説明

反射防止フィルムの製造方法および反射防止フィルム

【課題】安全かつ安価な材料を用いて光学特性に優れた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材11上に低屈折率層13を備える反射防止フィルム1の製造方法であって、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加し、塗液中に空隙を形成する工程と、該空隙を含む塗液を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、該塗膜を硬化し、空隙を備える低屈折率層を形成する工程を含。さらには、前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、加圧空間で攪拌し、塗液中に空隙を形成することを特徴とする。前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、超音波を印加しながら攪拌をおこない、塗液中に空隙を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓やディスプレイなどの表面に外光が反射することを防止することを目的として設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。さらには、透過型液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と低屈折率層の繰り返し構造による多層構造の反射防止層を形成することで得られる。これらの多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といった乾式成膜法により形成することができる。
【0004】
乾式成膜法を用いて反射防止層を形成する場合にあっては、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある一方、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能である塗液を用いた湿式成膜法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0005】
また、これらの反射防止層が透明基材上に設けられている反射防止フィルムにあっては、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル系材料を硬化して得られるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル系材料により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有する。
【0006】
湿式成膜法によって反射防止層を形成する場合、これらの電離放射線硬化型材料を硬化して得られるハードコート層の上に少なくとも低屈折率層を塗布して製造されるものであり、乾式成膜法に比べ安価に製造できるメリットがあり、市場に広く出まわっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−202389号公報
【特許文献2】特開2005−199707号公報
【特許文献3】特開平11−92750号公報
【特許文献4】特開2007−121993号公報
【特許文献5】特開2005−144849号公報
【特許文献6】特開2006−159415号公報
【特許文献7】特開2010−008863号公報
【特許文献8】特開2010−085682号公報
【特許文献9】国際公開第2010/038709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反射防止フィルムをディスプレイ表面に設けることにより、その反射防止機能によって、外光の反射を抑制することができ、明所でのコントラストを向上させることができる。また、同時に透過率を向上させることができることから画像をより明るく表示可能にすることができる。また、バックライトの出力などを抑える省エネ効果も期待できる。
【0009】
反射防止フィルムにあっては、反射防止性能や光学特性に優れた反射防止フィルムが求められている。これらの特性を満たすために既存の反射防止層フィルムではナノメートルサイズのシリカ粒子を用いて低屈折率層を形成する技術が用いられているが、近年それらの材料においては生体毒性が指摘されているため、代替材料が必要とされている。本発明にあっては、安全かつ安価な材料を用いて光学特性に優れた反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、透明基材上に低屈折率層を備える反射防止フィルムの製造方法であって、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加し、塗液中に空隙を形成する工程と、該空隙を含む塗液を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、該塗膜を硬化し、空隙を備える低屈折率層を形成する工程を含むことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項2にかかる発明としては、前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、加圧空間で攪拌し、塗液中に空隙を形成することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項3にかかる発明としては、前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、超音波を印加しながら攪拌をおこない、塗液中に空隙を形成することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項4にかかる発明としては、前記シリコーン材料を含む塗液に添加される気体もしくは液体が、水であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項5にかかる発明としては、前記形成される低屈折率層に含まれる空隙が、直径10nm以上200nm以下の範囲内の球体形状もしくは球体近似形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法とした。
