説明

厨房システム

【課題】天然ガスハイドレート(NGH)の分解によって得られる水を厨房システムに活用する。
【解決手段】厨房システム10は、NGHが貯蔵されたNGHタンク11と、NGHタンク11より供給されるNGHを分解して燃料ガスと水を生成するNGH分解装置と、燃料ガスを使用して発火するコンロ13a、グリル13b等のコンロシステム13と、燃料ガスを使用して発電する発電機14と、給湯器15と、NGH分解装置によって生成された水を一時的に貯水する貯水タンク16と、給湯器15からの温水又は冷水を給水するための蛇口17と、蛇口17の下方に設けられた流し台と、食材を保管するための食材保管庫19と、生ゴミ等を収容するためのゴミ保管庫20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房システムに関し、特に、天然ガスハイドレート(NGH:Natural Gas Hydrate)を燃料とする厨房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から燃料として天然ガスハイドレート(NGH)が注目されている(非特許文献1参照)。NGHは、メタン、エタン、プロパンなどを主成分とする天然ガスの分子(ゲスト)が水分子のクラスタ中に取り込まれた包接水和物であり、マイナス20℃の大気圧環境下で約170倍のガスを包蔵することができる。ガスエネルギーとしては液化天然ガス(LNG)がよく知られているが、LNGはマイナス162℃の極低温下で製造・貯蔵されるため、NGHは製造、輸送、貯蔵、ガス化というシステム全体面でLNGよりも有利な点が多い。また、NGHはガソリンなどに比べて二酸化炭素や大気汚染物質の排出量が少ないことから、クリーンエネルギーとして注目されている。
【非特許文献1】三井造船株式会社、"天然ガスハイドレート(NGH)−三井造船"、[online]、[平成18年4月14日検索]、インターネット<URL:http://www.mes.co.jp/mes_technology/ngh.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、屋台や祭事の出店等では、移動式の簡易な厨房が用いられている。このような厨房では、通常、熱源としてプロパンガスを用いている。調理に必要な水は、必要な量だけポリタンク等の容器に収納して搬入している。食材の保管は、常温で保管するか、ドライアイスや保冷剤が入ったクーラーバック或いは小型冷蔵庫を使用している。
【0004】
しかしながら、プロパンガスはガスボンベの形態で、また水は専用の容器に詰めて、それぞれ別々に持ち運ぶ必要があるため、搬送に多大な労力がかかるという問題があった。また、クーラーバッグによる食材の保管では長時間にわたる冷蔵が困難であり、小型冷蔵庫を用いる場合は発電機も用意する必要があるため、搬送の負担がさらに大きくなるという問題があった。特に、一般的な発電機はガソリンや軽油を燃料とするため、そのような燃料を用意する必要もある。加えて、ゴミを長期間保管できないため、ゴミ等の腐敗による悪臭の発生など、衛生面での問題もある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、NGHの分解によって得られる燃料ガスと水を活用した厨房システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、NGHが貯蔵されたNGHタンクと、前記NGHタンクより供給されるNGHを分解して燃料ガスと水を生成するNGH分解装置と、前記燃料ガスを使用して発火するコンロシステムと、前記NGH分解装置によって生成された水を貯水する貯水タンクと、前記貯水タンク内の水を供給するための蛇口と、前記蛇口の下方に設けられた流し台とを備えることを特徴とする厨房システムによって達成される。
【0007】
本発明の厨房システムは、前記NGH分解装置によって生成された水を使用して庫内を冷却する保管庫をさらに備えることが好ましく、前記保管庫の冷却に用いられた水が前記貯水タンクに貯水されるように構成されていることが特に好ましい。ここで、前記保管庫は、食材保管庫として用いることができ、ゴミ保管庫として用いることもできる。
【0008】
本発明の厨房システムは、前記燃料ガスによって駆動される発電機をさらに備えることが好ましい。これによれば、ガソリン等を燃料とする一般的な発電機を用意することなく電力を得ることができるので、種々の電気機器を手軽に利用することができる。
【0009】
本発明の厨房システムは、前記NGH分解装置によって生成された水を加熱する給湯器をさらに備えることが好ましく、NGH分解装置は、前記給湯器からの温水を前記NGH分解熱として使用することが特に好ましい。
【0010】
本発明の厨房システムは、キャスターをさらに備え、移動可能に構成されていることが好ましい。これによれば、屋台や祭事の出店として、厨房システムを容易に搬入することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厨房システムにNGH分解装置を実装し、NGHから得られる燃料ガスを厨房での燃料とし、NGHから得られる水を調理用及び保冷用とすることにより、従来の厨房システムに比べてより多くの水(NGH内に包含される水)を提供することが可能となる。また、NGHを補給するだけで燃料と水の両方を補給することになるため、水を補給するための手間を省くこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る厨房システム10の全体構成を概略的に示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、この厨房システム10は、NGHが貯蔵されたNGHタンク11と、NGHタンク11より供給されるNGHを分解して燃料ガスと水を生成するNGH分解装置12と、燃料ガスを使用して発火するコンロ13a、グリル13b等のコンロシステム13と、燃料ガスを使用して発電する発電機14と、給湯器15と、NGH分解装置12によって生成された水を一時的に貯水する貯水タンク16と、給湯器15からの温水又は冷水を給水するための蛇口17と、蛇口17の下方に設けられた流し台(シンク)18と、食材を保管するための食材保管庫19と、生ゴミ等を収容するためのゴミ保管庫20とを備えている。これらの設備のうち、コンロシステム13、蛇口17、及び流し台18は、カウンター21の上面に設置されており、NGHタンク11、NGH分解装置12、発電機14、貯水タンク16、食材保管庫19、及びゴミ保管庫20は、カウンター21の内部に設けられている。カウンター21の底部にはキャスター22が設けられており、カウンター21は移動可能に構成されている。
【0015】
図2は、厨房システム10内の各設備の接続構成を示す略ブロック図である。
【0016】
