卵丘細胞が差示発現する遺伝子およびそれらを用いる妊娠受容能をもつ卵母細胞の同定のためのアッセイ
“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を同定する遺伝学的手段を提供する。これらの手段は、妊娠受容能をもつ卵母細胞に由来する卵丘細胞に特徴的レベルで(アップレギュレートまたはダウンレギュレートされて)発現する1以上の遺伝子の発現レベルを検出することを含む。この特徴的な遺伝子発現レベル、すなわち本明細書中で“妊娠シグナチャー”と呼ぶパターンを用いて、生存可能な妊娠の発生を妨害または阻止する原因状態、たとえば閉経前状態、他のホルモン機能障害、卵巣機能障害、卵巣嚢胞、癌または他の細胞増殖障害、自己免疫障害などの状態を伴う対象を同定することもできる。好ましい態様において、妊娠シグナチャーはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPのうち1以上を含むであろう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
[0001] 本出願は、US provisional application Serial No. 61/388,296、2010年9月30日出願; US provisional application Serial No. 61/387,313および61/387,286、両方とも2010年月9日28出願; US provisional application Serial No. 61/360,556、2010年7月1日出願およびUS provisional application Serial No. 61/259,783、2009年11月10日出願に基づく優先権を主張する。本出願はUS Serial No 11/584,580、2006年10月23日出願にも関係し、これはUS Serial No. 11/437,797、2006年月5日22出願の一部継続出願であり、これはUS Serial No. 11/091,883、2005年3月29日出願の一部継続出願であり、これはprovisional application No. 60/556,875、2004年3月29日出願に基づく優先権を主張する。これらの出願すべてを全体として本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、卵丘細胞(cumulus cell)におけるその発現が、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞または同じドナーから得られる卵母細胞が妊娠受容能をもつ(pregnancy competent)かどうか、すなわち体外受精に際して生存可能な妊娠をもたらすことができるかどうかと相関する、227のヒト遺伝子群、および好ましい14遺伝子のセットを同定する。さらに本発明は、卵丘細胞における発現が卵母細胞の受容能と相関するこれら227の遺伝子の同定および好ましい14遺伝子のセットの同定をもたらした遺伝子発現検出法および統計分析法を提供する。
【0003】
[0003] この知見に基づいて、本発明は、卵母細胞に随伴するかまたは同じドナーに由来する卵丘細胞によるこれら227の遺伝子のうち1以上またはこれら14の遺伝子のうち1以上の発現レベルを検出することによってIVF法に用いるのに潜在的に適したヒト卵母細胞を同定するための方法および検査キットを提供する。さらにこの知見に基づいて、本発明はさらに、受精させて適切な子宮環境へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらす可能性がより高いヒト卵母細胞を同定するための検査キットを提供する。卵丘細胞におけるその発現が妊娠潜在性と相関する227の遺伝子のセットは後記の表4に含まれる。さらに、好ましい14遺伝子のセットは表12中にあり、ABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3、およびTERF2IPからなる。
【0004】
[0004] 以上に基づいて、本発明はさらに、雌性対象から単離した卵母細胞から得た卵丘細胞における、表4に含まれるこれら227の特異的遺伝子または好ましい14遺伝子のセットのうち1以上の発現を分析することにより、年齢(閉経)、原疾患状態または薬物療法による卵巣機能障害の結果として妊娠機能障害をもつ雌性対象、好ましくはヒト女性を同定するための遺伝学的方法を提供する。
【0005】
[0005] 本発明はまた、受精処置またはホルモン処置を受けた雌性対象の卵丘細胞によるこれら227または14の特異的遺伝子のうち1以上の発現にその処置が及ぼす影響を評価することにより、想定受精処置またはホルモン処置の有効性を評価する方法を提供する。
【背景技術】
【0006】
[0006] 発明の背景
[0007] 現在、ある雌性対象が、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞、すなわち自然または人為的手段で受精した際に胚を生成でき、それが次いで適切な子宮環境へ移行した際に生存可能な子孫をもたらすことができる卵母細胞を産生するかどうかを同定するための信頼できる商業的に入手される遺伝学的方法または遺伝学以外の方法はない。むしろ、一般的な受精能評価方法は、ホルモンレベル、卵母細胞の数および質の視診、雌性生殖系臓器の外科的または非侵襲的(MRI)検査などに基づいて受精能を評価する。しばしば、ある女性が生存可能な妊娠の形成に問題をもつ場合、長期間、たとえば1年以上後には、診断は“説明できない”受精問題となる可能性があり、その女性は単純に試みを続けるか、あるいは他の選択肢、たとえば養子または代理出産を求めるようにアドバイスされる。
【0007】
[0008] 一部は、妊娠受容能をもつ卵母細胞を同定するための手段がないためであろうが、人工生殖技術(assisted reproductive technology)(ART)の成功率、すなわち体外受精(in vitro fertilization)(IVF)の試みによる妊娠率および出産率は依然として低い。主観的な形態学的パラメーターが今でもIVFおよびICSIプログラムに使用する健全な胚を選択するための主な基準である。しかし、そのような基準では胚の受容能を実際に予測することはできない。多数の研究が、幾つかの異なる形態学的基準の組合わせによってより厳密に胚が選択されることを示している。胚の選択のための形態学的基準は移植する当日に評価され、原則として初期胚の卵割(受精後25〜27時間目)、2日目、3日目または5日目の卵割球の数およびサイズ、4または8細胞期のフラグメンテーション率および多核化の存在に基づく(Fenwick et al., Hum Reprod, 17, 407-12. (2002)。
【0008】
[0009] 最近の研究により、受精用の卵母細胞の選択は得られる胚すべてをそれらの質に関係なく移植するのと比較してARTの結果を改善しないことが示された(La Sala et al., Fertil Steril. (2008))。
【0009】
[0010] IVF成功率を高め、新鮮置換のための胚の数を減らして多胎妊娠率を低下させるために、最高の着床潜在性をもつ生存可能な胚を同定することが求められている。これらすべての理由で、胚選択のための幾つかのバイオマーカーが現在調べられている(Haouzi et al., Gynecol Obstet Fertil, 36, 730-742. (2008); He et al., Nature, 444, 12-3. (2006))。
【0010】
[0011] 妊娠をもたらす胚は、そうではない胚と比較してそれらの代謝プロフィールが異なるので、幾つかの研究は非侵襲的な胚培養培地の評価により検出できる分子シグナチャーの同定を試みている(Brison et al.,. Hum Reprod, 19, 2319-24. (2004); Gardner et al., Fertil Steril, 76, 1175-80. (2001); Sakkas and Gardner, Curr Opin Obstet Gynecol, 17, 283-8 (2005); Seli et al., Fertil Steril, 88, 1350-7. (2007); Zhu et al. Fertil Steril.(2007)。
【0011】
[0012] ゲノミクスも、胚の発生に際しての遺伝学的機能および細胞機能の重要な知識を提供しつつある。McKenzie et al., Hum Reprod, 19, 2869-74. (2004); Feuerstein et al, Hum Reprod, 22, 3069-77は、卵丘細胞中の幾つかの遺伝子、たとえばシクロオキシゲナーゼ2(COX2)の発現が卵母細胞および胚の質の指標になると報告した。さらに、グレムリン1(Gremlin 1)(GREM1)、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ステロイド形成急性調節タンパク質(steroidogenic acute regulatory protein)(STAR)、ステアロイル−補酵素Aデサチュラーゼ1および5(SCD1および5)、アンフィレギュリン(amphiregulin)(AREG)、ならびにペントラキシン3(pentraxin 3)(PTX3)も胚の質と正の相関性をもつと報告されている(Zhang et al., Fertil Steril, 83 Suppl 1, 1169-79. (2005))。より最近になって、ヒト卵丘細胞中のグルタチオンペルオキシダーゼ3(GPX3)、ケモカイン受容体4(CXCR4)、サイクリンD2(CCND2)およびカテニン デルタ1(CTNND1)は胚の質と逆の相関性をもつことが、胚の発生に際しての初期卵割速度に基づいて示された(van Montfoort et al., (2008) Mol Hum Reprod, 14, 157-68. (2008))。
【0012】
[0013] Cillo et al., Reprod. 134: 645-50 (2007)も、特定の卵丘細胞遺伝子、すなわちHAS2、GREM1およびPTX3の発現と、卵母細胞の質および胚の発生との相関性を示唆している。さらに、Assidi et al. Biol. Reprod. 79(2) 209-222 (2008)は、特定の卵丘細胞遺伝子、すなわちEGFR、CD44、HAS2、PTSG2およびBTCの発現と、卵母細胞の質およびそれからの胚の発生との相関性を示唆している。さらに、Bettegowda et al., Biol. Reprod. 79(2): 301-309 (2008)は、特定のプロテイナーゼカテプシン遺伝子の発現と、ウシ卵母細胞の質およびそれからの子孫の発生との相関性を示唆している。
【0013】
[0014] さらに、Zhangらに最近付与された特許(2009年8月11日)は、卵丘細胞におけるペントラキシン3およびBCL−2メンバーを検出して卵母細胞の質を評価することを権利請求している。US20040058975、2004年3月25日公開も、EP2受容体および/またはシクロオキシゲナーゼCOX−2の拮抗が卵丘細胞の増殖および卵母細胞の発育を促進すると教示している。
【0014】
[0015] また、初期卵割は妊娠を予測するための信頼性のあるバイオマーカーであることが示されている(Lundin et al, Hum Reprod, 16, 2652-7. (2001); Van Montfoort et al., Hum Reprod, 19, 2103-8 (2004); Yang et al, Fertil Steril, 88, 1573-8 (2007))が、妊娠予後と相関する卵丘細胞の遺伝子発現プロフィールについてはほとんど報告されていない(ただし、Assou et al., Mol Hum Reprod. 2008 Dec; 14(12): 711-9. Epub 2008 Nov 21を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】Zhang et al. (2009年8月11日)
【特許文献2】US20040058975
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Fenwick et al., Hum Reprod, 17, 407-12. (2002)
【非特許文献2】La Sala et al., Fertil Steril. (2008)
【非特許文献3】Haouzi et al., Gynecol Obstet Fertil, 36, 730-742. (2008)
【非特許文献4】He et al., Nature, 444, 12-3. (2006)
【非特許文献5】Brison et al.,. Hum Reprod, 19, 2319-24. (2004)
【非特許文献6】Gardner et al., Fertil Steril, 76, 1175-80. (2001)
【非特許文献7】Sakkas and Gardner, Curr Opin Obstet Gynecol, 17, 283-8 (2005)
【非特許文献8】Seli et al., Fertil Steril, 88, 1350-7. (2007)
【非特許文献9】Zhu et al. Fertil Steril. (2007)
【非特許文献10】McKenzie et al., Hum Reprod, 19, 2869-74. (2004)
【非特許文献11】Feuerstein et al, Hum Reprod, 22, 3069-77
【非特許文献12】Zhang et al., Fertil Steril, 83 Suppl 1, 1169-79. (2005)
【非特許文献13】van Montfoort et al., (2008) Mol Hum Reprod, 14, 157-68.(2008)
【非特許文献14】Cillo et al., Reprod. 134: 645-50 (2007)
【非特許文献15】Assidi et al. Biol. Reprod. 79(2) 209-222 (2008)
【非特許文献16】Bettegowda et al., Biol. Reprod. 79(2): 301-309 (2008)
【非特許文献17】Lundin et al, Hum Reprod, 16, 2652-7. (2001)
【非特許文献18】Van Montfoort et al., Hum Reprod, 19, 2103-8 (2004)
【非特許文献19】Yang et al, Fertil Steril, 88, 1573-8 (2007)
【非特許文献20】Assou et al., Mol Hum Reprod. 2008 Dec; 14(12): 711-9
【非特許文献21】Epub 2008 Nov 21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
[0016] したがって、以上にもかかわらず、IVF法に用いるのに適した卵母細胞を同定し、女性における遺伝子に基づく受精問題を同定するための、代替となる、より予測性のある方法を提供することがきわめて望ましいであろう。特に、卵丘細胞によるその発現が卵母細胞の妊娠受容能と相関する他の遺伝子およびバイオマーカーの同定、ならびにそれらを用いた検査キットおよびアッセイ法はIVF法の結果を向上させることができるので、きわめて望ましいであろう。
【0018】
[0017] これらの方法および検査キットはさらに、卵母細胞関連の受精問題を伴う女性の同定を提供するであろう;これは、そのような受精問題は妊娠を排除する他の健康問題、たとえば癌、閉経状態、ホルモン機能障害、卵巣嚢胞、または他の原疾患もしくは健康関連問題と相関している可能性があるので望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[0018] 本発明は、受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のいずれかの発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0020】
[0019] 本発明はまた、受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞を囲む卵丘細胞における特異的遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、遺伝子は表4中のものまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子である方法に関する。
【0021】
[0020] 本発明はまた、受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞または胚を囲む卵丘細胞において表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子から選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0022】
[0021] これらの遺伝子のうち1以上の異常な発現レベルは、早期の胚分裂停止に起因する受容能のない卵母細胞または胚の予測に役立つ。
[0022] 前記のように、女性ドナーの卵丘細胞によるこれらの遺伝子の発現レベルは、その卵丘細胞に随伴するかまたは同じ対象に由来する卵母細胞が自然または人為的手段により受精した際に“妊娠受容能をもつ”可能性と相関することが見出された。これらの遺伝子および発現レベルは、本出願人らが“妊娠シグナチャー”と呼ぶものを構成する。さらに、妊娠シグナチャーは前記に示した本出願人の先の出願に開示した1以上の遺伝子をさらに含むことができる。
【0023】
[0023] “妊娠シグナチャー”を構成する遺伝子または対応するポリペプチドのうち1以上の発現検出レベルに基づいて、ある個体がその個体の卵母細胞をIVF法に使用するのに潜在的に不適切にする遺伝子関連の受精問題をもつかどうかを判定する新規方法を提供することは、本発明の関連する目的である。妊娠シグナチャーを構成する遺伝子および遺伝子産物は、この場合も好ましくは表4に含まれるものから選択され、および/またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される。
【0024】
[0024] 本発明の他の目的は、下記の段階を含む、雌性受精処置の有効性を評価する方法を提供することである:
(i)“生存可能な妊娠”をもつことを阻止または阻害する問題を伴うと推定される雌性対象を処置する;
(ii)その受精処置後にその雌性対象から少なくとも1つの卵母細胞およびそれに随伴する細胞を単離する;
(iii)単離した卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞を単離し、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に特徴的な発現レベルで発現する表4中のものから選択される少なくとも1つの遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出する;そして
(iv)処置の結果としてその遺伝子が“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に特徴的な発現レベルで発現しているかどうかに基づいて、その受精処置の推定有効性を判定する。
【0025】
[0025] 本発明の他の特定の目的は、妊娠シグナチャーを構成する1以上の遺伝子の発現を調節することにより不妊症を処置するための新規方法を提供することである。これらの方法は、表4に含まれる遺伝子、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPのうち1以上、ならびにそれらのスプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントの発現に作動または拮抗する化合物を投与することを含む。
【0026】
[0026] 本発明の他の目的は、想定受精処置の有効性を評価するための動物モデルを提供することであり、ヒト以外の動物、たとえばヒト以外の霊長類の妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞に特徴的なレベルで発現する遺伝子を同定し;そのヒト以外の動物において想定受精処置がそれらの遺伝子の発現レベルに及ぼした作用、すなわちその処置の結果として、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞にみられる遺伝子発現レベル(“妊娠シグナチャー”)をより良好に模倣した遺伝子発現レベルが、表4中の227の遺伝子のうち1以上、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる14の遺伝子群のうち1以上において生じるかどうかに基づいて、その処置の有効性を評価することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図1b】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図1c】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図2】[0028] 図2a〜bは、1180の記述遺伝子(descriptive gene)を用いたNおよびF試料のクラスタリングを示す(a:トレイニングセット,b:検証セット)。その結果は、トレイニングセット(F対N)で同定されたt−検定に基づく差次発現を示す(多重仮説検定のためにボンフェロニ補正(Bonferroni correction)してp<0.05)。得られた“記述遺伝子”と呼ばれる1180の遺伝子を用いてトレイニングセットおよび検証セットを個別にクラスタリングした。
【図3】[0029] 図3は、227の予測遺伝子(predictor gene)を用いたNおよびF試料のクラスタリングを示す(a:トレイニングセット,b:検証セット)。このデータはトレイニングセットにおいて不適正予測された試料のみがクラスタリングにおいても誤置される(misplaced)ことを明らかにするが、検証セットクラスタリングにおけるF試料とN試料の混合挙動は重み付き投票法(weighted voting approach)によりなされた貢献を強調する。
【図4】[0030] 図4は、A)表4中の予測遺伝子セット(PG’s)に有意性を指定する方法、B)PG’sを改良する方法、およびC)最終的な予測遺伝子セットをさらに分析する方法を模式的に示す。
【図5】[0031] 図5は、各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“古い”35試料について計算されている。図5には、各遺伝子について40の数値をもつ試料の数を、本発明の遺伝子(“Hasan遺伝子”と表示した196の遺伝子)およびTLDA上の全379遺伝子(“全遺伝子”と表示)について別個にプロットしたものを示す。
【図6】[0032] 図6は、40の数値をもつ遺伝子の数を各試料について示す。結果は“古い”35試料について計算されている:各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図7】[0033] 図7は、各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図8】[0034] 図8は、40の数値をもつ遺伝子の数を各試料について示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図9】[0035] 図9は、下記の因子に基づく遺伝子の分布を示す:その遺伝子が属するグループ(PまたはA);TLDAとマイクロアレイにおけるその遺伝子のアップ/ダウンレギュレーションの一致(方向が同じであれば10、そうでなければ−10);その遺伝子が40の数値をもつ試料の数。この分析は、種々の個数の異常値を除外して、スケーリングした(scaled)数値およびスケーリングしていない(unscaled)数値について個別に実施される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0036] 発明の詳細な記述
[0037] 本発明をより詳細に述べる前に、以下の定義を示す。本出願においてその他のすべての語および句は、本発明の分野の当業者が解釈するようにそれらの通常の意味により解釈すべきである。
【0029】
[0038] “妊娠受容能をもつ卵母細胞”は、自然または人為的手段により受精した場合にそれが適切な子宮環境内で構成されると生存可能な妊娠をもたらすことができる雌性生殖細胞または卵子を表わす。
【0030】
[0039] 用語“受容能をもつ胚”は、同様に妊娠に導く高い着床率をもつ胚を表わす。用語“高い着床率”は、子宮内へ移植した際に胚が子宮環境内に着床して生存可能な胎児を生じ、その妊娠を終結させる措置または事象がなければそれが発育して生存可能な子孫になる潜在性を意味する。
【0031】
[0040] “生存可能な妊娠”は、受精した卵母細胞が適切な子宮環境内に収容された際に発育すること、およびそれが発育して生存可能な胎児になり、その妊娠を終結させる措置または事象がなければそれが発育して生存可能な子孫になることを表わす。
【0032】
[0041] “卵丘細胞”は、卵母細胞を囲む細胞塊に含まれる細胞を表わす。これは“卵母細胞に随伴する細胞”の例である。これらの細胞は、受精した際に“妊娠受容能をもつ”卵母細胞をもたらすのに必要なそれの栄養要求その他の要求の一部を卵母細胞に提供することに関与すると考えられている(Buccione, R., Schroeder, A.C., and Eppig, J.J. (1990). Interactions between somatic cells and germ cells throughout mammalian oogenesis. Biol Reprod 43, 543-547.)。
【0033】
[0042] “差示的遺伝子発現”は、目的組織、本明細書中では好ましくは卵母細胞に随伴する細胞、たとえば卵丘細胞内で、その発現が変動する遺伝子を表わす。
[0043] “リアルタイムRT−PCR”は、試料中の特定のRNA転写体の増幅と定量が同時にできる方法またはそれに用いる装置を表わす。
【0034】
[0044] “マイクロアレイ分析”は、特定の試料、たとえば組織試料または細胞試料中の、特異的遺伝子の発現レベルの定量を表わす。
[0045] 本明細書中で“妊娠シグナチャー”は、表4中の特異的遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、ならびにそれらのオルソログ、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントから選択される1以上の遺伝子またはそれらによりコードされるポリペプチドの正常な発現レベルを表わす;その際これらの遺伝子またはポリペプチドは、正常な卵丘細胞において、これらの1以上の遺伝子またはポリペプチドを特徴的レベルで発現する卵丘細胞に随伴する卵母細胞は生存可能な妊娠を生じる可能性がより高いという可能性と相関するレベルで発現する。
【0035】
[0046] 本明細書中で、特定の検出した発現核酸配列またはポリペプチドに関して“卵丘遺伝子の特徴的発現レベル”は、特定の遺伝子またはポリペプチドが、正常な卵丘細胞に随伴する卵丘細胞または正常もしくは発生受容能をもつ卵母細胞に随伴するものにみられるレベルと実質的に類似するレベルで発現することを意味する。
【0036】
[0047] “実質的に類似する”は、個々の遺伝子の発現レベルが、正常な卵丘細胞による遺伝子またはポリペプチドの発現の検出レベルの好ましくは±1〜5倍の範囲内、より好ましくは±1〜3倍の範囲内、よりさらに好ましくは±1〜1.5倍の範囲内、最も好ましくは±1.0〜1.3、1.0〜1.2、1.0〜1.2倍の範囲内にあることを意味する。
【0037】
[0048] 本発明によれば、卵母細胞は自然サイクル、変異させた自然サイクル、またはcIVFもしくはICSIのために刺激したサイクルから生じたものであってもよい。用語“自然サイクル”は、雌または女性が卵母細胞を産生する自然サイクルを表わす。用語“変異させた自然サイクル”は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアンタゴニストによる緩和な卵巣刺激下で、雌または女性が1または2個の卵母細胞を産生するプロセスを表わす。用語“刺激したサイクル”は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアゴニストまたはアンタゴニストによる緩和な卵巣刺激下で、雌または女性が1以上の卵母細胞を産生するプロセスを表わす。
【0038】
[0049] “適切な妊娠シグナチャーをもつかまたは妊娠受容能をもつと判定された卵母細胞または卵丘細胞”は、卵母細胞またはその卵母細胞に随伴する卵丘細胞、あるいは同じ対象から被験卵丘細胞とほぼ同じ時点で(0〜6か月以内)得られた卵母細胞であって、表4中のものまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントのうち少なくとも1つの遺伝子またはそれらによりコードされるポリペプチドを正常な卵丘細胞が発現するレベルに特徴的な様式で発現すると判定されたものを表わす。表4に含まれるもの、またはそれらの対立遺伝子バリアントもしくはスプライスバリアントのうち、好ましくは少なくとも2もしくは3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3〜10の遺伝子、10〜50の遺伝子、さらには最高100またはそれ以上の遺伝子が特徴的な様式で発現する。多数の、たとえば10以上のオーダーの遺伝子の発現を対象の遺伝学に基づくアッセイで評価する場合、適切な妊娠シグナチャーは、全部または実質的に全部、すなわち少なくとも70〜80%の検出遺伝子が正常な卵丘細胞に特徴的な様式で発現することを意味すると理解すべきである。たとえば、10の遺伝子の発現を検出する場合、それらの遺伝子のうち少なくとも7、8または9の遺伝子が、好ましくは正常な卵丘細胞、すなわち正常な胚および生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴する卵丘細胞と一致するレベルで発現するであろう。
【0039】
[0050] 一般に、妊娠シグナチャーに関して、特徴的な発現レベルは少なくとも3〜5、5〜10、10〜20、可能ならば少なくとも50〜100の遺伝子についてみられ、それらは“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を囲む卵丘細胞に特徴的なレベルで発現する。これは、分析される卵丘細胞内で遺伝子が発現するレベルおよび遺伝子発現の分布を含むものとする。
【0040】
[0051] “妊娠シグナチャー遺伝子”は、正常または“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に随伴する卵丘細胞が特徴的なレベルで発現する遺伝子を表わす。これらの遺伝子は表4中に含まれ、さらにABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、ならびにそれらのオルソログ、スプライスバリアントおよび対立遺伝子バリアントを含む。この表中に、遺伝子はそれらの名称および寄託番号で表示される。本発明はさらにこれらの遺伝子の対立遺伝子バリアントおよびスプライスバリアントならびにオルソログの検出を含むことを理解すべきである。
【0041】
[0052] “妊娠シグナチャー遺伝子またはポリペプチドの発現を検出するのに適したプローブ”は、転写された遺伝子または対応するポリペプチドの発現を特異的に検出する核酸配列(単数または複数)またはリガンド、たとえば抗体を表わす。好ましい態様において、発現はリアルタイムPCR検出法の使用により選択される。
【0042】
[0053] “IVF”は、体外受精を表わす。
[0054] 用語“古典的な体外受精”または“cIVF”は、卵母細胞を体外、すなわちインビトロで精子により受精させるプロセスを表わす。IVFは、体内受胎が失敗した場合の主要な受精処置である。用語“細胞質内精子注入(intracytoplasmic sperm injection)”または“ICSI”は、1個の精子を卵母細胞に直接注入する体外受精法を表わす。この方法は、雄性不妊因子を克服するために採用されるのが最も一般的であるが、それは卵母細胞に精子が容易に透過できない場合にも、また時には特に精子の供与を伴う体外受精法として採用できる。
【0043】
[0055] “透明帯”は、卵母細胞の最も外側の領域を表わす。
[0056] “差示発現遺伝子を検出するための方法”は、発現した遺伝子転写体またはコードされたポリペプチドを特異的に検出するプローブを用いて差示的遺伝子発現を定量評価するためのいずれか既知の方法を包含する。そのような方法の例には、下記のものが含まれる:インデクシング(indexing)ディファレンシャルディスプレイ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(differential display reverse transcription polymerase chain reaction)(DDRT−PCR;Mahadeva et al, 1998, J. Mol. Biol. 284: 1391-1318; WO 94/01582;サブトラクティブmRNAハイブリダイゼーション(参照:Advanced Mol. Biol.; R.M. Twyman (1999) Bios Scientific Publishers, Oxford, p. 334、核酸アレイまたはマイクロアレイの使用(参照:Nature Genetics, 1999, vol. 21, Suppl. 1061)、および遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression)(SAGE)、たとえばValculesev et al, Science (1995) 270: 484-487を参照)、およびリアルタイムPCR(RT−PCR)。たとえば、卵母細胞における転写遺伝子の差示的レベルは、ノーザンブロット法および/またはRT−PCRの使用により検出できる。
【0044】
[0057] 好ましい方法はCRL増幅プロトコルであり、これは本出願人の先の出願に開示した新規な全RNA増幅プロトコルであって鋳型スイッチングPCRとT7を基礎とする増幅法を組み合わせたものを表わす。このプロトコルは、数個の細胞または限定された全RNAしかない試料に好適である。
【0045】
[0058] 好ましくは“妊娠シグナチャー”遺伝子は、DNAチップ、たとえばcDNA配列を含むフィルターアレイ、またはcDNAもしくはインサイチュー合成オリゴヌクレオチド配列を含むガラスチップへの、RNAまたはDNAのハイブリダイゼーションにより検出される。フィルター付きアレイは、一般に高存在量または中等度存在量の遺伝子用として、より良好である。DNAチップは低存在量の遺伝子を検出できる。例示態様において、ヒトゲノム由来の遺伝子またはそのサブセットを含む試料をAffymetrix GeneChipで検査することができる。
