説明

双腕型作業機械

【課題】廃棄物の解体・分別作業の作業性を更に向上させることができる双腕型作業機械を提供する。
【解決手段】走行体と、この走行体に旋回可能に設けた旋回体と、この旋回体の前方部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第1の作業腕と、旋回体の前方部であって運転室を挟んで反対側に揺動シリンダによって揺動可能に設けた揺動部と、この揺動部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第2の作業腕とを備え、第1及び第2の作業腕によって、被解体物を解体、または分別する双腕型作業機械において、前記第2の作業腕の前記揺動シリンダのボトム側及びロッド側の油室と揺動シリンダを制御する制御弁とを接続する油路中に、揺動シリンダのピストンロッドの自由な伸縮動を許容するフリー回路を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の解体作業時に発生する廃棄物等を解体・分別する際に使用される双腕型作業機械に係り、更に詳しくは、解体・分別作業の作業性を向上させた双腕型作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
解体作業によって小割りされたコンクリート片や金属等の廃棄物を、分別するための双腕型作業機械として、走行体と、この走行体に旋回可能に設けた旋回体と、この旋回体に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けられ被解体物の一方の部材を保持する作業具とからなる第1の作業腕と、前記旋回体の前方で前記第1の作業腕とは運転室を挟んで左右方向反対側に揺動可能に設けた揺動装置と、この揺動装置に、前記旋回体の前後方向軸線回りに回動可能に設けた回動装置と、この回動装置に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けられ前記被解体物の他方の部材を把持する作業具とからなる第2の作業腕とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の双腕型作業機械は、第1の作業腕と第2の作業腕とを協働動作させることにより、例えばコンクリート造りのビルの解体作業によって発生するコンクリート片,窓枠,金属等の対象廃棄物をつかみだす選別/分別作業や、対象廃棄物を切断したり、窓枠のアルミサッシからゴム部材をもぎ取ったりする解体作業等が可能となる。
【0005】
例えば、コンクリート片内の鉄筋をコンクリート片からもぎ取り、コンクリート片と鉄筋とを分離する作業においては、第1の作業腕(主腕)の作業具で、コンクリート片を把持し、第2の作業腕(副腕)の作業具で、コンクリート片から突出している鉄筋の端部を把持し、第2の作業腕(副腕)を揺動させて、コンクリートと鉄筋とを分離することができる。つまり、第1の作業腕(主腕)で対象物を押さえながら第2の作業腕(副腕)の作業具を左右方向に動作させる作業を行うことができる。
【0006】
しかしながら、第2の作業腕(副腕)の作業具で対象物を押さえながら第1の作業腕(主腕)の作業具を左右方向に動作させて行う作業、例えば、解体されたコンクリート壁を第2の作業腕(副腕)の作業具で立てた状態に把持し、第1の作業腕(主腕)に取り付けた小割器でコンクリート壁を上部から下部へ小割りするような作業の場合には以下の問題が発生する。
【0007】
すなわち、第1の作業腕(主腕)の小割器をコンクリート壁の新たな小割り場所へ移動させるために左右方向に動作させる場合、第1の作業腕(主腕)の小割器を開いてコンクリート壁から離した状態で、旋回体を旋回させて、第1の作業腕(主腕)を左右方向に移動させる訳だが、第2の作業腕(副腕)の基端部は旋回体に装設されているため、第2の作業腕(副腕)も旋回体と共に旋回し、左右方向に移動してしまう。この結果、第2の作業腕(副腕)の作業具がコンクリート壁を把持している場合には、コンクリート壁も一緒に左右方向に移動してしまうため、コンクリート壁に対して、第1の作業腕(主腕)の小割器を左右方向へずらすことができなかった。
【0008】
このため、このようなコンクリート壁の小割り作業については、上述した双腕型作業機械の他に、例えばコンクリート壁を立てた状態で把持する通常の作業機が必要になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、第2の作業腕(副腕)で対象物を押さえながら第1の作業腕(主腕)の作業具を左右方向に動作させる作業を可能とし、廃棄物の解体・分別作業の作業性を更に向上させることができる双腕型作業機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、走行体と、この走行体に旋回可能に設けた旋回体と、この旋回体の前方部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第1の作業腕と、前記旋回体の前方部であって運転室を挟んで反対側に揺動シリンダによって揺動可能に設けた揺動部と、この揺動部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第2の作業腕とを備え、前記第1及び第2の作業腕によって、被解体物を解体、または分別する双腕型作業機械において、前記第2の作業腕の前記揺動シリンダのボトム側及びロッド側の油室と前記揺動シリンダを制御する制御弁とを接続する油路中に、前記揺動シリンダのピストンロッドの自由な伸縮動を許容するフリー回路を設けたものとする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記フリー回路は、前記各油路にそれぞれ設けられ、タンクに連通する分岐油路と、前記各分岐油路中にそれぞれ設けた切換弁と、前記切換弁の下流側に設けた絞り弁またはリリーフ弁と、前記切換弁に接続され、前記切換弁を切換え操作する操作手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
