説明

原子力発電プラント内の不燃性ガスを管理する装置および方法

【課題】原子力発電プラント内のH2およびO2などの滞留した非凝縮性ガスが燃焼することにより損傷を受けやすい設備から非凝縮性ガスを静的に除去するシステムを提供する。
【解決手段】システムは、静的格納容器冷却系(PCCS)コンデンサの下部ヘッダに設置した触媒プレート105と、PCCSコンデンサの凝縮チューブまたはPCCSコンデンサの環状出口の内面の触媒充填部材および/または触媒コーティングとを含む。構造は、水の形成を抑制すると共に非凝縮性ガスとの接触を促進する表面または疎水性要素を有してもよい。原子力発電プラント内の非凝縮性ガスは、このシステムを個々にまたは組み合わせて設置および使用することによって除去される。内部で非凝縮性ガスの再結合を容易にするために、PCCSコンデンサの運転圧力を増大させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラント内の不燃性ガスを管理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の格納容器建屋10の断面の断面概略図である。高経済型単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)の構成要素および特徴を有する格納容器10を図1に示すが、本明細書に記載の構成要素は、他のプラント構成で使用することもできると理解されよう。図1に示すように、格納容器10は、重力落下式注水系(GDCS)15を含むことができ、このGDCS15は、一次冷却材喪失の場合に原子炉容器を冷却するために使用する水で満たされた大型のタンクであり得る。圧力抑制プール16は、格納容器10内にあってもよく、事故の場合には原子炉容器からの蒸気を凝縮し、圧力を緩和するために使用される。いくつかの静的格納容器冷却系(PCCS)コンデンサ50が、格納容器10の外側にあるPCCSプール20内に配置されている。格納容器10内での冷却材喪失事故時に、PCCSコンデンサ50は、余熱を取り除き、格納容器10内の蒸気を凝縮する。
【0003】
PCCSコンデンサ50は、過酷事故時に格納容器10内に放出され得る蒸気および非凝縮性ガスを受け入れる入口51を格納容器10内に備える。蒸気は、炉内で沸騰している冷却材から発生し、放射線および化学物質の放出により、O2およびH2などの非凝縮性ガスが、原子力プラントの運転中に炉および格納容器10内に蓄積する。蒸気および非凝縮性ガスは、PCCSコンデンサ50の入口51を通過し、PCCSプール20に没している枝分れパイプおよび垂直チューブ52の中に入る。蒸気および非凝縮性ガスからの熱は、垂直チューブ52からPCCSプール20へ伝達され、垂直チューブ52内の蒸気は、凝縮して水になる。下部ヘッダ53は、PCCSコンデンサ50中の凝縮水および非凝縮性ガスを集める。
【0004】
凝縮水は、重力および圧力差によって、環状ダクト54内に内側通路および外側通路を与える同心二重パイプを備える環状ダクト54を通じて、下部ヘッダ53から下方へ押し流される。凝縮水は、環状ダクト54の外側パイプを通じて共用のドレイン管路57に流れ込み、このドレイン管路57は、凝縮水をGDCSプール15の中に排出する。非凝縮性ガスは、下部ヘッダ53から環状ダクト54内の内側通路54a(図2)を通じて下方に向かって流れ、圧力抑制プール16内のスパージャ59で終点となるベント管路58に流れ込む。ファン30をベント管路58に接続することにより、PCCSコンデンサ50からの非凝縮性の流れを増強することができる。
【0005】
下部ヘッダ53は、凝縮水および非凝縮性ガスを環状ダクト54の外側通路および内側通路にそれぞれ分けるドレインマニホルド55を含む。図2は、従来のドレインマニホルド55の説明図である。図2に示すように、ドレインマニホルド55は、ベントフード/ドリップフード75を含み、このベントフード/ドリップフード75は、下方に向かってドリップフード75上へ流れる凝縮水をドレインマニホルド55のいずれかの側へ分流させる。いくつかの圧縮波バッフル65が、下部ヘッダ53内でドレインマニホルド55を補強および固定する。非凝縮性ガスは、上に向かってドリップフード75に流れ込み、そして環状ダクト54の内側通路54aへ流れ込むことができ、一方、分流された凝縮水は、環状ダクト54の縁部の周囲の外側通路に流れ込む。