【0046】
[0059] あるいは、妊娠シグナチャー遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはそれに結合する抗体を含むポリペプチドアレイを作成して検出および診断に使用できる。
[0060] “EASE”は遺伝子個体学(gene ontology)プロトコルであり、遺伝子のリストから、あるカテゴリー内にその番号のサブグループ遺伝子がみられる確率に基づいて各遺伝子に指定した機能カテゴリーに基づき、マイクロアレイ上に現われるそのカテゴリーからの遺伝子の頻度を考慮してサブグループを形成する。
【0047】
[0061] 以上に基づいて、本発明は、ある雌性、好ましくはヒトまたはヒト以外の哺乳動物が“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を産生するかどうか、あるいは特定の卵母細胞が妊娠受容能をもつかどうかを検出する新規方法を提供する。この方法は、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に随伴する(それらを囲む)卵丘細胞が特徴的なレベルで発現する表4中の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち1以上の発現レベルを検出することを伴う;すなわち、これらの卵母細胞は自然または人為的手段(IVF)により受精して適切な子宮環境内へ移行した際に、その妊娠が何らかの事象または措置、たとえば外科的介入またはホルモン介入により終結されない限り、生存可能な妊娠、すなわち生存可能な胎児に発育して最終的に子孫になる胚をもたらすことができる。
【0048】
[0062] 本明細書中に記載するように、本発明者らは、卵丘細胞に発現する、胚の潜在性および妊娠予後のバイオマーカーである一組の遺伝子を決定した。本発明者らは、卵母細胞を囲む卵丘細胞の遺伝子発現プロフィールが種々の妊娠予後と相関することを立証し、これにより妊娠に向けて発育する卵母細胞の特異的発現シグナチャーを同定することができた。本発明者らの結果は、卵母細胞を囲む卵丘細胞の分析は卵母細胞選択のための非侵襲的方法であることを示す。
【0049】
[0063] 表4中の予測遺伝子のセットおよび表12において同定した14遺伝子のセットは、既知のヒト遺伝子である。しかし、(卵丘細胞における)これらの遺伝子の発現はこれまで卵母細胞の受容能または胚の発生と関連づけられていなかった。したがって本発明は、受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、卵母細胞を囲む卵丘細胞における特異的遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、遺伝子は表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つを含む方法に関する。
【0050】
[0064] 本発明の方法は、さらに試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出は、その卵母細胞が受容能をもつかどうかの指標となる。対照は、受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞を含む試料、または未受精(unfertilized)卵母細胞に随伴する卵丘細胞を含む試料で構成されてもよい。
【0051】
[0065] 本発明の方法は、好ましくはヒト女性に適用できるが、他の哺乳動物(たとえば、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウシなど)にも適用できる。
[0066] 本発明の方法は、体外受精処置の有効性を評価するために特に適切である。したがって本発明はまた、雌性対象において管理された卵巣過剰刺激(controlled ovarian hyperstimulation)(COS)プロトコルの有効性を評価するための下記を含む方法に関する:i)雌性対象から少なくとも1個の卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に入手し;ii)本発明の方法によりその卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定する。
【0052】
[0067] 次いで、その方法の後に、受容能をもつ卵母細胞を発生専門医が選択し、そしてたとえば古典的な体外受精(cIVF)プロトコルを用いて、または細胞質内精子注入(ICSI)プロトコル下において、体外でそれらを受精させる。
【0053】
[0068] 本発明の他の目的は、管理された卵巣過剰刺激(COS)プロトコルの有効性をモニターするための下記を含む方法に関する:i)自然、変異または刺激サイクル下で女性から少なくとも1個の卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に単離し;ii)本発明の方法によりその卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定し;iii)そしてCOS処置の有効性を、それにより受容能をもつ卵母細胞が生成するかどうかに基づいてモニターする。
【0054】
[0069] COS処置は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択される少なくとも1種類の有効成分に基づくものであってもよい。
【0055】
[0070] 本発明はまた、受容能をもつ胚を選択するための方法であって、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0056】
[0071] 本発明の方法はさらに、試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出は、その胚が受容能をもつかどうかの指標となる。対照は、生存可能な胎児を生じる胚に随伴する卵丘細胞を含む試料、または生存可能な胎児を生じない胚に随伴する卵丘細胞を含む試料で構成されてもよい。
【0057】
[0072] 本発明の方法は胚の形態学的考察からの独立をもたらすことが注目される。2つの胚が同じ形態学的観点をもつけれども本発明の方法によれば妊娠に至る着床率が異なるという可能性がある。
【0058】
[0073] 本発明の方法は、好ましくはヒト女性に適用できるが、他の哺乳動物(たとえば、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウシなど)にも適用できる。
[0074] 本発明はまた、ある胚が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定するための方法であって、胚を囲む卵丘細胞中の45の遺伝子の発現レベルを測定することを含み、その際、それらの遺伝子は表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つを含む方法に関する。
【0059】
[0075] 本発明はまた、ある胚が受容能をもつ胚であるかどうかを判定するための下記を含む方法に関する:i)卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に入手し;ii)その卵母細胞を体外受精させ;そしてiii)本発明の方法により段階i)の卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定することにより、段階ii)から得られる胚が受容能をもつかどうかを判定する。
【0060】
[0076] 本発明はまた、受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞または胚を囲む卵丘細胞において、表4中の227の遺伝子のうち少なくとも1つまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子から選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。選択したこれらの遺伝子のうち1以上の異常な発現は、受容能をもたない卵母細胞または胚、着床できない不能な胚、あるいは早期胚停止が原因で受容能をもたない卵母細胞または胚を予測するのに役立つ。
【0061】
[0077] 本発明の方法は、雌性の妊娠予後を向上させるために特に適切である。したがって本発明はまた、雌性の妊娠予後を向上させるための下記を含む方法に関する:i)本発明の方法を実施することにより受容能をもつ胚を選択し;iii)段階i)で選択した胚をその雌性の子宮内に移植し、その際、雌性は卵母細胞のドナーであってもよく、そうでなくてもよい。
【0062】
[0078] したがって前記の方法は、発生専門医が妊娠予後の潜在性が乏しい胚を子宮に移植するのを避けるのに役立つであろう。前記の方法は、着床および妊娠を導くことができる受容能をもつ胚を選択することにより、多胎妊娠を避けるのにも特に適切である。
【0063】
[0079] 前記のすべての場合、それらの方法は、卵丘細胞および胚の遺伝子発現プロフィールと妊娠予後の関係を表わす。
[0080] 本発明の遺伝子の発現レベルを測定するための方法:
[0081] “妊娠シグナチャー”中の遺伝子、すなわち表4中の227の遺伝子のうち少なくとも1つ、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルの測定は、多様な手法で実施できる。一般に、測定する発現レベルは相対的発現レベルである。
【0064】
[0082] より好ましくは、測定は、試料を選択試薬、たとえばプローブ、プライマーまたはリガンドと接触させ、これにより試料中に最初にあった目的とするポリペプチドまたは核酸の存在を検出し、あるいは量を測定することを含む。接触は、いずれか適切な器具、たとえばプレート、マイクロタイターディッシュ、試験管、ウェル、ガラス、カラムなどにおいて実施できる。特定の態様において、接触は試薬でコートした支持体、たとえば核酸アレイまたは特異的リガンドのアレイ上で実施される。支持体は固体または半固体支持体、たとえばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどで構成される適切な支持体のいずれであってもよい。支持体は多様な形態およびサイズのもの、たとえばスライド、膜、ビーズ、カラム、ゲルなどであってもよい。接触は、試薬と試料の核酸またはポリペプチドとの間で形成される検出可能な複合体、たとえば核酸ハイブリッドまたは抗体−抗原複合体に適切な、いずれかの条件下で行なうことができる。
【0065】
[0083] 好ましい態様において、発現レベルはmRNAの量を測定することにより測定できる。
[0084] mRNAの量を測定するための方法は当技術分野で周知である。たとえば、試料(たとえば、患者から調製した細胞または組織)中に含有される核酸をまず標準法に従って、たとえば細胞溶解酵素または化学物質溶液を用いて抽出し、あるいは製造業者の指示に従って核酸結合樹脂により抽出する。抽出したmRNAを次いでハイブリダイゼーション(たとえば、ノーザンブロット分析)および/または増幅(たとえば、RT−PCR)により検出する。好ましくは、定量または半定量RT−PCRが好ましい。リアルタイム定量または半定量RT−PCRが特に有利である。他の増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction)(LCR)、転写仲介増幅(transcription-mediated amplification)(TMA)、鎖置換増幅(strand displacement amplification)(SDA)および核酸配列に基づく増幅(nucleic acid sequence based amplification)(NASBA)が含まれる。
【0066】
[0085] 少なくとも10のヌクレオチドをもち、かつ本発明の目的mRNAに対して配列の相補性または相同性を示す核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用である。そのような核酸は同一である必要はないが、一般に匹敵するサイズの相同領域に対して少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、よりさらに好ましくは95〜95%同一であると理解される。特定の態様において、核酸をハイブリダイゼーションの検出のための適宜な手段、たとえば検出可能な標識と組み合わせて用いるのが有利である。蛍光性、放射性、酵素性、または他のリガンド(たとえば、アビジン/ビオチン)を含めた広範な適宜な指示薬が当技術分野で知られている。
【0067】
[0086] プローブは一般に、10〜1000、たとえば10〜800、より好ましくは15〜700、一般に20〜500ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸を含む。プライマーは一般に、より短い10〜25ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸であり、増幅すべき目的核酸と完全またはほぼ完全に一致するように設計される。プローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に“特異的”である;すなわち、それらは好ましくは高緊縮ハイブリダイゼーション条件(最高融解温度Tmに相当する;たとえば50%ホルムアミド、5×または6×SCC。SCCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Naである)下でハイブリダイズする。前記のハイブリダイゼーションおよび検出法に用いる核酸プライマーまたはプローブをキットとして組み込むことができる。そのようなキットは、コンセンサスプライマーおよび分子プローブを含む。好ましいキットは、増幅が起きたかどうかを判定するために必要な構成要素も含む。キットは、たとえばPCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応制御プライマー;ならびに特異的配列を増幅および検出するための指示も含むことができる。
【0068】
[0087] 特定の態様において、本発明の方法は卵丘細胞から抽出した全RNAを用意し、それらのRNAを増幅させ、そして特異的プローブにハイブリダイズさせる段階を含む;より具体的には定量または半定量RT−PCRによる。
【0069】
[0088] 他の好ましい態様において、発現レベルをDNAチップ分析により測定する。そのようなDNAチップまたは核酸マイクロアレイは支持体に化学結合した種々の核酸プローブから構成され、支持体はマイクロチップ、ガラススライドまたはマイクロスフェアサイズのビーズであってもよい。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカもしくはシリカ系材料、カーボン、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースで作成することができる。プローブは、核酸、たとえばcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含むことができ、それらは約10〜約60塩基対であってもよい。発現レベルを測定するために、被験対象からの試料を場合によりまず逆転写したものを標識し、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触させて、マイクロアレイ表面に付着したプローブ配列に相補的な標的核酸との間に複合体を形成させる。標識付きのハイブリダイズした複合体を次いで検出し、定量または半定量することができる。標識化は種々の方法で、たとえば放射性標識法または蛍光標識法を用いて達成できる。マイクロアレイハイブリダイゼーション法の多数の変法を当業者は利用できる(たとえば、Hoheisel, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7: 200-210による総説を参照)。
【0070】
[0089] これに関して、本発明はさらに、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つに対して特異的な核酸を保有する固体支持体を含むDNAチップを提供する。
【0071】
[0090] これらの遺伝子の発現レベルを測定するための他の方法には、それらの遺伝子がコードするタンパク質の量の測定が含まれる。
[0091] そのような方法は、試料中に存在するマーカータンパク質と選択的に相互作用しうる結合パートナーと試料を接触させることを含む。結合パートナーは一般に抗体であり、それはポリクローナルまたはモノクローナルであってもよく、好ましくはモノクローナルである。
【0072】
[0092] タンパク質の存在は、標準的な電気泳動法および免疫診断法(イムノアッセイ法、たとえば競合、直接反応、またはサンドイッチタイプのアッセイ法を含む)を用いて検出できる。そのようなアッセイ法には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ウェスタンブロット法;凝集試験;酵素標識および仲介型のイムノアッセイ、たとえばELISA;ビオチン/アビジンタイプのアッセイ法;ラジオイムノアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降法など。これらの反応は一般に、標識、たとえば蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識または色素分子の解明、あるいは抗原およびそれと反応した抗体(単数または複数)の間の複合体の形成を検出するための他の方法を含む。
【0073】
[0093] 上記のアッセイ法は一般に、液相中の結合していないタンパク質を、抗原−抗体複合体が結合した固相支持体から分離することを伴う。本発明の実施に使用できる固体支持体には、ニトロセルロース(たとえば、膜またはマイクロタイターウェルの形のもの);ポリ塩化ビニル(たとえば、シートまたはマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(たとえば、ビーズまたはマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気反応性ビーズなどの支持体が含まれる。より具体的にはELISA法を使用でき、その際、マイクロタイタープレートのウェルを被験タンパク質に対する抗体でコートする。次いで、マーカータンパク質を含有するかまたは含有する疑いのある生体試料を、コートされたウェルに添加する。抗体−抗原複合体が形成しうるのに十分な期間のインキュベーション後、プレート(単数または複数)を洗浄して、結合していない部分を除去し、検出可能な状態に標識した二次結合分子を添加する。二次結合分子を捕獲されているいずれかの試料マーカータンパク質と反応させ、プレートを洗浄し、そして二次結合分子の存在を当技術分野で周知の方法を用いて検出する。
【0074】
[0094] あるいは、免疫組織化学的(IHC)方法が好ましい場合がある。IHCは特に試料または組織検体中の標的をインサイチュー検出する方法を提供する。試料の全体的な細胞統合性はIHCにおいて維持されるので、目的とする標的の存在と位置の両方を検出できる。一般に試料をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、切断して染色およびその後の光学顕微鏡による検査のための切片にする。現在のIHC法は、直接標識化、または二次抗体を基礎とするかもしくはハプテンを基礎とする標識化のいずれかを用いる。既知のIHCシスチムの例には、たとえばEnVision(商標) (DakoCytomation)、Powervision(登録商標) (Immunovision,アリゾナ州スプリングデール)、NBA(商標)キット(Zymed Laboratories Inc.,カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、ヒストファイン(HistoFine) (登録商標) (ニチレイ社,日本東京)が含まれる。
【0075】
[0095] 特定の態様において、組織切片(たとえば、卵丘細胞を含む試料)を、目的遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体と共にインキュベートした後、スライドまたは他の支持体上にマウントすることができる。次いで、適切な固体支持体にマウントしたこの試料の顕微鏡検査を行なうことができる。顕微鏡写真を作成するためには、試料を含む切片をガラススライドまたは他の平坦な支持体上にマウントし、選択的染色により目的タンパク質の存在を強調することができる。
【0076】
[0096] したがって、IHC試料はたとえば下記を含むことができる:(a)卵丘細胞を含む標本、(b)それらの細胞の固定および包埋、ならびに(c)それらの細胞試料中の目的タンパク質の検出。ある態様において、IHC染色法はたとえば下記の段階を含むことができる:組織の切取りおよびトリミング、固定、脱水、パラフィン浸潤、薄い切片への切断、ガラススライド上へのマウンティング、ベーキング、脱パラフィン、再水和、抗原回復(retrieval)、遮断段階、一次抗体の適用、洗浄、二次抗体(場合によっては適切な検出可能な標識に結合したもの)の適用、洗浄、対比染色、および顕微鏡検査。
【0077】
[0097] 本発明はまた、前記の方法を実施するためのキットに関するものであり、その際、キットは卵母細胞または胚が受容能をもつかどうかの指標となる表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルを測定するための手段を含む。
【0078】
[0098] 卵丘細胞における表4中の227の遺伝子および14遺伝子のセットの発現が移植に際しての卵母細胞の受容能および胚の発生と相関することを本発明者らがいかにして決定したかについての以下の記載および実施例により、本発明をさらに説明する。ただし、決してこれらの例および記載が本発明の範囲を限定するとは解釈すべきでない。
【実施例】
【0079】
[0099] これを行なった手段の例を以下に詳細に記載する。
[00100] 本発明を実施するための第1観点は、女性および潜在的に他の哺乳動物の妊娠シグナチャーを構成する遺伝子を同定することを伴い、妊娠受容能をもつかまたはもたない女性ドナーから採集した卵丘細胞における遺伝子の発現を同定および比較することにより達成された。これは、ドナー女性の種々のヒト卵母細胞から卵丘細胞を採集し、そして患者に1または2個の想定受精卵を移植することにより行なわれた。これらの患者を次いで移植の結果に基づいて、完全妊娠、部分妊娠および妊娠なしに基づき3グループに分けた。この方法に用いた卵母細胞それぞれについて、54,000以上の転写体を含むAffymetrix HG 133 Plus 2アレイを用いてその卵母細胞を囲む少なくとも1つの卵丘細胞の転写プロフィールを決定した。患者が表1に定める除外基準のいずれにも該当しない場合にのみ試験に含めた。
【0080】
表1:患者の除外基準
【0081】
【表1】
【0082】
[00101] より具体的には、卵母細胞が健全な幼児を産生する能力の予測に役立つ遺伝子シグナチャーを見出すために、本発明者らは54,000以上の転写体を含むAffymetrix HG 133 Plus 2アレイを用いて、その卵母細胞を囲む少なくとも1つの卵丘細胞のトランスクリプトームをプロファイリングした。個々の卵丘試料からの全RNAをPicoPure RNA単離キット(Molecular Devices,カリフォルニア州サニーベール)により単離した。少量のRNAをマイクロアレイ分析に必要なレベルにまで確実に一貫して増幅するのを保証する自社開発プロトコルにより試料RNAを増幅した(Kocabas, et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 103, 14027-14032 (2006))。
【0083】
[00102] 得られた増幅RNA(aRNA)をAffymetrixアレイにハイブリダイズさせた。どの胚移植も妊娠成功をもたらさなった36の試料(不成功(No success)に関するNと表示)およびすべての移植が妊娠成功をもたらした30の試料(完全妊娠(Full success)に関するFと表示)を用いた。妊娠成功に影響を及ぼす既知の混同因子はなく、年齢またはIVFサイクル数など関連の臨床パラメーターはFとNのグループ間で有意差がなかった。
【0084】
[00103] 品質管理(QC)パラメーターを65試料すべてについて、製造業者(Affymetrix)から無料で入手できるExpression Console(商標)(EC)ソフトウェアにより計算した。スケーリングファクター(全体的チップ強度の2%調整平均(trimmed mean)を同等化するために必要な係数)、存在(present)と呼出されるプローブセットのパーセント、スパイクおよびラベリングコントロールについての3’−5’比、ならびにハウスキーピング遺伝子を含めたすべてのQCパラメーターが、すべての試料について許容範囲内であった(製造業者のガイドラインの記載に従った)。妊娠成功に影響を及ぼす既知の混同因子はなく、年齢またはIVFサイクル数など関連の臨床パラメーターはFとNのグループ間で有意差がなかった(t−検定 p>0.05)(表1を参照)。許容のための追加の基準には、多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome)(PCOS)が存在しないこと、化学療法歴または腹部もしくは骨盤への放射線照射歴がないこと、>4cmの壁内または粘膜下類線維腫が存在しないこと、また雄性側には、精巣生検歴がないこと、および精子数>500万であることが含まれていた。
【0085】
[00104] 予測モデルの確実性を証明するために、FおよびN試料をトレイニングセットと検証セットにランダムに分けた。目標は、トレイニングセットに発現した予測遺伝子セットを見出し、次いで予測モデルの開発に用いていない検証セットにおいてこれらの予測遺伝子の性能を検定することであった。この戦略は(すべての試料をシグナチャーの開発に用いるのとは異なり)過剰当てはめ(over-fitting)を防ぎ、予測シグナチャーの頑健性(robustness)の評価を得ることができる(Nevins, J.R. and Potti, A. (2007) Mining gene expression profiles: expression signatures as cancer phenotypes, Nat Rev Genet, 8, 601-609.)。
【0086】
[00105] 表2に示すように、33試料(15F;18N)をトレイニングセットに用い、32試料(15F;18N)を検証セットに用いた。
[00106] トレイニングセットおよび検証セットに用いた試料を表2に示す。
【0087】
表2.予測の目的でトレイニングセットおよび検証セットに用いた試料
【0088】
【表2】
【0089】
[00107] 図1に、本発明者らは、全遺伝子を用いた、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセットの試料(33試料)および検証セットの試料(32試料)のクラスタリングを示す。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。
【0090】
[00108] クラスタリング過程で、チップ上の完全転写プロファイリング、すなわち54K+転写体すべてを用いる。3データセットすべてのクラスタリングが、妊娠成功に基づく分離がないことを指摘している。これは、発現結果を成功と相関させる表現型特異的遺伝子の同定を見出して最終的に予測遺伝子セットを同定するためには、管理下での学習分析が必要であることを示唆する。
【0091】
[00109] 成功と相関する遺伝子を見出すために、t−検定に基づく差次発現を示す遺伝子(多重仮説検定のためにボンフェロニ補正(Bonferroni correction)してp<0.05)をトレイニングセット(F対N)において同定した。得られた“記述遺伝子(descriptive gene)”と呼ばれる1180の遺伝子を用いてトレイニングセットおよび検証セットを個別にクラスタリングした(図2)。その結果は、特にトレイニングセットにおいてNとFの試料の分離に成功したことを示す;このセットの試料は、表4中の妊娠シグナチャー遺伝子ならびにABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子を同定するために用いられたからである。
【0092】
[00110] 次いで、これらの1180の遺伝子を用いて1点排除交差検証法(leave-one-out-cross-validation)(L1OXV)をトレイニングセットにおいて実施した。この方法では、予測遺伝子セット中の最初の遺伝子数(複数)、たとえばPを固定する。次いでトレイニングセット中の1試料を排除し、残りの試料を用いてNとFを識別するトップP個の遺伝子(複数)を計算する。これらP個の遺伝子(複数)を用いて、排除される試料をNまたはFと予測する。この操作をトレイニングセットの33試料すべてについて繰り返す(一度に1つを排除する)。適正予測の総数をトレイニングセットにおける予測子の精度として挙げる。
【0093】
[00111] L1OXV過程で種々の数値のP、すなわち予測遺伝子数を試みて、良好なL1OXV予測精度を示すものについて、これらの遺伝子を検証セットに適用する。検証セットにおいて適正に予測された試料数を検証セットにおける予測精度としてレポートする。高いトレイニング精度および検証精度が得られる最小のP、すなわち精度グラフが平坦になるPを予測遺伝子セットとしてレポートする。用いた予測アルゴリズムは、重み付き投票法(Weighted Voting)(Golub et aL, Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring, Science, 286, 531-537(1999)、ベイズ複合共変量法(Bayesian Compound Covariate);(Wright et 1., Proc Natl Acad Sci U S A, 100, 9991-9996 (1999));対角線形識別法(Diagonal Linear Discriminant)(Dudoit et aL, citation, 97, 77-87);最近接重心法(Nearest Centroid)、k−最近接法(k-Nearest Neighbors)(Golub et al., Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring, Science, 286, 531-537 (1999));シュランケン重心法(Shrunken Centroids)(Tibshirani et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 6567-6572 (2002));支援ベクターマシーン(Support Vector Machines)(Radmacher, et al., J Comput Biol, 9, 505-511 (2002))、および複合共変量法(Compound Covariate)(Hedenfalk et aL, N Engl J Med, 344, 539-548 (2001))であった。
【0094】
[00112] 本発明者らの分析では重み付き投票法が227遺伝子の予測子セットについて最良の予測を行ない、97%のL1OXV精度(32/33の適正予測)および88%(28/32適正予測)の検証セット精度を与えた。“予測遺伝子”と呼ぶこれら227の遺伝子は、フィッシャー検定(Fisher's test)を用いてトレイニングセットと検証セットの両方に関して有意(p<0.05)の予測結果を与えた。予測結果を表3に示す。
【0095】
[00113] 表3.トレイニングおよび検証データセットについての予測結果
【0096】
【表3】
【0097】
[00114] 図3に、227の予測遺伝子リストを用いたトレイニングセットおよび検証セットのクラスタリングを示す。トレイニングセットにおいて不適正予測された試料のみはクラスタリングにおいても誤置される(misplaced)が、検証セットクラスタリングにおけるFおよびN試料の混合挙動は重み付き投票法によりなされた貢献を強調することに注目されたい。
【0098】
[00115] 以上に基づいて、本発明者らは、卵丘細胞におけるその発現を評価できる一組のヒト遺伝子(表4に含まれる)を同定し、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞(または被験卵丘細胞を単離するために用いた同じドナーに由来する卵母細胞)の妊娠潜在性を評価するために、正常な卵母細胞に相関するそれらの遺伝子の発現レベル、すなわち生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴するものと比較した。追加試料の分析によって、その発現を卵丘細胞において評価することができる好ましい14遺伝子のセット(表12に含まれる)を同定し、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞(または被験卵丘細胞を単離するために用いた同じドナーに由来する卵母細胞)の妊娠潜在性を評価するために、正常な卵母細胞に相関するそれらの遺伝子の発現レベル、すなわち生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴するものと比較した。
【0099】
[00116] これらの遺伝子のリストは臨床関連のものであるが、より最適な妊娠シグナチャー遺伝子セットを同定するために、これら227および14の予測遺伝子のリストを機能分析し、さらに検証して、さらに改良できると本発明者らは期待する。
【0100】
[00117] それに関して、この表4に含まれる予測遺伝子のリストおよび表12に含まれる14遺伝子のセットを改良するために使用できる下記の手法を以下に記載する。
[00118] 本発明者らはこれら227または14の予測遺伝子(PG’s)に対する有意性を、2つの戦略を用いて指定する:i)クラスラベルを並べ替え(permute)、先に適用したものと同じ方法を用いて最適な227遺伝子の予測子を同定し、この摂動(perturbed)データセットを用いてそれらの性能を計算する;ii)元のデータセットを用いて、ランダムに選択した227遺伝子の予測子の性能を検定する。上記の戦略を用いて得た結果に対するPG’Sの性能比較を用いて、PG’Sの有意性を評価する。PG’Sを改良するために、完全データセットを別のトレイニングセットと検証セットに分け、それぞれの区画(split)について最適な予測遺伝子セットを計算する。これらの予測子を相互およびPG’Sと比較して、一貫して良好な予測子として現われる遺伝子からなる最終的な予測遺伝子セットを得る。次いでこの最終セットをそれの有意性および精度について評価する。最後に、さらにこの最終的な予測遺伝子セットを下記について分析する:i)有意に過剰呈示された(over-represented)GOカテゴリーを見出すための遺伝子個体学(Gene Ontology)(GO)機能分類、ii)既知の生物学的経路、遺伝子ネットワーク、疾患経路、小分子と薬物標的の相互作用における関与、iii)共通/個別の転写調節エレメントを同定するためのプロモーター領域分析、およびmiRNA標的分析、ならびにiv)それらの局在性、分泌潜在性、およびライゲーション特性。以下において、本発明者らはこの全作業流れを詳細に説明し、それを図4にまとめる。
