説明

印字装置

【課題】蓋体が開放されたときにサーマルヘッドの発熱部を保護することができる印字装置を提供することを目的とする。
【解決手段】印字装置1は、感熱紙60を収容する収容部4と、発熱部12の発熱により感熱紙60に対して情報を記録するサーマルヘッド10とが一体的に形成されて構成されている。さらに、印字装置1は、収容部4内を閉塞する閉塞位置と収容部4を開放する開放位置とで変位可能に保持される蓋体20を備えており、この蓋体20の外面20aには、帯電した静電気を除電する除電ブラシ23が固定されている。そして、蓋体20が閉塞位置となるときに除電ブラシ23が発熱部12から離間し、蓋体20が開放位置となるときに除電ブラシが発熱部12に接触するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱紙に対してサーマルヘッドの発熱部により熱を加えることで情報を記録する印字装置が使用されている。このように、サーマルヘッドの発熱によって感熱紙に記録する感熱式の印字装置は、インクリボンやインクカートリッジ等を使用せず小型軽量化でき携帯性に優れるといったメリットがあることから、車内販売や宅配等の用途で広く用いられている。このような感熱式の印字装置としては、例えば、下記特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1には、ロール紙(P)の搬送とサーマルプリンタヘッド(155)の発熱素子の選択的な駆動とを同期させることで、蓄積する印字データに基づくロール紙(P)への印字を行なうことができるポータブルプリンタが記載されている。このポータブルプリンタは、用紙収納部を有するベースハウジング(103)に、この用紙収納部を覆うようにオープンカバー(104)が開閉自在に取り付けられており、ベースハウジング(103)とオープンカバー(104)との間に用紙収納部に収納されたロール紙(P)の案内経路を形成するハウジング(102)を備えている。そして、ロール紙(P)を搬送して印字を行なう印字搬送部(154)をハウジング(102)内に内蔵し、印字済みのロール紙(P)を発行する発行口(109)の奥側に金属部材からなるカッタ(110)を有し、このカッタ(110)を覆うように、静電気を気中放電可能な除電シート(112)を設けて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように構成される印字装置では、当該印字装置と感熱紙との摩擦等によって静電気が発生し、装置内部に電荷が蓄積されることがある。そして、感熱紙を交換するときなどに当該装置の筐体の蓋が開けられて装置内部に人の手が触れると、装置内部へ電荷が流れ、記録品質に影響を与える虞があった。特に上記特許文献1のように、筐体の蓋(オープンカバー(104))を開けた際に、サーマルヘッドの発熱部(印字搬送部(154))が外部に露出する構成では、人の手が発熱部に触れやすく、印字搬送部に蓄えられた電荷が人の手が触れることで放電され、静電気による火花放電によって、発熱部及び発熱部に接続される回路等が破壊されるといったことが懸念されていた。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、蓋体が開放されたときにサーマルヘッドの発熱部を保護することができる印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、感熱紙を収容すると共に、前記感熱紙を一方側から排出可能に保持する収容部と、前記収容部から排出される前記感熱紙と接触する発熱部を備え、前記発熱部の発熱により前記感熱紙に対して情報を記録するサーマルヘッドと、前記収容部と前記サーマルヘッドとが一体的に形成されてなる装置本体に保持され、前記収容部内を閉塞する閉塞位置と、前記収容部を開放する開放位置とで変位可能な蓋体と、前記蓋体を変位可能に保持する保持機構と、帯電した静電気を除電する除電部材と、を備え、前記蓋体が前記閉塞位置となるときに前記除電部材が前記発熱部から離間し、前記蓋体が前記開放位置となるときに、前記除電部材が前記発熱部に接触するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、蓋体が収容部から開放されたときに、除電部材がサーマルヘッドの発熱部に接触し、発熱部が除電部材に覆われるようになるため、蓋体の開放時に人の手が発熱部に触れることを防ぐことができ、人の手が接触することに起因する内部部品の不具合を効果的に抑制することができる。特に、蓋体の開放時には、発熱部に帯電した静電気が除電部材により除電されるので、発熱部に帯電した静電気が人の手を媒介として内部部品に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ、発熱部やこれに関係する部品をより確実に保護することができる。
