説明

即湯装置

【課題】出湯栓を開栓すると直ぐに湯が吐出する即湯装置を提供する。
【解決手段】本発明の即湯装置は、一端から送湯され他端から返湯される給湯ループ管(8)と、この給湯ループ管(8)の複数個所に連通接続させた送湯管路(16)および返湯管路(17)を有する分岐管路(10)と、各分岐管路(10)の送湯管路(16)および返湯管路(17)と連通接続させた出湯栓(3)とを備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱い又は暖かい給湯用の湯を給湯配管系統の末端の出湯栓(たとえば、蛇口やシャワーヘッド等)から素早く吐出させることができる即湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
即湯タイプの給湯システムとして、給湯配管系統にポンプによって湯を循環することのできる給湯循環回路を構成し、給湯循環回路内の湯を所望の温度に保つようにして、給湯配管系統の末端の出湯蛇口を開栓状態にした時に、なるべく早く給湯循環回路内の湯が出るようにしたものがある(例えば、特許文献1 第4図参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−89442号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記即湯タイプの給湯システムでは、給湯循環回路から分岐されて出湯蛇口に接続される送湯配管の配管長が長くなると、出湯蛇口を閉栓した常態時に、送湯配管内の湯は冷めてしまう。そのため、出湯蛇口から湯を吐出させようとすると、最初に多量の冷めた湯が吐出され、これが捨て水とされる無駄が生じていたと共に、使用者にも不快感を感じさせていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のように多量に捨て水とされる無駄を解消するとともに使用者への不快感を解消する即湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の即湯装置は、発明の内容を理解し易くするために図1〜図5に用いた符号を付記して記載すると、請求項1の発明においては、一端から送湯され他端から返湯される給湯ループ管(8)と、この給湯ループ管(8)の複数個所に連通接続させた送湯管路(16)および返湯管路(17)を有する分岐管路(10)と、各分岐管路(10)ごとに送湯管路(16)および返湯管路(17)と連通すように接続させた出湯栓(3)とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
かかる構成の即湯装置によれば、湯が常時流れる給湯ループ管(8)の複数個所に、送湯管路(16)および返湯管路(17)を有する分岐管路(10)が連通接続され、これら各分岐管路(10)ごとに送湯管路(16)および返湯管路(17)と連通するように出湯栓(3)が接続されているため、各分岐管路(10)の配管長が長くなっても湯はその送湯管路(16)および返湯管路(17)を介して出湯栓(3)付近もしくは出湯栓(3)まで常時循環され、これによって出湯栓(3)を開栓すると湯を素早く吐出させることができる。
また、給湯ループ管(8)を用いて、そこから複数個所に送湯管路(16)および返湯管路(17)を有する分岐管路(10)を連通接続させるようにしたため、この給湯配管網を樹脂製配管で構成すれば、工場段階でこの給湯配管網を容易に生産することができ、現場への設置施工も容易に行うことができる利点がある。
【0008】
また、請求項2の発明のように、送湯管路(16)と給湯ループ管(8)の各接続部に、湯を送湯管路(16)の下流側へ流すための三方弁(31)を設けたり、もしくは、請求項3の発明のように、送湯管路(16)と返湯管路(17)が接続される給湯ループ管(8)の各部位間に、それぞれ、湯を送湯管路(16)の下流側へ流すための弁(31′)を設けたりする構成を採用すると、送湯管路(16)と返湯管路(17)を有する各分岐管路(10)の配管長や配管径が異なっていても、湯を各々の出湯栓(3)付近もしくは出湯栓(3)までより確実に循環させることができる。
