説明

反射波検出回路及び反射波検出方法

【課題】低レベルの反射波に対しても送信機を保護することができる反射波検出回路及び反射波検出方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、方向性結合器1及び方向性結合器2を有する。線路8は、端子11とカップリングされた端子13と端子23とカップリングされた端子21とを接続する。線路9は、端子12とカップリングされた端子14と端子24とを接続する。端子13で進行波から分岐された分岐進行波は、線路8及び端子21を介して端子21に入力される。端子14により反射波から分岐された分岐反射波と、端子11から漏れ出して端子14に伝わる漏れ進行波と、は線路9、端子24及び線路25を介して端子23に入力される。端子23において、漏れ進行波は分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射波検出回路及び反射波検出方法に関し、特に低出力の反射波を検出する反射波検出回路及び反射波検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信システムでは、送信機の出力がアンテナ等で反射されて反射波が発生する。この反射波が送信機に戻ると、送信機が破損するおそれがある。よって、送信機の破損を防止するため、送信機とアンテナ等との間に反射波検出回路を挿入して、アンテナ側からの反射電力を監視し、反射波が一定レベルに達すると送信機の保護を行うことが一般的に知られている。このような場合には、なるべく小さいレベルの反射波を検出して送信機を保護することが望ましいが、送信システムの主線路から反射波の一部を取り出すための素子(例えば方向性結合器やサーキュレータ)のアイソレーションは有限であるため、反射波を検出する端子に進行波が漏れてしまう。そのため、検波器に到達する漏れた進行波よりも小さな反射波は検出することができない。つまり、進行波を十分無視できるくらい大きな反射波でないと検出することができないので、送信機を十分に保護できない場合が生じる。
【0003】
図4は、送信機とアンテナとの間に挿入された一般的な反射波検出回路400の構成図である。反射波検出回路400は、送信機45とアンテナ46との間に挿入され、アンテナ46側から戻ってくる反射波を検出して、保護回路47に出力する。反射波が一定の大きさに達したときには、保護回路47が送信機45の出力を減少もしくは停止させることにより、送信機45の破損を防止する。
【0004】
反射波検出回路400は、送信機45とアンテナ46とを接続する主線路上に挿入された方向性結合器41を有する。方向性結合器41の主線路上の送信機45側には端子411、アンテナ46側には端子412が設けられている。また、端子411とカップリングする端子413、端子412とカップリングする端子414が設けられている。端子414と保護回路47との間には検波器43が設けられている。また、端子413と接地電位との間には、終端器44が設けられている。
【0005】
方向性結合器41が理想的な方向性結合器であれば、そのアイソレーションは無限大であるため、送信機45から端子411に送出された進行波は端子414に現れることはない。この場合、検波器43は、アンテナ46側から端子412に戻ってきて、端子414に現れた反射波のみを検出することができる。
【0006】
また、反射波検出回路の例が特許文献1〜3に開示されている。特許文献1及び2では、送信機とアンテナとの間の線路上に、2つの方向性結合器を1/4波長間隔で配置している。さらに、ハイブリッドリングなどの合成素子を設けている。これにより、進行波または反射波の検出精度が改善できるとしている。一方、特許文献3では、送信機の前段に方向性結合器を1つ挿入し、さらにこの方向性結合器の後段に別の方向性結合器をもう1つ挿入している。さらに分配素子1つ、合成素子2つ、減衰器2つ及び移相器2つを設けることにより、反射波の検出精度を改善できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−12562号公報
【特許文献2】特開平5−45387号公報
【特許文献3】特開2004−286632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、方向性結合器のアイソレーションは一般的に有限であるため、方向性結合器41の端子414には、端子411から漏れた進行波が現れる。このため、検波器43は、反射波と進行波を合わせて検出してしまうので、漏れた進行波より小さな反射波は検出することができない。よって、検波器43は進行波を無視することができる程度に大きな反射波しか検出できず、送信機を十分に保護できない場合がある。
【0009】
ここで、方向性結合器41の端子414に現れる進行波と反射波の大きさについて、具体的な例を挙げて説明する。以下では、送信機45から送出されアンテナ46へ向かう進行波Pの電力を1kW、方向性結合器41の結合量C41を−40[dB]、方向性結合器41の方向比Cr41を20[dB]とし、アンテナ46側からの反射波Prefが10Wに達したときに送信機45を保護する動作をさせたい場合について説明する。
【0010】
アンテナ46側からの反射波Prefの一部は方向性結合器41の端子414に反射波Prとして現れ、検波器43に到達する。方向性結合器41の結合量C41は−40dBなので、反射波Prの電力は式(1)で表される。
で表される。



