説明

原子吸光分析用キュベット

【課題】フレームレス原子吸光分析において希土類元素の高精度な分析を可能とする原子吸光分析用キュベットを提供する。
【解決手段】黒鉛管またはガラス状炭素管を原子化炉として備えた原子吸光分析用キュベットであって、原子化炉の少なくとも内表面に、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が少なくとも形成されてなる、原子吸光分析用キュベットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームレス原子吸光分析による微量元素分析に用いられる原子吸光分析用キュベットに関する。
【背景技術】
【0002】
微量元素分析手法として、フレームレス原子吸光分析がある。フレームレス原子吸光分析は、キュベット内に試料を滴下した後、キュベットを昇温し、試料を原子化させて吸光度を求めることにより、試料中に含まれる元素の検出や定量を行なうものである。通常原子吸光分析用キュベットに使用される材質としては、黒鉛が用いられている。高融点金属のタンタルなどを用いたものもあるが、非常に高価である。
【0003】
黒鉛炉は、使用に伴い劣化していき、測定の精度、感度、再現性が悪くなるので注意が必要である。黒鉛炉の劣化を抑えるために、黒鉛炉の表面を熱硬化性樹脂や熱分解炭素により被覆したものや、ガラス状炭素材から作製された原子吸光分析用キュベットが考案されている。
【0004】
特許文献1には、耐久性、耐浸蝕性が大きい蒸発管を得る目的で、肉厚0.5〜2.5mmの黒鉛管に熱硬化性樹脂を含浸し、硬化、焼成する原子吸光用黒鉛蒸発管の製造法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、熱分解炭素被覆キュベットで得られる程度の分析精度を十分確保可能とした上で、さらに、寿命が長く、分析効率の向上にも寄与することができ、分析コストの低減化に貢献することができる原子吸光分析用キュベットとして、ガラス状炭素からなる原子吸光分析用キュベットが提案されている。
【0006】
しかし、一般に、黒鉛炉等の炭素炉を使用したフレームレス原子吸光分析によって希土類元素の微量検出や定量を行なうことは困難である。炭素炉の表面で炭素と希土類元素とが安定な化合物を生成し、希土類元素が原子化しなくなるためである。そのため、希土類元素の定量分析にはICP(誘導結合プラズマ)発光分析やフレーム原子吸光分析などが用いられている。しかしICP発光分析やフレーム原子吸光分析の場合、フレームレス原子吸光分析に比べて試料が多量に必要なため、試料が少量しか確保できない場合は分析が困難である。上記の特許文献1および特許文献2の技術においても、炉の表面に存在する炭素と希土類元素とが安定な化合物を生成する場合があり、希土類元素の微量分析を十分な精度で行なうことは困難である。
【特許文献1】特開昭60−049247号公報
【特許文献2】特開平10−300663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を解決し、フレームレス原子吸光分析において希土類元素の高精度な分析を可能とする原子吸光分析用キュベットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、黒鉛管またはガラス状炭素管を原子化炉として備えた原子吸光分析用キュベットであって、原子化炉の少なくとも内表面に、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が少なくとも形成されてなる、原子吸光分析用キュベットに関する。
【0009】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉が黒鉛管であり、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。この場合、該炭素が黒鉛管を構成する炭素の一部であることが好ましい。
【0010】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉が黒鉛管であり、被覆層として、窒化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0011】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉が黒鉛管であり、被覆層として、炭化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0012】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉が黒鉛管であり、被覆層として、ホウ化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0013】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉がガラス状炭素管であり、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。この場合、該炭素がガラス状炭素管を構成する炭素の一部であることが好ましい。
【0014】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉がガラス状炭素管であり、被覆層として、窒化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0015】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉がガラス状炭素管であり、被覆層として、炭化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0016】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、原子化炉がガラス状炭素管であり、被覆層として、ホウ化物を含む層が少なくとも形成されてなることが好ましい。
【0017】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、被覆層として、熱硬化性樹脂を含む層がさらに形成されてなることが好ましい。
【0018】
本発明の原子吸光分析用キュベットにおいては、被覆層として、熱分解炭素を含む層がさらに形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フレームレス原子吸光分析により希土類元素の微量検出や定量が可能になる原子吸光分析用キュベットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、本発明で説明される図面において、同一の参照符号で示される部分は、同一の形状または機能を有する部分を表わすものとする。
【0021】
本発明の原子吸光分析用キュベットは、黒鉛管またはガラス状炭素管を原子化炉として備える。黒鉛管およびガラス状炭素管は、耐久性、耐浸蝕性に優れる点で好ましい。黒鉛管は、耐久性が良好でかつ低コストである点で好ましく、ガラス状炭素管は、耐久性が良好でかつ分析試料中の元素が吸着し難い点で好ましい。
【0022】
