反射防止フィルム
【課題】良好な鉛筆硬度およびスチールウール耐性を発揮する微細凹凸パターンを備える反射防止層を有しており、且つ、上記反射防止層が高い反応率で形成されることにより、耐擦傷性に優れた良好な機械強度、および反射率の増加およびヘイズ値の変化を抑制可能な光学的特性を有する反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層5と、上記ハードコート層5上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層2と、を有する反射防止フィルム10であって、上記反射防止層2を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルムを提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層5と、上記ハードコート層5上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層2と、を有する反射防止フィルム10であって、上記反射防止層2を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルムを提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示媒体表面において外光の反射を防止することが可能であり、且つ、機械強度、光学的性質に優れる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絵画、印刷媒体、ディスプレイ等の各種表示媒体においては、近年、画像、文字、数字等の表示品質を向上させることを目的とした種々の研究がなされている。なかでも、光の反射防止技術は、各種表示媒体において共通する重要な技術的課題の一つとして広く検討されている。
【0003】
従来、このような反射防止技術としては、例えば、低屈折率の物質からなる薄膜を単層で表面に形成することにより、単一波長の光に対して有効な反射防止能を発揮する方法や、低屈折率物質および高屈折率物質の薄膜を交互に形成した複数層を形成することにより、より広い波長域を有する光に対しても反射防止能を発揮する方法等が採用されてきた。なかでも、複数層を用いる方法は、その層数を増加させることによって、より広い波長域を有する光に対しても反射防止能を発揮できる点において有用であったことから、様々な用途において実用化が図られてきた。
【0004】
しかしながら、上述したような複数層を形成する方法においても、反射防止効果に優れた複数層を形成するために真空蒸着法等による成膜工程が必要となることから、製造効率や設備等における問題点が指摘されていた。
特に、周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては、一層高い反射防止機能が要求されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があることから、製造コストにおける課題も生じていた。
また、技術的観点からも、光の干渉現象を利用するため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響されることから、所望の反射防止効果を得ることが困難であるという問題点が指摘されていた。
【0005】
このような問題点に対して、凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを表面に形成することによって反射防止を図る技術が開示されている(特許文献1〜6参照。)。このような方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。このようなモスアイ構造を用いた反射防止技術は、簡易な方法によって広い波長領域の光の反射を防止できる点において有用なものである。そのため、ディスプレイの分野においてもその実用化が検討されている。
なお、上記モスアイ構造に用いられる微細凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形等の錐形体や円柱形を含む形状で先端が尖っている形状が一般的である。
【0006】
しかしながら、円錐形等の錐形体のように凸部の先端がとがった形状の微細凹凸パターンを上記モスアイ構造として用いる場合、先端が細いため割れやすく、微細凹凸パターンが破壊されやすいという問題点が指摘されていた。
また、表示媒体に上記モスアイ構造を形成する場合、その形成位置は、表示媒体表面となることから、モスアイ構造に優れた耐擦傷性を付与することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−517319号公報
【特許文献2】特開2004−205990号公報
【特許文献3】特開2004−287238号公報
【特許文献4】特開2001−272505号公報
【特許文献5】特開2002−286906号公報
【特許文献6】国際公開第2006/059686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、微細凹凸を備える反射防止層を有する反射防止フィルムでは、従来の微細凹凸を有していない反射防止フィルムと同様に、硬度を高くすることにより反射防止フィルムの耐擦傷性が向上しないことが新たに確認された。
すなわち、従来のモスアイ構造を有していない反射防止フィルムでは、鉛筆硬度を高くすることでは、同時にスチールウール耐性も良好となり、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上したが、モスアイ構造を有する反射防止フィルムでは、鉛筆硬度を高くすることにより、スチールウール耐性が低下してしまい、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上しないといった問題点が見出された。
【0009】
また、耐擦傷性を向上させる方法としては、一般的に潤滑剤を含有させて形成する方法が知られていた。しかしながら、長期に保管される場合、または高温・高湿度の環境下に晒される場合等においては、反射防止層に潤滑剤を含有させることにより、反射防止層表面に潤滑剤が浮き出し(ブリードアウト現象)、屈折率の異なる層が形成されるため、反射率が上昇し、また、ヘイズ値が変化する。さらに、ブリードアウト現象により浮き出した潤滑剤が凝集(2次凝集)し、表面に目視可能な凝固物が形成される可能性を有する。そのため、反射防止フィルムが白濁化し、光学的特性が低下してしまうという問題点も見出された。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり。良好な鉛筆硬度およびスチールウール耐性を発揮する微細凹凸パターンを備える反射防止層を有しており、且つ、上記反射防止層が高い反応率で形成されることにより、耐擦傷性に優れた良好な機械強度、および反射率の増加およびヘイズ値の変化を抑制可能な光学的特性を有する反射防止フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、を有する反射防止フィルムであって、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0012】
本発明によれば、ハードコート層および反射防止層の膜厚を制御し、また、反射防止層が潤滑剤を含有することにより、鉛筆硬度およびスチールウール耐性を良好なものとすることができる。そのため、耐擦傷性に優れ、良好な機械強度を発揮することが可能となる。
また、紫外線硬化性樹脂の反応率を60%以上とすることにより、反射防止層内における潤滑剤の挙動の自由度を抑制し、反射防止層内に含有される潤滑剤が表面に浮き出すことを抑制することができる。そのため、反射率の上昇およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を抑制することができる。
【0013】
また、上記発明においては、上記反射防止層が、上記ハードコート層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸と、を備え、上記微細凹凸における凸部が、上記ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部と、から構成されることが好ましい。
反射防止層の微細凹凸における凸部が、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えていることから、一般的な円錐形等の先端が尖っている形状を有する構造に比べて、微細凹凸が破壊されにくく耐擦傷性の高い反射防止フィルムとすることができる。さらに、良好な反射防止効果を発揮することができ、また、スティッキングに起因する反射防止機能の低下やヘイズの上昇等を防ぐことができるため、光学的特性において優れた反射防止フィルムとすることができる。
なお、スティッキングとは、表面張力が大きい液体がモスアイ構造内に入り込み、それが蒸発する際に、隣同士の構造体が、接触あるいはくっつきあう現象を指すものである。
【0014】
また本発明は、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、上記光透過性基板上に上記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、上記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、を有する反射防止フィルムの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、反射防止層形成工程が、第1硬化工程および第2硬化工程を有することにより、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板を用いた場合でも、反射防止層を所望の形状に賦型、硬化することができる。また、第1硬化工程後に、第2硬化工程において反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射することにより、反応率の高い紫外線硬化性樹脂とすることが可能となり、機械強度および光学的特性に優れた反射防止フィルムを製造することが可能となる。
【0016】
また、上記発明においては、上記紫外線硬化性樹脂組成物が、上記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始することが可能な重合開始剤を有することが好ましい。紫外線吸収剤に吸収されない波長領域の紫外線により、紫外線硬化性樹脂組成物中における重合反応を開始することができるからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、反射防止層の膜厚を制御し、且つ反応防止層に潤滑剤を含有させ、高い反応率で形成されることにより、耐擦傷性に優れる良好な機械強度、および長期間保管された場合や、高温、高湿度の環境下に晒された場合等においても表面の白濁化を抑制可能とする良好な光学的特性を有し、優れた反射防止効果を発揮するという作用効果を奏するものである。また、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、より高い反応率で形成された反射防止層を有し、機械強度および光学的特性に優れた反射防止フィルムを得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸の形状を説明する概略図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。
【図7】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の反射防止フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。
【図14】本発明の反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の反射防止フィルムおよびその製造方法について説明する。
【0020】
A.反射防止フィルム
まず、本発明の反射防止フィルムについて説明する。本発明の反射防止フィルムは、光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、を有する反射防止フィルムであって、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、反射防止フィルム10は、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成されたハードコート層5と、ハードコート層5上に、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層2と、を有している。また、反射防止層2は、ハードコート層5上に形成された基底部3と、基底部3上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸4とを有している。
また、図2は図1に示す本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、基底部3上に形成される微細凹凸4における凸部は、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部4aと、本体部4aの頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部4bとから構成されている。
さらに、図3は、本発明における反射防止フィルムにおける反射防止層の他の例を示す概略断面図であり、図3における各符号については、図2と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0022】
本発明によれば、ハードコート層および反射防止層の膜厚を制御し、また、反射防止層が潤滑剤を含有することにより、鉛筆硬度およびスチールウール耐性を良好なものとすることができる。そのため、耐擦傷性に優れ、良好な機械強度を発揮することが可能となる。
また、紫外線硬化性樹脂の反応率を60%以上とすることにより、反射防止層内における潤滑剤の挙動の自由度を抑制し、反射防止層内に含有される潤滑剤が表面に浮き出すことを防止可能となる。そのため、反射率の上昇およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を抑制することができる。
【0023】
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも光透過性基板、ハードコート層、および反射防止層を有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有していても良いものである。
以下、本発明の反射防止フィルムにおける各構成について説明する。
【0024】
1.反射防止層
まず、本発明における反射防止層について説明する。本発明に用いられる反射防止層は、ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状(以下、「モスアイ構造」と称する場合がある。)を表面に備え、潤滑剤を含有するものである。また、本発明における反射防止層は、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であるものである。
【0025】
(1)反射防止層の形成材料
まず、本発明における反射防止層の形成材料について説明する。
本発明における反射防止層の形成材料としては、可視光領域の波長以下の周期となる凹凸形状を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂によって構成されるものである。
紫外線硬化性樹脂を用いることによって、高精度に微細凹凸を作製することができ、反射防止層に良好な反射防止機能を付与することができ、また汎用性が高いという利点を有する。
【0026】
本発明における反射防止層を構成する紫外性硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム等を挙げることができ、中でも後述する「B.反射防止フィルムの製造方法」の項に記載する紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線により硬化して得られるものを好適に用いることができる。
【0027】
また、本発明における反射防止層は、潤滑剤を含有するものである。
潤滑剤が反射防止層に含有されることにより、反射防止層表面の潤滑性を向上させることができ、耐擦傷性を向上させることができるからである。また、上記潤滑剤は、上記反射防止層表面の潤滑性を向上させることにより、上記反射防止層の離型性を向上させるためにも用いられる。
上記潤滑剤としては、一般的なものを用いることができ、具体例としては、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系等を挙げることができる。なかでも、フッ素系樹脂、脂肪酸アマイド系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系等を好適に用いることができる。
【0028】
本発明における反射防止層中の潤滑剤の含有量としては、反射防止層に用いられる紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内であることがより好ましく、1.0重量部〜8.0重量部の範囲内であることが特に好ましい。
上記潤滑剤の含有量が上記範囲に満たない場合、本発明における反射防止層に所望の耐擦傷性および離型性を付与することが困難となる可能性を有するからである。また一方、上記潤滑剤の含有量が上記範囲を超える場合、上記反射防止層表面に浮き出すブリードアウト現象が生じる恐れがあり、表面が白濁化した反射防止層となる可能性を有するからである。また、上記反射防止層を形成することが困難となる可能性を有するからである。
【0029】
また、本発明における反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率としては、60%以上であり、上述した潤滑剤が反射防止層の表面に浮き出さない程度に、潤滑剤の自由度を抑制可能な反射防止層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂の反応率が、上記範囲より低い場合、反射防止層を所望の形状に賦型した後、金型からの剥離が困難となる可能性を有するからである。また、表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
また、紫外線硬化性樹脂から構成される反射防止層内に含有される潤滑剤の挙動の自由度が増加することにより、反射防止層表面に潤滑剤が浮き出す、いわゆるブリードアウト現象により、反射防止層における反射率の増加、およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を生じる可能性を有するからである。
さらに、反応率を上げることにより、潤滑剤のみでなく、同時に紫外線硬化性樹脂組成物中に含有される重合開始剤や、紫外線硬化性樹脂に添加される酸化防止剤、光安定化剤等の各種添加剤のブリードアウト性も抑制でき、光学的特性に優れた反射防止層とすることができるからである。
【0030】
ここで、反応率の測定方法としては、上記反射防止層を形成する際に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物中の反応性基の残存量を観測することにより求めることができる。このような反応性基の残存量を観測する方法としては、反応性基由来の分子振動を赤外線の吸収によって観測する方法等が挙げられ、具体的には、反応性基に帰属する炭素の二重結合(C=C)の伸縮振動の強度分布を測定する方法を好適に用いることができる。
例えば、紫外線硬化性樹脂組成物中に重合性不飽和結合を含むモノマーを有する場合、赤外線吸収スペクトルにおける波数1630cm−1付近に観察される、二重結合の伸縮振動を観察することで算出できる。その強度の初期値、およびモノマー由来の吸収強度の消失後の値を各々反応率0および100と仮定することで、反応率を算出することができる。
なお、上記赤外線吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定することができる。
【0031】
本発明における反射防止層に用いられる紫外線硬化性樹脂の透明度としては、可視光の全波長領域に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、なかでも85%以上であることがより好ましく、さらに90%以上であることが特に好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0032】
本発明に用いられる反射防止層としては、上述した紫外線硬化性樹脂、潤滑剤に加えて、必要に応じて任意の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、炭酸ストロンチウム等の偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。具体的には、例えば、特開2009−230045号公報に記載されている以下の物質が挙げられる。
【0033】
<帯電防止剤(導電剤)>
帯電防止剤(導電剤)を添加することにより、反射防止層の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、且つ、紫外線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、あるいは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0034】
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、オリアズレン等;芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)等;複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソシアナフテン等;含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン等;混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、上述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体、これら導電性ポリマー誘導体等が挙げられる。取り分け、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、反射防止層の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、反射防止層中の帯電防止剤の含有量としては、0.01重量%〜50重量%程度であり、好ましくは0.1重量%〜30重量%程度である。上記数値範囲に調整することにより、反射防止層としての透明性を保ち、また反射防止機能に影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
【0036】
<低屈折率剤>
低屈折率剤を添加することにより、反射防止層の光学的特性を調整することが可能となる。低屈折率剤を添加した反射防止層の屈折率は、1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。低屈折率剤の好ましいものとしては、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率無機超微粒子(多孔質、中空等全ての種類の微粒子)、および低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物またはその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線で硬化する官能基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基等を一切持たないものである。
【0037】
<高屈折率剤/中屈折率剤>
高屈折率剤および中屈折率剤を添加することにより、上述した低屈折率剤と同様に、反射防止層の光学的特性を調整することが可能となる。また、高屈折率剤、中屈折率剤は、反射防止機能をさらに向上させるために用いられる。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.55〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.55〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
【0038】
これら屈折率剤としては、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)等が挙げられる。
【0039】
<レベリング剤>
レベリング剤は、反射防止層に、滑り性、防汚性および耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。従って、レベリング剤は防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤として機能するものである。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等が挙げられる。
【0040】
<防汚染剤>
防汚染剤は、反射防止層の最表面の汚れ防止を主目的とし、さらに反射防止層に耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
【0041】
<紫外線・赤外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0042】
<高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤>
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層で用いられる高硬度化剤、硬度調製剤、および流動性調整剤としては、通常、反射防止層で用いられるものであればいずれのものであっても良い。
【0043】
(2)反射防止層の構造
本発明における反射防止層は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備えるものである。また、上記反射防止層は、表面に後述する微細凹凸を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記ハードコート層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、凹凸形状からなる微細凹凸と、を備えるものであることが好ましい。
【0044】
また、本発明における反射防止層においては、微細凹凸および基底部は一体で形成されていても良く、別体で形成されていても良いが、一体で形成されていることがより好ましい。
微細凹凸および基底部が一体であることにより、後述する「5.反射防止フィルムの製造方法」の項で説明するように、簡便な方法で反射防止層の表面に微細凹凸を形成することが可能となるからである。
以下、微細凹凸および基底部について各々説明する。
【0045】
(i)微細凹凸
本発明における微細凹凸は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状からなるものであり、上記微細凹凸における凸部が、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されるものである。
以下、微細凹凸の各部について説明する。
【0046】
(a)本体部
まず、本発明における本体部について説明する。
本発明に用いられる本体部は、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状であるものである。
本発明においては、錐台形状の本体部を有しているため、良好な反射防止機能を有するとともに、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型等から抜けやすくなる。
ここで、反射防止フィルムの製造時に金型等から抜けにくい場合、本体部を形成するための樹脂が金型等の微細孔の中に残留するようになる。残留部分に相当する部分が転写された光透過性基板の表面は、反射防止機能を発現するための凹凸形状がない状態となり、反射防止機能を阻害する原因となる。
【0047】
また、本体部がテーパー状に立ち上がる錐台形状を有することで、一般的な錐形体等の形状に比べて、凹凸形状が破壊されにくくなるという利点を有することから、機械的強度が向上する。さらに、スティッキングが発生しにくくなることから、反射防止機能の低下およびヘイズの上昇等を抑制することができ、光学的特性に優れた反射防止フィルムとすることが可能となる。
【0048】
上記本体部の縦断面における基材に対するテーパー角度としては、テーパー状に立ち上がる錐台形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。
上記テーパー角度が上記範囲よりも大きいと、本体部が垂直に立ち上がる形状に近くなり、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型等から抜けにくくなる場合があり、また、良好な反射防止機能を示さない可能性があるからである。さらに、スティッキングが発生しやすくなる場合がある。一方、上記テーパー角度が上記範囲よりも小さいと、反射防止機能が低下し、反射率の波長依存性を受けやすくなり、さらに、上記本体部を形成することが困難となる場合があるからである。
なお、本発明における上記テーパー角度とは、本体部の縦断面での側面が直線状の場合、上記側面を近似する直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図2におけるθ1で表される角度である。
一方、本体部の縦断面での側面が曲線状の場合、本体部の頂面の外周上の点および本体部の底面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図3におけるθ2で表される角度である。
ここで、本体部の頂面は、微細凹凸における凸部の側面の曲率が大きく変化する部位の横断面からなる面とし、本体部の底面は、本体部と基底部とが接する面とする。
なお、本発明における上記テーパー角度は、本体部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー角度を測定し、その測定値の平均値とする。
【0049】
また、上記本体部の高さとしては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、適宜調整できるものである。ここで、上記本体部の高さが高いほど、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記高さが低いほど、長波長側の反射率が増加する傾向にある。
このようなことから、本発明における上記本体部の高さは、60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜750nmの範囲内であることがさらに好ましい。本体部の高さが上記範囲より高い場合、本体部が損壊しやすく、また、スティッキングが発生しやすくなる場合があり、本体部の高さが上記範囲より低い場合、上記微細凹凸を有する反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
本発明における上記本体部の高さとは、基底部表面から、本体部の頂面までの距離をいい、例えば、図2および図3においてHで表される距離である。なお、本発明における上記本体部の高さは、上述したテーパー角度と同様に、電子顕微鏡を用いて決定した平均値とする。
【0050】
上記本体部の頂面の径としては、上記本体部の底面の径よりも小さければ特に限定されるものではないが、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の頂面の径が上記範囲より小さい場合、機械強度が小さくなり、本体部が損傷しやすくなるからである。また、本体部の頂面の径が上記範囲より大きい場合、テーパーが小さくなるため、スティッキングを発生しやすくなったり、金型等から抜けにくくなったりするからである。なお、本発明における上記本体部の頂面の径は、上述した電子顕微鏡を用いた方法で決定した平均値とする。
【0051】
上記本体部の底面の径としては、上記本体部の頂面の径よりも大きければ特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の底面の径が小さくなると、隣り合う構造体の間が開き、構造体を形成していない部分が多くなるため、反射防止機能が低下する可能性を有するからである。なお、本発明における上記本体部の底面の径は、上述した電子顕微鏡を用いた方法で決定した平均値とする。
【0052】
上記本体部の頂面形状および底面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状等を挙げることができる。
【0053】
上記本体部の側面形状としては、上記本体部の縦断面において、直線状であっても良く、曲線状であっても良い。中でも、本発明においては、上記本体部が後述する先端部と連続的な曲面状の側面を形成することが好ましい。図3に例示するように、微細凹凸の凸部を釣鐘形状とすることができ、良好な反射防止機能を得ることができるからである。
以下、上記凸部が釣鐘形状であることにより反射防止機能が良好となる理由について、具体的に説明する。
【0054】
モスアイ構造が反射防止をする原理については、次のように考えられる。図4(a)に例示されるモスアイ構造体Xの頂点部付近の空間(擬似層a)の屈折率Nは、空気の屈折率を1、擬似層a中でモスアイ構造体Xが占める体積の割合をVm、モスアイ構造体Xを構成する樹脂の屈折率をNmとすると、下記の(1)式が成り立つ。
N=1×(1−Vm)+Nm×Vm (1)
