双性イオン性ポリマーからの自己組織化粒子および関連する方法
有利に自己組織化して粒子になる双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体、双性イオン性コポリマーおよび双性イオン性抱合体から組織化する粒子、自己組織化した粒子を含む医薬組成物、およびこの粒子を使用して治療用および診断用薬剤を送達する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は2009年11月6日に提出した米国仮出願第61/259,085の利益を主張する。各出願は参照によりその全体がここに明確に組み込まれる。
【0002】
政府使用許諾権の記載事項
本発明は、政府の支援により、the Office of Naval Research、the National Science Foundation、およびthe National Cancer Instituteからそれぞれ与えられたN000140910137、DMR 0705907、およびU54 CA 119335-04Sの下で行われた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
ナノ粒子(NP)の安定性および標的効率は薬物送達および画像診断へのその用途にとって最も重量な2つの点である。コーティング材料は、これら2つの点に対処するために、NPを安定にするだけでなく多機能性にするのに必要とされる。ポリエチレングリコール(PEG)は、非特異タンパク質吸着に対するその耐性(すなわちノンファウリング(nonfouling)性)のおかげで、安定化目的のためにNPを修飾するのに最も一般的に使用される材料である。しかしながら、PEGは酸化損傷および生体媒質中での機能の低下に敏感であり、その長期適用を制限する。複合培地でのその安定性の他にも、NP自体の安定性はしばしば見逃されるもう1つの重要な点である。NPはあらゆる必要な製造プロセスたとえば遠心分離または凍結乾燥を通じて無傷のままであることを必要とする。PEGでコーティングされたそれを含むNPの安定性を維持するために、たとえば低速限外ろ過および凍結乾燥前の凍結保護物質の添加などのいくつかの手段を使用しなければならない。標的化薬物送達のために、生物学的認識要素(たとえば、標的リガンド)を多くの場合NP表面上に固定する必要がある。長いPEG鎖(たとえば、2−5kDa)の端部で潜在的に利用可能なのは1つの官能基のみであり、これに生体分子を抱合させる。加えて、未反応官能基は、特に複合培地たとえば血漿および血清中で、非特異的結合を引き起こしうる。現在の全てのNPコーティング材料では、優れた安定性と多機能性との間で妥協しなければならないであろう。
【0004】
NPコーティング材料の開発の進歩にも拘わらず、NPの超安定性および多機能性の両方に適応できる単一の材料またはコーティングのプラットフォームについての必要性が存在する。
【0005】
発明の概要
1つの態様において、本発明はブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマーを提供する。
【0006】
1つの実施形態において、双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化1】
【0007】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【0008】
もう1つの態様では、本発明はブロックコポリマーであって:
(a)混合電荷コポリマーを含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマーを提供する。
【0009】
1つの実施形態では、混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化2】
【0010】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【0011】
上述のポリマーに関して、1つの実施形態では、疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックは乳酸−グリコール酸コポリマー(poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックは約1,000から約200,000までの数平均分子量を有する。
【0012】
1つの態様では、本発明は、双性イオン性ポリマー抱合体であって、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む抱合体を提供する。
【0013】
1つの実施形態では、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)は複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化3】
【0014】
ここで
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【0015】
1つの態様では、本発明は混合電荷コポリマー抱合体であって、混合電荷ポリマーに共有結合している脂質を含む混合電荷ポリマー抱合体を提供する。
【0016】
1つの実施形態では、混合電荷複合体コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化4】
【0017】
ここで
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【0018】
上述の抱合体に関して、1つの実施形態では、脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールでる。1つの実施形態では、脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される。1つの実施形態では、脂質はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。
【0019】
他の態様では、本発明は粒子を提供する。
【0020】
1つの実施形態では、本発明はコアシェルポリマー粒子であって、複数の本発明のブロックコポリマーを含む粒子を提供する。
【0021】
1つの実施形態では、本発明はミセルであって、複数の本発明の抱合体を含む複数のリポソームの抱合体を含むミセルを提供する。
【0022】
1つの実施形態では、本発明はリポソームであって、複数の本発明の抱合体を含むリポソームを提供する。
【0023】
1つの実施形態では、本発明はポリマーソームであって、複数の本発明のブロックコポリマーを含むポリマーソームを提供する。
【0024】
粒子は1種以上の標的薬剤と、1種以上の治療用薬剤および/または1種以上の診断用薬剤とをさらに含むことができる。
【0025】
他の態様では、本発明は、本発明の1つ以上の粒子と、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、治療用および/または診断用薬剤を送達する方法であって、本発明の組成物をそれを必要とする対象者に投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明の前述の態様および付随する利点の多くは、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を参照することによって容易に理解されるであろうし、同時にそれはより十分に理解されることとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の代表的な双性イオン性ポリマー抱合体、PLGA−PCBコポリマーの調製;PLGA−PCB/Dtxl NPの形成;および標的リガンドまたは診断色素によるNPのポスト機能付与の概略図である。
【図2A】図2A−図2Fは、代表的な双性イオン性ポリマー抱合体ナノ粒子の特徴を示している。凍結乾燥および超音波処理なしのピペットによる水中での簡単な再懸濁前(図2A)および再懸濁後(図2B)のPLGA−PCB NPについての走査電子顕微鏡(SEM)画像。棒目盛は1μmである。
【図2B】図2A−図2Fは、代表的な双性イオン性ポリマー抱合体ナノ粒子の特徴を示している。凍結乾燥および超音波処理なしのピペットによる水中での簡単な再懸濁前(図2A)および再懸濁後(図2B)のPLGA−PCB NPについての走査電子顕微鏡(SEM)画像。棒目盛は1μmである。
【図2C】図2Cは10重量%BSAのPBS溶液中および100%FBS中での37℃での5日間にわたるPLGA−PCB NPの安定性を示している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットしている。
【図2D】図2Dは、PLGA−PCB NPについての高速遠心分離に対するNPの安定性を、3回の連続遠心分離サイクルで試験したものである。遠心分離の各工程(16110g、15分)ののち、上澄み液を除去するかまたは保持し、NPペレットをピペットにより超音波処理なしで再懸濁した。
【図2E】図2Eは、PLGA−PCB/Dtxl NP(1重量%の薬物負荷)についての高速遠心分離に対するNPの安定性を、3回の連続遠心分離サイクルで試験したものである。遠心分離の各工程(16110g、15分)ののち、上澄み液を除去するかまたは保持し、NPペレットをピペットにより超音波処理なしで再懸濁した。
【図2F】図2Fは、凍結保護物質の添加なしに凍結乾燥させたのちの、PLGA、NP、PLGA−PCB NP、および1重量%の薬物負荷をしたPLGA−PCB/Dtxl NPの安定性を示している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)をプロットしており、多分散指数(PDI、平均±SD、n=3)を各大きさの点と共に示している。
【図3A】図3Aは、NH2−フルオレセインと抱合したPLGA−PCB NPについての研究の結果を示している。フルオレセイン処理をしていない裸のNP、フルオレセイン(−EDC、+NHS)で処理したNP、およびフルオレセイン(+EDC、+NHS)で処理したNPをそれぞれ黒色、青色、および緑色の曲線で示している。フルオレセインと共有結合したNP(緑色の線)は、NP(−EDC+NHS+フルオレセイン)からの平均蛍光強度の大きな増加を示す。ガラクトースで機能付与されたPLGA−PCB/NBD NPのHepG2細胞への結合。
【図3B】図3Bは、細胞を2時間にわたり、NH2−ガラクトース(+EDC、+NHS)で処理したPLGA−PCB/NBD NPと共にインキュベートしたものである。蛍光画像および位相差画像を20時間で撮り、それを図に示したように合わせた。
【図3C】図3Cは、細胞を2時間にわたり、NH2−ガラクトース(−EDC、+NHS)で処理したPLGA−PCB/NBD NPと共にインキュベートしたものである。蛍光画像および位相差画像を20時間で撮り、それを図に示したように合わせた。
【図4】図4は、本発明の代表的な双性イオン性ブロックコポリマー、DSPC−PCBの調製の概略図である。
【図5A】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5B】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5C】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5D】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図6】図6は、本発明の代表的な粒子(リポソーム)(DSPC/DPSE−PCB 5K)および関連する粒子についてのPBS中での37℃でのリポソーム安定性を深くしている。
【図7】図7は、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPからのドセタキセル放出プロファイルをPLGA NPと比較している。両方のNPの薬物負荷は1重量%であった。
【図8A】図8Aおよび図8Bは10重量%BSAのPBS溶液(図8A)中、および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。
【図8B】図8Aおよび図8BはPBS中の10重量%BSA溶液(図8A)中、および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。
【図9】図9は、HepG2細胞での、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPの細胞生存度(細胞毒性)をPLGA NPと比較している。NPを細胞と共に示した濃度で24時間にわたってインキュベートし、直ぐに細胞生存度について3回分析した。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、有利に自己組織化して粒子になるブロックコポリマーおよび抱合体を提供する。本発明は、ブロックコポリマーおよび抱合体から組織化された粒子、前記自己組織化粒子を含む医薬組成物、ならびに治療用および診断用薬剤を前記粒子を使用して送達する方法をさらに含む。前記ブロックコポリマーおよび抱合体ならびに関連する粒子の製造方法も提供する。
【0030】
ブロックコポリマー
1つの態様では、本発明はブロックコポリマーを提供する。1つの実施形態では、ブロックコポリマーは双性イオン性ブロックコポリマーである。もう1つの実施形態では、ブロックコポリマーは混合電荷ブロックコポリマーである。
【0031】
双性イオン性ブロックコポリマー
1つの実施形態では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマーを提供する。ここで使用する限りにおいて、用語「双性イオン性ブロックコポリマー」は、双性イオン性ポリマーブロックを有するブロックコポリマーを指す。
【0032】
1つの実施形態では、ブロックコポリマーは双性イオン性ブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含む双性イオン性ブロックコポリマーを提供する。
【0033】
1つの実施形態において、双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式(I)を有し:
【化5】
【0034】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
*は繰り返し単位が次のそれに共有結合をしている場所を示している。
【0035】
混合電荷ブロックコポリマー
1つの実施形態では、本発明は混合電荷ブロックコポリマーを提供する。1つの実施形態では、ブロックコポリマーは混合電荷ブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)を含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含む混合電荷ブロックコポリマーを提供する。
【0036】
ここで使用する限りにおいて、用語「混合電荷ブロックコポリマー」は混合電荷ポリマーブロックを有するブロックコポリマーを指す。
【0037】
ここで使用する限りにおいて、用語「混合電荷コポリマー」は、ポリマー主鎖と、正に帯電した複数の繰り返し単位と、負に帯電した複数の繰り返し単位とを有するコポリマーを指す。本発明の実施では、これらのコポリマーはイオン対コモノマーの重合によって調製できる。
【0038】
混合電荷コポリマーは、正に帯電した複数の繰り返し単位と負に帯電した複数の繰り返し単位とを含む。1つの実施形態では、混合電荷コポリマーは実質的に電子的中性である。ここで使用する限りにおいて、用語「実質的に電気的中性な」は有利な非ファウリング性をコポリマーに付与するコポリマーを指す。1つの実施形態では、実質的に電気的中性なコポリマーは正味の電荷が実質的にゼロであるコポリマー(すなわち、正に帯電した繰り返し単位と負に帯電した繰り返し単位との数がほぼ同じであるコポリマー)である。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.5までである。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.7までである。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.9までである。
【0039】
イオン対コモノマー。1つの実施形態では、コモノマーは好適な重合性イオン対コモノマーの共重合によって調製される。
【0040】
本発明において有用な代表的なイオン対コモノマーは式(II)および(III)を有する。
【化6】
【0041】
この実施形態では、混合電荷コポリマーは式(IV)の繰り返し単位を有する:
【化7】
【0042】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数であり;
*は繰り返し単位が次のそれに共有結合している場所を示している。
【0043】
1つの実施形態では、R7およびR8はC1−C3アルキルである。
【0044】
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成している。1つの実施形態では、R6、R7、およびR8はC1−C3アルキルである。
【0045】
ある実施形態では、L3は−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択され、ここでnは1から20までの整数である。ある実施形態では、L3は−C(=O)O−(CH2)n−であり、ここでnは1−6である。
【0046】
ある実施形態では、L4はC1−C20アルキレン鎖である。代表的なL4基としてはnが1−20(たとえば、1、3、または5)である−(CH2)n−が挙げられる。
【0047】
ある実施形態では、AはCまたはSOである。
【0048】
ある実施形態では、nは5から約5,000までの整数である。
【0049】
1つの実施形態では、R4、R5、R6、R7、およびR8はメチルであり、L3は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L4は−CH2−であり、A1はCまたはSOであり、nは5から約5,000までの整数である。
【0050】
上述の式では、ポリマー主鎖としては、ビニル主鎖(すなわち、−C(R’)(R’’)−C(R’’’)(R’’’’)−,ここでR’、R’’、R’’’、およびR’’’’は独立に水素、アルキル、およびアリールから選択される)が挙げられ、これはビニルモノマー(たとえば、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン)から得られる。
【0051】
上述の式では、N+はカチオン中心である。ある実施形態では、カチオン中心は第4級アンモニウム(たとえば、L1、R2、R3、およびL2に結合しているN)である。アンモニウムに加えて、他の有用なカチオン中心(たとえば、Nと一緒になったR2およびR3)としてはイミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルフォリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、およびピロリジニウムが挙げられる。
【0052】
R1−R8は独立に水素、アルキル、およびアリール基から選択される。代表的なアルキル基としては、C1−C10の直鎖および分枝のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、アルキル基は、たとえばアリール基(たとえば、−CH2C6H5、ベンジル)を含む複数種の置換基のうちの1つでさらに置換されている。1つの実施形態では、R2およびR3、ならびにR6、R7、およびR8はメチルである。1つの実施形態では、R1−R8はメチルである。代表的なアリール基としてはたとえばフェニルなどのC6−C12アリール基が挙げられる。上述の式のある実施形態について、R2およびR3、および/またはR6、R7、およびR8はN+と共にカチオン中心を形成する。
【0053】
L1はカチオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。ある実施形態では、L1は、L1の残基をポリマー主鎖(またはモノマーのための重合性部分)に結合させる官能基(たとえば、エステルまたはアミド)を含む。この官能基に加え、L1はC1−C20のアルキレン鎖を含むことができる。代表的なL1基としては、−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20である(たとえば、n=2)。
【0054】
L2はカチオン中心をアニオン中心に共有結合しているリンカーである。L2はC1−C20のアルキレン鎖でありうる。代表的なL2基としては、−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20(たとえば、1、3、または5)である。
【0055】
L3はカチオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。ある実施形態では、L3は、L3の残基をポリマー主鎖(またはモノマーのための重合性部分)に結合させる官能基(たとえば、エステルまたはアミド)を含む。この官能基に加え、L3はC1−C20のアルキレン鎖を含むことができる。代表的なL3基としては、−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20である(たとえば、n=2)。
【0056】
L4はアニオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。L4はC1−C20のアルキレン鎖でありうる。代表的なL4基としては、−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20(たとえば、1、3、または5)である。
【0057】
代表的なアルキル基としてはC1−C30の直鎖および分子のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、たとえばアリール基(たとえば、−CH2C6H5、ベンジル)などの複数種の置換基のうちの1つでさらに置換されている。
【0058】
代表的なアリール基としては、たとえば置換されたフェニル基を含むフェニルなどのC6−C12アリール基(たとえば、安息香酸)が挙げられる。
【0059】
X-はカチオン中心と会合している対イオンである。対イオンはカチオンポリマーの合成の結果から得られる対イオンまたはモノマー(たとえば、Cl-、Br-、I-)でありうる。カチオン中心の合成から最初に製造される対イオンは、他の好適な対イオンで交換することもできる。代表的な疎水性対イオンとしては、カルボキシラート、たとえば安息香酸および脂肪酸アニオン(たとえば、CH3(CH2)nCO2-、ここでn=1−19);アルキルスルフォナート(たとえば、CH3(CH2)nSO3-、ここでn=1−19);サリチラート;ラクタート;ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン(N-(SO2CF3)2);およびこれらの誘導体が挙げられる。また、他の対イオンを塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン(ClO4);テトラフルオロボラート(BF4);ヘキサフルオロフォスファート(PF6);トリフルオロメチルスルフォナート(SO3CF3);およびこれらの誘導体から選択できる。他の好適な対イオンとしては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、ベンゾアート、およびラクタートが挙げられる。
【0060】
本発明において有用な双性イオン性ポリマーおよび混合電荷コポリマーに関して、重合度(DPまたはn)、数平均分子量(Mn)、および多分散指数としても知られている重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、多様でありうる。1つの実施形態では、ポリマーは重合度(n)が1から約10,000までである。1つの実施形態では、nは約10から約5,000までである。もう1つの実施形態では、nは約100から約3,500までである。1つの実施形態では、ポリマーは数平均分子量(Mn)が約200から約2,000,000Daまでである。1つの実施形態では、Mnは約2,000から約100,000Daまでである。もう1つの実施形態では、Mnは約20,000から約80,000Daまでである。1つの実施形態では、ポリマーは、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が約1.0から約2.0までである。1つの実施形態では、Mw/Mnは約1.1から約1.5までである。もう1つの実施形態では、Mw/Mnは約1.2から約2.0までである。
【0061】
ブロックコポリマーにおいて、疎水性ブロックはコポリマーのうちコアシェル粒子のコアを形成する部分である。好適な疎水性ブロックは生体適合性ポリマーであるポリマーブロックを含む。疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーから構成されうる。双性イオン性ブロックまたは混合電荷コポリマーブロックは粒子のシェルを形成する。
【0062】
代表的な生分解性疎水性ブロックとしてはペプチド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、およびポリオキサエステル、ならびにそれらの誘導体およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
代表的な疎水性ブロックは乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)(Maxon(登録商標))、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)(BioSyn(登録商標))から選択されるポリマーを含む。
【0064】
ある実施形態では、疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000Daまでである。
【0065】
ブロックコポリマーは、疎水性ブロックをベースにしたラジカル開始剤(ラジカル開始末端基を含むように機能付与された疎水性ポリマー)を調製し、次に好適なカルボキシベタインモノマーを重合することによって調製できる。あるいは、ブロックコポリマーは好適に機能付与された疎水性ポリマー(たとえば、末端アミノ基)を好適に機能付与された双性イオン性ポリマー(たとえば、末端カルボキシ基またはその反応性誘導体)またはその疎水性誘導体(たとえば、カチオン性エステル誘導体)に共有結合させることによって調製できる。
【0066】
抱合体
もう1つの態様では、本発明は抱合体を提供する。1つの実施形態では、抱合体は双性イオン性ポリマー抱合体である。もう1つの実施形態では、抱合体は混合電荷コポリマー抱合体である。上で説明したブロックコポリマーと同様に、この抱合体は、抱合体の自己組織上に粒子のコアを構成する疎水性部分を含む。粒子のシェルは双性イオン性ポリマー部分または混合電荷コポリマー部分から構成される。
【0067】
双性イオン性抱合体
1つの実施形態では、本発明は、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む双性イオン性ポリマー抱合体を提供する。もう1つの実施形態では、本発明は、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む混合電荷コポリマー抱合体を提供する。
【0068】
