即時使用のための乾燥され、放射線照射された皮膚同等物
本発明は、一般的に、器官培養によって作製される皮膚同等物の用意、保存、発送及び使用のための系及び方法に関する。特に、本発明は、低温、好ましくは2〜8℃から周囲温度において、器官培養によって作製される皮膚同等物の作製、輸送、保存及び使用に関する。当該方法は、包装の無菌性及び完全性が移植の目的に関する使用時まで維持されるように、移植片を無菌的に包装することを包含している。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、その内容が参照によって本明細書全体に援用される、米国仮出願第61/111,153号(出願日:2008年11月4日)の利益を主張する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般的に、器官培養によって製作された皮膚同等物を、冷蔵温度又は周囲温度において長期保存する系及び方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
組織工学(TE)の先端分野は、今後10年において、臓器の疾患及び機能不全の処置を著しく進歩させる準備が整っている。2001年に、米国及び欧州の市場について承認された細胞に基づく治療法が23あった。そのうちの9つは、皮膚代用物又は皮膚移植片であり、100を超える製品が、開発中であった(De Bree, Genomics-based Drug Data Report and Regenerative Therapy (1) 2:77-96 (2001))。2007年には、人工組織、細胞に基づく治療法、又は関連技術の開発に、ほぼ100の会社が関与していた(Applied Data Research, February 2007)。全体としては、この産業は、1995〜2001年において16%の年間成長率を有していた。「構造」産業部門(例えば、皮膚、骨、軟骨)は、1998〜2001年において85%の成長を示した。2004年に、組織から構築された皮膚代替物/代用物、及び創傷を修復する活性な調整物にとっての米国市場は、約1億9500万ドルと評価された。売上高は、9.5%の複利年率において増加し、2014年には約4億8100億ドルに達すると予想される(MedTech Insight, Windhover Information, September 2005)。創傷の手当てに関する先端技術の全米市場は、2005年において23億ドルを超えていた。これは、5年間にわたって12.3%の平均年間成長率において成長し、2011年に46億ドルに達すると予測されてきた(BCC Research, PHM011E, January 2007)。創傷の手当ての世界市場は、2006年に72億米ドルであると見積もられ、2つの部門(従来部門及び先端部門)から構成される(Espicom Business Intelligence, 2007)。創傷の手当てに関する従来の用品は、主に、織布のスポンジ、不織布のスポンジ、付着性の包帯、及び非付着性の包帯のような、低技術なガーゼに基づく被覆材からなる。創傷の手当てに関する先端部門(世界で41億米ドル)は、年に10%の2桁成長をともなった、最も急成長している分野である(Espicom Business Intelligence, 2007)。
【0004】
人工組織及び器官の経済的に重要かつ画期的な多くの用途が、ヒトの保健分野に存在するが、産業の実用的なすべての可能性は、実現されるにはほど遠い。これらの技術における35億ドルを超える国際投資にもかかわらず、現在、世界中の組織工学の株式上場企業のうち1社しか、利益をあげていない(Lysaght and Reyes, Tissue Engineering 7(5):485-93 (2001))。
【0005】
医療従事者、保健医療提供者、及び関連する他の購入者による人工組織の採用に対する主な障害は、人工組織を有効かつ効率的に保存及び保管する手段がないことである。生細胞及び組織製品の特性が、長期保存に関する実用性を妨げている。現在の人工組織は、生存性及び機能を維持するために、注意深く管理された状況下においてしばしば保存され、発送されなければならない。典型的には、人工組織製品は、製造に数週間又は数ヶ月間を要するが、製造から数時間又は数日間以内に使用する必要がある。結果として、TEの会社は、最大の能力において製造設備を継続的に操業し、廃棄すべき売れ残りの製品の費用を負担する必要がある。すでに費用のかさむ製造工程に加え、これらの在庫損失は、価格を非現実的な水準にさせている。具体例の1つとして、APLIGRAFは、製造に約4週間を要し、わずか10日間しか使用できず、使用まで20〜23℃に維持する必要がある。他の例として、EPICELは、携帯型インキュベータに入れられて、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるGenzyme Biosurgeryの製造施設から使用現場まで看護師によって運ばれ、到着後すぐに使用される。このような制約は、対費用効果の高い便利な製品の開発にとって重要な課題である。
【0006】
保存問題の解決策として凍結保存が検証されてきたが、氷の形成、冷害及び浸透圧の不均衡を介して、組織損傷を誘発することが知られている。APLIGRAFに加えて、他に唯一承認されている、生きている皮膚同等物であるORCELは、凍結製品として現在臨床試験中であるが、使用前に−100℃より低い温度に維持する必要があるという欠点を有している。これは、特殊な製品配達及び保存条件(輸送の間の危険物の使用、並びに地方の診療所及び野戦病院においては直ぐに入手できない、高価かつ危険な保存用の液体窒素の使用が挙げられる)を必要とする。さらに、凍結製品の配達は、使用前に組織を上手く解凍するために、末端使用者側における特別な訓練を必要とする。
【0007】
したがって、当該技術分野において必要とされているものは、使用現場において日常的に利用可能な条件において保存するための人工組織及び細胞を調製する改善された方法である。全ての医療施設は冷蔵保管庫を有しているため、標準的な冷蔵庫において長期間にわたって保存可能な皮膚同等物の開発は、これらの製品の利用可能性及び臨床的な有用性を大きく改善し得る。周囲温度において長期間にわたって保存可能な皮膚同等物の開発は、戦場又は様々な応急処置の現場における即座の使用のための、このような製品の利用可能性をさらに向上させるであろう。
【0008】
〔発明の概略〕
本発明は、一般的に、器官培養によって製作された皮膚同等物を、冷蔵温度又は周囲温度において長期保存する系及び方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、創傷被覆物としての使用のための器官培養されている皮膚同等物を保存する方法を提供する。ここで当該方法は、上記器官培養されている皮膚同等物、及び包装容器を準備すること、上記皮膚同等物の処理を行って、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にすること、並びに上記皮膚同等物の包装を行って、包装されている皮膚同等物を準備することを包含している。本発明は、皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にするための皮膚同等物の処理について、任意の特定の方法に限定されない。いくつかの実施形態において、上記処理の工程は、上記皮膚同等物を無菌状態及び成育不能にするための、上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している。いくつかの実施形態において、上記放射線照射はガンマ線照射を用いて行われる。いくつかの実施形態において、上記処理の工程は、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥を包含している。本発明は、乾燥について任意の特定の方法に限定されない。いくつかの実施形態において、上記乾燥は真空乾燥及び凍結乾燥からなる群から選択される方法によって行われる。本発明は、特に指定がなければ、工程の任意の特定の順序に限定されない。いくつかの実施形態において、上記処理は包装の前に行われる。いくつかの実施形態において、上記処理は包装の後に行われる。いくつかの実施形態において、上記処理は、上記皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥、及び上記皮膚同等物を無菌状態にする条件における上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している。いくつかの実施形態において、上記乾燥の工程が上記包装の前に行われ、上記放射線照射の工程が上記包装の工程の後に行われる。
【0009】
本発明は、任意の特定の皮膚同等物の使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記器官培養された皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる。いくつかの実施形態において、上記NIKS細胞は抗菌ポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態において、2つ以上の外来性のポリペプチドは、当該皮膚同等物を構成している細胞によって発現される。本発明は任意の特定の外来性のポリペプチドの使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記外来性のポリペプチドは抗菌ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。好ましい実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物又は乾燥されていない皮膚同等物の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は約0.1から約5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。いくつかの実施形態において、上記包装容器はヒートシール可能である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法によって作製されている、包装されているヒト皮膚同等物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法によって作製されている、包装されている無菌のヒト皮膚同等物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、単離されている成育不能なインビトロのヒト皮膚同等物を含んでいる、組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は包装されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は無菌である。いくつかの実施形態において、無菌の上記皮膚同等物は放射線照射されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は乾燥されている。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる。いくつかの実施形態において、上記NIKS細胞は、外来性のポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの外来性のポリペプチドは、上記皮膚同等物を構成している細胞によって発現される。本発明は、任意の特定の外来性ペプチドの使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記外来性ポリペプチドが抗菌ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。好ましい実施形態において、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物又は乾燥されていない皮膚同等物の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約0.1から約5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象を処置する方法を提供する。ここで、当該方法は、上述のような皮膚同等物の組成物の準備、及び上記皮膚同等物が上記創傷に接触する条件における上記皮膚同等物の創傷に対する使用を包含している。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は上記創傷に一時的に使用される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の皮膚同等物の組成物を収納している包装容器を含んでいる、キットを提供する。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は約1ヶ月間から約6ヶ月間の保存期間を有している。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、インビトロにおいて器官培養されており、単離されている成育不能な皮膚同等物を含んでいる組成物であって、当該皮膚同等物が湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記皮膚同等物に必須の細胞によって発現される少なくとも1つの外来性の抗菌ポリペプチドを含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象を処置するための上記組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、対象の創傷を処置するための上記組成物の使用を提供する。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
(図1)放射線照射後の組織の成育度。9F1組織及び2D2組織に放射線照射し、放射線照射後の3日、7日又は14日目にパンチ生検の試料を回収し、MTTアッセイを用いて成育度を評価した。データは、各処理グループにおける少なくとも3つの独立した生検試料から測定された、平均+/−標準偏差を示す。
【0017】
(図2)ケラチン生成細胞の成育度/移動アッセイ。(A)ケラチン生成細胞の成長がみられなかった移植片を、成育可能なケラチン生成細胞について−と評価した。(B)ケラチン生成細胞が真皮の端の周囲に移動していた試料を、成育可能なケラチン生成細胞について+と評価した。
【0018】
(図3)繊維芽細胞の成長アッセイ。対照の9F1組織及び放射線照射された9F1組織に由来する生検試料をコラーゲナーゼを用いて処理し、1%のメチレンブルーによって染色して細胞のコロニーを可視化する前に、遊離した細胞を6日間にわたって培養した。
【0019】
(図4)放射線照射された2D2組織及び9F1組織から放出されたタンパク質。ヒトの皮膚代用組織に対して、0、1又は5kGyの線量において放射線照射した。放射線照射後の3日目に得られたパンチ生検の試料からタンパク質を水に抽出し、BCAアッセイによって定量した。データは4回の測定による平均値+/−標準偏差を示す。
【0020】
(図5)放射線照射された2D2組織の抗菌活性。放射線照射されていない2D2組織及び放射線照射された2D2組織から得たパンチ生検の試料を、示されている時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織から抽出された試料の抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物を基にして標準化した。各データの値は独立した2つの試料から得られた平均値を示す。
【0021】
(図6)放射線照射された9F1組織の抗菌活性。放射線照射されていない9F1組織及び放射線照射された9F1組織から得たパンチ生検の試料を、4時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織からの抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物(値を1に設定した)を基にして標準化した。各データの値は示されている処理グループにおける組織由来の4つの生検試料からの平均値+/−標準偏差を示す。
【0022】
(図7)放射線照射された2D2組織の抗菌活性。放射線照射されていない2D2組織及び放射線照射された2D2組織から得たパンチ生検の試料を、4時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織からの抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物(値を1に設定した)を基にして標準化した。各データの値は示されている処理グループにおける組織由来の4つの生検試料からの平均値+/−標準偏差を示す。
【0023】
(図8)栄養性のゲル又は非付着性のガーゼに付着させて保存された皮膚同等物組織から放出された総タンパク質の量。ヒトの皮膚同等物組織に対して放射線照射し、パンチ生検の試料を14日後に回収し、37℃において24時間にわたって、0.2mlの滅菌水においてインキュベートした。抽出されたタンパク質をBCAアッセイによって定量した。データは4回の測定による平均値+/−標準偏差を示す。
【0024】
(図9)凍結乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析。未処理の皮膚同等物を、凍結乾燥された皮膚同等物、又は凍結乾燥され、1kGy、5kGy若しくは25kGyの線量レベルにおいて放射線照射された皮膚同等物と比較した。組織断面を、ヘマトキシリン/エオシンを用いて染色し、400倍の倍率において撮影した。スケールバー=200μm。
【0025】
(図10)真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析。未処理の皮膚同等物を、真空乾燥された皮膚同等物、又は真空乾燥され、1kGy、5kGy若しくは25kGyの線量レベルにおいて放射線照射された皮膚同等物と比較した。組織断面を、ヘマトキシリン/エオシンを用いて染色し、400倍の倍率において撮影した。スケールバー=200μm。
【0026】
(図11)真空乾燥され、放射線照射された皮膚同等物、及び凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の成育度。バーの色は、(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。データの値は、未処理のまま調製され、放射線照射されていない皮膚同等物組織に対して標準化した、平均+/−標準偏差(n=4〜8)を示す。
【0027】
(図12)乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の上皮のバリア機能。(左のパネル)組織表面の静電容量についての変化を、凍結乾燥又は真空乾燥され、1kGy、5kGy又は25kGyにおいて放射線照射された人工皮膚組織について、10秒間の間隔を空けて測定した。値は、それぞれ、独立した2つの組織における2回の測定による平均+/−標準偏差を示す。(右のパネル)初期のDPM値を凍結乾燥又は真空乾燥され、1kGy、5kGy、又は25kGyにおいて放射線照射された組織について記録されている。バーの色は(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。値は、それぞれ、独立した2つの組織における2回の測定による平均+/−標準偏差を示す。
【0028】
(図13)乾燥され、放射線照射された人工皮膚組織の機械的特性。バーの色は、(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。データは平均+/−標準偏差である。n=2〜4。
【0029】
〔定義〕
本明細書に使用されるとき、「皮膚同等物」、「ヒト皮膚同等物」、「ヒト皮膚代用物」及び「器官培養物」という用語は、層状化して扁平上皮になっている、インビトロにおいて得られるケラチン生成細胞の培養物を指すために、交換可能に使用される。典型的に、皮膚同等物は、器官培養によって作製され、ケラチン生成細胞層に加えて真皮層を含んでいる。
【0030】
本明細書に使用されるとき、「湿潤な皮膚同等物」という用語は、器官培養における皮膚同等物、又は器官培養から取り出された直後の皮膚同等物を指す。
【0031】
本明細書に使用されるとき、「成育不能な」という用語は、MTTアッセイのようなアッセイによって測定されたときに、活動していない細胞を指す。 本明細書に使用されるとき、「無菌の」という用語は、微生物又は真菌が実質的にか、又は完全に混入してない皮膚同等物を指す。
【0032】
本明細書に使用されるとき、「乾燥された」という用語は、水分が減らされている組成を指す。「乾燥された皮膚同等物」は、乾燥された皮膚同等物が、湿潤な皮膚同等物又は器官培養から取り出された直後の皮膚同等物よりも少ない含水量を有するように、水分が減らされている皮膚同等物を指す。湿潤な皮膚同等物に対する乾燥された皮膚同等物の重量の比較は、乾燥の程度を測定するときに用いられ、乾燥する工程の間に皮膚同等物から取られた水分の量を反映する。
【0033】
本明細書に使用されるとき、「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-1219として寄託された細胞の特徴を有している細胞を指す。
【0034】
「相同性」という用語は相補性の程度を指す。部分的な相同性又は完全な相同性(すなわち、同一性)があり得る。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列が標的核酸とハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害するものであり、「実質的に相同」という機能的な用語を用いて呼ばれる。「結合の阻害」という用語は、核酸の結合に関して用いられる場合、標的配列に結合するための相同配列の競合によって引き起こされる結合の阻害を指す。完全に相補的な配列の標的核酸へのハイブリダイゼーションの阻害は、低いストリンジェンシーの条件におけるハイブリダイゼーション法(サザンブロット又はノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション等)を用いて検出され得る。実質的に相同な配列又はプローブは、低いストリンジェンシーの条件における、標的への完全な相同物の結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)に関して競合し、当該結合を阻害する。これは、低いストリンジェンシーの条件が非特異的結合を許容しない条件であることまでを意味していない。低いストリンジェンシーの条件は、ある配列に対する2つの配列の結合が特異的な(すなわち、選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は、部分的な程度の相補性(例えば、約30%未満の同一性)もない第2の標的の使用によって試験され得る。非特異的結合の非存在下において、プローブは第2の非相補的な標的にハイブリダイズしない。
【0035】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド又は前駆体(例えば、KGF−2)の生成に必要なコーディング配列を含んでいる核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長又は断片の所望の活性又は機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達等)が保持される限り、全長のコーディング配列又は任意の部分によってコードされ得る。また、当該用語は、構造遺伝子のコーディング領域、及び追加配列(including sequence)を包含している。当該追加配列は、コーディング領域に隣接して5’末端側及び3’末端側の両方に配置されており、当該追加配列は、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するような5’末端及び3’末端のいずれか一方の側にある約1kbの距離にわたっている。コーディング配列の5’側に配置されており、mRNA上に存在している上述の配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コーディング配列の3’側又は下流に配置されており、mRNA上に存在している配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA及びゲノムの形態の両方を包含する。遺伝子のゲノムの形態又はクローンは、「イントロン」、「介在領域」又は「介在配列」と呼ばれる非コーディング配列によって分断されているコーディング領域を包含する。イントロンは、核内RNA(hnRNA)に転写される遺伝子の断片である。イントロンは、エンハンサのような制御因子を含み得る。イントロンは、核内転写物又は一次転写物から除去されるか、又は「スプライシング」によって切り出される。したがって、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物には存在していない。mRNAは、翻訳の間に、新生ポリペプチドのアミノ酸の配列又は順序を指定するために機能する。
【0036】
本明細書に使用されるとき、「をコードしている核酸分子」、「をコードしているDNA配列」、及び「をコードしているDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿った、デオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿った、アミノ酸の順序を決める。したがって、DNA配列はアミノ酸配列をコードしている。
