説明

反応装置

【課題】原料及び合成反応物質の性状変化に対応し、合成反応場において、反応を完結させることができる反応装置を供する。
【解決手段】隔壁22に対し対向し密閉された第1および第2の室27A,27Bと、第1および第2の室の容積を個別に拡縮させるための第1および第2の駆動機構23A,23Bと、隔壁に設けられ第1および第2の室へ連通し、第1および第2の室の少なくとも一方に噴流を発生させるオリフィス28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置に関し、特に、物質を混合反応させ、物質の生成あるいは合成を行う反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物の合成反応において、実験室規模であれば、フラスコ等の容器または釜と攪拌子あるいは攪拌翼により、容器内または釜内に合成反応せしめる物質を投入し、攪拌子あるいは攪拌翼により攪拌混合を行い合成する手法が取られる。
【0003】
近年では、容器内反応や釜内反応では、次工程への送り出しの難点や反応効率の難点などから、互いの合成物質同士を極小の混合場へ所定の比率で同時液送混合しながら、物質合成反応をする手法が研究されている。この手法の技術ポイントは混合部の形状及び混合の仕方にある。容器内合成反応においても、同時液送混合反応においても、攪拌作用のみではなく、合成物質の流動性確保のため所定温度への加温あるいは恒温機構を付帯して、合成反応し易くするなどの複合的な合成反応となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、容器内合成反応では、略開放系の反応場であるため、合成反応物質の供給及び取り出しにおいて自動化がし難く、反応完結までの時間を要す。また、合成反応物の性状(特に粘度)が著しく変化した場合には、攪拌子の攪拌作用が全く効果がなくなり、反応が完結しない。
【0005】
同時液送混合反応の場合は、液送する原料の性状が常に安定であることと、混合点が極小場であることから、高粘度対応が難しく、また、想定した反応が完結しなかった場合は、合成反応場である同じ系へ戻すことができなくなり、別個の合成反応機構を追加するか、その合成反応に適した混合反応場を構築する必要がある。よって、極小混合点による合成反応は、その適用反応物質が限定されることになり、次々と違う物質を合成反応させ、最終物質を生成させる反応装置としては、適していない。
【0006】
反応促進のために付帯的追加する恒温機構は、合成反応物質の投入量、合成反応物質の性状変化により、その恒温機能の効率が大きく変化するなどの問題点がある。
【0007】
原料は固体粉末が多く、液相反応においては、固体粉末を流動性を持たせるために適した溶媒を選択し、溶解液または懸濁液とするため、最終的には、その溶媒を分離する必要があるため、できるだけ溶媒量を減らすことが求められているが、溶媒量を減らすと、合成反応時に高粘度化する場合がほとんどで、上記従来技術では多くの溶媒量により原料が溶解または懸濁液にしてある。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決しようとする発明であり、原料及び合成反応物質の性状変化に対応し、合成反応場において、反応を完結させることができる反応装置を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の反応装置は、隔壁に対し対向し密閉された第1および第2の室と、前記第1および第2の室の容積を個別に拡縮させるための第1および第2の駆動機構と、前記隔壁に設けられ前記第1および第2の室へ連通し、前記第1および第2の室の少なくとも一方に噴流を発生させるオリフィスと、を備える。
【0010】
