説明

反射防止部を有する部材、その成形型及び該成形型の製造方法

【課題】光線入射角,部材表面の曲率及び面積等の影響を軽減し、前記曲面全体における反射防止効果の均一化を図ることができる反射防止部を有する部材の提供を目的とする。
【解決手段】部材10を形成する仮想の曲面12の少なくとも一部に、反射防止対象となる光線の波長以下のピッチで形成した微細周期凹凸構造からなる反射防止部11を有し、該反射防止部を形成する個々の凹凸部11a,11bの中心線を、反射防止部11が存在しないと仮定したときの曲面12の法線ベクトルとほぼ一致させた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レンズ表面の如き曲面に微細周期凹凸構造からなる反射防止部を形成した部材、その成形型及び該成形型の製造方法に関し、特に、前記曲面の全体における反射防止効果の均一化を図ることができ、部材表面の曲率が大きい場合や大面積の場合でも反射防止効果を全体的に有効に発揮することができる反射防止部を有する部材、その成形型及び該成形型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズ等の光学素子の表面における反射戻り光を減少させるため、該光学素子の表面にSub−Wavelength−Structure(SWS)と呼ばれる微細な凹凸構造からなる反射防止部を設けることが知られている。
【0003】
例えば、特開2003−43203では、目的とする光学素子の反転形状の成形面を成形型に形成し、次いで、成形面にエッチング速度傾斜材料からなる層を形成し、該傾斜材料層を、マスクを介してエッチングして前記成形面に多数の微細な凹凸部を略稠密状に形成し、この成形面上に光学素子となる原料を供給しプレス成形し、さらに原料を紫外線などで硬化させることで得られる光学素子、その成形型及び該光学素子の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−43203号公報(段落番号0012〜0026及び図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のSWS構造では、図8に示すように、該光学素子100の仮想曲面(SWS構造111が存在しないと仮定したときの曲面)112に、多数の微細な凹凸部111a,111bを全て鉛直方向に向かって突設した構成となっていた。このため、図9に示すように、凹凸部111a,111bに対する光線入射角θが大きくなるほど光線の反射率が高くなり、この結果、鉛直方向以外の方向から光線が入射された場合は、光学素子100の中心部から周辺部に近づくほど反射防止効果が低下してしまうという問題があった。
【0005】
この結果、上述した従来技術では、光学素子の中心部と周辺部とで反射防止効果が不均一となり、光学素子の表面の曲率が小さい場合や大面積の場合は、反射防止効果を全体的に有効に発揮することができないという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光線入射角,部材表面の曲率及び面積等の影響を軽減し、前記曲面全体における反射防止効果の均一化を図ることができる反射防止部を有する部材、その成形型及び該成形型の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る反射防止部を有する部材は、部材を形成する現実又は仮想の曲面の少なくとも一部に、反射防止対象となる光線の波長以下のピッチで形成した微細周期凹凸構造からなる反射防止部を有し、該反射防止部を形成する個々の凹凸部の中心線を、前記反射防止部が存在しないと仮定したときの前記曲面の法線ベクトルとほぼ一致させた構成としてある。
【0008】
好ましくは、前記反射防止部を形成する凹凸部のピッチを100〜400nmとした構成、前記部材の曲面を球面,非球面又は自由曲面とした構成、又は、前記部材を光学素子とした構成としてもよい。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る成形型は、前記反射防止部を有する部材を製造するための成形型であって、型面を形成する現実又は仮想の曲面の少なくとも一部に、前記反射防止部を反転させた微細周期凹凸部を有し、該微細周期凹凸部を形成する個々の凹凸部の中心線を、前記微細周期凹凸部が存在しないと仮定したときの前記曲面の法線ベクトルとほぼ一致させた構成としてある。
【0010】
好ましくは、前記微細周期凹凸部を形成する凹凸部のピッチを100〜400nmとした構成、前記型面を形成する曲面を球面,非球面又は自由曲面とした構成、又は、前記成形型を光学素子の製造用とした構成とする。
【0011】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係る成形型の製造方法は、前記成形型又は該成形型を製造するための鋳型の曲面に、前記微細周期凹凸部又はこれを反転させた微細周期凹凸部を、陽極酸化処理によって形成する工程を含む手順としてある。
【0012】
