説明

反射防止膜およびそれを配置した表示装置

【課題】 広範な波長領域において一様に低い反射率を示し、膜強度と脆性を両立できる耐久性に優れた反射防止膜を低コストで、大量かつ大面積製造の適性のある方法で提供する。
【解決手段】 支持体上にオルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜において、該オルガノシランの加水分解開始から塗布完了までが50℃以下であり、かつ加水分解開始から塗布後の乾燥完了までが30分以内であることを特徴とする反射防止膜。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置の表面の反射率低下に有効な反射防止膜および反射防止膜を有する画像表示装置に関する。特に、量産性と高い膜強度を実現する反射防止膜およびそれを配置した表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶表示装置の普及、大型化や野外使用化に伴い、その使用条件下でのタフネス化、例えば、反射光耐性(視認性確保)、耐久性(耐傷性、防汚性や耐熱性)の向上が求められている。表示装置の視認性向上は該装置の主機能に関わる課題であり、当然その重要性も高く、活発に視認性向上のための施策が検討されている。一般に視認性を低下させるのは外光の表面反射による景色の写り込みであり、これに対して最表面に反射防止膜を設ける方法が一般的に行われる。しかしながら、この反射防止膜はその機能発現のために最表面に設けられるため、必然的に反射防止膜の性能に対してタフネス化の観点から多くの高品質化の課題を負っている。例えば、極限までの反射率低下、傷の付き難さ、指紋や油脂等の付着防止や易除去性、炎天下や自動車室内のような高温環境下での諸性能の維持などである。
【0003】従来、可視光の波長域を全てカバーできる性能を有する広波長域/低反射率の反射防止膜としては、フッ化マグネシウムや二酸化ケイ素等金属酸化物の透明薄膜を蒸着等の方法により積層させた多層膜が用いられて来た。蒸着等の方法は予め最適に設計された各層の屈折率と膜厚との関係に従い、その膜厚を高精度に制御した操作を何回も行う必要があり、非常に高コストなものであり、かつ、広い面積の膜を得ることの非常に困難で大量製造適性に乏しいものであった。
【0004】一方、塗布方式による反射防止膜の開発も行われているが、膜の最上層(空気側界面)の屈折率を如何に低くし、かつ膜の物理的特性を強化するかに課題がある。
【0005】特公平6−98703号、特開昭63−21601号公報にはアルコキシシラン化合物の加水分解部分縮合物からなる組成物をプラスチック基材表面に塗布して反射光を低減化させる技術が開示されている。また、特開平5−13021号公報には、エチルシリケート中に分散したMgF2 、SiO2 を有する超微粒子を用いた二層からなる反射防止膜が開示されている。しかしながらこれらの公報に記載の反射防止技術は、基材との屈折率差が小さく反射防止効果が不十分であることに加えて、膜が脆くなり柔軟なフイルム上への反射防止機能付与時にひび割れし易く取り扱い性が難しくなるなどの問題を内包するものであった。また、膜物理性改良の目的で硬化反応を充分進行させるべく加熱処理を加えると、プラスチック支持体の変形が進み良好な平面性を維持できなくなり均一な光学性能を有する反射防止膜を得られないと言う致命的な問題を内包していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、広範な波長領域において一様に低い反射率(反射率1%以下)を示し、膜強度と脆性を両立できる耐久性に優れた反射防止膜を低コストで、大量かつ大面積製造の適性のある方法で提供することにある。また、その反射防止膜を配置した表示装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上述の課題は、オルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜において、該オルガノシランの加水分解から塗布完了までを低温に保ち、かつ加水分解開始から塗布−乾燥完了までを短時間にして形成されたことを特徴とする反射防止膜により達成された。
【0008】本発明における反射防止膜の好ましい態様を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)支持体上にオルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜において、該オルガノシランの加水分解開始から塗布完了までが50℃以下であり、かつ加水分解開始から塗布後の乾燥完了までが30分以内であることを特徴とする反射防止膜。
(2)該塗布後の乾燥温度が150℃以下であることを特徴とする項1に記載の反射防止膜。
(3)該オルガノシランがアルコキシシランであることを特徴とする(1)または(2)に記載の反射防止膜。
(4)該低屈折率層がオルガノシランに対してシリル基含有ポリマーを1〜200重量%含む混合物の加水分解部分縮合物から構成される組成物と塗設して形成されたものであることを特徴とする(1)、(2)または(3)に記載の反射防止膜。
(5)該オルガノシランの少なくとも1種がフッ素原子を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止膜。
(6)該低屈折率層■とそれに隣接して屈折率が1.7以上である高屈折率層■からなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止膜。
(7)該高屈折率層■に隣接し、低屈折率層■の反対側に層■を有し、更に層■に隣接して層■の反対側に屈折率が1.6以下の層■を有するものであって、層■が層■の屈折率と高屈折率層■の屈折率の中間の屈折率を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の反射防止膜。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする表示装置。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、オルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物(以下本発明においてはゾル液と称す)を塗設して形成された低屈折率層において、該オルガノシランの加水分解開始から塗布完了までを低温に保ち、かつ加水分解開始から塗布後の乾燥完了でまを短時間にして形成された低屈折率層であることに特徴がある。本発明の構成要件を詳細に説明する。
【0010】(a)オルガノシランオルガノシランは分子内に少なくとも1つの加水分解によりシラノールを与えることのできる官能基を有するシラン化合物を表し、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。一般的には式(R)4 Siで表される化合物が好ましく用いられる。式中、Rは炭化水素基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基で、これらの基は置換基を有していても良い)、アルコキシル基、オキシアシル基あるいはハロゲン原子を表す。1分子中の4個のRはこの定義の範疇であれば互いに同じであっても異なっていても良く、自由に組み合わせて選択することができるが、4つが同時に炭化水素基になることはなく、好ましくは1分子中に同時に存在する炭化水素基は2つ以下である。
