説明

原料拡散部品

【課題】耐摩耗性が向上した原料拡散部品、球状化粒子製造装置及び球状化粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】原料に接触して当該原料を拡散させるための原料拡散部品10において、上記原料が接触する表面の少なくとも一部をセラミックスにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料拡散部品、球状化粒子製造装置及び球状化粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機質球状化粒子は、一般に、原料粉体(本明細書において無機質粉体と同意義を有する)を、燃焼装置(ガス燃焼バーナ)による当該原料粉体の溶融温度以上の燃焼火炎(燃焼ガス)中に通し、粉体溶融炉にて当該原料粉体を溶融球状化することにより製造されている。
【0003】
特許文献1には、粉体溶融炉の火炎形成域における雰囲気(燃焼ガス)温度を所定温度範囲内に維持して無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子製造装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、原料粉体供給管の先端部内に特定の保炎板と特定形状の拡散手段を設けた球状粒子用バーナが開示されている。
【0005】
特許文献3には、無機質粉体を供給する無機質粉体供給路に粉体分散板を装着してなる無機質球状化粒子製造装置が開示されている。
【0006】
これらの拡散手段や粉体分散板には、SUS(ステンレス鋼)、SKH(ハイス鋼)等の金属素材が使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−166161号公報
【特許文献2】特開2000−346318号公報
【特許文献3】特開2006−150241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐摩耗性が向上した原料拡散部品、球状化粒子製造装置及び球状化粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、原料を拡散させるための原料拡散部品を形成する材料としてセラミックスを用いることにより、当該原料拡散部品の耐摩耗性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の原料拡散部品は、原料に接触して当該原料を拡散させるための原料拡散部品であって、上記原料が接触する表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成されたものである。
【0011】
また、本発明の球状化粒子製造装置は、原料を原料供給路から溶融炉中の燃焼火炎に供給して溶融球状化させる球状化粒子製造装置であって、表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成され、上記原料に接触して当該原料を拡散させるための原料拡散部品が、上記原料供給路に設けられたものである。
【0012】
また、本発明の球状化粒子の製造方法は、原料を原料供給路から溶融炉中の燃焼火炎に供給して溶融球状化させる球状化粒子の製造方法であって、上記原料供給路に設けられ、その表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成された原料拡散部品に対して、上記原料を接触させて当該原料を拡散させ、拡散後の上記原料を上記燃焼火炎に供給して溶融球状化させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐摩耗性が向上した原料拡散部品を提供することができ、かかる原料拡散部品を用いることにより、球状化率が高い等、球状化粒子を良好に製造することができる球状化粒子製造装置及び球状化粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る球状化粒子製造装置の構成例を示した概略断面図である。
【図2】ガスノズルの他の構成例を示した図であり、当該ガスノズルの概略断面図(左図)及び溶融炉側から見た図(右図)を示している。
【図3】図1の燃焼装置の一例をより詳細に示した断面図である。