【0009】
請求項2の発明では、除電部材は、蓋体の一部に固定されている。そして、蓋体は、閉塞位置となるときに当該蓋体に固定された除電部材が発熱部から離間し、開放位置となるときに当該蓋体に固定された除電部材が発熱部に接触するように構成されている。
この構成によれば、蓋体の開放時に除電部材を自動的に発熱部に接触させ得る構成を、複雑な機構等を用いることなく部品点数を抑えて実現することができる。
【0010】
請求項3の発明では、収容部は、ロール紙からなる感熱紙を収容しており、蓋体はこのロール体の外周部の周囲を部分的に覆うと共に、ロール体の外周部の周囲で変位するように回動可能に保持されている。また、蓋体の外面には、除電部材が固定されている。そして、蓋体が閉塞位置となるときに外面に固定された除電部材が発熱部から離間し、蓋体が開放位置となるときに外面に固定された除電部材が発熱部に接触するように構成されている。
このように、蓋体がロール紙の周囲で回動するように構成されていると、当該蓋体の開閉を容易に行うことができるようになり、蓋体の開閉に必要なスペースを削減し易くなる。また、蓋体の外面が発熱部付近で回動するように回動軌跡を設定するといった簡易な対応により、除電部材が発熱部に対して確実に接近・離間し得る構成を実現することできる。
【0011】
請求項4の発明では、蓋体は、当該蓋体の回動軸を中心とする周方向に沿って湾曲すると共にロール体の外周部を部分的にカバーするカバー部を備えている。また、このカバー部の周方向一端側に除電部材が固定され、他端側には転動部材が回転可能に保持されている。そして、蓋体が閉塞位置となるときに転動部材が発熱部と対向して配置されるように構成されている。
このように、転動部材をさらに蓋体に設けることで、この転動部材を除電部材と共に蓋体の回動軌跡上に変位させることができる。そして、蓋体の開放時に除電部材を自動的に発熱部に接触させ得ると共に、蓋体の閉塞時に転動部材を自動的に発熱部に接触させ得る構成を、除電部材及び転動部材の配置を調整する(蓋体の所定位置にそれぞれ配置する)といった簡易な対応により実現することができる。
【0012】
請求項5の発明では、除電部材が固定された移動部材を備えている。また、この移動部材は、蓋体とは別部材として構成されており、第2の保持機構によって、蓋体の開放動作と連動して発熱部に対して相対移動可能に保持されている。そして、移動部材は、蓋体が閉塞位置となるときに除電部材が発熱部から離間し、蓋体が開放位置となるときに除電部材が発熱部に接触するように構成されている。
このように、蓋体とは別部材で構成される移動部材に除電部材を設ける構成とすれば、蓋体の形状に依らず、蓋体の開放時に除電部材を自動的に発熱部に接触させ得る構成を実現することができる。また、既存の印字装置において、大幅な設計変更をしなくとも、移動部材の構成を追加するといった簡易な変更により、上記構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施形態に係る印字装置を概略的に例示する斜視図であり、蓋体が閉塞位置にあるときの状態を示すものである。
【図2】図2(A)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す斜視図であり、図2(B)は、蓋体の斜視図であり、図2(C)は、ロール紙の斜視図である。
【図3】図3は、図2(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る印字装置における蓋体の開放動作を説明する図であり、図4(A)は、蓋体が閉塞位置にあるときの状態を示す説明図であり、図4(B)は、蓋体が閉塞位置から開放位置へ変位する途中の状態を示す説明図であり、図4(C)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す説明図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る印字装置を概略的に例示する斜視図であり、蓋体が開放位置にあるときの状態を示すものである。
