説明

原子分析装置

【課題】ヘドロ、廃液、土壌中に含まれる固体元素の原子の同定及び定量を可能とする。
【解決手段】一対の微小電極間に放電ガスを流して、非平衡大気圧プラズマを発生するプラズマ発生装置10と、非平衡大気圧プラズマを照射する照射対象物22が設置され、プラズマ発生装置により発生された非平衡大気圧プラズマを照射対象物に誘導するプラズマ誘導電極21を有し、プラズマ発生装置の電極とプラズマ誘導電極の間にバイアス電圧を印加して、非平衡大気圧プラズマを照射対象物に照射するバイアス電圧印加装置と、非平衡大気圧プラズマの照射により、照射対象物を構成する物質を原子化し、この原子を吸光分析する分光装置とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の成分原子を分析する原子分析装置に関する。本発明は、特に、固体成分の構成原子の同定や定量を行う原子分析装置に有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、環境汚染の観点から、土壌や排水中に含まれている原子を同定し、定量測定を行うことが要求されている。この場合、通常は、乾燥や、薬品で溶解させるなどの前処理を必要としていた。しかも、装置自体が大がかりであり、携帯可能なものではなかった。このため、汚染現場で成分分析を行うことは困難であった。成分分析を行うためには、物質を構成している元素を原子化して分離させる必要があり、この原子化のためには、化学的手法と、レーザやプラズマを用いる物理的手法とが知られている。化学的手法では、測定元素により処理方法が異なるために、多元素を同時に測定することは困難である。また、レーザを用いると、携帯化のために小型化をすると、出力が低下し、十分な分析感度が得られない。また、液体を含んだ(又は液体中の)固体は、液体の完全気化と固体の気化をする必要があり、液体を含んだ固体をそのまま使用することは、さらに高出力のレーザが必要となり、携帯化は困難である。特に、廃液中に含まれている固体の原子分析を、廃液のまま実行できることが望まれているが、携帯型のレーザの場合には、このような廃液中の固体の分析には用いることができない。
【0003】
一方、プラズマを用いて原子分析をするためのプラズマ発生装置は、下記特許文献1により知られている。特許文献1によると、原子化能力が最も高いヘリウムガスのプラズマを発生する装置が開示されている。ヘリウムガスは、励起温度が非常に高いので、プラズマを発生させる周囲の壁面を冷却する必要がある。この冷却のためにヘリウムガス自体を用いる方法もある。しかし、ヘリウムは熱伝導率が高く熱拡散も大きいので、冷却のために、軸方向にヘリウムガスを流すとすると、ヘリウムのエネルギーが外部に消散してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献1は、この問題を解決するために、ヘリウムガスを放電管の外管中に、螺旋状に供給することで、軸方向への流速を小さくして、プラズマを軸の回りにリング状に形成している。そして、そのリング状のプラズマ中に分析すべきガスを供給するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−147790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、螺旋状に発生させたプラズマ中に、放電ガス流と平行に、試料ガスを供給するものであるので、分析試料が気体に限定される。
すなわち、分析すべき金属元素を含む土、ヘドロ、廃液などにおいて、含まれる成分原子を測定することには使用することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、分析すべき金属元素を含む土、ヘドロ、廃液などに対して、原子化して、分光分析することが可能で携帯可能な原子分析装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、一対の微小電極間に放電ガスを流して、非平衡大気圧プラズマを発生するプラズマ発生装置と、非平衡大気圧プラズマを照射する照射対象物が設置され、プラズマ発生装置により発生された非平衡大気圧プラズマを照射対象物に誘導するプラズマ誘導電極を有し、プラズマ発生装置の電極とプラズマ誘導電極の間にバイアス電圧を印加して、非平衡大気圧プラズマを照射対象物に照射するバイアス電圧印加装置と、非平衡大気圧プラズマの照射により、照射対象物を構成する物質を原子化し、この原子を分光分析する分光装置とから成る原子分析装置である。
【0009】
ここで、微小電極間に、高電圧をかけ、電極間に放電用ガスを流すと、電極間に、非平衡大気圧プラズマが発生する。ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、空気などを用いることができる。電極の間隔を微小にしていることから、放電は電極間の微小な領域に集中し、大気圧で、非平衡なプラズマを生成することができる。分光分析には、光源を用いてその吸収特性から原子の同定や定量を行う方法や、発光分析、すなわち、原子化された原子からの発光のスペクトルを分析して、原子の同定や定量を行う方法を用いることができる。
