説明

原木木口の撮影方法

【課題】合板・単板積層材等の主要材料である単板の製造に供される、原木の左右の木口を、カメラを用いて撮影する場合に、各木口の輪郭を含めた、原木の両木口の鮮明な画像の撮影を可能にする。
【解決手段】ベニヤレース(図示省略)を用いて原木2を旋削する旋削工程の前工程に於て、左右一対の原木支持部材1、1によって支持される原木2の左右の木口に対向する位置に、左右一対のカメラ3、3を配設して、原木2の両木口を撮影する場合に、左右のカメラ毎の撮影動作に適応して、閃光を発するフラッシュ・ライト4、4を、各カメラ3、3に併設すると共に、各カメラ3、3の撮影時期に、適宜の微細な時差を設けて、段階的に原木2の左右の木口を撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板・単板積層材等の主要材料である単板の製造に供される、原木の左右の木口を、カメラを用いて撮影する方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベニヤレースを用いて原木を旋削する場合に、例えば適切な回転軸芯の選定に活用する要素(必要条件)の少なくとも一つを検出したり、或は例えば削成される単板全体の性状を予測したりする為に、旋削工程の前工程(芯出し処理工程)に於て、原木の左右の木口に対向する位置に、左右一対のカメラを配設し、該カメラで原木の両木口を撮影して得た画像に、所望の画像処理を施すことにより、例えば各木口の輪郭と併せて、該輪郭の最大内接円や、該最大内接円の中心などを求める技術(特許文献1参照)、或は例えば各木口の輪郭と併せて、各木口に現れる心材部分の輪郭を求める技術(特許文献2参照)等が既に公知であり、また、本出願人が先に出願した「原木の年輪中心検出装置および方法」(特願2009−222950)には、各木口の輪郭の適数個所を基点として、各木口に現れた年輪の中心を求める技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−208015号公報
【特許文献2】特開2010−46937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、述上の如く、原木の両木口を左右一対のカメラで撮影する場合に、鮮明な画像を得る為には、常法通り、照明を実施するのが好ましいが、単に撮影時に照明灯を点灯することによって、原木の両木口近辺を重点的に明るく照らしても、照明灯の明かりが干渉しあって、画像が些か不鮮明となる(特に各木口の輪郭が不鮮明となる)傾向があり、また、左右一対のカメラに、夫々フラッシュ・ライトを併設し、能率良く簡単に画像が得られるよう、単に両木口へ同期的に閃光を発して撮影するようにしても、やはり、閃光が互に干渉しあって、画像が些か不鮮明となる(特に各木口の輪郭が不鮮明となる)傾向があるので、画像処理に適する良好な画像が得られない不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記不具合を解消すべく開発したものであって、具体的には、ベニヤレースを用いて原木を旋削する旋削工程の前工程に於て、原木の左右の木口に対向する位置に、左右一対のカメラを配設して、原木の両木口を撮影する場合に、左右のカメラ毎の撮影動作に適応して、閃光を発するフラッシュ・ライトを、各カメラに併設すると共に、各カメラの撮影時期に、適宜の微細な時差を設けて、段階的に左右の木口を撮影することを特徴とする原木木口の撮影方法(請求項1)と、撮影時期の時差を、数秒以下であり、而も、左右の閃光同士が、互に干渉し合わない瞬間以上の短時間に設定して成る請求項1記載の原木木口の撮影方法(請求項2)と、原木の背景色を、暗色として成る請求項1又は請求項2記載の原木木口の撮影方法(請求項3)とを提案する。
【発明の効果】
【0006】
前記請求項1に係る発明によれば、各カメラの撮影動作に適応して、各フラッシュ・ライトから閃光が発せられるが、左右の各カメラの撮影時期に時差を設けて、段階的に左右の木口を撮影するものであるから、各フラッシュ・ライトからの閃光も、当然、段階的に発せられて、左右の閃光同士が、互に干渉し合うことがなくなるので、原木の両木口に現れる色彩の濃淡・年輪等を鮮明に撮影できるのは勿論のこと、各木口の輪郭をも明瞭に撮影することができ、総じて、画像処理に適する良好な画像を得ることができる。
【0007】
因に、前記時差は、芯出し処理工程の能率性に影響を及ぼすので、過剰に長く設定する必要はなく、請求項2に係る発明のように、数秒以下(好ましくは、1秒以下)であり、而も、左右の閃光同士が、互に干渉し合わない瞬間(極少時間)以上の短時間に設定すれば足りる。また、通常、産業用機器類の塗装色は、明色であり、既存の芯出し処理工程に用いる機器類も例外ではなかったが、請求項3に係る発明のように、原木の背景色を、暗色にすれば、各木口の輪郭が一層明瞭に撮影できるので有益であり、必要に応じては、暗色の板状体・暗色のシート等の背景用部材を、別途に配設するのも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施に用いる芯出し処理装置の要部の概略正面説明図である。
