説明

反応器および連続重合方法

本発明は、反応器(10)および連続重合方法に関し、反応器(10)は、実質的に管状の反応器ハウジング(16)を備える。反応器ハウジング(16)は、流れ方向(22)において幾何学的中心線(12)に沿って伸びる駆動機構(38)を備え、駆動機構は、中心シャフトとして実施される。回転可能に配置されたスクレーパまたはワイパ(36)が反応器ハウジング(16)内に設けられ、スクレーパまたはワイパ(36)は、反応器ハウジング(16)の内側(44)に沿って進む少なくとも1つのスクレーパまたはワイパブレード(42)を有する。スクレーパまたはワイパ(36)の回転運動により反応器ハウジング(16)内の流れの半径方向混合が達成され、それが重力効果を圧し、スクレーパまたはワイパを成形することにより選択的に反応器(10)内の押出流、環流または逆流が可能となる。前記選択により、反応器ハウジング(16)の軸方向における反応状態を予測することができ、反応器ハウジングに沿って個々に好適な反応状態を調節しかつ制御することができ、それにより特に、所望の分子量分布を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器、特にチューブ反応器、ポリマー、特に合成ゴムの連続調製方法での反応器の使用、および上述した方法自体に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)は、垂直中心シャフトを有する本質的に管状のハウジングを有する熱交換器を開示している。この熱交換器はスクレーパを有しており、スクレーパは、スクレーパブレードを用いてハウジングの内側に沿って進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,282,925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした熱交換器の不都合は、反応状態を監視しかつその反応状態に影響を与えるには大変な困難が伴うため、連続重合用のチューブ反応器として使用することは困難である、ということである。特に、所望の分子量分布を設定することは容易に可能ではない。
【0005】
本発明の目的は、重合の反応状態に対してより容易に影響を与えることができ、特に、所望の分子量分布の設定をより容易することができる、反応器および連続重合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明により、請求項1の特徴を有する反応器および請求項17の特徴を有する方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態を従属請求項に示す。
【0007】
特に重合による合成ゴムの調製に使用することができる、連続重合用の本発明の反応器は、少なくとも1つの本質的に管状の反応器ハウジング備え、反応器ハウジングは、反応器ハウジング内で回転可能であるように配置される少なくとも1つのスクレーパまたはワイパに接続される駆動機構を有し、スクレーパまたはワイパは、反応器ハウジングの内側に沿って進む少なくとも1つのスクレーパまたはワイパブレードを有している。
【0008】
さらに、本発明の文脈では、「スクレーパ」または「ワイパ」という用語は、動作時に反応器ハウジングの内側に対して厳密に90°の角度を呈する要素も含むことが留意されるべきである。
【0009】
反応器ハウジングの内側からのスクレーパまたはワイパブレードの距離は、反応器ハウジングの半径方向直径に基づいて、たとえば、0%以上1%まで、好ましくは0%以上0.5%までである。反応器ハウジングの内側からのスクレーパまたはワイパブレードの距離が0%である、すなわちスクレーパまたはワイパブレードと反応器ハウジングの内側との間が接触する距離である一実施形態では、反応器ハウジングの内側は完全に掻き取られ、したがって、ゲルとしても知られるポリマー堆積物の形成を有効に回避することができるため、反応器ハウジングを通して反応媒体から冷却媒体への優れた熱伝達が確実になる。また、反応器ハウジングの内側からのスクレーパまたはワイパブレードの上述した距離の場合、代替実施形態では、優れた熱伝達が維持される。この実施形態に関して有利なことは、循環運動の結果としてスクレーパまたはワイパに作用する機械力が低くなり、それらの耐用年数が長くなるという事実である。
【0010】
駆動機構を、たとえばシャフトとして構成することができ、シャフトを、たとえば、本質的に幾何学的中心軸に沿って伸びる中心シャフトとして、または偏心シャフトとして構成することができる。本発明の目的では、偏心シャフトは、たとえば、反応器の幾何学的中心軸を中心に回転可能であるように取り付けられたケージを有するか、または適切なロッドアセンブリを有するシャフトであり、その場合、ケージまたはロッドアセンブリは、反応器ハウジング内で回転可能であるように配置される少なくとも1つのスクレーパを有し、少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも主に、幾何学的中心軸に沿って伸びる中心シャフトは存在していない。
【0011】
適切な場合、シャフト自体を冷却可能とすることができ、またはシャフトは、出発物質がシャフトを介して反応器ハウジングの内部空間内に導入されるのを可能にする手段を有することができる。
【0012】
熱伝達ならびに半径方向および軸方向の混合を促進するために、反応器ハウジングの内側は、少なくとも1つ、好ましくは2から16の、特に好ましくは、バッフルとして作用し回転を防止するステータを有することができる。
【0013】
さらなる実施形態では、反応器は、
・少なくとも主に幾何学的中心軸に沿って伸び、かつ好ましくは冷却可能である中心軸と、
・反応器ハウジングの半径方向直径に基づいて、中心シャフトからの距離がたとえば0%以上1%まで、好ましくは0%以上0.5%まであるように構成されるステータと
を有している。
【0014】
ステータは、本発明の文脈では、たとえば、幾何学的中心軸に対する角度が0から90°、好ましくは0から60°、より好ましくは0から50°である、反応器ハウジングの内側に接続された固定された不動の内部構造物、たとえば金属シートまたは金属板を意味するものと理解される。
【0015】
スクレーパおよびワイパ、またはスクレーパブレードおよびワイパブレードと同様に、ステータを、中心シャフトの表面を掻き取るかまたは払拭するように構成することができる。そして、シャフトからのステータの距離は、反応器ハウジングの半径方向直径に基づいて、たとえば0%以上1%まで、好ましくは0%以上0.5%までである。
【0016】
さらなる実施形態では、反応器、特にチューブ反応器は、直立ではなく本質的に水平に配置され、すなわち、反応器ハウジングの幾何学的中心軸は本質的に水平である。このように、流れ方向およびその反対の方向における重力が引き起こす流れを回避することができる。しかしながら、原則として、あらゆる傾斜および位置合せが考えられる。本質的に水平な幾何学的中心軸は、水平方向からのずれが最大10°、好ましくは5°未満である軸を意味するものと理解される。同じことが、「本質的に垂直な」という用語にも同様に当てはまる。
【0017】
