説明

厩廃棄敷材用処理用水の製造方法

【課題】効率よく厩廃棄敷材を発酵させる方法及びこの処理に用いる厩廃棄敷材用処理用水を提供する。
【解決手段】厩廃棄敷材に発酵水を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材を得る発酵工程、水に該発酵した該厩廃棄敷材を投入して曝気して曝気水を得る工程、該曝気水に岩石、腐葉土、炭を接触させて中間処理水を得る工程、該中間処理水に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水を得る工程を含み、該処理用水を得る工程で得られた処理用水を前記発酵水に代えて前記発酵工程に帰還適用し、前記発酵工程から処理用水を得る工程に至る工程を順次繰り返えす、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法であり、これにより得られた厩廃棄敷材用処理用水である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厩廃棄敷材の処理に用いる厩廃棄敷材用処理用水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における厩廃棄敷材は、厩からの廃棄物である馬糞尿が混合した敷材をいい、この敷材は木質チップ、竹チップ、稲藁、麦藁などで構成される。この厩廃棄敷材は発酵処理などにより臭いを弱めて牛舎の敷材や土壌改良材として再利用することが行われている。
【0003】
このため効率よく厩廃棄敷材を発酵させる方法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−12387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、効率よく厩廃棄敷材を発酵させる方法及びこの処理に用いる厩廃棄敷材用処理用水を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨とするところは、水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程0、
厩廃棄敷材に該発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A)を得る工程1、
水に発酵済厩廃棄敷材(AS)を投入し曝気して曝気水(B)を得る工程2、
該曝気水(B)を岩石、腐葉土、炭を含む接触材に接触させて中間処理水(C)を得る工程3、
該中間処理水(C)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水(S)を得る工程4
を含み、
前記工程4で得られた前記処理用水(S)を前記発酵水(H)に代えて前記工程1に適用し、前記工程1から前記工程4を1つのサイクルとして複数回繰り返えすことを特徴とし、
前記発酵済厩廃棄敷材(AS)が、各サイクル中にそれぞれ得られた発酵した厩廃棄敷材(A)から選択されたものである、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法であることにある。
【0006】
前記工程2は、前記曝気水(B)を循環用の管路を経由して循環させるとともに該曝気水(B)に前記接触材を接触させる工程であり得、該管路内に磁気発生機により磁場が作られ得、該管路内で前記曝気水(B)が、該磁場を通過し得る。
【0007】
また、本発明の要旨とするところは、水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程0、
厩廃棄敷材に該発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A´)を得る工程1´、
水を曝気して曝気水(B´)を得る工程2´、
該曝気水(B´)に岩石、腐葉土、炭、発酵済厩廃棄敷材(AS´)を含む接触材を接触させて中間処理水(C´)を得る工程3´、
該中間処理水(C´)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水を得る工程4´
を含み、
前記工程4で得られた前記処理用水を前記発酵水(H)に代えて前記工程1´に適用し、前記工程1´から前記工程4´を1つのサイクルとして複数回繰り返えすことを特徴とし、
