説明

原料投入装置、原料投入方法及び溶解炉システム

【課題】溶解炉の投入口を通じて原料を投入することが可能であるとともに、溶解炉からの熱による劣化を抑制でき、長寿命化を図ることができる原料投入装置、この原料投入装置を用いた原料投入方法及びこの原料投入装置を備えた溶解炉システムを提供する。
【解決手段】溶解炉10に設けられた投入口13を通じて溶解炉10内に原料を投入する原料投入装置30であって、溶解炉10に近接・離間するように往復移動する本体部40と、溶解炉10内に投入される原料を保持する原料保持部60と、を有し、原料保持部60は、本体部40の往復移動方向に対して交差する方向に移動自在とされており、本体部40から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で、本体部40とともに溶解炉10に近接・離間するように往復移動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄スクラップやNi合金等の金属材料を溶解する溶解炉において原料を溶解炉内に投入する際に使用される原料投入装置、この原料投入装置を用いた原料投入方法及び前述の原料投入装置を備えた溶解炉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料を溶解する溶解炉として、アーク炉、誘導炉、溝型炉、抵抗炉、ガス炉等の種々の方式のものが提供されている。例えば、高温条件下或いは耐食合金として用いられるNi基合金や鉄スクラップの場合には、その融点が1500℃以上と比較的高いため、特許文献1に記載されたアーク式の溶解炉が用いられている。
【0003】
このような溶解炉においては、炉内に原料を投入して溶解することになるが、原料としてスクラップ屑を用いた場合、スクラップ屑の見かけの比重が小さいために、溶解して溶融金属となった際に体積が大きく減少することになり、原料を溶解炉内に追加投入する必要がある。ここで、溶解炉内には既に溶解した高温の溶融金属が存在していることから、溶解炉の周辺の気温は高く、原料を追加投入する作業は非常に過酷なものであった。
【0004】
そこで、溶解炉に設けられた投入口から原料を自動で投入する原料投入装置が提供されている。例えば、特許文献2に記載された原料投入装置は、原料待機位置と溶解炉の投入口との間を移動する搬送台車と、この搬送台車の上を溶解炉の投入口に向けて前後進可能な投入台車とを備えたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−286371号公報
【特許文献2】特開平10−19474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、引用文献2に記載された原料投入装置では、搬送台車が溶解炉の投入口の前に移動し、この搬送台車の上を投入台車が溶解炉の投入口に向けて前後進する構成とされているので、投入台車及び搬送台車が投入口の開口方向に位置することになる。このため、投入口を開口した際に溶解炉からの熱を投入台車及び搬送台車が直接受けることになり、早期に劣化してしまうおそれがあった。特に、投入台車は溶解炉内に挿入されるため、駆動部も含めて劣化が著しくなるといった問題があった。
さらに、引用文献2に記載された原料投入装置では、溶解炉の投入口の前に、原料待機位置と溶解炉の投入口とを移動する搬送台車のレールが配設されることになる。すると、投入口を通じた他の作業、例えば溶湯の測温作業等を行う際にレールが干渉してしまい、測温作業を効率的に行うことができないといった問題があった。さらに、溶解炉の補修作業時等においても、レールの存在が作業性を低下させる要因となっていた。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、溶解炉の投入口を通じて原料を投入することが可能であるとともに、溶解炉からの熱による劣化を抑制でき、長寿命化を図ることができる原料投入装置、この原料投入装置を用いた原料投入方法及びこの原料投入装置を備えた溶解炉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る原料投入装置は、溶解炉に設けられた投入口を通じて前記溶解炉内に原料を投入する原料投入装置であって、前記溶解炉に近接・離間するように往復移動する本体部と、前記溶解炉内に投入される原料を保持する原料保持部と、を有し、前記原料保持部は、前記本体部の往復移動方向に対して交差する方向に移動自在とされており、前記本体部から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で、前記本体部とともに前記溶解炉に近接・離間するように往復移動することを特徴とする。
【0009】
この構成の原料投入装置においては、原料を保持する原料保持部が、本体部の前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で、前記本体部とともに前記溶解炉に近接・離間するように往復移動する構成とされているので、溶解炉の投入口に原料保持部を挿入する際に、本体部を投入口の開口方向に正対するように配置することなく原料を投入することが可能となり、本体部の熱による早期劣化を防止することができる。
