説明

原核生物におけるグリコシル化されたタンパク質の発現方法

本発明は、真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞に関する。本発明はまた、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞を提供する工程およびグリコシル化されたタンパク質を産生するのに有効な条件下で原核生物宿主細胞を培養する工程によるグリコシル化されたタンパク質を産生する方法も開示する。本開示の別の局面は、細菌の表面に1つまたは複数のグリカンを発現させる工程、細菌の表面または細菌に由来するバクテリオファージの表面の1つまたは複数のグリカン上に標識を付着させる工程、およびハイスループット形式で標識を解析する工程による、細菌またはバクテリオファージをスクリーニングするための方法に関する。ネイティブな抗原を認識しかつ結合するFv部分と保存アスパラギン残基においてグリコシル化されるFc部分とを含む、グリコシル化された抗体もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2008年1月3日に出願した米国特許仮出願第61/018,772号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、原核生物におけるグリコシル化されたタンパク質の発現に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
糖鎖治療学
タンパク質に基づく治療は現在、FDAにより認可される新規薬剤の4つのうち1つに相当する(Walsh, G., "Biopharmaceutical Benchmarks," Nat Biotechnol 18:831-3 (2000); Walsh, G, "Biopharmaceutical Benchmarks," Nat Biotechnol 21:865-70 (2003); およびWalsh, G, "Biopharmaceutical Benchmarks," Nat Biotechnol 24:769-76 (2006))。
【0004】
複数のタンパク質治療が、大腸菌(E. coli)などの原核生物発現系を用いて産生されうるが(例えば、インスリン)、その一方で治療用タンパク質の大部分は、その完全な生物学的機能を獲得するために、原核生物には存在しないと考えられるさらなる転写後修飾を必要とする。具体的には、N-結合型タンパク質のグリコシル化は、全ての真核生物タンパク種の半数より多くに影響を及ぼすと予測され(Apweiler et al., "On the Frequency of Protein Glycosylation, as Deduced From Analysis of the SWISS-PROT Database," Biochim Biophys Acta 1473:4-8 (1999))、数多くのタンパク質の適切なフォールディング、薬物動態安定性、組織標的化および有効性に必須であることが多い(Helenius et al., "Intracellular Functions of N-linked Glycans," Science 291 :2364-9 (2001))。多くの細菌は自己のタンパク質をグリコシル化しないため、抗体を含む多くの治療関連の糖タンパク質の発現は、哺乳類の細胞に委ねられる。しかしながら、哺乳類細胞の培養は、以下を含むいくつかの欠点を有する:(i)細菌と比べてCHO細胞などの真核生物宿主の極めて高い製造コストと低い容量生産性; (ii)レトロウイルスの混入; (iii)安定な細胞株を生じるのに比較的長い時間を必要とする; (iv)遺伝的な修飾を介して安定な「高生産」真核生物細胞株を迅速に作製することが相対的にできないこと; および(v)内在性の非ヒトグリコシル化経路を有するCHOなどの宿主細胞を用いた場合に生じるグリコフォーム不均一性により引き起こされる高い生成物変動性(Choi et al., "Use of Combinatorial Genetic Libraries to Humanize N-linked Glycosylation in the Yeast Pichia pastoris, "Proc Natl Acad Sci USA 100:5022-7 (2003))。これに対し、大腸菌での発現は、これらの制限を受けない。
【0005】
大腸菌におけるグリコシル化された治療用タンパク質の発現
現在、多数の治療用組換えタンパク質が、宿主生物として大腸菌を用いて発現する。最も良い例の1つがヒトインスリンであり、1982年にEli Lillyにより初めて大腸菌で産生された。その時以来、大腸菌発現による数多くのヒト治療用タンパク質が、米国または欧州で認可されており、ヒト成長ホルモン(hGH)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インスリン様成長因子(IGF-1、IGFBP-3)、ケラチノサイト増殖因子、インターフェロン(IFN-α、IFN-βlb、IFN-γlb)、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-11)、組織壊死因子(TNF-α)、および組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)を含む。しかしながら、ほとんど全ての糖タンパク質は、哺乳類の細胞で産生される。通常グリコシル化されるタンパク質を大腸菌で発現させる場合、宿主でのグリコシル化の欠如により、機能障害を伴うタンパク質が生じる可能性がある。例えば、グリコシル化されていないヒトモノクローナル抗体(mAb)(例えば、抗組織因子 IgGl)は、大腸菌において可溶性形態かつ高いレベルで発現しうる(Simmons et al., "Expression of Full-length Immunoglobulins in Escherichia coli: Rapid and Efficient Production of Aglycosylated Antibodies," J Immunol Methods 263:133-47 (2002))。しかしながら、大腸菌に由来するmAbは、その同種抗原および新生児受容体への強固な結合を保持し、哺乳類の細胞に由来する抗体に匹敵する循環半減期を示す一方で、N-グリカンが存在しないためC1qおよびFcγRI受容体に結合することができなかった。
【0006】
真核生物および原核生物のN-結合型タンパク質のグリコシル化
N-結合型タンパク質のグリコシル化は、真核生物の小胞体(ER)で生じる本質的かつ保存されたプロセスである(Burda et al., "The Dolichol Pathway of N-linked Glycosylation," Biochim Biophys Acta 1426:239-57 (1999))。それは、タンパク質のフォールディング、オリゴマー形成、質の制御、分別、ならびに分泌タンパク質および膜タンパク質の輸送に重要である(Helenius et al., "Intracellular Functions of N-linked Glycans," Science 291:2364-9 (2001))。真核生物のN-結合型タンパク質のグリコシル化の経路(図1)は、以下の2つの異なる工程に分類されうる: (i)小胞体の膜での脂質結合オリゴ糖の構築、および(ii)脂質アンカード ドリキルピロリン酸から新生ポリペプチドの選択されたアスパラギン残基へのオリゴ糖の転移。N-結合型タンパク質のグリコシル化の特徴、すなわち(i)オリゴ糖構築のキャリアとしてのドリキルピロリン酸(Dol-PP)の使用、(ii)完全に構築されたGlc3Man9GlcNAc2オリゴ糖のみの転移、および(iii)Nがアスパラギンであり、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であり、かつS/Tがセリン/スレオニンである配列N-X-S/Tにより特徴づけられるアスパラギン残基の認識(Gavel et al., "Sequence Differences Between Glycosylated and Non-glycosylated Asn-X-Thr/Ser Acceptor Sites: Implications for Protein Engineering," Protein Eng 3:433-42 (1990))は、真核生物で高度に保存されている。オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)は、脂質ドナー ドリキルピロリン酸からアクセプタータンパク質へのオリゴ糖の転移を触媒する。酵母では、インビボで複合体を構成する8つの異なる膜蛋白質が同定されている(Kelleher et al., "An Evolving View of the Eukaryotic Oligosaccharyltransferase," Glycobiology 16:47R-62R (2006))。STT3は、OSTの触媒サブユニットに相当すると考えられる(Nilsson et al., "Photocross-linking of Nascent Chains to the STT3 Subunit of the Oligosaccharyltransferase Complex," J Cell Biol 161:715-25 (2003)およびYan et al., "Studies on the Function of Oligosaccharyl Transferase Subunits. Stt3p is Directly Involved in the Glycosylation Process," J Biol Chem 277:47692-700 (2002))。それは、OST複合体で最も保存されているサブユニットである(Burda et al., "The Dolichol Pathway of N-linked Glycosylation," Biochim Biophys Acta 1426:239-57 (1999))。
【0007】
逆に、細菌でのグリコシル化経路の欠如は、特に「天然の全タンパク質の半数より多くが最終的には糖タンパク質であると認められると考えられる」という確かな推定(Apweiler et al., "On the Frequency of Protein Glycosylation, as Deduced From Analysis of the SWISS-PROT Database," Biochim Biophys Acta 1473:4-8 (1999))により、治療用タンパク質の作製に対する原核生物発現宿主の利用を著しく制限している。しかしながら最近、病原性細菌、C. ジェジュニ(C. jejuni)のゲノムがN-結合型タンパク質のグリコシル化のための経路をコードすることが、発見された(Szymanski et al., "Protein Glycosylation in Bacterial Mucosal Pathogens," Nat Rev Microbiol 3:225-37 (2005))。Szymanskiと共同研究者により1999年 に初めて同定された(Szymanski et al., "Evidence for a System of General Protein Glycosylation in Campylobacter jejuni," Mol Microbiol 32:1022-30 (1999))この経路の遺伝子は、タンパク質のグリコシル化のためのpglと名付けられた17-kb遺伝子座を含む。pgl遺伝子座の発見に続いて、2002年にLintonらは、2つのC. ジェジュニの糖タンパク質、PEB3およびCgpAを同定し、これらの糖タンパク質などC. ジェジュニに由来する糖タンパク質がN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)特異的レクチンダイズ凝集素(SBA)に結合することを示した(Linton et al., "Identification of N-acetylgalactosamine-containing Glycoproteins PEB3 and CgpA in Campylobacter jejuni," Mol Microbiol 43:497-508 (2002))。その後まもなく、Youngらは、PEB3およびCgbAを含む30より多くの潜在的なC. ジェジュニ糖タンパク質同定し、質量分析およびNMRを用いてN-結合型グリカンが構造GalNAc-αl,4-GalNAc-αl,4-[Glcβl,3]GalNAc-αl,4-GalNAc-αl,4-GalNAc-αl,3-Bac-βl,N-Asn(GalNAc5GlcBac、ここでBacはバシロサミンまたは2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシグルコースである)を有するヘプタサッカリドであることを明らかにした(Young et al., "Structure of the N-linked Glycan Present on Multiple Glycoproteins in the Gram-negative Bacterium, Campylobacter jejuni," J Biol Chem 277:42530-9 (2002))(図2)。分岐ヘプタサッカリドは、内膜の細胞質側の脂質キャリア ウンデカプレニルピロリン酸上へのヌクレオチド活性化糖の連続的付加により合成され(Feldman et al., ''Engineering N-linked Protein Glycosylation with Diverse O Antigen Lipopolysaccharide Structures in Escherichia coli," Proc Natl Acad Sci USA 102:3016-21 (2005))、一度構築されると、推定上のATP-結合カセット(ABC)輸送体WlaBにより膜を横断して反転する(Alaimo et al., "Two Distinct But lnterchangeable Mechanisms for Flipping of Lipid-linked Oligosaccharides," Embo J 25:967-76 (2006)およびKelly et al., "Biosynthesis of the N-linked Glycan in Campylobacter jejuni and Addition Onto Protein Through Block Transfer," J Bacteriol 188:2427-34 (2006))。次に、ペリプラズムにおけるヘプタサッカリドの基質タンパク質への転移が、真核生物のOST STT3の触媒サブユニットと有意な配列類似性を有する単一の内在性膜タンパク質である、PglBと名付けられたOSTにより触媒される(Young et al., "Structure of the N-linked Glycan Present on Multiple Glycoproteins in the Gram-negative Bacterium, Campylobacter jejuni," J Biol Chem 277:42530-9 (2002))。PglBは、ヘプタサッカリドを真核生物のグリコシル化の過程で用いられるシークオン(N-X-S/T)に類似するシークオンであるモチーフD/E-X1-N-X2-S/T(ここでD/Eはアスパラギン酸/グルタミン酸であり、X1およびX2はプロリン以外の任意のアミノ酸であり、Nがアスパラギンであり、かつS/Tがセリン/スレオニンである)中のアスパラギンに付加する(Kowarik et al., "Definition of the Bacterial N-glycosylation Site Consensus Sequence," Embo J 25: 1957-66 (2006))。
【0008】
微生物の糖鎖工学
哺乳類、酵母、またはさらには細菌の宿主細胞において治療用糖タンパク質を発現させる際に直面する主要な問題は、非ヒトグリカンの付加である。例えば、治療用糖タンパク質の製造で最も頻繁に用いられる2つの系のうち1つである酵母は、高い免疫原性のマンナン型N-グリカン(最大100個のマンノース残基を含む)を組換え糖タンパク質に転移させる。哺乳類発現系もまた、シアリル酸のN-グリコシルノイラミン酸(Neu5Gc)型(CHO細胞および乳で産生される)または末端α(l,3)-ガラクトース(Gal)(マウス細胞で産生される)などの非ヒト糖残基で治療用タンパク質を修飾する可能性がある。非ヒト糖を保有する治療用タンパク質の反復投与は、ヒトでの免疫反応を含む有害反応を誘発する可能性がある。
【0009】
治療用糖タンパク質を産生するための天然のグリコシル化システムの使用に代わるものとして、糖鎖を改変させる発現系の利用可能性が、治療用タンパク質のグリコシル化をカスタマイズする扉を開き、改良された治療用糖タンパク質の開発をもたらす可能性がある。そのようなシステムは、望ましくないグリカンを排除しかつ高度の均一性でヒトグリコシル化を行う可能性を有すると考えられる。今まで、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)だけが、特定の治療用機能についてグリコシル化を制御しかつ最適化する能力を有する発現系を提供するように糖鎖が改変されている(Gerngross, T. U., "Advances in the Production of Human Therapeutic Proteins in Yeasts and Filamentous fungi," Nat Biotechnol 22:1409-14 (2004); Hamilton et al., "Glycosylation Engineering in Yeast: The Advent of Fully Humanized Yeast," Curr Opin Biotechnol 18:387-92 (2007);およびWildt et al., "The Humanization of N-glycosylation Pathways in Yeast," Nat Rev Microbiol 3: 119-28 (2005))。
【0010】
例えば、糖を改変させたP. パストリス(P. pastoris)株の一群は、モノクローナル抗体Rituxan(抗CD20IgG1抗体)の様々なグリコフォームを産生するために用いられた(Li et al., "Optimization of Humanized IgGs in Glycoengineered Pichia pastoris," Nat Biotechnol 24:210-5 (2006))。これらの抗体は、市販のRituxanと同一のアミノ酸配列を共有しているが、特定のグリコフォームは、関連するFcγRIII受容体に対し約100倍高い結合親和性を示し、インビトロでのヒトB細胞の枯渇の改良を示した(Li et al., "Optimization of Humanized IgGs in Glycoengineered Pichia pastoris," Nat Biotechnol 24:210-5 (2006))。糖を改変させたP. パストリスの驚異的な成功と可能性は、いくつかの欠点がないわけではない。例えば、酵母および全ての他の真核生物では、N-結合型グリコシル化は、生存に必須である(Herscovics et al., "Glycoprotein Biosynthesis in Yeast," FASEB J 7:540-50 (1993)およびZufferey et al., "STT3, a Highly Conserved Protein Required for Yeast Oligosaccharyl Transferase Activity In Vivo," EMBO J 14:4949-60 (1995))。したがって、多数の望ましくない酵母N-グリコシル化反応のGerngrossおよび協同研究者による系統的な排除および再改変は(Choi et al., "Use of Combinatorial Genetic Libraries to Humanize N-linked Glycosylation in the Yeast Pichia pastoris," Proc Natl Acad Sci USA 100:5022-7 (2003))、それらの野生型前駆体と比べて「不健全な」株をもたらしている。これは、高レベルの糖タンパク質発現の過程では、酵母グリコシル化系に与えられる大きな代謝負担ために、悪化しうる。結果として、大規模発酵の過程で得ることができる細胞の収量は限られる。さらに、マンナン型N-グリカンの排除は、酵母におけるグリコシル化の流れの半分でしかない。これは、酵母がO-グリカンを糖タンパク質中のSer 残基またはThr残基に連結するO-結合型グリコシル化も行うためである(Gentzsch et al., "The PMT Gene Family: Protein O-glycosylation in Saccharomyces cerevisiae is Vital," EMBO J 15:5752-9 (1996))。N-結合型グリコシル化と同様に、O-グリコシル化は生存に必須であり(Gentzsch et al., "The PMT Gene Family: Protein O-glycosylation in Saccharomyces cerevisiae is Vital," EMBO J 15:5752-9 (1996))、したがって糖を改変させた酵母から遺伝的に除去させることはできない。酵母のO-グリコシル化機構とヒトのO-グリコシル化機構との間には違いがあるため、糖を改変させた酵母株によるO-グリカン付加の可能性は、免疫反応を含む有害反応を誘発する可能性を有する。
【0011】
最近、Aebiおよび彼の共同研究者は、C. ジェジュニのグリコシル化遺伝子座を大腸菌内に移し、N-グリカンでタンパク質を翻訳後修飾するという驚くべき能力をこれらの細胞に与えた(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298:1790-3 (2002))。しかしながら、原核生物グリコシル化機構と真核生物グリコシル化機構で共有される機能的な類似性にもかかわらず、原核生物グリコシル化機構により付加したオリゴ糖鎖(GalNAc5GlcBac)は、真核生物グリコシル化経路により付加したオリゴ糖鎖とは構造的に異なっている(Szymanski et al., "Protein Glycosylation in Bacterial Mucosal Pathogens," Nat Rev Microbiol 3:225-37 (2005); Young et al., "Structure of the N-linked Glycan Present on Multiple Glycoproteins in the Gram-negative Bacterium, Campylobacter jejuni," J Biol Chem 277:42530-9 (2002);およびWeerapana et al., "Asparagine-linked Protein Glycosylation: From Eukaryotic to Prokaryotic Systems," Glycobiology 16:91R-101R (2006))。構造的に同種のヒト様グリカンを有するN-結合型糖タンパク質を発現させるために、真核生物のN-グリコシル化経路を有する大腸菌を再プログラムする多数の試み(成功していない)が行われている。
【0012】
本発明は、当技術分野における欠陥を克服することに関する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の局面は、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞に関し、ここで真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性は、真核生物のドリキル-結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である。
【0014】
本発明の1つの局面は、あるタンパク質と、該タンパク質と融合したD-X1-N-X2-Tモチーフを含む少なくとも1つのペプチドとを含む糖タンパク質複合体に関し、ここでDはアスパラギン酸であり、X1およびX2はプロリン以外の任意のアミノ酸であり、Nはアスパラギンであり、かつTはスレオニンである。
