説明

原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置

【課題】原子炉内における取扱作業時間を短縮する。
【解決手段】取扱ツール12と、グリッドガイド16と、取扱ツールが上方に抜けるのを防止するストッパーが上面に設けられるとともにストッパーが設けられた以外の領域にグリッドガイドが通る挿入ガイド14であって、二対の側面は、下面の四つの辺のうち一辺が他の三つの辺よりも下方に位置するか、または下面の四つの頂点のうち一つの頂点が他の三つの頂点よりも下方に位置するように構成された挿入ガイド14と、挿入ガイドが原子炉内の上部格子板34の格子枠に着床するための着床部23と、挿入ガイドをグリッドガイドと一体となるように把持する把持機構20と、把持機構によって挿入ガイドがグリッドガイドに把持されているのを解除し、挿入ガイドをグリッドガイドから切り離す解除機構22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子炉内の取扱においては、取扱ツールをワイヤーロープに吊るし原子炉内に降ろして作業することが行われている。原子炉内には上部格子板があり、上部格子板より下に据え付けられている機器を取り付けまたは取り外しする場合には、取扱ツールを上部格子板の格子枠を通す必要がある。このような取扱作業のガイドとしては、一般にグリッドガイドというものが使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したグリッドガイドは、取扱ツールが上部格子板を通過した後に上部格子枠に沿って取扱ツールを下げていく時のガイドとしての機能を有するが、取扱ツールを上部格子板の格子枠に位置決めする際にガイドする機能を有していなかった。
【0004】
取扱ツールは燃料交換機のホイストのワイヤーロープ1本で吊り下げられているため、取扱ツールが回転したり前後左右に振られたりするので、上部格子板の格子枠に位置決めするのが困難であった。このため、作業時間が長くかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、原子炉内における取扱作業時間を短縮することのできる原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置は、取扱ツールと、前記取扱ツールの上面にそれぞれの下端が取り付けられるグリッドガイドと、前記取扱ツールが納められる筐体形状を有し、下面が開放されて、対向する二対の側面が前記取扱ツールのガイドとなり、前記取扱ツールが上方に抜けるのを防止するストッパーが上面に設けられるとともに前記上面の前記ストッパーが設けられた以外の領域に前記グリッドガイドが通る挿入ガイドであって、前記二対の側面は、前記下面の四つの辺のうち一辺が他の三つの辺よりも下方に位置するか、または前記下面の四つの頂点のうち一つの頂点が他の三つの頂点よりも下方に位置するように構成された挿入ガイドと、前記挿入ガイドが原子炉内の上部格子板の格子枠に着床するための着床部と、前記挿入ガイドを前記グリッドガイドと一体となるように把持する把持機構と、前記把持機構によって前記挿入ガイドが前記グリッドガイドに把持されているのを解除し、前記挿入ガイドを前記グリッドガイドから切り離す解除機構と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【図2】第1実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【図3】第1実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【図4】第1実施形態による炉内挿入ガイド装置が上部格子板の格子枠へ挿入されるときの説明図。
【図5】第1実施形態にかかる把持機構および解除機構を説明する図。