前記発酵済厩廃棄敷材(AS´)が、各サイクル中にそれぞれ得られた発酵した厩廃棄敷材(A´)から選択されたものである、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法であることにある。
【0008】
前記工程2´は、前記曝気水(B´)を循環用の管路を経由して循環させるとともに該曝気水(B´)に前記接触材を接触させる工程であり得、該管路内に磁気発生機により磁場が作られ得、該管路内で前記曝気水(B´)が、該磁場を通過し得る。
【0009】
さらに、本発明の要旨とするところは、前記厩廃棄敷材用処理用水の製造方法により得られた処理用水からなる厩廃棄敷材用処理用水であることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、厩廃棄敷材に、前記厩廃棄敷材用処理用水を混ぜて好気発酵させる厩廃棄敷材の処理方法であることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、効率よく厩廃棄敷材を発酵させる方法及びこの処理に用いる厩廃棄敷材用処理用水が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法の態様を説明する。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。図1に示すように、本発明の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法は、水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程、厩廃棄敷材にこの発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A)を得る発酵処理の工程、水にこの発酵した厩廃棄敷材(A)を投入して曝気して曝気水(B)を得る曝気処理の工程、この曝気水(B)に岩石、腐葉土、炭を接触させて中間処理水(C)を得る接触処理の工程、この中間処理水(C)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水(S)となすpH調整の工程を含む。この処理用水は発酵の工程に帰還させて用いられる。図1に示す態様は、本発明において上記発酵処理の工程からpH調整の工程に至る一連の工程が定常的に繰り返し実施されている態様である。
【0013】
本発明の態様をさらに詳述するならば、工程4で得られた処理用水(S)を発酵水(H)に代えて工程1に適用し、工程1から工程4を順次繰り返えして、繰り返し最後の工程4
【0014】
弱酸性の発酵水(H)を得る工程0は、厩廃棄敷材に好気発酵した有機物由来の発酵菌と水とを含む混合物からなる処理水を混ぜて好気発酵させ、発酵後の厩廃棄敷材を水に投入して曝気して曝気水(B1)を得て、この曝気水(B1)に岩石、腐葉土、炭を含む接触材を接触させて中間処理水(C1)を得て、この中間処理水(C1)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の発酵水(H)を得る工程であってもよい。
【0015】
なお、工程0においては、厩廃棄敷材として好気発酵した厩廃棄敷材を用いてもよい。この好気発酵した厩廃棄敷材は、発酵用処理液と厩廃棄敷材とを混ぜて発酵させたものであってもよい。発酵用処理液としては、好気発酵した有機物由来の発酵菌と水とを含む混合物を用いることができる。この混合物は、例えば、厩廃棄敷材あるいは畜舎のし尿などの有機物含有物、と水との混合物を1〜数日間曝気して、この混合物中の厩廃棄敷材あるいは畜舎のし尿を好気発酵させることにより得ることができる。発酵用処理液として水を用いてもよい。発酵用処理液は本発明の別のステージで得られた処理溶液であってもよい。
【0016】
本発明の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法においては、サイクルの工程の繰り返し回数が5回以上であることが、この厩廃棄敷材用処理用水を用いて臭いの少ない発酵した厩廃棄敷材を得るうえでさらに好ましい。20回以上であることが臭いの少ない発酵した厩廃棄敷材を得るうえでなおさらに好ましい。100回以上であることが臭いの少ない発酵した厩廃棄敷材を得るうえで最も好ましい
