説明

原紙を含浸するための水性ポリマー組成物の使用

原紙を含浸するための水性ポリマー組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、原紙を含浸するための水性ポリマー組成物の使用であり、その際にこの水性ポリマー組成物は、水性媒体中でのポリマーAの存在でのモノマー混合物Mのラジカル開始乳化重合によって得ることができ、その際にポリマーAは、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%から構成されており、
かつその際にモノマー混合物Mは、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されている。
【0002】
本発明の対象は同様に、水性ポリマー組成物自体、原紙を含浸する方法並びに含浸原紙及び装飾紙を製造するための前記含浸原紙の使用である。
【0003】
パーティクルボードは、しばしば装飾用シート材料と積層され、かつ例えば家具の製造に使用される。装飾用シート材料は本質的には含浸原紙からなり、この含浸原紙は印刷インキで印刷されており、こうして所望の外観を有し、かつ一般的に保護皮膜で、例えば電子線硬化可能な塗料でコーティングされている。
【0004】
この装飾紙の応用技術的な性質は本質的には含浸原紙によって決定される。原紙の含浸は特に、原紙の強さを高め、印刷インキ及び保護皮膜との良好な相容性及び特に装飾紙中の層の良好な結合を生じさせるべきである。
【0005】
欧州特許出願公開(EP-A)第889 168号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第223 922号明細書からは、原紙を水性ポリマー分散液に含浸することが知られている。
【0006】
この用途のための結合剤として、少量のアクリル酸及びメチロールメタクリルアミドを含有するエマルションポリマーが市場で入手可能である(例えばAcronal(登録商標) S 305 D)。
【0007】
これまで知られた含浸原紙の場合に、これから製造された装飾紙の応用技術的な性質はしばしば、なお不満足である。また、これまで知られた含浸原紙は、高められた温度下での乾燥の際に望ましくない黄変傾向を有する。
【0008】
欧州特許出願公開(EP-A)第445 578号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第583 086号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第882 074号明細書には、ポリカルボン酸及びポリオールの水溶液が記載されている。原紙の含浸は、これらの刊行物から得ることができない。
【0009】
本発明の課題は、水性ポリマー組成物を用いて原紙を含浸する方法であって、技術水準の含浸原紙の欠点、特にその黄変傾向を有しない含浸原紙を提供する方法を提供することであった。
【0010】
それに応じて、冒頭に定義された方法が見出された。
【0011】
本発明によれば、水性媒体中でのポリマーAの存在でのモノマー混合物Mのラジカル開始乳化重合によって得ることができ、その際にポリマーAは、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%から構成されており、
かつその際にモノマー混合物Mは、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されている
水性ポリマー組成物が使用される。
【0012】
水性媒体中でのエチレン系不飽和モノマーのラジカル開始乳化重合の実施は、様々に既に記載されており、故に当業者に十分に知られている[このためには、Emulsionspolymerisation in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol. 8, p.659以降(1987); D.C. Blackley, in High Polymer Latices, Vol. 1, p.35以降(1966); H. Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, 5章, p.246以降(1972); D. Diederich, Chemie in unserer Zeit 24, p.135-142 (1990); Emulsion Polymerisation, Interscience Publishers, New York (1965); 独国特許出願公開(DE-A)第40 03 422号明細書及びDispersionen synthetischer Hochpolymerer, F. Hoelscher, Springer-Verlag, Berlin (1969)参照]。ラジカル開始水性乳化重合反応は、通常、エチレン系不飽和モノマーを分散助剤の併用下に、水性媒体中でモノマー小滴の形で分散分布させ、かつラジカル重合開始剤を用いて重合させるようにして行われる。本発明による当該水性ポリマー組成物の製造は、公知技術水準とは、特殊なモノマー混合物Mが特殊なポリマーAの存在でラジカル重合される点で相違する。
【0013】
本発明によれば、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%
から構成されているポリマーAが使用される。
【0014】
モノマーA1として、特に、炭素原子3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、それらの可能な無水物並びにそれらの水溶性塩、特にそれらのアルカリ金属塩、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、もしくはそれらの無水物、例えば無水マレイン酸、並びに前記の酸のナトリウム塩又はカリウム塩が考慮に値する。アクリル酸、メタクリル酸及び/又は無水マレイン酸が特に好ましく、その際にアクリル酸が殊に好ましい。
【0015】
本発明により使用されるポリマーAを製造するためには、少なくとも1つのモノマーA2として、特に単純には、モノマーA1とラジカル共重合可能なエチレン系不飽和化合物、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニル又は塩化ビニリデン、ビニルアルコール及び炭素原子1〜18個を有するモノカルボン酸のエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニル−n−ブチラート、ビニルラウラート及びビニルステアラート、炭素原子好ましくは3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸、炭素原子一般的に1〜12個、好ましくは1〜8個及び特に1〜4個を有するアルカノールとのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、例えば特にアクリル酸メチルエステル及びメタクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル及びメタクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル及びメタクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル及びメタクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸ペンチルエステル及びメタクリル酸ペンチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル及びメタクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸ヘプチルエステル及びメタクリル酸ヘプチルエステル、アクリル酸オクチルエステル及びメタクリル酸オクチルエステル、アクリル酸ノニルエステル及びメタクリル酸ノニルエステル、アクリル酸デシルエステル及びメタクリル酸デシルエステル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルエステル及びメタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、フマル酸ジメチルエステル及びマレイン酸ジメチルエステル又はフマル酸−ジ−n−ブチルエステル及びマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマル酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル並びにC4−8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン(ブタジエン)及びイソプレンが考慮に値する。