また、請求項6にかかる発明としては、請求項1乃至5記載の製造方法により製造される反射防止フィルムとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明による反射防止フィルムにあっては、低屈折率層が空隙を内包したシリコーン材料によって構成されることで、反射率を低減させた反射防止フィルムを得ることができる。また、反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイとすることにより、先ほど示したように明所でのコントラストを向上させることができ、画像をより明るく表示可能にすることができる。さらに、省エネ効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムの断面模式図である。
【図2】本発明の一実施例の反射防止フィルムの製造工程の概略図である。
【図3】本発明の一実施例の反射防止フィルムを用いた反射防止性偏光板の断面模式図である。
【図4】本発明の一実施例の反射防止フィルムを備える透過型液晶ディスプレイを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の反射防止フィルムにあっては、透明基材の一方の面にハードコート層及び低屈折率層を備える。図1に本発明の反射防止フィルム(1)の断面模式図を示した。図1記載の本発明の反射防止フィルム(1)にあっては、透明基材(11)の一方の面にハードコート層(12)、低屈折率層(13)を順に備える。
【0014】
本発明の反射防止フィルムにおいて低屈折率層(13)は、空隙(14)を備える。低屈折率層中の空隙は、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加し、塗液中に空隙を形成する工程と、該空隙を含む塗液を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、該塗膜を硬化し、空隙を備える低屈折率層を形成する工程により形成することができる。
【0015】
本発明者は、シリコーン材料を用いて、塗液の段階で気体もしくは液体を添加し空隙を形成し、該空隙を含む塗液を用いて透明基材上に低屈折率層することにより、容易に低屈折率層内に空隙を備える低屈折率層を形成することができ、十分な反射防止性能を備える反射防止フィルムとすることができることを見出し、本発明にいたった。
【0016】
本発明の反射防止フィルムに用いられる透明基材について説明する。
【0017】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。また、透明基材フィルムの厚みとしては、35μm以上120μm以下を用いることが好ましい。また、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、20μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0018】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。また、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60程度である。
【0019】
次に基材上に設けられるハードコート層の形成方法について説明する。図1に示すように、ハードコート層は基材上に設けられ、該ハードコート層上に低屈折率層が形成される。ハードコート層を設けることにより、反射防止フィルムの低屈折率層表面に高い表面硬度を付与することができる。
【0020】
ハードコート層は、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコート層形成用塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射することにより形成される。
【0021】
ハードコート層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0022】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0023】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0026】
アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0027】
また、これらの他にも、電離放射線型材料として、(メタ)アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0028】
ハードコート層形成用塗液には溶媒が含まれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他としてN−メチル−2−ピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、ハードコート層形成用塗液には、光重合開始剤を含むことができる。塗膜を硬化する際の電離放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤がハードコート層形成用塗液に加えられる。光重合開始剤としては、電離放射線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料に対して0.1wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、さらには1wt%以上8.5wt%以下であることが好ましい。
【0030】
また、ハードコート層形成用塗液には添加剤として、ハードコート層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0031】
また、ハードコート層形成用塗液には導電性材料を加えることもできる。ハードコート層形成用塗液に導電性材料を加えることにより、得られる反射防止フィルムに帯電防止機能を付与することができ、ディスプレイ表面への誇りの付着等を防ぐことができる。
【0032】
導電性材料としては、四級アンモニウム塩材料、金属酸化物粒子、導電性高分子等を用いることができる。
【0033】
導電性材料である四級アンモニウム塩材料としては、四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含む材料を好適に用いることができる。四級アンモニウム塩材料は−Nの構造を示し、四級アンモニウムカチオン(−N)とアニオン(X)を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。このとき、Xとしては、Cl、Br、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO、OH等を挙げることができる。
【0034】
導電性材料として用いられる金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン含有酸化亜鉛及びインジウム含有酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上の金属酸化物を主成とする導電性を有する金属酸化物粒子を用いることができる。