抱合体における使用に好適な脂質は種々の合成のベシクル形成脂質または自然発生のベシクル形成脂質から選択することができる。これらの脂質としてはリン脂質、スフィンゴ脂質、およびステロールが挙げられる。脂質は化学基たとえばアミン基、水酸基、アルデヒド基、またはカルボン酸基を、双性イオン性ポリマーまたは混合電荷コポリマー鎖の共有結合に好適なその極性頭部基に含む。
【0069】
1つの実施形態は、2つの炭化水素基、たとえばフォスファチジルエタノールアミン(PE)、フォスファチジルグリセロール(PG)、フォスファチジン酸(PA)、またはホスファチジルイノシトール(PI)を含み、ここで各炭化水素鎖は3−24個の炭素原子を長さに含み、様々な不飽和度を有する。
【0070】
好適な脂質としては、ジアシルフォスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン、およびセレブロシドから得られるそれが挙げられる。ジアシル化合物の場合、アシル基は脂肪酸基である(たとえばC8−C40)。
【0071】
ある実施形態では、脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである。
【0072】
代表的な脂質としては、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(transDOPE)が挙げられる。
【0073】
1つの実施形態では、疎水性部分はジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。
【0074】
双性イオン性ポリマー抱合体の場合、この抱合体の双性イオン性ポリマー部分は、双性イオン性ポリマーブロックについて上で説明したそれ(すなわち、式(I))と同じである。
【0075】
混合電荷コポリマー抱合体の場合、この抱合体の混合電荷コポリマー部分は、混合電荷コポリマーブロックについて上で説明したそれ(すなわち、式(IV))と同じである。
【0076】
抱合体は、好適に機能付与された疎水性部分(たとえば、末端アミノ)を好適に機能付与された双性ポリマーまたは混合電荷コポリマー(たとえば、カルボキシ末端基またはその反応性誘導体)またはその疎水性誘導体(たとえば、カチオン性エステル誘導体)に共有結合させることによって調製できる。
【0077】
本発明の代表的な双性イオン性抱合体、治療薬を含む対応する粒子、およびこの粒子のリポソーム製剤の調製および特性を、例1において説明する。
【0078】
粒子
本発明のもう1つの態様では、双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体から形成される粒子が提供される。前記コポリマーおよび抱合体の性質のおかげで、粒子は水性の環境において自己組織化によって形成できる。水性の環境(たとえば、生理環境)では、粒子は、コポリマーの疎水性部分を構成する疎水性コアと、コポリマーの高電荷双性イオン性部分を構成する親水性シェルとを有する。もう1つの実施形態では、粒子は前記抱合体から構成されるミセルの形態を有する。
【0079】
ある実施形態では、粒子はベシクル構造を有しうる。1つの実施形態では、粒子は、前記抱合体および他のベシクル形成脂質から作られるリポソームの形態を有する。これらのベシクル形成脂質は種々の合成または自然発生のベシクル形成脂質から選択することができる。これらの脂質としてはリン脂質、スフィンゴ脂質、およびステロールが挙げられる。もう1つの実施形態では、粒子は前記コポリマーから作られるポリマーソームの形態を有する。カーゴ、たとえば治療用および/または診断用薬剤の送達の場合、コアシェルナノ粒子およびミセルは疎水性カーゴを封入するのに適しており、リポソームおよびポリマーソームは、疎水性カーゴも封入できるが、親水性カーゴを優先する。
【0080】
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明の複数の双性イオン性抱合体を含む粒子を提供する。ある実施形態では、この粒子は1種以上のベシクル形成脂質をさらに含む。
【0081】
1つの実施形態では、粒子はコアシェルナノ粒子である。
【0082】
1つの実施形態では、粒子はポリマーソームである。
【0083】
1つの実施形態では、粒子はミセルである。
【0084】
1つの実施形態では、粒子はリポソームである。
【0085】
コア−シェルナノ粒子およびミセルは疎水性粒子をコーティングするのに有用である。疎水性粒子としては金属粒子(たとえば、金、銀、酸化鉄、量子ドット)およびポリマー粒子が挙げられる。
【0086】
ある実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約5000nmまでである。ある実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約500nmまでである。他の実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約200nmまでである。腎糸球体の孔(約5nm)よりも大きな径を有する堅牢なNPは腎臓ろ過を有効に減らすことができ、それにより血液循環時間を増やすことができる。腫瘍血管系は正常組織(40−80nmまたはさらには1μm)よりも大きな孔隙径を有し、そのため、血管透過性および滞留性亢進(EPR)効果と呼ばれる、好適な大きさのNPの腫瘍への受動性漏出を可能にする。
【0087】
治療用薬剤。ある実施形態では、本発明の粒子は1種以上の治療用薬剤をさらに含む。本発明に従って使用されうる例示的な治療用薬剤としては小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質(たとえば、多量体タンパク質、タンパク質複合体、ペプチド)、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素および化合物、薬物、ワクチン、免疫薬、および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は薬剤活性を有する小分子および/または有機金属化合物である。いくつかの実施形態では、治療薬剤は臨床的に使用する薬物である。いくつかの実施形態では、薬物は、抗ガン剤、抗生剤、抗ウイルス剤、抗HIV剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、麻酔剤、抗凝固薬、酵素の阻害剤、ステロイド剤、ステロイド系または非ステロイド系抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、抗悪性腫瘍薬、抗原、ワクチン、抗体、鬱血除去薬、鎮静剤、オピオイド、鎮痛剤、解熱剤、産児調節剤、ホルモン、プロスタグランジン、黄体ホルモン剤、抗緑内障剤、眼病用剤、抗コリン作動薬、麻酔剤、抗鬱剤、抗精神病薬、神経毒、催眠薬、精神安定剤、痙攣薬、筋弛緩剤、抗パーキンソン剤、鎮痙剤、筋収縮剤、チャネル遮断剤、縮瞳薬、分泌抑制剤、抗血栓剤、抗凝血剤、抗コリン剤、β−アドレナリン遮断薬、利尿剤、心血管活性剤、血管作用薬、血管拡張剤、抗過敏症剤、血管形成剤、細胞−細胞外マトリックス相互作用のモジュレータ(たとえば、細胞増殖阻害剤および抗接着分子)、DNA、RNAまたはタンパク質合成の阻害剤である。
【0089】
ある実施形態では、小分子薬は任意の薬物でありうる。いくつかの実施形態では、薬物は、ヒトまたは動物における使用に安全かつ有効であると政府関連機関または規制機関によって既に判断されているものである。たとえば、ヒトでの使用が認可された薬物は、アメリカ食品医薬局によって、参照によりここに組み込まれる21 C.F.R. §§ 330.5, 331〜361、および440〜460に列挙されている;獣医学用途のための薬物は、アメリカ食品医薬局によって、参照によりここに組み込まれている21 C.F.R §§ 500〜589に列挙されている。列挙された全ての薬剤は本願発明に従う使用に合格であると考えられている。
【0090】
本発明における使用に好適な種類および具体的な薬剤のより完全な一覧表は、Pharmaceutical Drugs: Syntheses, Patents, Applications by Axel Kleemann and Jurgen Engel, Thieme Medical Publishing, 1999およびthe Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs and Biologicals, Ed. by Budavari et al, CRC Press, 1996にあり、これらは両方とも参照によりここに組み込まれている。
【0091】
本発明のある実施形態では、治療用薬剤は核酸(たとえば、DNA、RNA、その誘導体)である。いくつかの実施形態では、核酸剤は機能性RNAである。一般に、「機能性RNA」は、タンパク質をコードするものではなく、代わりにその構成要素が細胞内で1つ以上の別々の機能または活性を特徴的に有するRNA分子の種類に属する。異なる配列を有する機能性RNA分子の相対的な活性は異なりうるものであり、該RNAが存在している特定の細胞のタイプに少なくとも部分的に依存しうることが認められるであろう。したがって、用語「機能性RNA」はここではある種類のRNA分子を指すのに使用し、この種類の全ての構成要素があらゆる特定の条件のセットのもとで実際にこの種類の活性特徴を示すことを意味することを意図していない。いくつかの実施形態では、機能性RNAとしては、RNAi誘起実体(たとえば、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロRNA)、リボザイム、tRNA、rRNA、三重らせん形成に有用なRNAが挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態では、核酸剤はベクターである。ここで使用する限りにおいて、用語「ベクター」は、核酸分子であって、それが結合していた他の核酸を運搬することができる核酸分子(典型的には、必ずしもそうではないが、DNA分子)を指す。ベクターは、ホスト細胞においてそれらが結合する核酸の染色体外での複製および/または発現を達成することができる。いくつかの実施形態では、ベクターはホスト細胞のゲノムへの組込みを達成することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ベクターはタンパク質および/またはRNAの発現を管理するのに使用される。いくつかの実施形態では、発現させようとするタンパク質および/またはRNAは細胞によっては通常発現されない。いくつかの実施形態では、発現さようとするタンパク質および/またはRNAは細胞によって通常発現されるが、ベクターが該細胞へ送達されていない場合に発現されるそれよりも低いレベルである。いくつかの実施形態では、ベクターが、ここで説明した機能性RNA、たとえばRNAi誘起実体、リボザイムのいずれかの発現を管理する。
【0094】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤はタンパク質またはペプチドでありうる。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は交互に使用することができる。ある実施形態では、ペプチドは、大きさが、約5から約5000まで、5から約1000まで、約5から約750まで、約5から約500まで、約5から約250まで、約5から約100まで、約5から約75まで、約5から約50まで、約5から約40まで、約5から約30まで、約5から約25まで、約5から約20まで、約5から約15まで、または約5から約10までのアミノ酸に及ぶ。
【0095】
ポリペプチドはL−アミノ酸、D−アミノ酸、またはその両方を含有する場合があり、当技術で知られている種々の修飾アミノ酸または類似物のいずれかを含有する場合がある。有用な修飾としては、たとえば末端アセチル化、アミド化が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ここで説明したような、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびこれらの組み合わせを含みうる。
【0096】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤はホルモン、エリスロポエチン、インスリン、サイトカイン、ワクチン接種のための抗原、成長因子でありうる。いくつかの実施形態では、治療用薬剤は抗体および/またはその特徴部分でありうる。いくつかの実施形態では、抗体としては、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ(すなわち「ヒト化」)抗体、または一本鎖(組替体)抗体を挙げることができる。いくつかの実施形態では、抗体は低減されたエフェクター機能および/または二重特異性分子を有しうる。いくつかの実施形態では、抗体としてはFabフラグメントおよびFab発現ライブラリーによって作られるフラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、およびFdフラグメント)を挙げることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は炭水化物である。ある実施形態では、炭水化物はタンパク質と会合している炭水化物(たとえば、糖タンパク質、プロテオグリカン)である。炭水化物は天然でもよいしまたは合成でもよい。また、炭水化物は誘導体化された天然炭水化物でもよい。ある実施形態では、炭水化物は単糖類または複合糖類でありうる。ある実施形態では、炭水化物は単糖類であり、限定はされないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、およびリボースが挙げられる。ある実施形態では、炭水化物は二糖類であり、限定はされないが、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、およびセロビオースが挙げられる。ある実施形態では、炭水化物は多糖類であり、限定はされないが、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、デキストロース、デキストラン、グリコーゲン、キサンタンガム、ジェランガム、でんぷん、およびプルランが挙げられる。ある実施形態では、炭化水素は糖アルコールであり、限定はされないが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、およびラクチトールが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は脂質である。ある実施形態では、脂質はタンパク質に会合している脂質(たとえば、リポタンパク質)である。本発明に従って使用されうる例示的な脂質としては、限定されないが、油、脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、シス脂肪酸、トランス脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ホルモン、ステロイド(たとえば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(たとえば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポタンパク質が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、脂質は1種以上の脂肪酸基またはその塩を含みうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は可消化性であり、長鎖(たとえば、C8−C50)であり、置換されているまたは置換されていない炭化水素を含みうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキド酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1種以上でありうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1種以上でありうる。
【0100】
診断用薬剤。ある実施形態では、本発明の粒子は1種以上の診断用薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、診断用薬剤としては、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CAT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影、X線、蛍光透視検査、および磁気共鳴映像法(MRI)で使用される市販の撮像造影剤(imaging agent);鎮吐薬;ならびにコントラスト造影剤(contrast agent)が挙げられる。MRIでのコントラスト造影剤としての使用に好適な材料の例はガドリニウムキレートと、鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムとを含む。CATおよびX線撮像に有用な材料の例としてはヨウ素系の材料が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、診断用および/または治療用薬剤は放射性核種でありうる。使用する放射性核種の中で、ガンマ放射体、ポジトロン放射体、およびX線放射体が診断および/または治療の目的に好適であるが、ベータ放射体およびアルファ放射体も治療のために使用することができる。本発明での使用に好適な放射性核種としては、限定されないが、123I、125I、130I、131I、133I、135I、47Sc、72As、72Se、90Y、88Y、97Ru、100Pd、101mRh、119Sb、128Ba、197Hg、211At、212Bi、212Pb、109Pd、111In、67Ga、68Ga、67Cu、75Br、77Br、99mTc、14C、13N、15O、32P、33P、および18Fが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、診断用薬剤は蛍光性、発光性または磁性部分でありうる。蛍光性および発光性部分としては種々の様々な有機または無機の小分子が挙げられ、これら「色素」、「ラベル」または「インジケーター」と一般に呼ばれる。例としてはフルオレセイン、ローダミン、アクリジン色素、Alexa色素、シアニン色素が挙げられる。蛍光性および発光性部分としては種々の天然発生タンパク質およびその誘導体、たとえば遺伝子改変変異体が挙げられうる。たとえば、蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度GFP、赤色、青色、黄色、シアン、およびサファイア蛍光タンパク質、サンゴ礁蛍光タンパク質が挙げられる。発光タンパク質としては、ルシフェラーゼ、エクオリンおよびこれらの誘導体が挙げられる。多くの蛍光および発光色素およびタンパク質が当技術において知られている(たとえば、米国特許出願公開第2004/0067503号; Valeur, B., "Molecular Fluorescence: Principles and Applications," John Wiley and Sons, 2002;Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, Molecular Probes, 9th edition, 2002;およびThe Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Invitrogen, 10th edition(the Invitrogenのウェブサイトから閲覧可能である)を参照のこと)。
【0103】
いくつかの実施形態では、診断用薬剤は所定の診断方法で検出できるナノ粒子、たとえば量子ドット、酸化鉄、金ナノ粒子、ナノロッドもしくはナノシェル、カーボンナノチューブ、ナノシート、シリカで保護したナノ粒子またはこれらのナノ材料の組み合わせでありうる。
【0104】
ある実施形態では、本発明の粒子は、1種以上の治療用薬剤および/または1種以上の診断用薬剤をさらに含む。
【0105】
標的薬剤。ある実施形態では、粒子(カーゴを有しているまたは有していない)は1種以上の標的薬剤をさらに含む。
【0106】
治療および診断目的に有用な粒子は、本発明のポリマーを用いて有利に処理できる。ある実施形態では、表面は、複数のポリマーのうち前記表面に接着した部分に供給結合している複数の標的結合パートナーを含む。この実施形態では、標的結合パートナーは標的分子に対する親和性を有する。これらの実施形態では、表面を診断分析で使用できる。
【0107】
表面に対する標的分子の結合親和性は、表面に固定された標的結合パートナーから得られる。標的結合パートナーと標的分子とは、各々結合対要素と呼ばれ、結合対を形成する。各結合対要素は他方の要素に特異的に結合する分子である。1つの実施形態では、標的結合パートナーは標的分子に対する親和性を有し、約10-8未満のKdを有する。
【0108】
結合対要素は任意の好適な分子でありうるものであり、限定されないが、タンパク質、ペプチド、タンパク質、多糖類または少糖類、糖たんぱく質、脂質およびリポタンパク、ならびに核酸と、明確な生理活性を有する合成有機または無機分子、たとえば抗生剤、抗炎症剤、もしくは細胞接着メディエーターとが挙げられる。
【0109】
本発明の表面に固定できるタンパク質の例としては、リガンド結合タンパク質、レクチン、ホルモン、受容体、および酵素が挙げられる。代表的なタンパク質としては抗体(モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、一本鎖または他の組替形態)、それらのタンパク質/ペプチド抗原、タンパク質−ペプチドホルモン、ストレプトアビジン、アビジン、Aタンパク質、Gタンパク質、成長因子およびそれらのそれぞれの受容体、DNA結合タンパク質、細胞膜受容体、エンドソーム膜受容体、核膜受容体、ニューロン受容体、視覚受容体、ならびに筋細胞受容体が挙げられる。本発明の表面に固定できる代表的なオリゴヌクレオチドとしては、DNA(ゲノムまたはcDNA)、RNA、アンチセンス、リボザイム、およびRNアーゼPのための外部誘導配列が挙げられ、その大きさは、短いオリゴヌクレオチドプライマーから遺伝子全体までに及びうる。
【0110】
標的化合物に特異的に結合する他の標的結合パートナーとしては、受容体、たとえば炎症性メディエーターP−セレクチンおよびE−セレクチンのためのリガンド上の炭水化物に結合する糖タンパク質上の多糖類または少糖類、ならびに相補配列に結合する核酸配列、たとえばリボザイム、アンチセンス、RNアーゼPのための外部誘導配列、およびアプタマーが挙げられる。
【0111】
1つの実施形態では、標的結合パートナーは抗体であり、標的分子は抗体に対する抗原である。この実施形態では、本発明の表面は抗原に特異的に結合し、非特異タンパク質の吸着を防止する。1つの実施形態では、標的結合パートナーは細胞接着を促進できるタンパク質であり、標的分子は細胞である。この実施形態では、発明の表面は細胞に特異的に結合し、非特異タンパク質の吸着および非特異細胞の接着を防ぐ。
【0112】
標的結合パートナーを固定するためのカルボキシベタインポリマー表面の使用は、参照によりその全体がここに明確に組み込まれているWO 2008/083390に記載されている。
【0113】
医薬組成物
他の態様では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体を含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は対象者への投与に好適な医薬組成物である。これらの組成物は薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤を含む。
【0114】
治療用/診断用薬剤の送達方法
もう1つの態様では、本発明は前記粒子を使用する方法を提供する。
【0115】
1つの実施形態では、本発明は治療用および/または診断用薬剤を治療または診断を必要とする対象者に送達する方法を提供する。この方法では、本発明の双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体のうちの1種以上の粒子を含む組成物を対象者に投与する。
【0116】
以下に、代表的な双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体、それらの粒子、ならびにその特性を説明する。
【0117】
1つの実施形態では、本発明は双性イオン性材料、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)を提供し、これは、各CB側鎖がアミン含有生体分子との抱合のための1つのカルボキシラートアニオン基を有するのと同時に、各アカルボキシラートアニオン基が双性イオン性基としての1つのカチオン性四級アミン基と対を成して、複合培地からであっても非特異タンパク質吸着を有効に防ぐという点で独特である。生体分子との抱合は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミド(EDC/NHS)化学よって容易に達成できる。抱合のあと、未反応のNHSエステル基を加水分解してカルボキシラートアニオンにし、これがカチオン性四級アミンと対を作り、非ファウリング性の双性イオン性構造体を形成する。しかしながら、機能性付与可能なCOOH末端PEGの場合、未反応官能基(たとえば、カルボン酸(carboxylate acid))はいくつかのファウリング問題を、特に複合培地においてもたらしうる。したがって、PCBは大量の官能基ととても低いファウリングバックグラウンドとを全て1つの材料に有し、2つの全く異なる性質:非ファウリング性および機能付与を妥協しない。抗体をPCB被覆センサーチップに固定した場合、機能付与後の表面はとても低いファウリング性(たとえば、未希釈の血漿および血清からでさえも、<0.3ng/cm2の吸着タンパク質)を維持したままであり、血液中の生物マーカーが高い感度で検出できる。CBのNP表面上への導入は薬物送達キャリアの安定性および多機能能力の両方を高める。
【0118】
1つの態様では、本発明は乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)ベースの薬物送達システムを提供する。PLGAは、FDAに認可されており、その疎水性および水性媒体中での加水分解が遅いという性質のおかげにより薬物を封入することと薬物放出を制御することとのために使用されてきた。1つの実施形態では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマー(たとえば、PLGA−PCBブロックコポリマー)を提供し、これは自己組織化して薬物送達用のPCBシェルを有するPLGA−コアNPとなる。
【0119】
PLGA−PCB NPは、双性イオン性CBの強い水和およびPLGA−コアとPCB−シェルと間の明確な親水性/疎水性の違いのおかげによる安定効果を示す。2つのブロック間のこの違いは大きいため、PLGAおよびPCBホモポリマーを共に溶解できる共通の溶媒も混合溶媒もない。したがって、PLGA−PCBブロックコポリマーの合成は、この溶媒問題のせいで非常に挑戦的である。この問題を解決するために、新たなカルボキシベタインtert−ブチル(CB−tBu)エステルモノマーを調製した(図1を参照のこと)。双性イオン性のCBとは異なり、CB−tBuは有機溶媒中での安定性を有するカチオン性エステルモノマーであり、そのためPLGAとPCB−tBuポリマーとの共有結合を共通溶媒、たとえばアセトニトリル中で可能にする。双性イオン性CB構造体は、PLGAとの共有結合後、tBuエステル基の酸性環境、たとえばトリフルオロ酢酸(TFA)中で加水分解することによって再生できる。この合成経路は、双性イオン性CB分子の有機合成における適応性を潜在的に広げ、極性の双性イオン性CBと広範な疎水性分子との間の反応を可能にする。