【0037】
本明細書に使用されるとき、「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的な手法によって互いに連結されているDNAの断片から構成されているDNA分子を指す。
【0038】
本明細書に使用されるとき、「精製されている」又は「精製すること」という用語は、試料からの不純物の除去を指す。
【0039】
本明細書に使用されるとき、「ベクター」という用語は、(複数の)DNA断片をある細胞から別の細胞に移す核酸分子を指す。「ビヒクル」という用語は、ときに「ベクター」と交換可能に用いられる。
【0040】
本明細書に使用されるとき、「発現ベクター」という用語は、所望のコーディング配列、及び適切な核酸配列を含んでいる組換えDNA分子を指し、当該適切な核酸配列は、作動可能に連結されているコーディング配列を特定の宿主生物において発現させるために必須の配列である。原核生物における発現に必須の核酸配列は、通常、プロモータ、オペレータ(必要に応じて)、及びリボソーム結合領域を含んでおり、しばしば他の配列をともなっている。真核細胞は、プロモータ、エンハンサ、終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0041】
「作動可能に連結されている」とは、そのように説明されている構成要素が、意図されている様式において機能することを許容する関係にある並列を指す。コーディング配列の発現が、制御配列と適合する条件において達成されるように連結されているとき、制御配列はコーディング配列に「作動可能に連結され」ている。
【0042】
本明細書に使用されるとき、「トランスフェクション」という用語は、真核細胞に対する外来性のDNAの導入を指す。トランスフェクションは、当該分野において公知の様々な方法(リン酸カルシウム−DNA共沈殿、DEAE−デキストリン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及び微粒子銃が挙げられる)によって実現され得る。
【0043】
「安定なトランスフェクション」又は「安定にトランスフェクトされている」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに対する外来性のDNAの導入及び組込みを指す。「安定なトランスフェクタント」という用語は、ゲノムDNAに対して安定に組み込まれている外来性のDNAを有している細胞を指す。
【0044】
「一過性のトランスフェクション」又は「一過性にトランスフェクトされている」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに外来性のDNAが組み込まれない場合の、細胞に対する外来性のDNAの導入を指す。外来性のDNAは、トランスフェクトされた細胞の核内に数日間にわたって残存する。この間、外来性のDNAは染色体中の内在性遺伝子の発現を司る調節制御を受ける。「一過性のトランスフェクタント」という用語は、外来性のDNAを取り込んでいるが、このDNAを組み込んでいない細胞を指す。
【0045】
本明細書に使用されるとき、「抗菌ポリペプチド」という用語は、長さ5から100アミノ酸の、抗菌活性を示す短いポリペプチドを一般的に指す。抗菌ポリペプチドの例としては、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、及びカテリシジンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の範囲に包含される様々な抗菌ポリペプチドの配列が公知であり、利用可能である。抗菌ポリペプチドの例としては、その全体の内容が参照によって本明細書に援用される国際公開第05/012,492号において同定されている配列が挙げられる。
【0046】
〔詳細な説明〕
本発明は、一般的に、器官培養によって作製された皮膚同等物の用意、発送及び保存のための系及び方法に関する。特に、本発明は、乾燥され、放射線照射されたヒトの皮膚同等物から皮膚同等物の成育能力を消失させる方法であって、成育能力の消失によって、当該皮膚同等物を長期間にわたって保存可能であり、病院における使用ではなく、野外又は発生現場における当該皮膚同等物の使用にとって標準的な条件において輸送し得る方法に関する。
【0047】
医療計画(Medical planning)は、イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)の重大な部分であり、熱傷による死傷者の予想される数の予想モデルが盛り込まれていた(Barillo, D.J., et al., Tracking the daily availability of burn beds for national emergencies. J Burn Care Rehabil, 2005. 26(2): p. 174-82)。これらのモデルにおいて、死傷者の見積りが、国防総省熱傷センターのみの受け入れ能力を上回った。アメリカ熱傷学会(American Burn Association)と協同した国防総省は、熱傷の手当てに利用可能な現在の手法及び技術に基づいた、集団外傷対応計画(mass casualty plan)を展開した。第一次湾岸戦争において、敵軍はスルファマスタードを含んでいる化学兵器を使用していたことが知られていた。現在のイラク及びアフガニスタンの紛争において、野外における多くの熱傷は新たな段階に至っている。皮膚の温熱熱傷(thermal burn)又は化学的なびらん性毒ガスによる(水ぶくれになる)熱傷は、これらの損傷を処置するために一般に用いられているデルーフィング(deroofing)及び壊死組織除去の手法と同様に、開いた創傷を細菌性の病原体による易感染な状態に導く。
【0048】
不幸なことに、この25年において、皮膚の熱傷又はびらん性毒ガスによる創傷の処置のために開発されている革新的な救命技術がほとんどない。この分野における革新の必要性は、国立総合医科学研究所(the National Institute of General Medical Sciences)によって後援されている2006年10月25日〜28日の「State of the Science of Burn Research」という会議によって、強調された。ガンマ線照射されたヒトの死体の皮膚は、周囲温度において安定であり、皮膚創傷の処置において、首尾よく用いられている(Rosales, M.A., M. Bruntz, and D.G. Armstrong, Gamma-irradiated human skin allograft: a potential treatment modality for lower extremity ulcers. Int Wound J, 2004. 1(3): p. 201-6; Cancio, L.C., et al., Burn support for Operation Iraqi Freedom and related operations, 2003 to 2004. J Burn Care Rehabil, 2005. 26(2): p. 151-61)。しかし、そうような製品は、感染症の徴候を示している創傷における使用に対して必要とされない。びらん性毒ガスの暴露及び温熱創傷によって生じるような皮膚創傷は、細菌の増殖にとって理想的な環境を与えるし、創傷による敗血症から生じる合併症を引き起こす。さらに、多剤耐性を有している、生物の臨床的な単離体の高頻度化によって、皮膚創傷の治療において用いられる現在の抗菌治療の体制を補完するための、新たな方法の必要性が強調されている(Milner, S.M. and M.R. Ortega, Reduced antimicrobial peptide expression in human burn wounds. Burns, 1999. 25(5): p. 411-3)。当該生物は、例えばAcinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa、及びメチシリン耐性のStaphylococcus aureus(MRSA)である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明は、びらん性毒ガスによる皮膚損傷、温熱性の皮膚損傷及び外傷性の皮膚損傷に対する処置のための皮膚同等物であって、野外において直ちに使用可能な、乾燥されるか又は放射線照射された、組織として構築された抗菌の皮膚同等物を提供する。乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物は、周囲温度における長期間の保存、並びに外上皮に対するびらん性毒ガスによる損傷、温熱性の損傷、又は外傷性の損傷を有している患者に対する最大限の用途の広さ及び安全性のために設計されている。好ましい実施形態において、乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物は、広範囲のヒト宿主防御ペプチドβ−ディフェンシン−3(hBD−3)又はカテリシジン(hCAP18/LL−37)を創床(wound bed)に送達させるように構築されている。
【0050】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、成育不能な細胞を含んでいる、乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物を提供する。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、外来性の抗菌ポリペプチド、好ましくはヒトβ−ディフェンシン−1、ヒトβ−ディフェンシン−2、ヒトβ−ディフェンシン−3又はカテリシジン(hCAP18/LL−37)を発現し、提供するように構築されている。いくつかの実施形態において、成育不能な皮膚同等物が創傷に使用される。いくつかの実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物が創傷に一時的に使用される。いくつかの実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物は、取り除かれ、同じ抗菌ポリペプチドを供給する成育不能な追加のヒトの皮膚同等物に置き換えられる。他の実施形態において、成育不能な皮膚同等物は、取り除かれ、別の抗菌ポリペプチドを供給する成育不能な追加の皮膚同等物に置き換えられる。他の実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物は、成育可能な皮膚同等物の、創傷(例えば、熱創傷)に対する使用又は永久的な皮膚移植手術の前に取り除かれる。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の皮膚同等物は、外来性の抗菌ポリペプチドを発現するように構築されている。本発明は、任意の特定の抗菌ポリペプチドの使用に限定されない。好ましい実施形態において、抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン−1、ヒトβ−ディフェンシン−2、ヒトβ−ディフェンシン−3、若しくはカテリシジン(hCAP18/LL−37)、又は変異型である。いくつかの好ましい実施形態において、抗菌ポリペプチドをコードしている核酸構築物又はベクターは、ケラチン生成細胞(例えば、NIKS細胞)に導入され、トランスフェクトされたケラチン生成細胞は、器官培養法によって皮膚同等物を作製するために用いられる。外来性のポリペプチドを発現している皮膚同等物の作製のために好ましい形態は、野生型及び変異型の追加の抗菌ポリペプチドと同様に、その全体の内容が参照によって本明細書に援用される同時係属中の米国出願第10/909,119号に示されている。
【0052】
A)器官培養によって作製された皮膚同等物
本発明は、扁平上皮に分化可能な任意の特定の細胞供給源の使用に限定されない。実際に、本発明は、扁平上皮に分化可能な種々の細胞株及び供給源(初代ケラチン生成細胞及び不死化ケラチン生成細胞が挙げられる)の使用を意図している。細胞の供給源としては、ヒト及び死体ドナーから生体採取されたケラチン生成細胞及び真皮繊維芽細胞(いずれも参照によって本明細書に援用される、Auger et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. - Animal 36:96-103; 米国特許第5,968,546号及び米国特許第5,693,332号)、新生児包皮(参照によって本明細書に援用される、Asbill et al., Pharm. Research 17(9): 1092-97 (2000); Meana et al., Burns 24:621-30 (1998); 米国特許第4,485,096号、米国特許第6,039,760号、及び米国特許第5,536,656号)、並びにNM1細胞(Baden, In Vitro Cell. Dev. Biol. 23(3):205-213 (1987))、HaCaT細胞(Boucamp et al., J. cell. Boil. 106:761-771 (1988))及びNIKS細胞(細胞株BC-1-Ep/SL;参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,989,837号;ATCC CRL-12191)のような不死化されたケラチン生成細胞株が挙げられる。これらの各細胞株は、所望のタンパク質の発現又は共発現が可能な細胞株を作製するために、培養され得るか、又は遺伝子組換えされ得る。特に好ましい実施形態において、NIKS細胞が使用される。新規なヒトケラチン生成細胞株(近二倍体の不死化ケラチン生成細胞(near-diploid immortalized keratinocytes)又はNIKS)の発見は、非ウイルスベクターを用いてヒトケラチン生成細胞を遺伝子改変する機会を提供する。NIKS細胞に特有の利点は、それらが、遺伝的に均一であり、病原体がないヒトケラチン生成細胞の定常的な供給源であることである。このため、現在利用できる技術及び皮膚組織製品よりも向上された特性を有している皮膚同等物の培養物を提供するための、遺伝子工学及びゲノム遺伝子発現方法の適用において、NIKS細胞に特有な利点は有用である。NIKSケラチン生成細胞株(ウィスコンシン大学において同定され、特性が調べられている)は、非腫瘍原性であり、安定な核型を示し、単層培養及び器官培養のいずれにおいても正常な増殖及び分化を示す。NIKS細胞は、培養において完全に層状化された皮膚同等物を形成する。これらの培養物は、これまでに調べられている全ての基準において、初代ヒトケラチン生成細胞から形成された器官培養物から区別できない。しかし、不死化されたNIKS細胞は、初代細胞と異なり、単層培養において無制限に増殖し続ける。これは、細胞を遺伝的に処理し、新たな有用な特性を有している新たな細胞のクローンを単離する機会を提供する(Allen-Hoffmann et al., J. Invest. Dermatol., 114(3): 444-455 (2000))。
【0053】
NIKS細胞は、外見上正常な男児から単離されたヒト新生児包皮ケラチン生成細胞のBC−1−Ep株から生じた。BC−1−Ep細胞は、初期の継代において、培養された正常ヒトケラチン生成細胞において非典型的な形態学的特性又は増殖特性を示さなかった。培養されたBC−1−Ep細胞は、プログラムされた細胞死の特徴と同様に層状化を示した。複製の寿命を決定するために、BC−1−Ep細胞を、ケラチン生成細胞における標準的な成長培地において、100mmのディッシュ当たり3×105個の密度において、老化するまで培養し続け、1週間ごとに継代した(およそ1:25に分配)。15継代目まで、集団内のほとんどのケラチン生成細胞は、大きくて平坦な細胞を示している多くの発育不全なコロニーの存在によって判断されるような老化を示した。しかし、16継代目において、小さい細胞サイズを示しているケラチン生成細胞が認められた。17継代目まで、小さいサイズのケラチン生成細胞のみが培養物中に存在し、大きくて老化したケラチン生成細胞は認められなかった。この推定の分かれ目を生き延びた小さいケラチン生成細胞の生じた集団は、形態学的な均一性を示し、典型的なケラチン生成細胞の特性(細胞間接着及び扁平な外観の形成が挙げられる)を示しているケラチン生成細胞のコロニーを形成した。老化時期を生き延びたケラチン生成細胞を、100mmのディッシュ当たり3×105個の密度において培養し続けた。典型的に、培養物は7日以内に約8×106個の細胞密度に達した。この細胞増殖の安定した速度は、少なくとも59継代目まで維持され、細胞が不死に達したことが明らかとなった。老化している最初の集団から出現したケラチン生成細胞は、もともとBC−1−Ep/自然発生株と呼ばれ、現在ではNIKSと呼ばれている。NIKS細胞株は、HIV−1、HIV−2、EBV、CMV、HTLV−1、HTLV−2、HBV、HCV、B−19パルボウイルス、HPV−16、SV40、HHV−6、HHV−7、HPV−18、及びHPV−31にとってのプロウイルスDNA配列の存在について、PCR又はサザン分析を用いてスクリーニングされている。これらのいずれのウイルスも検出されなかった。
【0054】
3継代目の親株のBC−1−Ep細胞、並びに31継代目及び54継代目のNIKS細胞について、染色体分析を行った。親株のBC−1−Ep細胞は、XYを含めて46本の正常な染色体の構成を有している。31継代目において、全てのNIKS細胞は、第8染色体長腕の余分な同位染色体を含めて47本の染色体を保持していた。大きな染色体異常又は標識染色体は他に検出されなかった。NIKS細胞の核型は少なくとも54継代目におけるまで一定であることが示された。
【0055】
NIKS細胞株及びBC−1−Epケラチン生成細胞のDNAフィンガープリントは、分析された全ての12番目の遺伝子座において同一であり、NIKS細胞が親株のBC−1−Epの集団から生じたことを証明している。親株のBC−1−EpのDNAフィンガープリントを有しているNIKS細胞株のランダムな機会による異常は、4×10−16である。ヒトケラチン生成細胞の3つの異なる供給源である、ED−1−Ep、SCC4、及びSCC13yのDNAフィンガープリントは、BC−1−Epのパターンと異なっている。このデータは、他のヒトED−1−Ep、SCC4、及びSCC13yから単離されたケラチン生成細胞が、BC−1−Ep細胞又は互いに対して無関係であることも示している。NIKSのDNAフィンガープリントデータは、NIKS細胞を同定するための明確な方法を提供する。
【0056】
p53機能の喪失は、培養されている細胞の増殖能の向上及び不死化の頻度の増加に関係している。NIKS細胞のp53の配列は、公知のp53の配列(GenBankのアクセション番号:M14695)と同一である。ヒトにおいて、p53は、72番目のコドンのアミノ酸によって区別される2つの主要な多型として存在している。NIKS細胞におけるp53の両方の対立遺伝子は、野生型であり、72番目のコドンにおいてアルギニンをコードするCGCという配列を有している。p53の他の一般的な型は、この位置にプロリンを有している。NIKS細胞におけるp53の全配列は、BC−1−Ep前駆細胞と同一である。NIKS細胞では、Rbも野生型であることが示されている。
【0057】
足場非依存性の増殖はインビボにおける腫瘍形成性と強く関連付けられている。このため、寒天又はメチルセルロースを含んでいる培地におけるNIKS細胞の足場非依存性の増殖の特性を調べた。NIKS細胞は、寒天又はメチルセルロースを含んでいる培地において4週間が経過した後、単一の細胞のままであった。NIKS細胞の増殖の遅い変異体を検出するために、このアッセイを合計8週間にわたって続けたが、全く認められなかった。
【0058】
親株のBC−1−Epケラチン生成細胞及び不死のNIKSケラチン生成細胞株の腫瘍形成性を判断するために、胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に細胞を注射した。ヒト扁平細胞腫瘍細胞株であるSCC4を、これらの動物における腫瘍形成の陽性対照として用いた。試料の注射は、動物の一方の側腹部にSCC4細胞を入れ、反対側の側腹部に親株のBC−1Epケラチン生成細胞又はNIKS細胞を入れるように設計された。この注射方法によって、腫瘍形成における動物の差異を排除し、マウスが腫瘍形成性細胞の激しい増殖を助けることが裏付けられた。親株のBC−1−Epケラチン生成細胞(6継代目)又はNIKSケラチン生成細胞(35継代目)はいずれも、胸腺欠損ヌードマウスにおいて腫瘍を形成しなかった。
【0059】
NIKS細胞を、液内培養及び器官培養の両方における分化能について分析した。器官培養の方法は、実施例に詳細が記載されている。特に好ましい実施形態において、本発明の器官培養された皮膚同等物は、コラーゲン又は類似の材料並びに繊維芽細胞から形成された真皮同等物を含んでいる。ケラチン生成細胞(例えば、NIKS細胞及び患者由来の細胞の組合せ、又はNIKS細胞)が、器官培養の工程に続いて、真皮同等物の上に播かれ、扁平分化によって特徴付けられる上皮層を形成する。
【0060】
液内培養における細胞について、扁平分化のマーカーとして角化膜の形成をモニタリングした。培養されたヒトケラチン生成細胞において、角化膜の構築の初期段階では、インボルクリン、シスタチン−α、及び他のタンパク質からなる未熟構造の形成を生じる。それは成熟角化膜の内側の3分の1に相当する。接着性のBC−1−Ep細胞又はNIKS細胞株由来のケラチン生成細胞の2%未満が、角化膜を形成した。この発見は、活発に増殖しているセミコンフルエントなケラチン生成細胞が、5%未満の角化膜を形成することを証明した以前の研究と一致する。分化させるために誘導されたときにNIKS細胞株が角化膜を形成し得るか否かを判断するために、細胞を接着培養物から取り出し、メチルセルロースを用いて半固体に生成されている培地において24時間にわたって浮遊させた。最終分化の多くの様相(差異のあるケラチンの発現及び角化膜の形成が挙げられる)を、インビトロにおけるケラチン細胞の細胞−細胞間及び細胞−基層間における接着の喪失によって引き起こさせ得る。NIKSケラチン生成細胞は、親株のケラチン生成細胞と比較して、同程度の角化膜及び通常はより多くの角化膜を形成した。これらの発見は、NIKSケラチン生成細胞が、この細胞型特異的な分化構造の形成の開始能を欠損していないことを証明している。
【0061】
NIKSケラチン生成細胞が扁平分化を起こし得ることを確認するために、細胞を器官培養において培養した。ケラチン生成細胞の培養物をプラスチックの基層上において増殖させ、培地複製物(replicate)に浸したが、わずかな分化しか示さなかった。特に、ヒトケラチン生成細胞は、コンフルエントになり、3層又はそれ以上のケラチン生成細胞層を含んでいるシートを形成するわずかな層状化を起こす。光学顕微鏡及び電子顕微鏡によると、液内培養において形成された多層シートの構造と完全なヒトの皮膚の構造との間に、顕著な差異がある。対照的に、器官培養法は、インビボのような条件における、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を可能にする。特に、細胞は、原繊維のコラーゲン基質によって取り囲まれた真皮繊維芽細胞からなる生理学的基層に接着する。器官培養物は空気−培地の界面に維持されている。この方法において、増殖している基底細胞は、コラーゲンゲルを介した拡散によって供給された栄養物の勾配に最も近い状態に保たれ、一方で、上層のシート中の細胞は空気に曝されている。これらの条件において、正しい組織構造が形成される。正常に分化している上皮の種々の特性が現れている。親株細胞及びNIKS細胞株の両方において、立方基底細胞の単層は、真皮同等物及び上皮の結合部に存在する。丸みを帯びた形態、及び細胞質に対する核の高い比率は、活発に分裂しているケラチン生成細胞の集団を表している。正常なヒトの上皮において、基底細胞が分裂すると、それらは組織の分化している層中の上方に移動する娘細胞を生み出す。娘細胞はサイズを増大させ、平坦になり、扁平になる。最終的に、これらの細胞は、脱核し、角化した角質構造を形成する。この正常な分化の過程は、親株細胞及びNIKS細胞の両方の上層において認められる。平坦な扁平細胞の出現は、上皮上層において明らかであり、層状化が器官培養において引き起こされたことを証明している。器官培養物の最も上にある部分において、脱核した扁平細胞は培養物の最上部から剥がれる。現在までに、器官培養において増殖された、親株のケラチン生成細胞とNIKSケラチン生成細胞株との間に、光学顕微鏡のレベルにおいて、分化に組織学的な差異がないことが観察されている。
【0062】
親株(5継代目)及びNIKS(38継代目)の器官培養物のより詳細な特性を評価し、かつ組織学的観察を確認するために、電子顕微鏡を用いて試料を分析した。親株細胞及び不死化されたNIKSヒトケラチン生成細胞株を15日間にわたる器官培養後に回収し、層状化の程度を明らかにするために基底層に対して直交するように切断した。親株細胞及びNIKS細胞株の両方は、器官培養において広範囲な層状化を起こし、正常なヒトの上皮に特有の構造を形成する。親株細胞及びNIKS細胞株の器官培養において、大量のデスモソームが形成される。また、親株細胞及びNIKS細胞株の両方の基底ケラチン生成細胞層における、基底層及び関連したヘミデスモソームの形成が見られた。
【0063】
ヘミデスモソームは、ケラチン生成細胞の基底層への接着を増強する構造に特化しており、組織の完全性及び強度の維持を助ける。これらの構造の存在は、特に親株細胞又はNIKS細胞が多孔性の支持体に対して直接に接触していた領域において明らかであった。これらの発見は、繊維芽細胞を含んでいる多孔性の支持体に付着させて培養されているヒト包皮のケラチン生成細胞を用いた、以前の超微細構造的な発見と一致する。光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルの両方の分析は、器官培養におけるNIKS細胞株が層状化し、分化し、正常なヒトの上皮にみられるデスモソーム、基底層、及びヘミデスモソームのような構造を形成し得ることを証明している。
