説明

原子炉作業装置及び原子炉作業方法

【課題】炉内の点検や補修などの各種の作業で、ケーブルの取扱いにかかる負荷を低減することのできる原子炉作業装置を提供する。
【解決手段】原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器1内において作業を行う作業機器としての水中ビークル13と、前記原子炉圧力容器の上端近傍またはオペレーションフロアに設置され、水中ビークル13に接続されたケーブル14の繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置15と、ケーブル14の中途に取り付けられ、ケーブル14を原子炉圧力容器1内壁近傍に沿うように垂下させるケーブル中継装置17と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば沸騰水型原子炉発電プラントにおいて、原子炉圧力容器内の洗浄、点検、検査、予防保全、補修などの各種作業を行う原子炉作業装置及び原子炉作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子炉圧力容器内に設置された炉内構造物は、高温高圧環境下において十分な耐食性と機械的強度を有する材料、例えばオーステナイト系ステンレス鋼又はニッケル基合金によって構成されている。
【0003】
ところで、炉内構造物のうち交換が困難な部材については、これらの部材がプラントの長期に及ぶ運転により厳しい環境に曝されるとともに、中性子照射の影響もあり、材料が劣化するという問題が懸念される。特に、炉内構造物の溶接部近傍は、溶接入熱による材料の鋭敏化及び引張り残留応力の影響により潜在的な応力腐食割れの可能性を有している。このような炉内構造物の健全性の確認や予防保全を行うため、従来から種々の点検検査装置や予防保全装置が提案されている。
【0004】
ここでは、原子炉運転停止時に原子炉圧力容器の上部を開放して原子炉内の水中で行われるジェットポンプの検査、補修作業を例として説明する。一般に、ジェットポンプの外面を点検、検査する作業では、原子炉圧力容器の上部に設置された燃料交換機や作業台車から原子炉圧力容器内に検査装置を挿入し、この検査装置をジェットポンプの上部の構造体に固定するか、あるいはライザブレースに着座固定する必要がある。このような検査装置としては、例えば特許文献1に記載された装置がある。また、ジェットポンプの外面を検査、補修する場合、従来では、ケーブルの先端に水中カメラを取り付けて吊り下ろし、連結式の操作ポールの先端に検査補修装置を取り付けて行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−109081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シュラウドより外側で点検、検査を行う作業装置は、薄く小型に形成するとともに、遊泳移動と、対象壁面に貼り付いて接触しながら移動する構造のものがほとんどである。このような点検、検査作業においても20mから30mのケーブルを用いている。したがって、このケーブルが炉内構造物に複数箇所で接触して移動時の負荷が大きくなる場合がある。この場合には、検査装置本体が壁面から離れたり、あるいは姿勢が傾いたりし、点検、検査のやり直しやケーブルの破損が発生する可能性があった。
【0007】
上記のようなケーブルの破損を防止するとともに、点検、検査の信頼性を向上させるためには、装置やケーブルの状況を監視カメラで確認する必要がある。その確認作業には、燃料交換機や専用の作業台車を利用してカメラ操作員及びケーブル操作員など多くの人手が必要であった。
【0008】
また近年、プラントの稼働率を向上させるため、定期検査期間をできるだけ短縮したいとの要求がある。この要求に応えるためには、複数の点検、検査作業を並行して行い、一度に多くの点検、検査を行うことが求められている。それには、燃料交換機や作業用台車を使用した点検、検査とは別に、これら燃料交換機や作業用台車を使用せずに行える装置も求められている。
【0009】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、炉内の点検や補修などの各種の作業で、ケーブルの取扱いにかかる負荷を低減することのできる原子炉作業装置及び原子炉作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る原子炉作業装置は、原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器内において作業を行う作業機器と、前記原子炉圧力容器の上端近傍またはオペレーションフロアに設置され、前記作業機器に接続されたケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置と、前記ケーブルの中途に取り付けられ、前記ケーブルを前記原子炉圧力容器内壁近傍に沿うように垂下させるケーブル中継装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態に係る原子炉作業装置は、原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器内において作業を行う作業機器と、前記原子炉圧力容器の上蓋を外した状態で前記原子炉圧力容器の胴部の上方に設けられたプールの水面上を浮いて移動する水面移動装置と、前記水面移動装置に搭載され、前記作業機器に接続したケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る原子炉作業方法は、原子炉の運転停止時に、原子炉圧力容器上方からケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理ステップと、前記原子炉圧力容器内に繰り出された前記ケーブルをガイドするケーブルガイドステップと、前記ケーブルに接続された作業機器を前記原子炉圧力容器内に移動させて作業を行う移動作業ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態に係る原子炉作業方法は、原子炉の運転停止時に、前記原子炉圧力容器上方に設けられたプールの水面上を浮いて移動する水面移動装置からケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理ステップと、前記ケーブルに接続された作業機器を前記原子炉圧力容器内に移動させて作業を行う移動作業ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炉内の点検や補修などの各種の作業で、ケーブルの取扱いにかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る原子炉作業装置の第1実施形態を原子炉圧力容器内に設置した状態を示す部分断面立面図である。
