説明

反射型カラー表示装置及びその製造方法

【課題】単色の反射型表示装置とカラーフィルタから構成される反射型カラー表示装置であって、歩留まりが良好で、かつ、画像表示時に視認性の良好な明るさと、鮮明な画像表示が可能な色域とを兼ね備えた反射型カラー表示装置及びその製造方法の提供。
【解決手段】単色の単位画素からなる反射型表示装置とカラーフィルタとから構成される反射型カラー表示装置であって、(a)前記カラーフィルタが前記単位画素に対応する着色層パターンからなり、(b)前記着色層パターンが異なる色相の複数の副画素を有し、(c)前記副画素が互いに接触しない間隙部分を有し、(d)前記間隙部分の面積率が着色層パターン全体に対して1%以上50%以下の範囲で、且つ、(e)前記間隙部分に、反射表示装置の白表示と同等以上の反射率を有する隙間部分着色層が配置されることを特徴とする反射型カラー表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単色の単位画素からなる反射型表示装置とカラーフィルタから構成される反射型カラー表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビや携帯電話といったあらゆる媒体向けの表示装置として利用されている液晶ディスプレイ(LCD;LiquidCrystal Display)に代わる情報表示装置として、いわゆる“電子ペーパー”と呼ばれる、外部環境光を光源とすることでバックライトを必要としない、反射型の表示装置が開発されている。
【0003】
電子ペーパーは、通常の紙印刷物に近い視認性を有しており、視野角が広い、電源を切っても一度表示した画像は消えないメモリー性を有するため消費電力が少なくて済む等のメリットがあり、LCDよりも長時間にわたって文書等を読むのに適している。
【0004】
従来提案されている電子ペーパーとしては、電気泳動方式(例えば特許文献1参照)、ツイストボール方式(例えば特許文献2参照)、高分子分散型液晶方式(例えば特許文献3参照)、高分子ネットワーク型液晶方式(例えば特許文献4参照)等の表示方式を用いたものが知られている。この中でも、電気泳動方式による反射型表示装置は、広い視野角を有する等の利点を備えており、この電気泳動方式による反射型表示装置を用いた電子書籍表示装置も市販されるに至っている。
【0005】
電気泳動方式では、単色(モノクロ)表示は比較的容易に実施できるが、カラー表示を実施するためには技術的課題が存在する。これは、多色の電気泳動粒子を予め決められた画素に配置する技術が困難なためである。
【0006】
そのため、単色表示の電気泳動方式の反射型表示装置は、カラーフィルタ基板をその表示面上部に重ねることにより、カラー表示の反射型表示装置とすることが現実的である。ここで、カラーフィルタ基板とは、基板上に各画素の色に応じた着色層がパターン形成された基板である。
【0007】
しかし、電気泳動方式の反射型表示装置とカラーフィルタ基板とを重ね合わせる場合、その重ね合わせ工程での位置合わせを、画素ズレを生じさせることなく高い精度で行うことは技術的に困難であり、コスト上昇や歩留まり低下の原因となる。
【0008】
また、光源を持たない反射型表示装置では、カラーフィルタ基板を重ねることで反射型表示装置を構成する層数を増やすことになり、結果的にカラー表示可能な反射型表示装置の明るさが低下してしまい、視認性が悪くなってしまう。一方、明るさを維持すべくカラーフィルタ基板上の着色パターンの各色を調整すると、カラー表示として再現できる色の範囲(色域)が狭くなってしまう。このように、反射型表示装置のカラー化には、表示の明るさと色域を両立させることが技術的に難しいという課題がある。
【0009】
また、電気泳動方式の反射型表示装置をカラー表示させるために用いるカラーフィルタ基板では、表示装置の背面電極基板が透けることがないため、また、明るさの低下を抑えるために、着色層を形成する各色のパターンの間にブラックマトリクスと呼ばれる遮光パターンを配置しないのが一般的である。そのため、隣接する着色層パターンどうしが重なったり、離れたりすることのないように位置精度良くパターニングすることは技術的に高度であり、歩留まり低下の原因となる。
【0010】
なお、かかる課題は、電気泳動方式による反射型表示装置に限らず、単色(モノクロ)表示が可能な反射型表示装置にカラーフィルタ基板を重ねてカラー表示を可能とする他の方式の反射型表示装置にも同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005‐156759号
【特許文献2】特許第2860790号
【特許文献3】特開2001‐92383号
【特許文献4】特許第3178530号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決すべく為されたものであって、その課題とするところは、単色(モノクロ)の反射型表示装置とカラーフィルタから構成される反射型カラー表示装置であって、歩留まりが良好で、かつ、画像表示時に視認性の良好な明るさと、鮮明な画像表示が可能な色域とを兼ね備えた反射型カラー表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、単色の単位画素からなる反射型表示装置とカラーフィルタとから構成される反射型カラー表示装置であって、
(a)前記カラーフィルタが前記単位画素に対応する着色層パターンからなり、