上記構成によれば、第1および第2の室の容積の一方を縮小させると同時に他方の室の容積を拡大さしめるように第1および第2の駆動機構を動作させることで、第1および第2の室を隔てる隔壁に備えたオリフィスを原料物質が通過し、オリフィスから噴出する噴流により、噴出側の室内に強い攪拌作用が発生する。オリフィス前段部に掛かる圧力をその室を拡縮させる駆動機構が制御すれば、噴流強度を自在に制御できることと、第1および第2の室を隔てている隔壁にオリフィスを形成していることから、第1および第2の室の一方の室と他方の室を行き来させるように、夫々の室の容積を拡縮させる第1および第2の駆動機構を動作させることが可能となり、個々の反応に適した攪拌混合を所定回数あるいは所定力で繰り返し実施でき、その反応に適した混合攪拌作用を適宜行うことが可能となる。また、密閉された室内にて攪拌混合が行え空気中物質(主に水分)による合成反応への影響を防止しつつ、性状変化に対しても必要にして十分な力を発生させる拡縮駆動機構及び室強度であれば、強力な圧力(〜30 MPa)を印加することも可能で、単に圧力印加状態を維持させることもできるし、第1および第2の室の容積拡縮を同期させることによりオリフィスからの噴流強度が制御でき、その反応に適した反応条件を自在に構築且つ実行することができる。これにより、高粘度化した物質でも確実に噴流させることができすので、原料における溶媒量を極力少なくすることができる。
このように、合成反応に必要な攪拌作用をピストン等の駆動機構の動作による夫々の室の容積拡縮により、隔壁に設けたオリフィスから噴流する流れにより反応装置内の室内原料同士を攪拌せしめ、且つ、反応に必要な攪拌作用を繰り返し継続させることができる。また、高粘度への性状変化においても、ピストン等の駆動機構の推力及び室を形成する部材の圧力強度を確保しているため、確実に攪拌せしめる噴流を発生させることができ、高粘度物質の反応ができる。且つ、高粘度物性にも対応できるため、原料の溶媒量を極力少なくすることができ、次工程における溶媒と必要物質の分離生成に掛かる時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
請求項2記載の反応措置は、請求項1に記載の構成であって、原料が供給される供給口と、前記供給口を開閉する第1のバルブと、反応生成物が排出される排出口と、前記排出口を開閉する第2のバルブと、をさらに備える。また、請求項3記載の反応装置では、請求項1または2に記載の構成であって、前記供給口と排出口が前記隔壁を介して、前記第1および第2の室へ連通する。
【0012】
上記構成によれば、原料が供給される前の段階では、第1および第2の室の容積は第1および第2の駆動機構によりほぼゼロの容積にし、排出口の第2のバルブは閉じた状態で、原料供給口から原料が供給される際、供給を受ける室の容積を供給される原料量に応じた拡大を夫々別個に駆動機構が行い、原料が供給された後、原料供給口のバルブが閉じられると供給された原料は、相対的に対向する密閉された室に留まるようにすることができる。また、選択的に原料を随時供給することができ、その反応装置内の物質を次工程へ確実に排出することができる。
【0013】
請求項4記載の反応措置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成であって、前記隔壁によって区画される管路と、前記管路に摺動可能に装填され、前記隔壁の一方の面との間に前記第1の室を形成し前記第1の駆動機構で駆動される第1のピストンと、前記管路に摺動可能に装填され、前記隔壁の他方の面との間に前記第2の室を形成し前記第2の駆動機構で駆動される第2のピストンと、をさらに備える。
【0014】
請求項5記載の反応装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成であって、前記隔壁に、前記オリフィスとは別個に、前記第1の室から前記第2の室への流れ方向を抑制する逆止弁を装備すると共に、前記オリフィスの口径より大きい口径の流路をさらに備える。また、請求項6記載の反応装置は、請求項5記載の構成であって、前記流路の口径は、原料あるいは反応生成物を容易に流通させるに必要にして十分な口径である。
【0015】
上記構成によれば、非抑制方向へ物質を移動させる場合、オリフィスを通過するよりも管路抵抗が小さくなり、押し出し側の室の容積を拡縮させる駆動機構の力は小さくて済む。非抑制方向への流れの場合は、オリフィスより抵抗が少ない流路を移動するので、強い噴流は発生し難いが、攪拌作用は発生し、抑制方向への室容積拡縮の駆動機構による押し出しの際には、オリフィスを通過するため噴流攪拌が行えるので、その反応に適した反応条件を自在に構築できるとともに反応装置全体を省スペースに構築することができる。このように、強力な噴流発生を一方向にすることで、室拡縮機構の一方の駆動機構を省力化することができ、反応装置を小型化することができる。