挙げられたモノマーは、通例、モノマーA2の全量を基準として、合わせて≧50質量%、好ましくは≧80質量%及び特に好ましくは≧90質量%の割合となるか、又はそれどころかモノマーA2の全量を形成する主モノマーを形成する。通例、これらのモノマーは、水中に、標準状態[20℃、1atm(絶対)]で単に中程度ないし低い溶解度を有する。
【0016】
前記の条件下に高められた水溶性を有するモノマーA2は、少なくとも1つのスルホン酸基及び/又はそれらの相応するアニオンもしくは少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上でプロトン化された又はアルキル化されたそれらのアンモニウム誘導体を有するそのようなモノマーである。例示的に、アクリルアミド及びメタクリルアミド、さらにビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれらの水溶性塩並びにN−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリラートを挙げることができる。通常の場合に、前記の水溶性モノマーA2は単に改質モノマーとして、モノマーA2の全量を基準として、≦10質量%、好ましくは≦5質量%及び特に好ましくは≦3質量%の量で含まれている。
【0017】
ポリマーマトリックスの皮膜形成の内部強さを通常高めるモノマーA2は、通常、少なくとも1つのエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基又はカルボニル基又は少なくとも2つの非共役エチレン系不飽和二重結合を有する。これらの例は、ビニル基2個を有するモノマー、ビニリデン基2個を有するモノマー並びにアルケニル基2個を有するモノマーである。その際に二価アルコールとα,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、これらの中ではアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。非共役エチレン系不飽和二重結合2個を有するそのようなモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及びアルキレングリコールジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これに関連して特に重要であるのは、n−ヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート又はn−ヒドロキシブチルアクリラート及びn−ヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのようなメタクリル酸−C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸−C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートもしくはアセチルアセトキシエチルメタクリラートのような化合物でもある。しばしば、前記の架橋性モノマーA2は、モノマーA2の全量をその都度基準として、≦10質量%の量で、好ましくはしかしながら≦5質量%の量で、使用される。しかしながら、特に好ましくは、そのような架橋性モノマーA2はポリマーAの製造に全く使用されない。
【0018】
有利には、ポリマーAの製造のためには、モノマーA2として、
・アクリル酸及び/又はメタクリル酸と炭素原子1〜12個を有するアルカノールとのエステル 50〜100質量%、又は
・スチレン及び/又はブタジエン 50〜100質量%、又は
・塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50〜100質量%、
又は
・酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又はエチレン40〜100質量%を含有するそのようなモノマー混合物が使用される。
【0019】
本発明によれば有利には、ポリマーA中に重合導入されるモノマーA2の割合は≦10質量%又は≦5質量%である。特に有利には、ポリマーAは、全くモノマーA2を重合導入されて含有しない。
【0020】
ポリマーAの製造は、当業者によく知られており、かつ特に、例えば水中又は有機溶剤中での、ラジカル開始溶液重合によって行われる(例えばA. Echte, Handbuch der Technischen Polymerchemie, 6章, VCH, Weinheim, 1993又はB. Vollmert, Grundriss der Makromolekularen Chemie, 第1巻, E. Vollmert Verlag, Karlsruhe, 1988参照)。
【0021】
有利には、ポリマーAは、≧1000g/mol及び≦100000g/molの質量平均分子量を有する。ポリマーAの質量平均分子量が≦50000g/mol又は≦30000g/molである場合に好都合である。特に有利には、ポリマーAは、≧3000g/mol及び≦20000g/molの質量平均分子量を有する。ポリマーAの製造の際の質量平均分子量の調節は、当業者によく知られており、かつラジカル連鎖移動性化合物、いわゆるラジカル連鎖調節剤の存在でのラジカル開始水性溶液重合によって有利に行われる。また、質量平均分子量の測定は、当業者によく知られており、かつ例えばゲル浸透クロマトグラフィーによって行われる。
【0022】
水性ポリマー組成物を製造する際に、本発明によれば、ポリマーAの場合により部分量又は全量を重合容器中に装入することが可能である。しかしまた、ポリマーAの全量又は場合により残っている残量を重合反応中に計量供給することも可能である。ポリマーAの全量又は場合により残っている残量は重合容器に、その際に、不連続に1つ又はそれ以上の部分で、又は連続的に流量を同じか又は変えて、計量供給されることができる。特に有利には、ポリマーAの少なくとも部分量が重合反応の開始前に重合容器中に装入される。
【0023】
水性ポリマー組成物の製造のためには、その際に、ポリマーAが"現場で(in-situ)"、モノマー混合物Mの重合の前に、重合容器中で製造されるか、又は市場で入手可能なもしくは別個に製造されたポリマーとして直接使用されるかは、取るに足りない。
【0024】
本発明による水性ポリマー組成物の製造方法の範囲内で、しばしば、モノマー小滴並びにラジカル開始重合によって得られるポリマー粒子を水相中で分散分布されて保持し、かつ製造された水性ポリマー組成物の安定性をこうして保証する分散助剤が併用される。そのようなものとして、ラジカル水性乳化重合を実施するために通常使用される保護コロイド並びに乳化剤が考慮に値する。
