力可能になっており、当該モード選択結果に応じた操作信号を制御回路210に入力する。操作部212において「高速モード」が選択された場合には、制御回路210は、プラテンローラ26による搬送速度が所定の高い速度となるようにプラテンローラ用モータ208を制御するとともに、当該高速の搬送速度に対応した印字動作をサーマルヘッド31が行うように、印刷駆動回路205を制御する。また、操作部212において「精密印刷モード」が選択された場合には、制御回路210は、プラテンローラ26による搬送速度が所定の低い速度となるようにプラテンローラ用モータ208を制御するとともに、当該低速の搬送速度に対応した印字動作をサーマルヘッド31が行うように、印刷駆動回路205を制御する。なお、このような操作者によるモード切り替えを行うのに限られず、操作者が印字ラベルTに対し印字形成を行うために操作部212において入力する文字や図像のサイズ、文字数、印字濃度等に応じて、上記モード切り替えを装置側で自動的に行うようにしてもよい。また、モードは上記のような2つのモードの切り替えに限られず、3つ以上のモード切替としてもよい。
【0037】
なお、上記のモード切替に応じて、制御回路210により、ロータリーカッタ装置610がラベル用テープ3Aの搬送経路に対してなす角度を変化させるためのモータ708の駆動制御信号が出力されるが、これについては後に詳述する。
【0038】
なお、ロータリーカッタ装置610に備えられるモータ638,708(制御回路210の制御信号により駆動される)については、後述する。
【0039】
次に、本実施形態の要部である上記ロータリーカッタ装置について、図9〜図15により説明する。
【0040】
図9及び図10に示すように、本実施形態のロータリーカッタ装置610は、筐体612と、第1平刃621を有する回転体620と、第2平刃631(固定刃)を有する保持体630とを備えている。筐体612は、一方側(図9の左側、図10の右側)に第1壁面613を有し、他方側(図9の右側、図10の左側)に第2壁面614を有している。回転体620は、筐体612の第1壁面613と第2壁面614との間の上方寄りの位置に回転可能に支持され、保持体630は、筐体612の第1壁面613と第2壁面614との間の下方寄りの位置に揺動可能に支持されている。
【0041】
回転体620は、一方側(図9の左側、図10の右側)の第1ブラケット622と、他方側(図9の右側、図10の左側)の第2ブラケット623と、第1ブラケット622と第2ブラケット623との間を接続するように設けられた平刃取付部624と、この平刃取付部624に設けられた平刃支持部625とを備えている。
【0042】
第1ブラケット622は、筐体612の第1壁面613に回転可能に支持され、第2ブラケット623は、第1ブラケット622と同一の回転軸心O上の位置で筐体612の第2壁面614に回転可能に支持されている。図11(a)及び図11(b)に示すように、この第1ブラケット622は、回転軸心Oの径方向に沿った第1寸法L1を有し、第2ブラケット623は、第1ブラケット622よりも短く設けられ、回転軸心Oの径方向に沿って第1寸法L1よりも小さな第2寸法L2を有している。
【0043】
平刃取付部624は、上述したように、第1ブラケット622と第2ブラケット623との間を接続するように設けられている。すなわち、平刃取付部624は、第1ブラケット622と第2ブラケット623とを介して離間した上記回転軸心Oのまわりに回転可能なように筐体612に設けられている。そして平刃取付部624は、図12に示すように、回転軸心Oと交わる平面上において回転軸心Oから離間した位置に配置されている。具体的には、回転時における一方側(図11及び図12の右側)の端部の回転軌跡S1が他方側(図11及び図12の左側)の端部の回転軌跡S2よりも大径になるよう、離間した上記回転軸心Oに対して角度α(図11(a)参照)だけ傾斜して配置されている。この平刃取付部624は、第1平刃621を取り付けるよう、略板状、本例では図11(b)に示すように、略長方形の形状に構成されている。
【0044】
