説明

反応性ケイ素基を有する重合体を含有する硬化性組成物

【課題】貯蔵安定性が良好で、活性エネルギー線照射で硬化可能、且つ作業時間を充分に確保できる作業性良好な硬化性組成物の提供。
【解決手段】下記(A)と(B)成分を含有し、活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物。(A)一般式(1):O=P(CRO)R(1)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド。(B)一般式(2):−[Si(R2−b)(X)O]Si(R3−a)X(2)で表される反応性ケイ素基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上の有機重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線により硬化し得る反応性ケイ素基を有する重合体を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有する有機重合体は、湿分により反応性ケイ素基の加水分解反応を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物を与える(例えば、特許文献1、2)。しかし反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を、利便性に優れる1液型にした場合、空気中の湿気で硬化するように縮合触媒を含有するため、貯蔵安定性を保持するために湿気を遮断する容器で保管する必要があった。
(メタ)アクリロイル基を有する有機重合体は、重合開始剤との併用で、UV、電子線、加熱などの活性エネルギー線を照射することにより、(メタ)アクリロイル基が瞬時に重合して架橋し、速硬化可能である(例えば、特許文献3,4)。この場合、貯蔵安定性は確保しやすいものの、活性エネルギー線照射の直後から硬化反応が進行し、作業性が低下するという問題があった。
【0003】
このことから、反応性ケイ素基を有するビニル系重合体に光酸発生剤を含有することにより活性エネルギー線照射により硬化可能な組成物が提案されている(例えば、特許文献5)。これは貯蔵安定性を確保するために湿気を遮断する必要もなく、また充分に作業性を確保できるという特徴があった。しかし活性エネルギー線照射により強酸が発生するために硬化物周辺の特に金属などを腐食させるという課題があった。
【0004】
一方で反応性ケイ素基を有する化合物に、光酸発生剤を使用せずに、カルボン酸無水物、ビスアシルフォスフィンを含有することにより活性エネルギー線照射により硬化可能な組成物が提案されている(例えば、特許文献6)。これは従来、酸素で阻害されていた硬化反応を酸素により促進することを特徴としている。しかし酸素が少ない、あるいは存在しない、例えば透明基材に挟まれた状態で、活性エネルギー線照射で硬化させようとする場合は硬化させることができないという問題があった。
【0005】
このようなことから、簡便に貯蔵安定性を保持することができ、且つ良好な作業性を有し、硬化反応時に特に酸素を必要としない反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を製造することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−6041号公報
【特許文献3】WO2005/030866号公報
【特許文献4】特開2005−105065号公報
【特許文献5】WO2007/029733号公報
【特許文献6】特許第3904518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便に貯蔵安定性を保持することができ、且つ良好な作業性を有し、活性エネルギー線照射後の硬化反応時に特に酸素を必要としない反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
(I)
下記(A)と(B)成分を含有し、活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物。
(A)一般式(1):
O=P(CRO)R (1)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基を示し、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド。
(B)一般式(2):
−[Si(R2−b)(X)O]Si(R3−a)X (2)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基、または、R’SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで、R’は炭素数1から20の1価の炭化水素基であり、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示し、a+Σb≧2を満足するものとする。nは0から19の整数を示す。)で表される反応性ケイ素基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上の有機重合体。
【0010】
(II)
有機重合体(B)が、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を分子鎖末端に1個以上有することを特徴とする(I)に記載の硬化性組成物。
【0011】
(III)
有機重合体(B)の分子量分布が1.8未満である、(I)または(II)に記載の硬化性組成物。
【0012】
(IV)
有機重合体(B)がポリオキシアルキレン系重合体(B1)、(メタ)アクリル系重合体(B2)、および/または炭化水素系重合体(B3)である(I)から(III)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0013】
(V)
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)がポリオキシプロピレン(b1)である (IV)に記載の硬化性組成物。
【0014】
(VI)
(メタ)アクリル系重合体(B2)が原子移動ラジカル重合法により製造された(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b2)である (IV)に記載の硬化性組成物。
【0015】
(VII)
炭化水素系重合体(B3)がリビングカチオン重合法により製造されたポリイソブチレン(b3)である(IV)に記載の硬化性組成物。
【0016】
(VIII)
一般式(2)のXがメトキシ基である(I)から(VII)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0017】
(IX)
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドである(I)から(VIII)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0018】
(X)
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の添加量が、有機重合体(B)100重量部に対し、5重量部から30重量部である(I)から(IX)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0019】
