説明

参照周波数の誤差補正値の取得方法、端末装置、端末装置の制御プログラム及び記録媒体

【課題】参照周波数の誤差補正値の取得方法等を提供すること。
【解決手段】参照周波数Hrを使用して局部発振器の第1ドリフトdf1を継続的に算出
する第1ドリフト算出ステップと、第1ドリフトdf1を使用して、衛星信号のサーチレ
ンジを算出するサーチレンジ算出ステップと、衛星信号の受信周波数を使用して局部発振
器の第2ドリフトdf2を算出する第2ドリフト算出ステップと、第1ドリフトdf1と
第2ドリフトdf2の差分を算出することによって、前記参照周波数の誤差である参照周
波数誤差βを算出する参照周波数誤差算出ステップと、複数の参照周波数誤差βを統計処
理することによって、参照周波数の誤差補正値βavを算出する誤差補正値算出ステップ
と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPS(Satellite Positioning System)を
使用して測位を行うことができる端末装置における、参照周波数の誤差補正値の取得方法
、端末装置、端末装置の制御プログラム及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPSである例えば、GPS(Global Positioning Sys
tem)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている
(例えば、特許文献1)。
GPS受信機は、上空に位置する、例えば、4個のGPS衛星からの信号(以後、衛星
信号と呼ぶ)を受信し、各衛星信号が各GPS衛星(以後、単に「衛星」とも呼ぶ)から
発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、「遅延時間」と呼ぶ)によ
って、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、「擬似距離」と呼ぶ)を求める
。GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、G
PS受信機の現在位置の測位結果を算出するようになっている。衛星信号は、C/A(C
oares/Access)コード、航法メッセージ等の各種情報を含む。
【0003】
また、GPS受信機は、衛星信号に載せられているC/Aコードのコードフェーズを利
用して、上述の擬似距離を算出することもできる。このC/Aコードは、1.023Mb
psのビット率、1,023bit(=1msec=300km)のビット長の信号であ
る。GPS受信機の初期位置が150kmの誤差範囲で既知であれば、各GPS衛星とG
PS受信機との間にC/Aコードがいくつ存在するか推定することができるから、C/A
コードの端数部分(コードフェーズ)を利用して、擬似距離を算出することができる。
GPS受信機は、衛星信号を受信するために、衛星信号のキャリア周波数と、各衛星と
GPS受信機との相対移動によるドップラー偏移を考慮して、サーチ中心周波数を算出す
る。そして、サーチ中心周波数を中心として一定の幅をサーチ帯域(以後、「サーチレン
ジ」と呼ぶ)として決定する。
【0004】
GPS受信機は基準発振器(以後、「局部発振器」と呼ぶ)からのクロックを使用して
、受信した衛星信号の周波数をダウンコンバートする。
ところが、局部発振器においては、ドリフトを生じる。ドリフトとは、温度変化による
発振周波数の変化である。
そして、局部発振器のドリフトによって、ダウンコンバート後の受信周波数がサーチレ
ンジを外れると、サーチが不効率になったり、サーチできない場合がある。
これに対して、通信基地局などから精度の高い参照周波数を取得して、その参照周波数
をサーチレンジの決定に利用する技術が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献
3、特許文献4)。
【0005】
しかし、通信基地局などから取得した参照周波数は精度が高いとしても誤差を有し、そ
の精度は衛星信号のキャリア周波数の精度よりも低いのが通常である。このため、参照周
波数を使用して算出したドリフトは、その誤差の分だけサーチ範囲を広く設定せざるを得
ず、サーチレンジが広くなるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−131415号公報(図1等)
【特許文献2】特表2000−506348号公報
【特許文献3】特開2002−228737号公報
【特許文献4】特表平11−513787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来よりもサーチレンジを狭くすることを可能にする参照周波数の
精度の高い誤差補正値の取得方法、端末装置、端末装置の制御プログラム及び記録媒体を
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、第1の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を受信して測位を
行う端末装置における、参照周波数の誤差補正値の取得方法であって、前記参照周波数を
使用して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出する第1ドリフト算出ステップと、前
記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレンジを算出するサーチレンジ算出ス
テップと、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフトを算出す
る第2ドリフト算出ステップと、前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分を算出する
ことによって、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を算出する参照周波数誤差算
出ステップと、複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによって、前記参照周波数
の誤差補正値を算出する誤差補正値算出ステップと、を有することを特徴とする参照周波
数の誤差補正値の取得方法により達成される。
【0009】
第1の発明の構成によれば、前記第1ドリフト算出ステップにおいて、参照周波数を使
用して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出することができる。前記第1ドリフトは
、前記参照周波数の誤差を含む。
また、第2ドリフト算出ステップにおいて、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記
局部発振器の第2ドリフトを算出することができる。前記第2ドリフトは、前記参照周波
数を使用して算出されたものではないから、前記参照周波数の誤差を含まない。
そして、前記参照周波数誤差算出ステップにおいて、前記第1ドリフトと前記第2ドリ
フトの差分を算出することによって、前記参照周波数誤差を算出することができる。前記
第2ドリフトと前記第1ドリフトとの相違は、前記参照周波数の誤差であるから、前記前
記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分は、前記参照周波数誤差を示す。
そして、前記誤差補正値算出ステップにおいて、複数の前記参照周波数誤差を統計処理
することによって、前記誤差補正値を算出することができる。統計計処理によって、前記
参照周波数誤差の算出過程における誤差を低減することができ、前記誤差補正値は精度が
高いものとなる。
これにより、従来よりもサーチレンジを狭くすることを可能にする参照周波数の精度の
高い誤差補正値を取得することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記参照周波数誤差算出ステップに先立っ
