説明

反応装置の中または塔の中の複数の送込み域へ二つの液体を対状に送出すための分配器

【課題】反応装置または塔へ送込むための反応物たる二つの液体をm当り少なくとも50の密度の複数の送込み域へ対状に別々に送出できる分配器を提供する。
【解決手段】この分配器1は、1対の主流路101、102から二つの液体を、ぞれぞれ、隣接する2次流路11、12の対10で受け、それは、外縁4と内縁5で折曲げた二つの側部31、32および仕切り壁30を含む。2次流路のベース34、34’がこれらの側部に接して流路端間を外縁4と内縁5に沿って伸びる。これらの側部は、各々内縁で端ストリップ35、35’と合体し、仕切り壁の下端ストリップ36と共に締結してある。送込み域9内のこれらベースまたは側部のこれらベースに近い領域に出口孔21、22があり、それらから液体を対状に送出す。両2次流路の断面積比を変えれば、2液体の供給比を変えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置の中または塔の中の複数の送込み域へ二つの液体を対状に送出すための分配器およびそのような分配器を持つ反応装置または塔に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの液体反応物を支持構造体上で接触させなければならない化学プロセスがある。不要な副作用を減らすためには、これら二つの液体が比較的密に配置した複数の供給域の支持構造体に別々に到達しなければならず且つ上記支持構造体上でしか混合できない。この支持構造体は、特に塔の中の充填要素、または固定床反応装置の中の充填物層から成る、不活性または触媒的に活性の支持体を含む。これらの化学反応は、支持体上で起る。この反応装置のまたはこの塔の横断面表面がこの支持構造体の上部境界を形成する。この支持構造体は、反応物が垂直方向に透過できる。それは、この支持体が含まれ各々供給域に関連する、垂直分離スペースで区分できる。これらの供給域は、複数の線、特に平行直線上に配置されている。
【0003】
他のプロセスでは、二つの非混和性液体を装置の中へ所定の分量比でよく分配した方法で供給しなければならない。これらのプロセスでは、例えば多管式反応装置の管束または流下膜式蒸発器の中へ、液体を別々に供給できる分配器が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、m当り少なくとも50送込み域の密度の複数の送込み域へ二つの液体を対状に別々に送出することを可能にする分配器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1で定義する分配器によって達成される。この分配器は、反応装置の中または塔の中の水平の横断面表面上に配置した複数の送込み域への二つの液体の対状送込みに役立つ。これらの液体をこの分配器を使って各送込み域に別々に供給できる。これらの送込み域は、複数の線上にm当り少なくとも50送込み域の密度で配置してある。この言及した横断面表面は、各場合に1対の2次流路によってこれらの線に沿って広がる。これらの2次流路は、主流路に隣接する。2次流路の各対がユニットを形成する。この2次流路対は、折曲げによって形作った二つの側部および仕切り壁を含む。これらの2次流路のベースがこれらの側部に接して各場合に流路端間を、水平面または傾斜面上に配置してある水平外縁と内縁に沿って伸びる。これらの側部は、各々これらの内縁で端ストリップと合体する。この仕切り壁の対応する下端ストリップがこれら側壁の端ストリップの間に設けてあり且つそれらに結合してある。これらベースまたは側部のこれらベースに近い領域にある開口がこれら2次流路にある液体を対状に送出するために隣接して設けた液体用出口孔を形成する。
【0006】
従属請求項2ないし請求項8は、この発明による分配器の有利な実施例に関する。そのような分配器を有する反応装置または塔は、請求項9および請求項10の主題である。
【0007】
この発明を以下に図面を参照して説明する。
【実施例】
【0008】
複数の送込み域へ二つの液体を送出せる、この発明による分配器1を図1ないし図4に示す。図2に破線で描いた円9として示すこれらの送込み域は、反応装置の中または塔の中の横断的表面上に配置してあり、例えば、m当り50、100、300以上の域がある比較的高密度を有する。これらの送込み域9は、複数の平行直線上に設けてある。これらの二つの液体は、各送込み域9に別々に供給することができる。この言及した水平の横断的表面は、各場合に主流路101、102に隣接する2次流路11、12の対10によって直線に設けられた送込み域9の線に沿って作られている。これらの主流路101、102は、流路対100を形成するのが都合よく、その場合に主流路101、102が共通壁105によって分離されている。2次流路11、12へのこれら二つの液体の投与分配は、排液孔103または104を介して行う。これらの孔103は、2次流路11に関連し、孔104は、2次流路12に関連する。