【0120】
PLGA−PCBブロックコポリマーは、CBのPLGA(適切な末端基を有する)開始ラジカル重合によってまたはPLGAとPCBとの抱合(たとえば、COOH末端PLGAがNH2末端PCBに結合する)によって調製されうる。後者の経路は、NH2−PCB生成物が広範なCOOH末端分子、たとえば市販のPLGA、強力な化学療法薬、ならびに安定化および多機能性目的のためのタンパク質または酵素に抱合されうるので好ましい。しかしながら、NH2−PCBのCOOH−PLGAブロックへの直接抱合は、2つのブロックの極性におけるそれらの劇的な差のせいで難しい。双性イオン性PCBは水またはメタノールのみに溶解させることができるが、PLGAはいずれの溶媒にも溶解させることができない。また、PLGAは少量の水により加水分解することが知られている。これらの「溶媒」の問題を解決するために、本発明はCB−tBuエステルモノマー(図1)を提供し、これは安定であり、無水有機溶媒たとえばアセトニトリルおよびDMFにおける溶解性を有する。CB−tBuエステルモノマーは、TFA-NH3+を生じさせる開始剤(2−アミノエチル2−ブロモイソブチラート)(図1、工程1)によって開始される、原子移動ラジカル重合(ATRP)法によって重合される。TFA塩の除去後、有機溶媒中での優れた溶解性を有するPCB−tBu−NH2が得られ(図1、工程2)、これは、PLGA−PCB−tBuブロックコポリマーを形成する無水アセトニトリル中でのPLGA−NHSとの抱合を可能にする(図1、工程3)。tBuエステルの特異性はTFAによるエステル基の容易な除去にあり、これは、双性イオン性CB構造体を生じさせ、PLGAはこのような酸性環境では無傷のままである(図1、工程4)。1時間のTFA処理は、そのメチルアクリラート部分におけるエステル結合を切ることなしにPCB−tBuをPCBに完全に変換するのに十分であり、6時間までのTFAインキュベーションはPLGAのエステル主鎖を破壊しないであろう。PLGAおよびポリ乳酸(PLA)の酸分解に対する耐性が知られている。そのため、PCB−tBuは、疎水性部分が加水分解を受けるとしても、一方のPCBブロックと他方の疎水性ブロックとを含有するあらゆる両親媒性ブロックポリマー(たとえば、PLA−PCBまたはPLGA−PCB)の一般的な合成方法において使用できる。
【0121】
PLGA−PCB NPを調製するために、ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解させる溶媒置換法(すなわちナノ晶析法)を使用した。PCBブロックは溶解可能であるがPLGAブロックはそうでない水を添加すると、「PLGAコア−PCBシェル」構造のNPが形成される。有機溶媒は撹拌中に蒸発して水溶液が残り、その中でNOが硬化する。疎水性薬物を有機溶媒中でコポリマーに混合する際、それらは上で説明したプロセスの間にNPの疎水性コアの中に封入されるようになる(図1、工程5)。有機溶媒は、PLGAおよびPCBブロック間の極性の明確な違いのおかげで、NP形成において重要な役割を果たしうる。単一の溶媒、たとえば2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)は、この溶媒中でのPLGAの溶解性のおかげでPLGA−PCBを大量に溶解させることができるが、粒度分布が不均一な大きな粒子をもたらす(515.8±50.0nm、PDI=0.527±0.056)。これは、TFE中でのPCBブロックの微視的な不溶状態の結果得られる。したがって、「PCBコア−PLGAシェル」の逆ミセルの形成は、小さく均質なNPに有利でない。TFE中でのPCBブロックの溶解性を高めるために、TFE/MeOH共溶媒を代わりに使用し、それにより、単分散の粒度分布,たとえばNPサイズ=148.8±1.1nm;PDI=0.040±0.011(図2A),を有するNPを再現性のある方法で作製した。なお、TFEは、撹拌の際のTFEの容易な蒸発のおかげで、DMSOよりも好ましい。典型的な調製の場合、PLGA−PCBコポリマーは自己組織化して非常に低いPDIを有するNPになった。収率は100%に近く、晶析物も微小サイズの粒子もこの組織化過程によっては生じなかった。したがって、ろ過を使用して大きな粒子を除去する必要はなかった。溶媒置換中に界面活性剤は必要ない。これは、双性イオン性PCBシェルはNPを水性媒体中で安定化させるからである。PEG化されたNPシステムと比較すると、PCBはNPの分散性に対するより優れた安定化効果を有する。これはPCBがPEGよりも遥かに親水性であり、そのため、自己組織化の過程中に予想されるPLGAによる鎖の包埋が少ないからである。コポリマーブロック間の明確な極性の違いが、小さく均質なNPへのこのような有効な組織化に関与する。上で得られたPLGA−PCB NPのゼータ電位を測定すると−43.5±1.0mVであり、同じ大きさ(NPの大きさ=145.7±3.9nm;PDI=0.113±0.033)のPLGA NPはゼータ電位が−68.1±1.8mVであった。
【0122】
ドセタキセルを上述の方法によってPLGA−PCB NPに封入し、薬物放出プロファイルを集めた。調製物中の初期薬物投入量が5重量%である場合、得られるPLGA−PCB/Dtxl NPは、薬物負荷が約1重量%(0.933±0.021重量%)であり、大きさが138.5±0.6nmであり、PDIが0.125±0.017であり、ゼータ電位が−34.8±1.3mVであった。PCBで修飾したおよび修飾していないPLGA NPは、96時間にわたる類似した持続的な薬物放出プロファイルを有し、封入した薬物の50%を最初の8時間で放出する。薬物放出の動態は、PLGAブロックの長さを変化させることによってさらに調節できる;薬物放出速度はPLGAの分子量を増やすことによって延ばすことができる。
【0123】
生物学的な関連培地たとえば血清中でのNPの安定性は、生体内での使用のための薬物送達媒体としてのそれらの実行可能性を決定する。未希釈の血漿および血清からの表面に結合する非特異タンパク質を有効に低減させることがわかっているPCBは疎水性PLGA NPを複合培地中で安定化させることができる。PLGA−PCB NPを、PBS中の10%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液または100%FBS溶液に37℃で入れ、NOの大きさを時間の関数として測定した。13時間の試験中PCB修飾NPの大きさの増加は観察されなかったが、修飾していないPLGA NPはこれらの培地中へのそれらの浸漬直後に激しく凝集した。PLGA−PCB NPの長期研究から、これらの粒子はそれらの元々の大きさを10重量%BSAおよび100%EBS培地の両方で5日間の期間にわたって維持することがわかる(図2C)。これは、PLGA−PCB NPが生体内での薬物送達のために使用できることを意味する。
【0124】
後調製または後処理によるNPの安定性は、実験室で作り出したNPからそれらの臨床用途までにおいても重要である。PCBは静電的に誘起された水和によって水に結合するので、それは水素結合材料たとえばPEGよりも強い水和を有する。双性イオン性PCBポリマーはNPを処理の種々の工程の過酷な条件から保護することが予想される。高速遠心分離はNPペレットを生成するために精製目的で広く使用されているが、PEG化NPなどのPLGAベースのNPはペレット形成中に凝集しやすい。薬物が負荷されているまたは負荷されていないPCB修飾PLGA NPは繰り返される高速遠心分離からペレットの簡単なピペット再懸濁によって容易に回収されたので、それにより超音波処理の必要はなくなった。しかしながら、未修飾のPLGA NPのペレットは、形成すると、超音波処理なしでは再懸濁できない。PCB修飾NPの場合特に、上澄み液を(標準的なNP精製手順でのように)各遠心分離工程で除去した際、図2Dおよび図2Eから計算されたPLGA−PCB NPおよびPLGA−PCB/Dxl NPについて6−9%および1−8%の大きさの増加が、PDIのわずかな増加を伴ってそれぞれ確認された。各サイクル後に得られるより小さなPDIはその残留するNPの単分散に影響を与える。なお、NP凝集に起因しない各サイクル後のわずかな大きさの増加が存在する。より小さなNPは、各遠心分離工程でペレットを形成しにくく、そのため、上澄み液の除去は回収される部分の粒度分布をより大きな値に移動させるであろう。この安全性の問題を二重に確認するために、遠心分離工程の合間で上澄み液を除去しなかった並列実験を行った。繰り返される遠心分離によりNPは同様の大きさおよびPDIを維持したことが分かり、これはPLGA NP(薬物が封入されているまたはされていない)をペレット化によるあらゆる凝集から安定させるPCBの能力を示している。これは、疎水性PLGAコアを機械的に誘起される凝集から安定させる、NPのPCBシェルによって作り出される強い水和層のおかげによる。
【0125】
凍結乾燥は、水性の保管媒体中でのポリマーの分解および薬物の漏れを防ぐための、NPの保管に必要な手順である。凍結保護添加剤なしに凍結乾燥に耐えることができる他のポリマーベースNPはない。PEG化NPであっても、10%スクロースなどの添加剤が必要である。なぜなら、PEGは凍結乾燥によって結晶化され、NP凝集を防ぐその機能を失うからである。PCB修飾PLGA NPは何ら添加剤なしにその安定性を凍結乾燥後に保持する(図2F)。薬物負荷されているまたはされていない乾燥PCB修飾NPのピペットを用いる(超音波処理を必要としない)簡単な再懸濁は同様の平均径および低いPDIでNPを回収する。また、これらのNPは乾燥後にSEMによって視覚化した(図2B)。この挙動は、強いPCBの水和および特徴的なPLGA/PCBブロックによって得られうる。PEGとは異なり、PCBはある量の水分子と強く結合して凍結乾燥中の結晶化を防ぐ。加えて、二つのブロック間の明瞭な極性の差のおかげによるコポリマーの有効な組織化はほとんど欠陥を含まない保護性PCBシェルを与え、これは非常に脱水された環境であっても疎水性コアを遠ざけておく。複合生物学的培地および苛酷な調製後処理に耐えることができるそれら能力のおかげで、双性イオン性PCB修飾NPは産業的および臨床的の両方の安定性の問題に独自に対処する。
【0126】
NPの機能付与は、生体分子をたとえば色素および標的リガンドに様々な目的で付着させるのに必要とされる。興味のある分子をPCBシェル上に固定させることについての実行可能性を調べるために、フルオレセインを蛍光性NPを作り出すためのモデルリガンドとして使用した。PCBのカルボキシル基を(+)EDCおよびNHSの存在下でNHSエステルに変換し、その後フルオレセイン分子中のアミン基と抱合させた。NP表面上での抱合化学を確認するために、ネガティブコントロールとして、NHSエステルの生成なしに、(−)EDCは存在しないが+NHSを存在させてNPを調製した。このネガティブコントロールでは、NPへの色素のあらゆる結合は物理的相互作用によるものであるはずである。フルオレセインインキュベーションのあと、NHSエステルを表面に有するNPは、色素へのそれらの共有結合のおかげでコントロールよりも著しく高い蛍光を有した(図3A)。また、標的薬物送達媒体としてのPLGA−PCB NPの可能性を評価した。緑色蛍光染料(NBD)を「可視」モデル薬物として使用し、NPに封入した。得られたPLGA−PCB/NBD NPを、アミン修飾ガラクトースリガンドに、+EDCおよび+NHSかまたは−EDCおよび+NHSでさらに抱合させ、その後HepG2細胞と共にインキュベートして細胞結合能力を試験した。ガラクトースは、生体内の肝癌細胞株(たとえばHepG2)および生体内の肝細胞中のアシアロ糖タンパク質受容体を標的するのに広く使用される。固定されたガラクトースリガンド(+EDC、+NHS)を有するPLGA−PCB/NBD NPは容易にこの細胞に結合し、それにより図3Bに示すように強い蛍光を生み出す。固定されたリガンド(−EDC、+NHS)を持たないPLGA−PCB/NBD NPは標的性がなく非ファウリング性のNPをもたらし、そのため低い細胞結合能力を有する(図3C)。これらのフルオレセインおよびガラクトース/NBD結果から、PCB修飾NPは、撮像および/または標的の目的でアミン末端分子を用いて容易に機能付与できることが分かる。
【0127】
CBの構造は、溶質が生命体の浸透圧調節に非常に重要であるグリシンベタインのそれに類似している。ヒトによって吸収されるグリシンベタインの概算は1日当たり0.1から2.5gまでである。したがって、バイオミメティックPCBでのPLGAの修飾は、FDAによって認可されたPLGAに何ら毒性をもたらすはずがない。実際、細胞毒性分析から、PLGA−PCB NPが、10mg/mlまでの濃度のNPでの24時間のインキュベーション後のHepG2細胞の生存度に関して、PLGA NPに類似していたことが分かった。この濃度は、成人の場合、体重1kgあたり500mg超に対応し、これは生体内薬物送達に必要とされるものよりも遥かに高い投薬量である。
【0128】
本発明の代表的なナノ粒子薬物送達システムの調製および特性は例2に示す。図7は、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPからのドセタキセル放出プロファイルをPLGA NPと比較する。両NPについての薬物負荷は1重量%である。PCB修飾は薬物放出挙動を未修飾PLGAからあまり変化させなかった。図8Aおよび8Bは、PBS中の10重量%BSA溶液(図8A)および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。図9は、HepG2細胞での、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPの細胞生存度(細胞毒性)をPLGA NPと比較している。NPを細胞と共に示した濃度で24時間にわたってインキュベートし、直ぐに細胞生存度について3回分析した。PLGA NPと類似して、PLGA−PCB NPは10mg/mlまでの濃度で細胞毒を示さなかった。
【0129】
PCB修飾NPは、PEG化NPよりも、その容易な加工性、異常な安定性、および妥協されない多機能性の点で優れている。PCBの豊富なカルボキシレートアニオン基は、標的リガンド、治療用薬物、および診断用ラベルの付着を従来のNHS/EDC化学によって全て1つの材料で可能にし、PCBを「セラノスティックス」のための万能プラットフォームにする。
【0130】
以下の例は、例示を目的として提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【0131】
例1
代表的な双性イオン性抱合体:DSPE−PCBの調製および特性
この例では、本発明の代表的な双性イオン性抱合体,DSPE−PCB,と関連するリポソームの調製および特性を説明する。この抱合体の調製は図4に示している。
【0132】
DSPE−PCB抱合体
原子移動ラジカル重合(ATRP)のためのNHSエステル開始剤(N−ヒドロキシスクシンイミド2−ブロモプロパノアート)。N−ヒドロキシスクシンイミド(2.26g、19.6mmol)および2−ブロモプロピオン酸(1.45ml、16.4mmol)を丸底フラスコ内の500mlの無水ジクロロメタン中に磁気撹拌子を用いて溶解させた。フラスコを0℃まで冷却し、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.35g、16.34mmol)のジクロロメタン溶液(25ml)を滴下した。室温で終夜撹拌したのち、反応混合物を濾過し溶媒を減圧化で除去して、黄色固体を得た。この生成物をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製した。2.4gの白色固体(9.63 mmol、収率=59%)を得た。1H NMR(クロロフォルム)δ(ppm):1.97および2.00(d、3H、−COOCH(CH3)Br)、2.89(s、4H、−COCH2CH2CO−)、4.64(quar、J=6Hz、1H、−COOCH(CH3)Br)。
【0133】
2−tert−ブトキシ−N−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)−N,N−ジメチル−2−オキソエタンアミニウム(CB−tBu)。5gの2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラートおよび8.68gのtert−ブチルブロモアセタートを20mlのアセトニトリル中で24時間にわたって50℃でN2保護下で反応させた。250mlのエチルエーテルを反応混合物に添加し、生じた白色の結晶を単離して乾燥させた。得られたCB−tBuモノマーを直ちに−20℃のデシケータ内に保管した(収率96%)。1H NMR(D2O)δ(ppm):1.44(s、9H、−OC(CH3)3)、1.87(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.28(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、4.60(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.73および6.10(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)。
【0134】
NHS−PCB−tBu。CB−tBuのATRPを無水ジメチルホルムアミド(DMF)中でCu(I)Br/HMTETA触媒を使用して行った。典型的な重合では、DMFおよび液体HMTETAリガンドから窒素によるバブリングによって別々に酸素を追い出した。1gのCB−tBuモノマー(3.67mmol)および125mgのNHS開始剤(0.5mmol)をシュレンク管に添加した。第2のシュレンク管に71.7mgのCu(I)Br(0.5mmol)を添加した。両方の管を窒素および真空の間での3回の循環によって脱酸素した。8および2mLの脱酸素したDMFをモノマー/開始剤の管とCu(I)Brの管とにそれぞれ添加した。136μL(0.50mmol)の脱酸素したHMTETAをCu(I)Br含有溶液に添加し、窒素保護下で30分間にわたって撹拌した。次に、触媒溶液(Cu(I)/HMTETA)をモノマー/開始剤溶液に全て添加して反応を開始させた。反応を終夜室温で行った。重合後、反応はエチルエーテル中で完全に晶析させた。次に、晶析物を減圧下で乾燥させて、極小量のDMF(3−5mL)中に再溶解させた。この溶液を完全に溶解するまでボルテックスで撹拌し、アセトン中で晶析させて可溶な触媒および微量のモノマーを除去した。これを合計で3回繰り返して、触媒を完全に除去した。残ったエステルポリマーを終夜減圧下で乾燥させ、NMRで分析した。(754mg、収率=74.5%)。
【0135】
NHS−PCBおよび分子量測定。tBu基の加水分解によってNHS−PCBが得られた。500mgのNHS−PCB−tBuを5mlのトリフルオロ酢酸中に溶解させたこれを2時間にわたってそのままにしておいた。次に、溶液をエチルエーテル中で晶析させ、終夜減圧下で乾燥させた。分子量(たとえば、約4,909Da)を1H NMR (D2O)δ(ppm):2.82(s、開始剤からの4H、−COCH2CH2CO−)、3.27(b、CBMA−1からの6H、−CH2N(CH3)2CH2COO-)、4.2および4.5(m、6H、−COOCH2CH2N(CH3)2CH2COO-)から決定した。なお、遊離NHSは1H NMR(D2O)δ(ppm):2.67(s、開始剤からの4H、−COCH2CH2CO−)を有するであろう。また、水相GPCはPDI=1.03でのMW=5410Daを示す。これらのMWデータは、DSPE−PCBにおけるPCBブロックについてのMWを特徴付けるのに使用した。
【0136】
DSPE−PCB。1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(DSPE、Genzyme Pharmaceuticals)を手に入れた状態で使用した。1H NMR (トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):0.907(6H、t、J=6.3Hz、−CH3)、1.344(56H、br s、CH3−(CH2)14−)、1.752(4H、m、CH3−(CH2)14−CH2−,)、2.551(4H、m、CH3−(CH2)15−CH2−)、3.664(2H、s、−CH2−NH3+)、4.438および4.606(6H、m、−CH2−CH(C17H35COO)−CH2−PO4−CH2−)、5.581(1H、m、sn2−CH)。
【0137】
典型的な反応の場合、120mgのNHS−PCB−tBu(PCBについてのMWは5Kである)および120mgのDSPEを、30mlクロロホルム/4.3mlのDMFの混合溶媒中で、129μlのトリエチルアミンの存在下で数日間撹拌した。次に、反応混合物を蒸発乾固させてエチルエーテル中で晶析させた。晶析物をアセトニトリルでまず抽出し、ろ過した。ろ液を蒸発乾固させ、TFAによって4時間にわたり処理し、エチルエーテル中で晶析させ、真空乾燥させた。乾燥させた生成物を200mMのリン酸緩衝液(pH=8)中で20mMのヒドロキシルアミンで中和させ、PBS中続けて水中で繰り返し限外ろ過(30KのMWカットオフ)を行った。純粋なDSPE−PCB抱合体がこのプロセスで残り、これを凍結乾燥させた(収率=58%)。
【0138】
DSPE−PCB抱合体の生成を確認し、モル比(DSPE/CB)を1H NMR(トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):2.567(m、DSPEからのCH3−(CH2)15−CH2−の4H)、4.637(br m、DSPEからの−CH2−CH(C17H35COO)−CH2−PO4−CH2−の6H、およびPCBからの−COOCH2CH2N(CH3)2CH2COO-の6H)、5.590(s、DSPEからのsn2−CHの1H)によって測定すると1/20であった。この1/20(DSPE/CB)のモル比は概して5000DaのPCBが1つのDSPE分子に抱合しており、抱合していないPCBのNMRおよびGPC法による分子量と一致していることを意味する。
【0139】
DSPE−PCBリポソーム
典型的な製剤では、脂質成分(たとえば、DSPCおよびDSPE−PCBまたは市販のDSPE−PEGなど)を2,2,2−トリフルオロエタノール中で所望のモル比で混合した。蒸発乾固によって脂質の薄膜が形成された。脂質膜の水和は、60℃でのPBSの添加、続けての3回の凍結融解サイクルによって達成された。得られたリポソームをポリカーボネート膜(80nm)を備えた60℃のAvanti(登録商標) Mini-Extruderを通して20回押し出した。粒度およびその多分散指数(PDI)をPBS中で測定し、ゼータ電位を水中で測定した。種々の製剤についての典型的なリポソームの大きさおよびゼータ電位を図5A−図5Dに示す。概して、これらのリポソームは約100nmであり、低いPDI数を有した。これらのリポソームを、Waters 2414屈折率検出器および特注のサイズ排除カラム(Sephacryl(登録商標) S-500 HR chromatography medium(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を充填したTricorn(登録商標) 10/600カラム)を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。移動相は、流量が1ml/分であり25℃のPBS溶液であった。なお、試験したDSPE−PCBおよびDSPE−PEGの両方ともが水溶液中で単独でミセルを形成するであろう。図5Aおよび図5B(DSPE−PCB)を図5Cおよび図5D(DEPE−PEG)と比較すると、同じ分子量の範囲内では、DSPE−PCBはミセル化を引き起こすことなしにより多く合体してリポソームになることができたことがわかる。リポソームをPBS中で37℃でインキュベートし、凝集からのそれらの安定性を試験した。図6から、DSPE−PCBおよびDSPE−PEG抱合体修飾リポソームのみが、長期凝集からリポソームを保護することができ、一方でこれらの抱合体を持たない製剤は数時間のうちに凝集し始めたことがわかった。
【0140】
表1.様々な製剤についての大きさおよびゼータ電位に関する属性。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは、3回測定し、平均値±標準偏差として示している。
【表1】
【0141】
DSPE−PCBリポソームについての生体内循環試験。表2に挙げた全てのリポソームを、1mol%の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン−N−(リサミンローダミンBスルフォニル)(Avanti)を添加することによって、リポソーム形成プロセス中に蛍光ラベルした。全てのこれらリポソーム製剤は150nm未満であり、ほぼ単分散である。これらの製剤をそれらの循環プロファイルについてラットで評価した。Sprague Dawley(150g)ラットを無作為にグループ分けし(グループの大きさは3である)、3−5%のイソフルランで麻酔した。2.3μmolのリン脂質を含有する200μlの各リポソーム製剤を尾静脈を通して注射した。5分、4時間、8時間、24時間、および48時間に、ラットを3−5%のイソフルランで一時的に麻酔をし、50−100μlの血液を左または右のいずれかの伏在静脈から抜き取った。48時間後、CO2吸引によりラットを安楽死させた。集めた血液を秤量し、水/アセトニトリル混合物に混合させる。短時間の遠心分離後、上澄みを557nmで励起させた際の583.6nmの蛍光放射について測定する。これらの血液試料中のリポソームの投与量を定量化するために、較正曲線を作った。時間に対する投与量は、1−コンパートメント薬物動態学的モデルによって固定し、循環半減期および曲線下面積(AUC)データを計算して表3に示した。DSPE−PEG対象物よりも著しく長いDSPE−PCBリポソームの循環が観察された。DSPC/DSPE−PCB 5K (9/1)自体は9−10時間の半減期を有し、これは3−4時間であるDSPC/DSPE−PEG 5K (9/1)よりもはるかに長い。
【0142】
表2.様々な製剤についての大きさおよびゼータ電位に関する属性。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは3回測定し、平均値±標準偏差として示している。
【表2】
【0143】
表3.様々な製剤についての生体内循環プロファイル。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは3回測定し、平均値±標準偏差として示している。%IDは注射した投与量の%を表している。
【表3】
【0144】
例2
代表的なナノ粒子薬物送達システム:両親媒性PLGA双性イオン性ブロックコポリマーの調製および特性
この例では、本発明の代表的なナノ粒子薬物送達システムの調製および特徴を説明する。
【0145】