【図2】図1のケーブルガイド機構を示す立面図である。
【図3】図1の水中ビークルを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る原子炉作業装置の第2実施形態を原子炉圧力容器内に設置した状態を示す部分断面立面図である。
【図5】図4のケーブル処理装置の取付状態を示す拡大側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図4のビークル収納部を示す立面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】第1、第2実施形態における水中ビークルの具体的な構造を示す部分断面立面図である。
【図10】本発明に係る原子炉作業装置の第3実施形態における水面移動装置の設置状態を示す平面図である。
【図11】図10の水面移動装置を示す拡大平面図である。
【図12】図10の水面移動装置を示す部分断面立面図である。
【図13】本発明に係る原子炉作業装置を構成する炉内搬送支援装置を示す部分断面立面図である。
【図14】図13の炉内搬送支援装置を示す平面図である。
【図15】図13の炉内搬送支援装置の取付状態を示す斜視図である。
【図16】図13の炉内搬送支援装置を把持する大型水中ビークルを示す立面図である。
【図17】図16の搬送ビークルを示す平面図である。
【図18】図13の炉内搬送支援装置を把持して原子炉圧力容器内の水中を遊泳移動する大型水中ビークルを示す部分断面立面図である。
【図19】本発明に係る原子炉作業装置による炉内作業時にケーブルを保持するケーブル保持装置を示す斜視図である。
【図20】図19のケーブル保持装置により保持するケーブルを示す断面図である。
【図21】図19のクランプ機構を示す平面図である。
【図22】図19のクランプ機構を示す立面図である。
【図23】図19のケーブル保持装置の内部構造を示す断面図である。
【図24】図19のケーブル保持装置の設置状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る原子炉作業装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は本発明に係る原子炉作業装置の第1実施形態を原子炉圧力容器内に設置した状態を示す部分断面立面図である。図2は図1のケーブルガイド機構を示す立面図である。図3は図1の水中ビークルを示す斜視図である。
【0018】
なお、以下の説明では、沸騰水型原子炉の運転停止時に、原子炉作業装置によりジェットポンプなどの炉内構造物に対して行う各種の作業のうち、検査、補修作業を行う場合を例として説明する。
【0019】
図1に示すように、原子炉圧力容器1は、軸を鉛直とする円筒状であって、その内部に原子炉圧力容器1と同軸の円筒状の構造物であるシュラウド2が設置されている。このシュラウド2の上端には、その円周に沿って上部リング3が配置されている。シュラウド2と原子炉圧力容器1との間の環状部には、インレット管5、ディフューザ6を有する複数のジェットポンプ4が配列されている。ジェットポンプ4の上端は、上部リング3よりも低い位置にある。シュラウド2の上方には、給水スパージャ7とコアスプレイ配管8が原子炉圧力容器1の内壁に沿って設置されている。
【0020】
原子炉圧力容器1の上方には、オペレーションフロア9が設置されている。この原子炉圧力容器1の胴部上方のオペレーションフロア9上には、原子炉作業装置10が配置される。このとき、原子炉は運転停止中であって、原子炉圧力容器1の上蓋(図示せず)及びシュラウド2の上方に設置されるシュラウドヘッドや気水分離器、蒸気乾燥器など(図示せず)は外され、原子炉圧力容器1内は水で満たされている。
【0021】
原子炉作業装置10は、原子炉作業装置10自体を旋回可能とする旋回装置11を備えている。この旋回装置11には、滑車12aを備えたアーム12が取り付けられている。旋回装置11の上部には、作業機器としての水中ビークル13のケーブル14を固定、繰り出し又は引き上げ動作を行うケーブル処理装置15が設置されている。このケーブル処理装置15から繰り出されたケーブル14は、一端が制御装置16と、他端が水中ビークル13にそれぞれ接続されている。
【0022】
水中ビークル13のケーブル14の中途には、原子炉圧力容器1の内壁面に対して着脱可能なケーブル中継手段としてのケーブルガイド機構17a,17b,17c及び17dが鉛直方向に沿って複数個設けられている。これらのケーブルガイド機構17a,17b,17c及び17dは、ケーブル14を原子炉圧力容器1の内壁面に沿うように垂下させる。ケーブルガイド機構17a,17b,17c及び17dは、水中ビークル13のケーブル14の繰り出し動作、引き上げ動作の際にケーブル14を案内するとともに、ケーブル14が炉内構造物に対して干渉するのを防止している。なお、ケーブルガイド機構17a,17b,17c及び17dを一括して説明する場合には、ケーブルガイド機構17とする。
【0023】
図2に示すように、ケーブルガイド機構17は、上下方向に送られるケーブル14が通過可能に平面から見て円環状に形成され、かつその円環が分割されて外側に開閉可能に構成されたガイド部18と、このガイド部18の反対面の4隅に固定され、原子炉圧力容器1の内壁面に対して着脱可能とするための電磁石19a,19b,19c及び19dとを備えている。ケーブルガイド機構17は、ガイド部18、電磁石19a,19b,19c及び19dが電源ケーブル14a,14bから供給される電力により作動し、水中ビークル13が原子炉圧力容器1の内壁面に沿って移動するとき、その内壁面に対して着脱可能に構成されている。
【0024】
なお、本実施形態の電磁石19a,19b,19c及び19dの代替手段として、例えば複数の吸着パッドを取り付けた場合には、電源ケーブル14a,14bに代えてホースが必要になる。これにより、複数の吸着パッドは、上記ホースを通して空気が吸引されて負圧となり、原子炉圧力容器1の内壁面に対して着脱可能に構成される。
【0025】
図3に示すように、水中ビークル13は、下部に検査補修装置20を備えている。制御装置16は、ケーブル14を操作して移動した距離に合わせて、ケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置15を制御する。このとき、水中ビークル13の検査補修装置20は、原子炉圧力容器1内の検査又は補修を行うことが可能に構成されている。
【0026】
(作 用)