【0011】これらのオルガノシランの中でアルコキシシラン類が特に好ましく用られる。例としては、一般式Si(OR1)x (R2)4-X で表されるアルコキシシランである。かかるアルコキシシラン中のR1 は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。また、R2 は、炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−デシル基、フェニル、ビニル基、アリル基等などの無置換の炭化水素基、γ−クロロプロピル基、CF3CH2- 、CF3CH2CH2-、C2F5CH2CH2- 、C3F7CH2CH2CH2-、CF3OCH2CH2CH2-、C2F5OCH2CH2CH2- 、C3F7OCH2CH2CH2- 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2- 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2- 、H(CF2)4CH2CH2CH2- 、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基などの置換炭化水素基が挙げられる。xは2ないし4の整数のものが好ましい。
【0012】これらのアルコキシシランの具体例を以下に示す。x=4のもの(以下4官能オルガノシランと称す)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラ-i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−アセトキシシランなどを挙げることができる。
【0013】x=3のもの(以下3官能オルガノシランと称す)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、C2F5CH2CH2Si(OCH3)3 、C2F5OCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C3F7OCH2CH2CH2Si(OC2H5)3、(CF3)2CHOCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C4F9CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33 、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0014】x=2のもの(以下2官能オルガノシランと称す)としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH2)2Si(OCH3)2 、(C3F7OCH2CH2CH2)2Si(OCH3)2、〔H(CF2)6CH2OCH2CH2CH22Si(OCH3)2、(C2F5CH2CH2)2Si(OCH3)2などを挙げる事ができる。
【0015】上記の2または3官能性オルガノシランを用いる場合は、R2 にフッ素原子を有するオルガノシランが屈折率の観点から好ましい。また、R2 としてフッ素原子を有さないオルガノシランを用いる場合、メチルトリメトキシシランまたはメチルトリエトキシシランを用いる事が好ましい。
【0016】上記のオルガノシランは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用する事もできる。2種以上の上記のオルガノシランを併用する場合、2官能オルガノシランの本発明の組成物中における割合は、4官能オルガノシラン及び3官能オルガノシラン成分に対して0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
【0017】本発明の低屈折率層は上述の方法で調製したオルガノシランの加水分解部分縮合物を主成分とするゾル液を塗布、硬化して形成される。この塗布液における必須成分は網目構造を構築する上述の(a) オルガノシラン化合物に他ならない。また、本発明の組成物にはこれらのオルガノシラン類の外に、必要に応じて様々な化合物を添加する事ができる。これらの化合物はその目的によって下記の(b) から(h) の成分に大別することができる。
(b)シリル基含有ポリマー(c)加水分解・縮合触媒(ゾルゲル触媒)
(d)溶媒(e)キレート配位子化合物(f)水(g)充填剤(h)その他の添加物
【0018】以下に併用する各添加物について詳細に説明する。
(b) シリル基含有ポリマーシリル基含有ポリマーは、主鎖重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有するものであり、該シリル基の好ましい構造としては、下記一般式
【0019】
【化1】


【0020】(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基などの加水分解性基および/または水酸基、R3 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数7〜10のアラルキル基、aは1〜3の整数である)で表されるものである。
【0021】シリル基含有ポリマーとして特に好ましいのは主鎖がビニルポリマーからなるシリル基含有ビニルポリマーである。これらは一般に下記の方法で容易に合成することができる。その製造方法はこれらの方法に限定されるものではない。
【0022】(イ)ヒドロシラン化合物を炭素−炭素二重結合を有するビニルポリマーと反応させる。
(ロ)下記一般式
【0023】
【化2】


【0024】(ただし、X、R3 、aは前記に同じ、R4 は重合性二重結合を有する有機基である)で表されるシラン化合物と、各種ビニル系化合物とを重合する。
【0025】ここで、前記(イ)で示される製造方法で使用されるヒドロシラン化合物としては、例えばメチルジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン類;メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチルアミノキシシラン、トリアミノシランなどのアミノシラン類が挙げられる。
【0026】また、(イ)で示される製造方法で使用されるビニルポリマーとしては、水酸基を含むビニルポリマーを除く以外に特に限定はなく、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、
【0027】
【化3】


【0028】
【化4】


【0029】などから選ばれるビニル系化合物をアリルメタクリレートのような側鎖に二重結合を有するモノマーと共重合したビニルポリマーが好ましく、共重合モノマーとして含フッ素モノマーを少くとも1種用いたものが特に好ましい。
【0030】一方、(ロ)で示される製造方法で使用されるシラン化合物としては、次のものが挙げられる。
【0031】
【化5】


【0032】また、(ロ)で示される製造方法で使用されるビニル系化合物としては、前記(イ)の製造方法でビニルポリマーの重合時に用いられるビニル系化合物を使用することが可能であるが、かかる(イ)の製造方法に記載された以外に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなどの水酸基を含むビニル系化合物を挙げることもできる。また、含フッ素モノマーを1種用いたものが特に好ましい。
