説明

原子炉内構造物の間隔測定装置

【課題】狭隘構造部の間隔測定装置の構成全体の単純化および小型化を図り、間隔測定が短時間で行え、可動部分を不要化または小型化し、検査作業を容易とする。
【解決手段】水張りされた原子炉圧力容器100内に挿入される保持治具1と、この保持治具に設けられ構造物間の水距離を水中にて計測する非接触形のセンサ部2と、このセンサ部を遠隔操作する遠隔操作装置3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉の炉内点検、炉内構造物の交換等の際に原子炉内構造物の間隔寸法を水中において遠隔操作により測定する原子炉内構造物の間隔測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内に設置されているジェットポンプ、炉心シュラウド等の点検工事や交換工事の際には、各々の構造物間の間隔寸法測定が重要であり、工事装置が構造物と干渉しないように狭隘部への接近性を予め確認しておく必要がある。この確認を行う場合、従来では原子炉内の構造物間の間隔および形状等を測定する手段として、機械的計測器具を使用して測定を行うことが一般的であった。
【0003】
このような従来の機械的計測器具を使用して炉内構造物の間隔および形状等を測定する例として、ジェットポンプと炉心シュラウドの外壁または原子炉圧力容器の内壁までの距離を計測する場合について、図7、図8および図9を参照して説明する。
【0004】
図7には第1の従来例として、ジェットポンプ101と炉心シュラウド102の外壁102aとの間に炉上から保持治具としてポール103を吊下し、このポール103の下端に設けた間隔ゲージ104を使用する場合を示している。この例では、両先端間の長さが定められた間隔ゲージ104を当該測定部位に接触させることにより構造物間の間隔確認を行っていたが、間隔の実測値を得るために間隔ゲージ104の先端長さが異なる複数種類のものを用意して測定する必要があった。
【0005】
図8には第2の従来例として、ジェットポンプ101と炉心シュラウド102の外壁との間に炉上からポール103およびエアホース105を吊下し、これらの下端にエアシリンダ106を接続し、エアシリンダ106にリニアゲージ107を設けた場合を示している。この例では、リニアゲージ107を水中仕様とし、その両先端を測定部位に接触させて間隔の測定をしていた。
【0006】
図9には第3の従来例として形状測定用の装置を示している。この例では保持治具としてのポール103に距離ゲージ109を移動させる駆動機構108を取付け、エアシリンダ106により位置決めし、測定対象構造物101に沿って距離ゲージ109を駆動機構108により移動させて間隔を測定することにより、形状の測定を行うものであった。
【0007】
なお、従来では炉内構造物の検査、測定、補修等について、曲り部を有する縦長なアームの先端にセンサを設け、原子炉内の狭隘空間に挿入することができる装置(例えば特許文献1参照)、計側機器をライザ管に取付けてライザ管とジェットポンプパッドとの間隔を測定する提案(特許文献2参照)、ロボットを用いて炉内構造物の状態を点検する提案(特許文献3参照)等、種々の提案がされている。
【特許文献1】特開2001−349977号公報
【特許文献2】特開2002−341084号公報
【特許文献3】特開2003−337192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原子炉の定期検査中における炉内構造物は放射線被曝低減のため炉内満水となっており、直接接近して測定等を行うことは不可能である。上述した従来の技術では測定箇所に寸法測定装置を取付ける際、遠隔で行われるので、エアシリンダ等の動作機構を持つことになるが、炉上から炉内に亘る長いエアホースや計測ケーブルなどの多くの装置が必要となる。このため、装置構造が複雑となり、特に狭隘部ではそのアクセスが困難なため、装置の取り扱いに多くの時間を必要とする。