つまり、アンテナ46からの反射波Prefの電力が10Wであるときは、検波器43に到達する反射波Prの電力は1mWである。
【0011】
そこで、アンテナ46からの反射波Prefの電力が10Wに達したときに送信機45を保護する動作を行うには、検波器43で検出反射波Prの電力が1mWに達するか否かを監視すれば良い。
【0012】
送信機45から送出され、方向性結合器41を通過してアンテナ46へ向かう進行波Pのうち、端子414に漏れる成分を考える。端子411と端子414のアイソレーションCi41は、方向性結合器41の結合量C41が−40[dB]、方向比Cr41が20[dB]であることから、式(2)で表される。


【0013】
方向性結合器41の端子411には、送信機45から1kWの進行波Pが入力されているので、方向性結合器41の端子414に漏れる進行波Pfは、式(3)で表される。



また、検波器43に到達する電力、すなわち進行波Pfの電力と反射波Prの反射波の電力との和Pdet−oldは、式(4)で表される。


【0014】
この場合、検波器43は反射波Prと進行波Pfとが同じ大きさであるため、これらを区別することができない。検波器43で反射波Prを正しく検出するためには、進行波Pfを無視できる程度に反射波Prが大きくなければならないが、反射波が大きくなると送信機を十分に保護できない。
【0015】
また、特許文献1〜3に開示された反射波検出回路を用いることで、反射波の検出精度は向上するものの、いずれも合成素子などの素子を追加しなければならず、これらの反射波検出回路を組み込んだ装置の小型化が困難である。さらに、素子を追加することにより、製造コストの増加は避けられない。さらに、特許文献1及び特許文献2のように送信機とアンテナとの間に素子を挿入することにより、損失が増大してしまう。
【0016】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、低レベルの反射波に対しても送信機を保護することができる反射波検出回路及び反射波検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様である反射波検出回路は、進行波を第1の端部から第2の端部へ伝搬させる双方向性結合器である第1の方向性結合器と、第3の端部に入力された信号を第4の端部へ伝搬させ、前記第4の端部から出力信号を出力する双方向性結合器である第2の方向性結合器と、前記第1の端部と前記第4の端部とを接続する第1の線路と、前記第2の端部と前記第3の端部とを接続する第2の線路と、を少なくとも備え、前記第1の方向性結合器は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に接続され、前記進行波を前記第2の端部へ伝搬させる第3の線路を少なくとも備え、前記第2の方向性結合器は、前記第3の端部と前記第4の端部との間に接続され、前記第3の端部に入力された信号を前記第4の端部へ伝搬させる第4の線路を少なくとも備え、前記第1の端部で前記進行波から分岐された分岐進行波は、前記第1の線路を介して前記第4の端部に入力され、前記進行波が反射されて生じる反射波から前記第2の端部において分岐された分岐反射波と、前記第1の端部において前記進行波から漏れ出して前記第2の端部に伝わる漏れ進行波と、は前記第2の線路、前記第3の端部及び前第4の線路を介して前記第4の端部に入力され、前記第4の端部において、前記漏れ進行波は前記分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有するものである。
【0018】