【0064】
B)乾燥又は放射線照射された皮膚同等物
好ましい実施形態において、実施例1に記載されているように作製された皮膚同等物は、成育不能な皮膚同等物を提供するために、放射線照射されるか、及び/又は乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は細胞の成育可能性を排除するために乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は例えばガンマ線照射される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は約0.5kGyから約25kGyのガンマ線に曝される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は約0.5kGyから約12kGyの放射線、より好ましくは約1kGyから約5kGyのガンマ線に曝される。何れかの場合においても、皮膚同等物に送達される放射線の総量は、皮膚同等物に含まれている細胞が、MTT成育度アッセイ又は他の適当な成育度アッセイによってアッセイされる場合に、成育不能にするために十分であることが好ましい。さらに好ましい実施形態において、皮膚同等物は真空又は凍結乾燥の条件において乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は放射線照射される前に乾燥される。いくつかの好ましい実施形態において、皮膚同等物は乾燥又は放射線照射の前に無菌の容器に包装される。さらに好ましい形態において、皮膚同等物は、保存、輸送、及び末端使用者による容易な使用を可能にするため、ガーゼのような無菌の布地を用いて包装されている。他の実施形態において、乾燥されたか、又は放射線照射された皮膚同等物は、創傷に接触させた後に、創傷の表面に対する外来性のポリペプチドの放出能を保持している。さらなる実施形態において、乾燥されたか、又は放射線照射された皮膚同等物は、創傷の周囲に接触させた後に、創傷に対する外来性のポリペプチドの放出能を保持している。さらなる実施形態において、皮膚同等物は使用前に冷蔵される。一方、他の実施形態において、皮膚同等物は使用前に周囲温度において保存される。
【0065】
皮膚同等物が乾燥されている程度は、乾燥された皮膚同等物の重量を、乾燥されていない皮膚同等物(湿潤な皮膚同等物)、すなわち器官培養から取り出されたばかりの皮膚同等物の重量と比較することによって、判断され得る。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物の重量の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、本発明の乾燥された皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物の重量の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量を有している。いくつかの実施形態において、乾燥された皮膚同等物は、対象への使用前に再び湿潤状態になる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった皮膚同等物は、0.1から5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。
【0066】
いくつかの実施形態において、乾燥されたか、及び/又は放射線照射された皮膚同等物は、対象にとって有益なペプチド又はタンパク質の送達に利用され、いくつかの好ましい実施形態において、対象の創床にとって有益なペプチド又はタンパク質の送達に利用される。外来性のペプチド及びタンパク質を発現する皮膚同等物は、発明者らによって以前に述べられている(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される国際公開第05/012492号を参照すればよい)。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は1つ以上の抗菌ポリペプチドを発現するように構築されている。いくつかの実施形態において、抗菌ポリペプチドは、カテリシジン、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2若しくはヒトβ−ディフェンシン3、又はそれらの組合せである。好ましい実施形態において、ペプチド又はポリペプチドは、外来性であり、すなわち皮膚同等物を作製するために使用されるケラチン生成細胞中に構築された外来性の遺伝子構築物によってコードされており、発現される。皮膚同等物によって送達されるペプチド又はポリペプチドの量は、水性の溶液を皮膚同等物に供給し、当該溶液中に送達されるペプチド又はポリペプチドの量を測定することによって、判断され得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。
【0067】
C)治療用途
本発明の成育不能な皮膚同等物は治療的に使用され得ることが意図されている。いくつかの実施形態において、乾燥又は放射線照射された皮膚は、創傷閉鎖及び熱傷に対する処置の用途に用いられる。熱傷に対する処置及び創傷閉鎖のための自己移植及び同種異系移植の利用について、それぞれ参照によって本明細書に援用される、Myers et al., A. J. Surg. 170(1):75-83 (1995)及び米国特許第5,693,332号、米国特許第5,658,331号、及び米国特許第6,039,760号に記載されている。いくつかの実施形態において、皮膚同等物はDERMAGRAFT又はINTEGRAのような真皮代用物と共に用いられ得る。したがって、本発明は、創傷(熱傷によって生じた創傷が挙げられる)の閉鎖の方法であって、創傷を受けている患者及び皮膚同等物を準備すること、並びに創傷が閉鎖されるような状況下において皮膚同等物によって患者を処置することを包含している方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、皮膚同等物は慢性の皮膚創傷を処置するために使用され得る。慢性の皮膚創傷(例えば、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、圧迫潰瘍)は、深刻な問題である。そのような創傷の治療はしばしば1年をはるかに超えて処置が必要になる。処置の選択肢としては現在のところ、包帯法及び壊死組織除去法(壊死している組織を除去するための化学物質又は外科的手術の利用)、及び/又は感染症の場合には抗生物質が挙げられる。これらの処置の選択肢は、長期間を要し、多大な患者の協力を要する。したがって、慢性創傷の治療における医師の成功を拡大させ得、創傷治癒を速め得る治療法によって、この分野においていまだ満たされていなかった必要性が満たされる。したがって、本発明は、本発明に係る細胞(例えば、NIKS細胞)を含んでいる皮膚同等物による皮膚創傷の処置を意図している。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、創傷に対して局所的に当てられる。他の実施形態において、NIKS細胞を包含する皮膚同等物は、部分層創傷(partial thickness wounds)への移植のために使用される。他の実施形態において、NIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、全層創傷への移植のために使用される。他の実施形態において、NIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、多種の内部創傷(消化器官の内側を覆う粘膜の内部創傷、潰瘍性大腸炎、及び癌治療によって引き起こされ得る粘膜の炎症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用される。さらに他の実施形態において、宿主防御ペプチドを発現しているNIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、一時的又は永久的な創傷被覆物として使用される。
【0069】
その上さらなる実施形態において、細胞はさらなる治療薬を対象に提供するように作製される。本発明は任意の特定の治療薬の送達に限定されない。実際に、種々の治療薬(酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイム、小型干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びアンチセンスRNAが挙げられるが、これらに限定されない)が対象に送達され得ることが、意図されている。好ましい実施形態において、薬剤は、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、又はカテリシジンのような宿主防御ペプチドである(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される米国特許出願第10/909,119号を参照すればよい)。これらの治療薬は、種々の目的(遺伝的な異常を改善させる目的が挙げられるが、これに限定されない)のために送達され得る。特に好ましい実施形態において、遺伝的な先天性代謝異常(例えば、アミノ酸尿)の患者を回復させる目的において治療薬が送達され、移植片は当該患者における野生型の組織として機能する。治療薬の送達が異常を改善させることが、意図されている。いくつかの実施形態において、細胞は治療薬(例えば、インスリン、凝固第IX因子、エリスロポエチン等)をコードしているDNA構築物によってトランスフェクトされ、トランスフェクトされた細胞は、対象に投与される。それから、治療薬は移植片から患者の血流又は他の組織に送達される。好ましい実施形態において、治療薬をコードしている核酸は適切なプロモータに作動可能に連結されている。本発明は任意の特定のプロモータの使用に限定されない。実際に、種々のプロモータ(誘導的、構成的、組織特異的、及びケラチン生成細胞特異的なプロモータが挙げられるが、これらに限定されない)の使用が意図される。いくつかの実施形態において、治療薬をコードしている核酸は、ケラチン生成細胞に対して直接的に(すなわち、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈殿、又はリポソームトランスフェクションによって)導入される。他の好ましい実施形態において、治療薬をコードしている核酸は、ベクターとして供給され、ベクターは当該技術分野において知られている方法によってケラチン生成細胞に導入される。いくつかの実施形態において、ベクターは複製するプラスミドのようなエピソーム性ベクターである。他の実施形態において、ベクターはケラチン生成細胞のゲノム中に組み込まれる。組込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、非複製のプラスミドベクター及びトランスポゾンベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
〔実施例〕
下記の実施例は、本発明の好ましい特定の実施形態及び側面を説明し、さらに例証するために設けられているが、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0071】
以下の実験に基づく開示において、以下の略語を適用する:eq(当量);M(モーラー);mM(ミリモーラー);μM(マイクロモーラー);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);l又はL(リットル);ml又はmL(ミリリットル);μl又はμL(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);C(摂氏);U(ユニット);mU(ミリユニット);分(分);秒(秒);%(パーセント);kb(キロベース);bp(ベースペア);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);BSA(ウシ血清アルブミン);CFU(コロニー形成単位);kGy(キログレイ);PVDF(ポリフッ化ビニリデン);BCA(ビシンコニン酸);SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)。
【0072】
<実施例1>
本実施例は、皮膚同等物の作製方法を示す。
【0073】
培地:器官培養の工程では、3つの異なる培地を用いる。全ての当該培地は、全ての培地からコレラ毒素を除去することを除いて、米国特許第7,407,805号に記載されているSMB培地の組成に基づいている。皮膚同等物の真皮同等物層に用いるための、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)を増殖させるために、FM01を用いている。FM01は、Fetal Clone II血清(終濃度2%)を含んでいること、及びコレラ毒素がないことを除いて、SMBと同様の組成を有している。NIKSのケラチン生成細胞を成長させるために、KM01を用いる。KM01は、2.5%のFetal Clone IIを含んでいること、及び終濃度5ng/mlの上皮成長因子(EGF)添加がされていることを除いて、SMBと同様の組成を有している。皮膚同等物の作製における上皮層形成段階の間にSM01を用いる。SM01は、コレラ毒素の除去を除いてSMBと同一である。
【0074】
真皮同等物の調製:0日目に、凍結されているNHDF細胞を解凍し、プレートに播く。残留している凍結防止剤を取り除くために、翌日(1日目)に、細胞にFM01を供給し、3日目に再びFM01を細胞に供給する。4日目に、それらを真皮同等物に用いるために回収する。真皮同等物を調製するために、タイプIのラット尾のコラーゲンをまず、0.03Nの酢酸において3mg/mlに希釈して、氷上において冷却する。濃縮されているHam’s F12培地(通常の濃度の8.7倍、HEPESを用いてpH7.5に緩衝化されている)の混合物をFetal Clone IIと混合する。これらの2つの溶液は、最終的な溶液の体積の11.3%及び9.6%である。1NのNaOH(最終溶液の2.4%)を培地混合物に添加する。それから希釈されているコラーゲン(74.7%)を混合液に添加する。2%量の懸濁されている繊維芽細胞(2.78×106/ml)を混合物に加える。9mlの真皮同等物の最終的な混合物を、それぞれ75mmのTRANSWELL挿入物(Corning Costar)に注ぐ。50〜70分間のゲル形成時間の後に、TRANSWELL挿入物を、150mmの培養ディッシュに入っているステンレス鋼のメッシュの表面に移す。150mmのディッシュのTRANSWELL挿入物の外側に80mlのFM01を入れ、10mlのFM01を真皮同等物の上面に入れる。器官培養に用いる前の4〜5日間にわたって、37℃、5%CO2、90%相対湿度のインキュベータ内に真皮同等物を置く。
【0075】
NIKSの成長及び継代:NIKS細胞を、解凍し、100mmのディッシュ当たり約5×105細胞の濃度に播く。マウスのフィーダー細胞の存在下又は非存在下において、NIKSの培養を実施し得る。1日目に、残留している凍結防止剤を取り除くために、NIKS細胞に新しいKM01を供給する。3日目に再び新しいKM01をNIKS細胞に供給する。4日目に、初代のp100の培養物からNIKS細胞を回収し、225cm2の培養フラスコに、フラスコ当たり1.2×106の濃度に播く。7日目及び8日目に新しい培地をNIKSの培養物に供給する。9日目に、NIKS細胞を回収し、NIKS細胞の細胞数を数え、NIKS細胞をSM01に再懸濁する。2.27×104のNIKS細胞/cm2を真皮同等物の表面に播く。培養物であるディッシュに培地を供給し、空気と培地との境界面に引き上げる。それらの成長の静止を維持する75%の湿度に設定されている、制御されているインキュベータに培養物を移す。14、18、22、25、28、及び30日目に、SM01を培養物に供給する。
【0076】
<実施例2:成育不能な、無菌の皮膚同等物の組織を作製するために必要なガンマ線照射の致死線量の決定>
放射線を受けている皮膚同等物を構築する作製スケジュールは、人工のヒト皮膚組織作製物のためにこれまでに確立されている28日目の作製工程を基にした。9F1組織及び2D2組織を、無菌手順を用いて作製した。上記9F1組織は、宿主防御ペプチドであるhBD−3の発現の向上のために改変されており、上記2D2組織は、宿主防御ペプチドであるhCAP18/LL−37の発現の向上のために改変されている。組織を、栄養性のゲルの容器上に移し、梱包及び輸送の前に密封した。ノースカロライナ州のシャーロットの施設において、ExCell高精度ガンマ線照射器を用いて、Sterigenics, Incによって、ガンマ線照射を行った。組織は、5つの放射線量:0kGy、1kGy、5kGy、8kGy、及び11kGyのうち、1つの放射線量を受けた。これらの線量は、組織の同種移植片に対する同様の線量に関するこれまでの評価に基づいて選択した。放射線照射後に、以下に示されている時点における分析に先立って、組織を冷却した。
【0077】
処理された試料のStratatechへの返却の直後に、栄養性のゲルに保存されているいくつかの組織がその下にある支持膜から分離し、組織の折り重なり、しわを生じていることがわかった。この現象は、放射線照射されている組織、及び放射線照射されていない組織の両方に観察された。この問題を解決する輸送手段を後ほど開発した。下記の実施例を参照すればよい。
【0078】
無菌性試験:0kGyから11kGyの線量におけるガンマ線照射を受けた9F1組織及び2D2組織から、パンチ生検の試料を得た。放射線照射後の3日間にわたって保存されている組織に由来する試料を、トリプティカーゼソイブロス(trypticase soy broth)又は液状チオグリコレート培地に入れた。無菌性試験のために米国薬局方によって規定されている条件の下に14日間にわたって、培養物をインキュベートした。14日後、微生物の成育について培養物を視覚的に試験した。微生物の成育は、分析した組織のいずれにも観察されず、操作、放射線照射、及び輸送の間に、組織が無菌状態のままであったことを示した。
【0079】
MTT成育アッセイによる成育度試験:対照の9F1組織及び2D2組織、又はガンマ線照射した9F1組織及び2D2組織から、放射線照射処理後の3日、7日又は14日目に生検の試料を得、細胞の成育度をMTT成育アッセイによって評価した。簡潔に述べると、MTTの基質である、3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイドは、生細胞における細胞性のデヒドロゲナーゼによって、MTTホルマザン生成物に転換される。呈色した生成物を、イソプロパノールに抽出し、550nmにおいて読み込んだ。4つの独立した組織片について成育度を測定した。それぞれの結果を図1に示す。放射線照射されていない組織の成育度は、保存期間中に顕著な変化がなかった。1kGyの放射線を用いて処理された組織は、放射線照射後の3日目に残留している酵素活性を有しており、当該酵素活性は放射線照射後の7及び14日目まで減少し続けた。しかし、5、8又は11kGyの線量を用いて処理された組織は、全ての時点において残留している最小の活性を示し、14日間の保存期間の経過の全体を通して低いままであった。照射後の14日目までに、1kGyを用いて放射線照射された組織の代謝活性は、より高い放射線量によって見られるのと同様の低いレベルに低下した。
【0080】
ケラチン生成細胞移動アッセイによる成育度の決定:生検用の移植片培養物は、ケラチン生成細胞が放射線照射処理によって不活性化されたか否かを決定するために、対照の組織又は放射線放射された組織から作製した。放射線照射後の3日目の組織から得られたパンチ生検の試料を、成長培地に移し、48時間にわたって培養し、ヘマトキシリン/エオシン及びデジタル顕微鏡を用いた組織学的な染色のために処理した。画像は、組織構造を判定するために得られ、図2の概略図にしたがって、生検試料のパンチによってできた傷の端からのケラチン生成細胞の移動について、+又は−と評価された。細胞の移動は、放射線照射されていない9F1組織及び2D2組織において明らであったが、ガンマ線照射を受けた全ての組織には認められなかった。
【0081】
繊維芽細胞の成長アッセイ:生検試料を、対照の組織及び放射線照射後の7日目における放射線照射された組織から得、繊維芽細胞を遊離させるために、細菌性のコラーゲナーゼを用いて処理した。これらの組織から遊離した細胞を、培養プレートに移し、培地において6日間にわたって成長させ、メチレンブルー染色によって可視化した。繊維芽細胞の成長を、染色されている細胞の存在または非存在のそれぞれに基づいて、+又は−と評価した。放射線照射されていない組織又は照射された組織から分離された繊維芽細胞の培養物の画像を図3に示す。細胞の成長は、放射線照射を受けていない対照の組織に認められたが、放射線照射された組織に由来する調製物には認められなかった。
【0082】
上記の実験から、作製物の無菌性が組織の作製及び処理の全体にわたって保たれていることを確認した。1kGyの放射線量を用いた皮膚同等物組織の処理は、2つの独立した成育度アッセイにしたがって成育不能な組織を生じた。5kGy以上の線量によって、これらの3つの全ての方法によって評価される通りに成育不能な組織が生じた。
【0083】
<実施例3:放射線照射された皮膚同等物組織の構造的特性の評価>
冷蔵保存後の3日目の放射線照射された組織の構造的特性を、ヘマトキシリン及びエオシンを用いた組織染色よって評価し、光学顕微鏡を用いて可視化した。組織染色によって、放射線照射された組織は、正常な組織構造及び外部形態を維持していることが証明された。全ての細胞層(真皮、ケラチン生成細胞の基底層、ケラチン生成細胞の有棘層、及び角質層が挙げられる)が、放射線照射されていない対照と放射線照射された組織との間において同一であったが、いくらかの組織の損傷が高放射線量において明らかであり、当該損傷が真皮部分と上皮部分との隙間として可視化された。結果として、1kGy及び5kGyの線量レベルが、以降の実験における使用に最も有望であると確認された。
【0084】
<実施例4:ガンマ線照射された皮膚同等物組織の生化学的特性(インビトロにおける抗菌活性が挙げられる)の評価>
ガンマ線は、線量に依存したタンパク質に対する損傷を、直接的及び間接的に刺激する。直接的な損傷はイオン化を通して惹起される。一方、間接的な損傷は、水分子の加水分解、並びに巨大分子の酸化的修飾又は架橋に伴って生じる。結果として、組織のタンパク質は、放射線照射によって、変質の増進及び溶解度の低下を示し得る。開発した作製物は、上昇したレベルの宿主防御ペプチドの供給を通じて機能することが予想されるため、放射線照射後のタンパク質の利用可能性及び生物学的な活性を決定することが必要である。放射線照射された組織の分析に、可溶性タンパク質及び総タンパク質の量の分析、イムノブロット分析、並びに抗菌活性のアッセイを含めた。
【0085】
可溶性タンパク質及び総タンパク質の量の分析:放射線照射されていない2D2皮膚組織、放射線照射されていない9F1皮膚組織、放射線照射された2D2皮膚組織及び放射線照射された9F1皮膚組織から、パンチ生検の試料を得、0.2mLの滅菌水に浸した。タンパク質を抽出するために、パンチ生検の試料を、37℃において72時間にわたってインキュベートした。上清を回収し、BCAアッセイによって総タンパク質の量を定量した。図4に示すように、放射線量の増加とともに、上清に溶出した総タンパク質の量は減少した。これらの結果は、架橋(タンパク質の溶解度を減少させる修飾)による、放射線を介したタンパク質の公知の損傷と一致する。しかし、非付着性のガーゼによって構成されている含水量の少ない環境にある、包装されている組織を用いた予備実験において、この放射線量に依存した、タンパク質の抽出性の低下は解消された(実施例6参照)。
【0086】
ペプチド分析:タンパク質の抽出性は、処理された組織の全体的な生化学的な状態を反映し得る。抗菌的な創傷被覆物の開発を支持する、より関連性のある特質は、抗菌ペプチドの完全性及び溶解性である。これらの特質を評価するために、放射線照射された2D2組織及び放射線照射されていない2D2組織から抽出されたタンパク質について、イムノブロット分析を行った。パンチ生検の試料を、2D2組織から得、さらに48時間にわたって無血清の成長培地中に移しておいた。2つ一組の組織に由来する調整された培地を回収し、タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に転写し、標準的な方法を用いたイムノブロット分析のために処理した。hCAP18に特異的な抗体(完全なヒトの抗菌タンパク質hCAP18、及び生物学的な活性を有するタンパク質分解断片であるLL−37を検出する)を用いて、抗菌ペプチドを検出した。完全なhCAP18及びLL−37はいずれも、放射線量に関係なく、組織によって調整された培地中に容易に検出された。また、SDS−PAGEにおけるこれらのタンパク質の移動パターンは、これらの実験に利用された放射線量による影響を受けなかった。放射線照射されていない対照の組織から放出されたペプチドはわずかに増加していた。これらのわずかな増加は、成育している組織によるペプチドの新たな合成及び分泌に起因し得るか、又はこれらの組織におけるペプチドの溶解度の増加に起因し得る。この観察にもかかわらず、カテリシジン抗菌ペプチドは、完全なままであり、放射線照射された組織から容易に抽出され得る。
【0087】