本発明によれば、流れ方向における異なる流速を回避するかまたは少なくとも大幅に低減することができる。特に、いくつかの実施形態では、環流(loop flow)を回避することができる。これにより、反応器ハウジング内の流れの滞留時間および反応動力学を考慮して、反応器ハウジングに沿った流れ方向における局所反応状態を予測することが可能になる。したがって、たとえば、あり得る局所的な出発物質の濃度、生成物の濃度、および事前に反応器ハウジングに沿って発生する反応熱も計算することができる。流路に沿ったさまざまな反応状況をより正確に知ることにより、重合反応に影響を与えるために局所的に異なる手段を採用することができる。たとえば、対応して高い熱の発生(発熱反応)または対応して高い熱要件(吸熱反応)に至る可能性がある特に高い反応速度が予測される、反応器ハウジングの部分領域を特定することができる。この領域では特に、最適な反応温度を維持することができるように、反応器ハウジング内の流れと熱伝達媒体との間の十分に高い熱伝達を、熱交換器によって確立することができる。同時に、流れにおける、あるとすればごくわずかな温度変化が予測される領域において、過剰に高い熱伝達を回避することができる。このように、特に、所望の温度プロファイル、したがって重合生成物の好適な分子量分布を達成するために、所定の関連する箇所においてエネルギー効率よく反応状態に影響を与えることができる。重合の反応状態を、より容易に制御しかつそれに対して影響を与えることができ、位置、幅および形状に関する所望の分子量分布の確立がより容易になる。
【0018】
別法として、軸方向のスクレーパまたはワイパならびに/またはステータにより、栓流を生成することもさらに可能である。スクレーパまたはワイパならびに/またはステータの傾斜または構成により、反応器の内側および/またはシャフト表面において制御された軸方向速度を生成することができる。この目的で、スクレーパまたはワイパならびに/またはステータは、本質的に当業者に既知である好適な方法で成形されまたは位置合せされる。たとえば、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に対するステータのわずかな調整により、軸方向速度が付与される。この実施形態における幾何学的中心軸に対する角度は、たとえば15°から60°、好ましくは20°から50°である。
【0019】
さらに、本発明によれば、スクレーパまたはワイパにより、反応器ハウジングを通して制御されない方法で熱伝達に影響を与える、反応器ハウジングの内側の付着物、固まり付いた物質、ポリマーゲル等の堆積物の形成が回避される。さらに、スクレーパの回転移動および周方向におけるスクレーパブレードの移動により、半径方向におけるさらなる混合がもたらされる。反応器ハウジングの内側に固定されたいかなるステータによっても、スクレーパまたはワイパと相互作用してステータの再分散作用により堆積物の回避が促進される。したがって、反応器ハウジングの中心軸に沿った各個々のセクションに対し、本質的に一様な反応状態を得ることができる。同時に、反応器ハウジングの内側における流れ境界層の形成が防止され、半径方向における流れの結果として、熱伝達が大幅に改善される。スクレーパの回転移動により、反応器ハウジング内の流れの半径方向の混合がもたらされ、それは、重力効果を圧し、任意に、チューブ反応器内で、完全に逆混合流まで(逆混合流を含む)、栓流または環流を可能にする。これにより、反応器ハウジングの軸方向における反応状態を予測し、個々に適切な反応状態を、反応器ハウジングに沿って設定しかつ制御することができ、それにより、特に所望の分子量分布を設定することができる。栓流の確立の場合、栓流の結果として発生する希薄の結果として、特に触媒の導入部位等、反応物質の導入部位において、重合の過程における「ホットスポット」を回避することができるという、さらなる利点がもたらされる。
【0020】
反応器ハウジングは、特に好ましくは、出発物質を反応器ハウジング内に搬送しかつ/または生成物を反応器ハウジングから搬送する搬送装置に接続され、搬送装置のスループットを、本質的に栓流が反応器ハウジング内で確立されるように設定することができる。栓流は、流れ方向に対して逆の方向の逆混合を回避する。栓流を、搬送装置が、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に沿って反応器ハウジングを通る流れを吸引しかつ/または押し出すことにより確立することができる。反応器ハウジングの内側における境界層の形成を防止するスクレーパにより、栓流を達成するために比較的低い流速で十分である。その結果、チューブ反応器における流れの比較的高い滞留時間を、流れの栓のプロファイルを損なうことなく達成することができる。
【0021】
本発明の目的で、出発物質はチューブ反応器に入る物質であり、生成物はチューブ反応器から出る物質である。出発物質の例は、合成ゴムを調製するために用いられるモノマーまたはモノマー混合物、重合に必要な場合がある触媒、および溶媒ならびに任意に添加剤である。出発物質を、共通の入口を介して、または複数の異なる入口を介して、特にさまざまな軸方向位置または接線方向位置においてチューブ反応器の反応器ハウジング内に導入することができる。
【0022】
スクレーパまたはワイパの回転速度および形状は、好ましくは、任意に反応器ハウジングの軸方向部分領域において、半径方向および/または周方向における速度成分のみを、スクレーパブレードにより反応器ハウジング内の流れに付与することができるように設定される。たとえば、半径方向および/または周方向における速度成分のみを、スクレーパまたはワイパブレードが通過する領域全体において、スクレーパまたはワイパブレードにより反応器ハウジング内の流れに付与することができる。この目的で、スクレーパまたはワイパブレードは、周方向においてその移動に対して本質的に垂直に位置合せされ、それにより、スクレーパまたはワイパの投入動力は、チューブ反応器の流れ方向またはその逆の方向においていかなる追加の速度成分も付与しない。スクレーパまたはワイパブレードを、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に対して本質的に平行に位置合せすることができる。同時に、スクレーパまたはワイパの回転速度は、流れ方向に沿った著しい速度成分をもたらす可能性がある過度の乱流が回避されるように設定される。これにより、流れ方向における反応状態のプロファイルが計算可能となり、このプロファイルは、反応器を通る連続した流れの間、反応器ハウジングに対して一定のままである。反応器がステータを有する場合、ステータは、この実施形態では、軸方向の速度成分を回避するために、同様に、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に対して本質的に平行に位置合せされる。
【0023】
さらなる実施形態では、スクレーパまたはワイパブレードが通過する領域全体において、スクレーパまたはワイパブレードにより、半径方向および/あるいは周方向、または軸方向のいずれかの速度成分を、反応器ハウジング内の流れに付与することができる。その場合、スクレーパまたはワイパブレードを、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に対して傾斜させることができ、その場合、0°を超えて60°まで、好ましくは20°から60°、特に好ましくは20°から45°の幾何学的中心軸に対する角度が形成される。
【0024】
反応器がステータを有する場合、ステータは、この実施形態では、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に対して本質的に平行に位置合せされるか、または同様に傾斜を有し、それにより、軸方向の速度成分が増幅される。
