説明

反応槽

【課題】収容容器の内部の湿度を適宜コントロールすることができる反応槽を提供する。
【解決手段】水を貯留する貯水部21と当該貯水部21の水分を収容容器1の内部に放出する加湿部22とを有して収容容器1の内部を加湿する加湿手段2と、収容容器1の内部の湿度を検出する湿度検出手段3とを備え、収容容器1の内部の湿度が所定の適湿度を逸脱した場合に加湿部22の稼働をON/OFFする。この結果、収容容器1の内部の湿度を所定湿度に保持するように適宜コントロールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば免疫学的凝集反応などにおいて凝集反応を行わせるための反応槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液などの検体中に存在する物質の分析や検査においては、板状に形成した一方の面にウェルと呼ばれる複数の反応凹部をマトリクス状に設けた反応容器(マイクロプレート)が用いられている。そして、マイクロプレートの各ウェルに検体および試薬を微量分注して反応槽内で反応させ、この反応によって生ずる凝集物を測定することで、検体中に存在する物質を分析する。
【0003】
従来では、上記分析を自動化した自動分析装置が提案されている。この自動分析装置では、各種の分析項目に必要な反応時間が経過するまで多数のマイクロプレートを反応ライン(反応槽)に収納しておき、反応が終了したマイクロプレートを順次搬出し、各ウェルにおける凝集パターンをCCDカメラなどの検出器によって測光して検出することで検体中に存在する物質を分析している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−273216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の自動分析装置に用いられる反応槽は、マイクロプレートを収容する容器内に蒸発皿を設けた構成が一般的であり、蒸発皿に注いだ水を容器内で自然蒸発させることで容器内を加湿してウェル内の検体の凝集反応を行わせるようにしている。
【0006】
しかし、従来の反応槽は、蒸発皿の水を自然蒸発させるものであるため、反応槽の容器内の湿度をコントロールすることが難しい。例えば、自動分析装置による分析を開始する際に蒸発皿の水が蒸発していない場合では、湿度が上がるまでに時間を要するために分析の開始が遅滞してしまうという問題がある。また、自動分析の高速化によって反応槽へのマイクロプレートの出し入れが頻繁に行われる場合では、反応槽の容器内を反応に適した湿度に保つことが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容器内の湿度を適宜コントロールすることができる反応槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る反応槽は、収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で検体分析に係る反応を行わせる反応槽であって、水を貯留する貯水部と前記貯水部の水分を前記収容容器内に放出する加湿部とを有して前記収容容器内を加湿する加湿手段と、前記収容容器内の湿度を検出する湿度検出手段とを備え、前記収容容器内の湿度が所定の適湿度を下回った場合に前記加湿手段の加湿部の稼働をONする一方で、前記収容容器内の湿度が所定の適湿度を上回った場合に前記加湿手段の加湿部の稼働をOFFすることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る反応槽は、上記請求項1において、前記加湿手段は前記貯水部に水を補充する水補充部を有し、前記収容容器内の湿度が所定の補充湿度を下回った場合に前記水補充部によって前記貯水部に水を補充することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る反応槽は、上記請求項1において、前記加湿手段は前記貯水部に水を補充する水補充部と前記貯水部に貯留した水の水面を検出する水面検出部とを有し、前記貯水部に貯留した水の水面が所定水位を下回った場合に前記水補充部によって前記貯水部に水を補充することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る反応槽は、収容容器内の湿度が所定の適湿度を下回った場合に加湿部の稼働をONする一方で、収容容器内の湿度が所定の適湿度を上回った場合に加湿部の稼働をOFFすることによって、収容容器内の湿度を所定湿度に保持するように収容容器内の湿度を適宜コントロールすることができる。この結果、例えば自動分析装置による分析を開始する際に湿度が上がるまでの時間を短縮することができる。また、収容容器へのマイクロプレートの出し入れが頻繁に行われる場合であっても、収容容器内の湿度を反応に適した湿度に保つことができる。