【0033】以上のようなシリル基含有ビニルポリマーの好ましい具体例としては、例えば下記一般式
【0034】
【化6】


【0035】(式中、R5 、R7 は水素原子、フッ素原子またはメチル基、R6は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、アリル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンテル、n−ヘキシル、ベンジル、(CF3)2CH- 、CF3CH2- 、C7F15CH2- 、C2F5CH2CH2- 、等の(a) 成分で説明したフッ素原子を含むアルキル基)を表し、R8 はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、R9 は前述のR1 と同義であり、n/(m+n)=0.01〜0.4、好ましくは0.02〜0.2である)で表されるトリアルコキシシリル基含有アクリル重合体を挙げることができる。このシリル基含有ビニルポリマーの数平均分子量は、好ましくは2,000 〜100,000、さらに好ましくは4,000 〜50,000である。
【0036】本発明に好ましく使用されるシリル基含有ビニルポリマーの具体例としては、鐘淵化学工業(株)製、カネカゼムラックや下記のポリマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】P−1 メチルメタクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(80/20:重量比)
P−2 メチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(85/15:重量比)
P−3 メチルメタクリレート/エチルアクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(50/40/10:重量比)
P−4 FM-4/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(90/10:重量比)
P−5 FM-1/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(80/20:重量比)
【0038】P−6 FM-4/FM-7/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(50/40/10:重量比)
P−7 メチルメタクリレート/メチルアクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(60/25/15:重量比)
P−8 FM-4/メチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(70/25/5:重量比)
P−9 FM-5/メチルメタクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(70/20/10:重量比)
【0039】シリル基含有ポリマーの組成物中の割合は、用いる総オルガノシランに対し1〜200重量%、好ましくは3〜100重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。
【0040】上述の(a) ないし(b) 成分の本発明における好ましい組み合わせについて下記および実施例に例示する。混合比は使用した各化合物の重量(g) を示す。本発明において、以下の説明中で上記のオルガノシラン類の加水分解/部分縮合物の塗布組成物を「ゾル液」、ゾル液を調製するオルガノシラン類の加水分解/部分縮合反応を「ゾルゲル化」と称す。ゾルゲル化では(a)成分が必須成分であり、(b) 成分についてはゾルゲル化時に共存させて用いても、調製したゾル液に添加する形で用いても良い。
【0041】SP−1トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 25g、テトラエトキシシラン25gの加水分解・部分縮合物SP−2テトラエトキシシラン5g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 10g、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン 3gの加水分解・部分縮合物SP−3トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 8g、テトラエトキシシラン 5g、メチルトリメトキシシラン 2gの加水分解・部分縮合物SP−4テトラエトキシシラン20g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 200g、ビス(トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン 10g、の加水分解・部分縮合物SP−5テトラエトキシシラン10g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 8g、ビス(トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン 5g、メチルトリメトキシシラン 3g、ジメチルジメトキシシラン 2gの加水分解・部分縮合物
【0042】SP−6トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 22g、ジビニルジメトキシシラン 3g、上記P−6 10gの加水分解、部分縮合物SP−7トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 20g、テトラエトキシシラン3g、上記P−6 6gの加水分解・部分縮合物SP−8トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 10g、ビニルトリメトキシシラン 5gの加水分解・部分縮合物と1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン 3g、上記P−6 7gの加水分解、部分縮合物SP−9テトラエトキシシラン 15g、ペンタフルオロブチルトリメトキシシラン10g、上記化合物P−5 3gの加水分解、部分縮合物SP−10テトラエトキシシラン 15g、、ビス(トリフルオロプロピル)ジエトキシシラン 20g、上記化合物P−2 3gの加水分解、部分縮合物
【0043】(c) ゾルゲル触媒本発明のゾル液には、オルガノシラン類の加水分解/部分縮合反応を促進する目的で、種々の触媒化合物を好ましく用ることができる。用いられる触媒は特に制限はなく、用いたゾル液の構成成分に応じて適量を使用すれば良い。一般に有効であるのは下記(c1)〜(c5)の化合物であり、これらの中から好ましい化合物を必要量添加することができる。また、これらの群の中2種以上をお互いの促進効果が阻害されない範囲内で適宜選択して併用することができる。
【0044】(c1)有機または無機の酸無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2−クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、燐酸・ホスホン酸類(燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)を挙げることができる。