本実施形態の原子炉作業装置10は、ケーブル処理装置15によりオペレーションフロア9上から水中ビークル13のケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の処理が可能となる。
【0027】
また、本実施形態は、上記のようにケーブル処理装置15により水中ビークル13に接続したケーブル14を固定、繰り出し、引き上げ動作の処理を行う他、ケーブルガイド機構17a,17b,17c及び17dを電磁石19a,19b,19c及び19dにより原子炉圧力容器1の内壁面の所定位置に取り付けることができることから、ケーブル14が移動したとしても、その移動に追従することができるので、ケーブル14の移動時にかかる負荷を軽減することが可能となり、水中ビークル13の安定した移動が可能となる。
【0028】
(効 果)
このように本実施形態によれば、原子炉圧力容器1の上部において燃料交換機や作業台車が別な炉内作業で使用されていても、原子炉作業装置10により、ケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の処理や、ケーブル14の移動時にかかる負荷を軽減するための作業支援を行うことができる。したがって、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0029】
(第2実施形態)
(構 成)
図4は本発明に係る原子炉作業装置の第2実施形態を原子炉圧力容器内に設置した状態を示す部分断面立面図である。図5は図4のケーブル処理装置の取付状態を示す拡大側面図である。図6は図5の平面図である。図7は図4のビークル収納部を示す立面図である。図8は図7の側面図である。
【0030】
なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用を説明する。その他の実施形態も同様とする。
【0031】
図4に示すように、原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器1は、その上蓋を外した状態である。原子炉圧力容器1の胴部の上端には、周方向に沿って複数のスタッドボルト1a,1bが立設されている。これらのスタッドボルト1a,1bは、互いに設置位置が異なるだけで同一のものである。
【0032】
本実施形態の原子炉作業装置21は、上部に原子炉圧力容器1のスタッドボルト1a,1bに着脱可能な円筒状の着脱部22と、この着脱部22の下部に固定され、原子炉圧力容器1内へ延びた状態で設置される長尺のマスト23と、原子炉圧力容器1内を遊泳移動する水中ビークル13と、マスト23の下部に取り付けられ、水中ビークル13を収納保持する作業機器収納部としてのビークル収納部25と、を備えている。
【0033】
また、原子炉作業装置21は、マスト23の長手方向に沿って複数設置され、水中ビークル13のケーブル14が通過可能なケーブル中継手段としてのガイド機構24a,24bと、着脱部22の上部に取り付けられ、水中ビークル13に接続されたケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作を行うためのケーブル処理装置26と、を備えている。
【0034】
ケーブル処理装置26は、図5及び図6に示すように駆動源であるモータ27と、このモータ27の出力軸が連結され、モータ27の回転駆動に応じて正逆両方向に回転する回転ドラム28とを備えている。ケーブル処理装置26は、制御装置16により水中ビークル13の移動量に合わせてモータ27の回転数が制御され、この回転数の制御によって回転ドラム28の回転が制御されることで、水中ビークル13が接続されたケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の制御を可能としている。
【0035】
ビークル収納部25には、図7及び図8に示すように左右両側にそれぞれ平面から見てL字状に形成されたカバー29が取り付けられている。したがって、ビークル収納部25に水中ビークル13が収納されて原子炉圧力容器1内へ移動する時には、カバー29により水中ビークル13が炉内構造物と干渉しないように保護される。
【0036】
(作 用)
本実施形態の原子炉作業装置21は、原子炉圧力容器1からケーブル処理装置26で水中ビークル13のケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の処理を行うことにより、作業の支援を行うことが可能である。特に、水中ビークル13が原子炉圧力容器1やシュラウド2の周方向に移動したとしても、そのケーブル14が追従して移動することから、ケーブル14の移動時にかかる負荷を軽減することが可能となり、その結果、水中ビークル13の安定した移動が可能となる。
【0037】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、原子炉圧力容器1の上部において燃料交換機や作業台車が別な炉内作業で使用されていても、原子炉作業装置21により、ケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の処理や、ケーブル14の移動時にかかる負荷を軽減するための作業支援を行うことができる。したがって、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0038】
(第1、第2実施形態の水中ビークル)
(構 成)
図9は第1、第2実施形態における水中ビークルの具体的な構造を示す部分断面立面図である。
【0039】
水中ビークル13は、前記第1、第2実施形態の原子炉作業装置10,21により例えば原子炉圧力容器1のアニュラス部に移動し、三次元的に遊泳移動するための機器を備えている。
【0040】
図9に示すように、水中ビークル13は、上下にそれぞれ車輪駆動用のモータ32a,32bが配置されている。これらのモータ32a,32bの出力軸には、それぞれギア33a,33bが連結されている。これらのギア33a,33bは、車輪31a,31bの回転軸に連結したギア34a,34bと噛み合っている。したがって、モータ32a,32bを回転駆動させると、ギア33a,33b、ギア34a,34bを介して車輪31a,31bを回転させる。
【0041】
これらモータ32a,32b、ギア33a,33b、車輪31a,31b及びギア34a,34bは、それぞれ外周にギア(図示せず)が設けられた方向可変装置としての回転式テーブル38a,38bに設置されている。この回転式テーブル38aには、周方向に互いに90度程度の角度を有するようにターゲット40a,40bが配置されている。同様に、回転式テーブル38bにも周方向に互いに90度程度の角度を有するようにターゲット40c,40dが配置されている。
【0042】