本発明において、該原子化炉の少なくとも内表面には、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が少なくとも形成されている。原子化炉の内表面に、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が形成されることにより、希土類元素を含む分析試料の分析の際に、該希土類元素と原子化炉を構成する炭素との反応が防止され、該希土類元素の微量検出や定量を高精度で行なうことが可能となる。
【0023】
被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層は好ましい。希土類元素と炭素との化合物は、いったん生成すると、たとえば2000℃以上、特に2000〜3000℃程度の高温領域においても安定であり、試料中の希土類元素が原子化する温度では反応性が乏しく、劣化し難い点で有利である。希土類元素と炭素とからなる層の存在によって、分析試料中の希土類元素と原子化炉を構成する炭素との反応が防止される。
【0024】
被覆層としては、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層もまた好ましい。窒素、炭素、ホウ素の原子半径が小さいため、窒化物、炭化物、ホウ化物は、侵入型化合物を生成しやすい。例えば、XYという侵入型化合物(X:Yよりも原子半径の大きい元素、Y:窒素、炭素、ホウ素のいずれかの元素)では、Xの原子半径に対してYの原子半径が小さいために、Xの原子格子の隙間にYが入り込むことができる。しかし、希土類元素の原子半径は比較的大きいため、侵入型化合物XY中に希土類元素は入りこみ難い。また、希土類元素が原子化される温度では、上記のXYのような侵入型化合物は融点や分解温度に達しないために、希土類元素とXYとの反応性は乏しい。
【0025】
よって、被覆層として、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が形成される場合、分析試料中の希土類元素と原子化炉を構成する炭素との接触が該被覆層によって防止される。これにより、希土類元素と炭素との化合物の生成が抑制され、希土類元素の微量検出および定量を高精度で行なうことが可能となる。また、窒化物、炭化物、ホウ化物は、いずれも、たとえば2000℃以上、特に2000〜3000℃程度の高温領域において安定であり、試料中の希土類元素が原子化する温度では反応性が乏しく、劣化し難い点で有利である。
【0026】
窒化物のうち、たとえば、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)は、希土類元素が入り込みにくく、融点や分解温度が高いために反応性が乏しく、劣化し難い点で特に好ましい。
【0027】
炭化物のうち、たとえば、炭化タンタル(TaC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)は、希土類元素が入り込みにくく、融点や分解温度が高いために反応性が乏しく、劣化し難い点で特に好ましい。
【0028】
ホウ化物のうち、たとえば、ホウ化タングステン(WB)、二ホウ化タングステン(WB2)、二ホウ化タンタル(TaB2)、二ホウ化ニオブ(NbB2)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)は、希土類元素が入り込みにくく、融点や分解温度が高いために反応性が乏しく、劣化し難い点で特に好ましい。
【0029】
また、被覆層として、熱硬化性樹脂を含む層がさらに形成されても良い。この場合、さらに良好な耐久性、耐浸蝕性が付与される点で有利である。
【0030】
また、被覆層として、熱分解炭素を含む層がさらに形成されても良い。この場合、原子化炉の内表面が緻密化し、該内表面に吸着したガスの放出量が極めて少なくなるという効果が得られる。よって、たとえば、熱分解炭素を含む層をまず形成することにより、その上に、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物のいずれかを含む層を均一に被覆することができる。この場合、キュベットを高温で使用した場合にも、ガスの放出による被覆層の剥離が生じ難いという効果が付与される。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る原子吸光分析用キュベット1を表す模式的な断面図である。本実施の形態につき図1を参照して説明する。原子吸光分析用キュベット1は、黒鉛管からなる原子化炉2と、被覆層3とを備える。原子化炉2には、キュベット内に分析試料を注入するための試料注入穴4が設けられている。本実施の形態においては、被覆層3として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が形成される。
【0032】
本発明においては、原子化炉の少なくとも内表面、すなわち分析試料と接触する面に被覆層が形成されていれば良いが、原子化炉の外表面に被覆層が形成されても構わない。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0033】
被覆層3に含まれる希土類元素は、分析試料中の希土類元素と必ずしも同じ元素である必要はないが、分析試料中の希土類元素が原子化する温度よりも、被覆層を構成する希土類元素と炭素との化合物の融点が高いことが好ましい。
【0034】
このように、本発明の原子吸光分析用キュベット1においては、黒鉛管からなる原子化炉2の内表面に希土類元素と炭素との化合物を含む被覆層3を形成させることによって、分析試料中の希土類元素と原子化炉2の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉2の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0035】
希土類元素と炭素との化合物における該炭素は、好ましくは黒鉛管を構成する炭素の一部とされる。この場合、たとえば希土類元素を黒鉛管の少なくとも内表面に接触させることにより、該黒鉛管の少なくとも内表面に、希土類元素と炭素との化合物を簡便に形成できる点で有利である。
【0036】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。黒鉛管からなる原子化炉2の表面に、希土類元素と炭素との化合物を含む被覆層3として、たとえばSmと炭素との化合物を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。そして、得られた黒鉛管を、たとえば100ppmに調整したSm水溶液に含浸したのち、たとえば2500℃で加熱処理して、黒鉛管の内表面および外表面に、希土類元素であるSmと炭素の化合物からなる層を被覆層として形成する。なおこの場合、希土類元素と炭素との化合物における該炭素は、黒鉛管を構成する炭素の一部である。以上の方法により、本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図1に示す原子吸光分析用キュベット1においては、黒鉛管からなる原子化炉2の少なくとも内表面に、被覆層3として、窒化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉2の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉2の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0038】