抗菌活性のアッセイ:放射線照射されていない組織及び放射線照射された組織から放出された抗菌ペプチドの完全性を立証したので、我々は、対照の組織及び放射線照射された組織を、抗菌特性について評価した。簡潔に述べると、放射線照射されていない組織及び放射線照射された組織からパンチ生検の試料を得、抗菌ペプチドの抽出のために、2、4又は24時間にわたって無血清の成長培地に移しておいた。培地を回収し、細菌成長培地中の1.0×103CFUのS. carnosusの接種物と混合した。60分間にわたって等速において振とうしながら、この混合液を37℃においてインキュベートした。その後、WASP2 Spiral Plater(Microbiology International、Frederick、MD)を用いて細菌用プレート上に試料を播き、37℃において16時間にわたってインキュベートした。コロニー数を数え、CFU/mLとして表される生細菌密度を決定した。評価値は、組織抽出物が入っていない無血清の成長培地の存在下において成長させた細菌培養物の密度に対して標準化した。図5に示すように、1kGyの放射線を用いて処理された2D2組織から抽出された試料は、2時間及び4時間の調整期間において、放射線照射されていない組織と比べて減少した細菌密度によって示される通り、抗菌活性の向上を示した。抗菌活性のこの一時的な増加は、5kGyの線量を用いて処理された組織にみられず、より長い組織による調整時間の条件においても明白ではなかった。同様の活性の増加が、1kGyにおいて放射線照射された9F1組織にみられた(データは示していない)。この向上された抗菌活性は、放射線照射された組織が長時間にわたってより少ない総タンパク質の量及びより少ない量のカテリシジン抗菌ペプチドを放出し得ることを考えると、意外である。しかし、上記の実験は少なくとも48時間にわたってインキュベートされた組織を用いたが、向上された抗菌活性は、放射線照射された組織から2時間又は4時間にわたって抽出された試料のみにおいてみられた。
【0088】
全体として、放射線照射された皮膚同等物の生化学的分析によって、可溶性タンパク質の全体的なレベルは減少するが、抗菌ペプチドの完全性はほとんど維持されることが示された。1kGyにおいて放射線照射された皮膚同等物組織から抽出されたペプチドは、対照の細菌培養液と比べて80%まで細菌の成長を低減させることが示された。これらの結果は、これらの最終的に処理された人工皮膚組織の生物学的な活性を維持する可能性を示している。
【0089】
<実施例5:放射線照射された皮膚同等物組織の保存>
栄養性のゲル上に保存されている放射線照射された9F1組織及び2D2組織の、短期間の保存能の分析を行った。これらの実験において、放射線照射後の7日目及び37日目に、冷蔵された放射線照射された組織を分析し、組織構造及び抗菌ペプチド活性を評価するか、またはアッセイした。放射線照射された組織の全体的な組織構造は、冷蔵保存されていた37日間にわたって維持されていた。試験された線量レベルにおいて、冷蔵された組織は、真皮部分及び上皮部分の両方を維持していた。上皮部分において、ケラチン生成細胞の基底層及び有棘層は識別可能な状態を維持しており、角化層はほとんど変化していない。組織内における最小の細胞の損傷が、基底層のケラチン生成細胞と基底上層のケラチン生成細胞との細胞間隙として現われている。組織の保存は、真皮部分と上皮部分との部分的な分離を生じる。しかし、これは試験した全ての期間における組織に認められた。
【0090】
抗菌ペプチド活性:放射線照射後の7日間又は37日間にわたって冷蔵保存された、放射線照射されているか又は放射線照射されていない9F1組織、及び放射線照射された又は放射線照射されていない2D2組織から、試料を得た。抗菌活性の測定は、上述の通りに行った。細菌密度(CFU/mL)を測定し、無血清の新鮮な成長培地の存在下において成長させた細菌培養物に対して、データを標準化した。これらの実験の結果を、9F1組織については図6に、2D2組織については図7にそれぞれ示す。1kGyの線量を用いて放射線照射され、7日間にわたって冷蔵保存された9F1組織は、対照の細菌培養物と比べて、細菌の成長について86%の低下を示した。それに対して、放射線照射されていない9F1組織では、細菌の成長ついて52%の低下を生じた。同様に、放射線照射されていない2D2組織から生じた57%の低下と比べて、1kGyにおいて放射線照射され、7日間にわたって冷蔵された2D2組織は、細菌の成長について72%の低下を生じた。1kGyにおいて放射線照射された9F1組織及び2D2組織の抗菌活性は、37日間にわたって冷蔵保存された放射線照射されていない組織の抗菌活性とおよそ同程度に戻ったが、対照の培養物と比べて、依然として抗菌活性を示した。5kGyを用いて処理された全ての組織は、放射線照射後の保存から7日目に測定可能な抗菌活性を維持していたが、この活性は長期の保存によって低下した。これらのデータは、放射線照射された組織が1ヶ月以上にわたる冷蔵保存後に検出可能な抗菌活性を提供し得ることを示唆している。
【0091】
<実施例6:包装構成の影響>
上記の実施例2において処理された組織は、下にある支持膜から分離して、組織の折り重なり及びしわを生じることが認められた。この現象を回避するために、組織の移動を防ぐ包装構成を開発した。この改良された構成では、組織をそれらの挿入物から取り外し、無菌の非付着性のガーゼ上に移し、無菌のプラスチック製の袋に密封した。プラスチック製の袋から取り出した後、組織はしわになった形跡又は折り重なった形跡を示さなかった。
【0092】
タンパク質に対するガンマ線照射の影響は、他の箇所に記載されているが、これらの影響は大部分が、試料中の水分子の加水分解によって生成される遊離ラジカル及び活性酸素種によって媒介される。人工組織作製物の輸送に用いる栄養性のゲルの容器における高い含水量が原因になって、栄養性のゲルの容器又は乾燥した非付着性のガーゼに包装されている放射線照射された組織が、放射線照射処理の間に異なる生化学的な特性を示すことが予想された。放射線照射されていない2D2組織、放射線照射された2D2組織、放射線照射されていない9F1組織及び放射線照射された9F1組織から、パンチ生検の試料を得、0.2mLの滅菌水に浸した。37℃において24時間にわたって生検試料をインキュベートし、上清を回収し、溶出されたタンパク質をBSAアッセイによって定量した。図8に示すように、栄養性のゲルの容器に包装されている組織において、水溶性タンパク質の総量は、放射線量の増加とともに減少し、上述の試験と一致している。一方で、放射線照射された組織の非付着性のガーゼに付着させる包装は、対照のレベルと同程度のタンパク質の利用可能性を維持していた。したがって、放射線照射前においてガーゼに付着させる組織の包装は、タンパク質の架橋がより起こりにくい環境を提供することによって、放射線照射された組織中のタンパク質の損傷レベルを低減させ得る。
【0093】
<実施例7:人工皮膚同等物の凍結乾燥>
人工皮膚同等物を、実施例1に記載したように作製する。完成直後に、皮膚同等物を含んでいるTRANSWELL挿入物を、プラスチック製のTRANSWELLディッシュに無菌的に移し、蓋を被せ、20℃に保たれたVIRTIS Genesis Freeze Dryer(Gardiner、NY)チャンバーのたなの上に置く。2100mTの圧力において、1分当たり−1.33℃の割合において、20℃から−20℃まで温度を下げ、2100mTの圧力において、1分当たり−0.67℃の割合において、−20℃から−60℃まで温度を下げることによって、組織を凍結させる。減圧によって0mTまで圧力を下げ、1分当たり+0.25℃の割合において、−60℃から20℃まで、組織を加温する。0mT、20℃において少なくとも16時間にわたって試料を保持することによって、試料を乾燥させる。
【0094】
<実施例8:人工皮膚同等物の真空乾燥>
人工皮膚同等物を実施例1に記載したように作製する。皮膚同等物を含んでいるTRANSWELL挿入物を、プラスチック製のTRANSWELLディッシュに無菌的に移し、蓋を被せ、25℃に保たれたVIRTIS Genesis Freeze Dryer(Gardiner、NY)チャンバーのたなの上に置く。8分間の間隔を空けて、チャンバーの圧力を900mT、830mT、760mT、690mT、620mT、550mT、490mT、430mT、370mT、310mT、250mT、200mT、150mT、100mT、50mT、25mTに下げる。少なくとも16時間にわたって25mTにおいて試料を保持して、試料を乾燥させる。
【0095】
<実施例9:人工皮膚同等物の乾燥重量>
人工皮膚同等物を作製し、組織の湿重量を凍結乾燥の前後において得る。凍結乾燥後の組織の重量は、元の湿潤な組織の重量の11.7%から13.7%の間である(表1)。
【0096】
【表1】
【0097】
<実施例10:乾燥した人工皮膚同等物への放射線照射>
宿主防御ペプチドhCAP18/LL−37を過剰発現するように構築された皮膚同等物組織を実施例1に記載したように作製し、実施例7及び実施例8に記載したように乾燥させる。乾燥後、組織をTRANSWELL挿入物から取り外し、無菌のプラスチック製の袋の中にヒートシールする。実施例2に記載したように、Sterigenicsにおいて、1、5又は25kGyの線量レベルにおいて、乾燥させた組織に放射線照射し、その後、最大2ヶ月間にわたって室温において組織を保存する。ヘマトキシリン及びエオシンを用いた組織切片の染色によって、全体的な組織構造を評価する。実施例2に記載したように、MTTアッセイによって、組織の成育度を評価する。乾燥させ、放射線照射された組織において、インピーダンスメータによる測定を用いて、組織のバリア機能を評価する。乾燥させ放射線照射された組織から得られた試料を、単軸引張りの条件において破損するまで引っ張り、機械的特性を測定した。抗菌ペプチドの量を、乾燥させ放射線照射された組織から得られた可溶性の抽出物のELISAによって定量した。
【0098】
組織学的分析:凍結乾燥されるか、若しくは周囲温度において真空乾燥され、続いて3つの線量のうちの1つにおいて放射線照射され、最大2ヶ月間にわたって周囲温度において保存された組織、又は未処理の組織から生検試料を得る。組織構造を可視化するため、ヘマトキシリン/エオシンを用いた組織染色のために試料を処理し、400倍の倍率においてデジタルの顕微鏡写真を得る。凍結乾燥され、放射線照射された組織、及び真空乾燥され、放射線照射された組織の代表的な画像を、それぞれ図9及び図10に示す。未処理のまま調製された試料は、人工の代用皮膚組織について期待される組織構造を示している(図9及び図10のパネル1)。
【0099】
凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物組織は、真皮部分及び上皮部分を識別可能な、全体が正常な組織構造を維持している(図9)。真皮部分は構造的変化(圧縮、及び上皮部分からの部分的な剥離が挙げられる)を示す。上皮部分の内部における基底層、有棘層、及び角質層の構造はほとんど維持されている。
【0100】
真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物は、全体が正常な組織構造(識別可能な真皮、ケラチン生成細胞の基底層、ケラチン生成細胞の有棘層、及び角質層が挙げられる)を維持している(図10)。しかし、真皮部分の両方の圧縮が明らかに認められ、保存されていない組織よりも薄い組織を生じる。放射線量の増加は、真空乾燥された組織の全体的な組織構造におけるさらなる変化をもたらさなかった。
【0101】
MTT成育アッセイによる成育度試験:凍結乾燥されるか、若しくは周囲温度において真空乾燥され、続いて3つの線量のうちの1つにおいて放射線照射された組織、又は未処理の組織から、パンチ生検の試料(直径8mm)を得た。生検試料を処理し、TECAN GENiosプレートリーダ(TECAN US、Durham、NC)を用いて、試料の550nmにおける吸光度を測定することによって、代謝活性を定量した。未処理のまま調製された対照の組織に対して代謝活性を標準化した。図11に示すように、乾燥及び放射線照射の組合せによって代謝活性が90%まで低下し、放射線照射された組織において以前みられた代謝活性の低下(実施例2)と一致した。
【0102】
組織のバリア機能の分析:真空乾燥又は凍結乾燥され、3つの放射線量(1、5、25kGy)のうちの1つに暴露した人工皮膚組織から切り出された、犬用の骨(dog-bone)の形状を有しているASTMの試料に対してバリア機能を行った。放射線照射の前に乾燥し、保存の前に包装された組織から、試料を打ち抜いた。
【0103】
犬用の骨の形状を有している試料を、それらの包装から取り出し、再び湿潤状態にし、バリア機能を試験した。簡潔に述べると、試料をTRANSWELL挿入物の上に、上皮側を上に向けた状態にして置き、10mlの培地とともにディッシュの中に入れ、室温において1時間にわたって(下から上に向かって)、再び湿潤状態にした。TRANSWELL挿入物を、湿らせた濾紙に移し、45分間にわたって平衡化させた。上皮のバリア機能を臨床的に評価するために用いられる、NOVA Dermaphaseメータ(NOVA Technology Corp、Portsmouth、NH)を用いて、組織表面の表面静電容量を測定することによって、各試料のグリップ領域における上皮のバリア機能を測定した。10秒間の測定周期の全体にわたるインピーダンス測定における変化は、組織表面の湿潤状態の変化を反映している。増加した湿潤の度合いは、角質層を通じた水の通過によって生じるので、変化の大きさは、上皮の透過性バリアの完全性を反映している。80ロットを超えるStrataGraft(登録商標)の組織から収集されたバリア機能のデータに基づくと、294DPM未満の初期値及び658DPMユニット未満の変化が、許容可能なバリア機能と見なされる。
【0104】
図12に示すように、組織表面の静電インピーダンス及び初期DPM値の変化は、乾燥され、放射線照射された組織、及び未処理のまま調製された人工皮膚組織において類似であった。未処理のまま調製された組織、及び乾燥され、放射線照射された組織はいずれも、StrataGraft(登録商標)の皮膚組織について収集された組織学的データにしたがって許容可能と判断される上皮のバリア機能を果たした。これらの結果に基づくと、乾燥された人工皮膚組織の放射線照射は、得られた作製物のバリア機能に悪影響を与えないことが予想される。
【0105】
引張り強度の分析:上皮のバリア試験に続いて、各試料を10mlのPBS中に浸し、少なくともさらに1時間にわたってPBSを用いて、再び湿潤状態にした。それから、ミツトヨ社製のシックネスゲージを用いて、基準領域において、試料の厚さを測定した。試料を湿潤状態にすることをPBSの再循環によって維持しながら、100%/分(25mm/分)の割合における単軸引張りにおいて破損するまで、引張り試料を引っ張った。各試験から得られる負荷及び押しのけ量(displacement)のデータは、分析及びデータの編集のために、Microsoft Excelに転送した。これらの分析からのデータを図13に示す。
【0106】
人工皮膚同等物の乾燥及び放射線照射は、組織の機械的特性に対してばらつきのある影響を与えた。機械的試験の結果の解析は、組織試料間における大きなばらつきによって困難であったが、いくつかの強い傾向が認められた。乾燥された組織は、乾燥方法又は放射線量に関わらず、再び湿潤状態になった後に、それらの乾燥前の厚さには完全に復元できず、未処理の対照と比較した時に、著しく薄い組織試料になる。組織構造によると、上皮の厚さが比較的に一定に保たれているために、この減少は真皮層において主に生じることが明らかである。また、乾燥は、この作用を増す放射線照射を伴って、より堅い組織又はよりもろい組織を生じる強い傾向がある。これは増加した初期の係数、及び破損時の伸長度の低下の両方によって理解され得る。係数のいくらかの増加は、厚さの減少(負荷の所定の増加について測定されたストレスを増加させる)によるものであり得るが、厚さの差異は、グループ間の差異を十分に説明できない。
【0107】
結果におけるばらつきの度合いは、統計学的な確実性を伴った、さらなる影響の判断を困難にする。引張り強度の平均は、乾燥及び25kGy以下の放射線放射のいずれによっても悪影響を受けるとは思われなかった。しかし、放射線照射は、最大負荷のわずかな(しかし、統計学的に有意ではない)低下を生じ得る。
【0108】
抗菌ペプチドの分析:市販のELISA検出キットを用いて、人工皮膚同等物からのhCAP18由来ペプチドを定量した。未処理の組織又は保存された組織の表面に無血清培地(1cm2当たり0.16mlの無血清培地)を局所的に与え、37℃において2時間にわたって組織を平衡化することによって、可溶性の抽出物を調製した。抽出物を、完全なhCAP18タンパク質、及び翻訳後プロセシングを受けたLL37代謝生成物を検出するELISAに用いた。組換えLL37ペプチドの標準曲線と比較して、試料を定量した。hCAP18タンパク質の量を、ngタンパク質/組織抽出物のmlとして表した。
【0109】
表2に示すように、凍結乾燥された組織及び真空乾燥された組織では、抽出可能なhCAP18由来ペプチドの量が、未処理のまま調製された人工皮膚組織から得た量より75%を超えて多かった。
【0110】
【表2】
【0111】
以上の明細書に記載されている全ての公開及び特許が、参照によって本明細書に援用される。記載されている本発明の方法及び系の種々の変更及び変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者にとって明白であろう。本発明が特定の好適な具体例を伴って記載されているが、請求されている本発明がこのような特定の具体例に不当に限定されないことを理解すべきである。実際に、組織培養、分子生物学、生化学、又は関連する分野における当業者にとって明白である、本発明を実施するための、記載されている形態の種々の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】放射線照射後の組織の成育度を示す図である。
【図2】ケラチン生成細胞の成育度/移動アッセイを示す図である。
【図3】繊維芽細胞の成長アッセイを示す図である。
【図4】放射線照射された2D2組織及び9F1組織から放出されたタンパク質を示す図である。
【図5】放射線照射された2D2組織の抗菌活性を示す図である。
【図6】放射線照射された9F1組織の抗菌活性を示す図である。
【図7】放射線照射された2D2組織の抗菌活性を示す図である。
【図8】栄養性のゲル又は非付着性のガーゼに付着して保存された皮膚同等物組織から放出された総タンパク質の量を示す図である。
【図9】凍結乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析を示す図である。
【図10】真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析を示す図である。
【図11】真空乾燥され、放射線照射された皮膚同等物、及び凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の成育度を示す図である。
【図12】乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の上皮のバリア機能を示す図である。
【図13】乾燥され、放射線照射された人工皮膚組織の機械的特性を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、その内容が参照によって本明細書全体に援用される、米国仮出願第61/111,153号(出願日:2008年11月4日)の利益を主張する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般的に、器官培養によって製作された皮膚同等物を、冷蔵温度又は周囲温度において長期保存する系及び方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
組織工学(TE)の先端分野は、今後10年において、臓器の疾患及び機能不全の処置を著しく進歩させる準備が整っている。2001年に、米国及び欧州の市場について承認された細胞に基づく治療法が23あった。そのうちの9つは、皮膚代用物又は皮膚移植片であり、100を超える製品が、開発中であった(De Bree, Genomics-based Drug Data Report and Regenerative Therapy (1) 2:77-96 (2001))。2007年には、人工組織、細胞に基づく治療法、又は関連技術の開発に、ほぼ100の会社が関与していた(Applied Data Research, February 2007)。全体としては、この産業は、1995〜2001年において16%の年間成長率を有していた。「構造」産業部門(例えば、皮膚、骨、軟骨)は、1998〜2001年において85%の成長を示した。2004年に、組織から構築された皮膚代替物/代用物、及び創傷を修復する活性な調整物にとっての米国市場は、約1億9500万ドルと評価された。売上高は、9.5%の複利年率において増加し、2014年には約4億8100億ドルに達すると予想される(MedTech Insight, Windhover Information, September 2005)。創傷の手当てに関する先端技術の全米市場は、2005年において23億ドルを超えていた。これは、5年間にわたって12.3%の平均年間成長率において成長し、2011年に46億ドルに達すると予測されてきた(BCC Research, PHM011E, January 2007)。創傷の手当ての世界市場は、2006年に72億米ドルであると見積もられ、2つの部門(従来部門及び先端部門)から構成される(Espicom Business Intelligence, 2007)。創傷の手当てに関する従来の用品は、主に、織布のスポンジ、不織布のスポンジ、付着性の包帯、及び非付着性の包帯のような、低技術なガーゼに基づく被覆材からなる。創傷の手当てに関する先端部門(世界で41億米ドル)は、年に10%の2桁成長をともなった、最も急成長している分野である(Espicom Business Intelligence, 2007)。
【0004】
人工組織及び器官の経済的に重要かつ画期的な多くの用途が、ヒトの保健分野に存在するが、産業の実用的なすべての可能性は、実現されるにはほど遠い。これらの技術における35億ドルを超える国際投資にもかかわらず、現在、世界中の組織工学の株式上場企業のうち1社しか、利益をあげていない(Lysaght and Reyes, Tissue Engineering 7(5):485-93 (2001))。
【0005】
医療従事者、保健医療提供者、及び関連する他の購入者による人工組織の採用に対する主な障害は、人工組織を有効かつ効率的に保存及び保管する手段がないことである。生細胞及び組織製品の特性が、長期保存に関する実用性を妨げている。現在の人工組織は、生存性及び機能を維持するために、注意深く管理された状況下においてしばしば保存され、発送されなければならない。典型的には、人工組織製品は、製造に数週間又は数ヶ月間を要するが、製造から数時間又は数日間以内に使用する必要がある。結果として、TEの会社は、最大の能力において製造設備を継続的に操業し、廃棄すべき売れ残りの製品の費用を負担する必要がある。すでに費用のかさむ製造工程に加え、これらの在庫損失は、価格を非現実的な水準にさせている。具体例の1つとして、APLIGRAFは、製造に約4週間を要し、わずか10日間しか使用できず、使用まで20〜23℃に維持する必要がある。他の例として、EPICELは、携帯型インキュベータに入れられて、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるGenzyme Biosurgeryの製造施設から使用現場まで看護師によって運ばれ、到着後すぐに使用される。このような制約は、対費用効果の高い便利な製品の開発にとって重要な課題である。
【0006】
保存問題の解決策として凍結保存が検証されてきたが、氷の形成、冷害及び浸透圧の不均衡を介して、組織損傷を誘発することが知られている。APLIGRAFに加えて、他に唯一承認されている、生きている皮膚同等物であるORCELは、凍結製品として現在臨床試験中であるが、使用前に−100℃より低い温度に維持する必要があるという欠点を有している。これは、特殊な製品配達及び保存条件(輸送の間の危険物の使用、並びに地方の診療所及び野戦病院においては直ぐに入手できない、高価かつ危険な保存用の液体窒素の使用が挙げられる)を必要とする。さらに、凍結製品の配達は、使用前に組織を上手く解凍するために、末端使用者側における特別な訓練を必要とする。
【0007】
したがって、当該技術分野において必要とされているものは、使用現場において日常的に利用可能な条件において保存するための人工組織及び細胞を調製する改善された方法である。全ての医療施設は冷蔵保管庫を有しているため、標準的な冷蔵庫において長期間にわたって保存可能な皮膚同等物の開発は、これらの製品の利用可能性及び臨床的な有用性を大きく改善し得る。周囲温度において長期間にわたって保存可能な皮膚同等物の開発は、戦場又は様々な応急処置の現場における即座の使用のための、このような製品の利用可能性をさらに向上させるであろう。
【0008】
〔発明の概略〕