て、複数の前記第1ドリフトを統計処理して、前記第1ドリフトを修正する第1ドリフト
修正ステップを有し、前記参照周波数誤差算出ステップにおいては、修正後の前記第1ド
リフトと前記第2ドリフトとの差分を算出することを特徴とする参照周波数の誤差補正値
の取得方法である。
【0011】
第2の発明の構成によれば、前記誤差補正値の取得方法は、第1ドリフト修正ステップ
を有するから、前記第1ドリフトの算出過程における誤差の影響を低減することができる

そして、前記参照周波数誤差算出ステップにおいては、修正後の前記第1ドリフトと前
記第2ドリフトとの差分を算出するから、前記誤差補正値の精度を一層向上させることが
できる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記第1ドリフト修正ステップにおける前
記修正は、複数の前記第1ドリフトに基づいて回帰直線を生成し、前記回帰直線上の現在
時刻に対応する前記第1ドリフトを算出する処理であることを特徴とする参照周波数の誤
差補正値の取得方法である。
【0013】
前記目的は、第4の発明によれば、複数のSPS(衛星からの衛星信号を受信して測位
を行う端末装置であって、参照周波数を使用して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算
出する第1ドリフト算出手段と、前記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレ
ンジを算出するサーチレンジ算出手段と、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部
発振器の第2ドリフトを算出する第2ドリフト算出手段と、前記第1ドリフトと前記第2
ドリフトの差分を算出することによって、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を
算出する参照周波数誤差算出手段と、複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによ
って、参照周波数の誤差補正値を算出する誤差補正値算出手段と、を有することを特徴と
する端末装置によって達成される。
【0014】
第4の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、従来よりもサーチレンジを狭
くすることを可能にする参照周波数の精度の高い誤差補正値を取得することができる。
【0015】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号
を受信して測位を行う端末装置が、参照周波数を使用して局部発振器の第1ドリフトを継
続的に算出する第1ドリフト算出ステップと、前記端末装置が、前記第1ドリフトを使用
して、前記衛星信号のサーチレンジを算出するサーチレンジ算出ステップと、前記端末装
置が、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフトを算出する第
2ドリフト算出ステップと、前記端末装置が、前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差
分を算出することによって、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を算出する参照
周波数誤差算出ステップと、前記端末装置が、複数の前記参照周波数誤差を統計処理する
ことによって、参照周波数の誤差補正値を算出する誤差補正値算出ステップと、を実行さ
せることを特徴とする端末装置の制御プログラムによって達成される。
【0016】
第5の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、従来よりもサーチレンジを狭
くすることを可能にする参照周波数の精度の高い誤差補正値を取得することができる。
【0017】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号
を受信して測位を行う端末装置が、参照周波数を使用して局部発振器の第1ドリフトを継
続的に算出する第1ドリフト算出ステップと、前記端末装置が、前記第1ドリフトを使用
して、前記衛星信号のサーチレンジを算出するサーチレンジ算出ステップと、前記端末装
置が、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフトを算出する第
2ドリフト算出ステップと、前記端末装置が、前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差
分を算出することによって、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を算出する参照
周波数誤差算出ステップと、前記端末装置が、複数の前記参照周波数誤差を統計処理する
ことによって、参照周波数の誤差補正値を算出する誤差補正値算出ステップと、を実行さ
せることを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な
記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい
種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定す
る旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、GPS衛星12a乃至12dから信号S1乃至S4を受
信することができる。端末20は、端末装置の一例である。
なお、GPS衛星のことを、単に、衛星とも呼ぶ。
端末20は、通信基地局40から通信信号CSを受信し、通信することができる。そし
て、通信基地局40を介して、他の端末(図示せず)と通信することができる。
本明細書において、通信信号CSのキャリア周波数の精度は、一定の精度が保持されて
いるものとする。
【0020】
GPS衛星12a等はSPS衛星の一例であり、信号S1等は衛星信号の一例である。
信号S1は、C/Aコードを含む。C/Aコードは、擬似雑音符号(以後、PN(Psu
edo random noise code)符号と呼ぶ)の一つである。このC/A
コードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット
長の信号である。C/Aコードは、1,023チップ(chip)で構成されている。端
末20は、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。
【0021】
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone
System)、PDA(Personal Digital Assistance
等であるが、これらに限らない。
SPSはGPSに限らず、例えば、Galileo、準天頂衛星等であってもよい。
【0022】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2は、コードフェーズを使用した測位方法を示している。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが
連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との
間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らない
から、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間に
は、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分
と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等
についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフ
ェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできる
し、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを
距離に換算している。
【0023】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメ
リスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星
12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数
倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(k
m)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必
要がある。
【0024】
そして、端末20は、端末20のレプリカC/Aコードのコードフェーズ及びサーチ周
波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及び
インコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になったコードフェーズがコード端数部C/Aaのコードフェーズで
ある。
【0025】
図3及び図4は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をと
る処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。
例えば、図3(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msec
の時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出す
る。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力さ
れる。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値
(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力
される。
図3(b)に示すように、相関積算値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズC
P1が、コードフェーズ端数部C/Aa(図2参照)のコードフェーズである。
【0026】
図4(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分
割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわ
ち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図4(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,
023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において
信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)k
Hzの周波数の範囲を、20Hzごとの周波数ステップで信号S1等をサーチする。
【0027】
一般的には、GPS受信機は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー
偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周
波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1
,575.42MHzである。ドリフトDRとは、温度変化によるGPS受信機の基準発
振器の発振周波数の変化である。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる
。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線
速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予
想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0028】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図5は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス2
2を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24
、記憶装置26が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Ac
cess Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。

【0029】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、電源装
置30、通信基地局40との間で通信信号を送受信するための通信装置32、GPS衛星
12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置34及び、各種情報を表示するため
の表示装置36が接続されている。
通信装置32は、VCO(Voltage Controlled Ocsillat
or)32aを含む。通信装置32が基地局40との間で通信中において、基地局40か
らの通信信号CSのキャリア周波数を利用して、VCO32aの周波数は補正される。V
CO32aの周波数は、例えば、特表2000−506348号公報に記載の方法によっ
て補正することができる。
このため、VCO32aの周波数は、通信信号CSのキャリア周波数と同程度の精度を
有する。
端末20は、VCO32aの周波数を、参照周波数Hrとして使用する。
通信信号CSのキャリア周波数は、一定の精度が確保されているが、一定の誤差を有す
る。このため、VCO32aの周波数である参照周波数Hrも、同等の誤差を有する。
そして、参照周波数Hrの誤差は信号S1等のキャリア周波数の誤差よりも大きい。
【0030】
GPS装置34は、局部発振器34aを含む。局部発振器34aは、GPS装置34の
基準クロックを発生するための例えば、TCXO(Temperature Compe
nsated Xtal Oscillator)である。
また、このバス22には、時計38が接続されている。
【0031】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図6は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図5の通信装置32に
対応する通信部102、GPS装置34に対応するGPS部104、表示装置36に対応
する表示部106、時計38に対応する計時部108等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する
第2記憶部150を有する。
【0032】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納して
いる。衛星軌道情報152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナ
ック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフ
ェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及
びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードす
ることによって取得する。
端末20は、衛星軌道情報152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0033】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納して
いる。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば
、前回測位時の測位位置である。
【0034】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、観測可能衛星算出プログラム1
12を格納している。観測可能衛星算出プログラム112は、制御部100が、アルマナ
ック152aを参照して計時部108によって計測した現在時刻において観測可能な各G
PS衛星12a等を算出するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aに基づいて、初期位置P0を基準
として現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を算出する。
制御部100は、算出したGPS衛星12a等を示す観測可能衛星情報156を第2記
憶部150に格納する。
【0035】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1ドリフト算出プログラム1
14を格納している。第1ドリフト算出プログラム114は、制御部100が、VCO3
2aの周波数を参照周波数Hrとして使用して、局部発振器34a(図5参照)のドリフ
トを算出するためのプログラムである。参照周波数Hrを使用して算出されたドリフトを
第1ドリフトdf1と呼ぶ。すなわち、第1ドリフト算出プログラム114と制御部10
0は、第1ドリフト算出手段として機能する。
局部発振器34aの周波数を、測位側基準周波数Hgと呼ぶ。
【0036】
図7は、第1ドリフト算出プログラム114の説明図である。
制御部100は、例えば、式2に示すように、参照周波数Hrと測位側基準周波数Hg
との差分を参照周波数Hrで除する式2によって、第1ドリフトdf1を算出する。
【0037】
制御部100は、算出した第1ドリフトdf1を示す第1ドリフト情報158を第2記
憶部150に格納する。
第1ドリフトdf1の誤差(以下、「ドリフト誤差α1」)は、固定値である。ドリフ
ト誤差α1は、端末20の開発段階において試験を通じて得られた値である。第1ドリフ
ト情報158は、ドリフト誤差α1を含む。
ドリフト誤差α1は、VCO32aの周波数誤差VCOerrと、演算過程における回
避不能な誤差aを含む値として、規定されている。
制御部100は、測位中において、予め規定した時間間隔で、第1ドリフトdf1を算
出する。ここで、測位中とは、GPS装置34の動作中と同義である。そして、制御部1
00は、計測した複数の第1ドリフトdf1を第1ドリフト情報158として、第2記憶
部150に格納する。このため、第1ドリフト情報158は、例えば、第1ドリフトdf
1(1),df1(2),df1(3)・・・df1(k)というk個の第1ドリフトd
f1を示す。
制御部100は、現在時刻から遡って一定時間以内の第1ドリフトdf1のみを保持す
るようになっている。すなわち、第1ドリフトdf1には、有効期間があり、その有効期
間は、1回の測位継続時間によって規定される。この測位継続時間が120秒(s)であ
れば、第1ドリフトdf1の有効期間も120秒(s)である。
制御部100は、120秒(s)を経過した第1ドリフトdf1を、第1ドリフト情報
158から削除するようになっている。
【0038】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第1サーチレンジ算出プログラ
ム116を格納している。第1サーチレンジ算出プログラム116は、制御部100が、
第1ドリフトdf1を使用して、各信号S1等のサーチレンジを算出するためのプログラ
ムである。すなわち、第1サーチレンジ算出プログラム116と制御部100は、第1サ
ーチレンジ算出手段として機能する。
制御部100は、最初に第1サーチレンジSR1を算出した後は、後述のサーチレンジ
更新プログラム122によって、第1ドリフトdf1を使用してサーチレンジを更新する
場合にのみ第1サーチレンジSR1を算出するようになっている。
【0039】
図8は、第1サーチレンジ算出プログラム116の説明図である。
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、式3に示すように、信号S1等の発信
周波数H1、ドップラー偏移H2、第1ドリフトdf1に周波数変換係数bを乗じて得た
周波数、及び、ドリフト誤差α1に基づいて、第1サーチレンジSR1を算出する。
【0040】
制御部100は、算出した第1サーチレンジSR1を示す第1サーチレンジ情報160
を第2記憶部150に格納する。
【0041】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2ドリフト算出プログラム1
18を格納している。第2ドリフト算出プログラム118は、制御部100が、信号S1
等の受信周波数Hstを使用して、局部発振器34a(図5参照)のドリフトを算出する
ためのプログラムである。受信周波数Hstを使用して算出されたドリフトを第2ドリフ
トdf2と呼ぶ。すなわち、第2ドリフト算出プログラム118と制御部100は、第2
ドリフト算出手段として機能する。
【0042】
図9は、第2ドリフト算出プログラム118の説明図である。
制御部100は、受信した信号S1等のうち、強衛星の強い信号を使用して、第2ドリ
フトdf2を算出する。例えば、マイナス(−)150dBm以上の信号強度に対応する
衛星が、強衛星である。
制御部100は、まず、式4に示すように、信号S1等の発信周波数H1とドップラー
偏移H2に基づいて、予想受信周波数Hestを算出する。
続いて、制御部100は、式5に示すように、受信周波数Hstと予想受信周波数He
stとの差分を算出することによって、第2ドリフトdf2を算出する。
制御部100は、算出した第2ドリフトdf2を示す第2ドリフト情報162を第2記
憶部150に格納する。
制御部100は、強衛星からの信号を受信したとき、又は、測位計算が収束したときに
、第2ドリフトdf2を算出する。第2ドリフトdf2を算出する時間間隔は、不定期で
あるが、第1ドリフトdf1を算出する時間間隔よりも長いのが通常である。このため、
本実施の形態においては、第2ドリフトdf2を算出する時間間隔は、第1ドリフトdf
1を算出する時間間隔よりも長いものと仮定する。
【0043】
第2ドリフト情報162は、ドリフト誤差α2を含む。
第2ドリフトdf2の誤差(以下、「ドリフト誤差α2」と呼ぶ)は、固定値である。
ドリフト誤差α2は、端末20の開発段階において、得られた値である。ドリフト誤差α
2は、ドリフト誤差α1よりも小さい値として規定される。
これは、参照周波数Hrの精度よりも、予想受信周波数Hestの精度の方が高いから
である。
そして、ドリフト誤差α2の算出には参照周波数Hrが使用されていないから、ドリフ
ト誤差α2には参照周波数の誤差VCOerrを含まない。このため、ドリフト誤差α2
は、演算過程における誤差aだけが含まれる。
【0044】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、第2サーチレンジ算出プログラ
ム120を格納している。第2サーチレンジ算出プログラム120は、制御部100が、
第2ドリフトdf2を使用して、各信号S1等のサーチレンジを算出するためのプログラ
ムである。
【0045】
図10は、第2サーチレンジ算出プログラム120の説明図である。