材料。臭化2−ブロモイソブチリル、t−Boc−アミノエチルアルコール、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、tert−ブチルブロモアセタート、Cu(I)Br、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)、および4−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(NH2−ガラクトース)をSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)をAcros Organics USA(Morris Plains, NJ)から購入した。50:50のモノマー比の(D,L−乳酸−グリコール酸)コポリマー(PLGA)をDurect Corporation(Pelham, AL)から購入した。ドセタキセル(Dtxl)をLC Laboratories(Woburn, MA)から購入した。5−(アミノメチル)フルオレセイン塩酸塩、および22−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール(NBD)をInvitrogen(Carlsbad, CA)から購入した。
【0146】
ナノ粒子調製
2−アミノエチル2−ブロモイソブチラート。NH2官能基を有するATRP開始剤を以下のようにして合成した。簡単に述べると、3.57gの臭化2−ブロモイソブチリルを、氷浴において、8mlの塩化メチレン中の2.5gのt−Boc−アミノエチルアルコールおよび1.73gのトリエチルアミンの溶液に添加した。4時間の反応後、塩を濾過して取り除き、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて抽出した。塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで乾燥させて、蒸発乾固した。得られたt−Boc−アミノエチル2−ブロモイソブチラートを15mlのトリフルオロ酢酸(TFA)で2時間にわたって処理し、エチルエーテルを添加して再結晶した(収率95%)。1H NMR(DMSO−d6)δ(ppm):1.93(s、6H、−C(CH3)2Br)、3.16(s、2H、TFA-・NH3+CH2CH2OCO)、4.31(t、J=5Hz、2H、TFA-・NH3+CH2CH2OCO)、8.22(s、3H、TFA−・NH3+CH2CH2OCO)。
【0147】
2−tert−ブトキシ−N−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)−N,N−ジメチル−2−オキソエタンアミニウム(CB−tBuモノマー)。5gの2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラートおよび8.68gのtert−ブチルブロモアセタートを20mlのアセトニトリル中で24時間にわたり50℃でN2保護下で反応させた。250mlのエチルエーテルを反応混合物に添加し、生じた白色結晶を単離して乾燥させた。得られたCB−tBuモノマーを直ちに−20℃のデシケータ内に保管した(収率96%)。1H NMR(D2O)δ(ppm):1.44(s、9H、−OC(CH3)3)、1.87(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.28(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、4.60(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.73および6.10(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)。
【0148】
PCB−tBuポリマーの合成。CB−tBuモノマーのATRPを以下のようにして行った:74mgのCu(I)Brおよび148.6mgのHMTETAをシュレンク管の中に入れ、3回の減圧−窒素サイクルに供した。次に、7mlの脱気したDMFを添加して溶液Aを作った。同様に、1.8gのCB−tBuモノマーおよび80mgの2−アミノエチル2−ブロモイソブチラートを、酸素を完全に排除したもう1つのシュレンク管に入れ、続けて8mlの脱気したDMFを添加し、溶液Bを作った。N2保護下で溶液Bを溶液にAに移すことによって重合を開始させた。60℃での24時間にわたる反応後、ポリマーをまずエチルエーテル中で晶析させ、次に少量のエタノール中に溶解させ、アセトン中で繰り返し晶析させ、残留するモノマー、開始剤および触媒を除去した。得られたPCB−tBuを更なる使用の前に減圧下で乾燥させた。
【0149】
PLGA−b−PCB−tBu抱合体。抱合プロセスは、NHS/EDC化学によるものであった。簡単に述べると、3.2gのCOOH末端PLGA(0.20dl/g)、86.4mgのNHSおよび147.2mgのEDCを6mlの塩化メチレン中で4時間にわたり室温で反応させた。次に、5mlのエチルエーテルを添加して、白色晶析物を得た。得られたPLGA−NHSを冷たいエチルエーテル/メタノール混合物(2/1、v/v)で洗浄してNHSおよびEDC残留物を除去し、その後、使用の前に減圧乾燥した。TFA-・NH3+末端pCBMA−tBuを過剰なトリエチルアミンで処理してTFA保護を除去した。NH2末端pCBMA−tBuを濾過によって精製し、エチルエーテル中に晶析させ、減圧乾燥した。878mgのNH2末端PCB−tBuおよび1.68gのPLGA−NHSを7mlのアセトニトリル中の50μlのトリエチルアミンの存在下で60℃で20時間にわたって抱合させた。得られたPLGA−PCB−tBuを冷たいエタノール中に晶析させた。PCBMA−tBu混入物を洗浄サイクルを繰り返すことによって除去した。PLGA−PCBMA−tBu抱合体の生成を確認し、重量比 (PLGA/PCB)を1H NMR(アセトニトリルd3)δ (ppm):1.55(m、PLGAの3H、−COCH(CH3)O−、およびPCB−tBuの9H、−OC(CH3)3)、3.65(br、PCB−tBuの6H、−CH2N(CH3)2CH2COOC(CH3)3)、4.85(m、PLGAの2H、−COCH2O−)、5.22(m、PLGAの1H、−COCH(CH3)O−)によって測定したところ6/1 (モル比12.4/1) であった。ポリマーは使用前に減圧下で乾燥させた。
【0150】
tBuエステル基の加水分解。対照実験において、6時間までTFAで処理したPLGAは、著しい分子量の変化を示さず、1時間のTFA処理後のPCB−tBuは1H NMR(D2O)において1.44ppmの信号を示さなかった。これは、tBuエステル基が完全に除去されることを示している。メタクリラートでのエステル結合がTFA処理によって破壊されなかったことを確かめるために、CB−tBuモノマーをTFA中で1時間にわたり加水分解させ、加水分解生成物が1H NMR(D2O)δ(ppm):1.89(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.48(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO-)、4.54(s、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.75および6.06(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)によりCB双性イオン性モノマーと同定された。PLGA−co−PCBを得るために、PLGA−co−PCB−tBuをTFAで1時間にわたって処理して、tBuエステル基を除去した。得られたPLGA−co−PCBをエチルエーテル中に晶析させ、少量のTFE中に再溶解させ、エチルエーテル中で繰り返して晶析させた。減圧乾燥後、コポリマーはNPの製剤の準備が整っている。重量比(PLGA/PCB)を1H NMR(トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):5.50(m、PLGAの1H、−COCH(CH3)O−)、5.10(m、PLGAの2H、−COCH2O−)、1.77(d、3H、PLGAの−COCH(CH3)O−)、3.64(br、PCBの6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)によって測定すると10/1であった。
【0151】
PCBホモポリマー(PCB−tBuポリマーの加水分解によって得られる)の分子量および分布を、Waters Ultrahydrogel 1000カラムおよびWaters 2414屈折率検出器を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって測定した。移動相は、0.7ml/分の流量で35℃の100mMNaCl水溶液であった。Polymer Laboratoriesからのポリ(エチレンオキシド)を標準として使用した。ゲル透過クロマトグラフィーは、1.12の多分散性での、13640の分子量(Mn)を示す。
【0152】
PLGA−PCB NPの製剤。溶媒置換(ナノ晶析)法を使用して、NPを製剤した。PLGA−PCBコポリマーをTFE/MeOH 1/1 v/v共溶媒中に0.5mg/mlの濃度で溶解させた。水(水:有機溶媒の体積比、4:1)を1000rpmで撹拌しながらコポリマー溶液に滴下して移した。2時間後、溶媒をPBSに交換し、得られたPLGA−PCB NPをAmicon Ultra-4 centrifugal filter(Millipore, Billerica(MA, US))によって100,000 Da MWでカットオフして所望の濃度まで濃縮した。PLGA NPは、J. Cheng, B. A. Teply, I. Sherifi, J. Sung, G. Luther, F. X. Gu, E. Levy-Nissenbaum, A. F. Radovic-Moreno, R. Langer, O. C. Farokhzad, Biomaterials 2007, 28, 869に記載されているように調製した。ドセタキセルを、有機溶媒中でポリマーと混合することによりNPに負荷させ、上述の手段に従ってPLGA−PCB/Dtxl NPを製剤した。NPの平均径、多分散指数(PDI)およびゼータ電位は、Zetasier Nano-ZS(Malvern Instruments Ltd(Malvern, WR, UK))によって3回測定した。0から1.00までに及ぶPDIを使用して、NPの粒径分布を特徴付けた。NPはPDI<0.10の場合に単分散であるとみなす。
【0153】
薬物負荷および放出の動態。ドセタキセルを有するポリマー(PLGAまたはPLGA−PCBのいずれか)のナノ晶析後、薬物負荷されたNPおよび遊離薬物を含有する調製溶液が、100,000 Da MWでカットオフを有するMicrocon centrifugal filter (Millipore(Billerica, MA))を通過した。調製溶液に加えてろ液中の薬物含有量(遊離薬物を含む)を比較して、薬物負荷量(薬物/ポリマー、w/w)を測定した。薬物放出の研究中、Dtxl負荷NP溶液をSlide-A-Lyzer MINI dialysis microtubes (3500Da MW カットオフ、Pierce(Rockford, IL))の中に1つのチューブあたり100μl(0.33mg/ml)で入れた。これらのチューブを1LのPBSに対して37℃で穏やかに撹拌しながら透析した。24時間ごとにPBSを新たに供給した。様々な時点で、3つのマイクロチューブを取り出して、NPによって保持されている薬物含有量を測定した。全ての水溶液試料を同じ体積のアセトニトリルと終夜混合して、HPLCを行う前に薬物を完全に放出した。ドセタキセル含有量は、逆相C18カラム(Econosil、250×4.6mm、5μm, Alltech, (Deerfield, IL, USA))およびUV検出器(227nmの波長)を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって3回定量した。移動相は水およびアセトニトリル(v/v 50/50)であり、室温での流量が0.5ml/分であった。遊離Docについての滞留時間は13.75分であった。
【0154】
色素分子および標的リガンドによるPLGA−PCB NP機能付与。目的の分子はPLGA−PCB NP上にEDC/NHS化学によって固定できる。色素分子を抱合するために、NPを400mMのEDCおよび200mMのNHSと共に水中で20分間にわたってインキュベートし、純粋で洗浄して未反応HDCおよびNHSを除去した。100μlの水中の0.5mgのNHS活性化NPを、pH=9の10mMのホウ酸ナトリウム緩衝液中で10mg/mlの濃度にある25μlの5−(アミノメチル)フルオレセイン塩酸塩(Invitrogen(Carlsbad, CA, US))に暗所で2.5時間にわたって反応させた。得られた色素−NP抱合体をpH9の緩衝液および水で洗浄し、水中で再懸濁させ、FACScan flow cytometer(Becton Dickinson(San Jose, CA))で0.5mg/mlの濃度で分析した。標的リガンドの固定化のために、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール(NBD)を、初期薬物負荷量が0.25重量%であるPLGA−PCB NPに処方した。得られたPLGA−PCB/NBD NPを、400mMのEDCおよび200mMのNHSによって水中で20分間にわたって活性化させた。100μlの水中の0.5mgのNHS−活性化NPを、pH=9の10mMのホウ酸ナトリウム緩衝液中で10mg/mlの濃度にある10μlのNH2−ガラクトースに1時間にわたって反応させた。得られたガラクトース−NP抱合体をpH9の緩衝液およびPBSで洗浄し、細胞のインキュベーションの前にPBS中で再懸濁させた。HepG2細胞を、24−ウェルプレートにおいて、可欠アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を供給したフルMEM培地(Hyclone(Logan, UT))中で5%のCO2下37℃で育て、50%コンフルーエンスを達成した。次に、細胞を予め温めていたPBSで洗浄し、FBSの供給なしに1つの穴あたり400μlのNP含有MEM培地を用いてインキュベートした(PLGA−PCB/NBD−ガラクトースNP濃度:1.25mg/ml)。2時間後、細胞をPBSで洗浄し、1つの穴あたり400μlのFBS含有培地を供給した。37℃での20時間のインキュベートののち、細胞をNikon TE2000U顕微鏡を使用して映像化した。対照実験では、EDCは存在しなかったが、他のすべての条件および手順は全く同じであった。
【0155】
PLGA−PCB NPについての細胞毒性試験。NPの細胞毒性をVybrant(登録商標) MTT Cell Proliferation Assay Kit(Molecular Probes(Eugene, OR))を使用して評価した。簡単に述べると、HepG2細胞を、96−ウェルプレートにおいて、可欠アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を供給したフルMEM培地中で5%のCO2下37℃で育て、80−90%コンフルーエンスを達成した。各穴に対して、細胞をPBSで洗浄し、種々の濃度のPLGA−PCB NPまたはPLGA NPのいずれかを含有する200μlのフル培地+50μlの12mMのMTT保存溶液でさらに4時間インキュベートした。次に、MTT含有培地を150μlのDMSOと交換して、生じた結晶を37℃で10分間にわたって溶解させた。570nmでの吸収(Abs)をSpectraMax M5 microplate reader(Molecular Devices(Sunnyvale, CA))を使用し、純DMSOをブランクの測定値として用いて測定した。 NPインキュベーションをしない細胞をコントロールとして用い、NP処理による細胞の生存度を3回見積もった:細胞の生存度(%)=Abs試料/Absコントロール×100。
【0156】
例示的な実施形態を示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸れることなしに種々の変更が可能であることは明らかであろう。
【0157】
排他的な権利または特権が請求されるところの本発明の実施形態は以下のように定義される。
【発明の概要】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は2009年11月6日に提出した米国仮出願第61/259,085の利益を主張する。各出願は参照によりその全体がここに明確に組み込まれる。
【0002】
政府使用許諾権の記載事項
本発明は、政府の支援により、the Office of Naval Research、the National Science Foundation、およびthe National Cancer Instituteからそれぞれ与えられたN000140910137、DMR 0705907、およびU54 CA 119335-04Sの下で行われた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
ナノ粒子(NP)の安定性および標的効率は薬物送達および画像診断へのその用途にとって最も重量な2つの点である。コーティング材料は、これら2つの点に対処するために、NPを安定にするだけでなく多機能性にするのに必要とされる。ポリエチレングリコール(PEG)は、非特異タンパク質吸着に対するその耐性(すなわちノンファウリング(nonfouling)性)のおかげで、安定化目的のためにNPを修飾するのに最も一般的に使用される材料である。しかしながら、PEGは酸化損傷および生体媒質中での機能の低下に敏感であり、その長期適用を制限する。複合培地でのその安定性の他にも、NP自体の安定性はしばしば見逃されるもう1つの重要な点である。NPはあらゆる必要な製造プロセスたとえば遠心分離または凍結乾燥を通じて無傷のままであることを必要とする。PEGでコーティングされたそれを含むNPの安定性を維持するために、たとえば低速限外ろ過および凍結乾燥前の凍結保護物質の添加などのいくつかの手段を使用しなければならない。標的化薬物送達のために、生物学的認識要素(たとえば、標的リガンド)を多くの場合NP表面上に固定する必要がある。長いPEG鎖(たとえば、2−5kDa)の端部で潜在的に利用可能なのは1つの官能基のみであり、これに生体分子を抱合させる。加えて、未反応官能基は、特に複合培地たとえば血漿および血清中で、非特異的結合を引き起こしうる。現在の全てのNPコーティング材料では、優れた安定性と多機能性との間で妥協しなければならないであろう。
【0004】
NPコーティング材料の開発の進歩にも拘わらず、NPの超安定性および多機能性の両方に適応できる単一の材料またはコーティングのプラットフォームについての必要性が存在する。
【0005】
発明の概要
1つの態様において、本発明はブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマーを提供する。
【0006】
1つの実施形態において、双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化1】
【0007】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【0008】
もう1つの態様では、本発明はブロックコポリマーであって:
(a)混合電荷コポリマーを含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマーを提供する。
【0009】
1つの実施形態では、混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化2】
【0010】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【0011】
上述のポリマーに関して、1つの実施形態では、疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックは乳酸−グリコール酸コポリマー(poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)からなる群より選択されるポリマーを含む。1つの実施形態では、疎水性ブロックは約1,000から約200,000までの数平均分子量を有する。
【0012】
1つの態様では、本発明は、双性イオン性ポリマー抱合体であって、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む抱合体を提供する。
【0013】
1つの実施形態では、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)は複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化3】
【0014】
ここで
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【0015】
1つの態様では、本発明は混合電荷コポリマー抱合体であって、混合電荷ポリマーに共有結合している脂質を含む混合電荷ポリマー抱合体を提供する。
【0016】
1つの実施形態では、混合電荷複合体コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有し:
【化4】
【0017】
ここで
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【0018】
上述の抱合体に関して、1つの実施形態では、脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールでる。1つの実施形態では、脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される。1つの実施形態では、脂質はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。
【0019】
他の態様では、本発明は粒子を提供する。
【0020】
1つの実施形態では、本発明はコアシェルポリマー粒子であって、複数の本発明のブロックコポリマーを含む粒子を提供する。
【0021】
1つの実施形態では、本発明はミセルであって、複数の本発明の抱合体を含む複数のリポソームの抱合体を含むミセルを提供する。
【0022】
1つの実施形態では、本発明はリポソームであって、複数の本発明の抱合体を含むリポソームを提供する。
【0023】
1つの実施形態では、本発明はポリマーソームであって、複数の本発明のブロックコポリマーを含むポリマーソームを提供する。
【0024】
粒子は1種以上の標的薬剤と、1種以上の治療用薬剤および/または1種以上の診断用薬剤とをさらに含むことができる。
【0025】
他の態様では、本発明は、本発明の1つ以上の粒子と、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、治療用および/または診断用薬剤を送達する方法であって、本発明の組成物をそれを必要とする対象者に投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明の前述の態様および付随する利点の多くは、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を参照することによって容易に理解されるであろうし、同時にそれはより十分に理解されることとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の代表的な双性イオン性ポリマー抱合体、PLGA−PCBコポリマーの調製;PLGA−PCB/Dtxl NPの形成;および標的リガンドまたは診断色素によるNPのポスト機能付与の概略図である。
【図2A】図2A−図2Fは、代表的な双性イオン性ポリマー抱合体ナノ粒子の特徴を示している。凍結乾燥および超音波処理なしのピペットによる水中での簡単な再懸濁前(図2A)および再懸濁後(図2B)のPLGA−PCB NPについての走査電子顕微鏡(SEM)画像。棒目盛は1μmである。
【図2B】図2A−図2Fは、代表的な双性イオン性ポリマー抱合体ナノ粒子の特徴を示している。凍結乾燥および超音波処理なしのピペットによる水中での簡単な再懸濁前(図2A)および再懸濁後(図2B)のPLGA−PCB NPについての走査電子顕微鏡(SEM)画像。棒目盛は1μmである。
【図2C】図2Cは10重量%BSAのPBS溶液中および100%FBS中での37℃での5日間にわたるPLGA−PCB NPの安定性を示している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットしている。
【図2D】図2Dは、PLGA−PCB NPについての高速遠心分離に対するNPの安定性を、3回の連続遠心分離サイクルで試験したものである。遠心分離の各工程(16110g、15分)ののち、上澄み液を除去するかまたは保持し、NPペレットをピペットにより超音波処理なしで再懸濁した。
【図2E】図2Eは、PLGA−PCB/Dtxl NP(1重量%の薬物負荷)についての高速遠心分離に対するNPの安定性を、3回の連続遠心分離サイクルで試験したものである。遠心分離の各工程(16110g、15分)ののち、上澄み液を除去するかまたは保持し、NPペレットをピペットにより超音波処理なしで再懸濁した。
【図2F】図2Fは、凍結保護物質の添加なしに凍結乾燥させたのちの、PLGA、NP、PLGA−PCB NP、および1重量%の薬物負荷をしたPLGA−PCB/Dtxl NPの安定性を示している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)をプロットしており、多分散指数(PDI、平均±SD、n=3)を各大きさの点と共に示している。
【図3A】図3Aは、NH2−フルオレセインと抱合したPLGA−PCB NPについての研究の結果を示している。フルオレセイン処理をしていない裸のNP、フルオレセイン(−EDC、+NHS)で処理したNP、およびフルオレセイン(+EDC、+NHS)で処理したNPをそれぞれ黒色、青色、および緑色の曲線で示している。フルオレセインと共有結合したNP(緑色の線)は、NP(−EDC+NHS+フルオレセイン)からの平均蛍光強度の大きな増加を示す。ガラクトースで機能付与されたPLGA−PCB/NBD NPのHepG2細胞への結合。
【図3B】図3Bは、細胞を2時間にわたり、NH2−ガラクトース(+EDC、+NHS)で処理したPLGA−PCB/NBD NPと共にインキュベートしたものである。蛍光画像および位相差画像を20時間で撮り、それを図に示したように合わせた。
【図3C】図3Cは、細胞を2時間にわたり、NH2−ガラクトース(−EDC、+NHS)で処理したPLGA−PCB/NBD NPと共にインキュベートしたものである。蛍光画像および位相差画像を20時間で撮り、それを図に示したように合わせた。
【図4】図4は、本発明の代表的な双性イオン性ブロックコポリマー、DSPC−PCBの調製の概略図である。
【図5A】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5B】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5C】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図5D】図5A−図5Dは、本発明の代表的な粒子(ベシクルおよびミセル)[DSPC/DSPE−PCB 5K(図5A);DSPC/DSPE−PCB 2K(図5B))および関連するPEG粒子[DSPC/DSPE−PEG 5K(図5C);DSPC/DSPE−PEG 2K(図5D)]についてのモル組成の関数としてのサイズ排除クロマトグラフィー結果を比較している。
【図6】図6は、本発明の代表的な粒子(リポソーム)(DSPC/DPSE−PCB 5K)および関連する粒子についてのPBS中での37℃でのリポソーム安定性を深くしている。
