説明

反射防止膜、当該反射防止膜を有する光学系、露光装置、並びに、デバイス製造方法

【課題】 広い入射角度に対して優れた反射防止特性を有すると共に、偏光による反射率の差を低減して、優れた光学性能を達成可能な反射防止膜、当該反射防止膜を有する光学系、露光装置、並びに、デバイス製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上に施され、光の反射を防止する反射防止膜であって、前記基板側から順に、前記基板より屈折率の低い第1の層と、前記基板より屈折率の高い第2の層と、前記基板より屈折率の低い第3の層とを有し、前記光の波長λに対して、前記第1の層の光学的膜厚d1、前記第2の層の光学的膜厚d2及び前記第3の層の光学的膜厚d3が、1.02λ≦d1≦1.075λ、{(−2.6078×d1/λ+2.9984)−0.02}×λ≦d2≦{(−2.6078×d1/λ+2.9984)+0.02}×λ、及び、{(−1.3007×d1/λ−1.0906)−0.02}×λ≦d3≦{(−1.3007×d1/λ−1.0906)+0.02}×λ、を満足することを特徴とする反射防止膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、反射防止膜に係り、特に、IC、LSIなどの半導体チップ、液晶パネルなどの表示素子、磁気ヘッドなどの検出素子、CCDなどの撮像素子といった各種デバイス、マイクロメカニクスで用いる微細パターンの製造に用いられる露光装置の光学素子に施され、反射を防止又は低減する反射防止膜に関する。本発明は、例えば、真空紫外域から遠赤外域までの波長範囲において用いられる各種光学素子、レンズ、窓材、プリズム等に施される反射防止膜に好適である。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー(焼き付け)技術を用いて半導体メモリや論理回路などの微細な半導体素子を製造する際に、レチクル(マスク)描画された回路パターンを投影光学系によってウェハ等に投影して回路パターンを転写する投影露光装置が従来から使用されている。
【0003】
投影露光装置で転写できる最小の寸法(解像度)は、露光に用いる光の波長に比例し、投影光学系の開口数(NA)に反比例する。従って、波長を短くすればするほど、及び、NAを上げれば上げるほど、解像度はよくなる。
【0004】
このため、半導体素子の微細化の要求に伴い、露光光の短波長化及び投影光学系の高NA化が進められてきた。この露光光の短波長化により、レンズやレンズに施される反射防止膜の材料は、フッ化物、酸化物の一部及び窒化物に限られてきている。
【0005】
一方、露光装置の光学系においては、1つのレンズ内に様々な入射角度で光が入射し、レンズ内の位置の違いによって光線入射角度の分布が異なっており、投影光学系のNAの増大に伴い、レンズへの光線入射角度が更に大きくなっている。そこで、反射防止膜には、入射角度に依存することなくレンズ表面で光線の反射を抑えることが要求されるようになってきている。
【0006】
従来の反射防止膜は、例えば、設計波長λ=193nmの場合、フッ化カルシウム(CaF(屈折率n=1.50))基板上に、第1層目に光学的膜厚が0.25λのフッ化ランタン(LaF(屈折率n=1.680))からなる高屈折率材料層、第2層目に光学的膜厚が0.25λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層を順次積層した構成や、フッ化カルシウム(CaF(屈折率n=1.50))基板上に、第1層目に光学的膜厚が0.25λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層、第2層目に光学的膜厚が0.25λのフッ化ランタン(LaF(屈折率n=1.680))からなる高屈折率材料層、第3層目に光学的膜厚が0.25λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層を順次積層した構成が一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
従来の2層構成の反射防止膜へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を図7に示し、従来の3層構成の反射防止膜へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を図8に示す。図7及び図8は、横軸に反射防止膜に入射する光の入射角度[度]を、縦軸に反射率[%]を採用している。なお、図7及び図8において、Rp、Rs及びRaは、各々、p偏光反射率、s偏光反射率及び平均反射率を示す。図7及び図8を参照するに、従来の反射防止膜は、入射角度0度乃至30度において、十分に反射を抑えていることが分かる。
【特許文献1】特開平9−329702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の反射防止膜は、図7及び図8に示すように、光の入射角度が40度以上になると平均反射率Raが急激に高くなってしまうため、フレアやゴーストなどを生じ、光学系の解像(結像)性能に悪影響を与えてしまう。これは、従来の反射防止膜が、様々な入射角度の光が同時に入射した際に、特に、40度を超えるような入射角度の光に関して反射を抑えきれなくなることが原因の一つである。