好ましくは、アルミニウムを陽極酸化処理することにより前記微細周期凹凸部又は該微細周期凹凸部を反転させた微細周期凹凸部を形成する工程を含む手順とするとともに、前記アルミニウムの純度を99%以上とし、又は、前記アルミニウムの表面粗さを50nm以下とする。より好ましくは、前記成形型又は鋳型となる基体に前記アルミニウムを成膜して陽極酸化するとともに、前記成形型又は鋳型となる基体に成膜した前記アルミニウムの膜厚を2μm以上とする。また、陽極酸化法により形成した前記微細周期凹凸部又はこれを反転させた微細周期凹凸部をNiメッキしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る反射防止部を有する部材によれば、該反射防止部を形成する個々の凹凸部を、それぞれ前記曲面(反射防止部が存在しないと仮定したときの曲面)の法線方向に向かってそれぞれ突出させたことにより、個々の凹凸部がそれぞれ前記曲面の曲率に応じた傾きをもつようになり、これが光線入射角,前記曲面の曲率及び面積等の影響を軽減し、前記曲面の中心部から周辺部にわたる全体の反射防止効果を均一化することができる。これにより、当該部材の表面の曲率が小さい場合や大面積の場合でも反射防止効果を全体的に有効に発揮することができる。
【0014】
また、本発明に係る反射防止部を有する成形型によれば、微細周期凹凸部の形状を成形材料に転写することで、上述した反射防止効果の均一な反射防止部を有する部材を安価且つ大量に製造することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る反射防止部を有する成形型の製造方法によれば、前記成形型又は該成形型の製造に用いる鋳型の曲面に、陽極酸化処理によって微細周期凹凸部を形成しているので、該微細周期凹凸部を構成する個々の凹凸部を、前記曲面の法線ベクトルの方向に向かせることができ、特に、前記曲面が広い面積であっても一様なピッチで該微細周期凹凸部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る反射防止部を有する部材、その成形型及び該成形型の製造方法について図面を参照しつつ説明する。まず、本発明の一実施形態に係る反射防止部を有する部材について、図1を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る反射防止部を有する部材(光学素子)を示す側面図である。
【0017】
同図において、光学素子(反射防止部を有する部材)10は両凸レンズであり、一方の凸面に反射防止部11を有している。該反射防止部11は、反射防止対象となる光線の波長以下のピッチで形成した多数の微細周期凹凸構造からなり、該反射防止部11を形成する個々の凹凸部11a,11bの中心線(図1中の拡大図における鎖線参照)を、該反射防止部11が存在しないと仮定したときの仮想曲面12の法線ベクトル(図1中の拡大図における前記鎖線参照)とほぼ一致させてある。
【0018】
このように、個々の凹凸部11a,11bの中心線を、該反射防止部11が存在しないと仮定したときの仮想曲面12の法線ベクトルと一致させたことにより、個々の凹凸部11a,11bの中心線は、それぞれ仮想曲面12の一点を通り、その点における接平面に直交している。すなわち、個々の凹凸部11a,11bは、それぞれが概念的に接する仮想曲面12に対してほぼ90°の方向を向いている。
【0019】
反射防止部11を形成する個々の凹凸部11a,11bは、それぞれがバラツキなく仮想曲面12に対してほぼ90°の方向を向いていることが望ましいが、型から部品を剥離する工程において、個々の凹凸形状には少なからずの撓みが発生し、剥離完了後に完全に復元しない場合を考慮すると、±5°程度の誤差は許容される。また、凸部11bの形状は、例えば、円錐,四角錐,三角錐等の錐体形状とし、反射防止効果が得られるならば、これら以外の釣り鐘状等の形状とすることもできる。
【0020】
さらに、本実施形態では、反射防止部11を形成する凹凸部11a,11bのピッチを可視光線の領域以下の100〜400nmとしてある。これにより、反射防止部11が可視光線を確実に透過して顕著な反射防止効果を奏することができる。これに加えて、光学素子10の仮想曲面12は、通常、レンズ面を形成する球面,非球面又は自由曲面のいずれでもよい。
【0021】
このような本実施形態に係る光学素子10によれば、反射防止部11を形成する個々の凹凸部11a,11bが、それぞれが接している仮想曲面12の法線方向を向いているので、個々の凹凸部11a,11bがそれぞれ仮想曲面12の曲率に応じた傾きをもつようになり、これが光線入射角θ(図8,9参照),仮想曲面12の曲率及び面積等の影響を軽減し、仮想曲面12の中心部から周辺部にわたる全体の反射防止効果を均一化することができる。これにより、当該光学素子10のレンズ面の曲率が小さい場合や大面積の場合でも反射防止効果を全体的に有効に発揮することができる。
【0022】
なお、上述した本実施形態では、反射防止部11を有する光学素子10の場合について説明したが、本発明の対象となる部材は、レンズや光学的な表示部等の光学素子に限定されるものではなく、例えば、光学素子を支持するための枠体など、光学素子以外の反射防止が必要な種々の部品又は完成品が対象となる。