【0035】
導電性材料として用いられる導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)及びこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0036】
以上の材料を調整して得られるハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該塗膜に電離放射線を照射することにより、ハードコート層を形成することができる。以下にハードコート層の形成方法を示す。
【0037】
ハードコート層形成用塗液は透明基材上に塗布され、塗膜を形成する。ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本発明のハードコート層は薄い塗膜であり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法、ダイコーター法を用いることが好ましい。
【0038】
次に、透明基材上に形成されたハードコート層の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0039】
次に、ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層が形成される。
【0040】
電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0041】
なお、本発明の反射防止フィルムにおいて、形成されるハードコート層の膜厚は3μm以上10μm以下であることが好ましく、低屈折率層表面の鉛筆硬度は、十分な耐擦傷性を備えるためにH以上であることが好ましい。
【0042】
本発明の反射防止フィルムにおいて、ハードコート層上には低屈折率層が形成される。低屈折率層の形成方法について説明する。
【0043】
低屈折率層形成用塗液は、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加し、塗液中に空隙を形成することにより得られる。該空隙を含む塗液を用いて低屈折率層を形成することにより、低い屈折率を備える層(低屈折率層)を形成することができる。これは、低屈折率層に含まれる空隙が空気の屈折率(≒1)を備えることによる。
【0044】
低屈折率層形成用塗液に含まれるシリコーン系材料としては、付加反応型、縮合反応型、UV硬化型、EB硬化型などの硬化反応タイプのシリコーン材料を用いることができる。より具体的には、オルガノシロキサンを基本骨格とする化合物として代表的なジメチルシロキサンポリマーや、そのメチル基の一部がフェニル基によって置換されたメチルフェニルシロキサンポリマー、そのメチル基の一部が水素原子で置換されたメチルハイドロジェンシロキサンポリマーなどが挙げられる。また、ジメチルシロキサンポリマーのメチル基の一部がアルキル基に置換されたアルキル変性シロキサンポリマー、高級脂肪酸に置換された高級脂肪酸変性シロキサンポリマー、フッ素基を有する官能基に置換されたフッ素変性シロキサンポリマー、アミノ基を有する官能基に置換されたアミノ変性シロキサンポリマー、エポキシ基を有する官能基に置換されたエポキシ変性シロキサンポリマー、カルボキシル基を有する官能基に置換されたカルボキシル変性シロキサンポリマー、水酸基を有する官能基に置換された水酸基含有シロキサンポリマー、メタクリル基を有する官能基に置換されたメタクリル変性シロキサンポリマーの他、低分子量の環状シロキサン等も挙げることができる。このときシリコーン材料は単体で用いる他に2種類以上を混合させたのち使用してもよい。また、シリコーン硬化剤を混合してもよい。
【0045】
シリコーン材料には気体もしくは液体が添加され、低屈折率層形成用塗液中に空隙を形成する。シリコーン材料に添加される気体もしくは液体としては、単分子の気体や有機溶剤、水、水系溶剤等が挙げられ、硬化阻害要因とならない物質を適宜用いることができる。より具体的には水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、空気および二酸化炭素等のガス類、液体ヘリウム、液体窒素、液体酸素および水等の液体、ドライアイス等の固体、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、フルオロエーテル、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等の中から適宜選択される。
【0046】
空隙を形成するための気体もしくは液体を加えるタイミングは、低屈折率層形成用塗液を調液する段階で添加可能である。調液段階で、気体もしくは液体を添加することにより空隙の均一な分散を促すことができる。また、添加される気体もしくは液体は一種のみに限定させず、種類の異なる物質を複数用いても良い。また、気体もしくは液体の低屈折率層形成用塗液への添加量は任意の空隙形状を形成するために、適宜その加減を変更することができるものである。
【0047】
シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加して、微小な空隙を形成するにあっては、攪拌、ミル分散、加圧分散、超音波分散、ナノバブルやマイクロバブルといった微粒子化の手法を用いることができる。ミル分散においては無機微粒子を分散補助材として用いた手法を適用することもできる。無機微粒子は分散後に沈殿法やフィルタリングを行うことで除去することが可能であるが、分散後に無機微粒子を塗液内に残留させたままでも良い。
【0048】
シリコーン材料を含む低屈折率層形成用塗液に空隙を形成するにあっては、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加した後、加圧空間で攪拌することが好ましい。塗液に気体もしくは液体を添加した後加圧空間で攪拌することにより、容易に低屈折率形成用塗液に微小な空隙を形成することができる。
【0049】
また、シリコーン材料を含む低屈折率層形成用塗液に空隙を形成するにあっては、シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加した後、超音波を印加しながら攪拌をおこなうことも好ましい。。塗液に気体もしくは液体を添加した後超音波を印加しながら攪拌することにより、容易に低屈折率形成用塗液に微小な空隙を形成することができる。
【0050】
また、シリコーン材料に添加される気体もしくは液体としては、水を好適に用いることができる。微量の水を添加することによりシリコーン材料を含む塗液中に空隙を容易に形成することができる。特に、シリコーン材料中に微量の水を添加し加圧空間で攪拌すること、もしくは、シリコーン材料中に微量の水を添加し超音波を印加しながら攪拌をおこなうことにより、容易に塗液中に微小な空隙を形成することが可能となる。また、水としてマイクロバブルを発生させた水を用いることもできる。