【0101】
[00119] 本発明者らは、ハイスループット転写プロファイリングおよびプロテオミクスデータセットの両方を用いて糖尿病、脊髄異形成症候群、慢性肝疾患、および種々の形態の癌の予測バイオマーカーを見出すのに、本明細書に定める方法を以前に適用した(参照: Aivado et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 104, 1307-1312 2007); Jones et al., Clin Cancer Res, 11, 5730-5739 (2007); Jones, et al., J Urol, 179, 730-736 (2007); Out et al. Diabetes Care, 30, 638-643 (2007); Out et al., J Biol Chem, 282, 11197-11204 (2007); Prall et al., Int J Hematol, 89, 173-187(2009); Spentzos et al., J Clin Oncol, 23, 7911-7918 (2005)、およびZinkin et al, Clin Cancer Res, 14, 470-477 (2008)。これらの研究すべてにおいてこれらのバイオマーカーは有意の予測性をもつことが認められ、この予測子セットを定めるために用いられていなかった新しいデータセットについて実験と解析の両方により独立して検証された。
【0102】
[00120] 予測アルゴリズム
[00121] “信号対ノイズ比”(SNR)は、遺伝子gの予測値を評価するために用いられる(Golub et al., Science, 286, 531-537 (1999).)。μF(g)およびμN(g)を、それぞれF(妊娠成功)およびN(妊娠失敗)試料グループの遺伝子gの平均値とする。同様に、σF(g)およびσN(g)を、それぞれFおよびN試料グループの遺伝子gの標準偏差とする。SNR(g)=[μF(g)−μN(g)]/[σF(g)+σN(g)]と定義する。この算術式は両グループについて理想遺伝子発現ベクター付近の近隣RMを規定し、ここでM=|F|+|N|、すなわちデータセット中の試料の総数である。SNRはいずれかのグループで著しく偏った発現を伴う遺伝子を処罰し(punish)、遺伝子のメンバーシップについての符号付きランキング法(signed ranking method)を提供する。この場合、大きな正の数値はFグループについて良好な予測子の指標となり、大きな負の数値(絶対値で)はNグループについて良好な予測子の指標となる。本発明者らはまた、理想化発現パターンと特定遺伝子gの間の相関性の境界をB(g)=[μF(g)+μN(g)]/2と定義する。
【0103】
[00122] この方法で、P個の遺伝子の予測遺伝子セットG={g1,g2,...,gP}、FおよびN試料のグループ、ならびに予測すべき新しい試料Sを評価する。gi(1<i<P)の投票(vote)をVi=SNR(gi)[S(gi)−B(gi)]と定義する;ここで、S(gi)はS中の遺伝子giの信号値を表わす。Viは、S(gi)がいかに良好にFおよびN試料のgiの“挙動”に関係しているかを表わす。Viが正であればgiに基づいてSはFであると予測されると結論し、Viが負であればgiはSをNであると予測する。予測子セット中のすべての遺伝子について繰り返して、P個の投票を求め、VFをすべての正の投票の和とし、VNをすべての負の投票の和とする。絶対値でVFがVNより大きければ、試料SをFと予測する;そうでなければ、SをNと予測する。本発明者らの先の試験で、トレイニングセットを用いて頑健な予測遺伝子が得られ、これを独立した検証セットについて試験した。
【0104】
[00123] 予測遺伝子セットの有意性
[00124] 頑健な予測遺伝子セットを得るために、試料をトレイニングセットと検証セットにランダムに分ける。本発明者らは予め重み付き投票法を用いて交差検証を排除して(L1OXV)、227の予測遺伝子のセットを得た。この分析法で、TおよびVを、それぞれトレイニングセットおよび検証セットに用いたFおよびN試料の数とした。これに関して、トレイニンググループの試料のうち1つを排除し、トレイニングセット中のT−l F試料およびN試料中で最大SNRをもつP個の遺伝子を見出した。これらP個の遺伝子を用いて、前記の方法により、排除した試料をFまたはNのいずれであるか予測する。適正予測の数がトレイニングセットに関するL1OXV予測精度になり、最高予測精度をもつ最小のPを続いて検証セットについて試験する。本発明者らの予備試験で、Pは227であることが見出され、その予測精度はそれぞれトレイニングセットおよび検証セットについて97%および88%であった。
【0105】
[00125] これら227の予測遺伝子の統計的有意性も評価する。これを評価するために、2段階戦略を採用する。第1相では、トレイニングセットに用いた試料のクラスラベルをランダムにシャフルする;すなわち、ランダムサブセットのF試料をNと呼び、同様にランダムサブセットのN試料をFと呼ぶ。この摂動データセットを用いて、トレイニングセットに関して227の遺伝子の重み付き投票法によるL1OXV精度を計算する。この設定で、並べ替えたクラスラベルを用いて最高SNR値をもつ227の遺伝子を選択する。クラスラベル並べ替えをB回実施し、b回目の並べ替えL1OXV精度をAbとする。本発明者らの元の227遺伝子の予測子セットのL1OXV精度の有意性をp=1/BΣI(Ab>97%)と評価し、ここで、Iは指示関数であり、Ab>97%であれば1、その他の場合は0の数値と仮定する。同様に、A’bを、検証セットに関してb回目の並べ替えを用いて得た227遺伝子の予測精度とする。次いで、検証セットに関して本発明者らの227遺伝子の予測子セットの予測精度有意性をp=1/BΣΙ(Α’b>88%)と評価する。
【0106】
[00126] 有意性を評価するための第2相では、元のクラスラベルを維持するが、ランダムに227遺伝子のセットを取り出し、トレイニングセットに関するそれらのL1OXV精度および検証セットにおける予測精度を評価する。このランダム選択をB回実施し、AbおよびA’bを、それぞれb回目の選択についてのトレイニングセットに関するL1OXV精度および検証セットにおける予測精度とする。同様に、L1OXV精度についての有意性をp=1/BΣI(Ab>97%)として計算し、検証セットの予測精度についての有意性をp=1/BΣΙ(Α’b>88%)として計算する。両相においてB=1000である。
【0107】
[00127] 予測遺伝子セットのさらなる改良
[00128] 227遺伝子の予測子セットをさらに改良するために、同様にトレイニングセットおよび検証セットの種々の区画を使用し、得られる遺伝子セットの重なりを調べる。良好に規定された予測子を見出すために、改良プロセスでは本発明者らの全データセットをトレイニングセットと検証セットに半分に分けるのではなく;むしろ75%の試料をトレイニングセットに用い、25%の試料を検証セットに用いる。さらに、L1OXVの代わりに10倍交差検証戦略を適応する。この場合、トレイニングセットに関して予測子を見出す際、一度に1つの試料を排除するのではなく;代わりにトレイニングセット中の試料の総数の10%を排除する。各反復に際して残り90%の試料を用いて予測子セットを計算し、この予測子セットで、排除した10%の試料を予測する。次いで適正予測の総数を用いて予測精度を計算する。
【0108】
[00129] 各データ区画について、検証セットに関する予測精度および予測遺伝子セットの有意性を前記に従って評価する。次いで各区画で見出した予測遺伝子セットを相互に、および元の227遺伝子の予測子セットと交差させて、一貫して良好な予測子として現われる遺伝子を見出す。このために、交差検証法を用いて、全データセットに関してより改良された予測遺伝子セットを形成し、それの予測精度および有意性を計算する。
【0109】
[00130] クラスタリングおよび機能分析
[00131] 算術平均付き重みなし対グループ法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic-mean)(UPGMA)(Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA)、類似度木(similarity tree)構築のために用いた階層的クラスタリング(hierarchical clustering)法、および主成分分析(principal components analysis)(PCA)(Otu, et al., J Biol Chem, 282, 11197-11204 (2007))を用いて、試料および遺伝子のクラスタリングを実施する。階層的クラスタリング法では、平均連鎖クラスタリング(average linkage clustering)を適用する前に発現データマトリックスを各遺伝子について行正規化(row-normalized)し、ピアソンの相関(Pearson's correlation)を距離の尺度として用いる。元の分散を可能な限り多く維持しながら多変量データ対象物をより低次元空間内へ射影するPCAでは、各試料を平均ゼロおよび標準偏差1まで正規化する。
【0110】
[00132] 機能分析は、それ以上の調査の根拠となる目的遺伝子リスト中に遺伝子個体学(Gene Ontology)(GO)カテゴリーを見出すことからなる(Ashburner, et al., Nat Genet, 25, 25-29 (2000))。発現分析の系統的探索法(Expression Analysis Systematic Explorer)(EASE)は、そのセットにおいて過剰呈示され(over-represented)、したがってさらに関心がもたれる可能性のある、生物学的関連カテゴリーを同定する(Hosack et al., Genome Biol, 4, R70) (2003)。
【0111】
[00133] これを達成するために、EASEは各プローブをGOカテゴリーに付随するEntrez Gene identifier (Maglott, et al., Nucleic Acids Res, 35, D26-31 (2001))にマッピングする。GO Consortium (Geneontology. org)は、各遺伝子を(適用可能な場合は)3つのGOカテゴリー中の1以上のクラスに指定する:生物学的機能、細胞プロセス、および分子機能。EASEは入力遺伝子リスト中の過剰呈示されているGOカテゴリーを、フィッシャー正解確率(Fisher exact probabilities)のジャックナイフ反復リサンプリング(jacknife iterative resampling)を用いて同定し、ボンフェロニ多重検定補正(Bonferroni multiple testing correction)する。“EASEスコア”はジャックナイフフィッシャー正解確率の分布の上限である。少ない数の遺伝子を含むカテゴリーは標準重みに達しない(under-weighted)ので、EASEスコアはフィッシャー正解検定より頑健である。EASE分析は予測遺伝子リストをチップ上の全遺伝子に対して検定し、EASEスコアは入力リスト中のGOカテゴリーの過剰呈示の尤度(likelihood)について計算される。過剰呈示は、与えられた入力リスト中に、分布がランダムであれば出現するであろうと予想されたより頻繁に現われる特定のGOカテゴリー、たとえば細胞周期、に属する遺伝子のグループを記述する。EASEスコアは有意性レベルであり、小さいEASEスコアほど過剰呈示における信頼性が増すことの指標となる。0.05以下のEASEスコアをもつGOカテゴリーを有意に過剰呈示しているとして選択する。
【0112】
[00134] 経路分析
[00135] 経路分析、機能強化分析(functional enrichment analysis)、または遺伝子セット分析は、マイクロアレイ試験で有意に調節される前決定した遺伝子セットまたはクラスに注目する。Ingenuity Software Knowledge Base (IKB)(カリフォルニア州レッドウッドシティー)を用いて、基礎となる転写調節を最も良く説明するネットワークおよび経路を同定する。IKBは、頑健な相互作用データベースを提供する科学文献の手動管理(manual curation)に基づく、遺伝子および/または遺伝子産物間の相互作用を利用する。目的とする遺伝子リストが分析されると、結果を2方法で考察する:i)入力遺伝子リストおよび限定的な拡張を用いて形成されたネットワーク、ii)入力遺伝子のサブセットを有意に宿す既知の生物学的経路。両方の結果を、最終遺伝子ネットワークと部分的に相互作用することが知られている薬物、低分子代謝産物、機能、および疾患に関してさらに分析することができる。この方法で、本発明者らの予測遺伝子セットによって最も良く説明される経路を同定し、これらのネットワークに対するさらなる摂動を推論する。さらに、前決定した正準経路(canonical pathway)に必ずしも属さない新しい相互作用ネットワークを作成することができる。
【0113】
[00136] プロモーターおよびmiRNA標的の分析
[00137] 本発明者らの予測シグナチャー中の遺伝子の5kb上流を調べ、同定したこれらの領域を、プロモーター分析および相互作用ツール(promoter analysis and interaction tool)PAINT(Vadigepalli et al, OMICS, 7, 235-252 (2003))およびoPOSSUM(Ho Sui et al., Nucleic Acids Res, 33, 3154-3164 (2005))を用いて分析する。これらの方法は、入力遺伝子リストのプロモーター領域のモデルを作成し、これらの領域の転写調節エレメント(trascription regulatory element)(TRE)を同定する。次いでそれらの結果をTREの過剰呈示について分析し、基礎となるマイクロアレイデータに関して遺伝子調節に重要な潜在的転写因子を見出す。
【0114】
[00138] 予測遺伝子のもうひとつの潜在的調節機序はmiRNAによるものであり、これは主に転写後抑制またはmRNA分解によって配列特異的な様式で遺伝子発現を調節する。TargetScanS(http://www.targetscan.org/)を用いて、予測遺伝子についてmiRNA標的部位を同定することができる。TargetScanSはTargetscanの改良バージョンであり、UTRを2〜8塩基のmiRNAに対する完全ワトソン−クリック相補セグメントについて検索し、各miRNA標的部位相互作用についてRNAevalによりフォールディング自由エネルギーGを計算し、次いで各UTRにZスコアを指定する(Lewis et al., Cell, 115, 787-798 (2003))。こうして、入力遺伝子リストにおけるmiRNA標的が、miRNA結合部位のコンピューター処理により同定される。
【0115】
[00139] 分泌タンパク質および膜リガンドの予測
[00140] 細胞内でのタンパク質の局在性および輸送は、それらのアミノ酸配列中の固有のシグナルにより支配されている。本発明者らの予測遺伝子リストを、これに関してそれらがコードするタンパク質により分析することができる。タンパク質のアノテーションがそれの局在性、分泌ポテンシャル、ライゲーションその他の特性について情報を伝えるのに十分な場合、標的をそれ以後の試験のために単離するには手動でのフィルタリングで十分であろう。実質的なアノテーションがない場合、高精度コンピューターアルゴリズムTargetPを用いてタンパク質の上記特性を予測することができる;これは、神経回路網を利用し、タンパク質のN末端の特徴を考慮に入れる(Emanuelsson et al. Nat Protoc, 2, 953-971 (2007))。分泌タンパク質を予測する場合、タンパク質の分泌ポテンシャルを低下させる膜貫通ドメインをもつものをフィルタリングで除去することが役立つ。これらのタンパク質における膜貫通ドメインの予測は、予測のために隠れマルコフ・モデル(hidden Markov model)を用いる独立バージョンのTMHMMを用いて行なわれる(Sonnhammer et al., Proc Int Conf Intell Syst Mol Biol, 6, 175-182 (1998))。PSORT9に規定された方法によりこの分析を補足することもできる(Horton et al, Nucleic Acids Res, 35, W585-587 (2007));これは、それの予測戦略において、k−最近接分類法、およびギャップなし多重アラインメントから得られる重み付きマトリックスを使用する。
【0116】
[00141] 別の戦略
[00142] さらに、場合により2方法で本発明者らの分析を向上させることができる。
[00143] 信号値の計算および正規化:モデルを基礎とする方法、たとえばdChip(Li et al., Genome Biol, 2, RESEARCH0032 (2001).)およびRMA(Irizarry et al., Nucleic Acids Res, 31, el5. (2001))を用いて遺伝子チップデータを正規化および要約することができ、これらはAffymetrix MAS 5.0正規化(Hubbell et al., Bioinformatics, 18, 1585-1592.(2002))より優れていることが示されたが、本発明者らはこれらの方法の使用を避けた;それらはベースライン試料に依存し、新しい試料の追加に適応しないからである(Barash et al., Bioinformatics, 20, 839-846 (2004))。言い換えると、新しい試料をデータセットに追加するので、それ以前のモデルに基づく信号分析は無効になり、したがって完全な分析ワークフローが繰り返される。本発明者らのデータセットは絶えず増大し、以前の所見を新たに追加した試料において検証する必要があるので、本発明者らはMAS 5.0、すなわち新しい試料の追加に対して頑健な信号値計算および正規化方法を用いる。AffymetrixからのExpression Console中のProbe Logarithmic Intensity Error(PLIER)ワークフローと呼ばれる新しい方法(www.affymetrix.com)は、四分位点正規化(quintile normalization)を含み、プローブアフィニティー、経験的プローブ性能の利用によって、また低濃度および高濃度付近の誤りを適宜処理することによって、改良された信号値を提供する(Katz et al., BMC Bioinformatics, 7, 464 (2006)。PLIERは新しい試料の追加に対してMAS 5.0ほど頑健ではないが、それはモデルを基礎とする方法と比較してより良好な性能を備えており、したがって信号値計算および正規化のための本発明者らの別の戦略である。
【0117】
[00144] 予測アルゴリズム:
[00145] 本発明者らの先の試験において最良の性能をもつ予測アルゴリズムであった重み付き投票法のほかに、本発明者らの結果が本出願に述べる成功基準に一致しない場合は下記の予測アルゴリズムを試みる計画を立てる:ベイズ複合共変量法(Bayesian Compound Covariate)(Dudoit et al., Journal of the American Statistical Association, 97, 77-87 (2002); Wright et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 100, 9991-9996 (2003))、対角線形識別法(Diagonal Linear Discriminant)、最近接重心法(Nearest Centroid)、k−最近接法(k-Nearest Neighbors)(Golub et al., Science, 286, 531-537 (1999)、シュランケン重心法(Shrunken Centroids)(Tibshirani et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 6567-6572 (2002)、支援ベクターマシーン(Support Vector Machines)(Radmacher et al., J Comput Biol, 9, 505-511 (2002))、および複合共変量法(Compound Covariate)(Hedenfalk et al., N Engl J Med, 344,539-548 (2001))。
【0118】
[00146] qRT−PCRを基礎とするTaqman(商標)Low Density Arrays(LDA)を用いる予測遺伝子セットの検証
[00147] Taqman LDA(Applied Biosystems)は、384の遺伝子をごく少量のRNAから高い適合度で同時qRT−PCR分析できるマイクロフルイドプレート(microfluidic plate)である。単一の特注LDAを用いて2セットの遺伝子を検証する:1.)予備マイクロアレイ試験で同定したPG’S、および2.)本発明者らの共同研究者Dagan Wells(オックスフォード大学)が提供したセット。独立した試験で、Wellsらは卵母細胞に異数性で随伴する卵丘細胞に発現する遺伝子のセットを同定した。細胞遺伝学研究により、平均年齢32の女性において1/4の卵母細胞が異数体であることが明らかになった(Fragouli Cytogenet Genome Res; 114:30-38 (2006)。これらの遺伝子セットの両方を合わせることによって、より最適でより強力な妊娠シグナチャーを同定することができる。
【0119】
[00148] それに基づいて、本発明者らの特注LDAで処理するために先にマイクロアレイ分析を行なった65の組から25のF(完全妊娠成功)および24のN(妊娠成功なし)卵丘細胞試料をランダムに選択する。これらのcDNA(マイクロアレイ分析から残ったもの)を調製し、ABI 7900HTマシーンでLDA当たり1試料をApplied Biosystems' Taqman LDA指示に従って処理する。各転写体の絶対定量を実施する。得られた増幅データを7000 System SDSソフトウェア(Applied Biosystems)により分析し、各遺伝子の強度値を対照遺伝子に対して正規化する。
【0120】
[00149] マイクロアレイ結果との比較
[00150] スピアマンの順位相関(Spearman's rank correlation)およびマン−ホイットニーU検定(Mann-Whitney U test)を適用して、試料全体にわたってマイクロアレイおよびLDAにより得た各遺伝子につき発現レベルを比較する。パラメトリックモデルにおける分布仮定は2プラットホームでは有効でない可能性があり、かつ基礎となる手法および正規化法の差のため2プラットホーム間の信号値を比較できない可能性があるので、これらのノンパラメトリック法および順位に基づく方法を採用する。試験した遺伝子それぞれについて、LDAに用いたFとNの試料間の変化倍率も計算する。この変化の方向がマイクロアレイ結果にみられるものと一致し、2プラットホーム間で遺伝子発現プロフィールが有意には変化しないままであり(p>0.05)、相関性が高い(r>0.9)ならば、これらの遺伝子を検証されたとラベル付けする。LDA実験に用いた試料に対する検証された遺伝子の予測力を、LDAとマイクロアレイ両方の信号値を別個に用いて評価する。同様に、検証された遺伝子の予測精度を、マイクロアレイ信号値を用いた完全データセットを用いて評価する。これらの予測プロセスで、試料をトレイニングセットと検証セットに分け(75%−25%の区画)、そしてトレイニングセットについてモデルを構築してそれを検証セットについて検査することにより、予測精度を計算する。この予測戦略において、前記の重み付き投票法を適用する。
【0121】
[00151] 別の戦略
[00152] 予測遺伝子がLDAプラットホームにおいて前記のように検証されない場合、または検証された遺伝子を用いて良好な予測結果が得られない場合、予測戦略を改変し、予測遺伝子シグナチャーの頑健性を犠牲にすることによって、より高い精度および妊娠予後と良好に相関する遺伝子を得ることができる。この目的のために、元のデータセットをトレイニングセットと検証セットに分けずに予測遺伝子シグナチャーを計算する。代わりに、完全なマイクロアレイデータセットを用いて予測子を構築し、前記に従ってそれの精度を計算し、それの統計的有意性を評価する。この予測戦略に際して、重み付き投票法を用いて完全データセットに適用する10倍排除交差検証法(leave-ten-fold-out cross validation)を用いる。
【0122】
[00153] 他の試料への妊娠予測子の適用
[00154] 15のF(完全妊娠成功)および15のN(妊娠成功なし)の新しい卵丘細胞試料を採集する。前記に従ってRNAを単離する。ABI's High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキットを用いて逆転写を完了させ、特注の予備増幅プール(ABI)を用いてcDNAの増幅を完了させる。予備増幅およびqRT−PCRサイクリングは、ABI 7900HTマシーンにより、LDA当たり1試料で、Applied Biosystems' Taqman LDA指示に従って逐次行なわれる。各転写体の絶対定量を行なう。得られた増幅データを7000 System SDSソフトウェア(Applied Biosystems)により分析し、各遺伝子の強度値を対照遺伝子に対して正規化する。
【0123】
[00155] LDAプラットホームにおいて検証した最終的な予測遺伝子を用いて、前向き研究における試料からなる完全データセットに関して予測モデルを構築する。次いで、後向き研究で得た信号値を用いて、このモデルを新しい試料に適用する。この予測戦略で、前記に述べた重み付き投票法を適用する。
【0124】
[00156] 別の戦略
[00157] 場合によっては、より厳密な信号値を得るために、後向き研究で実施した実験を繰り返すか、あるいは本発明者らの検証努力の統計的パワーを潜在的に増強するために、用いる試料数を増加してもよい。
【0125】
[00158] したがって、以上に基づいて、好ましい態様において本発明方法は、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生する女性対象または産生しない女性対象を、表4に含まれる差示発現する遺伝子のセットもしくは表12に含まれる14遺伝子のセットまたは対応するコードされたポリペプチドの発現レベルに基づいて同定するために用いられる。ただし本発明方法は、ヒト以外の動物、たとえばイヌ、コウモリ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物、鳥類、両生類、爬虫類などにも適用できる。たとえば、本発明を用いて、すなわち表4中の妊娠シグナチャー遺伝子もしくは表12に含まれる14遺伝子のセットまたはその相補体のうち1以上の発現を調節する化合物をスクリーニングすることにより、想定雌性受精処置の研究のための動物モデルを誘導することができる。さらに本発明を用いて、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生する能力を排除または阻害する異常、たとえば卵巣機能障害、卵巣嚢胞、閉経前もしくは閉経状態、癌、自己免疫障害、ホルモン機能障害、細胞増殖障害、または妊娠受容能をもつ卵母細胞の発生を阻害もしくは排除する他の状態を伴う雌性対象を同定することができる。
【0126】
[00159] たとえば、特異的な妊娠シグナチャー遺伝子を特徴的な発現レベルで発現しない対象をスクリーニングして、それらが妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生するのを排除する基礎健康状態を伴うかどうかを評価する。特に、そのような対象をスクリーニングして、それらが閉経の徴候を示しているかどうか、癌、自己免疫疾患または卵巣異常、たとえば卵巣嚢胞を伴うかどうか、あるいは“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を産生するのを排除する可能性のある他の健康状態、たとえばホルモン障害、アレルギー性障害などを伴うかどうかを評価する。
【0127】
[00160] さらに本発明を用いて、ヒトまたはヒト以外の雌性対象における想定雌性受精処置の有効性を評価することができる。本質的に、そのような方法は下記を含むであろう:雌性対象、好ましくは女性を、想定妊娠増強処置により処置し、処置後に少なくとも1個の卵母細胞および随伴する周囲卵丘細胞をその女性から単離し、場合によりさらに処置前に少なくとも1個の卵母細胞および随伴する周囲細胞をその女性から単離し、単離した卵母細胞それぞれから少なくとも1個の卵丘細胞を単離し;妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する(を囲む)卵丘細胞が特徴的レベルで発現するかまたは特徴的レベルで発現しない少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出し;その処置が、妊娠受容能をもつ卵母細胞を囲む卵丘細胞に(処置しない場合より)より特徴的なレベルで少なくとも1つの妊娠シグナチャー遺伝子を発現する卵丘細胞を生じるかどうかに基づいて、その想定受精処置の有効性を評価する。前記のように、雌性ヒト対象が好ましいが、本発明方法はヒト以外の雌性動物、たとえばヒト以外の雌性霊長類、または想定ヒト受精処置の評価のための他の適切な動物モデルにおいて、想定受精処置の有効性を評価するために使用できる。
【0128】
[00161] さらにまた本発明は、体外または体内受精処置の有効性を向上させるために使用できる。特に、“妊娠受容能をもたない”または未熟であることが認められた卵母細胞を、体内または体外受精の前、途中または後に、“妊娠シグナチャー”遺伝子であると同定された遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物、たとえばホルモン、増殖因子、分化因子などを含有する培地で培養することができる。本質的にこれらの遺伝子産物の存在は、通常は“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を囲む卵丘細胞が発現して、それらが普通は卵母細胞に栄養供給し、これによりこれらの卵母細胞が受精した際に生存可能な妊娠をもたらす能力が促進される栄養性遺伝子産物の不足を補うはずである。
【0129】
[00162] あるいは、それらの妊娠シグナチャー遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物またはそれらの遺伝子の発現を調節する化合物を、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生しないことが本発明の方法により見出された対象に投与してもよい。そのような投与は、非経口、たとえば静脈内、筋肉内、皮下への注射によるか、あるいは経口または経皮投与によるものであってもよい。あるいは、これらの遺伝子産物を標的部位、たとえば雌性の卵巣または子宮環境に局所投与してもよい。たとえば、雌性対象の子宮または卵巣に、“妊娠シグナチャー”遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物またはそのような遺伝子の調節剤を持続送達する薬物送達デバイスを埋め込むことができる。
【0130】
[00163] したがって、一般に本発明は、排卵時の卵子、好ましくはヒトの卵子に由来する卵丘細胞(好ましくは卵丘細胞)が発現する遺伝子であってそれの発現レベルはその卵子が自然受精または人工受精して適切な子宮環境へ移行した際に生存可能な妊娠を生じる能力と相関する遺伝子の、同一性および相対量に関する同定および特性解明を伴う。
【0131】
[00164] 1例示態様において、本発明は、卵母細胞の受容能またはある個体が受容能をもつ卵母細胞を産生するかどうかを評価する手段として前記に例示した核酸またはタンパク質の既知の検査法を用いて、卵丘細胞による表4中のいずれかの組合わせ、すなわち少なくとも1、2、3、4、5、6、10、50、...100、200....227の遺伝子、または表12中の14のいずれかの組合わせの遺伝子の発現を、正常な卵丘細胞が発現するレベルと比較してアッセイする。
【0132】
[00165] ただし、例示態様における本発明は表4中の遺伝子および表12の遺伝子のいずれかの組合わせを選択するが、好ましい態様において本発明は、表12中の少なくとも2つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3つ、およびこれらの遺伝子14すべての発現を、卵母細胞の受容能を評価する手段としてアッセイする。さらに本発明方法は、あるいは、差示発現する卵丘細胞が発現する表4および表12中のものから選択される1以上の遺伝子であってそれらの発現が卵母細胞の受容能と相関する遺伝子の発現レベルを、その発現が同様に予測に役立つことが認められた他の遺伝子と共にモニターすることにより実施できる。
【0133】
[00166] 表4:ヒト卵丘細胞が差示発現する、妊娠受容能に関連するヒト遺伝子
【0134】
【表4−1】
【0135】
【表4−2】
【0136】
【表4−3】
【0137】
【表4−4】
【0138】
【表4−5】
【0139】
【表4−6】
【0140】
【表4−7】
【0141】
【表4−8】
【0142】
【表4−9】
【0143】
【表4−10】
【0144】
【表4−11】
【0145】
表5:差示発現データを検証するために用いたヒト遺伝子
【0146】
【表5−1】
【0147】
【表5−2】
【0148】
【表5−3】
【0149】
【表5−4】
【0150】
【表5−5】
【0151】
【表5−6】
【0152】
【表5−7】
【0153】
[00167] 表4に示すように、本発明者らはIVF成功の指標となる227の遺伝子および4128の差示発現する遺伝子を同定した。TLDAチップ上にこれらの遺伝子のうち199を呈示し、196のユニークなものを呈示した(B3GNT7、ATP8A1およびDNAJC15は2プローブセットにより呈示される)。これら196のうち141は予測セットに属し(Excelファイルの“group(グループ)”の欄にPにより呈示する)、55は差示発現セットに属する(差示発現遺伝子を見出すために全試料を用いたので、“All”にちなんでAにより呈示する)。
【0154】