なお本実施の形態においても、原子化炉2の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0039】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。黒鉛管からなる原子化炉2の表面に、窒化物を含む被覆層3としてたとえばTaNを形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。そして、得られた黒鉛管の内表面および外表面に、TaNからなる層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。
【0040】
なお、上記のTaNに代えて、たとえば、TiN、ZrN等を用いても上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0041】
(第3の実施の形態)
図1に示す原子吸光分析用キュベット1においては、黒鉛管からなる原子化炉2の少なくとも内表面に、被覆層3として、炭化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉2の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉2の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0042】
なお本実施の形態においても、原子化炉2の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0043】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。黒鉛管からなる原子化炉2の表面に、炭化物を含む被覆層3としてたとえばTaCを形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。そして、得られた黒鉛管の内表面および外表面にTaCを含む層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成させる。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。
【0044】
なお、上記のTaCに代えて、HfC、WC等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図1に示す原子吸光分析用キュベット1においては、黒鉛管からなる原子化炉2の少なくとも内表面に、被覆層3として、ホウ化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉2の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉2の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0046】
なお本実施の形態においても、原子化炉2の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0047】
本発明のより具体的な態様について説明する。黒鉛管からなる原子化炉2の表面に、ホウ化物を含む被覆層3としてたとえばWBを形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。そして、得られた黒鉛管の内表面および外表面にWBからなる層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット1を得ることができる。
【0048】
なお、上記のWBに代えて、WB2、TaB2、NbB2、ZrB2等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0049】
(第5の実施の形態)
図2は、本発明に係る原子吸光分析用キュベット5を表す模式的な断面図である。本実施の形態につき図2を参照して説明する。原子吸光分析用キュベット5は、ガラス状炭素管からなる原子化炉6と、被覆層3とを備える。原子化炉6には、キュベット内に分析試料を注入するための試料注入穴4が設けられている。本実施の形態においては、被覆層3として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が形成される。
【0050】
図2に示す原子吸光分析用キュベット5においても、原子化炉6の少なくとも内表面、すなわち分析試料と接触する面に被覆層3が形成されていれば良いが、原子化炉6の外表面に被覆層3が形成されても構わない。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉6の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0051】
図2に示す原子吸光分析用キュベット5においては、ガラス状炭素管からなる原子化炉6の少なくとも内表面に希土類元素と炭素との化合物を含む被覆層3を形成することによって、分析試料中の希土類元素と原子化炉の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉6の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0052】
本発明の原子吸光分析用キュベットがガラス状炭素管からなる原子化炉を備える場合も、希土類元素と炭素との化合物における該炭素は、好ましくはガラス状炭素管を構成する炭素の一部とされる。この場合、たとえば希土類元素をガラス状炭素管の少なくとも内表面に接触させることにより、該ガラス状炭素管の少なくとも内表面に、希土類元素と炭素との化合物を簡便に形成できる点で有利である。
【0053】
原子化炉6を構成するガラス状炭素は、通常のプロセス、つまり、熱硬化性樹脂を成型して重合・硬化させた後、機械加工し、機械加工品を炭素化し、さらに高温処理して得ることができる。また、緻密性、耐酸化性、耐薬品性等の特性を十分に有するガラス状炭素が得られる方法であれば、従来公知の方法を適宜採用することができる。また、熱硬化性樹脂に黒鉛粉や炭素繊維等を混入した原料を用いて製造したガラス状炭素も適用可能である。得られたガラス状炭素は、ダイヤモンド切削工具とダイヤモンド砥石とを用いて加工、成型することができる。
【0054】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。ガラス状炭素管からなる原子化炉6の表面に、たとえばSmと炭素との化合物からなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。ガラス状炭素は、たとえば、熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製することができる。得られたガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。その後、たとえば100ppm程度に調整したSm水溶液に含浸させて2500℃で加熱処理し、ガラス状炭素管の内表面および外表面に、希土類元素であるSmと炭素との化合物からなる層を被覆層として形成する。なおこの場合、希土類元素と炭素との化合物における該炭素は、ガラス状炭素管を構成する炭素の一部である。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。