本発明は、一般的に、器官培養によって製作された皮膚同等物を、冷蔵温度又は周囲温度において長期保存する系及び方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、創傷被覆物としての使用のための器官培養されている皮膚同等物を保存する方法を提供する。ここで当該方法は、上記器官培養されている皮膚同等物、及び包装容器を準備すること、上記皮膚同等物の処理を行って、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にすること、並びに上記皮膚同等物の包装を行って、包装されている皮膚同等物を準備することを包含している。本発明は、皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にするための皮膚同等物の処理について、任意の特定の方法に限定されない。いくつかの実施形態において、上記処理の工程は、上記皮膚同等物を無菌状態及び成育不能にするための、上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している。いくつかの実施形態において、上記放射線照射はガンマ線照射を用いて行われる。いくつかの実施形態において、上記処理の工程は、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥を包含している。本発明は、乾燥について任意の特定の方法に限定されない。いくつかの実施形態において、上記乾燥は真空乾燥及び凍結乾燥からなる群から選択される方法によって行われる。本発明は、特に指定がなければ、工程の任意の特定の順序に限定されない。いくつかの実施形態において、上記処理は包装の前に行われる。いくつかの実施形態において、上記処理は包装の後に行われる。いくつかの実施形態において、上記処理は、上記皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥、及び上記皮膚同等物を無菌状態にする条件における上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している。いくつかの実施形態において、上記乾燥の工程が上記包装の前に行われ、上記放射線照射の工程が上記包装の工程の後に行われる。
【0009】
本発明は、任意の特定の皮膚同等物の使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記器官培養された皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる。いくつかの実施形態において、上記NIKS細胞は抗菌ポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態において、2つ以上の外来性のポリペプチドは、当該皮膚同等物を構成している細胞によって発現される。本発明は任意の特定の外来性のポリペプチドの使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記外来性のポリペプチドは抗菌ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。好ましい実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物又は乾燥されていない皮膚同等物の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は約0.1から約5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。いくつかの実施形態において、上記包装容器はヒートシール可能である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法によって作製されている、包装されているヒト皮膚同等物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法によって作製されている、包装されている無菌のヒト皮膚同等物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、単離されている成育不能なインビトロのヒト皮膚同等物を含んでいる、組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は包装されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は無菌である。いくつかの実施形態において、無菌の上記皮膚同等物は放射線照射されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は乾燥されている。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる。いくつかの実施形態において、上記NIKS細胞は、外来性のポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの外来性のポリペプチドは、上記皮膚同等物を構成している細胞によって発現される。本発明は、任意の特定の外来性ペプチドの使用に限定されない。いくつかの実施形態において、上記外来性ポリペプチドが抗菌ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。好ましい実施形態において、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物又は乾燥されていない皮膚同等物の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、約0.1から約5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象を処置する方法を提供する。ここで、当該方法は、上述のような皮膚同等物の組成物の準備、及び上記皮膚同等物が上記創傷に接触する条件における上記皮膚同等物の創傷に対する使用を包含している。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は上記創傷に一時的に使用される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の皮膚同等物の組成物を収納している包装容器を含んでいる、キットを提供する。いくつかの実施形態において、上記皮膚同等物は約1ヶ月間から約6ヶ月間の保存期間を有している。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、インビトロにおいて器官培養されており、単離されている成育不能な皮膚同等物を含んでいる組成物であって、当該皮膚同等物が湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記皮膚同等物に必須の細胞によって発現される少なくとも1つの外来性の抗菌ポリペプチドを含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象を処置するための上記組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、対象の創傷を処置するための上記組成物の使用を提供する。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
(図1)放射線照射後の組織の成育度。9F1組織及び2D2組織に放射線照射し、放射線照射後の3日、7日又は14日目にパンチ生検の試料を回収し、MTTアッセイを用いて成育度を評価した。データは、各処理グループにおける少なくとも3つの独立した生検試料から測定された、平均+/−標準偏差を示す。
【0017】
(図2)ケラチン生成細胞の成育度/移動アッセイ。(A)ケラチン生成細胞の成長がみられなかった移植片を、成育可能なケラチン生成細胞について−と評価した。(B)ケラチン生成細胞が真皮の端の周囲に移動していた試料を、成育可能なケラチン生成細胞について+と評価した。
【0018】
(図3)繊維芽細胞の成長アッセイ。対照の9F1組織及び放射線照射された9F1組織に由来する生検試料をコラーゲナーゼを用いて処理し、1%のメチレンブルーによって染色して細胞のコロニーを可視化する前に、遊離した細胞を6日間にわたって培養した。
【0019】
(図4)放射線照射された2D2組織及び9F1組織から放出されたタンパク質。ヒトの皮膚代用組織に対して、0、1又は5kGyの線量において放射線照射した。放射線照射後の3日目に得られたパンチ生検の試料からタンパク質を水に抽出し、BCAアッセイによって定量した。データは4回の測定による平均値+/−標準偏差を示す。
【0020】
(図5)放射線照射された2D2組織の抗菌活性。放射線照射されていない2D2組織及び放射線照射された2D2組織から得たパンチ生検の試料を、示されている時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織から抽出された試料の抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物を基にして標準化した。各データの値は独立した2つの試料から得られた平均値を示す。
【0021】
(図6)放射線照射された9F1組織の抗菌活性。放射線照射されていない9F1組織及び放射線照射された9F1組織から得たパンチ生検の試料を、4時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織からの抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物(値を1に設定した)を基にして標準化した。各データの値は示されている処理グループにおける組織由来の4つの生検試料からの平均値+/−標準偏差を示す。
【0022】
(図7)放射線照射された2D2組織の抗菌活性。放射線照射されていない2D2組織及び放射線照射された2D2組織から得たパンチ生検の試料を、4時間にわたって無血清培地においてインキュベートした。これらの組織からの抗菌活性をCFUのカウントによって決定し、対照の細菌培養物(値を1に設定した)を基にして標準化した。各データの値は示されている処理グループにおける組織由来の4つの生検試料からの平均値+/−標準偏差を示す。
【0023】
(図8)栄養性のゲル又は非付着性のガーゼに付着させて保存された皮膚同等物組織から放出された総タンパク質の量。ヒトの皮膚同等物組織に対して放射線照射し、パンチ生検の試料を14日後に回収し、37℃において24時間にわたって、0.2mlの滅菌水においてインキュベートした。抽出されたタンパク質をBCAアッセイによって定量した。データは4回の測定による平均値+/−標準偏差を示す。
【0024】
(図9)凍結乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析。未処理の皮膚同等物を、凍結乾燥された皮膚同等物、又は凍結乾燥され、1kGy、5kGy若しくは25kGyの線量レベルにおいて放射線照射された皮膚同等物と比較した。組織断面を、ヘマトキシリン/エオシンを用いて染色し、400倍の倍率において撮影した。スケールバー=200μm。
【0025】
(図10)真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析。未処理の皮膚同等物を、真空乾燥された皮膚同等物、又は真空乾燥され、1kGy、5kGy若しくは25kGyの線量レベルにおいて放射線照射された皮膚同等物と比較した。組織断面を、ヘマトキシリン/エオシンを用いて染色し、400倍の倍率において撮影した。スケールバー=200μm。
【0026】
(図11)真空乾燥され、放射線照射された皮膚同等物、及び凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の成育度。バーの色は、(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。データの値は、未処理のまま調製され、放射線照射されていない皮膚同等物組織に対して標準化した、平均+/−標準偏差(n=4〜8)を示す。
【0027】
(図12)乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の上皮のバリア機能。(左のパネル)組織表面の静電容量についての変化を、凍結乾燥又は真空乾燥され、1kGy、5kGy又は25kGyにおいて放射線照射された人工皮膚組織について、10秒間の間隔を空けて測定した。値は、それぞれ、独立した2つの組織における2回の測定による平均+/−標準偏差を示す。(右のパネル)初期のDPM値を凍結乾燥又は真空乾燥され、1kGy、5kGy、又は25kGyにおいて放射線照射された組織について記録されている。バーの色は(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。値は、それぞれ、独立した2つの組織における2回の測定による平均+/−標準偏差を示す。
【0028】
(図13)乾燥され、放射線照射された人工皮膚組織の機械的特性。バーの色は、(左から右に向かって)黒=0kGy(放射線照射されていない);濃い灰色=1kGy;薄い灰色=5kGy;白=25kGyを示す。データは平均+/−標準偏差である。n=2〜4。
【0029】
〔定義〕
本明細書に使用されるとき、「皮膚同等物」、「ヒト皮膚同等物」、「ヒト皮膚代用物」及び「器官培養物」という用語は、層状化して扁平上皮になっている、インビトロにおいて得られるケラチン生成細胞の培養物を指すために、交換可能に使用される。典型的に、皮膚同等物は、器官培養によって作製され、ケラチン生成細胞層に加えて真皮層を含んでいる。
【0030】
本明細書に使用されるとき、「湿潤な皮膚同等物」という用語は、器官培養における皮膚同等物、又は器官培養から取り出された直後の皮膚同等物を指す。
【0031】
本明細書に使用されるとき、「成育不能な」という用語は、MTTアッセイのようなアッセイによって測定されたときに、活動していない細胞を指す。 本明細書に使用されるとき、「無菌の」という用語は、微生物又は真菌が実質的にか、又は完全に混入してない皮膚同等物を指す。
【0032】
本明細書に使用されるとき、「乾燥された」という用語は、水分が減らされている組成を指す。「乾燥された皮膚同等物」は、乾燥された皮膚同等物が、湿潤な皮膚同等物又は器官培養から取り出された直後の皮膚同等物よりも少ない含水量を有するように、水分が減らされている皮膚同等物を指す。湿潤な皮膚同等物に対する乾燥された皮膚同等物の重量の比較は、乾燥の程度を測定するときに用いられ、乾燥する工程の間に皮膚同等物から取られた水分の量を反映する。
【0033】
本明細書に使用されるとき、「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-1219として寄託された細胞の特徴を有している細胞を指す。
【0034】
「相同性」という用語は相補性の程度を指す。部分的な相同性又は完全な相同性(すなわち、同一性)があり得る。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列が標的核酸とハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害するものであり、「実質的に相同」という機能的な用語を用いて呼ばれる。「結合の阻害」という用語は、核酸の結合に関して用いられる場合、標的配列に結合するための相同配列の競合によって引き起こされる結合の阻害を指す。完全に相補的な配列の標的核酸へのハイブリダイゼーションの阻害は、低いストリンジェンシーの条件におけるハイブリダイゼーション法(サザンブロット又はノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション等)を用いて検出され得る。実質的に相同な配列又はプローブは、低いストリンジェンシーの条件における、標的への完全な相同物の結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)に関して競合し、当該結合を阻害する。これは、低いストリンジェンシーの条件が非特異的結合を許容しない条件であることまでを意味していない。低いストリンジェンシーの条件は、ある配列に対する2つの配列の結合が特異的な(すなわち、選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は、部分的な程度の相補性(例えば、約30%未満の同一性)もない第2の標的の使用によって試験され得る。非特異的結合の非存在下において、プローブは第2の非相補的な標的にハイブリダイズしない。
【0035】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド又は前駆体(例えば、KGF−2)の生成に必要なコーディング配列を含んでいる核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長又は断片の所望の活性又は機能的特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達等)が保持される限り、全長のコーディング配列又は任意の部分によってコードされ得る。また、当該用語は、構造遺伝子のコーディング領域、及び追加配列(including sequence)を包含している。当該追加配列は、コーディング領域に隣接して5’末端側及び3’末端側の両方に配置されており、当該追加配列は、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するような5’末端及び3’末端のいずれか一方の側にある約1kbの距離にわたっている。コーディング配列の5’側に配置されており、mRNA上に存在している上述の配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コーディング配列の3’側又は下流に配置されており、mRNA上に存在している配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA及びゲノムの形態の両方を包含する。遺伝子のゲノムの形態又はクローンは、「イントロン」、「介在領域」又は「介在配列」と呼ばれる非コーディング配列によって分断されているコーディング領域を包含する。イントロンは、核内RNA(hnRNA)に転写される遺伝子の断片である。イントロンは、エンハンサのような制御因子を含み得る。イントロンは、核内転写物又は一次転写物から除去されるか、又は「スプライシング」によって切り出される。したがって、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物には存在していない。mRNAは、翻訳の間に、新生ポリペプチドのアミノ酸の配列又は順序を指定するために機能する。
【0036】
本明細書に使用されるとき、「をコードしている核酸分子」、「をコードしているDNA配列」、及び「をコードしているDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿った、デオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿った、アミノ酸の順序を決める。したがって、DNA配列はアミノ酸配列をコードしている。
【0037】
本明細書に使用されるとき、「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的な手法によって互いに連結されているDNAの断片から構成されているDNA分子を指す。
【0038】
本明細書に使用されるとき、「精製されている」又は「精製すること」という用語は、試料からの不純物の除去を指す。
【0039】
本明細書に使用されるとき、「ベクター」という用語は、(複数の)DNA断片をある細胞から別の細胞に移す核酸分子を指す。「ビヒクル」という用語は、ときに「ベクター」と交換可能に用いられる。
【0040】
本明細書に使用されるとき、「発現ベクター」という用語は、所望のコーディング配列、及び適切な核酸配列を含んでいる組換えDNA分子を指し、当該適切な核酸配列は、作動可能に連結されているコーディング配列を特定の宿主生物において発現させるために必須の配列である。原核生物における発現に必須の核酸配列は、通常、プロモータ、オペレータ(必要に応じて)、及びリボソーム結合領域を含んでおり、しばしば他の配列をともなっている。真核細胞は、プロモータ、エンハンサ、終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0041】
「作動可能に連結されている」とは、そのように説明されている構成要素が、意図されている様式において機能することを許容する関係にある並列を指す。コーディング配列の発現が、制御配列と適合する条件において達成されるように連結されているとき、制御配列はコーディング配列に「作動可能に連結され」ている。
【0042】
本明細書に使用されるとき、「トランスフェクション」という用語は、真核細胞に対する外来性のDNAの導入を指す。トランスフェクションは、当該分野において公知の様々な方法(リン酸カルシウム−DNA共沈殿、DEAE−デキストリン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及び微粒子銃が挙げられる)によって実現され得る。
【0043】
「安定なトランスフェクション」又は「安定にトランスフェクトされている」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに対する外来性のDNAの導入及び組込みを指す。「安定なトランスフェクタント」という用語は、ゲノムDNAに対して安定に組み込まれている外来性のDNAを有している細胞を指す。
【0044】
「一過性のトランスフェクション」又は「一過性にトランスフェクトされている」という用語は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに外来性のDNAが組み込まれない場合の、細胞に対する外来性のDNAの導入を指す。外来性のDNAは、トランスフェクトされた細胞の核内に数日間にわたって残存する。この間、外来性のDNAは染色体中の内在性遺伝子の発現を司る調節制御を受ける。「一過性のトランスフェクタント」という用語は、外来性のDNAを取り込んでいるが、このDNAを組み込んでいない細胞を指す。
【0045】
本明細書に使用されるとき、「抗菌ポリペプチド」という用語は、長さ5から100アミノ酸の、抗菌活性を示す短いポリペプチドを一般的に指す。抗菌ポリペプチドの例としては、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、及びカテリシジンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の範囲に包含される様々な抗菌ポリペプチドの配列が公知であり、利用可能である。抗菌ポリペプチドの例としては、その全体の内容が参照によって本明細書に援用される国際公開第05/012,492号において同定されている配列が挙げられる。
【0046】
〔詳細な説明〕
本発明は、一般的に、器官培養によって作製された皮膚同等物の用意、発送及び保存のための系及び方法に関する。特に、本発明は、乾燥され、放射線照射されたヒトの皮膚同等物から皮膚同等物の成育能力を消失させる方法であって、成育能力の消失によって、当該皮膚同等物を長期間にわたって保存可能であり、病院における使用ではなく、野外又は発生現場における当該皮膚同等物の使用にとって標準的な条件において輸送し得る方法に関する。
【0047】
医療計画(Medical planning)は、イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)の重大な部分であり、熱傷による死傷者の予想される数の予想モデルが盛り込まれていた(Barillo, D.J., et al., Tracking the daily availability of burn beds for national emergencies. J Burn Care Rehabil, 2005. 26(2): p. 174-82)。これらのモデルにおいて、死傷者の見積りが、国防総省熱傷センターのみの受け入れ能力を上回った。アメリカ熱傷学会(American Burn Association)と協同した国防総省は、熱傷の手当てに利用可能な現在の手法及び技術に基づいた、集団外傷対応計画(mass casualty plan)を展開した。第一次湾岸戦争において、敵軍はスルファマスタードを含んでいる化学兵器を使用していたことが知られていた。現在のイラク及びアフガニスタンの紛争において、野外における多くの熱傷は新たな段階に至っている。皮膚の温熱熱傷(thermal burn)又は化学的なびらん性毒ガスによる(水ぶくれになる)熱傷は、これらの損傷を処置するために一般に用いられているデルーフィング(deroofing)及び壊死組織除去の手法と同様に、開いた創傷を細菌性の病原体による易感染な状態に導く。
【0048】