[00168] TLDA実験の出力は閾値サイクル(Ct)値であり、これは“蛍光が閾値を通過する分画サイクル数(fractional cycle number)”である。これらの値は対数尺度(底2)であり、発現と反比例する。たとえば、遺伝子XおよびYに関するCt値をそれぞれ18および19とする。これはXを18サイクル目で“良好に”“検出する”ことを意味し、これはY(19サイクル目で良好に検出される)と比較して2倍大きい発現レベルとなる。したがって、XとYの間の古典的変化倍率(X/Y)を計算するためにはXをYから差し引いてそれを2の冪数とする必要がある。
【0155】
[00169] アレイ全体にわたる正規化を提供するスパイクイン対照(spike-in control)はない。おおよその正規化を行なうために、全遺伝子のCt値を試料全体について考慮し、最も安定な発現を選択する。“安定な”遺伝子(そのプレート内で)のCt値を各遺伝子のCt値から差し引くことにより、プレート(試料)内の各遺伝子についてデルタCt(dCt)値を計算する。Statminer分析により、“安定な”遺伝子はGAPDHであることが見出された。
【0156】
[00170] 本発明者らの“予測分析に用いた古い”試料からTLDAに用いた試料を下記の表6に挙げる。表中の“*”は、先の分析で不適正予測された試料に相当する。
[00171] 表6.先の分析からTLDA実験に用いた試料
【0157】
【表6】
【0158】
したがって、19のF試料および16のN試料、合計35がある。14の新しい試料についても実験した:表7に示す11のN、3のF。
表7:TLDA実験に用いた新しい試料
【0159】
【表7】
【0160】
[00172] データの質
[00173] “検出”呼出しの遺伝子について分布を検査した。遺伝子の発現レベルが決定されなければ、それに40の数値を指定する。図5に、各遺伝子について40の数値を伴う試料の数を、本発明者らの遺伝子(“Hasan遺伝子”と表示した196の遺伝子)およびTLDA上の全379遺伝子(“全遺伝子”と表示)に対して個別にプロットしたものを示す。この図には、各遺伝子についてその遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。この図では、全試料について結果を計算している。
【0161】
[00174] 本発明の遺伝子について全体として、6860(196*35)の数値のうち2237の数値が40であり、これは32.6%の測定で検出されない遺伝子があることを示す。若干の遺伝子は若干の試料中にほとんど存在しないと予想されるので、本発明の定量分析では40の数値をもつ遺伝子があっても許容される。これに対し、本発明方法では35試料すべてに検出されない遺伝子があることは許容されない。たとえば、本発明の遺伝子について、30以上の試料に検出されない遺伝子が62ある。全遺伝子を考慮すると、40の数値を伴う測定の割合は約27.4%である:13230(378*35)のうち3631。
【0162】
[00175] 図6に、40と呼び出された遺伝子の数を各試料について示す。これは、ある意味において、各試料について得た検出レベルを示す。この図に、40の数値を伴う117のHasan遺伝子および212の全遺伝子をもつ9_072407のように、最適下の全体的検出を伴う若干の試料がみられる。試料全体において40と呼び出された遺伝子の数の平均±標準偏差値は、Hasan遺伝子については63.9±14.5、全遺伝子については103.7±28.6である。
【0163】
[00176] さらに、14の“新しい”試料について同様な分析を行なった。その際、Hasan遺伝子においては2744(14*196)の数値のうち541が40であり(測定の19.7%に相当)、全遺伝子においては5292(14*378)の数値のうち896が40である(測定の16.9%に相当)ことが認められる。これらは“古い”試料においてみられるものより10%以上良好である。図7および8に、それぞれ遺伝子および試料に関してデータを分析した場合の、40の数値を伴う試料の数および遺伝子の数を示す。
【0164】
[00177] 図7は、各試料について、遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は14の試料について計算されている。
[00178] 本発明の遺伝子リストについて、40の数値をもつ試料が12以上ある25の遺伝子がある。図8に、各試料について40の数値をもつ遺伝子の数を示す;結果は14の“新しい”試料について計算されている。
【0165】
[00179] その際、全体的検出が不良である1試料17_100709_22がみられる;これは、古いデータセットにおいて40の数値をもつ、卵丘細胞に差示発現する“Hasan遺伝子”と呼ぶ85のヒト遺伝子のセットおよび140の遺伝子をもつ。新しいデータセット中では、試料全体において40と呼び出された遺伝子の数の平均±標準偏差値は、Hasan遺伝子については38.6±13.7、全遺伝子については64.0±22.8であり、これは前のデータセットと比較して改良されている。
【0166】
[00180] これらの結果は、新しい試料についてのTLDA検出は古い試料と比較して改良されており、遺伝子に対するある種のフィルタリングが必要であることを示唆する。このフィルタリングは、遺伝子が40の発現値をもつ、すなわち検出されない試料の数を基礎とすることができる。前記に述べたように、たとえば前の試料については試料のグループに関係なく85%を超える試料においてその遺伝子が検出されない多数の遺伝子がある。
【0167】
[00181] データ分析
[00182] 40の発現値をもつデータ点の取扱い、変化倍率の計算、および対数化した値を用いるか用いないかなど、考慮すべきさまざまなことがある。以下においてそのようなことに対処して、有望な解決策を提示する。
【0168】
[00183] スケーリング:2セットの出力が得られる:Ct値(対数化した発現レベル)およびdCt値;その際、与えられた試料について、各遺伝子のdC値はGAPDHのCt値をその遺伝子のCtから差し引くことにより計算される。Ct値は対数であるので、これは各遺伝子の発現値をGAPDHの発現値で割ることに相当する。言い換えると、それはある遺伝子とGAPDHの間の変化倍率である。これらの数値を用いて進めることは、GAPDHに対する遺伝子の変化倍率に基づいてグループ間の変化倍率を計算することを意味する。GAPDHはアレイに用いる内在対照のひとつではないので、TLDAに用いるスパイクイン対照はなく、対数目盛りでの小さな変動が実際の数値において大きな差を示す場合があり、ある程度注意してこれを調べる。それにもかかわらず、スケーリングした数値とスケーリングしていない数値の両方を用いた分析を提示する。このレポートの残りの部分について、スケーリングしていない数値は増幅ファイルで得たCt値を表わし、スケーリングした数値はGAPDHを差し引くことにより得たdCt値を表わす。
【0169】
[00184] 変化倍率:
[00185] 2つの試料AおよびBがあり、これらの試料における遺伝子Xの発現値がそれぞれaXおよびbXとする。TLDA出力においてみられるもの(Ct値)は、log(aX)およびlog(bX)である。これら2つの試料間の変化倍率を計算したい場合、Ct値を引算し、それを2の冪数とする。すなわち、FC=2 log(aX)−log(bX)。その理由は、下記の規則である:logp−logq=log(p/q)、および2 1og2p=p。ただし、Ct値は逆転しており、すなわち小さい数値ほど大きい表示を意味するので、このFCは変化倍率B/Aを与える。たとえば、Aにおいて10.8、Bにおいて12.3のCt値がみられるとすれば、これはこの遺伝子がAにおいてアップレギュレートされており、B/Aの変化倍率は2 10.8− 12.3=2 −1.5=0.35であることを意味する。言い換えると、この遺伝子はAにおいて1/0.35=2.8倍、アップレギュレートされている。この点に到達するもうひとつの方法は、まずCt値を対数解除し(unlog)、次いで既知の方法でFCを計算する;ただし、方向が逆転しており、すなわちCtワールドでは小さいほど大きいことを意味する。したがって、Aについての発現レベル=2 10.8=1782、Bについての発現レベル=2 12.3=5042、およびFCはB/A=1782/5042=0.35となる。
【0170】
[00186] 1未満のFC値は解釈が難しいので、行なうことはそれらを逆転させ、負の記号を付けることである。上記の例については、B/AについてのFCが0.35であると言う代わりに、B/AについてのFCが−1/0.35=−2.8であると言う。すべての計算において、常にF値をN値から差し引く(log目盛りを用いたとすれば)か、あるいはN値をF値で割って(log解除した値を用いたとすれば)FCをF/Nについて計算した。上記に例示したように、1未満のFCを表現するためには負の数値を用いた。
【0171】
[00187] 単純なFCを計算することはさほど複雑ではないとしても、さらに考慮すべきことがある。上記の例は2つの試料のみを含み、すなわちそれは各グループに1つの試料があるとみることができる。本発明の場合のように各グループに1つより多い試料があればどうであろうか(16N,19F)?Ct値を平均すれば、実際に発現レベルの幾何平均が得られる。次いで2グループのCt値の平均を引算し、次いで2の冪数とすると、これは2グループの幾何平均を割ることによりFCを計算することを意味する。その理由は、下記の規則である:a logX = logX aおよびlogp + logq = log(pq)。
【0172】
[00188] 一例をあげると、発現レベルa、bおよびcがグループNにあり、d、e、fおよびgがグループFにあると仮定する。TLDA出力にみられるのはloga、logbなどである。FC(F/N)を計算するために、Fにおける平均値をNにおける平均値から差し引き、次いで2の冪数とすると、下記が得られる。
【0173】
[00189] Nにおける平均値 = 1/3 [loga + logb + logc] = l/3 1og[abc] = log(abc) l/3
[00190] Fにおける平均値 = 1/4 [logd + loge + logf + logg] = l/4 1og[defg] = log(defg) l/4
[00191] FC (F/N) = 2 ^ [log(abc) l/3 - log(defg) l/4] = 2 ^ {log[(abc) l/3 / (defg) l/4]}= (abc) l/3 / (defg) l/4
[00192] 数字の幾何平均はそれらの積のn乗根であることを思い起こされたい。したがって、我々は常に対数解除した数値を用いて作業することを選択している。すなわち、本発明者らはまずCt値を2の冪数とし、次いで分析を行なった。
【0174】
[00193] 40: 40は、検出されなかった遺伝子を呈示するのに十分なほど高いとみなされた任意Ct値である。しかし、それを40ではなく42に設定すれば、結果はすべて変化するであろう。したがって、本発明者らはまず40ではないすべての数値を調べてそれらをランク付けすることによりこれを解決した。Hasan遺伝子について、これは4623の数値をランク付けすることに相当する。次いでこれらの遺伝子のうち底2%、すなわち最底の92遺伝子を調べた;それらの平均および標準偏差を計算すると、37.9および0.8となった。次いで各40を区間[37.9−0.8、37.9+0.8]間でランダムに選択した数字に置き換えた。
【0175】
[00194] 異常値:発現レベルを手動で調べる場合、与えられた遺伝子について異常値として行動する試料がしばしばみられる。これを克服するために、FCを計算する際にグループ(NまたはF)において最高および最低の発現レベルを除外した。同様に、各グループにおいて最高2つおよび最低2つを除外することによりこの操作を繰り返した。
【0176】
[00195] 結論として、以上の統計的方法を用いることにより、本発明者らは、卵丘細胞による表4中の遺伝子(この遺伝子セットはABCA6、DDIT4、DUSP1、GPR173B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、ならびにさらに6つの遺伝子KRAS、NCAMl、OLFML3、PTPRAおよびSDF4を含む)の発現レベルは、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞が生存可能な妊娠を生じる能力と相関することを見出した。したがって、卵丘細胞によるこれらの遺伝子のうち1以上の発現を検出する方法は、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞がIVF法に使用するのに適切であるかどうかを判定するために使用できる。
【0177】
[00196] これらの結果を確認するために、以下に記載するように14N対17Fの比較および12Nと15Fの比較を行なった。
[00197] 遺伝子のフィルタリング:大部分の試料中に検出されない若干の遺伝子がある。極端な場合、35試料すべてにおいて40のCt値を与えられる“Hasan遺伝子”と表示される20の遺伝子がある。これらの遺伝子を採用すると予測値にはならない。一般的方法として、本発明者らは25以上の試料中に検出されない遺伝子を除外した。
【0178】
[00198] 結果
[00199] 以上の方法を用いて、本発明者らは異常値の除外に基づいて3つのデータセットを作成した;ここで異常値は、ある遺伝子について、与えられたあるグループにおいて最高または最低の発現を伴う試料(単数または複数)である:i)試料を除外しなかった(Excelファイル名に“除外なし”により表示)、ii)各グループ(NおよびF)において最高および最低の発現値を伴う試料を除外し、すなわち14Nおよび17Fの試料を用いてFCを計算する(Excelファイル名に“1つを除外”により表示)、iii)各グループ(NおよびF)において最高のトップ2つおよび最低のトップ2つの発現値を除外し、すなわち12Nおよび15Fの試料を用いてFCを計算する(Excelファイル名に“2つを除外”により表示)。
【0179】
[00200] 各データセットについて、40を前記に説明したように扱った;すなわち、それらを、検出したすべての値の最低2%の平均値±それらの数値の標準偏差のうちのランダムな数値で置き換えた。次いで発現レベルを対数解除し、各データセットについて2つのファイルを作成した:スケーリングしたもの(与えられた試料について、各遺伝子の発現レベルをその試料中のGAPDHの発現レベルで割る)およびスケーリングしていないもの(GAPDHまたは他の何らかのスケーリングを適用しない)。
【0180】
[00201] 各Excelファイル(合計6;3データセットそれぞれについて2つ)につき、下記の欄も含めた:“グループ”:P(遺伝子は予測シグナチャーからのもの) A(遺伝子は差示発現分析からのもの) トレイニング試料および検証試料、すなわちマイクロアレイ分析のすべての試料を使用;“カウント40”:遺伝子が数値40と推定される試料の数を示す;“FC TLDA”:FCを平均の比として計算;“FC Affy”:FCはマイクロアレイから得られる;“一致”:増加の方向がTLDAとAffyで同じであるかどうかを示す;一致の指標として10、そうでなければ−10を用いた。
【0181】
[00202] 図9に、TLDAとマイクロアレイの間で一致する遺伝子の分布を示す。これらの結果を表にしたものが表8にあり、その際、一致レベルをマイクロアレイ結果からの遺伝子のアップ/ダウンレギュレーションに基づいて分ける。ここにはすべての遺伝子を用いる;すなわち遺伝子が40であることが示された試料の数に基づくフィルタリングを適用していない。
【0182】
[00203] 下記の表8に、アップレギュレーションの方向がTLDAとマイクロアレイ分析の間で一致を示す遺伝子の数を示す;TLDAとマイクロアレイ分析の間のアップレギュレーションの方向。S:スケーリングしたもの,U:スケーリングしていないもの.P:予測遺伝子リスト.A:全試料を一緒に分析した際に得られたマイクロアレイデータセット中の遺伝子.T:総遺伝子.遺伝子をフィルタリングしなかった。
【0183】
[00204] 表8
【0184】
【表8】
【0185】
[00205] これらの結果は、各グループにおいてトップの1または2つの異常値を除外すると、スケーリングしたデータを用いて最良の全体的一致が61%で達成されることを示唆する。さらに、25以上の試料において“検出されない”遺伝子をフィルタリングで除去することによりこの分析を繰り返した。11以上の試料において検出される遺伝子を用いてAffyとTLDAの間の一致の分布を示す結果を表9にまとめる。
【0186】
【表9】
【0187】
[00206] 両グループにおいていずれの側にもトップの1または2つの異常値を除外し、かつスケーリングした数値を用いた場合は、全体として66%が一致するので、これらの結果はさらに最適化される。同様に興味深いのは、スケーリングしていない数値では、Fグループにおいてほぼすべての遺伝子がアップレギュレーションを示すことである。
【0188】
[00207] 予測
[00208] 予測分析には、25以上の試料において“検出されない”遺伝子をフィルタリングで除去した場合、AffyとTLDAの間で一致する遺伝子(表9)を用いた。本発明者らは、重み付き投票法を用いる1点排除交差検証法(leave one out cross validation)を適用した。スケーリングしていないデータを用いた場合、6遺伝子で最良の結果が得られた(27/35=77%の予測精度)。スケーリングしたデータの場合、最良の予測精度は(22/35=63%)であった。これらの遺伝子を、35試料を用いたTLDAにおけるそれらの変化倍率値(F/N)およびAffy、ならびに“新しい”14試料におけるこれらの遺伝子の変化倍率値(F/N)と共に表10に示す。
【0189】
【表10】
【0190】
[00209] 35試料についての予測結果を表11に示す。不適正に予測された試料に影を付けてある。合計で3つのNおよび5つのF試料が不適正に予測された。
【0191】
【表11】
【0192】
【表12】
【0193】
[00210] 結論として、以上の統計的方法を用いて、本発明者らは、卵丘細胞による表4中の1以上の遺伝子、より好ましくはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち1以上の発現レベルは、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞が生存可能な妊娠を生じる能力と相関することを見出した。したがって、卵丘細胞によるこれらの遺伝子のうち1以上の発現を検出する方法は、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞がIVF法に使用するのに適切であるかどうかを判定するために、またIVF法に使用するのに不適切な卵母細胞を生じる状態を伴う個体を同定するために、また受精処置の成功をモニターするために使用できる。
【0194】
[00211] 参考文献
[00212] 本明細書全体を通して、種々の参考文献が本発明に関係する技術水準について記載している。これらの参考文献の開示内容を本発明の開示に引用することにより本明細書に援用する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
[0001] 本出願は、US provisional application Serial No. 61/388,296、2010年9月30日出願; US provisional application Serial No. 61/387,313および61/387,286、両方とも2010年月9日28出願; US provisional application Serial No. 61/360,556、2010年7月1日出願およびUS provisional application Serial No. 61/259,783、2009年11月10日出願に基づく優先権を主張する。本出願はUS Serial No 11/584,580、2006年10月23日出願にも関係し、これはUS Serial No. 11/437,797、2006年月5日22出願の一部継続出願であり、これはUS Serial No. 11/091,883、2005年3月29日出願の一部継続出願であり、これはprovisional application No. 60/556,875、2004年3月29日出願に基づく優先権を主張する。これらの出願すべてを全体として本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、卵丘細胞(cumulus cell)におけるその発現が、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞または同じドナーから得られる卵母細胞が妊娠受容能をもつ(pregnancy competent)かどうか、すなわち体外受精に際して生存可能な妊娠をもたらすことができるかどうかと相関する、227のヒト遺伝子群、および好ましい14遺伝子のセットを同定する。さらに本発明は、卵丘細胞における発現が卵母細胞の受容能と相関するこれら227の遺伝子の同定および好ましい14遺伝子のセットの同定をもたらした遺伝子発現検出法および統計分析法を提供する。
【0003】
[0003] この知見に基づいて、本発明は、卵母細胞に随伴するかまたは同じドナーに由来する卵丘細胞によるこれら227の遺伝子のうち1以上またはこれら14の遺伝子のうち1以上の発現レベルを検出することによってIVF法に用いるのに潜在的に適したヒト卵母細胞を同定するための方法および検査キットを提供する。さらにこの知見に基づいて、本発明はさらに、受精させて適切な子宮環境へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらす可能性がより高いヒト卵母細胞を同定するための検査キットを提供する。卵丘細胞におけるその発現が妊娠潜在性と相関する227の遺伝子のセットは後記の表4に含まれる。さらに、好ましい14遺伝子のセットは表12中にあり、ABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3、およびTERF2IPからなる。
【0004】
[0004] 以上に基づいて、本発明はさらに、雌性対象から単離した卵母細胞から得た卵丘細胞における、表4に含まれるこれら227の特異的遺伝子または好ましい14遺伝子のセットのうち1以上の発現を分析することにより、年齢(閉経)、原疾患状態または薬物療法による卵巣機能障害の結果として妊娠機能障害をもつ雌性対象、好ましくはヒト女性を同定するための遺伝学的方法を提供する。
【0005】
[0005] 本発明はまた、受精処置またはホルモン処置を受けた雌性対象の卵丘細胞によるこれら227または14の特異的遺伝子のうち1以上の発現にその処置が及ぼす影響を評価することにより、想定受精処置またはホルモン処置の有効性を評価する方法を提供する。
【背景技術】
【0006】
[0006] 発明の背景
[0007] 現在、ある雌性対象が、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞、すなわち自然または人為的手段で受精した際に胚を生成でき、それが次いで適切な子宮環境へ移行した際に生存可能な子孫をもたらすことができる卵母細胞を産生するかどうかを同定するための信頼できる商業的に入手される遺伝学的方法または遺伝学以外の方法はない。むしろ、一般的な受精能評価方法は、ホルモンレベル、卵母細胞の数および質の視診、雌性生殖系臓器の外科的または非侵襲的(MRI)検査などに基づいて受精能を評価する。しばしば、ある女性が生存可能な妊娠の形成に問題をもつ場合、長期間、たとえば1年以上後には、診断は“説明できない”受精問題となる可能性があり、その女性は単純に試みを続けるか、あるいは他の選択肢、たとえば養子または代理出産を求めるようにアドバイスされる。
【0007】
[0008] 一部は、妊娠受容能をもつ卵母細胞を同定するための手段がないためであろうが、人工生殖技術(assisted reproductive technology)(ART)の成功率、すなわち体外受精(in vitro fertilization)(IVF)の試みによる妊娠率および出産率は依然として低い。主観的な形態学的パラメーターが今でもIVFおよびICSIプログラムに使用する健全な胚を選択するための主な基準である。しかし、そのような基準では胚の受容能を実際に予測することはできない。多数の研究が、幾つかの異なる形態学的基準の組合わせによってより厳密に胚が選択されることを示している。胚の選択のための形態学的基準は移植する当日に評価され、原則として初期胚の卵割(受精後25〜27時間目)、2日目、3日目または5日目の卵割球の数およびサイズ、4または8細胞期のフラグメンテーション率および多核化の存在に基づく(Fenwick et al., Hum Reprod, 17, 407-12. (2002)。
【0008】
[0009] 最近の研究により、受精用の卵母細胞の選択は得られる胚すべてをそれらの質に関係なく移植するのと比較してARTの結果を改善しないことが示された(La Sala et al., Fertil Steril. (2008))。
【0009】
[0010] IVF成功率を高め、新鮮置換のための胚の数を減らして多胎妊娠率を低下させるために、最高の着床潜在性をもつ生存可能な胚を同定することが求められている。これらすべての理由で、胚選択のための幾つかのバイオマーカーが現在調べられている(Haouzi et al., Gynecol Obstet Fertil, 36, 730-742. (2008); He et al., Nature, 444, 12-3. (2006))。
【0010】
[0011] 妊娠をもたらす胚は、そうではない胚と比較してそれらの代謝プロフィールが異なるので、幾つかの研究は非侵襲的な胚培養培地の評価により検出できる分子シグナチャーの同定を試みている(Brison et al.,. Hum Reprod, 19, 2319-24. (2004); Gardner et al., Fertil Steril, 76, 1175-80. (2001); Sakkas and Gardner, Curr Opin Obstet Gynecol, 17, 283-8 (2005); Seli et al., Fertil Steril, 88, 1350-7. (2007); Zhu et al. Fertil Steril.(2007)。
【0011】
[0012] ゲノミクスも、胚の発生に際しての遺伝学的機能および細胞機能の重要な知識を提供しつつある。McKenzie et al., Hum Reprod, 19, 2869-74. (2004); Feuerstein et al, Hum Reprod, 22, 3069-77は、卵丘細胞中の幾つかの遺伝子、たとえばシクロオキシゲナーゼ2(COX2)の発現が卵母細胞および胚の質の指標になると報告した。さらに、グレムリン1(Gremlin 1)(GREM1)、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ステロイド形成急性調節タンパク質(steroidogenic acute regulatory protein)(STAR)、ステアロイル−補酵素Aデサチュラーゼ1および5(SCD1および5)、アンフィレギュリン(amphiregulin)(AREG)、ならびにペントラキシン3(pentraxin 3)(PTX3)も胚の質と正の相関性をもつと報告されている(Zhang et al., Fertil Steril, 83 Suppl 1, 1169-79. (2005))。より最近になって、ヒト卵丘細胞中のグルタチオンペルオキシダーゼ3(GPX3)、ケモカイン受容体4(CXCR4)、サイクリンD2(CCND2)およびカテニン デルタ1(CTNND1)は胚の質と逆の相関性をもつことが、胚の発生に際しての初期卵割速度に基づいて示された(van Montfoort et al., (2008) Mol Hum Reprod, 14, 157-68. (2008))。
【0012】
[0013] Cillo et al., Reprod. 134: 645-50 (2007)も、特定の卵丘細胞遺伝子、すなわちHAS2、GREM1およびPTX3の発現と、卵母細胞の質および胚の発生との相関性を示唆している。さらに、Assidi et al. Biol. Reprod. 79(2) 209-222 (2008)は、特定の卵丘細胞遺伝子、すなわちEGFR、CD44、HAS2、PTSG2およびBTCの発現と、卵母細胞の質およびそれからの胚の発生との相関性を示唆している。さらに、Bettegowda et al., Biol. Reprod. 79(2): 301-309 (2008)は、特定のプロテイナーゼカテプシン遺伝子の発現と、ウシ卵母細胞の質およびそれからの子孫の発生との相関性を示唆している。
【0013】
[0014] さらに、Zhangらに最近付与された特許(2009年8月11日)は、卵丘細胞におけるペントラキシン3およびBCL−2メンバーを検出して卵母細胞の質を評価することを権利請求している。US20040058975、2004年3月25日公開も、EP2受容体および/またはシクロオキシゲナーゼCOX−2の拮抗が卵丘細胞の増殖および卵母細胞の発育を促進すると教示している。
【0014】
[0015] また、初期卵割は妊娠を予測するための信頼性のあるバイオマーカーであることが示されている(Lundin et al, Hum Reprod, 16, 2652-7. (2001); Van Montfoort et al., Hum Reprod, 19, 2103-8 (2004); Yang et al, Fertil Steril, 88, 1573-8 (2007))が、妊娠予後と相関する卵丘細胞の遺伝子発現プロフィールについてはほとんど報告されていない(ただし、Assou et al., Mol Hum Reprod. 2008 Dec; 14(12): 711-9. Epub 2008 Nov 21を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】Zhang et al. (2009年8月11日)
【特許文献2】US20040058975
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Fenwick et al., Hum Reprod, 17, 407-12. (2002)
【非特許文献2】La Sala et al., Fertil Steril. (2008)
【非特許文献3】Haouzi et al., Gynecol Obstet Fertil, 36, 730-742. (2008)
【非特許文献4】He et al., Nature, 444, 12-3. (2006)
【非特許文献5】Brison et al.,. Hum Reprod, 19, 2319-24. (2004)
【非特許文献6】Gardner et al., Fertil Steril, 76, 1175-80. (2001)
【非特許文献7】Sakkas and Gardner, Curr Opin Obstet Gynecol, 17, 283-8 (2005)
【非特許文献8】Seli et al., Fertil Steril, 88, 1350-7. (2007)
【非特許文献9】Zhu et al. Fertil Steril. (2007)
【非特許文献10】McKenzie et al., Hum Reprod, 19, 2869-74. (2004)
【非特許文献11】Feuerstein et al, Hum Reprod, 22, 3069-77
【非特許文献12】Zhang et al., Fertil Steril, 83 Suppl 1, 1169-79. (2005)
【非特許文献13】van Montfoort et al., (2008) Mol Hum Reprod, 14, 157-68.(2008)
【非特許文献14】Cillo et al., Reprod. 134: 645-50 (2007)
【非特許文献15】Assidi et al. Biol. Reprod. 79(2) 209-222 (2008)
【非特許文献16】Bettegowda et al., Biol. Reprod. 79(2): 301-309 (2008)
【非特許文献17】Lundin et al, Hum Reprod, 16, 2652-7. (2001)
【非特許文献18】Van Montfoort et al., Hum Reprod, 19, 2103-8 (2004)
【非特許文献19】Yang et al, Fertil Steril, 88, 1573-8 (2007)
【非特許文献20】Assou et al., Mol Hum Reprod. 2008 Dec; 14(12): 711-9
【非特許文献21】Epub 2008 Nov 21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
[0016] したがって、以上にもかかわらず、IVF法に用いるのに適した卵母細胞を同定し、女性における遺伝子に基づく受精問題を同定するための、代替となる、より予測性のある方法を提供することがきわめて望ましいであろう。特に、卵丘細胞によるその発現が卵母細胞の妊娠受容能と相関する他の遺伝子およびバイオマーカーの同定、ならびにそれらを用いた検査キットおよびアッセイ法はIVF法の結果を向上させることができるので、きわめて望ましいであろう。
【0018】
[0017] これらの方法および検査キットはさらに、卵母細胞関連の受精問題を伴う女性の同定を提供するであろう;これは、そのような受精問題は妊娠を排除する他の健康問題、たとえば癌、閉経状態、ホルモン機能障害、卵巣嚢胞、または他の原疾患もしくは健康関連問題と相関している可能性があるので望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[0018] 本発明は、受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のいずれかの発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0020】
[0019] 本発明はまた、受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞を囲む卵丘細胞における特異的遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、遺伝子は表4中のものまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子である方法に関する。
【0021】
[0020] 本発明はまた、受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞または胚を囲む卵丘細胞において表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子から選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0022】
[0021] これらの遺伝子のうち1以上の異常な発現レベルは、早期の胚分裂停止に起因する受容能のない卵母細胞または胚の予測に役立つ。