【0015】
本発明の別の局面は、グリコシル化されたタンパク質を産生する方法に関する。この方法は、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞を提供する工程であって、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性が真核生物のドリキル-結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラー活性である工程を含む。次いで、原核生物宿主細胞は、グリコシル化されたタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養される。
【0016】
本発明のさらなる局面は、細菌またはバクテリオファージをスクリーニングするための方法に関係する。この方法は、細菌の表面に1つまたは複数のグリカンを発現させる工程、細菌の表面または細菌に由来するバクテリオファージの表面の1つまたは複数のグリカン上にラベルを付着させる工程を含む。次いで、標識をハイスループット形式で解析する。
【0017】
本発明の別の局面は、ネイティブな抗原を認識し結合するFv部分と保存されたアスパラギン残基においてグリコシル化されるFc部分とを含む、グリコシル化抗体に関する。
【0018】
本発明の1つの局面は、構造的に同種のヒト様グリカンを有するN-結合型糖タンパク質を発現させるために、N-グリコシル化経路で再プログラムされた原核生物宿主に関する。原核生物宿主細胞は、ドリキル-結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼおよびマンノシルトランスフェラーゼの形でグリコシルトランスフェラーゼ活性を含むことができる。いくつかの態様において、UDP-GlcNAcトランスフェラーゼは、 alg13遺伝子活性およびalgl4遺伝子活性を含む。他の態様において、マンノシルトランスフェラーゼは、algl遺伝子活性およびalg2遺伝子活性を含む。追加の態様において、原核生物宿主細胞は、pglKおよびrftlを含むフリッパーゼ活性を含む。更なる態様において、原核生物宿主細胞は、pglBおよびSTT3などのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を少なくとも1つ含む。
【0019】
好ましい局面において、本発明は、糖タンパク質診断および糖タンパク質治療の設計、発見、および開発のための技術を実用化する。具体的には、本発明は、治療用タンパク質の製造を取り巻く事業に改革する可能性を有する、微生物細胞での確実なヒト糖タンパク質の効率的な産生のための、低コスト戦略の開発を提供する。様々な局面において、本発明の糖を改変させた細菌は、N-結合型糖タンパク質の立体特異的な産生の能力を有する。1つの態様において、細菌は、特定のアスパラギンアクセプター部位で標的タンパク質を効率的にグリコシル化することができる(例えば、N-結合型グリコシル化)新規グリコシル化経路をコードする遺伝子のコレクションで遺伝的に改変されている。これらの特別に改変された細胞株を用いて、実質的に任意の関心対象の組換えタンパク質を発現させかつグリコシル化することができ、したがって、多数の確実なヒト糖タンパク質の産生が可能となる。
【0020】
さらに、本発明は、糖構造の順列を改変するための独自の基盤技術を提供し、その結果初めて「細菌の糖タンパク質のエンジニアリング」を可能にする。糖鎖工学−タンパク質の薬物動態特性を変えるための、タンパク質に関連する糖質の計画的な操作−の1つの期待は、生物現象におけるグリコシル化の役割を解明することにある。したがって、様々な局面において、本発明は、研究用途、産業用途および治療用途のための新規の複合糖質および免疫刺激剤の生物工学的な合成を提供する。
【0021】
糖タンパク質発現の宿主としての大腸菌の主な利点は、酵母や他の全ての真核生物とは異なり、天然のグリコシル化系が存在しないという点にある。したがって、グリコシル化関連遺伝子の付加(またはその後の除去)は、糖を改変させた大腸菌細胞の生存に関係はほとんどないはずである。さらに、内在性のグリコシル化反応による標的タンパク質への非ヒトグリカン付加の可能性は、これらの細胞では排除される。
【0022】
したがって、様々な態様において、原核生物宿主細胞がN-結合型糖タンパク質を産生するために用いられる、糖タンパク質発現の代替手段が開示され、真核生物細胞の培養に関連する重大な障害を避けるための魅力的な解決法を提供する。産生媒体としての細菌の使用は、構造的に同種のヒト様N-グリカンをもたらすと期待される一方で、同時にタンパク質薬剤の開発および製造に関連する費用と時間を劇的に低下させる。
【0023】
他の重要な利点は以下を含む:(i)細菌の遺伝子操作を取り巻く大量のデータ;(ii)タンパク質産生に対する細菌使用の確立された実績−2003年以来FDAにより認可されたタンパク質治療薬の30%が大腸菌細菌で産生されている;および(iii)タンパク質薬剤の細菌生産のための多くの企業内の既存の基盤設備。
【0024】
様々な真核生物のタンパク質発現系と比較して、本発明の方法および組成物の使用で用いられる工程は、ヒト病原体がなく、免疫原性のN-およびO-結合型グリコシル化反応がなく、迅速なクローニング速度、早い成長速度、早い倍加時間(約20分間)、高増殖(高OD)、高い力価およびタンパク質収率(全可溶性タンパク質(TSP)の50%の範囲で)が可能であり、ペリプラズムまたは上清からの産物精製が容易であり、遺伝子的に扱いやすく、十分に研究されており、発現最適化方法の広範囲なコレクション(例えば、プロモーター改変、mRNA安定化法、シャペロン共発現、プロテアーゼ欠乏など)と適合性がある、拡張性が高く費用効率が高い最適な組換え糖タンパク質発現を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】S. セレヴィシエ(S. cerevisiae)の小胞体の膜での脂質結合オリゴ糖の生合成スキームとタンパク質への転移を図示する。個々の反応に必要とされる遺伝子座を示す。GDP-マンノース直接(薄い影)かドリキルホスホマンノース由来(濃い影)かいずれかに由来するマンノース残基の出所について示す。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Burda et al., "The Dolichol Pathway of N-linked Glycosylation," Biochim Biophys Acta 1426:239-57 (1999)参照。
【図2】細菌におけるN-結合型糖タンパク質の生合成科学を図示する。C. ジェジュニでは、N-結合型グリコシル化は、脂質キャリア上でのヌクレオチド活性化糖の連続的な付加を通じて進行し、分岐状ヘプタサッカリドの形成をもたらす。次いで、このグリカンは、PglK(以前はWlaB)およびにより内膜を横断し反転し、次いで、OTase PglBがアスパラギン側鎖へのグリカンの転移を触媒する。Bacは2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシグルコースであり; GalNAcはN-アセチルガラクトサミンであり; HexNAcはN-アセチルヘキソサミンであり; Glcはグルコースである。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Szymanski et al., "Protein Glycosylation in Bacterial Mucosal Pathogens," Nat Rev Microbiol 3 :225-37 (2005)参照。
【図3】図3A〜Bは、糖を改変させた大腸菌でグリコシル化されたPEB3のウエスタンブロットの写真である。C末端6×hisタグを保有する、C. ジェジュニのグリコシル化基質PEB3を発現させ、pACYC184-pgl由来のpgl遺伝子の完全なセット(pgl+)または必須OTaseをコードするpglB遺伝子を欠く修飾されたpgl遺伝子クラスター(pgl-)のいずれかを共発現させた大腸菌のペリプラズムから精製した。抗ポリヒスチジン抗体を用いるウエスタンブロッティングから明らかなように、精製したPEB3はpgl+細胞およびpgl-細胞の両方で検出された(図3A)。しかしながら、GalNAc特異的レクチンSBAへの結合に基づくとPEB3はpgl+細胞でのみグリコシル化されたのに対し、pgl-細胞由来のPEP3はグリコシル化されなかった(図3B)。精製されたPEB3は、表示のように連続的に希釈された。
【図4】図4A〜Dは、大腸菌のマルトース結合タンパク質(MBP)のグリコシル化の結果を示す。図4Aは、ペプチドグリコシル化タグを示す。図4Bは、(左から右に)C末端GlycTag(GT)を有するMBP、C. ジェジュニ糖タンパク質 cjAcrA、N末端GTを有するMBP、分泌シグナルペプチドを持たないC末端GTを有するMBP、ならびにC末端GTおよびTat特異的(ssTorA)シグナルペプチドをそれぞれ有するMBPおよびGFPの抗Hisウエスタンブロットを示す。糖を改変させた大腸菌(レーン2を除き、pgl+)からタンパク質をNi精製し、抗HIS血清を用いて免疫ブロットした。図4Cは、抗Hept血清を用いる、細菌のヘプタサッカリドに対するウエスタンブロットを示す。図4Dは、MBP C末端GT(左)およびMBP N末端GT(右)の複数のNグリカンの特徴である、少なくとも3本の別個のバンドを示す。
【図5】図5A〜Cは、pgl+大腸菌でグリコシル化されたIgG M18.1の結果を図示する。図5Aは、CH2内のAsn297でのグリコシル化が、エフェクター機能を誘発するのに適切な受容体分子への結合を付与する、IgGのFc領域内の立体構造の変化をもたらすことを示す。IgG Ml8.1のウエスタンブロット解析は、プロテイン-A-G樹脂カラム(Pierce)を用いて、pgl-大腸菌(図5B)およびpgl+大腸菌(図5C)から精製した。試料を非還元12%SDSゲルに流し、抗ヒトIgGおよびhR6P抗血清で免疫ブロットした。
【図6】図6Aは、糖タンパク質表面呈示の模式図、およびpgl+細胞およびpgl-細胞でのCjaAのグリコシル化を糖タンパク質特異的抗血清(hR6P)を介して確認するウエスタンブロット解析を示す。図6Bは、リピドAへのWaaL媒介ライゲーションを介するヘプタサッカリドの外膜への移行を示す。図6Cは、フローサイトメトリーを用いるSBA-Alexa Fluor標識の定量化を示す。
【図7】本発明に従うグリコファージシステムの模式例である。脂質結合型オリゴ糖の合成、オリゴ糖の転移(OTase)、およびアクセプターscFv-g3p融合タンパク質のためのタンパク質をコードするプラスミドまたはファージミドを示す。オリゴ糖は、細胞膜の細胞質部位(Cyt)で脂質キャリア、バクトプレニルピロリン酸上に構成される(個々のグリコシルトランスフェラーゼにより触媒される)。次いで、オリゴ糖は、内膜(IM)を横断しペリプラズム空間(Per)に移動し、オリゴサッカリルトランスフェラーゼによりアクセプタータンパク質の特定のアスパラギン残基に転移される。ヘルパーファージVCSMl3による感染の後、グリコシル化されたアクセプタータンパク質(グリコファージ)を呈示するファージを固定化したダイズ凝集素(SBA)に結合し、ガラクトースで溶出した。溶出させたグリコファージは、ファージミド上に存在する抗生物質耐性で選択された大腸菌(F+)細胞に感染させるために用いられる。ファージの糖鎖表現型は、ori Ml3の存在およびその後のファージ粒子内へのファージミドのパッケージングによって、必要とされる任意の段階の遺伝子型と関連付けることができる。Dhfrはジヒドロ葉酸レダクターゼであり、blaはβ-ラクタマーゼであり、catはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼである。
【図8】図8A〜Dは、免疫検出により視覚化したpgl+細胞(図8Aおよび8C)およびpglmut細胞(図8Bおよび8D)におけるAcrA-g3pの経時的発現およびグリコシル化を表す。全細胞溶解物を誘導していない細胞(レーン1)または50 mMアラビノースで1時間(レーン2)、3時間(レーン3)、5時間(レーン4)、および16時間(レーン5)誘導した細胞いずれかから調製した。タンパク質を10%SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写した。AcrA-g3pおよびグリコシル化AcrA-g3p(glyco-AcrA)をAcrA特異的抗体(図8A〜8B)またはRl2抗血清(図8C〜8D)で視覚化した。MWマーカーを右に示す。
【図9A】SBAバイオパニングによるグリコファージ濃縮の定量化を示す。グリコシル化能力がある細胞(pgl、黒い棒)またはグリコシル化能力がない細胞(pglmut、灰色の棒)いずれかから産生したファージをSBA-カラム精製に適用した。SBAパニング法の各分画内に存在するコロニー形成単位(cfu)の総量を表す値は、TG1細胞の感染後に決定され、少なくとも3つの独立した試験の平均値である。SBAパニングにアプライしたファージの量および大腸菌感染後に結果として生じるcfuは、6%未満で変動した。画分1、SBAカラムにアプライしたcfu;画分2、SBA素通り画分;画分3および4、PBS洗浄工程;画分5、6および7、30 mMガラクトースPBSによる洗浄工程;画分8、9および10、300 mMガラクトースPBSによる溶出工程。
【図9B】ファージ上に呈示されたAcrA-g3pおよびグリコシル化AcrA-g3p(glyco-AcrA-g3p)の免疫検出写真である。ファージをpgl+細胞(パネルa、c)またはpglmut細胞(パネルb、d)から産生し、SBAパニングに適用した。AcrAおよび糖鎖AcrAの存在を抗AcrA(パネルa、b)またはR12抗血清(パネルc、d)で視覚化した。レーン1、未処理のファージ調製物;レーン2、SBA素通り画分;レーン3および4、PBSによる洗浄画分、レーン5から7;30 mMガラクトースPBSによる洗浄画分;レーン8から10、300 mMガラクトースPBSによる溶出画分。レーン1から4では、1×108個のファージをSDS-PAGEにアプライした。レーン5から10ではそれぞれ、pgl+細胞から調製した3.5×107個、1.2×104個、4.0×l03個、1.3×106個、2.5×106個、1.2×106個のファージ(パネルa、c)、またはpglmut細胞から調製した1.5×106個、3.5×103個、3.0×103個、4.5×103個、0.5×104個、1.5×103個のファージ(パネルb、d)を用いた。MWマーカーを右に示す。SBAパニングにより得られ、SDS-PAGEにアプライしたファージの量は、±6%未満で変動した。
【図10】図10A〜Bは、大腸菌におけるグリカン改変を示す模式図である。図10Aは、細菌のグリコフォームから哺乳類のグリコフォームへの進化的軌跡を示す。図10Bは、Man3GlcNAc2コアグリコフォームの生合成および細菌基質タンパク質への転移の経路を示す。
【図11】図11A〜Bは、大腸菌におけるAlg13/14の発現を図示するウエスタンブロットの写真である。図11Aは、Alg13-hisを検出するために抗his抗体でプローブしたwt大腸菌細胞由来の可溶性細胞質画分のウエスタンブロット解析を示す。図11Bは、Alg14-FLAGを検出するために抗FLAG抗体でプローブしたwt細胞およびΔdnaJ細胞から単離された異なる画分のウエスタンブロット解析を示す。Alg13については誘導後0、1、2および3 時間(hpi)で、Alg14については3 hpiで試料を収集した。試料を20,000×gで20分間の溶解した細胞の遠心分離により調製し、上清を可溶性画分として、ペレットを不溶性画分(insol)として収集した。Alg14について、可溶性画分をさらに100,000×gで1時間遠心し、上清およびペレットをそれぞれ可溶性画分(sol)および膜画分(mem)として収集した。
【図12】大腸菌におけるAlglおよびAlg2の発現を図示するウエスタンブロットの写真である。これらのウエスタンブロットは、3、4および5 hpiで回収したΔdnaJ細胞由来の膜画分のウエスタンブロットである。ブロットを抗his抗体でプローブした。
【図13−01】Alglの野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図13−02】図13−01の配列比較の続きである。
【図13−03】図13−02の配列比較の続きである。
【図14−01】Alg2の野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図14−02】図14−01の配列比較の続きである。
【図14−03】図14−02の配列比較の続きである。
【図14−04】図14−03の配列比較の続きである。
【図15−01】Alg13の野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図15−02】図15−01の配列比較の続きである。
【図16−01】Alg14の野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図16−02】図16−01の配列比較の続きである。
【図17−01】Rftlの野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図17−02】図17−01の配列比較の続きである。
【図17−03】図17−02の配列比較の続きである。
【図17−04】図17−03の配列比較の続きである。
【図18−01】Sttc3の野生型ヌクレオチド配列とコドン最適化ヌクレオチド配列との配列比較である。
【図18−02】図18−01の配列比較の続きである。
【図18−03】図18−02の配列比較の続きである。
【図18−04】図18−03の配列比較の続きである。
【図18−05】図18−04の配列比較の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
定義
用語および方法の以下の定義は、本開示をより良く記載し、本開示の実施に際して当業者を導くために提供される。
【0027】
特に説明のない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に通常理解されるものと同一の意味を有する。本開示の実施および試験に際し、本明細書に記載されたものと同様のまたは等価な方法および物質を用いることができるが、適切な方法および物質は下記で記載される。物質、方法、および実施例は、単に例示的であり、限定することを意図されていない。本開示の他の特徴は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0028】
本明細書において用いられる「含む(comprising)」は「含む(including)」を意味し、単数形「1つ(a)」または「1つ(an)」または「その(the)」は、文脈から特に明らかな指示がない限り、複数への言及を含む。例えば、「1つの細胞を含む」という言及は、そのような細胞の1つまたは複数を含む。用語「または」は、文脈から特に明らかな指示がない限り、記載の選択要素のうち1つの要素または2つもしくはそれ以上の要素の組合せを指す。
【0029】
糖タンパク質に関して、用語「ヒト様」は、ヒトで産生されるものと同様または全く同一である、タンパク質内のアスパラギン残基のアミド窒素に結合した付加N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を有する(N-結合型)タンパク質を指す。
【0030】
「N-グリカン」または「N-結合型グリカン」は、N-結合型オリゴ糖構造を指す。N-グリカンは、インビトロまたはインビボでさらに操作されうる、タンパク質または合成糖タンパク質中間体に付着させることができる。糖タンパク質上で見出される主な糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、およびシアリル酸(例えば、N-アセチル-ノイラミン酸(NeuAc))である。
【0031】
特に指示がない限り、本明細書において一般形式「SEQ ID NO:」で記載された全ての配列の例として、「SEQ ID NO: 1を含む核酸」は、その少なくとも一部分に(i)SEQ ID NO: 1の配列または(ii)SEQ ID NO: 1に相補的な配列のいずれかを有する核酸を指す。二者間の選択は、文脈により決定される。例えば、核酸がプローブとして用いられる場合は、二者間の選択は、プローブが所望の標的に相補的であるという要件により決定される。
【0032】
「単離された」または「実質的に純粋な」核酸もしくはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合ポリマー)または糖タンパク質は、そのもともとの宿主細胞内のネイティブなポリヌクレオチド、例えば、天然に付随するリボソーム、ポリメラーゼおよびゲノム配列に天然に伴う他の細胞成分から実質的に分離されていることである。本用語は、(1)その天然に存在する環境から取り出された核酸すなわちポリヌクレオチド、(2)天然に見出される「単離されたポリヌクレオチド」の全部または一部分に結合しない核酸すなわちポリヌクレオチド、(3)天然に連結されないポリヌクレオチドと機能的に連結される核酸すなわちポリヌクレオチド、または(4)天然に存在しない核酸すなわちポリヌクレオチドを包含する。用語「単離された」または「実質的に純粋な」はまた、組換えもしくはクローニングされたDNA単離体、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、または異種システムにより生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体に関して用いられうる。
【0033】
しかしながら、「単離された」は、記載された核酸、ポリヌクレオチドまたは糖タンパク質がその本来の環境からそれ自体物理的に取り出されたことを必然的に必要とはしない。例えば、生物のゲノム中の内在性核酸配列は、異種配列がこの内在性核酸配列の発現を変更するように内在性核酸配列に隣接して配置される場合、「単離された」と考えられる。本文脈において、異種配列は、異種配列それ自体が内在性である(同じ宿主細胞またはその子孫が起源である)か、外来性である(異なる宿主細胞またはその子孫が起源である)か否かにかかわらず、内在性核酸配列に天然では隣接していない配列である。例として、プロモーター配列は、宿主細胞のゲノム中の遺伝子のネイティブなプロモーターについて、この遺伝子が発現パターンを変更するように置換されうる(例えば、相同組換え)。この遺伝子はそのとき、天然で隣接する少なくともいくつかの配列から分離されるため、「単離された」状態になると考えられる。
【0034】
核酸はまた、ゲノム中の対応する核酸に対して天然に生じない任意の修飾を含む場合も「単離された」とみなされる。例えば、内在性のコード配列は、人工的に、例えばヒトの介入により導入された挿入、欠失または部分変異を含む場合に、「単離された」とみなされる。「単離された核酸」はまた、非対応部位で宿主細胞染色体に組み込まれた核酸、およびエピソームとして存在する核酸構築物を含む。さらに、「単離された核酸」は、組換え技術により産生される際に他の細胞物質を実質的に含まない、もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学的に合成される際に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないことが可能である。
【0035】
グリコシル化工学
本発明の第1の局面は、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含み、ここで真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性が真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である、原核生物宿主細胞に関する。
【0036】
本発明の原核生物宿主細胞は、真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性を有し、Algl3活性およびAlg14活性を含んでもよい。Alg13活性およびAlg14活性は、野生型ヌクレオチド配列またはコドン最適化配列のいずれかを用いて達成される。図10Bに示すように、これらの酵素は、GlcNAcユニットをバクトプレノールに付加する働きをする。algl3野生型核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列を有する:

