説明

印刷装置

【課題】印刷装置において、排紙トレイ上での印刷書類の混在を防ぎ、もってその後の仕分け作業を容易にすることにある。
【解決手段】印刷装置(複合機31で例示)の制御部(CPU321等)は、実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かを判定し、積載されている場合には、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ上記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在するか否かを確認し、存在する場合には、上記実行対象の印刷ジョブによる用紙の排出先を、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイから他の排紙トレイに変更し、後続の印刷ジョブが存在しない場合並びに上記積載がなされていない場合には、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイをそのまま採用する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の排紙トレイを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置はユーザが印刷指示を送るホストコンピュータにネットワークを介して接続可能となっており、場合によってはプリントサーバを経由して印刷指示を受信するようになっている。ここで、印刷装置には、プリンタ機能単体の装置の他に、スキャン機能、ファクシミリ通信機能、ファイリング機能などの機能を兼ね備えた複合機と呼ばれるものもある。
【0003】
例えば、複数の印刷装置に接続されたホストコンピュータがいずれかの印刷装置に印刷ジョブを転送して印刷を行わせる場合、ホストコンピュータにプリントサーバを接続しておくことにより、ホストコンピュータが複数の印刷装置の機種等の情報を取得して、複数の印刷装置の中から使用したい印刷装置をユーザが予め選択し、選択された印刷装置に印刷を行わせることもできる。
【0004】
特許文献1には、印刷処理の迅速化及び印刷指示設定の簡略化を図るために、プリントサーバにおいて、接続された複数の印刷装置のそれぞれがもつ機能を登録しておき、印刷を実行させる際にはそれらの印刷装置の中から使用可能な印刷装置を自動的に選択する技術が開示されている。
【0005】
また、印刷装置では通常、複数の印刷ジョブを受け付けることが可能に構成されている。そして、そのような構成の印刷装置は、送信されてきた(又は印刷装置自体で実行された)印刷ジョブを、基本的に印刷セット数や印刷枚数に限らず送られた順番(つまり印刷ジョブを受け付けた順番)に実行されていく。
【0006】
一方で、このような複数の印刷ジョブを受け付け可能な印刷装置において、印刷枚数に応じて印刷ジョブの実行順序を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2には、印刷ジョブの印刷枚数が所定枚数以下の場合、その印刷ジョブより後続の印刷ジョブを優先して実行する技術や、所定枚数より少ない印刷枚数の印刷ジョブが他の印刷ジョブを追越すように制御すると共に、追越される印刷ジョブ毎に追越される回数に制限を設けて制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−250544号公報
【特許文献2】特開2009−56611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の印刷装置のように、印刷セット数や印刷枚数に限らず送られた順番に印刷ジョブを実行する構成では、自分が送信した印刷ジョブより前の印刷ジョブの印刷枚数や印刷セット数が多いと、自分の印刷ジョブが実行されるまでに時間がかかる。
【0009】
また、特許文献2に記載の印刷装置のように印刷枚数に応じて印刷ジョブの実行順序を制御する構成でも、他の印刷ジョブとの比較により自分の印刷ジョブが後で実行されることがあるため、実行までに時間がかかる。例えば印刷枚数が多い方の印刷ジョブを優先すると、自分が送信した印刷ジョブより前の印刷ジョブの印刷枚数が多い場合は勿論のこと、後の印刷ジョブの印刷枚数が多い場合でも、自分の印刷ジョブが後で実行されるため、実行までに時間がかかる。また、印刷枚数が少ない方の印刷ジョブを優先すると、自分が送信した印刷ジョブより前の印刷ジョブの印刷枚数が少ない場合は勿論のこと、後の印刷ジョブの印刷枚数が少ない場合でも、自分の印刷ジョブが後で実行されるため、実行までに時間がかかる。
【0010】