【0009】
また、p偏光反射率Rpとs偏光反射率Rsが、入射角度0度乃至50度の範囲で2%以上の差(|Rp−Rs|>2%)を生じており、光学系で生じるフレアやゴーストのシミュレーションを困難にしてしまっている。
【0010】
これらのことから、光学系のレンズに入射する様々な角度の光に対して大きな反射を生じることなく透過できるように、且つ、偏光による反射率の差が大きくならないように、レンズに施される反射防止膜を改善する必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、広い入射角度に対して優れた反射防止特性を有すると共に、偏光による反射率の差を低減して、優れた光学性能を達成可能な反射防止膜、当該反射防止膜を有する光学系、露光装置、並びに、デバイス製造方法を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての反射防止膜は、基板上に施され、光の反射を防止する反射防止膜であって、前記基板側から順に、前記基板より屈折率の低い第1の層と、前記基板より屈折率の高い第2の層と、前記基板より屈折率の低い第3の層とを有し、前記光の波長λに対して、前記第1の層の光学的膜厚d1、前記第2の層の光学的膜厚d2及び前記第3の層の光学的膜厚d3が、1.02λ≦d1≦1.075λ、{(−2.6078×d1/λ+2.9984)−0.02}×λ≦d2≦{(−2.6078×d1/λ+2.9984)+0.02}×λ、及び、{(−1.3007×d1/λ−1.0906)−0.02}×λ≦d3≦{(−1.3007×d1/λ−1.0906)+0.02}×λ、を満足することを特徴とする。
【0013】
本発明の別の側面としての光学系は、波長150nm乃至300nmの光に用いられる光学系であって、複数の光学素子を有し、前記複数の光学素子のうち少なくとも一の光学素子は、上述の反射防止膜を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の更に別の側面としての露光装置は、上述の光学系を介して光を被処理体に照射して、当該被処理体を露光することを特徴とする。
【0015】
本発明の更に別の側面としての露光装置は、レチクルのパターンを被処理体に露光する露光装置であって、光源からの光で前記レチクルを照明する照明光学系と、前記レチクルのパターンを前記被処理体に投影する投影光学系とを有し、前記照明光学系及び/又は前記投影光学系を構成する複数の光学素子のうち少なくとも一の光学素子は、上述の反射防止膜を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の更に別の側面としてのデバイス製造方法は、上述の露光装置を用いて被処理体を露光するステップと、露光した前記被処理体を現像するステップとを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広い入射角度に対して優れた反射防止特性を有すると共に、偏光による反射率の差を低減して、優れた光学性能を達成可能な反射防止膜、当該反射防止膜を有する光学系、露光装置、並びに、デバイス製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面である反射防止膜について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の反射防止膜1の構成を示す概略断面図である。
【0020】
本発明の反射防止膜1は、光の反射を防止する機能を有し、図1に示すように、基板SB上に、低屈折率材料層(第1の層)10と、高屈折率材料層(第2の層)20と、低屈折率材料層(第3の層)30とを順次積層した構成を有する。
【0021】
低屈折率材料層10及び30(第1の層及び第3の層)は、基板SBよりも屈折率の低い材料からなる。低屈折率材料層10及び30は、本実施形態では、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF)、酸化珪素(SiO)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、六フッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)、チオライト(NaAl14)、又は、これらの混合物の一を材料とする。低屈折率材料層10と低屈折率材料層30とは、それぞれ同種の材料を使用しても、異種の材料を使用してもよく、所望の反射防止効果を得ることが可能である。
【0022】
高屈折率材料層(第2の層)20は、基板SBよりも屈折率の高い材料からなる。高屈折率材料層20は、本実施形態では、フッ化ランタン(LaF)、フッ化ネオジウム(NdF)、フッ化ガドリニウム(GdF)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ランタン(La)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化ジスプロシウム(DyF)、フッ化鉛(PbF)、フッ化イットリウム(YF)、窒化アルミニウム(AlN)、又は、これらの混合物の一を材料とする。
【0023】