【0010】
プラズマ発生装置の電極やプラズマ誘導電極の材料は、ステンレス、モリブデン、銅などを用いる。電極の間隔は、0.5〜3.0mmであることが望ましい。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、プラズマ誘導電極とプラズマ発生装置の電極との間に配設され、照射対象物に対して照射される非平衡大気圧プラズマを閉じ込める装置であって、照射対象物を内包し、照射対象物に、磁場を印加する磁場発生装置を有することを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、磁場発生装置による磁場により、照射対象物に対して照射される非平衡大気圧プラズマの流れを曲げて、この非平衡大気圧プラズマの照射方向と、放電ガスの流れる方向とを異なる方向としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によると、非平衡大気圧プラズマを容易に発生させることができ、プラズマ誘導電極と、プラズマ発生装置の電極間に印加されたバイアス電圧により、プラズマを照射対象物に安定的に効率良く照射することができる。この結果、照射対象物が固体や液体中に混入している固体であっても、容易に原子化することができる。
【0014】
第2の発明によると、磁場発生装置により、照射対象物への非平衡大気圧プラズマの照射を拘束することができるので、効果的に、照射対象物を原子化することができる。
【0015】
第3の発明によると、磁場発生装置により、照射対象物への非平衡大気圧プラズマの照射方向を、放電ガスの流れる方向と異なる方向方向とすることにより、放電ガス流により、照射対象物に照射される非平衡大気圧プラズマを飛散させることがない。また、放電ガス流の方向に照射対象物が存在しないので、照射対象物を飛散させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
以下、実施例に基づいて、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、その実施例から把握される技術的思想が、発明の範囲である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例の具体的な一実施例に係る原子分析装置の全体の構成を示した構成図である。基台20上にプラズマ誘導電極21が設置されており、そのプラズマ誘導電極21の上面21aには、原子化する照射対象物22が設けられている。プラズマ誘導電極21と照射対象物22は、円筒状の壁面24で囲まれた反応室23に設けられている。反応室23の上方には、この照射対象物22にその上方から非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ発生装置10が設けられている。反応室23の周囲には、プラズマ誘導電極21の上面21aに垂直な方向に磁束を発生させる磁場発生装置25が設置されている。プラズマ誘導電極21の上面21aの垂直軸に垂直な断面における磁場発生装置25による磁束の中心線は、上面21aの中心を貫通するように構成されている。
【0019】
次に、非平衡大気圧プラズマ発生装置10の構成について説明する。図2は、非平衡大気圧プラズマ発生装置10を示す図である。装置10は、絶縁パイプ30と平面状の電極31a、31bを有している。絶縁パイプ30は、配管34を介して放電ガスを貯蔵したガスボンベ35に接続されている。絶縁パイプ30の内径は0.5mmである。絶縁パイプ30の内径は、0.5〜1mmの範囲で用いると効果が高い。絶縁パイプ30の端には、上下に電極31a、31bの一部が接し、電極31a、31bが絶縁パイプ30をはさむように設置されている。図3は、ガスの吹き出し口方向から見た電極31a、31bを拡大し示した図である。電極31a、31bの絶縁パイプ30と接していない部分からは2つの突起32a、32bが垂直に向かい合うように伸びている。この突起32aと32b間を放電ガスが流れる。電極31aと31bの間隔L1は、10mm、2つの突起32aと32bの間隔L2は、1.0mm、突起32aと32bの幅L3は、3mmである。突起の先端部分は鋸歯状のように三角形が並んだ形状である。この三角形の形状は、放電領域の拡散を防止し、狭めるために設けたものである。絶縁パイプの材料として、セラミックを用いた。
【0020】
プラズマ誘導電極21は、直径2mmφ、長さ10mmの円柱を用いた。プラズマ誘導電極21の照射対象物22を載置する上面21aの面積を小さくしたのは、プラズマの照射点を安定させるためである。また、電極31a、31bの材料には、ステンスレを、プラズマ誘導電極21の材料には、銅を用いた。なお、プラズマ誘導電極21に、直接、プラズマが照射されると、その構成元素が原子化されて、発光するので、照射対象物の成分原子の測定に妨害与える。これを防止するために、プラズマ誘導電極21の表面を、照射対象物に含まれていない元素材料でコーティングするか、原子化され難い材料でコーティングしても良い。また、放電ガスには、アルゴンを用いた。