すなわち、擬似層aの屈折率は、空気と樹脂との、それぞれの体積と屈折率とを考慮した加重平均として与えられる。擬似層b以降も、同様である。擬似層a〜擬似層kへと基材Yに近づくにつれ、擬似層の屈折率は大きくなるが、図4(b)に例示するように、錐形状の屈折率の変化量が曲線的に変化するのに対して、釣鐘形状の屈折率の変化量はほぼ直線的に変化する。これは、モスアイ構造体Xが占める体積の割合は、擬似層aから擬似層kまでの断面積の変化ととらえることができ、この断面積の変化は錐形状の場合、曲線的に変化し、釣鐘形状の場合、ほぼ直線的に変化するからである。そのため、釣鐘形状のモスアイ構造体Xは、錐形状のモスアイ構造体Xに比べて、基材Y近傍の屈折率の変化率が小さいという特徴がある。基材Y近傍の屈折率の変化率が小さい方が、空気と樹脂との屈折率が擬似的に小さくなり、反射率を小さくすることが可能となる。
また、本体部のテーパーが小さい場合、図4(b)に例示するように、擬似層kでの屈折率の変化量は小さいが、擬似層aから擬似層c部分での屈折率の変化量が大きくなるため、全体に白っぽくなる傾向がある。したがって、錐形状のモスアイ構造体Xおよびテーパーが小さい形状のモスアイ構造体Xよりも釣鐘形状のモスアイ構造体Xの方が、反射防止機能が優れている。
本発明においては、上記本体部のテーパー角度および上記先端部の曲率半径を適宜調整し、上記微細凹凸における凸部の釣鐘形状を規定することにより、上記擬似層の屈折率分布を最適化することができ、上記微細凹凸を光学的特性に優れたモスアイ構造とすることができる。
【0055】
(b)先端部
次に、本発明における先端部について説明する。
本発明に用いられる先端部は、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有するものである。本発明においては、上記先端部が曲面構造を有することにより、反射防止層における微細凹凸の凸部の最先端部が割れる等の不具合がなく、さらに、型抜き性に優れた微細凹凸とすることができる。
なお、上記先端部の曲面構造は、反射防止層に微細凹凸を形成する際の圧力、反射防止層を構成する樹脂の粘度等で制御することが可能である。
【0056】
上記先端部の形状としては、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造であれば特に限定されるものではない。本発明においては、中でも、略球面状であることが好ましく、その曲率半径としては、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜調整することができるものであり、例えば、本発明に用いられる本体部の頂面の径に対して、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.0倍〜2.0倍の範囲内であることがより好ましく、1.0倍〜1.5倍の範囲内であることがさらに好ましい。
先端部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、先端部が平らな形状に近くなるため、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射率が高くなり、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が低下する場合があるからである。
また、曲面構造は、図5(a)に例示するように、球面状であることが望ましいが、図5(b)〜(c)に例示するように、一部尖っている形状および/またはうねりがあっても良い。また、先端部の最先端部は本体部の頂面の中心にある必要はなく、中心からずれていても反射防止機能には変化はない。
なお、図5(a)〜(c)は、本発明における微細凹凸の先端部の一例を示す概略断面図である。
【0057】
また、上記先端部の高さ、すなわち、本体部の頂面から先端部の最先端部までの距離としては、上記微細凹凸を有する反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものである。
【0058】
(c)凸部
次に、本発明における凸部について説明する。
本発明に用いられる凸部は、上記先端部と上記本体部とから構成されるものであり、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射防止機能は、上記凸部が形成された周期、高さ、間隔に依存する。
なお、上記凸部が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図6におけるP1、Q1、およびR1で示す通り、それぞれ隣接する凸部における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、凸部における先端部の頂部から本体部の底面までの距離、および隣接する凸部における本体部の底面の外周間の最短距離である。
ここで、図6は本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図であり、図6において説明していない符号については、図2と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0059】
上記凸部の周期としては、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、本発明に用いられる反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。
一方、周期が200nm以下となる場合においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本発明における上記凸部の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜250nmの範囲内であることがさらに好ましい。
上記凸部の周期が上記範囲よりも短い場合、個々の凸部の形状が極微小になることから、高精度で凸部を形成することが困難になる場合があるからである。また一方、上記凸部の周期が上記範囲よりも長い場合、本発明における反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
なお、本発明における上記凸部の周期は、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の周期を測定し、その測定値の平均値とする。
【0060】
上記凸部の高さについても、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記凸部の高さが高いほど、上記反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記凸部の高さが低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。
このようなことから、本発明における上記凸部の高さは、62nm〜1402nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1002nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜752nmの範囲内であることがさら好ましい。上記凸部の高さが上記範囲よりも高い場合、個々の凸部が損壊しやすくなってしまう可能性を有するからである。また一方、上記凸部の高さが上記範囲よりも低い場合、上記反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
なお、本発明における上記凸部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0061】
上記凸部の高さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
上記凸部の高さのばらつきが上記範囲よりも大きい場合、本発明における反射防止層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。また、凸部の頂点から構成される表面の機械強度が低下し、損傷を受けやすくなる。なお、上記凸部の高さのばらつきとは、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の高さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0062】
また、上記凸部が形成される間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部が形成された間隔としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。
なお、本発明における上記凸部の間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0063】
上記凸部の単位面積当たりの個数としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、50個/μm2以上であることが好ましく、60個/μm2以上であることがより好ましく、70個/μm2以上であることが特に好ましい。上記凸部の単位面積当たりの個数が50個/μm2未満の場合、ギラツキが発生し、反射防止機能が低下する。また、凸部の頂点から構成される表面の機械強度が低下し、損傷を受けやすくなる。
【0064】
なお、本発明においては、反射防止層が上記凸部以外の構造体を有していても良いが、反射防止層における上記凸部の個数の、反射防止層における構造体全体の個数に対する割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記割合が少ない場合、反射防止機能、スティッキング耐性および型抜け性が低下してしまうからである。
【0065】
上記凸部の360nm〜760nmの波長領域における入射角5°での正反射率は、0.5%以下であることが好ましく、0.005%〜0.3%の範囲内であることがより好ましく、0.005%〜0.1%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記凸部の360nm〜760nmの波長領域におけるヘイズ値は、0.1%〜50%の範囲内であることが好ましい。
【0066】
上記凸部は、短波長領域から長波長領域までくまなく反射することが可能である。
【0067】
(ii)基底部
本発明に用いられる反射防止層における基底部は、後述するハードコート層上に形成され、上記微細凹凸を支持するものである。
上記基底部の厚みとしては、通常、4μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、4μm〜15μmの範囲内であることがより好ましく、さらに4μm〜10μmの範囲内であることが特に好ましい。
基底部の厚みが上記範囲内であることにより、反射防止層の収縮応力の程度を低減することができ、後述するハードコート層等の種類に関わらず、本発明の反射防止フィルムにカールが生じることを防止することができるからである。
さらに、基底部の厚みの上限を上記範囲とする理由としては、上述した反射防止層の形成に用いられる潤滑剤、重合開始剤、および光安定化剤、酸化防止剤等の各種添加剤の絶対量を減らすことができるため、ブリードアウトする成分の絶対量を減らすことができ、さらなる抑制が可能となるからである。
さらに、クッション層としての効果があり、反射防止層の機械的損傷を補強することができる。例えば、反射防止層の機械強度を高め、擦傷耐性を向上させることにより、傷つきにくくさせることが可能となる。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性を向上させることができる。
【0068】
(iii)反射防止層の構造
本発明における反射防止層の膜厚は、5μm〜25μmの範囲内であり、中でも、5μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜15μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記反射防止層の膜厚が、上記範囲に満たない場合、反射防止効果を充分に発揮できない恐れや、所望の形状を維持できない恐れがあるからである。また、ハードコート層の膜厚に対して、反射防止層の膜厚が薄くなることから、ハードコート層の有する硬度が反射防止フィルム全体へ及ぼす影響が大きくなり、反射防止フィルム全体の耐擦傷性が低下する可能性を有するからである。また一方、上記反射防止層の膜厚が、上記範囲を超える場合、個々の凸部の形状が破損しやすくなる恐れがあるからである。また、ハードコート層の膜厚に対して、反射防止層の膜厚が厚くなることから、反射防止層の有する硬度が反射防止フィルム全体へ及ぼす影響が大きくなり、反射防止フィルム全体の硬度が低下する可能性を有するからである。
【0069】
なお、本発明の反射防止層は、上記微細凹凸および上記基底部を備えるものであることから、上述した反射防止層の膜厚は、上述した微細凹凸および基底部の高さを合計したものとすることができる。
【0070】
(3)反射防止層の形成方法
このような反射防止層の形成方法としては、反射防止層の表面に形成される微細凹凸の形状、反射防止層の形成材料、反射防止層の形成位置、および本発明の反射防止フィルムの用途等により適宜選択されるものであるが、後述する「5.反射防止フィルムの製造方法」の項において説明する方法を好適に用いることができる。
【0071】
(4)その他
本発明における反射防止層は、後述するハードコート層上に積層形成されるものであっても良く、反射防止層の形成材料およびハードコート層の形成材料を共押出しして形成されるものであっても良い。
また、上記ハードコート層の形成材料として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機溶剤に可溶な樹脂が用いられている場合、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂を有機溶剤に希釈し、ハードコート層に積層する方法が一般的であるが、このとき、ハードコート層には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用される反射防止層の紫外線硬化性樹脂の一部も浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上、干渉縞の防止、および反射防止層の機械強度の向上がなされても良い。
【0072】
本発明における反射防止層の反射防止機能は、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の屈折率、および後述するハードコート層の屈折率に依存するものである。すなわち、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の屈折率と、ハードコート層の屈折率との差が小さいほど、屈折率の不連続性を是正することができることから、反射防止層の反射防止機能を向上させることが可能となる。
このような観点から、本発明に用いられる紫外線硬化性樹脂の屈折率と、後述するハードコート層の屈折率との差としては、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、さらに0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。なお、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の具体的な屈折率の値は、後述する光透過性基板との関係で決定されるものであり、特に好ましい値が特定されるものではないが、通常、1.20〜2.40の範囲内であるとされる。
【0073】
2.ハードコート層
次に、本発明に用いられるハードコート層について説明する。本発明におけるハードコート層は、後述する光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されるものである。
【0074】
上記ハードコート層は、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させることや反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができることから、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、本発明の反射防止フィルムを表示装置の保護フィルムとして用いることも可能となるという利点を有する。
【0075】
本発明に用いられるハードコート層としては、所望の硬度や、光透過性基板との密着性等を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなハードコート層を構成する形成材料としては、一般的な樹脂および反射防止層等に適宜選択され用いられる添加剤からなるものである。
上記樹脂としては、光透過性基板との密着性を発揮可能であり、また所望の硬度を有するものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマーならびに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0076】
また、本発明に用いられるハードコート層の膜厚としては、7μm以上となるものであり、中でも7μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、さらに7μm〜12μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記ハードコート層の膜厚が、上記範囲より薄い場合、ハードコート層を構成する材料の種類によっては、ハードコート層の硬度を所望の程度にすることが困難となる場合があり、また密着性がとれず、剥離してしまう可能性を有するからである。また、反射防止層の膜厚に対して、上記ハードコート層の膜厚が薄くなることから、反射防止層全体に対するハードコート層の硬度の影響が小さくなる、すなわち、反射防止層の硬度の影響が大きくなる。そのため、反射防止フィルム全体の硬度が低下し、充分な硬度を有することが困難となり、機械強度が低下する恐れがあるからである。
また一方、上記ハードコート層の膜厚が、上記範囲を超える場合、反射防止層の膜厚に対して、上記ハードコート層の膜厚が厚くなるため、上記ハードコート層の有する硬度の影響が大きくなることから、反射防止フィルム全体の硬度が高くなりすぎる可能性を有するからである。そのため、反射防止フィルムに所望の形状を賦型することが困難となる場合があるからである。
【0077】
ここで、本発明におけるハードコート層の有する硬度は、鉛筆硬度を用いて示すことができるものであり、通常、B〜2Hの範囲内であることが好ましく、B〜Hの範囲内であることがより好ましく、HB〜Hの範囲内であることが特に好ましい。
上記ハードコート層の硬度が、上記範囲に満たない場合、反射防止フィルム全体の硬度が低下し、機械強度の低い反射防止フィルムとなる可能性を有するからである。また一方、上記ハードコート層の硬度が、上記範囲を超える場合、反射防止フィルム全体の硬度が高くなり過ぎてしまう恐れがあり、耐擦傷性の低い反射防止フィルムとなる可能性を有するからである。
なお、鉛筆硬度の測定方法については、後述する反射防止フィルムの鉛筆硬度と同様の方法を用いることができる。
【0078】
ハードコート層は、予め光透過性基板に積層形成したものを用いても良く、ハードコート層および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いても良い。
また、本発明に用いられる光透過性基板に、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等、有機溶剤に可溶な樹脂を用いる場合、ハードコート層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、光透過性基板に積層する方法が一般的であるが、このとき、光透過性基板には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用されるハードコート層の樹脂の一部を浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上およびハードコート層の機械強度の向上がなされても良い。
【0079】
さらに、本発明に用いられるハードコート層は、屈折率が上記反射防止層の屈折率および後述する光透過性基板の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層とハードコート層との境界、および、ハードコート層と光透過性基板との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。なかでも、本発明に用いられるハードコート層の屈折率と、上記反射防止層および後述する光透過性基板との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。
【0080】
本発明に用いられるハードコート層は、上述した形成材料に加え、必要に応じて種々の添加剤を含有しても良い。このような添加剤としては、上記「1.反射防止層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0081】
3.光透過性基板
次に、本発明における光透過性基板について説明する。本発明における光透過性基板は、上述した反射防止層を支持するものであり、上記反射防止層と相まって、本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
【0082】
本発明に用いられる光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、可視光の全波長領域に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0083】
本発明に用いられる光透過性基板は、その屈折率が上記ハードコート層を構成する樹脂の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおいて、ハードコート層と光透過性基板との界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面において光が反射されることにより、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。
本発明におけるハードコート層の屈折率と光透過性基板の屈折率との差としては、上記「2.ハードコート層」の項に記載したものであり、本発明に用いられる光透過性基板の屈折率の値は、上述した樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0084】
本発明に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、上述した光透過性を示し、且つ、所望の屈折率を有する光透過性基板を得ることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは、ガラス(セラミックスを含む)等を挙げることができる。
【0085】
また、本発明における光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上記光透過性基板が紫外線吸収剤を含有することにより、本発明の反射防止フィルムを用いて種々の製品を製造した際に、屋外等の紫外線が断続的に照射される環境に設置された場合も反射防止フィルムの劣化を防止することができるからである。
【0086】
なお、本発明における光透過性基板としては、上述した紫外線吸収剤以外にも必要に応じて種々の添加剤を含有していても良い。
このような添加剤としては、上述した反射防止層に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0087】
本発明における光透過性基板の膜厚としては、上述した反射防止層およびハードコート層を支持することが出来るものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムに応じて適宜選択するものであるが、通常1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0088】
4.反射防止フィルム
(1)反射防止フィルムの特性
本発明の反射防止フィルムにおいては、高硬度であり、且つ耐擦傷性に優れるものである点に特徴を有するものである。
以下、このような特性について各々説明する。
【0089】
(硬度)
本発明の反射防止フィルムは、反射防止フィルムに充分な機械強度を発揮することができる程度の硬度を有するものである。このような硬度としては、鉛筆硬度を用いることができる。
本発明の反射防止フィルムとしては、鉛筆硬度の値が、B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが特に好ましい。
鉛筆硬度が上記範囲より低い場合、本発明の反射防止フィルムの硬度が不十分となり、所望の形状および自己支持性を有することが困難となる可能性があるからである。
なお、鉛筆硬度の上限値としては、特に限定されるものではないが、2H以下とすることができる。
鉛筆硬度が上記範囲より高い場合、本発明における反射防止層が微細凹凸を有することからスチールウール耐性が低下することに起因して機械強度が低下する可能性を有するからである。
【0090】
ここで、本発明における鉛筆硬度の値とは、JIS K5400の8.4「鉛筆引っかき値」に示される測定方法および測定条件により測定された値をいうものである。
すなわち、鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機(例えば、No.431(商品名)、東洋製機製作所製)に鉛筆を設置し、試験片である塗膜に擦り傷をつける。これを5回同様の濃度の鉛筆で繰り返し、試験片に2回以上擦り傷を形成する鉛筆濃度よりも1段階下位の濃度記号をその試験片の鉛筆濃度として評価する方法である。
【0091】
(耐擦傷性)
本発明の反射防止フィルムとしては、優れた耐擦傷性を発揮できるものである。ここで、耐擦傷性としては、スチールウール耐性の値を用いて示すことが可能である。
【0092】
本発明の反射防止フィルムにおいては、スチールウール耐性の値が、20g/100mm2以上であることが好ましく、50g/100mm2以上であることがより好ましく、100g/100mm2以上であることが特に好ましい。
スチールウール耐性が上記範囲より小さい場合、上述した反射防止層の微細凹凸が脆くなり、破損する可能性が高くなるからである。
なお、スチールウール耐性の上限値としては、特に限定されるものではないが、700g/100mm2以下とすることができる。
【0093】
ここで、本発明におけるスチールウール耐性の値とは、スチールウール#0000で荷重をかけながら10往復摩擦試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態でキズが10本以下となる最大荷重の値を算出したものである。
【0094】
(2)任意の構成層
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも上記反射防止層と、上記ハードコート層と、上記光透過性基板とを有するものであり、必要に応じて任意の構成層が用いられても良い。本発明に用いられる任意の構成層としては、所望の反射防止機能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、機能層、粘着層、および保護層等を挙げることができる。
【0095】
本発明に用いられる機能層としては、本発明の反射防止フィルムに所望の機能を付与するものであり、例えば、プライマー層(密着安定層)、帯電防止層等をあげることができる。
【0096】
上記機能層が用いられる場合の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図7は、本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。反射防止フィルム10は、図7に例示するように、光透過性基板1とハードコート層5との間に機能層6を有しているものであっても良い。
なお、図7において説明していない符号については、図1と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0097】
このような機能層として用いられるプライマー層は、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、上記反射防止層および上記ハードコート層の密着性を向上させるものである。そのため、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、表示装置の保護フィルムとして用いることも可能となるという利点を有する。
また、上記プライマー層は、帯電防止層を兼ねることもできる。
【0098】
また、本発明に用いられるプライマー層としては、所望の硬度や、ハードコート層との密着性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなプライマー層を構成する材料としては、一般的な樹脂および反射防止層等に適宜選択され用いられる添加剤からなるものである。
上記樹脂としては、所望の硬度およびハードコート層との密着性を発揮するものであれば特に限定されるものではなく、上述したハードコート層と同様の樹脂を用いることができる。
【0099】
また、本発明に用いられるプライマー層の膜厚は、上述したプライマー層に用いられる材料の種類等に応じて、適宜設定されるものである。なかでも、本発明に用いられるプライマー層の膜厚は、0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましく、さらに1μm〜20μmの範囲内であることが特に好ましい。
プライマー層の膜厚が上記範囲より厚い場合、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまう可能性を有するからである。また一方、上記範囲より薄い場合、密着性がとれず、剥離してしまう可能性を有するからである。また、帯電防止層としての機能を付加する場合には、充分な帯電防止性能を発現できなくなる場合がある。
【0100】
さらに、本発明に用いられるプライマー層は、予めハードコート層に積層形成したものを用いても良く、プライマー層および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いても良い。
また、本発明に用いられるハードコート層が、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等、有機溶剤に可溶な樹脂からなる場合、プライマー層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、ハードコート層に積層する方法が一般的である。このとき、ハードコート層には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用されるプライマー層の樹脂の一部を浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上、干渉縞の防止、およびプライマー層の機械強度の向上がなされても良い。
【0101】
さらに、本発明に用いられるプライマー層は、屈折率が上記ハードコート層の屈折率および上記光透過性基板の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおけるハードコート層とプライマー層との境界、および、プライマー層と光透過性基板との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。なかでも、本発明に用いられるプライマー層の屈折率と、上記ハードコート層および上記光透過性基板との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。
【0102】
次に、粘着層が用いられる場合の本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図8は、本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。反射防止フィルム10は、図8に示すように、光透過性基板1のハードコート層5が形成された面と反対の面上に粘着層7が形成されていても良い。
なお、図8において説明していない符号については、図1と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0103】
本発明に用いられる粘着層は、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて所望の粘着剤からなるものであれば特に限定されるものではない。上記粘着層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0104】
また、本発明に用いられる粘着層の厚みは、1μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜50μmの範囲内であることがさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
【0105】
本発明に用いられるプライマー層(密着安定層)、帯電防止層等の機能層、および粘着層は、上述した材料に加え、必要に応じて種々の添加剤を含有しても良い。このような添加剤としては、上記「1.反射防止層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0106】
次に、保護層が用いられる場合の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図9は、本発明の反射防止フィルムに保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図9(a)〜(c)に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、反射防止層2の表面上に保護層8が形成されたものである。
図9(a)に例示するように、反射防止層2の微細凹凸4の先端部のみが保護層8に接触するように形成されるものであっても良く、図9(b)に例示するように、反射防止層2が保護層8に少しめり込むように形成されるものであっても良く、また、図9(c)に例示するように、反射防止層2が保護層8に入りこむように形成されるものであっても良い。