【0025】
好ましい実施形態では、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは少なくとも4つの、反応器ハウジング内に提供される流れの温度を設定する熱交換器が、反応器ハウジングの軸方向に配置され、熱交換器は、各熱交換器に対して異なる温度を設定することができるように互いに分離されている。それぞれの熱交換器により、反応器ハウジングの外側から、反応器ハウジング内の流れの温度に対し影響を与えかつそれを設定することができる。反応器ハウジング内の反応状態の予測されるプロファイルに応じて、たとえば、予測される反応熱を考慮して反応器ハウジング内の一定温度を提供するために、各熱交換器に対して個々に好適な温度を選択することができる。
【0026】
壁温度が異なるゾーンの縁において、好ましくは、異なるように加熱される反応ゾーンをさらに混合することができるように、特に半径方向または接線方向の速度成分を付与するスクレーパまたはワイパを使用することが可能である。一方の熱交換器から他方の熱交換器に流れ全体または流れの一部を供給するために、熱交換器を直列に接続することも可能である。他方の熱交換器が、特に、第1熱交換器内に導入される流れとは温度が異なる熱伝達媒体を導入するさらなる入口を有することができる。反応器ハウジング内の流路に沿った動的に変化する反応状態にも関らず、温度を、このように、反応器ハウジング内で本質的に一定に維持することができる。これにより、比較的低散乱である意図された分子量分布を達成することが可能になる。たとえば、通常−100から−30℃で行われる合成ゴムの調製において、各所望の温度を、選択された圧力に応じて上述した温度で気化可能な蒸発するエチレンまたは他の液体により、上述した範囲内に設定することができる。別法として、異なる温度の冷却液を使用することができる。
【0027】
さらなる実施形態では、冷却液は、単一相で、すなわち気化なしで使用している。したがって、入口と出口との間に温度の上昇が発生する。この実施形態の利点は、冷却剤側の熱交換が一定であることである。適用可能な冷却剤は、エチレン、エタン、プロパン、イソブテン等かまたは市販の冷却剤である。
【0028】
さらなる実施形態では、チューブ反応器は、2つ以上の反応空間を有することができ、それらは、各々、中間プレートによって分離されるが、開口部を介して連通し、この場合、少なくとも1つの熱交換器、好ましくは少なくとも2つの熱交換器が、各反応空間内の温度を設定するように、反応空間毎に反応器ハウジングの軸方向に提供される。
【0029】
反応器、特にチューブ反応器が水平に位置合せされる場合、静水圧が発生するために、蒸発する液体、たとえばエチレンに対して比較的狭い沸騰層がさらに形成され、それにより、熱交換器に対して、さらに高い熱交換効率を達成することができる。
【0030】
反応器ハウジングを、反応状態下で十分な強度および耐腐食性を有しかつ保持する、当業者には既知であるすべての材料、たとえば市販の鋼から作製することができる。低温の応用の場合、たとえば、−100℃から−30℃の場合、たとえばオーステナイト鋼が好適である。
【0031】
反応器ハウジングは、好ましくは、ステンレス鋼1.4571または化学業界において常用されている同様の耐久性のある鋼からなる。
【0032】
反応媒体と接触する反応器ハウジングの内側は、好ましくは、内面のより優れた研磨性のために、Tiの比率が低減したステンレス鋼1.4404から構成される。
【0033】
熱交換器は、好ましくは、反応器ハウジングの一部を包囲する外壁を有し、特に、外壁と反応器ハウジングとの間に螺旋状隔壁が配置されて、螺旋状熱交換器溝を形成する。構造的に実施が簡単である手段により、熱伝達媒体が、反応器ハウジングに沿って螺旋経路で流れることができ、したがって、対応して長時間反応器ハウジング内の流れと熱を交換することができる。これにより、特に大きい熱流を、反応器ハウジング内の流れと熱伝達媒体との間で交換することができる。螺旋状熱交換器溝を備えた熱交換器のこうした構成は、熱を吸収しかつ/または放出する際に、相変化、たとえば気化および/または凝縮のない単一相熱伝達媒体に特に有利である。熱を吸収しかつ/または放出する際に相変化する、たとえば気化および/または凝縮する熱伝達媒体の場合、隔壁は特に省略され、それにより、相変化により熱交換器内で非常に高い乱流が発生する可能性がある。同時に、反応器ハウジング自体により、熱交換器の内部境界が形成される。このように、反応器ハウジング内の流れと熱交換器との間の熱流に対するさらなる抵抗が回避される。たとえば、重合の開始部分において、すなわち上流に高い冷却力が必要である場合、反応器ハウジング内の流れに対して逆流で、または流れ方向で熱伝達媒体を搬送することができる。
【0034】
管状反応器ハウジングの容積Vに対する、管状反応器ハウジングの内部面積Aの比率は、0.1m/m≦A/V≦100m/m、好ましくは1m/m≦A/V≦50m/m、特に好ましくは5m/m≦A/V≦30m/m、非常に好ましくは10m/m≦A/V≦30m/mであることが特に好ましい。スクレーパが反応器ハウジングの内側における境界層の形成を防止するため、特に、シャフトが冷却可能であるように同様に設計されかつシャフト自体の表面がステータによって掻き取られるかまたは払拭される場合、反応器ハウジングが、封入される容積に基づいて比較的大きい内部面積を有する、比較的細いチューブ反応器を提供することができる。管状反応器ハウジングの比較的大きい内部面積Aにより、反応器ハウジングの外側にわたって、対応して高い熱伝達力を導入することができる。同時に、半径方向における本質的に一様な温度分布をより容易に達成することができる。同時に、チューブ反応器は、過度に高い壁厚さを選択する必要なしに、より大きい内圧に耐えることができる。これにより、より広い圧力範囲にわたり反応パラメータを設定しかつ制御することも可能になる。
【0035】
好ましい実施形態では、スクレーパまたはワイパは、少なくとも2つ、好ましくは2から8のサブスクレーパまたはサブワイパを有し、それらは、軸方向に関節式に、たとえば当業者には十分知られている支持装置を介して、たとえば反応器ハウジングに対して支持されるマルチポッド(multipod)、たとえばトライポッド(tripod)を介して、互いに接続されている。スクレーパまたはワイパを、このように複数の小さい部分に分割することができ、それらの部分は、関節式に接続されていることにより、管状反応器ハウジングの形状プロファイルにより容易に従う。特に、スクレーパブレードが反応器ハウジングの内側に対して傾斜することなく、反応器ハウジングの変形、特に熱膨張効果による湾曲に従うことが可能である。たとえば、反応器ハウジングの内側に対して3つの点で支持することができるトライポッドの3つの脚により、それぞれのサブスクレーパが2つのトライポッドの間の中心に配置されることを確実にすることができる。トライポッドを固定することができ、またはトライポッドは、少なくとも部分的にスクレーパまたはワイパとともに回転することができる。反応器ハウジングが熱膨張効果のために屈曲する場合、それぞれのサブスクレーパまたはサブワイパは、自動的に新たな形状プロファイルに適合される。反応器ハウジングが熱膨張効果によってわずかに湾曲する場合であっても、栓流はスクレーパによって著しく妨害されない。
【0036】
1つまたは複数のスクレーパまたはワイパを、駆動機構を介して駆動することができ、力の伝達は、機械的結合または磁気的結合によってもたらされることが可能である。