【図6】第2実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【図7】第3実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【図8】第4実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態による原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイドについて、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図5を参照して第1実施形態による原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置(以下、炉内挿入ガイド装置とも云う)を説明する。図1は、第1実施形態の炉内挿入ガイド装置の、上部格子板へ挿入する前の状態を示す断面図、図2は第1実施形態の炉内挿入ガイド装置の、上部格子板への着床状態を示す断面図、図3は第1実施形態の炉内挿入ガイド装置の、原子炉内へ着床状態を示す断面図である。
【0010】
この第1実施形態の炉内挿入ガイド装置1は、水平断面が略六角形状の取扱ツール12と、下面が開放されて側面が取扱ツール12のガイドとなり、取扱ツール12が納められる筐体形状を有する挿入ガイド14と、取扱ツール12の上面にそれぞれの下端が取り付けられてそれぞれの上端が接続部15により接続される一対のグリッドガイド16と、挿入ガイド14をグリッドガイド16と一体となるように把持する把持機構20と、挿入ガイド14がグリッドガイド16に把持されるのを解除する解除機構22と、挿入ガイドが原子炉内の上部格子板34の格子枠に着床するための着床部23と、を備えている。
【0011】
取扱ツール12の上面には、燃料交換機のホイストのワイヤーロープで吊すための吊る部17が設けられている。この吊る部17に上記ワイヤーロープを引っかけてホイストで取扱ツール12が吊り下げられまたは吊り上げられる。また、取扱ツール12の下面には燃料集合体を支持する燃料支持金具または制御棒を支持する制御棒支持金具を取り付けるための一対の足18が設けられている。
【0012】
挿入ガイド14は対向する二対の側面を有し、二対のうちの一対の側面14a、14bのうちの一方の側面14aは他方の側面14bよりも鉛直方向の長さが長くなるように構成され、他の一対の側面14cは、下端が側面14aから側面14bに向かうにつれて鉛直方向の長さが短くなるように構成されている。このように、挿入ガイド14の一つの側面14aの下辺が他の側面14b、14cの下辺よりも下側に位置するように構成されていることにより、原子炉30内に設けられている上部格子板34の格子枠への挿入ガイド14の位置決めを容易に行うことができる。なお、本実施形態では、挿入ガイド14の下面の一辺が他の辺よりも下側に位置するように構成されていたが、挿入ガイド14の下面の4つの頂点のうちの一つの頂点が他の3つの頂点よりも下側に位置するように構成しても、上部格子板34の格子枠への挿入ガイド14の位置決めを容易に行うことができる。なお、挿入ガイド14の側面14aの下端に位置し、原子炉30内の上部格子板34に挿入ガイド14を位置決めする際に、挿入ガイド14が回転方向に回りやすくなるように、上部格子板34に接する上下左右にテーパー部を有する回転ガイド26が設けられている。
【0013】
また、挿入ガイド14の上面には、図4(c)に示すように、取扱ツール12が挿入ガイド14の上面から上側に抜けないように、上記上面の対向する2つの角部にそれぞれストッパー14eが設けられている。これは、後述するように挿入ガイド14は、取扱ツール12がホイストにより吊り下げられときに、下降するグリッドガイド16のガイドとしても機能するので、これらのストッパー14eはグリッドガイド16が下降する際に邪魔にならいない位置に配置される。なお、図4(c)は、炉内挿入ガイド装置1の上面図である。図4(a)は、炉内挿入ガイド装置1が上部格子板34の格子枠へ挿入されるときの炉内挿入ガイド装置1の断面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す断面と直交する断面によって切断した断面図である。
【0014】
また、着床部23は、挿入ガイド14の上面に接合しかつ挿入ガイド14の筐体の上面から外側にはみ出すとともに原子炉内の上部格子板34の格子枠からはみ出すように設けられている。これにより、挿入ガイド14が原子炉内の上部格子板34の格子枠への着床は、着床部23のはみ出している部分の下面が上記格子枠の上面に接触することにより可能となる。本実施形態においては、図4(c)に示すように、着床部23はストッパー14eを兼用するように構成されているが、ストッパー14eと別個に設けてもよい。また、着床部23は、挿入ガイド14の上面に接合するように設けられていたが、挿入ガイド14の側面の上部に設けてもよい。