第1平刃621は、略板状の第1基部621aと、この基部621aの縁部に直線状に延びる第1刃先部621bとを備える。このとき、図11(b)に示すように、平刃支持部625は、直線状に延びる第1刃先部621bの延設方向が、略長方形である平刃取付部624の縁部の方向に対し、所定の角度βをもって非平行となるように、第1平刃621を平刃取付部624に対して固定している。この結果、図11及び図12に示すように、上記回転軸心Oまわりの回転軌跡の周方向において、第1平刃621の他方側(図9の右側、図10の左側)における第1刃先部621bの端部621Bが、一方側(図9の左側、図10の右側) における第1刃先部621bの端部621Aよりも平刃取付部624の縁部から突出している。第1刃先部621bのうち端部621Bと端部621Aとの中間部621Cは、それら端部621Bと端部621Aとの間を直線的に結ぶ形状となっている。このような取り付け態様により、それら第1刃先部621bが上記回転軸心Oまわりに描く回転軌跡を軸方向から見た場合、図12に示すように、端部621A及び端部621Bの回転軌跡は同一の大径の円周軌跡S0となる。その一方、中間部621Cの回転軌跡は、上記円周軌跡S0の内側において描かれる。
【0045】
なお、本実施形態では、第1平刃621を平刃取付部624に対し固定するのに、平刃支持部625として取り付けネジを用いたが、平刃支持部625を接着剤で構成してもよい。さらに、平刃支持部625は、平刃取付部624と一体に形成して、第1平刃621を平刃取付部624に対して支持するものであってもよい。
【0046】
図9及び図10に戻り、保持体630は、筐体612の第1壁面613と第2壁面614との間に支持され、上記回転軸心Oと所定間隔を介し略平行となるように第2平刃631を保持可能な板状の保持部632を備えている。第2平刃631は、取り付けネジ633で固定することによって保持部632に保持されている。第2平刃631は、略板状の第2基部631aと、この第2基部631aの縁部に直線状に延びる第2刃先部631bとを備えている。このとき、上記平刃支持部625は、平刃取付部624が回転したときに第1刃先部621bの描く回転軌跡が、第2刃先部631bに対して近接する若しくは重なるように、第1平刃621を平刃取付部624に対して支持している。
【0047】
さらに、上記保持体630は、回転体620の回転軌跡に対して遠近可能となるように、保持部632の両端部634を、筐体612の第1壁面613及び第2壁面614に対し揺動可能に支持する、揺動支持機構635を有している。揺動支持機構635は、図10に示すように、保持部632の両端部634に長手方向に水平な延出部634aを設けるとともに、筐体612の第1壁面613及び第2壁面614に幅方向に水平な長穴636を設けている。そして、両端部634の延出部634aを第1壁面613及び第2壁面614の長穴636に遊嵌し、保持部632の両端部634に下方向への折曲がり片状に設けたバネ取付部634bと第1壁面613及び第2壁面614との間にそれぞれねじりコイルバネ637を取り付けている。そして、ねじりコイルバネ637によって保持部632の両端部634を回転体620方向に対し付勢するように構成されている。
【0048】
また、保持体630には、保持部632の下面の一方側又は他方側、この例では他方側(図10の左側)にモータ638(回転駆動手段)が取り付けられている。これに対応して、筐体612の他方側の第2壁面614の外面には、第2壁面614を貫通したモータ638からの駆動軸638aと、第2壁面614を貫通した回転体620の第2ブラケット623の回転軸623aとの間にギア列からなる駆動伝達機構639が設置されている。モータ638は、上記制御回路210からの制御信号に基づき(図7及び図8参照)、平刃取付部624のうち第1平刃621の第1刃先部621bと反対側の端部が進行方向前方となるように、駆動伝達機構639を介して回転体620を所定の一定速度で回転させ、回転体620と保持体630との間に挿入された被切断物を走行状態で切断させる。
【0049】
図13及び図14に、回転体620の回転による第1平刃621の回転姿勢の一例を示す。図13は、回転体620の第1平刃621が保持体630の第2平刃631に対し直立、すなわち図5の紙面と平行に位置している状態である。説明の便宜上、第1平刃621が上記のように直立した状態の回転姿勢を回転位相0°と称する。回転位相0°の第1平刃621は、刃先部621bが保持体630の第2平刃631の刃先部631bから最も遠い位置にある。図14は、上記モータ638の駆動力による回転体620の回転(図13、図14の矢印参照)に伴い第1平刃621が回転して、第1平刃621が回転位相90°に位置している状態である。回転位相90°の第1平刃621は、図13の紙面に対し垂直に位置し、かつ刃先部621bが保持体630の第2平刃631の刃先部631bに近づいた状態である。すなわち、回転体620は、平刃取付部624のうち第1平刃621の第1刃先部621bと反対側の端部が進行方向前方(図14の奥側)となるように回転する。