また、水中ビークル13は、図9において右上隅部から左下隅部への対角線とほぼ同位置にモータ35a,35bが配置されている。これらのモータ35a,35bの出力軸には、それぞれギア36a,36bが連結されている。これらのギア36a,36bは、それぞれギア37a,37bと噛み合っている。そして、ギア37a,37bは、それぞれ回転式テーブル38a,38bの外周に設けられた図示しないギアと噛み合っている。したがって、モータ35a,35bを回転駆動させると、ギア36a,36b、ギア37a,37bを介して回転式テーブル38a,38bを回転させることにより、車輪31a,31bの方向を変えることができる。
【0043】
回転式テーブル38a,38bの外周近傍には、位置検出センサ39a,39bが配置されている。これらの位置検出センサ39a,39bは、回転式テーブル38a,38bに設けられたターゲット40a,40b,40c及び40dの位置を検出する。このようにターゲット40a,40b,40c及び40dの位置を検出することにより、車輪31a,31bの向き(走行方向)を確認することが可能となる。
【0044】
さらに、水中ビークル13は、左右の下部にスラスタ駆動用のモータ41a,41bが配置されている。これらのモータ41a,41bの出力軸は、ギア、ベルトなどの連結部材を介してそれぞれスラスタ42a,42bに連結されている。したがって、モータ41a,41bを回転駆動させると、スラスタ42a,42bが駆動して水中ビークル13の推進力を発生することにより、水中ビークル13が水中を自由に遊泳移動することができる。
【0045】
また、水中ビークル13は、背面4隅に電磁式マグネット43a,43b,43c及び43dが配置されている。これらの電磁式マグネット43a,43b,43c及び43dは、水中ビークル13を原子炉圧力容器1の内壁面に固定することができる。
【0046】
なお、電磁式マグネット43a,43b,43c及び43dには、図示しない電源ケーブルを通して駆動電力が供給される。
【0047】
(作 用)
このように水中ビークル13は、モータ41a,41bを回転駆動させ、スラスタ42a,42bを駆動させることで、推進力を発生させる。また、モータ32a,32bを回転駆動させ、ギア33a,33b、ギア34a,34bを介して車輪31a,31bを回転走行させることにより、三次元的に移動することが可能となる。その結果、水中ビークル13は、原子炉圧力容器1やシュラウド2の壁面を自動で周方向や上下方向に移動しながら、水中ビークル13の下部に設けられた検査補修装置20により検査及び補修を行うことができる。
【0048】
また、水中ビークル13は、原子炉圧力容器1からケーブル処理装置15,26でケーブル14の固定、繰り出し、引き上げ動作の処理をしながら自動で原子炉圧力容器1やシュラウド2の周方向や上下方向に移動した後、電磁式マグネット43a,43b,43c及び43dにより位置決めが可能となり、その部分の補修や検査が可能となる。
【0049】
(効 果)
このように原子炉作業装置10,21乃至ケーブル処理装置15,26により炉内に投入された水中ビークル13によれば、原子炉圧力容器1の上部において燃料交換機や作業台車が別な炉内作業で使用されていても、水中ビークル13が三次元的に移動することが可能となり、検査補修装置20により検査及び補修を行うことができるとともに、各種作業の支援を行うことができる。
【0050】
(第3実施形態)
(構 成)
図10は本発明に係る原子炉作業装置の第3実施形態における水面移動装置の設置状態を示す平面図である。図11は図10の水面移動装置を示す拡大平面図である。図12は図10の水面移動装置を示す部分断面立面図である。なお、本実施形態では、図示しないがケーブル14の先端に前記第1、第2実施形態と同様の水中ビークル13が接続されている。
【0051】
図10に示すように、本実施形態の原子炉作業装置を構成する2台の水面移動装置50は、円形プール45の水面に浮かんだ状態で、それぞれ後述するような推進力を発生する手段により水面を移動する。なお、2台の水面移動装置50は同様の構造である。
【0052】
図11及び図12に示すように、水面移動装置50は、ケーブル処理装置としてのケーブル巻取装置51を有し、このケーブル巻取装置51の回転軸には、正逆両方向に回転可能なモータ52が取り付けられている。ケーブル巻取装置51は、先端に上述した水中ビークル(図示せず)が接続されたケーブル14が巻回されている。
【0053】
したがって、モータ52を回転駆動させると、ケーブル巻取装置51が正方向又は逆方向に回転し、ケーブル14を炉内へ繰り出したり、あるいは引き上げたりする。
【0054】
また、水面移動装置50には、ケーブル14をガイドするための滑車54を備えたケーブルガイド53と、ケーブル14を洗浄する洗浄装置55と、この洗浄したケーブル14を乾燥する乾燥装置59と、ワイヤロープにより図示しない検査補修装置を取扱うワイヤロープ操作機構60とが搭載されている。
【0055】
ケーブルガイド53は、ケーブル14を炉内へ繰り出したり、あるいは引き上げたりする際に、滑車54によりケーブル14をガイドする。
【0056】
洗浄装置55は、オペレーションフロア9から送り出されたホース56と、このホース56をケーブルガイド53の近傍に導くためのホースガイド57a,57bと、ホース56を通して供給された高圧水を噴射するノズル58とを備えている。したがって、ケーブル14を炉内から回収した際に表面が汚れている場合、洗浄装置55は、ノズル58から高圧水を噴射してケーブル14の表面を洗浄する。
【0057】
乾燥装置59は、洗浄装置55により洗浄したケーブル14を送風して乾燥させる。
【0058】
ワイヤロープ操作機構60は、モータ61と、このモータ61を回転駆動させることにより回転するボールねじ62と、このボールねじ62に螺合されたナット63と、このナット63の移動をガイドするガイドレール64とを備えている。ワイヤロープ操作機構60は、モータ61を回転駆動させると、ボールねじ62が回転する。すると、ナット63がガイドレール64に沿って水平方向に移動する。
【0059】
さらに、水面移動装置50には、箱状に形成されたベース部65が設けられ、このベース部65上に上記ケーブル巻取装置51が設置されている。ベース部65は、両側面に浮力を発生させるフロート66a,66b,66c及び66dが取り付けられている。
【0060】
ベース部65内には、図12に示すように水平方向に沿った推進力を発生させるスラスタ67と、このスラスタ67を回転駆動するモータ68と、円形プール45の壁面の周方向に沿って走行する車輪69と、駆動モータ70と、この駆動モータ70の回転駆動力を機械的に車輪69に伝達するためのプーリ71a,71b,71c、ベルト72a,72bとが搭載されている。