制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、式6に示すように、信号S1等の発信
周波数H1、ドップラー偏移H2、第2ドリフトdf2及びドリフト誤差α2に基づいて
、第2サーチレンジSR2を算出する。
【0046】
制御部100は、算出した第2サーチレンジSR2を示す第2サーチレンジ情報164
を第2記憶部150に格納する。
【0047】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、サーチレンジ更新プログラム1
22を格納している。サーチレンジ更新プログラム122は、制御部100が、サーチレ
ンジを更新するためのプログラムである。
サーチレンジ更新プログラム122は、VCO誤差算出プログラム124及びVCO補
正値算出プログラム126を含む。
【0048】
図11は、VCO誤差算出プログラム124の説明図である。
図11に示すように、制御部100は、第1ドリフトdf1と第2ドリフトdf2との
差分β(VCO誤差β)を算出する。このVCO誤差βが、VCO32a(図5参照)の
周波数誤差(VCOerr)である。すなわち、VCO誤差βは、参照周波数誤差の一例
である。VCO誤差算出プログラム124と制御部100は、参照周波数誤差算出手段と
して機能する。
制御部100は、第2ドリフトdf2を算出する都度、その第2ドリフトdf2と最新
の第1ドリフトdf1との差分であるVCO誤差βを算出するようになっている。制御部
100は、例えば、最新の第1ドリフトdf1が第1ドリフトdf1(n)であれば、第
2ドリフトdf2と第1ドリフトdf1(n)との差分を算出する。
制御部100は、VCO誤差βを示すVCO誤差情報166を第2記憶部150に格納
する。
シミュレーションでは、このVCO誤差βは、最大で約0.3ppmであった。
【0049】
図12は、VCO補正値算出プログラム126の説明図である。
図12に示すように、制御部100は、複数の差分β(1)乃至β(n)の平均値を算
出することによって、VCO補正値βavを算出する。
この平均値を算出する処理は、統計処理の一例である。VCO補正値算出プログラム1
26と制御部100は、誤差補正値算出手段の一例である。
制御部100は、VCO補正値βavを示すVCO補正値情報168を第2記憶部15
0に格納する。
シミュレーションでは、このVCO補正値βavは、約0.05ppmであった。
【0050】
図13及び図14は、サーチレンジ更新プログラム122の説明図である。
図13に示すように、制御部100は、基本更新と中間更新のいずれかによって、サー
チレンジを更新する。中間更新は、第1更新と第2更新の二種類の更新方法を含む。
基本更新は、上述の第2サーチレンジ算出プログラム120によってサーチレンジ算出
し、新たなサーチレンジとする更新方法である。
第1更新は、上述の第1サーチレンジ算出プログラム116によってサーチレンジを算
出し、新たなサーチレンジとする更新方法である。
第2更新は、第1ドリフトdf1、誤差α1及びVCO補正値βavを使用して、サー
チレンジを更新する更新方法である。
第2更新によって更新されたサーチレンジは、第1更新によって算出されたサーチレン
ジよりも狭い。
【0051】
制御部100は、図14に示すように、第2ドリフトdf2を算出した場合には、必ず
基本更新を実施する。
そして、制御部100は、基本更新の間において、一定の場合、第1更新又は第2更新
を実施する。
【0052】
図15は、中間更新を実施するための条件の説明図である。
【0053】
図15に示すように、制御部100は、式9を使用して、ドリフトdf1の変動量Δd
f1を算出する。具体的には、制御部100は、最初に算出した第1ドリフトdf1(0
)と、時刻tにおいて算出した第1ドリフトdf1(t)との差分である変動量Δdf1
を算出する。変動量Δdf1は、最初に第1ドリフトdf1を算出したときからの、ドリ
フトの変動量の累積値(又は、総量)である。
そして、制御部100は、変動量Δdf1が、第2ドリフトdf2のドリフト誤差α2
よりも大きいか否かを算出する。
そして、制御部100は、変動量Δdf1が、ドリフト誤差α2よりも大きいと判断し
た場合には、第1ドリフトdf1を使用して第1サーチレンジSR1を算出し、新たなサ
ーチレンジとする。
変動量Δdf1がドリフト誤差α2よりも大きいという条件を、中間更新実施条件と呼
ぶ。
【0054】
なお、本実施の形態とは異なり、制御部100は、第1ドリフトdf1の変動率を算出
し、その変動率と経過時間に基づいて、変動量Δdf1を算出するようにしてもよい。さ
らに、予め規定した時間間隔において、変動率を更新するようにしてもよい。
【0055】
制御部100は、VCO補正値βavが第1ドリフトの誤差α1よりも小さい場合に、
第2更新を行う。そして、制御部100は、VCO補正値βavが第1ドリフトの誤差α
1以上である場合に、第1更新を行う。
【0056】
以下、図16乃至図22を使用して、本実施の形態のサーチレンジの更新方法のメリッ
トを説明する。
図16に示すように、受信周波数(端末20内部においてダウンコンバートされた受信
周波数)は、時間経過とともに変動する。これは、GPS装置34の起動から時間が経過
するにつれて、温度が変動し、局部発振器34aのドリフトが変動するからである。
なお、図16等においては、説明の便宜のために、受信周波数の変化を直線的に示して
いるが、実際には、必ずしも直線的には変化しない。
【0057】
図17に示すように、時刻t1において第1ドリフトdf1を算出し、第1サーチレン
ジSR1を設定するとする。そして、時刻t3において第2ドリフトdf2を算出して、
第2サーチレンジSR2を算出し、新たなサーチレンジとして設定すると仮定する。
そして、次回の第2ドリフトdf2の算出は時刻t7であると仮定する。
この場合、ドリフトの変動量によっては、受信周波数が時刻t3において設定したサー
チレンジSR2の外に出る。
図17の例では、時刻t4.5において、受信周波数がサーチレンジSR2の外に出て
いる。このため、時刻t4.5から時刻t7までの間においては、信号S1等を受信する
ことができない。
【0058】
これに対して、図18のように、受信周波数の変動量が小さい場合には、次回の第2ド
リフトdf2の算出時まで、受信周波数がサーチレンジSR2の外に出ることはない。
受信周波数の変動量、すなわち、局部発振器34aのドリフトの変動量によって、次回
の第2ドリフトdf2の算出時まで、受信周波数がサーチレンジSR2の外に出るか否か
が規定される。
【0059】
なお、図19に示すように、実際の受信周波数の変動は、曲線的に変動する。GPS装
置34から一定の時間が経過すれば、温度変化も低減するから、ドリフトの変動も低減し
、受信周波数の変動も低減する。
【0060】
制御部100は、図20に示すように、変動量Δdf1が、ドリフト誤差α2よりも大
きいと判断した場合には、例えば、時刻t5において第1サーチレンジSR1を算出し、
新たなサーチレンジとする。
これにより、受信周波数がサーチレンジの外に出る状態が解消される。
【0061】
なお、図21に示すように、第1ドリフトdf1の算出時間間隔を短くするほど、受信
周波数がサーチレンジの外に出る状態が早期に解消される。
【0062】
そして、図22に示すように、例えば、時刻t5において、第2更新を行うことによっ
て、サーチレンジを狭くすることができる。第2更新によって更新されたサーチレンジが
SR1rである。
なお、基本更新によって更新されたサーチレンジがSR2であり、第1更新によって更
新されたサーチレンジがSR1である。
サーチレンジSR1rは、サーチレンジSR2よりも広く、サーチレンジSR1よりも
狭い。
【0063】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム128を格納し
ている。測位プログラム128は、制御部100が、信号S1等を使用して、現在位置を