【図7】図7は、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPからのドセタキセル放出プロファイルをPLGA NPと比較している。両方のNPの薬物負荷は1重量%であった。
【図8A】図8Aおよび図8Bは10重量%BSAのPBS溶液(図8A)中、および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。
【図8B】図8Aおよび図8BはPBS中の10重量%BSA溶液(図8A)中、および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。
【図9】図9は、HepG2細胞での、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPの細胞生存度(細胞毒性)をPLGA NPと比較している。NPを細胞と共に示した濃度で24時間にわたってインキュベートし、直ぐに細胞生存度について3回分析した。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、有利に自己組織化して粒子になるブロックコポリマーおよび抱合体を提供する。本発明は、ブロックコポリマーおよび抱合体から組織化された粒子、前記自己組織化粒子を含む医薬組成物、ならびに治療用および診断用薬剤を前記粒子を使用して送達する方法をさらに含む。前記ブロックコポリマーおよび抱合体ならびに関連する粒子の製造方法も提供する。
【0030】
ブロックコポリマー
1つの態様では、本発明はブロックコポリマーを提供する。1つの実施形態では、ブロックコポリマーは双性イオン性ブロックコポリマーである。もう1つの実施形態では、ブロックコポリマーは混合電荷ブロックコポリマーである。
【0031】
双性イオン性ブロックコポリマー
1つの実施形態では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマーを提供する。ここで使用する限りにおいて、用語「双性イオン性ブロックコポリマー」は、双性イオン性ポリマーブロックを有するブロックコポリマーを指す。
【0032】
1つの実施形態では、ブロックコポリマーは双性イオン性ブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含む双性イオン性ブロックコポリマーを提供する。
【0033】
1つの実施形態において、双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式(I)を有し:
【化5】
【0034】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
*は繰り返し単位が次のそれに共有結合をしている場所を示している。
【0035】
混合電荷ブロックコポリマー
1つの実施形態では、本発明は混合電荷ブロックコポリマーを提供する。1つの実施形態では、ブロックコポリマーは混合電荷ブロックコポリマーであって:
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)を含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含む混合電荷ブロックコポリマーを提供する。
【0036】
ここで使用する限りにおいて、用語「混合電荷ブロックコポリマー」は混合電荷ポリマーブロックを有するブロックコポリマーを指す。
【0037】
ここで使用する限りにおいて、用語「混合電荷コポリマー」は、ポリマー主鎖と、正に帯電した複数の繰り返し単位と、負に帯電した複数の繰り返し単位とを有するコポリマーを指す。本発明の実施では、これらのコポリマーはイオン対コモノマーの重合によって調製できる。
【0038】
混合電荷コポリマーは、正に帯電した複数の繰り返し単位と負に帯電した複数の繰り返し単位とを含む。1つの実施形態では、混合電荷コポリマーは実質的に電子的中性である。ここで使用する限りにおいて、用語「実質的に電気的中性な」は有利な非ファウリング性をコポリマーに付与するコポリマーを指す。1つの実施形態では、実質的に電気的中性なコポリマーは正味の電荷が実質的にゼロであるコポリマー(すなわち、正に帯電した繰り返し単位と負に帯電した繰り返し単位との数がほぼ同じであるコポリマー)である。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.5までである。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.7までである。1つの実施形態では、正に帯電した繰り返し単位の数の負に帯電した繰り返し単位の数に対する比は約1:1.1から約1:0.9までである。
【0039】
イオン対コモノマー。1つの実施形態では、コモノマーは好適な重合性イオン対コモノマーの共重合によって調製される。
【0040】
本発明において有用な代表的なイオン対コモノマーは式(II)および(III)を有する。
【化6】
【0041】
この実施形態では、混合電荷コポリマーは式(IV)の繰り返し単位を有する:
【化7】
【0042】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数であり;
*は繰り返し単位が次のそれに共有結合している場所を示している。
【0043】
1つの実施形態では、R7およびR8はC1−C3アルキルである。
【0044】
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成している。1つの実施形態では、R6、R7、およびR8はC1−C3アルキルである。
【0045】
ある実施形態では、L3は−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択され、ここでnは1から20までの整数である。ある実施形態では、L3は−C(=O)O−(CH2)n−であり、ここでnは1−6である。
【0046】
ある実施形態では、L4はC1−C20アルキレン鎖である。代表的なL4基としてはnが1−20(たとえば、1、3、または5)である−(CH2)n−が挙げられる。
【0047】
ある実施形態では、AはCまたはSOである。
【0048】
ある実施形態では、nは5から約5,000までの整数である。
【0049】
1つの実施形態では、R4、R5、R6、R7、およびR8はメチルであり、L3は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L4は−CH2−であり、A1はCまたはSOであり、nは5から約5,000までの整数である。
【0050】
上述の式では、ポリマー主鎖としては、ビニル主鎖(すなわち、−C(R’)(R’’)−C(R’’’)(R’’’’)−,ここでR’、R’’、R’’’、およびR’’’’は独立に水素、アルキル、およびアリールから選択される)が挙げられ、これはビニルモノマー(たとえば、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン)から得られる。
【0051】
上述の式では、N+はカチオン中心である。ある実施形態では、カチオン中心は第4級アンモニウム(たとえば、L1、R2、R3、およびL2に結合しているN)である。アンモニウムに加えて、他の有用なカチオン中心(たとえば、Nと一緒になったR2およびR3)としてはイミダゾリウム、トリアザオリウム、ピリジニウム、モルフォリニウム、オキサゾリジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、およびピロリジニウムが挙げられる。
【0052】
R1−R8は独立に水素、アルキル、およびアリール基から選択される。代表的なアルキル基としては、C1−C10の直鎖および分枝のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、アルキル基は、たとえばアリール基(たとえば、−CH2C6H5、ベンジル)を含む複数種の置換基のうちの1つでさらに置換されている。1つの実施形態では、R2およびR3、ならびにR6、R7、およびR8はメチルである。1つの実施形態では、R1−R8はメチルである。代表的なアリール基としてはたとえばフェニルなどのC6−C12アリール基が挙げられる。上述の式のある実施形態について、R2およびR3、および/またはR6、R7、およびR8はN+と共にカチオン中心を形成する。
【0053】
L1はカチオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。ある実施形態では、L1は、L1の残基をポリマー主鎖(またはモノマーのための重合性部分)に結合させる官能基(たとえば、エステルまたはアミド)を含む。この官能基に加え、L1はC1−C20のアルキレン鎖を含むことができる。代表的なL1基としては、−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20である(たとえば、n=2)。
【0054】
L2はカチオン中心をアニオン中心に共有結合しているリンカーである。L2はC1−C20のアルキレン鎖でありうる。代表的なL2基としては、−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20(たとえば、1、3、または5)である。
【0055】
L3はカチオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。ある実施形態では、L3は、L3の残基をポリマー主鎖(またはモノマーのための重合性部分)に結合させる官能基(たとえば、エステルまたはアミド)を含む。この官能基に加え、L3はC1−C20のアルキレン鎖を含むことができる。代表的なL3基としては、−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20である(たとえば、n=2)。
【0056】
L4はアニオン中心をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーである。L4はC1−C20のアルキレン鎖でありうる。代表的なL4基としては、−(CH2)n−が挙げられ、ここでnは1−20(たとえば、1、3、または5)である。
【0057】
代表的なアルキル基としてはC1−C30の直鎖および分子のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、たとえばアリール基(たとえば、−CH2C6H5、ベンジル)などの複数種の置換基のうちの1つでさらに置換されている。
【0058】
代表的なアリール基としては、たとえば置換されたフェニル基を含むフェニルなどのC6−C12アリール基(たとえば、安息香酸)が挙げられる。
【0059】
X-はカチオン中心と会合している対イオンである。対イオンはカチオンポリマーの合成の結果から得られる対イオンまたはモノマー(たとえば、Cl-、Br-、I-)でありうる。カチオン中心の合成から最初に製造される対イオンは、他の好適な対イオンで交換することもできる。代表的な疎水性対イオンとしては、カルボキシラート、たとえば安息香酸および脂肪酸アニオン(たとえば、CH3(CH2)nCO2-、ここでn=1−19);アルキルスルフォナート(たとえば、CH3(CH2)nSO3-、ここでn=1−19);サリチラート;ラクタート;ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン(N-(SO2CF3)2);およびこれらの誘導体が挙げられる。また、他の対イオンを塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン(ClO4);テトラフルオロボラート(BF4);ヘキサフルオロフォスファート(PF6);トリフルオロメチルスルフォナート(SO3CF3);およびこれらの誘導体から選択できる。他の好適な対イオンとしては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、ベンゾアート、およびラクタートが挙げられる。
【0060】
本発明において有用な双性イオン性ポリマーおよび混合電荷コポリマーに関して、重合度(DPまたはn)、数平均分子量(Mn)、および多分散指数としても知られている重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、多様でありうる。1つの実施形態では、ポリマーは重合度(n)が1から約10,000までである。1つの実施形態では、nは約10から約5,000までである。もう1つの実施形態では、nは約100から約3,500までである。1つの実施形態では、ポリマーは数平均分子量(Mn)が約200から約2,000,000Daまでである。1つの実施形態では、Mnは約2,000から約100,000Daまでである。もう1つの実施形態では、Mnは約20,000から約80,000Daまでである。1つの実施形態では、ポリマーは、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が約1.0から約2.0までである。1つの実施形態では、Mw/Mnは約1.1から約1.5までである。もう1つの実施形態では、Mw/Mnは約1.2から約2.0までである。
【0061】
ブロックコポリマーにおいて、疎水性ブロックはコポリマーのうちコアシェル粒子のコアを形成する部分である。好適な疎水性ブロックは生体適合性ポリマーであるポリマーブロックを含む。疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーから構成されうる。双性イオン性ブロックまたは混合電荷コポリマーブロックは粒子のシェルを形成する。
【0062】
代表的な生分解性疎水性ブロックとしてはペプチド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、およびポリオキサエステル、ならびにそれらの誘導体およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
代表的な疎水性ブロックは乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)(Maxon(登録商標))、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)(BioSyn(登録商標))から選択されるポリマーを含む。
【0064】
ある実施形態では、疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000Daまでである。
【0065】
ブロックコポリマーは、疎水性ブロックをベースにしたラジカル開始剤(ラジカル開始末端基を含むように機能付与された疎水性ポリマー)を調製し、次に好適なカルボキシベタインモノマーを重合することによって調製できる。あるいは、ブロックコポリマーは好適に機能付与された疎水性ポリマー(たとえば、末端アミノ基)を好適に機能付与された双性イオン性ポリマー(たとえば、末端カルボキシ基またはその反応性誘導体)またはその疎水性誘導体(たとえば、カチオン性エステル誘導体)に共有結合させることによって調製できる。
【0066】
抱合体
もう1つの態様では、本発明は抱合体を提供する。1つの実施形態では、抱合体は双性イオン性ポリマー抱合体である。もう1つの実施形態では、抱合体は混合電荷コポリマー抱合体である。上で説明したブロックコポリマーと同様に、この抱合体は、抱合体の自己組織上に粒子のコアを構成する疎水性部分を含む。粒子のシェルは双性イオン性ポリマー部分または混合電荷コポリマー部分から構成される。
【0067】
双性イオン性抱合体
1つの実施形態では、本発明は、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む双性イオン性ポリマー抱合体を提供する。もう1つの実施形態では、本発明は、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む混合電荷コポリマー抱合体を提供する。
【0068】
抱合体における使用に好適な脂質は種々の合成のベシクル形成脂質または自然発生のベシクル形成脂質から選択することができる。これらの脂質としてはリン脂質、スフィンゴ脂質、およびステロールが挙げられる。脂質は化学基たとえばアミン基、水酸基、アルデヒド基、またはカルボン酸基を、双性イオン性ポリマーまたは混合電荷コポリマー鎖の共有結合に好適なその極性頭部基に含む。
【0069】
1つの実施形態は、2つの炭化水素基、たとえばフォスファチジルエタノールアミン(PE)、フォスファチジルグリセロール(PG)、フォスファチジン酸(PA)、またはホスファチジルイノシトール(PI)を含み、ここで各炭化水素鎖は3−24個の炭素原子を長さに含み、様々な不飽和度を有する。
【0070】
好適な脂質としては、ジアシルフォスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン、およびセレブロシドから得られるそれが挙げられる。ジアシル化合物の場合、アシル基は脂肪酸基である(たとえばC8−C40)。
【0071】
ある実施形態では、脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである。
【0072】
代表的な脂質としては、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(transDOPE)が挙げられる。
【0073】
1つの実施形態では、疎水性部分はジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。
【0074】
双性イオン性ポリマー抱合体の場合、この抱合体の双性イオン性ポリマー部分は、双性イオン性ポリマーブロックについて上で説明したそれ(すなわち、式(I))と同じである。
【0075】
混合電荷コポリマー抱合体の場合、この抱合体の混合電荷コポリマー部分は、混合電荷コポリマーブロックについて上で説明したそれ(すなわち、式(IV))と同じである。
【0076】
抱合体は、好適に機能付与された疎水性部分(たとえば、末端アミノ)を好適に機能付与された双性ポリマーまたは混合電荷コポリマー(たとえば、カルボキシ末端基またはその反応性誘導体)またはその疎水性誘導体(たとえば、カチオン性エステル誘導体)に共有結合させることによって調製できる。
【0077】
本発明の代表的な双性イオン性抱合体、治療薬を含む対応する粒子、およびこの粒子のリポソーム製剤の調製および特性を、例1において説明する。
【0078】
粒子
本発明のもう1つの態様では、双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体から形成される粒子が提供される。前記コポリマーおよび抱合体の性質のおかげで、粒子は水性の環境において自己組織化によって形成できる。水性の環境(たとえば、生理環境)では、粒子は、コポリマーの疎水性部分を構成する疎水性コアと、コポリマーの高電荷双性イオン性部分を構成する親水性シェルとを有する。もう1つの実施形態では、粒子は前記抱合体から構成されるミセルの形態を有する。
【0079】
ある実施形態では、粒子はベシクル構造を有しうる。1つの実施形態では、粒子は、前記抱合体および他のベシクル形成脂質から作られるリポソームの形態を有する。これらのベシクル形成脂質は種々の合成または自然発生のベシクル形成脂質から選択することができる。これらの脂質としてはリン脂質、スフィンゴ脂質、およびステロールが挙げられる。もう1つの実施形態では、粒子は前記コポリマーから作られるポリマーソームの形態を有する。カーゴ、たとえば治療用および/または診断用薬剤の送達の場合、コアシェルナノ粒子およびミセルは疎水性カーゴを封入するのに適しており、リポソームおよびポリマーソームは、疎水性カーゴも封入できるが、親水性カーゴを優先する。
【0080】
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明の複数の双性イオン性抱合体を含む粒子を提供する。ある実施形態では、この粒子は1種以上のベシクル形成脂質をさらに含む。
【0081】
1つの実施形態では、粒子はコアシェルナノ粒子である。
【0082】
1つの実施形態では、粒子はポリマーソームである。
【0083】
1つの実施形態では、粒子はミセルである。
【0084】
1つの実施形態では、粒子はリポソームである。
【0085】
コア−シェルナノ粒子およびミセルは疎水性粒子をコーティングするのに有用である。疎水性粒子としては金属粒子(たとえば、金、銀、酸化鉄、量子ドット)およびポリマー粒子が挙げられる。
【0086】
ある実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約5000nmまでである。ある実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約500nmまでである。他の実施形態では、粒子は平均流体力学的径が約5から約200nmまでである。腎糸球体の孔(約5nm)よりも大きな径を有する堅牢なNPは腎臓ろ過を有効に減らすことができ、それにより血液循環時間を増やすことができる。腫瘍血管系は正常組織(40−80nmまたはさらには1μm)よりも大きな孔隙径を有し、そのため、血管透過性および滞留性亢進(EPR)効果と呼ばれる、好適な大きさのNPの腫瘍への受動性漏出を可能にする。
【0087】
治療用薬剤。ある実施形態では、本発明の粒子は1種以上の治療用薬剤をさらに含む。本発明に従って使用されうる例示的な治療用薬剤としては小分子、有機金属化合物、核酸、タンパク質(たとえば、多量体タンパク質、タンパク質複合体、ペプチド)、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素および化合物、薬物、ワクチン、免疫薬、および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は薬剤活性を有する小分子および/または有機金属化合物である。いくつかの実施形態では、治療薬剤は臨床的に使用する薬物である。いくつかの実施形態では、薬物は、抗ガン剤、抗生剤、抗ウイルス剤、抗HIV剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、麻酔剤、抗凝固薬、酵素の阻害剤、ステロイド剤、ステロイド系または非ステロイド系抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、抗悪性腫瘍薬、抗原、ワクチン、抗体、鬱血除去薬、鎮静剤、オピオイド、鎮痛剤、解熱剤、産児調節剤、ホルモン、プロスタグランジン、黄体ホルモン剤、抗緑内障剤、眼病用剤、抗コリン作動薬、麻酔剤、抗鬱剤、抗精神病薬、神経毒、催眠薬、精神安定剤、痙攣薬、筋弛緩剤、抗パーキンソン剤、鎮痙剤、筋収縮剤、チャネル遮断剤、縮瞳薬、分泌抑制剤、抗血栓剤、抗凝血剤、抗コリン剤、β−アドレナリン遮断薬、利尿剤、心血管活性剤、血管作用薬、血管拡張剤、抗過敏症剤、血管形成剤、細胞−細胞外マトリックス相互作用のモジュレータ(たとえば、細胞増殖阻害剤および抗接着分子)、DNA、RNAまたはタンパク質合成の阻害剤である。
【0089】
ある実施形態では、小分子薬は任意の薬物でありうる。いくつかの実施形態では、薬物は、ヒトまたは動物における使用に安全かつ有効であると政府関連機関または規制機関によって既に判断されているものである。たとえば、ヒトでの使用が認可された薬物は、アメリカ食品医薬局によって、参照によりここに組み込まれる21 C.F.R. §§ 330.5, 331〜361、および440〜460に列挙されている;獣医学用途のための薬物は、アメリカ食品医薬局によって、参照によりここに組み込まれている21 C.F.R §§ 500〜589に列挙されている。列挙された全ての薬剤は本願発明に従う使用に合格であると考えられている。
【0090】
本発明における使用に好適な種類および具体的な薬剤のより完全な一覧表は、Pharmaceutical Drugs: Syntheses, Patents, Applications by Axel Kleemann and Jurgen Engel, Thieme Medical Publishing, 1999およびthe Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs and Biologicals, Ed. by Budavari et al, CRC Press, 1996にあり、これらは両方とも参照によりここに組み込まれている。
【0091】
本発明のある実施形態では、治療用薬剤は核酸(たとえば、DNA、RNA、その誘導体)である。いくつかの実施形態では、核酸剤は機能性RNAである。一般に、「機能性RNA」は、タンパク質をコードするものではなく、代わりにその構成要素が細胞内で1つ以上の別々の機能または活性を特徴的に有するRNA分子の種類に属する。異なる配列を有する機能性RNA分子の相対的な活性は異なりうるものであり、該RNAが存在している特定の細胞のタイプに少なくとも部分的に依存しうることが認められるであろう。したがって、用語「機能性RNA」はここではある種類のRNA分子を指すのに使用し、この種類の全ての構成要素があらゆる特定の条件のセットのもとで実際にこの種類の活性特徴を示すことを意味することを意図していない。いくつかの実施形態では、機能性RNAとしては、RNAi誘起実体(たとえば、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロRNA)、リボザイム、tRNA、rRNA、三重らせん形成に有用なRNAが挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態では、核酸剤はベクターである。ここで使用する限りにおいて、用語「ベクター」は、核酸分子であって、それが結合していた他の核酸を運搬することができる核酸分子(典型的には、必ずしもそうではないが、DNA分子)を指す。ベクターは、ホスト細胞においてそれらが結合する核酸の染色体外での複製および/または発現を達成することができる。いくつかの実施形態では、ベクターはホスト細胞のゲノムへの組込みを達成することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ベクターはタンパク質および/またはRNAの発現を管理するのに使用される。いくつかの実施形態では、発現させようとするタンパク質および/またはRNAは細胞によっては通常発現されない。いくつかの実施形態では、発現さようとするタンパク質および/またはRNAは細胞によって通常発現されるが、ベクターが該細胞へ送達されていない場合に発現されるそれよりも低いレベルである。いくつかの実施形態では、ベクターが、ここで説明した機能性RNA、たとえばRNAi誘起実体、リボザイムのいずれかの発現を管理する。
【0094】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤はタンパク質またはペプチドでありうる。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は交互に使用することができる。ある実施形態では、ペプチドは、大きさが、約5から約5000まで、5から約1000まで、約5から約750まで、約5から約500まで、約5から約250まで、約5から約100まで、約5から約75まで、約5から約50まで、約5から約40まで、約5から約30まで、約5から約25まで、約5から約20まで、約5から約15まで、または約5から約10までのアミノ酸に及ぶ。
【0095】
ポリペプチドはL−アミノ酸、D−アミノ酸、またはその両方を含有する場合があり、当技術で知られている種々の修飾アミノ酸または類似物のいずれかを含有する場合がある。有用な修飾としては、たとえば末端アセチル化、アミド化が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ここで説明したような、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびこれらの組み合わせを含みうる。
