説明

反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置

【目的】ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン及び無水フタル酸製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置を提供する。
【構成】サンプリング部(A)は切り換えコックとサンプリング容器とを設けて210〜280℃の範囲の一定温度に維持され、分離部(B)は有機成分と無機成分とを分離するクロマト分離カラムと切り換えコックとを設けて160〜230℃の範囲の一定温度に維持され、無機成分分析部は(C)はクロマト分離カラムと切り換えコックと検出器とを設け、有機成分分析部(D)はクロマト分離カラムと検出器とを設け、しかも、有機成分分析部(D)のクロマト分離カラムは160〜230℃の範囲の一定温度に維持されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置に関するものであり、詳しくは、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ナフトキノンは、工業的にはナフタレンの気相接触酸化により製造されており、プロセスの運転状況を把握するためには、製造プロセスから導出される反応生成ガスの組成分析が必要である。従来より、上記の分析には、プロセスラインから試料混合ガスを採取して分析室に持ち込み、分析室の分析機器を使用して分析を行う所謂オフライン分析法が最も実用的で確実な方法として採用されている。しかしながら、オフライン分析法は、ガスのサンプリングや前処理に長時間を要し、分析結果に基づく迅速なフィードバック制御が不可能である。
【0003】これに対し、プロセスラインから試料混合ガスをガスの種類に対応する個々の機器に直接導入して分析を行う所謂オンライン分析法は、分析結果に基づく迅速なフィードバック制御が可能である。オンライン分析法は、「ケミカルエンジニアリング」(1986年1月号、55〜68頁)、「計装」(第27巻、第1号(1984)8〜13頁)に紹介されている通り、比較的簡単な組成な組成で取り扱い容易なガスを分析対象とする幾つかのプロセスにおいては実用に供されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスは、多種類の高沸点有機成分と各種の無機成分とを含有する。具体的には、上記の典型的な反応生成ガスは、無水フタル酸、ナフトキノン類、一酸化炭素、二酸化炭素、反応生成水分、未反応ナフタリン及び酸化用空気に由来する窒素、酸素、二酸化炭素、水分等を含有する。そして、このような反応生成ガスは、冷却すると液体または固体状の物質を析出し、また、高温のまま保持すると重縮合または酸化分解を惹起する。従って、上記の反応生成ガスについては、凝縮により系内管路が閉塞し、また、凝縮や分解によりガス組成が変化する問題があるために、オンライン分析法の実施は困難であり、長時間にわたり連続的に安定して使用し得る適切なオンライン分析法は、開発されるに至っていない。
【0005】本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置を提供することにある。本発明者等は、上記の目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、次の知見を得た。
(1)反応生成ガスのサンプリングを特定の温度で行うならば、サンプリングされた試料混合ガスの凝縮や分解を十分に防止できる。
(2)ガスクロマト分離法によれば、キャリヤーガスの存在により試料混合ガスの凝縮開始温度が低下するために、分離カラムの温度の最適化が容易となる。