そして、このように印刷ジョブを送ってから実行までに時間がかかると、後からさらに他の印刷ジョブが送られてくる可能性が高くなるが、そのために、自分の印刷書類が排紙トレイ上で他人の印刷書類と混在した状態になる可能性が高くなってしまう。
【0011】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷装置において、排紙トレイ上での印刷書類の混在を防ぎ、もってその後の仕分け作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、印刷部と、複数の排紙トレイと、前記印刷部による印刷を制御する制御部とを備えた印刷装置であって、前記制御部は、実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かを判定し、積載されている場合には、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ前記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在するか否かを確認し、存在する場合には、前記実行対象の印刷ジョブによる用紙の排出先を、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイから他の排紙トレイに変更し、前記後続の印刷ジョブが存在しない場合、並びに前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されていない場合には、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイをそのまま採用する制御を行うことを特徴としたものである。
【0013】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ前記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在する場合、優先順位の低い方の印刷ジョブによる用紙の排出先を変更する制御を行うことを特徴としたものである。
【0014】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブと前記後続の印刷ジョブが同じ優先順位である場合には、前記実行対象の印刷ジョブを前記後続の印刷ジョブの後に実行するように、印刷順を変更する制御を行うことを特徴としたものである。
【0015】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブに所定のコマンドが含まれる場合にのみ、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かの判定を実行することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る印刷装置によれば、排紙トレイ上での印刷書類の混在を防ぎ、もってその後の仕分け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る印刷装置の一例としての複合機を備えたプリントシステムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のプリントシステムにおける端末装置の一構成例を示すブロック図である。
【図3】図1のプリントシステムにおけるプリントサーバの一構成例を示すブロック図である。
【図4】図1のプリントシステムにおける複合機の一構成例を示すブロック図である。
【図5】図4の複合機における印刷処理の一例を説明するためのフロー図である。
【図6】図5の印刷処理による排紙先の変更例を説明するための図である。
【図7】図5の印刷処理による排紙先の他の変更例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る印刷装置は、記録用紙に画像を形成するため装置であり、画像形成装置とも呼ばれる。以下、本発明に係る印刷装置について、印刷機能の他に、例えばスキャン機能、ファクシミリ受信機能、ネットワークファイリング機能などの機能も兼ね備えた複合機(MFP)を例に挙げて詳細に説明するが、印刷機能単体のものであってもよいし、他の機能の種類も例示したものに限ったものではない。
【0019】
図1は、本発明に係る印刷装置の一例としての複合機を備えたプリントシステムの一構成例を示すブロック図である。図1で例示するプリントシステムでは、複数の端末装置(PC)11、プリントサーバ21、及び複数の複合機31,32がネットワークNを通じて相互に接続されており、端末装置11、プリントサーバ21、及び複合機31,32のいずれの間でも印刷ジョブ等を送受することができるようにしている。ネットワークNは、LANやインターネット等を想定しているが、他の種類のネットワークを適用しても構わない。