【0021】
電極31a、31bには、60Hzの交流電源36から電圧が印加される。また、電極31bはアースに接続されており、プラズマ誘導電極21と電極31b間には、60Hzの交流電源37から電圧が印加される。
【0022】
反応室23の壁面24には、照射対象物22からの発光を外部において受光できる窓26が形成されており、照射対象物22からの発光は、集光するレンズ41を介して、分光装置40で波長分析できるようになっている。すなわち、原子化された原子からの発光のスペクトルを分析する発光分析を行っている。
【0023】
〔実験例1〕
この装置により、電極31bをアース電位とし、電極31aと31bとの間に、60Hz、9kVの交流電圧を印加し、プラズマ誘導電極21と電極31bとの間に、60Hz、9kVの交流電圧を印加した。そして、電極31aと31bとの間に、絶縁パイプ30から、アルゴンガスを、流速1.2L/mimで供給した。まず、磁場発生装置25の磁場を発生させずに、次の実験を行った。電極31aと31bとの間で放電が開始されて、この間でアルゴンガスのプラズマが発生する。このプラズマが、プラズマ誘導電極21の方向に引き寄せられて、電極31a、31bとプラズマ誘導電極21間に、プラズマジェットが発生する。電極31a、31bとプラズマ誘導電極21との距離(以下、単に「対誘導電極間距離」という)を変化させて、プラズマの発生を観測した。対誘導電極間距離が2〜10mmにおいて、安定したプラズマジェットが、電極31a、31bとプラズマ誘導電極21間に発生した。対誘導電極間距離が16mm以上となると、プラズマ誘導電極21へプラズマが至ることがなく、プラズマは、電極31a、31b間に、留まった。
【0024】
〔実験例2〕
次に、照射対象物22として、Mgを0.1%(1000ppm)含む葉を選択し、この葉の中の金属原子成分を測定した。対誘導電極間距離は、葉と電極31a、31bとが接触することなく、プラズマジェットが安定して発生する6mmを選択した。アルゴンガスの流速は、1.2L/mimとした。この時の葉からの発光を分光装置40で測定した。結果を図4に示す。図4に示す結果から、285.1〜285.2nmに線スペクトルが得られていることが分かる。このスペクトルはMg原子によるものであると判定することができた。またスペクトル発光強度とアインシュタインA係数とから励起温度は6000K程度であると判定できた。
【0025】
〔実験例3〕
次に、対誘導電極間距離を4mm、アルゴンガスの流速を1L/mimとして、照射対象物22をInの板とした。その他の印加電圧などの条件は、実験例2と同一である。測定結果を図5に示す。410.2nm、451.1nmの線スペクトルが観測されているのが分かる。これは、Inの発光スペクトルである。
【0026】
〔実験例4〕
次に、実験例3と、全く同一条件で、照射対象物22を、半田(Pb40%、Sn60%)として、Pbの発光スペクトルを観測した。測定結果を図6に示す。405.8nmのPbの発光スペクトルが観測されたことが理解される。
【0027】
〔実験例5〕
次に、照射試料22として、固体のMg(NO粉末1mgと水7mgとの混合体を用いた。実験条件は実験例3と、全く同一である。その測定結果を図7に示す。285.2nmの発光スペクトルが得られている。これは、Mgの発光スペクトルである。このように、本発明装置によると、分析すべき物質が、液体中に混合された固体であっても、その原子分析が可能であることが証明された。従来の原子化装置による原子吸光分光法では、液体に混合した固体の原子化は困難であるが、本発明装置によると、それが可能である。すなわち、本発明では、ヘドロや廃液中の環境汚染固体物質を同定や定量が可能となる。
【0028】
〔実験例6〕
次に、照射試料22として、固体のMg(NO粉末と水との混合体を用いて、対誘導電極間距離と得られるMgスペクトルの発光強度との関係を測定した。印加電圧、アルゴンガスの流速は、実験例3と同一である。その測定結果を図8に示す。対誘導電極間距離が2〜4mmと時に、照射対象物体の原子化された原子からの発光強度は、最大となり、対誘導電極間距離が増加するに連れて、発光強度が減少することが理解される。対誘導電極間距離が短いと、電極間における電界が大きくなり、電子に与えられるエネルギーが大きくなるためである。
【0029】
〔実験例7〕
次に、照射試料22として、固体のMg(NO粉末と水との混合体を用いて、アルゴンガス流速と得られるMgスペクトルの発光強度との関係を測定した。対電極間距離は4mmとした。印加電圧など、その他の条件は、実験例3と、全く同一である。測定結果を図9に示す。流速が0.6L/mimの時に、Mgの発光スペクトルは最大を示すことが分かる。また、Mgの発光スペクトルの5回の測定の平均値と、アルゴンガス流速との関係を測定した。その結果を図10に示す。最適な放電ガスの流速が存在することが分かる。