【0015】
なお、本実施形態においても、グリッドガイド16は、取扱ツール12が上部格子板34を通過した後に、格子枠に沿って取扱ツール12を下げていく時のガイドとしての機能を有する。
このように構成された本実施形態の炉内挿入ガイド装置1の動作を説明する。
【0016】
まず、図1に示すように、ワイヤーロープに吊された炉内挿入ガイド装置1を図示しないホイストによって巻き下げることにより、原子炉30内の上部格子板34の格子枠に向かって下降させる。そして、図4(a)に示すように挿入ガイド14の先端(側面14aの先端)が、上部格子板34の格子枠に達すると、ホイストによる巻下げを一時停止させ、取扱ツール12と上部格子板34の位置決め(例えば回転方向)の粗合わせを行う。この時、挿入ガイド14の先端に取付けた回転ガイド26が上部格子板4の内壁に接するように回転させると更に位置合わせが容易になる。なお、回転ガイド26は、位置決めの容易性の他に、挿入ガイド14の先端の補強と、接触する上部格子板4の格子枠に損傷を与えない効果もある。
【0017】
次に、炉内挿入ガイド装置1をホイストで更に巻下げると、挿入ガイド14の先端に取り付けられた回転ガイド26のテーパー部が上部格子板34の格子枠に沿って方位と前後左右の位置が合わせられる。挿入ガイド14が上部格子板34を通過して挿入ガイド14が上部格子板34の格子枠に着床する、すなわち着床機構23の下面が格子枠の上面に接触すると、解除機構22によって把持機構20による把持状態が解除される。この動作を図5(a)乃至図5(e)を参照して説明する。図5(a)は挿入ガイド14がグリッドガイド16に把持されている状態を示す断面図、図5(b)は図5(a)に示す把持されている状態における把持機構20と解除機構22の位置関係を示す断面図、図5(c)は解除動作の途中における把持機構20と解除機構22の位置関係を示す断面図、図5(d)は解除状態を示す断面図、図5(e)は図5(d)に示す解除状態における把持機構20と解除機構22の位置関係を示す断面図である。なお、図5(b)は図5(a)の一点鎖線で示す部分bの拡大図、図5(e)は図5(d)の一点鎖線で示す部分eの拡大図でもある。
【0018】
一対のグリッドガイド16のそれぞれには、溝16aが設けられている。把持機構20はこの溝16aに嵌り込むピン20aと、バネ20bとを有している(図5(a))。このピン20aには、グリッドガイド16から遠い側の面がテーパーとなり、近い側の面が鉛直面となる穴20cが設けられている(図5(a)、5(b))。なお、上記テーパーは、穴20cの下面の面積が上面の面積に比べて広く、下面から上面に向かうにつれて面積が減少するように設けられている。
【0019】
一方、解除機構22は、ロッド22aと、バネ22bと、ロッド22aが摺動するスリーブ22cとを備えている。ロッド22aは、上端がテーパー形状で他の部分が円柱の第1の部分と、上端にねじが設けられ他の部分が第1の部分の円柱よりも直径が小さな円柱であって上端のねじが第1の部分の下端にねじ込まれて第1の部分と一体となる第2の部分と、第2の部分の円柱よりも大きな直径の円柱である第3の部分とを備えている。第2の部分と、第3の部分は一体となって形成される。スリーブ22cには、第1の部分の円柱が摺動する第1の孔と、第3の部分が摺動する第2の孔が中心が同一となるように設けられている。
【0020】
スリーブ22cは下面が着床部23に固定される。このとき、ロッド22aの下端は、着床部23の下面よりも下側に飛び出ているように構成される。なお、スリーブ22cの下面が着床部23に固定される位置は、取扱ツール12の外周よりも外側の位置となっている。バネ22bは中にロッド22aの第2の部分が挿入され、バネ22bの一端が第2の孔の第1の孔との接合面に固定される。バネ22bの他端は第3の部分の上面に固定される。また、把持機構20のピン20aが摺動する穴がスリーブ22cの上部に設けられている。そして、この穴の、グリッドガイド16とは反対側の一端には、把持機構20のバネ20bが挿入されてねじによりバネ20bの一端が固定され、ロッド20aをグリッドガイド16に設けられた溝16aに押し込むように構成されている。これにより、スリーブ22cおよびピン20aを介して挿入ガイド14がグリッドガイド16と一体となるようにグリッドガイド16に固定されて把持される。また、ロッド22aの上側の先端部にはピン20aの穴20cのテーパーと同じ形状のテーパーを有し、把持状態においては、ロッド22aはバネ22bにより、またピン20aはバネ20cにより、ピン20aおよびロッド22aがそれぞれテーパーを介して嵌合するように構成されている(図5(a)、5(b))。したがって、挿入ガイド14はグリッドガイド16と一体となるように把持されている。