(XI)
活性エネルギー線が紫外線である(I)から(X)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性組成物を使用することにより、簡便に貯蔵安定性を保持することができ、且つ良好な作業性を有し、活性エネルギー線照射後の硬化反応時に特に酸素を必要としない反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0022】
本発明の硬化性組成物は、一般式(1):
O=P(CRO)R (1)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基を示し、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド(A)を含有する。
【0023】
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)は従来、光ラジカル開始剤として知られ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合するのに利用されていた。しかし反応性ケイ素基を含有する化合物を硬化させることは知られていなかった。またモノアシルフォスフィンオキサイド(A)と類似の構造を有するビスアシルフォスフィンオキサイドが光照射により、反応性シリル基を含有する化合物を硬化させることが知られていたが、酸素を必要とすることが特徴であった。しかし本発明者らは鋭意検討の結果、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)を用いることにより、酸素を必要とせずに反応性ケイ素基を含有する化合物を硬化させること見出した。
【0024】
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)としては特に限定されないが、入手性の観点から2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Darocur TPO BASF社製)が好ましい。
【0025】
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の添加量は、有機重合体(B)100重量部に対し、5重量部から30重量部であることが好ましく、10重量部から20重量部であることがより好ましい。5重量部以下であると硬化速度が著しく遅い、あるいは硬化しないことがあり好ましくなく、30重量部以上であると(A)が高価であるために経済的に不利であり好ましくない。
【0026】
本発明の硬化性組成物は、一般式(2):
−[Si(R2−b)(X)O]Si(R3−a)X (2)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基、または、R’SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで、R’は炭素数1から20の1価の炭化水素基であり、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示し、a+Σb≧2を満足するものとする。nは0から19の整数を示す。)で表される反応性ケイ素基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上の有機重合体(B)を含有する。有機重合体(B)の反応性ケイ素基の数は、特に限定されないが、重合体(B)同士が架橋するという点から、1分子あたり平均1個未満であると硬化性が低くなる傾向があるため、平均1個以上が好ましい。ただし、1分子あたり平均1個以上の反応性ケイ素基を有する重合体(B)が含まれれば、硬化物の硬度、柔軟性を調整するために、1分子あたり平均1個未満の反応性ケイ素基を有する有機重合体が含まれても良い。また、反応性ケイ素基は分子の側鎖、および/または、末端のいずれに存在していてもかまわないが分子鎖末端に1個以上有することが好ましい。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にのみ有するときは、最終的に形成される硬化物に含まれる重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0027】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1から3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は2から5個の範囲が好ましい。得られる硬化物が良好な硬化性を示すことからaは2が好ましく、重合体(B)が高い反応性を示すという点では、aは3が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0028】
特に、一般式(3):
−SiR3−a (3)
(式中、R、Xは前記と同じ。aは2または3を示す。)で表される反応性ケイ素基が、導入が容易であるので好ましい。
【0029】
一般式(2)または(3)中のXで記載される加水分解性基としては、特に限定されず、公知の加水分解性基があげられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基が、加水分解性が穏やかで取扱い易いことからより好ましい。
【0030】
アルコキシ基の具体例としては、特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、tert−ブチルオキシ基、オクトキシ基、ラウリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、メトキシ基、エトキシ基が、合成が容易なことから好ましく、メトキシ基が、加水分解反応の反応性が高いことからより好ましい。
【0031】
一般式(2)または(3)中のRは特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基などの炭化水素基、または、一般式:R’SiO−で記載され、R’がメチル基、フェニル基などであるトリオルガノシロキシ基などがあげられる。これらのなかでは、導入の容易さから、メチル基が好ましい。
【0032】
有機重合体(B)の反応性ケイ素基としては、特に限定されず、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、ジメトキシメチルシリルオキシジメチルシリル基、ジエトキシメチルシリルオキシジメチルシリル基があげられる。これらのなかでは、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基が、導入しやすく好ましい。硬化性の良好な組成物を得るためには、トリメトキシシリル基を有する有機重合体(B)を使用することが好ましく、より伸縮性の高い硬化物を得るためには、ジメトキシメチルシリル基を有する重合体(B)を使用することが好ましい。
【0033】
有機重合体(B)の反応性ケイ素基の導入方法としては公知の方法があげられ、例えば、以下に記載の(イ)〜(ハ)の方法があげられる。
【0034】
(イ)不飽和基を有する重合体に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを反応させてヒドロシリル化させる方法。
【0035】
(ロ)不飽和基を有する重合体にメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0036】