【0096】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤はホルモン、エリスロポエチン、インスリン、サイトカイン、ワクチン接種のための抗原、成長因子でありうる。いくつかの実施形態では、治療用薬剤は抗体および/またはその特徴部分でありうる。いくつかの実施形態では、抗体としては、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ(すなわち「ヒト化」)抗体、または一本鎖(組替体)抗体を挙げることができる。いくつかの実施形態では、抗体は低減されたエフェクター機能および/または二重特異性分子を有しうる。いくつかの実施形態では、抗体としてはFabフラグメントおよびFab発現ライブラリーによって作られるフラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、およびFdフラグメント)を挙げることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は炭水化物である。ある実施形態では、炭水化物はタンパク質と会合している炭水化物(たとえば、糖タンパク質、プロテオグリカン)である。炭水化物は天然でもよいしまたは合成でもよい。また、炭水化物は誘導体化された天然炭水化物でもよい。ある実施形態では、炭水化物は単糖類または複合糖類でありうる。ある実施形態では、炭水化物は単糖類であり、限定はされないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、およびリボースが挙げられる。ある実施形態では、炭水化物は二糖類であり、限定はされないが、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、およびセロビオースが挙げられる。ある実施形態では、炭水化物は多糖類であり、限定はされないが、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、デキストロース、デキストラン、グリコーゲン、キサンタンガム、ジェランガム、でんぷん、およびプルランが挙げられる。ある実施形態では、炭化水素は糖アルコールであり、限定はされないが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、およびラクチトールが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、治療用薬剤は脂質である。ある実施形態では、脂質はタンパク質に会合している脂質(たとえば、リポタンパク質)である。本発明に従って使用されうる例示的な脂質としては、限定されないが、油、脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、シス脂肪酸、トランス脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ホルモン、ステロイド(たとえば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(たとえば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポタンパク質が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、脂質は1種以上の脂肪酸基またはその塩を含みうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は可消化性であり、長鎖(たとえば、C8−C50)であり、置換されているまたは置換されていない炭化水素を含みうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキド酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1種以上でありうる。いくつかの実施形態では、脂肪酸基はパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1種以上でありうる。
【0100】
診断用薬剤。ある実施形態では、本発明の粒子は1種以上の診断用薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、診断用薬剤としては、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CAT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影、X線、蛍光透視検査、および磁気共鳴映像法(MRI)で使用される市販の撮像造影剤(imaging agent);鎮吐薬;ならびにコントラスト造影剤(contrast agent)が挙げられる。MRIでのコントラスト造影剤としての使用に好適な材料の例はガドリニウムキレートと、鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムとを含む。CATおよびX線撮像に有用な材料の例としてはヨウ素系の材料が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、診断用および/または治療用薬剤は放射性核種でありうる。使用する放射性核種の中で、ガンマ放射体、ポジトロン放射体、およびX線放射体が診断および/または治療の目的に好適であるが、ベータ放射体およびアルファ放射体も治療のために使用することができる。本発明での使用に好適な放射性核種としては、限定されないが、123I、125I、130I、131I、133I、135I、47Sc、72As、72Se、90Y、88Y、97Ru、100Pd、101mRh、119Sb、128Ba、197Hg、211At、212Bi、212Pb、109Pd、111In、67Ga、68Ga、67Cu、75Br、77Br、99mTc、14C、13N、15O、32P、33P、および18Fが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、診断用薬剤は蛍光性、発光性または磁性部分でありうる。蛍光性および発光性部分としては種々の様々な有機または無機の小分子が挙げられ、これら「色素」、「ラベル」または「インジケーター」と一般に呼ばれる。例としてはフルオレセイン、ローダミン、アクリジン色素、Alexa色素、シアニン色素が挙げられる。蛍光性および発光性部分としては種々の天然発生タンパク質およびその誘導体、たとえば遺伝子改変変異体が挙げられうる。たとえば、蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度GFP、赤色、青色、黄色、シアン、およびサファイア蛍光タンパク質、サンゴ礁蛍光タンパク質が挙げられる。発光タンパク質としては、ルシフェラーゼ、エクオリンおよびこれらの誘導体が挙げられる。多くの蛍光および発光色素およびタンパク質が当技術において知られている(たとえば、米国特許出願公開第2004/0067503号; Valeur, B., "Molecular Fluorescence: Principles and Applications," John Wiley and Sons, 2002;Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, Molecular Probes, 9th edition, 2002;およびThe Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Invitrogen, 10th edition(the Invitrogenのウェブサイトから閲覧可能である)を参照のこと)。
【0103】
いくつかの実施形態では、診断用薬剤は所定の診断方法で検出できるナノ粒子、たとえば量子ドット、酸化鉄、金ナノ粒子、ナノロッドもしくはナノシェル、カーボンナノチューブ、ナノシート、シリカで保護したナノ粒子またはこれらのナノ材料の組み合わせでありうる。
【0104】
ある実施形態では、本発明の粒子は、1種以上の治療用薬剤および/または1種以上の診断用薬剤をさらに含む。
【0105】
標的薬剤。ある実施形態では、粒子(カーゴを有しているまたは有していない)は1種以上の標的薬剤をさらに含む。
【0106】
治療および診断目的に有用な粒子は、本発明のポリマーを用いて有利に処理できる。ある実施形態では、表面は、複数のポリマーのうち前記表面に接着した部分に供給結合している複数の標的結合パートナーを含む。この実施形態では、標的結合パートナーは標的分子に対する親和性を有する。これらの実施形態では、表面を診断分析で使用できる。
【0107】
表面に対する標的分子の結合親和性は、表面に固定された標的結合パートナーから得られる。標的結合パートナーと標的分子とは、各々結合対要素と呼ばれ、結合対を形成する。各結合対要素は他方の要素に特異的に結合する分子である。1つの実施形態では、標的結合パートナーは標的分子に対する親和性を有し、約10-8未満のKdを有する。
【0108】
結合対要素は任意の好適な分子でありうるものであり、限定されないが、タンパク質、ペプチド、タンパク質、多糖類または少糖類、糖たんぱく質、脂質およびリポタンパク、ならびに核酸と、明確な生理活性を有する合成有機または無機分子、たとえば抗生剤、抗炎症剤、もしくは細胞接着メディエーターとが挙げられる。
【0109】
本発明の表面に固定できるタンパク質の例としては、リガンド結合タンパク質、レクチン、ホルモン、受容体、および酵素が挙げられる。代表的なタンパク質としては抗体(モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、一本鎖または他の組替形態)、それらのタンパク質/ペプチド抗原、タンパク質−ペプチドホルモン、ストレプトアビジン、アビジン、Aタンパク質、Gタンパク質、成長因子およびそれらのそれぞれの受容体、DNA結合タンパク質、細胞膜受容体、エンドソーム膜受容体、核膜受容体、ニューロン受容体、視覚受容体、ならびに筋細胞受容体が挙げられる。本発明の表面に固定できる代表的なオリゴヌクレオチドとしては、DNA(ゲノムまたはcDNA)、RNA、アンチセンス、リボザイム、およびRNアーゼPのための外部誘導配列が挙げられ、その大きさは、短いオリゴヌクレオチドプライマーから遺伝子全体までに及びうる。
【0110】
標的化合物に特異的に結合する他の標的結合パートナーとしては、受容体、たとえば炎症性メディエーターP−セレクチンおよびE−セレクチンのためのリガンド上の炭水化物に結合する糖タンパク質上の多糖類または少糖類、ならびに相補配列に結合する核酸配列、たとえばリボザイム、アンチセンス、RNアーゼPのための外部誘導配列、およびアプタマーが挙げられる。
【0111】
1つの実施形態では、標的結合パートナーは抗体であり、標的分子は抗体に対する抗原である。この実施形態では、本発明の表面は抗原に特異的に結合し、非特異タンパク質の吸着を防止する。1つの実施形態では、標的結合パートナーは細胞接着を促進できるタンパク質であり、標的分子は細胞である。この実施形態では、発明の表面は細胞に特異的に結合し、非特異タンパク質の吸着および非特異細胞の接着を防ぐ。
【0112】
標的結合パートナーを固定するためのカルボキシベタインポリマー表面の使用は、参照によりその全体がここに明確に組み込まれているWO 2008/083390に記載されている。
【0113】
医薬組成物
他の態様では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体を含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は対象者への投与に好適な医薬組成物である。これらの組成物は薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤を含む。
【0114】
治療用/診断用薬剤の送達方法
もう1つの態様では、本発明は前記粒子を使用する方法を提供する。
【0115】
1つの実施形態では、本発明は治療用および/または診断用薬剤を治療または診断を必要とする対象者に送達する方法を提供する。この方法では、本発明の双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体のうちの1種以上の粒子を含む組成物を対象者に投与する。
【0116】
以下に、代表的な双性イオン性ブロックコポリマーおよび双性イオン性抱合体、それらの粒子、ならびにその特性を説明する。
【0117】
1つの実施形態では、本発明は双性イオン性材料、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)を提供し、これは、各CB側鎖がアミン含有生体分子との抱合のための1つのカルボキシラートアニオン基を有するのと同時に、各アカルボキシラートアニオン基が双性イオン性基としての1つのカチオン性四級アミン基と対を成して、複合培地からであっても非特異タンパク質吸着を有効に防ぐという点で独特である。生体分子との抱合は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミド(EDC/NHS)化学よって容易に達成できる。抱合のあと、未反応のNHSエステル基を加水分解してカルボキシラートアニオンにし、これがカチオン性四級アミンと対を作り、非ファウリング性の双性イオン性構造体を形成する。しかしながら、機能性付与可能なCOOH末端PEGの場合、未反応官能基(たとえば、カルボン酸(carboxylate acid))はいくつかのファウリング問題を、特に複合培地においてもたらしうる。したがって、PCBは大量の官能基ととても低いファウリングバックグラウンドとを全て1つの材料に有し、2つの全く異なる性質:非ファウリング性および機能付与を妥協しない。抗体をPCB被覆センサーチップに固定した場合、機能付与後の表面はとても低いファウリング性(たとえば、未希釈の血漿および血清からでさえも、<0.3ng/cm2の吸着タンパク質)を維持したままであり、血液中の生物マーカーが高い感度で検出できる。CBのNP表面上への導入は薬物送達キャリアの安定性および多機能能力の両方を高める。
【0118】
1つの態様では、本発明は乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)ベースの薬物送達システムを提供する。PLGAは、FDAに認可されており、その疎水性および水性媒体中での加水分解が遅いという性質のおかげにより薬物を封入することと薬物放出を制御することとのために使用されてきた。1つの実施形態では、本発明は双性イオン性ブロックコポリマー(たとえば、PLGA−PCBブロックコポリマー)を提供し、これは自己組織化して薬物送達用のPCBシェルを有するPLGA−コアNPとなる。
【0119】
PLGA−PCB NPは、双性イオン性CBの強い水和およびPLGA−コアとPCB−シェルと間の明確な親水性/疎水性の違いのおかげによる安定効果を示す。2つのブロック間のこの違いは大きいため、PLGAおよびPCBホモポリマーを共に溶解できる共通の溶媒も混合溶媒もない。したがって、PLGA−PCBブロックコポリマーの合成は、この溶媒問題のせいで非常に挑戦的である。この問題を解決するために、新たなカルボキシベタインtert−ブチル(CB−tBu)エステルモノマーを調製した(図1を参照のこと)。双性イオン性のCBとは異なり、CB−tBuは有機溶媒中での安定性を有するカチオン性エステルモノマーであり、そのためPLGAとPCB−tBuポリマーとの共有結合を共通溶媒、たとえばアセトニトリル中で可能にする。双性イオン性CB構造体は、PLGAとの共有結合後、tBuエステル基の酸性環境、たとえばトリフルオロ酢酸(TFA)中で加水分解することによって再生できる。この合成経路は、双性イオン性CB分子の有機合成における適応性を潜在的に広げ、極性の双性イオン性CBと広範な疎水性分子との間の反応を可能にする。
【0120】
PLGA−PCBブロックコポリマーは、CBのPLGA(適切な末端基を有する)開始ラジカル重合によってまたはPLGAとPCBとの抱合(たとえば、COOH末端PLGAがNH2末端PCBに結合する)によって調製されうる。後者の経路は、NH2−PCB生成物が広範なCOOH末端分子、たとえば市販のPLGA、強力な化学療法薬、ならびに安定化および多機能性目的のためのタンパク質または酵素に抱合されうるので好ましい。しかしながら、NH2−PCBのCOOH−PLGAブロックへの直接抱合は、2つのブロックの極性におけるそれらの劇的な差のせいで難しい。双性イオン性PCBは水またはメタノールのみに溶解させることができるが、PLGAはいずれの溶媒にも溶解させることができない。また、PLGAは少量の水により加水分解することが知られている。これらの「溶媒」の問題を解決するために、本発明はCB−tBuエステルモノマー(図1)を提供し、これは安定であり、無水有機溶媒たとえばアセトニトリルおよびDMFにおける溶解性を有する。CB−tBuエステルモノマーは、TFA-NH3+を生じさせる開始剤(2−アミノエチル2−ブロモイソブチラート)(図1、工程1)によって開始される、原子移動ラジカル重合(ATRP)法によって重合される。TFA塩の除去後、有機溶媒中での優れた溶解性を有するPCB−tBu−NH2が得られ(図1、工程2)、これは、PLGA−PCB−tBuブロックコポリマーを形成する無水アセトニトリル中でのPLGA−NHSとの抱合を可能にする(図1、工程3)。tBuエステルの特異性はTFAによるエステル基の容易な除去にあり、これは、双性イオン性CB構造体を生じさせ、PLGAはこのような酸性環境では無傷のままである(図1、工程4)。1時間のTFA処理は、そのメチルアクリラート部分におけるエステル結合を切ることなしにPCB−tBuをPCBに完全に変換するのに十分であり、6時間までのTFAインキュベーションはPLGAのエステル主鎖を破壊しないであろう。PLGAおよびポリ乳酸(PLA)の酸分解に対する耐性が知られている。そのため、PCB−tBuは、疎水性部分が加水分解を受けるとしても、一方のPCBブロックと他方の疎水性ブロックとを含有するあらゆる両親媒性ブロックポリマー(たとえば、PLA−PCBまたはPLGA−PCB)の一般的な合成方法において使用できる。
【0121】
PLGA−PCB NPを調製するために、ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解させる溶媒置換法(すなわちナノ晶析法)を使用した。PCBブロックは溶解可能であるがPLGAブロックはそうでない水を添加すると、「PLGAコア−PCBシェル」構造のNPが形成される。有機溶媒は撹拌中に蒸発して水溶液が残り、その中でNOが硬化する。疎水性薬物を有機溶媒中でコポリマーに混合する際、それらは上で説明したプロセスの間にNPの疎水性コアの中に封入されるようになる(図1、工程5)。有機溶媒は、PLGAおよびPCBブロック間の極性の明確な違いのおかげで、NP形成において重要な役割を果たしうる。単一の溶媒、たとえば2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)は、この溶媒中でのPLGAの溶解性のおかげでPLGA−PCBを大量に溶解させることができるが、粒度分布が不均一な大きな粒子をもたらす(515.8±50.0nm、PDI=0.527±0.056)。これは、TFE中でのPCBブロックの微視的な不溶状態の結果得られる。したがって、「PCBコア−PLGAシェル」の逆ミセルの形成は、小さく均質なNPに有利でない。TFE中でのPCBブロックの溶解性を高めるために、TFE/MeOH共溶媒を代わりに使用し、それにより、単分散の粒度分布,たとえばNPサイズ=148.8±1.1nm;PDI=0.040±0.011(図2A),を有するNPを再現性のある方法で作製した。なお、TFEは、撹拌の際のTFEの容易な蒸発のおかげで、DMSOよりも好ましい。典型的な調製の場合、PLGA−PCBコポリマーは自己組織化して非常に低いPDIを有するNPになった。収率は100%に近く、晶析物も微小サイズの粒子もこの組織化過程によっては生じなかった。したがって、ろ過を使用して大きな粒子を除去する必要はなかった。溶媒置換中に界面活性剤は必要ない。これは、双性イオン性PCBシェルはNPを水性媒体中で安定化させるからである。PEG化されたNPシステムと比較すると、PCBはNPの分散性に対するより優れた安定化効果を有する。これはPCBがPEGよりも遥かに親水性であり、そのため、自己組織化の過程中に予想されるPLGAによる鎖の包埋が少ないからである。コポリマーブロック間の明確な極性の違いが、小さく均質なNPへのこのような有効な組織化に関与する。上で得られたPLGA−PCB NPのゼータ電位を測定すると−43.5±1.0mVであり、同じ大きさ(NPの大きさ=145.7±3.9nm;PDI=0.113±0.033)のPLGA NPはゼータ電位が−68.1±1.8mVであった。
【0122】
ドセタキセルを上述の方法によってPLGA−PCB NPに封入し、薬物放出プロファイルを集めた。調製物中の初期薬物投入量が5重量%である場合、得られるPLGA−PCB/Dtxl NPは、薬物負荷が約1重量%(0.933±0.021重量%)であり、大きさが138.5±0.6nmであり、PDIが0.125±0.017であり、ゼータ電位が−34.8±1.3mVであった。PCBで修飾したおよび修飾していないPLGA NPは、96時間にわたる類似した持続的な薬物放出プロファイルを有し、封入した薬物の50%を最初の8時間で放出する。薬物放出の動態は、PLGAブロックの長さを変化させることによってさらに調節できる;薬物放出速度はPLGAの分子量を増やすことによって延ばすことができる。
【0123】
生物学的な関連培地たとえば血清中でのNPの安定性は、生体内での使用のための薬物送達媒体としてのそれらの実行可能性を決定する。未希釈の血漿および血清からの表面に結合する非特異タンパク質を有効に低減させることがわかっているPCBは疎水性PLGA NPを複合培地中で安定化させることができる。PLGA−PCB NPを、PBS中の10%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液または100%FBS溶液に37℃で入れ、NOの大きさを時間の関数として測定した。13時間の試験中PCB修飾NPの大きさの増加は観察されなかったが、修飾していないPLGA NPはこれらの培地中へのそれらの浸漬直後に激しく凝集した。PLGA−PCB NPの長期研究から、これらの粒子はそれらの元々の大きさを10重量%BSAおよび100%EBS培地の両方で5日間の期間にわたって維持することがわかる(図2C)。これは、PLGA−PCB NPが生体内での薬物送達のために使用できることを意味する。
【0124】
後調製または後処理によるNPの安定性は、実験室で作り出したNPからそれらの臨床用途までにおいても重要である。PCBは静電的に誘起された水和によって水に結合するので、それは水素結合材料たとえばPEGよりも強い水和を有する。双性イオン性PCBポリマーはNPを処理の種々の工程の過酷な条件から保護することが予想される。高速遠心分離はNPペレットを生成するために精製目的で広く使用されているが、PEG化NPなどのPLGAベースのNPはペレット形成中に凝集しやすい。薬物が負荷されているまたは負荷されていないPCB修飾PLGA NPは繰り返される高速遠心分離からペレットの簡単なピペット再懸濁によって容易に回収されたので、それにより超音波処理の必要はなくなった。しかしながら、未修飾のPLGA NPのペレットは、形成すると、超音波処理なしでは再懸濁できない。PCB修飾NPの場合特に、上澄み液を(標準的なNP精製手順でのように)各遠心分離工程で除去した際、図2Dおよび図2Eから計算されたPLGA−PCB NPおよびPLGA−PCB/Dxl NPについて6−9%および1−8%の大きさの増加が、PDIのわずかな増加を伴ってそれぞれ確認された。各サイクル後に得られるより小さなPDIはその残留するNPの単分散に影響を与える。なお、NP凝集に起因しない各サイクル後のわずかな大きさの増加が存在する。より小さなNPは、各遠心分離工程でペレットを形成しにくく、そのため、上澄み液の除去は回収される部分の粒度分布をより大きな値に移動させるであろう。この安全性の問題を二重に確認するために、遠心分離工程の合間で上澄み液を除去しなかった並列実験を行った。繰り返される遠心分離によりNPは同様の大きさおよびPDIを維持したことが分かり、これはPLGA NP(薬物が封入されているまたはされていない)をペレット化によるあらゆる凝集から安定させるPCBの能力を示している。これは、疎水性PLGAコアを機械的に誘起される凝集から安定させる、NPのPCBシェルによって作り出される強い水和層のおかげによる。
【0125】
凍結乾燥は、水性の保管媒体中でのポリマーの分解および薬物の漏れを防ぐための、NPの保管に必要な手順である。凍結保護添加剤なしに凍結乾燥に耐えることができる他のポリマーベースNPはない。PEG化NPであっても、10%スクロースなどの添加剤が必要である。なぜなら、PEGは凍結乾燥によって結晶化され、NP凝集を防ぐその機能を失うからである。PCB修飾PLGA NPは何ら添加剤なしにその安定性を凍結乾燥後に保持する(図2F)。薬物負荷されているまたはされていない乾燥PCB修飾NPのピペットを用いる(超音波処理を必要としない)簡単な再懸濁は同様の平均径および低いPDIでNPを回収する。また、これらのNPは乾燥後にSEMによって視覚化した(図2B)。この挙動は、強いPCBの水和および特徴的なPLGA/PCBブロックによって得られうる。PEGとは異なり、PCBはある量の水分子と強く結合して凍結乾燥中の結晶化を防ぐ。加えて、二つのブロック間の明瞭な極性の差のおかげによるコポリマーの有効な組織化はほとんど欠陥を含まない保護性PCBシェルを与え、これは非常に脱水された環境であっても疎水性コアを遠ざけておく。複合生物学的培地および苛酷な調製後処理に耐えることができるそれら能力のおかげで、双性イオン性PCB修飾NPは産業的および臨床的の両方の安定性の問題に独自に対処する。
【0126】
NPの機能付与は、生体分子をたとえば色素および標的リガンドに様々な目的で付着させるのに必要とされる。興味のある分子をPCBシェル上に固定させることについての実行可能性を調べるために、フルオレセインを蛍光性NPを作り出すためのモデルリガンドとして使用した。PCBのカルボキシル基を(+)EDCおよびNHSの存在下でNHSエステルに変換し、その後フルオレセイン分子中のアミン基と抱合させた。NP表面上での抱合化学を確認するために、ネガティブコントロールとして、NHSエステルの生成なしに、(−)EDCは存在しないが+NHSを存在させてNPを調製した。このネガティブコントロールでは、NPへの色素のあらゆる結合は物理的相互作用によるものであるはずである。フルオレセインインキュベーションのあと、NHSエステルを表面に有するNPは、色素へのそれらの共有結合のおかげでコントロールよりも著しく高い蛍光を有した(図3A)。また、標的薬物送達媒体としてのPLGA−PCB NPの可能性を評価した。緑色蛍光染料(NBD)を「可視」モデル薬物として使用し、NPに封入した。得られたPLGA−PCB/NBD NPを、アミン修飾ガラクトースリガンドに、+EDCおよび+NHSかまたは−EDCおよび+NHSでさらに抱合させ、その後HepG2細胞と共にインキュベートして細胞結合能力を試験した。ガラクトースは、生体内の肝癌細胞株(たとえばHepG2)および生体内の肝細胞中のアシアロ糖タンパク質受容体を標的するのに広く使用される。固定されたガラクトースリガンド(+EDC、+NHS)を有するPLGA−PCB/NBD NPは容易にこの細胞に結合し、それにより図3Bに示すように強い蛍光を生み出す。固定されたリガンド(−EDC、+NHS)を持たないPLGA−PCB/NBD NPは標的性がなく非ファウリング性のNPをもたらし、そのため低い細胞結合能力を有する(図3C)。これらのフルオレセインおよびガラクトース/NBD結果から、PCB修飾NPは、撮像および/または標的の目的でアミン末端分子を用いて容易に機能付与できることが分かる。