【図4】図4は、原料拡散部品の構成例を示した図であり、メッシュ状(I)、パンチ状(II)、ハニカム状(III)及び開孔の形状が不定形(IV)のものをそれぞれ溶融炉側から見た図を示している。
【図5】原料拡散部品の構成例を示した断面図であり、原料拡散部品全体をセラミックスで形成したもの(I)、原料拡散部品の表面の一部をセラミックスで被覆したもの(II)、原料拡散部品の表面全体をセラミックスで被覆したもの(III)をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特許文献3に開示された装置では、無機質粉体供給路に粉体分散板を装着することにより、原料粉体が大粒径粒子の場合にも球状化率の高い良好な無機質球状化粒子を効率的に製造することができる。しかしながら、高温にもなりうる環境下で使用される当該粉体分散板は、従来使用されているSKH(ハイス鋼)などの比較的耐摩耗性の高い金属材料を用いて形成した場合であっても、耐摩耗性が十分であるとは言えなかった。
【0016】
本発明で原料とは、液状流体、粉状流体等、広く流体であることが好ましく、本発明に係る原料拡散部品によって拡散された後に、そのまま最終用途に供されてもよく、さらに、例えば火炎溶融等されて球状化粒子にされるなどの加工がされてもよい。本発明に係る原料拡散部品の以下に示す効果、例えば、耐摩耗性の効果を奏するのは、原料が粉状流体であること、さらには、粉状物が無機質粉体である粉状流体である場合に顕著である。
【0017】
なお、ここに、無機質粉体とは、以下の式(1):
xA/yB ・・・(1)
(式中、A及びBは任意の金属原子、x≧1;y≧0;m、n、p及びq≧1)
で表わされる成分を含む無機物質を原料として製造されるものをいう。式(1)で表わされる成分としては、例えば、Al、ZrO、SiO、MgO、TiO、3Al・2SiO、MgO・Al、MgO・SiO、2MgO・SiO、ZrO・SiOなどが挙げられる。
【0018】
このような無機質粉体としては、例えば、耐摩耗性の観点から、好ましくはアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、ムライト(3Al・2SiO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)からなる群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはジルコニア(ZrO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるセラミックスである。なお、前記かっこ内は主成分である。特に、原料粉体が無機質粉体である場合には、当該無機質粉体に近い性質を有するセラミックスで原料拡散部品10における原料が接触する表面の少なくとも一部を形成することにより、耐摩耗性を効果的に向上することができる。
【0019】
また、球状化率とは、球状化粒子中における球形度0.98以上の粒子の重量割合(%)をいう。球形度は、光学顕微鏡又はデジタルスコープ(例えば、キーエンス社製、VH−8000型)により当該粒子の像(写真)を得て、その得られた像を画像解析することにより、当該粒子の粒子投影断面の面積及び当該断面の周囲長を求め、次いで、{粒子投影断面の面積(mm)と同じ面積の真円の円周長(mm)}/{粒子投影断面の周囲長(mm)}を計算し、任意の50個の球状化粒子につき、それぞれ得られた値を平均することにより求める。なお、球形度が高いほど球状化率も高くなる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る球状化粒子製造装置の構成例を示した概略断面図である。この球状化粒子製造装置では、粉体からなる原料(原料粉体)が原料粉体フィーダー1により一定量ずつ供給され、原料搬送用ガス供給路2から導入される原料搬送用ガス(酸素又は酸素富化空気;図では酸素)により搬送されて、燃焼装置3内の原料供給路4に供給されるようになっている。原料粉体としては、上述の無機質粉体を用いることができる。ただし、原料供給路4に供給される原料は、無機質粉体に限らず、他の原料粉体であってもよいし、粉体以外の液体などからなる原料であってもよい。
【0021】
燃焼装置3は、上記原料供給路4の他に、当該原料供給路4の外周に配置された燃料ガス供給路5と、燃料ガス供給路5の外周に配置された燃焼用ガス供給路6とを有する多重管構造に構成されている。すなわち、径の異なる複数(図では3つ)の管状部品が同心軸上に配置されることにより、径の最も小さい第1管状部品内に原料供給路4が形成され、当該第1管状部品とその外側を覆う第2管状部品との間に燃料ガス供給路5が形成され、当該第2管状部品とその外側を覆う第3管状部品との間に燃焼用ガス供給路6が形成されている。