【図6】図6(A)は、スライド部材の斜視図であり、図6(B)は、スライド部材と発熱部の位置関係を示す説明図であり、図6(C)は、図5とは異なる方向から見た斜視図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係る印字装置における蓋体の開放動作を説明する図であり、図7(A)は、蓋体が閉塞位置にあるときの状態を示す説明図であり、図7(B)は、蓋体が閉塞位置から開放位置へ変位する途中の状態を示す説明図であり、図7(C)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の印字装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(印字装置の全体構成)
まず、第1実施形態に係る印字装置1の全体構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る印字装置を概略的に例示する斜視図である。図2(A)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す斜視図であり、図2(B)は、蓋体の斜視図であり、図2(C)は、ロール紙の斜視図である。図3は、図2(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【0015】
本実施形態の印字装置1は、樹脂材料などからなる筐体3によって外郭が構成されている。そして、この筐体3には、感熱紙60を収容する収容部4と、この収容部4内に発熱部12が露出する構成でサーマルヘッド10が設けられている。また、これら収容部4とサーマルヘッド10とは一体的に形成されており、装置本体2を構成している。さらに、印字装置1は、収容部4を開閉する蓋体20と、発熱部12に接触可能な除電ブラシ23とを備えている。
【0016】
収容部4は、ロール状に巻き回されたロール体62を有する感熱紙60(図2(C)参照)を収容可能な大きさに構成されている。そして、収容部4には、感熱紙60を当該収容部4に対して交換可能なように、開口部4aが設けられている。この開口部4aは、蓋体20が後述の閉塞位置に変位したときに、この蓋体20によって覆われるようになっている。また、収容部4には、蓋体20がロール体62の外周部63の周囲で変位するように、この蓋体20の回動軸27を回動可能に保持する軸受部(図示略)が設けられている。また、収容部4は、図1に示すように、蓋体20が閉塞位置に変位した状態において、後述するプラテン25と共に、感熱紙60を当該収容部4の一方側から排出可能に保持している。なお、軸受部は、「保持機構」の一例に相当する。
【0017】
サーマルヘッド10は、ヘッド基板(図示略)上に、発熱素子(図示略)をライン上に並べて構成される発熱部12を備えている。この発熱部12は、収容部4内に露出していると共に、配線(図示略)を介して制御部(図示略)と電気的に接続されている。そして、発熱部12は、制御部からの信号に基づき発熱し、収容部4から排出される感熱紙60と接触することで、所定の情報を感熱紙60に記録するように構成されている。
【0018】
蓋体20は、樹脂材料等からなり、図2(B)に示すように、当該蓋体20の回動軸27を中心とする周方向に沿って円弧状に湾曲すると共にロール体62の外周部63を部分的にカバーするカバー部21を備えて構成されている。すなわち、カバー部21は、ロール体62の形状に合わせて円筒状に構成されており、この円筒状部分の高さ方向に沿って(収容されるロール体62の巻芯61の長さ方向に沿って)、一部が開放されている。そして、このカバー部21の周方向一端側21aであって、蓋体20の外面20aには、除電ブラシ23が固定されている。また、カバー部21の周方向他端側21bにはプラテン25が回転可能に保持されている。そして、蓋体20は、上述したように、回動軸27を介して収容部4によって回動可能に保持されていると共に、ロール体62の外周部63の周囲を部分的に覆う構成で配置されている。
【0019】