このようにして、水は、非凝縮性ガスによる流れの閉塞または逆流を引き起こすことなく、原子炉冷却材として使用するためにGDCSプール15の中に流れ戻ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示の実施形態は、外部電源および/または可動部品を必要とすることなく、原子力発電プラント内のH2およびO2などの滞留した非凝縮性ガスが燃焼することにより損傷を受けやすい設備から非凝縮性ガスを静的に除去するシステムに関する。例示のシステムは、非凝縮性ガス暴露を受ける領域内に設置した触媒材料を含み、この触媒材料は、非凝縮性ガスの不活性副生成物への反応を触媒する。例示のシステムは、静的格納容器冷却系(PCCS)コンデンサの下部ヘッダに設置した触媒プレートと、PCCSコンデンサの凝縮チューブまたはPCCSコンデンサの環状出口の内面の触媒充填部材および/または触媒コーティングとを含んでもよい。例示のシステムは、水の形成を抑制すると共に非凝縮性ガスとの接触を促進する表面または疎水性要素を有する構造を含んでもよい。
【0007】
例示の方法は、例示の実施形態の触媒システムを個々にまたは組み合わせて設置および使用することによって原子力発電プラント内の非凝縮性ガスを静的に除去することに関する。例示の方法は、内部で非凝縮性ガスの再結合を容易にするために、PCCSコンデンサの運転圧力を増大させることをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来のESBWR格納容器の概略図である。
【図2】従来のドレインマニホルドの説明図である。
【図3】例示の一実施形態の触媒システムの説明図である。
【図4】別の例示の一実施形態の触媒システムの説明図である。
【図5】さらなる例示の一実施形態の触媒システムの説明図である。
【図6A】ベント管路で用いる追加の例示の一実施形態の触媒システムの説明図である。
【図6B】明確化のためにキャップを取り除いた、図6Aの追加の例示の実施形態の触媒システムの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、本明細書に開示した特定の構造および機能の詳細は、例示の実施形態を説明するための典型に過ぎない。例示の実施形態は、多くの代替形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の例示の実施形態だけに限定されるものと解釈されるべきではない。
【0010】
第1、第2などの用語が、本明細書中で様々な要素を説明するために使用され得るが、これら要素は、それら用語によって限定されるべきではないと理解されよう。これら用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用するものに過ぎない。例えば、例示の実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素は、第2の要素と呼ばれてもよく、同様に、第2の要素は、第1の要素と呼ばれてもよい。本明細書で使用する場合、用語「および/または」は、関連して列挙した1つまたは複数の項目の組合せのうち任意および全部のものを含む。
【0011】
ある要素が、別の要素に「接続される(connected)」、「連結される(coupled)」、「対合される(mated)」、「取り付けられる(attached)」、または「固定される(fixed)」と呼ばれるとき、上記のある要素は、他の要素に直接接続もしくは直接連結されてもよく、または介在要素が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が、別の要素に「直接接続される(directly connected)」または「直接連結される(directly coupled)」と呼ばれるときは、介在要素は存在しない。要素間の関係を記述するために使用される他の語句(例えば、「間に(between)」と「直接間に(directly between)」、「隣接した(adjacent)」と「直接隣接した(directly adjacent)」など)も同様に解釈すべきである。
【0012】
本明細書で使用する場合、単数形「1つ、一(a、an)、この(the)」は、分脈上他の意味を明らかに示さない限り、複数形も含むものとする。用語「備える/含む(comprises)」、「備えている/含んでいる(comprising)」、「備える/含む(include)」、および/または「備えている/含んでいる(including)」は、本明細書で使用される場合、提示した特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を示すが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/またはそれらのグループの存在もしくは追加を除外するものではないことがさらに理解されよう。