(b)前記着色層パターンが異なる色相の複数の副画素を有し、
(c)前記副画素が互いに接触しない間隙部分を有し、
(d)前記間隙部分の面積率が着色層パターン全体に対して1%以上50%以下の範囲で、且つ、
(e)前記間隙部分に、反射表示装置の白表示と同等以上の反射率を有する隙間部分着色層が配置されることを特徴とする反射型カラー表示装置である。
【0014】
すなわち、本発明は、着色層パターンの単位画素を構成する副画素間に間隙を設けることで、反射型カラー表示装置を画像表示させる際の明るさが向上し視認性が良好になり、尚且つ着色層パターンを彩度の高い分光特性にして色域を拡大させる際にも、その明るさの低下を抑制した反射型カラー表示装置及びその製造方法が実現できる。また、着色層パターンの単位画素を構成する副画素間に間隙を有することで、着色層パターンを形成する際の副画素ごとのパターニング工程での位置ズレ、着色パターンと反射型表示装置との重ね合せ工程での位置ズレの許容範囲を広く設定することが可能である。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記間隙部分着色層が、前記間隙部分全体の面積に対して、50%以上100%以下の範囲の面積率で配置されることを特徴とする請求項1に記載の反射型カラー表示装置である。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記間隙部分着色層が、白色顔料を有することを特徴とする請求項1または2に記載の反射型カラー表示装置である。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記間隙部分着色層と反射型表示装置の白表示との色差△E(L*a*b*)が10以内となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射型カラー表示装置である。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記単色の単位画素からなる反射型表示装置と、基材上に着色層パターンを形成してなるカラーフィルタから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射型カラー表示装置である。
【0019】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記カラーフィルタが、単色の単位画素から成る前記反射型表示装置の表示面上に直接形成された着色層パターンから成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射型カラー表示装置である。
【0020】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項6に記載の反射型カラー表示装置を製造する方法であって、前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、印刷法により前記着色層パターンを形成することを特徴とする反射型カラー表示装置の製造方法である。
【0021】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、着色層パターンを形成してなる反射型カラー表示装置の製造方法であって、インキ剥離性のフィルム上に着色層用のインキを塗布する工程と、インキ除去版により不要部分を除去して所定形状の着色層パターンを形成する工程と、着色層パターンを形成したフィルムを前記反射型表示装置の表面基材側に押圧して、着色層パターンを転写する工程からなる反転印刷法によることを特徴とする請求項7に記載の反射型カラー表示装置の製造方法である。
【0022】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、着色層パターンを形成してなる反射型カラー表示装置の製造方法であって、前記着色層パターンの形成工程がインクジェット印刷法によることを特徴とする請求項7に記載の反射型カラー表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来の単色の単位画素からなる反射型表示装置とカラーフィルタとの構成により、歩留まりが良好で、かつ、画像表示時に視認性の良好な明るさと、鮮明な画像表示が可能な色域とを兼ね備えた反射型カラー表示装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である反射型カラー表示装置の断面概略図である。
【図2】本発明の一実施形態である反射型表示装置の表面上に着色層パターンを形成する製造工程の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態である着色層パターンの平面概略図である。