より具体的に、蓋体20は、収容部4内を閉塞する(開口部4aを覆う)閉塞位置(図1)と、収容部4を開放する開放位置(図2(A)、図3)とで変位可能となるように、収容部4(軸受部)に保持されている。そして、蓋体20が閉塞位置となったときには、カバー部21の周方向一端側21aに固定されている除電ブラシ23が発熱部12から離間すると共に、カバー部21の周方向他端側21bに固定されているプラテン25が発熱部12と対向して配置される(感熱紙60を介して発熱部12に当接する(後述の図4(A)参照)ようになっている。また、蓋体20が開放位置となったときには、除電ブラシ23が発熱部12に接触すると共に、プラテン25が発熱部12から離間するようになっている。
【0020】
除電ブラシ23は、図2(B)に示すように、カバー部21の周方向一端側21aに、このカバー部21の円筒状部分の高さ方向に沿って設けられている。この除電ブラシ23は、接着テープや接着剤によって、カバー部に固定されていてもよく、カバー部と一体的に構成されていてもよい。また、除電ブラシ23は、導電性を有する材料からなり、例えば、ステンレス系繊維やカーボン系繊維などから構成されている。そして、除電ブラシ23は、蓋体20が開放位置となったときに、発熱部12を覆うと共に、発熱部12に接触して、発熱部12に帯電した静電気を気中放電により除電するようになっている。なお、除電ブラシ23は、「除電部材」の一例に相当する。
【0021】
プラテン25は、ローラ状に形成されており、少なくとも外周部がゴム等の弾性部材によって構成されている。そして、プラテン25は、図2(B)に示すように、カバー部21の周方向他端側21bに、回動可能に軸支されている。また、このプラテン25は、モータ等によって構成される回動機構(図示略)によって、回動駆動されるように構成されており、このプラテン25の回動により感熱紙60が搬送されて収容部4の一方側から排出されるように構成されている。そして、プラテン25は、蓋体20が閉塞位置となったときに、発熱部12と対向して配置されると共に、感熱紙60を発熱部12上に押し当てるように構成されている。このように、プラテン25により感熱紙60が発熱部12上に押圧されることで、発熱部12の熱を感熱紙60に良好に伝達することができる。なお、プラテン25は、「転動部材」の一例に相当する。
【0022】
感熱紙60は、図2(C)に示すように、長尺状の用紙が巻芯61を介してロール状に巻かれたロール紙からなり、ロール体62を有している。そして、感熱紙60の巻芯61は、カバー部21の円筒状部分の高さよりも若干長く構成されており、蓋体20の回動軸27と共に、収容部4に保持されている。そして、図1に示すように、感熱紙60は、ロール体62の外周部63側に続くロール紙端部64が印字装置1の外部へ排出可能となるように、収容部4内に収容されている。そして、感熱紙60は、蓋体20が閉塞位置にあるとき、この蓋体20によって外部から覆われるようになっている。
【0023】
このように構成される印字装置1は、例えば、車内販売や宅配等の用途で、様々な場所で使用可能な携帯型のプリンタとして用いることができる。また、バーコード、QRコード等の情報コードを光学的に読み取る携帯型の光学的情報読取装置等に搭載することもでき、これら読取装置等と一体的に用いることもできる。
【0024】
(蓋体の開放動作)
次に、このように構成される印字装置1における蓋体20の開放動作について、図4を用いて説明する。
図4は、印字装置1における蓋体20の開放動作を説明する図であり、図4(A)は、蓋体が閉塞位置にあるときの状態を示す説明図であり、図4(B)は、蓋体が閉塞位置から開放位置へ変位する途中の状態を示す説明図であり、図4(C)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す説明図である。
【0025】
まず、図4(A)に示すように、蓋体20が閉塞位置にあるときには、カバー部21の周方向他端側21bに固定されているプラテン25が、感熱紙60を介して発熱部12に接触している。また、カバー部21の周方向一端側21aに固定されている除電ブラシ23は、発熱部12から離間した位置に配置されている。
【0026】
そして、図4(A)に示す状態から、蓋体20が時計回りに回動されて、図4(B)の状態に変位すると、プラテン25は発熱部12から離間するとともに、除電ブラシ23は発熱部12に近づくように移動する。またこのとき、プラテン25及び除電ブラシ23は、蓋体20の回動軌跡α上を、蓋体20の回動と連動して変位する。
【0027】