【0009】
これらの2次流路11、12の各対10は、ユニットを形成する。この2次流路対10は、流路端を形成する(図4参照)、壁6、折曲げによって形作る、側部31および32、並びに仕切り壁30でできている。各場合の2次流路11、12のベース34、34’は、側部31、32上を縦方向に、水平に整列され且つ水平かまたは傾斜していてもよい外縁4および内縁5に沿ってこれらの流路端間に伸びる。側部31、32は、内縁5で縦の下方に向いた端ストリップ35、35’と合体する。仕切り壁30の対応する下端ストリップは、側壁31、32の端ストリップ35、35’の間に設けてある。これら三つの端ストリップ35、36、35’は、例えば、複数の場所で(図8参照)スポット結合によって互いに結合してある。側部31および32のベース34、34’にある開口は、2次流路11、12にある液体を対状に送出するために隣接して設けた液体用出口孔21および22を形成する。流路毎の個々の開口ではなく、二つのそれぞれの開口または開口のグループを設けてもよい。出口孔21、22は、ベース34、34’の上のこれらのベースに近い側部31、32の領域にもあってよい。端ストリップ35および35’を内縁5の上のこの2次流路対10の内領域へ垂直に向ける2次流路対10の設計も可能である。このプロセスでは、端ストリップ35、36、35’を、曲った縁4および5を作る前に、例えば、ロールシーム溶接によって、都合よく結合する。
【0010】
スポット結合8による端ストリップ35、36、35’間の結合は、スポット溶接によって確立するのが好ましいが;リベット結合、クリンチ形成(即ち、クリンチ法によって作る結合)および/またはねじ結合も可能である。スポット結合8の代りに、連続結合も、特に、それぞれの場合、溶接シーム、ロールシーム溶接または溶融によって作るストリップの形で、確立できる。スポット結合8で、側部31、32のまたは仕切り壁30の下端ストリップ35、36、35’間の隙間は、これらの隙間を通る総漏れがこの分配器1の動作で比較的小さく、好ましくは出口孔21、22を通して送出した液体量の1%に過ぎないなら、許容できる。これらの隙間から染出る液体の混合が少ししか起らないように、仕切り壁30の端ストリップ36が側部31、32の端ストリップ35、35’を越えて少し下方へ突出するのが都合がよい。
【0011】
半分を図4に示す2次流路対10は、―図示するものと違って― 高く且つ縦方向にかなり長く、即ち、例えば、3または4mあってもよい。これらの2次流路11、12の高さは、例えば、2次流路対10の幅より2ないし20倍、好ましくは4ないし6倍大きい。この幅は、この発明による設計のおかげで小さく、即ち、最小約30mmまでにできる。この最小幅に対応して、出口孔21または22を約40mmの縦方向間隔に配置する。もし、隣接する2次流路対10の間隔が、例えば、36.4mmで、出口孔間の縦方向間隔が42mmに達するならば、密度が送込み域9に対してm当り650域になる(図2に示す実施例について存在するような送込み域9の六角形配置で)。隣接する2次流路対10の間の間隔は、蒸気またはガスが向流の中でこの支持構造体から上方へ逃げることを可能にする。これらの隙間の幅は、このプロセスに関して予め決める。
【0012】
2次流路11の端の壁片6は、図4の実施例では比較的厚い壁で作ってあるが;これは必要ではない。縦方向に見てこの2次流路対10の中心に位置する、壁片6の縁面60は、端ストリップ35の内側と共に共通平面300(一点鎖線フレームで示す)上にある。仕切り壁30は、この平面300上にあるようになる。この仕切り壁30および壁片6は、図4では欠落している2次流路12の壁片6’と共に通しの溶接シーム63によってしっかりと結合してある:図5参照。対応する溶接シームが接触ストリップ61に沿って壁片6と側部31の間に設けてある。全部で、六つの溶接シームを2次流路対10毎に確立することになる。しかし、横流路終端部も追加で溶接すべき接合部で図1の流路対10の下端(図示せず)と同様に作ることができる。この接合部は、図4の接触ストリップ61の水平断面に相当する。
【0013】
縁4および5の折り曲げのためおよび、例えば、1mmに達する壁厚のために、側部31および32は、その領域の2次流路対10の機械的安定性をベースに近いその領域で達成する。この安定性の増加のための更なる手段は、側部31および32のビードまたはその上縁での折曲げのような、一つ以上の水平変形でもよい。安定化要素7―図6参照―も側部31、32のおよび仕切り壁30の上縁に設けてこれらの縁の間の間隔を固定することができる。この要素7は、図示する設計では、二つの肢およびこれらの肢を結合する上面片を備えるU字形である。これらの肢は、二つの耳71および二つの耳72によってそれらの平面に拡げられている。それぞれ、これら四つの耳71、72を差込める、四つの開口317および327が側部31、32でこれらの耳71、72に対応する。耳71、72および開口317、327は、楔効果のために要素7と側部31、32の間に安定な、力伝達結合が生じるように作ることができる。側部31、32が開くのを防ぐ結合を確立するために、この要素7の上面片の縁にフック状部品を設けることができ、それで側部31および32の上縁を形状に整合する方法で保持することができる。要素7の肢にある縦スリット70が仕切り壁30の上縁を受ける。