【図4】本発明の一実施形態である反射型カラー表示装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を具体的に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態である反射型カラー表示装置の構造を説明する断面概略図である。この図において、反射型カラー表示装置Cは、単色(モノクロ)表示可能な反射型表示装置40の表示面を構成する表面基材41の上部(図1において上部)に、カラーフィルタの機能を有する着色層パターン22が直接形成されている。なお、前記着色層パターン22は、前記反射型表示装置40の単位画素に対応しており、異なる色相からなる複数の副画素、例えば、赤色副画素22R、緑色副画素22G、青色副画素22Bと、隣接する副画素間に間隙23を設けて形成されている。反射型表示装置40は、表面基材41と背面基材43との間に多数の電気泳動式粒子が挟持されてなる電気泳動式粒子層42が形成され、さらに背面基材43の電気泳動式粒子層42の反対側の一面に画素電極44が形成されて構成されている。より詳細には、電気泳動式粒子層42は、正に帯電する第一の色の電気泳動粒子と負に帯電する第二の色の電気泳動粒子とを液体分散媒中に封入したマイクロカプセルと、マイクロカプセル分散材とを備える。すなわち、本実施形態の反射型表示装置40は、いわゆるマイクロカプセル型電気泳動式のものである。
【0027】
本発明の着色層パターン22は、図1に示すようにカラー表示用単位画素に区分され、赤色副画素22R、緑色副画素22G、青色副画素22Bからなる、いわゆるRGB表示に限定されず、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)からなる副画素を備えたものであってもよい。さらには、図3に示すようなRGB表示に、白色からなる副画素22Wや空白を設けても良い。白色からなる副画素22Wを設けると白色表示でのコントラストが増し、また、空白を設けた場合には画像の明るさが増す効果が得られる。
【0028】
図1は、反射型表示装置40の表面基材41の上に、直接着色層パターン22を形成した本発明の一実施形態を示す断面概略図であるが、これに限定されるものではない。
すなわち、図4のように基材25の上に着色層パターン22を設けたカラーフィルタ26を、反射型表示装置40の上に設けてもよい。
【0029】
前記カラーフィルタ26の基材25としては、カラーフィルタとして利用可能な透明性を有していれば特に限定するものではない。例えば、ガラス基材でもよく、また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリルレート等の可撓性のフィルム基材を用いることができる。特にフィルム基材では、カラーフィルタの製造工程に求められる耐熱性を考慮すると、PET、PES、シクロオレフィンポリマー、ポリアミドが好ましい。
【0030】
次に、本発明の反射型カラー表示装置の製造方法について説明する。図2は、本発明の一実施形態である単色の単位画素からなる反射型表示装置の表面上に着色層パターンを形成する製造工程の概略図を示す。いわゆる凸版反転印刷法により着色層パターンを形成する製造方法である。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、例えば、透明なフィルム基材上にシリコーン層を設けることで得られるインキ剥離性のフィルム10上に、着色層パターン形成用の着色層インキ20を塗布、予備乾燥して均一な着色層を形成する。
【0032】
上記のような凸版反転印刷法は、着色層のパターニング方法として従来用いられているフォトリソグラフィー法と異なり、現像、洗浄などの工程を必要としないため、被印刷基板となる反射型表示装置40への負荷がなく、着色層を設けることが可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
前記インキ剥離性のフィルム10上に着色層パターン形成用の着色層インキ20を塗布する方法としては、インキの粘度や溶媒の乾燥性によって公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。中でも、ダイコート、キャップコート、ロールコート、アプリケータ等の塗工方法では、広い範囲の粘度の着色層インキ20に対しても均一な着色層を形成する事ができる。
【0034】
前記着色層インキ20は、少なくとも顔料、樹脂、および溶媒からなり、溶解、分散させることで得られる。
【0035】
本発明に係る着色層インキに用いられる顔料を以下に示す。例えば、カラーインデックス(C.I.)No.で示すと、赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215などが、緑色顔料として7、36などが、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64などが挙げられる。
【0036】
また、赤色、緑色、青色以外にも、例えば、黒顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。また、白顔料として、18、21、27、28などが、黄顔料として、13、17、83、109、110、128などが、紫顔料として、19、23などが、橙顔料として、38、43などが挙げられる。顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い
【0037】
また、シアン;マゼンタ;イエローの3色を含む着色層パターンの場合、シアンインキには前記青色顔料、マゼンタインキには前記赤色顔料、イエローインキには前記黄色顔料をそれぞれ用いる事ができる。
【0038】
前記着色層インキ20に含まれる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等から1つ以上のものが使用される。
【0039】