[0022] 前記のように、女性ドナーの卵丘細胞によるこれらの遺伝子の発現レベルは、その卵丘細胞に随伴するかまたは同じ対象に由来する卵母細胞が自然または人為的手段により受精した際に“妊娠受容能をもつ”可能性と相関することが見出された。これらの遺伝子および発現レベルは、本出願人らが“妊娠シグナチャー”と呼ぶものを構成する。さらに、妊娠シグナチャーは前記に示した本出願人の先の出願に開示した1以上の遺伝子をさらに含むことができる。
【0023】
[0023] “妊娠シグナチャー”を構成する遺伝子または対応するポリペプチドのうち1以上の発現検出レベルに基づいて、ある個体がその個体の卵母細胞をIVF法に使用するのに潜在的に不適切にする遺伝子関連の受精問題をもつかどうかを判定する新規方法を提供することは、本発明の関連する目的である。妊娠シグナチャーを構成する遺伝子および遺伝子産物は、この場合も好ましくは表4に含まれるものから選択され、および/またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される。
【0024】
[0024] 本発明の他の目的は、下記の段階を含む、雌性受精処置の有効性を評価する方法を提供することである:
(i)“生存可能な妊娠”をもつことを阻止または阻害する問題を伴うと推定される雌性対象を処置する;
(ii)その受精処置後にその雌性対象から少なくとも1つの卵母細胞およびそれに随伴する細胞を単離する;
(iii)単離した卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞を単離し、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に特徴的な発現レベルで発現する表4中のものから選択される少なくとも1つの遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出する;そして
(iv)処置の結果としてその遺伝子が“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に特徴的な発現レベルで発現しているかどうかに基づいて、その受精処置の推定有効性を判定する。
【0025】
[0025] 本発明の他の特定の目的は、妊娠シグナチャーを構成する1以上の遺伝子の発現を調節することにより不妊症を処置するための新規方法を提供することである。これらの方法は、表4に含まれる遺伝子、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPのうち1以上、ならびにそれらのスプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントの発現に作動または拮抗する化合物を投与することを含む。
【0026】
[0026] 本発明の他の目的は、想定受精処置の有効性を評価するための動物モデルを提供することであり、ヒト以外の動物、たとえばヒト以外の霊長類の妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞に特徴的なレベルで発現する遺伝子を同定し;そのヒト以外の動物において想定受精処置がそれらの遺伝子の発現レベルに及ぼした作用、すなわちその処置の結果として、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞にみられる遺伝子発現レベル(“妊娠シグナチャー”)をより良好に模倣した遺伝子発現レベルが、表4中の227の遺伝子のうち1以上、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる14の遺伝子群のうち1以上において生じるかどうかに基づいて、その処置の有効性を評価することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図1b】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図1c】[0027] 図1a〜cは、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセット(training set)の試料(33試料)および検証セット(validation set)の試料(32試料)のクラスタリングを、全遺伝子を用いて別個に示す(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。図1:全遺伝子を用いたNおよびF試料のクラスタリング(a:全試料,b:トレイニングセット,c:検証セット)。
【図2】[0028] 図2a〜bは、1180の記述遺伝子(descriptive gene)を用いたNおよびF試料のクラスタリングを示す(a:トレイニングセット,b:検証セット)。その結果は、トレイニングセット(F対N)で同定されたt−検定に基づく差次発現を示す(多重仮説検定のためにボンフェロニ補正(Bonferroni correction)してp<0.05)。得られた“記述遺伝子”と呼ばれる1180の遺伝子を用いてトレイニングセットおよび検証セットを個別にクラスタリングした。
【図3】[0029] 図3は、227の予測遺伝子(predictor gene)を用いたNおよびF試料のクラスタリングを示す(a:トレイニングセット,b:検証セット)。このデータはトレイニングセットにおいて不適正予測された試料のみがクラスタリングにおいても誤置される(misplaced)ことを明らかにするが、検証セットクラスタリングにおけるF試料とN試料の混合挙動は重み付き投票法(weighted voting approach)によりなされた貢献を強調する。
【図4】[0030] 図4は、A)表4中の予測遺伝子セット(PG’s)に有意性を指定する方法、B)PG’sを改良する方法、およびC)最終的な予測遺伝子セットをさらに分析する方法を模式的に示す。
【図5】[0031] 図5は、各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“古い”35試料について計算されている。図5には、各遺伝子について40の数値をもつ試料の数を、本発明の遺伝子(“Hasan遺伝子”と表示した196の遺伝子)およびTLDA上の全379遺伝子(“全遺伝子”と表示)について別個にプロットしたものを示す。
【図6】[0032] 図6は、40の数値をもつ遺伝子の数を各試料について示す。結果は“古い”35試料について計算されている:各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図7】[0033] 図7は、各遺伝子について、その遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図8】[0034] 図8は、40の数値をもつ遺伝子の数を各試料について示す。結果は“新しい”14試料について計算されている。
【図9】[0035] 図9は、下記の因子に基づく遺伝子の分布を示す:その遺伝子が属するグループ(PまたはA);TLDAとマイクロアレイにおけるその遺伝子のアップ/ダウンレギュレーションの一致(方向が同じであれば10、そうでなければ−10);その遺伝子が40の数値をもつ試料の数。この分析は、種々の個数の異常値を除外して、スケーリングした(scaled)数値およびスケーリングしていない(unscaled)数値について個別に実施される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0036] 発明の詳細な記述
[0037] 本発明をより詳細に述べる前に、以下の定義を示す。本出願においてその他のすべての語および句は、本発明の分野の当業者が解釈するようにそれらの通常の意味により解釈すべきである。
【0029】
[0038] “妊娠受容能をもつ卵母細胞”は、自然または人為的手段により受精した場合にそれが適切な子宮環境内で構成されると生存可能な妊娠をもたらすことができる雌性生殖細胞または卵子を表わす。
【0030】
[0039] 用語“受容能をもつ胚”は、同様に妊娠に導く高い着床率をもつ胚を表わす。用語“高い着床率”は、子宮内へ移植した際に胚が子宮環境内に着床して生存可能な胎児を生じ、その妊娠を終結させる措置または事象がなければそれが発育して生存可能な子孫になる潜在性を意味する。
【0031】
[0040] “生存可能な妊娠”は、受精した卵母細胞が適切な子宮環境内に収容された際に発育すること、およびそれが発育して生存可能な胎児になり、その妊娠を終結させる措置または事象がなければそれが発育して生存可能な子孫になることを表わす。
【0032】
[0041] “卵丘細胞”は、卵母細胞を囲む細胞塊に含まれる細胞を表わす。これは“卵母細胞に随伴する細胞”の例である。これらの細胞は、受精した際に“妊娠受容能をもつ”卵母細胞をもたらすのに必要なそれの栄養要求その他の要求の一部を卵母細胞に提供することに関与すると考えられている(Buccione, R., Schroeder, A.C., and Eppig, J.J. (1990). Interactions between somatic cells and germ cells throughout mammalian oogenesis. Biol Reprod 43, 543-547.)。
【0033】
[0042] “差示的遺伝子発現”は、目的組織、本明細書中では好ましくは卵母細胞に随伴する細胞、たとえば卵丘細胞内で、その発現が変動する遺伝子を表わす。
[0043] “リアルタイムRT−PCR”は、試料中の特定のRNA転写体の増幅と定量が同時にできる方法またはそれに用いる装置を表わす。
【0034】
[0044] “マイクロアレイ分析”は、特定の試料、たとえば組織試料または細胞試料中の、特異的遺伝子の発現レベルの定量を表わす。
[0045] 本明細書中で“妊娠シグナチャー”は、表4中の特異的遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、ならびにそれらのオルソログ、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントから選択される1以上の遺伝子またはそれらによりコードされるポリペプチドの正常な発現レベルを表わす;その際これらの遺伝子またはポリペプチドは、正常な卵丘細胞において、これらの1以上の遺伝子またはポリペプチドを特徴的レベルで発現する卵丘細胞に随伴する卵母細胞は生存可能な妊娠を生じる可能性がより高いという可能性と相関するレベルで発現する。
【0035】
[0046] 本明細書中で、特定の検出した発現核酸配列またはポリペプチドに関して“卵丘遺伝子の特徴的発現レベル”は、特定の遺伝子またはポリペプチドが、正常な卵丘細胞に随伴する卵丘細胞または正常もしくは発生受容能をもつ卵母細胞に随伴するものにみられるレベルと実質的に類似するレベルで発現することを意味する。
【0036】
[0047] “実質的に類似する”は、個々の遺伝子の発現レベルが、正常な卵丘細胞による遺伝子またはポリペプチドの発現の検出レベルの好ましくは±1〜5倍の範囲内、より好ましくは±1〜3倍の範囲内、よりさらに好ましくは±1〜1.5倍の範囲内、最も好ましくは±1.0〜1.3、1.0〜1.2、1.0〜1.2倍の範囲内にあることを意味する。
【0037】
[0048] 本発明によれば、卵母細胞は自然サイクル、変異させた自然サイクル、またはcIVFもしくはICSIのために刺激したサイクルから生じたものであってもよい。用語“自然サイクル”は、雌または女性が卵母細胞を産生する自然サイクルを表わす。用語“変異させた自然サイクル”は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアンタゴニストによる緩和な卵巣刺激下で、雌または女性が1または2個の卵母細胞を産生するプロセスを表わす。用語“刺激したサイクル”は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアゴニストまたはアンタゴニストによる緩和な卵巣刺激下で、雌または女性が1以上の卵母細胞を産生するプロセスを表わす。
【0038】
[0049] “適切な妊娠シグナチャーをもつかまたは妊娠受容能をもつと判定された卵母細胞または卵丘細胞”は、卵母細胞またはその卵母細胞に随伴する卵丘細胞、あるいは同じ対象から被験卵丘細胞とほぼ同じ時点で(0〜6か月以内)得られた卵母細胞であって、表4中のものまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントのうち少なくとも1つの遺伝子またはそれらによりコードされるポリペプチドを正常な卵丘細胞が発現するレベルに特徴的な様式で発現すると判定されたものを表わす。表4に含まれるもの、またはそれらの対立遺伝子バリアントもしくはスプライスバリアントのうち、好ましくは少なくとも2もしくは3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3〜10の遺伝子、10〜50の遺伝子、さらには最高100またはそれ以上の遺伝子が特徴的な様式で発現する。多数の、たとえば10以上のオーダーの遺伝子の発現を対象の遺伝学に基づくアッセイで評価する場合、適切な妊娠シグナチャーは、全部または実質的に全部、すなわち少なくとも70〜80%の検出遺伝子が正常な卵丘細胞に特徴的な様式で発現することを意味すると理解すべきである。たとえば、10の遺伝子の発現を検出する場合、それらの遺伝子のうち少なくとも7、8または9の遺伝子が、好ましくは正常な卵丘細胞、すなわち正常な胚および生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴する卵丘細胞と一致するレベルで発現するであろう。
【0039】
[0050] 一般に、妊娠シグナチャーに関して、特徴的な発現レベルは少なくとも3〜5、5〜10、10〜20、可能ならば少なくとも50〜100の遺伝子についてみられ、それらは“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を囲む卵丘細胞に特徴的なレベルで発現する。これは、分析される卵丘細胞内で遺伝子が発現するレベルおよび遺伝子発現の分布を含むものとする。
【0040】
[0051] “妊娠シグナチャー遺伝子”は、正常または“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に随伴する卵丘細胞が特徴的なレベルで発現する遺伝子を表わす。これらの遺伝子は表4中に含まれ、さらにABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子、ならびにそれらのオルソログ、スプライスバリアントおよび対立遺伝子バリアントを含む。この表中に、遺伝子はそれらの名称および寄託番号で表示される。本発明はさらにこれらの遺伝子の対立遺伝子バリアントおよびスプライスバリアントならびにオルソログの検出を含むことを理解すべきである。
【0041】
[0052] “妊娠シグナチャー遺伝子またはポリペプチドの発現を検出するのに適したプローブ”は、転写された遺伝子または対応するポリペプチドの発現を特異的に検出する核酸配列(単数または複数)またはリガンド、たとえば抗体を表わす。好ましい態様において、発現はリアルタイムPCR検出法の使用により選択される。
【0042】
[0053] “IVF”は、体外受精を表わす。
[0054] 用語“古典的な体外受精”または“cIVF”は、卵母細胞を体外、すなわちインビトロで精子により受精させるプロセスを表わす。IVFは、体内受胎が失敗した場合の主要な受精処置である。用語“細胞質内精子注入(intracytoplasmic sperm injection)”または“ICSI”は、1個の精子を卵母細胞に直接注入する体外受精法を表わす。この方法は、雄性不妊因子を克服するために採用されるのが最も一般的であるが、それは卵母細胞に精子が容易に透過できない場合にも、また時には特に精子の供与を伴う体外受精法として採用できる。
【0043】
[0055] “透明帯”は、卵母細胞の最も外側の領域を表わす。
[0056] “差示発現遺伝子を検出するための方法”は、発現した遺伝子転写体またはコードされたポリペプチドを特異的に検出するプローブを用いて差示的遺伝子発現を定量評価するためのいずれか既知の方法を包含する。そのような方法の例には、下記のものが含まれる:インデクシング(indexing)ディファレンシャルディスプレイ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(differential display reverse transcription polymerase chain reaction)(DDRT−PCR;Mahadeva et al, 1998, J. Mol. Biol. 284: 1391-1318; WO 94/01582;サブトラクティブmRNAハイブリダイゼーション(参照:Advanced Mol. Biol.; R.M. Twyman (1999) Bios Scientific Publishers, Oxford, p. 334、核酸アレイまたはマイクロアレイの使用(参照:Nature Genetics, 1999, vol. 21, Suppl. 1061)、および遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression)(SAGE)、たとえばValculesev et al, Science (1995) 270: 484-487を参照)、およびリアルタイムPCR(RT−PCR)。たとえば、卵母細胞における転写遺伝子の差示的レベルは、ノーザンブロット法および/またはRT−PCRの使用により検出できる。
【0044】
[0057] 好ましい方法はCRL増幅プロトコルであり、これは本出願人の先の出願に開示した新規な全RNA増幅プロトコルであって鋳型スイッチングPCRとT7を基礎とする増幅法を組み合わせたものを表わす。このプロトコルは、数個の細胞または限定された全RNAしかない試料に好適である。
【0045】
[0058] 好ましくは“妊娠シグナチャー”遺伝子は、DNAチップ、たとえばcDNA配列を含むフィルターアレイ、またはcDNAもしくはインサイチュー合成オリゴヌクレオチド配列を含むガラスチップへの、RNAまたはDNAのハイブリダイゼーションにより検出される。フィルター付きアレイは、一般に高存在量または中等度存在量の遺伝子用として、より良好である。DNAチップは低存在量の遺伝子を検出できる。例示態様において、ヒトゲノム由来の遺伝子またはそのサブセットを含む試料をAffymetrix GeneChipで検査することができる。
【0046】
[0059] あるいは、妊娠シグナチャー遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはそれに結合する抗体を含むポリペプチドアレイを作成して検出および診断に使用できる。
[0060] “EASE”は遺伝子個体学(gene ontology)プロトコルであり、遺伝子のリストから、あるカテゴリー内にその番号のサブグループ遺伝子がみられる確率に基づいて各遺伝子に指定した機能カテゴリーに基づき、マイクロアレイ上に現われるそのカテゴリーからの遺伝子の頻度を考慮してサブグループを形成する。
【0047】
[0061] 以上に基づいて、本発明は、ある雌性、好ましくはヒトまたはヒト以外の哺乳動物が“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を産生するかどうか、あるいは特定の卵母細胞が妊娠受容能をもつかどうかを検出する新規方法を提供する。この方法は、“妊娠受容能をもつ”卵母細胞に随伴する(それらを囲む)卵丘細胞が特徴的なレベルで発現する表4中の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち1以上の発現レベルを検出することを伴う;すなわち、これらの卵母細胞は自然または人為的手段(IVF)により受精して適切な子宮環境内へ移行した際に、その妊娠が何らかの事象または措置、たとえば外科的介入またはホルモン介入により終結されない限り、生存可能な妊娠、すなわち生存可能な胎児に発育して最終的に子孫になる胚をもたらすことができる。
【0048】
[0062] 本明細書中に記載するように、本発明者らは、卵丘細胞に発現する、胚の潜在性および妊娠予後のバイオマーカーである一組の遺伝子を決定した。本発明者らは、卵母細胞を囲む卵丘細胞の遺伝子発現プロフィールが種々の妊娠予後と相関することを立証し、これにより妊娠に向けて発育する卵母細胞の特異的発現シグナチャーを同定することができた。本発明者らの結果は、卵母細胞を囲む卵丘細胞の分析は卵母細胞選択のための非侵襲的方法であることを示す。
【0049】
[0063] 表4中の予測遺伝子のセットおよび表12において同定した14遺伝子のセットは、既知のヒト遺伝子である。しかし、(卵丘細胞における)これらの遺伝子の発現はこれまで卵母細胞の受容能または胚の発生と関連づけられていなかった。したがって本発明は、受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、卵母細胞を囲む卵丘細胞における特異的遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、遺伝子は表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つを含む方法に関する。
【0050】
[0064] 本発明の方法は、さらに試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出は、その卵母細胞が受容能をもつかどうかの指標となる。対照は、受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞を含む試料、または未受精(unfertilized)卵母細胞に随伴する卵丘細胞を含む試料で構成されてもよい。
【0051】
[0065] 本発明の方法は、好ましくはヒト女性に適用できるが、他の哺乳動物(たとえば、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウシなど)にも適用できる。
[0066] 本発明の方法は、体外受精処置の有効性を評価するために特に適切である。したがって本発明はまた、雌性対象において管理された卵巣過剰刺激(controlled ovarian hyperstimulation)(COS)プロトコルの有効性を評価するための下記を含む方法に関する:i)雌性対象から少なくとも1個の卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に入手し;ii)本発明の方法によりその卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定する。
【0052】
[0067] 次いで、その方法の後に、受容能をもつ卵母細胞を発生専門医が選択し、そしてたとえば古典的な体外受精(cIVF)プロトコルを用いて、または細胞質内精子注入(ICSI)プロトコル下において、体外でそれらを受精させる。
【0053】
[0068] 本発明の他の目的は、管理された卵巣過剰刺激(COS)プロトコルの有効性をモニターするための下記を含む方法に関する:i)自然、変異または刺激サイクル下で女性から少なくとも1個の卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に単離し;ii)本発明の方法によりその卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定し;iii)そしてCOS処置の有効性を、それにより受容能をもつ卵母細胞が生成するかどうかに基づいてモニターする。
【0054】
[0069] COS処置は、組換えFSHまたはhMGに関連するGnRHアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択される少なくとも1種類の有効成分に基づくものであってもよい。
【0055】
[0070] 本発明はまた、受容能をもつ胚を選択するための方法であって、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。
【0056】
[0071] 本発明の方法はさらに、試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出は、その胚が受容能をもつかどうかの指標となる。対照は、生存可能な胎児を生じる胚に随伴する卵丘細胞を含む試料、または生存可能な胎児を生じない胚に随伴する卵丘細胞を含む試料で構成されてもよい。
【0057】
[0072] 本発明の方法は胚の形態学的考察からの独立をもたらすことが注目される。2つの胚が同じ形態学的観点をもつけれども本発明の方法によれば妊娠に至る着床率が異なるという可能性がある。
【0058】
[0073] 本発明の方法は、好ましくはヒト女性に適用できるが、他の哺乳動物(たとえば、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウシなど)にも適用できる。
[0074] 本発明はまた、ある胚が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定するための方法であって、胚を囲む卵丘細胞中の45の遺伝子の発現レベルを測定することを含み、その際、それらの遺伝子は表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つを含む方法に関する。
【0059】
[0075] 本発明はまた、ある胚が受容能をもつ胚であるかどうかを判定するための下記を含む方法に関する:i)卵母細胞をそれの卵丘細胞と共に入手し;ii)その卵母細胞を体外受精させ;そしてiii)本発明の方法により段階i)の卵母細胞が受容能をもつ卵母細胞であるかどうかを判定することにより、段階ii)から得られる胚が受容能をもつかどうかを判定する。
【0060】
[0076] 本発明はまた、受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞または胚を囲む卵丘細胞において、表4中の227の遺伝子のうち少なくとも1つまたはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子から選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法に関する。選択したこれらの遺伝子のうち1以上の異常な発現は、受容能をもたない卵母細胞または胚、着床できない不能な胚、あるいは早期胚停止が原因で受容能をもたない卵母細胞または胚を予測するのに役立つ。
【0061】
[0077] 本発明の方法は、雌性の妊娠予後を向上させるために特に適切である。したがって本発明はまた、雌性の妊娠予後を向上させるための下記を含む方法に関する:i)本発明の方法を実施することにより受容能をもつ胚を選択し;iii)段階i)で選択した胚をその雌性の子宮内に移植し、その際、雌性は卵母細胞のドナーであってもよく、そうでなくてもよい。
【0062】
[0078] したがって前記の方法は、発生専門医が妊娠予後の潜在性が乏しい胚を子宮に移植するのを避けるのに役立つであろう。前記の方法は、着床および妊娠を導くことができる受容能をもつ胚を選択することにより、多胎妊娠を避けるのにも特に適切である。
【0063】
[0079] 前記のすべての場合、それらの方法は、卵丘細胞および胚の遺伝子発現プロフィールと妊娠予後の関係を表わす。
[0080] 本発明の遺伝子の発現レベルを測定するための方法:
[0081] “妊娠シグナチャー”中の遺伝子、すなわち表4中の227の遺伝子のうち少なくとも1つ、またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルの測定は、多様な手法で実施できる。一般に、測定する発現レベルは相対的発現レベルである。
【0064】
[0082] より好ましくは、測定は、試料を選択試薬、たとえばプローブ、プライマーまたはリガンドと接触させ、これにより試料中に最初にあった目的とするポリペプチドまたは核酸の存在を検出し、あるいは量を測定することを含む。接触は、いずれか適切な器具、たとえばプレート、マイクロタイターディッシュ、試験管、ウェル、ガラス、カラムなどにおいて実施できる。特定の態様において、接触は試薬でコートした支持体、たとえば核酸アレイまたは特異的リガンドのアレイ上で実施される。支持体は固体または半固体支持体、たとえばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどで構成される適切な支持体のいずれであってもよい。支持体は多様な形態およびサイズのもの、たとえばスライド、膜、ビーズ、カラム、ゲルなどであってもよい。接触は、試薬と試料の核酸またはポリペプチドとの間で形成される検出可能な複合体、たとえば核酸ハイブリッドまたは抗体−抗原複合体に適切な、いずれかの条件下で行なうことができる。
【0065】
[0083] 好ましい態様において、発現レベルはmRNAの量を測定することにより測定できる。
[0084] mRNAの量を測定するための方法は当技術分野で周知である。たとえば、試料(たとえば、患者から調製した細胞または組織)中に含有される核酸をまず標準法に従って、たとえば細胞溶解酵素または化学物質溶液を用いて抽出し、あるいは製造業者の指示に従って核酸結合樹脂により抽出する。抽出したmRNAを次いでハイブリダイゼーション(たとえば、ノーザンブロット分析)および/または増幅(たとえば、RT−PCR)により検出する。好ましくは、定量または半定量RT−PCRが好ましい。リアルタイム定量または半定量RT−PCRが特に有利である。他の増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction)(LCR)、転写仲介増幅(transcription-mediated amplification)(TMA)、鎖置換増幅(strand displacement amplification)(SDA)および核酸配列に基づく増幅(nucleic acid sequence based amplification)(NASBA)が含まれる。
【0066】
[0085] 少なくとも10のヌクレオチドをもち、かつ本発明の目的mRNAに対して配列の相補性または相同性を示す核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用である。そのような核酸は同一である必要はないが、一般に匹敵するサイズの相同領域に対して少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、よりさらに好ましくは95〜95%同一であると理解される。特定の態様において、核酸をハイブリダイゼーションの検出のための適宜な手段、たとえば検出可能な標識と組み合わせて用いるのが有利である。蛍光性、放射性、酵素性、または他のリガンド(たとえば、アビジン/ビオチン)を含めた広範な適宜な指示薬が当技術分野で知られている。
【0067】
[0086] プローブは一般に、10〜1000、たとえば10〜800、より好ましくは15〜700、一般に20〜500ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸を含む。プライマーは一般に、より短い10〜25ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸であり、増幅すべき目的核酸と完全またはほぼ完全に一致するように設計される。プローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に“特異的”である;すなわち、それらは好ましくは高緊縮ハイブリダイゼーション条件(最高融解温度Tmに相当する;たとえば50%ホルムアミド、5×または6×SCC。SCCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Naである)下でハイブリダイズする。前記のハイブリダイゼーションおよび検出法に用いる核酸プライマーまたはプローブをキットとして組み込むことができる。そのようなキットは、コンセンサスプライマーおよび分子プローブを含む。好ましいキットは、増幅が起きたかどうかを判定するために必要な構成要素も含む。キットは、たとえばPCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応制御プライマー;ならびに特異的配列を増幅および検出するための指示も含むことができる。
【0068】
[0087] 特定の態様において、本発明の方法は卵丘細胞から抽出した全RNAを用意し、それらのRNAを増幅させ、そして特異的プローブにハイブリダイズさせる段階を含む;より具体的には定量または半定量RT−PCRによる。
【0069】
[0088] 他の好ましい態様において、発現レベルをDNAチップ分析により測定する。そのようなDNAチップまたは核酸マイクロアレイは支持体に化学結合した種々の核酸プローブから構成され、支持体はマイクロチップ、ガラススライドまたはマイクロスフェアサイズのビーズであってもよい。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカもしくはシリカ系材料、カーボン、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースで作成することができる。プローブは、核酸、たとえばcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含むことができ、それらは約10〜約60塩基対であってもよい。発現レベルを測定するために、被験対象からの試料を場合によりまず逆転写したものを標識し、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触させて、マイクロアレイ表面に付着したプローブ配列に相補的な標的核酸との間に複合体を形成させる。標識付きのハイブリダイズした複合体を次いで検出し、定量または半定量することができる。標識化は種々の方法で、たとえば放射性標識法または蛍光標識法を用いて達成できる。マイクロアレイハイブリダイゼーション法の多数の変法を当業者は利用できる(たとえば、Hoheisel, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7: 200-210による総説を参照)。
【0070】
[0089] これに関して、本発明はさらに、表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つに対して特異的な核酸を保有する固体支持体を含むDNAチップを提供する。
【0071】
[0090] これらの遺伝子の発現レベルを測定するための他の方法には、それらの遺伝子がコードするタンパク質の量の測定が含まれる。
[0091] そのような方法は、試料中に存在するマーカータンパク質と選択的に相互作用しうる結合パートナーと試料を接触させることを含む。結合パートナーは一般に抗体であり、それはポリクローナルまたはモノクローナルであってもよく、好ましくはモノクローナルである。
【0072】