(3)反応生成ガスの成分を当該反応生成ガスに含有される窒素成分を基準として定量するならば、高い分析精度が達成される。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、反応生成ガスのオンライン分析法および分析装置に関し、各発明の要旨は次の通りである。本発明の第1の要旨は、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析法であって、反応系と導管にて接続されたサンプリング工程(a)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離工程(b)、クロマト分離カラムと検出器とを設けた無機成分分析工程(c)、クロマト分離カラムと検出器とを設けた有機成分分析工程(d)から主として構成され、サンプリング工程(a)の温度を210〜280℃の範囲の一定温度に維持し、分離工程(b)と有機成分分析工程(d)のクロマト分離カラムとの各温度を160〜230℃の範囲の一定温度に維持し、そして、サンプリング工程(a)にてサンプリングした試料混合ガスをキャリヤーガスにより分離工程(b)と有機成分分析工程(d)とに導入し、分離工程(b)において有機成分から分離された無機成分をキャリヤーガスにより無機成分分析工程(c)に導入し、そして、上記のキャリヤーガスとして窒素以外のガスを使用し、各分析工程における反応生成ガスの成分を当該反応生成ガスに含有される窒素成分を基準として定量することを特徴とする反応生成ガスのオンライン分析法に存する。
【0007】本発明の第2の要旨は、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析装置であって、反応系と導管にて接続されたサンプリング部(A)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離部(B)、無機成分分析部(C)、有機成分分析部(D)から主として構成され、サンプリング部(A)は切り替えコックとサンプリング容器とを設けて210〜280℃の範囲の一定温度に維持され、分離部(B)は有機成分と無機成分とを分離するクロマト分離カラムと切り替えコックとを設けて160〜230℃の範囲の一定温度に維持され、無機成分分析部(C)はクロマト分離カラムと切り替えコックと検出器とを設け、有機成分分析部(D)はクロマト分離カラムと検出器とを設け、しかも、有機成分分析部(D)のクロマト分離カラムは160〜230℃の範囲の一定温度に維持され、そして、サンプリング部(A)の切り替えコックはサンプリングされた試料混合ガスがキャリヤーガスにより分離部(B)と有機成分分析部(D)とに導入されるように操作され、分離部(B)の切り替えコックは有機成分から分離された無機成分がキャリヤーガスにより無機成分分析部(C)に導入されるように操作されることを特徴とする反応生成ガスのオンライン分析装置に存する。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明のオンライン分析法について説明する。本発明のオンライン分析法は、ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスを分析対象とする。ナフタレンの気相接触酸化は、通常、酸化バナジウム系触媒を用いて360〜400℃の反応温度で実施される。従って、反応生成ガスは、上記の温度で反応系から排出される。上記の反応生成ガスは、典型的には、無水フタル酸、ナフトキノン類、一酸化炭素、二酸化炭素、反応生成水分、未反応ナフタリン及び酸化用空気に由来する窒素、酸素、二酸化炭素、水分等を含有する。
【0009】本発明のオンライン分析法は、反応系と導管にて接続されたサンプリング工程(a)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離工程(b)、ガスクロマト分離カラム(以下、単に「分離カラム」と略記する)と検出器とを設けた無機成分分析工程(c)、分離カラムと検出器とを設けた有機成分分析工程(d)から主として構成される。
【0010】<サンプリング工程(a)>サンプリング工程(a)は、反応系と導管にて接続されており、反応系からの反応生成ガスのサンプリングを行う。本発明においては、サンプリング工程(a)の温度を210〜280℃の範囲の一定温度に維持することが重要である。サンプリング工程(a)の温度が上記の範囲より低い場合は、サンプリングされた試料混合ガスの一部が凝縮を起こすため、特に有機成分の正確な分析が出来ず、また、上記の範囲より高い場合は、試料混合ガス中に残存する酸素により有機成分が分解される恐れがあり、その正確な分析が困難である。サンプリング工程(a)の好ましい温度範囲は230〜260℃である。従って、反応系から排出された反応生成ガスは、適宜の手段で冷却された後、上記の温度に維持されたサンプリング工程(a)にてサンプリングされ、試料混合ガスとされる。