【0061】
駆動モータ70の出力軸には、プーリ71cが取り付けられている。そして、プーリ71aとプーリ71bとの間は、ベルト72aが巻き掛けられ、またプーリ71bとプーリ71cとの間は、ベルト72bが巻き掛けられている。
【0062】
(作 用)
図10に示すように、2台の水面移動装置50は、円形プール45の水面に浮かんだ状態で、水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ67と、このスラスタ67を回転駆動するモータ68により、円形プール45の壁面に接するように移動する。
【0063】
次いで、駆動モータ70を回転駆動させることにより車輪69を回転することで、円形プール45の壁面に接する車輪69が回転走行して2台の水面移動装置50は、円形プール45の壁面を周方向へ走行可能となる。ここで、円形プール45の壁面が設置されていない場所には、模擬プール壁46を設置することにより水面移動装置50が円形プール45の壁面を周方向全体へ走行可能としている。
【0064】
そして、原子炉圧力容器1の上方の水面上に水面移動装置50を移動させ、自動でケーブル14を繰り出したり、あるいは引き上げたりすることにより、水中ビークル13に設けられた検査補修装置20による検査補修作業の支援を行うことが可能となる。特に、水中ビークル13がシュラウド2の周方向に移動しても水面移動装置50も周方向に追従可能であることから、ケーブル14の移動時にかかる負荷を軽減することが可能となり、水中ビークル13の検査補修装置20を正確に位置決めすることが可能となる。
【0065】
なお、ケーブル14が原子炉圧力容器1やシュラウド2の壁面に接触して汚れたとしても、ケーブル14をケーブル巻取装置51で巻き取りながら洗浄装置55を用いて洗浄して取り除いた後、乾燥装置59により乾燥することが可能であることから、水面移動装置50の汚染を防止することができる。
【0066】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、原子炉圧力容器1の上部において燃料交換機や作業台車が別な炉内作業で使用されていても、水中ビークル13を一定の距離を保ちながら原子炉圧力容器1とシュラウド2との間の環状部の周方向に精度よく移動可能である。したがって、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ケーブル14をケーブル巻取装置51で巻き取りながら洗浄装置55で洗浄することができることから、水面移動装置50の除染作業やそのための作業員を削減することが可能となる。
【0068】
(炉内搬送支援装置)
(構 成)
図13は本発明に係る原子炉作業装置を構成する炉内搬送支援装置を示す部分断面立面図である。図14は図13の炉内搬送支援装置を示す平面図である。図15は図13の炉内搬送支援装置の取付状態を示す斜視図である。
【0069】
図13及び図14に示すように、ケーブル中継装置及びケーブル中継ビークルとしての炉内搬送支援装置75は、例えば前記第3実施形態の水面移動装置50から図示しない水中ビークル13のケーブル14を上下方向に通過させるための貫通口76が設けられている。この貫通口76は、上下方向の一部にケーブル14をクランプするガイドローラ77a,77bが配置されている。
【0070】
なお、ガイドローラ77bには、正逆両方向に回転可能な回転用モータ(図示せず)の出力軸が接続されている。また、ガイドローラ77aには、ケーブル14を押え付けるためにスプリング78がシャフト79を介して取り付けられている。したがって、ガイドローラ77bの上記回転用モータの回転方向を正方向又は逆方向に制御することにより、ケーブル14を繰り出し、あるいは引き上げることができる。
【0071】
ガイドローラ77aの下部には、計測車輪80と、計測車輪押し出し機構81と、計測車輪回転センサ82とを備え、この計測車輪回転センサ82によりケーブル14の繰り出し量又は引き上げ量を確認することができる。
【0072】
炉内搬送支援装置75の下部には、貫通口76から延びたケーブル14と後述する炉内作業装置の状態を監視するための水中照明具83及び水中カメラ84が配置されている。
【0073】
炉内搬送支援装置75の上部には、エア又は水の圧力で伸縮するシリンダ85と、このシリンダ85の先端にシュラウド2の外面を走行する車輪86と、シリンダ85及び車輪86の双方を炉内搬送支援装置75の内部から展開又は収納可能とするためのリンク機構87と、エア又は水の圧力で伸縮してリンク機構87を作動するシリンダ88とが配置されている。
【0074】
また、炉内搬送支援装置75の上部には、原子炉圧力容器1の内壁面に接触して周方向に走行可能であり、互いに対をなす走行車輪89a,89bと、走行車輪89cと対をなす図示しない走行車輪が車輪86と反対方向に取り付けられている。これら走行車輪89a〜89cは、それぞれ複数のプーリと、複数のプーリ間にそれぞれ巻き掛けられた複数のベルトを介して駆動モータ98と機構的に接続されている。走行車輪89〜89cは、駆動モータ98を回転駆動することにより複数のプーリ及び複数のベルトを介して回転が伝達されて回転可能に構成されている。
【0075】
走行車輪89a〜89cは、シリンダ85により車輪86をシュラウド2の外面に押し当てた時に発生する反力を利用し、原子炉圧力容器1の内壁面に接触し駆動モータ98の回転駆動力で走行する。走行車輪89a,89bの間には、走行車輪89a〜89cが走行した距離を計測する計測車輪99と回転センサ100が取り付けられている。
【0076】
図14に示すように、炉内搬送支援装置75の中心には、炉内搬送支援装置75を移動する時に用いる吊り金具101が取り付けられている。また、炉内搬送支援装置75の上面には、ケーブル14を貫通口76に確実に導くためにブロック102が着脱可能に設けられている。
【0077】
図15に示すように、ケーブル14の先端には、作業機器としてのジェットポンプ検査装置103が接続されている。このジェットポンプ検査装置103は、多関節腕から構成され、ジェットポンプ4の各部の検査を行う。
【0078】
(作 用)
図15に示すように、炉内搬送支援装置75は、ジェットポンプ検査装置103を搬送する。すなわち、炉内搬送支援装置75は、駆動モータ98を回転駆動することにより複数のプーリ及び複数のベルトを介して回転を走行車輪89a〜89cに伝達し、これらの走行車輪89a〜89cと、アーム状に形成した機構の先端に取り付けた車輪86とによりシュラウド2の外面と原子炉圧力容器1の内壁面との間を周方向に移動させる。
【0079】
そのとき、監視用の水中カメラ84で確認しながら図13に示すガイドローラ77a,77bを回転させ、ケーブル14を送り出すことにより、ジェットポンプ検査装置103をジェットポンプ4のミキサノズル部94の開口隙間より挿入し、検査対象部位へ移動させ、ジェットポンプ点検装置103で検査作業を行うことが可能である。