【0020】
本発明に係る印刷装置は、複数の排紙トレイを備えるものであり、図1のプリントシステムにおいては排紙トレイを模式的に図示したように、2つの排紙トレイ314a、314bを備えた複合機31が該当し、1つの排紙トレイ320のみを備えた複合機32は該当しないものとする。
【0021】
図2は、図1のプリントシステムにおける端末装置の一構成例を示すブロック図で、図3は、図1のプリントシステムにおけるプリントサーバの一構成例を示すブロック図で、図4は、図1のプリントシステムにおける複合機の一構成例を示すブロック図である。なお、図2、図3においては、端末装置11及びプリントサーバ21が基本的に同一構成であるため、同様の作用を果たす部位の名称を同一にして、符号だけを変更している。
【0022】
図2、図3において、CPU111、211は、それぞれ、システムバス112、212を通じて各デバイス等を制御して端末装置11、プリントサーバ21を統括的に制御する。ROM113、213には、それぞれ、CPU111、211で実行されるBIOS(Basic Input /Output System)やオペレーティングシステム(OS)、端末装置11の機能、プリントサーバ21の機能を実現するために必要な各種プログラム等が記憶されている。これらの各種プログラムは、それぞれ外部メモリ114、214に一部又は全部が格納されていてもよい。また、各種プログラムはコンピュータ読み取り可能な可搬記録媒体に記録して、或いはネットワークなどを介して流通させることができる。端末装置11に組み込むプログラムとしては、複合機31や複合機32のプリンタドライバも含み、このプリンタドライバにはユーザが各種印刷設定を行って印刷を指示するためのユーザインターフェース(UI)画像が含まれるものとする。
【0023】
RAM115、215は、それぞれCPU111、211の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU111、211は、それぞれ、必要なプログラム等をROM113、213(及び外部メモリ114、214)からRAM115、215にロードして実行し、端末装置11の機能、プリントサーバ21の機能を実現する。
【0024】
入力コントローラ116、216は、それぞれ、キーボードやマウス等の操作入力部117、217からの入力をCPU111、211へと中継する。
【0025】
ビデオコントローラ118、218は、それぞれ表示デバイス119、219の表示制御を行う。CPU111、211は、それぞれRAM115、215等の表示メモリ領域にテキストや画像等をラスタライズする。ビデオコントローラ118、218は、それぞれこのラスタライズされたテキストや画像等を表示デバイス119、219の画面に表示する。また、CPU111、211は、それぞれ操作入力部117、217からの入力に応じて表示デバイス119、219の画面上のカーソルを移動させて、カーソルによる指示を可能にする。なお、表示デバイスは、液晶表示装置、有機EL表示装置等、如何なる種類のものであってもよい。
【0026】
メモリコントローラ121、221は、それぞれ外部メモリ114、214に対する読み書きを制御する。外部メモリ114は、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、或いはコンパクトフラッシュ(登録商標)等の携帯型メモリを含み、これらに対する読み書きを実行する。外部メモリ214も外部メモリ114と同様である。
【0027】
通信インターフェース(通信I/F)122、222は、ネットワークNを通じて、端末装置11、プリントサーバ21、複合機31との間でデータ通信を行うものであり、このデータ通信の通信制御を実行する。例えば、TCP/IPを用いた通信制御を行う。
【0028】
図4において、複合機31は、画像制御部311、原稿画像を読み取るスキャナ312、テキストや画像等を記録用紙に印刷する印刷部の例としてのプリンタ313、操作入力部316、及びカードリーダ317を備える。なお、図1における複合機32の構成は、本発明に係る印刷装置の一例である複合機31と比べ、1つの排紙トレイ320しか備えず且つ本発明に係る後述の排紙先の変更に係る制御を行わない点が異なるだけであるため、複合機32の説明は省略している。
【0029】
複合機31における画像制御部311は、スキャナ312及びプリンタ313を制御したり、ネットワークNや公衆回線(PSTN又はISDN等)を通じて印刷ジョブ等を送受信する。画像制御部311の構成例について説明する。
【0030】