なお、図9において説明していない符号については、図1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0107】
本発明に用いられる反射防止層の表面に形成される保護層の形成方法としては、感圧または感熱で粘着力を発現する保護フィルムを貼合する方法、保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で成膜する方法、反射防止層表面に溶融押出し、冷却して形成する方法等が挙げられる。
【0108】
感圧または感熱方式で貼合し形成する保護層は、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて所望の保護層材料からなるものであれば特に限定されるものではない。上記感圧保護層材料としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
また、上記保護層は、オレフィン系の熱可塑性樹脂に、エチレン−αオレフィン共重合物、プロピレン−αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤーや上記の粘着剤を混合した樹脂で形成されていても良い。
さらには、上記保護層は、不飽和カルボン酸グラフト変性されたαオレフィン重合体およびαオレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたαオレフィン重合体またはエチレンとαオレフィンとの共重合体等を含有する樹脂から形成されていても良い。
【0109】
反射防止層表面に溶融押出しし、冷却して保護層を形成する場合、保護層材料としては、αオレフィン重合体、エチレンとαオレフィンとの共重合体、プロピレンとαオレフィンとの共重合体を単体またはブレンドして用いることができる。ブレンドする樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、エチレン−αオレフィン共重合物、プロピレン−αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤー、不飽和カルボン酸具タフト変性されたαオレフィン重合体およびαオレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたαオレフィン重合体またはエチレンとαオレフィンとの共重合体とが挙げられる。
【0110】
保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で成膜する方法としては、有機溶剤または水系に希釈して、または希釈しないで、反射防止層の上面にコーティングし成膜する。必要に応じて、乾燥、冷却、UV照射を行い、膜強度を向上させる。用いられる樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0111】
(3)その他
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層およびハードコート層の膜厚の比率としては、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3〜1.0:4.0の範囲内であることが好ましく、1.0:0.5〜1.0:2.0の範囲内であることがより好ましく、1.0:1.0〜1.0:1.4の範囲内であることが特に好ましい。
上記膜厚の比率が、上記範囲に満たない場合、ハードコート層の硬度が反射防止フィルム全体に大きく影響し、スチールウール耐性が低下するため、耐擦傷性を付与することが困難となる可能性があるからである。また一方、上記膜厚の比率が、上記範囲を超える場合、ハードコート層の硬度が反射防止フィルム全体に反映されず、鉛筆硬度が低下するため、反射防止フィルムの硬度が低下する可能性があるからである。
【0112】
本発明の反射防止フィルムの用途としては、反射防止機能が必要とされるあらゆる用途に用いることができるが、例えば、液晶表示装置用の偏光板を構成する部材、フォトフレーム、美術品の展示フレーム等を挙げることができる。
【0113】
5.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルム、すなわち、モスアイ構造を有する反射防止フィルムを製造することができる方法として一般的に公知の方法を用いて製造することができ、例えば、後述する「B.反射防止フィルムの製造方法」の項に記載の方法等を用いることができる。
【0114】
B.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルムの製造方法は、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、上記光透過性基板上に、上記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、上記反射防止層形成用層に、上記光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0115】
本発明の反射防止フィルムの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図10(a)〜(e)は、本発明の反射防止フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。図10(a)〜(e)に例示するように、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、反射防止フィルム製造用金型20を用い(図10(a))、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成されるハードコート層5と、ハードコート層5上に形成される反射防止層2とを有する反射防止フィルム10を製造する方法である(図10(e))。
具体的には、まず、反射防止フィルム製造用金型を予め準備する工程を行う(図10(a))。
次に、紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、光透過性基板1上にハードコート層5を形成するハードコート層形成工程を順に行う。その後、ハードコート層5上に、紫外線硬化性樹脂組成物を塗工して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜2’’を形成し(図10(b))、反射防止フィルム製造用金型20を紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜2’’側に配置し、賦型して反射防止層形成用層2’を形成する反射防止層形成用層形成工程を行う、次いで、光透過性基板1側から紫外線を照射する第1硬化工程を行う(図10(c))。
さらに、反射防止フィルム製造用金型20から剥離する剥離工程を行った後、反射防止層2側から紫外線を照射する第2硬化工程を施し(図10(d))、反射防止層2を有する反射防止フィルム10を形成するものである(図10(e)反射防止層形成工程)。
なお、反射防止フィルム10および反射防止フィルム製造用金型20の説明していない符号については、上述した図1および後述する図14と同様のものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0116】
一般的な反射防止フィルムは、紫外線が照射されることにより劣化する可能性を有していることから、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板を備えるものが形成されていた。
しかしながら、このような光透過性基板を用いる場合、光透過性基板に紫外線を吸収され、紫外線が充分に照射されず、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化が不十分となる可能性を有する。
【0117】
そこで、本発明によれば、第1硬化工程において光透過性基板側から紫外線を照射した後、反射防止フィルム製造用金型から剥離し、さらに第2硬化工程において反射防止層側から紫外線を照射することにより、紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を充分に硬化することができる。そのため、賦型性の高い反射防止層を形成することが可能となる。
また、第1硬化工程後に、第2硬化工程において反射防止層側から紫外線を照射することにより、第1硬化工程における紫外線の照射が不十分となり、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が低くなっている場合においても、紫外線硬化性樹脂の反応率を向上させることが可能となる。
そのため、紫外線硬化性樹脂組成物中の重合反応が促進され、機械強度を向上させることができる。また、紫外線硬化性樹脂組成物中に含有される潤滑剤の自由度が抑制されることによって、潤滑剤が反射防止層表面に浮き上がることによる反射防止フィルムの白濁化の防止が可能となり光学的特性を優れたものとすることができる。したがって、反射防止効果に優れた反射防止フィルムを製造することができる。
【0118】
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、少なくとも紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、ハードコート層形成工程、反射防止層形成用層形成工程、および反射防止層形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられても良いものである。
以下、本発明の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0119】
1.紫外線硬化性樹脂組成物調製工程
本発明における紫外線硬化性樹脂組成物調製工程について説明する。本発明における紫外線硬化性樹脂組成物調製工程は、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する工程である。
ここで、本工程によって調製される紫外線硬化性樹脂組成物は、後述する反射防止層形成用層形成工程において、反射防止フィルム製造用金型を用いて、反射防止層形成用層となるものである。
【0120】
本工程によって調製される紫外線硬化性樹脂組成物としては、少なくとも1個以上の官能基を有し、後述する光重合開始剤に紫外線を照射することにより発生するラジカルにより、ラジカル重合を行い分子量の増加や架橋構造の形成を行うモノマーやオリゴマー等を有するものである。ここで、上記官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、水酸基等の反応の原因となる原子団または結合用式である。
【0121】
このようなモノマー、オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコンアクリレート等のアクリル型、および不飽和ポリエステル/スチレン系、ポリエン/スチレン系等の非アクリル系が挙げられるが、中でも、硬化速度、物性選択の幅の広さからアクリル型が好ましい。このようなアクリル型の代表例を以下に示す。
【0122】
まず、単官能基のものとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルEO付加物アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン付加物、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、ノニルフェノールEO付加物にカプロラクトン付加したアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フルフリルアルコールのカプロラクトン付加物アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート等を挙げることができる。
【0123】
また、多官能基のものとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンのアセタール化合物のジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロイロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイロキシジエトキシ)フェニル]メタン、水添ビスフェノールエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロビレンオキサイド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートペンタアクリレート混合物、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物アクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、2−アクリロイロキシエチルオスフェート等を挙げることができる。
【0124】
また、上記紫外線硬化性樹脂組成物としては、一般的に重合開始剤を含有するものである。また上記重合開始剤としては、一般的な紫外線硬化性樹脂組成物の重合時に用いられる重合開始剤を用いることができる。なかでも、後述する光透過性基板に含有される紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始する重合開始剤を有することが好ましい。
後述する光透過性基板は、本発明の反射防止フィルムの紫外線照射による劣化を抑制する観点から、紫外線吸収剤を含有するため、光透過性基板側から紫外線を照射した際に、光透過性基板内の紫外線吸収剤に吸収される。
そのため上述したような重合開始剤を用いることによって、上記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射する際に、紫外線吸収剤に吸収される紫外線量を減少させ、紫外線硬化性樹脂組成物に効果的に紫外線を照射することができる。
【0125】
このような重合開始剤としては、重合反応を開始可能な波長領域が、200nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、200nm〜480nmの範囲内であることがより好ましく、220nm〜450nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0126】
具体的には、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルォスフィンオキシドなどが挙げられる。
また市販される重合開始剤としては、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11850、CG24−61、Darocurl116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、LucirinLR8728、8893X(以上BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、KIP150(ランベルティ社製)等を用いることができる。
【0127】
このような重合開始剤の配合量としては、全組成物中に0.01重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.5重量%〜7重量%の範囲内であることが特に好ましい。上記配合量の上限は、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化特性における点、また硬化した紫外線硬化性樹脂組成物、すなわち紫外線硬化性樹脂の力学特性、光学特性、および取り扱い等の観点から上記範囲となることが好ましい。また上記配合量の下限は、硬化速度の低下防止の観点から上記範囲となることが好ましい。
【0128】
また、本発明における紫外線硬化性樹脂組成物は、潤滑剤を含有するものである。上記潤滑剤としては、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0129】
上記紫外線硬化性樹脂組成物としては、本発明によって製造される反射防止フィルムの用途等に応じて添加剤等を含むものであっても良い。
なお、上記添加剤としては、上記「A.反射防止フィルム」の項に記載されたものと同様のものを用いることができる。
【0130】
上記紫外線硬化性樹脂組成物の粘度としては、上記金型に上記紫外線硬化性樹脂組成物を所望の程度に入りこませることが可能であれば特に限定されないが、例えば、25℃において、10mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、50mPa・s〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、100mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
【0131】
上記紫外線硬化性樹脂組成物の調製方法としては、上述したような紫外線硬化性樹脂組成物を調製できるものであれば特に限定されない。
【0132】
2.ハードコート層形成工程
次に、本発明におけるハードコート層形成工程について説明する。
本発明におけるハードコート層形成工程は、光透過性基板上に、ハードコート層を形成する工程である。
【0133】
(1)ハードコート層
本工程によって形成されるハードコート層は、一般的に用いられるハードコート層と同様のものを用いることができ、例えば、上述した「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0134】
また、本工程によって形成されるハードコート層としては、後述する光透過性基板と同様の紫外線の波長領域において、同程度の紫外線の透過率を有するものであることが好ましい。上記波長領域の紫外線に対する透過率が上記範囲に満たないと、本工程によって紫外線を照射しても紫外線硬化性樹脂組成物の硬化が不十分となり、上記反射防止フィルム製造用金型より剥離することが困難となる可能性を有するからである。
【0135】
(2)光透過性基板
本工程に用いられる光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有するものであり、反射防止層を支持することができるものである。
【0136】
本発明に用いられる光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有することにより、本発明によって製造される反射防止フィルムの使用時に紫外線による劣化を防ぐことが可能となる。
【0137】
本発明に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、紫外線吸収剤を含有することができ、本発明によって製造される反射防止フィルムの他の構成層を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、上記紫外線吸収剤としては、一般的なものを使用することができるが、例えば、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものを用いることができる。
【0138】
(3)ハードコート層の形成方法
本工程におけるハードコート層の形成方法としては、上述したハードコート層を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の形成方法を用いることができる。
【0139】
3.反射防止層形成用層形成工程
本発明における反射防止層形成用層形成工程について説明する。本発明における反射防止層形成用層形成工程は、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上述した紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する工程である。
【0140】
(1)反射防止層形成用層
本工程によって形成される反射防止層形成用層は、ハードコート層上に形成されるものであり、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記紫外線硬化性樹脂組成物から形成されるものである。
なお、上記反射防止層形成用層は、後述する反射防止層形成工程中の第1硬化工程および第2硬化工程により、紫外線を照射され硬化されることによって、反射防止層となるものである。
【0141】
(2)反射防止フィルム製造用金型
次に、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型について説明する。本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金属基体と、上記金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜を備える反射防止フィルム製造用金型であって、上記微細孔の開口部に深さが60nm〜2000nmの範囲内であるテーパー形状を有するもの等を挙げることができる。
【0142】
このような反射防止フィルム製造用金型について、図面を参照しながら説明する。図11は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。図11に例示する反射防止フィルム製造用金型20は、金属基体11と、金属基体11の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜11’とを備えており、微細孔の開口部に、深さDが所定の範囲内であるテーパー形状を有するものである。
【0143】
また、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の微細孔の有するテーパー角度としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型可能となるものであれば特に限定されるものではなく、製造される反射防止フィルムにおける反射防止層に応じて適宜設定されるものである。
ここで、図11に例示するように、微細孔の縦断面での側壁が直線状である場合、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度は、上記側壁を近似する直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、θ3で示されるものである。
さらに、このようなテーパー角度としては、図12に例示するように、微細孔の縦断面での側壁が曲線状である場合、微細孔の開口表面の外周上の点および微細孔におけるテーパー形状の最深部の横断面からなる面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、θ4で示されるものである。
なお、図12は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図であり、説明していない記号は、上記図11と同様のものである。
【0144】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の微細孔の形状としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型可能なものであれば特に限定されるものではなく、製造される反射防止フィルムにおける反射防止層の形状に応じて、適宜周期、深さ、間隔を選択できるものである。
なお、上記反射防止フィルム製造用金型の周期、深さ、間隔については、図13におけるP2、Q2、R2で示されるものである。
【0145】
本発明における反射防止フィルム製造用金型に用いられる金属基体および金属酸化膜としては、所望の反射防止フィルム製造用金型を形成できるものであれば特に限定されるものではない。
【0146】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の転写率としては、反射防止フィルム製造時に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物の粘度および圧力に応じて適宜調整されるものであり、通常、50%以上となるものであれば特に限定されるものではない。
すなわち、本工程における反射防止フィルム製造用金型の上記転写率が100%でなくとも、本発明によって製造される反射防止フィルムとして用いられる際に十分な物性を有する微細凹凸パターンが得られる程度に、微細孔の形状を紫外線硬化性樹脂組成物に賦型することができるものである。したがって、上記反射防止フィルム製造用金型の微細孔に入り込んだ紫外線硬化性樹脂組成物の先端部分には、微細孔の底面、側壁、または底面および側壁と接触しない部分が発生する可能性を有するものである。
ここで、転写率とは、反射防止フィルム製造用金型における微細孔の深さに対する紫外線硬化性樹脂組成物の入り込む深さの比率をいう。紫外線硬化性樹脂組成物の入り込む深さは、成型品である反射防止フィルムにおける凸部の高さと同じであるため、転写率とは、微細孔の深さに対する反射防止フィルムにおける凸部の高さの比率となる。
【0147】
このような反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、所望の反射防止フィルム製造用金型を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程と、を順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する微細孔形成工程を有する製造方法を挙げることができる。
【0148】
上述したような反射防止フィルム製造用金型の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図14(a)〜(e)は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。図14(a)〜(e)に例示するように、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、金属基体11を用い(図14(a))、金属基体11を対象として微細孔形成工程を実施することにより(図14(b)〜図14(d))、金属基体11の表面に微細孔が形成された構成を有する反射防止フィルム製造用金型20を製造する方法である(図14(e))。
ここで、上記微細孔形成工程は、金属基体11を用い(図14(a))、陽極酸化法によって金属基体11の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜11’を形成する陽極酸化工程(図14(b))と、金属酸化膜11’をエッチングすることにより微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程(図14(c))と、金属酸化膜11’を第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程(図14(d))とを順次繰り返し実施することによって、金属基体11の表面に微細孔を形成するものである。
【0149】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、少なくとも陽極酸化工程、第1エッチング工程、および第2エッチング工程を有する微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられても良いものである。
【0150】
(3)反射防止層形成用層の形成方法
本工程における反射防止層形成用層の形成方法としては、反射防止フィルム製造用金型を用いて、硬化することによって反射防止層となる反射防止層形成用層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、以下の3つの態様を挙げることができる。
【0151】
(a)第1態様
まず、本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第1態様について説明する。本工程の反射防止フィルムの製造方法の第1態様は、上記反射防止フィルム製造用金型を用い、上記反射防止フィルム製造用金型に紫外線硬化性樹脂組成物を充填する充填工程と、上記反射防止フィルム製造用金型に充填された上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層上に、ハードコート層を形成した光透過性基板を、上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層が対向するように配置する配置工程と、上記反射防止層形成用層と上記ハードコート層とが接した状態で、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷する圧力負荷工程と、を有する製造方法である。
以下、各工程について説明する。
【0152】
(i)充填工程
本態様における充填工程は、反射防止フィルム製造用金型を用い、上記反射防止フィルム製造用金型に紫外線硬化性樹脂組成物を充填する工程である。
【0153】
(ii)配置工程
本態様における配置工程は、上記反射防止フィルム製造用金型に充填された上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層上に、ハードコート層を形成した光透過性基板を、上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層が対向するように配置する工程である。
【0154】
(iii)圧力負荷工程
本態様における圧力負荷工程は、上記反射防止層形成用層と上記ハードコート層とが接した状態で、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷する工程である。
なお、上記反射防止層形成用層としては、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を有するものであり、後述する硬化工程によって反射防止層となるものである。
【0155】
本工程における圧力としては、本態様における反射防止層形成用層に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記反射防止層形成用層および上記反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の形状を上記反射防止層形成用層にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、後述する紫外線硬化性樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、1.0N/cm〜50N/cmの範囲内であることが好ましく、2.5N/cm〜40N/cmの範囲内であることがより好ましく、5.0N/cm〜25N/cmの範囲内であることが特に好ましい。
上記圧力が上記範囲より小さい場合、上記反射防止層形成用層が上記反射防止フィルム製造用金型に充分に入り込まず、上記微細凹凸における凸部の高さが充分とならない恐れがあるからであり、また一方、上記範囲より大きい場合、上記反射防止層形成用層が上記反射防止フィルム製造用金型に入り込み過ぎて、反射防止フィルム製造用金型から抜けなくなる恐れがあるからである。
【0156】
本工程において、上記圧力を負荷する方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、インジェクションプレス、ベルトプレス方式、スリーブタッチ方式、弾性金属ロールによるロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
【0157】
(b)第2態様
本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第2態様は、光透過性基板上に形成されたハードコート層上に、紫外性硬化性樹脂組成物を塗工することにより上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成する膜形成工程と、上記反射防止フィルム製造用金型を上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型して反射防止層形成用層を形成する賦型工程と、を有する製造方法である。本発明の反射防止フィルムが長尺状、もしくはバッチ状である場合、通常、本態様の製造方法が用いられる。
以下、第2態様の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0158】
(i)膜形成工程
本態様における膜形成工程は、光透過性基板上に形成されたハードコート層上に、紫外線硬化性樹脂組成物を塗工することにより上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成する工程である。
【0159】
本態様における光透過性基板、ハードコート層、および紫外線硬化性樹脂組成物については、第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0160】
本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、光透過性基板上に均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法等公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
【0161】
(ii)賦型工程
本態様における賦型工程は、上記反射防止フィルム製造用金型を上記紫外線硬化性樹脂組成物側からなる膜側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型して反射防止層形成用層を形成する工程である。
本工程により、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0162】
本工程における圧力およびその負荷方法については、上記第1態様の圧力負荷工程に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、上記第1態様と同様のものを好適に用いることができる。なお、反射防止フィルム製造用金型は平板状、ロール状、ベルト状のもの等を用いることができる。