【0050】
本実施形態のロータリーカッタ装置610では、上記のような2つの平刃621,631を用いた構成により、従来の円筒形の胴部の外周に螺旋状の刃物を設けた構造と同等の切断機能を実現することができる。以下、その原理を詳細に説明する。
【0051】
すなわち、上述したように、本実施形態のロータリーカッタ装置610は、筐体612と、回転体620と、保持体630とを有する。回転体620に備えられた第1平刃621が、回転体620の回転とともに、保持体630に備えられた第2平刃631と協働し、動いている状態のラベル用テープ3A(被切断物)に対し直線的な切断を行う。このとき、回転体620は、平刃取付部624を備えている。このとき、上述したように、回転軸心Oのまわりに回転したときの平刃取付部624の一方側の端部による回転軌跡S1の径方向寸法が平刃取付部624の他方側の端部による回転軌跡S2の径方向寸法よりも大きくなるように、回転軸心Oに対して傾斜して配置されている。すなわち、平刃取付部624の一方側は回転軸心Oから比較的遠い位置で回転軌跡S1を描きながら回転する一方、平刃取付部624の他方側は回転軸心Oから比較的近い位置で回転軌跡S2を描きながら回転することとなる。
【0052】
このような傾斜した回転挙動を行う平刃取付部624に対し、平刃支持部625を介して第1平刃621が支持されている。このとき、上述したように、第1平刃621は、一方側の端部621Aと他方側の端部621Bとで、周方向に沿った突出量が異なるように設けられる。すなわち、上記平刃取付部624の他方側に対応した第1平刃621の他方側の端部621Bは、平刃取付部624の一方側に対応した第1平刃621の一方側621Aの端部よりも、周方向において大きく突出するように設けられる(図11(a)、図11(b)、図4参照)。
【0053】
第1平刃621の他方側の端部621Bが周方向に大きく突出して設けられることにより、回転体620の回転時において、当該端部621Bは、回転軸心Oから比較的近い位置で回転する平刃取付部624の他方側が形成する小径の回転軌跡S2のさらに径方向外側に、比較的大きい径の回転軌跡を形成する。一方、第1平刃621の一方側の端部621Aは周方向に小さく突出して設けられることにより、回転体620の回転時において、当該端部621Aは、回転軸心Oから比較的遠い位置で回転する平刃取付部624の一方側が形成する大径の回転軌跡S1の径方向外側近傍で、比較的大きい径の回転軌跡を形成する。
【0054】
これらの結果、第1平刃621の一方側の端部621Bの回転軌跡と、第1平刃621の他方側の端部621Aの回転軌跡とを、ほぼ同じ径の円周軌跡S0上に位置させることができる。すなわち、第1平刃621の一方側の端部621A及び他方側の端部621Bが互いに同一の径方向寸法の回転軌跡を形成する(図12参照)こととなり、回転体620の第1平刃621は一方側から他方側までの全域にわたって回転軸心Oからほぼ同一距離を保って回転する(但し,厳密には前述のように中間部621Cにおいては、上記同一距離よりも若干小さな距離をもって回転する)。したがって、回転軸心Oから当該同一となる所定距離だけ離れた位置にラベル用テープ3Aを導入することで、第1平刃621の一方側から他方側までの全域によってラベル用テープ3Aに対しほぼ直線的な切断を行うことができる。
【0055】
このとき、前述のように、小径の回転軌跡で回転する平刃取付部624の他方側に対し第1平刃621の他方側を大きく突出して設け、大径の回転軌跡で回転する平刃取付部624の一方側に対し第1平刃621の一方側を小さく突出して設けている。このような構成の結果、回転体620の回転により第1平刃621の一方側及び他方側が回転軸心Oから所定距離だけ離れた位置(ラベル用テープ3Aの位置)に出現するタイミングが、互いに異なるタイミングとなる。すなわち、単純に平刃を回転軸心Oと平行に設けて静止したラベル用テープ3Aを切断する場合のように刃先の全ての部分が同一のタイミングでラベル用テープ3Aに切り込むのではなく、本実施形態においては、例えば第1平刃621の一方側があるタイミング(回転方向位置)でラベル用テープ3Aの位置に到達してラベル用テープ3Aの切断を行った後、回転体620の回転が進んだ別のタイミングで第1平刃621の他方側がラベル用テープ3Aの位置に到達し、ラベル用テープ3Aの切断を行うこととなる。