【0021】
この把持状態から、炉内挿入ガイド装置1をホイストで更に巻下げると、図5(c)に示すように、ロッド22aの下端が上部格子板34と接触し、挿入ガイド14の自重によりロッド22aが上部格子板34によって上方に押されるため、バネ22bの力に逆らってスリーブ22c内を上方に移動する。これにより、ピン20aおよびロッド22aの嵌合するテーパーの位置が把持状態の場合と異なることにより、ピン20aはバネ20bのバネ力に逆らって外側、すなわちグリッドガイド16と反対側に押される。
【0022】
更に、炉内挿入ガイド装置1をホイストで更に巻下げると、挿入ガイド14のストッパー14eが上部格子板34に接触し、挿入ガイド14が上部格子板34に着床する。すると、挿入ガイド14の自重によりロッド22aが上部格子板34によって上方に更に押されるため、バネ22bの力に逆らってスリーブ22c内を更に上方に移動する。これにより、ピン20aはバネ20bのバネ力に逆らって外側、すなわちグリッドガイド16と反対側に押されて、ピン20aがグリッドガイド16に設けられている溝16aから押し出されて、挿入ガイド14がグリッドガイド16に把持されるのが解除される(図5(d)、図5(e))。
【0023】
その後、図2に示すように、挿入ガイド14を上部格子板34に残したまま、取扱ツール12とグリッドガイド16だけが更に下降する。そして、図3に示すように下降時は挿入ガイド14にガイドされてグリッドガイド16が回転と位置を保ちながら取扱ツール12を原子炉30の炉心の所定の位置へ着床させる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、上部格子板34の通過の際に挿入ガイド14の先端を上部格子板34に達したときに回転方向と位置合わせを容易に行うことが可能となる。このため、従来の場合と異なりワイヤーロープを操って取扱ツールの位置合わせをする必要が無くなり、位置合わせに要する作業時間を短くすることが可能となり、取扱作業時間を短縮することができる。これにより、作業者の被爆低減を図ることができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、挿入ガイド14は取扱ツール12を上部格子板34の格子枠に位置決めする際のガイドとして使用可能であるとともに上部格子板34を取扱ツール12が通過後も取扱ツール12の昇降のガイドとして使用可能となっている。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による炉内挿入ガイド装置について図6(a)、6(b)を参照して説明する。図6(a)は把持状態における炉内挿入ガイド装置の断面図、図6(b)は解除状態における炉内挿入ガイド装置の断面図である。
【0027】
この第2実施形態の炉内挿入ガイド装置は、挿入ガイド14をグリッドガイド16に把持する把持機構20の把持状態を解除する解除機構22として、遠隔操作可能なエアシリンダ機構40を用いた構成となっている。このエアシリンダ機構40は、ロッド40aと、このロッド40aが摺動するシリンダ40bと、エアをシリンダ40b内に供給するバルブ40c、40dとを備えている。ロッド40aの先端は、把持機構20のピン20aのテーパーと同じテーパーを有している。バルブ40c、40dのうちの一方のバルブ40dからエアをシリンダ40b内に供給するとロッド40aがシリンダ40b内を下方に押し下げられ、他方のバルブ40cからエアをシリンダ40b内に供給するとロッド40aがシリンダ40b内を上方に押し上げられるように構成されている。このように、エアによりロッドを上下に摺動させる構成としては周知の構成を用いることができる。ロッド40aの下方の先端部は把持機構20のピン20aのテーパーと同じ勾配のテーパーを有している。なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様にピン20aには、外側の面がテーパーとなり、内側の面が鉛直面となる穴が設けられている。しかし、第1実施形態と異なり、上記テーパーは、上記穴の下面の面積が上面の面積に比べて狭く、下面から上面に向かうにつれて面積が増加するように設けられている。