不幸なことに、この25年において、皮膚の熱傷又はびらん性毒ガスによる創傷の処置のために開発されている革新的な救命技術がほとんどない。この分野における革新の必要性は、国立総合医科学研究所(the National Institute of General Medical Sciences)によって後援されている2006年10月25日〜28日の「State of the Science of Burn Research」という会議によって、強調された。ガンマ線照射されたヒトの死体の皮膚は、周囲温度において安定であり、皮膚創傷の処置において、首尾よく用いられている(Rosales, M.A., M. Bruntz, and D.G. Armstrong, Gamma-irradiated human skin allograft: a potential treatment modality for lower extremity ulcers. Int Wound J, 2004. 1(3): p. 201-6; Cancio, L.C., et al., Burn support for Operation Iraqi Freedom and related operations, 2003 to 2004. J Burn Care Rehabil, 2005. 26(2): p. 151-61)。しかし、そうような製品は、感染症の徴候を示している創傷における使用に対して必要とされない。びらん性毒ガスの暴露及び温熱創傷によって生じるような皮膚創傷は、細菌の増殖にとって理想的な環境を与えるし、創傷による敗血症から生じる合併症を引き起こす。さらに、多剤耐性を有している、生物の臨床的な単離体の高頻度化によって、皮膚創傷の治療において用いられる現在の抗菌治療の体制を補完するための、新たな方法の必要性が強調されている(Milner, S.M. and M.R. Ortega, Reduced antimicrobial peptide expression in human burn wounds. Burns, 1999. 25(5): p. 411-3)。当該生物は、例えばAcinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa、及びメチシリン耐性のStaphylococcus aureus(MRSA)である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明は、びらん性毒ガスによる皮膚損傷、温熱性の皮膚損傷及び外傷性の皮膚損傷に対する処置のための皮膚同等物であって、野外において直ちに使用可能な、乾燥されるか又は放射線照射された、組織として構築された抗菌の皮膚同等物を提供する。乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物は、周囲温度における長期間の保存、並びに外上皮に対するびらん性毒ガスによる損傷、温熱性の損傷、又は外傷性の損傷を有している患者に対する最大限の用途の広さ及び安全性のために設計されている。好ましい実施形態において、乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物は、広範囲のヒト宿主防御ペプチドβ−ディフェンシン−3(hBD−3)又はカテリシジン(hCAP18/LL−37)を創床(wound bed)に送達させるように構築されている。
【0050】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、成育不能な細胞を含んでいる、乾燥された皮膚同等物又は放射線照射された皮膚同等物を提供する。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、外来性の抗菌ポリペプチド、好ましくはヒトβ−ディフェンシン−1、ヒトβ−ディフェンシン−2、ヒトβ−ディフェンシン−3又はカテリシジン(hCAP18/LL−37)を発現し、提供するように構築されている。いくつかの実施形態において、成育不能な皮膚同等物が創傷に使用される。いくつかの実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物が創傷に一時的に使用される。いくつかの実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物は、取り除かれ、同じ抗菌ポリペプチドを供給する成育不能な追加のヒトの皮膚同等物に置き換えられる。他の実施形態において、成育不能な皮膚同等物は、取り除かれ、別の抗菌ポリペプチドを供給する成育不能な追加の皮膚同等物に置き換えられる。他の実施形態において、成育不能なヒトの皮膚同等物は、成育可能な皮膚同等物の、創傷(例えば、熱創傷)に対する使用又は永久的な皮膚移植手術の前に取り除かれる。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の皮膚同等物は、外来性の抗菌ポリペプチドを発現するように構築されている。本発明は、任意の特定の抗菌ポリペプチドの使用に限定されない。好ましい実施形態において、抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン−1、ヒトβ−ディフェンシン−2、ヒトβ−ディフェンシン−3、若しくはカテリシジン(hCAP18/LL−37)、又は変異型である。いくつかの好ましい実施形態において、抗菌ポリペプチドをコードしている核酸構築物又はベクターは、ケラチン生成細胞(例えば、NIKS細胞)に導入され、トランスフェクトされたケラチン生成細胞は、器官培養法によって皮膚同等物を作製するために用いられる。外来性のポリペプチドを発現している皮膚同等物の作製のために好ましい形態は、野生型及び変異型の追加の抗菌ポリペプチドと同様に、その全体の内容が参照によって本明細書に援用される同時係属中の米国出願第10/909,119号に示されている。
【0052】
A)器官培養によって作製された皮膚同等物
本発明は、扁平上皮に分化可能な任意の特定の細胞供給源の使用に限定されない。実際に、本発明は、扁平上皮に分化可能な種々の細胞株及び供給源(初代ケラチン生成細胞及び不死化ケラチン生成細胞が挙げられる)の使用を意図している。細胞の供給源としては、ヒト及び死体ドナーから生体採取されたケラチン生成細胞及び真皮繊維芽細胞(いずれも参照によって本明細書に援用される、Auger et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. - Animal 36:96-103; 米国特許第5,968,546号及び米国特許第5,693,332号)、新生児包皮(参照によって本明細書に援用される、Asbill et al., Pharm. Research 17(9): 1092-97 (2000); Meana et al., Burns 24:621-30 (1998); 米国特許第4,485,096号、米国特許第6,039,760号、及び米国特許第5,536,656号)、並びにNM1細胞(Baden, In Vitro Cell. Dev. Biol. 23(3):205-213 (1987))、HaCaT細胞(Boucamp et al., J. cell. Boil. 106:761-771 (1988))及びNIKS細胞(細胞株BC-1-Ep/SL;参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,989,837号;ATCC CRL-12191)のような不死化されたケラチン生成細胞株が挙げられる。これらの各細胞株は、所望のタンパク質の発現又は共発現が可能な細胞株を作製するために、培養され得るか、又は遺伝子組換えされ得る。特に好ましい実施形態において、NIKS細胞が使用される。新規なヒトケラチン生成細胞株(近二倍体の不死化ケラチン生成細胞(near-diploid immortalized keratinocytes)又はNIKS)の発見は、非ウイルスベクターを用いてヒトケラチン生成細胞を遺伝子改変する機会を提供する。NIKS細胞に特有の利点は、それらが、遺伝的に均一であり、病原体がないヒトケラチン生成細胞の定常的な供給源であることである。このため、現在利用できる技術及び皮膚組織製品よりも向上された特性を有している皮膚同等物の培養物を提供するための、遺伝子工学及びゲノム遺伝子発現方法の適用において、NIKS細胞に特有な利点は有用である。NIKSケラチン生成細胞株(ウィスコンシン大学において同定され、特性が調べられている)は、非腫瘍原性であり、安定な核型を示し、単層培養及び器官培養のいずれにおいても正常な増殖及び分化を示す。NIKS細胞は、培養において完全に層状化された皮膚同等物を形成する。これらの培養物は、これまでに調べられている全ての基準において、初代ヒトケラチン生成細胞から形成された器官培養物から区別できない。しかし、不死化されたNIKS細胞は、初代細胞と異なり、単層培養において無制限に増殖し続ける。これは、細胞を遺伝的に処理し、新たな有用な特性を有している新たな細胞のクローンを単離する機会を提供する(Allen-Hoffmann et al., J. Invest. Dermatol., 114(3): 444-455 (2000))。
【0053】
NIKS細胞は、外見上正常な男児から単離されたヒト新生児包皮ケラチン生成細胞のBC−1−Ep株から生じた。BC−1−Ep細胞は、初期の継代において、培養された正常ヒトケラチン生成細胞において非典型的な形態学的特性又は増殖特性を示さなかった。培養されたBC−1−Ep細胞は、プログラムされた細胞死の特徴と同様に層状化を示した。複製の寿命を決定するために、BC−1−Ep細胞を、ケラチン生成細胞における標準的な成長培地において、100mmのディッシュ当たり3×105個の密度において、老化するまで培養し続け、1週間ごとに継代した(およそ1:25に分配)。15継代目まで、集団内のほとんどのケラチン生成細胞は、大きくて平坦な細胞を示している多くの発育不全なコロニーの存在によって判断されるような老化を示した。しかし、16継代目において、小さい細胞サイズを示しているケラチン生成細胞が認められた。17継代目まで、小さいサイズのケラチン生成細胞のみが培養物中に存在し、大きくて老化したケラチン生成細胞は認められなかった。この推定の分かれ目を生き延びた小さいケラチン生成細胞の生じた集団は、形態学的な均一性を示し、典型的なケラチン生成細胞の特性(細胞間接着及び扁平な外観の形成が挙げられる)を示しているケラチン生成細胞のコロニーを形成した。老化時期を生き延びたケラチン生成細胞を、100mmのディッシュ当たり3×105個の密度において培養し続けた。典型的に、培養物は7日以内に約8×106個の細胞密度に達した。この細胞増殖の安定した速度は、少なくとも59継代目まで維持され、細胞が不死に達したことが明らかとなった。老化している最初の集団から出現したケラチン生成細胞は、もともとBC−1−Ep/自然発生株と呼ばれ、現在ではNIKSと呼ばれている。NIKS細胞株は、HIV−1、HIV−2、EBV、CMV、HTLV−1、HTLV−2、HBV、HCV、B−19パルボウイルス、HPV−16、SV40、HHV−6、HHV−7、HPV−18、及びHPV−31にとってのプロウイルスDNA配列の存在について、PCR又はサザン分析を用いてスクリーニングされている。これらのいずれのウイルスも検出されなかった。
【0054】
3継代目の親株のBC−1−Ep細胞、並びに31継代目及び54継代目のNIKS細胞について、染色体分析を行った。親株のBC−1−Ep細胞は、XYを含めて46本の正常な染色体の構成を有している。31継代目において、全てのNIKS細胞は、第8染色体長腕の余分な同位染色体を含めて47本の染色体を保持していた。大きな染色体異常又は標識染色体は他に検出されなかった。NIKS細胞の核型は少なくとも54継代目におけるまで一定であることが示された。
【0055】
NIKS細胞株及びBC−1−Epケラチン生成細胞のDNAフィンガープリントは、分析された全ての12番目の遺伝子座において同一であり、NIKS細胞が親株のBC−1−Epの集団から生じたことを証明している。親株のBC−1−EpのDNAフィンガープリントを有しているNIKS細胞株のランダムな機会による異常は、4×10−16である。ヒトケラチン生成細胞の3つの異なる供給源である、ED−1−Ep、SCC4、及びSCC13yのDNAフィンガープリントは、BC−1−Epのパターンと異なっている。このデータは、他のヒトED−1−Ep、SCC4、及びSCC13yから単離されたケラチン生成細胞が、BC−1−Ep細胞又は互いに対して無関係であることも示している。NIKSのDNAフィンガープリントデータは、NIKS細胞を同定するための明確な方法を提供する。
【0056】
p53機能の喪失は、培養されている細胞の増殖能の向上及び不死化の頻度の増加に関係している。NIKS細胞のp53の配列は、公知のp53の配列(GenBankのアクセション番号:M14695)と同一である。ヒトにおいて、p53は、72番目のコドンのアミノ酸によって区別される2つの主要な多型として存在している。NIKS細胞におけるp53の両方の対立遺伝子は、野生型であり、72番目のコドンにおいてアルギニンをコードするCGCという配列を有している。p53の他の一般的な型は、この位置にプロリンを有している。NIKS細胞におけるp53の全配列は、BC−1−Ep前駆細胞と同一である。NIKS細胞では、Rbも野生型であることが示されている。
【0057】
足場非依存性の増殖はインビボにおける腫瘍形成性と強く関連付けられている。このため、寒天又はメチルセルロースを含んでいる培地におけるNIKS細胞の足場非依存性の増殖の特性を調べた。NIKS細胞は、寒天又はメチルセルロースを含んでいる培地において4週間が経過した後、単一の細胞のままであった。NIKS細胞の増殖の遅い変異体を検出するために、このアッセイを合計8週間にわたって続けたが、全く認められなかった。
【0058】
親株のBC−1−Epケラチン生成細胞及び不死のNIKSケラチン生成細胞株の腫瘍形成性を判断するために、胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に細胞を注射した。ヒト扁平細胞腫瘍細胞株であるSCC4を、これらの動物における腫瘍形成の陽性対照として用いた。試料の注射は、動物の一方の側腹部にSCC4細胞を入れ、反対側の側腹部に親株のBC−1Epケラチン生成細胞又はNIKS細胞を入れるように設計された。この注射方法によって、腫瘍形成における動物の差異を排除し、マウスが腫瘍形成性細胞の激しい増殖を助けることが裏付けられた。親株のBC−1−Epケラチン生成細胞(6継代目)又はNIKSケラチン生成細胞(35継代目)はいずれも、胸腺欠損ヌードマウスにおいて腫瘍を形成しなかった。
【0059】
NIKS細胞を、液内培養及び器官培養の両方における分化能について分析した。器官培養の方法は、実施例に詳細が記載されている。特に好ましい実施形態において、本発明の器官培養された皮膚同等物は、コラーゲン又は類似の材料並びに繊維芽細胞から形成された真皮同等物を含んでいる。ケラチン生成細胞(例えば、NIKS細胞及び患者由来の細胞の組合せ、又はNIKS細胞)が、器官培養の工程に続いて、真皮同等物の上に播かれ、扁平分化によって特徴付けられる上皮層を形成する。
【0060】
液内培養における細胞について、扁平分化のマーカーとして角化膜の形成をモニタリングした。培養されたヒトケラチン生成細胞において、角化膜の構築の初期段階では、インボルクリン、シスタチン−α、及び他のタンパク質からなる未熟構造の形成を生じる。それは成熟角化膜の内側の3分の1に相当する。接着性のBC−1−Ep細胞又はNIKS細胞株由来のケラチン生成細胞の2%未満が、角化膜を形成した。この発見は、活発に増殖しているセミコンフルエントなケラチン生成細胞が、5%未満の角化膜を形成することを証明した以前の研究と一致する。分化させるために誘導されたときにNIKS細胞株が角化膜を形成し得るか否かを判断するために、細胞を接着培養物から取り出し、メチルセルロースを用いて半固体に生成されている培地において24時間にわたって浮遊させた。最終分化の多くの様相(差異のあるケラチンの発現及び角化膜の形成が挙げられる)を、インビトロにおけるケラチン細胞の細胞−細胞間及び細胞−基層間における接着の喪失によって引き起こさせ得る。NIKSケラチン生成細胞は、親株のケラチン生成細胞と比較して、同程度の角化膜及び通常はより多くの角化膜を形成した。これらの発見は、NIKSケラチン生成細胞が、この細胞型特異的な分化構造の形成の開始能を欠損していないことを証明している。
【0061】
NIKSケラチン生成細胞が扁平分化を起こし得ることを確認するために、細胞を器官培養において培養した。ケラチン生成細胞の培養物をプラスチックの基層上において増殖させ、培地複製物(replicate)に浸したが、わずかな分化しか示さなかった。特に、ヒトケラチン生成細胞は、コンフルエントになり、3層又はそれ以上のケラチン生成細胞層を含んでいるシートを形成するわずかな層状化を起こす。光学顕微鏡及び電子顕微鏡によると、液内培養において形成された多層シートの構造と完全なヒトの皮膚の構造との間に、顕著な差異がある。対照的に、器官培養法は、インビボのような条件における、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を可能にする。特に、細胞は、原繊維のコラーゲン基質によって取り囲まれた真皮繊維芽細胞からなる生理学的基層に接着する。器官培養物は空気−培地の界面に維持されている。この方法において、増殖している基底細胞は、コラーゲンゲルを介した拡散によって供給された栄養物の勾配に最も近い状態に保たれ、一方で、上層のシート中の細胞は空気に曝されている。これらの条件において、正しい組織構造が形成される。正常に分化している上皮の種々の特性が現れている。親株細胞及びNIKS細胞株の両方において、立方基底細胞の単層は、真皮同等物及び上皮の結合部に存在する。丸みを帯びた形態、及び細胞質に対する核の高い比率は、活発に分裂しているケラチン生成細胞の集団を表している。正常なヒトの上皮において、基底細胞が分裂すると、それらは組織の分化している層中の上方に移動する娘細胞を生み出す。娘細胞はサイズを増大させ、平坦になり、扁平になる。最終的に、これらの細胞は、脱核し、角化した角質構造を形成する。この正常な分化の過程は、親株細胞及びNIKS細胞の両方の上層において認められる。平坦な扁平細胞の出現は、上皮上層において明らかであり、層状化が器官培養において引き起こされたことを証明している。器官培養物の最も上にある部分において、脱核した扁平細胞は培養物の最上部から剥がれる。現在までに、器官培養において増殖された、親株のケラチン生成細胞とNIKSケラチン生成細胞株との間に、光学顕微鏡のレベルにおいて、分化に組織学的な差異がないことが観察されている。
【0062】
親株(5継代目)及びNIKS(38継代目)の器官培養物のより詳細な特性を評価し、かつ組織学的観察を確認するために、電子顕微鏡を用いて試料を分析した。親株細胞及び不死化されたNIKSヒトケラチン生成細胞株を15日間にわたる器官培養後に回収し、層状化の程度を明らかにするために基底層に対して直交するように切断した。親株細胞及びNIKS細胞株の両方は、器官培養において広範囲な層状化を起こし、正常なヒトの上皮に特有の構造を形成する。親株細胞及びNIKS細胞株の器官培養において、大量のデスモソームが形成される。また、親株細胞及びNIKS細胞株の両方の基底ケラチン生成細胞層における、基底層及び関連したヘミデスモソームの形成が見られた。
【0063】
ヘミデスモソームは、ケラチン生成細胞の基底層への接着を増強する構造に特化しており、組織の完全性及び強度の維持を助ける。これらの構造の存在は、特に親株細胞又はNIKS細胞が多孔性の支持体に対して直接に接触していた領域において明らかであった。これらの発見は、繊維芽細胞を含んでいる多孔性の支持体に付着させて培養されているヒト包皮のケラチン生成細胞を用いた、以前の超微細構造的な発見と一致する。光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルの両方の分析は、器官培養におけるNIKS細胞株が層状化し、分化し、正常なヒトの上皮にみられるデスモソーム、基底層、及びヘミデスモソームのような構造を形成し得ることを証明している。
【0064】
B)乾燥又は放射線照射された皮膚同等物
好ましい実施形態において、実施例1に記載されているように作製された皮膚同等物は、成育不能な皮膚同等物を提供するために、放射線照射されるか、及び/又は乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は細胞の成育可能性を排除するために乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は例えばガンマ線照射される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は約0.5kGyから約25kGyのガンマ線に曝される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は約0.5kGyから約12kGyの放射線、より好ましくは約1kGyから約5kGyのガンマ線に曝される。何れかの場合においても、皮膚同等物に送達される放射線の総量は、皮膚同等物に含まれている細胞が、MTT成育度アッセイ又は他の適当な成育度アッセイによってアッセイされる場合に、成育不能にするために十分であることが好ましい。さらに好ましい実施形態において、皮膚同等物は真空又は凍結乾燥の条件において乾燥される。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は放射線照射される前に乾燥される。いくつかの好ましい実施形態において、皮膚同等物は乾燥又は放射線照射の前に無菌の容器に包装される。さらに好ましい形態において、皮膚同等物は、保存、輸送、及び末端使用者による容易な使用を可能にするため、ガーゼのような無菌の布地を用いて包装されている。他の実施形態において、乾燥されたか、又は放射線照射された皮膚同等物は、創傷に接触させた後に、創傷の表面に対する外来性のポリペプチドの放出能を保持している。さらなる実施形態において、乾燥されたか、又は放射線照射された皮膚同等物は、創傷の周囲に接触させた後に、創傷に対する外来性のポリペプチドの放出能を保持している。さらなる実施形態において、皮膚同等物は使用前に冷蔵される。一方、他の実施形態において、皮膚同等物は使用前に周囲温度において保存される。
【0065】
皮膚同等物が乾燥されている程度は、乾燥された皮膚同等物の重量を、乾燥されていない皮膚同等物(湿潤な皮膚同等物)、すなわち器官培養から取り出されたばかりの皮膚同等物の重量と比較することによって、判断され得る。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物の重量の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量まで乾燥させられる。いくつかの実施形態において、本発明の乾燥された皮膚同等物は、湿潤な皮膚同等物の重量の75%未満、50%未満、25%未満、又は好ましくは15%未満の最終的な重量を有している。いくつかの実施形態において、乾燥された皮膚同等物は、対象への使用前に再び湿潤状態になる。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった皮膚同等物は、0.1から5.0MPaの引張り強度、好ましくは約0.4から約1.8MPaの引張り強度を有している。いくつかの実施形態において、再び湿潤状態になった皮膚同等物は、約20DPMから約300DPMの初期のDPM値、好ましくは約70から約140DPMの初期のDPM値、及び約5DPMから約400DPMの変化するDPM値、好ましくは約10DPMから約220DPMの変化するDPM値を有している。
【0066】
いくつかの実施形態において、乾燥されたか、及び/又は放射線照射された皮膚同等物は、対象にとって有益なペプチド又はタンパク質の送達に利用され、いくつかの好ましい実施形態において、対象の創床にとって有益なペプチド又はタンパク質の送達に利用される。外来性のペプチド及びタンパク質を発現する皮膚同等物は、発明者らによって以前に述べられている(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される国際公開第05/012492号を参照すればよい)。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は1つ以上の抗菌ポリペプチドを発現するように構築されている。いくつかの実施形態において、抗菌ポリペプチドは、カテリシジン、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2若しくはヒトβ−ディフェンシン3、又はそれらの組合せである。好ましい実施形態において、ペプチド又はポリペプチドは、外来性であり、すなわち皮膚同等物を作製するために使用されるケラチン生成細胞中に構築された外来性の遺伝子構築物によってコードされており、発現される。皮膚同等物によって送達されるペプチド又はポリペプチドの量は、水性の溶液を皮膚同等物に供給し、当該溶液中に送達されるペプチド又はポリペプチドの量を測定することによって、判断され得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは抽出溶液の1ミリリットル当たり1から1000ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている。
【0067】
C)治療用途
本発明の成育不能な皮膚同等物は治療的に使用され得ることが意図されている。いくつかの実施形態において、乾燥又は放射線照射された皮膚は、創傷閉鎖及び熱傷に対する処置の用途に用いられる。熱傷に対する処置及び創傷閉鎖のための自己移植及び同種異系移植の利用について、それぞれ参照によって本明細書に援用される、Myers et al., A. J. Surg. 170(1):75-83 (1995)及び米国特許第5,693,332号、米国特許第5,658,331号、及び米国特許第6,039,760号に記載されている。いくつかの実施形態において、皮膚同等物はDERMAGRAFT又はINTEGRAのような真皮代用物と共に用いられ得る。したがって、本発明は、創傷(熱傷によって生じた創傷が挙げられる)の閉鎖の方法であって、創傷を受けている患者及び皮膚同等物を準備すること、並びに創傷が閉鎖されるような状況下において皮膚同等物によって患者を処置することを包含している方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、皮膚同等物は慢性の皮膚創傷を処置するために使用され得る。慢性の皮膚創傷(例えば、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、圧迫潰瘍)は、深刻な問題である。そのような創傷の治療はしばしば1年をはるかに超えて処置が必要になる。処置の選択肢としては現在のところ、包帯法及び壊死組織除去法(壊死している組織を除去するための化学物質又は外科的手術の利用)、及び/又は感染症の場合には抗生物質が挙げられる。これらの処置の選択肢は、長期間を要し、多大な患者の協力を要する。したがって、慢性創傷の治療における医師の成功を拡大させ得、創傷治癒を速め得る治療法によって、この分野においていまだ満たされていなかった必要性が満たされる。したがって、本発明は、本発明に係る細胞(例えば、NIKS細胞)を含んでいる皮膚同等物による皮膚創傷の処置を意図している。いくつかの実施形態において、皮膚同等物は、創傷に対して局所的に当てられる。他の実施形態において、NIKS細胞を包含する皮膚同等物は、部分層創傷(partial thickness wounds)への移植のために使用される。他の実施形態において、NIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、全層創傷への移植のために使用される。他の実施形態において、NIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、多種の内部創傷(消化器官の内側を覆う粘膜の内部創傷、潰瘍性大腸炎、及び癌治療によって引き起こされ得る粘膜の炎症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用される。さらに他の実施形態において、宿主防御ペプチドを発現しているNIKS細胞を含んでいる皮膚同等物は、一時的又は永久的な創傷被覆物として使用される。