【0056】
上述した原理に基づく被切断物の切断挙動を、図15(a)、図15(b)、図15(c)を用いて説明する。被切断物のラベル用テープ3Aは、上記図7に示したように、第1壁面613が位置する一方側で進行方向先端側の突出量が大きくなるような傾斜した搬送経路で、例えば図示しない送りローラによって回転体620と保持体630との間に第1平刃621の基部側から導入される。
【0057】
回転体620の回転により上述した第1平刃621の回転位相が例えば110°になると、図15(a)に示すように、第1平刃621の第1刃先部621bが保持体630の第2平刃631の第2刃先部631bと一方側の端部において重なる(もしくは近接する、以下同様)、切断実行部位に達する。これとほぼ同時に、ラベル用テープ3Aは、上述の搬送により、切断線h(図7参照)の第1ブラケット622の側と同側の一方側の端部が上記切断実行部位に達する。そして、第1刃先部621bと第2刃先部631bとが協働し上記切断実行部位においてラベル用テープ3Aを当該一方側の端部から切り始める。
【0058】
回転体620の回転に伴い第1平刃621の回転位相が進むと、第1刃先部621bが第2刃先部631bと重なる上記切断実行部位が、第2ブラケット623が位置する他方側の端部に向けて移動する。上記切断実行部位に同期して、ラベル用テープ3Aの切断線hが出現する位置も他方側の端部に向けて移動する。そして、図15(b)に示すように、第1刃先部621bの回転位相が例えば120°になるまでに、第1刃先部621bと第2刃先部631bとが協働してラベル用テープ3Aを一方側と他方側の中間部まで切断線h上を切り進む。
【0059】
回転体620がさらに回転して、図15(c)に示すように、第1平刃621の回転位相が例えば130°になると、第1刃先部621bと上記第2刃先部631bとによる上記切断実行部位が切断線hに沿ってラベル用テープ3Aの他方側の端部まで達する。このようにして、前述の図7に示したように、ラベル用テープ3Aの搬送を停止することなく、ラベル用テープ3Aの走行方向に対し直角の切断線h上を直線状に切り進む切断が終了する。
【0060】
上記のようにして切断を行うロータリーカッタ装置610の、ラベル用テープ3Aの搬送経路に対してなす角度は、前述のようにモード切替に応じて変化するラベル用テープ3Aの搬送速度に応じ、可変に制御される。以下、その詳細を、前述の図7、図9、及び図10を用いて説明する。
【0061】
図9及び図10を用いて前述したように、本実施形態のロータリーカッタ装置610は、筐体612と、第1平刃621を有する回転体620と、第2平刃631を有する保持体630とを備えている。このとき、図7に示されるように、筐体612の一方側に設けられた上記第1壁面613に第1ブラケット701が設けられている。そして、この第1ブラケット701に支持軸701が貫挿され、この支持軸701を回動支点としてロータリーカッタ装置610自体が図7中の太矢印のように、搬送方向に揺動可能となっている。
【0062】
一方、上記第2壁面613に第2ブラケット702が形成され、この第2ブラケット702には回転軸心O方向に沿ってガイド用の長孔703が穿設されている。このとき、回転軸705を中心に回転可能とした略扇形状の偏心カム704が設けられており、偏心カム704の一方側に突設されたカム突起706が、上記ガイド長孔703に遊嵌されている。また、偏心カム704の他方側の円弧面側には歯部709が形成されている。この歯部709は、制御回路210によって駆動制御される変位駆動モータ708の出力軸に取り付けられたロッド状のウォームギア707に噛合されている。
【0063】
ロータリーカッタ装置610を所望の角度に変位させるために制御回路210からの制御信号が入力されると、変位駆動モータ708は、ウォームギア707を駆動する。このウォームギア707への駆動力がウォームギア707に噛合された歯部709に伝達され、偏心カム704が回転軸705を中心に回転する。この回転により、ガイド長孔703に遊嵌されているカム突起706が当該ガイド長孔703に沿ってスライドしつつ、第2ブラケット702を駆動する。これにより、ロータリーカッタ装置610は上記支持軸701を支点として揺動し、搬送経路に対してなす角度が変化する。