【0055】
(第6の実施の形態)
図2に示す原子吸光分析用キュベット5においては、ガラス状炭素管からなる原子化炉6の少なくとも内表面に、被覆層3として、窒化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉6の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉6の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。なお本実施の形態においても、原子化炉6の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0056】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。ガラス状炭素管からなる原子化炉6の表面に、窒化物を含む被覆層3としてたとえばTaNを形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。ガラス状炭素は、たとえば熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製することができる。このガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。そして、得られたガラス状炭素管の内表面および外表面にTaNからなる層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。
【0057】
なお、上記のTaNに代えて、TiN、ZrN等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0058】
(第7の実施の形態)
図2に示す原子吸光分析用キュベット5においては、ガラス状炭素管からなる原子化炉6の少なくとも内表面に、被覆層3として、炭化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉6の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉6の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。なお本実施の形態においても、原子化炉6の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0059】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。ガラス状炭素管からなる原子化炉6の表面に、炭化物を含む被覆層3としてたとえばVCを形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。ガラス状炭素は、たとえば熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製することができる。このガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。そして、得られたガラス状炭素管の内表面および外表面にVCからなる層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。
【0060】
なお、上記のVCに代えて、たとえばZrC等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0061】
(第8の実施の形態)
図2に示す原子吸光分析用キュベット5においては、ガラス状炭素管からなる原子化炉6の少なくとも内表面に、被覆層3として、ホウ化物を含む層が形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉6の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉6の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。なお本実施の形態においても、原子化炉6の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0062】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。ガラス状炭素管からなる原子化炉6の表面に、ホウ化物を含む被覆層3としてたとえばWB2を形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。ガラス状炭素は、たとえば熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製することができる。このガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。そして、得られたガラス状炭素管の内表面および外表面にWB2からなる層を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット5を得ることができる。
【0063】
なお、上記のWB2に代えて、たとえばTaB2等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0064】
(第9の実施の形態)
図3は、本発明に係る原子吸光分析用キュベット7を表す模式的な断面図である。本実施の形態につき図3を参照して説明する。原子吸光分析用キュベット7は、黒鉛管またはガラス状炭素管からなる原子化炉8と、被覆層3とを備える。原子化炉8には、キュベット内に分析試料を注入するための試料注入穴4が設けられている。本実施の形態においては、被覆層3として、熱硬化性樹脂を含む層と、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層とが形成される。
【0065】
図3に示す原子吸光分析用キュベット7においても、原子化炉8の少なくとも内表面、すなわち分析試料と接触する面に被覆層3が形成されていれば良いが、原子化炉8の外表面に被覆層3が形成されても構わない。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉8の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0066】
図3に示す原子吸光分析用キュベット8においては、炭素管またはガラス状炭素管からなる原子化炉8の少なくとも内表面に上記のような被覆層3を形成することによって、分析試料中の希土類元素と原子化炉の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉8の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0067】