また、上記三方弁(31)もしくは弁(31′)を付設すると、これらの弁が開閉弁の場合は不使用の出湯栓(3)に対して湯の循環を止めることができ、湯を加温するとき無駄なエネルギーの消費が抑えられ、省エネルギー化に寄与することができる利点がある。他方、これらの弁が流量調整可能な弁の場合は、開度調整によって、上記開閉弁の場合と同様に不使用の出湯栓(3)に対して湯の循環を止めることができるのみならず、使用する各出湯栓(3)に対しては圧力や湯量も調節することができ、たとえば上流側の各出湯栓(3)からは湯が勢いよく出るが、下流側の各出湯栓(3)からは湯が出にくくなっている場合には、上流側の弁の開度を絞る調整を行うことによって下流側の出湯栓(3)からでる湯量の低下を改善することができる利点がある。
【0009】
また、請求項4の発明のように、各分岐管路(10)の送湯管路(16)と返湯管路(17)を出湯栓(3)の湯流入口(27)に連通させ、出湯栓(3)の閉栓により該出湯栓の湯流入口(27)内において湯が送湯管路(16)から返湯管路(17)へと湯進路を変えるように成す構成にすると、各出湯栓(3)まで湯が循環されるため、出湯栓を開栓したとき湯を直ちに吐出させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、出湯栓を開栓すると湯を素早く吐出させることができるので、無駄な捨て水の発生を効果的に解消することができるとともに、使用者への不快感も解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示す即湯装置を出湯栓の全てが閉栓状態にある時の状態を示す構成図、図2は図1の即湯装置を出湯栓の一つが開栓された時の状態を示す構成図、図3(a)〜(f)は図1の即湯装置に用いられる各種断面形状の送管路湯・返湯管路の断面図、図4は図1の即湯装置に用いられる出湯栓と送湯管路・返湯管路の末端部との接続構造を示す断面図である。
【0012】
本発明の一実施例における即湯装置1は、図1に示すように、給湯用の湯を貯える貯湯タンク2と、給湯配管系統の末端(ユニットバス、洗面所、洗濯機、台所、トイレなど)の蛇口やシャワーヘッド等の複数の出湯栓(末端水栓)3(図示例では第1の出湯栓3A,第2の出湯栓3B、第3の出湯栓3C)と、貯湯タンク2に接続されている送湯主管4及び給水母管5と、送湯主管4の途中部位に先端が接続されている返湯主管7と、一端23に送湯主管4の末端を、他端24に返湯主管7の末端をそれぞれ連通接続して一端23から送湯され他端24から返湯されるポリブテン管やポリエチレン管等よりなる樹脂製の給湯ループ管8と、給湯ループ管8の途中の複数個所の各分岐部20(図示例では第1〜3分岐部20A,20B,20C)と各出湯栓3(図示例では3A,3B,3C)とを連通接続して送湯及び返湯する分岐管路10(図示例では分岐管路10A,10B,10C)と、返湯主管7に配設された循環用ポンプ11とを備えている。
【0013】
給水母管5は貯湯タンク2の下部と上水道等給水源との間に配管され、送湯主管4は貯湯タンク2の上部と給湯ループ管8の一端23との間に配管され、返湯主管7は送湯主管4の途中部位と給湯ループ管8の他端24との間に配管されている。送湯主管4の貯湯タンク2との接続部近傍箇所には貯湯タンク2への湯の逆流を防ぐ第1逆止弁12を設けている。返湯主管7上の循環用ポンプ11と送湯主管4との接続部との間には熱交換器やヒートポンプ等による再加熱部13を設けて、戻り湯を再加熱して送湯主管4へ第2逆止弁14を介し戻して循環させるようにしている。
【0014】
各分岐管路10は、ポリブテンやポリエチレン等よりなる樹脂製で、図3(a)〜(f)に示すように、内部流通路を管軸方向に連続する仕切壁15で送湯管路16と返湯管路17とに区画形成している。図3(a)〜(f)は各種断面形状の分岐管路10の例示である。
【0015】
給湯循環配管に際し、送湯主管4の末端は給湯ループ管8の一端23に連通接続され、返湯主管7の末端は給湯ループ管8の他端24に連通接続される。