【0064】
以上において、モータ708、ウォームギア707、及び偏心カム704が、各請求項記載の変位駆動手段として機能する。また、上記は、ロータリーカッタ装置610の搬送経路に対する角度を変化させる機構の一例に過ぎないものであり、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0065】
上記のようにしてラベル用テープ3Aの切断が完了し形成された印字ラベルTは、図16(a)、図16(b)、及び図17に示すように上記3層構造となっており、表面側(図17中上側)よりその反対側(図17中下側)へ向かって、感熱紙3c、粘着層3b、剥離紙3aの順で積層している。そして、前述のように感熱紙3cの表面に印字R(この例では「AA−AA」の文字)が印刷されている。
【0066】
次に、以上説明した機能を実現するために、制御回路210が実行する制御手順を図18及び図19により説明する。
【0067】
図18において、操作者により、操作部212による上記モード選択等がなされた後所定のラベル作成操作が行われると、このフローが開始される。まず、ステップS1で、制御回路210は、上記操作部212からの操作に基づき、印刷駆動回路205、プラテンローラ駆動回路209、及びプラテンローラ用モータ208等の制御のための準備処理(後述)を実行する。
【0068】
準備処理手順では、図19に示すように、まず、ステップS11にて、制御回路210は、操作部212による上記「高速モード」又は「精密印刷モード(低速モード)」のモード選択を含む、印字内容に関わる所望の印字情報を取得する。前述したように、操作部212おいて、操作者が印字ラベルTに対し印字形成を行う文字(上記の例では「AA−AA」)、図像、それら文字・図像等のサイズ、文字数、印字濃度等を操作入力した場合には、それらの情報も上記印字情報に含まれる。このステップS11が各請求項の印字情報入力手段として機能する。
【0069】
その後、ステップS12で、上記取得された印字情報に応じて、制御回路210は、ラベル用テープ3Aの搬送速度を決定する。前述の例では、上記印字情報に含まれるモード選択結果が「高速モード」であった場合には、制御回路210は、プラテンローラ26による搬送速度を所定の高い速度に決定し、上記印字情報に含まれるモード選択結果が「精密印刷モード」であった場合には、制御回路210は、プラテンローラ26による搬送速度を所定の低い速度に決定する。このステップS12が各請求項の搬送速度決定手段として機能する。
【0070】
その後、ステップS13に移り、制御回路210は、上記ステップS12で決定されたラベル用テープ3Aの搬送速度に応じて、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対してなす角度を決定する。例えば、具体的には、搬送速度が比較的大きい場合には、上記回転軸心Oがテープ3Aのテープ幅方向となす角度θ(図7参照)を比較的大きな値とする。逆に搬送速度が比較的小さい場合には、上記角度θを比較的小さな値とする。搬送速度がかなり小さい場合には、上記角度θを0に近い値としてもよい。このステップS13が各請求項のカッタ角度決定手段として機能する。
【0071】
その後、ステップS14で、制御回路210は、上記ステップS13で決定された角度に対応した角度制御信号を、変位駆動モータ708に出力する。これにより、変位駆動モータ708のウォームギア707が駆動され、当該ウォームギア707への駆動力が歯部709を介し偏心カム704に伝達される。そして、偏心カム704が回転軸705を中心に回転することで、カム突起706及びガイド長孔703を介し、ロータリーカッタ装置610が上記ステップS13で決定された角度となるように揺動駆動される。このステップS14が、各請求項の角度制御手段として機能する。
【0072】
なお、以上は、ロータリーカッタ装置610が!3Aの搬送経路に対してなす角度として、回転軸心Oがテープ幅方向となす角度θを基準に制御する例を示したが、これに限られない。すなわち、回転軸心Oが搬送経路の搬送方向となす角度等を基準に制御を行ってもよい。すなわち、ロータリーカッタ装置610の搬送経路に対する相対位置を変化させることで、搬送経路に対しロータリーカッタ装置610のなす向きを何らかの形で変化させれば足りる。
【0073】