【0028】
このように構成された本実施形態において、バルブ40dからエアをシリンダ40b内に供給するとロッド40aがシリンダ40b内を下方に押し下げられて、ロッド40aが把持機構のピン20aの孔に挿入されるとともにピン20aがグリッドガイド16の溝16aに嵌合した状態となって、挿入ガイド14がグリッドガイド16と一体となるように把持された状態となる(図6(a))。これに対して、バルブ40cからエアをシリンダ40b内に供給するとロッド40aがシリンダ40b内を上方に押し上げられて、ロッド40aが把持機構のピン20aの孔から外れるとともにピン20aがグリッドガイド16の溝16aから外れるように把持機構のバネによって引っ張られる状態となって、挿入ガイド14がグリッドガイド16に把持される状態から解除された状態となる(図6(b))。なお、解除は挿入ガイド14が上部格子板34に着床したときに行われる。
以上説明したように、第2実施形態によれば、遠隔操作で挿入ガイド14とグリッドガイド16の結合状態を任意に解除または再結合することが可能となる。
【0029】
また、上部格子板34に着床した時以外でも任意に遠隔操作で挿入ガイド14を外すことが容易となるので、取扱ツール12の段取り、点検等の補助作業が容易に行うことが可能となり、取扱時間の短縮と作業者の被爆低減を図ることができる。
【0030】
この第2実施形態も第1実施形態と同様に、位置合わせに要する作業時間を短くすることが可能となり、取扱作業時間を短縮することができる。これにより、作業者の被爆低減を図ることができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による炉内挿入ガイド装置について図7を参照して説明する。図7は把持状態における炉内挿入ガイド装置の断面図である。
【0032】
本実施形態の炉内挿入ガイド装置は、第1実施形態における把持機構20および解除機構22を把持/解除機構50に置き換えた構成となっている。この把持/解除機構50は、例えば樹脂製の把持用押し付けパッド50aと、このパッド50aを支持する支持部50bとを備えている。支持部50bは下面が挿入ガイド14の上面に固定され、パッド50aが挿入される孔と、この孔に挿入されたパッド50aをグリッドガイド16に押し付ける押し付け機構(例えば、ねじ等)とを備えている。この押し付け機構により、パッド50aとグリッドガイド16との間の摩擦抵抗を調整することが可能となる。把持状態においては、摩擦抵抗により挿入ガイド14がグリッドガイド16から落ちず、挿入ガイド14が上部格子板34に着床後は、取扱ツール12の自重量にてグリッドガイド16が滑り、挿入ガイド14がグリッドガイド16から外れるように摩擦抵抗が押し付け機構によって調整される。
【0033】
このように、第3実施形態によれば、上部格子板34に位置決めする際には容易に挿入ガイド14が浮き上らずに挿入ガイドとしての役目を果たすことができ、挿入ガイド14が上部格子板34に着床した後は取扱ツール12の自重量にてグリッドガイド16が滑り上部格子板34より下でのガイドの役目を果たす機能が達成できる。
【0034】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、位置合わせに要する作業時間を短くすることが可能となり、取扱作業時間を短縮することができる。これにより、作業者の被爆低減を図ることができる。また、第1および第2実施形態に比べて、把持機構および解除機構を簡素化することが可能となり、設備の省力化と設備機能維持のための作業時間の短縮と作業者の被爆低減を図ることができる。
【0035】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態による炉内挿入ガイド装置について図8(a)乃至図8(c)を参照して説明する。図8(a)乃至図8(c)は本実施形態による炉内挿入ガイド装置の断面図である。
