説明

反応カード及び自動分析装置

【課題】再検査における検体の分析時間を短縮できる反応カードおよび自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体と試薬とを分注して免疫学的凝集反応を行わせる複数の反応容器52と各反応容器に分注される予備の検体を収容する検体収容容器51とを有した反応カード5と、分析結果によって再検査対象となった反応カードを一時保管するカード保管部39と、を備えた自動分析装置であって、再検査を行う場合に、カード保管部39に一時保管された反応カード5の検体収容容器51に収容された検体を用いることで、再検査対象の検体を分析装置に再配置することなく、分析を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的凝集反応を行う反応カード及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血漿、血球または血清などの検体を免疫学的に分析する分析方法においては、検査内容に対応した試薬を専用の反応カード内の反応容器で検体と混和して反応させ、必要に応じてインキュベーションを行った後、その反応カードを遠心器で遠心することによって生じる反応像から凝集の有無を確認し、検体と試薬との凝集反応パターンをもとに検体が抗体または抗原に対して陰性であるか陽性であるかを判定する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、上述した反応カードは、抗原または抗体による凝集反応パターンから陰性または陽性の判定を行ってABO式血液型判定を行う他、抗A抗体及び抗B抗体のような規則抗体以外の抗体(不規則抗体)であって、赤血球膜抗原による凝集反応パターンからRh式血液型の判定、および赤血球抗原による不規則抗体の有無を判定することができる。特に、輸血においては、血液凝集または溶血を防ぐために検査の精度が重要となる。
【0004】
なお、反応カードを用いて血液中の抗原又は抗体を同定する方法において、ABO式血液型判定を行う場合、検体に対する抗A血清、抗B血清、A型赤血球、及びB型赤血球の各凝集反応の有無にそれぞれ分けて分析される。抗A血清と抗B血清とを用いて、血球側から分析するおもて試験と、A型赤血球とB型赤血球とを用いて血清側から分析するうら試験とを行い、検体がA抗原及び/又はB抗原並びに抗A抗体及び/又は抗B抗体を持つか否かを判定し、おもて試験とうら試験との相関性を確認することでABO式血液型を決定する。ここで、おもて試験とうら試験に相関性が見られない場合、血液型は決定できないため、再検査を行う。また、抗A抗体及び抗B抗体のような規則抗体に対し、不規則抗体の一つである抗D抗体は、Rh式血液型の中でも凝集または溶血に大きく影響する抗体であり、抗D抗体の有無を確認することは輸血を行う際に重要となる。これらの判定結果から輸血に用いられる血液型が決定される。
【0005】
また、上述した抗体の他にも多種類の抗体が存在することがわかっており、検体の血液中に存在する可能性がある。特に、溶血性輸血副作用または母児血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患等のおそれがあるため、検体中に不規則抗体が存在するか否かを確認し、不規則抗体が存在している場合は不規則抗体を同定して対応する必要がある。不規則抗体を確認する方法では、先ず、抗体スクリーニング用血球試薬を用いて、検体の血清または血漿中の不規則抗体の有無を抗原抗体反応によって確認する不規則抗体スクリーニングを行う。不規則抗体スクリーニングによる判定結果が陽性であった場合は、同定用血球試薬を用いて再検査を行い、不規則抗体を同定する。
【0006】
ところで、従来では上述した分析を、分析装置を用いて自動で行う場合がある。分析装置を用いることで、分析精度が高められ、より信頼性のあるデータを得ることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2007−322381号公報
【特許文献2】特開平8−7215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、分析装置において、不規則抗体スクリーニングが陽性であって不規則抗体の同定を行う場合等、検体の再検査では、分析担当者が当該検体の検体容器を再び検体ラックに配置して分析を再開する必要があり、この再配置操作によって分析処理に時間と労力を要していた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、再検査における検体の分析時間を短縮できる反応カードおよび自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる反応カードは、検体と試薬とが分注されて免疫学的凝集反応を行わせる複数の反応容器と各反応容器に分注される予備の検体または予備の希釈検体を収容する収容容器とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記収容容器は、各反応容器に対応して複数設けられ、各反応容器に隣接配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、検体と試薬とを分注して免疫学的凝集反応を行わせる複数の反応容器と各反応容器に分注される予備の検体または予備の希釈検体を収容する収容容器とを有した反応カードと、前記検体を搬送する検体搬送機構と、前記試薬を各反