【0037】
シャフトは、機械力伝達に用いられる場合、好ましくは、シャフトと反応器ハウジングとの間に配置された複動式摺動リングシールによって封止され、摺動リングシールは、特に、重合状態下で不活性であるバリア媒体を含む。摺動リングシールは、その2つの摺動面の間をバリア液で充填することができる環状チャンバ空間を封止することができる。特に好ましくは超大気圧(superatmospheric pressure)下であるバリア液は、摺動リング対の両方の部分を潤滑することができる。これにより、漏れをもたらす可能性がある、摺動面上の出発物質および/または生成物の堆積が回避される。合成ゴムの調製時、水、たとえば周囲空気からの大気中の水分が反応器ハウジングの内側に侵入するのを回避することができる。このように、水の侵入およびそれに関連する何らかの触媒不活性の結果として、反応器ハウジング内の重合反応が低速化するのが回避される。バリア媒体として、たとえば重合反応でも用いられる溶媒を使用することができる。
【0038】
スクレーパまたはワイパブレードは、好ましくは、摩擦係数が鋼の摩擦係数より低い表面を有し、スクレーパまたはワイパブレードは、たとえば含フッ素ポリマーおよび/または同様の材料、たとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなり、これらを含み、またはこれらによってコーティングされており、好ましくは含フッ素ポリマーからなるかまたはそれによってコーティングされている。好ましい含フッ素ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)およびエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)である。
【0039】
同じことが、ステータが中心シャフトの掻取りまたは払拭用に設計されている場合に当てはまる。
【0040】
スクレーパまたはワイパブレードと反応器ハウジングの内側との間の摩擦を低減した結果、スクレーパまたはワイパの動作中の摩擦損失を低減することができる。同時に、特にスクレーパまたはワイパの回転速度が相対的に早い場合、反応器ハウジングの内側の摩擦熱を低減することができる。特に、スクレーパまたはワイパブレードの表面は、掻き取られたゲルがスクレーパブレードに優先的に残らず、代りに、スクレーパブレードから迅速に分離されるという特質を有することができる。その結果、掻き取られるかまたは払拭されたゲルを容易に流れに戻し、流れにおいて懸濁させることができる。
【0041】
スクレーパまたはワイパブレードは、好ましくは、幾何学的中心軸を通って伸びる半径方向に向けられた線に対して傾斜しかつ/または湾曲し、スクレーパまたはワイパブレードは、半径方向内側に向けられた締結頭部を有し、半径方向外側に向けられた力を、スクレーパまたはワイパブレードに、特に締結頭部に付与することができる。半径に対するスクレーパまたはワイパブレードの傾斜は、たとえば、任意の方向において0°を越え90°まで、好ましくは20°から60°、特に好ましくは30°から50°の範囲であり得る。力の付与は、たとえば、ばね力、液圧力、弾性力または遠心力あるいは複数の上述した力によることができる。反応器ハウジングの内側と接触する領域におけるスクレーパまたはワイパブレードの傾斜または湾曲した設計により、重合生成物が、スクレーパブレードと反応器ハウジングとの間の間隙を閉塞するかまたは膠着させるのが防止される。それにより、スクレーパまたはワイパに対して不必要に高いトルクが回避される。半径方向外側に向けられた力により、反応器ハウジングの内側からの堆積物、特にゲルを掻き取るかまたは払拭するために、反応器ハウジング上のスクレーパまたはワイパブレードの十分に高い押圧力を加えることができる。同時に、スクレーパまたはワイパブレードは、反応器ハウジングが不均一でありかつ/または堆積物が過度に固い場合にスクレーパまたはワイパの回転を阻止しないために、半径方向内側にたわみを有することができる。スクレーパまたはワイパブレードの湾曲または傾斜した設計により、特に、スクレーパまたはワイパブレードの回避運動が可能になり、それは、半径方向に部分的にのみ発生し、提供される半径方向に対して横方向の動きの成分を有している。さらにまたは別法として、スクレーパまたはワイパブレードを面取りすることができる。これにより、スクレーパまたはワイパを阻止する可能性があるスクレーパまたはワイパブレードの固形付着物に対するノッキングが回避され、それは、スクレーパまたはワイパブレードを、半径方向外側に加えられる力に対して、角度付き縁のために付着物の上に持ち上げることができるためである。
【0042】
特に、少なくとも2つのスクレーパまたはワイパブレードは軸方向に配置され、スクレーパまたはワイパブレードは、周方向において角度αの角度をなしており、角度αは、特に30°≦α≦150°、好ましくは45°≦α≦135°、より好ましくは60°≦α≦120°、特に好ましくはα=90°±2°である。スクレーパまたはワイパブレードの角度をなした配置により、反応器ハウジングの内側のスクレーパまたはワイパの複数の支持点がもたらされ、それにより、スクレーパまたはワイパの駆動シャフトの撓曲および/またはスクレーパまたはワイパの駆動シャフトの振動が防止される。
【0043】
少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは少なくとも4つのスクレーパまたはワイパブレードが、前後に、周方向に同じ間隔で配置されていることが好ましい。周方向に、2つのスクレーパまたはワイパブレードの場合は角度β=180°±5°、3つのスクレーパまたはワイパブレードの場合は角度β=120°±5°、4つのスクレーパまたはワイパブレードの場合は角度β=90°±5°等が得られる。これにより、スクレーパまたはワイパの駆動シャフトがさらに中心合せされる。
【0044】
さらなる実施形態では、スクレーパまたはワイパは、シャフトが軸方向に中心となるように、軸方向および接線方向に分散している。これは、周方向に1つのスクレーパまたはワイパのみが配置される場合にも可能である。軸方向に隣のスクレーパを、接線方向に、好ましくは90°を超える角度bで配置し、次いで、次のスクレーパを先の2つの対して同様に軸方向に配置し、等が可能である。したがって、2つの継手の間でシャフト部の中心合せを達成することができる。
【0045】
さらなる実施形態では、チューブ反応器は、上流方向において少なくとも1つの混合チャンバに接続され、混合チャンバは、混合チャンバを包囲するハウジングと、混合チャンバ内に配置された少なくとも1つの混合要素とを有している。
【0046】
好適な混合要素は、当業者には十分に既知であり、静的または可動、好ましくは可動の混合要素を包含する。混合チャンバは、特に好ましくはインペラを有している。上流混合チャンバの特定の利点は、出発物質を、本発明のチューブ反応器に入る前に高混合エネルギーで混合することができ、その結果、通常低温での粘性反応混合物の場合に見られる縞(streak)の形成を大幅に回避することができる、ということである。縞の形成により、頻繁に、局所的なホットスポット、反応の不均一な発生または二次反応の増大が、望ましくない方法でもたらされる。混合チャンバおよび混合要素の寸法は、好ましくは互いに一致し、それにより、反応状態下で、混合チャンバ内での1秒から120秒、好ましくは2秒から60秒、特に好ましくは2秒から20秒の範囲の平均滞留時間と、非常に高度な均質化を達成することができる。
【0047】