測位し、測位位置P1を算出するためのプログラムである。
【0064】
制御部100は、測位位置P1を示す測位位置情報170を第2記憶部150に格納す
る。
【0065】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム130
を格納している。
測位位置出力プログラム130は、制御部100が、測位位置P1を表示装置36に表
示するためのプログラムである。
【0066】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、第2ドリフトdf2を算出する間において、第1ドリフトdf1によって
サーチレンジを更新することができる。すなわち、第2ドリフトdf2の算出の間におい
て、強衛星からの信号を受信する間におけるドリフト変動によって受信周波数がサーチレ
ンジを外れる状態の継続時間を短縮化することができる。
また、第1ドリフトdf1によるサーチレンジの更新は、第2ドリフトdf2の算出の
間においてのみ実施される。これは、新たな第2ドリフトdf2が算出されたときには、
第2ドリフトdf2によってサーチレンジが更新されることを意味する。ここで、第1ド
リフトdf1のドリフト誤差α1よりも、第2ドリフトdf2のドリフト誤差α2が小さ
い。
このため、参照周波数Hrを使用して算出した第1ドリフトdf1を利用することによ
ってサーチレンジが広くなることを制限することができる。すなわち、第2更新を行う場
合には、第1ドリフトdf1を利用することによってサーチレンジを更新しても、サーチ
レンジが広くなることを制限することができる。
これにより、第1ドリフトdf1を利用することによってサーチレンジが広くなること
を制限しつつ、第2ドリフトを算出する間におけるドリフト変動によって受信周波数がサ
ーチレンジを外れる状態の継続時間を短縮化することができる。
【0067】
また、第1ドリフトdf1によるサーチレンジの更新は、第1ドリフトの変動量Δdf
1が、第2ドリフトdf2のドリフト誤差α2よりも大きい場合に、実施される。
【0068】
第2ドリフトdf2を使用したサーチレンジの更新の際には、サーチレンジの中心周波
数は第2ドリフトdf2に基づいて規定され、サーチレンジの帯域幅は第2ドリフトdf
2のドリフト誤差α2に基づいて規定される。
そして、第1ドリフトdf1のドリフト誤差α1は、第2ドリフトdf2のドリフト誤
差α2よりも大きいのが通常であるとしても、第1ドリフトdf1の変動量Δdf1は一
定の信頼性を有する。そして、第1ドリフトdf1の変動量Δdf1が、第2ドリフトd
f2のドリフト誤差α2よりも大きいということは、ドリフト変動によって受信周波数が
サーチレンジを外れる可能性があることを意味する。
この点、端末20は、第1ドリフトdf1の変動量Δdf1が、第2ドリフトdf2の
ドリフト誤差α2よりも大きい場合に実施されるから、受信周波数がサーチレンジを外れ
る状態の継続時間を短くすることができる。
【0069】
また、第1ドリフトdf1は、参照周波数Hrの誤差を含む。
これに対して、第2ドリフトdf2は、参照周波数Hrを使用して算出されたものでは
ないから、参照周波数Hrの誤差を含まない。
そして、第2ドリフトdf2と第1ドリフトdf1との相違は、参照周波数Hrの誤差
であるから、第1ドリフトdf1と第2ドリフトdf2の差分βは、参照周波数Hrの誤
差を示す。
そして、端末20は、複数の差分β(VCO誤差β)を平均化することによって、VC
O補正値βavを算出することができる。複数の差分βを平均化することによって、差分
βの算出過程における誤差を低減することができるから、VCO補正値βavは精度が高
いものとなる。
これにより、端末20の参照周波数Hrの精度の高い誤差補正値を取得することができ
る。
そして、端末20は、VCO補正値βavを使用して、第2更新を実施することができ
る。これにより、中間更新におけるサーチレンジの更新において、参照周波数Hrの誤差
を排除することができるから、参照周波数を使用する場合において、従来よりもサーチレ
ンジを狭くすることができる。
【0070】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図23、図2
4及び図25を使用して説明する。
図23乃至図25は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである

【0071】
まず、端末20は、GPS装置34を起動する(図23のステップST1)。
続いて、端末20は、第1ドリフトdf1を算出する(ステップST2)。このステッ
プST2は、第1ドリフト算出ステップの一例である。なお、端末20は、GPS装置3
4の作動中において、ステップST2を継続的に実施する。
続いて、端末20は、第1ドリフトdf1を使用して、第1サーチレンジSR1を算出
する(ステップST3)。このステップST3は、サーチレンジ算出ステップの一例であ
る。
【0072】
続いて、端末20は、サーチ及びトラッキングを開始する(ステップST4)。なお、
端末20は、まず、各衛星12a等をサーチし、サーチが完了した衛星について、トラッ
キングを開始する。
そして、端末20は、サーチ及びトラッキングを継続する(ステップST5)。端末2
0は、サーチが完了していない衛星についてはサーチを継続し、サーチが完了した衛星に
ついてはトラッキングを継続する。
【0073】
続いて、端末20は、強衛星を受信したか、又は、測位演算が収束したか否かを判断す
る(ステップST6)。
ステップST6において、端末20が、強衛星を受信しておらず、測位演算も収束して
いないと判断した場合には、ステップST5に戻る。
これに対して、ステップST6において、端末20が、強衛星を受信したか、又は、測
位演算が収束したと判断した場合には、第2ドリフトdf2を算出する(図24のステッ
プST7)。このステップST7は、第2ドリフト算出ステップの一例である。
【0074】
続いて、端末20は、第2ドリフトdf2を使用して、サーチレンジを更新する(ステ
ップST8)。
続いて、端末20は、サーチ及びトラッキングを継続する(ステップST9)。
【0075】
続いて、端末20は、中間更新実施条件を満たすか否かを判断する(ステップST10
)。具体的には、端末20は、変動量Δdf1がドリフト誤差α2よりも大きいか否かを
判断する。
ステップST10において、端末20は、中間更新実施条件を満たすと判断した場合に
は、端末20は、中間更新を実施する(ステップST11)。
【0076】
以下、図25を使用して、中間更新(ステップST11)の詳細を説明する。
まず、端末20は、VCO誤差βを算出する(図25のステップST101)。このス
テップST101は、参照周波数誤差算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、VCO補正値βavを算出する(ステップST102)。このス
テップST102は、誤差補正値算出ステップの一例である。
【0077】
続いて、端末20は、VCO補正値βavが、ドリフトdf1のドリフト誤差α1より
も小さいか否かを判断する(ステップST103)。
ステップST103において、端末20は、VCO補正値βavがドリフト誤差α1よ
りも小さいと判断した場合には、第2更新を実施する(ステップST104)。
これに対して、ステップST103において、端末20は、VCO補正値βavがドリ
フト誤差α1以上である判断した場合には、第1更新を実施する(ステップST105)

【0078】
ステップST11を終了すると、端末20は、測位完了か否かを判断し(ステップST
12)、測位完了であれば、終了する。測位完了でなければ、ステップST5以下を繰り
返す。測位完了か否かは、例えば、予め規定された時間である120秒間が経過したか否
かによって判断される。
【0079】
図24のステップST10において、端末20は、中間更新実施条件を満たさないと判
断した場合には、新たな第2ドリフトdf2の算出を待って、基本更新を実施する(ステ