また、最悪の場合には炉内構造物に引掛る等の干渉が生じ、あるいは回収困難となり、炉内構造物に損傷を与える可能性がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、エアシリンダやその駆動用機器等の複雑な動作機構を必要とすることなく、装置構造の単純化および小型化等が図れるとともに、対象物に非接触で測定を行うことができ、取り扱い性にも優れ、しかも装置取付け時間を含めた測定時間を短縮できるうえ、測定精度を高めることができる原子炉内構造物の間隔測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明では、原子炉圧力容器内の複雑形状部における構造物間の狭隘空間距離を測定する原子炉内構造物の間隔測定装置であって、水張りされた前記原子炉圧力容器内に挿入される保持治具と、この保持治具に設けられ前記構造物間の水距離を水中にて計測する非接触形のセンサ部と、このセンサ部を遠隔操作する遠隔操作装置とを備えたことを特徴とする原子炉内構造物の間隔測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可動部分を不要化または小型化することができ、それにより装置構成全体の単純化および小型化が図れ、測定装置を使用することにより、狭隘部の間隔測定が短時間で行え、検査作業が容易となる。さらに、複数振動子超音波センサやレーザセンサ等非接触式センサを用いると測定センサ部を高放射能で汚染している測定部位に直接接触させる必要がないので、測定装置の除染上極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態(図1)]
本実施形態では、水張りされた原子炉圧力容器内に挿入される保持治具と、この保持治具に設けられ構造物間の水距離を水中にて計測する非接触形のセンサ部と、このセンサ部を遠隔操作する遠隔操作装置とを備え、センサ部は測定部位の温度を測定する温度センサを備え、遠隔操作装置は校正時との温度差による誤差を補正する補正手段を備える構成の原子炉内構造物の間隔測定装置について説明する。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態による原子炉内構造物の間隔測定装置を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態による原子炉内構造物の間隔測定装置は、原子炉圧力容器100内の複雑形状部であるダウンカマ部における構造物としての炉心シュラウド102の外壁102aとジェットポンプ101との間の狭隘空間距離lを測定する原子炉内構造物の間隔測定装置である。
【0014】
そして、水張りされた原子炉圧力容器100内に挿入される保持治具1と、この保持治具1に設けられ炉心シュラウド102の外壁102aとジェットポンプ101との間の構造物間の水距離を水中にて計測する非接触形のセンサ部2と、このセンサ部2を遠隔操作する遠隔操作装置3とを備えている。
【0015】
センサ部2は、計測対象となる炉心シュラウド102の外壁102aとジェットポンプ101との間で超音波またはレーザ光を発振して両構造物までの水距離を検出する超音波距離センサまたはレーザ光距離センサを備えている。なお、本実施形態においては以下、両センサを含めて「センサ5」といい、代表的に超音波距離センサとして説明する。
【0016】
遠隔操作装置3は、オペレーションフロア110上に設置されてセンサ部2からの検出情報をリアルタイムで入力および読取処理する入力処置装置7を備えている。
【0017】
具体的には、超音波方式のセンサ部2が原子炉圧力容器100内の水中にてジェットポンプ101の炉内側位置に保持治具1により固定配置されている。保持治具1は例えば縦長管状のものであり、炉心シュラウド102のフランジ部から吊下してある。センサ部2には、超音波振動子からなるセンサ5と、水温を測定する温度センサ6とが内臓されている。センサ部2から保持治具1を貫通して、接続ケーブル4がオペレーションフロア110に設置した遠隔操作装置3に接続されている。
【0018】
このような構成において、間隔測定を行う場合には、まず、保持治具1によりジェットポンプ101の間隔測定部位にセンサ部2を固定配置する。そして、超音波振動子であるセンサ5から超音波を発生させ、炉心シュラウド102の外壁からの反射波をセンサ5により受信することにより、ジェットポンプ101と炉心シュラウド102間の間隔が測定される。
【0019】