本発明の一態様である反射波検出方法は、第1の方向性結合器の第3の線路の一端に設けられた第1の端部で、前記第3の線路を伝搬する前記進行波から分岐進行波を分岐し、 前記分岐進行波を、第2の方向性結合器の第4の線路の一端に設けられた第4の端部に、前記第1の端部と前記第4の端部とを接続する第1の線路を介して入力し、前記第1の方向性結合器の前記第3の線路の他端に設けられた第2の端部において、前記進行波が反射されて生じる反射波から分岐反射波を分岐し、前記分岐反射波と、前記第1の端部において前記進行波から漏れ出して前記第2の端部に伝わる漏れ進行波と、を前記第4の線路の他端に設けられた第3の端部、前記第2の端部と前記第3の端部とを接続する第2の線路及び前記第4の線路を介して前記第4の端部に入力し、出力信号を、前記第4の端部から出力し、前記第4の端部において、前記漏れ進行波は前記分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低レベルの反射波に対しても送信機を保護することができる反射波検出回路及び反射波検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1にかかる反射波検出回路が組み込まれた送信システムの構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる反射波検出回路における進行波の相殺を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態2にかかる反射波検出回路が組み込まれた送信システムの構成図である。
【図4】通常の反射波検出回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる反射波検出回路100が組み込まれた送信システムの構成図である。反射波検出回路100は、送信機5とアンテナ6との間に挿入される。また、反射波検出回路100の出力は検波器3に出力され、検波器3は反射波レベルを検出する。保護回路7は検波器3と接続され、検波器3の出力に応じて送信機5の出力を減少させ、または出力を停止させる。
【0022】
反射波検出回路100は、方向性結合器1、方向性結合器2、終端器4、線路8及び線路9を有する。方向性結合器1は双方向性結合器であり、端子11〜14及び端子11と端子12とを結ぶ線路15を有する。方向性結合器2も双方向性結合器であり、端子21〜24及び端子23と端子24とを結ぶ線路25を有する。方向性結合器1の端子11には送信機5が接続され、端子12にはアンテナ6が接続されている。方向性結合器1の端子13は、線路8を介して、方向性結合器2の端子21と接続されている。方向性結合器1の端子14は、線路9を介して、方向性結合器2の端子24と接続されている。方向性結合器2の端子23は検波器3と接続されている。方向性結合器2の端子22は、端子22に現れる電力を吸収するための終端器4と接続されている。
【0023】
方向性結合器1は、送信機5からアンテナ6へ送出される信号の1/4波長の結合線路長を有する疎結合の方向性結合器であり、送信機5からアンテナ6へ伝搬する進行波の電力の一部を分岐進行波として分岐させる。また、アンテナ6から送信機5へ戻ってくる反射波の電力の一部を分岐反射波として分岐させる。分岐進行波及び分岐反射波は、第2の方向性結合器に出力される。
【0024】
方向性結合器2は、送信機5からアンテナ6へ送出される信号の1/4波長の結合線路長を有する疎結合の方向性結合器であり、方向性結合器1で反射波と共に取り出された進行波を、端子23において相殺する。
【0025】
方向性結合器1及び2に設けられた端子は、それぞれ以下に述べるような関係にある。 方向性結合器1の結合量はC1[dB]、方向比はCr1[dB]である。端子11と端子13と、及び端子12と端子14とはC1[dB]でカップリングしている。また、端子11と端子14との間、及び端子12と端子13との間は、それぞれC1−Cr1[dB]のアイソレーションが取れている。方向性結合器2の結合量はC2[dB]、方向比はCr2[dB]である。端子21と端子23と、及び端子22と端子24とはC2[dB]でカップリングしている。また、端子21と端子24との間、及び端子22と端子23との間は、それぞれC2−Cr2[dB]のアイソレーションが取れている。
【0026】
次に、反射波検出回路100の動作について説明する。まず、検波器3に到達する進行波について説明する。送信機5から送出される進行波Pは、方向性結合器1の端子11から端子12を通り抜けてアンテナ6へ向かう。進行波Pの一部は端子11と結合量C1でカップリングしている端子13に分岐進行波Pf13,11として現れ、線路8を介して方向性結合器2の端子21へと進む。分岐進行波Pf13,11の電力は以下の式(5)で表される。