応容器に分注する試薬分注手段と、前記検体または希釈検体を各反応容器に分注するとともに前記収容容器に該検体または希釈検体を予備の検体として分注する検体分注手段と、複数の前記反応カードを収容し、前記試薬および検体が分注された反応カードの免疫学的凝集反応を行う反応手段と、前記反応手段によって前記免疫学的凝集反応が行われた結果をもとに前記検体の分析を行う分析手段と、前記分析手段の分析結果によって再検査対象となった反応カードを一時収容するカード収容部と、前記再検査対象となった反応カードがある場合に再検査対象カードを搬送し、当該反応カードに収容された前記予備の検体を分注して前記検体の分析を行う再検査制御手段と、前記カード収容部に収容された反応カードの収容容器の検体を、前記反応手段内に新たに収容された反応カードの各反応容器に分注する再検査検体分注手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応カードの収容容器は、各反応容器に対応して複数設けられ、各反応容器に隣接配置されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記カード収容部に収容された再検査対象の反応カードを前記反応手段に搬送する搬送手段を備え、前記再検査検体分注手段は、前記検体分注手段であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検体を希釈する検体希釈手段を備え、前記収容容器及び前記反応容器に収容される前記希釈検体は、前記検体希釈手段によって希釈された検体であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分析手段は、前記免疫学的凝集反応の反応結果をもとに、不規則抗体同定検査または再分析検査を含む再検査対象としての反応カードを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明よれば、反応カードの各反応容器に分注される予備の検体を収容する収容容器を設けたので、再検査を行う場合も検体容器を再度所定位置に配置させずに分析を継続できるため、検体の分析時間を短縮できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる自動分析装置1の概略構成を示す平面図である。自動分析装置1は、検体を搬送する搬送機構2と、検体および試薬を反応容器52にそれぞれ分注し、分注した反応容器52内で生じる反応を光学的に測定する測定機構3と、搬送機構2および測定機構3を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構3における測定結果の分析を行う制御機構4とを備える。
【0020】
検体搬送機構2は、検体容器21を配置する検体ラック22を保持して、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメントを有するキャタピラ23と、図1右の搬入レーンから分析機構3、図1左の搬出レーンへ検体ラックを搬送する搬送レーン25と、搬送レーン25上に配置され、搬送レーン25上を移動して検体ラック22を搬送するラック歩進ツメ24とを有し、図示しない駆動機構によって図中矢印方向に検体ラック22を搬送する。また、検体容器21には、バーコードが貼付され、図示しないバーコードリーダーによって読み取ることで、検体の情報を管理できる。
【0021】
測定機構3は、大別して試薬庫30、試薬分注機構31、反応テーブル32、カード移送機構33,37、カード取出口34、検体分注機構35、希釈液ボトル36、撮像部38およびカード保管部39を備える。また、制御機構4は、制御部41、入力部43、分析部44、記憶部45および出力部46を備える。測定機構3および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0022】
試薬庫30は、反応容器52内に分注される試薬が収容された試薬容器30aを複数収納できる。試薬庫30には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器30aが着脱自在に収納される。試薬庫30は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫30の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器30aを試薬分注機構31による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫30の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、試薬の蒸発や変性、コンタミネーションを抑制することができる。
【0023】
試薬分注機構31は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。試薬分注機構31は、試薬庫30上の所定位置に移動された試薬容器30a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを図中矢印回りに旋回させ、反応テーブル32上の所定位置に搬送された反応容器52に分注する。
【0024】