【0016】
請求項7記載の反応装置は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成であって、前記オリフィスが、少なくとも2つ以上、前記隔壁中心を点対称として設けられ、前記少なくとも2つのオリフィスが、前記少なくとも2つのオリフィスを構成するピッチ円の円周方向に同方向・同角度のスキュー角を持つ。請求項8記載の反応装置は、請求項7記載の構成であって、前記少なくとも2つのオリフィスは、前記第1および第2の室を構成する管路の外筒部近傍に設けられる。
【0017】
上記構成によれば、噴流が室内に、スキュー角に応じた回転流れを発生させ、合成反応物質あるいは、合成原料が互いの比重差などによる相分離を示す組合せでも、噴流による攪拌作用を効率よく行うことが出来る。また、第1および第2の室間を往復させると、その回転流れは、逆方向に転換するので、攪拌作用の効果はさらに向上する。このように、相分離を引き起こす原料の反応であっても、オリフィス噴流が回転流れと乱流流れを発生させるため、分離相を噴流流れで攪拌することができ、確実な反応を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料及び合成反応物質の性状変化に対応し、合成反応場において、反応を完結させることができる反応装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る反応装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】同反応装置の拡大図である。
【図3】同反応装置の隔壁部の断面図である。
【図4】同反応装置の隔壁部の正面図である。
【図5】同反応装置の原料供給時を示す構成図である。
【図6a】同反応装置の原料供給時を示す構成図である。
【図6b】同反応装置の原料供給時を示す構成図である。
【図7】同反応装置の洗浄溶剤供給時を示す構成図である。
【図8】同反応装置のカートリッジタンクへの回収時の構成図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す反応装置の隔壁部の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す反応装置の隔壁部の断面図である。
【図11】同反応装置の隔壁部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本発明に係る反応装置の第1〜第3の実施の形態を図面に基いて説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
反応装置の第1の実施の形態と、この反応装置による反応場動作を、図1〜図8を参照して説明する。
【0022】
図1を参照すれば、この反応装置は、合成反応させる原料Maがカートリッジタンク1aに入れられたものを、原料供給部2の位置Pos.1にセットする。合成反応に必要な他の原料や溶媒、洗浄溶剤なども同様にあらかじめ設定した原料供給部2の位置Pos.に着脱交換可能な構造でカートリッジタンクをセットできるようになっている。
(図1に示すように、原料供給部2の夫々の原料Mまたは溶剤S、洗浄溶剤Cのセット構成は同一で、説明する符号に夫々セット位置に応じたアルファベットを付記(Pos.1・・・a、Pos.2・・・b、Pos.3・・・c、Pos.4・・・d、・・・)したので、特に支障がない限り、セット位置との関連を示すアルファベット符号を略す。)
【0023】
カートリッジタンク1の上部には、不活性ガスラインに接続するバルブ3及びガス接続金具4が装備され、下部にはバルブ5及び原料接続金具6が装備されている。原料供給部2には、カートリッジタンク内の原料量を検出するための液面センサ7が装備されており、非接触で原料量を確認している。カートリッジタンク上部からは、ガスを択一的に供給遮断できるガス供給弁8と、カートリッジタンク内のガス圧を抜くためのガス圧逃し弁9が設けられており、不活性ガス供給圧力以上になると自動的にカートリッジタンク内の圧力を逃す構造となっている。
【0024】