低屈折率材料層10、高屈折率材料層20及び低屈折率材料層30は、公知の成膜技術である真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって基板SB上に形成される。
【0024】
設計波長λ=193nmとした場合の反射防止膜1の膜構成の一例を説明する。本実施形態の反射防止膜1は、基板SBとしての合成石英基板(屈折率n=1.556)の上に、基板SB側から順に、第1の層として光学的膜厚が1.045λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層10、第2の層として光学的膜厚が0.275λのフッ化ランタン(LaF(屈折率n=1.680))からなる高屈折率材料層20、第3の層として光学的膜厚が0.269λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層30を積層した構成を有する。
【0025】
本実施形態の反射防止膜1へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を図2に示す。図2は、横軸に反射防止膜1に入射する光の入射角度[度]を、縦軸に反射率[%]を採用している。なお、図2において、Rp、Rs及びRaは、各々、p偏光反射率、s偏光反射率及び平均反射率を示す。図2を参照するに、本実施形態の反射防止膜1は、入射角度0度乃至50度において、0.7%以下の優れた反射防止特性を有し、全入射角度に亘って平均化した反射率が極めて低いことが分かる。また、p偏光反射率Rpとs偏光反射率Rとの差(|Rp−Rs|)が、入射角度0度乃至50度の範囲において、0.7%以下に抑えることが可能である。
【0026】
また、設計波長λ=193nmとした場合の反射防止膜1の膜構成の別の例を説明する。本実施形態の反射防止膜1は、基板SBとしての蛍石基板(屈折率n=1.50)の上に、基板SB側から順に、第1の層として光学的膜厚が1.063λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層10、第2の層として光学的膜厚が0.266λのフッ化ランタン(LaF(屈折率n=1.680))からなる高屈折率材料層20、第3の層として光学的膜厚が0.279λのフッ化マグネシウム(MgF(屈折率n=1.417))からなる低屈折率材料層30を積層した構成を有する。
【0027】
本実施形態の反射防止膜1へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を図3に示す。図3は、横軸に反射防止膜1に入射する光の入射角度[度]を、縦軸に反射率[%]を採用している。なお、図3において、Rp、Rs及びRaは、各々、p偏光反射率、s偏光反射率及び平均反射率を示す。図3を参照するに、本実施形態の反射防止膜1は、入射角度0度乃至50度において、0.7%以下の優れた反射防止特性を有し、全入射角度に亘って平均化した反射率が極めて低いことが分かる。また、p偏光反射率Rpとs偏光反射率Rとの差(|Rp−Rs|)が、入射角度0度乃至50度の範囲において、0.5%以下に抑えることが可能である。
【0028】
以上、説明したように、本発明の反射防止膜1は、レンズ光学系などにおける反射防止膜として、広範囲な入射角度に対して優れた反射防止特性を有し、フレアやゴーストなどを低減して、優れた光学性能を達成可能とする。また、反射防止膜1は、3層構造の非常に積層数が少ない構成であるため、生産性に優れている。
【0029】
以下、図4を参照して、本発明の反射防止膜1が施された光学素子を有する光学系を搭載した露光装置100について説明する。ここで、図4は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略断面図である。露光装置100は、図4に示すように、回路パターンが形成されたレチクル(マスク)120を照明する照明装置110と、照明されたレチクルパターンから生じる回折光を被処理体140に投影する投影光学系130と、被処理体140を支持するウェハステージ145とを有する。
【0030】
露光装置100は、例えば、ステップ・アンド・リピート方式やステップ・アンド・スキャン方式でレチクル120に形成された回路パターンを被処理体140に露光する投影露光装置である。かかる露光装置は、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィー工程に好適であり、以下、本実施形態ではステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(「スキャナー」とも呼ばれる。)を例に説明する。ここで、「ステップ・アンド・スキャン方式」とは、レチクルに対してウェハを連続的にスキャン(走査)してレチクルパターンをウェハに露光すると共に、1ショットの露光終了後ウェハをステップ移動して、次の露光領域に移動する露光方法である。「ステップ・アンド・リピート方式」は、ウェハの一括露光ごとにウェハをステップ移動して次のショットの露光領域に移動する露光方法である。
【0031】
照明装置110は、転写用の回路パターンが形成されたレチクル120を照明し、光源部112と、照明光学系114とを有する。
【0032】