【0012】
また、収容容器内の湿度が所定の補充湿度を下回った場合に貯水部に水を補充することによって、貯水部での水の貯留を常に維持して上記湿度コントロールを維持することができる。また、貯水部に貯留した水の水面が所定水位を下回った場合に貯水部に水を補充することによって、同様に貯水部での水の貯留を常に維持して上記湿度コントロールを維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る反応槽の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は本発明に係る反応槽の実施の形態を示す概略図である。図1に示す反応槽は、血液などの検体中に存在する物質の分析や検査を行う自動分析装置(図示せず)に適用するものである。自動分析装置では、板状に形成した一方の面にウェル(図示せず)と呼ばれる複数の反応凹部をマトリクス状に設けた反応容器100(以下マイクロプレートという)が用いられている。そして、自動分析装置は、マイクロプレート100の各ウェルに検体および試薬を微量分注して、本発明に係る反応槽で反応させた後、各ウェルにおける凝集パターンをCCDカメラなどの検出器によって測光して検出することで検体中に存在する物質を分析する。本発明に係る反応槽は、各ウェルに検体および試薬を微量分注したマイクロプレート100を収容して所望の雰囲気中で検体および試薬を反応させる。
【0015】
図1に示すように反応槽は、マイクロプレート100を所望の雰囲気中に収容するための収容容器1を有している。収容容器1は、その内外を隔てる隔壁11を有した箱体を構成してなり、その内部にマイクロプレート100を搬入する搬入口12と、その外部にマイクロプレート100を搬出する搬出口13とを有している。これら、搬入口12および搬出口13は、それぞれ扉体14によって開閉可能に設けてある。なお、図には明示しないが収容容器1の内部には、搬入口12から搬入したマイクロプレート100を保持し、当該マイクロプレート100を搬出口13の位置まで搬送する搬送機構が設けてある。また、図には明示しないが収容容器1に対し、搬入口12からのマイクロプレート100の搬入、および搬出口13からのマイクロプレート100の搬出は、上記自動分析装置に設けた搬入搬出機構によって行われる。
【0016】
上記収容容器1には、加湿手段2および湿度検出手段3が設けてある。加湿手段2は、収容容器1の内部を加湿するためのものであって、貯水部21と、加湿部22と、水補充部23と、水面検出部24とを有している。
【0017】
貯水部21は、水を貯留するものであって、本実施の形態では上部が開放した皿状の器体をなし、収容容器1の内部の底に配置してある。
【0018】
加湿部22は、収容容器1の内部に貯水部21に貯留した水の水分を放出するものであって、本実施の形態では、貯水部21に貯留した水を加熱して蒸発させるヒータをなし、収容容器1の外部の底に配置してある。
【0019】
水補充部23は、貯水部21に対して水を補充するものであって、収容容器1の外部から収容容器1の内部の貯水部21に至る導水管23aと、当該導水管23aの中途部に設けた開閉弁23bとからなる。この水補充部23は、導水管23aに水道水などの水が供給されていて、開閉弁23bを開くことで貯水部21に水を供給し、開閉弁23bを閉じることで貯水部21への水の供給を止める。
【0020】
水面検出部24は、貯水部21に貯留した水の水面を検出するものである。水面検出部24としては、図には明示しないが、例えば貯水部21に貯留した水に浮かべたフロートと当該フロートの上下位置を検出するスイッチとからなる構成、あるいは、貯水部21に貯留した水に接触する導電スイッチからなる構成などがある。この水面検出部24は、例えば、貯水部21に水が十分に貯留している場合にOFF状態になり、貯水部21に貯留している水が少なくなった場合にON状態になって、当該ON状態で検出信号を出力する。なお、貯水部21に水が十分に貯留している場合とは、例えば加湿部22によって収容容器1の内部に水分を放出させることができる水量が貯水部21に貯留されている場合であり、貯水部21に貯留している水が少なくなった場合とは、例えば加湿部22によって収容容器1の内部に水分を十分に放出させることができないほど貯水部21に貯留されている水量が減った場合である。
【0021】
湿度検出手段3は、いわゆる湿度センサであって、収容容器1の内部の湿度を検出するものである。この湿度検出手段3は、例えば湿度の変化によって抵抗値が変化してこの変化を電気信号の変化として取得する抵抗可変型の湿度センサや、湿度の変化とともにセンサ端子間の静電容量が変化する容量変化型の湿度センサなどがある。
【0022】
以下、上述した反応槽の動作制御を説明する。図2は本発明に係る反応槽の機能ブロック図、図3〜図5は本発明に係る反応槽の動作を示すフローチャートである。
【0023】