画像制御部311において、CPU321は、システムバス322を通じて各デバイス等を制御し、複合機31全体を制御する。ROM323には、ブートプログラムや各種制御プログラムが格納されている。ハードディスクドライブ(HDD)324には、印刷ジョブが一時的に格納されると共に、各種のアプリケーションプログラムや他の画像データ等が格納されている。また、これらのプログラムはコンピュータ読み取り可能な可搬記録媒体に記録して、或いはネットワークなどを介して流通させることができる。
【0031】
RAM325は、CPU321の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU321は、必要なプログラム等をROM323及びHDD324からRAM325へとロードして実行し、複合機31を制御する。
【0032】
操作インターフェース(操作I/F)326は、操作入力部316のインターフェースであり、画像を操作入力部316に出力して、この画像を操作入力部316に付設の表示デバイス(図示せず)の画面に表示させる。また、操作I/F326は、表示デバイスの画面に重ねられたタッチパネルに対する指示をそのタッチパネルから入力して、表示デバイスの画面に表示されたボタンやキー等に対する入力を判定する。このボタンやキーとしては、スタートキー、ストップキー、IDキー、リセットキー等がある。スタートキーは、スキャナ312による原稿画像の読み取り開始を指示するときに操作される。ストップキーは、スキャナ312やプリンタ313の動作の停止を指示するときに操作される。IDキーは、ユーザの氏名やパスワードを入力するときに操作される。リセットキーは、操作入力部316による設定を初期設定するときに用いられる。なお、表示デバイスは、液晶表示装置、CRT、EL表示装置等、如何なる種類のものであってもよい。
【0033】
通信インターフェース(通信I/F)327は、ネットワークNを通じて、端末装置11やプリントサーバ21との間でデータ通信を行うものであり、このデータ通信の通信制御を実行する。MODEM(モデム)328は、公衆回線に接続され、公衆回線を通じて相手側通信端末との間でファクシミリ通信等を行う。
【0034】
外部インターフェース(外部I/F)329は、USB、IEEE1394、プリンタポート、RS−232C等の外部入力を受け付けるインターフェースであり、ここにICカードの読み取り用のカードリーダ317が接続される。CPU321は、この外部I/F329を介して、カードリーダ317によりICカードから読み取られた認証データを入力して取得する。また、外部I/F329には、カードリーダの他に、携帯型メモリ(例えばUSBメモリ)を着脱自在に接続することが可能なリーダライターやコネクタ等(図示ぜず)が接続されている。
【0035】
カードリーダ317は、CPU321により制御され、ICカード(例えば、ソニー社のフェリカ(Felica、登録商標))から認証データを読み取り、この認証データを外部I/F329を介してCPU321に通知する。このように複合機31ではICカードによるユーザ認証が可能なように構成することもできる。
【0036】
IMAGE BUS I/F(イメージバスI/F)331は、システムバス322と画像データ転送用の画像バス332とを相互接続するバスブリッジであり、両方のバス間でデータ構造の相互変換を行う。
【0037】
画像バス332は、PCIバス又はIEEE1394で構成されている。この画像バス332には、ラスタイメージプロセッサ(PIP)333、プリンタインターフェース(プリンタI/F)334、スキャナインターフェース(スキャナI/F)335、及び画像処理部336が接続されている。RIP333は、例えば、PDLコード等のベクトルデータをビットマップイメージに展開する。
【0038】
プリンタI/F334は、プリンタ313を画像制御部311に接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。プリンタ313は、操作入力部316の操作によりプリントの開始が指示されると、CPU321により起動される。このプリンタ313は、画像(ラスタイメージ)を記録用紙に記憶するものであり、感光体上にトナー像を形成して、このトナー像を記録用紙に転写する電子写真方式、インクを記録用紙上に直接吐出するインクジェット方式等のいずれでも構わない。なお、プリンタ313は、異なる用紙サイズ又は異なる用紙向きの選択を可能にするために複数の給紙トレイを備えている。
【0039】
また、スキャナI/F335は、スキャナ312を画像制御部311に接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。スキャナ312は、操作入力部316の操作によりスキャナの開始が指示されると、CPU321により起動される。このスキャナ312が起動されると、原稿用紙がトレイから引き出されて、CCDラインセンサにより原稿画像が読み取られ、この原稿画像(ラスタイメージ)を示す画像データが生成出力される。