図4(B)の状態から、蓋体20がさらに回動されて図4(C)の状態に変位すると、除電ブラシ23は発熱部12に接触し、プラテン25は発熱部12から離間した位置に移動する。そして、収容部4が開放されて、感熱紙60を取り出すことができる。このように、感熱紙60を交換するときなどに、蓋体20が開放されても、サーマルヘッド10の発熱部12が除電ブラシ23によって覆われるので、この発熱部12に人の手が不用意に触れてしまうのを防ぐことができる。
【0028】
以上説明したように、本第1実施形態に係る印字装置1では、蓋体20が収容部4から開放されたときに、除電ブラシ23がサーマルヘッド10の発熱部12に接触し、発熱部12が除電ブラシ23に覆われるようになるため、蓋体20の開放時に人の手が発熱部12に触れることを防ぐことができ、人の手が接触することに起因する内部部品の不具合を効果的に抑制することができる。特に、蓋体20の開放時には、発熱部12に帯電した静電気が除電ブラシ23により除電されるので、発熱部12に帯電した静電気が人の手を媒介として内部部品に悪影響を及ぼすことを防ぐことができ、発熱部12やこれに関係する部品をより確実に保護することができる。
【0029】
また、除電ブラシ23は、蓋体20の一部に固定されている。そして、蓋体20は、閉塞位置となるときに当該蓋体20に固定された除電ブラシ23が発熱部12から離間し、開放位置となるときに当該蓋体20に固定された除電ブラシ23が発熱部12に接触するように構成されている。
この構成によれば、蓋体20の開放時に除電ブラシ23を自動的に発熱部12に接触させ得る構成を、複雑な機構等を用いることなく部品点数を抑えて実現することができる。
【0030】
さらに、収容部4は、ロール紙からなる感熱紙60を収容しており、蓋体20はこのロール体62の外周部63の周囲を部分的に覆うと共に、ロール体62の外周部63の周囲で変位するように回動可能に保持されている。また、蓋体20の外面には、除電ブラシ23が固定されている。そして、蓋体20が閉塞位置となるときに外面に固定された除電ブラシ23が発熱部12から離間し、蓋体20が開放位置となるときに外面に固定された除電ブラシ23が発熱部12に接触するように構成されている。
このように、蓋体20がロール紙の周囲で回動するように構成されていると、当該蓋体20の開閉を容易に行うことができるようになり、蓋体20の開閉に必要なスペースを削減し易くなる。また、蓋体20の外面が発熱部12付近で回動するように回動軌跡αを設定するといった簡易な対応により、除電ブラシ23が発熱部12に対して確実に接近・離間し得る構成を実現することできる。
【0031】
さらに、蓋体20は、当該蓋体20の回動軸を中心とする周方向に沿って湾曲すると共にロール体62の外周部63を部分的にカバーするカバー部21を備えている。また、このカバー部21の周方向一端側21aに除電ブラシ23が固定され、周方向他端側21bにはプラテン25が回転可能に保持されている。そして、蓋体20が閉塞位置となるときにプラテン25が発熱部12と対向して配置されるように構成されている。
このように、プラテン25をさらに蓋体20に設けることで、このプラテン25を除電ブラシ23と共に蓋体20の回動軌跡α上に変位させることができる。そして、蓋体20の開放時に除電ブラシ23を自動的に発熱部12に接触させ得ると共に、蓋体20の閉塞時にプラテン25を自動的に発熱部12に接触させ得る構成を、除電ブラシ23及びプラテン25の配置を調整する(蓋体20の所定位置にそれぞれ配置する)といった簡易な対応により実現することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る印字装置201について、図5〜図7を参照して説明する。本第2実施形態では、蓋体20に代えて蓋体220を採用する点、除電ブラシ23が蓋体220とは別部材に固定されている点が主に異なる。したがって、第1実施形態の印字装置1と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図5は、第2実施形態に係る印字装置を概略的に例示する斜視図であり、蓋体が開放位置にあるときの状態を示すものである。図6(A)は、スライド部材の斜視図であり、図6(B)は、スライド部材と発熱部の位置関係を示す説明図であり、図6(C)は、図5とは異なる方向から見た斜視図である。図7は、第2実施形態に係る印字装置における蓋体の開放動作を説明する図であり、図7(A)は、蓋体が閉塞位置にあるときの状態を示す説明図であり、図7(B)は、蓋体が閉塞位置から開放位置へ変位する途中の状態を示す説明図であり、図7(C)は、蓋体が開放位置にあるときの状態を示す説明図である。