(ハ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有する重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0037】
前記(イ)〜(ハ)の方法のなかでは、(ハ)法のなかでも、末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、または、(イ)法が比較的短い反応時間で高い転化率が得られることから好ましく、このなかでも、(イ)法で得られた反応性ケイ素基を有する重合体は、(ハ)法で得られる重合体よりも低粘度で作業性の良い組成物となること、また、(ロ)法で得られる重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(イ)法が特に好ましい。
【0038】
(イ)法で使用されるヒドロシラン化合物としては特に限定はなく、例えば、トリクロロシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロフェニルシランなどのハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシフェニルシラン、ジメトキシエチルシランなどのアルコキシシラン類;ジアセトキシメチルシラン、ジアセトキシフェニルシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランなどのケトキシメートシラン類などがあげられる。これらのなかでは、特にハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類が好ましい。さらにアルコキシシラン類が得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱い易いことからより好ましく、アルコキシシラン類のなかでも、ジメトキシメチルシランが入手し易く好ましい。
【0039】
(ロ)の合成法としては、例えば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、重合体の不飽和結合部位に導入する方法などがあげられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0040】
(ハ)の合成法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、特開平3−47825号公報に示される方法などがあげられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジエトキシメチルシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシランなどがあげられる。
【0041】
有機重合体(B)の分子量分布[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比]は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.8未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.4以下が特に好ましい。分子量分布が大きくなると、粘度が高くなり、それゆえ作業性が悪くなる傾向がある。
【0042】
有機重合体(B)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン系重合体(B1)、(メタ)アクリル系重合体(B2)、および/または炭化水素系重合体(B3)であることが好ましい。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)の主鎖骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などを使用することができるが、ポリオキシプロピレン(b1)であることが好ましい。
【0044】
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)は、本質的に一般式(4):
−R−O− (4)
(式中、Rは炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で表される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(4)中に記載のRは、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好まく、2から4の直鎖状、もしくは、分岐状アルキレン基がより好ましい。一般式(4)に記載の繰り返し単位としては、特に限定はなく、例えば、
【0045】
【化1】

【0046】
などがあげられる。ポリオキシアルキレン系重合体(B1)の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなっても良いし、2種類以上の繰り返し単位からなっても良い。特に、プロピレンオキシドを主成分とする重合体から成るものが、非晶質であることや比較的低粘度であることから好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)の合成法としては、特に限定されず、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号などの各公報に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号公報に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11060722号公報に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法などがあげられる。
【0048】
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)は直鎖状、または分岐を有しても良く、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において3,000から100,000が好ましく、より好ましくは3,000から50,000であり、特に好ましくは3,000から30,000である。数平均分子量が3,000未満では、硬化物の伸縮性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0049】
(メタ)アクリル系重合体(B2)の主鎖骨格としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して製造されるものが好ましい。ここで「主として」とは、(メタ)アクリル系重合体(B2)を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0050】
なかでも、生成物の物性等から、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーを主として重合して製造される(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b2)が好ましく、アクリル酸エステルモノマーを主として重合して製造されるアクリル酸エステル系重合体がより好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