alg13コドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列を有する:

algl4野生型核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列を有する:

algl4コドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 4のヌクレオチド配列を有する:

【0037】
本発明の原核生物宿主細胞は、Alg1活性およびAlg2活性を含む真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性を有する。Alg1活性およびAlg2活性は、以下の野生型核酸分子またはコドン最適化核酸配列によって達成される。図10Bに示すように、これらの酵素は、GlcNAcユニットにマンノースユニットを付加する。algl野生型核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列を有する:

alglコドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 6のヌクレオチド配列を有する:

alg2野生型核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 7のヌクレオチド配列を有する:

alg2コドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 8のヌクレオチド配列を有する:

【0038】
本発明の原核生物宿主細胞は、Rftl活性の形で真核生物のフリッパーゼ活性を有する。図10Bに示すように、Rftl(またはPglK)は、GlcNAcユニットおよびマンノースユニットのオリゴ糖構築物を真核生物宿主の内膜の細胞質部位からペリプラズム部位に移動させる。Rftl野生型核酸分子は、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列を有する:

rftlコドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 10のヌクレオチド配列を有する:

【0039】
本発明の原核生物宿主細胞は、STT3活性の形で真核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を有する。図10Bに示すように、STT3酵素(またはPlgB酵素)は、オリゴ糖構築物を内膜から宿主細胞の外膜へ輸送されるアクセプタータンパク質へ輸送する。STT3野生型核酸分子は、SEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列を有する:

STT3コドン最適化核酸分子は、以下のSEQ ID NO: 12のヌクレオチド配列を有する:

【0040】
大腸菌および他の細菌における、真核生物のタンパク質、特に膜タンパク質の発現の成功は、重要な課題である(Baneyx et al., "Recombinant Protein Folding and Misfolding in Escherichia coli," Nat Biotechnol 22:1399-1408 ((2004)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、正確に折り畳まれかつ正確に局在するタンパク質(例えば内膜内への挿入)の高い発現量を達成するために、多数の事項について考慮しなければならない。これらの要素全てが集合的に、真核生物のタンパク質が大腸菌細胞内で発現した際に機能するか否かを決定する。
【0041】
本発明の1つの態様において、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼは、大腸菌(および他の細菌)と酵母や哺乳類細胞などの高等生物との間のコドン使用の偏りに関連する制限を克服するために最適化されたコドンでありうる。コドン使用の偏りは、タンパク質をコードするDNA配列(遺伝子)におけるコドンの出現頻度の生物間の差を指す。コドンは、ポリペプチド鎖における特定のアミノ酸残基をコードする一連の3個のヌクレオチド(トリプレット)である。コドン最適化は、特定の塩基転換ヌクレオチド変更、すなわちプリンからピリミジンまたはピリミジンからプリンへのヌクレオチド変更、または転位ヌクレオチド変更、すなわちプリンからプリンまたはピリミジンからピリミジンへのヌクレオチドの変更を行うことにより達成されうる。野生型の真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ(SEQ ID NO: 1および3)、真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ(SEQ ID NO: 5および7)、真核生物フリッパーゼ(SEQ ID NO: 9)および真核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(SEQ ID NO: 11)に対応する例示的なコドン最適化核酸分子は、それぞれSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、および12として上記に示す。
【0042】
図13から18はそれぞれ、コドン最適化ヌクレオチド配列を達成するために塩基転換変更および転位変更を受ける、Algl、Alg2 Alg3、Alg4、RftlおよびSttc3の野生型配列における特定のヌクレオチドを示す配列比較である。例示的な最適化配列を配列比較中に示し、「最適化」として認識し、野生型配列を「クエリー」として認識した。野生型配列におけるヌクレオチド変更の位置を以下の規則を用いて示す:「|」は未変更のヌクレオチド(すなわち野生型配列のヌクレオチドが最適化配列に変更されていない)を示す;「*」は塩基転換変更(例えばシトシン「C」またはチミン「T」に変更されるアデニン「A」、CまたはTに変更されるグアニン「G」、AまたはGに変更されるC、およびAまたはGに変更されるT)の位置を示す;そして「♯」は転位変更(例えばAからGまたはGからA、CからTまたはTからC)の位置を示す。例示的な最適化配列は図13から18にそれぞれ示されているが、コドン最適化配列を達成するために同定されたヌクレオチド変更の全てを行わなければならないわけではないこと、および塩基転換変更の場合は各位置で2つのヌクレオチド変更が可能である(すなわちプリンはピリミジン(CまたはT)のいずれかに変更可能であり、ピリミジンはプリン(AまたはG)のいずれかに変更可能である)ことを当業者なら容易に理解するであろう。
【0043】
配列を含むalg遺伝子の核酸分子ならびに相同体、変異体および誘導体は、SEQ ID NO:6に対して75%の同一性、SEQ ID NO: 8に対して77%の同一性、SEQ ID NO:2に対して77%の同一性、およびSEQ ID NO:4に対して77%の同一性を少なくとも有する。
【0044】
別の態様において、本発明の核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸分子は、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらに高い値に達する同一性値を有する、SEQ ID NO:2、4、6、8に対して少なくとも75%、77%、80%、85%、90%、または95%同一であるポリペプチド配列をコードする。
【0045】
さらなる態様において、フリッパーゼ遺伝子の核酸分子、相同体、変異体および誘導体は、SEQ ID NO: 10に対して少なくとも76%の同一性のヌクレオチド配列を有する。さらに、本発明の核酸分子は、SEQ ID NO: 10のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸分子は、98%、99%、99.9%、またはさらに高い値まで増加する同一性値を有する、SEQ ID NO: 10に対して少なくとも76%、80%、85%、90% または95%同一であるポリペプチド配列をコードする。
【0046】
様々な他の態様において、OST遺伝子の核酸分子、ならびに相同体、変異体および誘導体は、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも79%の同一性を有する。別の態様において、本発明の核酸分子は、SEQ ID NO: 12のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドをコードする。好ましくは、核酸分子は、98%、99%、99.9%、またはさらに高い同一性値を有する、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも79%、80%、85%、90%、または95%同一であるポリペプチド配列をコードする。
【0047】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で上記核酸分子にハイブリダイズする核酸分子を包含する。上記に定義されかつ当技術分野において周知なように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、特定の条件下での特定のDNAハイブリッドの熱融解点(Tm)を下回る約25℃で行われ、ここでTmは標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズする温度である。ストリンジェントな洗浄工程は、特定の条件下での特定のDNAハイブリッドのTmより約5℃低い温度で行われうる。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドまたは核酸分子は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドの多量体型を指す。これらは、DNA分子(例えば、直鎖、環状、cDNA、染色体、ゲノム、もしくは合成の二本鎖、一本鎖、三本鎖、四本鎖、部分的二本鎖、分枝状、ヘアピン状、環状または南京錠型の構造をとるDNA分子)およびRNA分子(例えば、tRNA、rRNA、mRNA、ゲノムRNA分子、または合成RNA分子)および記載のDNA分子もしくはRNA分子の類似体、ならびに非天然ヌクレオチド類似体、非天然ヌクレオチド間結合、もしくはその両方を含むDNAまたはRNAの類似体を含む。本発明の単離された核酸分子は、核酸が由来する生物の染色体DNAで天然に隣接する配列(すなわち、核酸分子の5末端および3末端に位置する配列)を含まない核酸分子を含む。様々な態様において、単離された核酸分子は、約10 kb、5 kb、4 kb、3 kb、2 kb、1 kb、0.5 kb、0.1 kb、50 bp、25 bpまたは10 bpより少ない核酸分子が由来する微生物の天然に隣接するヌクレオチド染色体DNA配列を含むことができる。
【0049】
異種の核酸分子は、プロモーターおよび任意の他の5'調節分子に対して適切な向き(5'→3')および適正な読み取り枠で発現系またはベクター内に挿入される。核酸構築物の調製は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Laboratory Press, Cold Springs Harbor, New York (1989)に記載されているような、当技術分野において周知である標準的なクローニング方法を用いて行われうる。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、CohenおよびBoyerへの米国特許第4,237,224号もまた、制限酵素の切断およびDNAリガーゼによるライゲーションを用いる、組換えプラスミドの形での発現系の作製を記載する。
【0050】
適切な発現ベクターは、宿主細胞に適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含む発現ベクターを含む。例えば、大腸菌が宿主細胞として用いられる場合、pUC19、pUC18、またはpBR322などのプラスミドが用いられてもよい。他の適切な発現ベクターは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition, Sambrook and Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。例えば核酸構築物の調製、変異、配列決定、DNAの細胞内への導入および遺伝子発現などの核酸の操作、ならびにタンパク質の解析のための、多くの公知の技術およびプロトコールは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al. eds., (1992)に詳細に記載される。
【0051】
種々の遺伝シグナルおよびプロセシング現象は、遺伝子発現の多くのレベル(例えば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(「mRNA」)翻訳)、およびその後にリボソーム表面に呈示される融合タンパク質の量を制御する。DNAの転写は、RNAポリメラーゼの結合を方向付け、その結果mRNA合成を促進するDNA配列である、プロモーターの存在に依存する。プロモーターは、その「強度」(すなわち、転写を促進する能力)が異なる。クローニングした遺伝子を発現させるためには、強力なプロモーターを用いて高レベルの転写を得て、よって発現および表面呈示を得ることが望ましい。したがって、用いられる宿主システムに応じて、多数の適切なプロモーターのうち任意の1つをストールシークエンス(stall sequence)と結合した関心対象のタンパク質をコードするデオキシリボ核酸分子を有する発現ベクター内に組み込んでもよい。例えば、大腸菌、そのバクテリオファージ、またはプラスミドを用いる場合、T7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、大腸菌ファージラムダのPRおよびPLプロモーター、ならびにlacUV5、ompF、blaおよびlppなどを含むが限定されない他のプロモーターなどのプロモーターが、隣接するDNAセグメントの高レベルの転写を誘導するために用いられてもよい。さらに、組換えDNAまたは他の合成DNA技術により産生されるハイブリッドtrp-lacUV5(tac)プロモーターまたは他の大腸菌プロモーターが、挿入遺伝子の転写をもたらすために用いられてもよい。
【0052】
原核生物でのmRNAの転写は、真核生物のものとは異なる、適切な原核生物のシグナルの存在に依存する。原核生物でのmRNAの効率的な転写は、mRNA上にシャイン・ダルガノ(「SD」)配列と呼ばれるリボソーム結合部位を必要とする。この配列は、タンパク質のアミノ末端メチオニンをコードする開始コドン、通常AUGの前に配置されるmRNAの短いヌクレオチド配列である。SD配列は、16SrRNA(リボソームRNA)の3'末端に相補的であり、おそらくrRNAとの二本鎖形成によってmRNAのリボソームへの結合を促進し、リボソームの正確な位置決めを可能にする。遺伝子発現の最大化に関する総説については、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、RobertsおよびLauer, Methods in Enzymology, 68:473 (1979)を参照のこと。
【0053】
本発明によると、宿主細胞は原核生物である。そのようは細胞は、関心対象の組換え治療用タンパク質の産生のための組換えタンパク質の発現の宿主として役立つ。例示的な宿主細胞は、大腸菌および他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、エシェリキア種(Escherichia sp.)、カンピロバクター種(Campylobacter sp.)、ウォリネラ種(Wolinella sp.)、デスルホビブリオ種(Desulfovibrio sp.)、ビブリオ種(Vibrio sp,)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、バチルス種(Bacillus sp.)、リステリア種(Listeria sp.)、スタフィロコッカス種(Staphylococcus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)、ペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus sp.)、メガスフェラ種(Megasphaera sp.)、ペクチネタス種(Pectinatus sp.)、セレノモナス種(Selenomonas sp.)、ザイモフィラス種(Zymophilus sp.)、アクチノミセス種(Actinomyces sp.)、アルスロバクター種(Arthrobacter sp.)、フランキア種(Frankia sp.)、ミクロモノスポラ種(Micromonospora sp.)、ノカルジア種(Nocardia sp.)、プロピオニバクテリウム種(Propionibacterium sp.)、ストレプトミセス種(Streptomyces sp.)、ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)、ラクトコッカス種(Lactococcus sp.)、ロイコノストック種(Leuconostoc sp.)、ペディオコッカス種(Pediococcus sp.)、アセトバクテリウム種(Acetobacterium sp.)、ユーバクテリウム種(Eubacterium sp.)、ヘリオバクテリウム種(Heliobacterium sp.)、ヘリオスピリルム種(Heliospirillum sp.)、スポロミュサ種(Sporomusa sp.)、スピロプラズマ種(Spiroplasma sp.)、ウレアプラズマ種(Ureaplasma sp.)、エリシペロスリクス種(Erysipelothrix sp.)、コリネバクテリウム種(Corynebacterium sp.)、エンテロコッカス種(Enterococcus sp.)、クロストリジウム種(Clostridium sp.)、マイコプラズマ種(Mycoplasma sp.)、マイコバクテリウム種(Mycobacterium sp.)、アクチノバクテリア種(Actinobacteria sp.)、サルモネラ種(Salmonella sp.)、シゲラ種(Shigella sp.)、モラクセラ種(Moraxella sp.)、ヘリコバクター種(Helicobacter sp.)、ステノトロホモナス種(Stenotrophomonas sp.)、ミクロコッカス種(Micrococcus sp.)、ナイセリア種(Neisseria sp.)、デロビブリオ種(Bdellovibrio sp.)、ヘモフィラス種(Hemophilus sp.)、クレブシエラ種(Klebsiella sp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、セラチア種(Serratia sp.)、シトロバクター種(Citrobacter sp.)、プロテウス種(Proteus sp.)、セラチア種(Serratia sp.)、エルシニア種(Yersinia sp.)、アシネトバクター種(Acinetobacter sp.)、アクチノバチルス種(Actinobacillus sp.)、ボルデテラ種(Bordetella sp.)、ブルセラ種(Brucella sp.)、キャプノサイトファーガ種(Capnocytophaga sp.)、カルジオバクテリウム種(Cardiobacterium sp.)、エイケネラ種(Eikenella sp.)、フランシセラ種(Francisella sp.)、ヘモフィルス種(Haemophilus sp.)、キンゲラ種(Kingella sp.)、パスツレラ種(Pasteurella sp).、フラボバクテリウム種(Flavobacterium sp.)、キサントモナス種(Xanthomonas sp.)、バークホルデリア種(Burkholderia sp.)、エロモナス種(Aeromonas sp.)、プレジオモナス種(Plesiomonas sp.)、レジオネラ種(Legionella sp.)、ならびにボルバキア種(Wolbachia sp.)、シアノバクテリア(cyanobacteria)、スピロヘータ(spirochaetes)、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、グラム陰性球菌、偏好性のグラム陰性桿菌、腸内細菌科グルコース発酵グラム陰性桿菌、非グルコース発酵性グラム陰性桿菌、グルコース発酵性オキシダーゼ陽性のグラム陰性桿菌などのアルファ-プロテオバクテリアを含む。
【0054】
本発明の1つの態様において、大腸菌宿主株C41(DE3)が、この株が以前に一般的な膜タンパク質過剰発現用に最適化されていることから(Miroux et al., "Over-production of Proteins in Escherichia coli: Mutant Hosts That Allow Synthesis of Some Membrane Proteins and Globular Proteins at High Levels," J Mol Biol 260:289-298 (1996)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、用いられる。宿主株のさらなる最適化は、DnaJタンパク質をコードする遺伝子の欠失を含む(例えば、ΔdnaJ細胞)。この欠失の理由は、dnaJの不活性化が過剰発現した膜タンパク質の蓄積を増大させること、および膜タンパク質の過剰発現に通常付随する重篤な細胞毒性を抑制することが知られているためである(Skretas et al., "Genetic Analysis of G Protein-coupled Receptor Expression in Escherichia coli: Inhibitory Role of DnaJ on the Membrane Integration of the Human Central Cannabinoid Receptor," Biotechnol Bioeng (2008)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。本発明者らは、この次に続くAlg1およびAlg2の発現を観察している。さらに、競合する糖の生合成反応の欠失は、最適なレベルのN-グリカン生合成を確実にするために必要とされる。例えば、大腸菌O16抗原生合成経路における遺伝子の欠失(Feldman et al., "The Activity of a Putative Polyisoprenol-linked Sugar Translocase (Wzx) Involved in Escherichia coli O Antigen Assembly is Independent of the Chemical Structure of the O Repeat," J Biol Chem 274:35129-35138 (1999)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)は、バクトプレノール-GlcNAc-PP基質が所望の哺乳類N-グリカン反応に利用可能となることを確実にすると考えられる。望ましくない副作用を排除するために、大腸菌宿主株から欠失させる代表的な遺伝子は以下である:wbbL、glcT、glf、gafT、wzx、wzy、waaL。