さらに溶剤には、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤などが使用される。エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、アルコール系溶剤として、1-ブタノール、3メトキシー3メチル-1ブタノール、1-ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1-ペンタノール、2-メチル1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、エーテル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、炭化水素系溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(エクソン化学社製)などが挙げられる。
【0040】
前記着色層インキ20より形成された塗膜の予備乾燥には、自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波、減圧乾燥などを用いる事ができ、また、紫外線、電子線などの放射線を用いる事もできる。この予備乾燥では、着色層インキ20粘度またはチキソトロピー性、脆性を上げる事を目的とするもので、前記塗膜の完全乾燥はさせない。乾燥が不十分な場合は、後工程で述べるインキ除去版30の凸部に押し当て剥離する際に、前記着色層インキ20より形成された塗膜が断裂し不良が発生する。逆に予備乾燥が行き過ぎた場合は、インキ除去版30にインキが転写されない。そのため使用する着色層インキ20の組成、塗工膜厚によって乾燥状態を調整する。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、予備乾燥が終了した前記塗膜に、必要な着色層パターン22(図1参照)を凹部としたインキ除去版30を押し当て、余分な前記塗膜をインキ除去版30に転移させて、図2(c)に示すように着色層パターン21を形成する。
【0042】
前記インキ除去版30としては、無アルカリガラス等の低膨張ガラス表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウェットエッチング処理、もしくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μmの版深を設けたものを用いることができる。あまり版深が浅いと、前記塗膜がインキ除去版30の版底に接触
してパターンの再現が難しくなる。一定以上の版深を有すれば、得られるパターンの形状に変わりはないが、版深を深くすると版に設けるパターンを高解像化できなくなる弊害がある。
【0043】
また、インキ除去版30にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン-ジエン共重合体などからなるものを用いることもできる。またエチレン-プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の版を用いることもできる。このような樹脂製のインキ除去版は、すでに凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とする方法や、あるいは彫刻によっても作製する事ができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できる。
【0044】
続いて、図2(d)に示すように、インキ剥離性のフィルム10上に形成した着色層パターン21と、反射型表示装置40の表面基材41上に形成された位置合わせ用のマークとの位置合わせ工程を経た後、転写することで、反射型表示装置40の表面基材41上に着色層パターン22を設ける事ができる。
【0045】
本実施形態の反射型カラー表示装置の製造方法は、反射型表示装置40の表面基材41がガラスやプラスチック、フィルムなどに対しての印刷に適用できる。表面基材41は、反射型表示装置40の表示が可能な透明性を有していれば良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどを表面基材41として用いる事もできる。印刷に適用するインキの乾燥や硬化条件に合わせて選定する事も可能であり、耐熱性材料として好適なポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドなどを用いる事もできる。
【0046】
また、反射型表示装置40の表面基材41に、樹脂層(図略)を設けることも可能である。この樹脂層には公知の材料を用いることができるが、透明であること、形成する着色層パターンの変色や褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求され、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのビニル樹脂やアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂から1つ以上のものが使用される。
【0047】
また、着色層パターン22を形成した際の解像性及び精細性を高めるために、樹脂層を形成する樹脂に微粒子(フィラー)を含有させることも有効である。フィラーとしては、無機微粒子では微粉末珪酸、有機微粒子ではアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、フッソ樹脂などから選択して用いる事ができる。また、フィラーの添加量は、樹脂層100質量部に対し1〜10部が好ましい。