上記ステップS14が終了したら、図18に戻り、制御回路210は、ステップS2において、上記ステップS12で決定された搬送速度となるように、プラテンローラ駆動回路209に制御信号を出力する。これにより、プラテンローラ26による駆動が開始され、上記搬送速度でラベル用テープ3Aの搬送が開始される。このステップS2が各請求項の搬送制御手段として機能する。
【0074】
そして、ステップS3に移り、制御回路210は、印刷駆動回路205に制御信号を出力する。これにより、印刷駆動回路205によるサーマルヘッド31の通電が行われ、サーマルヘッド31により、ラベル用テープ3Aの上記印字領域Sに対し、上記ステップS11で取得された印字情報に対応した文字や画像等の印字が開始される。
【0075】
その後、ステップS4で、ラベル用テープ3Aが、制御回路210は、上記ステップS11で取得された印字情報に対応した、サーマルヘッド31の印字終了位置まで到達したかどうかを判定する。なお、この判定は、例えば、ステップS2のテープ搬送開始から予め定められた所定の距離だけ搬送が行われたかどうかを判定する等、適宜の公知の手法で行えば足りる。印字終了位置となるまで判定が満たされずループ待機し、印字終了位置となったらステップS4の判定が満たされて、ステップS5に移る。
【0076】
ステップS5では、制御回路210は、印刷駆動回路205に制御信号を出力し、印刷駆動回路205によるサーマルヘッド31の通電を停止する。これにより、サーマルヘッド31による、ラベル用テープ3Aに対する印字が終了する。
【0077】
その後、ステップS6において、制御回路210は、ラベル用テープ3Aが、上記ステップS11で取得された印字情報に対応した、所定の切断位置(例えば印字領域Sの終端部から所定の距離にある位置)まで搬送されたかどうかを判定する。なお、この判定も、上記ステップS4同様、適宜の公知の手法で行えば足りる。切断位置に到達するまで判定が満たされずループ待機し、切断位置に到達したらステップS6の判定が満たされてステップS7に移る。
【0078】
ステップS7では、制御回路210は、ロータリーカッタ装置610の上記モータ638に対し駆動制御信号を出力する。これにより、モータ638の駆動が開始され、前述した手法により、印字が形成された後のラベル用テープ3Aに対し、当該ラベル用テープ3Aが搬送されている状態のままで切断が行われる。すなわち、ロータリーカッタ装置610が、回転体620の第1平刃621と、保持体630の第2平刃631との協働によって、搬送により移動している状態のラベル用テープ3Aの一方側から切り込みを開始した後、上記回転体620の回転によってラベル用テープ3Aの移動と同期しつつ他方側へと切り進むことにより、ラベル用テープ3Aに対して上記切断線hにほぼ沿った略直線的な切断を行う。これにより、印字ラベルTが生成される。
【0079】
その後、ステップS8において、制御回路210は、上記のように切断したラベル用テープ3A(すなわち印字ラベルT)の排出完了に対応して、プラテンローラ駆動回路209に制御信号を出力する。これにより、プラテンローラ26による駆動が停止され、ラベル用テープ3Aの搬送が停止され、このフローを終了する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態においては、制御回路210の制御に基づき、当該ロータリーカッタ装置610が変位駆動される。これにより、操作部212での操作者の入力に基づき可変に制御されるラベル用テープ3Aの搬送速度に対応して、ロータリーカッタ装置610の搬送経路に対してなす角度が制御され、当該角度が変化する。これにより、上述のようにして搬送速度が変更された場合であっても、その搬送速度に対応した最適な角度となるようにロータリーカッタ装置610の設置向きを変更し、ラベル用テープ3Aに対し搬送経路に略直交する方向への直線的な切断を確実に行うことができる。すなわち、テープ搬送速度が可変に制御されるラベル作成装置1においても、ロータリーカッタ装置610を用いて、確実にラベル用テープ3Aを搬送経路に直交する方向へ直線的に切断することができる。
【0081】