ップST13)。
【0080】
以上のステップによって、第1ドリフトdf1を利用することによってサーチレンジが
広くなることを制限しつつ、測位の間におけるドリフト変動によって受信周波数がサーチ
レンジを外れる状態の継続時間を短縮化することができる。
また、端末20は、参照周波数Hrの精度の高い誤差補正値を取得することができる。
そして、端末20は、VCO補正値βavを使用して、第2更新を実施することができ
る。これにより、中間更新におけるサーチレンジの更新において、参照周波数Hrの誤差
を排除することができるから、従来よりもサーチレンジを狭くすることができる。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態について、説明する。
第2の実施の形態における端末20Aの構成は、上記第1の実施の形態の端末20と多
くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点
を中心に説明する。
【0082】
図26は、端末20Aの主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図26に示すように、端末20Aは、第1記憶部110に、第1ドリフト修正プログラ
ム132を格納している。
【0083】
図27は、第1ドリフト修正プログラム132の説明図である。
図27に示すように、制御部100は、第1ドリフト情報158として保持している複
数の第1ドリフトdf1に基づいて、回帰直線Lを算出する。最も新しい第1ドリフトは
、例えば、現在時刻t7において算出された第1ドリフトdf1(7)である。
制御部100は、回帰直線Lを示す回帰直線情報172を第2記憶部150に格納する

【0084】
そして、制御部100は、現在時刻t7に対応する回帰直線上の周波数を修正第1ドリ
フトdf1rとして算出する。修正第1ドリフトdf1rは、修正後の第1ドリフトの一
例である。
制御部100は、算出した修正第1ドリフトdf1rを示す修正第1ドリフト情報17
4を第2記憶部150に格納する。
【0085】
上述の第1ドリフト修正プログラム132と制御部100は、第1ドリフト修正手段の
一例である。
【0086】
なお、本実施の形態とは異なり、制御部100は、保持しているすべての第1ドリフト
df1の平均値を算出し、その平均値を修正第1ドリフトdf1rとしてもよい。
【0087】
制御部100は、VCO誤差算出プログラム124によって、修正第1ドリフトdf1
rと第2ドリフトdf2との差分を算出するようになっている。
これにより、第1ドリフトdf1の算出過程における誤差の影響を低減することができ
る。特に、高速移動時や、基地局40のハンドオーバーの際には、第1ドリフトdf1が
大きく変動する現象が確認されている。本実施の形態は、このように、第1ドリフトdf
1が大きく変動する場合に有効である。
そして修正第1ドリフトdf1rと第2ドリフトdf2との差分を算出するから、VC
O補正値βavの精度を一層向上させることができる。この結果、シミュレーションでは
、TTFFが、従来50秒(s)であったものが、30秒(s)になった。
【0088】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、説明する。
第3の実施形態における端末20Bの構成は、上記第2の実施の形態の端末20Aと多
くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点
を中心に説明する。
【0089】
図28は、端末20Bの主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図28に示すように、端末20Bは、第1記憶部110に、VCO補正値予想プログラ
ム134を格納している。
【0090】
図29は、VCO補正値予想プログラム134の説明図である。
制御部100は、前回のVCO補正値βavの算出時からの経過時間Δtを算出し、式
9によって、現在時刻におけるVCO補正値βavを予想として、予想VCO補正値βe
stを算出する。
制御部100は、算出した予想VCO補正値βestを示す予想VCO補正値情報17
6を第2記憶部150に格納する。
【0091】
制御部100は、VCO誤差算出プログラム124によって、修正第1ドリフトdf1
rと予想VCO補正値βestとの差分β(VCO誤差β)を算出するようになっている

このため、過去のVCO補正値βavを使用したとしても、差分βの精度を向上させる
ことができる。なお、VCO補正値βavには、一定の有効時間があり、その有効時間は
、例えば、120秒(s)である。この有効時間は、一度の測位継続時間によって規定さ
れている。
制御部100は、有効なVCO補正値βavが存在しない場合には、差分βを算出せず
に、基本更新を行うようになっている。
【0092】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の第1ドリフト算出ステップと、サーチレンジ算出ステッ
プと、第2ドリフト算出ステップと、参照周波数誤差算出ステップと、誤差補正値算出ス
テップ等を実行させるための端末装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような端末装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な
記録媒体等とすることもできる。
【0093】
これら端末装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータに
よって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー
(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc
Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Rec
ordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、
DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアの
みならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスク
あるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0094】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法の一例を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関処理の説明図である。
【図5】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図6】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図7】第1ドリフト算出プログラムの説明図である。
【図8】第1サーチレンジ算出プログラムの説明図である。
【図9】第2ドリフト算出プログラムの説明図である。
【図10】第2サーチレンジ算出プログラムの説明図である。
【図11】VCO誤差算出プログラムの説明図である。
【図12】VCO補正値算出プログラムの説明図である。