【0080】
そして、上記検査作業が完了した後には、ジェットポンプ検査装置103をジェットポンプ4のミキサノズル部94から回収し、次のジェットポンプ4の位置へ走行移動させ、上記と同様の作業を繰り返し実施する。
【0081】
(効 果)
このように炉内搬送支援装置75によれば、原子炉圧力容器1の内部へ作業機器であるジェットポンプ検査装置103を移動させ、自動でケーブル14を繰り出し又は引き上げることにより、作業の支援を行うことが可能となる。特に、ジェットポンプ検査装置103を原子炉圧力容器1とシュラウド2との間で周方向にも移動することができることから、ジェットポンプ検査装置103の移動に要する作業時間を短縮するとともに、ジェットポンプ検査装置103の正確な位置決めが可能となる。
【0082】
その結果、炉内搬送支援装置75によれば、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0083】
(大型水中ビークル)
(構 成)
図16は図13の炉内搬送支援装置を把持する大型水中ビークルを示す立面図である。図17は図16の搬送ビークルを示す平面図である。図18は図13の炉内搬送支援装置を把持して原子炉圧力容器内の水中を遊泳移動する大型水中ビークルを示す部分断面立面図である。
【0084】
図16に示すように、大型水中ビークル104は、原子炉作業装置及び炉内搬送支援装置75を炉内に運ぶためのものである。大型水中ビークル104の下部には、エア又は水の圧力で伸縮するシリンダ105と、このシリンダ105のシャフトの伸縮で作動するリンク機構106と、このリンク機構106の作動により開閉可能なアーム107a,107bとが設けられ、例えば炉内搬送支援装置75の吊り金具101を把持することができるように構成されている。
【0085】
シリンダ105の上方には、水中照明具108及び水中カメラ109が配置され、これら水中照明具108及び水中カメラ109は、開閉可能なアーム107a,107bによる炉内搬送支援装置75の吊り金具101の把持状態や炉内の状況を監視している。
【0086】
大型水中ビークル104は、水中遊泳移動時の水の抵抗を抑えるため、ほぼ全体が棒状のパイプ110で接続した簡易構造となっている。パイプ110により構成された構造体には、水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ111aと、このスラスタ111aを回転駆動するモータ112aと、水平方向のバランスを保つためのフロート113とが設置されている。
【0087】
大型水中ビークル104の上部には、水中の浮力を保つためにフロート114が設けられており、このフロート114には、上下方向に沿った推進力を発生するスラスタ115aと、このスラスタ115aを回転駆動するモータ116aがと設置されている。さらに、フロート114の上部には、水中から移動するための吊り金具117が取り付けられている。
【0088】
図17に示すように、大型水中ビークル104には、水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ111a,111bと、モータ112a,112bと、上下方向に沿った推進力を発生するスラスタ115a,115bと、モータ116a,116bと、が設置され、水中を自由に遊泳移動することができるように構成されている。
【0089】
(作 用)
次に、図18に基づいて原子炉圧力容器1内での大型水中ビークル104により点検、検査時に支援する動作について説明する。
【0090】
図18に示すように、大型水中ビークル104は、炉内搬送支援装置75の吊り金具101を開閉可能なアーム107a,107bで把持しながら水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ111a,111bと、モータ112a,112bと、上下方向に沿った推進力を発生するスラスタ115a,115bと、モータ116a,116bとを制御しながら遊泳移動し、炉内搬送支援装置75に搭載した原子炉作業装置を設置する位置まで移動する。
【0091】
そして、大型水中ビークル104の移動に合せて水面移動装置50のケーブル巻取装置51からケーブル14を送り出して移動することが可能である。
【0092】
(効 果)
このように大型水中ビークル104によれば、原子炉圧力容器1の内部へ検査補修装置と炉内搬送支援装置75を同時に移動させ、作業の支援を行うことが可能である。特に、炉内搬送支援装置75のような大きな装置も遠隔操作で移動させることができることから、原子炉作業装置の移動にかかる作業時間の短縮を図るとともに、他の炉内作業と並行して作業することが可能となる。
【0093】
以上のことから、大型水中ビークル104によれば、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0094】
(ケーブル保持装置)
(構 成)
図19は本発明に係る原子炉作業装置による炉内作業時にケーブルを保持するケーブル保持装置を示す斜視図である。図20は図19のケーブル保持装置により保持するケーブルを示す断面図である。図21は図19のクランプ機構を示す平面図である。図22は図19のクランプ機構を示す立面図である。図23は図19のケーブル保持装置の内部構造を示す断面図である。図24は図19のケーブル保持装置の設置状態を示す側面図である。
【0095】
図19に示すように、ケーブル中継手段としてのケーブル保持装置118は、正面板にケーブル14を保持する開閉式のクランプ機構119a,119bが上下方向に複数設けられている。
【0096】
ケーブル保持装置118の内部には、水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ120a,120bと、これらのスラスタ120a,120bをそれぞれ回転駆動するモータ121a,121bとが配置されている。なお、ケーブル保持装置118は、オペレーションフロア9から電源や信号用のケーブルが接続されていない構造である。
【0097】
次に、図20及び図21に基づいてケーブル保持装置118の電源及び制御信号の受電方法及び受信方法について説明する。
【0098】
図20に示すように、原子炉作業装置のケーブル14は、検査補修装置の駆動に必要な駆動電流を流す電源ケーブル122,123及び124や、制御に必要なセンサの駆動電源及びセンサの信号を送受信するケーブル125,126及び127が収納されている。
【0099】