【0163】
(c)第3態様
本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第3態様は、上述した紫外線硬化性樹脂組成物と、樹脂を含有するハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しまたは溶解共押出しする共押出し工程と、上記反射防止フィルム製造用金型を紫外線硬化性樹脂組成物側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、共押出しされた上記紫外線硬化性樹脂組成物およびハードコート層形成用組成物から構成される積層体の上記紫外線硬化性樹脂組成物側に上記微細凹凸を賦型し、反射防止層形成用層を有する積層体を形成する賦型工程と、を有する製造方法である。
以下、第3態様の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0164】
(i)共押出し工程
本態様における共押出し工程は、紫外線硬化性樹脂組成物と、樹脂を含有するハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しまたは溶解共押出しする工程である。
【0165】
本態様に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物については、上記第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。
一方、本態様に用いられるハードコート層形成用組成物は、少なくとも樹脂を含有するものである。本態様に用いられる樹脂としては、光透過性基板を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「A.反射防止フィルム」の項に記載した樹脂を好適に用いることができる。
また、本態様に用いられる上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層形成用組成物は、同じ材料または同一樹脂の変性物から構成されるものであっても良い。
【0166】
本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しする方法としては、例えば、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とをそれぞれガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度範囲内で熱溶融させた状態で準備し、多層Tダイを用いて押し出す方法等が挙げられる。この場合、Tダイの中で多層化することもでき、単層Tダイを多列に並べ、溶融状態の上記ハードコート層形成用組成物を塗工した上に、溶融状態の上記紫外線硬化性樹脂組成物を積層することもできる。
また、本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とを溶解共押出しする方法としては、例えば、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とをそれぞれ液体の状態で準備し、多層塗工用ダイヘッドに供給した後、金属や樹脂製ベルトあるいはロールに塗工し、乾燥して被膜化する方法等を挙げることができる。この場合、ダイヘッドの中で多層化することもでき、単層塗工用ダイヘッドを多列に並べ、溶解状態の上記ハードコート層形成用組成物を塗工した上に、溶解状態の上記紫外線硬化性樹脂組成物を積層することもできる。
液体状態にする方法としては、固形物100%の低分子モノマー(例えば、アクリル)に重合開始剤を添加した溶液を用いる方法等がある。
【0167】
本工程においては、上記ハードコート層形成用組成物を上記紫外線硬化性樹脂組成物で挟むように溶融共押出しまたは溶解共押出しを行っても良い。
【0168】
(ii)賦型工程
本態様における賦型工程は、上記反射防止フィルム製造用金型を紫外線硬化性樹脂組成物側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより共押出しされた上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層形成用組成物からなる積層体の上記紫外線硬化性樹脂組成物側に上記微細凹凸を賦型し、反射防止層形成用層を有する積層体を形成する工程である。
本工程により、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0169】
本工程における圧力およびその負荷方法については、上記第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、本態様に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、上記第1態様と同様のものを好適に用いることができる。なお、反射防止フィルム製造用金型は平板状、ロール状、ベルト状のものを用いることができる。
【0170】
4.反射防止層形成工程
本発明における反射防止層形成工程について説明する。本発明における反射防止層形成工程は、反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程および、上記第1硬化工程後に、反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する工程である。
以下、本工程における第1硬化工程および第2硬化工程について説明する。
【0171】
(1)第1硬化工程
まず、本発明における第1硬化工程について説明する。本発明における第1硬化工程は、上記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する工程である。
【0172】
本工程によって形成される紫外線硬化性樹脂の反応率としては、紫外線照射後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離することができる程度に、反射防止層形成用層が硬化および賦型されているものであれば特に限定されるものではないが、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
上記反応率が、上記範囲に満たない場合、紫外線硬化性樹脂の硬化および賦型が不十分となり、反射防止フィルム製造用金型からの反射防止層の剥離が困難となる可能性を有するからである。また、反射防止層の表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
【0173】
(2)第2硬化工程
次に、本発明における第2硬化工程について説明する。本発明における第2硬化工程は、上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する工程である。
【0174】
本工程によって形成される紫外線硬化性樹脂の反応率としては、紫外線照射後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離することができる程度に、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化および賦型されているものであれば特に限定されるものではなく、具体的には60%以上であり、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
上記反応率が、上記範囲に満たない場合、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化および賦型が不十分となり、反射防止フィルム製造用金型からの剥離が困難となる可能性を有するからである。また、反射防止層の表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
【0175】
5.その他の工程
本発明は、少なくとも上述した紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、ハードコート層形成工程、反射防止層形成用層形成工程、および反射防止層形成工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の工程を有していても良く、例えば、剥離工程等を挙げることができる。
本発明における剥離工程は、硬化された反射防止層形成用層および反射防止層形成用層を有する積層体、すなわち、反射防止層および反射防止層−ハードコート層積層体から上記反射防止フィルム製造用金型を剥離する工程である。
上記剥離工程における剥離方法としては、反射防止層および反射防止層−ハードコート層積層体を傷つけることなく上記反射防止フィルム製造用金型から剥離できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0176】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0177】
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
【0178】
[実施例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
押出しされた厚さ20mmのアルミパイプ(純度99%)の表面に、第1平滑層として厚さ10μmのイオウ含有ニッケルメッキ層を形成した。次に、第1平滑層上に、第2平滑層として厚さ40μmのクロムメッキ層を形成した。その後研磨を行い、微細孔形成後に、隣接する微細孔の開口表面同士の段差(以下、小さいうねりと称して説明する場合がある。)として表面粗さRz=30nmとなるように仕上げた後、スパッタ法により、厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、電解液である0.02Mシュウ酸水溶液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、金属基体に陽極酸化を施した。その後、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で30秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返して合計5回追加実施した。これにより、アルミシリンダー上に金属酸化膜である陽極酸化アルミナ膜が形成された。次に、フッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0179】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含む溶剤含有ハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ12μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤8%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ15μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0180】
[実施例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
厚さ200μmのニッケル製スリーブの表面に、実施例1と同様に、小さいうねりとして表面粗さRz=60nmとなるように研磨した。その後、微細孔形成後に500nm以上離れた微細孔の開口表面同士の段差(以下、大きいうねりと称して説明する場合がある。)が1.5μmとなるように、電着法により中間層として厚さ15μmのアクリルメラミン層を形成した。さらに中間層上に、厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、電解液である0.03Mシュウ酸水溶液中で、化成電圧55V、20℃の条件にて20秒間、金属基体に陽極酸化を施した。その後、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で10秒間エッチング処理を行い、続いて第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で10分間孔径拡大処理を行った。さらに第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返し、これらを合計4回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜上に金属酸化膜である陽極酸化アルミナ膜が形成された。次に、フッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0181】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)に対し、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤として、トルエン40重量部およびシクロヘキサノン10重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度1000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ10μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、脂肪酸アマイド系潤滑剤10%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を調製し、厚さ5μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、さらに反射防止層側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射し、反射防止フィルムを得た。
【0182】
[実施例3]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
押出しされた厚さ20mmのアルミパイプ(純度99%)の表面を研磨し、小さいうねりとして表面粗さRz=100nmとなるように仕上げた。その後、スパッタ法により二酸化ケイ素からなる厚さ500Åの中間層を形成し、さらに中間層上にスパッタ法により厚さ0.5μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、実施例1と同様に、第1エッチング処理および第2エッチング処理を行い、反射防止フィルム製造用金型を形成した。
【0183】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ125μmのアクリルフィルム(三菱レイヨン社製、屈折率1.49)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)に対し、アクリルに浸透する溶剤として、トルエン100重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度200mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ20μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、シリコーンオイル潤滑剤5%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ15μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0184】
[実施例4]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
厚さ150μmのステンレス製スリーブの表面に研磨を行い小さいうねりとして表面粗さRz=100nmとなるように仕上げた。その後、スパッタ法により酸化タンタルからなる厚さ1000Åの中間層を形成し、さらに中間層上にスパッタ法により厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、上記実施例1と同様に、上記金属基体に陽極酸化を施した後、第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返して合計5回追加実施した。その後、上記実施例1と同様にしてフッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を形成した。
【0185】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)に対し、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤として、トルエン40重量部およびシクロヘキサノン10重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度1000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ25μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、脂肪酸アマイド系潤滑剤10%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ5μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、さらに反射防止層側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射し、反射防止フィルムを得た。
【0186】
[比較例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0187】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ1.5μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ28μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0188】
[比較例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0189】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ5.0μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ12μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0190】
[比較例3]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0191】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ12μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ2μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0192】
[評価1]
(反射防止フィルム製造用金型における金属基体および金属酸化膜の密着性)
上記実施例1〜実施例4および、比較例1〜比較例3において作製された反射防止フィルム製造用金型における金属基体、および微細孔を有する金属酸化膜の密着性について、以下の方法で評価した。
反射防止フィルムを反射防止フィルム製造用金型から剥離した後、反射防止フィルム製造用金型の表面と反射防止フィルムの反射防止層側との両方をビデオライトの光を用いて目視で観察し、金属酸化膜の剥れがないかどうかを確認した。
【0193】
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型表面の観察)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の表面を観察し、得られた画像から、ガルバニック反応による外観不良の有無を観察した。
【0194】
(目視による外観観察)
さらに、上記反射防止フィルム製造用金型表面を蛍光灯の下で目視観察を行い、境界が明確に分かれていない色ムラやまだら模様等の有無を確認した。
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型断面の観察)
集束イオンビームにより反射防止フィルム製造用金型を垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の断面を観察し、得られた画像から、微細孔の孔径、周期、深さ、および開口部の形状を測定・観察した。
【0195】
上述した実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例3の反射防止フィルム製造用金型においては、金属基体と金属酸化膜との密着性は問題なく、ガルバニック反応による外観不良も認められなかった。また、目視による外観観察においても、外観不良は認められなかった。
また、走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの断面の観察を行ったところ、実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3によって製造された反射防止フィルム製造用金型は、テーパー形状が形成された第1微細孔の奥に、第2微細孔が形成された開口部を有していることが確認された。また、第1微細孔の孔径、周期、深さ(テーパー形状の深さ)、テーパー角度、開口部全体の深さ、第2微細孔の孔径をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
[評価2]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムのハードコート層および反射防止層の膜厚の観察)
ガラス切片を用い反射防止フィルムを垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルムの断面を観察し、得られた画像から、反射防止フィルムのハードコート層および反射防止層の膜厚を測定、観察した。
上述した実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3の反射防止フィルムにおけるハードコート層および反射防止層の膜厚を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
表2の結果より、実施例1〜実施例4の各反射防止フィルムは、本発明の好ましい範囲となる膜厚を有するハードコート層および反射防止層が形成されていることが確認できた。一方、比較例1では、ハートコート層および反射防止層の両方の膜厚が本発明の好ましい範囲となっておらず、比較例2では、ハードコート層のみの膜厚、比較例3では反射防止層のみの膜厚がそれぞれ好ましい範囲外となることが確認できた。
【0200】
(紫外線硬化性樹脂の反応率)
日本電子社製赤外分光光度計FT/IR−410を用いて、1639cm−1のC=C結合による吸光度を測定し、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率を算出した。
上述した実施例1の反射防止フィルムにおける反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率は90%となり、実施例2では94%、実施例3では70%、実施例4では95%であった。また一方、比較例1、比較例2、比較例3における上記反応率としては、すべて50%であった。
なお、反射防止層形成用層に2回紫外線照射を行って反射防止層を形成する実施例2および実施例4では、特に反応率が高くなることが確認できた。
【0201】
(鉛筆硬度測定)
JIS K 5400 8.4に基づいて、反射防止フィルムの硬度を測定した。結果を下記表3に示す。
【0202】
(スチールウール耐性)
#0000のスチールウールを用いて、10往復摩擦試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態で、目視による傷の有無を確認した際に傷が10本以下となる最大荷重の値を算出した。その結果を下記表3に示す。
【0203】
【表3】
【0204】
表3の結果から、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムでは、HB以上の鉛筆硬度を示すものとなり、特に実施例1ではHを示した。また、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムにおいて、スチールウール耐性は50g/100mm2以上となり、さらに実施例2〜実施例4では100g/100mm2以上という特に高いスチールウール耐性を確認できた。この結果から、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムは優れた鉛筆硬度およびスチールウール耐性を発揮することができるため、高硬度であり、且つ耐擦傷性に優れた反射防止フィルムであることが示唆される。
一方、比較例1〜比較例3の反射防止フィルムにおける鉛筆硬度としては、比較例1、比較例2では鉛筆硬度がB未満であり、比較例3がBと示された。また、比較例1〜比較例3におけるスチールウール耐性としては、比較例1および比較例2では、10g/100mm2となり、比較例3では10g/100mm2未満となることが確認できた。この結果より、鉛筆硬度およびスチールウール耐性の両方を十分とすることができず、不十分な硬度および耐擦傷性を有する反射防止フィルムとなることが示唆された。
【0205】
[評価3]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの表面および断面の観察)
日立ハイテクノロジーズ性走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。また、ガラス切片で断面を製作し、上記走査型電子顕微鏡を用いて反射防止フィルムの断面を観察し、得られた画像から、微細凹凸における凸部の周期、凸部の高さ、本体部および先端部の形状を観察した。
【0206】
(反射防止フィルムの反射率)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用いて、反射防止フィルム表面への5°正反射率を測定した。
【0207】
(反射防止フィルムのスティッキング)
反射防止フィルムを水に浸漬させ、取り出した後、24時間風乾させた。反射防止フィルム表面に水滴が残っていないことを確認し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
【0208】
(反射防止フィルムの布拭き性)
反射防止フィルムを、ネルで50g/cm2の荷重で擦り、12時間放置後、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、構造体の破損状態を確認した。
【0209】
(反射防止層とハードコート層との密着性)
JIS K 5400記載の碁盤目試験(1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロファンテープ(ニチバン社製、(登録商標))で剥離する試験)を行った。具体的には、反射防止フィルムの反射防止層側の面に1mm間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm格の碁盤目を100個作り、この上にセロファンテープを貼付け、90°で素早く剥がし、反射防止層が剥れずに残った碁盤目の数を数えた。
評価方法としては、セロファンテープを常に新しいものにして5回剥離試験を行い、1回でも50個以上の碁盤目で反射防止層が剥離した場合は、実用性がないと判断した。
【0210】
(干渉縞の有無)
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用いて、反射防止フィルムにおける干渉縞の有無を目視にて検査した。干渉縞の発生が全く見えないもの、あるいはぼんやり見えるものは問題ないと判断し、はっきり見えるものを不良とした。
【0211】
(溶剤浸透層の有無)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500に付属するエネルギー分散型X線検出器を用いて、反射防止フィルムの成分分析を行い、溶剤浸透層が光透過性基板に形成されているか否かを確認した。
【0212】
(反射防止フィルムの外観)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼付け、目視にて確認した。さらに、40℃、湿度90%RHの環境下で120時間放置した後のヘイズ値の変化、および外観について観察した。
【0213】
実施例1の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。5°正反射率は0.02%であった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0214】
実施例2の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が130nm、凸部の高さが298nm、本体部が曲率を持たないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が80°、先端部の形状が半径9nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.01%であった。スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0215】
実施例3の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが180nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径6nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.03%であった。スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0216】
実施例4の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。5°正反射率は0.02%であった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0217】
比較例1、比較例2、比較例3の各反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、一部損傷しており十分な離型性ではなかった。また、表面にベタつきがあり、布拭きによる損傷と、反射防止層が布に削り取られる現象とが発生し、実用に耐えられなかった。
また、5°正反射率は0.02%であり、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇が確認でき、また潤滑剤および重合開始剤のブリードアウトの発生が確認できた。
【符号の説明】
【0218】
1 … 基材
2 … 反射防止層
2’ … 反射防止層形成用層
2’’ … 紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜
3 … 基底部
4 … 微細凹凸
4a … 本体部
4b … 先端部
5 … ハードコート層
6 … プライマー層
7 … 粘着層
8 … 保護層
10 … 反射防止フィルム
10’ … 積層体
11 … 金属基体
11’ … 金属酸化膜
20 … 反射防止フィルム製造用金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示媒体表面において外光の反射を防止することが可能であり、且つ、機械強度、光学的性質に優れる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絵画、印刷媒体、ディスプレイ等の各種表示媒体においては、近年、画像、文字、数字等の表示品質を向上させることを目的とした種々の研究がなされている。なかでも、光の反射防止技術は、各種表示媒体において共通する重要な技術的課題の一つとして広く検討されている。
【0003】
従来、このような反射防止技術としては、例えば、低屈折率の物質からなる薄膜を単層で表面に形成することにより、単一波長の光に対して有効な反射防止能を発揮する方法や、低屈折率物質および高屈折率物質の薄膜を交互に形成した複数層を形成することにより、より広い波長域を有する光に対しても反射防止能を発揮する方法等が採用されてきた。なかでも、複数層を用いる方法は、その層数を増加させることによって、より広い波長域を有する光に対しても反射防止能を発揮できる点において有用であったことから、様々な用途において実用化が図られてきた。
【0004】
しかしながら、上述したような複数層を形成する方法においても、反射防止効果に優れた複数層を形成するために真空蒸着法等による成膜工程が必要となることから、製造効率や設備等における問題点が指摘されていた。
特に、周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては、一層高い反射防止機能が要求されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があることから、製造コストにおける課題も生じていた。
また、技術的観点からも、光の干渉現象を利用するため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響されることから、所望の反射防止効果を得ることが困難であるという問題点が指摘されていた。
【0005】
このような問題点に対して、凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを表面に形成することによって反射防止を図る技術が開示されている(特許文献1〜6参照。)。このような方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。このようなモスアイ構造を用いた反射防止技術は、簡易な方法によって広い波長領域の光の反射を防止できる点において有用なものである。そのため、ディスプレイの分野においてもその実用化が検討されている。