【0022】
燃料ガス供給路5には、燃料ガス供給管7を介して燃料ガス(プロパン、ブタン、メタン、LPGなど)が供給される。また、燃焼用ガス供給路6には、燃焼用ガス供給管8を介して燃焼用ガス(酸素又は酸素富化空気)が供給される。燃焼装置3は、溶融炉12に接続されており、燃焼装置3内に導入された原料粉体、燃料ガス及び燃焼用ガスは、それぞれ原料供給路4、燃料ガス供給路5及び燃焼用ガス供給路6内を同一方向に流れて、当該燃焼装置3における溶融炉12側の一端から当該溶融炉12内に供給される。原料供給路4、燃料ガス供給路5及び燃焼用ガス供給路6における溶融炉12側の一端には、それぞれ噴出口が形成されており、これらの噴出口を介して燃焼装置3と溶融炉12とが接続されている。
【0023】
溶融炉12内には、燃焼装置3から供給される燃料ガス及び燃焼用ガスが燃焼することにより燃焼火炎9が形成される。原料供給路4における溶融炉12側の一端近傍には、複数の孔が形成された原料拡散部品10が配置されており、原料搬送用ガスにより搬送される原料粉体が、これらの原料拡散部品10の孔を通って燃焼火炎9内に噴射されるようになっている。原料粉体は、溶融炉12内の燃焼火炎9により加熱されるとともに、原料拡散部品10を通過する過程で、その少なくとも一部が当該原料拡散部品10に接触して拡散される。このようにして拡散された原料粉体は、燃焼火炎9内に噴射されることにより、溶融若しくは軟化して表面張力により球状化されるようになっている。
【0024】
ここで、「原料供給路4における溶融炉12側の一端近傍」とは、原料供給路4の溶融炉12側の一端における当該原料供給路4の長手方向に対する垂直断面の中心から、当該原料供給路4の全長の0%を超えて20%までに相当する長さ、好ましくは1〜10%に相当する長さだけ当該中心から上記長手方向に直線距離で他端側へ離れた位置をいうものとする。原料供給路4における溶融炉12側の一端近傍に原料拡散部品10を設けることにより、原料の分散が良くなると共に、粒子の火炎中への突入速度が緩和され、安定した球状化が達成される。
【0025】
ただし、原料拡散部品10は、上記のような位置に設けられるような構成に限らず、原料供給路4内における他の位置に設けられていてもよいし、原料粉体フィーダー1と原料供給路4とを接続する管の途中に設けられていてもよい。また、原料拡散部品10は1つに限らず、上記の各位置から選択した任意の複数の位置に原料拡散部品10を配置することも可能である。
【0026】
原料粉体は、原料搬送用ガス中に分散した状態で燃焼装置3の原料供給路4を介して溶融炉12に供給されるが、その際、原料粉体の分散性が悪いと球状化過程で粒子同士が融着し、形状不良となって大粒径化する。また、原料粉体の供給速度が大きく溶融炉12での原料粉体の滞留時間が短いと原料粉体が十分に球状化せず、良質な球状化粒子が得られない。これらの傾向は、特に原料粉体が大粒径粒子である場合に顕著である。
【0027】
本発明の球状化粒子製造装置においては、原料粉体は燃焼装置3中の原料供給路4に配置された原料拡散部品10を介して溶融炉12に供給されることから、良好な分散状態で原料粉体を燃焼火炎9中に供給することができ、しかも、原料粉体が原料拡散部品10に衝突することで溶融炉12への供給速度が低下し、適度な滞留時間で原料粉体を燃焼火炎9中に維持することができる。したがって、本発明の球状化粒子製造装置によれば、原料粉体の平均粒径が好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは100μm以上の大粒径粒子である場合でも、単分散体からなる球状化率の高い良好な球状化粒子を効率的に製造することができる。
【0028】
なお、「単分散体からなる球状化粒子」とは、原料粉体の粒子同士が実質的に融着しておらず、個々の原料粉体に対応して得られた球状化粒子をいう。球状化粒子がそのような状態にあるか否かは、光学顕微鏡又はデジタルスコープ(例えば、キーエンス社製、VH−8000型)で当該粒子の像を観察することにより容易に把握することができる。
【0029】