【0127】
CBの構造は、溶質が生命体の浸透圧調節に非常に重要であるグリシンベタインのそれに類似している。ヒトによって吸収されるグリシンベタインの概算は1日当たり0.1から2.5gまでである。したがって、バイオミメティックPCBでのPLGAの修飾は、FDAによって認可されたPLGAに何ら毒性をもたらすはずがない。実際、細胞毒性分析から、PLGA−PCB NPが、10mg/mlまでの濃度のNPでの24時間のインキュベーション後のHepG2細胞の生存度に関して、PLGA NPに類似していたことが分かった。この濃度は、成人の場合、体重1kgあたり500mg超に対応し、これは生体内薬物送達に必要とされるものよりも遥かに高い投薬量である。
【0128】
本発明の代表的なナノ粒子薬物送達システムの調製および特性は例2に示す。図7は、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPからのドセタキセル放出プロファイルをPLGA NPと比較する。両NPについての薬物負荷は1重量%である。PCB修飾は薬物放出挙動を未修飾PLGAからあまり変化させなかった。図8Aおよび8Bは、PBS中の10重量%BSA溶液(図8A)および37℃の100%FBS溶液(図8B)中でのNP安定性(ナノ粒子の大きさ)を比較している。NPの大きさ(平均±SD、n=3)を時間の関数としてプロットした。図9は、HepG2細胞での、本発明の代表的なナノ粒子、PLGA−PCB NPの細胞生存度(細胞毒性)をPLGA NPと比較している。NPを細胞と共に示した濃度で24時間にわたってインキュベートし、直ぐに細胞生存度について3回分析した。PLGA NPと類似して、PLGA−PCB NPは10mg/mlまでの濃度で細胞毒を示さなかった。
【0129】
PCB修飾NPは、PEG化NPよりも、その容易な加工性、異常な安定性、および妥協されない多機能性の点で優れている。PCBの豊富なカルボキシレートアニオン基は、標的リガンド、治療用薬物、および診断用ラベルの付着を従来のNHS/EDC化学によって全て1つの材料で可能にし、PCBを「セラノスティックス」のための万能プラットフォームにする。
【0130】
以下の例は、例示を目的として提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【0131】
例1
代表的な双性イオン性抱合体:DSPE−PCBの調製および特性
この例では、本発明の代表的な双性イオン性抱合体,DSPE−PCB,と関連するリポソームの調製および特性を説明する。この抱合体の調製は図4に示している。
【0132】
DSPE−PCB抱合体
原子移動ラジカル重合(ATRP)のためのNHSエステル開始剤(N−ヒドロキシスクシンイミド2−ブロモプロパノアート)。N−ヒドロキシスクシンイミド(2.26g、19.6mmol)および2−ブロモプロピオン酸(1.45ml、16.4mmol)を丸底フラスコ内の500mlの無水ジクロロメタン中に磁気撹拌子を用いて溶解させた。フラスコを0℃まで冷却し、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.35g、16.34mmol)のジクロロメタン溶液(25ml)を滴下した。室温で終夜撹拌したのち、反応混合物を濾過し溶媒を減圧化で除去して、黄色固体を得た。この生成物をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製した。2.4gの白色固体(9.63 mmol、収率=59%)を得た。1H NMR(クロロフォルム)δ(ppm):1.97および2.00(d、3H、−COOCH(CH3)Br)、2.89(s、4H、−COCH2CH2CO−)、4.64(quar、J=6Hz、1H、−COOCH(CH3)Br)。
【0133】
2−tert−ブトキシ−N−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)−N,N−ジメチル−2−オキソエタンアミニウム(CB−tBu)。5gの2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラートおよび8.68gのtert−ブチルブロモアセタートを20mlのアセトニトリル中で24時間にわたって50℃でN2保護下で反応させた。250mlのエチルエーテルを反応混合物に添加し、生じた白色の結晶を単離して乾燥させた。得られたCB−tBuモノマーを直ちに−20℃のデシケータ内に保管した(収率96%)。1H NMR(D2O)δ(ppm):1.44(s、9H、−OC(CH3)3)、1.87(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.28(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、4.60(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.73および6.10(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)。
【0134】
NHS−PCB−tBu。CB−tBuのATRPを無水ジメチルホルムアミド(DMF)中でCu(I)Br/HMTETA触媒を使用して行った。典型的な重合では、DMFおよび液体HMTETAリガンドから窒素によるバブリングによって別々に酸素を追い出した。1gのCB−tBuモノマー(3.67mmol)および125mgのNHS開始剤(0.5mmol)をシュレンク管に添加した。第2のシュレンク管に71.7mgのCu(I)Br(0.5mmol)を添加した。両方の管を窒素および真空の間での3回の循環によって脱酸素した。8および2mLの脱酸素したDMFをモノマー/開始剤の管とCu(I)Brの管とにそれぞれ添加した。136μL(0.50mmol)の脱酸素したHMTETAをCu(I)Br含有溶液に添加し、窒素保護下で30分間にわたって撹拌した。次に、触媒溶液(Cu(I)/HMTETA)をモノマー/開始剤溶液に全て添加して反応を開始させた。反応を終夜室温で行った。重合後、反応はエチルエーテル中で完全に晶析させた。次に、晶析物を減圧下で乾燥させて、極小量のDMF(3−5mL)中に再溶解させた。この溶液を完全に溶解するまでボルテックスで撹拌し、アセトン中で晶析させて可溶な触媒および微量のモノマーを除去した。これを合計で3回繰り返して、触媒を完全に除去した。残ったエステルポリマーを終夜減圧下で乾燥させ、NMRで分析した。(754mg、収率=74.5%)。
【0135】
NHS−PCBおよび分子量測定。tBu基の加水分解によってNHS−PCBが得られた。500mgのNHS−PCB−tBuを5mlのトリフルオロ酢酸中に溶解させたこれを2時間にわたってそのままにしておいた。次に、溶液をエチルエーテル中で晶析させ、終夜減圧下で乾燥させた。分子量(たとえば、約4,909Da)を1H NMR (D2O)δ(ppm):2.82(s、開始剤からの4H、−COCH2CH2CO−)、3.27(b、CBMA−1からの6H、−CH2N(CH3)2CH2COO-)、4.2および4.5(m、6H、−COOCH2CH2N(CH3)2CH2COO-)から決定した。なお、遊離NHSは1H NMR(D2O)δ(ppm):2.67(s、開始剤からの4H、−COCH2CH2CO−)を有するであろう。また、水相GPCはPDI=1.03でのMW=5410Daを示す。これらのMWデータは、DSPE−PCBにおけるPCBブロックについてのMWを特徴付けるのに使用した。
【0136】
DSPE−PCB。1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(DSPE、Genzyme Pharmaceuticals)を手に入れた状態で使用した。1H NMR (トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):0.907(6H、t、J=6.3Hz、−CH3)、1.344(56H、br s、CH3−(CH2)14−)、1.752(4H、m、CH3−(CH2)14−CH2−,)、2.551(4H、m、CH3−(CH2)15−CH2−)、3.664(2H、s、−CH2−NH3+)、4.438および4.606(6H、m、−CH2−CH(C17H35COO)−CH2−PO4−CH2−)、5.581(1H、m、sn2−CH)。
【0137】
典型的な反応の場合、120mgのNHS−PCB−tBu(PCBについてのMWは5Kである)および120mgのDSPEを、30mlクロロホルム/4.3mlのDMFの混合溶媒中で、129μlのトリエチルアミンの存在下で数日間撹拌した。次に、反応混合物を蒸発乾固させてエチルエーテル中で晶析させた。晶析物をアセトニトリルでまず抽出し、ろ過した。ろ液を蒸発乾固させ、TFAによって4時間にわたり処理し、エチルエーテル中で晶析させ、真空乾燥させた。乾燥させた生成物を200mMのリン酸緩衝液(pH=8)中で20mMのヒドロキシルアミンで中和させ、PBS中続けて水中で繰り返し限外ろ過(30KのMWカットオフ)を行った。純粋なDSPE−PCB抱合体がこのプロセスで残り、これを凍結乾燥させた(収率=58%)。
【0138】
DSPE−PCB抱合体の生成を確認し、モル比(DSPE/CB)を1H NMR(トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):2.567(m、DSPEからのCH3−(CH2)15−CH2−の4H)、4.637(br m、DSPEからの−CH2−CH(C17H35COO)−CH2−PO4−CH2−の6H、およびPCBからの−COOCH2CH2N(CH3)2CH2COO-の6H)、5.590(s、DSPEからのsn2−CHの1H)によって測定すると1/20であった。この1/20(DSPE/CB)のモル比は概して5000DaのPCBが1つのDSPE分子に抱合しており、抱合していないPCBのNMRおよびGPC法による分子量と一致していることを意味する。
【0139】
DSPE−PCBリポソーム
典型的な製剤では、脂質成分(たとえば、DSPCおよびDSPE−PCBまたは市販のDSPE−PEGなど)を2,2,2−トリフルオロエタノール中で所望のモル比で混合した。蒸発乾固によって脂質の薄膜が形成された。脂質膜の水和は、60℃でのPBSの添加、続けての3回の凍結融解サイクルによって達成された。得られたリポソームをポリカーボネート膜(80nm)を備えた60℃のAvanti(登録商標) Mini-Extruderを通して20回押し出した。粒度およびその多分散指数(PDI)をPBS中で測定し、ゼータ電位を水中で測定した。種々の製剤についての典型的なリポソームの大きさおよびゼータ電位を図5A−図5Dに示す。概して、これらのリポソームは約100nmであり、低いPDI数を有した。これらのリポソームを、Waters 2414屈折率検出器および特注のサイズ排除カラム(Sephacryl(登録商標) S-500 HR chromatography medium(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を充填したTricorn(登録商標) 10/600カラム)を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。移動相は、流量が1ml/分であり25℃のPBS溶液であった。なお、試験したDSPE−PCBおよびDSPE−PEGの両方ともが水溶液中で単独でミセルを形成するであろう。図5Aおよび図5B(DSPE−PCB)を図5Cおよび図5D(DEPE−PEG)と比較すると、同じ分子量の範囲内では、DSPE−PCBはミセル化を引き起こすことなしにより多く合体してリポソームになることができたことがわかる。リポソームをPBS中で37℃でインキュベートし、凝集からのそれらの安定性を試験した。図6から、DSPE−PCBおよびDSPE−PEG抱合体修飾リポソームのみが、長期凝集からリポソームを保護することができ、一方でこれらの抱合体を持たない製剤は数時間のうちに凝集し始めたことがわかった。
【0140】
表1.様々な製剤についての大きさおよびゼータ電位に関する属性。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは、3回測定し、平均値±標準偏差として示している。
【表1】
【0141】
DSPE−PCBリポソームについての生体内循環試験。表2に挙げた全てのリポソームを、1mol%の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン−N−(リサミンローダミンBスルフォニル)(Avanti)を添加することによって、リポソーム形成プロセス中に蛍光ラベルした。全てのこれらリポソーム製剤は150nm未満であり、ほぼ単分散である。これらの製剤をそれらの循環プロファイルについてラットで評価した。Sprague Dawley(150g)ラットを無作為にグループ分けし(グループの大きさは3である)、3−5%のイソフルランで麻酔した。2.3μmolのリン脂質を含有する200μlの各リポソーム製剤を尾静脈を通して注射した。5分、4時間、8時間、24時間、および48時間に、ラットを3−5%のイソフルランで一時的に麻酔をし、50−100μlの血液を左または右のいずれかの伏在静脈から抜き取った。48時間後、CO2吸引によりラットを安楽死させた。集めた血液を秤量し、水/アセトニトリル混合物に混合させる。短時間の遠心分離後、上澄みを557nmで励起させた際の583.6nmの蛍光放射について測定する。これらの血液試料中のリポソームの投与量を定量化するために、較正曲線を作った。時間に対する投与量は、1−コンパートメント薬物動態学的モデルによって固定し、循環半減期および曲線下面積(AUC)データを計算して表3に示した。DSPE−PEG対象物よりも著しく長いDSPE−PCBリポソームの循環が観察された。DSPC/DSPE−PCB 5K (9/1)自体は9−10時間の半減期を有し、これは3−4時間であるDSPC/DSPE−PEG 5K (9/1)よりもはるかに長い。
【0142】
表2.様々な製剤についての大きさおよびゼータ電位に関する属性。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは3回測定し、平均値±標準偏差として示している。
【表2】
【0143】
表3.様々な製剤についての生体内循環プロファイル。5Kまたは2Kは、PCBまたはPEGポリマーについてのMWを表している。データは3回測定し、平均値±標準偏差として示している。%IDは注射した投与量の%を表している。
【表3】
【0144】
例2
代表的なナノ粒子薬物送達システム:両親媒性PLGA双性イオン性ブロックコポリマーの調製および特性
この例では、本発明の代表的なナノ粒子薬物送達システムの調製および特徴を説明する。
【0145】
材料。臭化2−ブロモイソブチリル、t−Boc−アミノエチルアルコール、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、tert−ブチルブロモアセタート、Cu(I)Br、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)、および4−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(NH2−ガラクトース)をSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)をAcros Organics USA(Morris Plains, NJ)から購入した。50:50のモノマー比の(D,L−乳酸−グリコール酸)コポリマー(PLGA)をDurect Corporation(Pelham, AL)から購入した。ドセタキセル(Dtxl)をLC Laboratories(Woburn, MA)から購入した。5−(アミノメチル)フルオレセイン塩酸塩、および22−(N−(7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール(NBD)をInvitrogen(Carlsbad, CA)から購入した。
【0146】
ナノ粒子調製
2−アミノエチル2−ブロモイソブチラート。NH2官能基を有するATRP開始剤を以下のようにして合成した。簡単に述べると、3.57gの臭化2−ブロモイソブチリルを、氷浴において、8mlの塩化メチレン中の2.5gのt−Boc−アミノエチルアルコールおよび1.73gのトリエチルアミンの溶液に添加した。4時間の反応後、塩を濾過して取り除き、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて抽出した。塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで乾燥させて、蒸発乾固した。得られたt−Boc−アミノエチル2−ブロモイソブチラートを15mlのトリフルオロ酢酸(TFA)で2時間にわたって処理し、エチルエーテルを添加して再結晶した(収率95%)。1H NMR(DMSO−d6)δ(ppm):1.93(s、6H、−C(CH3)2Br)、3.16(s、2H、TFA-・NH3+CH2CH2OCO)、4.31(t、J=5Hz、2H、TFA-・NH3+CH2CH2OCO)、8.22(s、3H、TFA−・NH3+CH2CH2OCO)。
【0147】
2−tert−ブトキシ−N−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)−N,N−ジメチル−2−オキソエタンアミニウム(CB−tBuモノマー)。5gの2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラートおよび8.68gのtert−ブチルブロモアセタートを20mlのアセトニトリル中で24時間にわたり50℃でN2保護下で反応させた。250mlのエチルエーテルを反応混合物に添加し、生じた白色結晶を単離して乾燥させた。得られたCB−tBuモノマーを直ちに−20℃のデシケータ内に保管した(収率96%)。1H NMR(D2O)δ(ppm):1.44(s、9H、−OC(CH3)3)、1.87(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.28(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、4.60(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.73および6.10(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)。
【0148】
PCB−tBuポリマーの合成。CB−tBuモノマーのATRPを以下のようにして行った:74mgのCu(I)Brおよび148.6mgのHMTETAをシュレンク管の中に入れ、3回の減圧−窒素サイクルに供した。次に、7mlの脱気したDMFを添加して溶液Aを作った。同様に、1.8gのCB−tBuモノマーおよび80mgの2−アミノエチル2−ブロモイソブチラートを、酸素を完全に排除したもう1つのシュレンク管に入れ、続けて8mlの脱気したDMFを添加し、溶液Bを作った。N2保護下で溶液Bを溶液にAに移すことによって重合を開始させた。60℃での24時間にわたる反応後、ポリマーをまずエチルエーテル中で晶析させ、次に少量のエタノール中に溶解させ、アセトン中で繰り返し晶析させ、残留するモノマー、開始剤および触媒を除去した。得られたPCB−tBuを更なる使用の前に減圧下で乾燥させた。
【0149】
PLGA−b−PCB−tBu抱合体。抱合プロセスは、NHS/EDC化学によるものであった。簡単に述べると、3.2gのCOOH末端PLGA(0.20dl/g)、86.4mgのNHSおよび147.2mgのEDCを6mlの塩化メチレン中で4時間にわたり室温で反応させた。次に、5mlのエチルエーテルを添加して、白色晶析物を得た。得られたPLGA−NHSを冷たいエチルエーテル/メタノール混合物(2/1、v/v)で洗浄してNHSおよびEDC残留物を除去し、その後、使用の前に減圧乾燥した。TFA-・NH3+末端pCBMA−tBuを過剰なトリエチルアミンで処理してTFA保護を除去した。NH2末端pCBMA−tBuを濾過によって精製し、エチルエーテル中に晶析させ、減圧乾燥した。878mgのNH2末端PCB−tBuおよび1.68gのPLGA−NHSを7mlのアセトニトリル中の50μlのトリエチルアミンの存在下で60℃で20時間にわたって抱合させた。得られたPLGA−PCB−tBuを冷たいエタノール中に晶析させた。PCBMA−tBu混入物を洗浄サイクルを繰り返すことによって除去した。PLGA−PCBMA−tBu抱合体の生成を確認し、重量比 (PLGA/PCB)を1H NMR(アセトニトリルd3)δ (ppm):1.55(m、PLGAの3H、−COCH(CH3)O−、およびPCB−tBuの9H、−OC(CH3)3)、3.65(br、PCB−tBuの6H、−CH2N(CH3)2CH2COOC(CH3)3)、4.85(m、PLGAの2H、−COCH2O−)、5.22(m、PLGAの1H、−COCH(CH3)O−)によって測定したところ6/1 (モル比12.4/1) であった。ポリマーは使用前に減圧下で乾燥させた。
【0150】
tBuエステル基の加水分解。対照実験において、6時間までTFAで処理したPLGAは、著しい分子量の変化を示さず、1時間のTFA処理後のPCB−tBuは1H NMR(D2O)において1.44ppmの信号を示さなかった。これは、tBuエステル基が完全に除去されることを示している。メタクリラートでのエステル結合がTFA処理によって破壊されなかったことを確かめるために、CB−tBuモノマーをTFA中で1時間にわたり加水分解させ、加水分解生成物が1H NMR(D2O)δ(ppm):1.89(s、3H、CH2=C(CH3)COO−)、3.31(s、6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)、3.98(t、J=3Hz、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、4.48(s、2H、−CH2N(CH3)2CH2COO-)、4.54(s、2H、CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2−)、5.75および6.06(s、2H、CH2=C(CH3)COO−)によりCB双性イオン性モノマーと同定された。PLGA−co−PCBを得るために、PLGA−co−PCB−tBuをTFAで1時間にわたって処理して、tBuエステル基を除去した。得られたPLGA−co−PCBをエチルエーテル中に晶析させ、少量のTFE中に再溶解させ、エチルエーテル中で繰り返して晶析させた。減圧乾燥後、コポリマーはNPの製剤の準備が整っている。重量比(PLGA/PCB)を1H NMR(トリフルオロ酢酸−d)δ(ppm):5.50(m、PLGAの1H、−COCH(CH3)O−)、5.10(m、PLGAの2H、−COCH2O−)、1.77(d、3H、PLGAの−COCH(CH3)O−)、3.64(br、PCBの6H、−CH2N(CH3)2CH2COO−)によって測定すると10/1であった。
【0151】
PCBホモポリマー(PCB−tBuポリマーの加水分解によって得られる)の分子量および分布を、Waters Ultrahydrogel 1000カラムおよびWaters 2414屈折率検出器を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって測定した。移動相は、0.7ml/分の流量で35℃の100mMNaCl水溶液であった。Polymer Laboratoriesからのポリ(エチレンオキシド)を標準として使用した。ゲル透過クロマトグラフィーは、1.12の多分散性での、13640の分子量(Mn)を示す。
【0152】
PLGA−PCB NPの製剤。溶媒置換(ナノ晶析)法を使用して、NPを製剤した。PLGA−PCBコポリマーをTFE/MeOH 1/1 v/v共溶媒中に0.5mg/mlの濃度で溶解させた。水(水:有機溶媒の体積比、4:1)を1000rpmで撹拌しながらコポリマー溶液に滴下して移した。2時間後、溶媒をPBSに交換し、得られたPLGA−PCB NPをAmicon Ultra-4 centrifugal filter(Millipore, Billerica(MA, US))によって100,000 Da MWでカットオフして所望の濃度まで濃縮した。PLGA NPは、J. Cheng, B. A. Teply, I. Sherifi, J. Sung, G. Luther, F. X. Gu, E. Levy-Nissenbaum, A. F. Radovic-Moreno, R. Langer, O. C. Farokhzad, Biomaterials 2007, 28, 869に記載されているように調製した。ドセタキセルを、有機溶媒中でポリマーと混合することによりNPに負荷させ、上述の手段に従ってPLGA−PCB/Dtxl NPを製剤した。NPの平均径、多分散指数(PDI)およびゼータ電位は、Zetasier Nano-ZS(Malvern Instruments Ltd(Malvern, WR, UK))によって3回測定した。0から1.00までに及ぶPDIを使用して、NPの粒径分布を特徴付けた。NPはPDI<0.10の場合に単分散であるとみなす。
【0153】
薬物負荷および放出の動態。ドセタキセルを有するポリマー(PLGAまたはPLGA−PCBのいずれか)のナノ晶析後、薬物負荷されたNPおよび遊離薬物を含有する調製溶液が、100,000 Da MWでカットオフを有するMicrocon centrifugal filter (Millipore(Billerica, MA))を通過した。調製溶液に加えてろ液中の薬物含有量(遊離薬物を含む)を比較して、薬物負荷量(薬物/ポリマー、w/w)を測定した。薬物放出の研究中、Dtxl負荷NP溶液をSlide-A-Lyzer MINI dialysis microtubes (3500Da MW カットオフ、Pierce(Rockford, IL))の中に1つのチューブあたり100μl(0.33mg/ml)で入れた。これらのチューブを1LのPBSに対して37℃で穏やかに撹拌しながら透析した。24時間ごとにPBSを新たに供給した。様々な時点で、3つのマイクロチューブを取り出して、NPによって保持されている薬物含有量を測定した。全ての水溶液試料を同じ体積のアセトニトリルと終夜混合して、HPLCを行う前に薬物を完全に放出した。ドセタキセル含有量は、逆相C18カラム(Econosil、250×4.6mm、5μm, Alltech, (Deerfield, IL, USA))およびUV検出器(227nmの波長)を備えたWaters Alliance 2695 Separations Moduleによって3回定量した。移動相は水およびアセトニトリル(v/v 50/50)であり、室温での流量が0.5ml/分であった。遊離Docについての滞留時間は13.75分であった。
【0154】