【0013】
いくつかの代替の実施では、記載した機能/作用は、図に記載または明細書に説明した順序以外の順序で生じてもよいことにも留意されたい。例えば、連続して示した2枚の図または2つのステップは、伴う機能/作用に応じて、実際には、ほぼ同時に実行されてもよく、または場合によっては逆の順序でもしくは繰り返し実行されてもよい。
【0014】
本出願の発明者らは、冷却材喪失を伴う事故時に、大量の非凝縮性ガスが、原子力発電プラント内の静的な冷却材の特徴に直接入り得ることを認識した。そのような非凝縮性ガスは、特に高温高圧環境においてよく反応し得る。静的な冷却材の特徴で見出される非凝縮性ガスなどの非凝縮性ガスが密閉構造内で発火すると、静的な冷却材の特徴および周囲の構造に特に損傷を与え得る。この損傷は、事故のシナリオをさらに悪化させる可能性がある。以下に述べる例示の実施形態および方法は、静的な冷却材の特徴に認められる事前には正体の分からないこれらの危険性に独自に対処し、例えば、事故のシナリオの際のリスク増加を緩和することを含め、いくつかの利点をもたらす。
【0015】
例示の実施形態は、非凝縮性ガスに暴露される可能性または非凝縮性ガスを含有する可能性がある構造内に配置/設置した触媒材料と、非凝縮性ガスの発火により損傷を受けやすい特徴とを含む。この触媒材料は、非凝縮性ガスが、連続的で非破壊的なやり方で、不活性で有用な生成物に反応することを可能にすることができ、それによって爆発のリスクを低減し、気密格納容器構造内のガス圧を下げる。触媒は、通常運転時または事故のシナリオ時に爆発的損傷の影響を最も受けやすい、非凝縮性ガスに最も暴露される、および/または非凝縮性ガスの再結合による熱エネルギーを除去するための静的熱伝達に最も利用しやすい領域に特に対処するように置かれ構成され得る。
【0016】
図3は、従来からPCCSコンデンサ50(図1)に見かけるドレインマニホルド55に使用可能な例示の一実施形態の触媒システム100の説明図である。例示の実施形態のシステム100は、ドリップフード75の底部に設置した1つまたは複数の支持メッシュ110を含むことができる。支持メッシュ110は、支持メッシュ110を通じて流体が流れることを可能にする任意の支持構造であってよく、支持メッシュ110には、格子状ワイヤ、多孔板、固体フィルタなどが含まれる。各支持メッシュ110は、ドリップフード75内で部分的または完全な区画を形成するように2つの圧縮波バッフル65の間に位置することができる。
【0017】
1つまたは複数の触媒プレート105が、ドレインマニホルド55のドリップフード75内に配置される。触媒プレート105は、1つまたは複数の支持メッシュ110上に位置してもよく、またはドリップフード75内に他の方法で取り付けられてもよい。触媒プレートは、ドレインマニホルド55内に嵌る大きさに作製されると共に、例えば、ドレインマニホルド55の全長に延びてもよく、または2つの圧縮波バッフル65の間の個々の区画内に嵌る大きさに作製されてもよい。図3に示すように、触媒プレート105が、圧縮波バッフル65同士の間の単一の区画内に嵌る場合、1つまたは複数のセットの触媒プレート105が、異なる区画にあってもよい。触媒プレート105は、ドリップフード75内に複数の触媒プレート105を収容し、触媒プレート105の表面積を増大させるように薄くてもよい。触媒プレート105は、分離していても、または交差していてもよい。触媒プレート105は、表面積を増大させ、触媒プレート105からの排水を促進し、非凝縮性ガスが内部で触媒材料と接触および相互作用するのを促進する波状または波形の表面を備えてもよい。あるいは、例えば、触媒プレート105は、平坦表面、多孔状表面、凸凹表面、スパイク状表面、タブ付き表面、縞のある表面、および/または他の任意のタイプの所望の表面を有してもよい。
【0018】