上記電源ケーブル122,123及び124やセンサの信号ケーブル125,126及び127の外側には、高周波電源や、周波数信号又はパルス信号を流すためのケーブル128が設けられている。ケーブル14の中心付近には、アース用のケーブル129が配置されている。
【0100】
次に、図21及び図22に基づいてクランプ機構119a,119bの構成について説明する。
【0101】
図21に示すように、クランプ機構119a,119bは、ケーブル14が通るように貫通口が設けられている。クランプ機構119a,119bは、ケーブル14をクランプする時に開閉可能とするための開閉部130が取り付けられている。図22に示すように、クランプ機構119a,119bのアーム部131a,131bは、平面から見て半円状に形成され、その内部にコイル132a,132bが埋設されている。
【0102】
クランプ機構119a,119bは、ケーブル14をクランプすることにより、ケーブル14に流れる高周波電流と、コイル132a,132bに発生する電磁誘導によりケーブル保持装置118の駆動及び制御に必要な電源と信号を得ることができるように構成されている。
【0103】
次に、図23に基づいてケーブル保持装置118の内部構造について説明する。図23に示すように、ケーブル保持装置118の内部には、水平方向に沿った推進力を発生するスラスタ120a,120bと、これらのスラスタ120a,120bをそれぞれ回転駆動するモータ121a,121bと、原子炉圧力容器1の内壁面又はシュラウド2の外面の周方向に走行する車輪133a,133bと、これらの車輪133a,133bをそれぞれ回転駆動させるモータ134a,134bと、クランプ機構119a,119bから受電して蓄電するバッテリ135と、クランプ機構119a,119bから受信した信号によりケーブル保持装置118を制御するドライバ136と、原子炉圧力容器1の内壁面に接着することができる電磁石137a,137bと、浮力を発生させるフロート138a,138b,138c,138d及び138eが配置されている。
【0104】
ケーブル保持装置118は、クランプ機構119a,119bのコイル132a,132b内での電磁誘導により得られた電源電圧又は制御信号からスラスタ120a,120bと、モータ121a,121bを回転駆動することにより、原子炉圧力容器1の内壁面又はシュラウド2の外面に貼り付き、さらに車輪133a,133bと、モータ134a,134bを回転駆動することにより、周方向に走行が可能となる。
【0105】
また、定位置に長時間停止した状態では、電磁石137a,137bにより停止位置に貼り付き、クランプ機構119a,119bのコイル132a,132b内での電磁誘導により得られた電源電圧をバッテリ135に蓄電し、再度、駆動するときに必要となる電源電圧として利用することができる構成になっている。
【0106】
なお、電源用ケーブルをなくすための別の一例としては、ケーブル保持装置118に太陽電池を設け、その太陽電池に原子炉圧力容器1の上部から強い光を当てて電気を発生させることにより、駆動モータを駆動させることも可能である。
【0107】
(作 用)
このように構成されたケーブル保持装置118において、ケーブル14を原子炉圧力容器1内へ繰り出し中に、所定の位置へクランプ機構119a,119bにより装着し、ケーブル14で原子炉圧力容器1へ移動し、スラスタ120a,120bとモータ121a,121bを回転駆動させることにより、貼り付き、ケーブル14をガイドしながら繰り出すことが可能である。
【0108】
また、図示しない原子炉作業装置が原子炉圧力容器1の周方向に移動したら、車輪133a,133bとモータ134a,134bを回転駆動することにより、周方向に移動してケーブル14をガイドすることも可能である。
【0109】
次に、図24に基づいて原子炉圧力容器1内でのケーブル保持装置118の点検、検査時の保持する方法について説明する。
【0110】
図24に示すように、ケーブル保持装置118は、クランプ機構119a,119bによりケーブル14をガイドしながらモータ121a,121bを回転駆動させてスラスタ120a,120bを回転させることにより、原子炉圧力容器1の内面に貼り付いて、モータ134a,134bを回転駆動させて車輪133a,133bを回転走行させることにより、周方向に移動して原子炉作業装置に追随することが可能となる。
【0111】
さらに、原子炉圧力容器1に設けられた給水スパージャ7などの構造物へケーブル14を干渉せずに移動させることも可能である。
【0112】
(効 果)
以上説明したようにケーブル保持装置118によれば、ケーブル14から電源電圧及び信号を受電及び受信することが可能となる。したがって、専用のケーブルを必要としないことから、ケーブル保持装置118のケーブル処理装置も必要とせずに簡単にケーブル14への装着が可能で原子炉圧力容器1の内部での原子炉作業装置や、炉内搬送支援装置75及び大型水中ビークル104とのケーブルの絡みをなくし、安定して原子炉作業装置を移動させることが可能となる。また、炉内構造物に対するケーブル14との干渉による装置が壁から離れたり、姿勢が傾いたりするのを防止し、点検及び検査のやり直しをなくすことが可能となる。
【0113】
以上のことから、ケーブル保持装置118によれば、ケーブル操作員やケーブル監視員を削減するとともに、炉内の点検や補修などの各種の作業を短時間で確実に行うことができる。
【0114】
(変形例)
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、各実施形態では、水中ビークル13に検査補修装置20を搭載したが、この検査補修装置20に限らず、シュラウドや配管などの炉内構造物の洗浄、点検、予防保全などの各種作業を行う作業装置を搭載するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…原子炉圧力容器、1a,1b…スタッドボルト、2…シュラウド、4…ジェットポンプ、5…インレット管、6…ディフューザ、9…オペレーションフロア、10…原子炉作業装置、13…水中ビークル(作業機器)、14…ケーブル、15…ケーブル処理装置、17…ケーブルガイド機構(ケーブル中継装置)、18…ガイド部、20…検査補修装置、21…原子炉作業装置、22…着脱部、23…マスト、24a,24b…ガイド機構(ケーブル中継装置)、25…ビークル収納部(作業機器収納部)、26…ケーブル処理装置、29…カバー、45…円形プール、50…水面移動装置、51…ケーブル巻取装置(ケーブル処理装置)、53…ケーブルガイド、55…洗浄装置、59…乾燥装置、60…ワイヤロープ操作機構、75…炉内搬送支援装置(ケーブル中継装置、ケーブル中継ビークル)、76…貫通口、77a,77b…ガイドローラ、80…計測車輪、81…計測車輪押し出し機構、82…計測車輪回転センサ、83…水中照明具、84…水中カメラ、103…ジェットポンプ検査装置(作業機器)、104…大型水中ビークル、118…ケーブル保持装置(ケーブル中継装置)、119a,119b…クランプ機構、122,123,124…電源ケーブル、125,126,127…信号ケーブル、132a,132b…コイル、135…バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器内において作業を行う作業機器と、