なお、上記モスアイ構造に用いられる微細凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形等の錐形体や円柱形を含む形状で先端が尖っている形状が一般的である。
【0006】
しかしながら、円錐形等の錐形体のように凸部の先端がとがった形状の微細凹凸パターンを上記モスアイ構造として用いる場合、先端が細いため割れやすく、微細凹凸パターンが破壊されやすいという問題点が指摘されていた。
また、表示媒体に上記モスアイ構造を形成する場合、その形成位置は、表示媒体表面となることから、モスアイ構造に優れた耐擦傷性を付与することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−517319号公報
【特許文献2】特開2004−205990号公報
【特許文献3】特開2004−287238号公報
【特許文献4】特開2001−272505号公報
【特許文献5】特開2002−286906号公報
【特許文献6】国際公開第2006/059686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、微細凹凸を備える反射防止層を有する反射防止フィルムでは、従来の微細凹凸を有していない反射防止フィルムと同様に、硬度を高くすることにより反射防止フィルムの耐擦傷性が向上しないことが新たに確認された。
すなわち、従来のモスアイ構造を有していない反射防止フィルムでは、鉛筆硬度を高くすることでは、同時にスチールウール耐性も良好となり、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上したが、モスアイ構造を有する反射防止フィルムでは、鉛筆硬度を高くすることにより、スチールウール耐性が低下してしまい、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上しないといった問題点が見出された。
【0009】
また、耐擦傷性を向上させる方法としては、一般的に潤滑剤を含有させて形成する方法が知られていた。しかしながら、長期に保管される場合、または高温・高湿度の環境下に晒される場合等においては、反射防止層に潤滑剤を含有させることにより、反射防止層表面に潤滑剤が浮き出し(ブリードアウト現象)、屈折率の異なる層が形成されるため、反射率が上昇し、また、ヘイズ値が変化する。さらに、ブリードアウト現象により浮き出した潤滑剤が凝集(2次凝集)し、表面に目視可能な凝固物が形成される可能性を有する。そのため、反射防止フィルムが白濁化し、光学的特性が低下してしまうという問題点も見出された。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり。良好な鉛筆硬度およびスチールウール耐性を発揮する微細凹凸パターンを備える反射防止層を有しており、且つ、上記反射防止層が高い反応率で形成されることにより、耐擦傷性に優れた良好な機械強度、および反射率の増加およびヘイズ値の変化を抑制可能な光学的特性を有する反射防止フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、を有する反射防止フィルムであって、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0012】
本発明によれば、ハードコート層および反射防止層の膜厚を制御し、また、反射防止層が潤滑剤を含有することにより、鉛筆硬度およびスチールウール耐性を良好なものとすることができる。そのため、耐擦傷性に優れ、良好な機械強度を発揮することが可能となる。
また、紫外線硬化性樹脂の反応率を60%以上とすることにより、反射防止層内における潤滑剤の挙動の自由度を抑制し、反射防止層内に含有される潤滑剤が表面に浮き出すことを抑制することができる。そのため、反射率の上昇およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を抑制することができる。
【0013】
また、上記発明においては、上記反射防止層が、上記ハードコート層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸と、を備え、上記微細凹凸における凸部が、上記ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部と、から構成されることが好ましい。
反射防止層の微細凹凸における凸部が、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えていることから、一般的な円錐形等の先端が尖っている形状を有する構造に比べて、微細凹凸が破壊されにくく耐擦傷性の高い反射防止フィルムとすることができる。さらに、良好な反射防止効果を発揮することができ、また、スティッキングに起因する反射防止機能の低下やヘイズの上昇等を防ぐことができるため、光学的特性において優れた反射防止フィルムとすることができる。
なお、スティッキングとは、表面張力が大きい液体がモスアイ構造内に入り込み、それが蒸発する際に、隣同士の構造体が、接触あるいはくっつきあう現象を指すものである。
【0014】
また本発明は、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、上記光透過性基板上に上記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、上記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、を有する反射防止フィルムの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、反射防止層形成工程が、第1硬化工程および第2硬化工程を有することにより、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板を用いた場合でも、反射防止層を所望の形状に賦型、硬化することができる。また、第1硬化工程後に、第2硬化工程において反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射することにより、反応率の高い紫外線硬化性樹脂とすることが可能となり、機械強度および光学的特性に優れた反射防止フィルムを製造することが可能となる。
【0016】
また、上記発明においては、上記紫外線硬化性樹脂組成物が、上記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始することが可能な重合開始剤を有することが好ましい。紫外線吸収剤に吸収されない波長領域の紫外線により、紫外線硬化性樹脂組成物中における重合反応を開始することができるからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、反射防止層の膜厚を制御し、且つ反応防止層に潤滑剤を含有させ、高い反応率で形成されることにより、耐擦傷性に優れる良好な機械強度、および長期間保管された場合や、高温、高湿度の環境下に晒された場合等においても表面の白濁化を抑制可能とする良好な光学的特性を有し、優れた反射防止効果を発揮するという作用効果を奏するものである。また、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、より高い反応率で形成された反射防止層を有し、機械強度および光学的特性に優れた反射防止フィルムを得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸の形状を説明する概略図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。
【図7】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の反射防止フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。
【図14】本発明の反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の反射防止フィルムおよびその製造方法について説明する。
【0020】
A.反射防止フィルム
まず、本発明の反射防止フィルムについて説明する。本発明の反射防止フィルムは、光透過性基板と、上記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、を有する反射防止フィルムであって、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、反射防止フィルム10は、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成されたハードコート層5と、ハードコート層5上に、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層2と、を有している。また、反射防止層2は、ハードコート層5上に形成された基底部3と、基底部3上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸4とを有している。
また、図2は図1に示す本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、基底部3上に形成される微細凹凸4における凸部は、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部4aと、本体部4aの頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部4bとから構成されている。
さらに、図3は、本発明における反射防止フィルムにおける反射防止層の他の例を示す概略断面図であり、図3における各符号については、図2と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0022】
本発明によれば、ハードコート層および反射防止層の膜厚を制御し、また、反射防止層が潤滑剤を含有することにより、鉛筆硬度およびスチールウール耐性を良好なものとすることができる。そのため、耐擦傷性に優れ、良好な機械強度を発揮することが可能となる。
また、紫外線硬化性樹脂の反応率を60%以上とすることにより、反射防止層内における潤滑剤の挙動の自由度を抑制し、反射防止層内に含有される潤滑剤が表面に浮き出すことを防止可能となる。そのため、反射率の上昇およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を抑制することができる。
【0023】
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも光透過性基板、ハードコート層、および反射防止層を有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有していても良いものである。
以下、本発明の反射防止フィルムにおける各構成について説明する。
【0024】
1.反射防止層
まず、本発明における反射防止層について説明する。本発明に用いられる反射防止層は、ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状(以下、「モスアイ構造」と称する場合がある。)を表面に備え、潤滑剤を含有するものである。また、本発明における反射防止層は、上記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であるものである。
【0025】
(1)反射防止層の形成材料
まず、本発明における反射防止層の形成材料について説明する。
本発明における反射防止層の形成材料としては、可視光領域の波長以下の周期となる凹凸形状を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂によって構成されるものである。
紫外線硬化性樹脂を用いることによって、高精度に微細凹凸を作製することができ、反射防止層に良好な反射防止機能を付与することができ、また汎用性が高いという利点を有する。
【0026】
本発明における反射防止層を構成する紫外性硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム等を挙げることができ、中でも後述する「B.反射防止フィルムの製造方法」の項に記載する紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線により硬化して得られるものを好適に用いることができる。
【0027】
また、本発明における反射防止層は、潤滑剤を含有するものである。
潤滑剤が反射防止層に含有されることにより、反射防止層表面の潤滑性を向上させることができ、耐擦傷性を向上させることができるからである。また、上記潤滑剤は、上記反射防止層表面の潤滑性を向上させることにより、上記反射防止層の離型性を向上させるためにも用いられる。
上記潤滑剤としては、一般的なものを用いることができ、具体例としては、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系等を挙げることができる。なかでも、フッ素系樹脂、脂肪酸アマイド系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系等を好適に用いることができる。
【0028】
本発明における反射防止層中の潤滑剤の含有量としては、反射防止層に用いられる紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内であることがより好ましく、1.0重量部〜8.0重量部の範囲内であることが特に好ましい。
上記潤滑剤の含有量が上記範囲に満たない場合、本発明における反射防止層に所望の耐擦傷性および離型性を付与することが困難となる可能性を有するからである。また一方、上記潤滑剤の含有量が上記範囲を超える場合、上記反射防止層表面に浮き出すブリードアウト現象が生じる恐れがあり、表面が白濁化した反射防止層となる可能性を有するからである。また、上記反射防止層を形成することが困難となる可能性を有するからである。
【0029】
また、本発明における反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率としては、60%以上であり、上述した潤滑剤が反射防止層の表面に浮き出さない程度に、潤滑剤の自由度を抑制可能な反射防止層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂の反応率が、上記範囲より低い場合、反射防止層を所望の形状に賦型した後、金型からの剥離が困難となる可能性を有するからである。また、表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
また、紫外線硬化性樹脂から構成される反射防止層内に含有される潤滑剤の挙動の自由度が増加することにより、反射防止層表面に潤滑剤が浮き出す、いわゆるブリードアウト現象により、反射防止層における反射率の増加、およびヘイズの上昇に起因する表面の白濁化等の光学的特性の低下を生じる可能性を有するからである。
さらに、反応率を上げることにより、潤滑剤のみでなく、同時に紫外線硬化性樹脂組成物中に含有される重合開始剤や、紫外線硬化性樹脂に添加される酸化防止剤、光安定化剤等の各種添加剤のブリードアウト性も抑制でき、光学的特性に優れた反射防止層とすることができるからである。
【0030】
ここで、反応率の測定方法としては、上記反射防止層を形成する際に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物中の反応性基の残存量を観測することにより求めることができる。このような反応性基の残存量を観測する方法としては、反応性基由来の分子振動を赤外線の吸収によって観測する方法等が挙げられ、具体的には、反応性基に帰属する炭素の二重結合(C=C)の伸縮振動の強度分布を測定する方法を好適に用いることができる。
例えば、紫外線硬化性樹脂組成物中に重合性不飽和結合を含むモノマーを有する場合、赤外線吸収スペクトルにおける波数1630cm−1付近に観察される、二重結合の伸縮振動を観察することで算出できる。その強度の初期値、およびモノマー由来の吸収強度の消失後の値を各々反応率0および100と仮定することで、反応率を算出することができる。
なお、上記赤外線吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定することができる。
【0031】
本発明における反射防止層に用いられる紫外線硬化性樹脂の透明度としては、可視光の全波長領域に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、なかでも85%以上であることがより好ましく、さらに90%以上であることが特に好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0032】
本発明に用いられる反射防止層としては、上述した紫外線硬化性樹脂、潤滑剤に加えて、必要に応じて任意の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、光安定化剤、炭酸ストロンチウム等の偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。具体的には、例えば、特開2009−230045号公報に記載されている以下の物質が挙げられる。
【0033】
<帯電防止剤(導電剤)>
帯電防止剤(導電剤)を添加することにより、反射防止層の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、且つ、紫外線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、あるいは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0034】
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、オリアズレン等;芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)等;複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソシアナフテン等;含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン等;混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、上述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体、これら導電性ポリマー誘導体等が挙げられる。取り分け、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、反射防止層の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、反射防止層中の帯電防止剤の含有量としては、0.01重量%〜50重量%程度であり、好ましくは0.1重量%〜30重量%程度である。上記数値範囲に調整することにより、反射防止層としての透明性を保ち、また反射防止機能に影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
【0036】
<低屈折率剤>
低屈折率剤を添加することにより、反射防止層の光学的特性を調整することが可能となる。低屈折率剤を添加した反射防止層の屈折率は、1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。低屈折率剤の好ましいものとしては、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率無機超微粒子(多孔質、中空等全ての種類の微粒子)、および低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物またはその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線で硬化する官能基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基等を一切持たないものである。
【0037】
<高屈折率剤/中屈折率剤>
高屈折率剤および中屈折率剤を添加することにより、上述した低屈折率剤と同様に、反射防止層の光学的特性を調整することが可能となる。また、高屈折率剤、中屈折率剤は、反射防止機能をさらに向上させるために用いられる。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.55〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.55〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
【0038】
これら屈折率剤としては、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)等が挙げられる。
【0039】
<レベリング剤>
レベリング剤は、反射防止層に、滑り性、防汚性および耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。従って、レベリング剤は防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤として機能するものである。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等が挙げられる。
【0040】
<防汚染剤>
防汚染剤は、反射防止層の最表面の汚れ防止を主目的とし、さらに反射防止層に耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
【0041】
<紫外線・赤外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0042】
<高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤>
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層で用いられる高硬度化剤、硬度調製剤、および流動性調整剤としては、通常、反射防止層で用いられるものであればいずれのものであっても良い。
【0043】
(2)反射防止層の構造
本発明における反射防止層は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備えるものである。また、上記反射防止層は、表面に後述する微細凹凸を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記ハードコート層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、凹凸形状からなる微細凹凸と、を備えるものであることが好ましい。
【0044】
また、本発明における反射防止層においては、微細凹凸および基底部は一体で形成されていても良く、別体で形成されていても良いが、一体で形成されていることがより好ましい。
微細凹凸および基底部が一体であることにより、後述する「5.反射防止フィルムの製造方法」の項で説明するように、簡便な方法で反射防止層の表面に微細凹凸を形成することが可能となるからである。
以下、微細凹凸および基底部について各々説明する。
【0045】
(i)微細凹凸
本発明における微細凹凸は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状からなるものであり、上記微細凹凸における凸部が、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されるものである。
以下、微細凹凸の各部について説明する。
【0046】
(a)本体部
まず、本発明における本体部について説明する。
本発明に用いられる本体部は、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状であるものである。
本発明においては、錐台形状の本体部を有しているため、良好な反射防止機能を有するとともに、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型等から抜けやすくなる。
ここで、反射防止フィルムの製造時に金型等から抜けにくい場合、本体部を形成するための樹脂が金型等の微細孔の中に残留するようになる。残留部分に相当する部分が転写された光透過性基板の表面は、反射防止機能を発現するための凹凸形状がない状態となり、反射防止機能を阻害する原因となる。
【0047】
また、本体部がテーパー状に立ち上がる錐台形状を有することで、一般的な錐形体等の形状に比べて、凹凸形状が破壊されにくくなるという利点を有することから、機械的強度が向上する。さらに、スティッキングが発生しにくくなることから、反射防止機能の低下およびヘイズの上昇等を抑制することができ、光学的特性に優れた反射防止フィルムとすることが可能となる。
【0048】
上記本体部の縦断面における基材に対するテーパー角度としては、テーパー状に立ち上がる錐台形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。
上記テーパー角度が上記範囲よりも大きいと、本体部が垂直に立ち上がる形状に近くなり、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型等から抜けにくくなる場合があり、また、良好な反射防止機能を示さない可能性があるからである。さらに、スティッキングが発生しやすくなる場合がある。一方、上記テーパー角度が上記範囲よりも小さいと、反射防止機能が低下し、反射率の波長依存性を受けやすくなり、さらに、上記本体部を形成することが困難となる場合があるからである。
なお、本発明における上記テーパー角度とは、本体部の縦断面での側面が直線状の場合、上記側面を近似する直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図2におけるθ1で表される角度である。
一方、本体部の縦断面での側面が曲線状の場合、本体部の頂面の外周上の点および本体部の底面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図3におけるθ2で表される角度である。
ここで、本体部の頂面は、微細凹凸における凸部の側面の曲率が大きく変化する部位の横断面からなる面とし、本体部の底面は、本体部と基底部とが接する面とする。
なお、本発明における上記テーパー角度は、本体部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー角度を測定し、その測定値の平均値とする。
【0049】
また、上記本体部の高さとしては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、適宜調整できるものである。ここで、上記本体部の高さが高いほど、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記高さが低いほど、長波長側の反射率が増加する傾向にある。
このようなことから、本発明における上記本体部の高さは、60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜750nmの範囲内であることがさらに好ましい。本体部の高さが上記範囲より高い場合、本体部が損壊しやすく、また、スティッキングが発生しやすくなる場合があり、本体部の高さが上記範囲より低い場合、上記微細凹凸を有する反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
本発明における上記本体部の高さとは、基底部表面から、本体部の頂面までの距離をいい、例えば、図2および図3においてHで表される距離である。なお、本発明における上記本体部の高さは、上述したテーパー角度と同様に、電子顕微鏡を用いて決定した平均値とする。
【0050】
上記本体部の頂面の径としては、上記本体部の底面の径よりも小さければ特に限定されるものではないが、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の頂面の径が上記範囲より小さい場合、機械強度が小さくなり、本体部が損傷しやすくなるからである。また、本体部の頂面の径が上記範囲より大きい場合、テーパーが小さくなるため、スティッキングを発生しやすくなったり、金型等から抜けにくくなったりするからである。なお、本発明における上記本体部の頂面の径は、上述した電子顕微鏡を用いた方法で決定した平均値とする。
【0051】
上記本体部の底面の径としては、上記本体部の頂面の径よりも大きければ特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の底面の径が小さくなると、隣り合う構造体の間が開き、構造体を形成していない部分が多くなるため、反射防止機能が低下する可能性を有するからである。なお、本発明における上記本体部の底面の径は、上述した電子顕微鏡を用いた方法で決定した平均値とする。
【0052】
上記本体部の頂面形状および底面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状等を挙げることができる。
【0053】
上記本体部の側面形状としては、上記本体部の縦断面において、直線状であっても良く、曲線状であっても良い。中でも、本発明においては、上記本体部が後述する先端部と連続的な曲面状の側面を形成することが好ましい。図3に例示するように、微細凹凸の凸部を釣鐘形状とすることができ、良好な反射防止機能を得ることができるからである。
以下、上記凸部が釣鐘形状であることにより反射防止機能が良好となる理由について、具体的に説明する。
【0054】
モスアイ構造が反射防止をする原理については、次のように考えられる。図4(a)に例示されるモスアイ構造体Xの頂点部付近の空間(擬似層a)の屈折率Nは、空気の屈折率を1、擬似層a中でモスアイ構造体Xが占める体積の割合をVm、モスアイ構造体Xを構成する樹脂の屈折率をNmとすると、下記の(1)式が成り立つ。
N=1×(1−Vm)+Nm×Vm (1)
すなわち、擬似層aの屈折率は、空気と樹脂との、それぞれの体積と屈折率とを考慮した加重平均として与えられる。擬似層b以降も、同様である。擬似層a〜擬似層kへと基材Yに近づくにつれ、擬似層の屈折率は大きくなるが、図4(b)に例示するように、錐形状の屈折率の変化量が曲線的に変化するのに対して、釣鐘形状の屈折率の変化量はほぼ直線的に変化する。これは、モスアイ構造体Xが占める体積の割合は、擬似層aから擬似層kまでの断面積の変化ととらえることができ、この断面積の変化は錐形状の場合、曲線的に変化し、釣鐘形状の場合、ほぼ直線的に変化するからである。そのため、釣鐘形状のモスアイ構造体Xは、錐形状のモスアイ構造体Xに比べて、基材Y近傍の屈折率の変化率が小さいという特徴がある。基材Y近傍の屈折率の変化率が小さい方が、空気と樹脂との屈折率が擬似的に小さくなり、反射率を小さくすることが可能となる。
また、本体部のテーパーが小さい場合、図4(b)に例示するように、擬似層kでの屈折率の変化量は小さいが、擬似層aから擬似層c部分での屈折率の変化量が大きくなるため、全体に白っぽくなる傾向がある。したがって、錐形状のモスアイ構造体Xおよびテーパーが小さい形状のモスアイ構造体Xよりも釣鐘形状のモスアイ構造体Xの方が、反射防止機能が優れている。
本発明においては、上記本体部のテーパー角度および上記先端部の曲率半径を適宜調整し、上記微細凹凸における凸部の釣鐘形状を規定することにより、上記擬似層の屈折率分布を最適化することができ、上記微細凹凸を光学的特性に優れたモスアイ構造とすることができる。
【0055】
(b)先端部
次に、本発明における先端部について説明する。
本発明に用いられる先端部は、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有するものである。本発明においては、上記先端部が曲面構造を有することにより、反射防止層における微細凹凸の凸部の最先端部が割れる等の不具合がなく、さらに、型抜き性に優れた微細凹凸とすることができる。
なお、上記先端部の曲面構造は、反射防止層に微細凹凸を形成する際の圧力、反射防止層を構成する樹脂の粘度等で制御することが可能である。
【0056】
上記先端部の形状としては、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造であれば特に限定されるものではない。本発明においては、中でも、略球面状であることが好ましく、その曲率半径としては、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜調整することができるものであり、例えば、本発明に用いられる本体部の頂面の径に対して、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.0倍〜2.0倍の範囲内であることがより好ましく、1.0倍〜1.5倍の範囲内であることがさらに好ましい。
先端部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、先端部が平らな形状に近くなるため、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射率が高くなり、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が低下する場合があるからである。
また、曲面構造は、図5(a)に例示するように、球面状であることが望ましいが、図5(b)〜(c)に例示するように、一部尖っている形状および/またはうねりがあっても良い。また、先端部の最先端部は本体部の頂面の中心にある必要はなく、中心からずれていても反射防止機能には変化はない。
なお、図5(a)〜(c)は、本発明における微細凹凸の先端部の一例を示す概略断面図である。
【0057】
また、上記先端部の高さ、すなわち、本体部の頂面から先端部の最先端部までの距離としては、上記微細凹凸を有する反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものである。
【0058】
(c)凸部