【0069】
その上さらなる実施形態において、細胞はさらなる治療薬を対象に提供するように作製される。本発明は任意の特定の治療薬の送達に限定されない。実際に、種々の治療薬(酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイム、小型干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びアンチセンスRNAが挙げられるが、これらに限定されない)が対象に送達され得ることが、意図されている。好ましい実施形態において、薬剤は、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、又はカテリシジンのような宿主防御ペプチドである(例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される米国特許出願第10/909,119号を参照すればよい)。これらの治療薬は、種々の目的(遺伝的な異常を改善させる目的が挙げられるが、これに限定されない)のために送達され得る。特に好ましい実施形態において、遺伝的な先天性代謝異常(例えば、アミノ酸尿)の患者を回復させる目的において治療薬が送達され、移植片は当該患者における野生型の組織として機能する。治療薬の送達が異常を改善させることが、意図されている。いくつかの実施形態において、細胞は治療薬(例えば、インスリン、凝固第IX因子、エリスロポエチン等)をコードしているDNA構築物によってトランスフェクトされ、トランスフェクトされた細胞は、対象に投与される。それから、治療薬は移植片から患者の血流又は他の組織に送達される。好ましい実施形態において、治療薬をコードしている核酸は適切なプロモータに作動可能に連結されている。本発明は任意の特定のプロモータの使用に限定されない。実際に、種々のプロモータ(誘導的、構成的、組織特異的、及びケラチン生成細胞特異的なプロモータが挙げられるが、これらに限定されない)の使用が意図される。いくつかの実施形態において、治療薬をコードしている核酸は、ケラチン生成細胞に対して直接的に(すなわち、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈殿、又はリポソームトランスフェクションによって)導入される。他の好ましい実施形態において、治療薬をコードしている核酸は、ベクターとして供給され、ベクターは当該技術分野において知られている方法によってケラチン生成細胞に導入される。いくつかの実施形態において、ベクターは複製するプラスミドのようなエピソーム性ベクターである。他の実施形態において、ベクターはケラチン生成細胞のゲノム中に組み込まれる。組込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、非複製のプラスミドベクター及びトランスポゾンベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
〔実施例〕
下記の実施例は、本発明の好ましい特定の実施形態及び側面を説明し、さらに例証するために設けられているが、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0071】
以下の実験に基づく開示において、以下の略語を適用する:eq(当量);M(モーラー);mM(ミリモーラー);μM(マイクロモーラー);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);l又はL(リットル);ml又はmL(ミリリットル);μl又はμL(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);C(摂氏);U(ユニット);mU(ミリユニット);分(分);秒(秒);%(パーセント);kb(キロベース);bp(ベースペア);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);BSA(ウシ血清アルブミン);CFU(コロニー形成単位);kGy(キログレイ);PVDF(ポリフッ化ビニリデン);BCA(ビシンコニン酸);SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)。
【0072】
<実施例1>
本実施例は、皮膚同等物の作製方法を示す。
【0073】
培地:器官培養の工程では、3つの異なる培地を用いる。全ての当該培地は、全ての培地からコレラ毒素を除去することを除いて、米国特許第7,407,805号に記載されているSMB培地の組成に基づいている。皮膚同等物の真皮同等物層に用いるための、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)を増殖させるために、FM01を用いている。FM01は、Fetal Clone II血清(終濃度2%)を含んでいること、及びコレラ毒素がないことを除いて、SMBと同様の組成を有している。NIKSのケラチン生成細胞を成長させるために、KM01を用いる。KM01は、2.5%のFetal Clone IIを含んでいること、及び終濃度5ng/mlの上皮成長因子(EGF)添加がされていることを除いて、SMBと同様の組成を有している。皮膚同等物の作製における上皮層形成段階の間にSM01を用いる。SM01は、コレラ毒素の除去を除いてSMBと同一である。
【0074】
真皮同等物の調製:0日目に、凍結されているNHDF細胞を解凍し、プレートに播く。残留している凍結防止剤を取り除くために、翌日(1日目)に、細胞にFM01を供給し、3日目に再びFM01を細胞に供給する。4日目に、それらを真皮同等物に用いるために回収する。真皮同等物を調製するために、タイプIのラット尾のコラーゲンをまず、0.03Nの酢酸において3mg/mlに希釈して、氷上において冷却する。濃縮されているHam’s F12培地(通常の濃度の8.7倍、HEPESを用いてpH7.5に緩衝化されている)の混合物をFetal Clone IIと混合する。これらの2つの溶液は、最終的な溶液の体積の11.3%及び9.6%である。1NのNaOH(最終溶液の2.4%)を培地混合物に添加する。それから希釈されているコラーゲン(74.7%)を混合液に添加する。2%量の懸濁されている繊維芽細胞(2.78×106/ml)を混合物に加える。9mlの真皮同等物の最終的な混合物を、それぞれ75mmのTRANSWELL挿入物(Corning Costar)に注ぐ。50〜70分間のゲル形成時間の後に、TRANSWELL挿入物を、150mmの培養ディッシュに入っているステンレス鋼のメッシュの表面に移す。150mmのディッシュのTRANSWELL挿入物の外側に80mlのFM01を入れ、10mlのFM01を真皮同等物の上面に入れる。器官培養に用いる前の4〜5日間にわたって、37℃、5%CO2、90%相対湿度のインキュベータ内に真皮同等物を置く。
【0075】
NIKSの成長及び継代:NIKS細胞を、解凍し、100mmのディッシュ当たり約5×105細胞の濃度に播く。マウスのフィーダー細胞の存在下又は非存在下において、NIKSの培養を実施し得る。1日目に、残留している凍結防止剤を取り除くために、NIKS細胞に新しいKM01を供給する。3日目に再び新しいKM01をNIKS細胞に供給する。4日目に、初代のp100の培養物からNIKS細胞を回収し、225cm2の培養フラスコに、フラスコ当たり1.2×106の濃度に播く。7日目及び8日目に新しい培地をNIKSの培養物に供給する。9日目に、NIKS細胞を回収し、NIKS細胞の細胞数を数え、NIKS細胞をSM01に再懸濁する。2.27×104のNIKS細胞/cm2を真皮同等物の表面に播く。培養物であるディッシュに培地を供給し、空気と培地との境界面に引き上げる。それらの成長の静止を維持する75%の湿度に設定されている、制御されているインキュベータに培養物を移す。14、18、22、25、28、及び30日目に、SM01を培養物に供給する。
【0076】
<実施例2:成育不能な、無菌の皮膚同等物の組織を作製するために必要なガンマ線照射の致死線量の決定>
放射線を受けている皮膚同等物を構築する作製スケジュールは、人工のヒト皮膚組織作製物のためにこれまでに確立されている28日目の作製工程を基にした。9F1組織及び2D2組織を、無菌手順を用いて作製した。上記9F1組織は、宿主防御ペプチドであるhBD−3の発現の向上のために改変されており、上記2D2組織は、宿主防御ペプチドであるhCAP18/LL−37の発現の向上のために改変されている。組織を、栄養性のゲルの容器上に移し、梱包及び輸送の前に密封した。ノースカロライナ州のシャーロットの施設において、ExCell高精度ガンマ線照射器を用いて、Sterigenics, Incによって、ガンマ線照射を行った。組織は、5つの放射線量:0kGy、1kGy、5kGy、8kGy、及び11kGyのうち、1つの放射線量を受けた。これらの線量は、組織の同種移植片に対する同様の線量に関するこれまでの評価に基づいて選択した。放射線照射後に、以下に示されている時点における分析に先立って、組織を冷却した。
【0077】
処理された試料のStratatechへの返却の直後に、栄養性のゲルに保存されているいくつかの組織がその下にある支持膜から分離し、組織の折り重なり、しわを生じていることがわかった。この現象は、放射線照射されている組織、及び放射線照射されていない組織の両方に観察された。この問題を解決する輸送手段を後ほど開発した。下記の実施例を参照すればよい。
【0078】
無菌性試験:0kGyから11kGyの線量におけるガンマ線照射を受けた9F1組織及び2D2組織から、パンチ生検の試料を得た。放射線照射後の3日間にわたって保存されている組織に由来する試料を、トリプティカーゼソイブロス(trypticase soy broth)又は液状チオグリコレート培地に入れた。無菌性試験のために米国薬局方によって規定されている条件の下に14日間にわたって、培養物をインキュベートした。14日後、微生物の成育について培養物を視覚的に試験した。微生物の成育は、分析した組織のいずれにも観察されず、操作、放射線照射、及び輸送の間に、組織が無菌状態のままであったことを示した。
【0079】
MTT成育アッセイによる成育度試験:対照の9F1組織及び2D2組織、又はガンマ線照射した9F1組織及び2D2組織から、放射線照射処理後の3日、7日又は14日目に生検の試料を得、細胞の成育度をMTT成育アッセイによって評価した。簡潔に述べると、MTTの基質である、3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイドは、生細胞における細胞性のデヒドロゲナーゼによって、MTTホルマザン生成物に転換される。呈色した生成物を、イソプロパノールに抽出し、550nmにおいて読み込んだ。4つの独立した組織片について成育度を測定した。それぞれの結果を図1に示す。放射線照射されていない組織の成育度は、保存期間中に顕著な変化がなかった。1kGyの放射線を用いて処理された組織は、放射線照射後の3日目に残留している酵素活性を有しており、当該酵素活性は放射線照射後の7及び14日目まで減少し続けた。しかし、5、8又は11kGyの線量を用いて処理された組織は、全ての時点において残留している最小の活性を示し、14日間の保存期間の経過の全体を通して低いままであった。照射後の14日目までに、1kGyを用いて放射線照射された組織の代謝活性は、より高い放射線量によって見られるのと同様の低いレベルに低下した。
【0080】
ケラチン生成細胞移動アッセイによる成育度の決定:生検用の移植片培養物は、ケラチン生成細胞が放射線照射処理によって不活性化されたか否かを決定するために、対照の組織又は放射線放射された組織から作製した。放射線照射後の3日目の組織から得られたパンチ生検の試料を、成長培地に移し、48時間にわたって培養し、ヘマトキシリン/エオシン及びデジタル顕微鏡を用いた組織学的な染色のために処理した。画像は、組織構造を判定するために得られ、図2の概略図にしたがって、生検試料のパンチによってできた傷の端からのケラチン生成細胞の移動について、+又は−と評価された。細胞の移動は、放射線照射されていない9F1組織及び2D2組織において明らであったが、ガンマ線照射を受けた全ての組織には認められなかった。
【0081】
繊維芽細胞の成長アッセイ:生検試料を、対照の組織及び放射線照射後の7日目における放射線照射された組織から得、繊維芽細胞を遊離させるために、細菌性のコラーゲナーゼを用いて処理した。これらの組織から遊離した細胞を、培養プレートに移し、培地において6日間にわたって成長させ、メチレンブルー染色によって可視化した。繊維芽細胞の成長を、染色されている細胞の存在または非存在のそれぞれに基づいて、+又は−と評価した。放射線照射されていない組織又は照射された組織から分離された繊維芽細胞の培養物の画像を図3に示す。細胞の成長は、放射線照射を受けていない対照の組織に認められたが、放射線照射された組織に由来する調製物には認められなかった。
【0082】
上記の実験から、作製物の無菌性が組織の作製及び処理の全体にわたって保たれていることを確認した。1kGyの放射線量を用いた皮膚同等物組織の処理は、2つの独立した成育度アッセイにしたがって成育不能な組織を生じた。5kGy以上の線量によって、これらの3つの全ての方法によって評価される通りに成育不能な組織が生じた。
【0083】
<実施例3:放射線照射された皮膚同等物組織の構造的特性の評価>
冷蔵保存後の3日目の放射線照射された組織の構造的特性を、ヘマトキシリン及びエオシンを用いた組織染色よって評価し、光学顕微鏡を用いて可視化した。組織染色によって、放射線照射された組織は、正常な組織構造及び外部形態を維持していることが証明された。全ての細胞層(真皮、ケラチン生成細胞の基底層、ケラチン生成細胞の有棘層、及び角質層が挙げられる)が、放射線照射されていない対照と放射線照射された組織との間において同一であったが、いくらかの組織の損傷が高放射線量において明らかであり、当該損傷が真皮部分と上皮部分との隙間として可視化された。結果として、1kGy及び5kGyの線量レベルが、以降の実験における使用に最も有望であると確認された。
【0084】
<実施例4:ガンマ線照射された皮膚同等物組織の生化学的特性(インビトロにおける抗菌活性が挙げられる)の評価>
ガンマ線は、線量に依存したタンパク質に対する損傷を、直接的及び間接的に刺激する。直接的な損傷はイオン化を通して惹起される。一方、間接的な損傷は、水分子の加水分解、並びに巨大分子の酸化的修飾又は架橋に伴って生じる。結果として、組織のタンパク質は、放射線照射によって、変質の増進及び溶解度の低下を示し得る。開発した作製物は、上昇したレベルの宿主防御ペプチドの供給を通じて機能することが予想されるため、放射線照射後のタンパク質の利用可能性及び生物学的な活性を決定することが必要である。放射線照射された組織の分析に、可溶性タンパク質及び総タンパク質の量の分析、イムノブロット分析、並びに抗菌活性のアッセイを含めた。
【0085】
可溶性タンパク質及び総タンパク質の量の分析:放射線照射されていない2D2皮膚組織、放射線照射されていない9F1皮膚組織、放射線照射された2D2皮膚組織及び放射線照射された9F1皮膚組織から、パンチ生検の試料を得、0.2mLの滅菌水に浸した。タンパク質を抽出するために、パンチ生検の試料を、37℃において72時間にわたってインキュベートした。上清を回収し、BCAアッセイによって総タンパク質の量を定量した。図4に示すように、放射線量の増加とともに、上清に溶出した総タンパク質の量は減少した。これらの結果は、架橋(タンパク質の溶解度を減少させる修飾)による、放射線を介したタンパク質の公知の損傷と一致する。しかし、非付着性のガーゼによって構成されている含水量の少ない環境にある、包装されている組織を用いた予備実験において、この放射線量に依存した、タンパク質の抽出性の低下は解消された(実施例6参照)。
【0086】
ペプチド分析:タンパク質の抽出性は、処理された組織の全体的な生化学的な状態を反映し得る。抗菌的な創傷被覆物の開発を支持する、より関連性のある特質は、抗菌ペプチドの完全性及び溶解性である。これらの特質を評価するために、放射線照射された2D2組織及び放射線照射されていない2D2組織から抽出されたタンパク質について、イムノブロット分析を行った。パンチ生検の試料を、2D2組織から得、さらに48時間にわたって無血清の成長培地中に移しておいた。2つ一組の組織に由来する調整された培地を回収し、タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に転写し、標準的な方法を用いたイムノブロット分析のために処理した。hCAP18に特異的な抗体(完全なヒトの抗菌タンパク質hCAP18、及び生物学的な活性を有するタンパク質分解断片であるLL−37を検出する)を用いて、抗菌ペプチドを検出した。完全なhCAP18及びLL−37はいずれも、放射線量に関係なく、組織によって調整された培地中に容易に検出された。また、SDS−PAGEにおけるこれらのタンパク質の移動パターンは、これらの実験に利用された放射線量による影響を受けなかった。放射線照射されていない対照の組織から放出されたペプチドはわずかに増加していた。これらのわずかな増加は、成育している組織によるペプチドの新たな合成及び分泌に起因し得るか、又はこれらの組織におけるペプチドの溶解度の増加に起因し得る。この観察にもかかわらず、カテリシジン抗菌ペプチドは、完全なままであり、放射線照射された組織から容易に抽出され得る。
【0087】
抗菌活性のアッセイ:放射線照射されていない組織及び放射線照射された組織から放出された抗菌ペプチドの完全性を立証したので、我々は、対照の組織及び放射線照射された組織を、抗菌特性について評価した。簡潔に述べると、放射線照射されていない組織及び放射線照射された組織からパンチ生検の試料を得、抗菌ペプチドの抽出のために、2、4又は24時間にわたって無血清の成長培地に移しておいた。培地を回収し、細菌成長培地中の1.0×103CFUのS. carnosusの接種物と混合した。60分間にわたって等速において振とうしながら、この混合液を37℃においてインキュベートした。その後、WASP2 Spiral Plater(Microbiology International、Frederick、MD)を用いて細菌用プレート上に試料を播き、37℃において16時間にわたってインキュベートした。コロニー数を数え、CFU/mLとして表される生細菌密度を決定した。評価値は、組織抽出物が入っていない無血清の成長培地の存在下において成長させた細菌培養物の密度に対して標準化した。図5に示すように、1kGyの放射線を用いて処理された2D2組織から抽出された試料は、2時間及び4時間の調整期間において、放射線照射されていない組織と比べて減少した細菌密度によって示される通り、抗菌活性の向上を示した。抗菌活性のこの一時的な増加は、5kGyの線量を用いて処理された組織にみられず、より長い組織による調整時間の条件においても明白ではなかった。同様の活性の増加が、1kGyにおいて放射線照射された9F1組織にみられた(データは示していない)。この向上された抗菌活性は、放射線照射された組織が長時間にわたってより少ない総タンパク質の量及びより少ない量のカテリシジン抗菌ペプチドを放出し得ることを考えると、意外である。しかし、上記の実験は少なくとも48時間にわたってインキュベートされた組織を用いたが、向上された抗菌活性は、放射線照射された組織から2時間又は4時間にわたって抽出された試料のみにおいてみられた。
【0088】
全体として、放射線照射された皮膚同等物の生化学的分析によって、可溶性タンパク質の全体的なレベルは減少するが、抗菌ペプチドの完全性はほとんど維持されることが示された。1kGyにおいて放射線照射された皮膚同等物組織から抽出されたペプチドは、対照の細菌培養液と比べて80%まで細菌の成長を低減させることが示された。これらの結果は、これらの最終的に処理された人工皮膚組織の生物学的な活性を維持する可能性を示している。
【0089】
<実施例5:放射線照射された皮膚同等物組織の保存>
栄養性のゲル上に保存されている放射線照射された9F1組織及び2D2組織の、短期間の保存能の分析を行った。これらの実験において、放射線照射後の7日目及び37日目に、冷蔵された放射線照射された組織を分析し、組織構造及び抗菌ペプチド活性を評価するか、またはアッセイした。放射線照射された組織の全体的な組織構造は、冷蔵保存されていた37日間にわたって維持されていた。試験された線量レベルにおいて、冷蔵された組織は、真皮部分及び上皮部分の両方を維持していた。上皮部分において、ケラチン生成細胞の基底層及び有棘層は識別可能な状態を維持しており、角化層はほとんど変化していない。組織内における最小の細胞の損傷が、基底層のケラチン生成細胞と基底上層のケラチン生成細胞との細胞間隙として現われている。組織の保存は、真皮部分と上皮部分との部分的な分離を生じる。しかし、これは試験した全ての期間における組織に認められた。
【0090】
抗菌ペプチド活性:放射線照射後の7日間又は37日間にわたって冷蔵保存された、放射線照射されているか又は放射線照射されていない9F1組織、及び放射線照射された又は放射線照射されていない2D2組織から、試料を得た。抗菌活性の測定は、上述の通りに行った。細菌密度(CFU/mL)を測定し、無血清の新鮮な成長培地の存在下において成長させた細菌培養物に対して、データを標準化した。これらの実験の結果を、9F1組織については図6に、2D2組織については図7にそれぞれ示す。1kGyの線量を用いて放射線照射され、7日間にわたって冷蔵保存された9F1組織は、対照の細菌培養物と比べて、細菌の成長について86%の低下を示した。それに対して、放射線照射されていない9F1組織では、細菌の成長ついて52%の低下を生じた。同様に、放射線照射されていない2D2組織から生じた57%の低下と比べて、1kGyにおいて放射線照射され、7日間にわたって冷蔵された2D2組織は、細菌の成長について72%の低下を生じた。1kGyにおいて放射線照射された9F1組織及び2D2組織の抗菌活性は、37日間にわたって冷蔵保存された放射線照射されていない組織の抗菌活性とおよそ同程度に戻ったが、対照の培養物と比べて、依然として抗菌活性を示した。5kGyを用いて処理された全ての組織は、放射線照射後の保存から7日目に測定可能な抗菌活性を維持していたが、この活性は長期の保存によって低下した。これらのデータは、放射線照射された組織が1ヶ月以上にわたる冷蔵保存後に検出可能な抗菌活性を提供し得ることを示唆している。
【0091】
<実施例6:包装構成の影響>
上記の実施例2において処理された組織は、下にある支持膜から分離して、組織の折り重なり及びしわを生じることが認められた。この現象を回避するために、組織の移動を防ぐ包装構成を開発した。この改良された構成では、組織をそれらの挿入物から取り外し、無菌の非付着性のガーゼ上に移し、無菌のプラスチック製の袋に密封した。プラスチック製の袋から取り出した後、組織はしわになった形跡又は折り重なった形跡を示さなかった。
【0092】
タンパク質に対するガンマ線照射の影響は、他の箇所に記載されているが、これらの影響は大部分が、試料中の水分子の加水分解によって生成される遊離ラジカル及び活性酸素種によって媒介される。人工組織作製物の輸送に用いる栄養性のゲルの容器における高い含水量が原因になって、栄養性のゲルの容器又は乾燥した非付着性のガーゼに包装されている放射線照射された組織が、放射線照射処理の間に異なる生化学的な特性を示すことが予想された。放射線照射されていない2D2組織、放射線照射された2D2組織、放射線照射されていない9F1組織及び放射線照射された9F1組織から、パンチ生検の試料を得、0.2mLの滅菌水に浸した。37℃において24時間にわたって生検試料をインキュベートし、上清を回収し、溶出されたタンパク質をBSAアッセイによって定量した。図8に示すように、栄養性のゲルの容器に包装されている組織において、水溶性タンパク質の総量は、放射線量の増加とともに減少し、上述の試験と一致している。一方で、放射線照射された組織の非付着性のガーゼに付着させる包装は、対照のレベルと同程度のタンパク質の利用可能性を維持していた。したがって、放射線照射前においてガーゼに付着させる組織の包装は、タンパク質の架橋がより起こりにくい環境を提供することによって、放射線照射された組織中のタンパク質の損傷レベルを低減させ得る。
【0093】
<実施例7:人工皮膚同等物の凍結乾燥>
人工皮膚同等物を、実施例1に記載したように作製する。完成直後に、皮膚同等物を含んでいるTRANSWELL挿入物を、プラスチック製のTRANSWELLディッシュに無菌的に移し、蓋を被せ、20℃に保たれたVIRTIS Genesis Freeze Dryer(Gardiner、NY)チャンバーのたなの上に置く。2100mTの圧力において、1分当たり−1.33℃の割合において、20℃から−20℃まで温度を下げ、2100mTの圧力において、1分当たり−0.67℃の割合において、−20℃から−60℃まで温度を下げることによって、組織を凍結させる。減圧によって0mTまで圧力を下げ、1分当たり+0.25℃の割合において、−60℃から20℃まで、組織を加温する。0mT、20℃において少なくとも16時間にわたって試料を保持することによって、試料を乾燥させる。