この場合に必要である通常の混合エネルギーを、たとえば0.001J/lから120J/lの範囲とすることができ、そのため、混合エネルギーは、反応器に入る出発物質のリットル当りのエネルギーの取込みを指す。
【0048】
この場合に必要な通常の混合動力を、たとえば0.001kW/lから100kW/lまたは0.001kW/lから1kW/lとすることができ、そのため、混合動力は、混合チャンバの容積のリットル辺りの混合要素の消費電力を指す。
【0049】
好ましい実施形態では、混合チャンバ内に提供される流れの温度を設定する少なくとも1つのさらなる熱交換器が、混合チャンバを包囲するハウジングの軸方向に配置され、熱交換器の上述した特定の実施形態が同様に適用される。
【0050】
混合チャンバを包囲するハウジングは、好ましくは、反応混合物用の開口部を有する中間プレートによって反応器ハウジングに接続される。
【0051】
本発明は、反応器ハウジング内の重合性モノマーの重合による合成ゴムの調製のための、上述したように構成しかつ展開することができる上述したチューブ反応器の使用をさらに提供する。
【0052】
本発明の目的で、合成ゴムは、自然に発生しないエラストマーである。好ましい合成ゴムは、ブチルゴム、ポリブタジエン(BR)およびポリスチレン−ブタジエン(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、フッ素ゴム(FR)、ポリクロロプレン(CR)およびポリエチレン−ビニルアセテート(EVAまたはEVM)であり、上述した合成ゴムは、たとえば、5000g/molから5000000g/molのモル質量を有することができる。
【0053】
特に好ましい合成ゴムは、ブチルゴムおよびポリブタジエン(BR)、非常に好ましくは、モル質量が300000g/molから1000000g/molであるブチルゴム、およびモル質量が5000g/molから1000000g/molであるポリブタジエン(BR)であり、モル質量が300000g/molから1000000g/molであるブチルゴムがより好ましい。
【0054】
ブチルゴムは、イソブテン(2−メチルプロピレン)およびイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)の共重合体である。ブチルゴムのイソプレンから導出された繰返し単位の比率は、たとえば>0%から5%、好ましくは1.8mol%から2.3mol%の範囲である。
【0055】
重合は、通常、触媒の存在下で、−100℃から−30℃、好ましくは−100℃から−40℃、特に好ましくは−100℃から−60℃の温度で、イソブテンおよびイソプレンの共重合として行われる。触媒として、たとえば「スラリープロセス」の場合はクロロメタン、「溶液プロセス」の場合は、特に直鎖状または環式、分岐または非分岐のペンタン、ヘキサンまたはヘプタンあるいはそれらの混合物、好ましくは上述したペンタンおよびヘキサンまたはそれらの混合物等の炭化水素を使用することができる。
【0056】
触媒として、本質的に既知であるように、プロセス条件に応じて、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリドまたはその混合物等、塩化アルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドを使用することが可能である。1種または複数の触媒は、たとえば、水、塩酸、塩化水素または脂肪族アルコール等、わずかな量のプロトン性溶媒を用いて活性化され、重合されるモノマーに溶媒の懸濁液または溶液として加えられ、溶媒は、好ましくは、重合が発生する溶媒である。
【0057】
チューブ反応器の構造的構成により、チューブ反応器の長さに沿ったチューブ反応器内の反応状態を、容易に予測することができ、したがってそれに対して容易に影響を与えかつそれを制御することができる。特に、比較的大量の出発物質と非常にわずかな生成物とが存在する重合反応の開始部では、流れの粘度は特に低く、通常は≦1mPasである。粘度は、特に明示しない限り、ISO1628に従うかまたはそれに基づき、23℃の温度で毛細管粘度測定法によって確定される。同時に、大量の反応物質のために特に大量の反応熱が発生し、それは反応器ハウジングから除去されなければならない。重合生成物の逆流を回避することができるため、特に高い熱の除去が必要である領域において粘度を特に低く維持することができる。この領域において粘度が低いため、半径方向における熱輸送を特に単純に具現化することができ、スクレーパと組み合わせて、数100W/mKの熱伝達係数kを達成することができる。これにより、特に、最大の熱発生が起こる反応器ハウジングの領域において、流れの冷却中に、30K程度、または別の実施形態では20K程度の駆動温度勾配で済ますことができる。チューブ反応器の出口に向かって、流れの粘度は大幅に増大し、数100mPasに達する可能性があり、それにより、チューブ反応器の入口の領域より熱伝達係数が低くなる。しかしながら、重合反応が、あったとしてもわずかな程度までしか発生しない領域において発生する熱伝達係数がより低くなり、それにより、重合で発生し除去しなければならない熱の量が大幅に低減する。除去される熱の量が小さくなるため、粘度が高くなりかつ熱伝達係数が低くなることは、流れの冷却に著しい悪影響を与えない。
【0058】
流れを循環させる本発明の一実施形態では、反応器の中身の媒体粘度は、10mPasから1000mPasの範囲である。粘度が高くなるにも関らず、反応器の内側の熱伝達領域において、中間軸において、ステータにおいて、またはスクレーパおよびワイパにおいて堆積物を除去するかまたはバリア層を再生させることにより、生成物の側の熱伝達係数が大幅に上昇し、それにより、この実施形態でもまた、大量の熱を有効に除去することができる。
【0059】
本発明は、上述したように構成しかつ展開することができる反応器を用いる、ポリマー、好ましくは合成ゴムの連続調製方法をさらに提供する。本発明は、ポリマー、好ましくは合成ゴムを調製する反応器の使用をさらに提供する。
【0060】
本方法の実施形態では、反応器ハウジングの幾何学的中心軸に沿った、任意に垂直方向または水平方向における出発物質および生成物の本質的栓流が、反応器、特にチューブ反応器において、ポリマー、好ましくは合成ゴムの連続調製用に確立される。重合中にチューブ反応器の反応器ハウジングの内側に堆積するいかなる固体またはゲルも、スクレーパおよびスクレーパブレードの回転移動によって掻き取られる。反応器ハウジングの内側からゲルを掻き取ることにより、経時的な反応器ハウジングおよび反応器ハウジング内の流れの熱伝達係数の悪化が回避される。同時に、冷却可能シャフトの表面を掻き取るか又は払拭するために使用されるいかなるステータも、バッフルとして作用することができ、したがって、回転するスクレーパまたはワイパの再分散作用を増強することができる。これにより、チューブ反応器の連続動作に有利である一定の境界状態がもたらされる。同時に、流れと反応器ハウジングとの間の優れた熱伝達が、掻取りおよび払拭によって確保される。栓流および適切な場合はステータの作用により、たとえば環流の場合に、流れにおける重力効果を大幅に除去することが可能となり、それは、半径方向にスクレーパによって付与される流れ成分が重力効果より大幅に勝るためである。これにより、流れ方向においてチューブ反応器の長さにわたり予測可能かつ調整可能な反応プロファイルが可能となり、これを所定位置で目標とされる方法で監視しかつそれに対し影響を与えることができる。これにより、特に、比較的散乱が小さい所望の分子量を達成することができる。報告される分子量は、特に明示しない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって確定される重量平均モル質量Mである。特に、領域において個々に設定されるチューブ反応器の冷却により、分子量分布を、その位置、幅および形状に関して設定し変更することができる。