【0027】
方向性結合器2の端子21へ進んだ分岐進行波Pf13,11の大部分は、端子22を経由して終端器4に吸収されるが、その一部はカップリングしている端子23に分岐進行波Pf23,21として現れる。分岐進行波Pf23,21の電力は、以下の式(6)で表される。


【0028】
一方、送信機5から方向性結合器1の端子11に入力された進行波Pの一部は、端子11とアイソレーションが取れている端子14に漏れ出して、漏れ進行波Pf14,11として現れ、線路9を介して方向性結合器2の端子24へと進む。ここで、方向性結合器1のアイソレーションCi1は、以下の式(7)で表される。



よって、漏れ進行波Pf14,11の電力は、式(8)で表される。


【0029】
方向性結合器2の端子24に進んだ漏れ進行波Pf14,11の一部は、結合量C2でカップリングしている端子22に漏れ進行波Pf22,24として現れる。漏れ進行波Pf22,24の電力は、式(9)で表される。


【0030】
方向性結合器2の端子24から端子23に進む漏れ進行波Pf23,24の電力は、端子14から端子24に進んだ漏れ進行波Pf14,11から、端子22に分かれた漏れ進行波Pf22,24を減じた値として、式(10)により表される。


【0031】
ここで、端子23に到達する漏れ進行波Pf23,24及び分岐進行波Pf23,21の位相差について検討する。線路8(端子13→端子21間)と線路9(端子14→端子24間)とが同長である場合には、方向性結合器1の線路15及び方向性結合器2の線路25は1/4波長の線路長を有しているので、端子11→端子14→端子24→端子23のルートを通った漏れ進行波Pf23,24は、端子11→端子13→端子21→端子23のルートを通った分岐進行波Pf23,21よりも2/4波長分だけ長い線路を通過したこととなる。よって、端子23における漏れ進行波Pf23,24と分岐進行波Pf23,21との位相差は180度となる。すなわち、端子23において漏れ進行波Pf23,24と分岐進行波Pf23,21とは逆相となり、図2に示すように打消し合う。よって、端子23における進行波Pfdetの電力は、式(11)で表される。



このとき、方向性結合器1の方向比Cr1と方向性結合器2の結合量C2の関係をCr1=−C2とすると、式(11)は式(12)として表される。


【0032】
次に、検波器3に到達する反射波について説明する。アンテナ6で反射されて送信機5へ戻る反射波をPrefとすると、その大部分は方向性結合器1の端子12から端子11に抜けて送信機5へ戻っていくが、その一部は方向性結合器1の端子12と結合量C1でカップリングしている端子14に分岐反射波Pr14,12として現れ、線路9を介して方向性結合器2の端子24へと進む。分岐反射波Pr14,12の電力は、式(13)で表される。


【0033】
方向性結合器2の端子24に進んだ分岐反射波Pr14,12の一部は、端子24と結合量C2でカップリングしている端子22に分岐反射波Pr22,24として現れる。分岐反射波Pr22,24の電力は、式(14)で表される。


【0034】
方向性結合器2の端子24から端子23に進む分岐反射波Pr23,24の電力は、端子14に入力された分岐反射波Pr14,12から、端子22に分かれた分岐反射波Pr22,24を減じた値として、式(15)により表される。


【0035】
一方、アンテナ6側から方向性結合器1の端子12に戻ってきた反射波Prefの一部は端子13に漏れ出し、漏れ反射波Pr13,12として現れ、線路8を介して方向性結合器2の端子21へと進む。ここで、方向性結合器1の端子12と端子13とのアイソレーションCi1は、式(6)と同様に、式(16)で表される。



よって、漏れ反射波Pr13,12の電力は、式(17)で表される。


【0036】
端子21に進んだ反射波の大部分は端子22を経由して終端器4に吸収されるが、一部は端子21と結合量C2でカップリングしている端子23に漏れ反射波Pr23,21として現れる。漏れ反射波Pr23,21の電力は、式(18)で表される。