【0094】
<実施例8:人工皮膚同等物の真空乾燥>
人工皮膚同等物を実施例1に記載したように作製する。皮膚同等物を含んでいるTRANSWELL挿入物を、プラスチック製のTRANSWELLディッシュに無菌的に移し、蓋を被せ、25℃に保たれたVIRTIS Genesis Freeze Dryer(Gardiner、NY)チャンバーのたなの上に置く。8分間の間隔を空けて、チャンバーの圧力を900mT、830mT、760mT、690mT、620mT、550mT、490mT、430mT、370mT、310mT、250mT、200mT、150mT、100mT、50mT、25mTに下げる。少なくとも16時間にわたって25mTにおいて試料を保持して、試料を乾燥させる。
【0095】
<実施例9:人工皮膚同等物の乾燥重量>
人工皮膚同等物を作製し、組織の湿重量を凍結乾燥の前後において得る。凍結乾燥後の組織の重量は、元の湿潤な組織の重量の11.7%から13.7%の間である(表1)。
【0096】
【表1】
【0097】
<実施例10:乾燥した人工皮膚同等物への放射線照射>
宿主防御ペプチドhCAP18/LL−37を過剰発現するように構築された皮膚同等物組織を実施例1に記載したように作製し、実施例7及び実施例8に記載したように乾燥させる。乾燥後、組織をTRANSWELL挿入物から取り外し、無菌のプラスチック製の袋の中にヒートシールする。実施例2に記載したように、Sterigenicsにおいて、1、5又は25kGyの線量レベルにおいて、乾燥させた組織に放射線照射し、その後、最大2ヶ月間にわたって室温において組織を保存する。ヘマトキシリン及びエオシンを用いた組織切片の染色によって、全体的な組織構造を評価する。実施例2に記載したように、MTTアッセイによって、組織の成育度を評価する。乾燥させ、放射線照射された組織において、インピーダンスメータによる測定を用いて、組織のバリア機能を評価する。乾燥させ放射線照射された組織から得られた試料を、単軸引張りの条件において破損するまで引っ張り、機械的特性を測定した。抗菌ペプチドの量を、乾燥させ放射線照射された組織から得られた可溶性の抽出物のELISAによって定量した。
【0098】
組織学的分析:凍結乾燥されるか、若しくは周囲温度において真空乾燥され、続いて3つの線量のうちの1つにおいて放射線照射され、最大2ヶ月間にわたって周囲温度において保存された組織、又は未処理の組織から生検試料を得る。組織構造を可視化するため、ヘマトキシリン/エオシンを用いた組織染色のために試料を処理し、400倍の倍率においてデジタルの顕微鏡写真を得る。凍結乾燥され、放射線照射された組織、及び真空乾燥され、放射線照射された組織の代表的な画像を、それぞれ図9及び図10に示す。未処理のまま調製された試料は、人工の代用皮膚組織について期待される組織構造を示している(図9及び図10のパネル1)。
【0099】
凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物組織は、真皮部分及び上皮部分を識別可能な、全体が正常な組織構造を維持している(図9)。真皮部分は構造的変化(圧縮、及び上皮部分からの部分的な剥離が挙げられる)を示す。上皮部分の内部における基底層、有棘層、及び角質層の構造はほとんど維持されている。
【0100】
真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物は、全体が正常な組織構造(識別可能な真皮、ケラチン生成細胞の基底層、ケラチン生成細胞の有棘層、及び角質層が挙げられる)を維持している(図10)。しかし、真皮部分の両方の圧縮が明らかに認められ、保存されていない組織よりも薄い組織を生じる。放射線量の増加は、真空乾燥された組織の全体的な組織構造におけるさらなる変化をもたらさなかった。
【0101】
MTT成育アッセイによる成育度試験:凍結乾燥されるか、若しくは周囲温度において真空乾燥され、続いて3つの線量のうちの1つにおいて放射線照射された組織、又は未処理の組織から、パンチ生検の試料(直径8mm)を得た。生検試料を処理し、TECAN GENiosプレートリーダ(TECAN US、Durham、NC)を用いて、試料の550nmにおける吸光度を測定することによって、代謝活性を定量した。未処理のまま調製された対照の組織に対して代謝活性を標準化した。図11に示すように、乾燥及び放射線照射の組合せによって代謝活性が90%まで低下し、放射線照射された組織において以前みられた代謝活性の低下(実施例2)と一致した。
【0102】
組織のバリア機能の分析:真空乾燥又は凍結乾燥され、3つの放射線量(1、5、25kGy)のうちの1つに暴露した人工皮膚組織から切り出された、犬用の骨(dog-bone)の形状を有しているASTMの試料に対してバリア機能を行った。放射線照射の前に乾燥し、保存の前に包装された組織から、試料を打ち抜いた。
【0103】
犬用の骨の形状を有している試料を、それらの包装から取り出し、再び湿潤状態にし、バリア機能を試験した。簡潔に述べると、試料をTRANSWELL挿入物の上に、上皮側を上に向けた状態にして置き、10mlの培地とともにディッシュの中に入れ、室温において1時間にわたって(下から上に向かって)、再び湿潤状態にした。TRANSWELL挿入物を、湿らせた濾紙に移し、45分間にわたって平衡化させた。上皮のバリア機能を臨床的に評価するために用いられる、NOVA Dermaphaseメータ(NOVA Technology Corp、Portsmouth、NH)を用いて、組織表面の表面静電容量を測定することによって、各試料のグリップ領域における上皮のバリア機能を測定した。10秒間の測定周期の全体にわたるインピーダンス測定における変化は、組織表面の湿潤状態の変化を反映している。増加した湿潤の度合いは、角質層を通じた水の通過によって生じるので、変化の大きさは、上皮の透過性バリアの完全性を反映している。80ロットを超えるStrataGraft(登録商標)の組織から収集されたバリア機能のデータに基づくと、294DPM未満の初期値及び658DPMユニット未満の変化が、許容可能なバリア機能と見なされる。
【0104】
図12に示すように、組織表面の静電インピーダンス及び初期DPM値の変化は、乾燥され、放射線照射された組織、及び未処理のまま調製された人工皮膚組織において類似であった。未処理のまま調製された組織、及び乾燥され、放射線照射された組織はいずれも、StrataGraft(登録商標)の皮膚組織について収集された組織学的データにしたがって許容可能と判断される上皮のバリア機能を果たした。これらの結果に基づくと、乾燥された人工皮膚組織の放射線照射は、得られた作製物のバリア機能に悪影響を与えないことが予想される。
【0105】
引張り強度の分析:上皮のバリア試験に続いて、各試料を10mlのPBS中に浸し、少なくともさらに1時間にわたってPBSを用いて、再び湿潤状態にした。それから、ミツトヨ社製のシックネスゲージを用いて、基準領域において、試料の厚さを測定した。試料を湿潤状態にすることをPBSの再循環によって維持しながら、100%/分(25mm/分)の割合における単軸引張りにおいて破損するまで、引張り試料を引っ張った。各試験から得られる負荷及び押しのけ量(displacement)のデータは、分析及びデータの編集のために、Microsoft Excelに転送した。これらの分析からのデータを図13に示す。
【0106】
人工皮膚同等物の乾燥及び放射線照射は、組織の機械的特性に対してばらつきのある影響を与えた。機械的試験の結果の解析は、組織試料間における大きなばらつきによって困難であったが、いくつかの強い傾向が認められた。乾燥された組織は、乾燥方法又は放射線量に関わらず、再び湿潤状態になった後に、それらの乾燥前の厚さには完全に復元できず、未処理の対照と比較した時に、著しく薄い組織試料になる。組織構造によると、上皮の厚さが比較的に一定に保たれているために、この減少は真皮層において主に生じることが明らかである。また、乾燥は、この作用を増す放射線照射を伴って、より堅い組織又はよりもろい組織を生じる強い傾向がある。これは増加した初期の係数、及び破損時の伸長度の低下の両方によって理解され得る。係数のいくらかの増加は、厚さの減少(負荷の所定の増加について測定されたストレスを増加させる)によるものであり得るが、厚さの差異は、グループ間の差異を十分に説明できない。
【0107】
結果におけるばらつきの度合いは、統計学的な確実性を伴った、さらなる影響の判断を困難にする。引張り強度の平均は、乾燥及び25kGy以下の放射線放射のいずれによっても悪影響を受けるとは思われなかった。しかし、放射線照射は、最大負荷のわずかな(しかし、統計学的に有意ではない)低下を生じ得る。
【0108】
抗菌ペプチドの分析:市販のELISA検出キットを用いて、人工皮膚同等物からのhCAP18由来ペプチドを定量した。未処理の組織又は保存された組織の表面に無血清培地(1cm2当たり0.16mlの無血清培地)を局所的に与え、37℃において2時間にわたって組織を平衡化することによって、可溶性の抽出物を調製した。抽出物を、完全なhCAP18タンパク質、及び翻訳後プロセシングを受けたLL37代謝生成物を検出するELISAに用いた。組換えLL37ペプチドの標準曲線と比較して、試料を定量した。hCAP18タンパク質の量を、ngタンパク質/組織抽出物のmlとして表した。
【0109】
表2に示すように、凍結乾燥された組織及び真空乾燥された組織では、抽出可能なhCAP18由来ペプチドの量が、未処理のまま調製された人工皮膚組織から得た量より75%を超えて多かった。
【0110】
【表2】
【0111】
以上の明細書に記載されている全ての公開及び特許が、参照によって本明細書に援用される。記載されている本発明の方法及び系の種々の変更及び変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者にとって明白であろう。本発明が特定の好適な具体例を伴って記載されているが、請求されている本発明がこのような特定の具体例に不当に限定されないことを理解すべきである。実際に、組織培養、分子生物学、生化学、又は関連する分野における当業者にとって明白である、本発明を実施するための、記載されている形態の種々の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】放射線照射後の組織の成育度を示す図である。
【図2】ケラチン生成細胞の成育度/移動アッセイを示す図である。
【図3】繊維芽細胞の成長アッセイを示す図である。
【図4】放射線照射された2D2組織及び9F1組織から放出されたタンパク質を示す図である。
【図5】放射線照射された2D2組織の抗菌活性を示す図である。
【図6】放射線照射された9F1組織の抗菌活性を示す図である。
【図7】放射線照射された2D2組織の抗菌活性を示す図である。
【図8】栄養性のゲル又は非付着性のガーゼに付着して保存された皮膚同等物組織から放出された総タンパク質の量を示す図である。
【図9】凍結乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析を示す図である。
【図10】真空乾燥され、放射線照射された人工皮膚同等物の組織学的分析を示す図である。
【図11】真空乾燥され、放射線照射された皮膚同等物、及び凍結乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の成育度を示す図である。
【図12】乾燥され、放射線照射された皮膚同等物の上皮のバリア機能を示す図である。
【図13】乾燥され、放射線照射された人工皮膚組織の機械的特性を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷被覆物としての使用のための器官培養されている皮膚同等物を保存する方法であって、
上記器官培養されている皮膚同等物、及び包装容器を準備すること、
上記皮膚同等物の処理を行って、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にすること、並びに
上記皮膚同等物の包装を行って、包装されている皮膚同等物を準備することを包含している、方法。
【請求項2】
上記処理の工程は、上記皮膚同等物を無菌状態及び成育不能にするための、上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記放射線照射はガンマ線照射を用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記処理の工程は、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記乾燥は真空乾燥及び凍結乾燥からなる群から選択される方法によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記処理は包装の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記処理は包装の後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記処理は、上記皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥、及び上記皮膚同等物を無菌状態にする条件における上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記乾燥の工程が上記包装の前に行われ、上記放射線照射の工程が上記包装の工程の後に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記器官培養された皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記NIKS細胞は抗菌ポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記皮膚同等物が湿潤な皮膚同等物の50%未満の最終的な重量まで乾燥させられる、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、20から300の初期のDPM値、及び5から400の変化するDPM値を有している、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は0.1から5.0MPaの引張り強度を有している、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
上記包装容器はヒートシール可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって作製されている、包装されているヒト皮膚同等物。
【請求項19】
請求項8に記載の方法によって作製されている、包装されている無菌のヒト皮膚同等物。
【請求項20】
単離されている成育不能なインビトロのヒト皮膚同等物を含んでいる、組成物。
【請求項21】
上記皮膚同等物は無菌である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
上記無菌の皮膚同等物は放射線照射されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
上記皮膚同等物は乾燥されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
上記皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
上記NIKS細胞は、外来性のポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
上記外来性のポリペプチドは抗菌ポリペプチドである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、カテリシジン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、20から300の初期のDPM値、及び5から400の変化するDPM値を有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、0.1から5.0MPaの引張り強度を有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項32】
包装されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項33】
創傷を処置する方法であって、
請求項20に記載の組成物を準備すること、及び
上記皮膚同等物が上記創傷に接触する条件において、上記皮膚同等物を創傷に対して使用することを包含している、方法。
【請求項34】
上記皮膚同等物は上記創傷に一時的に使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項20に記載の皮膚同等物を収納している包装容器を含んでいる、キット。
【請求項36】
上記皮膚同等物は約1ヶ月から約6ヶ月の保存期間を有している、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
インビトロにおいて器官培養されており、単離されている成育不能な皮膚同等物を含んでいる組成物であって、当該皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、組成物。
【請求項38】
上記皮膚同等物は、上記皮膚同等物に必須の細胞によって発現される少なくとも1つの外来性の抗菌ポリペプチドを含んでいる、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
請求項20に記載の組成物の、対象を処置するための、使用。
【請求項40】
請求項20に記載の組成物の、対象の創傷を処置するための、使用。
【請求項1】
創傷被覆物としての使用のための器官培養されている皮膚同等物を保存する方法であって、
上記器官培養されている皮膚同等物、及び包装容器を準備すること、
上記皮膚同等物の処理を行って、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にすること、並びに
上記皮膚同等物の包装を行って、包装されている皮膚同等物を準備することを包含している、方法。
【請求項2】
上記処理の工程は、上記皮膚同等物を無菌状態及び成育不能にするための、上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記放射線照射はガンマ線照射を用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記処理の工程は、上記皮膚同等物中の細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記乾燥は真空乾燥及び凍結乾燥からなる群から選択される方法によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記処理は包装の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記処理は包装の後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記処理は、上記皮膚同等物を構成している細胞を成育不能にする条件における上記皮膚同等物の乾燥、及び上記皮膚同等物を無菌状態にする条件における上記皮膚同等物に対する放射線照射を包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記乾燥の工程が上記包装の前に行われ、上記放射線照射の工程が上記包装の工程の後に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記器官培養された皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記NIKS細胞は抗菌ポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3及びカテリシジンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記皮膚同等物が湿潤な皮膚同等物の50%未満の最終的な重量まで乾燥させられる、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、20から300の初期のDPM値、及び5から400の変化するDPM値を有している、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は0.1から5.0MPaの引張り強度を有している、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
上記包装容器はヒートシール可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって作製されている、包装されているヒト皮膚同等物。
【請求項19】
請求項8に記載の方法によって作製されている、包装されている無菌のヒト皮膚同等物。
【請求項20】
単離されている成育不能なインビトロのヒト皮膚同等物を含んでいる、組成物。
【請求項21】
上記皮膚同等物は無菌である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
上記無菌の皮膚同等物は放射線照射されている、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
上記皮膚同等物は乾燥されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
上記皮膚同等物はNIKS細胞を含んでいる、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
上記NIKS細胞は、外来性のポリペプチドをコードしている外来性の核酸配列を含んでいる、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
上記外来性のポリペプチドは抗菌ポリペプチドである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
上記抗菌ポリペプチドは、ヒトβ−ディフェンシン1、ヒトβ−ディフェンシン2、ヒトβ−ディフェンシン3、カテリシジン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
上記抗菌ポリペプチドは、表面抽出溶液の1ミリリットル当たり10から500ngの抗菌ポリペプチドの量として供給されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、20から300の初期のDPM値、及び5から400の変化するDPM値を有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
再び湿潤状態になった後の上記皮膚同等物は、0.1から5.0MPaの引張り強度を有している、請求項24に記載の組成物。
【請求項32】
包装されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項33】
創傷を処置する方法であって、
請求項20に記載の組成物を準備すること、及び
上記皮膚同等物が上記創傷に接触する条件において、上記皮膚同等物を創傷に対して使用することを包含している、方法。
【請求項34】
上記皮膚同等物は上記創傷に一時的に使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項20に記載の皮膚同等物を収納している包装容器を含んでいる、キット。
【請求項36】
上記皮膚同等物は約1ヶ月から約6ヶ月の保存期間を有している、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
インビトロにおいて器官培養されており、単離されている成育不能な皮膚同等物を含んでいる組成物であって、当該皮膚同等物は湿潤な皮膚同等物の重量の50%未満の重量を有している、組成物。
【請求項38】
上記皮膚同等物は、上記皮膚同等物に必須の細胞によって発現される少なくとも1つの外来性の抗菌ポリペプチドを含んでいる、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
請求項20に記載の組成物の、対象を処置するための、使用。
【請求項40】
請求項20に記載の組成物の、対象の創傷を処置するための、使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−508064(P2012−508064A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535637(P2011−535637)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063217
【国際公開番号】WO2010/053948
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507295048)ストラタテック コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063217
【国際公開番号】WO2010/053948
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(507295048)ストラタテック コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】
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