原料供給路4は、例えば、円筒状の管状部品(第1管状部品)の先端部分にガスノズル11を装着して構成される。ガスノズル11は、原料供給路4の溶融炉12側に位置しており、当該ガスノズル11における溶融炉12側の一端は、原料供給路4における溶融炉12側に相当する。よって、原料供給路4における溶融炉12側の一端近傍に少なくとも1つの原料拡散部品10を配置する具体的態様としては、当該ガスノズル11内に原料拡散部品10を少なくとも1つ配置する態様が挙げられる。
【0030】
原料粉体の分散性と燃焼火炎9中への滞留状態をより安定させる観点から、原料拡散部品10をガスノズル11内に少なくとも1つ配置することが好ましく、当該ガスノズル11内に原料拡散部品10を2つ装着すればより好ましい。なお、原料拡散部品10を2つ以上配置する場合には、各原料拡散部品10が互いに接触しないように配置することが好ましい。
【0031】
図2は、ガスノズル11の他の構成例を示した図であり、当該ガスノズル11の概略断面図(左図)及び溶融炉12側から見た図(右図)を示している。この例では、ガスノズル11内に2つの原料拡散部品A,Bが配置されている。これらの2つの原料拡散部品A,Bは、それぞれガスノズル11(原料供給路4)の長手方向に対して直交方向に延びており、互いに間隔を隔てて平行に配置されている。本発明では、球状化率を高める観点から、ガスノズル11内に複数の原料拡散部品を配置することが好ましい。このような配置とすることにより、燃焼火炎9中での原料粉体の分散状態、及び、滞留状態が向上し、球状化率や球形度がより高い粒子を得ることができる。本発明の原料拡散部品は、ガスノズル内に1〜4個設置することが好ましく、2〜3個設置すればより好ましい。
【0032】
原料拡散部品A,Bの装着状態は上記構成に限定されるものではないが、原料粉体の分散性と燃焼火炎9中への滞留状態をより安定させる観点から、原料供給路4の長手方向に対して略垂直に、しかも装着位置での原料供給路4の長手方向に対して垂直な断面形状と合致する状態で装着してもよい。すなわち、原料供給路4の長手方向に沿って複数配置された原料拡散部品を上記長手方向に沿って見たときに、各原料拡散部品に形成されている孔が互いに重なり合うように各原料拡散部品が配置された構成であってもよい。また、各原料拡散部品に形成されている孔が互いに重なり合う状態から、少なくとも1つの原料拡散部品が所定角度だけ回転された構成であってもよい。球状化率を上げる観点から、回転する角度は20°〜70°が好ましく、30°〜60°がより好ましく、40°〜50°が更に好ましい。
【0033】
図3は、図1の燃焼装置3の一例をより詳細に示した断面図である。この図3において、左側が原料供給路4の原料粉体供給側であり、右側が原料供給路4の溶融炉12側である。図中の各矢印は、原料供給路4内を通過する原料粉体の向き、燃料ガス供給路5内を通過する燃料ガスの向き、燃焼用ガス供給路6内を通過する燃焼用ガスの向きをそれぞれ示している。また、燃焼用ガス供給路6の外側を覆う燃焼装置外筒(第3管状部品)を符号13で示している。ガスノズル11は、図中に破線で示した楕円形状の領域内に装着されている。
【0034】
原料粉体の分散性と燃焼火炎9中への滞留状態をより安定させるとの観点から、原料拡散部品10の好適な構造について説明する。原料拡散部品10の開孔率は、25〜95%が好ましく、40〜90%がより好ましく、50〜85%がさらに好ましい。また、平均孔径としては、円換算直径(同じ孔面積を有する円の直径をいう)で、0.1〜5mmが好ましく、0.2〜4mmがより好ましく、0.5〜3mmがさらに好ましい。原料拡散部品10の最大開孔径は、円換算直径で1〜30mmが好ましく、2〜20mmがより好ましい。原料拡散部品10の厚さは、原料拡散部品10の円換算直径に対する割合(厚さ/円換算直径)として表すと、5〜50%が好ましく、10〜40%がより好ましい。
【0035】
ここで、原料拡散部品10の開孔率とは、原料拡散部品10の正射影全面積に占める開孔部の正射影全面積の割合(開孔部正射影全面積/原料拡散部品正射影全面積)と定義される。平均孔径とは、全開孔部の円換算直径の平均と定義される。原料拡散部品10の円換算の最大開孔径とは、全開孔部の中で円換算直径が最大のものと定義される。原料拡散部品10の開孔部の円換算直径とは、開孔部の正射影面積と同じ面積を有する円の直径と定義される。
【0036】