【0040】
画像処理部336は、画像データに対して補正、加工、編集を行うものである。例えば、複合機31の特性に応じた補正や解像度変換等を行う。或いは、画像の回転、多値画像データに対するJPEGの圧縮伸長変換処理、及び2値画像データに対するJBIG、MMR、MH等の圧縮伸張処理を行う。
【0041】
さて、このような構成のプリントシステムにおいて、端末装置11は、プリンタドライバの実行により印刷ジョブの生成や送信を行うことができる。プリンタドライバは、例えばアプリケーションプログラムから画像データを受け取って、画像データと印刷処理命令からなる印刷ジョブを生成したり、印刷ジョブを記憶デバイスから読み出し、この印刷ジョブをネットワークNを通じてプリントサーバ21に送信する。
【0042】
この印刷ジョブは、プリントサーバ21から複合機31に直ちに転送されて実行されるか、又はプリントサーバ21に一旦保管される。プリントサーバ21に一旦保管された場合は、所望の複合機31からその印刷ジョブを指定して、この印刷ジョブをプリントサーバ21から複合機31へと転送し、この印刷ジョブを複合機31で実行する。
【0043】
従って、プリントシステムにおいては、端末装置11からプリントサーバ21を介して所望の複合機31へと印刷ジョブを直ちに送受して、複合機31で印刷ジョブを実行することができる(通常の印刷処理と称す)。また、端末装置11からプリントサーバ21へと印刷ジョブを送受して、プリントサーバ21に印刷ジョブを一旦保管し、この後にプリントサーバ21の印刷ジョブを複合機31から指定して読み出すことができる(プルプリントと称す)。一方で、プリントシステムはプリントサーバ21を設けないように構成することができる。その場合、端末装置11から直接、印刷ジョブを所望の複合機31へ送信すればよい。
【0044】
ここで、通常の印刷処理及びプルプリントを詳しく説明する。まず、印刷ジョブをプリントサーバ21から複合機31へと直ちに転送するという通常の印刷処理の場合、図2の端末装置11において、CPU111によりプリンタドライバを実行して、RAM115内に印刷ジョブを生成したり、印刷ジョブをメモリコントローラ121を介して外部メモリ114から読み出し、この印刷ジョブを通信I/F122からネットワークNを通じてプリントサーバ21に送信する。
【0045】
図3のプリントサーバ21では、端末装置11からの印刷ジョブを通信I/F222で受信し、この印刷ジョブをメモリコントローラ221を介して外部メモリ214に記憶し、この印刷ジョブを通信I/F222から複合機31へと直ちに送信する。
【0046】
図4の複合機31では、プリントサーバ21からの印刷ジョブを通信I/F327で受信し、この印刷ジョブをHDD324等に一旦記憶する。この印刷ジョブは、HDD324等から読み出され、イメージバスI/F331を介して画像処理部336に引き渡され、画像処理部336でその印刷ジョブの画像データに対する画像処理を施されてから、プリンタI/F334を介してプリンタ313へと引き渡される。プリンタ313は、この印刷ジョブを解析し、この印刷ジョブの画像データによって示される画像(ラスタイメージ)を記録用紙に記録する。
【0047】
そして、本発明における複合機31は、外部から、若しくは本体の操作部(操作入力部316)から複数の印刷ジョブを受け付けることが可能に構成されている。受け付けた印刷ジョブは上述のようにHDD324に一時的に保管しておき、必要に応じて読み出せばよい。ここで、操作入力部316からの印刷ジョブにはコピー指示に基づき読み取ったスキャンデータを印刷するジョブや、記憶装置に記憶されたファイルを印刷指示に基づき読み出して印刷するジョブも含めてよい。
【0048】
本発明の主たる特徴は、複合機31に印刷ジョブが溜まっている場合に排出先の変更が可能となっている点にある。そのため、複合機31は、プリンタ313で印刷された用紙(印刷書類)を排紙するための複数の排紙トレイを備える。ここでは2つの排紙トレイ314a、314bで例示するが、3つ以上の排紙トレイが設けられていても同様に適用できる。また、各排紙トレイ314a、314bには、それぞれ1枚以上の用紙が積載しているか否かを検知するセンサ315a、315bが設置されている。
【0049】
そして、画像制御部311で例示したように、複合機31はプリンタ313による印刷を制御する制御部を備えるが、この制御部はセンサ315a、315bに検知を命令してその結果を受けること、並びに用紙の排出先、つまり排紙先の制御も行うことが可能となっている。この制御部は、画像制御部311において、主にCPU321、ROM323、RAM325、及びHDD324に制御用のプログラムを実行可能に組み込むなどにより、複合機31に搭載することができる。以下、この制御部による制御をCPU321の制御として説明する。