【0061】
重合において優勢である熱勘定、滞留時間および凝縮を考慮して事前定義された分子量を設定するために、流れ方向において異なる熱交換器温度を確立することが特に好ましい。特に、特に流れの一定温度を設定するために、重合反応の動力学を考慮して、チューブ反応器に沿って発生する熱の量を計算することが可能である。流れ方向における異なる熱交換器温度の結果として、発生する反応熱を、チューブ反応器の軸方向において各領域に対し、発熱作用の場合は除去し、吸熱作用の場合は供給することができる。吸熱反応の場合、熱勘定に負の反応熱が得られ、発熱作用の場合、熱勘定に正の反応熱が得られる。
【0062】
ゲルを掻き取ることは、特に好ましくは、反応器ハウジングの内側において、0.05m/秒≦v≦10m/秒、好ましくは0.5m/秒≦v≦6m/秒、特に好ましくは1m/秒≦v≦4m/秒、非常に好ましくは2m/秒≦v≦3m/秒である速度vにおいて行われる。スクレーパまたはワイパブレードが反応器ハウジングの内側に沿って進むことができるこうした速度vでは、反応器ハウジングの内側の固体またはゲルの形成のために著しく厚いコーティングが形成されることが回避される。同時に、周方向におけるスクレーパまたはワイパブレードのこうした速度で、半径方向における十分に高い物質伝達を確立することができ、それにより、半径方向において流れが十分に均一に混合し、流れと反応器ハウジングとの間の熱伝達が改善される。
【0063】
上流混合チャンバが使用される場合、混合チャンバ内の平均滞留時間は、たとえば1秒から120秒、好ましくは2秒から60秒、特に好ましくは2秒から20秒の範囲である。
【0064】
上流混合チャンバが使用される場合、取り出される平均混合エネルギーは、たとえば0.001J/lから120J/lの範囲である。
【0065】
通常導入される混合動力は、混合器のエネルギー吸収に基づいて、たとえば0.001kW/lから100kW/lであり得る。
【0066】
本発明を、以下、添付図面を参照して好ましい実施形態により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】チューブ反応器の概略側面図である。
【図2】図1のチューブ反応器の概略断面図である。
【図3】図2のチューブ反応器の概略詳細図である。
【図4】図1に示すチューブ反応器用のスクレーパの概略詳細図である。
【図5】図4のスクレーパ用のスクレーパブレードの概略断面図である。
【図6】中心シャフトのないさらなるチューブ反応器の概略側面図である。
【図7】上流混合チャンバを備えたさらなるチューブ反応器の概略側面図である。
【図8】上流混合チャンバおよび第2の反応器空間を備えたさらなるチューブ反応器の概略側面図である。
【図9】(スクレーパとしての)チューブ反応器の概略断面図である。
【図10】(ワイパとしての)チューブ反応器の概略断面図である。
【図11】3つのステータおよび3つのスクレーパまたはワイパを備えた反応器チャンバの概略側面および断面図である。
【図12】2つのステータおよび2つのスクレーパまたはワイパを備えた反応器チャンバの概略側面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1に示す反応器1は、重力の方向14に対して垂直に、すなわち水平に位置合せされている幾何学的中心軸12を有している。反応器10は、管状反応器ハウジング16を有しており、それは、フランジ状に形成された(flanged−on)エンドプレート18によって端面が閉鎖されている。管状反応器ハウジング16内に、少なくとも1つの入口20を介して出発物質を導入することができ、流れ方向22に沿って重合反応が発生する。形成される生成物は、出口24を介して反応器10から出ることができる。反応器ハウジング16内の流れに対して、半径方向における速度ベクトルが、流れ方向22における速度ベクトルと大きさが本質的に等しい栓流が確立される。したがって、反応器10は、連続重合を行うために連続的に動作する。
【0069】
重合において発生する反応熱を、第1熱交換器26と第1熱交換器26に対して軸方向に隣接して配置されている第2熱交換器28とを介して除去することができる。反応器ハウジング16の端部、すなわち下流より、反応器ハウジング16の先頭部、すなわち上流において、より激しい反応が発生するため、下流で発生するより、反応器ハウジング16の先頭部、すなわち上流において、流れ方向22において単位長さ辺り大きい熱流が発生する。したがって、第1熱交換器26は、熱伝達力が対応して高いように設計されている。さらに、または別法として、第1熱交換器26は、第2熱交換器28より軸方向に短い距離を冷却することができる。反応器ハウジング16内の流れ方向22に確立することができる栓流により、熱伝達力、軸方向の広がり、使用される熱伝達媒体、ならびに熱伝達媒体の圧力および温度を、反応器ハウジング16内の流れ方向22を変化させる反応状態に対して個々に一致させることができ、それにより、流れ方向22における各セクションに対して好適な冷却力を設定することができる。これにより、特に、チューブ反応器10内に本質的に一定の温度を設定することが可能になり、それによって、重合生成物が所望の分子量分布を有するようになる。
【0070】
図2に示すように、熱交換器26、28は、各々外壁30を有しており、外壁30は、反応器ハウジング16とともに熱交換器26、28の容積の境界を画定する。外壁30と反応器ハウジング16との間に、螺旋状熱交換器溝34の境界を画定するコイル状管の形態の螺旋状隔壁32が配置されている。動作中、たとえばエチレンを気化する間に相変化する熱伝達媒体が用いられる場合、隔壁を省略することができる。反応器10はまた、モータ40によって駆動される駆動機構38を有するスクレーパまたはワイパ36も有している。駆動機構38には、複数のスクレーパまたはワイパ42が接続されており、図示する例では、これらは、互いに対向する対で配置されている。しかしながら、複数のスクレーパまたはワイパブレード42、特に3つのスクレーパまたはワイパブレード42を、周方向に交互に規則的に配置することも可能である。図示する例では、軸方向に隣接するスクレーパまたはワイパブレード42の対は、周方向に90°の角度をなしている。スクレーパまたはワイパブレード42は、特に内側44から付着物またはゲルを掻き取ることができるために、反応器ハウジング16の内側44と接触する。
【0071】
図3に示すように、スクレーパまたはワイパブレード42は、ばね48を介して駆動機構38によって支持されている締結頭部46を有している。このように、スクレーパまたはワイパブレード42は、反応器ハウジング16の内側44に軸方向ばね力を加えることができる。締結頭部46は、ここでは、穴50内に差し込まれ、端面においてねじ蓋52によって固定して保持されている。
【0072】