触媒プレート105、および場合によって支持メッシュ110は、非凝縮性ガスの非爆発性反応または再結合を促す触媒材料を含む。例えば、触媒材料は、水素(H2)および/または酸素(O2)などの可燃性非凝縮性ガスが、水または他の無害な酸化物および/もしくは水素化物に反応するのを促進するパラジウム(Pd)またはパラジウム合金であってもよい。白金(Pt)、ロジウム(Rh)、有機化合物などが含まれる他の知られた触媒が、例示のシステム100において触媒材料として使用可能である。触媒プレート105および/または支持メッシュ110は、全体的に触媒材料で製造されてもよく、または触媒材料の表面積を最大にしつつ、必要な触媒材料の量を保つように触媒材料で被覆、マトリックス化、埋め込み等されてもよい。
【0019】
図4は、別の例示の一実施形態の触媒システム200の説明図である。図4に示すように、1つまたは複数の触媒充填部材205が、PCCSコンデンサ50(図1)内のパイプ/チューブ内に置かれる。例えば、触媒充填部材205は、コンデンサ入口51、枝分れ垂直チューブ52、および/または環状ダクト54に置かれてもよく、それぞれが、コンデンサ50(図1)内の非凝縮性ガスを送受する。触媒充填部材205は、締結、溶接、摩擦などによってPCCSコンデンサ構造に保持することができる。
【0020】
触媒充填部材205は、図4に示すように、触媒充填部材205が内部に置かれる構造の断面を満たす2枚以上の交差プレートを有する十字形であってもよい。代替として、触媒充填部材205は、構造51、52、54などの内部で分離され、任意の向きに平行であってもよい。触媒充填部材205は、構造51、52、54などの内部に複数の触媒充填部材205を収容し、触媒充填部材205の表面積を増大させるように薄くてもよい。
【0021】
図4の細部Aおよび細部Bに示すように、特に、触媒充填部205が、入口51またはチューブ52に置かれPCCSコンデンサ50(図1)に流れ込む蒸気および復水に直接接触する場合、触媒充填部材205は、表面積を増大させ、および/または触媒充填部材205からの排水を促進するいくつかの異なる表面を備えてもよい。細部Aは、タブからの排水であって、触媒充填部材205の表面から離れる排水を促進できるタブ付き表面206を示す。細部Bは、表面積を増大させ、触媒充填部材205からのチャネル内の液体の流れを促進し、非凝縮性ガスが内部で触媒材料と接触および相互作用するのを促進する縞のある表面または畝のある表面207を示す。あるいは、例えば、構造51、52、54内の一部の流路が、触媒充填部材205の表面によって維持され完全閉塞されないという理解の下で、触媒充填部材205は、平坦表面、多孔状表面、凸凹表面、スパイク状表面、および/または他の任意のタイプの所望の表面を有してもよい。
【0022】
触媒充填部材205は、非凝縮性ガスの非爆発性反応を促す触媒材料を含む。例えば、触媒材料は、水素(H2)および/または酸素(O2)などの可燃性非凝縮性ガスが、水または他の無害な酸化物および/もしくは水素化物に反応するのを促進するパラジウム(Pd)またはパラジウム合金であってもよい。白金(Pt)、ロジウム(Rh)、有機化合物などが含まれる他の知られた触媒が、例示のシステム200において触媒材料として使用可能である。触媒充填部材205は、全体的に触媒材料で製造されてもよく、または触媒材料の表面積を最大にしつつ、必要な触媒材料の量を保つように触媒材料で被覆、マトリックス化、埋め込み等されてもよい。
【0023】
図5は、別の例示の一実施形態の触媒システム300の説明図である。図5に示すように、触媒コーティングまたはライナ305が、PCCSコンデンサ50(図1)内のパイプ/チューブの表面にコーティングされ/置かれている。例えば、触媒コーティング305は、コンデンサ入口51、枝分れ垂直チューブ52、および/または環状ダクト54に置かれてもよく、それぞれが、コンデンサ50(図1)内の非凝縮性ガスを送受する。加えて、触媒コーティング305は、下部ヘッダ53(図1)などの他のPCCS構造の内面、あるいは非凝縮性ガス流を受ける他の原子炉構造および/または非凝縮性ガスによる爆発的損傷に対して特に脆弱な他の原子炉構造に置かれてもよい。
【0024】