【0050】
CPU321は、実行対象の印刷ジョブ(実行対象となった印刷ジョブ)で指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かを、センサ315a、315bでの検知を実行することで判定する。ここで、上記実行対象の印刷ジョブとは、通常の印刷処理の場合には受け付けた印刷ジョブのうちジョブ解析により処理を開始した印刷ジョブが該当し、プルプリントの場合には複合機31から指定して読み出したプリントサーバ21の印刷ジョブが該当する。
【0051】
CPU321は、上記実行対象の印刷ジョブについて、その印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されていないと判定した場合には、そこで指定された排紙トレイをそのまま採用し、その排紙トレイに用紙を排出するように制御すればよい。
【0052】
一方で、CPU321は、積載されている場合には、さらに、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイ(例えば排紙トレイ314a)と同じ排紙トレイが指定され、且つ上記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在するか、否かを確認する。例えば、まず後続の印刷ジョブの有無を確認し、後続の印刷ジョブがある場合にはその後続の印刷ジョブが同じ排紙トレイの指定があるか否かを確認すればよい。なお、以下では、印刷ジョブにおいて排紙トレイが指定されていることを前提に説明しているが、もし、後続の印刷ジョブ及び/又は実行対象の印刷ジョブに排紙トレイの指定がなければ、デフォルトの排紙トレイが選択されていることを前提に判定を行えばよい。
【0053】
CPU321は、このような後続の印刷ジョブが存在する場合には、上記実行対象の印刷ジョブによる用紙の排出先を、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイ(例えば排紙トレイ314a)から他の排紙トレイに変更する制御、つまり違う排紙トレイ(この例では排紙トレイ314b)に用紙を排出する制御を行う。一方、存在しない場合には、CPU321は、そのまま指定された排紙トレイ(この例では排紙トレイ314a)に用紙を排出するように制御すればよい。
【0054】
このように、本発明では、指定された排紙トレイに印刷物である印刷書類が積載されていない場合や、後続のジョブで指定された排紙トレイと異なる場合には、そのまま印刷出力させ、後続の印刷ジョブと同じ排紙トレイが指定されている場合には、他の排紙トレイに変更して印刷出力させる。
【0055】
本発明ではこのような制御により、排紙トレイ上の最上位の位置に排紙されるため、後続ジョブの他の排紙トレイへのジョブの排出中での用紙の取り出し作業を容易に行うことが可能となる。つまり、従来、特に緊急で印刷出力する場合など、他のユーザの印刷物と混在した場合、仕分け作業がより煩わしいという問題があったが、本発明では、排紙トレイ上での印刷書類の混在を防ぎ、もってその後の仕分け作業を容易にすることができる。
【0056】
ここで、上記実行対象の印刷ジョブの印刷書類が実行時点で最上位にきていれば問題ないので(無論、実行後の印刷ジョブについては制御できるものではない)、変更後の他の排紙トレイに印刷書類が積載されているか否かは問わない。
【0057】
次に、本発明に係る複合機における印刷処理の好ましい例について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、図4の複合機における印刷処理の一例を説明するためのフロー図である。また、図6は図5の印刷処理による排紙先の変更例を説明するための図で、図7は図5の印刷処理による排紙先の他の変更例を説明するための図である。
【0058】
図5の流れに沿って印刷処理について説明すると、まず、複合機31は印刷ジョブを受信し、HDD324に一時保管する(ステップS1)。次いで、複合機31のCPU321は、一時保管した印刷ジョブを解析し、指定された排紙トレイの情報を読み出し、その排紙トレイ(例えば排紙トレイ314a)に用紙が積載されているか否かを、センサ315aでの検知により判定する(ステップS2)。積載されていない場合(ステップS2でNOの場合)には、そのまま印刷ジョブを実行する(ステップS7)。このとき、排紙先もそのままとなっている。
【0059】
一方、積載されていた場合(ステップS2でYESの場合)、CPU321は、HDD324を確認し、後続の印刷ジョブが存在するか否かを判定し(ステップS3)、存在しない場合にはステップS7に進みそのまま印刷ジョブを実行する。このとき、排紙先もそのままとなっている。