【図2】図1に於て線A―Aで示した部分断面の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、公知の技術に関する長々しい説明を回避する便宜上、本発明の実施に用いる芯出し処理装置の全体的な構成については、図示を省略した。また、撮影して得た画像に施す画像処理技術の内容についても、先記先行技術文献等に開示される画像処理技術を含めて、既存のあらゆる画像処理技術を適用することが可能であり、格別な制約はないので、説明を可及的に簡略化した。
【実施例】
【0010】
図面の図1は、本発明の実施に用いる芯出し処理装置の要部の概略正面説明図であり、図2は、図1に於て線A―Aで示した部分断面の拡大説明図である。図中、1、1は、図示矢印方向へ昇降可能に備えられた左右一対の原木支持部材であって、油圧シリンダ・駆動原付のボールネジ等から成る昇降作動機構(図示省略)の作動を得て、支持した原木2を、少なくとも後述する左右一対のカメラ3、3の撮影に適する高さまで上昇させる。
【0011】
因に、既知の原木支持部材は、左右を一緒(同時)に昇降させる形式と、左右を各別に昇降させる形式とに大別されるが、本発明にあっては、適用する芯出し処理技術の内容に応じて、いずれの形式を採用しても差支えなく、また、必要に応じては、左右の原木支持部材を各別に前後方向に移動させる往復移動機構(図示省略)を、直接的に(又は昇降作動機構を介在させて間接的に)原木支持部材に付設する構成を採ることも可能であり、或は、左右を一緒(同時)に昇降させる形式の場合には、左右を一体状に連結すると共に、単一の昇降作動機構を以って、一体的に昇降させる構成とすることも可能である。
【0012】
3、3は、左右一対のカメラであって、後述する制御機構5の制御を得て、左右各別に作動し、原木2の左右の木口を個別に撮影して、制御機構5に画像信号を発信する。
【0013】
4、4は、額縁状の基材に、LED(発行ダイオード)等から成る光源4aの多数を、略四角列状(実施例は複列状)に付設して成るフラッシュ・ライトであって、前記左右一対のカメラ3、3の夫々に併設されており、後述する制御機構5の制御を得て、左右のカメラ毎の撮影動作に適応して、各別に閃光を発する。
【0014】
5は、前記左右一対のカメラ3、3、及びフラッシュ・ライト4、4の作動を制御する制御機構であって、左右一対のカメラ3、3、及びフラッシュ・ライト4、4を左右各別に、而も、夫々の間に適宜の微細な時差を設けて作動させる。因に、該時差は、過剰に長く設定する必要はなく、数秒以下(好ましくは、1秒以下)であり、而も、左右の閃光同士が、互に干渉し合わない瞬間(極少時間)以上の短時間に設定すれば足りる。
【0015】
本発明は、例えば述上の如く構成して成る処理装置を用いて実施することができ、原木支持部材1、1によって支持した原木2を、カメラ3、3に対応する高さまで上昇させて暫時停止させるか、或は、カメラ3、3に対応する高さよりも高い位置まで上昇させる過程に於て、カメラ3、3に対応する高さまで上昇した際に、左右のカメラ3、3の撮影時期に、適宜の微細な時差を設けて、段階的に原木2の左右の木口を撮影する。
【0016】
斯様な撮影方法によれば、左右の各カメラの撮影時期に時差を設けて、段階的に左右の木口を撮影するものであるから、左右同時に閃光を発しながら撮影する場合に比べて、撮影の制御系が些か複雑化すると共に、撮影の能率性も極く僅かだけ劣ることにはなるが、フラッシュ・ライトからの閃光が、左右に於て段階的に発せられて、左右の閃光同士が、互に干渉し合うことがなくなるので、原木の両木口に現れる色彩の濃淡・年輪等を鮮明に撮影できるのは勿論のこと、各木口の輪郭をも明瞭に撮影することができ、総じて、画像処理に適する良好な画像を得ることができる。
【0017】
因に、前記実施例に於ては、額縁状の基材に、LED等から成る光源4aの多数を、略四角列状に付設して成るフラッシュ・ライトを用いたが、フラッシュ・ライトの形態としては、図示実施例の如き形態に限るものではなく、図示は省略したが、例えばドーナッツ盤状の基材に、LED等から成る光源4aの多数を、環状に付設して成る形態や、或は例えば前記額縁状・ドーナッツ盤状などの基材を、複数個に分割すると共に、夫々の分割状の基材に同様の光源4aの多数を付設して成る形態など、その形態について特段の制約はなく、要は、原木の各木口に適当な明るさの閃光を発し得る形態であれば足りる。
【0018】
また、前記カメラを取り付ける芯出し処理装置の機枠(図示省略)の色や、処理装置に近接する工場の壁の色など、原木の背景色を、暗色にすれば、各木口の輪郭が一層明瞭に撮影できるので有益である。また更に、図示は省略したが、必要に応じては、各カメラの近傍であって、各カメラの撮影を阻害しない位置に、暗色の板状体・暗色のシート等から成る背景用部材を、別途に配設するのも有効である。
【0019】