触媒コーティング305は、構造51、52、54などに取り付けたライナ、またはそれら構造に摩擦により位置するライナの形態であってもよく、あるいは、例えば、構造51、52、54などの表面に付着した化学コーティングであってもよい。触媒コーティング305は、構造51、52、54などを貫く流れを収容するように薄くすることができる。特に、触媒コーティング305が、入口51またはチューブ52に置かれPCCSコンデンサ50(図1)に流れ込む蒸気および復水に直接接触する場合、触媒コーティング305は、表面積を増大させ、および/または触媒コーティング305からの排水を促進するいくつかの異なる表面を備えてもよい。例えば、構造51、52、54内の一部の流路が、触媒コーティング305によって維持され完全閉塞されないという理解の下で、触媒充填部材205は、平坦表面、多孔状表面、凸凹表面、スパイク状表面、タブ付き表面、縞のある表面、および/または他の任意のタイプの所望の表面を有してもよい。触媒コーティング305は、蒸気をはじき、および/または触媒コーティング305から凝縮水を取り除くのを容易にし、非凝縮性ガスが内部で触媒材料と接触および相互作用するのを促進する疎水性要素を含むこともできる。例えば、静電的に施されるフッ素重合体、例えば、Teflon(登録商標)が、触媒コーティング305を有する領域へ施されてもよい。
【0025】
触媒コーティング305は、非凝縮性ガスの非爆発性反応を促す触媒材料を含む。例えば、触媒材料は、水素(H2)および/または酸素(O2)などの可燃性非凝縮性ガスが、水または他の無害な酸化物および/もしくは水素化物に反応するのを促進するパラジウム(Pd)またはパラジウム合金であってもよい。白金(Pt)、ロジウム(Rh)、有機化合物などが含まれる他の知られた触媒が、例示のシステム300において触媒材料として使用可能である。触媒コーティング305は、全体的に触媒材料で製造されてもよく、または触媒材料の表面積を最大にしつつ、必要な触媒材料の量を保つように触媒材料で被覆、マトリックス化、埋め込み等されてもよい。
【0026】
図6Aおよび図6Bは、ベント管路54で用いるのに適した追加の例示の一実施形態の触媒システム400の説明図である。触媒システム400をベント管路内に配置することにより、ベント管路54内の復水の存在または閉塞のリスクを最小にしつつ、触媒材料と非凝縮性ガスの間の直接的接触を可能にすることができる。さらに、ベント管路54内に配置することにより、下部ヘッダ53において非凝縮性ガスの発火が生じた場合に触媒システム400に損傷を与えるリスクのない、非凝縮性ガスを安定して利用可能な例示の実施形態のシステム400を提供する。
【0027】
図6Aおよび6Bに示すように、例示の実施形態の触媒システム400は、フランジ404上で、ベント管路54の入口に間隔をおいて配置した複数の触媒プレート405を備えており、このベント管路54は、下部ヘッダ53の外側に延びている。触媒プレート405は、一定の間隔で配置され、フレーム406内の一定の位置に保持することができ、それによって触媒プレートは、ベント管路54の上部に容易に挿入される。触媒プレート405は、ベント管路54内に複数の触媒プレート405を収容し、触媒プレート405の表面積を増大させるように薄くてもよい。触媒プレート405は、表面積を増大させ、触媒プレート405からの排水を促進し、非凝縮性ガスが内部で触媒材料と接触および相互作用するのを促進する波状または波形の表面を備えてもよい。あるいは、例えば、触媒プレート405は、平坦表面、多孔状表面、凸凹表面、スパイク状表面、タブ付き表面、縞のある表面、および/または他の任意のタイプの所望の表面を有してもよい。
【0028】
触媒プレート405は、非凝縮性ガスの非爆発性反応または再結合を促す触媒材料を含む。例えば、触媒材料は、水素(H2)および/または酸素(O2)などの可燃性非凝縮性ガスが、水または他の無害な酸化物および/もしくは水素化物に反応するのを促進するパラジウム(Pd)またはパラジウム合金であってもよい。白金(Pt)、ロジウム(Rh)、有機化合物などが含まれる他の知られた触媒が、例示のシステム100において触媒材料として使用可能である。触媒プレート405は、全体的に触媒材料で製造されてもよく、または触媒材料の表面積を最大にしつつ、必要な触媒材料の量を保つように触媒材料で被覆、マトリックス化、埋め込み等されてもよい。
【0029】
例示の実施形態の触媒システム400は、液体または復水が、下部ヘッダ53から例示の実施形態のシステム400に入るのを防ぐのに役立つフードまたはキャップ410をさらに備えてもよく、これによって触媒プレート405は、実質的に乾いたままとなると共に、これらプレートを越えて流れる非凝縮性ガスとの接触を保つ。図6Aに示すように、キャップ410は、ベント管路54の上面に接合することができるが、ガスが、ベント管路に流れ込むことを可能にする。キャップ410は、ガスが下部ヘッダ53内またはPCCSコンデンサ50(図1)の他の部分内で発火した場合に、ベント管路54内に整列した触媒プレート405に対する損傷をさらに防ぐことができる。モジュールフレーム406内のキャップ410および触媒プレート405は、設置/修理/検査/などのためにベント管路54から共に容易に取り外し可能であり得る。例えば、キャップ410は、フランジ404上へねじ留めされてもよく、触媒プレート405および任意のフレーム406は、キャップ410の下でベント管路54の上部の内側に位置してもよい。