【0048】
上記のような材料を用いて反射型表示装置40の表面基材41に樹脂層を形成する際には、インキ剥離性のフィルム10上にインキ液膜20を形成する際と同様に公知の塗工方法を用いることができる。
【0049】
画素電極44と着色層パターンの副画素とを位置ズレ無く形成し、所望の画像表示をするために、反射型表示装置40へ位置合わせ用のマークを形成する方法として、第一に印刷する着色層パターン21のインキを用いて、着色層パターン21と同時に形成する方法、着色層パターン21印刷前に予め形成する方法、反射型表示装置40を駆動させて所望の位置に位置合わせ用のマークを表示させる方法、などの方法を用いる事ができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
位置合わせ工程時には、インキ剥離性のフィルム10と、反射型表示装置40の表面基材41との間隔は、インキ剥離性のフィルム10の帯電や吸着による基材との接触を起こさないように、また、位置合わせに用いる観察カメラの被写界深度や焦点制御などを考慮し20μmから500μmの距離を保って平行に配置する事が好ましく、より好ましくは20μmから200μmである。
【0051】
そして、この印刷工程を同一の反射型表示装置40の表面基材41に、必要な着色層パターン22の副画素の数だけ繰り返し行うことにより、反射型表示装置40の表面基材41上に図1に示すような着色層パターン22を設けることができる。
【0052】
前記着色層パターンの隣接する副画素間に設ける間隙部分は、着色層パターンの各副画素の印刷工程においてその画素サイズを規定することにより、すなわち、着色層パターンを形成するためのインキ除去版30の設計により、その面積率を着色層パターン全体に対して1%〜50%の間で任意に規定することができる。
【0053】
上記間隙部分を任意に規定された面積率で設けることにより、反射型カラー表示装置が画像表示をした際に、間隙部分において着色層を経由しない分、明るさの低下なく反射された光により、全体の明るさを損なわずに画像表示をすることができる。
【0054】
しかし、副画素間に設けた上記間隙部分を着色層パターン全体に対して50%を超える面積率で設けると、表示の明るさを確保することができるが、一方で、副画素の面積が小さくなってしまい、着色層パターンの各副画素からの十分な発色が得られずに、画像が不鮮明になってしまう。
【0055】
副画素間の間隙部分に設ける間隙部分着色層24としては、表示装置を全面白表示した際にチラつき等の不具合なく均一な表示とするために、反射型表示装置により表示される白色とできるだけ近い光学特性を持つものを用いることができる。具体的には、反射型表示装置の白表示との色差△E(L*a*b*)が10以内となる間隙部分着色層24を選択して用いることができる。
【0056】
着色層パターンの副画素間の間隙部分に前記間隙部分着色層24を配置する方法としては、上記副画素のパターニングと同様の方法、すなわちインキ剥離性のフィルムを用いた凸版反転印刷法を用いることができる。
【0057】
また、副画素間の間隙部分23に配置しようとする前記間隙部分着色層24は、例えば、図3(a)に示すようにカラーフィルタ基板における遮光パターン、いわゆるブラックマトリクスのような格子状に配置することもできるし、図3(b)に示すように間隙部分23の必要な面積を埋めるためにドットパターンのようなものであってもよく、その他にもストライプパターン、モザイクパターンなどを用いてもよい。
【0058】
一例として、上記の副画素間の間隙部分23に前記間隙部分着色層24を配置するためのパターンを挙げたが、これらに限定されるものではなく、間隙部分に配置しようとする面積率に応じた必要なデザインの版を用いることが可能である。
【0059】
さらに、副画素間の間隙部分23に前記間隙部分着色層24を配置する工程は、着色層パターン22を設ける前でも後でもよく、その面積率を間隙部分23全体に対して50%〜100%の間で任意に規定することができる。
【0060】
例えば、着色層パターン22を設ける前に、間隙部分23に対して100%の面積率で設ける場合、間隙部分23は、着色層パターン22を隣接画素どうしの混色を防ぎ、所定
の位置に精度良くパターニングするための、いわゆる隔壁パターンとして利用することができる。
【0061】
一方、間隙部分23に対して50%より少ない面積率で前記間隙部分着色層24を設ける場合、微小なパターンを間隙部分に設けるのは技術的に困難となる。また、少ない面積率により明度低下抑制の効果を得るためには、反射型表示装置の白表示と色差ΔEの大きな前記間隙部分着色層24が必要となり、画像のチラつきの原因となる可能性がある。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、反射型表示装置40の表示面側である表面基材41に直接、あるいは樹脂層を介して着色層パターン22を形成しているので、着色層パターン22の画素ズレや画像表示時の混色を極力抑制することができ、また、反射型カラー表示装置全体の層数を削減できて視認性を良好なものとすることができる。加えて、凸版反転印刷法により着色層パターン22を反射型表示装置40の表面基材41上に形成しているので、従来技術のようにカラーフィルタ基板を形成する工程に比較して簡易な工程により着色層パターン22を形成することができ、工程減、コスト減に寄与できる。