【0011】また、反応系とサンプリング工程(a)とを接続する導管の温度も上記と同様の温度に維持するのが好ましい。更に、上記の導管は、出来るだけ短く、細く、且つ、触媒作用を呈することの少ないステンレス系の材料を使用するのが好ましい。そして、本発明においては、サンプリング工程(a)にてサンプリングした試料混合ガスをキャリヤーガスにより次の分離工程(b)と後述の有機成分分析工程(d)とに導入する。上記のキャリヤーガスとしては、窒素以外のガス、例えば、ヘリウム、アルゴン、水素等が使用されるが、検出器の感度および取扱上の安全性の観点からヘリウムが好ましい。また、キャリヤーガスの流速は、一般にガスクロマトグラフで採用される約30〜60cc/minの範囲とするのがよい。
【0012】<分離工程(b)>分離工程(b)は、有機成分と無機成分とをクロマト分離する工程であり、分離カラムは、非芳香族または芳香族炭化水素の分析に使用される通常の充填剤にて構成することが出来る。すなわち、充填剤としては、珪藻土系の担体に液相として、例えば、脂肪族飽和炭化水素系ポリマー(例えば、James G.Biddle社製の「Apiezon grease」等)、ポリエステル系ポリマー(例えば、神和化工(株)製の「Ttermon−1000」等)、シリコン系ポリマー(例えば、ジェネラルエレクトリック社製の「シリコンSF−96」等)を担持した充填剤が挙げられる。特に、シリコン系ポリマーを珪藻土に担持した充填剤を使用するのが好ましい。本発明においては、分離工程(b)の温度を160〜230℃の範囲の一定温度に維持することが重要である。上記の温度範囲は、試料混合ガスの凝縮防止および通常の充填剤の分離性能に基づいて決定された範囲である。そして、本発明においては、分離工程(b)において有機成分から分離された無機成分をキャリヤーガスにより次の無機成分分析工程(c)に導入する。無機成分から分離された有機成分および水分は系外に排出される。
【0013】<無機成分分析工程(c)>無機成分分析工程(c)は、分離カラムと検出器とを設け、クロマト分離された各無機成分を定量する。上記の分離カラムとしては、活性炭系充填材とモレキュラーシーブ系充填材とを各別に充填して構成された2本の分離カラムを使用し、これらを40〜120℃の範囲の一定温度に維持し、そして、活性炭系充填材にて構成された分離カラムにより、酸素、窒素および一酸化炭素から成る混合ガスと残余の二酸化炭素とに無機成分を分離し、モレキュラーシーブ系充填材にて構成された分離カラムにより上記混合ガスの成分分離を行い、しかも、モレキュラーシーブ系充填材にて構成されたクロマト分離カラムを経由させることなくバランスカラムを経由させて二酸化炭素を検出器に導入するのが好ましい。何故ならば、上記の温度条件においては、二酸化炭素はモレキュラーシーブ系充填材にて構成された分離カラムに不可逆的に吸着されて定量できない。一方、二酸化炭素は、活性炭系充填材にて構成された分離カラムから遅れて流出する。従って、上記の構成によれば、二酸化炭素の定量を正確かつ確実に行なうことが出来る。そして、上記のバランスカラムとしては、分離カラム(C−5)と同等の通気抵抗を持つカラム、例えば、石英砂を充填して構成されたカラムを使用するのが好ましい。また、上記の検出器としては、熱伝導度型検出器を使用し、これを60〜150℃の範囲の一定温度に維持するのが好ましい。
【0014】<有機成分分析工程(d)>有機成分分析工程(d)は、分離カラムと検出器とを設け、クロマト分離された各有機成分を定量する。上記の分離カラムとしては、前記の分離工程(b)におけるのと同様のものが使用され、特に、シリコン系ポリマーを珪藻土に担持した充填剤にて構成した分離カラムが好ましい。本発明においては、上記の分離カラムの温度を160〜230℃の範囲の一定温度に維持することが重要である。上記の温度範囲は、試料混合ガスの凝縮防止および通常の充填剤の分離性能に基づいて決定された範囲である。また、上記の検出器としては、熱伝導度型検出器を使用し、これを180〜260℃の範囲の一定温度に維持するのが好ましい。
【0015】上記の各工程における温度の維持は恒温槽を使用し、また、ガスの流れの必要な切り替えは、4方または6方の適宜の切り替えコックを使用して容易に行うことが出来る。そして、通常の制御機器を利用して分析時間をプログラムすることにより、切り替えコックの作動等を自動的に行うことが出来る。本発明においては、上記の各分析工程における反応生成ガスの成分を当該反応生成ガスに含有される窒素成分を基準として定量する。そして、各検出器からの信号に基づく自動演算により、分析値を求めることが出来る。上記の自動演算の計算プログラムの一例について以下に説明する。なお、計算プログラムには、表1に記載の略号を使用した。