【0051】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で50重量%以上含まれていることが好ましい。
【0052】
本発明における(メタ)アクリル系重合体(B2)の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、1000〜100,000の範囲である、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取り扱いが困難になる傾向がある。
【0053】
本発明で使用する(メタ)アクリル系重合体(B2)は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」とリビング重合の一種である「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419号公報や、特開2006−291073号公報などの記載を参照できる。
【0054】
本発明における(メタ)アクリル系重合体(B2)の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0055】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419号公報段落[0040]〜[0064]記載の化合物が挙げられる。
【0056】
酸化反応可能な炭素−炭素不飽和基を1分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

等が挙げられる。
【0059】
原子移動ラジカル重合において用いられる(メタ)アクリル系モノマーとしては特に制約はなく、上述した(メタ)アクリル系モノマーをすべて好適に用いることができる。
【0060】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0061】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419号公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0062】
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0063】
末端に不飽和基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、一般に知られている方法で問題なく、特に限定されるものではないが、例えば上記原子移動ラジカル重合法によって得られた一般式(5)で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体(ハロゲン原子を主鎖末端に有するビニル系重合体)に、エチレン性不飽和基を2個有する化合物を反応させて、末端に炭素−炭素不飽和結合を導入させる方法が挙げられる。
【0064】
−C(R)(R)(Y) (5)
(式中、R、Rはビニル系物もーのエチレン性不飽和基に結合した基を表す。Yは塩素、臭素、又はヨウ素を表す。)
【0065】
エチレン性不飽和基を2個有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエンなどの末端に炭素−炭素不飽和結合を2つ有する炭化水素系化合物、3−ビニルシクロヘキセン、4−シクロヘキセンなど脂環式不飽和結合を有する炭化水素系化合物のほか、エーテル系重合体および/またはエステル系重合体末端に炭素−炭素不飽和結合を2つ有する化合物が挙げられる。
【0066】
上記の他に、末端に不飽和基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、例えば上記原子移動ラジカル重合法によって得られた一般式(5)で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体(ハロゲン原子を主鎖末端に有する(メタ)アクリル系重合体)に、炭素−炭素不飽和結合を有する求核剤による求核置換反応が挙げられる。このような求核剤としては例えば、炭素−炭素不飽和結合を有するアリルアルコールなどのアルコール化合物、4−ビニルフェノールなどのフェノール化合物、の他にカルボン酸化合物、アミン化合物、アミド化合物、およびこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩が挙げられる。また、炭素−炭素不飽和結合を有し、さらに電子吸引性置換基により安定化されたカルバニオンも好適に使用される。
【0067】
炭素−炭素不飽和結合を有する開始剤を用いて(メタ)アクリルモノマーを重合し、重合体末端同士のカップリングすることによっても、両末端に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造することができる。カップリングの方法としては、例えば、一般式(5)に示される末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングさせる方法が挙げられる。末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有するものとしては特に限定されないが、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物等が好ましい。これら化合物の具体例としては;
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2′−ビフェノール、4,4′−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′−イソプロピリデンフェノール、3,3′−(エチレンジオキシ)ジフェノール、α,α′−ジヒドロキシ−p−キシレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール等のポリオール;および、上記ポリオール化合物のアルカリ金属塩;
エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、α,α′−ジアミノ−p−キシレン等のポリアミン;および上記ポリアミン化合物のアルカリ金属塩;シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;および上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2−メルカプトエチルエーテル、p−キシレン−α,α′−ジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、等のポリチオール;および、上記ポリチオール化合物のアルカリ金属塩;硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム;等である。
炭素−炭素不飽和結合を主鎖末端に有する(メタ)アクリル系重合体は、炭素−炭素不飽和結合を有する連鎖移動剤を用いた(メタ)アクリル系モノマーのラジカル重合によっても製造することができる。
【0068】
前記炭化水素系重合体(B3)は、芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、たとえば、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン(b3)、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンなどがあげられる。