ここで、超音波の音速は水温によって変化するため、温度センサ6により水温を測定する。そして、センサ5からの距離計測データと温度センサ6からの水温データとを、接続ケーブル4を介してオペレーションフロア110に設置している遠隔操作装置3の入力処置装置7に集め、水温データにより自動補正した距離測定結果を表示する。
【0020】
本実施形態によれば、可動部分がなく、構造が単純で、小型の測定装置を使用するので、狭隘部の間隔測定が短時間で行える。従って、構造物間で測定装置が干渉し回収困難となる危険性が減少し、さらに放射線管理区域内での作業についての人体への被曝を少なくすることができる。
【0021】
また、構造物に接触させる必要がないため、構造物間で測定装置が引掛り回収困難になる虞もない。
【0022】
[第2実施形態(図2、図3)]
本実施形態では、センサ部が2体のセンサを備え、これらのセンサから互いに相反する方向に同時に超音波またはレーザ光を発振することにより、センサを構造物間の任意の位置に挿入するのみで構造物間距離の測定が可能な原子炉内構造物の間隔測定装置について説明する。また、遠隔操作装置は、2体のセンサがそれぞれ測定した構造物までの距離値と2つのセンサ間のオフセット距離値とを合算して表示することで、構造物間の距離を直接表示する表示部を有する間隔測定装置について説明する。また、センサ部にレーザ光距離センサを備え、レーザスポット径に対応する微小エリアの間隔測定を可能とした間隔測定装置について説明する。さらに、センサ部は測定部位の温度を測定する温度センサを備え、遠隔操作装置は校正時との温度差による誤差を補正する補正手段を備える原子炉内構造物の間隔測定装置について説明する。
【0023】
図2は、本発明の第2実施形態による原子炉内構造物の間隔測定装置を示す構成図である。図2に示すように、本実施形態による原子炉内構造物の間隔測定装置は、2振動子超音波センサ部9が、原子炉圧力容器内における水中のジェットポンプ101と、炉心シュラウド102との間に保持治具1により固定されている。保持治具1は、炉心シュラウド102のフランジ部から吊下してある。2振動子超音波センサ部9は、互いに反対向きに第1超音波振動子10と第2超音波振動子11とを内臓したものであり、さらに水温を測定する温度センサ6が内臓されている。2振動子超音波センサ部9から保持治具1を貫通して、接続ケーブル4がオペレーションフロアに設置された遠隔操作装置3に接続してある。
【0024】
次に作用を説明する。保持治具1により、ジェットポンプ101と炉心シュラウド102との間隔測定部位に2振動子超音波センサ部9を固定する。次に、第1超音波振動子10からジェットポンプ101の向きに超音波を発生させ、ジェットポンプ101の壁からの反射波を第1超音波振動子10によって受信することにより、ジェットポンプ101と2振動子超音波センサ部9の間隔を測定する。
【0025】
さらに、第2超音波振動子11から炉心シュラウド102の向きに超音波を発生させ、炉心シュラウド102の外壁102aからの反射波を第2超音波振動子11で受信することにより、炉心シュラウド102と2振動子超音波センサ部9の間隔を測定する。従って、計測に必要なジェットポンプ101と炉心シュラウド102との間隔は、それぞれのデータおよび2振動子10,11のオフセット距離値を合計することで測定される。ここで、超音波の音速は水温によって変化するため、温度センサ6によって水温を測定する。第1超音波振動子10と第2超音波振動子11からの距離計測データと温度センサ6からの水温データとが、接続ケーブル4を通ってオペレーションフロアに設置された遠隔操作装置3に集められ、水温データにより自動補正した距離測定結果が表示部12に表示される。
【0026】
本実施形態によれば、可動部分がなく、構造が単純で小型の測定装置を使用するので、狭隘部の間隔測定が短時間で行える。従って、放射線管理区域内での作業においても、人体への被曝が少なくすることができる。また、測定センサ部を高放射能で汚染している測定部位に直接接触させる必要がないので、測定装置の除染上極めて有利である。
【0027】
次に、図3は本発明の第2実施形態の変形例における間隔測定装置の超音波センサ部を示す説明図である。図3において、2振動子超音波センサ部9には、背中合わせに設置した2個の超音波振動子、すなわち第1超音波振動子10と第2超音波振動子11、および温度センサ6が内蔵されている。作用については、図2に示した構成と略同様であるが、両者の超音波の方向の軸が一致するので、より正確な間隔測定が可能となる。