【0055】
発現ベクターで宿主細胞を形質転換する/形質移入するための方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Springs Laboratory Press, Cold Springs Harbor, New York (1989)に記載されているように、当技術分野において周知であり、選択された宿主系に依存する。真核生物細胞に対して適切な技術は、リン酸カルシウム形質移入、DEAE-デキストラン、電気穿孔、リポソーム媒介形質移入、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えばワクシニアもしくは昆虫細胞に対してバキュロウイルスを用いる形質導入を含んでもよい。細菌細胞に対して適切な技術は、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔、およびバクテリオファージを用いる形質移入を含んでもよい。
【0056】
本発明の1つの局面は、あるタンパク質と、 Dがアスパラギン酸であり、X1およびX2がプロリン以外の任意のアミノ酸であり、NがアスパラギンでありかつTがスレオニンである、該タンパク質に融合するD-X1-N-X2-Tモチーフを含む少なくとも1つのペプチドとを含む、糖タンパク質複合体に関する。
【0057】
本発明の別の局面は、グリコシル化されたタンパク質を産生する方法に関する。この方法は、真核生物のドリキル結合型 UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞を提供する工程を含む。次いで原核生物宿主細胞は、グリコシル化されたタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養される。
【0058】
本発明の方法は、本発明にしたがってグリコシル化された抗体を産生するために用いられうる。
【0059】
従って、様々な局面において、本発明は、多大な一連のN-結合型糖タンパク質の立体特異的な生合成のためのプラットフォームとして、N結合タンパク質を「ヒト化する」ために改変された原核生物タンパク質発現系を提供する。特定の態様において、代謝経路技術およびタンパク質工学技術を用いる大腸菌における真核生物N-グリコシル化経路の再構成は、構造的に同種のヒト様グリカンを有するN-結合型糖タンパク質をもたらす。天然のグリコシル化経路は細菌の大多数で存在しないことから、糖を改変させた細菌は、細胞毎に合成される同種のグリコフォームを有するN-結合型糖タンパク質の立体特異的な産生の能力を有していることが予想される。このことは、糖を改変させた細胞株それぞれが独自の炭水化物の特徴に対応するということを確実にする。したがって、ヒト様グリコシル化を生じさせるよう細菌を改変することは、本発明の1つの目的である。
【0060】
原核生物グリコシル化機構により付加したオリゴ糖鎖は、高等真核生物およびヒトのグリコシル化経路により付加したオリゴ糖鎖と構造的に異なっている(Weerapana et al., "Asparagine-linked Protein Glycosylation: From Eukaryotic to Prokaryotic Systems," Glycobiology 16:91R-101R(2006)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。特定の態様において、細菌のグリコシル化機構の「ヒト化」を開始するために(図10A)、本発明の目的は、Man3GlcNAc2オリゴ糖構造を生じさせることにある。第1の局面において、脂質結合型Man3GlcNAc2の生合成を含む組換え経路が大腸菌で構築される(図10B)。この経路の最初の部分は、脂質結合型Man3GlcNAc2の酵素による合成である。具体的には、複数の真核生物グリコシルトランスフェラーゼの1つを大腸菌で機能的に発現させ、結果として生じる脂質結合型オリゴ糖を3H-GlcNAcおよび3H-マンノース、または蛍光レクチン(例えばAlexaFluor-ConA)による細胞の代謝標識により解析する。Man3GlcNAc2オリゴ糖構造は、真核生物細胞中で見られる多くのN-グリカンのコア構造を表す。この構造の構築に必要とされるグリコシルトランスフェラーゼは真核生物で公知であり、これらの酵素の多くは大腸菌で機能的に発現されているが、今まで誰もこのオリゴ糖構造の達成に成功していない。加えて、これらのグリコシルトランスフェラーゼの基質、すなわちUDP-GlcNAcおよびGDP-Manは、大腸菌の細胞質中に両方とも存在している。
【0061】
標的タンパク質上へのMan3GlcNAc2コアの部位特異的転移
原核生物でヒト様オリゴ糖構造を産生するための経路の更なる部分は、ポリペプチド鎖上のN-X-S/T部位へのMan3GlcNAc2オリゴ糖の転移を伴う。これには、標的タンパク質へのオリゴ糖の転移を担う、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)として公知の内在性膜タンパク質またはタンパク質複合体の機能的発現を必要とする。様々な原核生物および真核生物のOSTが、脂質結合型Man3GlcNAc2オリゴ糖を標的タンパク質上へ転移する能力を有する。したがって、原核生物タンパク質発現系は、少なくとも1つのOST活性を含む。
【0062】
様々な局面において、大腸菌における真核生物グリコシル化経路の再構成は、フリッパーゼおよびOSTの活性を必要とする(カンピロバクター・ジェジュニではそれぞれPglKおよびPglB、酵母ではそれぞれRftlおよびSTT3)(図10B参照)。PglKフリッパーゼは、内膜の向こう側に脂質結合型C. ジェジュニヘプタサッカリドを移動させる役割を担う。思いがけなく、PglKは、脂質結合型オリゴ糖中間体のグリカン構造に対して緩やかな特異性を示す(Alaimo et al., "Two Distinct But Interchangeable Mechanisms for Flipping of Lipid-linked Oligosaccharides," Embo J 25:967-76 (2006)およびWacker et al., "Substrate Specificity of Bacterial Oligosaccharyltransferase Suggests a Common Transfer Mechanism for the Bacterial and Eukaryotic Systems," Proc Natl Acad Sci USA 103:7088-93 (2006)、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)。したがって、この酵素は脂質結合型Man3GlcNAc2を認識し、よってさらなる改変が必要とされないと予想される。あるいは、万が一PglKが脂質結合型Man3GlcNAc2を認識しない場合は、本発明は、特にRftlなどの真核生物フリッパーゼの発現を提供する。
【0063】
「標的タンパク質」、「関心対象のタンパク質」、または「治療用タンパク質」は、限定されないが、エリスロポエチン、インターフェロンなどのサイトカイン、G-CSF、第VIII因子、第IX因子およびヒトタンパク質Cなどの凝固因子、可溶性IgE受容体α鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、キマーゼ、ならびに尿素トリプシン阻害剤、IGF結合タンパク質、上皮増殖因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンジオスタチン、血管内皮増殖因子2、骨髄系前駆細胞阻害因子1、オステオプロテジェリン、α-1アンチトリプシン、DNase II、α-フェトプロテイン、AAT、rhTBP-1(別名TNF結合タンパク質1)、TACI-Ig(膜貫通活性化因子およびカルシウム修飾因子およびシクロフィリンリガンド相互作用物質)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、GM-CSF、FCを有するまたは有さないGLP-1(グルカゴン様タンパク質1)、IL-1受容体アゴニスト、sTNFr(エンブレル、別名可溶性TNF受容体Fc融合物)、ATIII、rhトロンビン、グルコセレブロシダーゼ、CTLA4-Ig(細胞傷害性Tリンパ球抗原4-Ig)、受容体、ホルモン、ヒトワクチン、動物ワクチン、ペプチド、ならびに血清アルブミンを含む。
【0064】
グリコシル化されないIgG対グリコシル化されたIgG
本発明の別の局面は、ネイティブな抗原を認識しかつ結合するFv部分と保存アスパラギン残基においてグリコシル化されるFc部分とを含む、グリコシル化された抗体に関する。
【0065】
本発明のグリコシル化された抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の形をとることができる。
【0066】
1個の免疫グロブリン分子は、2つの同一の軽鎖(L)および2つの同一の重鎖(H)で構成される。軽鎖は、1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)で構成されるのに対し、重鎖は、3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)および1つの可変ドメイン(VH)からなる。VHドメインとVLドメインは共に、Fvとして公知の分子の抗原結合部分を構成する。Fc部分は、保存Asn297残基においてグリコシル化される(図5Aアスタリスクで示される)。この位置でのN-グリカンの付加は、エフェクター相互作用に必須である「開いた」立体構造をもたらす。
【0067】
モノクローナル抗体は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる、Cabilly et al.に対する米国特許第4,816,567号およびAnderson et al., "Production Technologies for Monoclonal Antibodies and their Fragments," Curr Opin Biotechnol. 15:456-62 (2004)に記載されているような組換えDNA法を用いて作製されうる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞などから抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるRT-PCRなどにより単離され、その配列は通常の手法を用いて決定される。次いで、重鎖および軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドは、その後本発明の宿主細胞内に形質移入される、適切な発現ベクター内にクローニングされ、モノクローナル抗体が産生される。1つの態様において、組換えDNA技術は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを細菌のペリプラズムに誘導するために重鎖および軽鎖をN末端輸送シグナルペプチド(例えばPelBシグナルペプチド)で修飾するよう用いられる。さらに、重鎖および軽鎖は、バイシストロニックな構築物(例えば、2つのポリペプチドを産生するよう翻訳される1つのmRNA)、またはもう1つの選択肢として2つのシストロン系(例えば、2つの別個のmRNAが重鎖および軽鎖のそれぞれを産生させる)のいずれかから発現することができる。細菌のペリプラズム中で全長IgGの高レベル発現および効率的な構築を達成するために、バイシストロニックな構築物と2つのシストロン構築物の両方を操作し、好適な発現比率を達成することができる。例えば、翻訳のレベルは、発現ベクター内のバイシストロニックな構築物および2つのシストロン構築物のすぐ上流に挿入される一連の翻訳開始領域(TIR)を用いて高めるまたは低下させることができる(Simmons et al., "Translational Level is a Critical Factor for the Secretion of Heterologous Proteins in Escherichia coli," Nat Biotechnol 14:629-34 (1996)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。プラスミドまたはゲノムでコードされるグリコシル化酵素を発現するための遺伝子も持つ細菌の宿主内にこのような抗体産生プラスミドが導入される場合は、結果として生じる抗体はペリプラズム内でグリコシル化されている。所望の種の組換えモノクローナル抗体またはそのフラグメントはまた、記載されているようなファージディスプレイライブラリーから単離されうる(McCafferty et al., "Phage Antibodies: Filamentous Phage Displaying Antibody Variable Domains," Nature 348:552-554 (1990); Clackson et al., "Making Antibody Fragments using Phage Display Libraries," Nature 352:624-628 (1991); およびMarks et al., "By-Passing Immunization. Human Antibodies from V-Gene Libraries Displayed on Phage," J Mol. Biol. 222:581-597 (1991)、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0068】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドはさらに、代替の抗体を作製するために組換えDNA技術を用いる多くの別の方法で修飾されうる。1つの態様において、例えばマウスのモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、キメラ抗体を作製するためにヒト抗体の当該領域に置換されうる。あるいは、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、融合抗体を作製するために非免疫グロブリンポリペプチドに置換されうる。他の態様において、定常領域は、モノクローナル抗体の所望の抗体フラグメントを作製するために切断または除去される。さらに可変領域の部位特異的変異または高密度変異が、モノクローナル抗体の特異性および親和性を最適化するために用いられうる。
【0069】
いくつかの態様において、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、可変領域内に非ヒト(例えばマウス)抗体由来の最小配列を含む抗体である。そのような抗体は、ヒト被験体に投与される場合に抗原性およびヒト抗マウス抗体反応を低減させるため、治療用で用いられる。実際には、ヒト化抗体は典型的には、非ヒト配列を最低限伴うか全く伴わないヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトにより産生される抗体またはヒトにより産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
【0070】
ヒト化抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて産生されうる。抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)を所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)のCDRで置換することによって、ヒト化されうる(Jones et al., "Replacing the Complementarity-Determining Regions in a Human Antibody With Those From a Mouse," Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., "Reshaping Human Antibodies for Therapy," Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., "Reshaping Human Antibodies: Grafting an Antilysozyme Activity," Science 239: 1534-1536 (1988)、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)。ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性および/または能力を改良し最適化するために、Fvフレームワーク領域内およびび/または置換された非ヒト残基内いずれかにおける更なる残基の置換により、さらに修飾されうる。
【0071】
二重特異性抗体もまた、本発明の方法での使用に適している。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープを特異的に認識しかつ結合する能力を有する抗体である。二重特異性抗体は、完全な抗体または抗体フラグメントであることができる。二重特異性抗体を作製するための技術は、当技術分野において一般的である(Traunecker et al., "Bispecific Single Chain Molecules (Janusins) Target Cytotoxic Lymphocytes on HIV Infected Cells," EMBO J. 10:3655-3659 (1991)およびGruber et al., "Efficient Tumor Cell Lysis Mediated by a Bispecific Single Chain Antibody Expressed in Escherichia coli," J. Immunol. 152:5368-74 (1994)、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0072】