また、原料を原料保持部に載置する際には、本体部を溶解炉から離間した位置とし、さらに原料保持部を投入口の開口方向から離間した位置で行うことができ、原料投入作業の負荷軽減を図ることができる。
【0010】
ここで、前記原料保持部が、前記本体部の前記往復移動方向に延びる軸線を中心に揺動する揺動機構を介して、前記本体部に接続されている構成を採用することが好ましい。
この場合、前記本体部の前記往復移動方向に延びる軸線を中心に揺動する揺動機構によって、前記原料保持部が前記本体部の往復移動方向に対して交差する方向に移動されることになる。よって、原料保持部を投入口から離間した位置に移動させて、原料を原料保持部に載置することができ、原料投入作業の負荷軽減を図ることができる。
【0011】
また、前記原料保持部を、前記本体部の往復移動方向に沿って延在するアーム部と、該アーム部の先端に設けられたバケット部と、該バケット部を前記アーム部の延在方向を軸線として回転させる回転駆動機構と、を備えたものとすることが好ましい。
この場合、アーム部の先端を投入口から溶解炉内に挿入し、バケット部を回転させることによって、溶解炉内に確実に原料を投入することができる。
【0012】
さらに、前記原料保持部を、前記本体部に対して着脱可能に構成することが好ましい。
この場合、溶解炉内に挿入される原料保持部は本体部に比べて劣化し易いため、原料保持部のみを交換することによって、本体部の更なる寿命延長を図ることができる。また、メンテナンス性が向上し、この原料投入装置の使用コストを削減することができる。
【0013】
本発明に係る原料投入方法は、前述の原料投入装置を用いて、溶解炉に設けられた投入口を通じて前記溶解炉内に原料を投入する原料投入方法であって、前記投入口から離間した位置に前記本体部を配置し、前記原料保持部を前記本体部から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で前記投入口に挿入し、原料を溶解炉内に投入することを特徴とする。
【0014】
この構成の原料投入方法によれば、原料保持部を投入口から離間した位置で原料保持部に原料を載置し、この原料保持部を前記本体部から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で前記投入口に挿入して原料を溶解炉内に投入することが可能となり、原料投入作業の負荷軽減を図ることができるとともに溶解炉内に確実に原料を投入することができる。
【0015】
本発明に係る溶解炉システムは、原料が投入される投入口を有する溶解炉と、前述の原料投入装置と、を備え、前記本体部が、前記投入口の開口方向から偏倚した位置で前記往復移動するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
この構成の溶解炉システムによれば、溶解炉の投入口近傍に本体部が位置することがなくなり、投入口近傍にレール等を設ける必要がない。このため、投入口を通じた測温作業やメンテナンス作業を行う際に、干渉するものがなく、これらの作業を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶解炉の投入口を通じて原料を投入することが可能であるとともに、溶解炉からの熱による劣化を抑制でき、長寿命化を図ることができる原料投入装置、この原料投入装置を用いた原料投入方法及びこの原料投入装置を備えた溶解炉システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である溶解炉システムの平面説明図である。
【図2】図1に示す溶解炉システムの側面説明図である。
【図3】本発明の実施形態である原料投入装置を基端側から見た図である。
【図4】本発明の実施形態である原料投入装置を平面説明図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
図1から図4に本発明の実施形態である原料投入装置30及びこの原料投入装置30と、溶解炉10とを備えた溶解炉システム1を示す。
本実施形態である溶解炉システム1は、例えばNi基合金等の比較的融点の高い金属の溶解に用いられるものである。
【0020】
まず、溶解炉10について説明する。この溶解炉10は、上述のように比較的融点の高い金属の溶解に用いられることからアーク式溶解炉とされており、図1及び図2に示すように、有底筒状をなす炉本体11と、炉本体11の上部開口部を閉止する蓋部17とを備えている。
蓋部17は、支軸18を中心にして揺動し、炉本体11の上部開口部を開閉する構成とされている。さらに、蓋部17には厚さ方向に貫通する挿入孔19が穿設されており、この挿入孔19を通じて、アーク放電用の電極棒(本実施形態では黒鉛電極棒)が挿入可能とされている。
【0021】
炉本体11は、その側面上部の一部に、炉本体11内部にて溶解された溶融金属を注出するための注出口12が設けられており、傾動手段(図示なし)によって傾動して、炉本体11内部の溶融金属を外部に注出するように構成されている。
そして、炉本体11を上方から見て注出口12と対向する位置には、原料を炉本体11内部に追加投入するための投入口13が設けられている。この投入口13は、開閉自在とされるとともに排気フード14に接続されている。