原料拡散部品10の形状としては、例えば、メッシュ状、開孔の形状が円又は楕円であるパンチ状(レンコン状)、ハニカム状、開孔の形状が異形又は不定形であるものなどが挙げられ、これらの形状に特に限定されるものではないが、製造が容易であるという観点から、メッシュ状、パンチ状及びハニカム状からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、原料粉体が大粒径粒子の場合には、より球状化率が高く良好な球状化粒子を得る観点から、パンチ状又はハニカム状がより好ましく、パンチ状がさらに好ましい。2つ以上の原料拡散部品10を原料供給路4に配置する場合、同一又は異なる形状の原料拡散部品10を任意に使用することができるが、原料粉体供給側の原料拡散部品10の平均孔径の方が大きく、溶融炉12側の原料拡散部品10の平均孔径の方が小さくなるような組み合わせであってもよい。また、前述のように、本発明では、球状化率を高める観点から、ガスノズル11内に複数の原料拡散部品を配置することが好ましい。この場合、ノズル詰まりを防止する観点から、同じ形状の原料拡散部品を用いてもよい。例えば、2つの原料拡散部品が設けられた構成の場合には、これらの2つの原料拡散部品に形成されている孔が互いに重なり合う状態から、一方の原料拡散部品を45°回転させれば、球状化率や球形度がより高い粒子を得ることができる。
【0037】
図4は、原料拡散部品10の構成例を示した図であり、メッシュ状(I)、パンチ状(II)、ハニカム状(III)及び開孔の形状が不定形(IV)のものをそれぞれ溶融炉12側から見た図を示している。
【0038】
図4(I)の例では、板状部品に対して矩形状の開孔が格子状に複数形成されることにより、メッシュ状の原料拡散部品10が構成されている。図4(II)の例では、円又は楕円形状の開孔が等間隔で複数形成されることにより、パンチ状の原料拡散部品10が構成されている。図4(III)の例では、六角形状の開孔が互いに各辺が対向するように複数形成されることにより、ハニカム状の原料拡散部品10が構成されている。図4(IV)の例では、異形又は不定形の開孔が複数形成されることにより原料拡散部品10が構成されている。
【0039】
ただし、原料拡散部品10の形状は、上記のような形状に限られるものではなく、上記の例とは異なる形状の開孔が形成された構成であってもよい。また、原料拡散部品10は、原料が通過するための孔が形成されたものに限らず、原料の少なくとも一部を接触させて拡散させることができるような構成であれば、他の各種構成を採用することができる。
【0040】
本発明の原料拡散部品10及びこれを用いた球状化粒子製造装置は、原料拡散部品10の耐摩耗性の観点から、原料拡散部品10における原料が接触する表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成されていることを1つの大きな特徴としている。原料拡散部品10の表面におけるセラミックスが形成される部分の割合は、1〜100%が好ましく、10〜100%がより好ましく、50〜100%がさらに好ましく、90〜100%がさらにより好ましく、実質100%であることがさらに好ましい。実質100%である場合とは、原料拡散部品10の表面を全て前記セラミックスで被覆する設計がなされることであり、本発明の効果が損なわれない範囲で不純物が含まれる場合を含む。ここで、被覆するとは、内部の構成物に対して、表面を別途形成させてもよいし、内部の構成物がそのまま表面に露出している態様でもよい。また、原料拡散部品10の耐摩耗性の観点から、原料拡散部品10の表面だけでなく、内部を含む全体において、セラミックスで形成される部分の割合が、10〜100%が好ましく、50〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましく、実質100%であることがよりさらに好ましい。実質100%である場合とは、原料拡散部品10の全てを前記セラミックスで構成する設計がなされることであり、本発明の効果が損なわれない範囲で不純物が含まれる場合を含む。原料拡散部品10は、燃焼火炎9からの熱により高温下で使用される場合もあるが、このような高温下であっても、上記のように原料拡散部品10における原料が接触する表面の少なくとも一部をセラミックスで形成することにより、耐摩耗性を向上することができる。
【0041】