【0069】
本発明に用いる炭化水素系重合体の主鎖骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1,2−ブタジエン、1,4−ブタジエン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数1〜6のオレフィン系化合物を主成分として単独重合もしくは共重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合もしくは共重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物を共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができる。
【0070】
中でも、ポリイソブチレン(b3)、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンは、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましい。さらに、ポリイソブチレン(b3)は液状または流動性を有するので取り扱いやすく、主鎖に芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を全く含まないため水添の必要が無く、耐候性に極めて優れているので特に好ましい。ポリイソブチレンは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、イソブチレンと共重合可能な単量体単位をポリイソブチレン中に、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下の範囲で含有してもよい。
【0071】
このような炭化水素系重合の単量体成分としては、たとえば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などがあげられる。たとえば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
【0072】
水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンや他の炭化水素系重合体においても、上記ポリイソブチレンの場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に他の単量体単位を含有させてもよい。
【0073】
炭化水素系重合体、好ましくはポリイソブチレン(b3)、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンの数平均分子量は1000〜100,000程度であるのが好ましく、とくに3,000〜20,000程度の液状ないし流動性を有するものが取扱いやすいなどの点から、好ましい。
【0074】
ポリイソブチレン(b3)を製造する方法としては、特に限定されないが、例えばリビングカチオン重合が挙げられる。
【0075】
本発明の硬化性組成物は、増感剤を含有していてもよい。増感剤は、光に対するモノアシルフォスフィンオキサイド(A)の感度を増大して、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0076】
このような増感剤としては、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
【0077】
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジンまたはこれらの混合物が挙げられる。
増感剤の含有量は、重合体(B)100重量部に対して、0.001重量部から20重量部が好ましく、0.1〜10重量部であるのがより好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。0.001重量部よりも少ないと増感効果が不十分になる場合があり、20重量部より多いと硬化物の物性が低下する場合がある。
【0078】
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーを含有していても良い。ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基などのアクリル官能性基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基などがあげられる。上記のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルなどをあげることができる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどが、アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどがあげられる。
【0079】
多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどがあげられる。
【0080】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂などのエポキシアクリレート系樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂、ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレンなど)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなど}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂、上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などがあげられる。
【0081】
ラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、有機重合体(B)100重量部に対し、1〜50重量部が好ましく、5〜40重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない傾向があり、より多い場合は、未反応のラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーが硬化物中から揮発する可能性がある。
【0082】
本発明の硬化性組成物にラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーを含有する場合には、上記アシルホスフィンオキサイドの他に、例えばフェニルケトン系化合物のような光ラジカル開始剤を併用することもできる。
【0083】