【0028】
なお、本実施形態の2振動子超音波センサ部9では被測定面がセンサ表面とほぼ平行である必要があるが、構造物間の距離は設計寸法としてほぼ知られているので、その設計上の寸法範囲をカバーする測定範囲をもつレーザ式距離計等、他の方式の非接触式距離計を用いることにより、面の平行が保たれなくても間隔測定可能となる。
【0029】
本実施形態によれば、原子炉圧力容器内の測定部位の間、例えばジェットポンプ101の鉛直パイプ部と炉心シュラウド102の外壁102aまたは原子炉圧力容器内壁の間の任意の位置に置いた超音波方式センサ部から両方向に超音波を発振し、2振動子超音波センサ部9からジェットポンプ101の鉛直パイプ部までの距離および2振動子超音波センサ部9から炉心シュラウド102の外壁102aまたは原子炉圧力容器の内壁までの距離を同時に短時間で計測することができる。
【0030】
また、水温により音速が変化するので、本実施形態の2振動子超音波センサ部9には温度センサ6が付属しており、2つの距離計測データと水温データとがオペレーションフロア上に設置した遠隔操作装置3に集まり、2振動子10,11間のオフセット距離値を合算した上で、自動補正された距離測定結果の表示を行うことができる。また、2振動子超音波センサ部9に代えてレーザ式距離計を用いることにより、レーザスポット径の約1mm程度の範囲の距離を測定することがきる。したがって、局部的に形状が変化している微小範囲についても測定が行えるうえ、超音波方式では測定困難なセンサと測定部位とが平行でない場合でも、測定可能となり、より精度の高い間隔測定が可能となる。
【0031】
さらに、センサ部には温度センサが組み込まれているので、超音波方式センサの場合に、水温により音速が変化しても、2振動子超音波センサ部9に付属する温度センサ6により水温を測定し、オペレーションフロア上の間隔測定装置に水温データを送り、距離測定結果を自動補正することができる。
【0032】
また、レーザ方式センサの場合、付属の温度センサにより測定時の温度を測定し、校正時の温度との比較により距離測定結果を自動補正することができる。
【0033】
[第3実施形態(図4)]
本実施形態では、保持治具が間隔測定箇所近傍の構造物に位置決めされ、その位置を基点としてセンサ部を原子炉内の当該測定部位に接近させることを可能とした間隔測定装置について説明する。また、センサ部が原子炉内構造物の測定部位の正位置に設置されていることを確認する手段として、水中テレビカメラおよび水中照明具を備えた原子炉内構造物の間隔測定装置について説明する。
【0034】
図4は、本発明の第3実施形態による間隔測定装置を示す構成図である。この図4に示すように、炉心シュラウド102のフランジ上にレール12を設置する。レール12には例えばローラ等を用いた上下駆動機構13が取付けてあり、この上下駆動機構13に保持治具1を保持している。また、燃料交換プラットフォーム等から、水中照明具14および水中テレビカメラ15が吊下げてあり、これらを間隔測定部位近くに配置している。超音波センサ部2を当該間隔測定部位に設置するため、水中照明具14および水中テレビカメラ15を使用して、遠隔操作装置3の図示しないモニタを見ながらレール12に取付けられている上下駆動機構13を炉心シュラウド102の周方向および上下方向に移動させ、保持治具1に保持されている超音波センサ部2の位置合せを行う。
【0035】
本実施形態によれば、適確かつ短時間に所定の位置に超音波センサ部2を設置することができる。なお、炉心シュラウド102のフランジ上にレールを設置することなく、フランジ部形状をガイドとして利用してもよい。
【0036】
また、燃料交換プラットフォームまたは原子炉圧力容器フランジまたはシュラウドフランジから水中テレビカメラ15および水中照明具14を吊下げ、原子炉内構造物の当該寸法測定部位の正しい位置にセンサ部2が取付けられ、または位置決めされたことを、オペレーションフロア上のモニタテレビ等で確認することができる。
【0037】
[第4実施形態(図5)]
本実施形態では、保持治具がセンサ部を構造物に沿って移動可能なスキャニング機構を備えた間隔測定装置について説明する。
【0038】