【0016】
【表1】
N2 :窒素の積分値(面積値) (無機成分分析工程)
O2 :酸素の積分値(面積値) (無機成分分析工程)
co :一酸化炭素の積分値(面積値) (無機成分分析工程)
CO2 :二酸化炭素の積分値(面積値) (無機成分分析工程)
inorg :無機成分(O2 ,N2 ,CO,CO2 の混合ガス)の積分値 (面積値) (有機成分分析工程)
1 :有機成分ー1の積分値(面積値) (有機成分分析工程)
2 :有機成分ー2の積分値(面積値) (有機成分分析工程)
n :有機成分ーnの積分値(面積値) (有機成分分析工程)
O2 :酸素の補正係数 fCO :一酸化炭素の補正係数 fCO2 :二酸化炭素の補正係数 f1 :有機成分ー1の補正係数 f2 :有機成分ー2の補正係数 fn :有機成分ーnの補正係数 ここで、補正係数とは窒素に対する相対モル感度(N2 =1)の逆数を言う。
S'N2 :無機成分中の窒素相当分の面積 CCO :一酸化炭素生成量 CCO2 :二酸化炭素生成量 CCOMB :完全酸化量 CPA :無水フタル酸生成量
【0017】各成分の計算工程(1)空気および標準ガスを使用して測定を行い、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素の窒素に対する補正係数(fO2、fCO、fCO2)を求める。
(2)無機成分の測定値から、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の面積値の合計に対する窒素の面積値の比率を求める(数1)。
【数1】XN2=SN2/(SN2+SO2+SCO+SCO2
(3)有機成分分析結果中の無機成分中の窒素相当分の面積(S'N2)の計算をする(数2)。
【数2】S'N2=Sinorg ×XN2
【0018】(4)原料空気1m3 (1000 lit.) 中の有機成分量の計算(窒素781 lit.)をする(数3)。
【数3】
1 =f1 ×(Si /S'N2)×781/22.4[mol/Nm3 air]
2 =f2 ×(S2 /S'N2)×781/22.4[mol/Nm3 air]
・ ・ ・ Cn =fn ×(Sn /S'N2)×781/22.4[mol/Nm3 air]
【0019】(5)一酸化炭素、二酸化炭素生成量の計算をする(数4)。
【数4】
CO=fCO×(SCO/SN2)×781/22.4[mol/Nm3 air]
CO2 =fCO2 ×(SCO2 /SN2)×781/22.4−0. 3/22.4 [mol/Nm3 air]
(6)ナフタレンの完全酸化量(CCOMB)の計算をする(数5)。
【数5】
COMB=1/10[(CCO+CCO2 )−2CPA][mol/Nm3 air]
【0020】次に、本発明のオンライン分析装置について説明する。図1は、本発明のオンライン分析装置の一例を示す概念図である。本発明の分析装置は、反応系と導管にて接続されたサンプリング部(A)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離部(B)、無機成分分析部(C)、有機成分分析部(D)から主として構成される。なお、上記の各部は、前記のオンライン分析法における各工程に対応する。
【0021】<サンプリング部(A)>サンプリング部(A)は、反応系と導管にて接続されており、6方切り替えコック(A2)と定量容器(A3)とを設けて210〜280℃の範囲の一定温度に維持されている。そして、反応系からの反応生成ガスのサンプリングを行う。サンプリング部(A)の好ましい温度範囲は230〜260℃である。反応系とサンプリング部(A)とを接続する導管の温度は上記と同様の温度に維持するのが好ましい。また、上記の導管は、出来るだけ短く、細く、且つ、触媒作用を呈することの少ないステンレス系の材料を使用するのが好ましい。図中、6方切り替えコックの入口側をa、b、c、出口側をx、y、zで示す(以下、同様)。