【0014】
この仕切り壁30は、特にフィルム形のものでは、側部31、32よりかなり薄くてもよい。この仕切り壁30の下端ストリップ36は、最も単純な場合に平坦である。それは、図7に示すような形状37を持つこともできる。図8で断面が示すように、スポット結合域8(特にスポット溶接)が形状37のある領域の上に位置する。局部漏れおよび対応する滴形成がこの形状37のために仕切り壁30の下縁38で起る。二つの液体が縁38に沿って交互する域に現れ、そこでそれらは滴下する。仕切り壁30の下縁38は、都合よくざらざらにしてあるか、または細かい歯付き構成になっていてそれが縁38に沿う滴の移動を困難にするか防ぐ。
【0015】
これら二つの液体の不均等な特性(例えば、異なる粘性)に関して、この2次流路対10を対応して対称的に(例えば、異なる大きさの出口孔21、22または異なる幅の流路)作ることができる。非対称設計も分配用に供給する液体量が不均等な場合に有利であることがある。
【0016】
図9および図10は、この2次流路対10の更なる実施例の断面図を示す。これらの例で、これらの平面は、外縁4と内縁5の間で傾斜している。図9の場合、液体が出口孔21および22から外縁4の方へ向いた噴流で流れきる。これらの噴流は、スカート状偏向要素310および320に衝突し、それによってこの液体流を送込み域9へ導くことができる。この2次流路対10は、非対称である。図10の場合、2次流路11および12のベース34および34’は、これらの液体噴流が内方に向くように傾斜している。衝突する液体は、仕切り壁30の延長部36上の送込み域へ別々に導かれる。これらの偏向要素310、320または36は、水平溝付きでもよく、それによって液体の改良した横分配が生ずる。偏向要素310、320または36の下縁は、歯付き構成でもよい。
【0017】
スカート状または平面偏向要素310、320または36の代りに、管状のものも設けることができる。これらの液体の送出しを、各々少なくとも1対の出口孔21、22と関連する管状偏向要素(図示せず)を使って周囲送込み域から遮蔽することができる。
【0018】
この発明による分配器1は、中で別々に供給すべき二つの液体で化学反応を起すべき、または中へ二つの非混和性液体を均一に且つ所定の質量比に従って送込まなければならない反応装置または塔に適する。ある支持構造体が上で反応物として二つの液体で化学反応を実施できる、不活性または触媒的に作用する支持体を含む。この支持構造体は、反応物が垂直方向に透過できる。送込み域9を備える横断的表面がこの支持構造体の上方の境界となる。この支持体は、少なくとも部分的にこの支持構造体の表面によってもたらされ;またはそれは、固定床の形をしおよび特に特に充填物の外注パックのまたは詰込みの形を有する。この支持構造体は、垂直部分スペースによって作られる区分を有することができ且つ、例えば、多管式反応装置、または流下膜式蒸発器から知られているような、管束の形で存在することができる。少なくとも一つの送込み域が各部分スペースに関連する。この発明による分配器1は、例えば、中へ非混和性液体を供給しなければならない、流下膜式蒸発器を備える塔にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による分配器の一部である2次流路対の断面図。
【図2】二つの2次流路対の平面図。
【図3】本発明による分配器の一部の平面図。
【図4】2次流路対の半分を示す図。
【図5】図4の2次流路対の詳細図。
【図6】2次流路対用安定化要素を示す図。
【図7】下端ストリップ上に2次流路対の仕切り壁を有する、特別に設計した周辺領域を示す図。
【図8】2次流路対の接合した下端ストリップの断面図。
【図9】更なる実施例の2次流路対の断面図。