【0025】
適した保護コロイドは、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体であるか又はビニルピロリドンを有するコポリマーである。別の適した保護コロイドの詳細な説明は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, p. 411-420, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961に見出される。本発明により使用されるポリマーAは、保護コロイドとしても作用しうるので、本発明によれば有利には、付加的な保護コロイドは使用されない。
【0026】
もちろん、乳化剤及び/又は保護コロイドの混合物も使用されることができる。しばしば、分散助剤として、相対分子量が保護コロイドに対比して通常1000未満である乳化剤が専ら使用される。これらはアニオン性、カチオン性又は非イオン性であってよい。もちろん、界面活性物質の混合物を使用する場合に、個々の成分は互いに相溶性でなければならず、これは、疑わしい場合には、少ない予備試験に基づいて調査されることができる。一般的に、アニオン性乳化剤は、それらの中で相互に及び非イオン性乳化剤と相溶性である。同じことは、カチオン性乳化剤についても当てはまるのに対し、アニオン性乳化剤及びカチオン性乳化剤はたいてい相互に不相溶性である。
【0027】
一般に使われている乳化剤は、例えば、エトキシル化されたモノアルキルフェノール類、ジアルキルフェノール類及びトリアルキルフェノール類(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)、エトキシル化脂肪アルコール(EO度:3〜50;アルキル基:C8〜C36)並びにアルキル硫酸塩(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシル化アルカノール(EO度:3〜30、アルキル基:C12〜C18)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩及びエトキシル化アルキルフェノール類(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。別の適した乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, p. 192-208, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961に見出される。
【0028】
さらに、一般式I
【化1】

[式中、R1及びR2はC4〜C24−アルキルを表し、かつ基R1又はR2の1つは水素を表してもよく、かつA及びBはアルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであってよい]で示される化合物が界面活性物質として判明している。一般式I中で、R1及びR2は好ましくは、炭素原子6〜18個を有する、特に炭素原子6、12及び16個を有する線状又は分枝鎖状のアルキル基又は水素原子を表し、その際にR1及びR2は双方とも同時に水素原子ではない。A及びBは好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンであり、その際にナトリウムイオンが特に好ましい。A及びBがナトリウムイオンであり、R1が炭素原子12個を有する分枝鎖状アルキル基であり、かつR2が水素原子又はR1である化合物Iが特に有利である。しばしば、モノアルキル化生成物50〜90質量%の割合を有する工業用混合物、例えばDowfax(登録商標) 2A1(Dow Chemical Companyの商標)が使用される。化合物Iは、一般に知られており、例えば米国特許(US-A)第4 269 749号明細書から及び商業的に入手可能である。
【0029】
好ましくは、本発明による方法のためには、非イオン性及び/又はアニオン性の乳化剤が使用される。
【0030】
通例、付加的に使用される分散助剤、特に乳化剤の量は、モノマー混合物Mの全量をその都度基準として、0.1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%である。
【0031】
本発明によれば、分散助剤の場合により部分量又は全量を重合容器中に装入することは可能である。しかしまた、分散助剤の全量又は場合により残っている残量を重合反応中に計量供給することも可能である。分散助剤の全量又は場合により残っている残量は重合容器に、その際に、不連続に1つ又はそれ以上の部分で、又は連続的に流量を同じか又は変えて、計量供給されることができる。特に有利には、分散助剤の計量供給は、重合反応中に、連続的に同じ流量で、特に水性モノマー乳濁液の成分として、行われる。
【0032】
本発明により使用されるモノマー混合物Mは、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されている。
【0033】
モノマーM1として、特に、グリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラート並びにC2〜C10−ヒドロキシアルキル基、特にC2〜C4−ヒドロキシアルキル基及び好ましくはC2−及びC3−ヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリラート及びヒドロキシアルキルメタクリラートが考慮に値する。例示的に、2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、3−ヒドロキシプロピルアクリラート、3−ヒドロキシプロピルメタクリラート、4−ヒドロキシブチルアクリラート及び/又は4−ヒドロキシブチルメタクリラートを挙げることができる。しかしながら、特に有利には、グリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラートがモノマーM1として使用され、その際にグリシジルメタクリラートが特に好ましい。
【0034】
本発明によれば、モノマーM1の場合により部分量又は全量を重合容器中に装入することは可能である。しかしまた、モノマーM1の全量又は場合により残っている残量を重合反応中に計量供給することも可能である。モノマーM1の全量又は場合により残っている残量は重合容器に、その際に、不連続に1つ又はそれ以上の部分で、又は連続的に流量を同じか又は変えて、計量供給されることができる。特に有利には、モノマーM1の計量供給は、重合反応中に、連続的に同じ流量で、特に水性モノマー乳濁液の成分として、行われる。
【0035】