図2に示すように、NGHタンク11内のNGHは、NGH分解装置12に供給される。NGH分解装置12は、給湯器15からの温水を熱源として利用してNGHを分解し、燃料ガスと水を生成する。このとき得られる水は高圧の冷水である。NGH分解装置12により生成された燃料ガスは、燃料配管23を通ってコンロシステム13、発電機14、給湯器15にそれぞれ供給される。発電機14は、燃料ガスを用いて発電し、これにより得られた電力は照明やIH機器等、種々の電気機器に供給される。給湯器15は、冷水及び熱湯のいずれの供給も可能であり、冷水及び熱湯は蛇口17から提供される。また、NGH分解装置12により生成された水は、配水管24を通って貯水タンク16に供給されると共に、食材保管庫19、ゴミ保管庫20にも供給される。
【0017】
図3(a)及び(b)は、食材保管庫19及びゴミ保管庫20の基本構成をそれぞれ概略的に示す模式図である。
【0018】
図3(a)及び(b)に示すように、食材保管庫19及びゴミ保管庫20は、ボックス型の保管庫本体31と、保管庫本体31の周囲に巻回された冷却用配水管32と、保管庫本体の外壁面を配水管32の上から覆う断熱材33とを備えている。冷却用配水管32は、NGH分解装置12に接続された配水管24の延長部分である。図4に示すように、冷却用配水管32は保管庫本体31の表面に何重にも巻回されており、これにより保管庫の冷却効率が高められている。断熱材33は、冷却用配水管32の上から保管庫本体31を覆っている。NGH分解装置12からは高圧の水が得られるため、特にポンプを設けなくても冷却用配水管32内に水を流すことができる。NGH分解装置12で得られた冷水がこの配水管32内を流れることにより、保管庫本体31内は低温に保たれる。配水管32内を流れた冷水は、図2に示すように、貯水タンク16に運ばれ、最終的には給水、給湯に利用される。
【0019】
図3(a)に示す食材保管庫19によれば、夏場においても食材の鮮度を十分保つことができ、この食材を用いておいしい料理を提供することができる。また、図3(b)に示すゴミ保管庫20によれば、生ゴミの腐敗を防止し、特に悪臭を抑えることができ、衛生面の向上を図ることができる。なお、より強力な冷却能力が必要な場合には、電力や燃料ガスにより駆動する冷却装置を併用してもよい。この場合には、冷却装置を予備的に用いることで省電力化を図ることができる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンロシステム13の燃料としてNGHを使用し、NGHを分解するためのNGH分解装置12より副次的に得られる水を調理用の水として利用するのみならず、その水温を活かして保冷用の水としていることから、NGHの副生成物である水を有効に利用することが可能となる。また、NGHを補給するだけで燃料と水の両方を補給することになるため、水を補給する手間を省くこともできる。
【0021】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、これらも本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
【0022】
例えば、上記実施形態においては、NGHを分解するための加熱に給湯器からの温水を利用しているが、NGH分解装置12に電熱ヒータを取り付け、発電機14からの電力を利用して加熱してもよい。
【0023】
本発明が適用される厨房システムは、屋台の厨房、キャンピングカー内の厨房等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に係る厨房システム10の全体構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図2は、厨房システム10内の各設備の接続構成を示す略ブロック図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、食材保管庫19及びゴミ保管庫20の基本構成をそれぞれ概略的に示す模式図である。
【図4】図4は、食材保管庫19及びゴミ保管庫20の配管構成を模式的に示す略斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 厨房システム
11 NGHタンク
12 NGH分解装置
13 コンロシステム
13a ガスコンロ
13b ガスグリル
14 発電機
15 給湯器
16 貯水タンク
17 蛇口
19 食材保管庫
20 ゴミ保管庫
21 カウンター
22 キャスター
23 燃料配管
24 配水管
31 保管庫本体
32 冷却用配水管
33 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NGHが貯蔵されたNGHタンクと、
前記NGHタンクより供給されるNGHを分解して燃料ガスと水を生成するNGH分解装置と、
前記燃料ガスを使用して発火するコンロシステムと、
前記NGH分解装置によって生成された水を貯水する貯水タンクと、
前記貯水タンク内の水を供給するための蛇口と、
前記蛇口の下方に設けられた流し台とを備えることを特徴とする厨房システム。
【請求項2】
前記NGH分解装置によって生成された水を使用して庫内を冷却する保管庫をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の厨房システム。
【請求項3】
前記保管庫の冷却に用いられた水が前記貯水タンクに貯水されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の厨房システム。
【請求項4】
前記保管庫が食材保管庫であることを特徴とする請求項2又は3に記載の厨房システム。
【請求項5】
前記保管庫がゴミ保管庫であることを特徴とする請求項2又は3に記載の厨房システム。
【請求項6】
前記燃料ガスによって駆動される発電機をさらに備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の厨房システム。
【請求項7】
前記NGH分解装置によって生成された水を加熱する給湯器をさらに備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載の厨房システム。
【請求項8】
前記NGH分解装置は、前記給湯器からの温水を前記NGH分解熱として使用することを特徴とする請求項7に記載の厨房システム。
【請求項9】
キャスターをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の厨房システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−285568(P2007−285568A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111932(P2006−111932)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】