【0037】
ここで、端子23に到達する2つの漏れ反射波Pr23,21及び分岐反射波Pr23,24の位相差について検討する。線路8(端子13→端子21間)と線路9(端子14→端子24間)とが同長である場合には、方向性結合器1の線路15及び方向性結合器2の線路25は1/4波長の線路長を有しているので、端子12→端子13→端子21→端子23のルートを通った漏れ反射波Pr23,21は、端子12→端子14→端子24→端子23のルートを通った分岐反射波Pr23,24と同じ長さの線路を通過したこととなる。よって、漏れ反射波Pr23,21と分岐反射波Pr23,24との位相差は、端子24において0度である。すなわち、端子10において漏れ反射波Pr23,21と分岐反射波Pr23,24とは同相となる。従って、検波器3に到達する反射波Prdetは、式(19)で表される。



このとき、方向性結合器1の方向比Cr1と方向性結合器2の結合量C2の関係をCr1=−C2とすると、式(19)は式(20)として表される。


【0038】
また、方向性結合器の方向比は、一般的に20〜30dB程度であるため、式(21)及び式(22)の関係が成り立つ。




従って、式(20)の括弧内第2項以降を省略して、反射波Prdetは式(23)で表すことができる。


【0039】
最後に、検波器3で検出される電力Pdetについて検討する。Pdetは、方向性結合器1と方向性結合器2を通過してくる進行波と反射波との和であるので、式(24)で表される。