【0045】(c2)有機または無機の塩基無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど、有機塩基化合物としてはアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)、金属アルコキサイド(ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなど)を挙げることができる。
【0046】(c3)金属キレート化合物一般式R10OH(式中、R10は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、で表されるアルコールとR11COCH2 COR12(式中、R11は炭素数1〜6のアルキル基、R12は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜16のアルコキシ基を示す)で表されるジケトンを配位子とした、金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明の金属キレート化合物として特に好ましいものは中心金属にAl、Ti、Zrを有するものであり、一般式 Zr(OR10) p1(R11COCHCOR12)p2、Ti (OR10)q1(R11COCHCOR12)q2および Al(OR10) r1(R11COCHCOR12)r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記(a) ないし(b) 成分の縮合反応を促進する作用をなす。
【0047】金属キレート化合物中のR10およびR11は、同一または異なってもよく炭素数1〜6のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R12は、前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基などである。また、金属キレート化合物中のp1 、p2、 q1 、 q2 、 r1 、 r2 は4または6座配位となる様に決定される整数を表す。
【0048】これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0049】(c4)有機金属化合物好ましい有機金属化合物としては特に制限はないが有機遷移金属が活性が高く、好ましい。中でもスズの化合物は安定性と活性が良く特に好ましい。これらの具体的化合物例としては、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2 、(C8 H17)2Sn(OCOC11H23)2 、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、Sn(OCOCC8H17)2などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2
【0050】
【化7】


【0051】などのメルカプチド型やスルフィド型の有機スズ化合物、
【0052】(C4H9)2SnO 、(C8H17)2SnO 、または(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO などの有機スズオキサイドとエチルシリケートマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などを挙げることができる。
【0053】(c5)金属塩類金属塩類としては有機酸のアルカリ金属塩(例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなど)が好ましく用いられる。
【0054】ゾルゲル触媒化合物の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるオルガノシランに対し、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0055】(d)溶媒溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、本発明の組成物の固形分調製をすると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性及び保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等が好適である。
【0056】このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec −ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0057】また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。有機溶媒の組成物中の割合は特に限定されるものではなく、全固形分濃度を使用目的に応じて調節する量が用いられる。
【0058】(e)キレート配位子化合物ゾル液に金属錯体化合物を用いる場合、硬化反応速度の調節や液安定性向上の観点でキレート配位能のある化合物を用いることも好ましい。好ましく用いられるものとしては一般式R10COCH2COR11で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類であり、本発明の組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記促進液中に存在する金属キレート化合物(好ましくはジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物による(a) ないし(b) 成分の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる膜の硬化速度をコントロールするものと考えられる。R10およびR11は、前記金属キレート化合物を構成するR10およびR11と同義であるが、使用に際して同一構造である必要はない。
【0059】このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。かかるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、金属キレート化合物1モルに対し2モル以上、好ましくは3〜20モルであり、2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るものとなる。
【0060】(f)水本発明の好ましいゾル液には、前記(a) ないし(b) 成分の加水分解・縮合反応用として水を添加する。水の使用量は、(a) ないし(b) 成分1モルに対し、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル、程度である。本発明の好ましいゾル液は、その全固形分濃度が、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%であり、50重量%を超えると、組成物の保存安定性が悪化して好ましくない。