反応テーブル32は、反応容器52への検体や試薬の分注を行うための反応カード5を所定の位置に設けられたカード保持部に配置する。反応テーブル32は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル32の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル32の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽とがそれぞれ設けられている。また、反応テーブル32では、検体と試薬とを分注して、所定温度及び所定時間でインキュベーションすることで検体と試薬とを反応させた後、図示しない駆動機構によって反応テーブル32を回転させることで反応カード5が従動して回転し、遠心力が付加されることで、反応容器52に収容された検体と試薬とが反応した反応液を分離する。ここで、反応テーブル32のカード保持部は、反応テーブル32の径方向に延びる柱状部材であって、上端平面に開口部を有し、開口部から鉛直方向に形成された内部空間に反応カード5を保持する。また、カード保持部側面であって反応テーブル32の径方向と略平行な側面には、カード保持部の回転軸を取り付ける穴部が設けられ、反応テーブル32とカード保持部とは回転軸によって接触している。カード保持部は、反応テーブル32の回転によってかかる遠心力により、回転軸回りに回動する。反応カード5は、反応テーブル32の回転による遠心力がカード保持部から伝達され、反応カード下方に向かう力を受け、反応容器に収容された反応液がカード下方へ引きつけられるようになる。
【0025】
カード移送機構33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、反応カード5を把持するカード把持アームを有し、カード取出口34に用意される反応カード5を反応テーブル32に移送する。
【0026】
カード取出口34は、取出口下方にカード格納庫を有し、制御部41の制御によって分析に必要な反応カードをカード取出口34に配置する。
【0027】
検体分注機構35は、試薬分注機構31と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。また、検体分注機構35近傍には、洗浄ポッド35aと希釈ポッド35bとが設けられている。希釈ポッド35bでは、上述した検体搬送機構2上の所定位置に搬送された検体容器21の中からプローブによって検体を吸引し、アームを旋回させて希釈ポッド35b内に検体を吐出し、希釈液ボトル36に収容されている希釈液によって希釈される。希釈液ボトル36は、上方から外部に延びるチューブを有し、希釈ポッド35bに連通され、図示しないポンプまたはシリンジによって希釈液を希釈ポッド35b内に送る。検体分注機構35は、検体または希釈ポッド35bで希釈された検体を吸引し、反応容器52に検体を吐出して分注を行う。また、適宜洗浄ポッド35aでプローブの洗浄を行う。
【0028】
撮像部38は、カード移送機構37によって所定の撮像位置に搬送された反応カード5の反応容器52内の試料の測定を行う。この撮像部38による測定結果は、制御部41に出力され、分析部44において分析される。また、分析結果によって、再検査が不要となった反応カード5は、カード廃棄部38aに廃棄される。なお、分析結果によって再検査が必要である場合は、カード移送機構37によってカード保管部39に移送される。
【0029】
また、反応カード5は、予備の検体を収容する検体収容容器51と、試薬と検体とを分注して反応を行い、遠心によって試薬と検体とが反応した反応液を分離する反応容器52とを有する。検体収容容器51には、検体または希釈ポッド35bで希釈された検体であって、当該反応カード5の反応容器52に分注された検体と同一の検体を収容する。
【0030】
つぎに、制御機構4について説明する。制御部41は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部41は、再検査制御部42を有する。再検査制御部42は、制御部41からの再検査の指示があった場合、測定機構3に指示を出し、再検査の分析制御を行う。
【0031】
入力部43は、キーボード、マウス、通信機能等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部44は、撮像部38から取得した画像データに基づいて処理を行い、検体の分析を行う。記憶部45は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部45は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部46は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。
【0032】
以上のように構成された自動分析装置1では、複数の反応カード5に対して、検体分注機構35が検体または希釈ポッド35b中の希釈された検体を分注し、試薬分注機構31が試薬容器30a中の試薬を分注した後、撮像部38が、検体と試薬とが反応した反応液を遠心によって分離された状態の撮像処理を行い、この撮像データを分析部44が分析することで、検体の分析が自動的に行われる。
【0033】
つぎに、本発明の実施の形態にかかる反応カード5について、図2を参照して説明する。図2は、反応カード5を模式的に示す斜視図である。反応カード5は、カード状をなす本体部50と、本体部50の上端平面部に開口を有する検体収容容器51及び反応容器52と、本体部50に貼付され、識別用のバーコード53とを有する。
【0034】