光ラジカル開始剤の添加量は、特に制限されないが、有機重合体(B)100重量部に対し、0.001重量部から10重量部が好ましい。光ラジカル開始剤の添加量がこの範囲を下回ると、十分な硬化性が得られない可能性が有り、また、添加量がこの範囲を上回ると硬化物に影響を及ぼす可能性がある。なお、光ラジカル開始剤の混合物が使用される場合には、混合物の合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)以外にシラノール縮合触媒を含有してもよい。シラノール縮合触媒としては、特に限定されないが、貯蔵安定性確保のためアミン化合物が好ましく、例えば、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;ピリジン、2−アミノピリジン、2−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(ジメチルアミノピリジン)、2−ヒドロキシピリジン、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、2−ピペリジンメタノール、2−(2−ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBA−DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、アジリジンなどの含窒素複素環式化合物、および、その他のアミン類として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N'−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、3−ジブチルアミノプロピルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミンなどのアミン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1−o−トリルビグアニドや1−フェニルビグアニドなどのビグアニド類などがあげられる。貯蔵安定性と反応性ケイ素基の縮合反応の速度から、DEAPAが特に好ましい。
【0085】
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有していても良い。シランカップリング剤の反応性ケイ素基以外の官能基としては、アミノ基、置換アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲンなどが例示される。また、アミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有化合物等を反応させ、アミノ基を変性したシランカップリング剤も使用できる。これらの内、アミノ基、置換(変性)アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート等は接着性改善効果がより高い為に好ましい。
【0086】
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどの置換アミノ基含有シラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのケチミン型シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシランなどのビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン含有シラン類;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン類などを挙げることができる。また、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類と前記のシラン類を含むエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物とを反応させて、アミノ基を変性した変性アミノ基含有シラン類もあげられる。また、上記シラン類を部分的に縮合した縮合体も使用できる。シランカップリング剤は、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上を混合使用しても良い。
【0087】
本発明の硬化性組成物は、充填剤を含有していても良い。充填剤としては、特に限定はなく、例えば、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末などの充填剤;ガラス繊維およびフィラメントなどの繊維状充填剤などがあげられる。充填剤を使用する場合、その使用量は、有機重合体(B)100重量部に対し、1から250重量部が好ましく、10から200重量部がより好ましい。
【0088】
本発明の硬化性組成物には必要に応じて可塑剤を添加することができる。可塑剤の添加により、組成物の粘度やスランプ性および組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できる。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、などの炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤類などがあげられる。
【0089】
また、前記可塑剤に加えて高分子可塑剤を添加して使用することも可能である。高分子可塑剤を使用すると重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持する。更に、該硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。高分子可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、さらには1,000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレンなどのポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレンなどがあげられる。
【0090】
可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また低分子可塑剤と高分子可塑剤を併用してもよい。なお、これら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0091】
可塑剤の使用量は、有機重合体(B)の合計100重量部に対し、5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、ラジカル捕捉剤を含有していても良い。ここで言うラジカル捕捉剤とは、一般に、酸化防止剤、光安定剤と呼ばれるものなどを含む。
【0093】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の酸化防止剤があげられ、これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上、いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上、いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は、特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、有機重合体(B)100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが良く、さらに好ましくは、0.2重量部から5重量部である。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。
【0094】