【0061】(g)充填剤本発明のゾル液には、得られる塗膜の硬度向上を目的としてコロイド状シリカを添加することも可能である。このコロイド状シリカとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
【0062】本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、凹凸性の付与、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、上記コロイド状シリカの他に充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑上、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
【0063】これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。充填材を用いる場合の組成物中の割合は、ゾル液の全固形分100重量部に対し、10〜300重量部程度である。
【0064】(h)その他の添加物本発明のゾル液及び促進液には、そのほかオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0065】さらに、本発明のゾル液中には、前記溶媒以外の溶剤を含有させることができ、かかる溶剤としては、前記(a) 〜(c) 成分を混合した際に、沈澱を生起しない溶剤であればどのようなものでもよく、一般の塗料、コーティング剤などに用いられる脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類などを挙げることができ、この具体例としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどである。これらの有機溶剤は、本発明の組成物100重量部に対し、通常、100重量部以下程度使用される。
【0066】本発明のゾル液を調製するに際しては、前記(a)ないし(b) 成分を含有する組成物に水を添加して加水分解する方法であれば如何なる方法でもよい。この時必要に応じて加水分解を促進するために触媒を用いても良い。用いる触媒の量は、液の経時安定性を損なわない範囲であれば特に制限はない。例えば下記■〜■の調製方法が好ましい。
【0067】■ (a)ないし(b) 成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、オルガノシラン類1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行う方法。
■ (a)成分と溶媒からなる溶液に、オルガノシラン類1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで加水分解触媒と必要に応じて(b)成分を添加する方法。
■ (a)成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、オルガノシラン類1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで(b)成分を加えて混合し、さらに縮合反応を行なう方法。
【0068】本発明のゾル液をカーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、透明フィルムあるいは高屈折率層または中屈折率層等に塗布−乾燥して低屈折率層は形成される。この場合、加水分解のタイミングは製造工程中の如何なる時期であっても構わない。例えば、予め必要な組成の液を加水分解部分縮合して目的のゾル液を調製し、それを塗布−乾燥する方法、必要な組成の液を調製し塗布と同時に加水分解部分縮合させながら乾燥する方法、塗布−一次乾燥後、加水分解に必要な水含有液を重ねて塗布し加水分解させる方法等を好適に採用できる。また、塗布方法としては、様々な形態をとることが可能であるが、生産性を重視する場合には多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になる様に吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が好適に用いられる。
【0069】上記の加水分解の温度は、加水分解反応の開始から、塗布の終了までに適用される。従って本発明における塗布の温度は50℃以下、より好ましくは10℃ないし50℃、特に好ましくは20℃ないし45℃である。加水分解反応時間はやはり部分縮合反応が進行しすぎないことを旨として決定されるが、一般に30分以内であれば本発明の意図する目的を達成可能であり、好ましくは20分以内、特に好ましくは1分ないし15分の範囲である。塗布後の乾燥温度は、支持体の変形を起こさない範囲であれば特に制限は無いが、好ましくは150℃以下、より好ましくは30ないし150℃、特に好ましくは50℃ないし130℃である。前記の加水分解の温度が50℃を超えた場合、オルガノシランの加水分解−縮合反応が進行し、コロイド状シリカの形成が進む。このコロイド状シリカは硬質な粒子であり、この粒子を含む塗布液を塗布後、百数十度程度の比較的低温で乾燥硬化させても粒子の融着は起こらず、均質で強固な膜を得ることはできない。本発明の温度範囲であれば、融着し易い部分縮合物を硬化して強固な被膜を形成することができる。
【0070】本発明では硬化促進の目的で形成された低屈折率層にエネルギー線の照射を行っても良い。その照射線種に特に制限はないが、支持体の変形や変性に対する影響を勘案し、紫外線、電子線あるいはマイクロ波の照射を特に好ましく用いることができる。照射強度は30mJ/cm2 ないし500mJ/cm2 であり、特に好ましくは50mJ/cm2 ないし400mJ/cm2 である。照射温度は室温から支持体の変形温度の間を制限無く採用することが可能であり、好ましくは30℃ないし150℃、特に好ましくは50℃ないし130℃である。
【0071】本発明の反射防止膜は、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層■が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層■の上に形成され、2層以上の層より構成されることが好ましい。低屈折率層の屈折率は1.45以下が好ましく、特に1.40以下が好ましい。高屈折率層の屈折率は1.7以上が好ましく、特に1.75以上が好ましい。また、これらの層が支持体、好ましくは透明フィルム上に塗設されていることが好ましい。
【0072】また、本発明の反射防止膜は、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層■が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層■の上に形成され、高屈折率層■に隣接し、低屈折率層■の反対側に中屈折率層■が、さらに層■(支持体下塗など)の屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する中屈折率層の上に高屈折率層が形成された4層より構成されることが特に好ましい。低屈折率層に隣接する高屈折率層の屈折率として、1.7以上が好ましく、特に1.75以上が好ましい。また、これらの層が支持体、好ましくは透明フィルム上に塗設されていることが好ましい。