更に、第3の発明は、第1の発明において、前記フリー回路は、前記各油路にそれぞれ設けられ、タンクに連通する分岐油路と、前記各分岐油路中にそれぞれ設けた電磁比例弁と、前記電磁比例弁に接続され、前記電磁比例弁を制御する操作手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記フリー回路は、前記油路中に設けられ、前記各油路間を連通状態に連結する弁位置を有する切換弁と、前記切換弁に接続され、前記切換弁を切換え操作する操作手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
更に、第5の発明は、第2乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記操作手段は、前記運転室内に設けたフット操作ペダルと、このフット操作ペダルの踏み込みに連動して前記切換弁または電磁比例弁に操作信号を出力する出力部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2の作業腕を操作する揺動シリンダの油圧回路に、必要に応じて第2の作業腕の揺動シリンダのピストンロッドの自由な伸縮動を許容するフリー回路を設けたので、第2の作業腕の移動に影響を与えずに、第1の作業腕を旋回移動させることができる。この結果、第1の作業腕と第2の作業腕との協調動作による廃棄物の解体・分別作業の作業性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する第2の作業腕を拡大して示す斜視図である。
【図3】図1に示す本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動シリンダの油圧回路図である。
【図4】本発明の双腕型作業機械の一実施の形態における解体作業の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動シリンダの他の例を示す油圧回路図である。
【図6】本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動シリンダの更に他の例を示す油圧回路図である。
【図7】本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動シリンダの更に他の例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の双腕型作業機械の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図4は、本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を示す斜視図、図2は図1に示す本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する第2の作業腕を拡大して示す斜視図、図3は図1に示す本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動シリンダの油圧回路図、図4は本発明の双腕型作業機械の一実施の形態における解体作業の一例を示す斜視図である。
本発明の双腕型作業機械は、図1に示すように、走行体フレーム1aとこの走行体フレーム1aの側部にそれぞれ設けた無限軌道履帯1bとからなる走行体1と、この走行体1上に旋回可能に取り付けた旋回体2とを備えている。旋回体2の前方左側には、運転室3が取り付けられている。旋回体2の後方には、エンジンおよび油圧ポンプを含む動力源装置4とカウンタウエイト5が設けられている。なお、以下の説明では、図1及び図2に示すように前後左右および上下の方向を規定して、これらの方向に基づいて説明する。
【0018】
旋回体2の前方中央部分には、第1の作業腕6が、また、旋回体2の前方左側には第2の作業腕7がそれぞれ装設されている。
まず、第1の作業腕6の構成を図1を用いて説明すると、第1の作業腕6は、旋回体2の前方右側にシリンダ61により俯仰動(上下動)可能に装着したブーム62と、このブーム62の先端にシリンダ63により回動(上下動)可能に設けたアーム64と、このアーム64の先端にシリンダ65により回動(上下動)可能に設けた小割器である第1作業具66を備え、多関節形式の作業腕となっている。これにより、第1の作業腕6の先端の第1作業具66は、上下方向に移動可能である。
この第1の作業腕6は、例えば、廃棄物を把持して移送したり、廃棄物中の部材の引き離し(もぎとり)作業時に、部材が埋め込まれた一方の部材(廃棄物)を把持し固定保持したり、解体されたコンクリート壁を小割りしたりするために用いられる。
【0019】
次に、第2の作業腕7部分の構成を、図1及び図2を用いて説明すると、第2の作業腕7の基部には、旋回体2の前方左側に設けられ、左右方向に揺動する揺動装置8と、この揺動装置8の前方側に設けられ、前後方向軸線回りに回動する回動装置9とが設けられている。
【0020】