本発明による水性ポリマー組成物を製造するためには、少なくとも1つのモノマーM2として、特に単純には、モノマーM1とラジカル共重合可能なエチレン系不飽和化合物、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニル又は塩化ビニリデン、ビニルアルコール及び炭素原子1〜18個を有するモノカルボン酸のエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニル−n−ブチラート、ビニルラウラート及びビニルステアラート、炭素原子好ましくは3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸、炭素原子一般的に1〜12個、好ましくは1〜8個及び特に1〜4個を有するアルカノールとのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、例えば特にアクリル酸メチルエステル及びメタクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル及びメタクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル及びメタクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル及びメタクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸ペンチルエステル及びメタクリル酸ペンチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル及びメタクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸ヘプチルエステル及びメタクリル酸ヘプチルエステル、アクリル酸オクチルエステル及びメタクリル酸オクチルエステル、アクリル酸ノニルエステル及びメタクリル酸ノニルエステル、アクリル酸デシルエステル及びメタクリル酸デシルエステル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルエステル及びメタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、フマル酸ジメチルエステル及びマレイン酸ジメチルエステル又はフマル酸−ジ−n−ブチルエステル及びマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマル酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル並びにC4−8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン(ブタジエン)及びイソプレンが考慮に値する。挙げられたモノマーは、通例、モノマーM2の全量を基準として、合わせて≧50質量%、好ましくは≧80質量%及び特に≧90質量%の割合となる主モノマーを形成する。通例、これらのモノマーは、水中に、標準状態[20℃、1atm(絶対)]で単に中程度ないし低い溶解度を有する。
【0036】
前記の条件下に高められた水溶性を有するモノマーM2は、少なくとも1つの酸基及び/又はそれらの相応するアニオンもしくは少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上でプロトン化された又はアルキル化されたそれらのアンモニウム誘導体を有するそのようなモノマーである。例示的に、炭素原子3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸及びそれらのアミド、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリルアミド及びメタクリルアミド、さらにビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれらの水溶性塩並びにN−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリラートを挙げることができる。通常の場合に、前記の水溶性モノマーM2は単に改質モノマーとして、モノマーM2の全量を基準として、≦10質量%、好ましくは≦5質量%及び特に好ましくは≦3質量%の量で含まれている。
【0037】
ポリマーマトリックスの皮膜形成の内部強さを通常高めるモノマーM2は、通常、少なくとも1つのN−メチロール基又はカルボニル基又は少なくとも2つの非共役エチレン系不飽和二重結合を有する。これらの例は、ビニル基2個を有するモノマー、ビニリデン基2個を有するモノマー並びにアルケニル基2個を有するモノマーである。その際に二価アルコールとα,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、これらの中ではアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。非共役エチレン系不飽和二重結合2個を有するそのようなモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及びアルキレングリコールジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これに関連してまた重要であるのは、例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートもしくはアセチルアセトキシエチルメタクリラートのような化合物である。しばしば、前記の架橋性モノマーM2は、モノマーA2の全量をその都度基準として、≦10質量%の量で、好ましくは≦5質量%の量で及び特に好ましくは≦3質量%の量でで、使用される。しかしながら、しばしば、そのような架橋性モノマーM2は全く使用されない。
【0038】
有利には、本発明によれば、モノマーM2として、
・アクリル酸及び/又はメタクリル酸と炭素原子1〜12個を有するアルカノールとのエステル 50〜99.9質量%、又は
・スチレン及び/又はブタジエン 50〜99.9質量%、又は
・塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、
又は
・酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又はエチレン40〜99.9質量%を含有するそのようなモノマー混合物が使用される。
【0039】
特に有利には、本発明によれば、モノマーM2として、
・炭素原子3〜6個を有する少なくとも1つのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸及び/又はそれらのアミド 0.1〜5質量%及び
・アクリル酸及び/又はメタクリル酸と炭素原子1〜12個を有するアルカノールとの少なくとも1つのエステル 50〜99.9質量%、
又は
・炭素原子3〜6個を有する少なくとも1つのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸及び/又はそれらのアミド 0.1〜5質量%及び
・スチレン及び/又はブタジエン 50〜99.9質量%、又は
・炭素原子3〜6個を有する少なくとも1つのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸及び/又はそれらのアミド 0.1〜5質量%及び
・塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、
又は
・炭素原子3〜6個を有する少なくとも1つのα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸及び/又はそれらのアミド 0.1〜5質量%及び
・酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又はエチレン 40〜99.9質量%
を含有するそのようなモノマー混合物が使用される。
【0040】
本発明によれば、モノマーM2の場合により部分量又は全量を重合容器中に装入することは可能である。しかしまた、モノマーM2の全量又は場合により残っている残量を重合反応中に計量供給することも可能である。モノマーM2の全量又は場合により残っている残量は重合容器に、その際に、不連続に1つ又はそれ以上の部分で、又は連続的に流量を同じか又は変えて、計量供給されることができる。特に有利には、モノマーM2の計量供給は、重合反応中に、連続的に同じ流量で、特に水性モノマー乳濁液の成分として、行われる。
【0041】
有利には、モノマーM1及びM2は共に、水性モノマー乳濁液の形のモノマー混合物Mとして使用される。
【0042】