検体収容容器51は、略円筒形状をなし、底部が略円錐状に形成され、検体または希釈ポッド35bで希釈された検体が検体分注機構35によって分注される。反応容器52は、略円筒形状をなし、検体と試薬とを反応させる反応部521と、反応部521の底部に連通して設けられ、反応の結果に応じた凝集の有無を判定するための反応像を生じさせる担体としてゲルまたはガラスビーズが充填されて、検体と試薬との抗原抗体反応による反応液を遠心器によって遠心したものを保持する分離部522とを有する。また、反応カード5は、半透明の樹脂を用いて形成されている。分析には、各反応部521にそれぞれの試薬が分注され、一枚の反応カードに1検体が各反応部521に分注され、検体収容容器51にも同一の検体が収容される。
【0035】
ここで、不規則抗体スクリーニングにおける分析処理を、図3を参照して説明する。図3は、制御部41における不規則抗体スクリーニングの分析処理を示すフローチャートである。
【0036】
制御部41が、不規則抗体スクリーニングの指示を受けると、先ず、検体と反応カード5のバーコードを図示しないバーコードリーダーが読み取り、記憶部45に検体と反応カード5とが対応した情報を記憶させ、反応テーブル32に反応カード5を配置する(ステップS102)。制御部41は、バーコード情報から対応させた反応カード5の反応容器52および検体収容容器51に検体をそれぞれ分注するよう検体分注機構35に指示し、試薬分注機構31が、分析に必要な試薬を各反応容器52に分注する(ステップS104)。反応容器52に検体と試薬との分注が完了すると、制御部41は、反応容器52に収容された検体と試薬とを反応テーブル32内で所定温度、所定時間インキュベーションさせ、所定時間経過後に遠心処理を行い、検体と試薬との混合液を反応容器52の分離部522の担体中に分離させる(ステップS106)。その後、制御部41は、分離部522で分離された凝集像を撮像部38で撮像処理し(ステップS108)、撮像処理によって得られた凝集像を分析するよう分析部44に指示を出す(ステップS110)。分析部44は、撮像部38によって得られた凝集像から不規則抗体が陽性であるか否かを判定する(ステップS112)。分析部44から出力された分析結果が、不規則抗体陽性であった場合(ステップS112:Yes)、制御部41は、当該反応カードをカード保管部39に移送させる(ステップS114)。カード保管部39に一時保管されている反応カード5は、その後再検査処理に用いられる(ステップS116)。制御部41は、次の検体の分析指示がある場合(ステップS118:Yes)、ステップS102に移行し、検体の分析処理を行う。また、次の検体の分析指示が無い場合(ステップS118:No)、分析処理を終了する。なお、ステップS112において、不規則抗体陰性である場合(ステップS112:No)、反応カードをカード廃棄部38aに廃棄し、ステップS118に移行して次検体の分析指示の有無を確認する。
【0037】
続いて、不規則抗体が陽性である場合の不規則抗体を同定する再検査について、図4を参照して説明する。図4は、図3のステップS116における再検査処理を示すフローチャートである。
【0038】
再検査制御部42は、制御部41から再検査指示を受けると、先ず、再検査対象の反応カード5のバーコードを読み取る(ステップS202)。読み取ったカード情報と、不規則抗体同定用の反応カード情報とを対応付けし、再検査制御部42は、カード移送機構37によって再検査対象の反応カード5をカード保管部39から反応テーブル32へ移送させる(ステップS204)。再検査制御部42は、再検査対象の反応カード5の検体収容容器51内に収容されている検体を、不規則抗体同定用の反応カードの各反応容器内に分注するよう指示を出す(ステップS206)。その後、再検査制御部42は、不規則抗体同定用の反応カードの各反応容器内に分析に必要な試薬をそれぞれ分注させ(ステップS208)、インキュベーション及び遠心処理を行って、検体と試薬との反応と分離とを行う(ステップS210)。分離されて得られた凝集像を撮像部38が撮像し(ステップS212)、分析部44が全同定用試薬に対して陽性か否かを分析する(ステップS214)。その後、ステップS116にリターンする。
【0039】
ここで、再検査に用いる反応カード5のバーコードの読み取りは、撮像部38で行ってもよく、カード保管部39にバーコードリーダーを設置してもよい。また、不規則抗体同定用の反応カードは、検体収容容器51を配置していないカードを用いてもよい。
【0040】
なお、再検査処理は、不規則抗体スクリーニングによる同定検査のほか、分析処理における如何なる再検査にも適用できる。
【0041】
ここで、図2に示す反応カードの変形例を、図5を参照して説明する。図5に示すように、反応カード5は、各反応容器52に隣接して検体収容容器51が複数配置されている。なお、反応カードを用いた分析方法では、本来、数種の抗原を含有した血球試薬を数本用意し、各反応部521内に分注して行う抗体スクリーニングを、一つの反応部521にすべての抗体スクリーニング用血球試薬を分注して抗体スクリーニングを行うことも可能である。この場合は、反応カード1枚に対して複数の検体の抗体スクリーニングを行う。各反応容器52に隣接させて検体収容容器51を複数配置することで、不規則抗体検査が陽性となった場合に、一枚の反応カードを保持するのみで複数の検体の抗体同定検査等の再検査に対応することが可能となる。
【0042】