[0092] タンパク質の存在は、標準的な電気泳動法および免疫診断法(イムノアッセイ法、たとえば競合、直接反応、またはサンドイッチタイプのアッセイ法を含む)を用いて検出できる。そのようなアッセイ法には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:ウェスタンブロット法;凝集試験;酵素標識および仲介型のイムノアッセイ、たとえばELISA;ビオチン/アビジンタイプのアッセイ法;ラジオイムノアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降法など。これらの反応は一般に、標識、たとえば蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識または色素分子の解明、あるいは抗原およびそれと反応した抗体(単数または複数)の間の複合体の形成を検出するための他の方法を含む。
【0073】
[0093] 上記のアッセイ法は一般に、液相中の結合していないタンパク質を、抗原−抗体複合体が結合した固相支持体から分離することを伴う。本発明の実施に使用できる固体支持体には、ニトロセルロース(たとえば、膜またはマイクロタイターウェルの形のもの);ポリ塩化ビニル(たとえば、シートまたはマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(たとえば、ビーズまたはマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリデン;ジアゾ化紙;ナイロン膜;活性化ビーズ、磁気反応性ビーズなどの支持体が含まれる。より具体的にはELISA法を使用でき、その際、マイクロタイタープレートのウェルを被験タンパク質に対する抗体でコートする。次いで、マーカータンパク質を含有するかまたは含有する疑いのある生体試料を、コートされたウェルに添加する。抗体−抗原複合体が形成しうるのに十分な期間のインキュベーション後、プレート(単数または複数)を洗浄して、結合していない部分を除去し、検出可能な状態に標識した二次結合分子を添加する。二次結合分子を捕獲されているいずれかの試料マーカータンパク質と反応させ、プレートを洗浄し、そして二次結合分子の存在を当技術分野で周知の方法を用いて検出する。
【0074】
[0094] あるいは、免疫組織化学的(IHC)方法が好ましい場合がある。IHCは特に試料または組織検体中の標的をインサイチュー検出する方法を提供する。試料の全体的な細胞統合性はIHCにおいて維持されるので、目的とする標的の存在と位置の両方を検出できる。一般に試料をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、切断して染色およびその後の光学顕微鏡による検査のための切片にする。現在のIHC法は、直接標識化、または二次抗体を基礎とするかもしくはハプテンを基礎とする標識化のいずれかを用いる。既知のIHCシスチムの例には、たとえばEnVision(商標) (DakoCytomation)、Powervision(登録商標) (Immunovision,アリゾナ州スプリングデール)、NBA(商標)キット(Zymed Laboratories Inc.,カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、ヒストファイン(HistoFine) (登録商標) (ニチレイ社,日本東京)が含まれる。
【0075】
[0095] 特定の態様において、組織切片(たとえば、卵丘細胞を含む試料)を、目的遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体と共にインキュベートした後、スライドまたは他の支持体上にマウントすることができる。次いで、適切な固体支持体にマウントしたこの試料の顕微鏡検査を行なうことができる。顕微鏡写真を作成するためには、試料を含む切片をガラススライドまたは他の平坦な支持体上にマウントし、選択的染色により目的タンパク質の存在を強調することができる。
【0076】
[0096] したがって、IHC試料はたとえば下記を含むことができる:(a)卵丘細胞を含む標本、(b)それらの細胞の固定および包埋、ならびに(c)それらの細胞試料中の目的タンパク質の検出。ある態様において、IHC染色法はたとえば下記の段階を含むことができる:組織の切取りおよびトリミング、固定、脱水、パラフィン浸潤、薄い切片への切断、ガラススライド上へのマウンティング、ベーキング、脱パラフィン、再水和、抗原回復(retrieval)、遮断段階、一次抗体の適用、洗浄、二次抗体(場合によっては適切な検出可能な標識に結合したもの)の適用、洗浄、対比染色、および顕微鏡検査。
【0077】
[0097] 本発明はまた、前記の方法を実施するためのキットに関するものであり、その際、キットは卵母細胞または胚が受容能をもつかどうかの指標となる表4中の227の遺伝子またはABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち少なくとも1つの発現レベルを測定するための手段を含む。
【0078】
[0098] 卵丘細胞における表4中の227の遺伝子および14遺伝子のセットの発現が移植に際しての卵母細胞の受容能および胚の発生と相関することを本発明者らがいかにして決定したかについての以下の記載および実施例により、本発明をさらに説明する。ただし、決してこれらの例および記載が本発明の範囲を限定するとは解釈すべきでない。
【実施例】
【0079】
[0099] これを行なった手段の例を以下に詳細に記載する。
[00100] 本発明を実施するための第1観点は、女性および潜在的に他の哺乳動物の妊娠シグナチャーを構成する遺伝子を同定することを伴い、妊娠受容能をもつかまたはもたない女性ドナーから採集した卵丘細胞における遺伝子の発現を同定および比較することにより達成された。これは、ドナー女性の種々のヒト卵母細胞から卵丘細胞を採集し、そして患者に1または2個の想定受精卵を移植することにより行なわれた。これらの患者を次いで移植の結果に基づいて、完全妊娠、部分妊娠および妊娠なしに基づき3グループに分けた。この方法に用いた卵母細胞それぞれについて、54,000以上の転写体を含むAffymetrix HG 133 Plus 2アレイを用いてその卵母細胞を囲む少なくとも1つの卵丘細胞の転写プロフィールを決定した。患者が表1に定める除外基準のいずれにも該当しない場合にのみ試験に含めた。
【0080】
表1:患者の除外基準
【0081】
【表1】
【0082】
[00101] より具体的には、卵母細胞が健全な幼児を産生する能力の予測に役立つ遺伝子シグナチャーを見出すために、本発明者らは54,000以上の転写体を含むAffymetrix HG 133 Plus 2アレイを用いて、その卵母細胞を囲む少なくとも1つの卵丘細胞のトランスクリプトームをプロファイリングした。個々の卵丘試料からの全RNAをPicoPure RNA単離キット(Molecular Devices,カリフォルニア州サニーベール)により単離した。少量のRNAをマイクロアレイ分析に必要なレベルにまで確実に一貫して増幅するのを保証する自社開発プロトコルにより試料RNAを増幅した(Kocabas, et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 103, 14027-14032 (2006))。
【0083】
[00102] 得られた増幅RNA(aRNA)をAffymetrixアレイにハイブリダイズさせた。どの胚移植も妊娠成功をもたらさなった36の試料(不成功(No success)に関するNと表示)およびすべての移植が妊娠成功をもたらした30の試料(完全妊娠(Full success)に関するFと表示)を用いた。妊娠成功に影響を及ぼす既知の混同因子はなく、年齢またはIVFサイクル数など関連の臨床パラメーターはFとNのグループ間で有意差がなかった。
【0084】
[00103] 品質管理(QC)パラメーターを65試料すべてについて、製造業者(Affymetrix)から無料で入手できるExpression Console(商標)(EC)ソフトウェアにより計算した。スケーリングファクター(全体的チップ強度の2%調整平均(trimmed mean)を同等化するために必要な係数)、存在(present)と呼出されるプローブセットのパーセント、スパイクおよびラベリングコントロールについての3’−5’比、ならびにハウスキーピング遺伝子を含めたすべてのQCパラメーターが、すべての試料について許容範囲内であった(製造業者のガイドラインの記載に従った)。妊娠成功に影響を及ぼす既知の混同因子はなく、年齢またはIVFサイクル数など関連の臨床パラメーターはFとNのグループ間で有意差がなかった(t−検定 p>0.05)(表1を参照)。許容のための追加の基準には、多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome)(PCOS)が存在しないこと、化学療法歴または腹部もしくは骨盤への放射線照射歴がないこと、>4cmの壁内または粘膜下類線維腫が存在しないこと、また雄性側には、精巣生検歴がないこと、および精子数>500万であることが含まれていた。
【0085】
[00104] 予測モデルの確実性を証明するために、FおよびN試料をトレイニングセットと検証セットにランダムに分けた。目標は、トレイニングセットに発現した予測遺伝子セットを見出し、次いで予測モデルの開発に用いていない検証セットにおいてこれらの予測遺伝子の性能を検定することであった。この戦略は(すべての試料をシグナチャーの開発に用いるのとは異なり)過剰当てはめ(over-fitting)を防ぎ、予測シグナチャーの頑健性(robustness)の評価を得ることができる(Nevins, J.R. and Potti, A. (2007) Mining gene expression profiles: expression signatures as cancer phenotypes, Nat Rev Genet, 8, 601-609.)。
【0086】
[00105] 表2に示すように、33試料(15F;18N)をトレイニングセットに用い、32試料(15F;18N)を検証セットに用いた。
[00106] トレイニングセットおよび検証セットに用いた試料を表2に示す。
【0087】
表2.予測の目的でトレイニングセットおよび検証セットに用いた試料
【0088】
【表2】
【0089】
[00107] 図1に、本発明者らは、全遺伝子を用いた、FおよびNの全試料(65試料)、トレイニングセットの試料(33試料)および検証セットの試料(32試料)のクラスタリングを示す。類似度の距離(metric of similarity)としてピアソンの相関(Pearson's correlation)を用いる平均連鎖法(average linkage method)を利用し、行正規化(row normalization)に従って、試料を階層的クラスタリング法(hierarchical clustering)でクラスタリングする;Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA。
【0090】
[00108] クラスタリング過程で、チップ上の完全転写プロファイリング、すなわち54K+転写体すべてを用いる。3データセットすべてのクラスタリングが、妊娠成功に基づく分離がないことを指摘している。これは、発現結果を成功と相関させる表現型特異的遺伝子の同定を見出して最終的に予測遺伝子セットを同定するためには、管理下での学習分析が必要であることを示唆する。
【0091】
[00109] 成功と相関する遺伝子を見出すために、t−検定に基づく差次発現を示す遺伝子(多重仮説検定のためにボンフェロニ補正(Bonferroni correction)してp<0.05)をトレイニングセット(F対N)において同定した。得られた“記述遺伝子(descriptive gene)”と呼ばれる1180の遺伝子を用いてトレイニングセットおよび検証セットを個別にクラスタリングした(図2)。その結果は、特にトレイニングセットにおいてNとFの試料の分離に成功したことを示す;このセットの試料は、表4中の妊娠シグナチャー遺伝子ならびにABCA6、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、KRAS、NCAM1、NDNL2、OLFML3、PTPRA、SDF4、SLC26A3およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子を同定するために用いられたからである。
【0092】
[00110] 次いで、これらの1180の遺伝子を用いて1点排除交差検証法(leave-one-out-cross-validation)(L1OXV)をトレイニングセットにおいて実施した。この方法では、予測遺伝子セット中の最初の遺伝子数(複数)、たとえばPを固定する。次いでトレイニングセット中の1試料を排除し、残りの試料を用いてNとFを識別するトップP個の遺伝子(複数)を計算する。これらP個の遺伝子(複数)を用いて、排除される試料をNまたはFと予測する。この操作をトレイニングセットの33試料すべてについて繰り返す(一度に1つを排除する)。適正予測の総数をトレイニングセットにおける予測子の精度として挙げる。
【0093】
[00111] L1OXV過程で種々の数値のP、すなわち予測遺伝子数を試みて、良好なL1OXV予測精度を示すものについて、これらの遺伝子を検証セットに適用する。検証セットにおいて適正に予測された試料数を検証セットにおける予測精度としてレポートする。高いトレイニング精度および検証精度が得られる最小のP、すなわち精度グラフが平坦になるPを予測遺伝子セットとしてレポートする。用いた予測アルゴリズムは、重み付き投票法(Weighted Voting)(Golub et aL, Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring, Science, 286, 531-537(1999)、ベイズ複合共変量法(Bayesian Compound Covariate);(Wright et 1., Proc Natl Acad Sci U S A, 100, 9991-9996 (1999));対角線形識別法(Diagonal Linear Discriminant)(Dudoit et aL, citation, 97, 77-87);最近接重心法(Nearest Centroid)、k−最近接法(k-Nearest Neighbors)(Golub et al., Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring, Science, 286, 531-537 (1999));シュランケン重心法(Shrunken Centroids)(Tibshirani et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 6567-6572 (2002));支援ベクターマシーン(Support Vector Machines)(Radmacher, et al., J Comput Biol, 9, 505-511 (2002))、および複合共変量法(Compound Covariate)(Hedenfalk et aL, N Engl J Med, 344, 539-548 (2001))であった。
【0094】
[00112] 本発明者らの分析では重み付き投票法が227遺伝子の予測子セットについて最良の予測を行ない、97%のL1OXV精度(32/33の適正予測)および88%(28/32適正予測)の検証セット精度を与えた。“予測遺伝子”と呼ぶこれら227の遺伝子は、フィッシャー検定(Fisher's test)を用いてトレイニングセットと検証セットの両方に関して有意(p<0.05)の予測結果を与えた。予測結果を表3に示す。
【0095】
[00113] 表3.トレイニングおよび検証データセットについての予測結果
【0096】
【表3】
【0097】
[00114] 図3に、227の予測遺伝子リストを用いたトレイニングセットおよび検証セットのクラスタリングを示す。トレイニングセットにおいて不適正予測された試料のみはクラスタリングにおいても誤置される(misplaced)が、検証セットクラスタリングにおけるFおよびN試料の混合挙動は重み付き投票法によりなされた貢献を強調することに注目されたい。
【0098】
[00115] 以上に基づいて、本発明者らは、卵丘細胞におけるその発現を評価できる一組のヒト遺伝子(表4に含まれる)を同定し、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞(または被験卵丘細胞を単離するために用いた同じドナーに由来する卵母細胞)の妊娠潜在性を評価するために、正常な卵母細胞に相関するそれらの遺伝子の発現レベル、すなわち生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴するものと比較した。追加試料の分析によって、その発現を卵丘細胞において評価することができる好ましい14遺伝子のセット(表12に含まれる)を同定し、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞(または被験卵丘細胞を単離するために用いた同じドナーに由来する卵母細胞)の妊娠潜在性を評価するために、正常な卵母細胞に相関するそれらの遺伝子の発現レベル、すなわち生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞に随伴するものと比較した。
【0099】
[00116] これらの遺伝子のリストは臨床関連のものであるが、より最適な妊娠シグナチャー遺伝子セットを同定するために、これら227および14の予測遺伝子のリストを機能分析し、さらに検証して、さらに改良できると本発明者らは期待する。
【0100】
[00117] それに関して、この表4に含まれる予測遺伝子のリストおよび表12に含まれる14遺伝子のセットを改良するために使用できる下記の手法を以下に記載する。
[00118] 本発明者らはこれら227または14の予測遺伝子(PG’s)に対する有意性を、2つの戦略を用いて指定する:i)クラスラベルを並べ替え(permute)、先に適用したものと同じ方法を用いて最適な227遺伝子の予測子を同定し、この摂動(perturbed)データセットを用いてそれらの性能を計算する;ii)元のデータセットを用いて、ランダムに選択した227遺伝子の予測子の性能を検定する。上記の戦略を用いて得た結果に対するPG’Sの性能比較を用いて、PG’Sの有意性を評価する。PG’Sを改良するために、完全データセットを別のトレイニングセットと検証セットに分け、それぞれの区画(split)について最適な予測遺伝子セットを計算する。これらの予測子を相互およびPG’Sと比較して、一貫して良好な予測子として現われる遺伝子からなる最終的な予測遺伝子セットを得る。次いでこの最終セットをそれの有意性および精度について評価する。最後に、さらにこの最終的な予測遺伝子セットを下記について分析する:i)有意に過剰呈示された(over-represented)GOカテゴリーを見出すための遺伝子個体学(Gene Ontology)(GO)機能分類、ii)既知の生物学的経路、遺伝子ネットワーク、疾患経路、小分子と薬物標的の相互作用における関与、iii)共通/個別の転写調節エレメントを同定するためのプロモーター領域分析、およびmiRNA標的分析、ならびにiv)それらの局在性、分泌潜在性、およびライゲーション特性。以下において、本発明者らはこの全作業流れを詳細に説明し、それを図4にまとめる。
【0101】
[00119] 本発明者らは、ハイスループット転写プロファイリングおよびプロテオミクスデータセットの両方を用いて糖尿病、脊髄異形成症候群、慢性肝疾患、および種々の形態の癌の予測バイオマーカーを見出すのに、本明細書に定める方法を以前に適用した(参照: Aivado et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 104, 1307-1312 2007); Jones et al., Clin Cancer Res, 11, 5730-5739 (2007); Jones, et al., J Urol, 179, 730-736 (2007); Out et al. Diabetes Care, 30, 638-643 (2007); Out et al., J Biol Chem, 282, 11197-11204 (2007); Prall et al., Int J Hematol, 89, 173-187(2009); Spentzos et al., J Clin Oncol, 23, 7911-7918 (2005)、およびZinkin et al, Clin Cancer Res, 14, 470-477 (2008)。これらの研究すべてにおいてこれらのバイオマーカーは有意の予測性をもつことが認められ、この予測子セットを定めるために用いられていなかった新しいデータセットについて実験と解析の両方により独立して検証された。
【0102】
[00120] 予測アルゴリズム
[00121] “信号対ノイズ比”(SNR)は、遺伝子gの予測値を評価するために用いられる(Golub et al., Science, 286, 531-537 (1999).)。μF(g)およびμN(g)を、それぞれF(妊娠成功)およびN(妊娠失敗)試料グループの遺伝子gの平均値とする。同様に、σF(g)およびσN(g)を、それぞれFおよびN試料グループの遺伝子gの標準偏差とする。SNR(g)=[μF(g)−μN(g)]/[σF(g)+σN(g)]と定義する。この算術式は両グループについて理想遺伝子発現ベクター付近の近隣RMを規定し、ここでM=|F|+|N|、すなわちデータセット中の試料の総数である。SNRはいずれかのグループで著しく偏った発現を伴う遺伝子を処罰し(punish)、遺伝子のメンバーシップについての符号付きランキング法(signed ranking method)を提供する。この場合、大きな正の数値はFグループについて良好な予測子の指標となり、大きな負の数値(絶対値で)はNグループについて良好な予測子の指標となる。本発明者らはまた、理想化発現パターンと特定遺伝子gの間の相関性の境界をB(g)=[μF(g)+μN(g)]/2と定義する。
【0103】
[00122] この方法で、P個の遺伝子の予測遺伝子セットG={g1,g2,...,gP}、FおよびN試料のグループ、ならびに予測すべき新しい試料Sを評価する。gi(1<i<P)の投票(vote)をVi=SNR(gi)[S(gi)−B(gi)]と定義する;ここで、S(gi)はS中の遺伝子giの信号値を表わす。Viは、S(gi)がいかに良好にFおよびN試料のgiの“挙動”に関係しているかを表わす。Viが正であればgiに基づいてSはFであると予測されると結論し、Viが負であればgiはSをNであると予測する。予測子セット中のすべての遺伝子について繰り返して、P個の投票を求め、VFをすべての正の投票の和とし、VNをすべての負の投票の和とする。絶対値でVFがVNより大きければ、試料SをFと予測する;そうでなければ、SをNと予測する。本発明者らの先の試験で、トレイニングセットを用いて頑健な予測遺伝子が得られ、これを独立した検証セットについて試験した。
【0104】
[00123] 予測遺伝子セットの有意性
[00124] 頑健な予測遺伝子セットを得るために、試料をトレイニングセットと検証セットにランダムに分ける。本発明者らは予め重み付き投票法を用いて交差検証を排除して(L1OXV)、227の予測遺伝子のセットを得た。この分析法で、TおよびVを、それぞれトレイニングセットおよび検証セットに用いたFおよびN試料の数とした。これに関して、トレイニンググループの試料のうち1つを排除し、トレイニングセット中のT−l F試料およびN試料中で最大SNRをもつP個の遺伝子を見出した。これらP個の遺伝子を用いて、前記の方法により、排除した試料をFまたはNのいずれであるか予測する。適正予測の数がトレイニングセットに関するL1OXV予測精度になり、最高予測精度をもつ最小のPを続いて検証セットについて試験する。本発明者らの予備試験で、Pは227であることが見出され、その予測精度はそれぞれトレイニングセットおよび検証セットについて97%および88%であった。
【0105】
[00125] これら227の予測遺伝子の統計的有意性も評価する。これを評価するために、2段階戦略を採用する。第1相では、トレイニングセットに用いた試料のクラスラベルをランダムにシャフルする;すなわち、ランダムサブセットのF試料をNと呼び、同様にランダムサブセットのN試料をFと呼ぶ。この摂動データセットを用いて、トレイニングセットに関して227の遺伝子の重み付き投票法によるL1OXV精度を計算する。この設定で、並べ替えたクラスラベルを用いて最高SNR値をもつ227の遺伝子を選択する。クラスラベル並べ替えをB回実施し、b回目の並べ替えL1OXV精度をAbとする。本発明者らの元の227遺伝子の予測子セットのL1OXV精度の有意性をp=1/BΣI(Ab>97%)と評価し、ここで、Iは指示関数であり、Ab>97%であれば1、その他の場合は0の数値と仮定する。同様に、A’bを、検証セットに関してb回目の並べ替えを用いて得た227遺伝子の予測精度とする。次いで、検証セットに関して本発明者らの227遺伝子の予測子セットの予測精度有意性をp=1/BΣΙ(Α’b>88%)と評価する。
【0106】
[00126] 有意性を評価するための第2相では、元のクラスラベルを維持するが、ランダムに227遺伝子のセットを取り出し、トレイニングセットに関するそれらのL1OXV精度および検証セットにおける予測精度を評価する。このランダム選択をB回実施し、AbおよびA’bを、それぞれb回目の選択についてのトレイニングセットに関するL1OXV精度および検証セットにおける予測精度とする。同様に、L1OXV精度についての有意性をp=1/BΣI(Ab>97%)として計算し、検証セットの予測精度についての有意性をp=1/BΣΙ(Α’b>88%)として計算する。両相においてB=1000である。
【0107】
[00127] 予測遺伝子セットのさらなる改良
[00128] 227遺伝子の予測子セットをさらに改良するために、同様にトレイニングセットおよび検証セットの種々の区画を使用し、得られる遺伝子セットの重なりを調べる。良好に規定された予測子を見出すために、改良プロセスでは本発明者らの全データセットをトレイニングセットと検証セットに半分に分けるのではなく;むしろ75%の試料をトレイニングセットに用い、25%の試料を検証セットに用いる。さらに、L1OXVの代わりに10倍交差検証戦略を適応する。この場合、トレイニングセットに関して予測子を見出す際、一度に1つの試料を排除するのではなく;代わりにトレイニングセット中の試料の総数の10%を排除する。各反復に際して残り90%の試料を用いて予測子セットを計算し、この予測子セットで、排除した10%の試料を予測する。次いで適正予測の総数を用いて予測精度を計算する。
【0108】
[00129] 各データ区画について、検証セットに関する予測精度および予測遺伝子セットの有意性を前記に従って評価する。次いで各区画で見出した予測遺伝子セットを相互に、および元の227遺伝子の予測子セットと交差させて、一貫して良好な予測子として現われる遺伝子を見出す。このために、交差検証法を用いて、全データセットに関してより改良された予測遺伝子セットを形成し、それの予測精度および有意性を計算する。
【0109】
[00130] クラスタリングおよび機能分析
[00131] 算術平均付き重みなし対グループ法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic-mean)(UPGMA)(Sneath, P. (1973) Numerical taxonomy; the principles and practice of numerical classification. W. H. Freeman, San Francisco, CA USA)、類似度木(similarity tree)構築のために用いた階層的クラスタリング(hierarchical clustering)法、および主成分分析(principal components analysis)(PCA)(Otu, et al., J Biol Chem, 282, 11197-11204 (2007))を用いて、試料および遺伝子のクラスタリングを実施する。階層的クラスタリング法では、平均連鎖クラスタリング(average linkage clustering)を適用する前に発現データマトリックスを各遺伝子について行正規化(row-normalized)し、ピアソンの相関(Pearson's correlation)を距離の尺度として用いる。元の分散を可能な限り多く維持しながら多変量データ対象物をより低次元空間内へ射影するPCAでは、各試料を平均ゼロおよび標準偏差1まで正規化する。
【0110】
[00132] 機能分析は、それ以上の調査の根拠となる目的遺伝子リスト中に遺伝子個体学(Gene Ontology)(GO)カテゴリーを見出すことからなる(Ashburner, et al., Nat Genet, 25, 25-29 (2000))。発現分析の系統的探索法(Expression Analysis Systematic Explorer)(EASE)は、そのセットにおいて過剰呈示され(over-represented)、したがってさらに関心がもたれる可能性のある、生物学的関連カテゴリーを同定する(Hosack et al., Genome Biol, 4, R70) (2003)。
【0111】
[00133] これを達成するために、EASEは各プローブをGOカテゴリーに付随するEntrez Gene identifier (Maglott, et al., Nucleic Acids Res, 35, D26-31 (2001))にマッピングする。GO Consortium (Geneontology. org)は、各遺伝子を(適用可能な場合は)3つのGOカテゴリー中の1以上のクラスに指定する:生物学的機能、細胞プロセス、および分子機能。EASEは入力遺伝子リスト中の過剰呈示されているGOカテゴリーを、フィッシャー正解確率(Fisher exact probabilities)のジャックナイフ反復リサンプリング(jacknife iterative resampling)を用いて同定し、ボンフェロニ多重検定補正(Bonferroni multiple testing correction)する。“EASEスコア”はジャックナイフフィッシャー正解確率の分布の上限である。少ない数の遺伝子を含むカテゴリーは標準重みに達しない(under-weighted)ので、EASEスコアはフィッシャー正解検定より頑健である。EASE分析は予測遺伝子リストをチップ上の全遺伝子に対して検定し、EASEスコアは入力リスト中のGOカテゴリーの過剰呈示の尤度(likelihood)について計算される。過剰呈示は、与えられた入力リスト中に、分布がランダムであれば出現するであろうと予想されたより頻繁に現われる特定のGOカテゴリー、たとえば細胞周期、に属する遺伝子のグループを記述する。EASEスコアは有意性レベルであり、小さいEASEスコアほど過剰呈示における信頼性が増すことの指標となる。0.05以下のEASEスコアをもつGOカテゴリーを有意に過剰呈示しているとして選択する。
【0112】
[00134] 経路分析
[00135] 経路分析、機能強化分析(functional enrichment analysis)、または遺伝子セット分析は、マイクロアレイ試験で有意に調節される前決定した遺伝子セットまたはクラスに注目する。Ingenuity Software Knowledge Base (IKB)(カリフォルニア州レッドウッドシティー)を用いて、基礎となる転写調節を最も良く説明するネットワークおよび経路を同定する。IKBは、頑健な相互作用データベースを提供する科学文献の手動管理(manual curation)に基づく、遺伝子および/または遺伝子産物間の相互作用を利用する。目的とする遺伝子リストが分析されると、結果を2方法で考察する:i)入力遺伝子リストおよび限定的な拡張を用いて形成されたネットワーク、ii)入力遺伝子のサブセットを有意に宿す既知の生物学的経路。両方の結果を、最終遺伝子ネットワークと部分的に相互作用することが知られている薬物、低分子代謝産物、機能、および疾患に関してさらに分析することができる。この方法で、本発明者らの予測遺伝子セットによって最も良く説明される経路を同定し、これらのネットワークに対するさらなる摂動を推論する。さらに、前決定した正準経路(canonical pathway)に必ずしも属さない新しい相互作用ネットワークを作成することができる。
【0113】
[00136] プロモーターおよびmiRNA標的の分析
[00137] 本発明者らの予測シグナチャー中の遺伝子の5kb上流を調べ、同定したこれらの領域を、プロモーター分析および相互作用ツール(promoter analysis and interaction tool)PAINT(Vadigepalli et al, OMICS, 7, 235-252 (2003))およびoPOSSUM(Ho Sui et al., Nucleic Acids Res, 33, 3154-3164 (2005))を用いて分析する。これらの方法は、入力遺伝子リストのプロモーター領域のモデルを作成し、これらの領域の転写調節エレメント(trascription regulatory element)(TRE)を同定する。次いでそれらの結果をTREの過剰呈示について分析し、基礎となるマイクロアレイデータに関して遺伝子調節に重要な潜在的転写因子を見出す。
【0114】
[00138] 予測遺伝子のもうひとつの潜在的調節機序はmiRNAによるものであり、これは主に転写後抑制またはmRNA分解によって配列特異的な様式で遺伝子発現を調節する。TargetScanS(http://www.targetscan.org/)を用いて、予測遺伝子についてmiRNA標的部位を同定することができる。TargetScanSはTargetscanの改良バージョンであり、UTRを2〜8塩基のmiRNAに対する完全ワトソン−クリック相補セグメントについて検索し、各miRNA標的部位相互作用についてRNAevalによりフォールディング自由エネルギーGを計算し、次いで各UTRにZスコアを指定する(Lewis et al., Cell, 115, 787-798 (2003))。こうして、入力遺伝子リストにおけるmiRNA標的が、miRNA結合部位のコンピューター処理により同定される。
【0115】
[00139] 分泌タンパク質および膜リガンドの予測