次に、本発明における凸部について説明する。
本発明に用いられる凸部は、上記先端部と上記本体部とから構成されるものであり、上記微細凹凸を有する反射防止層の反射防止機能は、上記凸部が形成された周期、高さ、間隔に依存する。
なお、上記凸部が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図6におけるP1、Q1、およびR1で示す通り、それぞれ隣接する凸部における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、凸部における先端部の頂部から本体部の底面までの距離、および隣接する凸部における本体部の底面の外周間の最短距離である。
ここで、図6は本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図であり、図6において説明していない符号については、図2と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0059】
上記凸部の周期としては、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、本発明に用いられる反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。
一方、周期が200nm以下となる場合においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本発明における上記凸部の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜250nmの範囲内であることがさらに好ましい。
上記凸部の周期が上記範囲よりも短い場合、個々の凸部の形状が極微小になることから、高精度で凸部を形成することが困難になる場合があるからである。また一方、上記凸部の周期が上記範囲よりも長い場合、本発明における反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
なお、本発明における上記凸部の周期は、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の周期を測定し、その測定値の平均値とする。
【0060】
上記凸部の高さについても、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記凸部の高さが高いほど、上記反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記凸部の高さが低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。
このようなことから、本発明における上記凸部の高さは、62nm〜1402nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1002nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜752nmの範囲内であることがさら好ましい。上記凸部の高さが上記範囲よりも高い場合、個々の凸部が損壊しやすくなってしまう可能性を有するからである。また一方、上記凸部の高さが上記範囲よりも低い場合、上記反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
なお、本発明における上記凸部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0061】
上記凸部の高さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
上記凸部の高さのばらつきが上記範囲よりも大きい場合、本発明における反射防止層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。また、凸部の頂点から構成される表面の機械強度が低下し、損傷を受けやすくなる。なお、上記凸部の高さのばらつきとは、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の高さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0062】
また、上記凸部が形成される間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部が形成された間隔としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。
なお、本発明における上記凸部の間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0063】
上記凸部の単位面積当たりの個数としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、50個/μm2以上であることが好ましく、60個/μm2以上であることがより好ましく、70個/μm2以上であることが特に好ましい。上記凸部の単位面積当たりの個数が50個/μm2未満の場合、ギラツキが発生し、反射防止機能が低下する。また、凸部の頂点から構成される表面の機械強度が低下し、損傷を受けやすくなる。
【0064】
なお、本発明においては、反射防止層が上記凸部以外の構造体を有していても良いが、反射防止層における上記凸部の個数の、反射防止層における構造体全体の個数に対する割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記割合が少ない場合、反射防止機能、スティッキング耐性および型抜け性が低下してしまうからである。
【0065】
上記凸部の360nm〜760nmの波長領域における入射角5°での正反射率は、0.5%以下であることが好ましく、0.005%〜0.3%の範囲内であることがより好ましく、0.005%〜0.1%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記凸部の360nm〜760nmの波長領域におけるヘイズ値は、0.1%〜50%の範囲内であることが好ましい。
【0066】
上記凸部は、短波長領域から長波長領域までくまなく反射することが可能である。
【0067】
(ii)基底部
本発明に用いられる反射防止層における基底部は、後述するハードコート層上に形成され、上記微細凹凸を支持するものである。
上記基底部の厚みとしては、通常、4μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、4μm〜15μmの範囲内であることがより好ましく、さらに4μm〜10μmの範囲内であることが特に好ましい。
基底部の厚みが上記範囲内であることにより、反射防止層の収縮応力の程度を低減することができ、後述するハードコート層等の種類に関わらず、本発明の反射防止フィルムにカールが生じることを防止することができるからである。
さらに、基底部の厚みの上限を上記範囲とする理由としては、上述した反射防止層の形成に用いられる潤滑剤、重合開始剤、および光安定化剤、酸化防止剤等の各種添加剤の絶対量を減らすことができるため、ブリードアウトする成分の絶対量を減らすことができ、さらなる抑制が可能となるからである。
さらに、クッション層としての効果があり、反射防止層の機械的損傷を補強することができる。例えば、反射防止層の機械強度を高め、擦傷耐性を向上させることにより、傷つきにくくさせることが可能となる。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性を向上させることができる。
【0068】
(iii)反射防止層の構造
本発明における反射防止層の膜厚は、5μm〜25μmの範囲内であり、中でも、5μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜15μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記反射防止層の膜厚が、上記範囲に満たない場合、反射防止効果を充分に発揮できない恐れや、所望の形状を維持できない恐れがあるからである。また、ハードコート層の膜厚に対して、反射防止層の膜厚が薄くなることから、ハードコート層の有する硬度が反射防止フィルム全体へ及ぼす影響が大きくなり、反射防止フィルム全体の耐擦傷性が低下する可能性を有するからである。また一方、上記反射防止層の膜厚が、上記範囲を超える場合、個々の凸部の形状が破損しやすくなる恐れがあるからである。また、ハードコート層の膜厚に対して、反射防止層の膜厚が厚くなることから、反射防止層の有する硬度が反射防止フィルム全体へ及ぼす影響が大きくなり、反射防止フィルム全体の硬度が低下する可能性を有するからである。
【0069】
なお、本発明の反射防止層は、上記微細凹凸および上記基底部を備えるものであることから、上述した反射防止層の膜厚は、上述した微細凹凸および基底部の高さを合計したものとすることができる。
【0070】
(3)反射防止層の形成方法
このような反射防止層の形成方法としては、反射防止層の表面に形成される微細凹凸の形状、反射防止層の形成材料、反射防止層の形成位置、および本発明の反射防止フィルムの用途等により適宜選択されるものであるが、後述する「5.反射防止フィルムの製造方法」の項において説明する方法を好適に用いることができる。
【0071】
(4)その他
本発明における反射防止層は、後述するハードコート層上に積層形成されるものであっても良く、反射防止層の形成材料およびハードコート層の形成材料を共押出しして形成されるものであっても良い。
また、上記ハードコート層の形成材料として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機溶剤に可溶な樹脂が用いられている場合、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂を有機溶剤に希釈し、ハードコート層に積層する方法が一般的であるが、このとき、ハードコート層には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用される反射防止層の紫外線硬化性樹脂の一部も浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上、干渉縞の防止、および反射防止層の機械強度の向上がなされても良い。
【0072】
本発明における反射防止層の反射防止機能は、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の屈折率、および後述するハードコート層の屈折率に依存するものである。すなわち、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の屈折率と、ハードコート層の屈折率との差が小さいほど、屈折率の不連続性を是正することができることから、反射防止層の反射防止機能を向上させることが可能となる。
このような観点から、本発明に用いられる紫外線硬化性樹脂の屈折率と、後述するハードコート層の屈折率との差としては、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、さらに0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。なお、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の具体的な屈折率の値は、後述する光透過性基板との関係で決定されるものであり、特に好ましい値が特定されるものではないが、通常、1.20〜2.40の範囲内であるとされる。
【0073】
2.ハードコート層
次に、本発明に用いられるハードコート層について説明する。本発明におけるハードコート層は、後述する光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されるものである。
【0074】
上記ハードコート層は、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させることや反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができることから、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、本発明の反射防止フィルムを表示装置の保護フィルムとして用いることも可能となるという利点を有する。
【0075】
本発明に用いられるハードコート層としては、所望の硬度や、光透過性基板との密着性等を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなハードコート層を構成する形成材料としては、一般的な樹脂および反射防止層等に適宜選択され用いられる添加剤からなるものである。
上記樹脂としては、光透過性基板との密着性を発揮可能であり、また所望の硬度を有するものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマーならびに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0076】
また、本発明に用いられるハードコート層の膜厚としては、7μm以上となるものであり、中でも7μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、さらに7μm〜12μmの範囲内であることが特に好ましい。
上記ハードコート層の膜厚が、上記範囲より薄い場合、ハードコート層を構成する材料の種類によっては、ハードコート層の硬度を所望の程度にすることが困難となる場合があり、また密着性がとれず、剥離してしまう可能性を有するからである。また、反射防止層の膜厚に対して、上記ハードコート層の膜厚が薄くなることから、反射防止層全体に対するハードコート層の硬度の影響が小さくなる、すなわち、反射防止層の硬度の影響が大きくなる。そのため、反射防止フィルム全体の硬度が低下し、充分な硬度を有することが困難となり、機械強度が低下する恐れがあるからである。
また一方、上記ハードコート層の膜厚が、上記範囲を超える場合、反射防止層の膜厚に対して、上記ハードコート層の膜厚が厚くなるため、上記ハードコート層の有する硬度の影響が大きくなることから、反射防止フィルム全体の硬度が高くなりすぎる可能性を有するからである。そのため、反射防止フィルムに所望の形状を賦型することが困難となる場合があるからである。
【0077】
ここで、本発明におけるハードコート層の有する硬度は、鉛筆硬度を用いて示すことができるものであり、通常、B〜2Hの範囲内であることが好ましく、B〜Hの範囲内であることがより好ましく、HB〜Hの範囲内であることが特に好ましい。
上記ハードコート層の硬度が、上記範囲に満たない場合、反射防止フィルム全体の硬度が低下し、機械強度の低い反射防止フィルムとなる可能性を有するからである。また一方、上記ハードコート層の硬度が、上記範囲を超える場合、反射防止フィルム全体の硬度が高くなり過ぎてしまう恐れがあり、耐擦傷性の低い反射防止フィルムとなる可能性を有するからである。
なお、鉛筆硬度の測定方法については、後述する反射防止フィルムの鉛筆硬度と同様の方法を用いることができる。
【0078】
ハードコート層は、予め光透過性基板に積層形成したものを用いても良く、ハードコート層および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いても良い。
また、本発明に用いられる光透過性基板に、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等、有機溶剤に可溶な樹脂を用いる場合、ハードコート層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、光透過性基板に積層する方法が一般的であるが、このとき、光透過性基板には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用されるハードコート層の樹脂の一部を浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上およびハードコート層の機械強度の向上がなされても良い。
【0079】
さらに、本発明に用いられるハードコート層は、屈折率が上記反射防止層の屈折率および後述する光透過性基板の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層とハードコート層との境界、および、ハードコート層と光透過性基板との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。なかでも、本発明に用いられるハードコート層の屈折率と、上記反射防止層および後述する光透過性基板との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。
【0080】
本発明に用いられるハードコート層は、上述した形成材料に加え、必要に応じて種々の添加剤を含有しても良い。このような添加剤としては、上記「1.反射防止層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0081】
3.光透過性基板
次に、本発明における光透過性基板について説明する。本発明における光透過性基板は、上述した反射防止層を支持するものであり、上記反射防止層と相まって、本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
【0082】
本発明に用いられる光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、可視光の全波長領域に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0083】
本発明に用いられる光透過性基板は、その屈折率が上記ハードコート層を構成する樹脂の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおいて、ハードコート層と光透過性基板との界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面において光が反射されることにより、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。
本発明におけるハードコート層の屈折率と光透過性基板の屈折率との差としては、上記「2.ハードコート層」の項に記載したものであり、本発明に用いられる光透過性基板の屈折率の値は、上述した樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0084】
本発明に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、上述した光透過性を示し、且つ、所望の屈折率を有する光透過性基板を得ることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは、ガラス(セラミックスを含む)等を挙げることができる。
【0085】
また、本発明における光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上記光透過性基板が紫外線吸収剤を含有することにより、本発明の反射防止フィルムを用いて種々の製品を製造した際に、屋外等の紫外線が断続的に照射される環境に設置された場合も反射防止フィルムの劣化を防止することができるからである。
【0086】
なお、本発明における光透過性基板としては、上述した紫外線吸収剤以外にも必要に応じて種々の添加剤を含有していても良い。
このような添加剤としては、上述した反射防止層に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0087】
本発明における光透過性基板の膜厚としては、上述した反射防止層およびハードコート層を支持することが出来るものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムに応じて適宜選択するものであるが、通常1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0088】
4.反射防止フィルム
(1)反射防止フィルムの特性
本発明の反射防止フィルムにおいては、高硬度であり、且つ耐擦傷性に優れるものである点に特徴を有するものである。
以下、このような特性について各々説明する。
【0089】
(硬度)
本発明の反射防止フィルムは、反射防止フィルムに充分な機械強度を発揮することができる程度の硬度を有するものである。このような硬度としては、鉛筆硬度を用いることができる。
本発明の反射防止フィルムとしては、鉛筆硬度の値が、B以上であることが好ましく、HB以上であることがより好ましく、F以上であることが特に好ましい。
鉛筆硬度が上記範囲より低い場合、本発明の反射防止フィルムの硬度が不十分となり、所望の形状および自己支持性を有することが困難となる可能性があるからである。
なお、鉛筆硬度の上限値としては、特に限定されるものではないが、2H以下とすることができる。
鉛筆硬度が上記範囲より高い場合、本発明における反射防止層が微細凹凸を有することからスチールウール耐性が低下することに起因して機械強度が低下する可能性を有するからである。
【0090】
ここで、本発明における鉛筆硬度の値とは、JIS K5400の8.4「鉛筆引っかき値」に示される測定方法および測定条件により測定された値をいうものである。
すなわち、鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機(例えば、No.431(商品名)、東洋製機製作所製)に鉛筆を設置し、試験片である塗膜に擦り傷をつける。これを5回同様の濃度の鉛筆で繰り返し、試験片に2回以上擦り傷を形成する鉛筆濃度よりも1段階下位の濃度記号をその試験片の鉛筆濃度として評価する方法である。
【0091】
(耐擦傷性)
本発明の反射防止フィルムとしては、優れた耐擦傷性を発揮できるものである。ここで、耐擦傷性としては、スチールウール耐性の値を用いて示すことが可能である。
【0092】
本発明の反射防止フィルムにおいては、スチールウール耐性の値が、20g/100mm2以上であることが好ましく、50g/100mm2以上であることがより好ましく、100g/100mm2以上であることが特に好ましい。
スチールウール耐性が上記範囲より小さい場合、上述した反射防止層の微細凹凸が脆くなり、破損する可能性が高くなるからである。
なお、スチールウール耐性の上限値としては、特に限定されるものではないが、700g/100mm2以下とすることができる。
【0093】
ここで、本発明におけるスチールウール耐性の値とは、スチールウール#0000で荷重をかけながら10往復摩擦試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態でキズが10本以下となる最大荷重の値を算出したものである。
【0094】
(2)任意の構成層
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも上記反射防止層と、上記ハードコート層と、上記光透過性基板とを有するものであり、必要に応じて任意の構成層が用いられても良い。本発明に用いられる任意の構成層としては、所望の反射防止機能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、機能層、粘着層、および保護層等を挙げることができる。
【0095】
本発明に用いられる機能層としては、本発明の反射防止フィルムに所望の機能を付与するものであり、例えば、プライマー層(密着安定層)、帯電防止層等をあげることができる。
【0096】
上記機能層が用いられる場合の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図7は、本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。反射防止フィルム10は、図7に例示するように、光透過性基板1とハードコート層5との間に機能層6を有しているものであっても良い。
なお、図7において説明していない符号については、図1と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0097】
このような機能層として用いられるプライマー層は、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、上記反射防止層および上記ハードコート層の密着性を向上させるものである。そのため、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、表示装置の保護フィルムとして用いることも可能となるという利点を有する。
また、上記プライマー層は、帯電防止層を兼ねることもできる。
【0098】
また、本発明に用いられるプライマー層としては、所望の硬度や、ハードコート層との密着性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなプライマー層を構成する材料としては、一般的な樹脂および反射防止層等に適宜選択され用いられる添加剤からなるものである。
上記樹脂としては、所望の硬度およびハードコート層との密着性を発揮するものであれば特に限定されるものではなく、上述したハードコート層と同様の樹脂を用いることができる。
【0099】
また、本発明に用いられるプライマー層の膜厚は、上述したプライマー層に用いられる材料の種類等に応じて、適宜設定されるものである。なかでも、本発明に用いられるプライマー層の膜厚は、0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましく、さらに1μm〜20μmの範囲内であることが特に好ましい。
プライマー層の膜厚が上記範囲より厚い場合、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまう可能性を有するからである。また一方、上記範囲より薄い場合、密着性がとれず、剥離してしまう可能性を有するからである。また、帯電防止層としての機能を付加する場合には、充分な帯電防止性能を発現できなくなる場合がある。
【0100】
さらに、本発明に用いられるプライマー層は、予めハードコート層に積層形成したものを用いても良く、プライマー層および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いても良い。
また、本発明に用いられるハードコート層が、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等、有機溶剤に可溶な樹脂からなる場合、プライマー層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、ハードコート層に積層する方法が一般的である。このとき、ハードコート層には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用されるプライマー層の樹脂の一部を浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上、干渉縞の防止、およびプライマー層の機械強度の向上がなされても良い。
【0101】
さらに、本発明に用いられるプライマー層は、屈折率が上記ハードコート層の屈折率および上記光透過性基板の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおけるハードコート層とプライマー層との境界、および、プライマー層と光透過性基板との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。なかでも、本発明に用いられるプライマー層の屈折率と、上記ハードコート層および上記光透過性基板との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。
【0102】
次に、粘着層が用いられる場合の本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図8は、本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。反射防止フィルム10は、図8に示すように、光透過性基板1のハードコート層5が形成された面と反対の面上に粘着層7が形成されていても良い。
なお、図8において説明していない符号については、図1と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0103】
本発明に用いられる粘着層は、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて所望の粘着剤からなるものであれば特に限定されるものではない。上記粘着層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0104】
また、本発明に用いられる粘着層の厚みは、1μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜50μmの範囲内であることがさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
【0105】
本発明に用いられるプライマー層(密着安定層)、帯電防止層等の機能層、および粘着層は、上述した材料に加え、必要に応じて種々の添加剤を含有しても良い。このような添加剤としては、上記「1.反射防止層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0106】
次に、保護層が用いられる場合の反射防止フィルムについて、図面を参照して説明する。図9は、本発明の反射防止フィルムに保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図9(a)〜(c)に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、反射防止層2の表面上に保護層8が形成されたものである。
図9(a)に例示するように、反射防止層2の微細凹凸4の先端部のみが保護層8に接触するように形成されるものであっても良く、図9(b)に例示するように、反射防止層2が保護層8に少しめり込むように形成されるものであっても良く、また、図9(c)に例示するように、反射防止層2が保護層8に入りこむように形成されるものであっても良い。
なお、図9において説明していない符号については、図1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0107】
本発明に用いられる反射防止層の表面に形成される保護層の形成方法としては、感圧または感熱で粘着力を発現する保護フィルムを貼合する方法、保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で成膜する方法、反射防止層表面に溶融押出し、冷却して形成する方法等が挙げられる。
【0108】
感圧または感熱方式で貼合し形成する保護層は、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて所望の保護層材料からなるものであれば特に限定されるものではない。上記感圧保護層材料としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
また、上記保護層は、オレフィン系の熱可塑性樹脂に、エチレン−αオレフィン共重合物、プロピレン−αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤーや上記の粘着剤を混合した樹脂で形成されていても良い。
さらには、上記保護層は、不飽和カルボン酸グラフト変性されたαオレフィン重合体およびαオレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたαオレフィン重合体またはエチレンとαオレフィンとの共重合体等を含有する樹脂から形成されていても良い。
【0109】
反射防止層表面に溶融押出しし、冷却して保護層を形成する場合、保護層材料としては、αオレフィン重合体、エチレンとαオレフィンとの共重合体、プロピレンとαオレフィンとの共重合体を単体またはブレンドして用いることができる。ブレンドする樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、エチレン−αオレフィン共重合物、プロピレン−αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤー、不飽和カルボン酸具タフト変性されたαオレフィン重合体およびαオレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたαオレフィン重合体またはエチレンとαオレフィンとの共重合体とが挙げられる。
【0110】
保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で成膜する方法としては、有機溶剤または水系に希釈して、または希釈しないで、反射防止層の上面にコーティングし成膜する。必要に応じて、乾燥、冷却、UV照射を行い、膜強度を向上させる。用いられる樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0111】
(3)その他
本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層およびハードコート層の膜厚の比率としては、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3〜1.0:4.0の範囲内であることが好ましく、1.0:0.5〜1.0:2.0の範囲内であることがより好ましく、1.0:1.0〜1.0:1.4の範囲内であることが特に好ましい。
上記膜厚の比率が、上記範囲に満たない場合、ハードコート層の硬度が反射防止フィルム全体に大きく影響し、スチールウール耐性が低下するため、耐擦傷性を付与することが困難となる可能性があるからである。また一方、上記膜厚の比率が、上記範囲を超える場合、ハードコート層の硬度が反射防止フィルム全体に反映されず、鉛筆硬度が低下するため、反射防止フィルムの硬度が低下する可能性があるからである。
【0112】
本発明の反射防止フィルムの用途としては、反射防止機能が必要とされるあらゆる用途に用いることができるが、例えば、液晶表示装置用の偏光板を構成する部材、フォトフレーム、美術品の展示フレーム等を挙げることができる。