図5は本実施形態による間隔測定装置を示す構成図である。図5に示すように、本実施形態では図3よび図4に示した構成に加え、炉心シュラウド102から吊り下げられている保持治具1の先端に上下駆動機構16が設けられ、上下駆動機構16に超音波センサ部9が取付けられている。上下駆動機構16には移動距離測定器17が付属してある。すなわち、超音波センサ部9がシュラウドフランジに取付けたレールから吊下げられた上下動作可能な保持治具1に取付けられ、さらにセンサ部9がスキャニング機構19を持つ構成となっている。そして、保持治具により測定対象物との位置決めを行った後、センサ部9がスキャニング機構19により測定対象物に沿って移動して測定を続け、測定対象物の形状を測定する構成となっている。
【0039】
本実施形態においては、炉心シュラウド102から吊り下げられている保持治具1により測定対象物であるジェットポンプ101との位置決めを行った後、上下駆動機構16により超音波センサ部9をスキャニングさせる。そして、スキャニングと同時に、第1超音波振動子10と第2超音波振動子11とを動作させ、測定対象物であるジェットポンプ101および炉心シュラウド102との間隔を測定する。そして、温度センサ6で水温を測定し、音速を補正する。また、移動距離測定器17で超音波センサ部9の位置を検出することにより、測定対象物の形状を測定する。超音波振動子を1個として片側のみの形状測定でもよい。
【0040】
本実施形態によれば、構造が単純で小型の測定装置を使用するので、狭隘部の構造物の形状測定が短時間で行える。従って、放射線管理区域内での作業なので人体への被曝が少なくなる。また、測定センサ部を高放射能で汚染している測定部位に直接接触させる必要がないので、測定装置の除染上極めて有利である。
【0041】
[第5実施形態(図6)]
本実施形態では、センサ部が多数の小型センサ要素の集合体からなるセンサを備えており、センサ部を定位置として構造物の形状測定を可能とするとともに、センサ部は測定部位の温度を測定する温度センサを備え、遠隔操作装置は校正時との温度差による誤差を補正する補正手段を備える原子炉内構造物の間隔測定装置について説明する。
【0042】
図6は本実施形態による間隔測定装置を示す構成図である。図6に示すように、炉心シュラウド102から吊り下げられている保持治具1の先端に超音波センサ部9が取付けられ、超音波センサ部9には多数の小型超音波振動子の集合体18が設置されている。
【0043】
この構成において、炉心シュラウド102から吊り下げられている保持治具1により測定対象物との位置決めを行った後、多数の小型超音波振動子の集合体18を動作させて測定対象物であるジェットポンプ101および炉心シュラウド102との間隔を測定する。温度センサ6で水温を測定し、音速を補正する。多数の小型超音波振動子の互いの位置関係が決まっているので、多数の間隔測定データにより、測定対象物の形状を測定する。超音波振動子を片側のみとして片方向のみの形状測定でもよい。
【0044】
本実施の形態によれば、可動部分がなく、構造が単純で小型の測定装置を使用するので、狭隘部の構造物の形状測定が短時間で行える。従って、放射線管理区域内での作業なので人体への被曝が少なくなる。また、測定センサ部を高放射能で汚染している測定部位にじかに接触させる必要がないので、測定装置の除染上極めて有利である。なお、多数の小型超音波振動子はレーザ式センサ等を使用した複数の距離センサであってもよい。
【0045】
そして、超音波方式センサの場合水温により音速が変化するので、超音波方式センサ部に付属する温度センサが水温を測定し、オペレーションフロア上の間隔測定装置に水温データを送り距離測定結果を自動補正することができる。なお、レーザ方式センサの場合には付属の温度センサにより測定時の温度を測定し、校正時の温度との比較により距離測定結果を自動補正する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態による間隔測定装置を示す構成図。
【図2】本発明の第2実施形態による間隔測定装置を示す構成図。
【図3】本発明の第2実施形態による間隔測定装置の変形例を示す構成図。
【図4】本発明の第3実施形態による間隔測定装置を示す構成図。
【図5】本発明の第4実施形態による間隔測定装置を示す構成図。
【図6】本発明の第5実施形態による間隔測定装置を示す構成図。
【図7】従来の間隔測定装置の第1例を示す構成図。