グリカンスクリーニング技術
本発明のさらなる局面は、細菌またはバクテリオファージをスクリーニングするための方法に関する。この方法は、細菌の表面に1つまたは複数のグリカンを発現させる工程、および細菌の表面または細菌に由来するバクテリオファージの表面の1つまたは複数のグリカンに標識を付着させる工程を含む。T4ファージ、T7ファージおよびλファージも用いられるが、ファージディスプレイで用いられる最も一般的なバクテリオファージは、M13ファージおよびfd線維状ファージである。次いで、標識をハイスループット形式で解析する。
【0073】
バクテリオファージが標識および解析に供される場合、本発明の方法は、その表面に1つまたは複数のグリカンを有するバクテリオファージを産生するのに有効な条件下で、細胞表面に1つまたは複数のグリカンを発現させる細菌をヘルパーファージに感染させる工程をさらに含む。次いで、バクテリオファージをその表面の1つまたは複数のグリカンによって濃縮する。あるいは、新しい「細菌パッケージング細胞株」技術を用いることにより、ヘルパーファージの使用は排除されうる(Chasteen et al., "Eliminating Helper Phage From Phage Display," Nucleic Acids Res 34:el45 (2006)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0074】
標識は、細菌またはバクテリオファージの表面のグリカンを認識しかつ検出可能な標識を有するレクチンを用いて実行されうる。あるいは、標識する工程は、細菌またはバクテリオファージの表面のグリカンを認識しかつ検出可能な標識を有する抗体を用いて実行される。あるいは、関連するタンパク質標的(例えば、レクチン、抗体)を96穴プレートの表面などの固体支持体に固定化することにより、標的の1つに結合するタンパク質をその表面に呈示する細胞またはファージは残留し、その一方で他の細胞またはファージは洗浄工程により除去される。残留する細胞またはファージは溶出され、より多くの細胞(細胞を培養することにより)またはファージ(ヘルパーファージによる細菌感染により)を産生するために用いられ、そして関連する(すなわち結合する)細胞またはファージで濃縮された細胞またはファージの混合物を産生することができる。これらの工程の繰り返しの循環は、「パニング」と呼ばれる。
【0075】
本発明のこの局面は、迅速かつ費用効果の高い方法で改変された細菌細胞株が多様なグリカンおよび糖タンパク質を産生する、糖タンパク質の細胞表面呈示およびグリコファージディスプレイによるスクリーニングを可能にする。これらのアッセイは、定量的なハイスループットのグリカン解析および所望の表現型を与える変異体の迅速な単離を可能にする。これらのアッセイの根底にある前提は、細胞表面呈示とファージディスプレイの両方が表現型(すなわち、タンパク質活性またはグリコシル化などの修飾)リンケージに対して唯一の遺伝子型(すなわち、DNA)を創出するということである。この遺伝子型と表現型との関係は、自然選択に類似するインビトロ選択と呼ばれる工程でタンパク質の大きなライブラリーをスクリーニングしかつ増幅させることを可能とする。これらの呈示技術は、少なくとも2つの異なる種類のライブラリーをスクリーニングするために用いられうる。第1の戦略は、糖タンパク質自体のライブラリー(すなわち、エラープローンPCR、DNAシャッフリングなどを用いる)を作製することであり、(同一だが)追加のグリカン構造の導入を受けて活性または安定性について改良されている可能性がある追加のグリコシル化部位を有する変異体を産生することができる。第2の戦略は、異なるグリカン構造の組合せライブラリーを細胞またはファージの表面に産生および呈示するように、それぞれの経路の酵素のライブラリー(すなわち、エラープローンPCR、DNAシャッフリングなどを用いて)または異なる酵素の組合せのライブラリーを作製することにより、異なるグリカン構造の大きなコレクションを作製することである。変異体糖タンパク質の表現型または変異体グリカン構造は、単離された細胞(すなわち、プラスミドの配列)またはファージ(すなわち、ファージミドとして公知のパッケージングされたDNAの配列)の遺伝子型と物理的に結合する。よって、ライブラリークローンの同定は、容易に決定される。
【0076】
細菌の細胞表面でのN-結合型糖タンパク質の呈示
ハイスループットスクリーニングのための大腸菌でのグリコシル化は、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性、真核生物のフリッパーゼ活性および真核生物のオリゴサッカリル活性を用いる上記の宿主細胞および方法によって実行されうる。しかしながら、スクリーニングの態様において、他の供給源由来の活性を利用することができる。例えば、そのような細菌の表面呈示は、外膜アンカーとしてC. ジェジュニのCjaAタンパク質を用いて実行されうる(図6A)。このタンパク質は、(i)C. ジェジュニ細胞と大腸菌細胞において外膜に局在し、(ii)大腸菌においてpglシステムによりグリコシル化されることから、主として適している(図6A)。CjaA上のN-グリカンヘプタサッカリドが表面に露出しているか否かを決定するために、pgl+大腸菌は、蛍光でラベルしたバージョンのレクチンSBA(SBA-Alexa Fluor 488複合体, Molecular Probes)で処理されうる。細胞はさらに、オリゴ糖をバクトプレノール脂質キャリアからリピドAコア分子へ移行する天然の大腸菌WaaLリガーゼを欠いた(Raetz et al., "Lipopolysaccharide endotoxins," Annu Rev Biochem 71:635-700 (2002)その全体が参照により本明細書に組み入れられる)(図6B)。このリガーゼは、緩やかな基質特異性を有することが公知であり、バクトプレノールピロリン酸からリピドAコア、外膜の外側にその後移行される分子への細菌ヘプタサッカリドの移行を担う。waaLを欠くpgl+細胞がCjaAプラスミドで形質転換され、CjaAを発現するよう誘導される、SBA-Alexa Fluor標識化の後に強い蛍光シグナルが検出される(図6C)。重要なことには、pgl-対照ベクターを保有するwaaL変異体のSBA-Alexa Fluor標識化の後には蛍光の完全な喪失が観察されたため、このシグナルは、pglシステムに依存している(図6C)。従って、グリカン解析は、ハイスループットスクリーニングに適した蛍光形式で生きている大腸菌を用いて直接実施されうる。
【0077】
コアグリカンのトリ-マンノース構造に対して高親和性を有するレクチンConcanavalin A(ConA)の蛍光バージョンを用いて、Man3GlcNAc2を大腸菌細胞の表面でアッセイすることができる。この戦略は、バクトプレノールピロリン酸結合型オリゴ糖がバクトプレノール脂質キャリアからリピドAコア分子へオリゴ糖を転移する大腸菌WaaLリガーゼの基質であるという観察に基づく(Raetz et al., '"Lipopolysaccharide endotoxins," Annu Rev Biochem 71:635-700 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)(図6B参照)。本発明者らは、バクトプレノールピロリン酸からリピドAコア、外膜の外側にその後移行される分子へのMan3GlcNAc2オリゴ糖の転移を予測する。大腸菌細胞の表面のMan3GlcNAc2の呈示は、CanAの蛍光バージョン(AlexaFluor-ConA)を用いる表面染色により達成される。これにより、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を用いてオリゴ糖生合成を検出しかつ定量化することが可能になるであろう。重要なことには、この測定は、フリッパーゼ活性またはOST活性に依存しない。蛍光SBAによる標識後の強いFACSシグナルによって明らかなように、細菌のオリゴ糖がTGl pgl+細胞の外表面に局在していることが観察されている。TGl pglmut細胞の同一の標識化は、同一の蛍光プロファイルをもたらし、オリゴ糖のリピドAへの転移がPglBに依存しなかったことを示した。最終的に、pgl発現ベクターを欠く対照細胞は、検出可能な細胞蛍光をもたらさなかった。本発明者らは、このアッセイが種々の誘導可能なプロモーターによる大腸菌でのオリゴ糖の発現の最適化を可能にし、必要であれば、細胞膜内への正確な挿入を誘導する種々のシグナルペプチドが用いられると予想する。例えば、本発明に記載の有望な発現結果にもかかわらず、異種膜タンパク質の高レベル発現用に特に改変されているC41(DE3)などの大腸菌宿主株(Miroux et al., "Over-production of Proteins in Escherichia coli: Mutant Hosts That Allow Synthesis of Some Membrane Proteins and Globular Proteins at High Levels," J Mol Biol 260:289-98 (1996)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)と組み合わせて各Alg膜タンパク質のSRP依存性標的化またはYidC依存性標的化(Luirink et al., "Biogenesis of Inner Membrane Proteins in Escherichia coli," Annu Rev Microbiol 59:329-55 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を用いることは、有用であると判明する可能性がある。さらに、waaLの欠失がリピドA へのオリゴ糖転移を排除することから(図6C)、改良された性質もしくは新たな性質(例えば、活性または安定性の増強)を有する糖タンパク質変異体、または改良された活性もしくは新たな活性(例えば、異なるまたは新規のグリカン構造を創出する能力)を有するグリコシルトランスフェラーゼ、フリッパーゼもしくはOSTなどの経路タンパク質(図10B参照)についてアッセイするために、ConA標識化の戦略を、表面に呈示される糖タンパク質と組合せて用いることができる(例えば、CjaA、図6参照)。これは以下のように成し遂げられうる: 関心対象のタンパク質またはペプチドをコードするDNAはそれ自体が表面タンパク質(例えば、C. ジェジュニ CjaA)であるか、細胞表面タンパク質(例えば、大腸菌CIyA、OmpA、OmpXなど)にインフレームで連結される。cDNAフラグメントが適正なフレームで翻訳されるようフラグメントを3つの可能性あるフレーム全てに挿入するということを確実にするために、多重クローニング部位が用いられることがある。細胞表面ハイブリッドタンパク質をコードする遺伝子は、発現ベクター内にクローニングされ、TGl大腸菌またはXLl-Blue大腸菌などの細菌細胞内に形質転換される。糖タンパク質変異体の作製についてに、いずれかの標的糖タンパク質をコードする多くの種々のDNA断片の細胞表面タンパク質遺伝子との融合としての取り込みが、関心対象のメンバーを単離することができる表面呈示ライブラリーを生じる。新規なまたは改良された活性を有する経路酵素の作製について、グリカン構造またはグリカン構造ライブラリー用のキャリアとして役立つレポーター細胞表面に呈示される糖タンパク質(例えば、CjaA)を発現させるプラスミドと共に、酵素のDNAライブラリーを細菌に同時形質転換する。次いで、表面呈示キャリアに付加される特定のグリカン構造の存在について、同時形質転換させた細菌をスクリーニングする。
【0078】
大腸菌グリコファージディスプレイシステム
本発明の別の局面は、グリカンについての細菌のファージディスプレイシステムに関する。グリコファージディスプレイシステムは、図7に示される1つの態様による新規の糖表現型の改変のための強力なツールである。これは、線維状ファージディスプレイの修飾版(Smith, G. P., "Filamentous Fusion Phage: Novel Expression Vectors that Display Cloned Antigens on the Virion Surface," Science 228: 1315-7 (1985)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に基づき、ここでマイナーコートファージタンパク質g3pのN末端に融合したN末端脂質アンカー配列を欠くC. ジェジュニのAcrAを発現するファージミド(Nita-Lazar et al., "The N-X-S/T Consensus Sequence is Required But Not Sufficient for Bacterial N-linked Protein Glycosylation," Glycobiology 15:361-7 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる) が構築された。大腸菌のペリプラズム空間へのSec依存性転位置のために、ペクチン酸リアーゼBシグナル配列(pelB)をacrAコード配列の上流にクローニングした。融合タンパク質の発現は、アラビノース誘導性かつグルコース抑制性のpBADプロモーターにより誘導された(Miyada et al., "Regulation of the araC Gene of Escherichia coli: Catabolite Repression, Autoregulation, and Effect on araBAD Expression," Proc Natl Acad Sci USA 81:4120-4 (1984)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。24アミノ酸リンカーをファージミドpAcrA-g3p上の発現AcrAとg3pドメインとの間に並置した。このリンカー配列は、ヘキサヒスチジンタグおよびエンテロキナーゼ切断部位と、その後に直接続く大腸菌supE株(例えば、XLl-Blue、ER2738またはTGl)内で80〜90%の効率でグルタミンとして転写される、アンバー停止コドン(UAG)を含んだ(Miller et al., "Effects of Surrounding Sequence on the Suppression of Nonsense Codons," J Mol Biol 164:59-71 (1983)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これらのベクター上でのファージF1遺伝子間領域(ori M13)の包含は、ヘルパーファージによる重複感染後に一本鎖ファージミドのパッケージングを可能にした。この技術は、改良されたもしくは新たな性質(例えば、活性または安定性の増加)を有する糖タンパク質変異体または改良されたもしくは新たな活性(例えば、異なるまたは新たなグリカン構造を作製する能力)を有するグリコシルトランスフェラーゼ、フリッパーゼまたはOSTなどの経路酵素についてアッセイするために用いられうる(図10B参照)。糖タンパク質変異体を作製するために、関心対象のタンパク質またはペプチドをコードするDNAをpIII遺伝子またはpVIII遺伝子に連結する。cDNAフラグメントが適正なフレーム内で翻訳されるようフラグメントを3つの可能性のあるフレーム全てに挿入することを確実にするために、多重クローニング部位を用いることがある。次いで、ファージ遺伝子および挿入DNAハイブリッドをTG1大腸菌またはXLl-Blue大腸菌などの細菌細胞内に形質転換する。ファージDNAのパッケージングおよびマイナー(pIII)またはメジャー(pVIII)コートタンパク質のいずれか上に外皮の一部として関連するタンパク質断片を有する成熟ビリオンの構成を可能にする、ヘルパーファージに大腸菌細胞が感染するまで、ファージ粒子は大腸菌細胞から放出されない。 pIII遺伝子またはpVIII遺伝子への多くの種々のDNAフラグメントの取り込みは、関心対象のメンバーを単離することができるライブラリーを生じる。種々のグリカン構造を合成する能力などの改良されたまたは新たな活性を有する経路酵素の作製のために、グリカン構造またはグリカン構造ライブラリー用のキャリアとして役立つレポーターファージに呈示される糖タンパク質(例えば、N末端またはC末端glyc-tagを有するAcrAまたはMBP)を発現するプラスミドと共に、酵素のDNAライブラリーを細菌に同時形質転換する。同時形質転換した細菌は、ファージに呈示されるキャリアに付加した特定のグリカン構造の存在についてその後スクリーニングされるファージライブラリーを作製するために用いられる。
【0079】
上記開示は本発明を一般的に記載する。より具体的な記載を下記の実施例において提供する。実施例は、単に例示を目的として記載されており、本発明の範囲を限定するものとしては意図されていない。目的にかなっていると示唆されるまたは考えられる場合に、形式の変更および同等物への置換が企図される。本明細書において特定の用語が用いられているが、そのような用語は記述的な意味で意図されており、限定を目的とすることは意図されていない。
【実施例】
【0080】
実施例1−遺伝的に修飾された大腸菌におけるN-結合型タンパク質のグリコシル化
Wackerらの実験を本明細書で再現する。ここでC. ジェジュニ pgl遺伝子座を大腸菌に機能的に移行し、これらの細胞にN-結合型タンパク質のグリコシル化を行う能力を与えた(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これらの研究のために、プラスミドpACYC184-pgl(pgl+)および必須OSTをコードするpglB遺伝子に変異が挿入されているpACYC184-pglに由来する対照プラスミド(pACYC184-pglB::kan; pgl-)を用いた。BL21(DE3)大腸菌細胞は、C. ジェジュニの糖タンパク質 PEB3をコードする第2のベクターと共にpgl+ベクターまたはpgl-ベクターのいずれかで共形質転換させた。HisでタグをつけたPEB3をpgl+細胞およびpgl-細胞のペリプラズム中で発現させ、ニッケル親和性クロマトグラフィー; Ni- NTA Spin Kit(QIAGEN)を用いてペリプラズム画分から精製した。精製したPEB3を連続的に希釈し、抗ポリヒスチジン抗体(Sigma)を用いるウエスタンブロッティングにより検出した。グリコシル化されたPEB3をヘプタサッカリドグリカンの末端α結合型GalNAcに結合するGalNAc特異的レクチンダイズ凝集素(SBA)を用いて検出した。予想通りに、PEB3はpgl+細胞とpgl-細胞の両方で効率的に発現しているが(図3A)、pgl+細胞由来のPEB3のみがグリカンの末端α結合型GalNAcと結合し十分にグリコシル化されたタンパク質を指し示すレクチンSBAと交差反応する(図3B)ことが観察された。
【0081】
実施例2−糖を改変した大腸菌におけるペプチドタグによるMBPのN-結合型グリコシル化
大腸菌マルトース結合タンパク質(MBP)を4つの連続したグリコシル化シークオンをコードする遺伝子