上記セラミックスとしては、特に限定されるものではないが、耐摩耗性の観点から、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、ムライト(3Al・2SiO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、前記かっこ内は主成分である。特に、原料粉体が無機質粉体である場合には、当該無機質粉体に近い性質を有するセラミックスで原料拡散部品10における原料が接触する表面の少なくとも一部を形成することにより、耐摩耗性を効果的に向上することができる。
【0042】
図5は、原料拡散部品10の構成例を示した断面図であり、原料拡散部品10全体をセラミックスで形成したもの(I)、原料拡散部品10の表面の一部をセラミックスで被覆したもの(II)、原料拡散部品10の表面全体をセラミックスで被覆したもの(III)をそれぞれ示している。
【0043】
図5(I)の例では、セラミックスにより形成された板状部品に複数の開孔10aが形成されることにより、全体がセラミックスで形成された原料拡散部品10が構成されている。
【0044】
図5(II)の例では、SKHなどの金属材料により形成された板状部品に複数の開孔10aが形成され、その表面の一部がセラミックス被膜10bで被覆されることにより原料拡散部品10が構成されている。セラミックス被膜10bが形成される領域は、特に限定されるものではないが、少なくとも開孔10aの内周面に形成されていることが好ましく、図5(II)の例のように、当該原料拡散部品10における原料粉体供給側の表面にも形成されていればさらに好ましい。
【0045】
図5(III)の例では、SKHなどの金属材料により形成された板状部品に複数の開孔10aが形成され、その表面全体がセラミックス被膜10bで被覆されることにより原料拡散部品10が構成されている。
【0046】
本発明の製造装置の操業は、従来の方法に従って行えばよい。なお、原料搬送用ガスの流速等は以下の条件を満たすのが好適である。
【0047】
原料粉体は、原料搬送用ガスに同伴されて燃焼装置3に供給され、原料供給路4の原料拡散部品10に至ることになるが、その際の原料搬送用ガスの流速としては、好ましくは2〜20m/秒、より好ましくは5〜10m/秒である。原料搬送用ガスの流速がかかる範囲にあれば、原料粉体が原料拡散部品10に衝突した際に十分な分散性が得られ、また、適度に減速されて、溶融炉12における滞留時間が良好となる。
【0048】
上記減速の程度としては、特に限定されるものではないが、原料拡散部品10を通過する前の原料粉体の速度をI0、原料拡散部品10を通過した後の原料粉体の速度をIとすると、それらの比率I/I(%)が、I/I≦50%を満たすのが好ましい。比率I/I(%)を上記のような範囲とすることにより、火炎中での滞留時間が長くなり、粒径が大きい粒子でも好適に球状化される。なお、I/Iは、原料拡散部品10の前後での原料粉体の通過速度を測定することにより算出される。通過速度は、例えば光学的手法(高速度カメラ等)により求められる。
【0049】
原料搬送用ガス中の原料粉体濃度としては、原料粉体の十分な分散性を確保する観点から、好ましくは0.1〜10kg/Nm、より好ましくは0.5〜5kg/Nmである。溶融炉12における滞留時間とは、原料粉体が溶融炉12に至ってから球状化溶融粒子が燃焼火炎9域外へ飛散するまでの時間をいい、原料粉体の粒径によるが、0.001〜5秒程度であるのが好ましい。なお、燃焼火炎9の温度としては特に限定はないが、通常、1500〜3000℃程度であるのが好ましい。
【0050】
本発明の球状化粒子製造装置によれば、例えば、単分散体からなる球状化率の高い良好な、平均粒径1〜500μm程度の球状化粒子を効率的に製造することができる。なお、使用される原料粉体の平均粒径は、当該製造装置を経ることにより実質的に変化するものではなく、原料粉体の平均粒径と得られる球状化粒子の平均粒径とは実質的に同じである。
【0051】
上記平均粒径は、以下のようにして求めることができる。球状化粒子の粒子投影断面からの球形度=1の場合は直径(mm)を測定し、一方、球形度<1の場合はランダムに配向させた球状化粒子の長軸径(mm)と短軸径(mm)を測定して、(長軸径+短軸径)/2を求め、任意の100個の球状化粒子につき、それぞれ得られた値を平均して平均粒径(mm)とする。長軸径と短軸径は、以下のように定義される。粒子を平面上に安定させ、その粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最小となる粒子の幅を短軸径といい、一方、この平行線に直角な方向の2本の平行線で粒子を挟むときの距離を長軸径という。球状化粒子の長軸径と短軸径は、当該粒子の像(写真)を得て、その得られた像を画像解析することにより求めることができる。なお、原料粉体の場合も同様にして「平均粒径」を求める。