【図8】従来の間隔測定装置の第2例を示す構成図。
【図9】従来の間隔測定装置の第3例を示す構成図。
【符号の説明】
【0047】
100‥原子炉圧力容器、101‥ジェットポンプ、102‥炉心シュラウド、102a‥外壁、110‥オペレーションフロア、1‥保持治具、2‥センサ部、3‥遠隔操作装置、4‥接続ケーブル、5‥センサ、6‥温度センサ、7‥入力処置装置、9‥2振動子超音波センサ部、10‥第1超音波振動子、11‥第2超音波振動子、12‥レール、13‥上下駆動機構、14‥水中照明具、15‥水中カメラ、16‥上下駆動機構、17移動距離測定部、18‥小型超音波振動子の集合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器内の複雑形状部における構造物間の狭隘空間距離を測定する原子炉内構造物の間隔測定装置であって、水張りされた前記原子炉圧力容器内に挿入される保持治具と、この保持治具に設けられ前記構造物間の水距離を水中にて計測する非接触形のセンサ部と、このセンサ部を遠隔操作する遠隔操作装置とを備えたことを特徴とする原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項2】
前記センサ部は、計測対象となる前記構造物同士の間で超音波またはレーザ光を発振して前記構造物までの水距離を検出する超音波距離センサまたはレーザ光距離センサを備え、前記遠隔操作装置は、オペレーションフロア上に設置されて前記センサ部からの検出情報をリアルタイムで入力および読取処理する入力処置装置を備えた請求項1記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項3】
前記センサ部は2体のセンサを備え、これらのセンサから互いに相反する方向に同時に超音波またはレーザ光を発振することにより、前記センサを前記構造物間の任意の位置に挿入するのみで前記構造物間距離の測定が可能である請求項2記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項4】
前記遠隔操作装置は、前記2体のセンサがそれぞれ測定した構造物までの距離値と前記2つのセンサ間のオフセット距離値とを合算して表示することで、前記構造物間の距離を直接表示する表示部を有する請求項3記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項5】
前記センサ部にレーザ光距離センサを備え、レーザスポット径に対応する微小エリアの間隔測定を可能とした請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項6】
前記保持治具は、間隔測定箇所近傍の構造物に位置決めされ、当該位置を基点として前記センサ部を原子炉内の当該測定部位に接近させることを可能とした請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項7】
前記センサ部が前記原子炉内構造物の測定部位の正位置に設置されていることを確認する手段として、水中テレビカメラおよび水中照明具を備えた請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項8】
前記保持治具は、前記センサ部を前記構造物に沿って移動可能なスキャニング機構を備えた請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項9】
前記センサ部は多数の小型センサ要素の集合体からなるセンサを備え、前記センサ部を定位置として前記構造物の形状測定を可能とした請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。
【請求項10】
前記センサ部は測定部位の温度を測定する温度センサを備え、前記遠隔操作装置は校正時との温度差による誤差を補正する補正手段を備える請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の原子炉内構造物の間隔測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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