【0051】
シリコーン材料に添加される気体もしくは液体として水を用いる場合には、シリコーン材料(硬化剤含む)100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下の範囲内で水を添加することが好ましい。水の添加量が10を超える場合にあっては、硬化不良を起こすことがある。また、水の添加量が0.01重量部に満たない場合には、塗液中に十分な量の空隙を作ることができなくなることがある。
【0052】
空隙が形成された低屈折率層形成用塗液は、ハードコート層上に塗布され塗膜を形成する。このときの塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0053】
次に、ハードコート層上の塗膜に対して加熱もしくは電離放射線および非電離放射線を照射することにより、塗膜を硬化する。硬化方法は、シリコーン系材料の硬化方法(付加反応型、縮合反応型、UV硬化型、EB硬化型)によって適宜選択される。また、加熱した後に電離放射線、非電離放射線を照射してもよく、低屈折率層形成用塗液の特性に応じて工程を適宜選択することができ、これらの工程の後再度加熱処理を実施しても良い。
【0054】
このとき、電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。ハードコート層を形成する際と同様に、紫外線硬化の場合は高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000keVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300keVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。非電離放射線としては、可視光、赤外線、ミリ波やマイクロ波といった電波等を用いることができる。
【0055】
以上により、空隙を備える低屈折率層は形成される。本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層にあっては、空気の屈折率(≒1)を備える空隙を内部に備えることにより、低い屈折率を有し、反射防止フィルムの表面に設けることにより反射防止性能を発現する。
【0056】
低屈折率層の膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設計される。なお、低屈折率層の膜厚としては、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0057】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層に含まれる空隙は、直径が20nm以上200nm以下の範囲内の球体形状もしくは球体近似形状であることが好ましい。空隙の直径が200nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層が白化して得られる反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、空隙の直径が20nm未満の場合、屈折率の高い層構成となってしまい得られる反射防止フィルムの低屈折率層表面の平均視感反射率が上昇に転じるためである。なお、本発明における低屈折率層中の空隙の直径は球体形状もしくは球体近似形状を備える空隙の最大径を表しており、また、低屈折率中の空隙の直径は電子顕微鏡による観察によって測定される。
【0058】
また、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層は、低屈折率層の589nmの光源に対する屈折率が1.30以上1.45未満の範囲であることが好ましい。低屈折率層の屈折率を1.30以上1.45未満の範囲内とすることにより、反射防止フィルムに反射防止機能を付与することができる。低屈折率層の屈折率が1.45を超える場合にあっては得られる反射防止フィルムが十分な反射防止機能を得られなくなってしまうことがある。一方、低屈折率層の屈折率は低い方が好ましいが、1.30を下回るようにするには、内部の空隙の占有率を大幅に増加させる必要があり、強度の低下を招く要因となってしまう。
【0059】
また、本発明の反射防止フィルムにおいて、低屈折率層表面の平均視感反射率が0.3%以上2.0%未満の範囲内であることが好ましい。平均視感反射率は、低屈折率層表面の分光反射率曲線から求められる。本発明の反射防止フィルムの分光反射率曲線は、反射防止フィルムの低屈折率層と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。視感平均反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0060】
また、本発明の反射防止フィルムは、全光線透過率が90.0%以上であることが好ましい。全光線透過率が90.0%に満たない反射防止フィルムにあって透過率が低下しすぎるために、ディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまう。
【0061】
また、本発明の反射防止フィルムはロール・ツー・ロール方式により連続形成されることが好ましい。図2に本発明の一実施例の反射防止フィルムの製造工程の概略図を示した。巻き取られているウェブ状の透明基材を巻き出し部(31)から巻き取り部(32)まで連続走行させ、このとき、透明基材(11)を塗布ユニット(塗布工程(21))、加熱・乾燥ユニット(加熱・乾燥工程(22))、電離放射線照射ユニット(電離放射線照射工程(23))を通過させることにより、透明基材(11)上にハードコート層(12)が連続形成される。その後、低屈折率層(13)を同様にして塗布から硬膜工程を通過させることにより、ハードコート層(12)上に低屈折率層(13)が形成され、反射防止フィルム(1)を製造することができる。ハードコート層を形成した段階でロールに巻き取り、低屈折率層形成時に再度、ロール・ツー・ロール方式で低屈折率層を形成しても良いし、ハードコート層形成後、引き続き連続して、低屈折率層を形成してからロールに巻き取るようにしても良い。なお、加熱・乾燥ユニット(22)、電離放射線硬化ユニット(23)は、シリコーン材料の硬化タイプによって適宜選択される。また、各ユニットの順番は適宜変更できる。また、図4では、加熱乾燥ユニット(22)が一次乾燥ユニット(22a)と二次乾燥ユニット(22b)の2つのユニットから構成されているが、このように各ユニットは複数で構成されていてもよい。
【0062】