[00140] 細胞内でのタンパク質の局在性および輸送は、それらのアミノ酸配列中の固有のシグナルにより支配されている。本発明者らの予測遺伝子リストを、これに関してそれらがコードするタンパク質により分析することができる。タンパク質のアノテーションがそれの局在性、分泌ポテンシャル、ライゲーションその他の特性について情報を伝えるのに十分な場合、標的をそれ以後の試験のために単離するには手動でのフィルタリングで十分であろう。実質的なアノテーションがない場合、高精度コンピューターアルゴリズムTargetPを用いてタンパク質の上記特性を予測することができる;これは、神経回路網を利用し、タンパク質のN末端の特徴を考慮に入れる(Emanuelsson et al. Nat Protoc, 2, 953-971 (2007))。分泌タンパク質を予測する場合、タンパク質の分泌ポテンシャルを低下させる膜貫通ドメインをもつものをフィルタリングで除去することが役立つ。これらのタンパク質における膜貫通ドメインの予測は、予測のために隠れマルコフ・モデル(hidden Markov model)を用いる独立バージョンのTMHMMを用いて行なわれる(Sonnhammer et al., Proc Int Conf Intell Syst Mol Biol, 6, 175-182 (1998))。PSORT9に規定された方法によりこの分析を補足することもできる(Horton et al, Nucleic Acids Res, 35, W585-587 (2007));これは、それの予測戦略において、k−最近接分類法、およびギャップなし多重アラインメントから得られる重み付きマトリックスを使用する。
【0116】
[00141] 別の戦略
[00142] さらに、場合により2方法で本発明者らの分析を向上させることができる。
[00143] 信号値の計算および正規化:モデルを基礎とする方法、たとえばdChip(Li et al., Genome Biol, 2, RESEARCH0032 (2001).)およびRMA(Irizarry et al., Nucleic Acids Res, 31, el5. (2001))を用いて遺伝子チップデータを正規化および要約することができ、これらはAffymetrix MAS 5.0正規化(Hubbell et al., Bioinformatics, 18, 1585-1592.(2002))より優れていることが示されたが、本発明者らはこれらの方法の使用を避けた;それらはベースライン試料に依存し、新しい試料の追加に適応しないからである(Barash et al., Bioinformatics, 20, 839-846 (2004))。言い換えると、新しい試料をデータセットに追加するので、それ以前のモデルに基づく信号分析は無効になり、したがって完全な分析ワークフローが繰り返される。本発明者らのデータセットは絶えず増大し、以前の所見を新たに追加した試料において検証する必要があるので、本発明者らはMAS 5.0、すなわち新しい試料の追加に対して頑健な信号値計算および正規化方法を用いる。AffymetrixからのExpression Console中のProbe Logarithmic Intensity Error(PLIER)ワークフローと呼ばれる新しい方法(www.affymetrix.com)は、四分位点正規化(quintile normalization)を含み、プローブアフィニティー、経験的プローブ性能の利用によって、また低濃度および高濃度付近の誤りを適宜処理することによって、改良された信号値を提供する(Katz et al., BMC Bioinformatics, 7, 464 (2006)。PLIERは新しい試料の追加に対してMAS 5.0ほど頑健ではないが、それはモデルを基礎とする方法と比較してより良好な性能を備えており、したがって信号値計算および正規化のための本発明者らの別の戦略である。
【0117】
[00144] 予測アルゴリズム:
[00145] 本発明者らの先の試験において最良の性能をもつ予測アルゴリズムであった重み付き投票法のほかに、本発明者らの結果が本出願に述べる成功基準に一致しない場合は下記の予測アルゴリズムを試みる計画を立てる:ベイズ複合共変量法(Bayesian Compound Covariate)(Dudoit et al., Journal of the American Statistical Association, 97, 77-87 (2002); Wright et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 100, 9991-9996 (2003))、対角線形識別法(Diagonal Linear Discriminant)、最近接重心法(Nearest Centroid)、k−最近接法(k-Nearest Neighbors)(Golub et al., Science, 286, 531-537 (1999)、シュランケン重心法(Shrunken Centroids)(Tibshirani et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 99, 6567-6572 (2002)、支援ベクターマシーン(Support Vector Machines)(Radmacher et al., J Comput Biol, 9, 505-511 (2002))、および複合共変量法(Compound Covariate)(Hedenfalk et al., N Engl J Med, 344,539-548 (2001))。
【0118】
[00146] qRT−PCRを基礎とするTaqman(商標)Low Density Arrays(LDA)を用いる予測遺伝子セットの検証
[00147] Taqman LDA(Applied Biosystems)は、384の遺伝子をごく少量のRNAから高い適合度で同時qRT−PCR分析できるマイクロフルイドプレート(microfluidic plate)である。単一の特注LDAを用いて2セットの遺伝子を検証する:1.)予備マイクロアレイ試験で同定したPG’S、および2.)本発明者らの共同研究者Dagan Wells(オックスフォード大学)が提供したセット。独立した試験で、Wellsらは卵母細胞に異数性で随伴する卵丘細胞に発現する遺伝子のセットを同定した。細胞遺伝学研究により、平均年齢32の女性において1/4の卵母細胞が異数体であることが明らかになった(Fragouli Cytogenet Genome Res; 114:30-38 (2006)。これらの遺伝子セットの両方を合わせることによって、より最適でより強力な妊娠シグナチャーを同定することができる。
【0119】
[00148] それに基づいて、本発明者らの特注LDAで処理するために先にマイクロアレイ分析を行なった65の組から25のF(完全妊娠成功)および24のN(妊娠成功なし)卵丘細胞試料をランダムに選択する。これらのcDNA(マイクロアレイ分析から残ったもの)を調製し、ABI 7900HTマシーンでLDA当たり1試料をApplied Biosystems' Taqman LDA指示に従って処理する。各転写体の絶対定量を実施する。得られた増幅データを7000 System SDSソフトウェア(Applied Biosystems)により分析し、各遺伝子の強度値を対照遺伝子に対して正規化する。
【0120】
[00149] マイクロアレイ結果との比較
[00150] スピアマンの順位相関(Spearman's rank correlation)およびマン−ホイットニーU検定(Mann-Whitney U test)を適用して、試料全体にわたってマイクロアレイおよびLDAにより得た各遺伝子につき発現レベルを比較する。パラメトリックモデルにおける分布仮定は2プラットホームでは有効でない可能性があり、かつ基礎となる手法および正規化法の差のため2プラットホーム間の信号値を比較できない可能性があるので、これらのノンパラメトリック法および順位に基づく方法を採用する。試験した遺伝子それぞれについて、LDAに用いたFとNの試料間の変化倍率も計算する。この変化の方向がマイクロアレイ結果にみられるものと一致し、2プラットホーム間で遺伝子発現プロフィールが有意には変化しないままであり(p>0.05)、相関性が高い(r>0.9)ならば、これらの遺伝子を検証されたとラベル付けする。LDA実験に用いた試料に対する検証された遺伝子の予測力を、LDAとマイクロアレイ両方の信号値を別個に用いて評価する。同様に、検証された遺伝子の予測精度を、マイクロアレイ信号値を用いた完全データセットを用いて評価する。これらの予測プロセスで、試料をトレイニングセットと検証セットに分け(75%−25%の区画)、そしてトレイニングセットについてモデルを構築してそれを検証セットについて検査することにより、予測精度を計算する。この予測戦略において、前記の重み付き投票法を適用する。
【0121】
[00151] 別の戦略
[00152] 予測遺伝子がLDAプラットホームにおいて前記のように検証されない場合、または検証された遺伝子を用いて良好な予測結果が得られない場合、予測戦略を改変し、予測遺伝子シグナチャーの頑健性を犠牲にすることによって、より高い精度および妊娠予後と良好に相関する遺伝子を得ることができる。この目的のために、元のデータセットをトレイニングセットと検証セットに分けずに予測遺伝子シグナチャーを計算する。代わりに、完全なマイクロアレイデータセットを用いて予測子を構築し、前記に従ってそれの精度を計算し、それの統計的有意性を評価する。この予測戦略に際して、重み付き投票法を用いて完全データセットに適用する10倍排除交差検証法(leave-ten-fold-out cross validation)を用いる。
【0122】
[00153] 他の試料への妊娠予測子の適用
[00154] 15のF(完全妊娠成功)および15のN(妊娠成功なし)の新しい卵丘細胞試料を採集する。前記に従ってRNAを単離する。ABI's High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキットを用いて逆転写を完了させ、特注の予備増幅プール(ABI)を用いてcDNAの増幅を完了させる。予備増幅およびqRT−PCRサイクリングは、ABI 7900HTマシーンにより、LDA当たり1試料で、Applied Biosystems' Taqman LDA指示に従って逐次行なわれる。各転写体の絶対定量を行なう。得られた増幅データを7000 System SDSソフトウェア(Applied Biosystems)により分析し、各遺伝子の強度値を対照遺伝子に対して正規化する。
【0123】
[00155] LDAプラットホームにおいて検証した最終的な予測遺伝子を用いて、前向き研究における試料からなる完全データセットに関して予測モデルを構築する。次いで、後向き研究で得た信号値を用いて、このモデルを新しい試料に適用する。この予測戦略で、前記に述べた重み付き投票法を適用する。
【0124】
[00156] 別の戦略
[00157] 場合によっては、より厳密な信号値を得るために、後向き研究で実施した実験を繰り返すか、あるいは本発明者らの検証努力の統計的パワーを潜在的に増強するために、用いる試料数を増加してもよい。
【0125】
[00158] したがって、以上に基づいて、好ましい態様において本発明方法は、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生する女性対象または産生しない女性対象を、表4に含まれる差示発現する遺伝子のセットもしくは表12に含まれる14遺伝子のセットまたは対応するコードされたポリペプチドの発現レベルに基づいて同定するために用いられる。ただし本発明方法は、ヒト以外の動物、たとえばイヌ、コウモリ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物、鳥類、両生類、爬虫類などにも適用できる。たとえば、本発明を用いて、すなわち表4中の妊娠シグナチャー遺伝子もしくは表12に含まれる14遺伝子のセットまたはその相補体のうち1以上の発現を調節する化合物をスクリーニングすることにより、想定雌性受精処置の研究のための動物モデルを誘導することができる。さらに本発明を用いて、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生する能力を排除または阻害する異常、たとえば卵巣機能障害、卵巣嚢胞、閉経前もしくは閉経状態、癌、自己免疫障害、ホルモン機能障害、細胞増殖障害、または妊娠受容能をもつ卵母細胞の発生を阻害もしくは排除する他の状態を伴う雌性対象を同定することができる。
【0126】
[00159] たとえば、特異的な妊娠シグナチャー遺伝子を特徴的な発現レベルで発現しない対象をスクリーニングして、それらが妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生するのを排除する基礎健康状態を伴うかどうかを評価する。特に、そのような対象をスクリーニングして、それらが閉経の徴候を示しているかどうか、癌、自己免疫疾患または卵巣異常、たとえば卵巣嚢胞を伴うかどうか、あるいは“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を産生するのを排除する可能性のある他の健康状態、たとえばホルモン障害、アレルギー性障害などを伴うかどうかを評価する。
【0127】
[00160] さらに本発明を用いて、ヒトまたはヒト以外の雌性対象における想定雌性受精処置の有効性を評価することができる。本質的に、そのような方法は下記を含むであろう:雌性対象、好ましくは女性を、想定妊娠増強処置により処置し、処置後に少なくとも1個の卵母細胞および随伴する周囲卵丘細胞をその女性から単離し、場合によりさらに処置前に少なくとも1個の卵母細胞および随伴する周囲細胞をその女性から単離し、単離した卵母細胞それぞれから少なくとも1個の卵丘細胞を単離し;妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する(を囲む)卵丘細胞が特徴的レベルで発現するかまたは特徴的レベルで発現しない少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出し;その処置が、妊娠受容能をもつ卵母細胞を囲む卵丘細胞に(処置しない場合より)より特徴的なレベルで少なくとも1つの妊娠シグナチャー遺伝子を発現する卵丘細胞を生じるかどうかに基づいて、その想定受精処置の有効性を評価する。前記のように、雌性ヒト対象が好ましいが、本発明方法はヒト以外の雌性動物、たとえばヒト以外の雌性霊長類、または想定ヒト受精処置の評価のための他の適切な動物モデルにおいて、想定受精処置の有効性を評価するために使用できる。
【0128】
[00161] さらにまた本発明は、体外または体内受精処置の有効性を向上させるために使用できる。特に、“妊娠受容能をもたない”または未熟であることが認められた卵母細胞を、体内または体外受精の前、途中または後に、“妊娠シグナチャー”遺伝子であると同定された遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物、たとえばホルモン、増殖因子、分化因子などを含有する培地で培養することができる。本質的にこれらの遺伝子産物の存在は、通常は“妊娠受容能をもつ”卵母細胞を囲む卵丘細胞が発現して、それらが普通は卵母細胞に栄養供給し、これによりこれらの卵母細胞が受精した際に生存可能な妊娠をもたらす能力が促進される栄養性遺伝子産物の不足を補うはずである。
【0129】
[00162] あるいは、それらの妊娠シグナチャー遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物またはそれらの遺伝子の発現を調節する化合物を、妊娠受容能をもつ卵母細胞を産生しないことが本発明の方法により見出された対象に投与してもよい。そのような投与は、非経口、たとえば静脈内、筋肉内、皮下への注射によるか、あるいは経口または経皮投与によるものであってもよい。あるいは、これらの遺伝子産物を標的部位、たとえば雌性の卵巣または子宮環境に局所投与してもよい。たとえば、雌性対象の子宮または卵巣に、“妊娠シグナチャー”遺伝子がコードする1以上の遺伝子産物またはそのような遺伝子の調節剤を持続送達する薬物送達デバイスを埋め込むことができる。
【0130】
[00163] したがって、一般に本発明は、排卵時の卵子、好ましくはヒトの卵子に由来する卵丘細胞(好ましくは卵丘細胞)が発現する遺伝子であってそれの発現レベルはその卵子が自然受精または人工受精して適切な子宮環境へ移行した際に生存可能な妊娠を生じる能力と相関する遺伝子の、同一性および相対量に関する同定および特性解明を伴う。
【0131】
[00164] 1例示態様において、本発明は、卵母細胞の受容能またはある個体が受容能をもつ卵母細胞を産生するかどうかを評価する手段として前記に例示した核酸またはタンパク質の既知の検査法を用いて、卵丘細胞による表4中のいずれかの組合わせ、すなわち少なくとも1、2、3、4、5、6、10、50、...100、200....227の遺伝子、または表12中の14のいずれかの組合わせの遺伝子の発現を、正常な卵丘細胞が発現するレベルと比較してアッセイする。
【0132】
[00165] ただし、例示態様における本発明は表4中の遺伝子および表12の遺伝子のいずれかの組合わせを選択するが、好ましい態様において本発明は、表12中の少なくとも2つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3つ、およびこれらの遺伝子14すべての発現を、卵母細胞の受容能を評価する手段としてアッセイする。さらに本発明方法は、あるいは、差示発現する卵丘細胞が発現する表4および表12中のものから選択される1以上の遺伝子であってそれらの発現が卵母細胞の受容能と相関する遺伝子の発現レベルを、その発現が同様に予測に役立つことが認められた他の遺伝子と共にモニターすることにより実施できる。
【0133】
[00166] 表4:ヒト卵丘細胞が差示発現する、妊娠受容能に関連するヒト遺伝子
【0134】
【表4−1】
【0135】
【表4−2】
【0136】
【表4−3】
【0137】
【表4−4】
【0138】
【表4−5】
【0139】
【表4−6】
【0140】
【表4−7】
【0141】
【表4−8】
【0142】
【表4−9】
【0143】
【表4−10】
【0144】
【表4−11】
【0145】
表5:差示発現データを検証するために用いたヒト遺伝子
【0146】
【表5−1】
【0147】
【表5−2】
【0148】
【表5−3】
【0149】
【表5−4】
【0150】
【表5−5】
【0151】
【表5−6】
【0152】
【表5−7】
【0153】
[00167] 表4に示すように、本発明者らはIVF成功の指標となる227の遺伝子および4128の差示発現する遺伝子を同定した。TLDAチップ上にこれらの遺伝子のうち199を呈示し、196のユニークなものを呈示した(B3GNT7、ATP8A1およびDNAJC15は2プローブセットにより呈示される)。これら196のうち141は予測セットに属し(Excelファイルの“group(グループ)”の欄にPにより呈示する)、55は差示発現セットに属する(差示発現遺伝子を見出すために全試料を用いたので、“All”にちなんでAにより呈示する)。
【0154】
[00168] TLDA実験の出力は閾値サイクル(Ct)値であり、これは“蛍光が閾値を通過する分画サイクル数(fractional cycle number)”である。これらの値は対数尺度(底2)であり、発現と反比例する。たとえば、遺伝子XおよびYに関するCt値をそれぞれ18および19とする。これはXを18サイクル目で“良好に”“検出する”ことを意味し、これはY(19サイクル目で良好に検出される)と比較して2倍大きい発現レベルとなる。したがって、XとYの間の古典的変化倍率(X/Y)を計算するためにはXをYから差し引いてそれを2の冪数とする必要がある。
【0155】
[00169] アレイ全体にわたる正規化を提供するスパイクイン対照(spike-in control)はない。おおよその正規化を行なうために、全遺伝子のCt値を試料全体について考慮し、最も安定な発現を選択する。“安定な”遺伝子(そのプレート内で)のCt値を各遺伝子のCt値から差し引くことにより、プレート(試料)内の各遺伝子についてデルタCt(dCt)値を計算する。Statminer分析により、“安定な”遺伝子はGAPDHであることが見出された。
【0156】
[00170] 本発明者らの“予測分析に用いた古い”試料からTLDAに用いた試料を下記の表6に挙げる。表中の“*”は、先の分析で不適正予測された試料に相当する。
[00171] 表6.先の分析からTLDA実験に用いた試料
【0157】
【表6】
【0158】
したがって、19のF試料および16のN試料、合計35がある。14の新しい試料についても実験した:表7に示す11のN、3のF。
表7:TLDA実験に用いた新しい試料
【0159】
【表7】
【0160】
[00172] データの質
[00173] “検出”呼出しの遺伝子について分布を検査した。遺伝子の発現レベルが決定されなければ、それに40の数値を指定する。図5に、各遺伝子について40の数値を伴う試料の数を、本発明者らの遺伝子(“Hasan遺伝子”と表示した196の遺伝子)およびTLDA上の全379遺伝子(“全遺伝子”と表示)に対して個別にプロットしたものを示す。この図には、各遺伝子についてその遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。この図では、全試料について結果を計算している。
【0161】
[00174] 本発明の遺伝子について全体として、6860(196*35)の数値のうち2237の数値が40であり、これは32.6%の測定で検出されない遺伝子があることを示す。若干の遺伝子は若干の試料中にほとんど存在しないと予想されるので、本発明の定量分析では40の数値をもつ遺伝子があっても許容される。これに対し、本発明方法では35試料すべてに検出されない遺伝子があることは許容されない。たとえば、本発明の遺伝子について、30以上の試料に検出されない遺伝子が62ある。全遺伝子を考慮すると、40の数値を伴う測定の割合は約27.4%である:13230(378*35)のうち3631。
【0162】
[00175] 図6に、40と呼び出された遺伝子の数を各試料について示す。これは、ある意味において、各試料について得た検出レベルを示す。この図に、40の数値を伴う117のHasan遺伝子および212の全遺伝子をもつ9_072407のように、最適下の全体的検出を伴う若干の試料がみられる。試料全体において40と呼び出された遺伝子の数の平均±標準偏差値は、Hasan遺伝子については63.9±14.5、全遺伝子については103.7±28.6である。
【0163】
[00176] さらに、14の“新しい”試料について同様な分析を行なった。その際、Hasan遺伝子においては2744(14*196)の数値のうち541が40であり(測定の19.7%に相当)、全遺伝子においては5292(14*378)の数値のうち896が40である(測定の16.9%に相当)ことが認められる。これらは“古い”試料においてみられるものより10%以上良好である。図7および8に、それぞれ遺伝子および試料に関してデータを分析した場合の、40の数値を伴う試料の数および遺伝子の数を示す。
【0164】
[00177] 図7は、各試料について、遺伝子が40の数値をもつ試料の数を示す。結果は14の試料について計算されている。
[00178] 本発明の遺伝子リストについて、40の数値をもつ試料が12以上ある25の遺伝子がある。図8に、各試料について40の数値をもつ遺伝子の数を示す;結果は14の“新しい”試料について計算されている。
【0165】
[00179] その際、全体的検出が不良である1試料17_100709_22がみられる;これは、古いデータセットにおいて40の数値をもつ、卵丘細胞に差示発現する“Hasan遺伝子”と呼ぶ85のヒト遺伝子のセットおよび140の遺伝子をもつ。新しいデータセット中では、試料全体において40と呼び出された遺伝子の数の平均±標準偏差値は、Hasan遺伝子については38.6±13.7、全遺伝子については64.0±22.8であり、これは前のデータセットと比較して改良されている。
【0166】
[00180] これらの結果は、新しい試料についてのTLDA検出は古い試料と比較して改良されており、遺伝子に対するある種のフィルタリングが必要であることを示唆する。このフィルタリングは、遺伝子が40の発現値をもつ、すなわち検出されない試料の数を基礎とすることができる。前記に述べたように、たとえば前の試料については試料のグループに関係なく85%を超える試料においてその遺伝子が検出されない多数の遺伝子がある。
【0167】
[00181] データ分析
[00182] 40の発現値をもつデータ点の取扱い、変化倍率の計算、および対数化した値を用いるか用いないかなど、考慮すべきさまざまなことがある。以下においてそのようなことに対処して、有望な解決策を提示する。
【0168】
[00183] スケーリング:2セットの出力が得られる:Ct値(対数化した発現レベル)およびdCt値;その際、与えられた試料について、各遺伝子のdC値はGAPDHのCt値をその遺伝子のCtから差し引くことにより計算される。Ct値は対数であるので、これは各遺伝子の発現値をGAPDHの発現値で割ることに相当する。言い換えると、それはある遺伝子とGAPDHの間の変化倍率である。これらの数値を用いて進めることは、GAPDHに対する遺伝子の変化倍率に基づいてグループ間の変化倍率を計算することを意味する。GAPDHはアレイに用いる内在対照のひとつではないので、TLDAに用いるスパイクイン対照はなく、対数目盛りでの小さな変動が実際の数値において大きな差を示す場合があり、ある程度注意してこれを調べる。それにもかかわらず、スケーリングした数値とスケーリングしていない数値の両方を用いた分析を提示する。このレポートの残りの部分について、スケーリングしていない数値は増幅ファイルで得たCt値を表わし、スケーリングした数値はGAPDHを差し引くことにより得たdCt値を表わす。
【0169】
[00184] 変化倍率:
[00185] 2つの試料AおよびBがあり、これらの試料における遺伝子Xの発現値がそれぞれaXおよびbXとする。TLDA出力においてみられるもの(Ct値)は、log(aX)およびlog(bX)である。これら2つの試料間の変化倍率を計算したい場合、Ct値を引算し、それを2の冪数とする。すなわち、FC=2 log(aX)−log(bX)。その理由は、下記の規則である:logp−logq=log(p/q)、および2 1og2p=p。ただし、Ct値は逆転しており、すなわち小さい数値ほど大きい表示を意味するので、このFCは変化倍率B/Aを与える。たとえば、Aにおいて10.8、Bにおいて12.3のCt値がみられるとすれば、これはこの遺伝子がAにおいてアップレギュレートされており、B/Aの変化倍率は2 10.8− 12.3=2 −1.5=0.35であることを意味する。言い換えると、この遺伝子はAにおいて1/0.35=2.8倍、アップレギュレートされている。この点に到達するもうひとつの方法は、まずCt値を対数解除し(unlog)、次いで既知の方法でFCを計算する;ただし、方向が逆転しており、すなわちCtワールドでは小さいほど大きいことを意味する。したがって、Aについての発現レベル=2 10.8=1782、Bについての発現レベル=2 12.3=5042、およびFCはB/A=1782/5042=0.35となる。
【0170】
[00186] 1未満のFC値は解釈が難しいので、行なうことはそれらを逆転させ、負の記号を付けることである。上記の例については、B/AについてのFCが0.35であると言う代わりに、B/AについてのFCが−1/0.35=−2.8であると言う。すべての計算において、常にF値をN値から差し引く(log目盛りを用いたとすれば)か、あるいはN値をF値で割って(log解除した値を用いたとすれば)FCをF/Nについて計算した。上記に例示したように、1未満のFCを表現するためには負の数値を用いた。
【0171】
[00187] 単純なFCを計算することはさほど複雑ではないとしても、さらに考慮すべきことがある。上記の例は2つの試料のみを含み、すなわちそれは各グループに1つの試料があるとみることができる。本発明の場合のように各グループに1つより多い試料があればどうであろうか(16N,19F)?Ct値を平均すれば、実際に発現レベルの幾何平均が得られる。次いで2グループのCt値の平均を引算し、次いで2の冪数とすると、これは2グループの幾何平均を割ることによりFCを計算することを意味する。その理由は、下記の規則である:a logX = logX aおよびlogp + logq = log(pq)。
【0172】
[00188] 一例をあげると、発現レベルa、bおよびcがグループNにあり、d、e、fおよびgがグループFにあると仮定する。TLDA出力にみられるのはloga、logbなどである。FC(F/N)を計算するために、Fにおける平均値をNにおける平均値から差し引き、次いで2の冪数とすると、下記が得られる。
【0173】
[00189] Nにおける平均値 = 1/3 [loga + logb + logc] = l/3 1og[abc] = log(abc) l/3
[00190] Fにおける平均値 = 1/4 [logd + loge + logf + logg] = l/4 1og[defg] = log(defg) l/4
[00191] FC (F/N) = 2 ^ [log(abc) l/3 - log(defg) l/4] = 2 ^ {log[(abc) l/3 / (defg) l/4]}= (abc) l/3 / (defg) l/4
[00192] 数字の幾何平均はそれらの積のn乗根であることを思い起こされたい。したがって、我々は常に対数解除した数値を用いて作業することを選択している。すなわち、本発明者らはまずCt値を2の冪数とし、次いで分析を行なった。
【0174】
[00193] 40: 40は、検出されなかった遺伝子を呈示するのに十分なほど高いとみなされた任意Ct値である。しかし、それを40ではなく42に設定すれば、結果はすべて変化するであろう。したがって、本発明者らはまず40ではないすべての数値を調べてそれらをランク付けすることによりこれを解決した。Hasan遺伝子について、これは4623の数値をランク付けすることに相当する。次いでこれらの遺伝子のうち底2%、すなわち最底の92遺伝子を調べた;それらの平均および標準偏差を計算すると、37.9および0.8となった。次いで各40を区間[37.9−0.8、37.9+0.8]間でランダムに選択した数字に置き換えた。
【0175】
[00194] 異常値:発現レベルを手動で調べる場合、与えられた遺伝子について異常値として行動する試料がしばしばみられる。これを克服するために、FCを計算する際にグループ(NまたはF)において最高および最低の発現レベルを除外した。同様に、各グループにおいて最高2つおよび最低2つを除外することによりこの操作を繰り返した。
【0176】
[00195] 結論として、以上の統計的方法を用いることにより、本発明者らは、卵丘細胞による表4中の遺伝子(この遺伝子セットはABCA6、DDIT4、DUSP1、GPR173B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、ならびにさらに6つの遺伝子KRAS、NCAMl、OLFML3、PTPRAおよびSDF4を含む)の発現レベルは、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞が生存可能な妊娠を生じる能力と相関することを見出した。したがって、卵丘細胞によるこれらの遺伝子のうち1以上の発現を検出する方法は、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞がIVF法に使用するのに適切であるかどうかを判定するために使用できる。
【0177】
[00196] これらの結果を確認するために、以下に記載するように14N対17Fの比較および12Nと15Fの比較を行なった。
[00197] 遺伝子のフィルタリング:大部分の試料中に検出されない若干の遺伝子がある。極端な場合、35試料すべてにおいて40のCt値を与えられる“Hasan遺伝子”と表示される20の遺伝子がある。これらの遺伝子を採用すると予測値にはならない。一般的方法として、本発明者らは25以上の試料中に検出されない遺伝子を除外した。
【0178】
[00198] 結果
[00199] 以上の方法を用いて、本発明者らは異常値の除外に基づいて3つのデータセットを作成した;ここで異常値は、ある遺伝子について、与えられたあるグループにおいて最高または最低の発現を伴う試料(単数または複数)である:i)試料を除外しなかった(Excelファイル名に“除外なし”により表示)、ii)各グループ(NおよびF)において最高および最低の発現値を伴う試料を除外し、すなわち14Nおよび17Fの試料を用いてFCを計算する(Excelファイル名に“1つを除外”により表示)、iii)各グループ(NおよびF)において最高のトップ2つおよび最低のトップ2つの発現値を除外し、すなわち12Nおよび15Fの試料を用いてFCを計算する(Excelファイル名に“2つを除外”により表示)。
【0179】
[00200] 各データセットについて、40を前記に説明したように扱った;すなわち、それらを、検出したすべての値の最低2%の平均値±それらの数値の標準偏差のうちのランダムな数値で置き換えた。次いで発現レベルを対数解除し、各データセットについて2つのファイルを作成した:スケーリングしたもの(与えられた試料について、各遺伝子の発現レベルをその試料中のGAPDHの発現レベルで割る)およびスケーリングしていないもの(GAPDHまたは他の何らかのスケーリングを適用しない)。
【0180】
[00201] 各Excelファイル(合計6;3データセットそれぞれについて2つ)につき、下記の欄も含めた:“グループ”:P(遺伝子は予測シグナチャーからのもの) A(遺伝子は差示発現分析からのもの) トレイニング試料および検証試料、すなわちマイクロアレイ分析のすべての試料を使用;“カウント40”:遺伝子が数値40と推定される試料の数を示す;“FC TLDA”:FCを平均の比として計算;“FC Affy”:FCはマイクロアレイから得られる;“一致”:増加の方向がTLDAとAffyで同じであるかどうかを示す;一致の指標として10、そうでなければ−10を用いた。
【0181】
[00202] 図9に、TLDAとマイクロアレイの間で一致する遺伝子の分布を示す。これらの結果を表にしたものが表8にあり、その際、一致レベルをマイクロアレイ結果からの遺伝子のアップ/ダウンレギュレーションに基づいて分ける。ここにはすべての遺伝子を用いる;すなわち遺伝子が40であることが示された試料の数に基づくフィルタリングを適用していない。
【0182】
[00203] 下記の表8に、アップレギュレーションの方向がTLDAとマイクロアレイ分析の間で一致を示す遺伝子の数を示す;TLDAとマイクロアレイ分析の間のアップレギュレーションの方向。S:スケーリングしたもの,U:スケーリングしていないもの.P:予測遺伝子リスト.A:全試料を一緒に分析した際に得られたマイクロアレイデータセット中の遺伝子.T:総遺伝子.遺伝子をフィルタリングしなかった。
【0183】
[00204] 表8
【0184】
【表8】
【0185】
[00205] これらの結果は、各グループにおいてトップの1または2つの異常値を除外すると、スケーリングしたデータを用いて最良の全体的一致が61%で達成されることを示唆する。さらに、25以上の試料において“検出されない”遺伝子をフィルタリングで除去することによりこの分析を繰り返した。11以上の試料において検出される遺伝子を用いてAffyとTLDAの間の一致の分布を示す結果を表9にまとめる。
【0186】
【表9】
【0187】