【0052】
次に、原料を原料供給路4から溶融炉12中の燃焼火炎9に供給して溶融球状化させる球状化粒子の製造方法であって、上記原料供給路4に設けられ、その表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成された原料拡散部品10に対して、上記原料を接触させて当該原料を拡散させ、拡散後の上記原料を上記燃焼火炎9に供給して溶融球状化させる球状化粒子の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、上述した球状化粒子製造装置を使用することにより好適に実施することができる。本発明の製造方法は、従来の球状化粒子製造装置の操業の方法に従い、好ましくは原料搬送用ガスの流速等の前記好適な条件の下、本発明の球状化粒子製造装置を使用して球状化粒子を製造することにより実施される。
【0053】
本発明の方法によれば、例えば、特開2004−202577号公報に記載の、流動性に優れ、高強度かつ表面が平滑な鋳造用鋳型を製造するのに好適な球状鋳物砂を効率的に製造することができる。なお、製造条件等の詳細については当該公報を参照されたい。
【0054】
このようにして得られる球状鋳物砂は、流動性に非常に優れたものであり、単独で、又は当該鋳物砂が所定の割合で含まれるように公知の鋳物砂と適宜混合して使用される。鋳型の製造において当該鋳物砂を用いると、使用するバインダーの量を少なくできることから、それらの鋳物砂は、鋳物砂として効率的に再生することができる。かかる球状鋳物砂は、鋳鋼、鋳鉄、アルミニウム、銅及びこれらの合金等の鋳型用途に好適に使用され得るとともに、金属、プラスチック等への充填材としても使用することができる。
【実施例】
【0055】
本願発明者は、同一形状からなる原料拡散部品10の材質を各種変更し、それぞれについて耐摩耗性及び球状化率を評価する実験を行った。より具体的には、図1に示すような球状化粒子製造装置における一定の装着位置に対して、以下に説明するような各実施例及び比較例の原料拡散部品10を順次に装着し、実際に原料供給路4から溶融炉12中の燃焼火炎9に原料粉体を供給して溶融球状化させることにより実験を行った。なお、球形度が高くなると球状化率も高くなる。
【0056】
原料拡散部品10としては、開孔率が65%、平均孔径が2.0mm、最大開孔径が2.0mm、厚さが5mmのメッシュ状のものを使用した。原料搬送用ガスの流速は、11m/秒とし、I/Iは、35%とした。また、原料粉体としては、ムライトからなる平均粒径0.19μmの無機質粉体を使用し、原料粉体濃度を39kg/Nmとした。なお、以下の各実施例及び比較例において、減量比は、{(実験前の重量)―(実験後の重量)}/(実験前の重量)×100(%)により求めた。
【0057】
実施例1
全体がアルミナで形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0058】
実施例2
全体がジルコニアで形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0059】
実施例3
全体がムライトで形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0060】
実施例4
全体が炭化ケイ素で形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0061】
実施例5
全体が窒化ケイ素で形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0062】
実施例6
図2に示した態様により、全体がアルミナで形成された2つの原料拡散部品A,Bが設けられたガスノズル11を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。原料拡散部品A,Bとしては、上記実施例1に係る原料拡散部品10と同じものを使用し、これらの原料拡散部品A,Bをガスノズル11(原料供給路4)の長手方向に対して直交方向に延びるように、互いに35mmの間隔を隔てて平行に配置した。また、2つの原料拡散部品A,Bに形成されている孔が互いに重なり合うような状態から、一方の原料拡散部品を45°回転させた状態とした。実験前の当該原料拡散部品A,Bの重量、実験後の当該原料拡散部品A,Bの重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0063】