熱硬化性樹脂としては、たとえば、レゾール系フェノール樹脂等が好ましい。また、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層を形成する場合、被覆層3に含まれる希土類元素は分析試料中の希土類元素と必ずしも同じ元素である必要はないが、分析試料中の希土類元素が原子化する温度よりも、被覆層3を構成する希土類元素と炭素との化合物の融点が高いことが好ましい。
【0068】
原子化炉8がガラス状炭素管からなる場合、ガラス状炭素は、通常のプロセス、つまり、熱硬化性樹脂を成型して重合・硬化させた後、機械加工し、機械加工品を炭素化し、さらに高温処理して得ることができる。また、緻密性、耐酸化性、耐薬品性等の特性を十分に有するガラス状炭素が得られる方法であれば、従来公知の方法を適宜採用することができる。また、熱硬化性樹脂に黒鉛粉や炭素繊維等を混入した原料を用いて製造したガラス状炭素も適用可能である。得られたガラス状炭素は、ダイヤモンド切削工具とダイヤモンド砥石とを用いて加工、成型することができる。
【0069】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。黒鉛管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層と希土類元素と炭素との化合物を含む層とからなる被覆層3を形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。まず、黒鉛管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を形成する。その後、たとえば100ppmに調整したSm水溶液に黒鉛管を含浸し、たとえば2500℃で加熱処理してSmと炭素との化合物を黒鉛管の内表面および外表面に形成して、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0070】
(第10の実施の形態)
図3に示す原子吸光分析用キュベット7においては、たとえば、上記の第9の実施の形態における希土類元素と炭素との化合物を含む層に代えて窒化物を含む層が形成されても良い。すなわち、黒鉛管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層と窒化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。黒鉛管はたとえば、肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。まず、黒鉛管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を、上記の第9の実施の形態と同様にして形成し、その上に、窒化物であるTaNを化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0071】
(第11の実施の形態)
図3に示す原子吸光分析用キュベット7においては、たとえば、上記の第9の実施の形態における希土類元素と炭素との化合物を含む層に代えて炭化物を含む層が形成されても良い。すなわち、黒鉛管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層と炭化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。黒鉛管はたとえば、肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。まず、黒鉛管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を、上記の第9の実施の形態と同様にして形成し、その上に、炭化物であるTiCを化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0072】
(第12の実施の形態)
図3に示す原子吸光分析用キュベット7においては、たとえば、上記の第9の実施の形態における希土類元素と炭素との化合物を含む層に代えてホウ化物を含む層が形成されても良い。すなわち、黒鉛管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層とホウ化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。黒鉛管はたとえば、肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。まず、黒鉛管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を、上記の第9の実施の形態と同様にして形成し、その上に、ホウ化物であるNbB2を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0073】
(第13の実施の形態)
本実施の形態では、図3に示す原子吸光分析用キュベット7においてガラス状炭素管からなる原子化炉8を用い、被覆層3として、熱硬化性樹脂を含む層および希土類元素と炭素との化合物を含む層を形成する場合について説明する。
【0074】
ガラス状炭素は、たとえば熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製することができる。このガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。得られたガラス状炭素管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を形成する。その後、100ppm程度に調整したSm水溶液に含浸させて2500℃で加熱処理し、ガラス状炭素管の内表面および外表面に、Smと炭素との化合物からなる層を形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0075】
(第14の実施の形態)
本実施の形態では、上記の第13の実施の形態における希土類元素と炭素との化合物に代えて、炭化物を含む層を形成する場合について説明する。ガラス状炭素管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層と炭化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。ガラス状炭素は、上記の第13の実施の形態と同様にして作製できる。このガラス状炭素を、たとえば肉厚2mmの管になるように加工する。得られたガラス状炭素管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を上記の第13の実施の形態と同様にして形成させる。ガラス状炭素管の内表面および外表面に、炭化物であるTaCを化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0076】
(第15の実施の形態)
図3に示す原子吸光分析用キュベット7においては、被覆層3として、熱分解炭素を含む層と、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層とが形成されても良い。この場合も、分析試料中の希土類元素と原子化炉8の内表面の炭素との反応を防ぐことができるとともに、原子化炉8の劣化が抑制され、希土類元素の微量検出や定量が可能になる。
【0077】