本発明によれば有利には、モノマーM1の全量が0.1質量%〜5質量%及び特に0.5質量%〜3質量%及びそれに応じてモノマーM2の全量が95質量%〜99.9質量%及び特に97質量%〜99.5質量%であるモノマー混合物Mが使用される。
【0043】
ラジカル開始重合反応の開始は、当業者に水性乳化重合のためによく知られたラジカル重合開始剤(ラジカル開始剤)を用いて行われる。これらは原則的に過酸化物並びにアゾ化合物であってよい。もちろん、レドックス開始剤系も考慮に値する。過酸化物として、原則的に、無機過酸化物、過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩又はジアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばそれらのモノナトリウム塩及びジナトリウム塩、モノカリウム塩及びジカリウム塩又はアンモニウム塩又は有機過酸化物、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド、並びにジアルキルペルオキシド又はジアリールペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジ−クミルペルオキシドが使用されることができる。アゾ化合物として、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2′−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako Chemicals製のV-50に相当)が本質的に使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤として、前記の過酸化物が本質的に考慮に値する。相応する還元剤として、低い酸化状態を有する硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又は亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラート、例えばカリウムホルムアルデヒドスルホキシラート及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、脂肪族スルフィン酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩及び/又はナトリウム塩及びアルカリ金属水素硫化物、例えば硫化水素カリウム及び/又は硫化水素ナトリウム、多価金属の塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸並びに還元糖、例えばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンが使用されることができる。通例、使用されるラジカル開始剤の量は、モノマー混合物Mの全量を基準として、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%及び特に好ましくは0.2〜1.5質量%である。
【0044】
本発明によれば、ラジカル開始剤の場合により部分量又は全量を重合容器中に装入することは可能である。しかしまた、ラジカル開始剤の全量又は場合により残っている残量を重合反応中に計量供給することも可能である。ラジカル開始剤の全量又は場合により残っている残量は重合容器に、その際に、不連続に1つ又はそれ以上の部分で、又は連続的に流量を同じか又は変えて計量供給されることができる。特に有利には、ラジカル開始剤の計量供給は、重合反応中に、連続的に同じ流量で、特にラジカル開始剤の水溶液の形で、行われる。
【0045】
重合反応は、その際に、ラジカル開始水性乳化重合が、十分な重合速度で進行する温度条件及び圧力条件下に行われ;この重合速度はその際に、使用されるラジカル開始剤に特に依存する。有利には、ラジカル開始剤の種類及び量、重合温度及び重合圧は、ラジカル開始剤が、≦3時間、特に有利に≦1時間及び極めて特に有利に≦30分の半減期を有するように選択される。
【0046】
選択されるラジカル開始剤に依存して、モノマー混合物Mの本発明によるラジカル開始重合反応のための反応温度として、0〜170℃の全範囲が考慮に値する。その際に、通例、50〜120℃、特に60〜110℃及び有利に70〜100℃の温度が使用される。本発明によるラジカル開始重合反応は、1atm(1.01bar絶対)より低いか、同じか又は高い圧力で実施されることができるので、重合温度は100℃を上回ってよく、かつ170℃までであってよい。好ましくは、易揮発性モノマー、例えばエチレン、ブタジエン又は塩化ビニルは、高められた圧力下に重合される。その際に、圧力は、1.2、1.5、2、5、10、15bar(絶対)又はさらにより高い値を取ることができる。重合反応が減圧で実施される場合に、950mbar、しばしば900mbar及び頻繁に850mbar(絶対)の圧力に調節される。有利には、本発明によるラジカル開始重合は、1atm(絶対)で、不活性ガス雰囲気下、例えば窒素又はアルゴン下に実施される。
【0047】
通例、本発明による方法は有利には、重合容器中で、20〜25℃(室温)及び大気圧で不活性ガス雰囲気下に、使用される脱イオン水の少なくとも部分量、ラジカル開始剤の場合により部分量、モノマー混合物M及び/又はポリマーAの場合により部分量を装入し、それに引き続きこの装入混合物を、撹拌しながら適した重合温度に加熱し、その後、ラジカル開始剤、モノマー混合物M及び/又はポリマーAの場合により残っている残量もしくは全量を、重合混合物に計量供給するようにして行われる。
【0048】
本発明によれば有利には、ポリマーA対モノマー混合物Mの量比(固体/固体)は、10:90〜90:10、特に有利に20:80〜80:20及び殊に有利に40:60〜60:40である。
【0049】
水性反応媒体は原則的に、さらに少量の水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール類、ペンタノール類、しかしまたアセトン等を含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、本発明による方法はそのような溶剤の不在で実施される。
【0050】
モノマーM1及びM2の種類及び量の意図的な変更によって、当業者には、ポリマーMが−60〜270℃の範囲内のガラス転移温度もしくは融点を有する水性ポリマー組成物を製造することが本発明によれば可能である。ポリマーMのガラス転移温度もしくは融点はその際に本明細書の範囲内で、モノマー混合物Mの単独重合、すなわちポリマーAの不在での重合の際に得られるポリマーが有するガラス転移温度もしくは融点であると理解されるべきである。本発明によれば有利には、ポリマーMのガラス転移温度は、≧−20℃〜≦105℃及び好ましくは≧20℃〜≦100℃である。
【0051】
ガラス転移温度Tgは、ガラス転移温度の限界値を意味し、この温度はG. Kanig(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere, 190巻, p.1、式1)に従って分子量が増大するにつれてこの限界値の方へ向かう。ガラス転移温度もしくは融点は、DSC法に従って算出される(示差走査熱量測定法、20K/min、中点測定、DIN 53765)。
【0052】
Fox(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II] 1, 123頁及びUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie, 19巻, 18頁, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980による)に従って、せいぜい弱く架橋された混合ポリマーのガラス転移温度には次の良好な近似で当てはまる:
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+…xn/Tgn
ここでx1、x2、…xnは、モノマー1、2、…nの質量分率を表し、かつTg1、Tg2、…Tgnは、モノマー1、2、…nのその都度1つのみから構成されるポリマーのガラス転移温度[ケルビン度]を表す。たいていのモノマーのホモポリマーのTg値は、知られており、かつ例えばUllmann’s Ecyclopedia of Industrial Chemistry, 5巻, Vol. A21, 169頁, VCH Weinheim, 1992に挙げられており;ホモポリマーのガラス転移温度についての別の出典は、例えばJ. Brandrup, E.H. Immergut, Polymer Handbook, 1st Ed., J. Wiley, New York 1966, 2nd Ed. J.Wiley, New York 1975, 及び3rd Ed. J. Wiley, New York 1989)である。
【0053】
本発明による方法に従って入手できる水性ポリマー組成物は、しばしばポリマー組成物(ポリマーA、ポリマーM並びにポリマーMでグラフトされたポリマーAに相当)を有し、それらの最低造膜温度MFTは≧10℃〜≦70℃、しばしば≧20℃〜≦60℃又は好ましくは≧25℃〜≦50℃である。0℃未満のMFTはもはや測定できないので、MFTの下限はTg値によってのみ記載されることができる。MFTの測定は、DIN 53787に従って行われる。
【0054】
本発明により得られる水性ポリマー組成物は、通常、水性ポリマー組成物をその都度基準として、≧10及び≦70質量%、しばしば≧20及び≦65質量%及び頻繁に≧40及び≦60質量%のポリマー固体含量(ポリマーAの全量及びモノマー混合物Mの全量の総和)を有する。準弾性光散乱(ISO規格13321)を通じて算出された数平均粒子直径(累積z−平均)は、通例10〜2000nm、しばしば20〜1000nm及び頻繁に50〜700nmもしくは80〜400nmである。
【0055】
本発明によれば、水性ポリマー組成物の製造の際に、別の、当業者によく知られた任意の助剤、例えばいわゆる増粘剤、消泡剤、中和剤、緩衝物質、防腐剤、ラジカル連鎖移動性化合物及び/又は無機充填剤も使用されることができる。
【0056】
前記の方法に従って製造される水性ポリマー組成物は特に、原紙の含浸に適している。
【0057】
原紙は、本明細書の範囲内で、DIN 6730(1985年8月)に従ってシート状の、主に植物由来の繊維から本質的になり、多様な助剤を有する繊維状物質スラリーの脱水によってワイヤ上に形成され、その際にこうして得られた繊維フェルトが引き続いて圧縮され、かつ乾燥される原料であると理解されるべきである。助剤として、例えば当業者に知られた充填剤、染料、顔料、結合剤、蛍光増白剤、歩留まり向上剤、湿潤剤、消泡剤、防腐剤、殺スライム剤(Schleimbekaempfungsmittel)、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、疎水化剤等が使用される。得られるシート状原料の達成される坪量に応じて、原紙(坪量≦225g/m2)又は原板紙(坪量>225g/m2)とも呼ばれる。それに加えて、約150〜600g/m2の坪量を有し、原紙の品種並びに原板紙の品種を含む"厚紙"という概念もさらに一般に使われている。単純さの理由から、以下に"原紙"という概念は原紙、原板紙及び厚紙を含むものである。原紙は、すぐ使える紙とは、その表面が塗工液で処理されていないかもしくは印刷インキ及び保護皮膜が設けられていない点で相違する。
【0058】
原紙の含浸のためには、本発明による水性ポリマー組成物は原紙の少なくとも一面に均一に適用される。その際に、水性ポリマー組成物の量は、固体として計算して、原紙1m2あたり≧1g及び≦100g、好ましくは≧5g及び≦50g及び特に好ましくは≧10g及び≦30gのポリマー組成物が適用されるように選択される。特に有利には、水性ポリマー組成物の量は、固体として計算して、原紙中へのポリマー組成物の組み込みが、コーティングされた原紙の坪量を基準として、5〜70質量%、特に有利に10〜60質量%及び殊に有利に15〜50質量%であるように計量される。組み込み(単位%)は、その際に次のように算出される:原紙単位面積当たりのポリマー組成物(固体)の量×100/[原紙単位面積当たりのポリマー組成物(固体)の量+単位面積当たりの紙質量]。原紙上への水性ポリマー組成物の適用は、当業者によく知られており、かつ例えば原紙の浸漬によって又は原紙への噴霧によって行われる。
【0059】
水性ポリマー組成物の適用後に、含浸原紙は、当業者によく知られている方法で乾燥される。有利には、乾燥は、ポリマーMのガラス転移温度よりも高いか又は同じである温度で行われ、しかしその際に少なくとも70℃、有利に少なくとも80℃及び特に有利に少なくとも100℃である。乾燥過程はその際に有利には、コーティングされた原紙が、含浸原紙を基準として≦5質量%、好ましくは≦4質量%及び特に好ましくは≦3質量%の残留水分を有するまでの間にわたって乾燥されるように行われる。その際に、残留水分は、まず最初に含浸原紙を室温で秤量し、それに引き続きこれを130℃に2分間乾燥させ、それに引き続き冷却し、かつ再び室温で秤量することによって決定される。その際に、残留水分は、乾燥過程前の含浸原紙の質量を基準として乾燥過程前後の含浸原紙の質量差に100を掛けたものに相当する。
【0060】
含浸原紙("予備含浸物"とも呼ぶ)が装飾紙の製造に使用されるべき場合には、水性ポリマー組成物は原紙の片面のみ又は両面に適用されることができる。しかしまた、原紙を前記水性ポリマー組成物に浸漬することも可能である。有利には、前記水性ポリマー組成物は、原紙の両面に適用される。この予備含浸物から入手できる装飾紙は、例えば、家具又は家具部材の被覆に使用される。
【0061】
本発明による方法により含浸された原紙は、有利な性質、特に、技術水準の含浸原紙と比較して、明らかにより低い黄変傾向並びに明らかに改善されたz−方向の引張力を有する。
【0062】
本発明は、次の限定されない例に基づいて説明される。
【実施例】
【0063】
A.ポリマーAの製造
アンカー撹拌機、還流冷却器及び2つの計量供給装置を備えた4l 四つ口フラスコ中に、室温で窒素雰囲気下にイソプロパノール235g、脱イオン水42g並びに50質量%過酸化水素水溶液12.7gを装入した。それに引き続き、この装入溶液を、撹拌しながら85℃に加熱し、かつ同時に開始してフィード1を6時間かけて及びフィード2を8時間かけて、連続的に同じ流量で計量供給した。それに引き続き、イソプロパノール/水混合物約400gを留去し、脱イオン水200gを添加し、ポリマー溶液中で100℃の温度に達するまでイソプロパノール/水を留去した。それに引き続き、温度を保持しながら約1時間にわたって水蒸気をポリマー水溶液に導通した。
【0064】
フィード1は以下のものからなる:
脱イオン水 48.6g
アクリル酸 650g
イソプロパノール 276g
フィード2は以下のものからなる:
過酸化水素の50質量%水溶液 25.9g。
【0065】
こうして得られたポリマー水溶液は、50質量%の固体含量、1.5のpH値及び118mPasの粘度を有していた。ゲル浸透クロマトグラフィーによって算出された質量平均分子量は6600g/molであり、25.3のK値に相当する。
【0066】
固体含量を一般的に、約1gの試料を循環空気乾燥器中で120℃で2時間乾燥させることによって決定した。その都度2つの別個な測定を実施した。例において示された値は、双方の測定結果の平均値である。
【0067】