第2の作業腕7の基部は、回動装置9に装設されており、回動装置9の前方側にシリンダ71によって回動可能に設けた第1のブーム72と、この第1のブーム72の先端にシリンダ73によって回動可能に設けた第2のブーム74と、この第2のブーム74の先端にシリンダ75によって回動可能に設けたアーム76と、このアーム76の先端にシリンダ77によって回動(上下動)可能に設けた第2作業具78を備え、多関節形式の作業腕となっている。
【0021】
これにより、第2の作業腕7における第1のブーム72、第2のブーム74、アーム76及び第2作業具78は、揺動装置8によって上下方向の軸線回りに揺動可能であり、また旋回装置9により前後方向の軸線回りに旋回可能である。
この第2の作業腕7は、例えば、部材の引き離し(もぎとり)作業時に、廃棄物内に埋め込まれた部材を廃棄物から引き離するためや、コンクリート壁を立てた状態で把持するために用いられる。
【0022】
次に、上述した第2の作業腕7に設けた揺動装置8の構成を、図2を用いて説明する。
揺動装置8の本体81には、その旋回体2側に上下方向に2つの揺動連結用のブラケット82が設けられている。このブラケット82は、垂直方向のピン軸83によって旋回体2側のブラケット21に揺動可能に連結されている。また、揺動装置8の本体81の内側側面には、揺動シリンダ連結用のブラケット84が設けられている。このブラケット84には、揺動用のシリンダ85のピストンロッド86の先端が連結されている。揺動用のシリンダ85の基端部は、旋回体2に連結されている。この構成により、揺動装置8の本体81を、左右方向に揺動させることができる。
【0023】
次に、上述した揺動用のシリンダ85のピストンロッド86の自由な伸縮動を許容するフリー回路を備える揺動用のシリンダ85の油圧回路を、図3を用いて説明する。この図3において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図3において、揺動用シリンダ85の油圧回路は、図示しない原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ851と、この油圧ポンプ851から揺動用シリンダ85に供給される圧油の流れを制御する制御弁852と、戻り油を貯留するタンク853とを備えている。
なお、シリンダ61、63、65等の制御弁については、省略してある。
【0024】
制御弁852のポンプポート及びタンクポートはそれぞれポンプ油路854及びタンク油路855を介して油圧ポンプ851及びタンク853に接続され、制御弁852の2つのアクチュエータポートの一方は第1油路856を介して揺動用シリンダ85のボトム側室85aに接続され、制御弁852の他方のアクチュエータポートは第2油路857を介して揺動用シリンダ85のロッド側室85bに接続されている。
【0025】
第1油路856と第2油路857にはタンク853に連通する分岐油路858と分岐油路859とがそれぞれ設けられ、分岐油路858と分岐油路859中には、油路を保護する第1リリーフ弁001と第2リリーフ弁002とがそれぞれ設けられている。また、戻り油の流れを阻止する第1逆止弁003と第2逆止弁004とが、第1リリーフ弁001及び第2リリーフ弁002にそれぞれ並列に設けられいる。
【0026】
第1油路856及び第2油路857には、第2の作業腕7の作業具78が被解体物を把持している状態で旋回体2の旋回により第1の作業腕6を旋回させる際に揺動シリンダ85のピストンロッド86の自由な伸縮動を許容するフリー回路87が設けられている。
【0027】
また、フリー回路87は、第1油路856と第2油路857にそれぞれ設けられ、タンク853に連通する第1分岐油路871及び第2分岐油路872と、前記第1分岐油路871及び第2分岐油路872中にそれぞれ設けた第1切換弁873及び第2切換弁874と、第1切換弁873及び第2切換弁874の下流側にそれぞれ設けた第1絞り弁875及び第2絞り弁876と、第1切換弁873及び第2切換弁874に接続され、第1切換弁873及び第2切換弁874を切換え操作する操作手段としてのスイッチ888と、出力部としてのリレー回路900とを備えている。
【0028】
スイッチ888は、操縦者の足によって操作されるペダル35によってオン・オフ操作されるフットスイッチを構成している。このフットスイッチは運転室3内に設けられている。
【0029】
リレー回路900は、スイッチ888の操作信号をリレー増幅し、第1切換弁873及び第2切換弁874に操作信号を出力する。
【0030】
次に、上述した本発明の双腕型作業機械の一実施の形態による解体・分別処理作業の一例を、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の双腕型作業機械の一実施の形態によって、廃棄物を解体・分別する作業の一例として、コンクリート壁を小割りする作業を示している。
【0031】
まず、適宜の作業具によって、ビルの一部を構成するコンクリート壁Wをビル本体から取り外す。この状態のコンクリート壁Wに、本発明の双腕型作業機械を位置決めした後、第2の作業腕7を操作し、その第2作業具78によって、コンクリート壁Wを立てた状態で把持する。これにより、小割り作業を行うコンクリート壁Wは、固定状態になる。
【0032】
次に、旋回体2及び第1の作業腕6を駆動操作して、第1作業具66の小割器の先端を、前述したコンクリート壁Wの上端部に略直角対向させたのち、小割器を開き、第1の作業腕6を駆動操作して、小割器の開口部をコンクリート壁Wの上端部に掛かるように配置する。その後、小割器を開閉することにより、前述したコンクリート壁Wを小割りする。