図4に示すように、スクレーパまたはワイパ36は複数のサブスクレーパまたはサブワイパ54を有することができ、それらを、特に、トライポッド56(一部を示す)を介して、互いに、特に関節式に接続することができる。関節接続により、スクレーパ36は、たとえば熱膨張によってもたらされる反応器ハウジング16内の湾曲を補償し、スクレーパまたはワイパブレード42が反応器ハウジング16の内側44に本質的に平行に接触するのを確実にすることができる。
【0073】
図5に示すように、スクレーパまたはワイパブレード42を、その半径方向外側に向いた端部において傾斜および/または湾曲させることができる。これにより、反応器ハウジング16の内側44に沿って進む、すなわち摺動することができる線状のスクレーパまたはワイパ縁58が得られる。スクレーパまたはワイパブレード42は、特にPTFEコーティングされた湾曲スクレーパまたはワイパ要素60を有し、それは、ステンレス鋼からなるホルダ62内に締め付けられ、固定された保持ピン64を介して締結頭部46に接続される。
【0074】
図6に示すように、スクレーパまたはワイパ36への力の伝達が中心シャフトなしで発生するように、複数のスクレーパまたはワイパ36が駆動機構38に接合されている。中心シャフトの表面は、スクレーパ速度に対して周速が低い、掻き取られないまたは払拭されない面を表す。こうした表面がないことは、観察される望ましくない粘着ゲルまたは固体の量が全体的により少なくなるという利点がある。スクレーパまたはワイパを機械的に安定させるために、これらを1つまたは複数の接続要素37に接合することができる。構造的な設計は、特に、選択された反応器の形状およびスクレーパの周速によって決まり、そうした設計を、当業者に既知である方法で容易に最適化することができる。
【0075】
図7に示すように、反応器10は、上流に、すなわち先行位置に混合チャンバ72を有しており、混合チャンバ72は、混合チャンバを包囲するハウジングと、混合チャンバ内に配置された混合要素70とを有しており、混合要素70は、ここでは、モータ41によって駆動されるインペラとして構成されている。混合チャンバも同様に、熱交換器の容積の境界を画定する外壁を有しており、熱伝達媒体を、入口66を介して熱交換器内に導入することができ、熱伝達媒体用の出口68を介して再び取り除くことができ、それにより混合チャンバを別個に冷却または加熱することができる。合成ゴムの調製では、冷却は通常、−100℃から−30℃の範囲の温度まで発生する。混合チャンバは、チューブ反応器のエンドプレート19によって流れ方向に境界が画定されているが、1つまたは複数、この図では2つの開口部74を介して、混合チャンバ72からチューブ反応器の内部空間内への物質伝達が発生する可能性がある。
【0076】
図8に示すように、チューブ反応器10を、2つ以上、この図では2つの別個の反応チャンバに分割することができ、反応チャンバは、各々、中間プレート19によって互いから分離されているが、開口部74により流れ方向における物質伝達が可能となる。混合チャンバと第1反応器空間との間に配置されるエンドプレート18において、かつ中間プレート19において、溶媒、触媒またはモノマー等のさらなる出発物質用の入口20Aがある。それぞれの反応器空間の、流れ方向で見た先頭部に、さらなる入口20が配置されている。入口20Aおよび20は、反応パラメータが所望の方法で影響を受けるのを可能にするという利点を有している。したがって、たとえば溶媒の追加により、反応媒体の粘度を低減することができ、さらなる量のモノマー、または他のモノマーの追加あるいは触媒の追加により、ポリマーの鎖長および/または構造を変更することができる。
【0077】
図9の断面図に示すように、締結頭部46を介して駆動機構38に接合されるスクレーパ要素60のスクレーパ縁58は、周方向において反応器ハウジングの内側44の表面を掻き取る。出発物質の導入は、入口20で発生する。外壁30および反応器ハウジング16は、熱交換器26の容積の境界を画定する。ここではコイル状管の形態で提供される螺旋状隔壁32は螺旋状熱交換器溝34の境界を画定し、その中に、入口66を介して熱伝達媒体を供給することができる。
【0078】
図10の断面図は、実質的に図9と同一であるが、駆動機構にワイパが備えられている。締結頭部46を介して駆動機構38に接続されるワイパ要素60のワイパ縁58は、周方向に反応器ハウジングの内側を払拭する。
【0079】
図11において、管状反応器ハウジング16は、反応器ハウジングの内側44において3つのステータ75に接続されており、ステータ75には、周方向に従って、スクレーパまたはワイパ要素76が備えられており、スクレーパまたはワイパ要素76は、動作時、ここでは中心シャフトとして構成されている駆動機構38の表面を掻き取るかまたは払拭する。さらに、駆動機構38は、周方向に従って、図示する実施例では各々120°の角度をなしている3つのスクレーパまたはワイパ36を有している。
【0080】
図12において、図11と同様であるが、反応器チャンバには、各々180°の角度をなしている2つのステータ75および2つのスクレーパまたはワイパ36のみが備えられている。
【符号の説明】
【0081】
10 反応器
12 幾何学的中心軸
14 重力の方向
16 管状反応器ハウジング
18 エンドプレート
19 中間プレート
20 入口
22 流れ方向
24 出口
26 第1熱交換器
28 第2熱交換器
30 外壁
32 螺旋状隔壁
34 螺旋状熱交換器溝
36 スクレーパまたはワイパ
37 接続要素
38 駆動機構
40 モータ
41 モータ
42 スクレーパまたはワイパブレード
44 反応器ハウジングの内側
46 締結頭部
48 ばね
50 穴
52 蓋
54 サブスクレーパまたはサブワイパ
56 トライポッド
58 スクレーパまたはワイパ縁
60 スクレーパまたはワイパ要素
62 ホルダ
64 保持ピン
66 熱伝達媒体用の入口
68 熱伝達媒体用の出口
70 混合要素(ここではインペラ)
72 混合チャンバ
74 開口部
75 ステータ
76 ステータのスクレーパまたはワイパ要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、特に合成ゴムの連続調製用の反応器であって、少なくとも1つの本質的に管状の反応器ハウジング(16)を備え、前記反応器ハウジング(16)が、前記反応器ハウジング(16)内で回転可能であるように配置される少なくとも1つのスクレーパまたはワイパ(36)に接続される駆動機構(38)を有し、前記スクレーパまたはワイパ(36)が、前記反応器ハウジング(16)の内側(44)に沿って進む少なくとも1つのスクレーパまたはワイパブレード(42)を有する、反応器。
【請求項2】
幾何学的中心軸(12)が、本質的に水平であるかまたは本質的に垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
本質的に前記幾何学的中心軸に沿って伸びる中心シャフトを具備することを特徴とする、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項4】
少なくとも1つのステータ(75)をさらに具備することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項5】
前記ステータが、前記反応器ハウジングの半径方向直径に基づいて、前記中心シャフトからの距離が0以上1までであるように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の反応器。
【請求項6】