図2に示すように反応槽は、反応槽制御部4を有している。反応槽制御部4には、上述した湿度検出手段3、水面検出部24、加湿部22、水補充部23およびメモリ41が接続してある。メモリ41には、反応槽制御部4が加湿部22および水補充部23を制御して収容容器1の内部の雰囲気を所望の湿度に保持するためのデータやプログラムが予め格納してある。例えば、メモリ41には、収容容器1の内部を所定湿度に保持するために、予め定めた適湿度(例えば相対湿度80%または80±1〜5%)が閾値として格納してある。また、メモリ41には、水補充部23によって貯水部21に水を補充するために、上記適湿度(相対湿度80%または80±1〜5%)を下回る補充湿度(例えば相対湿度60%または60±1〜5%)が閾値として格納してある。さらに、メモリ41には、水補充部23によって貯水部21に水を補充するために、貯水部21に貯留している水が少なくなった場合の水面の所定水位が閾値として格納してある。
【0024】
図3に示すように反応槽制御部4は、分析の開始に伴って加湿部22の稼働をONする(ステップS1)。すなわち、ヒータの電源をONする。そして、湿度検出手段3によって検出した収容容器1の内部の湿度が適湿度を上回った場合に(ステップS2:Yes)、加湿部22の稼働をOFFする(ステップS3)。すなわち、ヒータの電源をOFFする。そして、湿度検出手段3によって検出した収容容器1の内部の湿度が適湿度を下回った場合に(ステップS4:Yes)、ステップS1に戻って加湿部22の稼働をONする。このように反応槽制御部4は、収容容器1の内部の湿度が所定の適湿度を下回った場合に加湿部22の稼働をONする一方で、収容容器1の内部の湿度が所定の適湿度を上回った場合に加湿部22の稼働をOFFする。なお、加湿部22のON/OFF制御は、単純なON/OFF制御の場合には、収容容器1の内部の湿度が適湿度の間を行ったり来たりするので、変化が大きすぎて、適湿度に対して行き過ぎを繰り返すことになる。そこで、比例制御やPID制御によって収容容器1の内部を適湿度に保持できるようにすることが好ましい。
【0025】
上記のごとく収容容器1の内部を所定湿度に保持しているとき(加湿部22をONしているとき)、貯水部21に貯留した水は徐々に減少する。そこで、図4に示すように反応槽制御部4は、湿度検出手段3によって検出した収容容器1の内部の湿度が補充湿度を下回った場合に(ステップS11:Yes)、貯水部21に水を補充する(ステップS12)。すなわち、水補充部23において開閉弁23bを開ける。なお、収容容器1の内部の湿度が補充湿度を下回った場合とは、貯水部21に水がなくなったときである。そして、反応槽制御部4は、ステップS12において開閉弁23bを開けた後、例えば貯水部21に水が充満する所定時間が経過して貯水部21に水が充満した場合(ステップS13:Yes)、開閉弁23bを閉じて水の補充を止める(ステップS14)。このように反応槽制御部4は、収容容器1の内部の湿度が所定の補充湿度を下回った場合に貯水部21に水を補充する。
【0026】
また、他に貯水部21への水の補充について、図5に示すように反応槽制御部4は、水面検出部24によって検出した貯水部21の水面が所定水位を下回った場合に(ステップS21:Yes)、貯水部21に水を補充する(ステップS22)。すなわち、水補充部23において開閉弁23bを開ける。そして、反応槽制御部4は、ステップS22において開閉弁23bを開けた後、例えば貯水部21に水が充満する所定時間が経過して貯水部21に水が充満した場合(ステップS23:Yes)、開閉弁23bを閉じて水の補充を止める(ステップS24)。このように反応槽制御部4は、貯水部21に貯留した水の水面が所定水位を下回った場合に貯水部21に水を補充する。なお、上記のごとく補充湿度を下回った場合の水の補充では、貯水部21に水がなくなったときに水の補充を行うので加湿部22のヒータによって収容容器1の内部の温度上昇が考えられるが、所定水位を下回った場合の水の補充では、貯水部21に水がなくなる前に水の補充を行うので、収容容器1の内部の温度上昇を抑えることが可能である。
【0027】
したがって、上述した反応槽では、収容容器1の内部の湿度が所定の適湿度を下回った場合に加湿部22の稼働をONする一方で、収容容器1の内部の湿度が所定の適湿度を上回った場合に加湿部22の稼働をOFFすることによって、収容容器1の湿度を所定湿度に保持するように収容容器1の内部の湿度を適宜コントロールすることが可能になる。この結果、自動分析装置による分析を開始する際に湿度が上がるまでの時間を短縮することが可能になる。また、収容容器1へのマイクロプレートの出し入れが頻繁に行われる場合であっても、収容容器1の内部の湿度を反応に適した湿度に保つことが可能になる。
【0028】