【0040】
ここで、C41=C1として反射波検出回路100と反射波検出回路400とを比較すると、式(1)及び式(23)より、検波器で検出する反射波の大きさは同じである。一方、進行波については、C41=C1、Cr41=Cr1とすると、式(7)及び式(12)より、反射波検出回路100は反射波検出回路400と比べて10−Cr1/10だけ小さい。一般的に、方向性結合器の方向比Cr1は20〜30[dB]程度なので、反射波検出回路400に進行波は、反射波検出回路100の進行波の1/100〜1/1000程度となる。よって、本構成によれば、端子23において分岐進行波と漏れ進行波とを逆相として、分岐進行波と漏れ進行波とを相殺することにより、より小さな反射波を検出して、送信機を適切に保護することができる。
【0041】
また、特許文献1〜3に開示された反射波検出回路と比べても、本構成によれば送信機とアンテナとの間の主線路とは異なる位置に方向性結合器を1つ追加するだけでよい。従って、設ける素子数が少なく、コスト面から有利である。また、主線路に素子を挿入しないため、挿入損失が増大することがない点からも、有利である。
【0042】
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかる反射波検出回路について説明する。図3は、本実施の形態にかかる反射波検出回路200が組み込まれた送信システムの構成図である。反射波検出回路200は、図1に示す反射波検出回路100において、線路8(端子13と端子21との間)上に可変減衰器31及び可変移相器33が追加挿入されている。また、線路9(端子14及び端子24との間)上に可変減衰器32及び可変移相器34が追加挿入されている。その他の構成は図1の反射波検出回路100と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
反射波検出回路200は、方向性結合器1の方向比Cr1と方向性結合器2の結合量C2に差があっても、可変減衰器31または可変減衰器32を適宜調整することで、端子11→端子13→端子21→端子23のルートを進む進行波と、端子11→端子14→端子24→端子23のルートを進む進行波と、のレベルを一致させ、端子23に現れる進行波を最小化することができる。
【0044】
さらに、端子11→端子13→端子21→端子23のルートを進む進行波と、端子11→端子14→端子24→端子23のルートを進む進行波の位相差が180度からずれた場合でも、可変移相器33または可変移相器34を適宜調整して位相差を180度に合わせることにより、端子23に現れる進行波を最小化することができる。
【0045】
従って、本構成によれば、可変減衰器や可変移相器を挿入することにより、方向性結合器の方向比や、進行波の位相にバラつきがある場合であっても、端子23に到達する進行波を最小にすることができる。
【0046】
また、これらの可変減衰器31、可変減衰器32、可変移相器33及び可変移相器34は電気的に制御することができる。これにより、メモリなどに記憶させた制御情報を必要に応じて読み出すことにより、所望の周波数において、検波器に至る進行波を最小化することができる。従って、本構成によれば、多CHの切替に無調整で対応することができる。
【0047】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態における方向性結合器1及び方向性結合器2は、90度の位相差で分配または合成できる分布定数線路であってもよい。
【0048】
また、方向性結合器1と方向性結合器2の両方または片方を、3/4波長の結合線路長を有する広帯域方向性結合器としてもよい。さらに、端子23における分岐進行波と漏れ進行波との位相差を180度にできるのであれば、方向性結合器1と方向性結合器2の結合線路長は任意の結合線路長とすることが可能である。
【0049】
さらに、上述の実施の形態にかかる反射波検出回路は、送信機を高周波電源に置き換えて用いることが可能である。また、アンテナをプラズマ発生装置や加速器などの他の高周波駆動機器に置き換えることも可能である。
【0050】
(付記1)進行波を第1の端部から第2の端部へ伝搬させる双方向性結合器である第1の方向性結合器と、第3の端部に入力された信号を第4の端部へ伝搬させ、前記第4の端部から出力信号を出力する双方向性結合器である第2の方向性結合器と、前記第1の端部と前記第4の端部とを接続する第1の線路と、前記第2の端部と前記第3の端部とを接続する第2の線路と、を少なくとも備え、前記第1の方向性結合器は、前記第1の端部と前記第2の端部との間に接続され、前記進行波を前記第2の端部へ伝搬させる第3の線路を少なくとも備え、前記第2の方向性結合器は、前記第3の端部と前記第4の端部との間に接続され、前記第3の端部に入力された信号を前記第4の端部へ伝搬させる第4の線路を少なくとも備え、前記第1の端部で前記進行波から分岐された分岐進行波は、前記第1の線路を介して前記第4の端部に入力され、前記進行波が反射されて生じる反射波から前記第2の端部において分岐された分岐反射波と、前記第1の端部において前記進行波から漏れ出して前記第2の端部に伝わる漏れ進行波と、は前記第2の線路、前記第3の端部及び前第4の線路を介して前記第4の端部に入力され、前記第4の端部において、前記漏れ進行波は前記分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有する、反射波検出回路。
【0051】
(付記2)付記1に記載の反射波検出回路と、前記第4の端部と接続され、前記第4の端部から出力される前記出力信号の電力を検出する検波器と、を備える、反射波検出システム。
【0052】
(付記3)付記2に記載の反射波検出システムと、前記検波器と接続される保護回路と、前記第1の端部に高周波の前記進行波を入力する送信機と、を少なくとも備え、前記保護回路は、前記検波器の出力に応じて前記送信機の出力を制御する、送信システム。