また、本実施形態では特に、ロータリーカッタ装置610は、第1平刃621を備えた回転体620を所定の一定速度で回転させるための回転駆動モータ638を有している。ラベル用テープ3Aの搬送速度が変わる場合に、搬送経路に直交する方向への直線的な切断を引き続き行うためには、第1平刃621を備えた回転体620の回転速度と、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対してなす角度との、いずれか一方を変えれば足りる。しかしながら、回転体620の回転速度が一定速度で回転する場合には、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対してなす角度を搬送速度に合わせて変更する必要がある。したがって、回転駆動モータ638がロータリーカッタ装置610の回転体620を一定速度で回転させる本実施形態においては、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対しなす角度の制御が、特に有効である。
【0082】
また、本実施形態では特に、ステップS12において、操作者のモード選択等を含む印字情報に基づいて搬送速度が自動的に決定され、その決定された搬送速度に合致するように、ロータリーカッタ装置610が搬送経路に対しなす角度がステップS13及びステップS14で自動的に変更される。この結果、操作者は、搬送速度の設定やロータリーカッタ装置610の角度設定を自ら行う必要なく、単に印字内容を設定したり印字モードを選択したりするだけで、確実にラベル用テープ3Aを搬送経路に直交する方向へ直線的に切断することができる。
【0083】
また、本実施形態では特に、ロータリーカッタ装置610は、回転体620に備えられた第1平刃621が、回転体620の回転とともに、保持体630に備えられた第2平刃631と協働し、切断を行う。これにより、円筒形の胴部の外周に設けた螺旋状の刃物の各部を順次ラベル用テープ3Aに切り込ませラベル用テープ3Aに対し直線的に切断を行う通常のロータリーカッタ装置610と同様の切断態様を、平刃のみを用いた構成により実現することができる。この結果、上記螺旋状の刃物を用いる構造と異なり、構造を簡素化できるとともに製造工程を簡素化でき、さらに製造コストを低減することができる。したがって、本実施形態では、前述した、搬送速度が変化する場合であってもラベル用テープ3Aを搬送経路に直交する方向へ直線的に切断するための構成を、安価に得ることができる。
【0084】
なお、以上においては、回転体20、保持体30の双方に平刃を用いたロータリーカッタ装置610を備えたラベル作成装置1において、当該ロータリーカッタ装置610の、被印刷物であるラベル用テープ3Aの搬送経路に対してなす角度を変化させた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、回転体の胴部の外周に螺旋状の刃物を設けた従来構造のロータリーカッタ装置を備えた印刷装置に本発明を適用し、当該ロータリーカッタ装置の被印刷物の搬送経路に対する角度を変化させてもよい。この場合も、上記同様の効果を得る。
【0085】
また、以上においては、ラベル用テープ3Aに対し印字を行って切断し印字ラベルTを作成したが、これに限られない。すなわち、被印刷物としての被印字テープに印字を行った後に別の基材テープと貼り合わせ、その貼り合わせたテープを切断して印字ラベルTを作成する方式(いわゆるラミネートタイプ)に本発明を適用してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0086】
さらに、以上では、印刷装置の一例としてラベル作成装置1に本発明を適用した場合を説明したが、その他にも、例えばA4、A3、B4、B5サイズ等の通常の被印刷用紙(被印刷物)に画像を形成したり文字を印刷する印刷装置に本発明を適用してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0087】
なお、以上において、図7及び図8に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。また、図18及び図19に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0088】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0089】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 ラベル作成装置
3 テープホルダ
3A ラベル用テープ
3B 巻芯
210 制御回路
704 偏心カム