カートリッジタンク1から出る原料Mは、開閉バルブ10を経て、近傍に設置されたシリンジ型原料供給ポンプ11に接続されている。シリンジ型原料供給ポンプ11は、夫々のカートリッジタンクに一対で装備され、吐出バルブ12及び吐出口13を介して、反応装置14へ供給できるように配置されている。
【0025】
原料M及び溶媒S、洗浄溶媒Cなどは、前記夫々のカートリッジタンクに個別に、独立形態で装着できるようになっており、且つ、その数に応じたシリンジ型原料供給ポンプ11も装備されている。尚、原料及び溶媒、洗浄溶媒は、少なくとも流動性のある性状にあらかじめ調整されているものとする。
【0026】
夫々の原料及び溶剤、洗浄溶剤のシリンジ型供給ポンプの吐出口13a,13b・・・は、所定間隔(等ピッチである必要はない)で一列に整列されており、その吐出口位置に合わせて、原料供給口15が位置決め出来る機構を持った反応装置14が、前記吐出口の整列方向に移動且つ位置決め可能な機構で構成されている。反応装置14は、あらかじめ設定された合成反応の所定工程に準じて、選択的に原料を受け取れるように、図示しない制御装置と移動且つ位置決め可能な機構により動作制御される。図2を参照すれば、原料供給部2の個々のシリンジ型原料供給ポンプ吐出口13a,13b・・・と、原料供給口15は、位置決め終了後に、制御装置からの信号によって接続開閉する供給口接続機構16を有する。反応装置14の一端にある原料供給口15には、供給口開閉バルブ17が装備され、他端には、反応装置14内で合成反応後の生成物を排出する排出口18が、排出流路開閉を行う排出口開閉バルブ19を経て構成され、反応装置14が、所定の排出位置に位置決め終了後に、排出先口20a,20b,20cと接続開閉する排出口接続機構21を有している。
【0027】
反応装置14は、隔壁部22を隔てて対向するピストン23A、23Bによって、夫々のピストンの往復動作により室容積が拡縮可能となるように構成され、夫々のピストン23A,23Bは、夫々個別の駆動機構(図示しない)により、独立で制御動作可能になっている。ピストン23A,23Bには夫々シール24A、24Bが固定されており、夫々のピストンに対応したシリンダ部25A、25Bの内面に対し密にシーリングされた状態で摺動可能になっている。また、ピストン23A,23Bは、隔壁22面に対し、遠近動作はするが回転しないようにシリンダ25A,25B及びピストン23A,23Bが夫々往復可能にガイド(図示しない)されている。ピストン23A,23Bの駆動機構側には、ピストンに掛かる力を検出するための荷重変換器26A、26Bが、夫々内臓してあり、ピストン面に掛かる圧力を荷重として検出すると共に、ピストンの動作における引張及び圧縮荷重を検出でき、制御装置へその荷重信号が送られるように構成している。
【0028】
隔壁部22には、対向するピストン23A,23B及びシリンダ部25A,25Bによって形成される拡縮可能な室27A、27Bに連通するオリフィス28が、図4に示すように、シリンダ内径及びピストン外形に近い位置で当該中心から同距離を成したピッチ円上に少なくとも2つ以上配設され、互いが前記シリンダの中心点から点対称の位置に形成されており、図2、図3に示すように、夫々のオリフィス28の両端部、すなわち隔壁両面にはテーパ状の窪み29A、29Bが設けられ、その窪み29A,29Bに応じた突起30A、30Bが、ピストン23A,23Bに形成されている。また、図3に示すように、オリフィス28は、ピストンの動作方向と平行ではなく、角度を持ってスキューするように形成されている。2つ以上のオリフィスは、全て同方向のスキュー角を持つ。前記窪み29A,29Bとピストン面の突起30A,30Bは、互いに装嵌できる形状としている。
【0029】
図2を参照すれば、反応装置14の原料供給口15は、隔壁部22を介して、前記ピストン23A,23Bの動作によって形成される室27A,27Bに連通しており、隔壁内部にて、室への連通直前に供給部弁機構31A、31Bを設け、拡縮室との連通を室近傍で所定タイミングで開閉できる構成としている。反応装置14の排出口18もまた、隔壁部22を介して、前記ピストン23A,23Bの動作によって形成される室27A,27Bに連通しており、隔壁内部にて、室との連通部に排出部弁機構32A、32Bを設け、拡縮室から排出口への連通を室近傍で所定タイミングで開閉できる構成となっている。
【0030】