【0060】
後続の印刷ジョブが存在する場合(ステップS3でNOの場合)には、CPU321は、実行対象の印刷ジョブの排紙トレイ(例えば排紙トレイ314a)と後続の印刷ジョブの排紙トレイが同じか否かを判定し(ステップS4)、同じでない場合(NOの場合)にはステップS7に進みそのまま印刷ジョブを実行する。このとき、排紙先もそのままとなっている。
【0061】
排紙トレイが同じであった場合(ステップS4でYESの場合)には、CPU321は後続の方が優先順位が高いか否かを判定し(ステップS5)、低い場合(NOの場合)にはステップS7に進みそのまま印刷ジョブを実行する。このとき、排紙先もそのままとなっている。
【0062】
後続の方が優先順位が高い場合(ステップS5でYESの場合)には、CPU321は、排紙先を他の排紙トレイ(この例では排紙トレイ314b)に変更してからステップS7に進み、上記実行対象の印刷ジョブを実行して、印刷書類をその排紙トレイ(この例では排紙トレイ314b)に出力する。この結果、上記実行対象の印刷ジョブについては、後続の印刷ジョブの排紙トレイ314aとは異なる排紙トレイ314bに出力され、且つその排紙トレイの一番上位に出力されることになる。
【0063】
以上の説明では、後続の印刷ジョブが1つあることを前提に説明したが、2つ以上存在しても同様に適用できる。例えばステップS4の判定で排紙先が同じ後続の印刷ジョブがあるか否かを判定し、ステップS5で同じ後続の印刷ジョブについて優先順位を判定すればよい。
【0064】
ステップS5の判定及びその後の処理で説明したように、CPU321は、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ上記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在する場合、優先順位の低い方の印刷ジョブによる用紙の排出先を変更する制御を行うことが好ましい。
【0065】
ここで、印刷ジョブの優先順位については、端末装置11においてプリンタドライバのUI画像上で優先順位を設定することを可能にしておけばよい。優先順位の設定はユーザ自身では他人のと比較できないため、優先度合で設定できるようにしておけばよい。例えば、UI画像に優先度合を選択設定するラジオボタンを用意しておき、その優ラジオボタンのいずれかが選択操作された場合に、その選択された優先度合を示すコマンドが印刷ジョブに含まれるようにしておけば、CPU321がそのコマンドを判定することができる。なお、いずれも選択操作されない場合には通常の優先度合であると判定すればよいため、そのようなコマンドを含めるか、優先度合に関するコマンドを含まないようにすればよい。このように、優先順位は印刷ジョブに含ませることができる。
【0066】
他の例として、複合機31において、ユーザに応じた優先順位を予め決めてその情報をHDD324等に格納しておき、ユーザ認証結果や端末装置11の端末番号又はログインIDなどを参照して、CPU321が印刷ジョブ毎に優先順位を判定することもできる。例えば、部署内での役職などにより優先順位を決めておけばよい。
【0067】
以上のような判定の具体例について、図6及び図7を参照して説明する。図6(A)に示すように、ジョブ1、2、3、4ではそれぞれトレイ1、トレイ1、トレイ2、トレイ2が指定されているとする。なお、本発明では印刷枚数に応じた処理を行わないが、印刷枚数も図示している。優先順位の情報としては、ジョブ1、3の優先度合が高く、ジョブ2、4の優先度合が低く設定されている。
【0068】
まず、上記実行対象の印刷ジョブとしてのジョブ2に先行し、先のジョブ1が実行される。そして、ジョブ2を実行しようとした段階で、ジョブ1の実行の間にジョブ3、4が溜まり、図6(B)に示すような状態となる。この場合、ジョブ3、4の排出先はトレイ2であってジョブ2の排出先と異なるため、ジョブ2はそのまま印刷出力される。
【0069】
図7(A)に示すように、図6(A)と比較して、ジョブ1、2、3、4の全てにおいてトレイ1が指定されている点が異なる場合について説明する。上記実行対象の印刷ジョブとしてのジョブ2に先行し、まず先のジョブ1が実行されるまでは同じである。そして、ジョブ2を実行しようとした段階で、ジョブ1の実行の間にジョブ3、4が溜まり、図7(B)に示すような状態となる。この場合、優先度合の低いジョブ2の排出先がジョブ3、4の排出先と異なるようトレイ2に変更され、印刷出力される。
【0070】