色素分子および標的リガンドによるPLGA−PCB NP機能付与。目的の分子はPLGA−PCB NP上にEDC/NHS化学によって固定できる。色素分子を抱合するために、NPを400mMのEDCおよび200mMのNHSと共に水中で20分間にわたってインキュベートし、純粋で洗浄して未反応HDCおよびNHSを除去した。100μlの水中の0.5mgのNHS活性化NPを、pH=9の10mMのホウ酸ナトリウム緩衝液中で10mg/mlの濃度にある25μlの5−(アミノメチル)フルオレセイン塩酸塩(Invitrogen(Carlsbad, CA, US))に暗所で2.5時間にわたって反応させた。得られた色素−NP抱合体をpH9の緩衝液および水で洗浄し、水中で再懸濁させ、FACScan flow cytometer(Becton Dickinson(San Jose, CA))で0.5mg/mlの濃度で分析した。標的リガンドの固定化のために、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−オール(NBD)を、初期薬物負荷量が0.25重量%であるPLGA−PCB NPに処方した。得られたPLGA−PCB/NBD NPを、400mMのEDCおよび200mMのNHSによって水中で20分間にわたって活性化させた。100μlの水中の0.5mgのNHS−活性化NPを、pH=9の10mMのホウ酸ナトリウム緩衝液中で10mg/mlの濃度にある10μlのNH2−ガラクトースに1時間にわたって反応させた。得られたガラクトース−NP抱合体をpH9の緩衝液およびPBSで洗浄し、細胞のインキュベーションの前にPBS中で再懸濁させた。HepG2細胞を、24−ウェルプレートにおいて、可欠アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を供給したフルMEM培地(Hyclone(Logan, UT))中で5%のCO2下37℃で育て、50%コンフルーエンスを達成した。次に、細胞を予め温めていたPBSで洗浄し、FBSの供給なしに1つの穴あたり400μlのNP含有MEM培地を用いてインキュベートした(PLGA−PCB/NBD−ガラクトースNP濃度:1.25mg/ml)。2時間後、細胞をPBSで洗浄し、1つの穴あたり400μlのFBS含有培地を供給した。37℃での20時間のインキュベートののち、細胞をNikon TE2000U顕微鏡を使用して映像化した。対照実験では、EDCは存在しなかったが、他のすべての条件および手順は全く同じであった。
【0155】
PLGA−PCB NPについての細胞毒性試験。NPの細胞毒性をVybrant(登録商標) MTT Cell Proliferation Assay Kit(Molecular Probes(Eugene, OR))を使用して評価した。簡単に述べると、HepG2細胞を、96−ウェルプレートにおいて、可欠アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を供給したフルMEM培地中で5%のCO2下37℃で育て、80−90%コンフルーエンスを達成した。各穴に対して、細胞をPBSで洗浄し、種々の濃度のPLGA−PCB NPまたはPLGA NPのいずれかを含有する200μlのフル培地+50μlの12mMのMTT保存溶液でさらに4時間インキュベートした。次に、MTT含有培地を150μlのDMSOと交換して、生じた結晶を37℃で10分間にわたって溶解させた。570nmでの吸収(Abs)をSpectraMax M5 microplate reader(Molecular Devices(Sunnyvale, CA))を使用し、純DMSOをブランクの測定値として用いて測定した。 NPインキュベーションをしない細胞をコントロールとして用い、NP処理による細胞の生存度を3回見積もった:細胞の生存度(%)=Abs試料/Absコントロール×100。
【0156】
例示的な実施形態を示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸れることなしに種々の変更が可能であることは明らかであろう。
【0157】
排他的な権利または特権が請求されるところの本発明の実施形態は以下のように定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマー。
【請求項2】
前記双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項1に記載のコポリマー:
【化1】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【請求項3】
R1、R2、およびR3は独立にC1−C3アルキルからなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
L1はnが1−20である−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項5】
L2は−(CH2)n−であり、ここでnは1から20までの整数である請求項2に記載のコポリマー。
【請求項6】
nは10から約1,000までの整数である請求項2に記載のコポリマー。
【請求項7】
M+は金属イオン、アンモニウムイオンまたは有機イオンである請求項2に記載のコポリマー。
【請求項8】
X-は、ハロゲン化物、カルボキシラート、アルキルスルフォナート、サリチラート、ラクタート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン、ニトラート、パークロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロフォスファート、トリフルオロメチルスルフォナートからなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項9】
R1、R2、およびR3はメチルであり、L1は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L2は−(CH2)−であり、AはCまたはSOである請求項2に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記疎水性ブロックは、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)から選択されるポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000までである請求項1に記載のコポリマー。
【請求項14】
(a)混合電荷コポリマーを含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマー。
【請求項15】
前記混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項14に記載のコポリマー:
【化2】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【請求項16】
R1−R8は独立にC1−C3アルキルからなる群より選択される請求項14に記載のコポリマー。
【請求項17】
L3は−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択され、ここでnは1−20である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項18】
L4は−(CH2)n−であり、ここでnは1から20までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項19】
nは10から約1,000までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項20】
pは10から約1,000までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項21】
M+は金属イオン、アンモニウムイオンまたは有機イオンである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項22】
X-は、ハロゲン化物、カルボキシラート、アルキルスルフォナート、サリチラート、ラクタート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン、ニトラート、パークロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロフォスファート、トリフルオロメチルスルフォナートからなる群より選択される請求項14に記載のコポリマー。
【請求項23】
R1−R8はメチルであり、L3は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L4は−(CH2)−であり、AはCまたはSOである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項24】
前記疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む請求項14に記載のコポリマー。
【請求項25】
前記疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項144に記載のコポリマー。
【請求項26】
前記疎水性ブロックは、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)から選択されるポリマーを含む請求項14に記載のコポリマー。
【請求項27】
前記疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000までである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項28】
ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む双性イオン性抱合体。
【請求項29】
ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)は複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項28に記載の抱合体:
【化3】
ここで
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【請求項30】
前記脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである請求項28に記載の抱合体。
【請求項31】
前記脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される請求項28に記載の抱合体。
【請求項32】
前記脂質はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項28に記載の抱合体。
【請求項33】
混合電荷コポリマーに共有結合した脂質を含む混合電荷コポリマー抱合体。
【請求項34】
前記混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項33に記載の抱合体:
【化4】
ここで
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【請求項35】
前記脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである請求項33に記載の抱合体。
【請求項36】
前記脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される請求項33に記載の抱合体。
【請求項37】
疎水性部分はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項33に記載の抱合体。
【請求項38】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の複数のブロックコポリマーを含むコアシェルポリマー粒子。
【請求項39】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項38に記載の粒子。
【請求項40】
標的薬剤をさらに含む請求項38または39に記載の粒子。
【請求項41】
請求項28〜37のいずれか1項に記載の複数の抱合体を含むミセル。
【請求項42】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項41に記載のミセル。
【請求項43】
標的薬剤をさらに含む請求項41または42に記載のミセル。
【請求項44】
請求項28〜37のいずれか1項に記載の複数の抱合体を含むリポソーム。
【請求項45】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項44に記載のリポソーム。
【請求項46】
標的薬剤をさらに含む請求項44または45に記載のリポソーム。
【請求項47】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の複数のブロックコポリマーを含むポリマーソーム。
【請求項48】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項47に記載のポリマーソーム。
【請求項49】
標的薬剤をさらに含む請求項47または48に記載の粒子。
【請求項50】
請求項38〜40のいずれか1項に記載のコアシェルポリマー粒子と薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項51】
請求項41〜43のいずれか1項に記載のミセルと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項52】
請求項44〜46のいずれか1項に記載のリポソームと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項53】
請求項47〜49のいずれか1項に記載のポリマーソームと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項54】
請求項50〜53のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする対象者に投与することを含む、治療用または診断用薬剤を送達する方法。
【請求項1】
(a)ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)またはポリ(フォスフォベタイン)を含む双性イオン性ポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマー。
【請求項2】
前記双性イオン性ポリマーブロックは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項1に記載のコポリマー:
【化1】
ここで、
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【請求項3】
R1、R2、およびR3は独立にC1−C3アルキルからなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
L1はnが1−20である−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項5】
L2は−(CH2)n−であり、ここでnは1から20までの整数である請求項2に記載のコポリマー。
【請求項6】
nは10から約1,000までの整数である請求項2に記載のコポリマー。
【請求項7】
M+は金属イオン、アンモニウムイオンまたは有機イオンである請求項2に記載のコポリマー。
【請求項8】
X-は、ハロゲン化物、カルボキシラート、アルキルスルフォナート、サリチラート、ラクタート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン、ニトラート、パークロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロフォスファート、トリフルオロメチルスルフォナートからなる群より選択される請求項2に記載のコポリマー。
【請求項9】
R1、R2、およびR3はメチルであり、L1は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L2は−(CH2)−であり、AはCまたはSOである請求項2に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記疎水性ブロックは、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)から選択されるポリマーを含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000までである請求項1に記載のコポリマー。
【請求項14】
(a)混合電荷コポリマーを含む混合電荷コポリマーブロックと;
(b)疎水性ブロックと
を含むブロックコポリマー。
【請求項15】
前記混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項14に記載のコポリマー:
【化2】
ここで、
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【請求項16】
R1−R8は独立にC1−C3アルキルからなる群より選択される請求項14に記載のコポリマー。
【請求項17】
L3は−C(=O)O−(CH2)n−および−C(=O)NH−(CH2)n−からなる群より選択され、ここでnは1−20である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項18】
L4は−(CH2)n−であり、ここでnは1から20までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項19】
nは10から約1,000までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項20】
pは10から約1,000までの整数である請求項14に記載のコポリマー。
【請求項21】
M+は金属イオン、アンモニウムイオンまたは有機イオンである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項22】
X-は、ハロゲン化物、カルボキシラート、アルキルスルフォナート、サリチラート、ラクタート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン、ニトラート、パークロラート、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロフォスファート、トリフルオロメチルスルフォナートからなる群より選択される請求項14に記載のコポリマー。
【請求項23】
R1−R8はメチルであり、L3は−C(=O)O−(CH2)2−であり、L4は−(CH2)−であり、AはCまたはSOである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項24】
前記疎水性ブロックは生体適合性ポリマーを含む請求項14に記載のコポリマー。
【請求項25】
前記疎水性ブロックはホモポリマーまたはコポリマーを含む請求項144に記載のコポリマー。
【請求項26】
前記疎水性ブロックは、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチラート、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボナート、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボナート)、およびポリ(ジオキサノン−コ−トリメチレンカーボナート−コ−グリコリド)から選択されるポリマーを含む請求項14に記載のコポリマー。
【請求項27】
前記疎水性ブロックは数平均分子量が約1,000から約200,000までである請求項14に記載のコポリマー。
【請求項28】
ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)に共有結合した脂質を含む双性イオン性抱合体。
【請求項29】
ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルフォベタイン)、またはポリ(フォスフォベタイン)は複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項28に記載の抱合体:
【化3】
ここで
R1は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基からなる群より選択され;
R2およびR3は、独立にアルキルおよびアリールからなる群より選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
L1は、カチオン中心[N+(R5)(R6)]をポリマー主鎖[−(CH2−CR4)n−]に共有結合しているリンカーであり;
L2は、アニオン中心[A(=O)−O-]をカチオン中心に共有結合しているリンカーであり;
AはC、S、SO、P、またはPOであり;
M+は(A=O)O-アニオン中心に会合している対イオンであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数である。
【請求項30】
前記脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである請求項28に記載の抱合体。
【請求項31】
前記脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される請求項28に記載の抱合体。
【請求項32】
前記脂質はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項28に記載の抱合体。
【請求項33】
混合電荷コポリマーに共有結合した脂質を含む混合電荷コポリマー抱合体。
【請求項34】
前記混合電荷コポリマーは複数の繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は以下の式を有する請求項33に記載の抱合体:
【化4】
ここで
R4およびR5は、独立に水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、およびC6−C12アリール基から選択され;
R6、R7、およびR8は、独立にアルキルおよびアリールから選択されるか、またはそれらが結合する窒素と共にカチオン中心を形成しており;
A(=O)−OM)はアニオン中心であり、ここでAはC、S、SO、P、またはPOであり、Mは金属または有機対イオンであり;
L3は、カチオン中心[N+(R6)(R7)(R8)]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
L4は、アニオン中心[A(=O)−OM]をポリマー主鎖に共有結合しているリンカーであり;
X-はカチオン中心に会合している対イオンであり;
nは1から約10,000までの整数であり;
pは1から約10,000までの整数である。
【請求項35】
前記脂質はジアシルフォスファチジルエタノールアミンまたはジアシルフォスファチジルグリセロールである請求項33に記載の抱合体。
【請求項36】
前記脂質は、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルフォスフォエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチル−フォスフォエタノールアミン、16−O−ジメチル−フォスフォエタノールアミン、18−1−trans−フォスフォエタノールアミン、1−ステアロイル−2−オレオイル−フォスファチジルエタノールアミン(SOPE)、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォエタノールアミン(transDOPE)からなる群より選択される請求項33に記載の抱合体。
【請求項37】
疎水性部分はジステアロイル−フォスファチジルエタノールアミン(DSPE)である請求項33に記載の抱合体。
【請求項38】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の複数のブロックコポリマーを含むコアシェルポリマー粒子。
【請求項39】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項38に記載の粒子。
【請求項40】
標的薬剤をさらに含む請求項38または39に記載の粒子。
【請求項41】
請求項28〜37のいずれか1項に記載の複数の抱合体を含むミセル。
【請求項42】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項41に記載のミセル。
【請求項43】
標的薬剤をさらに含む請求項41または42に記載のミセル。
【請求項44】
請求項28〜37のいずれか1項に記載の複数の抱合体を含むリポソーム。
【請求項45】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項44に記載のリポソーム。
【請求項46】
標的薬剤をさらに含む請求項44または45に記載のリポソーム。
【請求項47】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の複数のブロックコポリマーを含むポリマーソーム。
【請求項48】
治療用および/または診断用薬剤をさらに含む請求項47に記載のポリマーソーム。
【請求項49】
標的薬剤をさらに含む請求項47または48に記載の粒子。
【請求項50】
請求項38〜40のいずれか1項に記載のコアシェルポリマー粒子と薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項51】
請求項41〜43のいずれか1項に記載のミセルと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項52】
請求項44〜46のいずれか1項に記載のリポソームと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項53】
請求項47〜49のいずれか1項に記載のポリマーソームと薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物。
【請求項54】
請求項50〜53のいずれか1項に記載の組成物をそれを必要とする対象者に投与することを含む、治療用または診断用薬剤を送達する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公表番号】特表2013−510229(P2013−510229A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538071(P2012−538071)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/055887
【国際公開番号】WO2011/057225
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512115933)ユニヴァーシティ・オブ・ワシントン・スルー・イッツ・センター・フォー・コマーシャリゼーション (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/055887
【国際公開番号】WO2011/057225
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512115933)ユニヴァーシティ・オブ・ワシントン・スルー・イッツ・センター・フォー・コマーシャリゼーション (3)
【Fターム(参考)】
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