本質的に前記幾何学的中心軸に沿って伸びる、焼戻し媒体が流れることができる中心シャフトを具備することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記スクレーパまたはワイパ(36)が、前記反応器ハウジングの半径方向直径に基づいて、前記反応器ハウジング(16)の前記内側(44)からの距離が0以上1までであるように構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項8】
前記反応器ハウジング(16)が、出発物質を前記反応器ハウジング(16)内に搬送しかつ/または生成物を前記反応器ハウジング(16)から搬送する搬送装置に接続されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項9】
前記反応器ハウジング(16)内で提供される流れの温度を設定する少なくとも2つの熱交換器(26、28)が、前記反応器ハウジング(16)の軸方向に配置され、前記熱交換器(26、28)が、各熱交換器(26、28)に対して異なる温度を設定することができるように互いから分離されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
前記熱交換器(26、28)が、前記反応器ハウジング(16)の一部を包囲する外壁(30)を有し、特に、螺旋状隔壁(32)が、前記外壁(30)と前記反応器ハウジング(16)との間に配置されて螺旋状熱交換器溝(34)を形成することを特徴とする、請求項9に記載の反応器。
【請求項11】
前記管状ハウジング(16)の容積Vに対する前記管状反応器ハウジング(16)の内部面積の比率が、0.1m/m≦A/V≦100m/mであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項12】
前記スクレーパまたはワイパ(36)が、軸方向において関節式に互いに接続される少なくとも2つのサブスクレーパまたはサブワイパ(54)を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
前記スクレーパまたはワイパ(36)が駆動機構(38)によって駆動されることが可能であり、前記駆動機構(38)が、前記駆動機構(38)と前記反応器ハウジング(16)との間に配置された複動式摺動リングシールによって封止され、前記摺動リングシールが、特に、重合状態下で不活性であるバリア媒体を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項14】
前記スクレーパまたはワイパブレード(42)が、摩擦係数が鋼より低い表面を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項15】
前記スクレーパまたはワイパブレード(42)が、前記幾何学的中心軸(12)を通って伸びる半径方向に向けられた線に対して傾斜しかつ/または湾曲し、前記スクレーパまたはワイパブレード(42)が、半径方向内側に向けられた締結頭部(46)を有し、半径方向外側に向けられた力、特にばね力が、前記スクレーパまたはワイパブレード(42)、特に前記締結頭部(46)に加えられることが可能であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項16】
少なくとも2つのスクレーパまたはワイパブレード(42)が軸方向に配置され、前記スクレーパまたはワイパブレード(42)が、周方向において角度αの角度が付けられ、前記角度αが、特に、30°≦α≦150°、好ましくは45≦α≦135°、より好ましくは60°≦α≦120°、特に好ましくはα=90°±2°であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項17】
前記反応器が、上流方向において少なくとも1つの混合チャンバ(72)に接続され、前記混合チャンバ(72)が、前記混合チャンバを包囲するハウジングと、前記混合チャンバ内に配置される少なくとも1つの混合要素(70)とを有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項18】
前記混合要素(70)がインペラであることを特徴とする、請求項17に記載の反応器。
【請求項19】
前記スクレーパまたはワイパ(36)および/あるいは任意に存在するステータ(75)が、掻き取られていないかまたは払拭されていない物質の再分散を促進するように構成されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項20】
重合性モノマーの重合のための、請求項1〜19のいずれか一項に記載の反応器の使用方法。
【請求項21】
前記ポリマーが合成ゴムであることを特徴とする、請求項20に記載の使用方法。
【請求項22】
重合性モノマーの重合によるポリマーの連続調製方法であって、前記重合が請求項1〜19のいずれか一項に記載の反応器において行われることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の反応器において、
軸方向の本質的栓流が出発物質および生成物に付与され、または
反応物質および前記生成物の本質的循環流が、前記出発物質および前記生成物に付与され、
堆積されたいかなる固体またはゲルも、前記重合中に前記チューブ反応器(10)の反応器ハウジング(16)の内側(44)から機械的に除去されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記機械的除去が、掻取りまたは払拭によって行われることを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記重合中に発生する熱勘定、滞留時間および凝縮を考慮して所定分子量を設定するために、種々の熱交換器温度が前記流れ方向において確立されることを特徴とする、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
あらゆる堆積された固体またはゲルの掻取りが、前記反応器ハウジング(16)の前記内側(44)において、0.05m/秒≦v≦10m/秒等の速度vで行われることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記出発物質が、混合要素(70)によって0.001J/lから120J/lの混合エネルギーで混合されることを特徴とする、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記出発物質が、前記チューブ反応器に入る前に、混合チャンバ(72)において、混合要素(70)により0.001kW/lから100kW/lの混合動力で混合されることを特徴とする、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−531515(P2012−531515A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518914(P2012−518914)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059385
【国際公開番号】WO2011/000922
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(511013418)ランクセス・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (12)
【Fターム(参考)】