以上により、本発明の反射防止フィルムを得ることができる。なお、図1にあっては透明基材上にハードコート層、低屈折率層を順に備える反射防止層を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。該空隙を備える低屈折率層形成用塗液をハードコート層の厚みで塗布することにより、ハードコート性を備える低屈折率層を形成することもできる。このとき、低屈折率層中の空隙は表面側(基材と反対側)に偏析させてもよい。
【0063】
次に、本発明の反射防止フィルムを用いた反射防止製偏光板について説明する。図3に本発明の一実施例の反射防止フィルムを用いた反射防止性偏光板の断面模式図を示した。
【0064】
反射防止性偏光板(510)は、第1の透明基材(11)の一方の面にハードコート層(12)と、低屈折率層(13)を順に備えている反射防止フィルム(1)であり、低屈折率層非形成面側に、第1の偏光層(53)と、第2の透明基材(52)を順に備えた反射防止性偏光板(510)となる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)は、ディスプレイ部材、画像装置の一部として用いることができる。次に、本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの構成について説明する。図4に本発明の一実施例の反射防止フィルムを備える透過型液晶ディスプレイを示す断面模式図を示した。
【0066】
図4(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、本発明の反射防止フィルム(1)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(50)を低屈折率層非形成面に備えた反射防止性偏光板(500)、液晶セル(60)、第2の偏光板(70)、バックライトユニット(80)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0067】
図4(a)にあっては、反射防止フィルム(1)の透明基材(11)と第1の偏光板(50)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0068】
バックライトユニット(80)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(60)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(60)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(51、52、71、72)間に偏光層(53、73)を挟持した構造となっている。
【0069】
また、図4(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に低屈折率層(13)を備えた反射防止フィルム(1)と、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に、偏光層(53)、透明基材(52)を順に備えて、反射防止性偏光板(510)を形成し、反射防止性偏光板(510)、液晶セル(60)、第2の偏光板(70)、バックライトユニット(80)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)の低屈折率層(13)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0070】
図4(b)にあっては、反射防止フィルム(1)の低屈折率層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(53)と透明基材(52)を、この順に備えた反射防止性偏光板(510)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0071】
図4(b)においても、図4(a)と同様に、バックライトユニット(80)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(60)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、52、71、72)間に偏光層(53、73)を挟持した構造となっている。
【0072】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0073】
以上により、本発明の反射防止フィルムを用いた、透過型液晶ディスプレイが製造される。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
透明基材として、PETフィルム(厚さ80μm、屈折率1.67)を用意した。
【0076】
(ハードコート層形成用塗液)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 100重量部
・光重合開始剤(チバジャパン社製 商品名:イルガキュア184) 10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液1を調整した。
【0077】
(ハードコート層の形成)
PETフィルム(膜厚80μm)の片面に前記ハードコート層形成用塗液を塗布し、25℃で60秒間一次乾燥後、引き続き80℃で60秒間二次乾燥を行った。乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0078】
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製する。その際に用いる低屈折率層形成用塗液の調合例を以下に示す。
【0079】
(低屈折率層形成用塗液 調合例1)
・シリコーン主剤(信越シリコーン製 商品名:KE−106) 100重量部
・シリコーン硬化剤(信越シリコーン製 商品名:CAT−RG) 10重量部
・表面調整剤 (BYK製 商品名:BYK−025) 0.3重量部
を用い、これらを攪拌したのちに純水1重量部を加え、5気圧の加圧空間で10分間攪拌したのち大気圧下に開放することで低屈折率層用塗液1を調合した。
【0080】
(低屈折率層形成用塗液 調合例2)
・シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル製 商品名:UVHV1101)100重量部
を用い、これらを攪拌したのちに酸素のマイクロバブルを発生させた純水1重量部を添加し、超音波を加えながら攪拌を行うことで低屈折率層用塗液2を調合した。
【0081】
前記低屈折率層形成用塗液(調合例1)および(調合例2)を用いて、前記のハードコート層上に低屈折率層を形成することで、(実施例1)及び(実施例2)の反射防止フィルムを得る。