【0022】
次に、本実施形態である原料投入装置30について説明する。この原料投入装置30は、図2に示すように溶解炉10の側方に設けられたステージ部21の床面上に配置されている。
この原料投入装置30は、溶解炉10に近接・離間するように往復移動する本体部40と、この本体部40に接続されるとともに、溶解炉10内に追加投入される原料が載置される原料保持部60と、を有している。
【0023】
本体部40は、ステージ部21の床面に設けられたレール部22の上を走行する台車部41と、この台車部41の上に配設された本体駆動部49と、原料保持部60に接続される第1アーム部47と、この第1アーム部47が軸支される支持軸部51と、この支持軸部51を中心にして第1アーム部47を揺動させる揺動駆動部57と、を備えている。
【0024】
レール部22は、断面コの字状をなす2本の棒材が、互いにコの字の開口側が対向するようにしてステージ部21の床面に設置されている。
台車部41は、天板部42と、この天板部42から下方に向けてする突出部43と、突出部43に支軸されたシャフト部44と、シャフト部44の両端に配設された車輪部45と、を備えている。この車輪部45が、レール部22を構成する断面コの字状をなす棒材に挿入され、レール部22に沿って台車部41が往復移動する構成とされている。
【0025】
台車部41の天板部42の上には、本体部40をレール部22に沿って往復移動させるための本体駆動部49が載置されるとともに、上方に向けて直交するように延出する支持プレート46が立設されている。この支持プレート46に、前述の揺動駆動部57と、支持軸部51とが、支持プレート46に対して直交するように配列されている。
揺動駆動部57は、例えば回転駆動モータ等の回転駆動体であって、その一端(本実施形態では図2に示すように溶解炉10側)に駆動ギア58が配設されている。
【0026】
また、支持軸部51は、その一端(本実施形態では図2に示すように溶解炉10側)に、揺動駆動部57の駆動ギア58に歯合する伝達ギア52が配設され、揺動駆動部57による駆動ギア58の回転に伴って回転するように構成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、伝達ギア52の外径が駆動ギア58の外径よりも大きくなるように設定されている。さらに、支持軸部51には、第1アーム部47に接続される接続部53が設けられており、この接続部53の端部に、チェーン32を掛止するための第1スプロケット54が配設されている。
【0027】
第1アーム部47は、その一端が支持軸部51の接続部53に接続され、支持軸部51の延在方向に対して直交する方向に延びるように延設されており、揺動駆動部57によって支持軸部51を中心として揺動可能とされている。この第1アーム部47の他端側には、後述する原料保持部60を支持する支持筒部48が配設されている。この支持筒部48の内周面には軸受(図示なし)が設けられている
【0028】
原料保持部60は、第1アーム部47に接続される第2アーム部61(アーム部)と、この第2アーム部61の先端に設けられたバケット部68と、このバケット部68を第2アーム部61の延在方向を軸として回転させる回転駆動機構69と、を備えている。
第2アーム部61は、本体部40の往復運動方向、つまり、レール部22の延在方向に平行に延びるように配置されており、その基端部が第1アーム部47の支持筒部48に着脱可能に装着される接続軸部62とされており、この接続軸部62の先端に設けられたフランジ部63に先端方向に延びるアーム本体64が着脱可能に装着されている。
【0029】
アーム本体64は、図4に示すように、外管65と内軸66とを備えた2重構造とされており、外管65と内軸66とが独立に回動するように構成されている。外管65は、接続軸部62のフランジ部63に接続されていて接続軸部62とともに回動する構成とされている。一方、内軸66は、フランジ部63近傍に設けられた回転駆動部69によって回転される構成とされている。
このアーム本体64の先端にバケット部68が接続されており、前述の回転駆動部69によってバケット部68が回転するように構成されている。
【0030】
接続軸部62は、第1アーム部47の支持筒部48に挿入されており、軸受によって回動可能に支持されている。この接続軸部62の基端には、第2スプロケット67が配設されている。この第2スプロケット67と支持軸部51の接続部53に設けられた第1スプロケット54とには、チェーン32が掛架されており、第1スプロケット54の揺動(回転)に応じて第2スプロケット67が回転し、第2アーム部61が回転するように構成されている。なお、本実施形態では、第1アーム部47が揺動駆動部57によって揺動した際に、第2アーム部61の先端に接続されたバケット部68の開口部が常に上方を向くように、第1スプロケット54と第2スプロケット67の歯数が設定されている。
【0031】
このように構成された原料投入装置30においては、図3に示すように、揺動駆動部57によって第1アーム部47を揺動させると、この第1アーム部47に接続された原料保持部60が支持軸部51を中心に揺動し、原料保持部60が本体部40の往復移動方向に対して直交する方向に移動することになる。また、本体駆動部49によって本体部40及び原料保持部60が、レール部22に沿って溶解炉10に近接・離間するように往復移動するように構成されている。