なお本実施の形態においても、原子化炉8の内表面の他、外表面にも被覆層3を形成することができる。この場合、外表面に形成される被覆層の構成材料が、内表面に形成される被覆層の構成材料と同一でも異なっても良いが、原子吸光分析用キュベットをより低コストで製造できる点では、原子化炉の外表面と内表面とに同一の構成材料からなる被覆層を形成することが好ましい。
【0078】
本発明において、熱分解炭素を含む層が形成される場合、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層との好ましい組合せとしては、たとえば、窒化物、炭化物、ホウ化物として、TaN、TiN、ZrN、TaC、HfC、VC、ZrC、NbC、WC、TiC、WB、WB2、TaB2、NbB2、ZrB2の少なくともいずれかを含む層が好ましく採用される。
【0079】
本実施の形態のより具体的な態様について説明する。ガラス状炭素は、たとえば、熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製できる。このガラス状炭素を肉厚2mmの管になるように加工する。このガラス状炭素管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂から、熱分解炭素を含む層を形成する。その上に、窒化物であるTaNを化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0080】
(第16の実施の形態)
本発明においては、上記の第15の実施の形態における窒化物を含む層に代えて、ホウ化物を含む層を形成しても良い。すなわち、ガラス状炭素管からなる原子化炉8の表面に、熱分解炭素を含む層とホウ化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。ガラス状炭素は、たとえば熱硬化性粉末フェノール樹脂に黒鉛微粉を添加して成型して重合、硬化させて作製できる。このガラス状炭素をたとえば肉厚2mmの管になるように加工する。このガラス状炭素管の内表面および外表面に、上記の第15の実施の形態と同様にして熱分解炭素を含む層を形成し、その上に、ホウ化物であるZrB2を化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0081】
なお、ホウ化物として、上記のZrB2に代えて、たとえばWB等を用いても、上記と同様の方法で被覆層3を形成できる。
【0082】
(第17の実施の形態)
本発明においては、上記の第10の実施の形態における窒化物を含む層に代えて、窒化物を含む層および炭化物を含む層を形成しても良い。すなわち、黒鉛管からなる原子化炉8の表面に、熱硬化性樹脂を含む層と窒化物を含む層と炭化物を含む層とからなる被覆層3を形成し、本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。黒鉛管は、たとえば肉厚0.5〜2.5mmに切り出すことができる。まず黒鉛管の内表面および外表面に、熱硬化性樹脂であるレゾール系フェノール樹脂を形成し、その上に、窒化物であるTaN、さらにその上に炭化物であるNbCをそれぞれ化学的蒸着処理や物理的蒸着により形成する。以上の方法により本発明の原子吸光分析用キュベット7を得ることができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の原子吸光分析用キュベットは、フレームレス原子吸光分析用のキュベットとして好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る原子吸光分析用キュベット1を表す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係る原子吸光分析用キュベット5を表す模式的な断面図である。
【図3】本発明に係る原子吸光分析用キュベット7を表す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1,5,7 原子吸光分析用キュベット、2,6,8 原子化炉、3 被覆層、4 試料注入穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛管またはガラス状炭素管を原子化炉として備えた原子吸光分析用キュベットであって、
前記原子化炉の少なくとも内表面に、被覆層として、希土類元素と炭素との化合物、窒化物、炭化物、ホウ化物の少なくともいずれかを含む層が少なくとも形成されてなる、原子吸光分析用キュベット。
【請求項2】
前記原子化炉が黒鉛管であり、
前記被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項3】
前記炭素が前記黒鉛管を構成する炭素の一部である、請求項2に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項4】
前記原子化炉が黒鉛管であり、
前記被覆層として、窒化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項5】
前記原子化炉が黒鉛管であり、
前記被覆層として、炭化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項6】
前記原子化炉が黒鉛管であり、
前記被覆層として、ホウ化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項7】
前記原子化炉がガラス状炭素管であり、
前記被覆層として、希土類元素と炭素との化合物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項8】
前記炭素が前記ガラス状炭素管を構成する炭素の一部である、請求項7に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項9】
前記原子化炉がガラス状炭素管であり、
前記被覆層として、窒化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項10】
前記原子化炉がガラス状炭素管であり、
前記被覆層として、炭化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項11】
前記原子化炉がガラス状炭素管であり、
前記被覆層として、ホウ化物を含む層が少なくとも形成されてなる、請求項1に記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項12】
前記被覆層として、熱硬化性樹脂を含む層がさらに形成されてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の原子吸光分析用キュベット。
【請求項13】
前記被覆層として、熱分解炭素を含む層がさらに形成されてなる、請求項1〜12のいずれかに記載の原子吸光分析用キュベット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−157629(P2008−157629A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343134(P2006−343134)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】