【0034】
本第2実施形態では、図5に示すように、蓋体220が板状に構成されている。そして、蓋体220の一端側には回動軸227が設けられており、この回動軸227が筐体3に軸支されている。また、蓋体220の一端側には、スライド部材30の一端部に当接可能な突起40が設けられている。そして、蓋体220は収容部4の開口部4aに対して開閉自在に回動するように構成されている。蓋体220の他端側には、プラテン25が回動可能に保持されている。また、蓋体220には、筐体3に設けられる被係合部(図示略)と係合可能な係合部(図示略)が設けられており、閉塞位置(図7(A)参照)において、蓋体220はこの係合部によって筐体3と係合するように構成されている。
【0035】
そして、収容部4内には、蓋体220とは別部材として構成され、蓋体220の開放動作と連動して移動するスライド部材30が設けられている。スライド部材30は、図6(A)に示すように、板状に構成されており、このスライド部材30の一方面の一端側に、除電ブラシ23が固定されている。そして、このスライド部材30は、図6(B)に示すように、発熱部12に対して除電ブラシ23が固定されている面が対向するように、保持部材32によって保持されている。なお、スライド部材30は、「移動部材」の一例に相当する。
【0036】
保持部材32には、スライド部材30の厚さより若干大きく形成された溝部32aが設けられており、この溝部32a内には、バネ34が設けられている。そして、保持部材32は、スライド部材30の他端側の一部をこの溝部32a内に挿入した状態で保持するように構成されている。なお、保持部材32は、「第2の保持機構」の一例に相当する。
【0037】
次に、このように構成される印字装置201における蓋体220の開放動作について、図7を用いて説明する。
まず、蓋体220の係合部と筐体3の被係合部とが係合しており、図7(A)に示すように、蓋体220が閉塞位置にあるときには、蓋体220の他端側に設けられるプラテン25が、感熱紙60を介して発熱部12に接触している。そして、蓋体220の一端側に設けられる突起40によって、スライド部材30が押圧されていると共に、この突起40の押圧力によって、バネ34が収縮している。また、このとき、除電ブラシ23は、発熱部12から離間した位置に維持されている。
【0038】
そして、蓋体220の係合部と筐体3の被係合部との係合が外されて、蓋体220が図7(B)の状態に変位すると、スライド部材30に対する突起40の押圧力が小さくなり、保持部材32の溝部32a内に収容されているバネ34が当該バネ34の復帰力によって伸張する。そして、このバネ34の伸張にともなって、除電ブラシ23が発熱部12に近づくように移動する。
【0039】
さらに、蓋体220が、図7(B)の状態から、プラテン25が発熱部12から離間する位置まで回動されると、スライド部材30に対する突起40の押圧力がなくなり、バネ34がさらに伸張する。そして、このバネ34の伸張によって、図7(C)に示すように、スライド部材30が発熱部12に接触する位置まで移動する。すなわち、本第2実施形態では、蓋体220の開放動作と連動してスライド部材30が移動することで、蓋体220の開放時に除電ブラシ23が発熱部12に接触することとなる。
【0040】
以上説明したように、本第2実施形態に係る印字装置201では、除電ブラシ23が固定されたスライド部材30を備えている。また、このスライド部材30は、蓋体220とは別部材として構成されており、保持部材32によって、蓋体220の開放動作と連動して発熱部12に対して相対移動可能に保持されている。そして、スライド部材30は、蓋体220が閉塞位置となるときに除電ブラシ23が発熱部12から離間し、蓋体220が開放位置となるときに除電ブラシ23が発熱部12に接触するように構成されている。
このように、蓋体220とは別部材で構成されるスライド部材30に除電ブラシ23を設ける構成とすれば、蓋体220の形状に依らず、蓋体220の開放時に除電ブラシ23を自動的に発熱部12に接触させ得る構成を実現することができる。また、既存の印字装置において、大幅な設計変更をしなくとも、スライド部材30の構成を追加するといった簡易な変更により、上記構成を実現することができる。
【0041】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
上記各実施形態では、除電部材として除電ブラシ23を用いた例を示したが、除電部材の形状は特に限定されず、例えば、布状のものを用いることもできる。