【0030】
例示の実施形態のシステムは、原子力プラントのPCCSコンデンサ50(図1)内に触媒材料を配置するが、従来のプラントまたは将来開発されるプラントの他の位置が、例示のシステムで使用できることが理解されよう。PCCSコンデンサを含めてそのような位置は、制御されていない非凝縮性ガス反応によって損傷を受け、特有の形で非凝縮性ガスの流れまたは滞留に暴露され、および/または非凝縮性ガスの再結合による熱エネルギーを安全に除去するように配置される可能性が特にあり得る。PCCSコンデンサ50は、原子力発電プラント内に放出した非凝縮性ガスを受け入れるその位置および機能のため、これらの特徴のいくつかを保有してもよく、PCCSコンデンサ内の例示の実施形態の触媒システムは、原子力プラントに放出した非凝縮性ガスの大部分を再結合し、爆発の可能性および格納容器内のガス圧を下げることができるようになっている。例示の実施形態のシステムにおける再結合を通じて放出した熱は、PCCSコンデンサ50からPCCSプール20へ容易に伝達することができる。加えて、例示の実施形態のシステムは、さらなる外部電源または強制ガス流がなくても、放出した非凝縮性ガスの大部分を受け取り、再結合することができる。
【0031】
例示の方法は、1つまたは複数の例示の実施形態の触媒システムをPCCSコンデンサ、または静的な非凝縮性の再結合および除去から利益を受け得るESBWRなどの既知の設備または将来の設備内の機器の他の適当な部分に設置することを含む。例示の実施形態100、200および/または300は、ある特定のプラントの設計の要求に基づいて、個々におよび様々な組合せで設置されてもよい。そのような設置は、プラント建設中、機器の建設または引き渡し中、および/または運転中、例えば燃料供給停止中の建設の後に行うことができる。
【0032】
これらを用いる例示の実施形態のシステムおよび方法は、非凝縮性ガスの除去を強化するので、プラントの運転は、強化した除去を利用するように修正することができる。例示の方法は、内部に設置した1つまたは複数の例示の実施形態の触媒システム100、200および/または300を有するPCCSコンデンサ50を増加した圧力で運転することを含む。圧力の増加を例示の実施形態と組み合わせることにより、非凝縮性の再結合およびPCCSコンデンサ50からの熱伝達をさらに促すことができる。例えば、圧力の増加は、格納容器10の圧力を増加させること、および/またはPCCSコンデンサ50内のパイプ52、54などを狭くすることによって実現することができる。
【0033】
かくして、例示の実施形態および方法を説明しているが、例示の実施形態は、さらなる発明行為がなくても日常の実験を通じて変更できることが、当業者によって理解されよう。変更形態は、例示の実施形態の趣旨および範囲から逸脱するものとみなされず、当業者に自明であろうそのような修正形態の全ては、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0034】
10 格納容器建屋;格納容器
15 重力落下式注水系
16 圧力抑制プール
20 PCCSプール
30 ファン
50 PCCSコンデンサ
51 コンデンサ入口
52 垂直チューブ
53 下部ヘッダ
54 環状ダクト
54A 内側通路
55 ドレインマニホルド
57 共用のドレイン管路
58 ベント管路
59 スパージャ
65 圧縮波バッフル
75 ベントフード;ドリップフード
100 例示の実施形態の触媒システム
105 触媒プレート
110 支持メッシュ
200 例示の実施形態の触媒システム
205 触媒充填部材
206 タブ付き表面
300 例示の実施形態の触媒システム
305 触媒コーティングまたはライナ
400 例示の実施形態の触媒システム
404 フランジ
405 触媒プレート
406 フレーム
410 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラント内の非凝縮性ガスを静的に除去するシステム(100、200、300、400)であって、