光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などがあげられ、これらの中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。光安定剤の使用量は、有機重合体(B)100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.2重量部から5重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になる可能性があるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも示されている。
【0095】
活性エネルギー線としては、光(UV)、または、電子線があげられ、活性エネルギー線源としては、特に限定されないが、使用する光重合開始剤の性質に応じて、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライドランプなどがあげられる。
【0096】
その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。その他の開始剤として、レドックス系開始剤を併用する場合、その硬化温度は、−50℃〜250℃が好ましく、0℃〜180℃がより好ましい。
【0097】
熱により硬化させる場合、その硬化温度は、30℃〜200℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0099】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、末端が水酸基である数平均分子量14,500(送液システム:東ソー製HLC−8120GPC、カラム:東ソー製TSK−GEL Hタイプ、溶媒としてTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリオキシプロピレンを得た。ポリオキシプロピレンの水酸基に対して、1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに、塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約14,500の2官能ポリオキシプロピレンを得た。
【0100】
得られた2官能ポリオキシプロピレン100重量部に対し、Pt/1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.35重量部と90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン(b−1)を得た。
【0101】
また、H−NMR(日本電子製JNM−LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)による測定において、重合体(b−1)の末端のアリル基のエキソメチレンプロトンに対応するシグナル(2H:5.2ppm付近)、主鎖のメチルプロトンに由来するシグナル(3H:1.1ppm付近)、重合体(b−1)のジメトキシメチルシリル基上のメチル基に由来するシグナル(3H:0.1ppm付近)の積分比から算出された重合体(b−1)中のジメトキシメチルシリル基の数は1分子あたり平均して約1.6個であった。
【0102】
(合成例2)
撹絆機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸ブチルの一部(初期仕込みモノマー)を仕込み、加熱撹絆した。アセトニトリル、開始剤としてジエチル2,5一ジブロモアジペートを添加、混合し、混合液の温度を約80℃ に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸ブチルを逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃ 〜 約90℃ に調整しながら重合を進行させた。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で揮発分を減圧脱揮して除去し、重合体濃縮物を得た。
使用した原材料:開始剤:3.51kg、アクリル酸n−ブチル(脱酸素したものを使用):100kg、初期仕込みモノマー:40kg、追加モノマー:60kg、CuBr:0.84kg、トリアミン(総量):0.15kg、アセトニトリル:8.79kg
【0103】
上記濃縮物に1,7−オクタジエン以下ジエン若しくはオクタジエンと略す)、アセトニトリルを添加し、トリアミンを追加した。内温を約80℃〜約90℃ に調節しながら数時間加熱撹絆させて、重合体末端にオクタジエンを反応させた。アセトニトリル及び未反応のオクタジエンを減圧脱揮して除去し、末端にアルケニル基を有する重合体を含有する濃縮物を得た。
使用した原材料:アセトニトリル:35kg、オクタジエン:21kg、トリアミン:0.68kg
【0104】
上記濃縮物をトルエンで希釈し、ろ過助剤、吸着剤(キョーワード700SEN:協和化学製)、ハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製))を添加し、80〜100℃ 程度に加熱撹拌した後、固形成分をろ別した。ろ液を濃縮し、重合体粗精製物を得た。
重合体粗精製物、熱安定剤(スミライザーGS:住友化学(株)製)、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加し、減圧脱揮、加熱撹絆しながら昇温し、約170℃ 〜 約200℃ の高温状態で数時間程度加熱撹拌、減圧脱揮を行なった。
吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)、を追加し、重合体に対して約10重量部のトルエンを添加し、約170℃ 〜 約200℃ の高温状態で更に数時間程度加熱撹拌した。処理液を更にトルエンで希釈し、吸着剤をろ別した。ろ液を濃縮し、両末端にアルケニル基を有する重合体を得た。
【0105】
上記方法により得られたアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(以下DMSという:アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液:以下白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、100℃ で加熱撹絆した。1時間程度加熱撹拌後、未反応のDMS等の揮発分を減圧留去し、両末端にジメトキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b−2)を得た。得られた重合体(b−2)の数平均分子量は約14000、分子量分布は1.3であった(カラム:昭和電工製shodex GPC K−804、溶媒としてクロロホルムを用いて測定したポリスチレン換算分子量)。重合体1分子当たりに導入された平均のシリル基の数をH NMR分析により求めたところ、約1.8個であった。
【0106】
(合成例3)
2Lの耐圧ガラス製容器に、三方コックを取り付け、容器内を窒素置換した後、注射器を用いて容器内に、エチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)138mLおよびトルエン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)1012mL、1,4−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン8.14g(35.2mmol)を加えた。