【0023】
次に、本発明に係る反射防止部を有する部材を製造するための成形型の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る成形型は、紫外線硬化型樹脂の注型成形により両凸レンズを製造する場合のものであり、上型と下型それぞれが前記両凸レンズの両方のレンズ面に反射防止部を形成するようにしてある。
【0024】
図2(a)〜(e)は本実施形態に係る成形型(上型)であるNi型の製造工程を示す説明図である。また、図3(a)〜(e)は本実施形態に係る成形型(下型)であるガラス型の製造工程を示す説明図である。
【0025】
図2(e)において、上型であるNi(ニッケル)型30は、前記光学素子(両凸レンズ)の一方のレンズ面及び反射防止部を形成するためのものであり、その型面に多数の微細周期凹凸部31を有している。該微細周期凹凸部31を形成する個々の凹凸部の中心線は、該微細周期凹凸部31が存在しないと仮定したときの仮想曲面(同図(d)に示す該Ni型30が未だNi基体300であったときの現実の曲面310参照)の法線ベクトルとほぼ一致させてある。これにより、上述した光学素子10(図1参照)と同様の作用効果を奏する反射防止部を型成形することができる。なお、該Ni型30の微細周期凹凸部31も、可視光線反射の観点から凹凸部のピッチを100〜400nmとしてある。
【0026】
図3(d)において、下型であるガラス型40は、前記光学素子(両凸レンズ)の他方のレンズ面及び反射防止部を形成するためのものであり、その型面に上述したNi型30と同一の多数の微細周期凹凸部43を有している。
【0027】
このような本実施形態に係るNi型30,ガラス型40によれば、微細周期凹凸部31又は43の形状を成形材料に転写することで、上述したような反射防止効果の均一な反射防止部を有する光学素子を安価且つ大量に製造することができる。
【0028】
なお、上述したように、本発明に係る反射防止部を有する部材が光学素子に限定されないことより、本発明に係る成形型も、光学素子以外の部材に適用することが可能である。
【0029】
次に、本発明に係る成形型の製造方法の実施形態について、図2〜図3を参照しつつ説明する。まず、上述したNi型30の製造方法について図2(a)〜(e)を参照しつつ説明する。
【0030】
図2(a)において、200は、Ni型30に微細周期凹凸部31を形成するための鋳型20となるAl(アルミニウム)基体である。該Al基体200を陽極(+極)として電解浴中で陽極酸化処理を行うと、Al基体200の曲面210に、図2(b)に示すような微細で周期的な多数の凹凸部220a,220bからなるポーラス層220が形成される。
【0031】
個々の凹凸部220a,220bの中心線は、該凹凸部220a,220bが存在しないと仮定したときの曲面210の法線ベクトルとほぼ一致してしており(同図(b)拡大図中の鎖線参照)、個々の凹凸部220a,220bは、曲面210に対してほぼ90°の方向を向いている。
【0032】
次いで、図2(c)に示すように、Al基体200のポーラス層220を構成する凹凸部220a,220bを湿式又は乾式エッチングすることによって錐体状の凹凸部22a,22bに整形すると、微細周期凹凸部22を有する鋳型20が完成する。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、上述した鋳型20の微細周期凹凸部22に、Ni型30となるNi基体300が得られるまで電鋳によりNiを析出積層させる。これにより、該Ni基体300の曲面310上には、鋳型20の微細周期凹凸部22を精度よく反転させた形状の微細周期凹凸部31が形成される。最後に、Al溶解処理によって鋳型20を除去することにより、図2(e)に示すNi型30が完成する。
【0034】
次に、上述したガラス型40の製造方法について、図3(a)〜(e)を参照しつつ説明する。上述したように、図3(a)〜(e)はガラス型40の製造工程を示すものである。
【0035】
図3(a)において、400は、ガラス型40となるガラス基体であり、型面のベースを形成する曲面410を有している。まず、図3(b)に示すように、ガラス基体400の曲面410に、スパッタリングや真空蒸着などの物理蒸着によってAl膜420を成膜する。
【0036】
ここで、本実施形態では、Al膜420を形成するアルミニウムの純度を99%以上とするとともに、成膜した該アルミニウムの表面粗さを約50nm以下としている。これにより、後述する陽極酸化処理により形成される微細周期凹凸部43の個々の凹凸部43a,43bの均一性の向上を図ることができる。
【0037】
また、図3(b)のようにAl膜420を成膜する場合は、好ましくは、約2μm以上の膜厚を確保すべきである。仮に、Al膜420の膜厚を約2μm未満とした場合は、後述する陽極酸化処理において、成膜したアルミニウムが全て溶けてしまい、ガラス基体400が露出してしまうからである。
【0038】