粘度は一般的に、Physica社のRheomatを用いて250s-1のせん断速度でDIN 53019によって23℃で決定した。
【0068】
pH値を、Schott社のhandylab 1 pHメーターを用いて決定した。
【0069】
ポリマーAのK値を、Fikentscher(ISO 1628-1)に従って決定した。
【0070】
ポリマーAの質量平均分子量の算出を、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行った(線形カラム:PSS社のSupremea M、溶離剤:0.08mol/l TRIS緩衝液 pH 7.0、脱イオン水、液体流量:0.8ml/min、検出器:ERC社の示差屈折計ERC 7510)。
【0071】
ポリマー粒子の平均粒子直径を、動的光散乱によって0.005〜0.01質量%の水性ポリマー分散液について23℃で、Malvern Instruments社、英国のAutosizer IICを用いて算出した。測定された自動相関関数の累積評価(累積z−平均)の平均直径が示される(ISO規格13321)。
【0072】
B.水性ポリマー組成物の製造
例1(B1)
アンカー撹拌機、還流冷却器及び2つの計量供給装置を備えた5l 四つ口フラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水202g、ポリマーAの水溶液750g並びに水酸化ナトリウムの50質量%水溶液18gを装入した。それに引き続き、この装入溶液を、撹拌しながら90℃に加熱し、フィード2 10.7gを添加した。5分後に、同時に開始して、フィード1及び3と、フィード2の残量とを2.5時間かけて、連続的に同じ流量で計量供給した。
【0073】
フィード1は以下のものからなる:
脱イオン水 375g
ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの28質量%水溶液(Cognis社のTexapon(登録商標) NSO) 26.8g
グリシジルメタクリラート 22.5g
スチレン 713g
アクリル酸 15.0g
ピロリン酸ナトリウム 25.0g
フィード2は以下のものからなる:
脱イオン水 39.9g
過硫酸ナトリウム 3.0g
フィード3は以下のものからなる:
脱イオン水 75.0g
ポリマーAの水溶液 750g
水酸化ナトリウムの50質量%水溶液 18.0g。
【0074】
供給終了後に、水性ポリマー組成物を75℃に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物に、残存モノマー除去のために、同時に開始して、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%水溶液15.0g及びアセトン二亜硫酸塩[アセトンと亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)とのモル反応生成物]の13質量%水溶液18.3gを、90分かけて連続的に同じ流量で添加した。引き続き、得られた水性ポリマー組成物B1を室温に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物を、125μm網を通してろ過した。それにより、凝塊約0.01gが除去された。
【0075】
得られた水性ポリマー組成物B1は、3.1のpH値を有し、固体含量は49.9質量%であり、かつ粘度は93mPasであった。平均粒度は204nmと決定された。
【0076】
例2(B2)
アンカー撹拌機、還流冷却器及び2つの計量供給装置を備えた5l 四つ口フラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水108g、ポリマーAの水溶液400g並びに水酸化ナトリウムの50質量%水溶液9.6gを装入した。それに引き続き、この装入溶液を、撹拌しながら90℃に加熱し、フィード2 5.7gを添加した。5分後に、同時に開始して、フィード1及び3と、フィード2の残量とを2.5時間かけて、連続的に同じ流量で計量供給した。
【0077】
フィード1は以下のものからなる:
脱イオン水 200g
Texapon(登録商標) NSOの28質量%水溶液 14.3g
グリシジルメタクリラート 12.0g
スチレン 208g
アクリル酸n−ブチル 172g
アクリル酸 15.0g
ピロリン酸ナトリウム 13.3g
フィード2は以下のものからなる:
脱イオン水 21.3g
過硫酸ナトリウム 1.6g
フィード3は以下のものからなる:
脱イオン水 40.0g
ポリマーAの水溶液 1467g
水酸化ナトリウムの50質量%水溶液 35.2g。
【0078】
供給終了後に、水性ポリマー組成物を75℃に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物に、残存モノマー除去のために、同時に開始して、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%水溶液8.0g及びアセトン二亜硫酸塩の13質量%水溶液9.7gを、90分かけて連続的に同じ流量で添加した。引き続き、得られた水性ポリマー組成物B2を室温に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物を、125μm網を通してろ過した。それにより、凝塊約0.2gが除去された。
【0079】
得られた水性ポリマー組成物B2は、3.1のpH値を有し、固体含量は49.5質量%であり、かつ粘度は72mPasであった。平均粒度は230nmと決定された。
【0080】
比較例1(V1)
ポリマーAの水溶液500gを、撹拌しながらトリエタノールアミン75gと均質に混合した。
【0081】
比較例2(V2)
アンカー撹拌機、還流冷却器及び2つの計量供給装置を備えた2l 四つ口フラスコ中に、室温で窒素雰囲気下に脱イオン水175.6gを装入した。それに引き続き、この装入物を、撹拌しながら90℃に加熱し、まず最初にフィード1 63.5g及びついでフィード2 5.7gを添加した。5分後に、同時に開始して、フィード1及び2の残量を2.5時間かけて、連続的に同じ流量で計量供給した。
【0082】
フィード1は以下のものからなる:
脱イオン水 200g
Texapon(登録商標) NSOの28質量%水溶液 14.3g
グリシジルメタクリラート 12.0g
スチレン 208g
アクリル酸n−ブチル 172g
アクリル酸 15.0g
ピロリン酸ナトリウム 13.3g
フィード2は以下のものからなる:
脱イオン水 21.3g
過硫酸ナトリウム 1.6g。
【0083】
供給終了後に、水性ポリマー組成物を75℃に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物に、残存モノマー除去のために、同時に開始して、t−ブチルヒドロペルオキシドの10質量%水溶液8.0g及びアセトン二亜硫酸塩の13質量%水溶液9.7gを、90分かけて連続的に同じ流量で添加した。引き続き、得られた水性ポリマー組成物V2を室温に冷却した。それに引き続き、水性ポリマー組成物を、125μm網を通してろ過した。それにより、凝塊約0.5gが除去された。
【0084】
得られた水性ポリマー組成物V2は、2.1のpH値を有し、固体含量は50.3質量%であり、かつ粘度は58mPasであった。平均粒度は195nmと決定された。
【0085】
C.応用技術的な試験
50g/m2の坪量を有するDIN A4判型の原紙を使用した。
【0086】