【0063】
なお、本発明の反射型カラー表示装置及びその製造方法は、その細部が上述の実施形態に限定されず、種々の変形例が可能である。
一例として、上述の一実施形態では単色の単位画素からなる反射型表示装置40がマイクロカプセル型電気泳動式のものであったが、他の方式による反射型表示装置、例えばツイストボール方式、高分子分散型液晶方式、高分子ネットワーク型液晶方式による反射型表示装置であってもよい。
【0064】
また、反射型表示装置の表面基材上に直接、あるいは樹脂層に、着色層パターン、もしくは着色層パターンを構成する副画素間の間隙部分の前記間隙部分着色層24を形成する手法も、上述の一実施形態である凸版反転印刷法に限定されるものではない。一例として、インクジェット印刷法を含む周知の印刷法が適用可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を更に詳しく説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
インキ剥離性のフィルムとして、膜厚120μmのシリコーン系離形ポリエステルフィルム(東洋紡績社製、K1504)を用い、下記組成の着色層パターン用インキ、間隙部分着色層用インキを用いて、隣接副画素間の距離が20μmで、赤色画素、緑色画素、青色画素および空白画素の4つの正方形の副画素(一辺140μm)を単位画素とする着色層パターンをインキ剥離性のフィルム上に形成した。なお、間隙部分の面積率は着色層パターン全体に対して13%であった。
(着色層パターン用インキ)
下記組成の樹脂を乳酸ブチル(100質量部)に溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75質量部を加え70℃にて5時間の反応によりアクリル共重合樹脂を得た。得られたアクリル共重合樹脂を、樹脂濃度が20%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて希釈し、アクリル樹脂ワニスとした。
メタクリル酸 20質量部
メチルメタクリレート 10質量部
ブチルメタクリレート 55質量部
ヒドロキシエチルメタクリレート 15質量部
【0067】
(赤色画素用インキ)
下記組成物を混合して着色層パターン用インキの赤色画素用インキの分散体を調整した。
C.I.Pigment Red 254 18質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガーフォーレッド B−CF」)
C.I.Pigment Red 17 72質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「クロモフタールレッド A2B」)
上記アクリル樹脂ワニス(固形分20%) 108質量部
【0068】
次に、下記組成物を混合して赤色画素用インキを調整した。
上記分散体 100質量部
メチル化メチロールメラミン 20質量部
(三洋化成社製、MW−30)
ベンジルジメチルケタール 3質量部
(紫外光硬化開始剤)
レベリング剤 1質量部
(DIC社製、メガファックF−483SF)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 85質量部
(希釈剤)
なお、着色層パターン用インキの緑色画素用インキおよび青着画素用インキについても、同様の方法により調製した。
【0069】
(間隙部分着色層用インキ)
粒径0.1μmの酸化チタン粒子を白色顔料として用い、上記着色層パターン用インキと同様の方法により、間隙部分着色層用インキとしての白色組成物インキを調製した。
【0070】
(RGB着色層の形成方法)
上記インキ剥離性のフィルムに、前記赤色画素用インキを用いて、ダイコートにより膜厚○○μmで塗工した。塗工した着色層パターン用インキを2分間室温乾燥させた後、雰囲気70℃のオーブン内で30秒間赤色着色層を形成し仮乾燥させた。同様にして緑色画素及び青色画素用インキを用いて、緑色、青色着色層をそれぞれ形成した。
【0071】
つぎに、所定の赤色着色層パターンを凹部とするインキ除去版と、インキ剥離性のフィルム上のインキ膜面を平行に向かい合わせた後、ゴムローラーにて加圧した。インキ除去版は、ガラス基板に版深5μmで所定の着色層パターンを凹部としたパターンを設けたもので、着色層パターンごとに配置の異なる正方形副画素(一辺140μm)の連続パターンとした。
【0072】
つぎにインキ除去版から、インキ剥離性のフィルムを剥離し、インキ剥離性のフィルム上に、所定の赤色着色層パターンを得た。さらに、赤色着色層パターンが形成されたインキ剥離性のフィルムと反射型表示装置とを平行に向かい合わせ、着色層パターンの外に設けられた位置合わせ用のマークを基準に位置合わせを行った後、ゴムローラーによる加圧を行い、反射型表示装置表面に赤色着色層パターンを転写した。
【0073】
上記と同様にして、緑、青着色層パターンを形成して、反射型表示装置表面にRGB着色パターンを作製した。
【0074】
つぎに、隣接副画素間の距離が20μmからなる間隙部分に、上記白色組成物を線幅10μmの格子状パターン(全間隙部分に対して面積率52%)となるように配置した。
【0075】
次に、反射型表示装置表面上に形成した着色層パターンおよび白色組成物に、紫外光を
照射(50mJ/cm)して硬化を終了し、反射型カラー表示装置を作製した。
【0076】