反応装置14の排出口18は、原料供給の際に反応装置自体が移動可能な構造としているため、排出口18に接続する次工程口20bやその他廃液口20cなどを、反応装置の移動方向に一列に整列配置し、所定工程に準じて、選択的に排出可能な構造になっている。
【0031】
次に上記構成における作用を説明する。反応装置14の一方の室へ合成反応させる原料を順次注入し、相対するピストンの往復動作で、供給された原料を、相対する室を隔てる隔壁部に設けたオリフィスを往復通過させ、オリフィス噴流によって、攪拌混合反応を行う。
【0032】
すなわち、反応装置14は、択一的に原料供給部2から原料供給を受ける位置へ位置決めされ、所定の原料を所定量注入される。例えば、原料Maを所定量供給であれば、図5に示すように、原料Maがセットされている位置Pos.1へ反応装置14が移動し、位置決めされる。位置決め後に、原料供給口15の供給口接続機構16が、原料Maのシリンジ型原料供給ポンプ吐出口13aと連結接続される。連結接続されると、シリンジ型原料供給ポンプ吐出口13aの吐出バルブ12aを開き、且つ反応装置14の供給口開閉バルブ17及び供給部弁機構31Aを開く。この時、原料等の供給がされていない状態では、ピストン23A及びピストン23Bは共に、隔壁部22にピストン面を当接した状態となっている。
【0033】
あらかじめ、シリンジ型原料供給ポンプ11aは、カートリッジタンク1aから、所定量+αの原料Maを吸入し待機している。ここで待機するとは、原料Maをカートリッジタンク1aにてセット直後からシリンジ型原料供給ポンプ11aが原料Maを吸入して待機動作になるのではなく、反応装置14が、当該原料を要求するタイミングに合わせて、原料吸引に必要な時間との兼ね合いで、タイムリーに行うように制御され、長時間待機状態にならないようにしている。
【0034】
また、カートリッジタンク内の原料の懸濁状態あるいは溶液状態が不安定な場合は、カートリッジタンクとシリンジ型原料供給ポンプとを繋ぐ開閉バルブを開いて、シリンジ型原料供給ポンプを吸引、吐出動作を繰り返すことで、カートリッジタンク内の原料に流れが発生することによる攪拌作用が発生し、不安定な状態を防止することもできる。
【0035】
原料Maが、シリンジ型原料供給ポンプ11aによって、反応装置14へ注入開始されると同時に、反応装置14の対応する室27Aの容積を拡大し、原料の供給に抵抗を与えないように、シリンジ型原料供給ポンプの注入速度と、室容積拡大のためのピストン動作速度を注入量見合いで同期させることで、夫々の流路開閉バルブが開になっても、原料は、シリンジ型原料供給ポンプの動作量に応じた所定量及び反応装置14のピストンの動作量に応じた原料量しか反応装置には供給されない。
【0036】
シリンジ型原料供給ポンプの1回の最大吐出量を超える原料供給が必要な場合は、吐出バルブ12aを閉め、開閉バルブ10aを開け、2回目の吸引を行い、開閉バルブ10aを閉じて、吐出バルブ12aを再度開け、前記1回目の注入と同様な動作で原料を供給することもできるので、シリンジ型原料供給ポンプは、カートリッジタンクの容量あるいは反応装置への最大供給量に無関係に、装置の省スペース化と反応工程時間との関係で自由に設計できるものである。
【0037】
所定量の原料が注入された時点で、シリンジ型原料供給ポンプ11a及びピストン23Aは動作を停止し、且つ、原料との流路を全て遮断するように夫々対応した弁機構及びバルブを閉にする。続いて、供給口接続機構16が、吐出口13aとの接続を開放し、次の原料位置へ反応装置14は移動する。例えば、次の原料Mdが合成反応の工程であれば、図6aに示すように、原料Mdがセットされている位置Pos.4へ反応装置14が移動し、位置決めされ、前記同様な工程で、シリンジ型原料供給ポンプ吐出口13dと接続され、供給流路が連通するように弁機構及びバルブを開にし、シリンジ型原料供給ポンプ11d及び供給を受ける室を拡縮するピストンを所定量に見合う動作量のみ動作させ、原料を受け取る。原料受け取り後は、原料Maと同様な工程で、シリンジ型原料供給ポンプ11d及びピストンは動作を停止したのち、原料との流路を全て遮断する。
【0038】
この時、原料Mdを供給する室は、前記原料Maを供給した室とは反対側に供給することもできる。図6b参照。原料Maと原料Mdが混合した瞬間に大きな性状変化を伴う場合(例えば高粘度化するような場合)は、シリンジ型原料供給ポンプ側の吐出能力に影響を及ぼし、シリンジ型原料供給ポンプの吐出能力アップなどのコストアップや装置全体の大型化してしまうという問題を回避することができる。