【0017】
また、本発明の厩廃棄敷材用処理用水は、上記の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法で得られた処理用水からなる厩廃棄敷材用処理用水である。
【0018】
工程1は厩廃棄敷材に処理用水を混ぜて好気発酵させる工程であり、処理用水は生物反応的に活性化されており、2番目以降のサイクルではこの処理用水として工程4で得られた処理用水が帰還されて用いられる。この発酵は、厩廃棄敷材と処理用水とを所定の割合(例えば重量比1000:1)で混合し、所定の期間(例えば6日間)野積みと切り返しの攪拌を行なうことによりなされてもよいが、特開2002−60289号公報に開示されているような図2に示す発酵装置1を用いてより効率よく行うことができる。この処理用水の他に好気発酵用種菌(好気発酵用に選別された土壌菌群)を厩廃棄敷材に混入してこの厩廃棄敷材の発酵に用いてもよい。
【0019】
図2において、符号1Aから1Eは、投入口2Aおよび排出口2Bを備えた密閉型槽2内に上下多段に設けられた落し戸式切り返し手段である。切り返し手段の段数は、これに限定されるものではなく、例えば4段であってもよい。各切り返し手段は、水平方向に間隔をあけて設けられた、通気性を有する複数枚の棚板3を備え、各棚板3は、棚板3の長手方向と直交する回転軸3Aを中心として、図2中、点線で示すように、同時に360度回転可能になっている。
【0020】
符号4は、厩廃棄敷材(以下、単に敷材ともいう)5を、最上段の切り返し手段1A上に堆積させる投入コンベア、符号6は、最上段の切り返し手段1Aの上方に設けられた掻き均し手段である。掻き均し手段6は、エンドレスに周回するコンベアに間隔をあけて互いに平行に固定された均し板7を備えている。符号8は、最下段の切り返し手段1Eの下方に設けられた、スクリューコンベアからなる送り手段である。そして、符号10は、送り手段8によって槽2外に取り出された畜舎廃棄敷材を、最上段の切り返し手段1Aに循環供給する、バケットコンベアからなる敷材循環手段である。
【0021】
槽2内には、最上段の切り返し手段1Aの棚板3上に堆積した敷材5に、処理用水を供給するスプレー(図示せず)が設けられている。最上段の切り返し手段1Aの棚板3上に堆積した敷材5に対する処理用水の供給量は敷材5の循環1サイクル当たり0.5〜3重量%が好ましい。0.8〜1重量%がさらに好ましい
【0022】
敷材は、以下のようにして運転されて、発酵した厩廃棄敷材となる。前工程で所定の大きさに粉砕、混合された敷材5は、投入コンベア4により投入口2Aから掻き均し手段6を通過して最上段の切り返し手段1A上に投入される。最上段の切り返し手段1A上に堆積した敷材5は、エンドレスに周回する掻き均し手段6によって一定の層厚に均される。所定時間経過後、敷材5は、切り返し手段1Aの棚板3が360度回転することによって、回転のあいだに次段の切り返し手段1B上に自然落下する。これによって、敷材5の切り返しが自然に行われる。なお、敷材5の切り返しのタイミングは、敷材5の発酵熱に基づいて行われる。次いで、敷材5は、所定時間経過後、次段の切り返し手段1Bの棚板3が360度回転することによって、回転のあいだに更に次段の切り返し手段1C上に自然落下し、このときにも敷材5の切り返しが自然に行われる。
【0023】
このようにして、敷材5は、順次、次段の切り返し手段上に落下し、移送されるに従って、徐々にバクテリアによる分解が進行し、最下段の切り返し手段1Eから送り手段8によって排出口2Bから槽2外に取り出される。このようにして、槽2外に取り出された敷材5は、敷材循環手段10によって再び投入口2Aから最上段の切り返し手段1A上に投入される。循環投入された発酵
途中の敷材5が最上段の切り返し手段1Aから順次、次段の切り返し手段に落下、移送される。このように循環投入されることによって最終的に堆肥化された敷材5は、槽2内への再投入から取り出し側に切り換えられて、搬出コンベア11によって、発酵した厩廃棄敷材として搬出される。
【0024】
工程1における敷材5の循環1サイクルの所要時間は4〜6時間が好ましい。発酵処理のトータルの所要時間は4〜10日間が好ましい。
【0025】