【0043】
上記各実施形態では、発熱部に帯電した静電気を、除電ブラシ23により大気中へ放電させる構成としたが、除電ブラシ23をアースに接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、201…印字装置
2…装置本体
3…筐体
4…収容部
4a…開口部
10…サーマルヘッド
12…発熱部
20、220…蓋体
20a…外面
21…カバー部
21a…周方向一端側
21b…周方向他端側
23…除電ブラシ(除電部材)
25…プラテン(転動部材)
27、227…回転軸
30…スライド部材(移動部材)
32…保持部材(第2の保持機構)
32a…溝部
34…バネ
40…突起
60…感熱紙(ロール紙)
61…巻芯
62…ロール体
63…外周部
64…ロール紙端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱紙を収容すると共に、前記感熱紙を一方側から排出可能に保持する収容部と、
前記収容部から排出される前記感熱紙と接触する発熱部を備え、前記発熱部の発熱により前記感熱紙に対して情報を記録するサーマルヘッドと、
前記収容部と前記サーマルヘッドとが一体的に形成されてなる装置本体に保持され、前記収容部内を閉塞する閉塞位置と、前記収容部を開放する開放位置とで変位可能な蓋体と、
前記蓋体を変位可能に保持する保持機構と、
帯電した静電気を除電する除電部材と、
を備え、
前記蓋体が前記閉塞位置となるときに前記除電部材が前記発熱部から離間し、前記蓋体が前記開放位置となるときに、前記除電部材が前記発熱部に接触するように構成されていることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記除電部材は、前記蓋体の一部に固定されており、
前記蓋体は、前記閉塞位置となるときに当該蓋体に固定された前記除電部材が前記発熱部から離間し、前記開放位置となるときに当該蓋体に固定された前記除電部材が前記発熱部に接触するように前記保持機構に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記感熱紙は、ロール状に巻き回されたロール体を有するロール紙からなり、
前記収容部は、前記ロール体を収容すると共に、前記ロール体の外周部側に続く端部側が排出可能となるように前記ロール紙を保持しており、
前記蓋体は、前記ロール体の外周部の周囲を部分的に覆う構成で配置され、
前記除電部材は、前記蓋体の外面に固定されており、
前記保持機構は、前記蓋体が前記ロール体の外周部の周囲で変位するように当該蓋体を回動可能に保持しており、
前記蓋体が前記閉塞位置となるときに前記外面に固定された前記除電部材が前記発熱部から離間し、前記蓋体が前記開放位置となるときに前記外面に固定された前記除電部材が前記発熱部に接触するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記蓋体は、当該蓋体の回動軸を中心とする周方向に沿って湾曲すると共に前記ロール体の外周部を部分的にカバーするカバー部を備え、
前記カバー部の周方向一端側に前記除電部材が固定され、他端側には転動部材が回転可能に保持されており、
前記蓋体が前記閉塞位置となるときに前記転動部材が前記発熱部と対向して配置されることを特徴とする請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記蓋体とは別部材として構成され、前記発熱部に対して相対移動可能な移動部材と、
前記移動部材が少なくとも前記蓋体の開放動作と連動するように当該移動部材を移動可能に保持する第2の保持機構と、
を備え、
前記除電部材は、前記移動部材に固定されており、
前記移動部材は、前記蓋体が前記閉塞位置となるときに前記除電部材が前記発熱部から離間し、前記蓋体が前記開放位置となるときに前記除電部材が前記発熱部に接触するように前記第2の保持機構に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171130(P2012−171130A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33219(P2011−33219)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】