【0033】
このような操作をコンクリート壁Wの上方から下方に向けて繰り返すことで、コンクリート壁Wの第1の作業腕6に対向する部分の小割り作業を実施することができる。
【0034】
その後、第1作業具66の小割器を開き第1の作業腕6をコンクリート壁Wの上方に移動させ、運転室3内のペダル35を踏み込んだ状態で、旋回体2を旋回操作させる。この結果、第2の作業腕7の揺動動作が抑えられた状態で第1の作業腕6が左右方向に移動するので、第2の作業腕7でコンクリート壁Wを押さえながら第1の作業腕6の第1作業具66の小割器をコンクリート壁Wの新たな小割り場所へ移動させることができ、コンクリート壁W全体の小割り作業を実施することができる。この結果、解体・分別作業の作業性を向上させることができる。
【0035】
次に、上述した第1の作業腕6及び第2の作業腕7との協調動作による小割作業において、第2の作業腕7の揺動動作を抑えたい場合の操作について詳細に説明する。
この場合、図3に示すように、運転室3内のペダル35を踏み込むことにより、スイッチ888がオンしてリレー回路900が動作するので、フリー回路87を構成する第1切換弁873及び第2切換弁874が切換わり、第1油路856と第2油路857はそれぞれ第1分岐油路871及び第1分岐油路872を介してタンク853に連通可能な状態となり、揺動シリンダ85のピストンロッド86の自由な伸縮動が可能になる。
【0036】
この状態において、第1の作業腕6の作業具66の小割器を開きコンクリート壁Wから取り外し、第1の作業腕6をコンクリート壁Wの上方に移動させたのち、旋回体2を所望量旋回して、第1の作業腕6の作業具66の小割器をコンクリート壁Wの新たな小割り場所に位置決めする。
【0037】
この際、第2の作業腕7の揺動シリンダ85のピストンロッド86は、自由な伸縮動を許容する状態となっているので、第1の作業腕6の旋回に応動して生じる第2の作業腕7の揺動動作を抑えることができる。
【0038】
この結果、第2の作業腕7の第2作業具78でコンクリート壁Wを押さえたまま、第1の作業腕6を旋回移動させることができる。
【0039】
第1の作業腕6の旋回移動が終了した場合、運転室内のペダル35の踏み込みを終えれば、スイッチ888がオフし、フリー回路87による揺動シリンダ85のピストンロッド86の自由な伸縮動が中断する。
【0040】
上述した本発明の双腕型作業機械の一実施の形態によれば、第2の作業腕7を操作する揺動シリンダ85の油圧回路に、必要に応じて第2の作業腕7の揺動シリンダ85のピストンロッド86の自由な伸縮動を許容するフリー回路87を設けたので、第2の作業腕7の移動に影響を与えずに、第1の作業腕6を旋回移動させることができる。この結果、第1の作業腕6と第2の作業腕7との協調動作による廃棄物の解体・分別作業の作業性を更に向上させることができる。
【0041】
また、上述した本発明の双腕型作業機械の一実施の形態によれば、従来困難であった第2の作業腕7で対象物を押さえながら第1の作業腕6で対象物に作業を行うことが可能となり、双腕型作業機械の作業性を更に向上させることができる。
【0042】
図5は、本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動用のシリンダ85の油圧回路の他の例を示すもので、この図において、図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
この実施の形態においては、図3に示す実施の形態における第1絞り弁875及び第2絞り弁876を低圧リリーフ弁である第1リリーフ弁881及び第2リリーフ弁882に変更したものである。
例えば、双腕型作業機械の作業場所が傾斜地であって、対象物を第2の作業腕7で上方から傾斜地に押さえている場合に、フリー回路87を動作させ、第2の作業腕7の揺動シリンダ85のピストンロッド86の完全に自由な伸縮動を許容すると、対象物への押さえが利かなくなってしまい、対象物の予期せぬ動作が生じてしまう虞がある。このため、フリー回路87が動作しても、第2の作業腕7の揺動シリンダ85のピストンロッド86の伸縮動を一定の抵抗を備えて許容することが望まれる場合がある。本実施の形態はこのようなフリー回路87の実現を目的としている。
【0044】
この実施の形態によれば、上述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0045】
また、この実施の形態によれば、絞り弁から低圧リリーフ弁に変更したことに伴い、傾斜地において第2の作業腕7で対象物を押さえているときにフリー回路87を動作させても、対象物の予期せぬ動作が生じないという効果が得られる。
【0046】
図6は、本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動用のシリンダ85の油圧回路の更に他の例を示すもので、この図において、図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態においては、フリー回路87を構成する切換弁と第1分岐油路871及び第2分岐油路872をタンク853に連結するタンク油路とをそれぞれ1つで構成したもので、切換弁891は、第1分岐油路871及び第2分岐油路872をタンク853に連結する内部油路を有する弁位置を備えている。
【0047】
この実施の形態においても、前述した実施の形態と同様な効果がえられるとともに、揺動用シリンダ85の油圧回路におけるタンク側油路の構成が簡略化し、生産費を削減することができる。
