説明

原子炉内で使用可能な圧縮スリーブ

【課題】材料の物理的特性が原子炉動作環境において実質的に維持されるように構成された圧縮スリーブを提供する。
【解決手段】BWRジェットポンプセンシングラインの修理において使用するための圧縮スリーブは、原子炉動作環境において物理的特性を維持するように構成される。スリーブは、ジェットポンプセンシングラインの構成要素間にシールを形成するように、スリーブの変形及び流動に適応する成形端部220を含む。ジェットポンプセンシングラインを修理するための機械的結合アッセンブリーは、圧縮スリーブを含むように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、沸騰水型軽水炉(BWR)内の配管及びBWR内のジェットポンプセンシングラインの修理及び交換等、配管及び構成要素を修理及び交換するために原子炉内で使用可能なスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、BWRは、原子炉炉心を通して冷却材及び減速材を効果的に移動する再循環系の一部としてジェットポンプを含む。原子炉炉心内部の動作条件を評価するために、ジェットポンプからの冷却材の流量を含む炉心を通る流量を監視することが望ましい。通常、ジェットポンプセンシングラインは、ジェットポンプの入口とノズルとの間の差圧を測定することにより、ジェトポンプからの流量を測定するために使用される。
【0003】
図1は、ジェットポンプセンシングラインがジェットポンプノズルの基部においてディフューザに結合される従来のBWRジェットポンプノズルを示した図である。複数のジェットポンプ150の各々の下部ディフューザ110に取り付けられたジェットポンプセンシングライン100が示される。センシングライン100はジェットポンプ150上の種々の点に接続されて差圧を措定する。通常、センシングライン100は溶着されるか又はディフューザ110と一体に結合されることにより、ジェットポンプ150内の流動によって引き起こされる振動に晒される。
【0004】
通常、ジェットポンプ150はBWRの内部に設置されているので、燃料交換及び修理のための計画されたプラント運転停止中にのみ接近可能である。通常、これらの運転停止は数ヶ月毎に行われ、従って、ジェットポンプ及びジェットポンプセンシングラインを含む炉心内部の構成要素は、検査及び/又は修理されるまで長期間にわたって動作する必要がある。
【0005】
更に、BWR炉心動作条件は、燃料棒において発生する核分裂による高レベルの放射能を含む。放射能、特に、動作中の原子炉炉心において生成される中性子束は、時間が経つにつれて炉心構成要素の材料強度及び弾性を低下する。従って、ジェットポンプセンシングライン100を含む炉心内部の構成要素は、この放射線被爆に起因する早期脆化及び亀裂を生じやすい。従って、流動励起振動及び放射線と関連する長期間動作サイクルは、ジェットポンプセンシングラインが亀裂、破断又は故障する原因となり、炉心内部の炉心流量の効果的且つ/又は正確な測定を妨げる。
【0006】
例えば、米国特許第5,752,807号公報記載の従来のジェットポンプセンシングライン修理機構は、故障したジェットポンプセンシングライン全体を交換すること又はスリップ焼嵌め記憶合金結合を使用することを含む。この合金は、交換されるジェットポンプセンシングラインに特に適合する必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,752,807号公報
【発明の開示】
【0007】
一実施形態は、BWRジェットポンプセンシングラインの修理において使用するための圧縮スリーブに関する。スリーブは、ジェットポンプセンシングラインの構成要素間にシールを形成するために、スリーブの変形及び流動に適応する成形端部を含む。ジェットポンプセンシングラインを修理するための機械的結合アッセンブリーは、圧縮スリーブを含むように構成される。
【0008】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明することにより、本発明はより明らかになるだろう。図中、同一の要素は同一の図中符号により表され、それらは単に例示として示され、本明細書中の実施形態を限定しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図2は、一実施形態に係る圧縮スリーブを示した等角図である。圧縮スリーブ(「スリーブ200」)は、ほぼ管状且つ/又は円筒形の胴体210を有してもよい。スリーブ200がセンシングラインの一区画及び/又は交換対象の区画に嵌合するように、スリーブ200の内径を、ジェットポンプセンシングライン100のその一区画の外径に一致させる。例えば、センシングライン100の一区画が0.55インチの外径を有する場合、スリーブ200の内径は0.55インチより僅かに大きくてよい。スリーブ胴体210の最大外径は、交換対象の区画に使用されても十分な強度を提供するように構成される。
【0010】
スリーブ200は、スリーブ胴体210の両端に2つのテーパ状端部220を含む。テーパ状端部220は、スリーブ200がセンシングライン100の区画(及び/又は交換対象の区画)に締結されるにつれて変形して、それらの間にシールを提供する形状になる。テーパ状端部220は、修理中及び修理後において、スリーブ200をセンシングラインの構成要素上に保持する締結装置を適切に固定できるように構成されてもよい。
【0011】