また、収容容器1の内部の湿度が所定の補充湿度を下回った場合に貯水部21に水を補充することによって、貯水部21での水の貯留を常に維持して上記湿度コントロールを維持することが可能になる。また、貯水部21に貯留した水の水面が所定水位を下回った場合に貯水部21に水を補充することによって、同様に貯水部21での水の貯留を常に維持して上記湿度コントロールを維持することが可能になる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、ヒータをなす加湿部22を収容容器1の底部に配置しているため、収容容器1の内部に温度むらが生じるおそれがある。そこで、収容容器1の隔壁11全体にラバーヒーターを設け、当該ラバーヒーターで収容容器1を一様に加熱することで、貯水部21に貯留した水を蒸発させてもよい。さらに、温度むらをなくす手段として収容容器1の外側を断熱材で覆うことが好ましい。
【0030】
また、上述した実施の形態では、加湿部22がヒータをなして貯水部21に貯留した水を加熱して蒸発させる構成を説明したがこの限りでない。例えば、加湿部22を、超音波振動によって貯水部21に貯留した水を霧化して収容容器1の内部に放出する構成としてもよい。超音波振動によって貯水部21に貯留した水を霧化して収容容器1の内部に放出すれば、上記温度むらが生じる事態を防ぐことが可能である。さらに、上述した実施の形態では、貯水部21を収容容器1の内部に配置した構成を説明したが、貯水部21および加湿部22を収容容器1の外部に配置して水分のみを収容容器1の内部に供給する構成としてもよい。貯水部21および加湿部22を収容容器1の外部に配置すれば、収容容器1の内部構成を簡素化することが可能であり、かつ、加湿部22がヒータである場合に上記温度むらが生じる事態を防ぐことが可能である。
【0031】
ところで、上述した反応槽において、温湿度バリデーションを行えるように構成してもよい。例えば、図1に示すように収容容器1の隔壁11に内外に通じる孔15を設ける。この孔15は、収容容器1を反応槽として用いる通常状態では栓16で塞いでおく。そして、バリデーション時には、オペレータが栓16を外して外部温湿度計(図示せず)を孔15から収容容器1の内部に挿入し、バリデーションデータを得る。この結果、温湿度バリデーションが行え、湿度検出手段3の校正を行うことが可能になる。なお、栓16で塞いだ孔15は、湿度検出手段3に外部温湿度計(図示せず)を近づけることができる位置に設けておくことが好ましい。また、栓16で塞いだ孔15を複数箇所に設けて複数箇所のバリデーションを行えるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る反応槽の実施の形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る反応槽の機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る反応槽の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る反応槽の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る反応槽の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 収容容器
11 隔壁
12 搬入口
13 搬出口
14 扉体
15 孔
16 栓
2 加湿手段
21 貯水部
22 加湿部
23 水補充部
23a 導水管
23b 開閉弁
24 水面検出部
3 湿度検出手段
4 反応槽制御部
41 メモリ
100 マイクロプレート(反応容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で検体分析に係る反応を行わせる反応槽であって、
水を貯留する貯水部と前記貯水部の水分を前記収容容器内に放出する加湿部とを有して前記収容容器内を加湿する加湿手段と、
前記収容容器内の湿度を検出する湿度検出手段と
を備え、前記収容容器内の湿度が所定の適湿度を下回った場合に前記加湿手段の加湿部の稼働をONする一方で、前記収容容器内の湿度が所定の適湿度を上回った場合に前記加湿手段の加湿部の稼働をOFFすることを特徴とする反応槽。
【請求項2】
前記加湿手段は前記貯水部に水を補充する水補充部を有し、前記収容容器内の湿度が所定の補充湿度を下回った場合に前記水補充部によって前記貯水部に水を補充することを特徴とする請求項1に記載の反応槽。
【請求項3】
前記加湿手段は前記貯水部に水を補充する水補充部と前記貯水部に貯留した水の水面を検出する水面検出部とを有し、前記貯水部に貯留した水の水面が所定水位を下回った場合に前記水補充部によって前記貯水部に水を補充することを特徴とする請求項1に記載の反応槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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