【0030】
〔実験例8〕
次のようにして、本実施例装置による非平衡大気圧プラズマの回転温度を算出した。本実施例のプラズマ発光から、窒素分子の380.5nmの回転スペクトルを測定した。このスペクトルからガス温度を算出した。アルゴンガス流速に対するプラズマのガス温度との関係を測定した。測定結果を図11に示す。本装置でのプラズマの温度は、400〜900Kと低温であることが理解される。
【0031】
従来の原子吸光法で用いるアドマイザーでは、フレームによるものではプラズマ温度は1850〜4800K、黒鉛炉によるものではプラズマ温度は1800〜3300Kと高温である。本発明では、非平衡大気圧プラズマによる高エネルギーの電子やイオンを用いることで、照射対象物の原子化を、高効率で行うことができる。
【0032】
上記の実験例から、対電極間距離は2〜10mmで、プラズマを電極32a、32bからプラズマ誘導電極21まで安定して形成できることが分かる。しかし、照射対象物22が大きい場合には、この対誘導電極間距離を拡大する必要がある。そこで、図1に示すように、磁場発生装置25を用いて、プラズマ誘導電極21の上面21aに垂直な方向に磁束を発生させる。プラズマは、この磁束に沿って螺旋運動を行うように拘束される。したがって、プラズマが拡大飛散することがなく、プラズマ誘導電極21に向けて誘導させることができる。これにより、対誘導電極間距離を拡大することができる。対誘導電極間距離を40mm程度に拡大しても、プラズマを安定して、プラズマ誘導電極21に向けて発生させることができる。
【実施例2】
【0033】
本実施例は、放電ガス流の方向と、磁場発生装置による磁束の方向とが異なるように構成した装置である。図1の実施例1と、同一機能を果たす部品については同一符号を付した。非平衡大気圧プラズマ発生装置10の構成は、実施例1と同一である。本実施例では、反応室23の壁面を構成する筐体27には、外部に突出するように、計測用の窓28が設けられている。反応室23は、円筒形状である。反応室23の内部壁面には、テフロン、セラミックスなどから成り、不純物の壁面への付着を防止する不純物付着防止板29が接合されている。汚染された場合には、この不純物付着防止板29は、容易に交換できるように着脱自在に構成されている。また、筐体27の底面27aには、中空の管状体のプラズマ誘導電極50が設けられており、その上面50aには、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、テフロンなどの絶縁体や、SiやGaAsなどの半導体から成る、中心に連通孔が形成された試料台51が設けられている。この試料台51の上に照射対象物22が載置される。試料台51、プラズマ誘導電極50の中心軸には、貫通孔52が形成されており、この貫通孔52を介して、照射対象物22が設置される。
【0034】
磁場発生装置25の発生する磁束の、貫通孔52に垂直な断面における中心線は、この貫通孔52を貫き、プラズマ誘導電極50の上面50a上に載置された試料台51の設置面に垂直な方向を向いている。以下、この垂直な向きを磁束方向という。一方、非平衡大気圧プラズマ発生装置10における放電ガスが流れる向きは、磁束方向と平行ではなく、所定の角度を成している。これにより、放電ガスは、筐体27の上面に設けられた窓53から、反応室23の中に入らないようになっている。すなわち、放電ガスが、電極32a、32bで発生したプラズマがプラズマ誘導電極50に伸びるのを妨げないようになっている。この構成により、照射対象物に対して、プラズマを効率良く照射し、原子化能力を向上させ、成分分析の感度を向上させることができる。
【0035】
また、筐体27には、ガス導入口54とガス排出口55とが設けられており、反応室23に、放電ガスと同種のガスを供給して、反応室23でのプラズマの生成を促進させている。又は、ハロゲン元素などを含むガスを供給し、反応室23で、気化が難しい固体試料をハロゲン化物などにして蒸発させて、原子化を促進させても良い。全実施例において、放電ガスには、アルゴン、酸素、窒素、ヘリウム、その他の不活性ガスなどを用いることができる。
【0036】
〔変形例〕
図13に示すように、実施例1の装置において、磁束方向と放電ガスの流れる向きを平行でなく、所定角を成して、放電ガスが反応室23内に流入しないように構成することも可能である。また、上記実施例では、発光分析を用いたものを示したが、他の光源の光を原子化された環境に照射して、この光の吸収特性を測定することで、原子の同定や定量を行うようにしても良い。この場合の光源としては、分析する原子と同一元素を含むガスを放電させることによって得られる光を用いることで、行っても良い。すなわち、原子吸光分析を行って良い。
【0037】