図3はスリーブ200の破断図であり、その内径特徴及び外径特徴を示す。それぞれのテーパ状端部220は、上述の変形と固定をもたらす構成を可能にする3つの部分221、222及び223を含む。第1の部分221は、スリーブ胴体210に最も近いもので、図3からわかるように、最も大きい最大厚さを有する。この第1の部分221は、通常は、この第1の部分221がスリーブ胴体210に接合する位置において胴体210に連続する。第1の部分221は、スリーブ胴体210からの直線距離が離れるにつれて、外径そして厚みが連続的に減少するようにテーパ状であってもよい。ただし、内径は一定のままである。第1の部分221は、締結装置からの圧力に対する耐変形性が徐々に増加するように、そして(又は)、厚みが増加することによる、スリーブ200に沿ったナット及び鍔等の締結装置の更なる前進を阻むように製造されてよい。このようにして、第1の部分221は、センシングラインの修理において使用される締結装置を適切に固定することができる。
【0012】
第2の部分222は、第1の部分221に隣接し且つ通常は連続する。第2の部分222は、締結装置により与えられる圧縮力によって変形して移動するような形状にすることができる。図3に示すように、第2の部分222は、横から見てほぼ凹形であってもよい。凹形状とすることによって、鍔及び/又はナット等の締結装置は第2の部分222と容易に嵌合し、且つ、この第2の部分222を潰すことができ、それによって第2の部分222内の材料が変形して密閉を強化する。
【0013】
第3の部分223は第2の部分222に隣接し、スリーブ胴体210から最も遠くにある。図3に示すように、第3の部分223は、第2の部分222に通常は連続し、第1の部分221と面を共有しなくてもよいが、この第1の部分221と水平方向にほぼ同一の角度でテーパ状になっている。第3の部分223は、3つの部分221〜223のうち最も薄い厚さを有し、第1の部分221と同様に、その厚さが増加するにつれて変形や変位に対する抵抗が増加する。第3の部分223全体は、第1の部分221とは異なり、センシングライン100の構成要素間にシールを提供するために変形及び歪んでもよい。このように、締結装置は、第3の部分223の最も厚い端部により停止させられるものの、その最も厚い端部を越えことにより、第1の部分221及び第2の部分222に対して適切に固定される。
【0014】
あるいは、テーパ状端部220は、センシングライン100の修理において使用される場合には、シール性をもたらし或いは構成要素を容易に固定するために、適当な形状をとってもよい。例えば、端部220は、端部220に沿って異なる比率又は変位に応じた変形及び固定を提供するような形状にされた任意数の複数部分を有するようにすることができる。
【0015】
テーパ状端部220は、設置中及び動作中に、スリーブの任意の部分が腐食しまたは分離して裂けるの防止するように構成させることもできる。図2及び図3に示すように、各テーパ状端部220の内面は段状又は小円鋸歯状のパターン225を有する。パターン225の最大深さは、テーパ状端部220の外径に与えられる腐食やその外径にかかる圧縮力を防止することができる程度に十分に小さい。パターン225は、スリーブ200の内径の内側のセンシングライン修理構成要素との間にラビリンスシールを提供し、テーパ状端部220の純粋な変形及び変位によって達成されるシールと比較して改善されたシールを容易に提供する。
【0016】
スリーブ200は、例えば、原子炉炉心動作環境において物理的性質を維持するように設計される材料から製造される。センシングライン100の修理において使用される場合に適切に圧縮しかつ変位するために、その材料は、一般に、ステンレス鋼より可鍛性及び/又は弾性がある。材料は、センシングライン100の一体性、並びに、放射線により誘発される材料破壊に対する耐性を維持するべく最小強度を有する。材料の例は、例えば、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)及び99%熱アニール処理ニッケル(Ni)等の可鍛金属を含む。これらの材料は、所望の可鍛性を得るために高温(2000oF以上)で熱アニール処理される。
【0017】
図4は、一実施形態に従って圧縮スリーブを使用する機械的結合のためのアッセンブリーを示した分解図である。図5は、図4に示したアッセンブリーを示した横断面図である。機械的結合アッセンブリー400は、圧縮スリーブ200、交換チューブ320、並びに鍔300及びナット310等の締結手段を含む。交換チューブ320は、ジェットポンプセンシングライン100の一区画を交換し且つその区画の除去後にセンシングライン100の残りの端部に当接するように設計される。
【0018】
図5に示すように、スリーブ200が完全に設置されると、スリーブ200は、センシングライン100及び交換チューブ320の2つの当接部分に嵌合する。その後、鍔300及び圧縮ナット310は、スリーブ200及び交換チューブ320に嵌合する。圧縮ナット310が鍔300の上に前進するにつれて、鍔300及び圧縮スリーブ200は、センシングライン100及び交換チューブ320に対して圧縮される。圧縮力が増加することより、スリーブ200は変形し始める。その後、スリーブ200の端部220は、ナット310及び/又は鍔300の下で変形し変位し、センシングライン100又は交換チューブ320に対するシールを提供する。その後、ナット310は、更なる変形及びナット310の進行を防止するためにより厚くなるスリーブ端部220に対して固定される。機械的結合アッセンブリー400の等角図を図6に示す。
【0019】