【0039】
反応装置14は、レシピで設定されている工程に基いて、他の原料供給が設定されていれば、前記同様の動作を行い、合成反応に必要な原料を反応装置14内に供給を受ける。尚、反応装置14は有限容積構造なので、原料供給の総和は、装置仕様によってあらかじめ制限されているものとする。
【0040】
所定原料を供給された反応装置14は、合成反応動作(後述)に入りながら、次の工程に必要な位置へ移動を開始する。反応装置14は、原料供給中及び生成物排出中以外は、原料供給口15及び排出口18は閉じられており、その流路における弁機構31A,31B、32A,32Bも閉じた状態となっている。これにより、供給された原料は、ピストン23A及びピストン23Bによって形成される室27A,27Bの容積と隔壁部22に設けられた相対する室27A,27Bに連通するオリフィス28が成す容積内に密閉された状態となる。この密閉された容積内で合成反応を行う。
【0041】
反応装置14内における反応作用は、ピストン23Aによって形成された室27Aとピストン23Bによって形成される室27Bの内容積略一定の相互の拡縮動作によって、原料がオリフィス28を通過し、通過時に発生するオリフィス通過後の噴流によって、噴流側の室内における流体攪拌をピストンの所定往復動作によって行われる。ピストン23A及びピストン23Bは、夫々個別の駆動機構により動作制御できるように構成され、且つ夫々のピストン23A,23Bには荷重変換器26A,26Bが設置されているため、夫々のピストンに加わる力を検出しながら、ピストンの動作速度あるいは動作力を制御することができる。噴流速度を最大限に上げる場合は、押し出し側の速度と同じ速度で、他方のピストンを引けば良い。さすれば噴流側との圧力差が最大になるため、印加圧力に応じた噴流速度が得られる。二次的な流体力として、噴流側には最大限のキャビテーション力をも得ることができる。逆に噴流側のキャビテーション力を抑制する場合は、押し出し側のピストン力を計測しながら引き側のピストン速度を調整することもできる。噴流の強度は、ピストン動作力及びシリンダ径から押し出し可能な最大圧力が決定され、且つ、オリフィス径とピストン押し出し速度によって、原料に加わる最大圧力と噴流速度が制御できる。噴流側のピストンの引き速度によっても噴流強度は変化させることができる。これらの動作条件は、あらかじめその合成反応に適した条件を検証し制御装置に記憶あるいは設定しておけば、その動作工程に従い都度実行ができるように構成されている。
【0042】
オリフィス28から発生する噴流が相対する室容積の略外周部に回転方向を持って発生し、隔壁と相対するピストン面に形成した突起30A,30Bによって、回転流れと乱流流れを引き起こしながら攪拌を行い、噴流による攪拌作用を効率よく行うことができる。この回転流れは、2種以上の原料反応における溶媒比重の差により、室内で相分離し易い場合でも、回転流れ及び乱流流れにより相分離を防止するように攪拌流れを発生させることができる。
【0043】
合成反応が終了したら、排出口18に連通する流路を開き、夫々のピストン23A,23Bが室27A,27Bの容積を減少させるように隔壁部22に接触するまで動作すれば、ピストン23A,23Bが持っている力で反応生成物を圧送排出することができ、反応生成物の性状変化により、高粘度になっても確実に反応装置から排出することができる。オリフィス28の両端部に設けた窪み29は、オリフィス厚さ(長さ)を小さくすることによる押し出し抵抗を少なくするとともに、窪みと略同形状の突起30A,30Bを設けたピストン面により、反応装置内の容積を限りなく縮小化できるため、反応物質をほぼ全量に排出することができる。その後、使用した原料に適した溶媒を、原料供給時と同様にあらかじめセットされた位置に移動して受け取り、反応装置内に密閉した後、ピストンを個別に動作または制御させ、オリフィス28内に残った物質を溶解または洗い流し、廃液口20cまたは次工程口20bへ排出すれば、反応物質はほぼ全量回収することができる。
【0044】