非凝縮性ガス暴露を受ける領域内に触媒材料(105、205、305、405)を備え、前記触媒材料(105、205、305、405)が、前記非凝縮性ガスの不活性副生成物への反応を触媒するように構成される、システム(100、200、300、400)。
【請求項2】
前記領域が、前記原子力発電プラント内の静的格納容器冷却系(PCCS)コンデンサ(50)内にある、請求項1記載のシステム(100、200、300、400)。
【請求項3】
前記領域が、前記PCCSコンデンサ(50)の下部ヘッダ(53)であり、前記システム(100)が、
前記下部ヘッダ(53)内のドレインマニホルド(55)のドリップフード(75)の下に配置した少なくとも1つの触媒プレート(105)をさらに備え、前記触媒プレート(105)が、前記触媒材料を含む、請求項2記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記ドリップフード(75)に少なくとも1つの支持メッシュ(110)をさらに備え、前記支持メッシュ(110)は、前記ドリップフード(75)の下で前記触媒プレート(105)を支持するように配置され、前記支持メッシュ(110)は、前記支持メッシュ(110)を通じて前記非凝縮性ガスを流すことが可能であり、前記少なくとも1つの触媒プレート(105)が、前記非凝縮性ガスとの接触を促進する波形表面を含む、請求項3記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記領域が、前記PCCSコンデンサ(50)の凝縮チューブ(52)、および前記PCCSコンデンサ(50)の環状出口(54)のうちの少なくとも1つであり、前記システム(200、300)が、
前記領域内に配置した触媒充填部材(205)、および前記領域の内面の触媒コーティング(305)のうちの少なくとも1つをさらに備え、前記触媒充填部材(205)および前記触媒コーティング(305)のうちの前記少なくとも1つが、前記触媒材料を含む、請求項2記載のシステム(200、300)。
【請求項6】
前記領域が、前記PCCSコンデンサ(50)の環状出口(54)におけるベント管路(58)であり、前記システム(400)が、
前記ベント管路(58)内に配置した、前記触媒材料を含む少なくとも1つの触媒プレート(405)と、
前記少なくとも1つの触媒プレート(405)上で、前記ベント管路(58)にあるキャップ(410)とをさらに備え、前記キャップ(410)は、凝縮流体が、前記触媒プレート(405)上へ流れるのを防ぐが、非凝縮性ガスが、前記触媒プレート(405)上へ流れることを可能にする、請求項2記載のシステム(400)。
【請求項7】
前記触媒材料(105、205、305、405)が、O2およびH2を結合させるようになされるパラジウムである、請求項1記載のシステム(100、200、300、400)。
【請求項8】
前記システムが、静的であるようにいずれの電動構成要素も除外している、請求項1記載のシステム(100、200、300、400)。
【請求項9】
原子力発電プラント内の非凝縮性ガスを静的に除去する方法であって、
前記原子力発電プラント内の静的格納容器冷却系(PCCS)コンデンサ(50)内にあるドリップフード(75)の下に少なくとも1つの触媒プレート(105)を設置するステップと、
前記PCCSコンデンサ(50)の凝縮チューブ(52)および前記PCCSコンデンサ(50)の環状出口(54)のうちの少なくとも1つの内に少なくとも1つの触媒充填部材(205)を設置するステップ、ならびに
前記凝縮チューブ(52)および前記環状出口(54)のうちの少なくとも1つの内面を触媒コーティング(305)でコーティングするステップ
のうちの少なくとも1つのステップと
を含み、前記触媒プレート(105)、前記触媒充填部材(205)、および前記触媒コーティング(305)が、前記非凝縮性ガスの反応を触媒する触媒材料を含む、方法。
【請求項10】
前記PCCSコンデンサ(50)の運転圧力を増大させるステップ
をさらに含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−58236(P2012−58236A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192471(P2011−192471)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】