実施形態は多くの方法で変形可能であり、その場合もジェットポンプセンシングライン100の修理を達成できる。例えば、鍔300及び圧縮ナット310の形状は、異なる構成に嵌合するか又は圧縮スリーブ200に対して異なる態様で固定されるように変更されてもよい。更に、いくつかの異なるセンシングライン100の大きさは、機械的結合アッセンブリー400内の1つ以上の構成要素の内径を変化させることにより対応される。そのような変形例は、実施形態の趣旨の範囲から逸脱するものとして見なされるべきではなく、当業者には明らかであろうそのような変形の全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ジェットポンプセンシングラインがジェットポンプノズルの基部のディフューザに結合された従来のBWRジェットポンプノズルを示した図である。
【図2】一実施形態に係る圧縮スリーブを示した等角図である。
【図3】図2のスリーブを示した破断図であり、スリーブの内径特徴及び外径特徴を示す。
【図4】一実施形態に従って圧縮スリーブを使用するジェットポンプセンシングライン修理アッセンブリーを示した分解図である。
【図5】図4に示したアッセンブリーを示した横断面図である。
【図6】BWR内に設置する機械的結合アッセンブリーを示した等角図である。
【符号の説明】
【0021】
200…圧縮スリーブ、210…管状胴体、220…基端部及び先端部、300…鍔、310…圧縮ナット、320…交換チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉において使用する圧縮スリーブにおいて:
先端部及び基端部を有する管状胴体(210)であって、熱アニール処理された可鍛性材料から形成され、その材料の物理的特性が原子炉動作環境において実質的に維持されるように構成された管状胴体(210)を具備し、
前記基端部(220)及び前記先端部(220)のうちの一方は、前記圧縮スリーブ(200)により結合しようとする複数の構成要素の一方の構成要素が前記一方の端部に接続されるときに変形することにより、前記複数の構成要素の間をシールすることを特徴とするスリーブ。
【請求項2】
前記基端部(220)及び前記先端部(220)は、沸騰水型軽水炉(BWR)内のジェットポンプセンシングライン(100)及び前記ジェットポンプセンシングラインに対する交換ライン部分(320)のうちの一方の一端部を包囲するように構成される請求項1記載のスリーブ。
【請求項3】
前記基端部(220)及び前記先端部(220)のうち少なくとも一方は、第1の部分(221)、第2の部分(222)及び第3の部分(223)を含み、
前記第1、第2,第3の部分の各々の厚さは不均等であり、前記構成要素が前記圧縮スリーブに接続される場合、前記第1、第2,第3の部分の変形を許容しつつも、前記基端部(220)及び前記先端部(220)を超えるような変形は実質的に阻止されるように構成される請求項1記載のスリーブ。
【請求項4】
前記第1の部分(221)は前記管状胴体に最も近く、ある角度をもって前記管状胴体(210)から連続的にテーパ状になり、
前記第3の部分(223)は前記管状胴体(210)から最も遠く、ある角度をもってテーパ状になり、
前記第2の部分(222)は前記第1の部分(221)と前記第3の部分(223)との間にあり、前記第1の部分と前記第3の部分との間で連続する実質的に凹形の面を有する請求項3記載のスリーブ。
【請求項5】
前記管状胴体(210)は、接続された構成要素の外径より約0.01インチ大きい内径を有する請求項1記載のスリーブ。
【請求項6】
原子炉内のジェットポンプのセンシングラインを修理するための機械的結合アッセンブリーにおいて、
先端部及び基端部を有し、熱アニール処理された可鍛性材料から形成され、その材料の物理的特性が原子炉動作環境において実質的に維持されるように構成された管状胴体(210)を具備する圧縮スリーブ(200)であって、前記基端部(220)及び前記先端部(220)のうちの一方は、前記圧縮スリーブ(200)により結合させようとする複数の構成要素の一方の構成要素が前記一方の端部に接続されるときに変形することにより、前記複数の構成要素の間をシールする機能を発揮する圧縮スリーブ(200)と;
交換チューブ(320)と;
少なくとも1つの圧縮ナット(310)と;
鍔(300)とを具備するアッセンブリー。
【請求項7】
前記交換チューブ(320)は、前記センシングライン(100)の一区画と交換され、前記鍔(300)、前記圧縮ナット(310)、及び前記センシングラインの一区画の除去後に残る前記既設のセンシングライン(100)の管端部のうちの1つに前記圧縮スリーブ(200)によって結合される請求項6記載のアッセンブリー。
【請求項8】
原子炉内の配管修理において使用される圧縮スリーブにおいて、
第1の端部及び第2の端部を有し、99%純ニッケルから製造される略管状胴体(210)と;
構成要素と接続されるときに前記接続された構成要素と前記スリーブとの間にシール性をもたらすために、前記端部の変形を容易にする前記第1の端部(220)及び前記第2の端部(220)の各々における肉薄の円周方向区画とを具備するスリーブ。
【請求項9】
前記端部(220)の各々は、各端部において円錐形のアングル取付面を形成するテーパ状部分である請求項8記載のスリーブ。
【請求項10】
前記円錐形のアングル取付面は、前記スリーブ(200)の水平回転軸に対して約10oの角度をもつ請求項8記載のスリーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−42214(P2009−42214A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−120077(P2008−120077)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】