工程1の実施態様の一例を図3に詳述するならば、図3において、搬入工程は敷材5を槽2に搬入ゲート19、敷材循環手段10、搬入ヘッド13を経て搬入し終わるまでの工程であり、最終的に敷材5が4段に堆積される態様である。発酵工程は、敷材5を順次下段に落下移動させ、最下段の敷材5を最上段に移動させるサイクルのもとでの発酵の工程を示す。搬出工程は、発酵し終わった敷材5について、最下段の敷材5を落下させてスクリューコンベアからなる送り手段8を経由して敷材循環手段10により上部ゲート17を経て搬出し、以下順次敷材5を下段に落として最下段の敷材5を落下させて送り手段8を経由して敷材循環手段10により上部ゲートを経て搬出する工程である。符号21は未処理の敷材を敷材循環手段10に供給するホッパー、符号23は発酵した発酵した厩廃棄敷材を搬出する搬出ヘッドである。符号25、27はバケットコンベアの折り返しギアエンドボックス、処理用水はPの位置から最上段の敷材5に不図示のスプレイにより供給される。
【0026】
工程2は水に発酵した厩廃棄敷材を投入して曝気して曝気水を得る曝気工程であり、この水としては河川湖沼水、地下水、水道水、雨水などが用いられる。図4に工程2の態様の一例を示す。図4において、培養槽20に水22が入れられ、水22には網袋24に入った発酵した厩廃棄敷材26が投入されている。多数の穴が開けられた散気管28が水中に設置されており、工程2はその穴から圧搾空気が水中に放出されて曝気が行われる工程である。曝気時間は5〜7日間が好ましい。水22に対する厩廃棄敷材26の投入比率は0.5〜1重量%であることが好ましい0.6〜0.8重量%であることがさらに好ましい。培養槽20には、水22に接触するように天然ゼオライト21が投入されていることが好ましい。符号58は散気管28に空気を送る圧空源である。
【0027】
工程3は曝気水に岩石、腐葉土、炭を含む接触材を接触させて中間処理水を得る調合工程である。図5において、混合槽30に、工程2で得られた曝気水32が入れられている。混合槽30の上方に皿状の籠容器34が設置され、籠容器34には岩石36が収められている。さらに、処理水槽30の外部に筒容器(R)38−1、筒容器(R)38−2、筒容器(R)38−3が設置され、筒容器38−1には発酵した厩廃棄敷材39−1が、筒容器38−2には岩石と炭39−2が、筒容器38−3には腐葉土38−3が収められていて、ポンプ44により管路46から汲み上げられた曝気水32が管路48を経て筒容器38−1、38−2、38−3にそれぞれ注入される。管路48には磁気発生器51が設けられることが好ましい。磁気発生器51により管路48内に磁場が作られる。磁気発生器は、管路48内に磁場を発生するものであれば様式を問わないが、例えば、日本オリジナルサービス株式会社製の水処理装置:プラスパワー21を用いることができる。曝気水32はこの磁場を通過する。筒容器38−1、38−2、38−3内を通過する曝気水が各内容物に接触する。また、ポンプ44により送水された曝気水32が管路50を経てシャワーヘッド41から籠容器34に収められた岩石36に注がれることにより、曝気水32が岩石36に接触する。岩石36と接触した曝気水32は処理水槽30中に流出する。このようにして、ポンプ44により曝気水32が処理水槽30、筒容器38−1〜3、籠容器34を循環する。工程3の処理時間は4〜7日間であることが好ましい。磁気発生器51は管路50に設けられてもよい。筒容器38−1、38−2、38−3に代えて、発酵した厩廃棄敷材、岩石、炭、腐葉土を含む接触材を収納した1個の大型の筒容器を用いてもよい。
【0028】
筒容器38−2に収める岩石としては麦飯石が好ましい。筒容器38−2に収める岩石と籠容器34に収める岩石36とは同種であってもよい。互いに異種であってもよい。筒容器38−2には炭のみが収められていてもよい。
【0029】
磁気発生器51を設けることにより曝気水32が活性化して物質への浸透性が増し、さらに高性能の処理用水が得られる。
【0030】
さらに、本発明においては、曝気水32が岩石36に注がれることにより、あるいは、筒容器38−2に収められた岩石に接触することにより、水中にミネラル成分が溶出している。ミネラル成分が溶出して含まれる水は、通常の水より電気伝導度が大きく、磁気発生器51により発生した磁場の作用が水中でより強力になる。このため曝気水32が活性化して水のクラスターの細分化がさらに促進され、水中の有機物の分解と溶解が促進されさらに高性能の処理用水が得られると考えられる。