各分岐管路10の送湯管路16の先端及び返湯管路17の先端は給湯ループ管8の各分岐部20にそれぞれ連通接続される。すなわち、第1の分岐管路10Aの送湯管路16の先端は給湯ループ管8の第1分岐部20Aの上流側分岐点に、返湯管路17の先端は第1分岐部20Aの下流側分岐点にそれぞれ連通接続される。同様に、第2,3の分岐管路10B,10Cの各送湯管路16の先端は給湯ループ管8の第2,3の各分岐部20B,20Cの上流側分岐点に、各返湯管路17の先端は第2,3の各分岐部20B,20Cの下流側分岐点にそれぞれ連通接続される。
【0016】
図4に示すように、第1,2,3の分岐管路10A,10B,10Cの各送湯管路16の末端及び返湯管路17の末端は、第1,2,3の出湯栓3A,3B,3Cの各湯流入口27の内部にまで臨むように第1,2,3の出湯栓3A,3B,3Cと管継手28等で連通接続することが好ましく、これにより出湯栓3A、3B、3Cの閉栓時には、常に、湯流入口27内において送湯管路16の末端からの湯が返湯管路17の末端にユー・ターンして湯流入口27の内部にまで循環するものである。
【0017】
このように複数の出湯栓3A,3B,3Cを送湯主管4及び返湯主管7に連通接続する給湯循環配管に際し、給湯ループ管8および分岐管路10A,10B,10Cを用いて配管することにより送湯配管と返湯配管を同一箇所に且つ同時に配管することができる。
【0018】
送湯主管4の途中部位からバイパス管26を分岐し、このバイパス管26と返湯主管7の途中部位との間には三方弁等による切替部30を設け、この切替部30により、バイパス管26と返湯主管7との連通遮断状態が、連通状態に切り替えられて湯の流れ方向が切り替えられるようにしている。
【0019】
各分岐管路10の送湯管路16の先端と給湯ループ管8との接続部(上流側分岐点)には三方弁31を設け、この三方弁31の切り替えにより湯を送湯管路16へまたは給湯ループ管8の下流側へ選択的に流せるようになしている。
【0020】
次に、上記構成の即湯装置1の動作を説明する。
【0021】
図1のように、第1,2,3の出湯栓3A,3B,3Cの全てが閉栓状態にあり、且つ全ての三方弁31が送湯管路16に連通しているときは、循環用ポンプ11を低速又は間欠的に運転し、バイパス管26と返湯主管7との連通状態が遮断されるように切替部30である三方弁を切替える。これにより、貯湯タンク2からの湯は、第1逆止弁12→送湯主管4→給湯ループ管8の一端23→第1の分岐管路10Aの送湯管路16→第1の出湯栓3Aの湯流入口27→第1の分岐管路10Aの返湯管路17→第2の分岐管路10Bの送湯管路16→第2の出湯栓3Bの湯流入口27→第2の分岐管路10Bの返湯管路17→第3の分岐管路10Cの送湯管路16→第3の出湯栓3Cの湯流入口27→第3の分岐管路10Cの返湯管路17→給湯ループ管8の他端24→返湯主管7→切替部30→循環用ポンプ11→再加熱部13→第2逆止弁14→送湯主管4へ戻り、また貯湯タンク2から第1逆止弁12を経て前述したと同様の順に流れ、それを繰り返して循環する。このように貯湯タンク2内の湯を少量ずつ循環させることにより各配管内の湯の温度を維持することができる。
【0022】
いま、第1,2,3の出湯栓3A,3B,3Cのうち、たとえば第2の出湯栓3Bが開栓されると、該出湯栓3Bから発せられる電気信号あるいは返湯主管7に配設する圧力感知計29による圧力感知信号により、循環用ポンプ11の運転は停止される。そして、貯湯タンク2内の内圧(水道圧)により、第2の出湯栓3Bから湯を直ぐに吐出することができる。
また、切替部30である三方弁を切り替えると、図2のように、第2の出湯栓3Bが開栓されたとき、送湯主管4から湯がバイパス管26を介して返湯主管7にも流れ、給湯ループ管8の他端24→第3の分岐管路10Cの返湯管路17→第3の出湯栓3Cの流入口27→第3の分岐管路10Cの送湯管路16→第3分岐部20C→第2の分岐管路10Bの返湯管路17→第2の出湯栓3Bの流入口27へ流れ、第2の分岐管路10Bの送湯管路16からの湯と共に吐出する。つまり、第2の出湯栓3Bが開栓されると切替部30の切替えにより第2の分岐管路10Bの送湯管路16及び送湯管路17の両方から湯が第2の出湯栓3Bに送られ、第2の出湯栓3Bから湯を直ぐに吐出することができる。
このように出湯栓3が開栓されると、直ぐに湯が吐出するので、捨て水を発生するようなことはない。また、開栓される出湯栓3には切替部30である三方弁の切替えにより、開栓される出湯栓3と接続される分岐管路10の送湯管路16及び送湯管路17の両方から湯が送られるので、出湯栓3からの吐出流量の低下変動を減少できる。