【0073】それぞれの層の膜厚は、層■が50〜200nm、層■が50〜200nm、層■が50〜200nm、層■が1μm〜100μmが好ましく、更に好ましくは層■が60〜150nm、層■が50〜150nm、層■が60〜150nm、層■が5〜20μm、特に好ましくは層■が60〜120nm、層■が50〜100nm、層■が60〜120nm、層■が5〜10μmである。層■は屈折率が1.60以下であることが好ましく、層■は層■と層■の中間の屈折率が好ましい。
【0074】本発明の反射防止膜の代表例を図1に示す。高屈折率層12が透明フィルム(支持体)13上に形成され、さらに低屈折率層11が高屈折率層12上に形成されている。反射防止膜を構成する層数の増加は、通常反射防止膜が適用可能な光の波長範囲を拡大する。これは、金属化合物を用いる従来の多層膜の形成原理に基づくものである。
【0075】上記二層を有する反射防止膜では、高屈折率層12及び低屈折率層11がそれぞれ下記の条件(1) 及び(2) を一般に満足する。
mλ/4×0.7<n1 1 < mλ/4×1.3 (1) nλ/4×0.7<n2 2 < nλ/4×1.3 (2)上記式に於て、mは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n1 は高屈折率層の屈折率を表し、d1 は高屈折率層の層厚(nm)を表し、nは正の奇数(一般に、1)を表し、n2 は低屈折率層の屈折率を表し、そしてd2 は低屈折率層の層厚(nm)を表す。高屈折率層の屈折率n1 は、一般に透明フィルムより少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率n2 は、一般に高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明フィルムより少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率n1 は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。上記条件(1) 及び(2) は、従来から良く知られた条件であり、例えば、特開昭59−50401号公報に記載されている。
【0076】本発明の反射防止膜の他の代表例を図2に示す。下塗層20と中屈折率層22が透明フィルム(支持体)23上に形成され、高屈折率層24が中屈折層22上に形成され、さらに低屈折率層21が高屈折率層24上に形成されている。中屈折層率22の屈折率は、高屈折率層24と下塗層20との間の値を有する。図2の反射防止膜は、図1の反射防止膜に比較して、更に適用可能な光の波長領域が拡がっている。
【0077】三層を有する反射防止膜の場合、中、高及び低屈折率層がそれぞれ下記の条件(3) 〜(5) を一般に満足する。
hλ/4×0.7<n3 3 <hλ/4×1.3 (3) kλ/4×0.7<n4 4 <kλ/4×1.3 (4) jλ/4×0.7<n5 5 <jλ/4×1.3 (5)上記式に於て、hは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n3 は中屈折率層の屈折率を表し、d3 は中屈折率層の層厚(nm)を表し、kは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n4 は高屈折率層の屈折率を表し、d4 は高屈折率層の層厚(nm)を表し、jは正の奇数(一般に、1)を表し、n5 は低屈折率層の屈折率を表し、そしてd5 は低屈折率層の層厚(nm)を表す。中屈折率層の屈折率n3 は、一般に1.5〜1.7の範囲にあり、高屈折率層の屈折率n4 は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。
【0078】本発明の反射防止膜は、一般に、支持体とその上に設けられた低屈折率層からなる。支持体は通常、透明フィルムである。透明フィルムを形成する材料としては、セルロース誘導体(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース及びニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート(例、米国特許第3,023,101号に記載のもの)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボキシレート及び特公昭48−40414号公報に記載のポリエステル)、ポリスチレン、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン)、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びポリオキシエチレンを挙げることができる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートが好ましい。透明フィルムの屈折率は1.40〜1.60が好ましい。
【0079】本発明の反射防止膜が、多層膜である場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。上記より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性樹脂(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱硬化性樹脂組成物(例、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ないしエポキシ樹脂などを硬化剤とする樹脂組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式ないしは芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性樹脂またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。上記より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。上記に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いられる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記に述べた有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、繊維素系重合体、ウレタン樹脂およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0080】さらに有機置換されたケイ素系化合物をこれに含めることができる。これらのケイ素系化合物は一般式:R51m 52n SiZ(4-m-n
(ここでR51及びR52は、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルもしくはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子もしくはアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。)で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。