【0107】
次にイソブチレンモノマー254mL(2.99mmol)が入っているニードルバルブ付き耐圧ガラス製乳化採取管wp、三方コックに接続して、重合容器を−70℃のドライアイス/エタノールバス中につけて冷却した後、真空ポンプを用いて容器内を減圧にした。ニードルバルブを開け、イソブチレンモノマーを液化ガス採取管から重合容器内に導入した後、三方コック内の一方から窒素を導入することにより容器内を常圧に戻した。次に2−メチルピリジン0.387g(4.15mmol)を加えた。次に四塩化チタン4.90mL(44.7mmol)を加えて重合を開始した。反応時間70分後にアリルトリメチルシラン9.65g(13.4mmol)を加えてポリマー末端にアリル基の導入反応を行った。反応時間120分後に、反応溶液を水200mLで4回洗浄した後、溶剤を留去することによりアリル末端イソブチレン系重合体を得た。得られたアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(以下DMSという:アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液:以下白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、空気中、100℃ で加熱撹絆した。3時間程度加熱撹拌後、未反応のDMS等の揮発分を減圧留去し、両末端にジメトキシシリル基を有するポリイソブチレン(b−3)を得た。
得られたジメトキシシリル基末端ポリイソブチレン(b−3)は、数平均分子量5,800、分子量分布1.4(カラム:昭和電工製shodex GPC K−804、溶媒としてクロロホルムを用いて測定したポリスチレン換算分子量)、1分子あたりのアリル基の数は1.8であった。
【0108】
(実施例1〜6)
ジメトキシシリル基を末端に有する重合体(b−1〜3)に、モノアシルフォスフィンオキサイド(A)として、アセトンに溶解させた所定量のDarocur TPO(BASF社製)を添加した後、50℃にてアセトンを減圧留去した。得られた混合物に必要に応じて添加剤を添加して、スパチュラにてよく攪拌した後、さらに、遠心分離機にて攪拌混合した。これらの操作により、硬化性組成物を得た。
【0109】
(硬化性)
得られた硬化性組成物を厚さ約2.5cmのミニカップに充填し、フュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、積算光量:6000mJ/cm)にて照射を行った。7日後、得られた硬化物を指で触り硬化性を判断した。評価は硬化していれば「○」、硬化していなければ「×」とした。
【0110】
(貯蔵安定性)
遮光した状態で硬化性組成物を7日間保管し、粘度の上昇をみた。評価は粘度が上昇していなければ「○」、粘度が上昇してれば「×」とした。
【0111】
硬化性組成物の配合量、および、硬化性、貯蔵安定性の結果を表1に記載する。
【0112】
(比較例1、2)
ジメトキシシリル基を末端に有する重合体(b−1)に、必要に応じて添加剤を添加して、スパチュラにてよく攪拌した後、さらに、遠心分離機にて攪拌混合した。これらの操作により、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物について実施例と同様の評価を行った。
【0113】
【表1】

【0114】
実施例1から6の硬化性組成物は、UV照射により硬化可能な硬化性組成物であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と(B)成分を含有し、活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物。
(A)一般式(1):
O=P(CRO)R (1)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基を示し、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド。
(B)一般式(2):
−[Si(R2−b)(X)O]Si(R3−a)X (2)
(式中、Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基、または、R’SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで、R’は炭素数1から20の1価の炭化水素基であり、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示し、a+Σb≧2を満足するものとする。nは0から19の整数を示す。)で表される反応性ケイ素基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上の有機重合体
【請求項2】
有機重合体(B)が、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を分子鎖末端に1個以上有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機重合体(B)の分子量分布が1.8未満である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
有機重合体(B)がポリオキシアルキレン系重合体(B1)、(メタ)アクリル系重合体(B2)、および/または炭化水素系重合体(B3)である請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ポリオキシアルキレン系重合体(B1)がポリオキシプロピレン (b1)である請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル系重合体(B2)が原子移動ラジカル重合法により製造された(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b2)である請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
炭化水素系重合体(B3)がリビングカチオン重合法により製造されたポリイソブチレン(b3)である請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
一般式(2)のXがメトキシ基である請求項1から7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドである請求項1から8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
モノアシルフォスフィンオキサイド(A)の添加量が、有機重合体(B)100重量部に対し、5重量部から30重量部である請求項1から9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
活性エネルギー線が紫外線である請求項1から10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。


【公開番号】特開2012−116992(P2012−116992A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269654(P2010−269654)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】