【0032】
そして、本実施形態では、レール部22は、図1に示すように、溶解炉10の投入口13の開口方向から偏倚した位置に、かつ、投入口13の開口方向に平行に延びるように配設されており、本体部40も投入口13の開口方向から偏倚した位置に配置されることになる。
また、揺動駆動部57によって、第1アーム部47を揺動させると、図1において一点鎖線で示すように、原料保持部60が投入口13の開口方向に正対する位置(原料投入位置)に配置される。また、第1アーム部47を反対側へと揺動させると、原料保持部60が投入口13から大きく離間した位置(原料載置位置)に配置されることになる。
【0033】
ここで、本実施形態では、溶解炉10の投入口13を囲むように防護壁25が設けられており、この防護壁25には、本体部40が溶解炉10から離間した位置において、原料保持部60が防護壁25の外側に移動可能なように、第1アーム部47が通過可能なスリット部26が設けられている。
【0034】
このような構成とされた溶解炉システム1においては、まず、溶解炉10の蓋部17を揺動させて炉本体11の上部開口部を開口し、スクラップ屑を炉本体11内部に装入する。そして、蓋部17を閉めて蓋部17の挿入孔19から電極棒を挿入し、アーク放電によってスクラップ屑を溶解する。すると、スクラップ屑は見かけの比重が小さいため、全量が溶融した場合でも炉本体11の内部には十分な溶融金属が存在しない状態となる。
【0035】
そこで、本実施形態である原料投入装置30を用いて、炉本体11の投入口13から原料を追加投入する。まず、本体部40が溶解炉10から離間した位置であって原料保持部60が防護壁25の外側の原料載置位置に配置された状態でバケット部68に原料が載置される。次に、揺動駆動部57によって第1アーム部47を揺動させて、原料保持部60を投入口13の開口方向に正対するように位置させる。そして、投入口13を開口するとともに、本体駆動部49によって本体部40を溶解炉10に近接するようにレール部22に沿って移動させる。すると、原料保持部60が本体部40とともに溶解炉10に向かって近接移動し、原料保持部60の先端が投入口13を介して溶解炉10内に挿入される。ここで、回転駆動部69によってバケット部68を180°反転させ、バケット部68内の原料を炉本体11へと追加投入するのである。
【0036】
本実施形態である溶解炉システム1及び原料投入装置30によれば、溶解炉10の投入口13の開口方向から偏倚した位置にレール部22が設けられており、このレール部22上を原料投入装置30の本体部40が往復移動する構成とされているので、本体部40が投入口13の開口方向に正対するように位置することがなく、投入口13からの熱風等による本体部40の劣化を防止できる。また、この本体部40に、本体駆動部49、揺動駆動部57及び支持軸部51等の駆動系の部品が載置されているので、これらの部品の劣化も防止することができ、原料投入装置30の寿命延長を図ることができる。
【0037】
また、揺動駆動部57によって第1アーム部47を揺動させることにより、この第1アーム部47に接続された原料保持部60が支持軸部51を中心に揺動し、原料保持部60が本体部40の往復移動方向に対して直交する方向に移動するように構成されているので、レール部22を投入口13の開口方向から偏倚した位置に設けても、原料保持部60を投入口13に対して正対するように位置させることができ、投入口13を通じて溶解炉10内に原料保持部60を挿入して原料を確実に投入することができる。
【0038】
また、原料を原料保持部60のバケット部68に載置する作業を、投入口13とは反対側に原料保持部60を揺動させた位置(原料載置位置)で行うことが可能となり、原料投入作業の負荷軽減を図ることができる。さらに、本実施形態では、投入口13近傍を囲うように防護壁25が設けられており、原料載置位置が防護壁25の外側、つまり、投入口14から防護壁25で隔たれた位置とされているので、投入口13からの熱の影響を受けることなく、原料載置作業を行うことができる。
【0039】
また、バケット部68がアーム本体64の基端部に設けられた回転駆動部69によって180°回転する構成とされているので、溶解炉10内に挿入したバケット部68を回転させることで、バケット部68内の原料を確実に溶解炉10へと投入することができる。
さらに、本実施形態では、支持軸部51に設けられた第1スプロケット54と、第2アーム部61の接続軸部62に設けられた第2スプロケット67とにチェーン32が掛架されており、第1アーム部47が揺動駆動部57によって揺動した際に、第2アーム部61の先端に接続されたバケット部68の開口部が常に上方を向くように、これら第1スプロケット54と第2スプロケット67の歯数が設定されているので、原料保持部60を揺動した際にバケット部68から原料が落下することがない。
【0040】