【0031】
磁気発生器としては、図6に示すように水を間にして磁石70の対向する同極が配置された配置のものが好ましい。すなわち、S極であるS1、S2同士が対向し、M極であるM1M2同士が対向し、S極の対向方向とM極の対向方向とが直交する配置が好ましい。このような磁気発生器では各極が対向する間の空間72の中心部で磁束密度が低く、周辺部で磁束密度が高くなっている。図6中の線群は磁力線を示す。このような空間を水が紙面と直交する方向に流れると、水が磁束密度の低い中心部と磁束密度の高い周辺部を行き来して水のクラスターの細分化がさらに促進され、水中の有機物の分解と溶解が促進されさらに高性能の処理用水が得られると考えられる。
【0032】
曝気水(32)300リットルに対して、岩石36が10〜30kg、炭が1〜10kg、腐葉土が10〜30kg用いられることが好ましい。岩石、炭、腐葉土を曝気水32に接触させることにより、工程1における発酵が促進され、臭いの少ない発酵した厩廃棄敷材が得られる。
【0033】
岩石36としては、流紋岩、石英安山岩、安山岩、玄武岩、花崗斑岩などの斑岩、珪長岩、アプライト、ペグマタイト、ひん岩、煌斑岩、花崗岩、閃長岩、花崗閃緑岩、石英閃緑岩などの閃緑岩、斑糲岩、斜長岩、橄欖岩、輝石岩、角閃石岩、蛇紋岩、蛇灰岩、礫岩、角礫岩、砂岩、粘板岩、集塊岩、火山角礫岩、凝灰角礫岩、火山礫凝灰岩、凝灰岩、苦灰岩、直閃石菫青石岩、英雲岩、千枚岩、片岩、片麻岩、角閃岩、白粒岩、榴輝岩などが用いられる。なかでも、花崗斑岩(麦飯石)が好ましい。
【0034】
炭としては、やしがら活性炭などの活性炭、木炭、竹炭の使用が可能である。
【0035】
なお、培養槽20内の水22に発酵した厩廃棄敷材が投入されている場合、厩廃棄敷材39−1を収めた筒容器38−1は必ずしも使用しなくてもよい。厩廃棄敷材39−1を収めた筒容器38−1を使用する場合は、工程2において培養槽20内の水22に発酵した厩廃棄敷材が投入されていなくてもよい。
【0036】
すなわち、本発明の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法の他の態様は、
水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程0、
厩廃棄敷材に該発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A´)を得る工程1´、
水を曝気して曝気水(B´)を得る工程2´、
該曝気水(B´)に岩石、腐葉土、炭、発酵した厩廃棄敷材(A´)、を含む接触材を接触させて中間処理水(C´)を得る工程3´、
該中間処理水(C´)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水(S´)を得る工程4´
を含み、
前記工程4´で得られた処理用水(S´)を発酵水(H)に代えて工程1´に適用し、前記工程1´から前記工程4´を順次繰り返えす、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法であってもよい。
【0037】
すなわち、前記工程1´から前記工程4´を順次おこなう工程を1サイクルの工程と称するならば、本発明の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法は、この1サイクルの工程を複数回繰り返しておこなった時の最後の工程4´で得た処理用水を厩廃棄敷材用処理用水となす厩廃棄敷材用処理用水の製造方法であってもよい。
【0038】
また、この態様においては、特定の工程2´で用いられる発酵した厩廃棄敷材(A´)は、その工程2´を含むサイクル工程中で得られた発酵した厩廃棄敷材(A´)でなくともよく、その工程2´を含むサイクル工程の1または複数回前のサイクル工程中で得られた発酵した厩廃棄敷材(A´)であってもよい。
【0039】
すなわち、各サイクル工程で得られた発酵した厩廃棄敷材(A´)を構成要素として順次加えてなる発酵済厩廃棄敷材(A´S)、の少なくとも一部が接触材のひとつとして用いられてもよい。
【0040】