【0022】6方切り替えコック(A2)の前には、フィルター(A1)を設けてサンプリングされる反応生成ガス中の固形分を除去するのが好ましい。更に、サンプリング部(A)は、6方切り替えコック(A4)と定量容器(A5)とを設け且つ6方切り替えコック(A2)の出口(A2−x)と6方切り替えコック(A4)の入口(A4−a)とを連結して2連形式とするのが好ましい。定量容器(A3)及び(A5)の容量は、通常、数ml程度とされる。サンプリング部(A)の6方切り替えコック(A2)と(A4)は、サンプリングされた試料混合ガスが入口(A2−c)と(A4−c)から導入されるキャリヤーガスにより分離部(B)と有機成分分析部(D)とに導入されるように操作される。上記の6方切り替えコックの具体的な操作は後述する。キャリヤーガスは、圧力制御弁および/または流量制御弁(いずれも図示せず)により一定流量に制御して供給される。
【0023】<分離部(B)>分離部(B)は、有機成分と無機成分とを分離する分離カラム(B2)と4方切り替えコック(B1)とを設けて160〜230℃の範囲の一定温度に維持されている。そして、有機成分と無機成分とをクロマト分離する。図中、4方切り替えコックの入口側をa、b、出口側をx、yで示す(以下、同様)。分離カラム(B2)は、非芳香族または芳香族炭化水素の分析に使用される通常の充填剤にて構成することが出来る。特に、シリコン系ポリマーを珪藻土に担持した充填剤を使用するのが好ましい。
【0024】カラム(B3)は、キャリヤーガスが導入されるバランスカラムであり、通常、分離カラム(B2)と同一の充填剤にて構成される。バランスカラム(B3)により、キャリヤ−ガスの圧力、温度および流量のバランスが図られる。バランスカラム(B3)の代わりに、管路にオリフィスを配置することも出来る。分離カラム(B2)においては、無機成分が先行して流出する。これを利用し、4方切り替えコック(B1)の操作は、有機成分から分離された無機成分がキャリヤーガスにより無機成分分析部(C)に導入されるように操作される。上記の有機成分は、出口(B1−y)から系外に排出させられ、キャリヤーガスは、入口(B1−b)から導入される。上記の4方切り替えコックの具体的な操作は後述する。
【0025】<無機成分分析部(C)>無機成分分析部(C)は、分離カラムと検出器(C7)とを設けている。そして、クロマト分離された各無機成分を定量する。上記の分離カラムとしては、活性炭系充填材とモレキュラーシーブ系充填材とを各別に充填して構成された2本の分離カラム(C2、C5)を使用し、これらを40〜120℃の範囲の一定温度に維持し、そして、活性炭系充填材にて構成された分離カラム(C2)により、酸素、窒素および一酸化炭素から成る混合ガスと残余の二酸化炭素とに無機成分を分離し、モレキュラーシーブ系充填材にて構成された分離カラム(C5)により上記の混合ガスの成分分離を行い、しかも、分離カラム(C5)を経由させることなくバランスカラム(C3)を経由させて二酸化炭素を検出器(C7)に導入するのが好ましい。上記の成分分離は、4方コック(C1)の切り替え操作により行なわれ、具体的な操作は後述する。
【0026】上記のバランスカラム(C3)としては、石英砂を充填して構成されたカラムを使用するのが好ましい。また、上記の検出器(C7)としては、熱伝導度型検出器を使用し、これを60〜150℃の範囲の一定温度に維持するのが好ましい。なお、カラム(C4)及び(C6)は、(B3)と同様に、キャリヤーガスが導入されるバランスカラムである。そして、バランスカラム(C6)に導入されたキャリヤーガスは、検出器(C7)の対照側を経由して系外に排出される。
【0027】<有機成分分析部(D)>有機成分分析部(D)は、分離カラム(D1)と検出器(D3)とを設け、しかも、分離カラム(D1)は160〜230℃の範囲の一定温度に維持されている。そして、クロマト分離された各有機成分を定量する。上記の分離カラムとしては、前記の分離部(B)におけるのと同様のものが使用され、特に、シリコン系ポリマーを珪藻土に担持した充填剤にて構成した分離カラムが好ましい。
【0028】また、上記の検出器(D3)としては、熱伝導度型検出器を使用し、これを180〜260℃の範囲の一定温度に維持するのが好ましい。カラム(D2)は、(B3)と同様に、キャリヤーガスが導入されるバランスカラムである。そして、バランスカラム(D2)に導入されたキャリヤーガスは、検出器(D3)の対照側を経由して系外に排出される。分離カラム(D1)においては、試料混合ガスは、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の混合ガスからなる無機成分と有機成分および水分に分離され、更に、有機成分が各成分に分離される。そして、各成分は、検出器(D3)により定量される。