【0082】
(実施例1)
低屈折率層の具体的な形成方法としては、前記ハードコート層の上に、(調合例1)の低屈折率層形成用塗液を硬化後の膜厚が100nmとなるように塗工条件を設定し塗布した。第一乾燥(加熱)を温度100℃で30秒間おこなった後に、第二乾燥(加熱)を温度80℃で300秒間おこない硬化させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0083】
(実施例2)
低屈折率層の具体的な形成方法としては、前記ハードコート層の上に、(調合例2)の低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布した。第一乾燥(加熱)を温度25℃で25秒間おこなった後に、第二乾燥(加熱)を温度80℃で50秒間おこない、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量600mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0084】
前記(実施例1)および(実施例2)にて作製された反射防止フィルムについて、以下の測定・評価をおこなった。
【0085】
「視感平均反射率」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い測定した低屈折率層形成面についてC光源、2度視野の条件下での入射角5°における分光反射率から平均視感反射率(Y%)を算出した。また、比視感度は明所視標準比視感度を用いた。
【0086】
「ヘイズ(H)、平行光線透過率の測定」
得られた反射防止フィルムについて、写像性測定器(日本電色工業社製、NDH−2000)を使用してヘイズ(H)、平行光線透過率を測定した。
【0087】
「表面抵抗値の測定」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面についてJIS−K6911に準拠して高抵抗抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスターMCP−HT260)にて測定をおこなった。
【0088】
「色ムラ干渉縞の確認」
得られた反射防止フィルム裏面をスプレーインクで黒塗りし、塗工面の状態を目視で確認を行なった。
目視で確認した評価は次のようになる。
○:色ムラ、干渉縞は確認されなかった。
×:色ムラ、干渉縞が確認された。
【0089】
(表1)に得られた反射防止フィルムの視感平均反射率、ヘイズ、平行光線透過率、表面抵抗値、色ムラ干渉縞の測定・確認結果を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
(実施例1)、(実施例2)で得られた反射防止フィルムにあっては、安全性かつ製造コストが低いシリコーン材料を用いて光学特性に優れた反射防止フィルムを提供することができた。
【0092】
また、(実施例1)、(実施例2)で得られた反射防止フィルムについて分光反射率曲線から求めた低屈折率層の屈折率は、それぞれ1.38(実施例1)、1.36(実施例2)であった。
【0093】
また、(実施例1)、(実施例2)で得られた反射防止フィルムについて、透過電子顕微鏡による断面観察をおこなった結果、空隙は球体形状もしくは球体近似形状であることが確認された。このとき、空隙の直径は、(実施例1)で得られた反射防止フィルムにあっては、20〜80nm、(実施例2)で得られた反射防止フィルムにあっては50〜80nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の反射防止フィルムは、窓やディスプレイなどの反射防止フィルムの他、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルム、タッチパネル、液晶セル、偏光板の光学特性を補償するための部材やレンズ、プリズム素子、発光ダイオード、フォトダイオード、CCD、照明機器など、反射を防止すべき部材全てに適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 反射防止フィルム
11 透明基材または第1の透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層
14 空隙
21 塗布工程(ユニット)
22 加熱・乾燥工程(ユニット)
22a 一次乾燥工程(ユニット)
22b 二次乾燥工程(ユニット)
23 電離放射線照射工程(ユニット)
31 巻き出し部
32 巻き取り部
50 第1の偏光板
52 第2の透明基材
53 第1の偏光層
60 液晶セル
70 第2の偏光板
71 第3の透明基材
72 第4の透明基材
73 第2の偏光層
80 バックライトユニット
500 反射防止性偏光板
510 反射防止性偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に低屈折率層を備える反射防止フィルムの製造方法であって、
シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加し、塗液中に空隙を形成する工程と、
該空隙を含む塗液を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
該塗膜を硬化し、空隙を備える低屈折率層を形成する工程
を含むことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、加圧空間で攪拌し、塗液中に空隙を形成することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン材料を含む塗液に気体もしくは液体を添加したあと、超音波を印加しながら攪拌をおこない、塗液中に空隙を形成することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記シリコーン材料を含む塗液に添加される気体もしくは液体が、水であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記形成される低屈折率層に含まれる空隙が、直径10nm以上200nm以下の範囲内の球体形状もしくは球体近似形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の製造方法により製造される反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64832(P2013−64832A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202969(P2011−202969)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】