残留物質の排出においては、図7に示す状態で、ピストン23A,23Bによって形成される室27A,27Bの連動した交互拡縮動作による方法と、一方のピストンで形成される室へ溶媒または洗浄液を注入し、他方の室へ一方通行(図の場合室27Aから室27Bへ)でリンス洗浄するような動作も可能であり、この場合、洗浄液吐出口に反応装置14が移動位置決めした時、排出口18が、廃液口20Cと接続し且つ流路が開になれば、連続通液でのリンス洗浄も可能であるため、洗浄液セット位置と廃液口位置が同位置になるような配置で構成しておけば良い。なお、図7に示すように、廃液口20Cに廃液回収容器41を接続すれば、廃液を回収できる。
【0045】
ここまでで、反応装置14内には、溶解液または洗浄液しか存在しないので、洗浄液の場合は、次の原料に適した溶媒へ置換するように、前記原料受け取りと同様の位置移動及び反応装置動作及び排出動作を行えば、反応装置14内は、次の反応の原料受け入れ状態になり、同じ原料の合成反応も実施できるし、違う合成反応も行うことができる。また、合成反応終了条件が未明の場合は、図8に示すように、条件検証確認のため、次工程口20bではなく、回収口20Rに排出し、回収口20Rには、原料供給部2にセットするものと同じカートリッジタンク1をセットしておけば、反応完了確認もでき、且つ、反応未完の場合は、カートリッジタンクを空き位置にセットし、その位置から原料(反応未完物質)を再び反応装置14へ供給し、繰り返し反応動作を実行できる。その追加反応動作条件を、追加する前の反応動作に追加すれば、当該反応のレシピが完成し、原料を無駄に廃棄することもなく、同じ反応装置を使って条件を構築するので、反応条件の安定性が確保できる。
【0046】
上記第1の実施の形態によれば、選択的に原料を随時供給することができ、合成反応に必要な攪拌作用を相対するピストンの動作による夫々の室容積拡縮により、隔壁に設けたオリフィスから噴流する流れにより反応装置内の容積内原料同士を攪拌せしめ、且つ、反応に必要な攪拌作用を継続させることができる上に、その反応装置内の物質を次工程へ確実に排出することができる。また、高粘度への性状変化においても、ピストン駆動機構の推力及び容積を形成する部材の圧力強度を確保しているため、確実に攪拌せしめる噴流を発生させることができ、高粘度物質の反応ができると共に、相分離を引き起こす原料の反応であっても、オリフィス噴流が回転流れと乱流流れを発生させ確実な反応を行うことができる。且つ、高粘度物性にも対応できるので、原料の溶媒量を極力少なくすることができ、次工程における溶媒と必要物質の分離生成に掛かる時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、図9に示すように、相対する室27A,27Bを隔てる隔壁部22に、オリフィス28とは別個に、一方の室から他方の室へ流れ方向を抑制する逆止弁33を装備し、その非抑制方向の流路34はオリフィス口径より大きく、且つ原料あるいは反応生成物を容易に流通させるに必要にして十分な口径を有するものである。隔壁部に構成された原料供給口へ連通する流路及び排出口に連通する流路と相互干渉しないように配設され、当該流路は、室27Aと室27Bへの連通を行うものである。
【0048】
第1の実施の形態との作用の相違点は、相対するピストン23A,23Bの往復動作において、オリフィスからの噴流が一方向にのみ強力に発生させることができるので、ピストンの往復回数が第1の実施の形態より、反応完了までの動作回数が相対比較すると増加するも従来技術と比較すれば、反応を確実に終了させることができると共に、ピストンの押し出し動作時にオリフィス28とは別個の流路34で、他方の室27Bへ物質を戻すことができる側のピストン23Aの駆動機構は、オリフィスのような小口径を通液させないため、押し戻す圧力が少なくてすみ、小さな駆動源で良い。例えば、図2に示すピストン23Bの発生可能圧力が、30 MPaとし、ピストン23Aは、背圧1MPaとすれば、1/30の推力を得られる駆動機構で済むため、反応装置を小型化できる。ここでは、背圧1MPa分の推力で想定粘度流体が押し戻せるような流路径をあらかじめ設計しておけば良い。