【0023】
なお、上記実施例では、各分岐管路10の送湯管路16と返湯管路17について、仕切壁15で区画して送湯管路16と返湯管路17を形成するようにしたが、この好ましい場合に限らず、たとえば2本の管を用いて送湯管路16と返湯管路17を形成するようにしてもよい。そして、2本の管を用いて送湯管路16と返湯管路17を形成する場合は、これら管路16,17を適宜の管継手を介して給湯ループ管8と出湯栓3に連通接続させればよい。
【0024】
また、上記実施例では、三方弁31を各分岐管路10の送湯管路16の先端と給湯ループ管8との接続部に設けて、湯を送湯管路16へまたは給湯ループ管8の下流側へ選択的に流せるようにしたが、これに限らず、図5に示すように弁(31′)(たとえば、開閉弁あるいは流量調整可能な弁)を、各分岐管路10の送湯管路(16)と返湯管路(17)が接続される給湯ループ管8の各部位間に設けて、湯を送湯管路(16)の下流側へまたは送湯管路(16)の下流側と給湯ループ管8の下流側へ流せるようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施例では、返湯主管7の先端を送湯主管4の途中部位に接続し、返湯主管7上の循環用ポンプ11と送湯主管4との接続部との間には再加熱部13を設け、送湯主管4の途中部位からバイパス管26を分岐し、このバイパス管26と返湯主管7の途中部位との間に切替部30を設けた構成にしたが、これに代えて再加熱部13や切替部30を設けることなく、返湯主管7の先端を給水母管5の途中部位に接続することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の即湯装置を出湯栓の全てが閉栓状態にある時の状態を示す構成図である。
【図2】図1の即湯装置を出湯栓の一つが開栓された時の状態を示す構成図である。
【図3】(a)〜(f)はいずれも図1の即湯装置に用いられる分岐管路の断面図である。
【図4】図1の即湯装置に用いられる出湯栓と分岐管路の末端部との接続構造を示す断面図である。
【図5】図1の三方弁に代えて、各分岐管路の送湯管路と返湯管路が接続される給湯ループ管の各部位間に弁を設けた場合を示す構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 即湯装置
2 貯湯タンク
3(3A,3B,3C) 出湯栓
4 送湯主管
5 給水母管
7 返湯主管
8 給湯ループ管
10(10A,10B,10C) 分岐管路
11 循環用ポンプ
15 仕切壁
16 送湯管路
17 返湯管路
20(20A,20B,20C) 分岐部
23 給湯ループ管の一端
24 給湯ループ管の他端
27 出湯栓の湯流入口
31 三方弁
31′弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から送湯され他端から返湯される給湯ループ管(8)と、この給湯ループ管(8)の複数個所に連通接続させた送湯管路(16)および返湯管路(17)を有する分岐管路(10)と、各分岐管路(10)ごとに送湯管路(16)および返湯管路(17)と連通するように接続させた出湯栓(3)とを備えることを特徴とする即湯装置。
【請求項2】
送湯管路(16)と給湯ループ管(8)の各接続部に、湯を送湯管路(16)の下流側へ流すための三方弁(31)を設けている請求項1記載の即湯装置。
【請求項3】
送湯管路(16)と返湯管路(17)が接続される給湯ループ管(8)の各部位間に、それぞれ、湯を送湯管路(16)の下流側へ流すための弁(31′)を設けている請求項1記載の即湯装置。
【請求項4】
送湯管路(16)と返湯管路(17)を出湯栓(3)の湯流入口(27)に連通させ、出湯栓(3)の閉栓により該出湯栓の湯流入口(27)内において湯が送湯管路(16)から返湯管路(17)へと湯進路を変えるように成している請求項1、2,3のいずれかに記載の即湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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