前記原子炉圧力容器の上端近傍またはオペレーションフロアに設置され、前記作業機器に接続されたケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置と、
前記ケーブルの中途に取り付けられ、前記ケーブルを前記原子炉圧力容器内壁近傍に沿うように垂下させるケーブル中継装置と、
を備えることを特徴とする原子炉作業装置。
【請求項2】
前記ケーブル中継装置は、前記原子炉圧力容器の内壁面に着脱可能に設けられ、前記原子炉圧力容器内に繰り出されたケーブルをガイドするケーブルガイド装置を有することを特徴とする請求項1に記載の原子炉作業装置。
【請求項3】
前記原子炉圧力容器の胴部の上端に対して着脱可能に取り付けられる着脱装置をさらに備え、
前記ケーブル中継装置は前記着脱装置に固定され前記原子炉圧力容器の内壁面に沿って下方に延びるマストを有し、
前記マストは前記作業機器を収納可能とした作業機器収納部を有し、
前記ケーブル処理装置は前記着脱装置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の原子炉作業装置。
【請求項4】
前記着脱装置は、前記原子炉圧力容器の胴部上端の周方向に複数配置されたスタッドボルトに着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の原子炉作業装置。
【請求項5】
原子炉の運転停止時に原子炉圧力容器内において作業を行う作業機器と、
前記原子炉圧力容器の上蓋を外した状態で前記原子炉圧力容器の胴部の上方に設けられたプールの水面上を浮いて移動する水面移動装置と、
前記水面移動装置に搭載され、前記作業機器に接続したケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理装置と、
を備えることを特徴とする原子炉作業装置。
【請求項6】
前記水面移動装置は、モータ駆動により水平方向の推進力を生じさせる複数のスラスタと、浮力を生じさせるフロートと、モータ駆動により回転走行する走行車輪とを備え、前記スラスタの推進力により前記走行車輪を前記プールの壁面に押し当て前記走行車輪を回転することで、前記水面上を前記プールの周方向に沿って走行可能としたことを特徴とする請求項5に記載の原子炉作業装置。
【請求項7】
前記水面移動装置は、前記ケーブルを洗浄する洗浄装置と、この洗浄装置により洗浄された前記ケーブルを乾燥する乾燥装置とを備えることを特徴とする請求項5に記載の原子炉作業装置。
【請求項8】
前記ケーブル処理装置は、前記作業機器の移動量に基づいて前記ケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の原子炉作業装置。
【請求項9】
前記ケーブル処理装置は、前記ケーブルを通過させる開口部と、この開口部内に前記ケーブルをクランプする複数のローラと、これらのローラのいずれかを回転させるモータとを備え、前記ローラを回転方向を制御して前記ケーブルを繰り出したり引き上げたりすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の原子炉作業装置。
【請求項10】
前記ケーブル中継装置は、前記原子炉圧力容器内面とシュラウド外面にアームを押し付けることで位置決めされ、前記アームを前記原子炉圧力容器内面および前記シュラウド外面にアームを押し付けた状態で前記原子炉圧力容器の周方向に沿って移動可能な走行機構を備えるケーブル中継ビークルを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の原子炉作業装置。
【請求項11】
前記作業機器が水で満たされている前記原子炉圧力容器内を遊泳移動可能な水中ビークルであって、この水中ビークルは、
水平方向に沿った推進力を生じさせる水平スラスタと、
前記原子炉圧力容器内を走行する車輪と、
前記車輪の走行方向を可変する方向可変装置と、
前記車輪の走行方向を検出するセンサと、を備え、
前記車輪の走行方向を制御することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の原子炉作業装置。
【請求項12】
前記ケーブルガイド装置は、ケーブルをクランプするクランプ機構を備え、このクランプ機構は、外側に開閉可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の原子炉作業装置。
【請求項13】
前記クランプ機構は、内部にコイルが埋設される一方、前記ケーブルは、高周波電圧が印加される電源ケーブル及び制御信号を流すための信号ケーブルを有し、前記ケーブルをクランプして前記ケーブルから前記高周波電圧を受電するとともに、前記制御信号を受信することを特徴とする請求項12に記載の原子炉作業装置。
【請求項14】
前記ケーブルガイド装置は、前記ケーブルから受電した高周波電圧を蓄電するバッテリを有していることを特徴とする請求項12又は13に記載の原子炉作業装置。
【請求項15】
原子炉の運転停止時に、原子炉圧力容器上方からケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理ステップと、
前記原子炉圧力容器内に繰り出された前記ケーブルをガイドするケーブルガイドステップと、
前記ケーブルに接続された作業機器を前記原子炉圧力容器内に移動させて作業を行う移動作業ステップと、
を有することを特徴とする原子炉作業方法。
【請求項16】
原子炉の運転停止時に、前記原子炉圧力容器上方に設けられたプールの水面上を浮いて移動する水面移動装置からケーブルの繰り出し、引き上げ動作を行うケーブル処理ステップと、
前記ケーブルに接続された作業機器を前記原子炉圧力容器内に移動させて作業を行う移動作業ステップと、
を有することを特徴とする原子炉作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−103059(P2012−103059A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250539(P2010−250539)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】