例及び比較例において得られた水性ポリマー組成物B1及びB2並びにV1及びV2を、脱イオン水で28質量%の固体含量に希釈した。引き続いて、この原紙を、長軸方向で実験室用パジング装置(Laborfoulard-Geraetes)を用いて、希釈された水性ポリマー組成物に、原紙が、固体として計算して1m2あたりポリマー組成物10gを含有するように浸漬した。得られた紙シートを、マチス炉(Matthis-Ofen)中で3分間、循環空気中で130℃で乾燥させた。使用されたポリマー組成物に応じて得られた紙シートを、以下に含浸紙B1、B1、V1並びにV2と呼ぶ。
【0087】
黄変試験
含浸紙から、室温で5cm幅及び12cm長さのストリップを切り出し、このストリップを乾燥器中で210℃に30秒間加熱した。室温に冷却した後に、こうして処理した含浸紙ストリップを、Lange社のLuci 100色彩計において、DIN 5033に従って測定した。黄変の強さの尺度として、いわゆるb値が記載され、これが高ければ高いほど、含浸紙の黄変がより強くなる。黄変試験の結果は第1表にまとめられている。
【0088】
z−方向の引張強さの測定
この測定を実施するために、含浸紙から2×2cmの大きさの正方形を切り出し、これらを24時間にわたって恒温恒湿室中で23℃及び相対大気湿度50%で貯蔵した。引き続いて、これらの紙の上面及び下面に、円形の113mm2の大きさの試験面を有する平らな合金鋼スタンプ(Edelstahlstempel)1個ずつを完全に等しく、接着剤(Loctite(登録商標) 401)を用いて接着し、合金鋼スタンプを垂直方向に室温で4時間にわたって1kgのおもりで負荷をかけた。それに引き続き、上面及び下面に完全に等しく接着された合金鋼スタンプを有する正方形の紙を、締付装置中へ導入し、その際に上方及び下方のスタンプを装置中に固定し、それに引き続き双方のスタンプを毎分75mmの速度で互いに逆方向に引っ張り、その際に含浸紙の層割れ時の生じる力(単位N/mm2)を測定した。その際に、含浸紙の引張強さが良好であればあるほど、層割れに必要な力はより大きくなる。引張強さ試験の得られた結果は、同様に第1表にまとめられている。
【0089】
第1表:結果のまとめ
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙を含浸するための水性ポリマー組成物の使用であって、この水性ポリマー組成物は、水性媒体中でのポリマーAの存在でのモノマー混合物Mのラジカル開始乳化重合によって得ることができ、その際にポリマーAは、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%から構成されており、
かつその際にモノマー混合物Mは、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されている、
原紙を含浸するための水性ポリマー組成物の使用。
【請求項2】
ポリマーA対モノマー混合物Mの量比が10:90〜90:10である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ポリマーAが、エチレン系不飽和のモノカルボン酸から100質量%構成されている、請求項1又は2のいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
モノマーA1として専らアクリル酸が使用される、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
ポリマーAが≧3000g/mol及び≦20000g/molの質量平均分子量を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
モノマー混合物MのモノマーM1及びM2が、モノマー混合物Mの重合によって得られるポリマーMが≧−20℃及び≦105℃のガラス転移温度を有するように選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
モノマーM1が、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、3−ヒドロキシプロピルアクリラート、3−ヒドロキシプロピルメタクリラート、4−ヒドロキシブチルアクリラート及び/又は4−ヒドロキシブチルメタクリラートの中から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
原紙を水性ポリマー組成物に含浸する方法において、水性媒体中でのポリマーAの存在でのモノマー混合物Mのラジカル開始乳化重合によって得ることができ、その際にポリマーAは、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%から構成されており、
かつその際にモノマー混合物Mは、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されている
水性ポリマー組成物を原紙に適用し、それに引き続き乾燥させることを特徴とする、
原紙を水性ポリマー組成物に含浸する方法。
【請求項9】
モノマー混合物MのモノマーM1及びM2を、モノマー混合物Mの重合によって得られるポリマーMが≧−20℃及び≦105℃のガラス転移温度を有するように選択する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
水性ポリマー組成物の量を、原紙1m2あたり、固体として計算してポリマー組成物≧1g及び≦100gが適用されるように選択する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
乾燥を、ポリマーMのガラス転移温度よりも高いか又は同じである温度で行い、しかしその際に少なくとも70℃である、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
残留水分が、コーティングされた原紙を基準として、≦5質量%である、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項8から12までのいずれか1項記載の方法により得ることができる原紙。
【請求項14】
装飾紙を製造するための、請求項13記載の原紙の使用。
【請求項15】
水性媒体中でのポリマーAの存在でのモノマー混合物Mのラジカル開始乳化重合による水性ポリマー組成物の製造方法であって、その際にポリマーAは、重合導入された形で
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸[モノマーA1] 80〜100質量%及び
b)モノマーA1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマー[モノマーA2] 0〜20質量%から構成されており、
モノマー混合物Mが、
i)少なくとも1つのエポキシド基及び/又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーM1 0.01〜10質量%、及び
ii)モノマーM1とは相違する少なくとも1つの別のエチレン系不飽和モノマーM2 90〜99.99質量%
から構成されていることを特徴とする、
水性ポリマー組成物の製造方法。
【請求項16】
ポリマーA対モノマー混合物Mの量比が10:90〜90:10である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれか1項記載の方法によって得ることができる水性ポリマー組成物。

【公表番号】特表2009−523201(P2009−523201A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549871(P2008−549871)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050185
【国際公開番号】WO2007/082819
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】