光源部112は、例えば、光源としては、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどを使用することができるが、光源の種類はエキシマレーザーに限定されず、例えば、波長約153nmのFレーザーを使用してもよいし、その光源の個数も限定されない。さらにスペックルを低減するために光学系を直線的又は回動的に揺動させてもよい。また、光源部112にレーザーが使用される場合、レーザー光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザー光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。また、光源部112に使用可能な光源はレーザーに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプなどのランプも使用可能である。
【0033】
照明光学系114は、複数の光学素子114aを有し、レチクル120を照明する光学系である。光学素子114aは、例えば、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレーター、絞り等を含む。照明光学系114は、軸上光、軸外光を問わずに使用することができる。オプティカルインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ(又はレンチキュラーレンズ)板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含むが、光学ロッドや回折素子に置換される場合もある。
【0034】
照明光学系114のレンズなどの光学素子114aに本発明の反射防止膜1を施した光学素子を使用することができ、広範囲な入射角度の光に対して優れた反射防止特性を発揮し、フレアやゴーストなどを低減して、優れた光学性能を維持することができる。
【0035】
レチクル120は、例えば、石英製で、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、図示しないレチクルステージに支持及び駆動される。レチクル120から発せられた回折光は、投影光学系130を通り被処理体140上に投影される。レチクル120と被処理体140は、光学的に共役の関係にある。本実施形態の露光装置100はスキャナーであるため、レチクル120と被処理体140を縮小倍率比の速度比でスキャンすることによりレチクル120のパターンを被処理体140上に転写する。なお、ステッパーの場合は、レチクル120と被処理体140を静止させた状態で露光が行われる。
【0036】
投影光学系130は、複数の光学素子130aを有し、レチクル120上のパターンを反映する光を被処理体140上に投影する光学系である。投影光学系130に色収差の補正が必要な場合には、互いに分散値(アッベ値)の異なるガラス材からなる複数のレンズ素子を使用したり、回折光学素子をレンズ素子と逆方向の分散が生じるように構成したりする。
【0037】
投影光学系130のレンズなどの光学素子130aに本発明の反射防止膜1を施した光学素子を使用することができ、広範囲な入射角度の光に対して優れた反射防止特性を発揮し、フレアやゴーストなどを低減して、優れた光学性能(結像性能)を維持することができる。
【0038】
被処理体140は、本実施形態では、ウェハであるが、液晶基板、その他の被処理体を広く含む。被処理体140には、フォトレジストが塗布されている。
【0039】
ウェハステージ145は、被処理体140を支持する。ウェハステージ145は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。例えば、ウェハステージ145は、リニアモーターを利用してXY方向に被処理体140を移動することができる。レチクル120と被処理体140は、例えば、同期走査され、ウェハステージ145と図示しないレチクルステージの位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。ウェハステージ145は、例えば、ダンパを介して床等の上に支持されるステージ定盤上に設けられ、レチクルステージ及び投影光学系130は、例えば、床等に載置されたベースフレーム上にダンパを介して支持される図示しない鏡筒定盤上に設けられる。
【0040】
露光において、光源部112から発せられた光束は、照明光学系114によりレチクル120を、例えば、ケーラー照明する。レチクル120を通過しレチクルパターンを反映する光は、投影光学系130により被処理体140に結像される。露光装置100が使用する照明光学系114及び/又は投影光学系130を構成する光学素子114a及び130aに施される反射防止膜は、広範囲な入射角度の光に対して優れた反射防止特性を発揮し、フレアやゴーストなどを低減して、優れた光学性能を達成するため、露光装置100は、高いスループットで経済性よく従来よりも高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
【0041】
次に、図5及び図6を参照して、上述の露光装置100を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。図5は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いて本発明のリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0042】