また、図1に示した自動分析装置の変形例を、図6を参照して説明する。図6に示す自動分析装置1では、検体分注機構35をカード保管部39近傍に配置し、検体容器21と反応カード5の検体収容容器51に収容されている検体との分注を行う。検体分注機構35をカード保管部39近傍に配置することで、再検査を行う場合に、カード保管部39に保管された再検査対象の反応カードをカード移送機構37によって反応テーブル32に移送することなく、検体収容容器51に収容された検体を新規の反応カードに分注することができる。なお、カード保管部39に保管されている反応カード5の検体を検体分注機構35によって分注する場合、検体収容部51が図中の位置Pに配置されるようにカード移送機構37が反応カード5を移送させることで、検体分注機構35の吸引が可能となる。ここで、位置Pは、検体分注機構35のプローブの軌跡とカード移送機構37による反応カード5の検体収容部51の軌跡との交点である。
【0043】
本実施の形態では、反応カードに検体収容容器を設けて希釈された検体を収容することで、再検査を行う場合に、検体容器を再度分析装置に配置する必要が無く、分析処理にかかる時間を短縮することができるうえ、分析担当者にかかる労力を軽減することが可能となる。また、ラックを再び搬送機構に搬送する機構を装置に組み込まなくても、自動再検機能を提供することが出来るため、装置構成を単純にできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1にかかる反応カードを示す斜視図である。
【図3】不規則抗体スクリーニングの分析処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS116における再検査処理を示すフローチャートである。
【図5】図2に示す反応カードの変形例を示す斜視図である。
【図6】図1に示す自動分析装置の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 自動分析装置
2 搬送機構
3 測定機構
4 制御機構
5 反応カード
21 検体容器
22 検体ラック
23 キャタピラ
24 ラック歩進ツメ
25 搬送レーン
30 試薬庫
30a 試薬容器
31 試薬分注部
32 反応テーブル
33,37 カード移送機構
34 カード取出口
35 検体分注機構
36 希釈液ボトル
38 撮像部
39 カード保管部
41 制御部
42 再検査制御部
43 入力部
44 分析部
45 記憶部
46 出力部
50 本体部
51 検体収容容器
52 反応容器
521 反応部
522 分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とが分注されて免疫学的凝集反応を行わせる複数の反応容器と各反応容器に分注される予備の検体または予備の希釈検体を収容する収容容器とを備えたことを特徴とする反応カード。
【請求項2】
前記収容容器は、各反応容器に対応して複数設けられ、各反応容器に隣接配置されることを特徴とする請求項1に記載の反応カード。
【請求項3】
検体と試薬とを分注して免疫学的凝集反応を行わせる複数の反応容器と各反応容器に分注される予備の検体または予備の希釈検体を収容する収容容器とを有した反応カードと、
前記検体を搬送する検体搬送機構と、
前記試薬を各反応容器に分注する試薬分注手段と、
前記検体または希釈検体を各反応容器に分注するとともに前記収容容器に該検体または希釈検体を予備の検体として分注する検体分注手段と、
複数の前記反応カードを収容し、前記試薬および検体が分注された反応カードの免疫学的凝集反応を行う反応手段と、
前記反応手段によって前記免疫学的凝集反応が行われた結果をもとに前記検体の分析を行う分析手段と、
前記分析手段の分析結果によって再検査対象となった反応カードを一時収容するカード収容部と、
前記再検査対象となった反応カードがある場合に再検査対象カードを搬送し、当該反応カードに収容された前記予備の検体を分注して前記検体の分析を行う再検査制御手段と、
前記カード収容部に収容された反応カードの収容容器の検体を、前記反応手段内に新たに収容された反応カードの各反応容器に分注する再検査検体分注手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
前記反応カードの収容容器は、各反応容器に対応して複数設けられ、各反応容器に隣接配置されることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記カード収容部に収容された再検査対象の反応カードを前記反応手段に搬送する搬送手段を備え、前記再検査検体分注手段は、前記検体分注手段であることを特徴とする請求項3または4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記検体を希釈する検体希釈手段を備え、
前記収容容器及び前記反応容器に収容される前記希釈検体は、前記検体希釈手段によって希釈された検体であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記分析手段は、前記免疫学的凝集反応の反応結果をもとに、不規則抗体同定検査または再分析検査を含む再検査対象としての反応カードを決定することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−54232(P2010−54232A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216962(P2008−216962)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】