【0113】
5.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルム、すなわち、モスアイ構造を有する反射防止フィルムを製造することができる方法として一般的に公知の方法を用いて製造することができ、例えば、後述する「B.反射防止フィルムの製造方法」の項に記載の方法等を用いることができる。
【0114】
B.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルムの製造方法は、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、上記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、上記光透過性基板上に、上記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、上記反射防止層形成用層に、上記光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0115】
本発明の反射防止フィルムの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図10(a)〜(e)は、本発明の反射防止フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。図10(a)〜(e)に例示するように、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、反射防止フィルム製造用金型20を用い(図10(a))、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成されるハードコート層5と、ハードコート層5上に形成される反射防止層2とを有する反射防止フィルム10を製造する方法である(図10(e))。
具体的には、まず、反射防止フィルム製造用金型を予め準備する工程を行う(図10(a))。
次に、紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、光透過性基板1上にハードコート層5を形成するハードコート層形成工程を順に行う。その後、ハードコート層5上に、紫外線硬化性樹脂組成物を塗工して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜2’’を形成し(図10(b))、反射防止フィルム製造用金型20を紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜2’’側に配置し、賦型して反射防止層形成用層2’を形成する反射防止層形成用層形成工程を行う、次いで、光透過性基板1側から紫外線を照射する第1硬化工程を行う(図10(c))。
さらに、反射防止フィルム製造用金型20から剥離する剥離工程を行った後、反射防止層2側から紫外線を照射する第2硬化工程を施し(図10(d))、反射防止層2を有する反射防止フィルム10を形成するものである(図10(e)反射防止層形成工程)。
なお、反射防止フィルム10および反射防止フィルム製造用金型20の説明していない符号については、上述した図1および後述する図14と同様のものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0116】
一般的な反射防止フィルムは、紫外線が照射されることにより劣化する可能性を有していることから、紫外線吸収剤を含有する光透過性基板を備えるものが形成されていた。
しかしながら、このような光透過性基板を用いる場合、光透過性基板に紫外線を吸収され、紫外線が充分に照射されず、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の硬化が不十分となる可能性を有する。
【0117】
そこで、本発明によれば、第1硬化工程において光透過性基板側から紫外線を照射した後、反射防止フィルム製造用金型から剥離し、さらに第2硬化工程において反射防止層側から紫外線を照射することにより、紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を充分に硬化することができる。そのため、賦型性の高い反射防止層を形成することが可能となる。
また、第1硬化工程後に、第2硬化工程において反射防止層側から紫外線を照射することにより、第1硬化工程における紫外線の照射が不十分となり、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が低くなっている場合においても、紫外線硬化性樹脂の反応率を向上させることが可能となる。
そのため、紫外線硬化性樹脂組成物中の重合反応が促進され、機械強度を向上させることができる。また、紫外線硬化性樹脂組成物中に含有される潤滑剤の自由度が抑制されることによって、潤滑剤が反射防止層表面に浮き上がることによる反射防止フィルムの白濁化の防止が可能となり光学的特性を優れたものとすることができる。したがって、反射防止効果に優れた反射防止フィルムを製造することができる。
【0118】
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、少なくとも紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、ハードコート層形成工程、反射防止層形成用層形成工程、および反射防止層形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられても良いものである。
以下、本発明の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0119】
1.紫外線硬化性樹脂組成物調製工程
本発明における紫外線硬化性樹脂組成物調製工程について説明する。本発明における紫外線硬化性樹脂組成物調製工程は、潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する工程である。
ここで、本工程によって調製される紫外線硬化性樹脂組成物は、後述する反射防止層形成用層形成工程において、反射防止フィルム製造用金型を用いて、反射防止層形成用層となるものである。
【0120】
本工程によって調製される紫外線硬化性樹脂組成物としては、少なくとも1個以上の官能基を有し、後述する光重合開始剤に紫外線を照射することにより発生するラジカルにより、ラジカル重合を行い分子量の増加や架橋構造の形成を行うモノマーやオリゴマー等を有するものである。ここで、上記官能基とは、ビニル基、カルボキシル基、水酸基等の反応の原因となる原子団または結合用式である。
【0121】
このようなモノマー、オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコンアクリレート等のアクリル型、および不飽和ポリエステル/スチレン系、ポリエン/スチレン系等の非アクリル系が挙げられるが、中でも、硬化速度、物性選択の幅の広さからアクリル型が好ましい。このようなアクリル型の代表例を以下に示す。
【0122】
まず、単官能基のものとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルEO付加物アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン付加物、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、ノニルフェノールEO付加物にカプロラクトン付加したアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フルフリルアルコールのカプロラクトン付加物アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート等を挙げることができる。
【0123】
また、多官能基のものとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンのアセタール化合物のジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロイロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイロキシジエトキシ)フェニル]メタン、水添ビスフェノールエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロビレンオキサイド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートペンタアクリレート混合物、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物アクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、2−アクリロイロキシエチルオスフェート等を挙げることができる。
【0124】
また、上記紫外線硬化性樹脂組成物としては、一般的に重合開始剤を含有するものである。また上記重合開始剤としては、一般的な紫外線硬化性樹脂組成物の重合時に用いられる重合開始剤を用いることができる。なかでも、後述する光透過性基板に含有される紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始する重合開始剤を有することが好ましい。
後述する光透過性基板は、本発明の反射防止フィルムの紫外線照射による劣化を抑制する観点から、紫外線吸収剤を含有するため、光透過性基板側から紫外線を照射した際に、光透過性基板内の紫外線吸収剤に吸収される。
そのため上述したような重合開始剤を用いることによって、上記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射する際に、紫外線吸収剤に吸収される紫外線量を減少させ、紫外線硬化性樹脂組成物に効果的に紫外線を照射することができる。
【0125】
このような重合開始剤としては、重合反応を開始可能な波長領域が、200nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、200nm〜480nmの範囲内であることがより好ましく、220nm〜450nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0126】
具体的には、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルォスフィンオキシドなどが挙げられる。
また市販される重合開始剤としては、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11850、CG24−61、Darocurl116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、LucirinLR8728、8893X(以上BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、KIP150(ランベルティ社製)等を用いることができる。
【0127】
このような重合開始剤の配合量としては、全組成物中に0.01重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.5重量%〜7重量%の範囲内であることが特に好ましい。上記配合量の上限は、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化特性における点、また硬化した紫外線硬化性樹脂組成物、すなわち紫外線硬化性樹脂の力学特性、光学特性、および取り扱い等の観点から上記範囲となることが好ましい。また上記配合量の下限は、硬化速度の低下防止の観点から上記範囲となることが好ましい。
【0128】
また、本発明における紫外線硬化性樹脂組成物は、潤滑剤を含有するものである。上記潤滑剤としては、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0129】
上記紫外線硬化性樹脂組成物としては、本発明によって製造される反射防止フィルムの用途等に応じて添加剤等を含むものであっても良い。
なお、上記添加剤としては、上記「A.反射防止フィルム」の項に記載されたものと同様のものを用いることができる。
【0130】
上記紫外線硬化性樹脂組成物の粘度としては、上記金型に上記紫外線硬化性樹脂組成物を所望の程度に入りこませることが可能であれば特に限定されないが、例えば、25℃において、10mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、50mPa・s〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、100mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
【0131】
上記紫外線硬化性樹脂組成物の調製方法としては、上述したような紫外線硬化性樹脂組成物を調製できるものであれば特に限定されない。
【0132】
2.ハードコート層形成工程
次に、本発明におけるハードコート層形成工程について説明する。
本発明におけるハードコート層形成工程は、光透過性基板上に、ハードコート層を形成する工程である。
【0133】
(1)ハードコート層
本工程によって形成されるハードコート層は、一般的に用いられるハードコート層と同様のものを用いることができ、例えば、上述した「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0134】
また、本工程によって形成されるハードコート層としては、後述する光透過性基板と同様の紫外線の波長領域において、同程度の紫外線の透過率を有するものであることが好ましい。上記波長領域の紫外線に対する透過率が上記範囲に満たないと、本工程によって紫外線を照射しても紫外線硬化性樹脂組成物の硬化が不十分となり、上記反射防止フィルム製造用金型より剥離することが困難となる可能性を有するからである。
【0135】
(2)光透過性基板
本工程に用いられる光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有するものであり、反射防止層を支持することができるものである。
【0136】
本発明に用いられる光透過性基板としては、紫外線吸収剤を含有することにより、本発明によって製造される反射防止フィルムの使用時に紫外線による劣化を防ぐことが可能となる。
【0137】
本発明に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、紫外線吸収剤を含有することができ、本発明によって製造される反射防止フィルムの他の構成層を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、上記紫外線吸収剤としては、一般的なものを使用することができるが、例えば、「A.反射防止フィルム」の項に記載したものを用いることができる。
【0138】
(3)ハードコート層の形成方法
本工程におけるハードコート層の形成方法としては、上述したハードコート層を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の形成方法を用いることができる。
【0139】
3.反射防止層形成用層形成工程
本発明における反射防止層形成用層形成工程について説明する。本発明における反射防止層形成用層形成工程は、上記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上述した紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する工程である。
【0140】
(1)反射防止層形成用層
本工程によって形成される反射防止層形成用層は、ハードコート層上に形成されるものであり、反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記紫外線硬化性樹脂組成物から形成されるものである。
なお、上記反射防止層形成用層は、後述する反射防止層形成工程中の第1硬化工程および第2硬化工程により、紫外線を照射され硬化されることによって、反射防止層となるものである。
【0141】
(2)反射防止フィルム製造用金型
次に、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型について説明する。本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金属基体と、上記金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜を備える反射防止フィルム製造用金型であって、上記微細孔の開口部に深さが60nm〜2000nmの範囲内であるテーパー形状を有するもの等を挙げることができる。
【0142】
このような反射防止フィルム製造用金型について、図面を参照しながら説明する。図11は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。図11に例示する反射防止フィルム製造用金型20は、金属基体11と、金属基体11の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜11’とを備えており、微細孔の開口部に、深さDが所定の範囲内であるテーパー形状を有するものである。
【0143】
また、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の微細孔の有するテーパー角度としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型可能となるものであれば特に限定されるものではなく、製造される反射防止フィルムにおける反射防止層に応じて適宜設定されるものである。
ここで、図11に例示するように、微細孔の縦断面での側壁が直線状である場合、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度は、上記側壁を近似する直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、θ3で示されるものである。
さらに、このようなテーパー角度としては、図12に例示するように、微細孔の縦断面での側壁が曲線状である場合、微細孔の開口表面の外周上の点および微細孔におけるテーパー形状の最深部の横断面からなる面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、θ4で示されるものである。
なお、図12は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図であり、説明していない記号は、上記図11と同様のものである。
【0144】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の微細孔の形状としては、所望の形状を有する反射防止フィルムを賦型可能なものであれば特に限定されるものではなく、製造される反射防止フィルムにおける反射防止層の形状に応じて、適宜周期、深さ、間隔を選択できるものである。
なお、上記反射防止フィルム製造用金型の周期、深さ、間隔については、図13におけるP2、Q2、R2で示されるものである。
【0145】
本発明における反射防止フィルム製造用金型に用いられる金属基体および金属酸化膜としては、所望の反射防止フィルム製造用金型を形成できるものであれば特に限定されるものではない。
【0146】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の転写率としては、反射防止フィルム製造時に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物の粘度および圧力に応じて適宜調整されるものであり、通常、50%以上となるものであれば特に限定されるものではない。
すなわち、本工程における反射防止フィルム製造用金型の上記転写率が100%でなくとも、本発明によって製造される反射防止フィルムとして用いられる際に十分な物性を有する微細凹凸パターンが得られる程度に、微細孔の形状を紫外線硬化性樹脂組成物に賦型することができるものである。したがって、上記反射防止フィルム製造用金型の微細孔に入り込んだ紫外線硬化性樹脂組成物の先端部分には、微細孔の底面、側壁、または底面および側壁と接触しない部分が発生する可能性を有するものである。
ここで、転写率とは、反射防止フィルム製造用金型における微細孔の深さに対する紫外線硬化性樹脂組成物の入り込む深さの比率をいう。紫外線硬化性樹脂組成物の入り込む深さは、成型品である反射防止フィルムにおける凸部の高さと同じであるため、転写率とは、微細孔の深さに対する反射防止フィルムにおける凸部の高さの比率となる。
【0147】
このような反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、所望の反射防止フィルム製造用金型を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程と、を順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する微細孔形成工程を有する製造方法を挙げることができる。
【0148】
上述したような反射防止フィルム製造用金型の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図14(a)〜(e)は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。図14(a)〜(e)に例示するように、本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、金属基体11を用い(図14(a))、金属基体11を対象として微細孔形成工程を実施することにより(図14(b)〜図14(d))、金属基体11の表面に微細孔が形成された構成を有する反射防止フィルム製造用金型20を製造する方法である(図14(e))。
ここで、上記微細孔形成工程は、金属基体11を用い(図14(a))、陽極酸化法によって金属基体11の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜11’を形成する陽極酸化工程(図14(b))と、金属酸化膜11’をエッチングすることにより微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程(図14(c))と、金属酸化膜11’を第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程(図14(d))とを順次繰り返し実施することによって、金属基体11の表面に微細孔を形成するものである。
【0149】
本工程に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、少なくとも陽極酸化工程、第1エッチング工程、および第2エッチング工程を有する微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられても良いものである。
【0150】
(3)反射防止層形成用層の形成方法
本工程における反射防止層形成用層の形成方法としては、反射防止フィルム製造用金型を用いて、硬化することによって反射防止層となる反射防止層形成用層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、以下の3つの態様を挙げることができる。
【0151】
(a)第1態様
まず、本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第1態様について説明する。本工程の反射防止フィルムの製造方法の第1態様は、上記反射防止フィルム製造用金型を用い、上記反射防止フィルム製造用金型に紫外線硬化性樹脂組成物を充填する充填工程と、上記反射防止フィルム製造用金型に充填された上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層上に、ハードコート層を形成した光透過性基板を、上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層が対向するように配置する配置工程と、上記反射防止層形成用層と上記ハードコート層とが接した状態で、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷する圧力負荷工程と、を有する製造方法である。
以下、各工程について説明する。
【0152】
(i)充填工程
本態様における充填工程は、反射防止フィルム製造用金型を用い、上記反射防止フィルム製造用金型に紫外線硬化性樹脂組成物を充填する工程である。
【0153】
(ii)配置工程
本態様における配置工程は、上記反射防止フィルム製造用金型に充填された上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層上に、ハードコート層を形成した光透過性基板を、上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層が対向するように配置する工程である。
【0154】
(iii)圧力負荷工程
本態様における圧力負荷工程は、上記反射防止層形成用層と上記ハードコート層とが接した状態で、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷する工程である。
なお、上記反射防止層形成用層としては、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を有するものであり、後述する硬化工程によって反射防止層となるものである。
【0155】
本工程における圧力としては、本態様における反射防止層形成用層に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記反射防止層形成用層および上記反射防止フィルム製造用金型を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の形状を上記反射防止層形成用層にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、後述する紫外線硬化性樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、1.0N/cm〜50N/cmの範囲内であることが好ましく、2.5N/cm〜40N/cmの範囲内であることがより好ましく、5.0N/cm〜25N/cmの範囲内であることが特に好ましい。
上記圧力が上記範囲より小さい場合、上記反射防止層形成用層が上記反射防止フィルム製造用金型に充分に入り込まず、上記微細凹凸における凸部の高さが充分とならない恐れがあるからであり、また一方、上記範囲より大きい場合、上記反射防止層形成用層が上記反射防止フィルム製造用金型に入り込み過ぎて、反射防止フィルム製造用金型から抜けなくなる恐れがあるからである。
【0156】
本工程において、上記圧力を負荷する方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、インジェクションプレス、ベルトプレス方式、スリーブタッチ方式、弾性金属ロールによるロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
【0157】
(b)第2態様
本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第2態様は、光透過性基板上に形成されたハードコート層上に、紫外性硬化性樹脂組成物を塗工することにより上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成する膜形成工程と、上記反射防止フィルム製造用金型を上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型して反射防止層形成用層を形成する賦型工程と、を有する製造方法である。本発明の反射防止フィルムが長尺状、もしくはバッチ状である場合、通常、本態様の製造方法が用いられる。
以下、第2態様の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0158】
(i)膜形成工程
本態様における膜形成工程は、光透過性基板上に形成されたハードコート層上に、紫外線硬化性樹脂組成物を塗工することにより上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成する工程である。
【0159】
本態様における光透過性基板、ハードコート層、および紫外線硬化性樹脂組成物については、第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0160】
本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、光透過性基板上に均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法等公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
【0161】
(ii)賦型工程
本態様における賦型工程は、上記反射防止フィルム製造用金型を上記紫外線硬化性樹脂組成物側からなる膜側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型して反射防止層形成用層を形成する工程である。
本工程により、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0162】
本工程における圧力およびその負荷方法については、上記第1態様の圧力負荷工程に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、上記第1態様と同様のものを好適に用いることができる。なお、反射防止フィルム製造用金型は平板状、ロール状、ベルト状のもの等を用いることができる。
【0163】
(c)第3態様
本工程の反射防止層形成用層の形成方法の第3態様は、上述した紫外線硬化性樹脂組成物と、樹脂を含有するハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しまたは溶解共押出しする共押出し工程と、上記反射防止フィルム製造用金型を紫外線硬化性樹脂組成物側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、共押出しされた上記紫外線硬化性樹脂組成物およびハードコート層形成用組成物から構成される積層体の上記紫外線硬化性樹脂組成物側に上記微細凹凸を賦型し、反射防止層形成用層を有する積層体を形成する賦型工程と、を有する製造方法である。
以下、第3態様の反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0164】
(i)共押出し工程
本態様における共押出し工程は、紫外線硬化性樹脂組成物と、樹脂を含有するハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しまたは溶解共押出しする工程である。
【0165】
本態様に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物については、上記第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。
一方、本態様に用いられるハードコート層形成用組成物は、少なくとも樹脂を含有するものである。本態様に用いられる樹脂としては、光透過性基板を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「A.反射防止フィルム」の項に記載した樹脂を好適に用いることができる。
また、本態様に用いられる上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層形成用組成物は、同じ材料または同一樹脂の変性物から構成されるものであっても良い。
【0166】
本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とを溶融共押出しする方法としては、例えば、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とをそれぞれガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度範囲内で熱溶融させた状態で準備し、多層Tダイを用いて押し出す方法等が挙げられる。この場合、Tダイの中で多層化することもでき、単層Tダイを多列に並べ、溶融状態の上記ハードコート層形成用組成物を塗工した上に、溶融状態の上記紫外線硬化性樹脂組成物を積層することもできる。
また、本工程において、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とを溶解共押出しする方法としては、例えば、上記紫外線硬化性樹脂組成物と、上記ハードコート層形成用組成物とをそれぞれ液体の状態で準備し、多層塗工用ダイヘッドに供給した後、金属や樹脂製ベルトあるいはロールに塗工し、乾燥して被膜化する方法等を挙げることができる。この場合、ダイヘッドの中で多層化することもでき、単層塗工用ダイヘッドを多列に並べ、溶解状態の上記ハードコート層形成用組成物を塗工した上に、溶解状態の上記紫外線硬化性樹脂組成物を積層することもできる。
液体状態にする方法としては、固形物100%の低分子モノマー(例えば、アクリル)に重合開始剤を添加した溶液を用いる方法等がある。
【0167】
本工程においては、上記ハードコート層形成用組成物を上記紫外線硬化性樹脂組成物で挟むように溶融共押出しまたは溶解共押出しを行っても良い。
【0168】
(ii)賦型工程
本態様における賦型工程は、上記反射防止フィルム製造用金型を紫外線硬化性樹脂組成物側に配置し、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより共押出しされた上記紫外線硬化性樹脂組成物および上記ハードコート層形成用組成物からなる積層体の上記紫外線硬化性樹脂組成物側に上記微細凹凸を賦型し、反射防止層形成用層を有する積層体を形成する工程である。