本発明においては、工程2と工程3あるいは工程2´と工程3´は同時に行われてもよい。すなわち、図7に示すように、水槽30に水32が入れられ、曝気されると同時に、ポンプ44により水32が処理水槽30、筒容器38−1、38−2、38−3、籠容器34を循環する態様であってもよい。水32には網袋に入った発酵した厩廃棄敷材が投入されていてもよい。水32に網袋に入った発酵した厩廃棄敷材が投入されている場合は、発酵した厩廃棄敷材39−1を入れた筒容器38−1は用いられなくともよい。
【0041】
工程4あるいは工程4´は中間処理水55を調整槽50に入れて酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理水となす調整工程である。酸性液としては特に限定されないが木酢液が中間処理水の活性を損なわず好ましい。調整後の処理水のpHは6.5〜7.0であることが好ましい。調整の過程で中間処理水が曝気されてもよい。
【0042】
本発明の厩廃棄敷材用処理用水を用いて発酵させた厩廃棄敷材は、臭いが少なく、土壌改質材として好適に用いられる。すなわち、本発明の厩廃棄敷材用処理用水は、厩廃棄敷材の好気発酵に適用されたときに優れた発酵効果を発揮する。また、本発明の厩廃棄敷材用処理用水を用いて好気発酵させた厩廃棄敷材は、牛舎の敷材として再利用が可能である。
【実施例】
【0043】
この実施例は、初期の工程0から始めて、定常的に工程1から4を下記の条件に準じて順次繰り返し、連続稼動1カ月した状態から下記の工程1から4をあらためて開始した実施例である。なお、初期の工程0(段落[0008]参照)においては、厩廃棄敷材を野積みして適宜スコップで切り返し1カ月自然好気発酵させた。発酵した厩廃棄敷材を得て、300リットルの水にこの発酵した厩廃棄敷材2kgを投入して7日間曝気して曝気水を得て、この曝気水に岩石5kg、腐葉土15kg、炭2kgを図5に示す態様で6日間接触させて中間処理水を得、この中間処理水に木酢液を添加してpHを調整し中性の処理水となした。
【0044】
工程1:図2に示す発酵装置1により厩廃棄敷材を発酵処理した。ただし、切り返し手段の段数は4段とした。各段の容量は100mである。最上段の切り返し手段1Aの棚板3上に堆積した敷材5に対する処理用水の供給量は敷材5の循環1サイクルごとに0.1重量%とした。敷材5の循環1サイクルの所要時間は4時間、発酵処理のトータルの所要時間は7日間とした。処理用水はこの工程1の直前の、工程1から8の繰り返しのサイクルにより得られた処理用水である。
【0045】
工程2:図4に示す態様で水槽20に水22を12m入れ、水22に、工程1で得られた発酵した厩廃棄敷材26を網袋24に入れて80kg投入し、6日間曝気して曝気水を得た。
【0046】
工程3:この曝気水に図4に示す態様で岩石、腐葉土、炭を接触させて中間処理水を得た。工程3の処理時間は7日間であり、曝気水300リットルに対して、岩石36が5kg、炭40が1.5kg、腐葉土42が15kg用いられた。磁気発生器として日本オリジナルサービス株式会社製の水処理装置:プラスパワー21を用いた。
【0047】
工程4:この中間処理水に木酢液(pH3)を添加してpH7の処理用水を得た。
【0048】
この工程4で得られた処理用水を処理用水として用いたほかは、上記工程1と同様にして厩廃棄敷材を発酵処理し、発酵処理した厩廃棄敷材を得た。
【0049】
この発酵処理した厩廃棄敷材は不快な臭いがなく、牛舎の敷材として好適に用いることができた。また、土壌改良材として流通過程や取り扱い時に不快な臭いがなく好適に用いることができた。
【比較例】
【0050】
処理用水として、豚舎のし尿を3日間曝気処理した液を用いたほかは上記の工程1と同様にして厩廃棄敷材を発酵処理し、発酵処理した厩廃棄敷材を得た、この発酵処理した厩廃棄敷材は不快な臭いがあり、牛舎の敷材として不適であった。また、土壌改良材として流通過程や取り扱い時に不快な臭いがあり、好適に用いることができなかった。
【0051】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の厩廃棄敷材の処理方法の態様の一例を説明する工程図である。
【図2】本発明において用いられる発酵装置の態様の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における発酵工程の態様の一例を示す工程図である。