図6は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、上述の露光装置100によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。かかるデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置100を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一側面としての反射防止膜の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止膜の一例へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を示すグラフである。
【図3】本発明の反射防止膜の別の例へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を示すグラフである。
【図4】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示すステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャート
【図7】従来の2層構成の反射防止膜へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を示すグラフである。
【図8】従来の3層構成の反射防止膜へ波長193nmの光が入射する場合の入射角度に対する反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1 反射防止膜
10 低屈折率材料層(第1の層)
20 高屈折率材料層(第2の層)
30 低屈折率材料層(第3の層)
100 露光装置
114 照明光学系
114a 光学素子
130 投影光学系
130a 光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に施され、光の反射を防止する反射防止膜であって、
前記基板側から順に、前記基板より屈折率の低い第1の層と、
前記基板より屈折率の高い第2の層と、
前記基板より屈折率の低い第3の層とを有し、
前記光の波長λに対して、前記第1の層の光学的膜厚d1、前記第2の層の光学的膜厚d2及び前記第3の層の光学的膜厚d3が、
1.02λ≦d1≦1.075λ
{(−2.6078×d1/λ+2.9984)−0.02}×λ≦d2≦{(−2.6078×d1/λ+2.9984)+0.02}×λ及び
{(−1.3007×d1/λ−1.0906)−0.02}×λ≦d3≦{(−1.3007×d1/λ−1.0906)+0.02}×λ
を満足することを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記第1の層及び前記第3の層は、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、酸化珪素、フッ化ナトリウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、六フッ化ナトリウムアルミニウム、チオライト、又は、これらの混合物の一を材料とし、
前記第2の層は、フッ化ランタン、フッ化ネオジウム、フッ化ガドリニウム、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム、フッ化ジスプロシウム、フッ化鉛、フッ化イットリウム、窒化アルミニウム、又は、これらの混合物の一を材料とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記光は、150nm乃至300nmの波長を有することを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項4】
前記基板は、光を透過する透過部材であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項5】
波長150nm乃至300nmの光に用いられる光学系であって、
複数の光学素子を有し、
前記複数の光学素子のうち少なくとも一の光学素子は、請求項1又は2記載の反射防止膜を有することを特徴とする光学系。
【請求項6】
請求項5記載の光学系を介して光を被処理体に照射して、当該被処理体を露光することを特徴とする露光装置。
【請求項7】
レチクルのパターンを被処理体に露光する露光装置であって、
光源からの光で前記レチクルを照明する照明光学系と、
前記レチクルのパターンを前記被処理体に投影する投影光学系とを有し、
前記照明光学系及び/又は前記投影光学系を構成する複数の光学素子のうち少なくとも一の光学素子は、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の反射防止膜を有することを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の露光装置を用いて被処理体を露光するステップと、
露光された前記被処理体を現像するステップとを有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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