【0036】
本実施形態の炉内挿入ガイド装置は、第1実施形態の炉内挿入ガイド装置において、グリッドガイド16を伸縮自在の多段式のグリッドガイド16Aに置き換えるとともに、挿入ガイド引上げ用アクチュエータ60を新たに設けた構成となっている。このアクチュエータ60は、挿入ガイド14を任意に取扱ツール12から上に逃がすためのものである。
【0037】
多段式のグリッドガイド16Aは、図8(b)に示すように、本実施形態において3段式となっており、パイプ16、16、16を備えている。パイプ16はパイプ16内に挿入されて摺動可能であるとともに、下端が取扱ツール12の上面に固定され、上端がパイプ16の下端から落ちないような構成となっている。また、パイプ16はパイプ16内に挿入されて摺動可能であるとともに、上端がパイプ16の下端から落ちないような構成となっている。なお、パイプ16、16、16はそれぞれ一対のパイプからなっている。一対のパイプ16の上端は第1実施形態のグリッドガイド16と同様に、接続部15により接続される。このように構成された多段式のグリッドガイド16Aは、自重により伸縮自在となる。
【0038】
図8(a)は多段式グリッドガイド16Aが縮んだ状態を示す。取扱ツール12がホイストのワイヤーロープ24に吊り下げられており、取扱ツール12が巻き下げられていない状態を示す。このとき、
挿入ガイド14は取扱ツール12に被さっている。図8(b)は、挿入ガイド14が上部格子板34に着床後、多段式グリッドガイド16Aが伸び、取扱ツール12が炉内に着床している状態を示す。図8(c)は多段式グリッドガイド16Aが縮んだ状態でホイストのワイヤーロープ24に吊り下げられている状態で、挿入ガイド引き上げ用アクチュエータ60により挿入ガイド14が引き上げられている状態を示す。
【0039】
なお、第4実施形態の挿入ガイド引き上げ用アクチュエータ60は空気圧駆動によるアクチュエータを組み込んだ例であるが、挿入ガイド14を引上げる機能を有していれば同様の作用効果が得られるため、燃料取替機上から引き上げ用ワイヤーロープで人力で引上げるように構成してもよい。
【0040】
このように、第4実施形態によれば、図8(a)に示すように多段式グリッドガイド16Aが縮んだ状態で上部格子板34上の炉内移動、及び取扱フロア上を移動可能となり、取扱ツール12と多段式グリッドガイド16Aをホイストのワイヤーロープ24に取付ける作業時にフロア上で作業を行うことが可能となる。
【0041】
また、新しい制御棒を燃料貯蔵プール内の制御棒ラックに据付ける作業においてもグリッドガイド16Aを取付けた状態で取扱うことが可能となる。また、取扱ツール12が制御棒と燃料支持金具(図示せず)を同時に取扱える取扱ツールである場合に、燃料支持金具を燃料貯蔵プール内の燃料支持金具ラックに置くことがある。この場合、図8(c)に示すように、遠隔操作で挿入ガイド14を引上げて取扱ツール12から上に逃がす事により、挿入ガイド14と燃料支持金具ラックが干渉することなく取扱ツール12が燃料支持金具ラックに着床して燃料支持金具をラックに置くことができる。
【0042】
グリッドガイドとして多段式のグリッドガイド16Aを使用することにより、ホイストのワイヤーロープに取扱ツール12とグリッドガイド16Aを取付けた状態での移動可能範囲が広がり、作業フロア上に引上げる事が可能となるため、取扱ツール12を取付けるための段取りが一度で済み、作業時間の短縮と作業者の被爆低減を図ることができる。また、挿入ガイド引き上げ用アクチュエータ60を使用することにより、遠隔操作で任意に挿入ガイド14の昇降が可能となるので、燃料支持金具をラックに置く場合に取扱ツール12の段取り替えが不要となり作業時間の短縮と作業者の被爆低減を図ることができる。
【0043】
なお、この第4実施形態も第1実施形態と同様に、位置合わせに要する作業時間を短くすることが可能となり、取扱作業時間を短縮することができる。これにより、作業者の被爆低減を図ることができる。
【0044】
上記第1乃至第4実施形態に記載された構成要件を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 炉内挿入ガイド装置
12 取扱ツール
14 挿入ガイド
14a 挿入ガイドの側面
14b 挿入ガイドの側面