次いで、Al膜420を成膜したガラス基体400を陽極として電解浴中で陽極酸化処理を行うと、図3(c)に示すように、微細で周期的な多数の凹凸部430a,430bからなるポーラス層430が形成される。
【0039】
個々の凹凸部430a,430bの中心線は、該凹凸部430a,430bが存在しないと仮定したときの曲面410の法線ベクトルとほぼ一致してしており(同図(c)拡大図中の鎖線参照)、個々の凹凸部430a,430bは、曲面410に対してほぼ90°の方向を向いている。
【0040】
その後、図3(d)に示すように、ガラス基体400のポーラス層430を構成する凹凸部430a,430bを、湿式又は乾式エッチングすることによって錐体状の凹凸部43a,43bを形成する。さらに、この状態においてエッチングを継続すると、図3(e)に示すように、ガラス基体400の曲面410に微細凹凸形状が形成される。そして、残存したAl層を溶解等の手段で除去することにより、微細周期凹凸部43を有するガラス型40が完成する。また、図示しないが、Al膜420の微細周期凹凸部43をNiメッキすることによって、成形型としての強度及び耐久性の向上を図ることができる。
【0041】
このような本実施形態のNi型30及びガラス型40の製造方法によれば、成形型の基体又は成形型の製造に用いる鋳型の基体200,400の曲面210,410に、陽極酸化処理によって微細周期凹凸部22,43を形成しているので、該微細周期凹凸部22,43を構成する個々の凹凸部22a,22b又は43a,43bを、曲面210,410の法線ベクトルの方向に向かせることができ、特に、曲面210,410が広い面積であっても一様なピッチで該微細周期凹凸部22,43を形成することができる。
【0042】
次に、上述した本実施形態のNi型30及びガラス型40を用いた光学素子の製造方法について、図4(a),(b)及び図5(a),(b)を参照しつつ説明する。図4(a),(b)はNi型30及びガラス型40への樹脂材料の供給工程を示す説明図、図5(a)は樹脂材料の硬化工程,図5(b)は離型工程を示す説明図である。
【0043】
図4(a)おいて、Ni型30を上型、ガラス型40を下型として配置し、両成形型30,40を相対接近させて、図4(b)に示すような、微細周期凹凸部31,43に囲まれたキャビティを形成する。そして、図示しない樹脂材料供給装置に接続したシリンジ50によって紫外線硬化樹脂700(図5(a)参照)を前記キャビティ内に充填する。
【0044】
次いで、図5(a)に示すように、ガラス型40を介して、紫外線照射装置60により紫外線を照射して前記キャビティ内の紫外線硬化樹脂700を硬化させる。その後、図5(b)に示すように、Ni型30及びガラス型40を離型して、成形品たる光学素子(両凸レンズ)70を取り出す。該光学素子70は、その光学面に微細周期凹凸部31,43の反転形状である反射防止部71,72を有し、これら反射防止部71,72を形成する個々の凹凸部は、それぞれが概念的に接する仮想曲面(図示せず)の法線方向を向いている(図1の拡大図参照)。
【0045】
ここで、これら反射防止部71,72の個々の凹凸部が仮想曲面(図示せず)の法線方向を向いているため、図5(b)における離型にはアンダカットを考慮する必要がある。そこで、例えば、Ni型30を図6に示すような分割型30A,30B,30C,30D,30Eに五分割し、図面に付した「1」〜「5」の順番で、分割型30Aを垂直方向にスライドさせた後、分割型30B,30C,30D,30Eを、反射防止部71,72の個々の凹凸部の向きである前記仮想曲面の法線方向にスライドさせることにより、スムーズに離型することができる。
【0046】
さらに、図7(a)〜(c)に示すように、成形品たる光学素子80が凹レンズのような場合は、例えば、Ni型30を同図(a)に示すような分割型30A,30B,30C,30D,30Eに五分割し、図面に付した「1」〜「5」の順番で、分割型30Aを垂直方向にスライドさせた後、分割型30B,30C,30D,30Eを、反射防止部81の個々の凹凸部の向きである仮想曲面の法線方向(同図(b),(c)中の「1」〜「5」の番号を付した矢印方向)にスライドさせることにより、スムーズに離型することができる。
【0047】
なお、図6及び図7いずれの場合も、分割型30Aを最初にスライドさせることは必須であるが、分割型30B,30C,30D,30Eは、全て同時又は図面に付した「2」〜「5」とは異なる順序でスライドさせてもかまわない。また、Ni型30に限らず、ガラス型40の場合も上記と同様である。また、アンダカットが多少の場合は成形型を分割することなく垂直に離型することが可能な場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る反射防止部を有する部材(光学素子)を示す側面図である。
【図2】同図(a)〜(e)は本実施形態に係る成形型(上型)であるNi型の製造工程を示す説明図である。
【図3】同図(a)〜(e)は本実施形態に係る成形型(下型)であるガラス型の製造工程を示す説明図である。