上記全実施例において、照射対象物の原子化を促進するために、適宜ガスを導入して、バイアス印加し、原子化するようにしても良い。すなわち、。例えば、ハロゲン元素を含むガスガスを導入し、ハロゲン化物として蒸発させ、対象物を構成する原子を原子化するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ヘドロ、廃液、土壌中の金属原子などの同定、定量に有効な原子分析装置に用いることが可能である。原子の分光分析のために照射対象物、特に、固体の元素の原子化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の具体的な一実施例に係る原子分析装置を示した構成図。
【図2】同実施例装置のプラズマ発生装置の詳細な構成図。
【図3】同実施例装置のプラズマ発生装置の電極の詳細な構成図。
【図4】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例2の原子分析の測定結果を示す波長−発光強度特性図。
【図5】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例3の原子分析の測定結果を示す波長−発光強度特性図。
【図6】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例4の原子分析の測定結果を示す波長−発光強度特性図。
【図7】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例5の原子分析の測定結果を示す波長−発光強度特性図。
【図8】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例6に係るMg発光強度と対誘導極間距離との関係の測定結果を示す特性図。
【図9】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例7に係る放電ガス流速をパラメータとする波長−発光強度特性図。
【図10】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例7に係る放電ガス流速とMg発光強度との関係の測定結果を示す特性図。
【図11】同実施例のプラズマ発生装置を用いた実験例8に係る放電ガス流速とガス温度との関係を示す特性図。
【図12】本発明の具体的な実施例2に係る原子分析装置を示した構成図。
【図13】本発明の実施例1の変形例に係る原子分析装置を示した構成図。
【符号の説明】
【0040】
10…プラズマ発生装置
21、50…プラズマ誘導電極
22…照射対象物
23…反応室
24…壁面
25…磁場発生装置
27…筐体
26、28、53…窓
29…不純物付着防止板
30…絶縁パイプ
31a、31b…電極
40…分光装置
51…試料台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の微小電極間に放電ガスを流して、非平衡大気圧プラズマを発生するプラズマ発生装置と、
前記非平衡大気圧プラズマを照射する照射対象物が設置され、前記プラズマ発生装置により発生された前記非平衡大気圧プラズマを前記照射対象物に誘導するプラズマ誘導電極を有し、前記プラズマ発生装置の電極と前記プラズマ誘導電極の間にバイアス電圧を印加して、前記非平衡大気圧プラズマを前記照射対象物に照射するバイアス電圧印加装置と、
前記非平衡大気圧プラズマの照射により、前記照射対象物を構成する物質を原子化し、この原子を分光分析する分光装置と
から成る原子分析装置。
【請求項2】
前記プラズマ誘導電極と前記プラズマ発生装置の前記電極との間に配設され、前記照射対象物に対して照射される前記非平衡大気圧プラズマを閉じ込める装置であって、前記照射対象物を内包し、前記照射対象物に、磁場を印加する磁場発生装置を有することを特徴とする請求項1に記載の原子分析装置。
【請求項3】
前記磁場発生装置による磁場により、前記照射対象物に対して照射される前記非平衡大気圧プラズマの流れを曲げて、この非平衡大気圧プラズマの照射方向と、前記放電ガスの流れる方向とを異なる方向としたことを特徴とする請求項2に記載の原子分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−241293(P2008−241293A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78481(P2007−78481)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月2日 国立大学法人 和歌山大学主催の「光メカトロニクス学科卒業論文発表会」に文書をもって発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(504145283)国立大学法人 和歌山大学 (62)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】