【0029】以下、本発明の分析装置の操作方法を説明する。
<分析開始前(分析準備)>先ず、分析開始前における主なガスの流れについて説明する。
(1)反応生成ガス入口(A2−a)→出口(A2−y)→定量容器(A3)→入口(A2−b)→出口(A2−x)→入口(A4−a)→出口(A4−y)→定量容器(A5)→入口(A4−b)→出口(A4−x)→系外(2)サンプリング部(A)に常時導入されるキャリヤーガス入口(A2−c)→出口(A2−z)→分離カラム(B2)→入口(B1−a)→出口(B1−x)→分離カラム(C2)→入口(C1−a)→出口(C1−x)→分離カラム(C5)→検出器(C7)→系外入口(A4−c)→出口(A4−z)→分離カラム(D1)→検出器(D3)→系外(3)分離部(B)に常時導入されるキャリヤーガスバランスカラム(B3)→入口(B1−b)→出口(B1−y)→系外(4)無機成分分析部(C)に常時導入されるキャリヤーガスバランスカラム(C4)→入口(C1−b)→出口(C1−y)→バランスカラム(C3)→検出器(C7)→系外
【0030】<分析開始操作>予め設定した時刻に6方切り替えコック(A2、A4)を操作することにより、キャリヤーガスの流れを次のように切り替える。
入口(A2−c)→出口(A2−y)→定量容器(A3)→入口(A2−b)→出口(A2−z)→分離カラム(B2)
入口(A4−c)→出口(A4−y)→定量容器(A5)→入口(A4−b)→出口(A4−z)→分離カラム(D1)
上記の切り替え操作により、定量容器内を流通している反応生成ガスは、サンプリングされ、キャリヤーガスによって分離カラムに導入される。そして、この操作により分析は開始される。
【0031】上記の2系列の6方切り替えコック(A2、A4)の操作は、通常、同時に行なわれ、その結果、定量容器(A3)と(A5)内の一定量の反応ガスは、試料混合ガスとして、それぞれ、分離カラム(B2)と分離カラム(D1)に導入される。分析開始後、次の分析準備操作に入るまでの間、入口(A2−a)より6方切り換えコック(A2)に導入された反応生成ガスは、(A2−x)→入口(A4−a)→出口(A4−x)を通して装置外に排出される。その結果、反応生成ガスは、定量容器(A3)及び(A5)を通過しない。
【0032】<有機成分と無機成分との分離操作>分離カラム(B2)に導入された試料混合ガスのうち、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素から成る無機成分は、分離カラム(B2)から速やかに流出する。従って、4方切り換えコック(B1)の切り替え操作は、上記の無機成分が入口(B1−a)→出口(B1−x)を通して分離カラム(C2)に導入された後、最初の有機成分が流出する前に行なう。そして、上記の切り替え操作により、分離カラム(B2)より遅れて流出する有機成分および水分は、入口(B1−a)→出口(B1−y)を通して系外に排出させられる。その結果、有機成分と無機成分との分離が行なわれる。同時に、入口(B1−b)から導入されたキャリヤーガスは、出口(B1−x)を通して分離カラム(C2)に導入される。
【0033】<無機成分の分析操作>分離カラム(C2)に導入された無機成分のうち、酸素、窒素、一酸化炭素からなる混合ガス成分は分離カラム(C2)から速やかに流出し、二酸化炭素は遅れて流出する。従って、4方切り換えコック(C1)の切り換え操作は、上記の混合ガス成分が入口(C1−a)→出口(C1−x)を通して分離カラム(C5)に導入された後、二酸化炭素が分離カラム(C−2)より流出する前に行なう。そして、上記の切り替え操作により、分離カラム(C2)より遅れて流出する二酸化炭素は、入口(C1−a)→出口(C1−y)を通してバランスカラム(C3)に導入される。同時に、入口(C1−b)から導入されたキャリヤーガスは、出口(C1−x)を通して分離カラム(C5)に導入される。
【0034】混合ガス成分は、分離カラム(C5)において、酸素、窒素、一酸化炭素に分離され、検出器(C7)で定量される。一方、バランスカラム(C3)に導入された二酸化炭素は、分離カラム(C5)より流出する各ガス成分に引き続いて検出器(C7)で定量される。