【図4】同図(a),(b)は上記Ni型及びガラス型を用いた光学素子の製造方法における成形型への樹脂材料供給工程を示す説明図である。
【図5】同じく上記Ni型及びガラス型を用いた光学素子の製造方法を示すものであり、同図(a)は樹脂材料の硬化工程,同図(b)は離型工程を示す説明図である。
【図6】上記Ni型の分割型とその離型の順序を示す説明図である。
【図7】同じく上記Ni型の分割型とその離型の順序を示す説明図であり、同図(a)は平面図,同図(b)は同図(a)のA−A線矢視図,同図(c)は同図(a)のB−B線矢視図である。
【図8】従来の反射防止部(SWS構造)を有する光学素子を示す側面図である。
【図9】従来の反射防止部(SWS構造)の光線入射角θと反射率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
10 光学素子(反射防止部を有する部材)
11 反射防止部(微細周期凹凸構造)
11a,11b 凹凸部
12 曲面
20 鋳型
22 微細周期凹凸部
22a,22b 凹凸部
30 Ni型(成形型)
31 微細周期凹凸部
40 ガラス型(成形型)
43 微細周期凹凸部
43a,43b 凹凸部
50 シリンジ
60 紫外線照射装置
70 光学素子(反射防止部を有する部材)
71,72 反射防止部(微細周期凹凸構造)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を形成する現実又は仮想の曲面の少なくとも一部に、反射防止対象となる光線の波長以下のピッチで形成した微細周期凹凸構造からなる反射防止部を有し、該反射防止部を形成する個々の凹凸部の中心線を、前記反射防止部が存在しないと仮定したときの前記曲面の法線ベクトルとほぼ一致させたことを特徴とする反射防止部を有する部材。
【請求項2】
前記反射防止部を形成する凹凸部のピッチを100〜400nmとしたことを特徴とする請求項1記載の反射防止部を有する部材。
【請求項3】
前記部材の曲面を球面,非球面又は自由曲面としたことを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止部を有する部材。
【請求項4】
前記部材を光学素子としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の反射防止部を有する部材。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4記載の反射防止部を有する部材を製造するための成形型であって、型面を形成する現実又は仮想の曲面の少なくとも一部に、前記反射防止部を反転させた微細周期凹凸部を有し、該微細周期凹凸部を形成する個々の凹凸部の中心線を、前記微細周期凹凸部が存在しないと仮定したときの前記曲面の法線ベクトルとほぼ一致させたことを特徴とする成形型。
【請求項6】
前記微細周期凹凸部を形成する凹凸部のピッチを100〜400nmとしたことを特徴とする請求項5記載の成形型。
【請求項7】
前記型面を形成する曲面を球面,非球面又は自由曲面としたことを特徴とする請求項5又は6記載の成形型。
【請求項8】
前記成形型を光学素子の製造用としたことを特徴とする請求項5,6又は7記載の成形型。
【請求項9】
請求項5,6,7又は8記載の成形型を製造するための方法であって、前記成形型又は該成形型を製造するための鋳型の曲面に、前記微細周期凹凸部又はこれを反転させた微細周期凹凸部を、陽極酸化処理によって形成する工程を含むことを特徴とする成形型の製造方法。
【請求項10】
アルミニウムを陽極酸化処理することにより前記微細周期凹凸部又は該微細周期凹凸部を反転させた微細周期凹凸部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項9記載の成形型の製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウムの純度を99%以上としたことを特徴とする請求項10記載の成形型の製造方法。
【請求項12】
前記アルミニウムの表面粗さを50nm以下としたことを特徴とする請求項10又は11記載の成形型の製造方法。
【請求項13】
前記成形型又は鋳型となる基体に前記アルミニウムを成膜して陽極酸化することを特徴とする請求項10,11又は12記載の成形型の製造方法。
【請求項14】
前記成形型又は鋳型となる基体に成膜した前記アルミニウムの膜厚を2μm以上としたことを特徴とする請求項13記載の成形型の製造方法。
【請求項15】
陽極酸化法により形成した前記微細周期凹凸部又はこれを反転させた微細周期凹凸部をNiメッキすることを特徴とする請求項9,10,11,12,13又は14記載の成形型の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53220(P2006−53220A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233167(P2004−233167)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】