【図10】更なる実施例の2次流路対の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応装置の中または塔の中の水平の横断面表面上に配置した複数の送込み域(9)へ二つの液体を対状に送出すための分配器であって、該分配器(1)によって液体を各送込み域へ別々に供給でき、該送込み域がm当り少なくとも50送込み域の密度で複数の線上に配置されていて、前記横断面表面は、各場合に1対(10)の2次流路(11、12)によってこれらの線に沿って広がり、これらの2次流路は、ユニットを形成する2次流路の各対で主流路に結合され、前記2次流路対(10)は、折曲げによって形作った二つの側部(31、32)および仕切り壁(30)を含み、これらの2次流路のベース(34、34’)がこれらの側部に接して各場合に流路端間を、水平または傾斜面上にある水平外縁(4)と内縁(5)に沿って伸び、これらの側部は、各々これらの内縁で端ストリップ(35、35’)と合体し、この仕切り壁の対応する下端ストリップ(36)がこれら側壁の端ストリップの間に設けてあり且つそれらに結合してありおよび、更に、これらベースまたは側部のベースに近い領域にある開口がこれら2次流路にある液体を対状に送出するために隣接して設けた液体用出口孔(21、22)を形成する分配器。
【請求項2】
請求項1に記載の分配器であって、前記2次流路対(10)が二つの液体の不均等な特性および/または分配用に提供する不均等な量に関して対応して非対称であることを特徴とする分配器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分配器であって、前記側部(31、32)が前記折曲げおよび壁厚のために前記2次流路対(10)の機械的安定性を上記ベースに近いその領域で達成すること、並びに前記縁間の間隔を固定する安定化要素(7)が前記側部(31、32)のおよび前記仕切り壁(30)の上縁に配置してあることを特徴とする分配器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の分配器であって、膜でもよい、前記仕切り壁(30)の前記下端ストリップ(36)が平坦であるか、または前記二つの液体が交替する域に現れ且つそこで滴下するように漏れを局所化しおよび対応する滴形成を前記仕切り壁の下縁(38)で行う形状(37)を有することを特徴とする分配器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の分配器であって、前記仕切り壁の前記下縁が都合よくざらざらにしてあるか、または細かい歯付き構成になっていてそれが上記縁に沿う滴の移動を困難にするか防ぐことを特徴とする分配器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の分配器であって、前記側壁(31、32)および前記仕切り壁(30)の下端ストリップ(35、36、35’)を複数の場所でスポット結合(8)によって、即ち、スポット溶接、リベット結合、クリンチ形成、および/またはねじ結合によって互いに結合してあり、または前記端ストリップの上記結合が、特に溶接シーム、ロールシーム溶接または溶融によって作るストリップの形で、通しであることを特徴とする分配器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の分配器であって、前記出口孔(21、22)と前記送込み域(9)の間の前記液体の移動を管状、スカート状または平面偏向要素(310、320、36)によって遮蔽および/または偏向できることを特徴とする分配器。
【請求項8】
請求項7に記載の分配器であって、前記偏向要素(310、320、36)が前記液体の横分配を改良するための水平溝および/または下縁の歯付き構成を有することを特徴とする分配器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか一項に記載の分配器(1)を有する反応装置または塔であって、二つの液体用送込み域(9)を備える横断面表面がある支持構造体の上方の境界となり、支持構造体が上で反応物として二つの液体を使って化学反応を実施できる、不活性または触媒的に作用するの支持体を含み、支持体が少なくとも部分的に支持構造体の表面によってもたらされ、または、それが固定床の形をし、特に充填物の外注パックのまたは詰込みの形を有し、または、前記支持構造体が、多管式反応装置、または流下膜式蒸発器から知られているような、管束の形で存在し、そして前記支持構造体をこれらの液体が垂直方向に透過できることを特徴とする反応装置または塔。
【請求項10】
請求項9に記載の反応装置または塔であって、前記支持構造体が垂直部分スペースによって作られる区分を有し、送込み域が各部分スペースに関連し、そして、特に部分スペースが多管式反応装置または流下膜式蒸発器の管であることを特徴とする反応装置または塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−196226(P2007−196226A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13680(P2007−13680)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】