【0035】<有機成分の分析操作>分離カラム(D1)に導入された試料混合ガスは、当該分離カラム(D1)により、無機成分(酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素)と未反応ナフタレン、無水フタル酸、ナフトキノン類とに分離されて、検出器(D3)で定量される。試料混合ガス中に含まれる水分は、ナフタレンの後にブロードなピークとして検出される。
【0036】<定量操作>定量操作は、検出器(D3)及び(C7)からの電圧信号を積分器(データ処理装置)で直接処理し、前述の数式([数1]〜[数6])に従って各成分の存在量を計算することにより行なわれる。また、各成分の存在量は、検出器(D3)及び(C7)からの電圧信号を時間に対する電圧値の変化として記録紙上に記録され、ベースラインに対する電圧値の積算値(記録紙上に描かれた図形の面積値)に比例する値として得ることが出来る。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、以下の実施例においては、次の仕様の図1に示すオンライン分析装置を使用した。また、温度制御は、恒温槽によって行なった。
【0038】<カラムの種類>(1)分離カラム(B2)、バランスカラム(B3)
「シリコンSFー96」(ジェネェラルエレクトリック社製、商品名)を20重量%担持した「アナクロムQ」(アナラバス社製、商品名)を充填したカラムを使用した。
(2)分離カラム(D1)、バランスカラム(D2)
「シリコンSFー96」を20重量%担持した「アナクロムQ」を充填したカラムを使用した。
(3)分離カラム(C2)、バランスカラム(C4)
活性炭を充填したカラムを使用した。
(4)バランスカラム(C3)
石英砂を充填したカラムを使用した。
(5)分離カラム(C5)、バランスカラム(C6)
「モレキュラーシーブ13X」(リンデ社製、商品名)を充填したカラムを使用した。
【0039】<温度条件>(1)サンプリング部(A):230℃(2)分離部(B) :210℃(3)無機成分分析部(C):100℃(但し、熱伝導度型検出器(C7):120℃)
(4)有機成分分析部(D):210℃(但し、熱伝導度型検出器(D3):250℃)
<キャリヤーガス>必要なキャリヤーガスは全てヘリウムを使用し、流速は30cc/min.とした。
<定量容器(A3)及び(A5)>2.5mlの容量の容器を使用した。
【0040】実施例1230℃に保持した外径6mm、内径4mmのステンレス管により、ナフタレンの接触酸化反応によって得られる反応生成ガスを図1に示すオンライン分析装置に導入して、オンライン分析操作を3ヶ月連続2000回行った。定量操作は、検出器からの電圧信号を積分器(データ処理装置)で直接処理し、前述の数式([数1]〜[数6])に従って各成分の存在量を計算した。上記の連続実施の結果、分析装置内外の配管、分析操作および分析結果に異常は認められなかった。図2及び図3は、上記のオンライン分析において得られたクロマトグラフの一例である。また、以下の表2は、上記のオンライン分析と従来のオフライン分析結果との比較である。
【0041】
【表2】
────────────────────────────────────反応生成ガス中の成分 オンライン分析 オフライン分析 未反応ナフタレン 10.3 10.2無水フタル酸 39.0 39.11,4−ナフトキノン 46.8 46.8一酸化炭素/二酸化炭素 2.0 2.1 成分合計 98.1% 98.2%────────────────────────────────────
【0042】比較例1実施例1において、サンプリング部(A)の温度を180℃とした他は、実施例1と同様に操作してオンライン分析を行なった。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】


【0044】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、長時間にわたり連続的に安定して使用し得るオンライン分析法および装置が提供される。よって、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオンライン分析装置の一例を示す概念図である。
【図2】オンライン分析において得られたクロマトグラフの一例である。