また、原料保持部60が本体部40に対して着脱可能に構成されているので、投入口13の開口方向に正対させられて劣化し易い原料保持部60のみを交換して使用することができる。さらに、本実施形態では、原料保持部60の第2アーム部61が、基端側の接続軸部62と先端側のアーム本体64とに分離して構成されているので、溶解炉10側に近接配置されて早期に劣化し易いアーム本体64のみを交換して使用することができる。これにより、原料投入装置30のさらなる寿命延長を図ることができる。
【0041】
また、前述のように、溶解炉10の投入口13の近傍に原料投入装置30の本体部40を配置する必要がなく、投入口13近傍にレール部22が設けられていないので、投入口13を介して測温作業やメンテナンス作業を行う際に、レール部22等に干渉することがなく、これらの作業を効率的に行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、原料保持部に温度測定手段を装着し、投入口を通じて溶融金属の温度を測定する構成としてもよい。このように原料保持部に、投入口を通じて溶解炉内に対して作業を行う治具を設けることによって、投入口近傍での作業を削減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、防護壁を設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、防護壁はなくてもよい。ただし、本実施形態のように防護壁によって投入口から隔離された場所で原料投入作業の操作を行うことが可能となるため、防護壁を設けることが好ましい。
【0044】
また、溶解炉をアーク式溶解炉として説明したが、その他の方式の溶解炉に適用してもよい。さらに、Ni基合金を溶解するものとして説明したが、これに限定されることはなく、鉄スクラップ等のその他の材料を溶解するものであってもよい。
【0045】
また、揺動駆動部によって原料保持部を揺動させて、原料保持部を本体部の往復移動方向に直交する方向に移動させる構成のものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えばスライド機構等によって、原料保持部を、本体部の往復移動方向に対して交差する方向に突出させるように移動させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 溶解炉システム
10 溶解炉
13 投入口
30 原料投入装置
40 本体部
57 揺動駆動部(揺動機構)
60 原料保持部
61 第2アーム部(アーム部)
68 バケット部
69 回転駆動部(回転駆動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉に設けられた投入口を通じて前記溶解炉内に原料を投入する原料投入装置であって、
前記溶解炉に近接・離間するように往復移動する本体部と、前記溶解炉内に投入される原料を保持する原料保持部と、を有し、
前記原料保持部は、前記本体部の往復移動方向に対して交差する方向に移動自在とされており、前記本体部から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で、前記本体部とともに前記溶解炉に近接・離間するように往復移動することを特徴とする原料投入装置。
【請求項2】
前記原料保持部は、前記本体部の前記往復移動方向に延びる軸線を中心に揺動する揺動機構を介して、前記本体部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の原料投入装置。
【請求項3】
前記原料保持部は、前記本体部の往復移動方向に沿って延在するアーム部と、該アーム部の先端に設けられたバケット部と、該バケット部を前記アーム部の延在方向を軸線として回転させる回転駆動機構と、を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の原料投入装置。
【請求項4】
前記原料保持部が、前記本体部に対して着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原料投入装置
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の原料投入装置を用いて、溶解炉に設けられた投入口を通じて前記溶解炉内に原料を投入する原料投入方法であって、
前記投入口から離間した位置に前記本体部を配置し、前記原料保持部を前記本体部から前記往復移動方向に対して交差する方向に突出した状態で前記投入口に挿入し、前記原料を溶解炉内に投入することを特徴とする原料投入方法。
【請求項6】
原料が投入される投入口を有する溶解炉と、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の原料投入装置と、を備え、
前記本体部が、前記投入口の開口方向から偏倚した位置で前記往復移動するように配置されていることを特徴とする溶解炉システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−169296(P2010−169296A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11048(P2009−11048)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】