合成反応の条件で、圧力30 MPaの印加維持が必要であっても、前記低推力側のピストン23Aは最前進状態にしておけば、室27Aは、ほぼ容積ゼロで、且つ、オリフィスの窪み29Aのピストン面当接面積はシリンダ内径面積に比し、小さいのは当然であるため、シリンダ内径面積:窪み部当接面積の比に応じた駆動源の推力を減少させることができると共に、第1の実施の形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0049】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態では、隔壁部を連通するオリフィスが少なくとも2つ以上となっているが、シリンダ内径が比較的小径で、2つ以上のオリフィスを設けることができない場合は、1つでも、図10及び図11に示すように、相対する室の一方の外周部近傍から、他方の室の反対面側の室外周部近傍へ連通するオリフィス28を構成する。シリンダ内径が比較的小径の場合は、オリフィス28から噴出する噴流により十分な攪拌流れが発生するため、前記、第1の実施の形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0050】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 カートリッジタンク
2 原料供給部
3 バルブ
4 ガス接続金具
5 バルブ
6 原料接続金具
7 液面センサ
8 ガス供給弁
9 ガス圧逃し弁
10 開閉バルブ
11 シリンジ型原料供給ポンプ
12 吐出バルブ
13 吐出口
14 反応装置
15 原料供給口
16 供給口接続機構
17 供給口開閉バルブ
18 排出口
19 排出口開閉バルブ
20 排出先口
21 排出接続機構
22 隔壁部
23 ピストン
24 シール
25 シリンダ部
26 荷重変換機
27 室
28 オリフィス
29 窪み
30 突起
31 供給部弁機構
32 排出部弁機構
33 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁に対し対向し密閉された第1および第2の室と、前記第1および第2の室の容積を個別に拡縮させるための第1および第2の駆動機構と、前記隔壁に設けられ前記第1および第2の室へ連通し、前記第1および第2の室の少なくとも一方に噴流を発生させるオリフィスと、を備える反応装置。
【請求項2】
原料が供給される供給口と、前記供給口を開閉する第1のバルブと、反応生成物が排出される排出口と、前記排出口を開閉する第2のバルブと、をさらに備える請求項1記載の反応装置。
【請求項3】
前記供給口と排出口が前記隔壁を介して、前記第1および第2の室へ連通する請求項1または2記載の反応装置。
【請求項4】
前記隔壁によって区画される管路と、
前記管路に摺動可能に装填され、前記隔壁の一方の面との間に前記第1の室を形成し前記第1の駆動機構で駆動される第1のピストンと、
前記管路に摺動可能に装填され、前記隔壁の他方の面との間に前記第2の室を形成し前記第2の駆動機構で駆動される第2のピストンと、
をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記隔壁に、前記オリフィスとは別個に、前記第1の室から前記第2の室への流れ方向を抑制する逆止弁を装備すると共に、前記オリフィスの口径より大きい口径の流路をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記流路の口径は、原料あるいは反応生成物を容易に流通させるに必要にして十分な口径である請求項5記載反応装置。
【請求項7】
前記オリフィスが、少なくとも2つ以上、前記隔壁中心を点対称として設けられ、前記少なくとも2つのオリフィスが、前記少なくとも2つのオリフィスを構成するピッチ円の円周方向に同方向・同角度のスキュー角を持つ請求項1〜6のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つのオリフィスは、前記第1および第2の室を構成する管路の外筒部近傍に設けられる請求項7記載の反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157818(P2012−157818A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19008(P2011−19008)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】