【0081】これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末ないしは水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
【0082】上記より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマー)を挙げることができる。これらの好適な例としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec −ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec −ブトキシド及びジルコニウムテトラ−tert−ブトキシドなどの金属アルコレート化合物;ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジエトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトンジルコニウム)、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート及びトリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテートなどのキレート化合物;さらには炭素ジルコニルアンモニウムあるいはジルコニウムを主成分とする活性無機ポリマーなどを挙げることができる。上記に述べた他に、屈折率が比較的低いが上記の化合物と併用できるものとしてとくに各種のアルキルシリケート類もしくはその加水分解物、微粒子状シリカとくにコロイド状に分散したシリカゲルも使用することができる。
【0083】本発明の反射防止膜は、表面にアンチグレア機能(即ち、入射光を表面で散乱させて膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を有するように処理することができる。例えば、このような機能を有する反射防止膜は、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止膜(例、低屈折率層等)を形成することにより得られる。上記微細な凹凸の形成は、例えば、無機又は有機の微粒子を含む層を透明フィルム表面に形成することにより行なわれる。50nm〜2μm の粒径を有する微粒子を低屈折率層形成塗布液に、0.1〜50重量%の量で導入し、反射防止膜の最上層に凹凸を形成しても良い。アンチグレア機能を有する(即ち、アンチグレア処理された)反射防止膜は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0084】本発明の反射防止膜(アンチグレア機能を有する反射防止膜が好ましい)は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エクレトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置に組み込むことができる。このような反射防止膜を有する画像表示装置は、入射光の反射が防止され、視認性が格段に向上する。本発明の反射防止膜を備えた液晶表示装置(LCD)は、たとえば、下記の構成を有する。透明電極を有する一対の基板とその間に封入されたネマチック液晶からなる液晶セル、及び液晶セルの両側に配置された偏光板からなる液晶表示装置であって、少なくとも一方の偏光板が表面に本発明の反射防止膜を備えている液晶表示装置。
【0085】本発明においては、中間層としてハードコート層、防湿防止層、帯電防止層、電磁波吸収層、紫外線吸収層、可視光線吸収層、赤外線吸収層等等を、透明フィルム上に設けることもできる。ハードコート層としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー及び/又はオリゴマー及びモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)の他に、シリカ系の材料も使用することができる。
【0086】
【実施例】以下に実施例を挙げ本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0087】(実施例1) 反射防止フイルムの作成と評価(1)シリル基含有ビニル系樹脂(P−4)の調製還流冷却器、攪拌機を装着した1リットル三ツ口フラスコに、フッ素モノマーFM−4 36g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 4g、メチルエチルケトン 60mlを入れ、窒素気流下80℃に加熱攪拌した。2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)よりV−65の名称で市販)1.2gをメチルエチルケトン50mlに溶解した溶液を添加すると同時に、540gのFM−4、60gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの混合物に12gのV−65を溶解した溶液の滴下を開始し、以後等速で6時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、2.4gのV−65を50mlのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加え、80℃でさらに4時間加熱攪拌を行い、メチルエチルケトン560mlを加えて冷却する事により標記P−6の溶液1205gを得た。固形分含量は52.8%、得られたポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量は14600であった。
【0088】(2)低屈折率層用ゾル液の調製攪拌機、還流冷却器を備えた反応器にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン20g、テトラエトキシシラン 20g、エタノール40gを加え混合したのち、0.1N塩酸5gとイオン交換水20gを加え、40℃で10分間反応させたのち、室温まで急冷し、低屈折率層用ゾル液Aを得た。必要に応じて添加する成分を変更した同様の反応で、表1に示す本発明に属するゾル液B〜Hを得た。
【0089】
【表1】


【0090】(3)第1層(ハードコート層)の塗布液の調製ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125gおよびウレタンアクリレートオリゴマー(UV−6300B、日本合成化学工業(株)製)125gを、439gの工業用変性エタノールに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。混合物を撹拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層の塗布液を調製した。