【図4】本発明における曝気水を得る工程の態様の一例を示す説明図である。
【図5】本発明における曝気水を処理して中間処理水を得る工程の態様の一例を示す説明図である。
【図6】本発明において用いられる磁気発生器の磁極の配置の好ましい一例を示す説明図である。
【図7】本発明における中間処理水を得る工程の態様の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1:発酵装置
2:槽
3:棚板
5:厩廃棄敷材
4:投入コンベア
10:敷材循環手段
11:搬出コンベア
20:水槽
22:水
26:発酵した厩廃棄敷材
28:散気管
30:処理水槽
32:曝気水
34:籠容器
36:岩石
38:筒容器
44:ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程0、
厩廃棄敷材に該発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A)を得る工程1、
水に発酵済厩廃棄敷材(AS)を投入し曝気して曝気水(B)を得る工程2、
該曝気水(B)を岩石、腐葉土、炭を含む接触材に接触させて中間処理水(C)を得る工程3、
該中間処理水(C)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水(S)を得る工程4
を含み、
前記工程4で得られた前記処理用水(S)を前記発酵水(H)に代えて前記工程1に適用し、前記工程1から前記工程4を1つのサイクルとして複数回繰り返えすことを特徴とし、
前記発酵済厩廃棄敷材(AS)が、各サイクル中にそれぞれ得られた発酵した厩廃棄敷材(A)から選択されたものである、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法。
【請求項2】
水に厩廃棄敷材を投入して曝気し発酵水(H)を得る工程0、
厩廃棄敷材に該発酵水(H)を混ぜて好気発酵させ、発酵した厩廃棄敷材(A´)を得る工程1´、
水を曝気して曝気水(B´)を得る工程2´、
該曝気水(B´)に岩石、腐葉土、炭、発酵済厩廃棄敷材(AS´)を含む接触材を接触させて中間処理水(C´)を得る工程3´、
該中間処理水(C´)に酸性液を添加してpHを調整し中性ないし弱酸性の処理用水を得る工程4´
を含み、
前記工程4で得られた前記処理用水を前記発酵水(H)に代えて前記工程1´に適用し、前記工程1´から前記工程4´を1つのサイクルとして複数回繰り返えすことを特徴とし、
前記発酵済厩廃棄敷材(AS´)が、各サイクル中にそれぞれ得られた発酵した厩廃棄敷材(A´)から選択されたものである、厩廃棄敷材用処理用水の製造方法。
【請求項3】
前記工程2が、前記曝気水(B)を循環用の管路を経由して循環させるとともに該曝気水(B)に前記接触材を接触させる工程であり、該管路内に磁気発生機により磁場が作られ、該管路内で前記曝気水(B)が、該磁場を通過する、
請求項1に記載の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法。
【請求項4】
前記工程2´が、前記曝気水(B´)を循環用の管路を経由して循環させるとともに該曝気水(B´)に前記接触材を接触させる工程であり、該管路内に磁気発生機により磁場が作られ、該管路内で前記曝気水(B´)が、該磁場を通過する、
請求項2に記載の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の厩廃棄敷材用処理用水の製造方法により得られた処理用水からなる厩廃棄敷材用処理用水。
【請求項6】
厩廃棄敷材に、請求項5に記載の厩廃棄敷材用処理用水を混ぜて好気発酵させる厩廃棄敷材の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−406(P2010−406A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158760(P2008−158760)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(503080903)株式会社キーフィル (1)
【Fターム(参考)】