[00206] 両グループにおいていずれの側にもトップの1または2つの異常値を除外し、かつスケーリングした数値を用いた場合は、全体として66%が一致するので、これらの結果はさらに最適化される。同様に興味深いのは、スケーリングしていない数値では、Fグループにおいてほぼすべての遺伝子がアップレギュレーションを示すことである。
【0188】
[00207] 予測
[00208] 予測分析には、25以上の試料において“検出されない”遺伝子をフィルタリングで除去した場合、AffyとTLDAの間で一致する遺伝子(表9)を用いた。本発明者らは、重み付き投票法を用いる1点排除交差検証法(leave one out cross validation)を適用した。スケーリングしていないデータを用いた場合、6遺伝子で最良の結果が得られた(27/35=77%の予測精度)。スケーリングしたデータの場合、最良の予測精度は(22/35=63%)であった。これらの遺伝子を、35試料を用いたTLDAにおけるそれらの変化倍率値(F/N)およびAffy、ならびに“新しい”14試料におけるこれらの遺伝子の変化倍率値(F/N)と共に表10に示す。
【0189】
【表10】
【0190】
[00209] 35試料についての予測結果を表11に示す。不適正に予測された試料に影を付けてある。合計で3つのNおよび5つのF試料が不適正に予測された。
【0191】
【表11】
【0192】
【表12】
【0193】
[00210] 結論として、以上の統計的方法を用いて、本発明者らは、卵丘細胞による表4中の1以上の遺伝子、より好ましくはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSPl、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される14の遺伝子のうち1以上の発現レベルは、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞が生存可能な妊娠を生じる能力と相関することを見出した。したがって、卵丘細胞によるこれらの遺伝子のうち1以上の発現を検出する方法は、それに随伴する卵母細胞または同じ女性ドナーからの卵母細胞がIVF法に使用するのに適切であるかどうかを判定するために、またIVF法に使用するのに不適切な卵母細胞を生じる状態を伴う個体を同定するために、また受精処置の成功をモニターするために使用できる。
【0194】
[00211] 参考文献
[00212] 本明細書全体を通して、種々の参考文献が本発明に関係する技術水準について記載している。これらの参考文献の開示内容を本発明の開示に引用することにより本明細書に援用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む、受精した際に生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞を同定する非侵襲的方法:
(i)雌性ドナーからの妊娠受容能について検査すべき卵母細胞またはそのドナーの他の卵母細胞に随伴する少なくとも1個の卵丘細胞を入手する;
(ii)その少なくとも1個の卵丘細胞による少なくとも1つの遺伝子の発現をアッセイする;その遺伝子の発現は、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞が、受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらす能力と相関し、その際、遺伝子は表4中のもの、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントから選択される;そして
(iii)その少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルと比較したものに基づいて、その卵母細胞またはその雌性ドナーに由来する他の卵母細胞が、受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらすことが潜在的に可能であるかどうかを同定する。
【請求項2】
その発現を検出すべき少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その方法により、それらの遺伝子のうち2以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その方法により、それらの遺伝子のうち3以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
その方法により、それらの遺伝子のうち4以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
その方法により、それらの遺伝子のうち5以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
その方法により、それらの遺伝子のうち6以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
その方法により、それらの遺伝子のうち7以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
その方法により、それらの遺伝子のうち8以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
卵母細胞が哺乳動物の卵母細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
卵母細胞がヒトの卵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
卵母細胞がヒト以外の霊長類の卵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも5つの遺伝子の発現を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも6つの遺伝子の発現を測定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも7つの遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも8つの遺伝子の発現を測定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも9つの遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも10の遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも15の遺伝子の発現を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも20の遺伝子の発現を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、表4中のものから選択される少なくとも20〜50の遺伝子の発現をアッセイする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、表4中のものから選択される少なくとも50〜100の遺伝子の発現をアッセイする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子の発現をアッセイする方法が差示的遺伝子発現をモニターする方法を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
その方法が、インデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
卵母細胞が最高で35歳のヒト女性から入手される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
卵母細胞が少なくとも25歳のヒト女性から入手される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
卵母細胞が少なくとも30歳のヒト女性から入手される、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
卵母細胞が少なくとも35歳のヒト女性から入手される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
卵母細胞が少なくとも40歳のヒト女性から入手される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
その少なくとも1つの遺伝子の異常な発現が、閉経、癌、卵巣機能障害、卵巣嚢胞、自己免疫障害およびホルモン機能障害から選択される状態と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
下記の段階を含む、受精処置の有効性を評価する方法:
(i)ヒト女性を想定受精増強処置により処置する;
(ii)処置後にそのヒト女性から卵母細胞およびそれに随伴する卵丘細胞を入手し、そしてその卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞による、表4中に含まれるものならびにさらにABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログおよび対立遺伝子バリアントもしくはスプライスバリアントから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を測定する;そして
(iii)その卵母細胞に随伴する細胞によるその少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、正常卵母細胞または妊娠卵母細胞に随伴する卵丘細胞によるその遺伝子の特徴的な発現レベルと比較したものに基づいて、その処置が有効であるかどうかを評価する。
【請求項32】
受精処置がホルモン療法を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象が閉経期にあり、処置がホルモン置換療法を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
遺伝子発現をリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
遺伝子発現をRT−PCRにより検出する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
遺伝子発現をインデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることにより差示検出する、請求項1または31に記載の方法。
【請求項37】
遺伝子発現結果が卵丘細胞からのRNAを用いて得られる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
対象において受精潜在性を評価する方法であって、妊娠潜在性を評価しようとする卵母細胞またはその対象から採取した他の卵母細胞に随伴する卵丘細胞による、表4中のもの、ならびにABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントから選択される特異的妊娠シグナチャー遺伝子の発現レベルを検出し、その発現レベルを、生存可能な妊娠をもたらすことができる卵母細胞に随伴する卵丘細胞によるそれらの遺伝子の特徴的な発現レベルと比較し;そして、その卵丘細胞が妊娠受容能をもつ卵母細胞に特徴的なレベルで1以上の妊娠シグナチャー遺伝子を発現しているかどうかに基づいて、その対象が潜在的に“妊娠受容能をもつ”かどうかを判定することを含む方法。
【請求項39】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも2つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも3つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも4つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも5つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも6つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも7つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される8、9、10、11、12、13、または14すべての遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
その方法が、インデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることにより差示的遺伝子発現をモニターする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
“妊娠シグナチャー”ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて遺伝子発現を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
ドナー卵丘細胞における、表4からの遺伝子のセット、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPの発現を用いて、異数性から選択される妊娠を排除する卵母細胞異常性を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞および胚を囲む卵丘細胞において、表4中の遺伝子、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPから選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法。
【請求項50】
受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、表4中の遺伝子のうち少なくとも5つまたはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPからなる遺伝子のうち少なくとも5つの発現レベルを測定する段階を含む方法。
【請求項51】
受容能をもつ胚を選択するための方法であって、胚を囲む卵丘細胞において少なくとも10の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、それらの遺伝子が表4中のもの、またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPからなる群の遺伝子から選択される方法。
【請求項52】
さらに、試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出はその卵母細胞または胚が受容能をもつかどうかの指標となる、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
さらに、卵丘細胞に随伴する卵母細胞を受精させることを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
さらに、卵母細胞を雌性ホストの子宮に移植することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
雌性ホストは卵母細胞と異なる種のものである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
雌性ホストは卵母細胞と同じ種のものである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
雌性ホストはそれから卵母細胞を得た個体である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
雌性ホストはそれから卵母細胞を得た個体と異なる個体である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の遺伝子発現と、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルとの比較を、重み付き投票法、ベイズ複合共変量法、対角線形識別法、最近接重心法、k−最近接法、シュランケン重心法、支援ベクターマシーン、複合共変量法、およびそのいずれかの組合わせからなる群から選択される方法を用いて実施する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の遺伝子発現と、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルとの比較を、重み付き投票法を用いて実施する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の、遺伝子ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントの遺伝子発現を、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルと比較することを含む、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
さらに、雌性ドナーに由来する卵母細胞を受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠を潜在的にもたらすことができるかどうかを示すインディケーターを作成することを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
インディケーターをレポートとして提供する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
インディケーターを電子ディスプレイ上に表示する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
インディケーターを電子コミュニケーションとして提供する、請求項62に記載の方法。
【請求項1】
下記の段階を含む、受精した際に生存可能な妊娠を生じることができる卵母細胞を同定する非侵襲的方法:
(i)雌性ドナーからの妊娠受容能について検査すべき卵母細胞またはそのドナーの他の卵母細胞に随伴する少なくとも1個の卵丘細胞を入手する;
(ii)その少なくとも1個の卵丘細胞による少なくとも1つの遺伝子の発現をアッセイする;その遺伝子の発現は、その卵丘細胞に随伴する卵母細胞が、受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらす能力と相関し、その際、遺伝子は表4中のもの、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントから選択される;そして
(iii)その少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルと比較したものに基づいて、その卵母細胞またはその雌性ドナーに由来する他の卵母細胞が、受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠をもたらすことが潜在的に可能であるかどうかを同定する。
【請求項2】
その発現を検出すべき少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その方法により、それらの遺伝子のうち2以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その方法により、それらの遺伝子のうち3以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
その方法により、それらの遺伝子のうち4以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
その方法により、それらの遺伝子のうち5以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
その方法により、それらの遺伝子のうち6以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
その方法により、それらの遺伝子のうち7以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
その方法により、それらの遺伝子のうち8以上の発現を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
卵母細胞が哺乳動物の卵母細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
卵母細胞がヒトの卵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
卵母細胞がヒト以外の霊長類の卵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも5つの遺伝子の発現を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも6つの遺伝子の発現を測定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも7つの遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも8つの遺伝子の発現を測定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPから選択される少なくとも9つの遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも10の遺伝子の発現を測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも15の遺伝子の発現を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する少なくとも20の遺伝子の発現を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、表4中のものから選択される少なくとも20〜50の遺伝子の発現をアッセイする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
その発現が生存可能な妊娠を潜在的にもたらす卵母細胞の能力と相関する、表4中のものから選択される少なくとも50〜100の遺伝子の発現をアッセイする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子の発現をアッセイする方法が差示的遺伝子発現をモニターする方法を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
その方法が、インデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
卵母細胞が最高で35歳のヒト女性から入手される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
卵母細胞が少なくとも25歳のヒト女性から入手される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
卵母細胞が少なくとも30歳のヒト女性から入手される、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
卵母細胞が少なくとも35歳のヒト女性から入手される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
卵母細胞が少なくとも40歳のヒト女性から入手される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
その少なくとも1つの遺伝子の異常な発現が、閉経、癌、卵巣機能障害、卵巣嚢胞、自己免疫障害およびホルモン機能障害から選択される状態と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
下記の段階を含む、受精処置の有効性を評価する方法:
(i)ヒト女性を想定受精増強処置により処置する;
(ii)処置後にそのヒト女性から卵母細胞およびそれに随伴する卵丘細胞を入手し、そしてその卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞による、表4中に含まれるものならびにさらにABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログおよび対立遺伝子バリアントもしくはスプライスバリアントから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を測定する;そして
(iii)その卵母細胞に随伴する細胞によるその少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、正常卵母細胞または妊娠卵母細胞に随伴する卵丘細胞によるその遺伝子の特徴的な発現レベルと比較したものに基づいて、その処置が有効であるかどうかを評価する。
【請求項32】
受精処置がホルモン療法を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象が閉経期にあり、処置がホルモン置換療法を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
遺伝子発現をリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
遺伝子発現をRT−PCRにより検出する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
遺伝子発現をインデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることにより差示検出する、請求項1または31に記載の方法。
【請求項37】
遺伝子発現結果が卵丘細胞からのRNAを用いて得られる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
対象において受精潜在性を評価する方法であって、妊娠潜在性を評価しようとする卵母細胞またはその対象から採取した他の卵母細胞に随伴する卵丘細胞による、表4中のもの、ならびにABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントから選択される特異的妊娠シグナチャー遺伝子の発現レベルを検出し、その発現レベルを、生存可能な妊娠をもたらすことができる卵母細胞に随伴する卵丘細胞によるそれらの遺伝子の特徴的な発現レベルと比較し;そして、その卵丘細胞が妊娠受容能をもつ卵母細胞に特徴的なレベルで1以上の妊娠シグナチャー遺伝子を発現しているかどうかに基づいて、その対象が潜在的に“妊娠受容能をもつ”かどうかを判定することを含む方法。
【請求項39】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも2つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも3つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも4つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも5つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも6つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される少なくとも7つの遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの遺伝子が、ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3、およびTERF2IPからなる群から選択される8、9、10、11、12、13、または14すべての遺伝子を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
その方法が、インデクシングディファレンシャルディスプレイ逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(DDRT−PCR)を指標とすることにより差示的遺伝子発現をモニターする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
“妊娠シグナチャー”ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて遺伝子発現を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
ドナー卵丘細胞における、表4からの遺伝子のセット、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPの発現を用いて、異数性から選択される妊娠を排除する卵母細胞異常性を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
受容能をもつ卵母細胞または受容能をもつ胚を選択するための方法であって、卵母細胞および胚を囲む卵丘細胞において、表4中の遺伝子、および/またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPから選択される1以上の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む方法。
【請求項50】
受容能をもつ卵母細胞を選択するための方法であって、表4中の遺伝子のうち少なくとも5つまたはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPからなる遺伝子のうち少なくとも5つの発現レベルを測定する段階を含む方法。
【請求項51】
受容能をもつ胚を選択するための方法であって、胚を囲む卵丘細胞において少なくとも10の遺伝子の発現レベルを測定する段階を含み、その際、それらの遺伝子が表4中のもの、またはABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IPからなる群の遺伝子から選択される方法。
【請求項52】
さらに、試料中の遺伝子の発現レベルを対照と比較することからなる段階を含み、その際、試料と対照の間の遺伝子の発現レベルの差の検出はその卵母細胞または胚が受容能をもつかどうかの指標となる、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
さらに、卵丘細胞に随伴する卵母細胞を受精させることを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
さらに、卵母細胞を雌性ホストの子宮に移植することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
雌性ホストは卵母細胞と異なる種のものである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
雌性ホストは卵母細胞と同じ種のものである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
雌性ホストはそれから卵母細胞を得た個体である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
雌性ホストはそれから卵母細胞を得た個体と異なる個体である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の遺伝子発現と、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルとの比較を、重み付き投票法、ベイズ複合共変量法、対角線形識別法、最近接重心法、k−最近接法、シュランケン重心法、支援ベクターマシーン、複合共変量法、およびそのいずれかの組合わせからなる群から選択される方法を用いて実施する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の遺伝子発現と、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルとの比較を、重み付き投票法を用いて実施する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
妊娠受容能について検査すべき卵母細胞に随伴する少なくとも1つの卵丘細胞の、遺伝子ABCA6、NCAM1、OLFML3、PTPRA、SDF4、GPR137B、DDIT4、DUSP1、GPR137B、IDUA、KCTD5、NDNL2、SLC26A3およびTERF2IP、またはそれらのオルソログ、スプライスバリアントもしくは対立遺伝子バリアントの遺伝子発現を、妊娠受容能をもつ卵母細胞に随伴する卵丘細胞による特徴的な発現レベルと比較することを含む、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
さらに、雌性ドナーに由来する卵母細胞を受精させて適切な子宮環境内へ移植した際に生存可能な妊娠を潜在的にもたらすことができるかどうかを示すインディケーターを作成することを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
インディケーターをレポートとして提供する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
インディケーターを電子ディスプレイ上に表示する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
インディケーターを電子コミュニケーションとして提供する、請求項62に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−510575(P2013−510575A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538952(P2012−538952)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056252
【国際公開番号】WO2011/060080
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512121990)ジェマ・ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056252
【国際公開番号】WO2011/060080
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512121990)ジェマ・ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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