比較例1
全体がSKHで形成された原料拡散部品10を球状化粒子製造装置に装着し、上記の条件で当該球状化粒子製造装置を72時間連続運転した。実験前の当該原料拡散部品10の重量、実験後の当該原料拡散部品10の重量、及び減量比、並びに、得られた粒子の球形度を、それぞれ表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果が示すように、アルミナ、ジルコニア、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのセラミックスで原料拡散部品10を形成すれば、セラミックス以外の材料(例えばSKH)で形成する場合よりも、減量比が極めて小さく、耐摩耗性を飛躍的に向上させることができるとともに、粒子の球形度が向上し、球形度がより高い粒子を得ることができる。また、実施例1と実施例6とを比較すれば分かるように、ガスノズル11内に複数の原料拡散部品を配置することにより、粒子の球形度がさらに向上し、球形度が極めて高い粒子を得ることができる。このような効果は、他のセラミックスで原料拡散部品10を形成した場合や、原料拡散部品10の全体ではなく表面の少なくとも一部をセラミックスで形成した場合にも得られるものと推定できる。
【符号の説明】
【0066】
1 原料粉体フィーダー
2 原料搬送用ガス供給路
3 燃焼装置
4 原料供給路
5 燃料ガス供給路
6 燃焼用ガス供給路
7 燃料ガス供給管
8 燃焼用ガス供給管
9 燃焼火炎
10 原料拡散部品
11 ガスノズル
12 溶融炉
13 燃焼装置外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に接触して当該原料を拡散させるための原料拡散部品であって、上記原料が接触する表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成された原料拡散部品。
【請求項2】
上記セラミックスが、アルミナ、ジルコニア、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の原料拡散部品。
【請求項3】
上記原料に含まれる粉体が通過するための孔が形成された請求項1又は2記載の原料拡散部品。
【請求項4】
上記粉体が、無機質粉体である請求項3記載の原料拡散部品。
【請求項5】
上記粉体が上記原料拡散部品により拡散され、燃焼火炎により溶融球状化される請求項3又は4記載の原料拡散部品。
【請求項6】
原料を原料供給路から溶融炉中の燃焼火炎に供給して溶融球状化させる球状化粒子製造装置であって、表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成され、上記原料に接触して当該原料を拡散させるための原料拡散部品が、上記原料供給路に設けられた球状化粒子製造装置。
【請求項7】
上記原料供給路における上記溶融炉側の一端近傍に、上記原料拡散部品が少なくとも1つ設けられた請求項6記載の球状化粒子製造装置。
【請求項8】
上記溶融炉は、上記原料供給路と、上記原料供給路の外周に配置された燃料ガス供給路と、上記燃料ガス供給路の外周に配置された燃焼用ガス供給路とを有する多重管構造に構成されてなる燃焼装置に接続されており、上記燃焼装置と上記溶融炉との接続が、上記原料供給路、上記燃料ガス供給路及び上記燃焼用ガス供給路のそれぞれの噴出口を介してなされたものである請求項6又は7記載の球状化粒子製造装置。
【請求項9】
原料を原料供給路から溶融炉中の燃焼火炎に供給して溶融球状化させる球状化粒子の製造方法であって、上記原料供給路に設けられ、その表面の少なくとも一部がセラミックスにより形成された原料拡散部品に対して、上記原料を接触させて当該原料を拡散させ、拡散後の上記原料を上記燃焼火炎に供給して溶融球状化させる球状化粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226399(P2009−226399A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42602(P2009−42602)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】