【図13】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図14】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図15】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図16】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図17】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図18】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図19】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図20】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図21】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図22】サーチレンジ更新プログラムの説明図である。
【図23】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図24】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図25】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図26】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図27】第1ドリフト修正プログラムの説明図である。
【図28】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図29】VCO補正値予想プログラムの説明図である。
【符号の説明】
【0096】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・観
測可能衛星算出プログラム、114・・・第1ドリフト算出プログラム、116・・・第
1サーチレンジ算出プログラム、118・・・第2ドリフト算出プログラム、120・・
・第2サーチレンジ算出プログラム、122・・・サーチレンジ更新プログラム、124
・・・VCO誤差算出プログラム、126・・・VCO補正値算出プログラム、128・
・・測位プログラム、130・・・測位位置出力プログラム、132・・・第1ドリフト
修正プログラム、134・・・VCO補正値予想プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星か
らの衛星信号を受信して測位を行う端末装置における、参照周波数の誤差補正値の取得方
法であって、
前記参照周波数を使用して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出する第1ドリフト
算出ステップと、
前記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレンジを算出するサーチレンジ算
出ステップと、
前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフトを算出する第2ド
リフト算出ステップと、
前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分を算出することによって、前記参照周波数
の誤差である参照周波数誤差を算出する参照周波数誤差算出ステップと、
複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによって、前記参照周波数の誤差補正値
を算出する誤差補正値算出ステップと、
を有することを特徴とする参照周波数の誤差補正値の取得方法。
【請求項2】
前記参照周波数誤差算出ステップに先立って、
複数の前記第1ドリフトを統計処理して、前記第1ドリフトを修正する第1ドリフト修
正ステップを有し、
前記参照周波数誤差算出ステップにおいては、修正後の前記第1ドリフトと前記第2ド
リフトとの差分を算出することを特徴とする請求項1に記載の参照周波数の誤差補正値の
取得方法。
【請求項3】
前記第1ドリフト修正ステップにおける前記修正は、複数の前記第1ドリフトに基づい
て回帰直線を生成し、前記回帰直線上の現在時刻に対応する前記第1ドリフトを算出する
処理であることを特徴とする請求項2に記載の参照周波数の誤差補正値の取得方法。
【請求項4】
複数のSPS衛星からの衛星信号を受信して測位を行う端末装置であって、
参照周波数を使用して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出する第1ドリフト算出
手段と、
前記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレンジを算出するサーチレンジ算
出手段と、
前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフトを算出する第2ド
リフト算出手段と、
前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分を算出することによって、前記参照周波数
の誤差である参照周波数誤差を算出する参照周波数誤差算出手段と、
複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによって、参照周波数の誤差補正値を算
出する誤差補正値算出手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項5】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を受信して測位を行う端末装置が、参照周波数を使用
して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出する第1ドリフト算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレンジを算出す
るサーチレンジ算出ステップと、
前記端末装置が、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフト
を算出する第2ドリフト算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分を算出することによって
、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を算出する参照周波数誤差算出ステップと

前記端末装置が、複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによって、参照周波数
の誤差補正値を算出する誤差補正値算出ステップと、
を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を受信して測位を行う端末装置が、参照周波数を使用
して局部発振器の第1ドリフトを継続的に算出する第1ドリフト算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1ドリフトを使用して、前記衛星信号のサーチレンジを算出す
るサーチレンジ算出ステップと、
前記端末装置が、前記衛星信号の受信周波数を使用して前記局部発振器の第2ドリフト
を算出する第2ドリフト算出ステップと、
前記端末装置が、前記第1ドリフトと前記第2ドリフトの差分を算出することによって
、前記参照周波数の誤差である参照周波数誤差を算出する参照周波数誤差算出ステップと

前記端末装置が、複数の前記参照周波数誤差を統計処理することによって、参照周波数
の誤差補正値を算出する誤差補正値算出ステップと、
を実行させることを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み
取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−70244(P2008−70244A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249455(P2006−249455)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】