【0091】(4)二酸化チタン分散物の調製二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬(株)製)4.5重量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人(株)製)0.3重量部およびメチルエチルケトン65.2重量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0092】(5)第2層(中屈折率層)塗布液の調製シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0093】(6)第3層(高屈折率層)塗布液の調製シクロヘキサノン1152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0094】(7)反射防止膜の作成80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、ゼラチン下塗り層を設けた。ゼラチン下塗り層の上に、上記のハードコート層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ6.5μmのハードコート層を形成した。ハードコート層の上に、上記中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率:1.72、厚さ:0.081μm)を形成した。中屈折率層の上に、上記高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率:1.92、厚さ:0.053μm)を形成した。高屈折率層の上に、上記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、130℃で5分間乾燥し、低屈折率層(屈折率:1.39、厚さ:0.069μm)を形成し、反射防止フイルムサンプル1(本発明)を得た。この時、ゾル液の加水分解開始から乾燥完了まで18分であった。
【0095】第3層まで塗布したフイルム上に上記実施例と同様に、表1に示す本発明のゾル液B〜Hを厚さ0.07μmになるように第4層として塗設し、各温度で乾燥後、反射防止フイルムサンプル2〜8(本発明)を、また比較例として表2に示した比較フイルムW〜Zを作製した。
【0096】(8)塗設フィルムの性能評価こうして得られた第1〜4層を塗設したフィルム1〜8およびW〜Zについて下記の性能評価を実施した。
【0097】(1)平均反射率分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5゜における分光反射率を測定した。反射防止性能は広い波長領域において反射率が小さいほど良好であるため、測定結果から450〜650nmにおける平均反射率を求めた。
(2)表面接触角反射防止膜を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、水に対する接触角を測定した。
(3)指紋付着性反射防止膜表面に指紋を付着させて、それをクリーニングクロスで拭き取った時の状態を観察して、以下の3段階で評価した。
A:指紋が完全に拭き取れたB:指紋の一部が拭き取れずに残ったC:指紋のほとんどが拭き取れずに残った(4)耐傷性反射防止膜を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgの加重にて傷が全く認められない硬度を測定した。
(5)膜表面強度膜表面強度は、手指先、ティッシュ、消しゴム、手指爪先でそれぞれこすり、目視観察し、手指先こすりで傷付くものを0、ティッシュでこすり傷付くものを1、消しゴムこすりで傷付くものを2、手指爪先こすりで傷付くものを3、どの方法でも傷が認められないものを4とした。
(6)平面性平面性は水平な台の上に20cm四方の正方形に切り出した本発明のフイルムを置き、目視で光像の変形具合を観察し、全く変形の認められないものをA、若干認められるものをB、変形のあるものをC、変形著しいものをDと4段階で官能評価した。それぞれの結果を表2にまとめて示した。
【0098】
【表2】


【0099】本実施例から明らかなように、本発明の反射防止膜は非常に低い表面反射率と広い波長領域を有し、かつ十分に強靱な膜強度と平面性を両立していることがわかる。また、指紋跡もティッシュふき取りで容易に消す事ができ耐汚れ付着性も良好であった。一方、比較例では表面反射率の低減は認められるものの、膜強度、表面の汚れ防止性能、拭き取り性、平面性との両立ができないものであった。
【0100】(実施例2) 反射防止フィルムを設置した表示装置の作成と評価上記実施例1で作成した本発明の反射防止フィルム1〜8及び比較フイルムW〜Zを日本電気株式会社製のパーソナルコンピューターPC9821NS/340Wの液晶ディスプレイ表面に貼り付け、表面装置サンプルを作成し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。本発明の反射防止フィルム1〜8を設置した表示装置は周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較フィルムW〜Zを設置した表示装置は周囲の映り込みは低減したものの、表面強度や平面性に著しく劣るものであった。
【0101】
【発明の効果】本発明では、オルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物を塗設して低屈折率層を形成するにあたり、該オルガノシランの加水分解から塗布完了までが40℃以下であり、かつ加水分解開始から塗布−乾燥完了までが30分以内で低屈折率層を作成し、さらにその直下層の屈折率を1.7以上とすることにより、良好な光学特性、膜強度、脆性に優れた大面積の反射防止膜を安価にかつ製造適性を有した形で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止膜の代表的な一例の断面図を示す。
【図2】本発明の反射防止膜の代表的な別の一例の断面図を示す。
【符号の説明】
11、21:低屈折率層
12、24:高屈折率層
22:中屈折率層
13、23:透明フィルム
20:下方層(プライマー層、ハードコート層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上にオルガノシランの加水分解部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜において、該オルガノシランの加水分解開始から塗布完了までが50℃以下であり、かつ加水分解開始から塗布後の乾燥完了までが30分以内であることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】 該塗布後の乾燥温度が150℃以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】 該オルガノシランがアルコキシシランであることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止膜。
【請求項4】 該低屈折率層がオルガノシランに対してシリル基含有ポリマーを1〜200重量%含む混合物の加水分解部分縮合物から構成される組成物を塗設して形成されたものであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の反射防止膜。
【請求項5】 該オルガノシランの少なくとも1種がフッ素原子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−42102(P2001−42102A)
【公開日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−220252
【出願日】平成11年8月3日(1999.8.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】