【0053】
(付記4)前記保護回路は、前記検波器の出力電力が予め設定された基準値に達した場合には、前記送信機の出力を低下させ、又は出力を停止させる、付記3に記載の送信システム。
【0054】
(付記5)付記2に記載の反射波検出システムと、前記検波器と接続される保護回路と、前記第1の端部に高周波の前記進行波を入力する高周波電源と、を少なくとも備え、前記保護回路は、前記検波器の出力に応じて前記高周波電源の出力を制御する、電源装置。
【0055】
(付記6)前記検波回路は、前記検波器の出力電力が予め設定された基準値に達した場合には、前記高周波電源の出力を低下させ、又は出力を停止させる、付記5に記載の電源装置。
【符号の説明】
【0056】
1、2 方向性結合器
3 検波器
4 終端器
5 送信機
6 アンテナ
7 保護回路
8、9、15、25線路
11〜14、21〜24 端子
31、32 可変減衰器
33、34 可変移相器
41 方向性結合器
43 検波器
45 送信機
46 アンテナ
100、200、300 反射波検出回路
411〜414 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行波を第1の端部から第2の端部へ伝搬させる双方向性結合器である第1の方向性結合器と、
第3の端部に入力された信号を第4の端部へ伝搬させ、前記第4の端部から出力信号を出力する双方向性結合器である第2の方向性結合器と、
前記第1の端部と前記第4の端部とを接続する第1の線路と、
前記第2の端部と前記第3の端部とを接続する第2の線路と、を少なくとも備え、
前記第1の方向性結合器は、
前記第1の端部と前記第2の端部との間に接続され、前記進行波を前記第2の端部へ伝搬させる第3の線路を少なくとも備え、
前記第2の方向性結合器は、
前記第3の端部と前記第4の端部との間に接続され、前記第3の端部に入力された信号を前記第4の端部へ伝搬させる第4の線路を少なくとも備え、
前記第1の端部で前記進行波から分岐された分岐進行波は、前記第1の線路を介して前記第4の端部に入力され、
前記進行波が反射されて生じる反射波から前記第2の端部において分岐された分岐反射波と、前記第1の端部において前記進行波から漏れ出して前記第2の端部に伝わる漏れ進行波と、は前記第2の線路、前記第3の端部及び前第4の線路を介して前記第4の端部に入力され、
前記第4の端部において、前記漏れ進行波は前記分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有する、
反射波検出回路。
【請求項2】
前記第2の線路、前記第3の線路及び前記第4の線路からなる線路は、前記第1の線路に対して、前記進行波の波長の{(2n+1)/2}倍(但し、nは整数)だけ線路長が異なる、
請求項1に記載の反射波検出回路。
【請求項3】
前記第3の線路の長さは、前記進行波の波長の{(2p+1)/4}倍(但し、pは0以上の整数)である、
請求項1又は2に記載の反射波検出回路。
【請求項4】
前記第3の線路は分布定数回路であり、
前記第2の端部における前記進行波は、前記1の端部の端部における前記進行波に対して{(2q+1)×90}°の位相差(但し、qは0以上の整数)を有する、
請求項1又は2に記載の反射波検出回路。
【請求項5】
前記第4の線路の長さは、前記進行波の波長の{(2r+1)/4}倍(但し、rは0以上の整数)である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の反射波検出回路。
【請求項6】
前記第4の線路は分布定数回路であり、
前記第4の端部における前記漏れ進行波は、前記第3の端部における前記漏れ進行波に対して{(2s+1)×90}°の位相差(但し、sは0以上の整数)を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の反射波検出回路。
【請求項7】
前記第1の線路と前記第2の線路との長さは等しい、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の反射波検出回路。
【請求項8】
前記第1の線路上に設けられた第1の可変減衰器及び第1の可変移相器のいずれか一方または両方を更に備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の反射波検出回路。
【請求項9】
前記第2の線路上に設けられた第2の可変減衰器及び第2の可変移相器のいずれか一方または両方を更に備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の反射波検出回路。
【請求項10】
第1の方向性結合器の第3の線路の一端に設けられた第1の端部で、前記第3の線路を伝搬する前記進行波から分岐進行波を分岐し、
前記分岐進行波を、第2の方向性結合器の第4の線路の一端に設けられた第4の端部に、前記第1の端部と前記第4の端部とを接続する第1の線路を介して入力し、
前記第1の方向性結合器の前記第3の線路の他端に設けられた第2の端部において、前記進行波が反射されて生じる反射波から分岐反射波を分岐し、
前記分岐反射波と、前記第1の端部において前記進行波から漏れ出して前記第2の端部に伝わる漏れ進行波と、を前記第4の線路の他端に設けられた第3の端部、前記第2の端部と前記第3の端部とを接続する第2の線路及び前記第4の線路を介して前記第4の端部に入力し、
出力信号を、前記第4の端部から出力し、
前記第4の端部において、前記漏れ進行波は前記分岐進行波に対して{(2m+1)×180}°の位相差(但し、mは整数)を有する、
反射波検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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