とpTRC99A[Amersham Biosciences]のSacI部位およびHindIII部位で融合させた。遺伝子は、2個のグリシン残基によって隔てられる4つの連続したDQNAT SEQ ID NO: 14ペプチドのペプチドタグをコードする。DQNAT(SEQ ID NO: 14)シークオンは、インビトロ実験の過程でPglBにより効率的にグリコシル化された(Chen et al., "From Peptide to Protein: Comparative Analysis of the Substrate Specificity of N-linked Glycosylation in C. jejuni," Biochemistry 46:5579-85 (2007)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。MBPのC末端に融合したそのようなタグは、さらに精製用のC末端の6×Hisタグによって付加され、pACYC-pglおよびpACYC-pglmut(PglB W458A、D459A)により形質転換されたBL21(DE3)大腸菌で発現した(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、C. ジェジュニ 糖タンパク質 cjAcrA、MBPの成熟ドメインの前にN末端タグを有するMBP、C末端タグを有するその天然の分泌シグナルペプチドを欠くMBP、ならびにC末端タグおよびTat特異的(ssTまたはA)シグナルペプチドを有するMBPおよび緑色蛍光タンパク質(GFPmut2)を同じ方法で発現させ、ニッケル親和性クロマトグラフィー(Ni-NTA Spin Kit、Quiagen)によって精製した。タンパク質に対する抗HIS血清(Promega)および細菌ヘプタサッカリドに対して産生されるhR6P血清によるウエスタンブロットによって、成熟MBPのN末端またはC末端のタグがグリコシル化されると決定された。pACYC-pglmutで形質転換された大腸菌で産生させたMBPと分泌シグナルペプチドを欠く大腸菌で産生されたMBPのどちらもグリコシル化されていないため、グリコシル化は、機能的PglBおよびペリプラズムへの分泌の両方に依存していた。この方法で分泌の標的とされるMBPおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)のグリコシル化によって明らかなように、グリコシル化は、ツインアルギニン転移(Tat)経路を介して生じる。抗ヘプタサッカリド血清は、複数の付加N-グリカンに特有である少なくとも3本の別々のバンドを示した。
【0082】
これらの結果は、4つの連続したD-X1-N-X2-Tシークオンを含むペプチドがインビトロ試験の過程でPglBにより効率的にグリコシル化されたことを示す(Chen et al., "From Peptide to Protein: Comparative Analysis of the Substrate Specificity of N-linked Glycosylation in C. jejuni," Biochemistry 46:5579-85 (2007)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。MBPのC末端に融合したGlycTagをpgl+大腸菌およびpgl-大腸菌で発現させ、20 mg/Lまで精製した。結果として得られるタンパク質を複数の部位で効率的にグリコシル化した(図4Cおよび4D)。GlycTagをMBPのN末端に移動した際に、同様の結果が見られた。pgl-大腸菌で生じたまたは分泌シグナルペプチドなしで発現したMBP-GlycTag融合体はグリコシル化されず(図4C)、このことはグリコシル化がPglBおよびペリプラズムへの輸送のそれぞれに依存することを確信させた。Tat依存性輸送の標的とされるMBPおよびGFPのグリコシル化によって明らかなように、GlycTagは、ツインアルギニン転移(Tat)経路などの他の分泌経路に適合した(図4C)。特定の局面において、MBP上のGlycTagのグリコシル化は、天然の糖タンパク質C. ジェジュニ AcrAのグリコシル化よりさらに効率的である(図4C)。MBPは最近、複合糖質ワクチン用のモデルタンパク質キャリアとして実証されている(Fernandez et al., "Potential Role for Toll-like Receptor 4 in Mediating Escherichia Coli Maltose-binding Protein Activation of Dendritic Cells," Infect lmmun 75: 1359-63 (2007)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)ことから、MBP-GlycTag融合体が病原性細菌C. ジェジュニに対する、または新規グリカン構造を生じるため他の感染性病原体に対する強力な複合糖質ワクチンとして役立ちうると予想される。GlycTagがN末端およびC末端の両方に導入され、MBP内の許容部位に挿入される場合には、タンパク質当たり12個ものグリカンが可能となる(Betton et al., "Creating a Bifunctional Protein by Insertion of Beta-lactamase into the Maltodextrin-binding Protein," Nat Biotechnol 15:1276-9 (1997)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これらのMBP複合糖質は、天然に存在する任意の糖タンパク質よりはるかに多くのグリカンを含むと考えられる(Ben-Dor et al., "Biases and Complex Patterns in the Residues Flanking Protein N-Glycosilation Sites," Glycobiology 14:95-101 (2004)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0083】
実施例3−大腸菌におけるIgG M18.1グリコシル化
本実施例は、糖を改変させた大腸菌のペリプラズムにおけるヒト糖タンパク質複合体のグリコシル化を記載する。具体的には、炭疽毒素に対する全長ヒト免疫グロブリン(IgG M18.1)をpMAZ360 M18.1で発現させ(Mazor et al., "Isolation of Engineered, Full-length Antibodies from Libraries Expressed in Escherichia coli," Nat Biotechnol 25:563-5 (2007)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、IgG重鎖(CH2)内の残基295でグルタミン残基が、プライマー

(それぞれSEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 18)を用いてアスパラギン酸に変異され、細菌グリコシル化モチーフD-X1-N-X2-S/T(図5A)が挿入されるように、部位特異的変異誘発(Quik Change Kit、Qiagen)を介して変異させた。pACYC-pglまたはpACYC-pglmut(PglB W458A、D459A)で形質転換したBL21(DE3)大腸菌のペリプラズムでの発現(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)の後に、IgG Ml8.1を細胞溶解物からプロテインA/Gアフィニティクロマトグラフィー(Nab Protein AG Spin Kit、Pierce)を介して精製し、非還元12%SDSゲルでのSDS-PAGEに供し、抗ヒトIgG(Promega)および細菌ヘプタサッカリドに対して産生されるhR6P抗血清を介する検出によりウエスタンブロットを行った。特徴的なIgGバンドパターンが、pACYC-pglまたはpACYC-pglmutで形質転換したBL21(DE3)大腸菌から単離したIgG M18.1についてみられた。pACYC-pglで形質転換したBL21(DE3)大腸菌由来のIgG Ml8.1のみが、細菌Nグリカン特異的抗血清(hR6P)と交差反応した。このpgl+細胞およびpgl-細胞についてのIgGバンドパターンは、図5Bおよび5Cに見られる。しかしながら、pgl+細胞由来のIgG M18.1のみが細菌Nグリカン特異的抗血清(hR6P)と交差反応した(図5Bおよび5C)。これらの結果は、ヒトIgGは糖を改変させた大腸菌細胞のペリプラズムでグリコシル化されうることを示す。したがって、様々な態様において、本発明は、糖を改変させた大腸菌細胞で産生させた、グリコシル化されたヒトIgGを提供する。
【0084】
実施例4−細菌細胞表面でのN-結合型糖タンパク質の呈示
大腸菌BW25113 waaC:Kanは、細胞表面に細菌ヘプタサッカリドを呈示させる外膜アンカーとしてプラスミドpCjaA由来のC. ジェジュニ CjaAタンパク質を発現させるpACYC-pgl (Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298:1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)で形質転換した。C. ジェジュニ CjaAのコード領域をC末端FLAGエピトープタグのコード領域を付加したpBAD18に挿入することにより、プラスミドpCjaAを構築した。呈示は、蛍光色素に結合させたダイズ凝集素(SBA-Alexa Fluor 488複合体、Molecular Probes)と共に細胞をインキュベートすることにより検出され、フローサイトメトリーにより解析された。pCjaAおよびpACYC-pglmut(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)またはpCjaA単独で形質転換した大腸菌BW25113 waaC:Kanは、蛍光標識をもたらさなかった。pACYC-pglまたはpACYC-pglmutいずれかで形質転換されたプラスミドpCjaA由来のC. ジェジュニ CjaAタンパク質を発現する大腸菌BW25113 waaC:Kan由来の総細胞タンパク質(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる) をウエスタンブロット解析に供し、続いて細菌ヘプタサッカリドに対して産生されたhR6P抗血清によってプローブすることにより、グリカン付加を確認した。
【0085】
実施例5− 大腸菌グリコファージディスプレイシステム
プラスミドpAcrA-g3p由来のAcrA-g3pの発現を、C. ジェジュニのグリコシル化遺伝子座の天然バージョン(pgl+)または変異バージョン(pglmut)いずれかを保有す大腸菌TGl細胞で実施し、全細胞溶解物におけるAcrA-g3pの出現を解析した。AcrA-特異的抗血清による免疫ブロット解析は、50 mMアラビノースによる誘導の3、5および16時間後にTGl pgl+およびTGl pglmut両方の細胞溶解物中のシグナルを示した(図8Aおよび8B、レーン3から5)。約80 kDaの見かけの分子質量を有する抗AcrA交差反応性タンパク質は、80.8 kDaのAcrA-g3p融合タンパク質の計算質量によく対応した。C. ジェジュニ全細胞抽出物に対して産生され、ArcAのグリコシル化型に対して強い優先傾向を示すグリコシル化特異的抗血清(R12)で、同じ溶解物をプローブした(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298:1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる) (図8C)。ここで、約80 kDaの分子質量を有する免疫反応性のバンドは、誘導の3、5および16時間後のTGl pgl+細胞の全細胞溶解物においてのみ検出されうる(図8C、レーン3から5)。これらのデータは、AcrA-g3p融合タンパク質がC. ジェジュニ pglシステムによりグリコシル化されたことを証明する。
【0086】
実施例6−AcrA-g3pの時間依存性の発現およびグリコシル化
大腸菌TGlは、pAra-AcrA-g3pで構成されるプラスミド由来のg3pファージコートタンパク質とC. ジェジュニAcrAの融合体を発現させた。pAra-Acra-g3pでは、大腸菌のペリプラズムへのSec-依存性転移のために、ペクチン酸リアーゼBシグナル配列(pelB)をacrAコード配列の上流にクローニングした。融合タンパク質の発現をアラビノース誘導性かつグルコース抑制性のpBADプロモーターにより誘導した。24アミノ酸リンカーを発現AcrAとg3pドメインとの間に並置した。このリンカー配列は、ヘキサヒスチジンタグおよびエンテロキナーゼ切断部位と、その後に直接的に続く大腸菌supE株(例えば、TG1)でグルタミンとして転写されるアンバー停止コドン(UAG)を含んだ。これらのベクター上のファージF1遺伝子間領域(ori M13)の包含は、ヘルパーファージによる重複感染後の一本鎖ファージミドのパッケージングを可能にした。pAra-AcrA-g3pを持つTG1細胞をpACYC-pglまたはpACYC-pglmutのいずれかで形質転換し(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298: 1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、全細胞溶解物を非誘導性細胞、または50 mMアラビノースで1時間、3時間、5時間、および16時間誘導した細胞のいずれかから調製した。タンパク質を標準タンパク質と共に10%SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写し、AcrA特異的血清または細菌ヘプタサッカリドに対して産生されるR12抗血清で視覚化した。
【0087】
実施例7−SBAバイオパニングによるグリコファージ濃縮の定量化
pAra-AcrA-g3pおよびpACYC-pglまたはpACYC-pglmutのいずれかを持つTG1細胞から産生したファージ(Wacker et al., "N-linked Glycosylation in Campylobacter jejuni and its Functional Transfer into E. coli," Science 298:1790-3 (2002)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を、カラム精製のために固定化したダイズ凝集素(SBA)にアプライした。SBAパニング法の各画分に存在する総コロニー形成単位(CFU)は、新鮮なTG1細胞の感染により決定され、少なくとも独立する3試験の平均である。SBAパニングに供したファージの数および新鮮感染後に結果として生じるCFUは、6%未満で変動した。画分は以下であった:画分1、SBAカラムにアプライしたCFU; 画分2、SBA通過画分; 画分3および4、PBS洗浄工程; 画分5、6および7、30 mMガラクトースPBSによる洗浄工程; 画分8、9および10、300 mMガラクトースPBSによる溶出工程。以下のように、AcrAの存在を抗AcrA血清で視覚化し、細菌ヘプタサッカリドの存在を細菌グリカンに対して産生されたR12抗血清で視覚化した: レーン1、未処置のファージ調製物; レーン2、SBA通過画分; レーン3および4、PBSでの洗浄画分; レーン5から7、30 mMガラクトースPBSでの洗浄画分; レーン8から10、300 mMガラクトースPBSでの溶出画分。レーン1から4では、1×108個のファージをSDSPAGEにアプライした。レーン5から10ではそれぞれ、pAra-AcrA-g3pおよびpACYC-pglを持つTG1細胞から調製した3.5×107個、1.2×104個、4.0×103個、1.3×106個、2.5×106個、1.2×106個のファージ、またはpAra-AcrA-g3pおよびpACYC-pglmutを持つTG1細胞から調製した1.5×106個、3.5×103個、3.0×103個、4.5×103個、0.5×104個、1.5×103個のファージを解析した。
【0088】
それぞれpAcrA-g3pを発現している、TGl pgl+およびTGl pglmutについて培養上清ml当たり<9.0×1011および<8.7×1011のファージ力価を得た。グリコシル化されたAcrA-g3p融合タンパク質がファージ調製物中に存在しているか否かを決定するために、グリコファージの特異的濃縮を可能にする、SBAバイオパニング法を開発した(図7)。それぞれpAcrA-g3pを発現するTGl pgl+またはTGl pglmut由来のファージ調製物をアガロース結合SBAと混合し、PBSおよび30 mMガラクトースを含むPBSで連続的に洗浄する工程により非結合ファージを取り除いた。ガラクトースは、2×102 M-1の平衡結合定数でSBAに結合し、したがって結合オリゴ糖と競合するよう用いられうる(Swamy et al., "Thermodynamic and Kinetic Studies on Saccharide Binding to Soya-Bean Agglutinin," Biochem J 234:515-22 (1986)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。同様の力価は、両方のファージ調製物の各洗浄画分で見出された。対照的に、pAcrAg3pを発現するTGl pgl+由来のファージについて300 mMガラクトースによる溶出では、103倍のファージ力価の増加(103から106 cfu/ml)が観察された一方で、pAcrA-g3pを発現するTGl pglmut由来のファージについて、力価は103 cfu/mlのバックグラウンドレベルに留まった(図9A)。このSBA結合ファージのPglB依存性の蓄積は、感染性グリコファージの産生とパニング法によるそれらの特異的濃縮を実証する。次に、両SBAパニング実験の画分におけるグリコシル化されたAcrA-g3p融合タンパク質の存在を確認した。総ファージタンパク質のSDS-PAGE分離後の免疫検出により、AcrA-g3pに対応するシグナルをAcrA特異的抗体で検出した(図9Aおよび9B、レーン1)。AcrA-g3p特異的バンドはまた、通過画分中およびPBS洗浄工程中にも存在した(図9Aおよび9B、レーン2、3および4)。pAcrA-g3pを発現するTGl pgl+から産生されるファージがパニングに使用された場合、R12抗血清による明確なグリコシル化特異的シグナルが溶出画分中に存在した(図9B、パネルc、レーン8、9および10)。R12抗血清は、ArcAのグリコシル化型に高い優先度を示すが、多量で存在する場合には非グリコシル化AcrAにも反応する(図9B、パネルcおよびd、レーン1から4)。重要なことには、高濃度のガラクトースで溶出したファージ調製物中で検出されたAcrA融合タンパク質(図9B、パネルc、レーン8、9および10)は、通過画分で検出された融合タンパク質よりゆっくり移動し(図9B、パネルc、レーン1)、タンパク質のグリコシル化と一致する。予想通り、pAcrA-g3pを発現するグリコシル化欠損株TG1 pglmut由来のファージは、R12反応性融合タンパク質を呈示しなかった(図9B、パネルd、レーン8、9および10)。したがって、表面にグリコシル化されたAcrAを呈示させる、機能的なC. ジェジュニ pglオペロンの存在下で産生したファージ、およびこれらのグリコファージをSBAパニングにより濃縮した。
【0089】
この方法の特異性をさらに試験するために、TG1(pgl+、pAcrA-g3p)により産生された精製グリコファージ(8×106 cfu)をTG1(pglmut、pAcrA-g3p)により産生されたグリコシル化されていないファージの過剰量(1から104倍)と混合し、シグナルSBAパニング工程に適用した。この実験設定は、それらのファージミドの限定解析によりグリコファージとグリコシル化されていないファージとの識別を可能にした。グリコファージは、AcrA-g3p発現カセット中にアンバー停止コドンを含む一方で、グリコシル化されていないファージは含んでいなかった。グリコファージがSBAパニングに適用された場合のみ、約96%(7.7×106±0.3×106)のファージが回収された。グリコファージを当量または102から104倍の過剰量のグリコシル化されていないファージと混合した場合、平均で96%(7.8×106±0.2×106)、93%(7.4×106±0.5×106)、および79%(6.3×106±1.0×106)のファージがそれぞれSBAにより結合され、続いて溶出液中に見出された。グリコシル化されていないファージ(8×1010)のみの適用は、SBAに結合する感染粒子の量(3.8×104±0.2×104)を有意に低下させた。溶出画分中のファージが実際にグリコファージであることを実証するために、グリコファージと非グリコシル化ファージとの識別を可能にするEagI-EheI消化により、各再構成に由来する12のファージミドを解析した。少なくとも11/12のファージミドが、TGl(pgl+、pAcrA-g3p)細胞により産生されるグリコファージ内に詰め込まれるファージミドpAcrA-g3pの制限パターンを示した。グリコファージのみが用いられる(陽性対照)溶出画分では、12/12のファージミドが糖ファージミド特異的DNA断片を示した。これらのデータは以下を明確に証明する: (i)N-結合型ヘプタサッカリドを保有するグリコシル化されたタンパク質は、線維状ファージ上の多価の呈示に適している; (ii)グリコファージ精製法は効率的に働き、SBAパニング1回当たり104もの濃縮倍数を得た; および(iii)グリコファージは、2回のSBAパニングに供したときでさえ、感染力を失わなかった。
【0090】
実施例8−大腸菌における酵母グリコシルトランスフェラーゼの発現および局在
Man3GlcNAc2オリゴ糖構造の産生は、大腸菌内で複数の真核生物のグリコシルトランスフェラーゼの機能的発現を必要とし、「経路工学(pathway engineering)」の古典的な例を示す(図10B参照)。
【0091】
第1のGlcNAcの脂質キャリアへのWecA-触媒性転移
バクトプレニルピロリン酸は、内膜の細胞質側でオリゴ糖の構築のためのキャリアとして役立つ(Feldman et al., "Engineering N-linked Protein Glycosylation With Diverse O Antigen Lipopolysaccharide Structures in Escherichia coli," Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 102:3016-3021 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。大腸菌では、バクトプレノール-PP-GlcNAcは、WecAタンパク質によりバクトプレノール-PとUDP-GlcNAcから作製される(Valvano, M. A., "Export of O-specific Lipopolysaccharide," Frontiers in Bioscience 8:S452-S471 (2003)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。したがって、Man3GlcNAc2オリゴ糖を作製する人工的な経路において、この内在性の基質を出発分子として用いることができる。還元性の末端GlcNAc残基は、真核生物のOSTによる基質認識に必須だが(Tai et al., "Substrate Specificity of the Glycosyl Donor for Oligosaccharyl Transferase," J Org Chem 66:6217-28 (2001)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、原核生物のOST基質の要求も満たす(Wacker et al,, "Substrate Specificity of Bacterial Oligosaccharyltransferase Suggests a Common Transfer Mechanism for the Bacterial and Eukaryotic Systems," Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 103:7088-7093 (2006)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0092】
実施例9−大腸菌における酵母Alg13/14の発現
最近、第2のGlcNAc残基の付加のためのβ1,4GlcNAcトランスフェラーゼが、酵母で同定されている(Bickel et al., "Biosynthesis of Lipid-linked Oligosaccharides in Saccharomyces cerevisiae - Alg13p AND Alg14p Form a Complex Required for the Formation of GlcNAc(2)-PP-dolichol," J. Biol. Chem. 280:34500-34506 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。この酵素は、Saccharomyces serevisiae(サッカロミセス・セレヴィシエ)由来のALG13遺伝子座およびALG14遺伝子座によりコードされる2つのタンパク質の複合体である。Alg14は膜内在性タンパク質であるのに対して、Alg13はそのAlg14との結合によってER膜の細胞質側と末梢で結合している。ΔdnaJ細胞を試験する理由は、dnaJの不活性化が、膜タンパク質の発現を増加させ、それらの発現に付随する重篤な細胞毒性を抑制することが公知であるためです(Skretas et al., "Genetic Analysis of G Protein-coupled Receptor Expression in Escherichia coli: Inhibitory Role of DnaJ on the Membrane Integration of the Human Central Cannabinoid Receptor," Biotechnol Bioeng (2008)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0093】
Alg13を発現するMC4100大腸菌細胞由来の総タンパク質は、プラスミドpBADl8-Cm由来のC末端6×HISタグを付加した。C末端FLAGエピトープタグを付加したAlg14を20,000×gで20分間、遠心分離に供した。上清は可溶性画分を意味し、ペレットは不溶性画分を意味する。可溶性画分を100,000×gで1時間さらに遠心し、上清とペレットをそれぞれ可溶性画分と膜画分として収集した。0.2%アラビノースによる誘導後、0時間、1時間、2時間および3時間で収集した可溶性細胞質画分を抗6×HIS抗体(Promega)でプローブし、Alg13-6×HISを検出した。ウエスタンブロット解析を用いてMC4100細胞およびMC4100ΔdnaJ細胞から単離した画分を比較し、抗FLAG抗体でプローブし、誘導後3時間で収集したAlg14-FLAGを検出した。細胞質におけるAlg13の可溶性の発現(図11A)と内膜におけるAlg14の正確な挿入(図11B)が観察された。
【0094】
次に、形質転換した大腸菌細胞に由来する抽出物でGlcNAcトランスフェラーゼ活性を試験し(Bickel et al., "Biosynthesis of Lipid-linked Oligosaccharides in Saccharomyces cerevisiae - Algl3p and Algl4p Form a Complex Required for the Formation of GlcNAc(2)-PP-dolichol," J. Biol Chem. 280:34500-34506 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、3H-GlcNAcによる細胞の標識および標準的な方法を用いる糖脂質の解析によりバクトプレノール-PP-GlcNAc2のインビボでの形成を解析する(Bickel et al., "Biosynthesis of Lipid-linked Oligosaccharides in Saccharomyces cerevisiae - Alg13p AND Alg14p Form a Complex Required for the Formation of GlcNAc(2)-PP-dolichol," J Biol. Chem. 280:34500-34506 (2005)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0095】
実施例10−大腸菌におけるAlg1およびAlg2の発現
本発明の工程は、活性型Alg1タンパク質、βl,4マンノシルトランスフェラーゼ、およびオリゴ糖へのα1,3マンノース残基とα1,6マンノース残基の両方の付加を触媒する二機能性のAlg2マンノシルトランスフェラーゼの発現をさらに必要とする。これらの酵素はそれぞれ以前に、大腸菌において活性型で発現している(O'Reilly et al., "In vitro Evidence for the Dual Function of Alg2 and Alg11: Essential Mannosyltransferases in N-linked Glycoprotein Biosynthesis," Biochemistry 45:9593-603 (2006)およびWilson et al., "Dolichol is Not a Necessary Moiety for Lipid-linked Oligosaccharide Substrates of the Mannosyltransferases Involved in In vitro N-linked-oligosaccharide Assembly," Biochem J 310 (Pt 3):909-l6 (1995)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0096】
C末端6×HISタグと、Alg2の場合、N末端チオレドキシン(TrxA)可溶性タグがそれぞれ付加されたAlg1およびAlg2を発現するMC4100ΔdnaJ大腸菌細胞由来の総タンパク質を20,000×gで20分間の遠心分離に供し、上清を収集し、100,000×gで1時間さらに遠心し、この遠心からのペレットを膜画分として収集した。膜画分を誘導後3、4および5時間で細胞から回収した。ブロットを抗6×HIS抗体(Promega)でプローブした。図12に示すように、それぞれ大腸菌の内膜に正確に集まる。
【0097】
次に、確立されたプロトコールに従って(O'Reilly et al., "In vitro Evidence for the Dual Function of Alg2 and Alg11 : Essential Mannosyltransferases in N-linked Glycoprotein Biosynthesis," Biochemistry 45:9593-603 (2006)およびSchwarz et al., "Deficiency of GDP-Man: GlcNAc2-PP-dolichol Mannosyltransferase Causes Congenital Disorder of Glycosylation Type Ik," Am J Hum Genet 74:472-81 (2004)、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)、形質転換した大腸菌細胞に由来する抽出物におけるマンノシルトランスフェラーゼ活性を試験する必要あると考えられる。
【0098】
予言的な実施例11−人工的なAlgオペロンの構築
各酵素が大腸菌で機能的に発現できることを立証した後に、上記4つの酵母酵素の全てをコードする遺伝子クラスターが1本のプラスミド鎖上に構築されると考えられる。4つのAlg酵素の共発現は、野生型、ΔdnaJ変異体、および以前に膜タンパク質発現用に最適化されているC41株(DE3)(Miroux et al., "Over-production of Proteins in Escherichia coli: Mutant Hosts That Allow Synthesis of Some Membrane Proteins and Globular Proteins at High Levels," J Mol Biol 260:289-98 (1996)、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)で実施されると考えられる。本発明者らは、4つのAlg酵素の共発現はバクトプレノール-PP-GlcNAc2Man3のインビボでの形成をもたらすものと予想する。このことは、細胞を30分間37℃で3H-マンノースで代謝標識することによって確認されると考えられる。バクトプレノール-結合型オリゴ糖は、抽出され、遊離され、そして、その全体が参照により本明細書に組み入れられるKorner et al., "Abnormal Synthesis of Mannose 1-phosphate Derived Carbohydrates in Carbohydrate-deficient Glycoprotein Syndrome Type I Fibroblasts with Phosphomannomutase Deficiency," Glycobiology 8:165-71 (1998)に記載されているような高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって解析されると考えられる。
【0099】
本明細書において好ましい態様を詳細に図示しかつ記載しているが、発明の精神から逸脱することなく、様々な変更、追加、代替などがなされうることは当業者に明らかであり、したがって添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞であって、該真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性が、真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である、原核生物宿主細胞。
【請求項2】
ドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性が、Alg13活性およびAlg14活性を含む、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項3】
Alg13活性が、SEQ ID NO: 1または2のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項2記載の原核生物宿主細胞。
【請求項4】
Alg14活性が、SEQ ID NO: 3または4のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項2記載の原核生物宿主細胞。
【請求項5】
マンノシルトランスフェラーゼ活性が、Alg1活性およびAlg2活性を含む、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項6】
Alg1活性が、SEQ ID NO: 5または6のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項5記載の原核生物宿主細胞。
【請求項7】
Alg2活性が、SEQ ID NO: 7または8のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項2記載の原核生物宿主細胞。
【請求項8】
真核生物のフリッパーゼ活性をさらに含む、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項9】
真核生物のフリッパーゼ活性が、Rft1活性を含む、請求項8記載の原核生物宿主細胞。
【請求項10】
Rftl活性が、SEQ ID NO: 9または10のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項2記載の原核生物宿主細胞。
【請求項11】
真核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をさらに含む、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項12】
オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、STT3活性を含む、請求項11記載の原核生物宿主細胞。
【請求項13】
STT3活性が、SEQ ID NO: 11または12のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、請求項12記載の原核生物宿主細胞。
【請求項14】
関心対象のタンパク質をさらに含む、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項15】
真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性により、GlcNAc2、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、およびMan3GlcNAc2からなる群より選択されるオリゴ糖組成物が産生される、請求項1記載の原核生物宿主細胞。
【請求項16】
請求項1記載の原核生物宿主細胞により産生される、糖タンパク質。
【請求項17】
あるタンパク質と、該タンパク質に融合したD-X1-N-X2-Tモチーフを含む少なくとも1つのペプチドとを含む、糖タンパク質複合体であって、Dがアスパラギン酸であり、X1およびX2がプロリン以外の任意のアミノ酸であり、Nがアスパラギンであり、かつTがスレオニンである、糖タンパク質複合体。
【請求項18】
グリコシル化されたタンパク質を産生する方法であって、
真核生物のドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性および真核生物のマンノシルトランスフェラーゼ活性である、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む原核生物宿主細胞を提供する工程、および
グリコシル化されたタンパク質を産生するのに有効な条件下で原核生物宿主細胞を培養する工程
を含む、方法。
【請求項19】
ドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性が、Alg13活性およびAlg14活性を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
マンノシルトランスフェラーゼ活性が、Alg1活性およびAlg2活性を含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
原核生物宿主細胞が、真核生物のフリッパーゼ活性をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
真核生物のフリッパーゼ活性がRftl活性を含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
真核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性がSTT3活性を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
グリコシル化されたタンパク質が、ネイティブな抗原を認識し結合するFv部分と保存アスパラギン残基においてグリコシル化されるFc部分とを含むグリコシル化された抗体である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
細菌またはバクテリオファージをスクリーニングするための方法であって、
細菌の表面に1つまたは複数のグリカンを発現させる工程、
細菌の表面または細菌に由来するバクテリオファージの表面の1つまたは複数のグリカン上に標識を付着させる工程、および
ハイスループット形式で標識を解析する工程
を含む、方法。
【請求項27】
細菌が、ドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性およびマンノシルトランスフェラーゼ活性であるグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ドリキル結合型UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ活性が、Alg13活性およびAlg14活性を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
マンノシルトランスフェラーゼ活性が、Alg1活性およびAlg2活性を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
細菌がフリッパーゼ活性をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
フリッパーゼ活性が、Rftl活性またはPglK活性を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
細菌が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項33】
オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、PglB活性またはSTT3活性を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
細菌が、標識する工程および解析する工程に供される、請求項26記載の方法。
【請求項35】
バクテリオファージが、標識する工程および解析する工程に供され、方法が、その表面に1つまたは複数のグリカンを有するバクテリオファージを産生するのに有効な条件下で、細胞表面に1つまたは複数のグリカンを発現する細菌をヘルパーファージに感染させる工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項36】
表面に1つまたは複数のグリカンを有するバクテリオファージを濃縮する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
標識する工程が、細菌またはバクテリオファージの表面のグリカンを認識しかつ検出可能な標識を有するレクチンによって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項38】
標識する工程が、細胞またはバクテリオファージの表面のグリカンを認識しかつ検出可能な標識を有する抗体によって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項40】
ネイティブな抗原を認識し結合するFv部分と保存アスパラギン残基においてグリコシル化されるFc部分とを含む、グリコシル化された抗体。
【請求項41】
モノクローナル抗体である、請求項39記載のグリコシル化された抗体。
【請求項42】
ポリクローナル抗体である、請求項39記載のグリコシル化された抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−01】
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【図13−02】
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【図13−03】
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【図14−01】
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【図14−02】
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【図14−03】
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【図14−04】
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【図15−01】
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【図15−02】
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【図16−01】
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【図16−02】
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【図17−01】
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【図17−02】
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【図17−03】
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【図17−04】
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【図18−01】
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【図18−02】
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【図18−03】
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【図18−04】
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【図18−05】
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【公表番号】特表2011−508607(P2011−508607A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541578(P2010−541578)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030110
【国際公開番号】WO2009/089154
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510185136)コーネル リサーチ ファンデーション インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】