14c 挿入ガイドの側面
14e ストッパー
15 接続部
16 グリッドガイド
16A グリッドガイド
16a 溝
17 吊る部
18 足
20 把持機構
20a ピン
20b バネ
22 解除機構
22a ロッド
22b バネ
22c スリーブ
23 着床部
24 ワイヤーロープ
26 回転ガイド
30 原子炉
34 上部格子板
40 解除用エアシリンダ機構
40a ロッド
40b シリンダ
40c エア供給用バルブ
40d エア供給用バルブ
50 把持/解除機構
50a 把持用押し付けパッド
50b 支持部
60 挿入ガイド引上げ用アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取扱ツールと、
前記取扱ツールの上面にそれぞれの下端が取り付けられるグリッドガイドと、
前記取扱ツールが納められる筐体形状を有し、下面が開放されて、対向する二対の側面が前記取扱ツールのガイドとなり、前記取扱ツールが上方に抜けるのを防止するストッパーが上面に設けられるとともに前記上面の前記ストッパーが設けられた以外の領域に前記グリッドガイドが通る挿入ガイドであって、前記二対の側面は、前記下面の四つの辺のうち一辺が他の三つの辺よりも下方に位置するか、または前記下面の四つの頂点のうち一つの頂点が他の三つの頂点よりも下方に位置するように構成された挿入ガイドと、
前記挿入ガイドが原子炉内の上部格子板の格子枠に着床するための着床部と、
前記挿入ガイドを前記グリッドガイドと一体となるように把持する把持機構と、
前記把持機構によって前記挿入ガイドが前記グリッドガイドに把持されているのを解除し、前記挿入ガイドを前記グリッドガイドから切り離す解除機構と、
を備えていることを特徴とする原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項2】
前記挿入ガイドは前記取扱ツールと一緒に原子炉内へ吊り降ろされ、前記挿入ガイドが前記原子炉内の上部格子板に着床後、前記解除機構によって前記挿入ガイドが前記グリッドガイドに把持されるのを解除されて前記上部格子板上に残置されて、前記取扱ツールのみが前記原子炉内へ下降することを特徴とする請求項1記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項3】
前記解除機構は、前記挿入ガイドが原子炉内の上部格子板に着床したときに、前記挿入ガイドの自重を利用して、前記挿入ガイドが前記グリッドガイドに把持されているのを解除することを特徴とする請求項1または2記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項4】
前記挿入ガイドの前記側面の下側に設けられ、原子炉内の上部格子板に前記挿入ガイドを位置決めする際に、前記挿入ガイドが回転方向に回りやすくなるように、前記上部格子板に接する上下左右の面がテーパーとなる回転ガイドを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項5】
前記解除機構は、エアシリンダ機構であることを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項6】
前記把持機構および前記解除機構は、樹脂製のパットと、このパッドを支持しかつ前記グリッドガイドに押し付ける押し付け機構と、を備えた把持/解除機構であって、前記パッドと前記グリッドガイドとの間の摩擦力で前記挿入ガイドが前記グリッドガイドに把持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項7】
前記グリッドガイドは、伸縮可能な多段式のグリットガイドであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。
【請求項8】
前記挿入ガイドが前記グリッドガイドから切り離されたときに、前記挿入ガイドを上方に引き上げるアクチュエータを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の原子炉内取扱機器用炉内挿入ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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