また、CPU321は、上記実行対象の印刷ジョブと上記後続の印刷ジョブが同じ優先順位である場合には、ステップS5の判定だけでは上手く最上位に排紙できない場合がある。よって、CPU321は、同じ優先順位である場合には、上記実行対象の印刷ジョブを上記後続の印刷ジョブの後に実行(印刷出力)するように、印刷順を変更する制御を行ってもよい。これにより、できるだけ排紙トレイ上の最上位の位置に排出することが可能となる。但し、上述したように、ステップS4の判定で排紙先が同じである場合のみ優先順位を判定すればよい。例えば図7(B)のような例では排出先を変更することでジョブ2が最上位の位置になるため、このような印刷順の変更制御は行わなくて済むことになる。
【0071】
また、以上の処理例では常に排出先変更が必要か否かを判定したが、この判定を行うか否か自体も設定可能にしておくことが好ましい。つまり、CPU321は、上記実行対象の印刷ジョブに所定のコマンドが含まれる場合にのみ、上記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かの判定を実行することが好ましい。上記所定のコマンドは、優先仕分けを示すコマンドを指す。例えば、UI画像に優先仕分けボタン(選別印刷ボタン)を用意しておき、その優先仕分けボタンの操作を行った場合に、印刷ジョブに優先仕分けを示すコマンドが含まれるようにしておけば、そのコマンドを判定することで、CPU321が排紙先変更が必要か否かの判定を実行するか否かを判断できる。
【0072】
このような構成により、通常は気にせず印刷実行ボタンの選択により印刷を指示し、急ぐときだけ優先仕分けボタンを選択して印刷を指示することができる。よって、急ぐときには、印刷後の用紙の回収時に他の印刷ジョブの用紙が混ざりにくく、混ざっていたとしても取り分けやすく一番上になっているため、直ぐに用紙を取り分けることができる。
【符号の説明】
【0073】
11…端末装置、21…プリントサーバ、31,32…複合機、311…画像制御部、312…スキャナ、313…プリンタ、314a,314b…排紙トレイ、315a,315b…センサ、316…操作入力部、317…カードリーダ、320…排紙トレイ、321…CPU、322…システムバス、323…ROM、324…HDD、325…RAM、326…操作I/F、327…通信I/F、328…MODEM、329…外部I/F、332…画像バス、333…RIP、334…プリンタI/F、335…スキャナI/F、336…画像処理部、N…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部と、複数の排紙トレイと、前記印刷部による印刷を制御する制御部とを備えた印刷装置であって、
前記制御部は、実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かを判定し、
積載されている場合には、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ前記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在するか否かを確認し、存在する場合には、前記実行対象の印刷ジョブによる用紙の排出先を、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイから他の排紙トレイに変更し、
前記後続の印刷ジョブが存在しない場合、並びに前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されていない場合には、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイをそのまま採用する制御を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイと同じ排紙トレイが指定され且つ前記実行対象の印刷ジョブより後に印刷が実行される後続の印刷ジョブが存在する場合、優先順位の低い方の印刷ジョブによる用紙の排出先を変更する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブと前記後続の印刷ジョブが同じ優先順位である場合には、前記実行対象の印刷ジョブを前記後続の印刷ジョブの後に実行するように、印刷順を変更する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記実行対象の印刷ジョブに所定のコマンドが含まれる場合にのみ、前記実行対象の印刷ジョブで指定された排紙トレイに用紙が積載されているか否かの判定を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52593(P2013−52593A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192519(P2011−192519)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】