本工程により、ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0169】
本工程における圧力およびその負荷方法については、上記第1態様と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、本態様に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、上記第1態様と同様のものを好適に用いることができる。なお、反射防止フィルム製造用金型は平板状、ロール状、ベルト状のものを用いることができる。
【0170】
4.反射防止層形成工程
本発明における反射防止層形成工程について説明する。本発明における反射防止層形成工程は、反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程および、上記第1硬化工程後に、反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する工程である。
以下、本工程における第1硬化工程および第2硬化工程について説明する。
【0171】
(1)第1硬化工程
まず、本発明における第1硬化工程について説明する。本発明における第1硬化工程は、上記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する工程である。
【0172】
本工程によって形成される紫外線硬化性樹脂の反応率としては、紫外線照射後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離することができる程度に、反射防止層形成用層が硬化および賦型されているものであれば特に限定されるものではないが、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
上記反応率が、上記範囲に満たない場合、紫外線硬化性樹脂の硬化および賦型が不十分となり、反射防止フィルム製造用金型からの反射防止層の剥離が困難となる可能性を有するからである。また、反射防止層の表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
【0173】
(2)第2硬化工程
次に、本発明における第2硬化工程について説明する。本発明における第2硬化工程は、上記第1硬化工程後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する工程である。
【0174】
本工程によって形成される紫外線硬化性樹脂の反応率としては、紫外線照射後に、上記反射防止フィルム製造用金型から剥離することができる程度に、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化および賦型されているものであれば特に限定されるものではなく、具体的には60%以上であり、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
上記反応率が、上記範囲に満たない場合、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化および賦型が不十分となり、反射防止フィルム製造用金型からの剥離が困難となる可能性を有するからである。また、反射防止層の表面がベタつきを発生しやすくなるため、表面に異物が付着する可能性を有し、さらに表面を布で拭く際に布が引っ掛かり表面に残ることにより異物となりやすいからである。
【0175】
5.その他の工程
本発明は、少なくとも上述した紫外線硬化性樹脂組成物調製工程、ハードコート層形成工程、反射防止層形成用層形成工程、および反射防止層形成工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の工程を有していても良く、例えば、剥離工程等を挙げることができる。
本発明における剥離工程は、硬化された反射防止層形成用層および反射防止層形成用層を有する積層体、すなわち、反射防止層および反射防止層−ハードコート層積層体から上記反射防止フィルム製造用金型を剥離する工程である。
上記剥離工程における剥離方法としては、反射防止層および反射防止層−ハードコート層積層体を傷つけることなく上記反射防止フィルム製造用金型から剥離できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0176】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0177】
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
【0178】
[実施例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
押出しされた厚さ20mmのアルミパイプ(純度99%)の表面に、第1平滑層として厚さ10μmのイオウ含有ニッケルメッキ層を形成した。次に、第1平滑層上に、第2平滑層として厚さ40μmのクロムメッキ層を形成した。その後研磨を行い、微細孔形成後に、隣接する微細孔の開口表面同士の段差(以下、小さいうねりと称して説明する場合がある。)として表面粗さRz=30nmとなるように仕上げた後、スパッタ法により、厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、電解液である0.02Mシュウ酸水溶液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、金属基体に陽極酸化を施した。その後、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で30秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返して合計5回追加実施した。これにより、アルミシリンダー上に金属酸化膜である陽極酸化アルミナ膜が形成された。次に、フッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0179】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含む溶剤含有ハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ12μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤8%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ15μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0180】
[実施例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
厚さ200μmのニッケル製スリーブの表面に、実施例1と同様に、小さいうねりとして表面粗さRz=60nmとなるように研磨した。その後、微細孔形成後に500nm以上離れた微細孔の開口表面同士の段差(以下、大きいうねりと称して説明する場合がある。)が1.5μmとなるように、電着法により中間層として厚さ15μmのアクリルメラミン層を形成した。さらに中間層上に、厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、電解液である0.03Mシュウ酸水溶液中で、化成電圧55V、20℃の条件にて20秒間、金属基体に陽極酸化を施した。その後、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で10秒間エッチング処理を行い、続いて第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で10分間孔径拡大処理を行った。さらに第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返し、これらを合計4回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜上に金属酸化膜である陽極酸化アルミナ膜が形成された。次に、フッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0181】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)に対し、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤として、トルエン40重量部およびシクロヘキサノン10重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度1000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ10μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、脂肪酸アマイド系潤滑剤10%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を調製し、厚さ5μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、さらに反射防止層側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射し、反射防止フィルムを得た。
【0182】
[実施例3]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
押出しされた厚さ20mmのアルミパイプ(純度99%)の表面を研磨し、小さいうねりとして表面粗さRz=100nmとなるように仕上げた。その後、スパッタ法により二酸化ケイ素からなる厚さ500Åの中間層を形成し、さらに中間層上にスパッタ法により厚さ0.5μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、実施例1と同様に、第1エッチング処理および第2エッチング処理を行い、反射防止フィルム製造用金型を形成した。
【0183】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ125μmのアクリルフィルム(三菱レイヨン社製、屈折率1.49)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)に対し、アクリルに浸透する溶剤として、トルエン100重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度200mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ20μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、シリコーンオイル潤滑剤5%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ15μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0184】
[実施例4]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
厚さ150μmのステンレス製スリーブの表面に研磨を行い小さいうねりとして表面粗さRz=100nmとなるように仕上げた。その後、スパッタ法により酸化タンタルからなる厚さ1000Åの中間層を形成し、さらに中間層上にスパッタ法により厚さ2μmのアルミニウム薄膜層(純度99.9%)を形成し、金属基体を得た。
次に、上記実施例1と同様に、上記金属基体に陽極酸化を施した後、第1エッチング処理および第2エッチング処理を1工程とし、上記工程を繰り返して合計5回追加実施した。その後、上記実施例1と同様にしてフッ素系離型剤を塗布した後、余分な離型剤を洗浄して反射防止フィルム製造用金型を形成した。
【0185】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、100重量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)に対し、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤として、トルエン40重量部およびシクロヘキサノン10重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度1000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ25μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、脂肪酸アマイド系潤滑剤10%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ5μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成した後、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、さらに反射防止層側から1000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射し、反射防止フィルムを得た。
【0186】
[比較例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0187】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ1.5μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ28μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0188】
[比較例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0189】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ5.0μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ12μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0190】
[比較例3]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
実施例1と同様に、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0191】
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)を準備した。次に、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤としてメチルエチルケトン80重量部およびメチルイソブチルケトン20重量部を含むハードコート層形成用樹脂組成物(粘度80000mPa・s)を調製し、光透過性基板上に厚さ12μmとなるように塗布した後、80℃で30秒間乾燥して溶剤を除去してハードコート層を形成した。さらに、フッ素系潤滑剤25%重量部を含有した紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)を調製し、厚さ2μmとなるようにハードコート層上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜を形成してから、反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより2.5N/cmの荷重で圧着し、反射防止層形成用層を形成した。金型全体に均一な反射防止層形成用層が形成されたことを確認し、光透過性基板側から500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射した後、金型から剥離し、反射防止フィルムを得た。
【0192】
[評価1]
(反射防止フィルム製造用金型における金属基体および金属酸化膜の密着性)
上記実施例1〜実施例4および、比較例1〜比較例3において作製された反射防止フィルム製造用金型における金属基体、および微細孔を有する金属酸化膜の密着性について、以下の方法で評価した。
反射防止フィルムを反射防止フィルム製造用金型から剥離した後、反射防止フィルム製造用金型の表面と反射防止フィルムの反射防止層側との両方をビデオライトの光を用いて目視で観察し、金属酸化膜の剥れがないかどうかを確認した。
【0193】
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型表面の観察)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の表面を観察し、得られた画像から、ガルバニック反応による外観不良の有無を観察した。
【0194】
(目視による外観観察)
さらに、上記反射防止フィルム製造用金型表面を蛍光灯の下で目視観察を行い、境界が明確に分かれていない色ムラやまだら模様等の有無を確認した。
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型断面の観察)
集束イオンビームにより反射防止フィルム製造用金型を垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルム製造用金型の断面を観察し、得られた画像から、微細孔の孔径、周期、深さ、および開口部の形状を測定・観察した。
【0195】
上述した実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例3の反射防止フィルム製造用金型においては、金属基体と金属酸化膜との密着性は問題なく、ガルバニック反応による外観不良も認められなかった。また、目視による外観観察においても、外観不良は認められなかった。
また、走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの断面の観察を行ったところ、実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3によって製造された反射防止フィルム製造用金型は、テーパー形状が形成された第1微細孔の奥に、第2微細孔が形成された開口部を有していることが確認された。また、第1微細孔の孔径、周期、深さ(テーパー形状の深さ)、テーパー角度、開口部全体の深さ、第2微細孔の孔径をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
[評価2]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムのハードコート層および反射防止層の膜厚の観察)
ガラス切片を用い反射防止フィルムを垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止フィルムの断面を観察し、得られた画像から、反射防止フィルムのハードコート層および反射防止層の膜厚を測定、観察した。
上述した実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3の反射防止フィルムにおけるハードコート層および反射防止層の膜厚を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
表2の結果より、実施例1〜実施例4の各反射防止フィルムは、本発明の好ましい範囲となる膜厚を有するハードコート層および反射防止層が形成されていることが確認できた。一方、比較例1では、ハートコート層および反射防止層の両方の膜厚が本発明の好ましい範囲となっておらず、比較例2では、ハードコート層のみの膜厚、比較例3では反射防止層のみの膜厚がそれぞれ好ましい範囲外となることが確認できた。
【0200】
(紫外線硬化性樹脂の反応率)
日本電子社製赤外分光光度計FT/IR−410を用いて、1639cm−1のC=C結合による吸光度を測定し、反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率を算出した。
上述した実施例1の反射防止フィルムにおける反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率は90%となり、実施例2では94%、実施例3では70%、実施例4では95%であった。また一方、比較例1、比較例2、比較例3における上記反応率としては、すべて50%であった。
なお、反射防止層形成用層に2回紫外線照射を行って反射防止層を形成する実施例2および実施例4では、特に反応率が高くなることが確認できた。
【0201】
(鉛筆硬度測定)
JIS K 5400 8.4に基づいて、反射防止フィルムの硬度を測定した。結果を下記表3に示す。
【0202】
(スチールウール耐性)
#0000のスチールウールを用いて、10往復摩擦試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態で、目視による傷の有無を確認した際に傷が10本以下となる最大荷重の値を算出した。その結果を下記表3に示す。
【0203】
【表3】
【0204】
表3の結果から、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムでは、HB以上の鉛筆硬度を示すものとなり、特に実施例1ではHを示した。また、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムにおいて、スチールウール耐性は50g/100mm2以上となり、さらに実施例2〜実施例4では100g/100mm2以上という特に高いスチールウール耐性を確認できた。この結果から、実施例1〜実施例4の反射防止フィルムは優れた鉛筆硬度およびスチールウール耐性を発揮することができるため、高硬度であり、且つ耐擦傷性に優れた反射防止フィルムであることが示唆される。
一方、比較例1〜比較例3の反射防止フィルムにおける鉛筆硬度としては、比較例1、比較例2では鉛筆硬度がB未満であり、比較例3がBと示された。また、比較例1〜比較例3におけるスチールウール耐性としては、比較例1および比較例2では、10g/100mm2となり、比較例3では10g/100mm2未満となることが確認できた。この結果より、鉛筆硬度およびスチールウール耐性の両方を十分とすることができず、不十分な硬度および耐擦傷性を有する反射防止フィルムとなることが示唆された。
【0205】
[評価3]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの表面および断面の観察)
日立ハイテクノロジーズ性走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。また、ガラス切片で断面を製作し、上記走査型電子顕微鏡を用いて反射防止フィルムの断面を観察し、得られた画像から、微細凹凸における凸部の周期、凸部の高さ、本体部および先端部の形状を観察した。
【0206】
(反射防止フィルムの反射率)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用いて、反射防止フィルム表面への5°正反射率を測定した。
【0207】
(反射防止フィルムのスティッキング)
反射防止フィルムを水に浸漬させ、取り出した後、24時間風乾させた。反射防止フィルム表面に水滴が残っていないことを確認し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
【0208】
(反射防止フィルムの布拭き性)
反射防止フィルムを、ネルで50g/cm2の荷重で擦り、12時間放置後、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、構造体の破損状態を確認した。
【0209】
(反射防止層とハードコート層との密着性)
JIS K 5400記載の碁盤目試験(1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロファンテープ(ニチバン社製、(登録商標))で剥離する試験)を行った。具体的には、反射防止フィルムの反射防止層側の面に1mm間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm格の碁盤目を100個作り、この上にセロファンテープを貼付け、90°で素早く剥がし、反射防止層が剥れずに残った碁盤目の数を数えた。
評価方法としては、セロファンテープを常に新しいものにして5回剥離試験を行い、1回でも50個以上の碁盤目で反射防止層が剥離した場合は、実用性がないと判断した。
【0210】
(干渉縞の有無)
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用いて、反射防止フィルムにおける干渉縞の有無を目視にて検査した。干渉縞の発生が全く見えないもの、あるいはぼんやり見えるものは問題ないと判断し、はっきり見えるものを不良とした。
【0211】
(溶剤浸透層の有無)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500に付属するエネルギー分散型X線検出器を用いて、反射防止フィルムの成分分析を行い、溶剤浸透層が光透過性基板に形成されているか否かを確認した。
【0212】
(反射防止フィルムの外観)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼付け、目視にて確認した。さらに、40℃、湿度90%RHの環境下で120時間放置した後のヘイズ値の変化、および外観について観察した。
【0213】
実施例1の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。5°正反射率は0.02%であった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0214】
実施例2の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が130nm、凸部の高さが298nm、本体部が曲率を持たないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が80°、先端部の形状が半径9nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.01%であった。スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0215】
実施例3の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが180nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径6nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.03%であった。スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0216】
実施例4の反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、問題なく実施された。5°正反射率は0.02%であった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられていた。さらに、反射防止層とハードコート層との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。なお、光透過性基板には溶剤浸透層が認められた。
また外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。さらに、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇はなく、また潤滑剤等のブリードアウトも確認されず、実用上問題はなかった。
【0217】
比較例1、比較例2、比較例3の各反射防止フィルムにおける反射防止層の表面(転写面)には、上記反射防止フィルム製造用金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率を持つテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。なお、上記反射防止フィルム製造用金型からの抜け性は、一部損傷しており十分な離型性ではなかった。また、表面にベタつきがあり、布拭きによる損傷と、反射防止層が布に削り取られる現象とが発生し、実用に耐えられなかった。
また、5°正反射率は0.02%であり、40℃、湿度90%RHの環境に120時間放置した後のヘイズ値の上昇が確認でき、また潤滑剤および重合開始剤のブリードアウトの発生が確認できた。
【符号の説明】
【0218】
1 … 基材
2 … 反射防止層
2’ … 反射防止層形成用層
2’’ … 紫外線硬化性樹脂組成物からなる膜
3 … 基底部
4 … 微細凹凸
4a … 本体部
4b … 先端部
5 … ハードコート層
6 … プライマー層
7 … 粘着層
8 … 保護層
10 … 反射防止フィルム
10’ … 積層体
11 … 金属基体
11’ … 金属酸化膜
20 … 反射防止フィルム製造用金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基板と、
前記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、
を有する反射防止フィルムであって、
前記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止層が、前記ハードコート層上に形成された基底部と、
前記基底部上に形成され、前記凹凸形状からなる微細凹凸と、
を備え、
前記微細凹凸における凸部が、前記ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、
前記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、
潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、
前記光透過性基板上に前記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
前記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、前記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、
前記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および前記第1硬化工程後に、前記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、
を有することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂組成物が、前記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始することが可能な重合開始剤を有することを特徴とする請求項3に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項1】
光透過性基板と、
前記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に、膜厚が5μm〜25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、
を有する反射防止フィルムであって、
前記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止層が、前記ハードコート層上に形成された基底部と、
前記基底部上に形成され、前記凹凸形状からなる微細凹凸と、
を備え、
前記微細凹凸における凸部が、前記ハードコート層に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、
前記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
紫外線吸収剤を含有する光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に形成され、反応率が60%以上である紫外線硬化性樹脂を有し、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、を有する反射防止フィルムの製造方法であって、
潤滑剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を調製する紫外線硬化性樹脂組成物調製工程と、
前記光透過性基板上に前記ハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
前記ハードコート層上に、反射防止フィルム製造用金型を用いて、前記紫外線硬化性樹脂組成物からなる反射防止層形成用層を形成する反射防止層形成用層形成工程と、
前記反射防止層形成用層に、光透過性基板側から紫外線を照射する第1硬化工程、および前記第1硬化工程後に、前記反射防止フィルム製造用金型から剥離した反射防止層側から紫外線を照射する第2硬化工程によって反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、
を有することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂組成物が、前記紫外線吸収剤が吸収する紫外線の波長領域に対して、長波長側の波長領域の紫外線を照射することにより、重合反応を開始することが可能な重合開始剤を有することを特徴とする請求項3に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−252224(P2012−252224A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125645(P2011−125645)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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