尚、既知の画像処理技術の内で、先に具体的な例を挙げた技術以外の技術の代表的な実例としては、例えば「原木木口のマーク位置検出装置」(特開2001−310308号公報)に開示される如く、予め原木の木口にマークを付しておき、撮影して得た画像から前記マークの位置を探して、原木の回転軸芯を定める技術があり、斯様な画像処理技術については、原木の回転軸芯の選定自体に、木口の輪郭は直接的に関与しないが、例えば前記マークの位置を回転軸芯に定めて、原木を旋削した場合に、連続した帯状単板がどの程度削成できるかを予測したりする際には、木口の輪郭が、画像処理に必要な条件の一つとなることからも明らかな如く、本発明の適用範囲は、木口の輪郭の情報を、直接的に活用する画像処理技術のみならず、木口の輪郭の情報を、副次的・間接的に活用する画像処理技術にも及ぶものである。
【0020】
因に、前記マーク(目印)としては、例記した公報に開示される小孔以外にも、例えば尖り帽子状・鋲状等の埋め込み式の標識、ペンキ類・インク類等による着色などが挙げられ、また、該マークの付与位置の実例としては、木口の輪郭に対する最大内接円の中心、木口の輪郭に対する最小外接円の中心、木口に現れた心材の輪郭に対する最大内接円の中心、木口に現れた心材の輪郭に対する最小外接円の中心、木口に現れた年輪の中心等々、種々の実例が挙げられ、必要に応じては、それらの実例の複数を、適度の関係割合を以って複合させた複合的な箇所であっても差支えなく、所望の画像処理技術を以って、原木の回転軸芯を定める場合の実例と共通する。
【0021】
而して、同様に関連する技術としては、例えば「原木の芯出し処理方法及び原木の芯出し処理装置」(特開2004−338391号公報)、或は例えば「原木の3次元形状測定装置および方法」(特開2010−112811号公報)等に開示される如く、適宜の原木形状測定装置を用いて、原木の3次元形状を計測すると共に、該3次元形状に適応する回転軸芯を求める芯出し技術が公知であるが、斯様な芯出し技術によって求めた第2の仮回転軸芯(通常は、後から求められるので第2と称した)と、本発明に拘わる原木木口の画像処理技術によって求めた第1の仮回転軸芯(通常は、先に求められるので第1と称した)とを、適度の関係割合を以って複合させて、最終的な回転軸芯を定める場合にも、本発明の実施は有効である。
【0022】
また、前記実施例は、原木の両木口を各一回づつ撮影して、各木口毎に夫々一つの画像を得る態様であるが、本出願人が先に出願した「原木木口の外周エッジ検出装置および外周エッジ検出方法」(特願2010−114558)に開示される如く、一層正確な木口の輪郭を検出し得る特異な画像処理を施すのに用いるべく、原木の両木口を各ニ回づつ撮影して、各木口毎に夫々ニつの画像を得る態様で実施することも可能であり、左右のカメラの撮影順序としては、左右共に夫々続けてニ回づつ撮影する態様と、左右で交互に都合各二回づつ撮影する態様とのいずれの態様であっても差支えなく、要は、左右のカメラの撮影時期に、適宜の微細な時差を設ければ足りる。
【0023】
また、前記実施例の芯出し処理装置に於ては、左右のカメラを同じ高さに配設したが、必要に応じては、左右のカメラの高さに、適宜の高低差を設けても差支えなく、原木支持部材を昇降させる昇降作動機構の昇降速度が判明していれば、前記高低差分の昇降に要する時間も判明するので、画像処理に格別問題が生じる虞はない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上明らかな如く、本発明は、従来の撮影方法では困難であった、各木口の輪郭を含む原木の両木口の鮮明な画像の撮影を可能にしたものであり、斯界に於ける画像処理技術の進展に大いに貢献する極めて有用な発明である。
【符号の説明】
【0025】
1 :原木支持部材
2 :原木
3 :カメラ
4 :フラッシュ・ライト
4a :光源
5 :制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニヤレースを用いて原木を旋削する旋削工程の前工程に於て、原木の左右の木口に対向する位置に、左右一対のカメラを配設して、原木の両木口を撮影する場合に、左右のカメラ毎の撮影動作に適応して、閃光を発するフラッシュ・ライトを、各カメラに併設すると共に、各カメラの撮影時期に、適宜の微細な時差を設けて、段階的に左右の木口を撮影することを特徴とする原木木口の撮影方法。
【請求項2】
撮影時期の時差を、数秒以下であり、而も、左右の閃光同士が、互に干渉し合わない瞬間以上の短時間に設定して成る請求項1記載の原木木口の撮影方法。
【請求項3】
原木の背景色を、暗色として成る請求項1又は請求項2記載の原木木口の撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−20534(P2012−20534A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161404(P2010−161404)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】