【図3】オンライン分析において得られたクロマトグラフの一例である。
【符号の説明】
A:サンプリング部
B:分離部
C:無機成分分析部
D:有機成分分析部
A3、A5:定量容器
B2、C2、C5、D1:クロマト分離カラム
B3、C3、C4、C6、D2:バランスカラム
A1:フィルター
A2、A4:6方切り替えコック
B1、C1、4方切り替えコック
C7、D3:検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析法であって、反応系と導管にて接続されたサンプリング工程(a)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離工程(b)、クロマト分離カラムと検出器とを設けた無機成分分析工程(c)、クロマト分離カラムと検出器とを設けた有機成分分析工程(d)から主として構成され、サンプリング工程(a)の温度を210〜280℃の範囲の一定温度に維持し、分離工程(b)と有機成分分析工程(d)のクロマト分離カラムとの各温度を160〜230℃の範囲の一定温度に維持し、そして、サンプリング工程(a)にてサンプリングした試料混合ガスをキャリヤーガスにより分離工程(b)と有機成分分析工程(d)とに導入し、分離工程(b)において有機成分から分離された無機成分をキャリヤーガスにより無機成分分析工程(c)に導入し、そして、上記のキャリヤーガスとして窒素以外のガスを使用し、各分析工程における反応生成ガスの成分を当該反応生成ガスに含有される窒素成分を基準として定量することを特徴とする反応生成ガスのオンライン分析法。
【請求項2】 無機成分分析工程(c)のクロマト分離カラムとして、活性炭系充填材とモレキュラーシーブ系充填材とを各別に充填して構成された2本のカラムを使用し、これらを40〜120℃の範囲の一定温度に維持し、そして、活性炭系充填材にて構成されたクロマト分離カラムにより、酸素、窒素および一酸化炭素から成る混合ガスと残余の二酸化炭素とに無機成分を分離し、モレキュラーシーブ系充填材にて構成されたクロマト分離カラムにより、上記の混合ガスの成分分離を行い、しかも、モレキュラーシーブ系充填材にて構成されたクロマト分離カラムを経由させることなくバランスカラムを経由させて二酸化炭素を検出器に導入する請求項1に記載の反応生成ガスのオンライン分析法。
【請求項3】 バランスカラムとして、石英砂を充填して構成されたカラムを使用する請求項2に記載の反応生成ガスのオンライン分析法。
【請求項4】 有機成分分析工程(d)の検出器として、熱伝導度型検出器を使用し、これを180〜260℃の範囲の一定温度に維持する請求項1乃至3に記載の反応生成ガスのオンライン分析法。
【請求項5】 無機成分分析工程(c)の検出器として、熱伝導度型検出器を使用し、これを60〜150℃の範囲の一定温度に維持する請求項1乃至4のいずれかに記載の反応生成ガスのオンライン分析法。
【請求項6】 ナフタレンの気相接触酸化によるナフトキノン製造プロセスから導出される反応生成ガスのオンライン分析装置であって、反応系と導管にて接続されたサンプリング部(A)、有機成分と無機成分とをクロマト分離する分離部(B)、無機成分分析部(C)、有機成分分析部(D)から主として構成され、サンプリング部(A)は切り替えコックとサンプリング容器とを設けて210〜280℃の範囲の一定温度に維持され、分離部(B)は有機成分と無機成分とを分離するクロマト分離カラムと切り替えコックとを設けて160〜230℃の範囲の一定温度に維持され、無機成分分析部(C)はクロマト分離カラムと切り替えコックと検出器とを設け、有機成分分析部(D)はクロマト分離カラムと検出器とを設け、しかも、有機成分分析部(D)のクロマト分離カラムは160〜230℃の範囲の一定温度に維持され、そして、サンプリング部(A)の切り替えコックは、サンプリングされた試料混合ガスがキャリヤーガスにより分離部(B)と有機成分分析部(D)とに導入されるように操作され、分離部(B)の切り替えコックは、有機成分から分離された無機成分がキャリヤーガスにより無機成分分析部(C)に導入されるように操作されることを特徴とする反応生成ガスのオンライン分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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