<実施例2>
正方形の副画素の大きさを一辺120μmとし、隣接副画素間の距離が30μmからなる間隙部分に、上記白色組成物を線幅10μmの格子状パターン(全間隙部分に対して面積率36%)としたこと以外は、実施例1と同様にして反射型カラー表示装置を作製した。
【0077】
<比較例1>
着色層パターンから副画素間の間隙部分をなくしたこと以外は、実施例と同様にして反射型カラー表示装置を作製した。
【0078】
<評価>
実施例1および2、比較例1で作製した反射型カラー表示装置を駆動して、目視観察より画像の視認性、明るさ、画素精度を評価した。
【0079】
<比較評価>
実施例1および2で得られた本発明品は、各色の副画素間に所定の間隙部分とそれに配置された白色組成物の効果により、所望のカラー画像が視認性良く十分に明るく、しかも着色層パターニングの位置合わせにおいて、表示装置背面の駆動部と良好な位置精度が得られた。一方、比較例1で得られた比較例品は、黒表示では問題はなかったが、カラー画像を表示させると、全体的に暗く、画像が不鮮明であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の反射型カラー表示装置及びその製造方法による反射型カラー表示装置は、種々の用途に利用できるが、とりわけ電子書籍端末や広告媒体に用いる事ができる。
【符号の説明】
【0081】
10・・・インキ剥離性のフィルム
20・・・着色層インキ
21・・・着色層パターン
22・・・着色層パターン
23・・・間隙部分
24・・・間隙部分着色層
25・・・基材
26・・・カラーフィルタ
30・・・インキ除去版
40・・・反射型表示装置
41・・・表面基材
42・・・電気泳動式粒子層
43・・・背面基材
44・・・画素電極
C・・・・反射型カラー表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色の単位画素からなる反射型表示装置とカラーフィルタとから構成される反射型カラー表示装置であって、
(a)前記カラーフィルタが前記単位画素に対応する着色層パターンからなり、
(b)前記着色層パターンが異なる色相の複数の副画素を有し、
(c)前記副画素が互いに接触しない間隙部分を有し、
(d)前記間隙部分の面積率が着色層パターン全体に対して1%以上50%以下の範囲で、且つ、
(e)前記間隙部分に、反射表示装置の白表示と同等以上の反射率を有する隙間部分着色層が配置されることを特徴とする反射型カラー表示装置。
【請求項2】
前記間隙部分着色層が、前記間隙部分全体の面積に対して、50%以上100%以下の範囲の面積率で配置されることを特徴とする請求項1に記載の反射型カラー表示装置。
【請求項3】
前記間隙部分着色層が、白色顔料を有することを特徴とする請求項1または2に記載の反射型カラー表示装置。
【請求項4】
前記間隙部分着色層と反射型表示装置の白表示との色差ΔE(L*a*b*)が10以内となることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射型カラー表示装置。
【請求項5】
前記単色の単位画素からなる反射型表示装置と、基材上に着色層パターンを形成してなるカラーフィルタから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射型カラー表示装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタが、単色の単位画素から成る前記反射型表示装置の表示面上に直接形成された着色層パターンから成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射型カラー表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の反射型カラー表示装置を製造する方法であって、前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、印刷法により前記着色層パターンを形成することを特徴とする反射型カラー表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、着色層パターンを形成してなる反射型カラー表示装置の製造方法であって、インキ剥離性のフィルム上に着色層用のインキを塗布する工程と、インキ除去版により不要部分を除去して所定形状の着色層パターンを形成する工程と、着色層パターンを形成したフィルムを前記反射型表示装置の表面基材側に押圧して、着色層パターンを転写する工程からなる反転印刷法によることを特徴とする請求項7に記載の反射型カラー表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記単色の単位画素からなる反射型表示装置の表示面上に、着色層パターンを形成してなる反射型カラー表示装置の製造方法であって、前記着色層パターンの形成工程がインクジェット印刷法によることを特徴とする請求項7に記載の反射型カラー表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88750(P2013−88750A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231513(P2011−231513)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】