【0048】
図7は、本発明の双腕型作業機械の一実施の形態を構成する揺動用のシリンダ85の油圧回路の更に他の例を示すもので、この図において、図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態においては、図3に示す実施の形態における第1切換弁873及び第2切換弁874をオンオフの切換弁から電流量で弁開度を制御できる第1電磁比例弁873Aと第2電磁比例弁874Aとに変更したものである。また、図3に示す実施の形態における操作手段としてスイッチ888をペダル35の踏み込み量を検知する回転量検出器889と、出力部としてのリレー回路900をペダル35の踏み込み量に応じて第1電磁比例弁873Aと第2電磁比例弁874Aへの操作信号である出力電流を制御するコントローラ910とにそれぞれ変更したものである。
【0049】
この実施の形態によれば、上述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0050】
また、この実施の形態によれば、ペダルの踏み込み量を加減することで、上述した様々な事態に対応できるフリー回路87を実現することができ、操作性と生産性が向上する。
【0051】
なお、上述の実施の形態においては、第2の作業腕7によりコンクリート壁Wを把持固定して、第1の作業腕6によりコンクリート壁Wを小割りする作業を例に説明したが、これに限らない。第2の作業腕7により対象物を把持固定して、第1の作業腕6により左右方向に動作させる作業であれば、いずれの作業であっても可能となる。
【0052】
また、上述の実施の形態において、フリー回路87を操作する手段としてフットスイッチを用いたが、運転室3内の操作レバーにスイッチを設けるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 走行体
2 旋回体
3 運転室
35 ペダル(フット操作ペダル)
6 第1の作業腕
66 第1の作業具
7 第2の作業腕
78 第2の作業具
8 揺動装置
85 揺動用シリンダ
85a ボトム側室
85b ロッド側室
852 制御弁
853 タンク
86 ピストンロッド
87 フリー回路
873 第1切換弁
873A 第1電磁比例弁
888 スイッチ(操作手段)
889 回転量検出器(操作手段)
9 回動装置
900 リレー回路(出力部)
910 コントローラ(出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、この走行体に旋回可能に設けた旋回体と、この旋回体の前方部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第1の作業腕と、前記旋回体の前方部であって運転室を挟んで反対側に揺動シリンダによって揺動可能に設けた揺動部と、この揺動部に俯仰可能に装着した多関節形式の腕とこの腕の先端に設けた作業具とからなる第2の作業腕とを備え、前記第1及び第2の作業腕によって、被解体物を解体、または分別する双腕型作業機械において、
前記第2の作業腕の前記揺動シリンダのボトム側及びロッド側の油室と前記揺動シリンダを制御する制御弁とを接続する油路中に、前記揺動シリンダのピストンロッドの自由な伸縮動を許容するフリー回路を設けた
ことを特徴とする双腕型作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の双腕型作業機械において、
前記フリー回路は、前記各油路にそれぞれ設けられ、タンクに連通する分岐油路と、前記各分岐油路中にそれぞれ設けた切換弁と、前記切換弁の下流側に設けた絞り弁またはリリーフ弁と、前記切換弁に接続され、前記切換弁を切換え操作する操作手段とを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の双腕型作業機械において、
前記フリー回路は、前記各油路にそれぞれ設けられ、タンクに連通する分岐油路と、前記各分岐油路中にそれぞれ設けた電磁比例弁と、前記電磁比例弁に接続され、前記電磁比例弁を制御する操作手段とを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の双腕型作業機械において、
前記フリー回路は、前記油路中に設けられ、前記各油路間を連通状態に連結する弁位置を有する切換弁と、前記切換弁に接続され、前記切換弁を切換え操作する操作手段とを備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の双腕型作業機械において、
前記操作手段は、前記運転室内に設けたフット操作ペダルと、このフット操作ペダルの踏み込みに連動して前記切換弁または電磁比例弁に操作信号を出力する出力部を備えた
ことを特徴とする双腕型作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1959(P2012−1959A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137251(P2010−137251)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20〜22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト建設系産業廃棄物処理RTシステム(特殊環境用ロボット分野)次世代マニピュレータによる廃棄物分離・選別システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】