708 変位駆動モータ
707 ウォームギア
708 歯部
610 ロータリーカッタ装置
620 回転体
621 第1平刃(回転刃)
624 平刃取付部
625 平刃支持部
630 保持体
631 第2平刃(固定刃)
632 保持部
635 揺動支持機構
638 回転駆動モータ
639 駆動伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送速度を可変に制御する搬送制御手段と、
前記搬送手段により搬送される前記被印刷物に対し、所望の印字を行う印字手段と、
前記搬送経路に対してなす角度が可変となるように当該搬送経路に設けられ、回転可能な回転刃と固定刃とを有し、前記印字手段により前記印字が形成された後に前記搬送経路を搬送されている状態の前記被印刷物に対し、回転する前記回転刃と前記固定刃との協働によって直線的な切断を行う、ロータリーカッタと、
前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度が変化するように前記ロータリーカッタを変位可能な変位駆動手段と、
前記搬送制御手段により可変に制御される前記搬送速度に応じて前記変位駆動手段の駆動を制御し、前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度を制御する、角度制御手段と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記ロータリーカッタは、
前記回転刃を所定の一定速度で回転させるための回転駆動手段を有する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記印字手段により印字する前記所望の印字の内容に関わる印字情報を取得する印字情報入力手段と、
前記印字情報入力手段により取得された前記印字情報に応じて、前記搬送手段による搬送速度を決定する搬送速度決定手段と、
前記搬送速度決定手段により決定された前記搬送速度に応じて、前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度を決定するカッタ角度決定手段と、
を有し、
前記搬送制御手段は、
前記搬送速度決定手段により決定された搬送速度となるように、前記搬送手段を制御し、
前記角度制御手段は、
前記ロータリーカッタが前記搬送経路に対してなす角度が、前記カッタ角度決定手段により決定された角度となるように、前記変位駆動手段を制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記ロータリーカッタは
前記筐体が、
一方側の第1壁面と、他方側の第2壁面と、を備えており、
前記回転刃が、略直線状の前記第1刃先部を備えた第1平刃であり、
前記固定刃が、略直線状の前記第2刃先部を備えた第2平刃であり、
前記回転体が、
前記回転軸心のまわりに回転可能となるように前記筐体に設けられ、前記回転軸心と交わる平面上において前記回転軸心から離間した位置に配置された、平刃取付部と、
前記第1平刃の前記他方側の端部と前記一方側の端部が同一径の回転軌跡となるように、当該第1平刃を前記平刃取付部に対して支持する平刃支持部と、
を有し、
前記保持体は、
前記回転軸心と所定間隔を介し略平行となるように前記第2平刃を保持可能な保持部を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記被印刷物としてのラベル用テープを所定の外周径を有する巻芯に巻回したテープロールを着脱可能に構成され、前記装置内に設けられたロールホルダを有し、
前記搬送手段は、
前記ロールホルダに装着された前記テープロールから供給される前記ラベル用テープを搬送し、
前記印字手段は、
前記搬送手段により搬送される前記ラベル用テープに対し、所望の印字を行い、
前記ロータリーカッタは、
前記印字手段により前記所望の印字がなされた前記ラベル用印字テープを所望の長さに切断し、印字ラベルを作成する
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−158095(P2012−158095A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19254(P2011−19254)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】